JP2023128389A - ドープ、フィルム、及びフィルムの製造方法 - Google Patents

ドープ、フィルム、及びフィルムの製造方法 Download PDF

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Shinya Imoto
倫明 北村
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Abstract

【課題】本発明は、波長400nm付近の光透過抑制性に優れた紫外線吸収剤と、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体とを、光透過抑制性やフィルム外観に悪影響を与えることなく組み合わせる技術を提供することを目的とする。【解決手段】主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体と硫黄原子を含む紫外線吸収剤とを含むドープであって、紫外線吸収剤の含有量が、(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して、0.5質量部以上6質量部以下であるドープ。【選択図】なし

Description

本発明は、ドープ、フィルム、及びフィルムの製造方法に関するものである。特に、光学フィルム用のドープ、光学フィルム、光学フィルムの製造方法、及び有機エレクトロルミネセンス表示装置に関する。
近年、有機エレクトロルミネセンス(EL)表示装置(OLED)が、スマートフォン、ウェアラブル、ラップトップ、テレビ等の各種用途において広く用いられるようになってきている。有機EL表示装置においては、表示装置内の有機EL素子の劣化を抑制するために、有機EL素子の発光領域(430nmよりも長波長側)より短波長側の波長(380nm~430nm)の光の透過を抑制する必要があることが知られている(特許文献1)。このため、有機EL表示装置に用いる光学フィルムとしても、波長380nm~430nmの光の透過を抑制することが求められている。
光学フィルムの形成には、光学特性、機械的強度、成型加工性、表面硬度等の諸特性のバランスに優れることから(メタ)アクリル系重合体が好適に用いられている。前記(メタ)アクリル系重合体としては、耐熱性が良好なフィルムを形成可能な、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体が知られている。そして、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体を含む組成物からのフィルムの形成は、通常、溶融製膜法にて行われる(特許文献2)。
特開2020-139108号公報 特開2015-147356号公報
しかし、特許文献1で使用されるトリアジン系紫外線吸収剤と、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体とを用いて、特許文献2に開示されるように溶融製膜によりフィルムを形成したところ、波長380nm~430nm(特に、波長400nm)の光の透過を十分に抑制することができなかった。そこで、トリアジン系紫外線吸収剤を、波長380nm~430nmの光透過抑制性に優れた紫外線吸収剤に変えて同様にフィルムを形成したところ、紫外線吸収剤の使用量に見合う所望の光透過抑制性は得られず、また紫外線吸収剤がフィルム表面にブリードアウトすることにより、フィルムの外観不良や成形装置(フィルムロール等)の汚染等の問題が生じた。
本発明は上記のような事情に着目してなされたものであって、その目的は、波長400nm付近の光透過抑制性に優れた紫外線吸収剤と、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体とを、光透過抑制性やフィルム外観等に悪影響を与えることなく組み合わせる技術を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、溶融製膜法ではなく、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体と硫黄原子を含む紫外線吸収剤とを特定の割合で含むドープを用いる溶液製膜法によれば、優れた紫外線吸収特性を維持したフィルムを得られること、さらに好ましくは製膜時の紫外線吸収剤のブリードアウトや成形装置汚染等の問題も生じないこと、及びこうした技術は位相差の小さいフィルムにおいて特に有効であることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、以下の構成要件によって特定される。
[1] 主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体と硫黄原子を含む紫外線吸収剤とを含むドープであって、
紫外線吸収剤の含有量が、(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して、0.5質量部以上6質量部以下であるドープ。
[2] 前記紫外線吸収剤が、下記式(1)で表される化合物を含む[1]に記載のドープ。
Figure 2023128389000001
[式(1)中、Lは2価以上の連結基を表し、aは2以上の整数を表し、Aはそれぞれ独立して下記式(2)で示される基を表す。]
Figure 2023128389000002
[式(2)中、
1はシアノ基、アシル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、又はアミド基を表し、
2は水素原子、シアノ基、アシル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、アミド基、炭化水素基、又はヘテロアリール基を表し、
1とR2がともにアシル基、カルボン酸エステル基、又はアミド基である場合、R1とR2は互いに連結して環を形成していてもよく、
3は水素原子又はアルキル基を表し、
4は水素原子、有機基、又は極性官能基を表し、複数のR4は互いに同一又は異なっていてもよく、
*は式(1)の連結基Lとの結合部位を表す。]
[3] 前記(メタ)アクリル系重合体が主鎖に有する環構造が、ラクトン環構造、グルタルイミド構造、無水グルタル酸構造、無水マレイン酸構造、及びN-置換マレイミド構造からなる群から選ばれる少なくとも1種である[1]又は[2]に記載のドープ。
[4] [1]~[3]のいずれかに記載のドープを調製する工程と、調整したドープを支持体上に流延又は塗布後、乾燥する工程とを含むフィルムの製造方法。
