JP2023134355A - ひげぜんまい、時計用ムーブメント及び時計 - Google Patents

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輝尚 杉山
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【課題】本発明は、ひげぜんまい、時計用ムーブメント及び時計の提供を目的とする。【解決手段】本発明のひげぜんまいは、at%で、Moを5%以上14%以下含有するNb-Mo合金からなることを特徴とする。あるいは、本発明のひげぜんまいは、at%で、Moを5%以上14%以下含有し、残部不可避不純物とNbからなるNb-Mo合金からなることを特徴とする。加工集合組織を有し、横断面における<110>||{001}配向度を有する領域が全横断面積の30%以上であることが好ましい。【選択図】図9

Description

本発明は、ひげぜんまい、時計用ムーブメント及び時計に関する。
ひげぜんまいを振動源に持つ機械式時計では、例えば温度、姿勢、振動等の外的要因によって時刻精度が変化、すなわち歩度(時計の遅れ、進みの度合い)が変化することが知られている。
例えば、機械式時計の精度はひげぜんまいアセンブリ振動器の固有振動数の安定性に依存している。すなわち、温度変化が生じると、ひげぜんまいおよびテン輪の熱膨張およびひげぜんまいのヤング率の変化によって、アセンブリ振動器の固有振動数が変化し、時計の精度が不安定になる。
機械式時計のアセンブリ振動器において、固有振動数の温度による変化を少なくすることを目的とし、ひげぜんまいを構成する金属材料として、ジルコニウムやモリブデンを添加した低熱膨張率のニオブ基合金が知られている。
例えば、以下の特許文献1には、Nb-Mo合金のヤング率の温度特性をコンピューターシミュレーションにより予測する技術が記載されている。
また、以下の特許文献2には、Nb-Zr合金で作製したひげぜんまいに関し、酸素を含む侵入型ドープ成分を500質量ppm以上含有させ、Zr濃化相の析出量を制御することで任意の温度特性を実現する技術が開示されている。
欧州特許出願公開第3663867号明細書 特開平11-071625号公報
特許文献1に記載されている技術によれば、Nbに対し15%~50%の範囲でMoを添加したNb-Mo合金では、目的のヤング率の温度係数が得られると予想している。
ところが、特許文献1に記載の技術では、Nb-Mo合金製のひげぜんまいを実際に製造してヤング率を測定している訳ではなく、第1原理計算の結果による推測結果である。従って、加工歪等の影響などにより実際に ひげぜんまいとして用いた場合に計算値と実測値が対応する否か不明であり、実用性について、不明な問題がある。
特許文献1に記載の技術によれば、Nb-Zr合金の加工率と熱処理温度に関連し、残留歪量の調整を行う必要があり、更に、結晶の<110>配向度を調整する必要がある。
このため、Nb-Zr合金について、ひげぜんまいに適用して目的の温度特性を実現することは容易ではないと考えられる。
また、特許文献2に記載の技術では、合金の酸素含有量を精密に制御する必要があるため、合金の製造が容易ではないと考えられる。
このため本願発明は、従来知られていない特別な組成のNb-Mo系合金を用いることにより、酸素濃度による温度係数の調整を不要とし、実際の加工を考慮した温度係数の調整が可能なひげぜんまいと時計用ムーブメント及び時計の提供を課題とする。
また、本願発明は、前述のNb-Mo合金を用いてひげぜんまいを構成した場合に生じると考えられる経時的な歩度の変化を無くすることができる技術の提供を目的とする。
(1)本発明に係るひげぜんまいは、at%で、Moを5%以上14%以下含有するNb-Mo合金からなることを特徴とする。
Moをat%で5%以上14%以下含有するNb-Mo合金であるならば、第二元素としてMoを好適な範囲含有しているので、酸素濃度による温度係数の調整が不要であり、Mo含有量と加工集合組織と残留歪量の調整により温度係数を目的の低い範囲に調整したひげぜんまいを得ることができる。即ち、本発明に係るひげぜんまいであれば、酸素濃度の調整が不要であり、ひげぜんまいを形成する場合の実際の加工を考慮しつつ温度係数を目的の範囲に制御が可能なひげぜんまいを提供できる。
(2)本発明に係るひげぜんまいは、at%で、Moを5%以上14%以下含有し、残部不可避不純物とNbからなるNb-Mo合金からなることを特徴とする。
Moをat%で5%以上14%以下含有し、残部不可避不純物とNbからなるNb-Mo合金であるならば、第二元素としてMoを好適な範囲含有しているので、酸素濃度による温度係数の調整が不要であり、Mo含有量と加工集合組織と残留歪量の調整により温度係数を目的の低い範囲に調整したひげぜんまいを得ることができる。即ち、本発明に係るひげぜんまいであれば、酸素濃度の調整が不要であり、ひげぜんまいを形成する場合の実際の加工を考慮しつつ温度係数を目的の範囲に制御が可能なひげぜんまいを提供できる。
(3)本発明の一形態に係るひげぜんまいにおいて、加工集合組織を有し、横断面における<110>||{001}配向度を有する領域が全横断面積の30%以上であることが好ましい。
