JP2023133194A - ポリエチレングリコールの活性炭酸エステルの製造方法およびポリエチレングリコールの活性炭酸エステル - Google Patents

ポリエチレングリコールの活性炭酸エステルの製造方法およびポリエチレングリコールの活性炭酸エステル Download PDF

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Abstract

【課題】高純度の活性化ポリエチレングリコールを得ること。【解決手段】本方法は、水と非混和である非プロトン性溶媒中、塩基の存在下で、ヒドロキシル基を有するポリエチレングリコールと、炭酸ジスクシンイミジルおよびp-ニトロフェニルクロロホルメートからなる群より選ばれた一種以上の活性炭酸試薬とを反応させることで、ポリエチレングリコールの活性炭酸エステルおよび未反応の活性炭酸試薬を含む組成物を得る工程(a)と、工程(a)で得られた組成物をろ過することで活性炭酸試薬を一部除去した後、酸性官能基含有アルコールを添加して未反応の活性炭酸試薬と反応させた組成物を得る工程(b)と、工程(b)で得られた組成物を水洗処理することで、酸性官能基含有アルコールと活性炭酸試薬との反応物、酸性官能基含有アルコールおよび前記活性炭酸試薬の分解物を除去する工程(c)とを有する。【選択図】 なし

Description

本発明は、水溶性の化合物、より詳しくは、生体機能性高分子;ドラッグデリバリーシステムにおける薬物や薬物キャリア;診断用材料やデバイス等の修飾に用いられる、ポリエチレングリコールの活性炭酸エステルの製造方法およびポリエチレングリコールの活性炭酸エステルに関するものである。
近年、医薬品分野において、活性剤であるタンパク質と水溶性組成物を結合させた複合体は、タンパク質単体を体内に注入した場合と比較し、半減期の増大、免疫システムの回避等による効能の向上を果たしている。
タンパク質との結合に利用されている水溶性組成物の一つがポリエチレングリコールである。一般的に、活性剤-ポリエチレングリコール複合体の形成は、活性剤とポリエチレングリコール間の反応により行う。反応を行わせるために、ポリエチレングリコールの末端を反応性官能基に置換した活性化ポリエチレングリコールを使用するが、ポリエチレングリコールを活性化する際に使用した活性化試薬が不純物として残存した場合、医薬品製造後まで引き継がれ、重篤な副作用の原因となる可能性があるため、活性化ポリエチレングリコール中の不純物は最大限減少させることが求められている。
活性化ポリエチレングリコールに用いられる反応性官能基としては、様々な官能基が用いられている。タンパク質のアミノ基と結合する官能基として、カルボン酸が挙げられるが、カルボン酸とアミノ基の反応は縮合剤を用いる必要があるため、不純物が副生する可能性が高くなる。一方、スクシンイミジル基やニトロフェニル基などのカーボネート型官能基を持つポリエチレングリコールは、タンパク質やアミノ酸と反応させる際に、縮合剤を用いる必要はないため、カルボン酸と比べて副生する不純物を低減することができる。
カーボネート型活性化ポリエチレングリコールを製造するためのアプローチとして、特許文献1は、スクシンイミジル炭酸基(SC基)を有するメトキシ基ポリエチレングリコール(mPEG-SC)の合成を記述している。特許文献1 の記述によると、その製造プロセスは、メトキシ基ポリエチレングリコール(mPEG-OH)と炭酸ジスクシンイミジル(DSC)を反応させmPEG-SCを合成するステップと、反応性組成物を添加し、未反応のDSCを全て消費するステップの合計2ステップにより構成されている。
日本国特許第5,544,085号明細書 米国特許第5,281,698号明細書
特許文献1に記述されている反応性組成物を添加することで、未反応のDSCを消費することは可能である。しかし、消費後の不純物の残存、並びに反応性組成物を添加することによるmPEG-SCの純度低下は避けることができない。
例えば、特許文献1に記述されている反応性組成物の1つである水を使用した場合、DSCを全て消費できるが、消費後のN-ヒドロキシコハク酸イミドは、mPEG-SCに含まれたままであり、その除去方法については記載されていない。N-ヒドロキシコハク酸イミドは水酸基をもつため、活性剤-ポリエチレングリコール複合体の形成時に、反応を阻害したり、もしくは新たな不純物を形成したりする。このため、医薬品の純度低下を招き、医薬品の安全性を脅かす原因となる。また、塩基が存在する系中に水を添加することで、塩基性水溶液が生じるが、活性炭酸エステルは塩基性水溶液により加水分解するため、DSCとともに活性炭酸エステルも分解し、ポリエチレングリコール並びに医薬品の純度低下を招く可能性がある。
活性化ポリエチレングリコールを製造するための別のアプローチとして、特許文献2では、mPEG-OHとDSCを反応させ、mPEG-SCを合成した後、ろ過にて不溶のDSCを除去する方法、および、その後エーテルを用いてmPEG-SCを沈殿化し、洗浄することで、未反応のDSCを除去する方法が記されている。しかし、一般的に沈殿化、ろ過工程はスケールが大きくなるごとに工程時間が長くなる傾向にある。そのため、大容量での製造を想定した場合には、工程時間の延長による品質の劣化や変動費の上昇を招く。またポリマーの沈殿化には大量の溶剤を必要とするため、その除去方法は非効率的である。
本発明は、上記課題を鑑みて発明されたものであり、特定の活性炭酸試薬とポリエチレングリコールとの反応により残存する、もしくは生じる、残存活性炭酸試薬並びに活性炭酸試薬の分解物を容易に除去し、高純度の活性化ポリエチレングリコールを得ることができる、ポリエチレングリコールの活性炭酸エステルの製造方法および装置を提供することである。
本発明者らは、鋭意研究の結果、ポリエチレングリコールの活性炭酸エステルに含まれる不純物除去が困難であるという点から、水洗にて簡便に不純物を全て除去する方法を検討した。すなわち、本発明は、水洗で除去できない活性炭酸試薬を、酸性官能基含有アルコールと反応させて水洗除去可能な不純物に分解し、その後全ての不純物を水洗にて1mol%以下まで低減できる製法、並びに含有不純物量が1mol%以下であるポリエチレングリコールの活性炭酸エステルである。
本発明は、ポリエチレングリコールの活性炭酸エステルを製造する方法であって、
水と非混和である非プロトン性溶媒中、塩基の存在下で、ヒドロキシル基を有するポリエチレングリコールと、炭酸ジスクシンイミジルおよびp-ニトロフェニルクロロホルメートからなる群より選ばれた一種以上の活性炭酸試薬とを反応させることで、ポリエチレングリコールの活性炭酸エステルおよび未反応の前記活性炭酸試薬を含む組成物を得る工程(a)と、
前記工程(a)で得られた前記組成物をろ過することで前記活性炭酸試薬を一部除去した後、酸性官能基含有アルコールを添加して未反応の前記活性炭酸試薬と反応させた組成物を得る工程(b)と、
前記工程(b)で得られた前記組成物を水洗処理することで、前記酸性官能基含有アルコールと前記活性炭酸試薬との反応物、前記酸性官能基含有アルコールおよび前記活性炭酸試薬の分解物を除去する工程(c)と
を有することを特徴とする。
本発明のポリエチレングリコールの活性炭酸エステルの製造方法の好ましい態様としては、前記活性炭酸エステルが以下の式(1)で表されるとよい。