[5] 主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体と紫外線吸収剤とを含むフィルムであって、
波長400nmの光透過率が15%以下であり、
波長589nmの光に対する面内位相差Reが10nm以下であり、且つ波長589nmの光に対する厚さ方向位相差Rthの絶対値が20nm以下であるフィルム。
[6] 内部ヘイズが1.0%以下である[5]に記載のフィルム。
[7] 前記紫外線吸収剤が、下記式(1)で表される化合物を含む[5]又は[6]に記載のフィルム。
Figure 2023128389000003
[式(1)中、Lは2価以上の連結基を表し、aは2以上の整数を表し、Aはそれぞれ独立して下記式(2)で示される基を表す。]
Figure 2023128389000004
[式(2)中、
1はシアノ基、アシル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、又はアミド基を表し、
2は水素原子、シアノ基、アシル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、アミド基、炭化水素基、又はヘテロアリール基を表し、
1とR2がともにアシル基、カルボン酸エステル基、又はアミド基である場合、R1とR2は互いに連結して環を形成していてもよく、
3は水素原子又はアルキル基を表し、
4は水素原子、有機基、又は極性官能基を表し、複数のR4は互いに同一又は異なっていてもよく、
*は式(1)の連結基Lとの結合部位を表す。]
[8] 前記(メタ)アクリル系重合体が主鎖に有する環構造が、ラクトン環構造、グルタルイミド構造、無水グルタル酸構造、無水マレイン酸構造、及びN-置換マレイミド構造からなる群から選ばれる少なくとも1種である[5]~[7]のいずれかに記載のフィルム。
[9] [5]~[8]のいずれかに記載のフィルムを含む有機エレクトロルミネセンス表示装置。
本発明によれば、優れた紫外線吸収特性を維持したフィルムを得ることができ、さらに好ましくは製膜時の紫外線吸収剤のブリードアウトや成形装置汚染等の問題も抑制できる。また紫外線吸収特性に優れた、位相差の小さいフィルムを提供することが可能である。
1. ドープ
ドープとは、溶液製膜法によりフィルムに成形される樹脂溶液のことである。
本発明のドープは、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体と硫黄原子を含む紫外線吸収剤とを含み、紫外線吸収剤の含有量が(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して0.5質量部以上6質量部以下であることに特徴を有する。
1.1 (メタ)アクリル系重合体
本発明のドープが含有する(メタ)アクリル系重合体は、主鎖に環構造を有する。主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体は、ガラス転移温度(Tg)が高く、例えば110℃以上である。このため、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体を含有するドープによれば、耐熱性に優れたフィルムを形成することができる。
(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、又はこれらの誘導体(以下、これらを総称して(メタ)アクリル系モノマーと称する場合がある)を単量体単位として有する重合体を意味する。
なお、本発明において特に記載がない限り、「(メタ)アクリル酸」はアクリル酸又はメタクリル酸を意味し、「C3-12」は「炭素数3以上12以下」を意味する。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸アルキル;(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アラルキル(好ましくはメタクリル酸C2-20アラルキル);(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸とヒドロキシ環状飽和炭化水素(好ましくは炭素数が5以上20以下のヒドロキシ環状飽和炭化水素)とのエステル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、好ましくはメタクリル酸エステルであり、より好ましくはメタクリル酸アルキルであり、さらに好ましくはメタクリル酸C1-10アルキルであり、よりさらに好ましくはメタクリル酸C1-7アルキルであり、いっそう好ましくはメタクリル酸C1-4アルキルであり、特に好ましくはメタクリル酸C1-2アルキルである。
(メタ)アクリル酸エステル誘導体としては、ヒドロキシ基導入誘導体、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6-ペンタヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5-テトラヒドロキシペンチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;α-(1-ヒドロキシアルキル)アクリル酸アルキル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルとしては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシC1-20アルキルが好ましく、(メタ)アクリル酸ヒドロキシC1-15アルキルがより好ましく、(メタ)アクリル酸ヒドロキシC1-10アルキルがさらに好ましく、(メタ)アクリル酸ヒドロキシC1-5アルキルがよりさらに好ましい。
α-(1-ヒドロキシアルキル)アクリル酸アルキルとしては、α-(1-ヒドロキシC1-20アルキル)アクリル酸C1-20アルキルが好ましく、α-(1-ヒドロキシC1-20アルキル)アクリル酸C1-20アルキルには、α-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、α-(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、α-(ヒドロキシメチル)アクリル酸イソプロピル、α-(ヒドロキシメチル)アクリル酸n-ブチル、α-(ヒドロキシメチル)アクリル酸t-ブチル等のα-(ヒドロキシメチル)アクリル酸C1-20アルキル;α-(1-ヒドロキシエチル)アクリル酸メチル等のα-(1-ヒドロキシC2-20アルキル)アクリル酸C1-20アルキル等が含まれる。