加工集合組織によって温度係数の調整が可能であり、上述のMo含有量の規定に加え、<110>||{001}配向度を有する加工集合組織の生成により、ひげぜんまいを製造する場合の実際の加工を考慮することで温度係数の調整が可能なひげぜんまいを提供できる。
(4)本発明の一形態に係るひげぜんまいにおいて、平均KAM値が1.0~4.0であることが好ましい。
上述のMo含有量と加工集合組織に加え、平均KAM値によって温度係数の調整が可能なひげぜんまいを提供できる。
(5)本発明の(1)~(4)のいずれかに係るひげぜんまいにおいて、基材と該基材を覆う第1酸化被膜層と第2酸化被膜層を具備し、前記基材が前記Nb-Mo合金からなり、前記第1酸化被膜層がNbとMoとOを含み、前記第2酸化皮膜層がNbとOを含むことが好ましい。
ひげぜんまいを構成するNb-Mo合金は、経時的な自然酸化により大気中で不動態膜を生成し易く、その影響から、大気中で経時的に使用すると、歩度の経時変化を生じる。
大気中で経時的に自然酸化により発生する不動態膜ではなく、予め酸化処理により形成した第1酸化被膜層と第2酸化被膜層を備えた構成とするならば、歩度の経時変化はほとんど生じない。このため、第1酸化被膜層と第2酸化被膜層を備えたひげぜんまいを用いて時計を構成すると、精度の高い時計を提供できる。
(6)本発明の一形態に係る時計用ムーブメントは、(1)~(5)のいずれかに記載のひげぜんまいと、てん真と、てん輪と、てんぷを備えたことを特徴とする。
上述のひげぜんまいを備えた時計用ムーブメントであれば、ひげぜんまいの温度係数を望ましい範囲に小さく調節することが可能であり、アセンブリ振動器の固有振動数を揃え、歩度の変化が小さく、精度が高く、安定した時計用ムーブメントを提供できる。
また、第1酸化被膜層と第2酸化被膜層を備えたひげぜんまいとした場合、経時変化による歩度の変化を生じない、安定した時計用ムーブメントを提供できる。
(7)本発明の一形態に係る時計は、(6)に記載の時計用ムーブメントを備えたことを特徴とする。
上述の時計用ムーブメントを備えた時計であるならば、望ましい範囲の温度係数を有するひげぜんまいを備え、アセンブリ振動器の固有振動数を揃え、歩度の変化が小さく、高精度な時計を提供できる。
また、第1酸化被膜層と第2酸化被膜層を備えたひげぜんまいを備えた時計用ムーブメントとした場合、経時変化による歩度の変化を生じない、安定した時計を提供できる。
本発明は、Nbに対し第二元素として5at%以上14at%以下のMoを添加したNb-Mo合金からなるひげぜんまいであり、伸線加工など、実際の加工を考慮し温度係数の調整が可能であり、加工集合組織と残留歪量の最適化により、温度係数を望ましい範囲に調整可能としたひげぜんまいを提供することができる。
また、本発明に係るひげぜんまいは、加工集合組織の配向度が高く、KAM値も幅をもった範囲を採用可能であり、酸素濃度による温度係数の調整が不要で製造し易い特徴を有する。
本発明のひげぜんまいは、Mo含有量と加工集合組織の制御とKAM値と残留歪量の制御による組み合わせで任意の温度係数に調整が可能な特徴を有する。また、第1酸化被膜層と第2酸化被膜層を備えたひげぜんまいとすることにより、歩度の経時変化を生じないようにすることができる。
従って、本発明のひげぜんまいを用いた時計用ムーブメントあるいは時計であるならば、歩度の経時的変化が小さく、高精度な時計用ムーブメントおよび時計を提供できる効果がある。
本発明に係る時計の第1実施形態を示す外観図。 第1実施形態の時計に設けられている時計用ムーブメントの平面図。 図2に示す時計用ムーブメントに設けられているてんぷの一例を示す平面図。 同てんぷの断面図。 Nb-9at%Mo合金からなるひげぜんまいにおける歩度の温度特性を示すグラフ。 Nb-11at%Mo合金からなるひげぜんまいにおける歩度の温度特性を示すグラフ。 Nb-13at%Mo合金からなるひげぜんまいにおける歩度の温度特性を示すグラフ。 Nb-Mo合金からなるひげぜんまいにおける温度係数(C1、C2)について、Mo含有量との相関性を示すグラフ。 Nb-Mo合金からなるひげぜんまいにおける第一温度係数(C1)と第二温度係数(C2)と第三温度係数(C3)について、Mo含有量との相関性を示すグラフ。 Nb-11at%Mo合金からなるひげぜんまいにおける歩度の温度係数と平均KAM値との関係を示すグラフ。 Nb-Mo合金からなるひげぜんまいにおける温度係数とMo量の関係を示すグラフ。 Nb-9at%Mo合金からなるひげぜんまいにおける歩度の温度係と平均KAM値との関係を示すグラフ。 Nb-10at%Mo合金からなるひげぜんまいにおける歩度の温度係数と平均KAM値との関係を示すグラフ。 Nb-13at%Mo合金からなるひげぜんまいにおける歩度の温度係数と平均KAM値との関係を示すグラフ。 Nb-Mo合金のヤング率の温度係数と試料のエッチング時間との関係を示すグラフ。 Nb-Mo合金からなるひげぜんまいにおける<110>||{001}配向度とエッチング時間の関係を示すグラフ。 Nb-Mo合金からなるひげぜんまいの横断面において<110>||{001}配向を示す領域を示す組織分析写真。 