PEG-O-(C=O)-O-R ・・・式(1)

(式(1)中、
PEGは直鎖構造または分岐構造を有するポリエチレングリコール部であり、
Rはスクシンイミジル基またはp-ニトロフェニル基である。)
本発明のポリエチレングリコールの活性炭酸エステルの製造方法の好ましい態様としては、前記ポリエチレングリコールが多分散ポリエチレングリコールまたは単分散ポリエチレングリコールであるとよい。
本発明のポリエチレングリコールの活性炭酸エステルの製造方法の好ましい態様としては、前記ポリエチレングリコールは100~100,000ダルトンの分子量を有するとよい。
本発明のポリエチレングリコールの活性炭酸エステルの製造方法の好ましい態様としては、前記ポリエチレングリコールは複数のヒドロキシル基を有するとよい。
本発明のポリエチレングリコールの活性炭酸エステルの製造方法の好ましい態様としては、前記ポリエチレングリコールが、マレイミド基、アジド基、ビオチン基、メトキシ基、アセタールで保護されたアルデヒド基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基で保護されたアミノ基、t-ブトキシカルボニル基で保護されたアミノ基およびベンジルオキシカルボニル基で保護されたアミノ基からなる群より選ばれた一種以上の官能基を有するとよい。
本発明のポリエチレングリコールの活性炭酸エステルの製造方法の好ましい態様としては、水と非混和である前記非プロトン性溶媒を構成する溶剤は、トルエン、クロロホルムおよびジクロロメタンからなる群より選ばれた一種以上の溶剤であるとよい。
本発明のポリエチレングリコールの活性炭酸エステルの製造方法の好ましい態様としては、前記酸性官能基含有アルコールが、グリコール酸、乳酸、3-ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシピバル酸、β-ヒドロキシイソ吉草酸、3-ヒドロキシ-3-メチル吉草酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸およびヒドロキシ安息香酸からなる群より選ばれるとよい。
本発明のポリエチレングリコールの活性炭酸エステルの製造方法の好ましい態様としては、前記水洗処理を、pHが0以上、7以下である水または水溶液によって実施するとよい。
また、本発明は、ヒドロキシル基を有するポリエチレングリコールと、炭酸ジスクシンイミジルおよびp-ニトロフェニルクロロホルメートからなる群より選ばれた一種以上の活性炭酸試薬との反応物からなる、ポリエチレングリコールの活性炭酸エステルであって、
前記活性炭酸エステル100mol%に対して、前記活性炭酸試薬、前記活性炭酸試薬の分解物、前記酸性官能基含有アルコール、および前記酸性官能基含有アルコールと前記活性炭酸試薬との反応物の含有量がそれぞれ1mol% 以下であることを特徴とする。
本発明のポリエチレングリコールの活性炭酸エステルの好ましい態様としては、前記活性炭酸エステルが以下の式(2)で表されるとよい。

PEG-O-(C=O)-O-R・・・式(2)