また(メタ)アクリル酸エステル誘導体としては、クロトン酸メチル等のβ-C1-10アルキルアクリル酸C1-10アルキル;(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2-クロロエチル等のハロゲン導入誘導体;(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチル等のエーテル結合導入誘導体等も含まれる。
(メタ)アクリル酸エステル誘導体としては、好ましくはヒドロキシ基導入誘導体であり、より好ましくはα-(1-ヒドロキシアルキル)アクリル酸アルキルであり、さらに好ましくはα-(1-ヒドロキシC1-20アルキル)アクリル酸C1-20アルキルであり、よりさらに好ましくはα-(ヒドロキシメチル)アクリル酸C1-20アルキルである。
(メタ)アクリル酸誘導体としては、前記メタクリル酸エステル誘導体のエステル結合を加水分解した化合物、例えば、クロトン酸、α-(ヒドロキシメチル)アクリル酸、2-(1-ヒドロキシエチル)アクリル酸等のα-ヒドロキシアルキルアクリル酸等が含まれる。
(メタ)アクリル系重合体が単量体単位として有する(メタ)アクリル系モノマーは、単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。(メタ)アクリル系モノマーのうち(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステルを必須単位として含むのが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル(特にメタクリル酸エステル)を必須単位として含むのがより好ましい。前記必須単位の含有割合は、(メタ)アクリル系重合体中、例えば、30質量%以上、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは55質量%以上、よりさらに好ましくは60質量%以上、特に好ましくは65質量%以上であり、例えば、97質量%以下、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下である。
なお、(メタ)アクリル系重合体における各構成単位の含有割合は、(メタ)アクリル系重合体を重溶媒に溶解させ、1H-NMRを測定して各構成単位に対応するピーク面積比を算出することで求められる。
(メタ)アクリル重合体が主鎖に有する環構造としては、ラクトン環構造、グルタルイミド構造、無水グルタル酸構造、無水マレイン酸構造、及びN-置換マレイミド構造からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
なお、主鎖に環構造を有するとは、環構造を形成する炭素原子の少なくとも1つが、(メタ)アクリル系重合体の主鎖に含まれる態様を意味する。
前記ラクトン環構造は、例えば、4員環以上8員環以下であり、環構造の安定性に優れることから5員環又は6員環であることが好ましく、(メタ)アクリル系重合体の主鎖に環構造を形成する炭素原子が2つ以上含まれる場合は6員環であることがより好ましく、(メタ)アクリル系重合体の主鎖に環構造を形成する炭素原子が1つ含まれる場合には5員環であることが好ましい。ラクトン環構造を有する単位としては、例えば、下記式(1X)に示される構造単位や下記式(11X)に示される構造単位が挙げられる。
Figure 2023128389000005
上記式(1X)において、R1a、R2a及びR3aは、互いに独立して、水素原子又は炭素数が1以上20以下の有機残基であり、当該有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。
式(1X)における有機残基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数が1以上20以下の飽和脂肪族炭化水素基(アルキル基等)、エテニル基、プロペニル基等の炭素数が2以上20以下の不飽和脂肪族炭化水素基(アルケニル基等)、フェニル基、ナフチル基等の炭素数が6以上20以下の芳香族炭化水素基(アリール基等)、これら飽和脂肪族炭化水素基、不飽和脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基における水素原子の一つ以上が、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エーテル基及びエステル基から選ばれる少なくとも1種の基により置換された基等が挙げられ、アルキル基が好ましい。
Figure 2023128389000006
上記式(11X)におけるR11a、R12a、R13a及びR14aは、互いに独立して、水素原子又は炭素数が1以上18以下の炭化水素基であり、Xaは-(CR11a12a)-と-(CR13a14a)-とを結ぶ単結合、又は-(CR15a16a)-であり、R15a、R16aは、互いに独立して、水素原子又は炭素数が1以上18以下の炭化水素基である。
式(11X)において、Xaが単結合の場合、式(11X)に示される構造単位は5員環のラクトン環構造を有する態様であり、Xaが-(CR15a16a)-の場合、式(11X)に示される構造単位は6員環のラクトン環構造を有する態様となる。
式(11X)における炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数が1以上18以下の飽和脂肪族炭化水素基(アルキル基等)、エテニル基、プロペニル基等の炭素数が2以上18以下の不飽和脂肪族炭化水素基(アルケニル基等)、フェニル基、ナフチル基等の炭素数が6以上18以下の芳香族炭化水素基(アリール基等)が挙げられ、アルキル基が好ましく、炭素数1以上10以下のアルキル基がより好ましい。
前記無水グルタル酸構造又は前記グルタルイミド構造を有する単位としては、例えば、下記式(2X)に示される構造単位が挙げられる。下記式(2X)において、X1が酸素原子である場合には無水グルタル酸構造を有する態様となり、X1が窒素原子である場合にはグルタルイミド構造と有する態様となる。
Figure 2023128389000007
上記式(2X)におけるR4a、R5aは、互いに独立して、水素原子又はメチル基であり、X1は酸素原子又は窒素原子である。X1が酸素原子であるとき、R6aは存在せず、X1が窒素原子のとき、R6aは、水素原子、炭素数が1以上6以下の直鎖アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基)、シクロペンチル基、シクロヘキシル基又はフェニル基である。