図17に示すひげぜんまいの外周部を24秒エッチングした後の横断面において<110>||{001}配向を示す領域を示す組織分析写真。 実施例において得られたひげぜんまい試料の外周部を48秒エッチングした後の横断面において<110>||{001}配向を示す領域を示す組織分析写真。 実施例において得られたひげぜんまい試料の外周部を72秒エッチングした後の横断面において<110>||{001}配向を示す領域を示す組織分析写真。 Nb-Mo合金からなるひげぜんまいの<110>||{001}配向度と加工率の関係を示すグラフ。 酸化被膜層を備えた第2実施形態に係るひげぜんまいの横断面図。 実施例において得られた酸化被膜層を具備するひげぜんまい試料の外周部をエッチングした後の横断面において<110>||{001}配向を示す領域を示す組織分析写真。 実施例で得られた酸化被膜層を備えたひげぜんまいの断面を示すSTEM明視野像。 酸化被膜層を備えていないひげぜんまいにおける歩度の経時変化の一例を示すグラフ。 酸化被膜層を備えたひげぜんまいにおける歩度の経時変化の一例を示すグラフ。
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、本実施形態では、時計の一例として機械式時計を例に挙げて説明する。また、各図面において、各部品を視認可能な大きさとなるために、各部品の縮尺を適宜変更している。
<第1実施形態の時計の構成>
一般に、時計の駆動部分を含む機械体を「ムーブメント」と称する。このムーブメントに文字板、針を取り付けて、時計ケースの中に入れて完成品にした状態を時計の「コンプリート」と称する。時計の基板を構成する地板の両側のうち、時計ケースのガラスのある方の側(文字板のある方の側)をムーブメントの「裏側」と称する。また、地板の両側のうち、時計ケースのケース裏蓋のある方の側(文字板と反対の側)をムーブメントの「表側」と称する。
図1に示すように、第1実施形態の時計1のコンプリートは、図示しないケース裏蓋及びガラス2からなる時計ケース3内に、ムーブメント(本発明に係る時計用ムーブメント)10と、少なくとも時に関する情報を示す目盛り(時字)を有する文字板4と、時を示す時針5、分を示す分針6、及び秒を示す秒針7を含む指針と、を備えている。
図2に示すように、ムーブメント10は、基板を構成する地板11を有している。なお、図2では、図面を見易くするためにムーブメントを構成する部品の一部の図示を省略している。
地板11には、巻真案内穴11aが形成されている。この巻真案内穴11aには、図1に示す竜頭8に連結された巻真12が回転自在に組み込まれている。この巻真12は、おしどり13、かんぬき14、かんぬきばね15及び裏押さえ16を有する切換装置により、軸方向の位置が決められている。なお、巻真12の案内軸部には、きち車17が回転自在に設けられている。
以上のような構成のもと巻真12を回転させると、図示しないつづみ車の回転を介してきち車17が回転する。きち車17が回転すると、それに伴って丸穴車20及び角穴車21が順に回転し、香箱車22に収容された図示しないぜんまい(動力源)が巻き上げられる。なお、香箱車22は、地板11と香箱受23との間で軸支されている。
地板11と輪列受24との間には、二番車25、三番車26、四番車27及びがんぎ車35が軸支されている。ぜんまいの復元力により香箱車22が回転すると、二番車25、三番車26及び四番車27が順に回転するように構成されている。これら香箱車22、二番車25、三番車26及び四番車27は、表輪列を構成している。
なお、二番車25が回転すると、その回転に基づいて図示しない筒かなが回転し、この筒かなに取り付けられた図1に示す分針6が「分」を表示する。また、筒かなが回転すると、図示しない日の裏車を介して図示しない筒車が回転し、この筒車に取り付けられた図1に示す時針5が「時」を表示する。また、四番車27が回転することで、この四番車27に取り付けられた図1に示す秒針7が「秒」を表示する。
ムーブメント10の表側には、表輪列の回転を制御するための脱進・調速機構30が配置されている。
脱進・調速機構30は、四番車27と噛み合う上記がんぎ車35と、がんぎ車35を脱進させて規則正しく回転させるアンクル36と、てんぷ40と、を備えている。以下に、てんぷ40の構造について詳細に説明する。
(てんぷの構成)
図3に示すように、てんぷ40は、てん真41、てん輪42及びひげぜんまい43を備え、ひげぜんまい43の動力を利用して、てん真41の中心軸O回りに一定の振動周期(振り角)で往復回転(正逆回転)する。
なお、本実施形態において、てん真41の中心軸Oに直交する方向を径方向といい、中心軸O方向から見た平面視で中心軸Oを周回する方向を周方向ということができる。
てん真41は、例えば真鍮等の金属によって形成され、中心軸Oに沿って延在した棒状部材とされている。てん真41における軸方向の両端には、先細りした第1ほぞ41a及び第2ほぞ41bが形成されている。
てん真41は、これら第1ほぞ41a及び第2ほぞ41bを介して、地板11及び図示しないてんぷ受の間に軸支されている。このてん真41は、軸方向の略中央部分がてん輪42の後述する嵌合孔50内に例えば圧入によって固定されている。これにより、てん真41及びてん輪42は、一体的に固定されている。