(式(2)中、
PEGは直鎖構造または分岐構造を有するポリエチレングリコール部であり、
Rはスクシンイミジル基またはp-ニトロフェニル基である。)
本発明は、従来の技術では困難である「塩基、活性炭酸試薬の分解物等の不純物の除去」を、有効な溶剤や試薬を選択することで、水洗によって簡便に実施することが可能である。また、水洗を行う上で除去が困難な活性炭酸試薬は、酸性官能基含有アルコールと反応させることで、容易に水洗除去可能な不純物となり、他の不純物と同時に水洗除去することが可能である。また、ポリエチレングリコール中にマレイミド基やアジド基等の反応性官能基が含まれている場合でも、それぞれの官能基の分解や官能基との反応が起こりにくく、品質の低下を防ぐことが可能である。また、本製法は工業的に容易に実施可能であり、生産性に優れ、吸着剤やイオン交換樹脂といった廃棄物を生成せずに、高収率で実施することが可能である。
[ポリエチレングリコールの活性炭酸エステル]
以下の項目では、本発明にて製造される、ポリエチレングリコール(以下、「PEG」と呼ぶことがある)の活性炭酸エステルについて述べる。
本発明のPEGの活性炭酸エステルは、活性炭酸試薬、活性炭酸試薬の分解物、酸性官能基含有アルコール、並びに酸性官能基含有アルコールと活性炭酸試薬との反応物の含有量が、いずれも、PEGの活性炭酸エステル100mol%に対して1mol%以下である。PEGの活性炭酸エステルは、以下の式(2)を有している。
PEG-O-(C=O)-O-R ・・・ 式(2)
式(2)中、「PEG-」は直鎖構造または分岐構造を持つポリエチレングリコール部であり、Rは、スクシンイミジル基またはp-ニトロフェニル基である。具体的には、式(3)~(8)に示されるようなPEGの活性炭酸エステルを例示できる。このうち、式(3)、式(4)は直鎖構造を持つPEGの活性炭酸エステルであり、式(5)~(8)は分岐構造を持つPEGの活性炭酸エステルである。
Figure 2023133194000001
ここで、X1はスクシンイミジル基またはp-ニトロフェニル基であり、Y1は、それぞれ生体機能性分子に存在する官能基と反応して共有結合を形成する官能基を少なくとも含む原子団であり、X1と原子団Y1が含む前記官能基とは互いに異なる場合であり;
R1は炭素数1~7の炭化水素基または水素原子であり;
nは3~2300の整数であり;
mは1~1200の整数であり;
A1は-L1-(CH2)m1-、-L1-(CH2)m1-L2-(CH2)m2-または単結合を表し、L1はエーテル結合、アミド結合、ウレタン結合、2 級アミノ基または単結合を表し、L2はエーテル結合、アミド結合またはウレタン結合を表し、m1およびm2はそれぞれ独立して1~5の整数を表し;および
B1は-L3-(CH2)m3-、-L3-(CH2)m3-L4-(CH2)m4-または単結合を表し、L3はアミド結合または単結合を表し、L4はエーテル結合、アミド結合またはウレタン結合を表し、m3およびm4はそれぞれ独立して1~5の整数を表す。
PEGの活性炭酸エステルに含まれる不純物は、反応に使用した塩基、活性炭酸試薬、酸性官能基含有アルコール、活性炭酸試薬と酸性官能基含有アルコールの反応物、活性炭酸試薬の分解物である。本発明の活性炭酸エステル100mol%に対する各不純物の含量は、好ましくは1mol% 以下であり、より好ましくは0.1mol% 以下であり、さらに好ましくは0.01mol%以下である。
原料となるPEG部は、単分散または多分散PEG(単分散ポリエチレングリコールまたは多分散ポリエチレングリコール)である。
単分散PEGとは、日本国特許第6,638,970号明細書に示される通り、PEGの純度が90% 以上、かつ各不純物含量が2%以下である特徴をもつPEGであり、分子量分布を有さない単一の分子量のPEGである。多分散PEGとは、エチレングリコールの重合体であり、単分散PEGに対して分子量分布を有するPEGである。本発明における多分散PEGは、その分子量分布が、好ましくは1.2以下、さらに好ましくは1.1以下、最も好ましくは1.03以下である重合体である。本発明における多分散PEGとは、エチレングリコール、または酸化エチレンの重合反応により合成した化合物を指す。
PEGの分子量は、好ましくは100~100,000ダルトンであり、より好ましくは100~40,000ダルトンであり、一層好ましくは100~5,000ダルトンであり、さらに好ましくは100~2,000ダルトンである。分子量の小さいPEGでは、PEG自身が粘性液体であり、活性炭酸試薬をより多く溶解する可能性がある。これより本発明は、ろ過後の溶液に活性炭酸試薬が含まれやすい分子量の小さいPEGを用いた系においてより効果的である。
本発明により、末端にスクシンイミジル基またはp-ニトロフェニル基をもつPEGの活性炭酸エステルの製造が可能であるが、この末端官能基の数は1つに限らず2つ以上でもよい。ただし、末端官能基数は2つ以下であることが好ましい。
本発明により、末端にスクシンイミジル基またはp-ニトロフェニル基をもつPEGの製造が可能であるが、異なる末端には生体機能性分子に存在する官能基と反応して共有結合を形成する官能基、または炭化水素を有してもよい。共有結合を形成する官能基としてはマレイミド基、アジド基、ビオチン基、アセタールで保護されたアルデヒド基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基で保護されたアミノ基、t-ブトキシカルボニル基で保護されたアミノ基およびベンジルオキシカルボニル基で保護されたアミノ基のうちいずれか1つ以上を有してもよい。
活性炭酸エステル以外の反応性官能基を持つ、ポリエチレングリコールの活性炭酸エステルは、低分子化合物と生体分子を結合し効果の高い薬剤を作るためのリンカーとして有用である。例示的な構造として、直鎖構造のPEG部の片末端がマレイミド基、片末端が活性炭酸エステル基の場合、マレイミド側を抗体のチオール基と結合し、活性炭酸エステル側を低分子化合物と結合することで、PEG部を介して抗体と低分子化合物を結合することができる。
[PEGの活性炭酸エステルの製造方法]
以下の項目では、PEGの活性炭酸エステルの製法について示す。
本発明のPEGの活性炭酸エステルの製造方法は、
水と非混和である非プロトン性溶媒中、塩基の存在下で、ヒドロキシル基を有するポリエチレングリコールと、炭酸ジスクシンイミジルおよびp-ニトロフェニルクロロホルメートからなる群より選ばれた一種以上の活性炭酸試薬とを反応させることで、ポリエチレングリコールの活性炭酸エステルおよび未反応の前記活性炭酸試薬を含む組成物を得る工程(a)と、
前記工程(a)で得られた前記組成物をろ過することで前記活性炭酸試薬を一部除去した後、酸性官能基含有アルコールを添加して未反応の前記活性炭酸試薬と反応させた組成物を得る工程(b)と、
前記工程(b)で得られた前記組成物を水洗処理することで、前記酸性官能基含有アルコールと前記活性炭酸試薬との反応物、前記酸性官能基含有アルコールおよび前記活性炭酸試薬の分解物を除去する工程(c)と
を有する。
なお、工程(b)では、酸性官能基含有アルコールを添加して未反応の活性炭酸試薬と反応させる際に、活性炭酸エステル100mol%に対する活性炭酸試薬の含量を1mol%以下まで低減しておくことが好ましい。
本発明方法で原料として使用しているPEGは、式(9)~(14)に示されるような直鎖構造または分岐構造を持つPEGが好ましい。
Figure 2023133194000002
ただし、式(9)、式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)において、