前記無水マレイン酸構造又は前記N-置換マレイミド構造を有する単位としては、例えば、下記式(3X)に示される構造が挙げられる。下記式(3X)において、X2が酸素原子である場合には無水マレイン酸構造を有する態様となり、X2が窒素原子である場合にはN-置換マレイミド構造を有する態様となる。
Figure 2023128389000008
上記式(3X)におけるR7a、R8aは、互いに独立して、水素原子又はメチル基であり、X2は酸素原子又は窒素原子である。X2が酸素原子であるとき、R9aは存在せず、X2が窒素原子のとき、R9aは、水素原子、炭素数が1以上6以下の直鎖アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基)、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基又はフェニル基である。
(メタ)アクリル系重合体が主鎖に有する環構造の含有割合は、(メタ)アクリル系重合体中、例えば、1質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、例えば、70質量%以下、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは45質量%以下である。(メタ)アクリル系重合体が主鎖に有する環構造の含有割合が前記範囲内であれば、重合体の耐熱性を向上させながら、フィルムの位相差も良好とできるため好ましい。なお、環構造の質量は、環の構成元素と当該構成元素に結合する主鎖以外の基との合計質量を意味する。例えば、上記式(1X)に示される構造単位においては、環の構成元素としての5つの炭素元素と1つの酸素元素、及び環の構成元素に結合する主鎖以外の基としての-R1a、-COOR2a、-R3a、=O、及び3つの-Hの合計質量が環構造の質量を意味する。
(メタ)アクリル系重合体が主鎖に有する環構造は、例えば、下記(i)又は(ii)の方法で導入することが可能である。
(i) (メタ)アクリル系モノマーと、共重合により主鎖に環構造を形成可能なモノマーとを共重合することにより導入
(ii) (メタ)アクリル酸系モノマーを含む単量体組成物を重合した後に、環化反応することにより導入
前記共重合により主鎖に環構造を形成可能なモノマーとしては、例えば、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル等のマレイン酸系モノマー;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系モノマー;α-メチレン-γ-ブチロラクトン、α-メチレン-4-メチル-γ-ブチロラクトン、α-メチレン-3-メチル-γ-ブチロラクトン、α-メチレン-4,4-ジメチル-γ-ブチロラクトン、α-メチレン-δ-バレロラクトン等のラクトン環含有モノマー;等が挙げられる。
前記マレイン酸系モノマーを用いれば、(メタ)アクリル系樹脂の主鎖に無水マレインに由来する構造を導入することができ、前記マレイミド系モノマーを用いれば、(メタ)アクリル系樹脂の主鎖にN-置換マレイミドに由来する構造を導入することができ、前記ラクトン環含有モノマーを用いれば、主鎖に(メチレン)ラクトン環構造を導入することができる。
(i)の方法で環構造を導入する場合、共重合により主鎖に環構造を形成可能なモノマーは、(メタ)アクリル系重合体中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、例えば、70質量%以下、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
(ii)の方法で環構造を導入する方法としては、例えば、下記(ii-1)~(ii-3)の方法が挙げられる。
(ii-1) α-(1-ヒドロキシアルキル)アクリル酸アルキル等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリル系モノマーAを単独重合して、又は前記ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル系モノマーAと、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリル系モノマーBとを共重合して分子鎖にヒドロキシ基とエステル基又はカルボキシル基とを導入した後、これらヒドロキシ基とエステル基又はカルボキシル基との間で脱アルコール又は脱水環化縮合を生じさせることによりラクトン環構造を導入する
(ii-2) (メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸との共重合体において、分子内で脱アルコール環化縮合を生じさせることにより無水グルタル酸構造を導入する
(ii-3) (メタ)アクリル酸エステル重合体において、メチルアミン等のイミド化剤によりイミド化を生じさせることによりグルタルイミド構造を導入する
(ii-1)の方法で環構造を導入する場合、前記ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル系モノマーAとしては、前述の(メタ)アクリル酸エステル誘導体としてのヒドロキシ基導入誘導体が挙げられ、その好ましい態様も同様である。また前記(メタ)アクリル系モノマーBとしては、前述の(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルが挙げられ、その好ましい態様も同様である。ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル系モノマーAと(メタ)アクリル系モノマーBとを共重合する場合、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル系モノマーAの含有割合は、(メタ)アクリル系モノマーB100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは5質量部以上、より好ましくは8質量部以上、さらに好ましくは10質量部以上であり、例えば、50質量部以下、好ましくは40質量以下、より好ましくは30質量以下である。