てん真41には、てん輪42よりも第2ほぞ41b寄りに位置する部分に、円環状の振り座44が中心軸Oと同軸に外嵌されている。振り座44は、径方向の外側に向けて張り出したフランジ部44aを有している。このフランジ部44aには、アンクル36を揺動させるための振り石45が固定されている。
さらにてん真41には、てん輪42よりも第1ほぞ41a寄りに位置する部分に、ひげぜんまい43を固定するための環状のひげ玉46が中心軸Oと同軸に外嵌されている。
てん輪42は、中心軸Oと同軸に配置され、てん真41を径方向の外側から囲む円環状のリム部47と、リム部47とてん真41とを径方向に連結するアーム部48と、を備えている。
リム部47は、例えば真鍮等の金属により形成されている。アーム部48は、径方向に延在すると共に周方向に間隔をあけて複数配置されている。図示の例では、アーム部48は中心軸Oを中心として90度の間隔をあけて4つ配置されている。但し、アーム部48の数、配置や形状はこの場合に限定されるものではない。
各アーム部48は、径方向の外端部がリム部47の内周部に対して一体に連結され、径方向の内端部が互いに接続されて一体となっている。そして、各アーム部48の内端部が一体となった連結部49には、中心軸Oと同軸に配置された嵌合孔50が形成されている。上述したように、この嵌合孔50内にてん真41が例えば圧入により固定されている。
更にリム部47には、ひげぜんまい43及びてん輪42を含むてんぷ40全体の中心軸O回りの質量バランスを調整するための調整ねじ(調整部)51が取り付けられている。
これら調整ねじ51は、周方向に間隔をあけて複数配置され、例えば径方向の外側からリム部47に対して螺着されている。1つ或いは複数の調整ねじ51を取り外す等の調整を行うことで、中心軸O回りの質量バランスを調整することができ、いわゆる片重り(質量不均衡)を低減することが可能となる。
なお、質量バランスを調整する調整部としては、調整ねじ51に限定されるものではなく、例えばてん輪42の表面(上面、下面や外周面)に切削容易な膜体を形成し、この膜体を調整部として利用しても良い。この場合には、膜体の一部を削り取ることで同様に中心軸O回りの質量バランスを調整することが可能となる。
(ひげぜんまいの構成)
ひげぜんまい43は、内端部61がひげ玉46を介し、てん真41に固定されたひげぜんまい本体60と、ひげぜんまい本体60に取り付けられたひげ錘65及び補助錘66と、を備えている。
ひげぜんまい本体60は、以下に説明するNb-Mo合金からなる薄板ばねであり、てん真41の軸方向から見て、渦巻き状に形成されている。
具体的にひげぜんまい本体60は、中心軸Oを原点とした極座標系においてアルキメデス曲線に沿う渦巻き状に形成されている。これにより、ひげぜんまい本体60は、てん真41の軸方向から見て径方向に略等間隔で隣り合うように複数の巻き数で巻かれている。
図示の例では、ひげぜんまい本体60は、内端部61とひげ玉46との接続部分を上記巻出し位置としてアルキメデス曲線に沿って巻出しが進み、14巻の巻き数で形成されているが、図示の例は1つの例であり、ムーブメントによって適宜の巻き数が選択される。
ひげぜんまい本体60のうち、最外周部分(14巻目)の一部は、癖付け部63を介して径方向外側に離間すると共に、曲率半径が他の部分よりも大きく形成された円弧部64とされている。この円弧部64の端部が、ひげぜんまい本体60の外端部62とされ、図示しないひげ持受を介して取り付けられたひげ持67に固定されている。なお、各図ではひげ持67を二点鎖線で示している。
「ひげぜんまいの組成」
本実施形態のひげぜんまい43は、at%で、Moを5%以上14%以下含有するNb-Mo合金からなる。より詳細に、ひげぜんまい43は、at%で、Moを5%以上14%以下含有し、残部不可避不純物とNbからなるNb-Mo合金からなる。
ひげぜんまい43を構成するNb-Mo合金において、at%で、Moを9%以上13%以下含有することがより好ましく、Moを9.5%以上12%以下含有することが最も好ましい。
上述のNb-Mo合金は、不可避不純物として、酸素、窒素、水素、炭素のいずれかを含むことができる。不可避不純物としての酸素含有量は、0.6at%以下であることが好ましく、0.41at%以下であることがより好ましい。不可避不純物としての窒素含有量は、0.05at%以下であることが好ましく、0.033at%以下であることがより好ましい。不可避不純物としての水素含有量は、0.7at%以下であることが好ましく、0.46at%以下であることがより好ましい。不可避不純物としての炭素含有量は、0.5at%以下であることが好ましく、0.39at%以下であることがより好ましい。
また、これら不純物の他にひげぜんまい43を構成するNb-Mo合金において、Nb-Mo合金を溶製する場合にNb母合金あるいはMo母合金を原料として用いる。これら母合金を原料とする場合、原料由来の不純物として、鉄(Fe)を0.007at%以下、タンタル(Ta)を0.05at%以下、ニッケル(Ni)を0.0005at%以下、タングステン(W)を0.0008at%以下、含有していても良い。