Z1はヒドロキシル基であり、
Y1はそれぞれ生体機能性分子に存在する官能基と反応して共有結合を形成する官能基を少なくとも含む原子団であり、Z1と原子団Y1が含む前記官能基とは互いに異なる場合であり;
R1は炭素数1~7の炭化水素基または水素原子であり;
nは3~2300の整数であり;
mは1~1200の整数であり;
A1は-L1-(CH2)m1-、-L1-(CH2)m1-L2-(CH2)m2-または単結合を表し、L1はエーテル結合、アミド結合、ウレタン結合、2級アミノ基または単結合を表し、L2はエーテル結合、アミド結合またはウレタン結合を表し、m1およびm2はそれぞれ独立して1~5の整数を表し;および
B1は-L3-(CH2)m3-、-L3-(CH2)m3-L4-(CH2)m4-または単結合を表し、L3はアミド結合または単結合を表し、L4はエーテル結合、アミド結合またはウレタン結合を表し、m3およびm4はそれぞれ独立して1~5の整数を表す。
原料であるPEGは、1つ以上のヒドロキシル基を有するものである。1つのヒドロキシル基を有するPEGを原料とすると、1価の活性炭酸エステルが得られ、複数のヒドロキシル基を有するPEGを原料すると、2価以上の活性炭酸エステルが得られる。
反応性官能基を持つPEGの水酸基を活性炭酸エステル化する際に、元々持っている反応性官能基に影響しない製法は、不純物低減の観点において有用である。不利益を被る例示的な条件としては、マレイミド基を持つPEGを活性炭酸エステル化し、活性炭酸化試薬と水を反応させる場合、水と塩基が共存することで、系中に塩基性水溶液が存在することとなる。一方、マレイミド基は塩基性水溶液中で加水分解することが知られていることから、水を用いた製法では、製造中にマレイミド基が加水分解し、不純物である加水分解体が多く副生する可能性があるという点において不適である。
水と非混和である非プロトン性溶媒を構成する溶剤(以下、非プロトン性溶剤という)は、水および水溶液と混和しない溶剤を意味しており、水と当該溶剤の両方が混在した際、水層と溶剤層に分層するものである。例示的な溶剤は、トルエン、ベンゼン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素溶剤、クロロホルム、ジクロロメタンなどの塩素含有炭化水素溶剤などが挙げられる。PEGの溶解性および水との分層性の観点から、特にトルエン、クロロホルム、ジクロロメタンが好ましい。本発明における溶剤の必要条件は、PEGが溶解し、活性炭酸エステル化反応が進行し、酸性官能基含有アルコールが溶解し、水溶液と混和しない条件となる。一般的に反応溶剤として用いられる、メタノール、アセトニトリル、アセトンは、水、または水溶液と混和するという点より、不適である。
本製法における反応に使用される塩基は、無機塩基、有機塩基両方を意味する。ただし、使用している非プロトン性溶剤への溶解性という観点から、有機塩基が好ましい。有機塩基としてよく使用されているアミン化合物の中で、第一級アミン、第二級アミンは本反応にて製造される活性炭酸エステルと反応し不純物が副生する可能性があるため、第三級アミンがより好ましい。第三級アミンとして例示的な塩基は、トリエチルアミン、N-メチルモルホリン、N-フェニルモルホリン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、2,6-ルチジンなどである。
工程(a)において得られる組成物とは、ポリエチレングリコールの活性炭酸エステル、ヒドロキシル基を有するポリエチレングリコール、未反応の活性炭酸試薬、活性炭酸試薬の分解物、塩基、溶媒が混合している組成物である。
酸性官能基含有アルコールは、分子内に酸性官能基とヒドロキシル基をもつ化合物を意味し、好ましくは1~3個の酸性官能基、並びに好ましくは1~2個のヒドロキシル基を有する化合物である。酸性官能基はカルボキシル基、スルホ基、硝酸などであり、溶剤と水に対する溶解性の観点から、カルボキシル基が好ましい。酸性官能基の数は多いほど、水に対する溶解性は高くなるが、一方で溶剤に対する溶解性が悪くなり、過剰の活性炭酸試薬を消費できなくなる恐れがある。そのため酸性官能基の数は1~3個が好ましい。またヒドロキシル基の数が多くなりすぎると、酸性官能基含有アルコールと活性炭酸試薬との反応物の疎水性が高くなるため、水洗で当該反応物を除去できなくなる恐れがある。そのためヒドロキシル基の数は1~2個が好ましい。本発明における活性炭酸試薬の消費とは、反応しうる状態から反応を起こさない状態に変わることであり、酸性官能基含有アルコールはクエンチ剤として使用される。
酸性官能基含有アルコールの分子量は、溶剤と水に対する溶解性の観点から、好ましくは500以下であり、更に好ましくは100以上、200以下である。本発明における酸性官能基含有アルコールの必要条件は、使用溶剤に可溶であり、活性炭酸試薬と反応し、酸性官能基含有アルコール自身並びに活性炭酸試薬との複合体が水洗で除去可能な化合物である。考えられる類似構造として、カルボキシル基とヒドロキシル基とともに第3級アミンを持つビシンや、スルホ基とヒドロキシル基を持つHEPES(化学名:4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸) は溶剤への溶解性に乏しいという点より不適である。また特許文献1にて使用されている水は、本発明にて使用している溶剤とは混和しないことから、活性炭酸試薬の消費速度が遅くなるという点、並びに塩基の存在下に水を添加することにより系中に塩基性水溶液が生じ、活性炭酸エステルの純度を劣化させる可能性があるという点より、不適である。
クエンチ剤として使用する酸性官能基含有アルコールは、例示的な化合物としてグリコール酸、乳酸、3-ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシピバル酸、β-ヒドロキシイソ吉草酸、3-ヒドロキシ-3-メチル吉草酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、ヒドロキシ安息香酸などが挙げられ、中でもリンゴ酸、クエン酸、ヒドロキシ安息香酸が好ましく、クエン酸及び2-ヒドロキシ安息香酸(サリチル酸)がさらに好ましく、クエン酸が最も好ましい。酸性官能基含有アルコールは溶剤への溶解性、酸性官能基含有アルコールと活性炭酸試薬との複合体の水溶液の溶解性から適切な化合物を選定することが好ましい。
工程(b)で得られた組成物とは、ポリエチレングリコールの活性炭酸エステル、未反応の活性炭酸試薬、活性炭酸試薬の分解物、活性炭酸試薬と酸性官能基含有アルコールとの反応物、酸性官能基含有アルコール、塩基、溶媒が混合している組成物である。
水洗処理に使用する水および水溶液は、pHが0以上、7以下であり、中~酸性の水溶液を意味する。塩基性の水溶液は、活性炭酸エステルを分解し、化合物の純度低下につながるという点より不適である。このpHは5以下であることが好ましく、3以下であることが更に好ましい。pHが0以上、7以下の例示的な水溶液として、水および水溶液は、食塩水溶液、希塩酸、リン酸二水素ナトリウム水溶液およびその組み合わせからなる。水洗処理は、不純物の除去効率が高く、PEGの活性炭酸エステルがロスしない水溶液を選定することが好ましい。水洗処理は不純物の残存度合いによるが、1回に限らず複数回実施してもよい。
<実施例1>