(メタ)アクリル系重合体は、前記(メタ)アクリル系モノマー及び共重合により主鎖に環構造を形成可能なモノマー以外の他のモノマーを共重合することによって導入される構成単位を有していてもよい。このような他のモノマーとしては、重合性二重結合を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、α-ヒドロキシメチルスチレン、α-ヒドロキシエチルスチレン等のスチレン系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル等のフマル酸系モノマー;N-ビニルピロリドン、N-ビニルカルバゾール等の含窒素複素環系ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類;メタリルアルコール、アリルアルコール等のビニルアルコール類;エチレン、プロピレン、4-メチル-1-ペンテン等のオレフィン類;2-ヒドロキシメチル-1-ブテン;メチルビニルケトン;等が挙げられる。他のモノマーとしては、スチレン系モノマー、含窒素複素環系ビニル化合物が好ましく、スチレン系モノマーがより好ましい。他のモノマーとしては、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。他のモノマーとしてスチレン系モノマー等の側鎖に環構造を有するモノマーを用いることにより、フィルムの位相差を良好とすることも可能である。また環構造を有さないモノマーも、位相差の調節に適宜使用できる。
他のモノマーは、(メタ)アクリル系重合体中、例えば、0質量%以上、好ましくは1質量%以上であり、例えば、50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、よりさらに好ましくは5質量%以下である。
(メタ)アクリル系重合体の全構成単位における、(メタ)アクリル系モノマーに由来する構成単位(すなわち、(メタ)アクリル酸単位、(メタ)アクリル酸エステル単位、及びこれらの誘導体単位に由来する構成単位)の合計含有割合は、フィルムの透明性の点から、40質量%以上が好ましく、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは55質量%以上、よりさらに好ましくは60質量%以上である。上限としては、例えば、100質量%以下である。
(メタ)アクリル系重合体の製造方法としては、塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合のいずれでもよいが、安全性が高く、異物混入の恐れが低い点で、溶液重合が好ましい。また、重合制御の容易性の点で、モノマーを分散安定剤の存在下で懸濁重合することも好ましい。
重合反応後に環化反応を行う場合、環化反応は、環化触媒の存在下で行うことが好ましい。環化触媒としては、酸、塩基及びそれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。酸、塩基及びそれらの塩は有機物であっても無機物であってもよく、特に限定されない。なかでも、環化反応の触媒としては、有機リン化合物、又はアルカリ金属を有する化合物を用いることが好ましい。有機リン化合物、アルカリ金属を有する化合物を環化触媒として用いることにより、環化縮合反応を効率的に行うことができるとともに、得られるドープの着色を低減することができる。
溶液重合反応後(必要により環化反応後)は、脱揮工程を含む後処理を行うことが好ましい。
脱揮工程とは、溶媒、残存モノマー等の揮発分を除去する処理工程をいう。脱揮が不十分であると、(メタ)アクリル系重合体中の残存揮発分が多く、成形時に発泡が生じて成形不良となる恐れがある。
脱揮に使用する装置は特に限定されないが、例えば、オートクレーブ、釜型反応器、熱交換器と脱揮槽とからなる装置、ベント付押出機等が使用でき、乾燥機を使用してもよい。
脱揮にベント付押出機を用いる場合、押出機は、シリンダと、シリンダ内に設けられたスクリューとを有し、加熱手段を備えていることが好ましい。シリンダには、ベントが1つ又は複数設けられていることが好ましく、ベントは、押出機内の移送方向に対して、少なくとも原料投入部の下流側に設けられることがより好ましく、原料投入部の上流側にも設けられてもよい。押出機内に供給された重合体を、スクリューで混練しながら押出機の上流側から下流側へ移送される過程で脱揮が進む。押出機の下流側にはダイスが設けられていることが好ましく、ダイスから重合体を吐出することにより、所定の形状に成形することができる。例えば、棒状に成形された重合体を細かく切断すれば、ペレットを製造することができる。また押出機のダイス部には、ポリマーフィルターが設けられることが好ましい。
脱揮処理温度は、150℃~350℃の範囲が好ましく、200℃~300℃の範囲がより好ましい。脱揮処理温度が150℃より低いと、脱揮が不充分となり残存揮発分が多くなるという問題があり、350℃より高いと、着色や分解が起こるという問題があるために好ましくない。脱揮処理時の減圧度は、13.3hPa以上(例えば、13.3hPa~800hPa程度)が好ましい。
懸濁重合反応後は、(メタ)アクリル系重合体を含有する懸濁液を固液分離することにより、(メタ)アクリル系重合体を粒子(粉体)として回収することが好ましい。固液分離の方法としては、濾過、遠心分離、噴霧乾燥等による液体の乾燥、及びそれらの組み合わせから最適な方法を選択でき、必要に応じて凝集剤を用いてもよい。また、固液分離した(メタ)アクリル系重合体の粒子は、熱風乾燥機等の乾燥機を用いて乾燥することが好ましい。
本発明のドープは、本発明による効果を損なわない範囲で、上記の主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体以外のその他の重合体を含んでいてもよい。
その他の重合体としては、例えば、主鎖に環構造を有さない(メタ)アクリル系重合体;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン重合体、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)等のオレフィン系重合体;塩化ビニル、塩素化ビニル樹脂等の含ハロゲン系重合体;ポリスチレン、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体等のスチレン系重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610等のポリアミド;ポリアセタール;ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリオキシペンジレン;ポリアミドイミド;シクロオレフィンポリマー;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースプピオネート等のセルロース誘導体;ポリブタジエン系ゴム、アクリル系ゴム等の弾性有機微粒子;(メタ)アクリル系ゴムを配合したABS樹脂やASA樹脂等のゴム質重合体;等が挙げられる。特に環構造を有さない重合体や側鎖に環構造を有する重合体は、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体を含むフィルムにおいて位相差を調整可能であるため、これら他の重合体の含有割合を適宜制御することによって、得られるフィルムの位相差を小さくすることが可能である。