更に、前述の元素の他に、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)などの元素を含有していても良い。
前述の組成のNb-Mo合金からなるひげぜんまいを製造する場合、前記組成の合金を溶製し、得られた鋳造材に伸線加工を施して望ましい太さと断面形状の線材とする。
伸線加工する場合、中間熱処理を施すことが好ましく、例えば、必要回数の伸線加工を施し、伸線加工後に950℃~1200℃程度に加熱し、最終的に目的の断面形状、かつ、目的の線径の線材を得ることができる。目的の線径に加工後、目的の厚さに圧延した後、目的のぜんまい形状として700℃~1000℃程度の温度範囲に数時間程度加熱する熱処理を施すことで横断面積に占める加工集合組織の<110>||{001}配向度を高めたひげぜんまいとすることができる。なお、700℃未満の熱処理温度の場合、ひげぜんまいにぜんまいとしての形状的なくせを付与できない。
例えば、直径1.0mm程度の線材から、0.5mm、0.3mm、0.05mmなど、目的の線径となるまで、必要回数の伸線加工を施すことができる。
前述の組成のNb-Mo合金において、at%で、Moを5%以上14%以下含有する組成の合金は、圧延、線引きなどの塑性加工により形成される加工集合組織を有する。
この加工集合組織の一例として、ひげぜんまい43の横断面を観察した場合、<110>||{001}配向度を有する加工集合組織の領域が全横断面の30%以上を占めることが好ましい。勿論、加工集合組織の領域がより高い範囲でも差し支えなく、全横断面の100%を占める組織であっても良い。
前述の組成のNb-Mo合金において、平均KAM値が1.0~4.0の範囲であることが好ましい。KAM値とは、走査型電子顕微鏡を利用した電子線後方散乱回折像(EBSD)法に基づく結晶方位解析により求めることができる測定値である。走査型電子顕微鏡に取り付けた結晶方位測定装置により、試料断面の測定領域に数10個の結晶粒を含むように、例えば、1000μm×1000μmの範囲を観察する。そして、この観察範囲において、同一結晶粒内における測定点間のミスオリエンテーションであるKAM値を複数測定し、平均KAM値を求めることができる。平均KAM値とは、観察画像内の注目するピクセルと隣接ピクセルとの方位差の平均値ということができる。
前述の組成のNb-Mo合金は、低く、かつ、安定した温度係数を有する。
前述の組成のNb-Mo合金で作製したひげぜんまいの第一温度係数(C1)は、C1=(歩度38-歩度)/38-8[s/d/℃]の式で計算できるが、この値が±2.0以内であることが好ましく、±0.5以内であることがより好ましい。
前述の組成のNb-Mo合金で作製したひげぜんまいの第二温度係数(C2)は、C2=(歩度38-歩度23)/38-23[s/d/℃]の式で計算できるが、この値が±2.0以内であることが好ましく、±0.5以内であることがより好ましい。
前述の組成のNb-Mo合金で作製したひげぜんまいの第三温度係数(C3)は、C3=(歩度23-歩度)/23-8[s/d/℃]の式で計算できるが、この値が±2.0以内であることが好ましく、±0.5以内であることがより好ましい。
図5は、Nb-9at%Mo合金から作製した図3、図4に示すひげぜんまいの歩度の温度特性を示す。
図6は、Nb-11at%Mo合金から作製した図3、図4に示すひげぜんまいの歩度の温度特性を示す。
図7は、Nb-13at%Mo合金から作製した図3、図4に示すひげぜんまいの歩度の温度特性を示す。
温度特性において、第一温度係数(C1)と第二温度係数(C2)は、図5、図6、図7に示す関係と上述の計算式から、以下の表1に示すように計算できる。また、同様の手法によりに求めたNb-10at%Mo合金のC1とC2の計算結果を以下の表1に併記する。
Figure 2023134355000002
図8は、図5~図7に示す関係から先に求めた各組成(Mo含有量:9at%、11at%、13at%)のNb-Mo合金における、温度係数(C1、C2)のMo濃度依存性を示す。
表1と図8に示す結果から明らかなように、Moを9~13at%含むNb-Mo合金であるならば、第1温度係数と第2温度係数に関し、±2.0以内とすることができる。
図9は、図5~図7に示した組成の試料と、その他の組成の試料の試験結果から前述のように求めた温度係数(C1、C2、C3)のMo濃度依存性を示す。
図9に示す結果から、ひげぜんまい43を構成するNb-Mo合金において、Moを9at%以上13at%以下含有することにより、温度係数を±2.0[s/d/℃]の範囲に抑制できることがわかる。更に、Nb-Mo合金において、Moを9.5at%以上12.5at%以下含有することにより、温度係数を±0.8[s/d/℃]の範囲に抑制できることも分かった。
また、温度計C1とC2のみを加味すると、Nb-Mo合金において、Moを9.5at%以上12.5at%以下含有することにより、温度係数を±0.5[s/d/℃]の範囲に抑制できることも分かった。
図10は、Nb-11at%Mo合金における歩度の温度係数と平均KAM値の関係を調べた結果を示す。