ジクロロメタン(5.0g)中のマレイミド-PEG(2,000Da)-OH(Mw2,000、0.5g、250μmol)、DSC(128mg、500μmol)およびN-メチルモルホリン(83μL)の溶液を3時間、窒素下、室温で撹拌した。核磁気共鳴分析(以下、「NMR」と呼ぶ)により、得られたマレイミド-PEG-スクシイミジル(以下、「SC」と呼ぶ)は、マレイミド基のα位のメチレンの積分値を2としたときの、SC基のα位のメチレンの積分値が2.00となったことからSC化率100%であることを確認した(工程(a))。
不溶のDSCを濾別にて除去し、ろ液に0.5μmolの残留DSCが含まれていることを確認した。ろ液にクエン酸(48mg、250μmol)を添加し、1時間撹拌した結果、NMRよりマレイミド-PEG-SCのSC化率は100%であり、DSCが検出されない(0.02mol%以下)ことを確認した(工程(b))。
その後、ろ液を15重量%の並塩含有1N塩酸水溶液(pH0.1)で3回洗浄した。洗浄後の溶液をNMRにて分析した結果、マレイミド-PEG-SCのSC化率は100%のまま、N-メチルモルホリン、クエン酸、クエン酸ジスクシンイミジル炭酸エステル、DSCより遊離したN-ヒドロキシコハク酸イミドは検出されないことを確認した(いずれも1.0mol%以下)(以上、工程(c))。
洗浄後の溶液をpH2.5の飽和食塩水で1回洗浄し、硫酸マグネシウム(2.5g)を加え、乾燥、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、マレイミド-PEG-SCを得た。
<実施例2>
ジクロロメタン(1.3g)中のOH-EG12-OH(エチレングリコールユニット数12の単分散PEG、Mw547、200mg、366μmol)、DSC(281mg、1.1mmol)およびピリジン(132μL)の溶液を2時間、窒素下、室温で撹拌した。NMRにより、得られたSC-EG12-SCは、NMRにより、EG12のメチレンのうちSC基のα、β位のメチレンを除いた積分値の合計を44としたときの、SC基のα位のメチレンの積分値が4.00となったことからSC化率100%であることを確認した(工程(a))。
不溶のDSCを濾別にて除去し、ろ液に2.2μmolの残留DSCを含んでいることを確認した。ろ液にクエン酸(2.8mg、15μmol)を添加し、30分撹拌した結果、NMRによりSC-EG12-SCのSC化率は100%であり、残留DSCが検出されない(0.02mol%以下)ことを確認した(以上、工程(b))。
その後、ろ液を15重量%の並塩含有1N塩酸水溶液(pH0.1)で3回洗浄した。洗浄後の溶液をNMRで分析した結果、SC-EG12-SCのSC化率は100%のまま、ピリジン、クエン酸、クエン酸ジスクシンイミジル炭酸エステル、DSCより遊離したN-ヒドロキシコハク酸イミドは検出されない(いずれも1.0mol%以下)ことを確認した(以上、工程(c))。
洗浄後の溶液をpH2.5飽和食塩水で1回洗浄し、硫酸マグネシウム(100g)を加え、乾燥、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、SC-EG12-SCを得た。
<実施例3>
mPEG(2,000Da)-OH(Mw2,000、0.5g、250μmol)にトルエン(5.0g)を仕込み、110 ℃で還流脱水を行った。その後40℃に冷却し、p-ニトロフェニルクロロホルメート(p-NP-Cl)(84mg、667μmol)およびトリエチルアミン(84μL)の溶液を3時間、窒素下で撹拌した。薄層クロマトグラフィー(以下、「TLC」と呼ぶ)により、mPEG-OH量が検出されなかった(1.0mol%以下)ことから、得られたmPEG-p-ニトロフェニル(NP)は、NP化率99%以上であることを確認した(工程(a))。
不溶のp-NP-Clを、ろ過助剤を用いた濾別にて除去し、ろ液に56μmolの残留p-NP-Clが含まれていることを確認した。ろ液にサリチル酸(35mg、250μmol)を添加し、1時間撹拌した結果、NMRによりmPEG-NPのNP化率は99%以上のまま、p-NP-Clが検出されない(1.0mol%以下)ことを確認した(工程(b))。
その後、ろ液を15重量%の並塩含有1N塩酸水溶液(pH0.1)で3回洗浄し、さらに10重量%の食塩水(pH6)で6回洗浄した。洗浄後の溶液をNMRで分析した結果、NMRによりmPEG-NPのNP化率は99%以上のまま、トリエチルアミン、サリチル酸、サリチル酸-NP、p-NP-Clが分解したp-ニトロフェノールは検出されない(いずれも1.0mol%以下)ことを確認した(以上、工程(c) )。
洗浄後の溶液をpH2.5飽和食塩水で1回洗浄し、硫酸マグネシウム(0.5g)を加え、乾燥、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、mPEG-NPを得た。
<実施例4>
ジクロロメタン(65.5g)中の化合物(1)(Mw1299.5、3.6g、2.8mmol)、DSC (2.2g、8.4mmol)およびN-メチルモルホリン(987μL)の溶液を3時間、窒素下、室温で撹拌した。NMRにより、得られた化合物(2)は、PEGのメチレンのうち、SC基のα位のメチレンを除いた積分値合計を92としたときの、SC基のα位のメチレンの積分値が3.92となったことからSC化率98%であることを確認した(工程(a))。
不溶のDSCを濾別にて除去し、ろ液に0.3μmolの残留DSCが含まれていることを確認した。ろ液にクエン酸(48mg、250μmol)を添加し、1時間撹拌した結果、化合物(2)のSC化率は98% であり、DSCが検出されない(0.02mol%以下)ことを確認した(工程(b))。
その後、ろ液を15重量%の並塩含有1N塩酸水溶液(pH0.1)で3回洗浄した。洗浄後の溶液をNMRにて分析した結果、化合物(2)のSC化率は98% のまま、N-メチルモルホリン、クエン酸、クエン酸ジスクシンイミジル炭酸エステル、DSCより遊離したN-ヒドロキシコハク酸イミドは検出されない(いずれも1.0mol%以下)ことを確認した(以上、工程(c))。
洗浄後の溶液をpH2.5飽和食塩水で1回洗浄し、硫酸マグネシウム(65.5g)を加え、乾燥、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、化合物(2)を得た。
Figure 2023133194000003
Figure 2023133194000004
<実施例5>
ジクロロメタン(30g)中の化合物(3)(Mw1331.6、3.0g、2.25mol)に、p-ニトロフェニルクロロホルメート(p-NP-Cl)(908mg、4.5mol)およびN-フェニルモルホリン(919mg)の溶液を2時間、窒素下で撹拌した。TLC により、化合物(3)が検出されなかった(1.0mol%以下)ことから、得られた化合物(4)は、ニトロフェニル(NP)化率99%以上であることを確認した(工程(a))。
不溶のp-NP-Clを、ろ過助剤を用いた濾別にて除去し、ろ液に82μmolの残留p-NP-Clが含まれていることを確認した。ろ液にクエン酸(48mg、250μmol)を添加し、1時間撹拌した結果、化合物(4)のNP化率は100%のまま、p-NP-Clが検出されない(1.0mol%以下)ことを確認した(工程(b))。
その後、ろ液を15重量%の並塩含有1N塩酸水溶液(pH0.1)で3回洗浄し、さらに10重量%の食塩水(pH6)で6回洗浄した。洗浄後の溶液をNMRで分析した結果、化合物(4)のNP化率は100%のまま、トリエチルアミン、クエン酸、クエン酸-NP、p-NP-Clが分解したp-ニトロフェノールは検出されない(いずれも1.0%以下)ことを確認した(以上、工程(c))。