ドープ中において、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体以外の重合体の合計含有量は、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して、100質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましく、5質量部以下がよりさらに好ましく、0質量部であってもよい。
主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)としては、例えば、8.0万以上、好ましくは10.0万以上、より好ましくは10.5万以上、さらに好ましくは11.0万以上であり、例えば、50万以下、好ましくは40.0万以下、より好ましくは35.0万以下である。主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量が前記範囲内にあることにより、フィルムとして必要な強度を維持しながら、成形時の流動性も良好なドープを得ることができる。
主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体の数平均分子量(Mn)は、例えば、3.0万以上、好ましくは3.5万以上、より好ましくは4.0万以上であり、例えば、25.0万以下、好ましくは22.5万以下、より好ましくは20.0万以下である。主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体の数平均分子量が前記範囲内にあることにより、フィルムとして必要な強度を維持しながら、成形時の流動性も良好なドープを得ることができる。
主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体は、110℃以上にガラス転移温度を有することが好ましい。110℃以上にガラス転移温度を有することにより、耐熱性に優れるものである。主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体は、110℃以上にガラス転移温度を複数有していてもよい。主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体が有するガラス転移温度は、より好ましくは115℃以上であり、さらに好ましくは120℃以上である。成形時の加工性を高める観点からは、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体が有するガラス転移温度は、300℃未満が好ましく、200℃以下がより好ましく、180℃以下がさらに好ましい。
主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体が有するガラス転移温度(Tg)は、JIS K7121の規定に準拠して、始点法により求めることができる。
1.2 紫外線吸収剤
本発明のドープが含有する紫外線吸収剤は、硫黄原子を含む。硫黄原子を含む紫外線吸収剤としては、硫黄原子を含むことにより、紫外~紫色領域にシャープな吸収ピークを示し、また波長380nm~430nmの光の透過抑制性にも優れ、特に波長400nm付近の光の透過抑制性に優れる紫外線吸収剤が好ましい。
本発明の硫黄原子を含む紫外線吸収剤としては、例えば、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2023128389000009
[式(1)中、Lは2価以上の連結基を表し、aは2以上の整数を表し、Aはそれぞれ独立して下記式(2)で示される基を表す。]
Figure 2023128389000010
[式(2)中、
1はシアノ基、アシル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、又はアミド基を表し、
2は水素原子、シアノ基、アシル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、アミド基、炭化水素基、又はヘテロアリール基を表し、
1とR2がともにアシル基、カルボン酸エステル基、又はアミド基である場合、R1とR2は互いに連結して環を形成していてもよく、
3は水素原子又はアルキル基を表し、
4は水素原子、有機基、又は極性官能基を表し、複数のR4は互いに同一又は異なっていてもよく、
*は式(1)の連結基Lとの結合部位を表す。]
式(2)で表される基Aにおいて、R1(又はR2)はR3に対して、シス位にあってもよく、トランス位にあってもよい。
1及びR2のアシル基(アルカノイル基)としては、メタノイル基、エタノイル基、プロパノイル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ペンタデカノイル基、ヘキサデカノイル基、ヘプタデカノイル基、オクタデカノイル基、ノナデカノイル基、エイコサノイル基等が挙げられる。アシル基は、水素原子の一部が、アリール基、アルコキシ基、ハロゲノ基、水酸基等で置換されていてもよい。前記アシル基中のアルキル基は、直鎖状であってもよく分岐状であってもよい。アシル基の炭素数(置換基を除く炭素数)は、2~21が好ましく、より好ましくは2~11であり、さらに好ましくは2~6である。
1及びR2のカルボン酸エステル基は、式:*-C(=O)-O-R11で表され、*は式(2)のエチレン二重結合の炭素原子への結合部位を表す。当該式中、R11は炭化水素基を表し、好ましくはアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。
11のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等の直鎖状又は分岐状のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等の環状(脂環式)アルキル基等が挙げられる。アルキル基は、水素原子の一部が、アルコキシ基、アリール基、シアノ基、ハロゲノ基、水酸基、ニトロ基等で置換されていてもよい。アルキル基の炭素数(置換基を除く炭素数)は1~20が好ましく、具体的には、直鎖状又は分岐状のアルキル基であれば炭素数1~20が好ましく、より好ましくは1~10であり、さらに好ましくは1~5であり、環状のアルキル基であれば炭素数4~10が好ましく、5~8がより好ましい。
11のアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、インデニル基等が挙げられる。アリール基は、水素原子の一部が、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲノ基、水酸基、ニトロ基等で置換されていてもよい。アリール基の炭素数(置換基を除く炭素数)は、6~20が好ましく、より好ましくは6~12である。
11のアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。アラルキル基に含まれるアリール基は、水素原子の一部が、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲノ基、水酸基、ニトロ基等で置換されていてもよい。アラルキル基の炭素数(置換基を除く炭素数)は、7~25が好ましく、より好ましくは7~15である。
1及びR2のアミド基は、式:*-C(=O)-NR1213で表され、*は式(2)のエチレン二重結合の炭素原子への結合部位を表す。当該式中、R12は水素原子又はアルキル基を表す。R13は炭化水素基を表し、好ましくはアルキル基、アシル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。R12とR13のアルキル基、R13のアシル基とアリール基とアラルキル基の具体例は、上記のR11のアルキル基、アリール基、アラルキル基、及びR1とR2のアシル基の説明が参照される。
1とR2がともにアシル基である場合、R1とR2は互いに連結して環を形成していてもよく、この場合のR1とR2から形成される基としては、式:*-C(=O)-R14-C(=O)-*で表される基が示される。当該式中、R14は直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し、*は式(2)のエチレン二重結合の炭素原子への結合部位を表す。アルキレン基は、水素原子の一部が、アリール基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲノ基、水酸基、ニトロ基等で置換されていてもよい。R14のアルキレン基の炭素数(置換基を除く炭素数)は、2~10が好ましく、3~8がより好ましい。R1とR2のアシル基が互いに連結することにより形成される基(環状基)としては、例えば、下記式(3-1)に示される基が挙げられる。
1とR2がともにカルボン酸エステル基である場合、R1とR2は互いに連結して環を形成していてもよく、この場合のR1とR2から形成される基としては、式:*-C(=O)-O-R15-O-C(=O)-*で表される基が示される。当該式中、R15は直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し、*は式(2)のエチレン二重結合の炭素原子への結合部位を表す。アルキレン基は、水素原子の一部が、アリール基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲノ基、水酸基、ニトロ基等で置換されていてもよい。R15のアルキレン基の炭素数(置換基を除く炭素数)は1~8が好ましく、1~6がより好ましい。R1とR2のカルボン酸エステル基が互いに連結することにより形成される基(環状基)としては、例えば下記式(3-2)に示される基が挙げられる。
1とR2がともにアミド基である場合、R1とR2は互いに連結して環を形成していてもよく、この場合のR1とR2から形成される基としては、式:*-C(=O)-NR16-R17-NR18-C(=O)-*で表される基が示される。当該式中、R16とR18は、水素原子又は炭化水素基を表し、R17は直鎖状または分岐状のアルキレン基、又はカルボニル基を表し、*は式(2)のエチレン二重結合の炭素原子への結合部位を表す。R16とR18の炭化水素基としては、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基が好ましく挙げられる。R16とR18のアルキル基とアリール基とアラルキル基の具体例は、上記のR11のアルキル基、アリール基およびアラルキル基の説明が参照される。R17のアルキレン基は、水素原子の一部が、アリール基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲノ基、水酸基、ニトロ基等で置換されていてもよい。R17のアルキレン基の炭素数(置換基を除く炭素数)は1~8が好ましく、1~6がより好ましい。R1とR2のアミド基が互いに連結することにより形成される基(環状基)としては、例えば、下記式(3-3)と式(3-4)に示される基が挙げられる。
Figure 2023128389000011
1のハロゲノアルキル基としては、上記に説明したR11のアルキル基の水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置き換わったものが挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
2の炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基(アリール基)が挙げられる。脂肪族炭化水素基は、飽和と不飽和のいずれであってもよく、また直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。脂肪族飽和炭化水素基の具体例は、上記のR11のアルキル基に関する説明が参照され、脂肪族不飽和炭化水素基の具体例は、上記に説明したR11のアルキル基の炭素-炭素単結合の一部が二重結合または三重結合に置き換わったものが挙げられる。芳香族炭化水素基(アリール基)の具体例は、上記のR11のアリール基に関する説明が参照される。R2の炭化水素基としては、アリール基が好ましい。
2のヘテロアリール基としては、チエニル基、チオピラニル基、イソチオクロメニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラリジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、フラニル基、ピラニル基等が挙げられる。なおヘテロアリール基は、炭素原子が式(2)のエチレン二重結合の炭素原子に結合していることが好ましく、ヘテロ原子に隣接する炭素原子が式(2)のエチレン二重結合の炭素原子に結合していることがより好ましく、これにより化合物の合成が容易になる。ヘテロアリール基の炭素数は、3~18が好ましく、より好ましくは4~12である。