図10に示す結果から、平均KAM値を調整すると、歩度の温度係数も調整できることが分かる。
図11は、温度係数のMo濃度依存性をMo含有量5~13at%の範囲で求めた結果をまとめて示すグラフである。Nb-Mo合金に関し、Mo含有量5~13at%の範囲で温度係数は±4.0以内の範囲を実現できることが分かる。
図12はNb-9at%Mo合金からなるひげぜんまいにおける歩度の温度係数と平均KAM値との関係を示す。
図13はNb-10at%Mo合金からなるひげぜんまいにおける歩度の温度係数と平均KAM値との関係を示し、図14はNb-13at%Mo合金からなるひげぜんまいにおける歩度の温度係数と平均KAM値との関係を示す。
これら図10~図14に示すいずれのグラフを見ても、これらのNb-Mo合金が、先に説明したNb-11at%Mo合金と同様に、平均KAM値を調整すると、歩度の温度係数も調整できることが分かる。
図15は、図17~図20に示す横断面形状を有するNb-11at%合金からなるひげぜんまいについて、フッ硝酸液によるエッチング時間とヤング率の温度係数(TCE)の関係を測定した結果を示す。
図17に示す断面形状のひげぜんまいは、エッチングしていない状態の断面を示し、図18に示す断面形状のひげぜんまいは24秒エッチング後の断面を示し、図19に示す断面形状のひげぜんまいは48秒エッチング後の断面を示し、図20に示す断面形状のひげぜんまいは72秒エッチング後の断面を示す。
なお、図18~図20に示すひげぜんまいは、全体をエッチング液に浸漬し、外周を徐々に除去して薄く加工した場合の、それぞれの試料断面を示す。図15に示すように、いずれの試料でも低いヤング率の温度係数が得られている。
図17~図20は、EBSD解析によりひげぜんまいの断面を観察した場合、加工集合組織(<110>||{001}配向している領域)が断面にどの程度生成しているのか調べた結果を示す。
図17に示すように、ひげぜんまいの中心部領域に色の濃い、縦長の領域が示されているが、これらの領域が加工集合組織を有し、横断面における<110>||{001}配向度を有する領域である。エッチングの進行により、ひげぜんまいの外周側を徐々に除去することで、加工集合組織の占める面積を徐々に大きくできていることが分かる。
図16は、図17~図20に示すそれぞれのひげぜんまい試料において、横断面の全面積に対する<110>||{001}配向度を有する領域の面積率を示す。
図16に示すように、図17の試料では全断面積の60%が加工集合組織であり、図18の試料では全断面積の58%が加工集合組織であり、図19の試料では全断面積の63%が加工集合組織であり、図20の試料では全断面積の68%が加工集合組織である。
このようにエッチングによりひげぜんまいの全横断面積に対する加工集合組織の面積率を調整できることが分かる。
図21は、Nb-5at%Mo合金(MN5)とNb-7at%Mo合金(MN7)とNb-13at%Mo合金(MN13)をそれぞれ伸線加工した場合、加工率とRD方向(圧延方向)の<110>||{001}配向度を求めた結果を示す。
図21では、加工率90%程度まではRD方向の<110>||{001}配向度は大きく変化しないが、加工率90%を超えるとRD方向の<110>||{001}配向度が大幅に向上する。特に、加工率95~99%の範囲において、RD方向の<110>||{001}配向度は45~90%を示した。
図21に示す結果から、Nb-Mo合金を塑性加工する場合、加工率95~99%の範囲にすると、ひげぜんまいにおけるRD方向の<110>||{001}配向度を45~90%に調整できることが分かる。
即ち、Nb-Mo合金を塑性加工する場合、加工率95~99%とすることにより加工集合組織の配向度を調整できるとともに、加工率に応じて導入した残留歪量に応じた組成比とすることができる。
このことは上述の合金であれば、実際の加工を考慮し温度係数の調整が可能であり、加工集合組織と残留歪量の最適化により、KAM値を望ましい範囲に調整するとともに望ましい範囲の温度係数に調整可能としたひげぜんまいを提供できることがわかる。
<第2実施形態の時計の構成>
第2実施形態の時計におけるコンプリートの基本構成は、先に説明した第1実施形態の時計のコンプリートと同等である。
第2実施形態の構成において、第1実施形態の構成と異なっているのは、ひげぜんまいの構成である。第2実施形態のひげぜんまいは、図22に示すように基材100と、該基材100の外周面を覆う第1酸化被膜層101と、該第1酸化被膜層101の外周面を覆う第2酸化被膜層102を有している。
基材100は、先に説明したNb-Mo合金からなる。第1酸化被膜層101は、MoとNbとOを含む、あるいは、MoとNbとOからなる。例えば、第1酸化被膜層101は、Mo酸化物とNb酸化物からなる構成でもよい。あるいは、Mo酸化物がNb酸化物層の中に混在されている酸化膜層からなる構成でもよい。
第1酸化被膜層101は、金属酸化物の膜からなる。一例として、Nb-Mo合金を陽極酸化または酸素混合ガス雰囲気下で熱酸化すると形成される。この被膜層101は、Nb酸化膜およびMo酸化膜の混合物からなる。また、第1酸化被膜層101中には電解液成分も混入する可能性があり、例えばリン酸水溶液中で陽極酸化処理をした場合、リン酸イオンなどが被膜層101に含有される。