洗浄後の溶液をpH2.5飽和食塩水で1回洗浄し、硫酸マグネシウム(3g)を加え、乾燥、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、化合物(4)を得た。
Figure 2023133194000005
Figure 2023133194000006
<比較例1>
ジクロロメタン(5.0g)中のマレイミド-PEG(2,000Da)-OH(Mw2,000、0.5g、250μmol)、DSC(128mg、500μmol)およびN-メチルモルホリン(83μL)の溶液を3時間、窒素下、室温で撹拌した。NMRにより、得られたマレイミド-PEG-SCは、マレイミド基のα位のメチレンの積分値を2としたときの、SC基のα位のメチレンの積分値が2.00となったことからSC化率100%であることを確認した(工程(a))。
不溶のDSCを濾別にて除去し、ろ液に0.4μmolの残留DSCを含んでいることを確認した。イオン交換水(4.5μL、250μmol)を添加し、1時間撹拌した結果、NMRによりマレイミド-PEG-SCのSC化率は100%のままであったが、DSCは0.08μmol残存したことを確認した。
実施例1に記載したクエンチ剤としてクエン酸を用いると、1時間でDSCが残存しなかった。一方、比較例1ではクエンチ剤として水を用いた結果、DSCが残存した。これは、溶剤に水と混和しないジクロロメタンを用いているため、ジクロロメタンに溶解しているDSCと水の接触回数が低下し、DSCの分解速度が遅くなったためである。
<比較例2>
アセトニトリル(5.0g)中のマレイミド-PEG(2,000Da)-OH(Mw2,000、0.5g、250μmol)、DSC(128mg、500μmol)およびN-メチルモルホリン(83μL)の溶液を3時間、窒素下、室温で撹拌した。NMRにより、得られたマレイミド-PEG-SCは、マレイミド基のα位のメチレンの積分値を2としたときの、SC基のα位のメチレンの積分値が2.00となったことからSC化率100%であることを確認した(工程(a))。
20.5μmolの残留DSCを含む反応液に、イオン交換水(7μL、400μmol)を添加し、4時間撹拌した結果、NMRによりマレイミド-PEG-SCのSC化率は100%のまま、DSCが完全に消費されたことを確認した。その後、15重量%の並塩含有1N塩酸水溶液(pH0.1)を添加したところ、混和したため、不純物を除去することはできなかった。
アセトニトリルを溶剤として使用した比較例2では、水を用いてクエンチすることで、DSCは残存しなかった。しかし、クエンチ後、アセトニトリルと水が混和して、分層しないことから水洗することができず、各不純物を除去することができなかった。
<比較例3>
ジクロロメタン(5.0g)中のmPEG(1,500Da)-OH(Mw1,500、0.5g、333μmol)、DSC (171mg、667μmol)およびピリジン(81μL)の溶液を3時間、窒素下、室温で撹拌した。NMRにより、得られたmPEG-SCは、メトキシ基の積分値を3としたときの、SC基のα位のメチレンが2.00となったことから、SC化率100%であることを確認した。不溶のDSCを濾別にて除去し、NMRによりろ液に0.2μmolの残留DSCが含まれていることを確認した(工程(a))。
ろ液にビシン(54mg、333μmol)を添加し1 時間撹拌した結果、NMRによりmPEG-SCのSC化率は100%のままであったが、DSCは消費されずに残存したことを確認した。
比較例3においては、クエンチ剤としてビシンを用いたところ、ビシンがジクロロメタンに溶解せず、DSCを全て消費することはできなかった。
<比較例4>
ジクロロメタン(5.0g)中のmPEG(1,500Da)-OH(Mw1,500、0.5g、333μmol)、DSC(171mg、667μmol)およびN-ピリジン(81μL)の溶液を3時間、窒素下、室温で撹拌した。NMRにより、得られたmPEG-SCは、メトキシ基の積分値を3としたときの、SC基のα位のメチレンが2.00となったことから、SC化率100%であることを確認した。不溶のDSCを濾別にて除去し、NMRによりろ液に0.2μmolの残留DSCが含まれていることを確認した。ろ液にHEPES(化学名:4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)(79.4mg、333μmol)を添加し1時間撹拌した結果、NMRによりmPEG-SCのSC化率は100%のままであったが、DSCは消費されずに残存したことを確認した。
比較例4にてクエンチ剤としてHEPESを用いたところ、ジクロロメタンにHEPESが溶解せず、DSCを全て消費することはできなかった。
<比較例5>
ジクロロメタン(1.3g)中のOH-EG12-OH(エチレングリコールユニット数12の単分散PEG、Mw547、200mg、366μmol)、DSC(281mg、1.1mmol)およびピリジン(132μL)の溶液を2 時間、窒素下、室温で撹拌した。得られたSC-EG12-SCは、NMRにより、EG12のメチレンのうちSC基のα、β位のメチレンを除いた積分値の合計を44としたときの、SC基のα位のメチレンの積分値が4.00となったことからSC化率100%であることを確認した(工程(a))。
不溶のDSCを濾別にて除去し、濃縮することでSC-EG12-SCを得たが、NMRにより2.2μmol のDSCが不純物として残存していたことを確認した。
比較例5 にて、実施例2と同様の反応を実施することで、PEGの活性炭酸エステルSC-EG12-SCが得られたが、比較例5では、ろ過のみでDSCの除去を行っており、その結果DSCが不純物として残存していた。DSCはジクロロメタンにほとんど溶解しないため、ろ過で大半のDSCを除去できたが、DSCはSC-EG12-SCに溶解するため、ろ過時に一部のDSCはろ液側に残っていた。PEGへのDSCの溶解は、PEGの分子量が小さいものほど溶解量が多くなり、残存するDSCの量も顕著となった。
以上の実施例1~5の結果を表1に示し、比較例1~5の結果を表2に示した。
これらの結果から、実施例1~5では適切な溶剤並びにクエンチ剤を選択することができたため、多分散PEG、単分散PEGのいずれにおいても、不純物量1mol% 以下のポリエチレングリコールの活性炭酸エステルを製造することができた。一方、比較例1~5では、選択した溶剤とクエンチ剤が適切でなかったため、不純物量を1mol%以下に低減することができなかった。
Figure 2023133194000007
Figure 2023133194000008

Claims (11)

  1. ポリエチレングリコールの活性炭酸エステルを製造する方法であって、
    水と非混和である非プロトン性溶媒中、塩基の存在下で、ヒドロキシル基を有するポリエチレングリコールと、炭酸ジスクシンイミジルおよびp-ニトロフェニルクロロホルメートからなる群より選ばれた一種以上の活性炭酸試薬とを反応させることで、ポリエチレングリコールの活性炭酸エステルおよび未反応の前記活性炭酸試薬を含む組成物を得る工程(a)と、
    前記工程(a)で得られた前記組成物をろ過することで前記活性炭酸試薬を一部除去した後、酸性官能基含有アルコールを添加して未反応の前記活性炭酸試薬と反応させた組成物を得る工程(b)と、
    前記工程(b)で得られた前記組成物を水洗処理することで、前記酸性官能基含有アルコールと前記活性炭酸試薬との反応物、前記酸性官能基含有アルコールおよび前記活性炭酸試薬の分解物を除去する工程(c)と
    を有することを特徴とする、ポリエチレングリコールの活性炭酸エステルの製造方法。
  2. 前記活性炭酸エステルが以下の式(1)で表されることを特徴とする、請求項1記載のポリエチレングリコールの活性炭酸エステルの製造方法。

    PEG-O-(C=O)-O-R ・・・式(1)