第2酸化被膜層102は、金属酸化物の膜からなる。Nb-Mo合金を陽極酸化または酸素混合ガス雰囲気下で熱酸化すると形成される。この第2酸化被膜層102はNb酸化膜から成る。また、第2被膜層102中には電解液成分も混入する可能性があり、例えばリン酸水溶液中で陽極酸化処理をした場合、リン酸イオンなどが第2被膜層102に含有される。
なお、第1酸化被膜層101と第2酸化被膜層102の境界は、一例として明確に区分けされていてもよいし、それぞれの層の境界に含有元素のグラディエーションが形成された濃度勾配を有して連続されている構成でもよい。
第1被膜層101と第2被膜層102の厚さの合計膜厚は、例えば10~300nmである。
前述の範囲の合計膜厚であれば、ひげぜんまいの自然酸化による歩度の経時変化を抑制できる。前述の範囲内であっても、合計膜厚140~250nmの酸化被膜層であれば、装飾性の高い干渉色を呈する酸化被膜層とすることができる。
酸化被膜層を形成する方法は、陽極酸化法あるいは酸素混合ガス雰囲気下での熱酸化法の何れかを選択できる。
「陽極酸化法による酸化被膜層の形成」
陽極酸化法の一例は、Nb-Mo合金製のひげぜんまいを1%リン酸水溶液に浸し、弱電流で電圧を印加する方法である。
印加電圧は一例として約65Vまでゆっくり昇圧し、約65Vに達したら電流量が変化しなくなるまで処理を続行する。この処理により、ひげぜんまいに160nm程度の酸化被膜層を生成でき、得られた酸化被膜層は青紫色を呈する。
陽極酸化処理のための電解液はリン酸の他、硫酸やアンモニア水などでもよい。
印加電圧は任意の値で良いが、膜厚・美観性・作業安全性のバランスを考慮することが望ましい。中でも、機械式腕時計において高級感があるとされている色合い、即ち青色や紫色の干渉色を呈色させるには、30~35V、または60V~75Vの印加電圧で陽極酸化処理を施すことが望ましい。
同一組成、同一加工率、同一熱処理により作製された試料においては、酸化膜厚が厚いほど、即ち印加電圧が高いほど、大気中の酸素のバリア効果が大きくなるため、歩度の経時変化抑制効果が大きくなる。加えて、酸化膜厚が厚いほど、ヤング率の温度係数は小さくなる。ヤング率の温度係数が小さくなる理由は次の通りである。
Nb-Mo合金製のひげぜんまいのRD断面は、図23のSEM-EBSD分析によるIPFマップが示すように、結晶方位が中心部と最表面では<110>に、中心部と最表面の中間部ではランダムに配向している。時計として使用される温度域において、多くの金属、合金では、ヤング率の温度係数は負の値である。
一方、Nb-Mo合金では、断面の<110>配向度を高くすることによりヤング率の温度係数は正の値になる。このことから、陽極酸化処理により、ひげぜんまい最表面の<110>配向層を破壊して<110>配向度を低減させるとヤング率の温度係数を小さくすることができる。
以上のことから、歩度の経時変化の抑制、ヤング率の温度係数の制御、美観性の向上の3点を同時に達成するには、Nb-Mo合金の組成、加工方法・加工率、スパイラル形状固定化のための熱処理温度の条件を、酸化被膜層がない状態においてヤング率の温度係数が大きくなるようにしてひげぜんまいにした後、65V程度で陽極酸化処理を行うのが望ましい。
「熱酸化法による酸化被膜層の形成」
酸化被膜層を備えたNb-Mo合金製のひげぜんまいを熱酸化法により製造するには、一例として、マッフル炉にて300℃以上の熱処理を行う。この手法により、ひげぜんまいに熱酸化膜を生成できる。
酸化被膜層の厚さは熱処理の温度と時間に依存し、例えば空気中350℃20分の処理を行うと50nm程度の酸化被膜層を生成でき、その酸化被膜層は青色の干渉色を呈色する。
熱処理の雰囲気ガスは酸素、または酸素を含み合金を腐食することのない混合ガスでよく、例えば空気、酸素-貴ガス(Arなど)混合ガスなどが挙げられる。
熱酸化法により酸化被膜層を生成するための熱処理温度、および時間は、成膜したい酸化被膜層の膜厚に応じて決めればよく、温度は300~700℃、時間は1分~12時間の範囲で行えばよい。
熱酸化法により得られる効果は陽極酸化の場合と同様であり、ヤング率の温度係数の制御と干渉色による美観性の向上が可能となる。
第1被膜層101と第2被膜層102の差は、図24に示すような走査透過電子顕微鏡(STEM)の明視野像から判別できる。
図24の明視野像では、層200、層201、像202、層203の4層から成る。
層200は母材であるNbMo合金製のひげぜんまいであり、図22における基材100に相当する。層201、202はそれぞれ第1被膜層101、第2被膜層102に相当する酸化被膜層である。層203はSTEM観察のために被覆したAu保護膜である。
STEM明視野像では試料を透過した電子を検出しているため、軽い元素ほど明るく、重い元素ほど暗く写る。層201と層202を比較すると層201の方が若干暗いことから、層202より層201の方に重元素が含まれることがわかる。更に、エネルギー分散型X線分光法(EDX)を組み合わせることで元素を特定することができ、層201(第1被膜層101)には、Nb、Mo、Oが含まれ、層202(第2被膜層)にはNb、Oが含まれていることがわかった。