    (式(1)中、
    PEGは直鎖構造または分岐構造を有するポリエチレングリコール部であり、
    Rはスクシンイミジル基またはp-ニトロフェニル基である。)
  3. 前記ポリエチレングリコールが多分散ポリエチレングリコールまたは単分散ポリエチレングリコールであることを特徴とする、請求項1または2記載のポリエチレングリコールの活性炭酸エステルの製造方法。
  4. 前記ポリエチレングリコールは100~100,000ダルトンの分子量を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリエチレングリコールの活性炭酸エステルの製造方法。
  5. 前記ポリエチレングリコールは複数のヒドロキシル基を有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリエチレングリコールの活性炭酸エステルの製造方法。
  6. 前記ポリエチレングリコールが、マレイミド基、アジド基、ビオチン基、メトキシ基、アセタールで保護されたアルデヒド基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基で保護されたアミノ基、t-ブトキシカルボニル基で保護されたアミノ基およびベンジルオキシカルボニル基で保護されたアミノ基からなる群より選ばれた一種以上の官能基を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリエチレングリコールの活性炭酸エステルの製造方法。
  7. 水と非混和である前記非プロトン性溶媒を構成する溶剤は、トルエン、クロロホルムおよびジクロロメタンからなる群より選ばれた一種以上の溶剤であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリエチレングリコールの活性炭酸エステルの製造方法。
  8. 前記酸性官能基含有アルコールが、グリコール酸、乳酸、3-ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシピバル酸、β-ヒドロキシイソ吉草酸、3-ヒドロキシ-3-メチル吉草酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸およびヒドロキシ安息香酸からなる群より選ばれることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリエチレングリコールの活性炭酸エステルの製造方法。
  9. 前記水洗処理を、pHが0以上、7以下である水または水溶液によって実施することを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリエチレングリコールの活性炭酸エステルの製造方法。
  10. ヒドロキシル基を有するポリエチレングリコールと、炭酸ジスクシンイミジルおよびp-ニトロフェニルクロロホルメートからなる群より選ばれた一種以上の活性炭酸試薬との反応物からなる、ポリエチレングリコールの活性炭酸エステルであって、
    前記活性炭酸エステル100mol%に対して、前記活性炭酸試薬、前記活性炭酸試薬の分解物、酸性官能基含有アルコール、および前記酸性官能基含有アルコールと前記活性炭酸試薬との反応物の含有量がそれぞれ1mol% 以下であることを特徴とする、ポリエチレングリコールの活性炭酸エステル。
  11. 前記活性炭酸エステルが以下の式(2)で表されることを特徴とする、請求項10に記載のポリエチレングリコールの活性炭酸エステル。

    PEG-O-(C=O)-O-R・・・式(2)

    (式(2)中、
    PEGは直鎖構造または分岐構造を有するポリエチレングリコール部であり、
    Rはスクシンイミジル基またはp-ニトロフェニル基である。)
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