STEM観察の結果は、酸化被膜層の生成方法が陽極酸化法でも熱酸化法でも同様に生じる。
「歩度経時変化の抑制効果」
未処理のNb-Mo合金製のひげぜんまいを使用した機械式時計ムーブメントでは、図25に示すように時間経過(経過日数)と共に歩度が進み、250日後には約13秒/日の精度狂いが生じた。
一方、本発明に従う、膜厚160nmの陽極酸化法による酸化被膜層を有したNb-Mo合金製のひげぜんまいを使用した機械式時計ムーブメントは、図26に示すように、80日後に時間経過による精度狂いはほとんど生じなかった。
従って、ひげぜんまいを構成するNb-Mo合金に第1被膜層101と第2被膜層102を形成することにより、経時的に歩度の変化をほとんど生じないひげぜんまいを提供できることが分かった。また、前述のひげぜんまいを備えた歩度の変化をほとんど生じない時計用ムーブメント及び時計を提供できることが分かった。
1…時計、10…時計用ムーブメント、40…てんぷ、41…てん真、42…てん輪、43…ひげぜんまい、100…基材、101…第1酸化被膜層、102…第2酸化被膜層。

Claims (25)

  1. at%で、Moを5%以上14%以下含有するNb-Mo合金からなることを特徴とするひげぜんまい。
  2. at%で、Moを5%以上14%以下含有し、残部不可避不純物とNbからなるNb-Mo合金からなることを特徴とするひげぜんまい。
  3. 加工集合組織を有し、横断面における<110>||{001}配向度を有する領域が全横断面積の30%以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のひげぜんまい。
  4. 平均KAM値が1.0~4.0であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のひげぜんまい。
  5. 平均KAM値が1.0~4.0であることを特徴とする請求項3に記載のひげぜんまい。
  6. 基材と該基材を覆う第1酸化被膜層と第2酸化被膜層を具備し、前記基材が前記Nb-Mo合金からなり、前記第1酸化被膜層がNbとMoとOを含み、前記第2酸化皮膜層がNbとOを含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のひげぜんまい。
  7. 基材と該基材を覆う第1酸化被膜層と第2酸化被膜層を具備し、前記基材が前記Nb-Mo合金からなり、前記第1酸化被膜層がNbとMoとOを含み、前記第2酸化皮膜層がNbとOを含むことを特徴とする請求項3に記載のひげぜんまい。
  8. 基材と該基材を覆う第1酸化被膜層と第2酸化被膜層を具備し、前記基材が前記Nb-Mo合金からなり、前記第1酸化被膜層がNbとMoとOを含み、前記第2酸化皮膜層がNbとOを含むことを特徴とする請求項4に記載のひげぜんまい。
  9. 基材と該基材を覆う第1酸化被膜層と第2酸化被膜層を具備し、前記基材が前記Nb-Mo合金からなり、前記第1酸化被膜層がNbとMoとOを含み、前記第2酸化皮膜層がNbとOを含むことを特徴とする請求項5に記載のひげぜんまい。
  10. 請求項1または請求項2に記載のひげぜんまいと、てん真と、てん輪と、てんぷを備えたことを特徴とする時計用ムーブメント。
  11. 請求項3に記載のひげぜんまいと、てん真と、てん輪と、てんぷを備えたことを特徴とする時計用ムーブメント。
  12. 請求項4に記載のひげぜんまいと、てん真と、てん輪と、てんぷを備えたことを特徴とする時計用ムーブメント。
  13. 請求項5に記載のひげぜんまいと、てん真と、てん輪と、てんぷを備えたことを特徴とする時計用ムーブメント。
  14. 請求項6に記載のひげぜんまいと、てん真と、てん輪と、てんぷを備えたことを特徴とする時計用ムーブメント。
  15. 請求項7に記載のひげぜんまいと、てん真と、てん輪と、てんぷを備えたことを特徴とする時計用ムーブメント。
  16. 請求項8に記載のひげぜんまいと、てん真と、てん輪と、てんぷを備えたことを特徴とする時計用ムーブメント。
  17. 請求項9に記載のひげぜんまいと、てん真と、てん輪と、てんぷを備えたことを特徴とする時計用ムーブメント。
  18. 請求項10に記載の時計用ムーブメントを備えたことを特徴とする時計。
  19. 請求項11に記載の時計用ムーブメントを備えたことを特徴とする時計。
  20. 請求項12に記載の時計用ムーブメントを備えたことを特徴とする時計。
  21. 請求項13に記載の時計用ムーブメントを備えたことを特徴とする時計。
  22. 請求項14に記載の時計用ムーブメントを備えたことを特徴とする時計。
  23. 請求項15に記載の時計用ムーブメントを備えたことを特徴とする時計。
  24. 請求項16に記載の時計用ムーブメントを備えたことを特徴とする時計。
  25. 請求項17に記載の時計用ムーブメントを備えたことを特徴とする時計。
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