式(2)において、R2は水素原子、シアノ基、アシル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、又はアミド基であることが好ましく、これにより、紫外~紫色領域の光を効果的に吸収しやすくなる。また波長380nm~430nmの光を効果的に吸収しやすくする点から、R2は水素原子ではない、つまりシアノ基、アシル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、又はアミド基であることが好ましい。
式(2)において、R1及びR2は、それぞれ独立に、アシル基、カルボキシル基、又はカルボン酸エステル基であることが好ましい。
式(2)のR3は水素原子又はアルキル基を表し、アルキル基の具体例は、上記のR11のアルキル基に関する説明が参照される。R3のアルキル基は、好ましくは炭素数1~3であり、より好ましくは炭素数1~2である。R3としては水素原子が特に好ましい。
式(2)で表される基Aにおいて、エチレン構造部に結合したベンゼン環は、当該ベンゼン環に結合した硫黄原子とともにエチレン構造部に電子を供与するように機能する。当該ベンゼン環に結合するR4は水素原子、有機基、又は極性官能基を表し、複数のR4は互いに同一または異なっていてもよい。
式(2)のR4の有機基としては、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アルキルスルフィニル基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールオキシカルボニル基、アリールスルホニル基、アリールスルフィニル基、ヘテロアリール基、アミノ基、アミド基、スルホンアミド基、カルボキシ基(カルボン酸基)、シアノ基等が挙げられる。R4の極性官能基としては、ハロゲノ基、水酸基、ニトロ基、スルホ基(スルホン酸基)等が挙げられる。
4のアルキル基の具体例は、上記のR11のアルキル基に関する説明が参照される。R4のアルキル基は置換基を有していてもよく、当該アルキル基が有する置換基としては、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲノ基、水酸基、カルボキシ基、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基等が挙げられる。
4のアルコキシ基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アルキルスルフィニル基に含まれるアルキル基の具体例は、R4のアルキル基に関する説明が参照される。
4のアリール基とアラルキル基の具体例は、上記のR11のアリール基とアラルキル基に関する説明が参照される。R4のアリール基或いはアラルキル基に含まれるアリール基は置換基を有していてもよく、当該置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ヘテロアリール基、ハロゲノ基、ハロゲノアルキル基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、チオシアネート基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基等が挙げられる。
4のアリールオキシ基、アリールチオ基、アリールオキシカルボニル基、アリールスルホニル基、アリールスルフィニル基に含まれるアリール基の具体例は、R4のアリール基に関する説明が参照される。
4のヘテロアリール基の具体例は、上記のR2のヘテロアリール基に関する説明が参照される。ヘテロアリール基は置換基を有していてもよく、ヘテロアリール基が有する置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ハロゲノ基、ハロゲノアルキル基、水酸基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、チオシアネート基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基等が挙げられる。
4のアミノ基としては、式:-NR2122で表され、R21およびR22がそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基であるもの等が挙げられる。アルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基の具体例は上記の説明が参照され、アルケニル基とアルキニル基としては、上記に説明したアルキル基の炭素-炭素単結合の一部が二重結合または三重結合に置き換わった置換基が挙げられ、これらの置換基は水素原子の一部がハロゲン原子によって置換されていてもよい。また、R21とR22は互いに連結して環を形成していてもよい。
4のアミド基としては、式:-NH-C(=O)-R23で表され、R23がアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基であるもの等が挙げられる。アルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基の具体例は上記の説明が参照され、水素原子の一部がハロゲン原子によって置換されていてもよい。
4のスルホンアミド基としては、式:-NH-SO2-R24で表され、R24がアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基であるもの等が挙げられる。アルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基の具体例は上記の説明が参照され、水素原子の一部がハロゲン原子によって置換されていてもよい。
4のハロゲノ基としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等が挙げられる。
4としては、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アラルキル基、アリールオキシ基、及びアリールチオ基から選ばれる1種以上であることが好ましい。式(1)で表される化合物が安定して紫外~紫色領域の光を吸収し、また波長380nm~430nmの光を効果的に吸収できるようにする観点からは、R4は水素原子又はアルキル基であることが好ましく、当該アルキル基は炭素数1~4が好ましく、1~3がより好ましい。なかでも、式(2)の基Aのベンゼン環に結合する4つのR4のうち、2つ以上が水素原子であることが好ましく、3つ以上が水素原子であることがより好ましく、4つ全部が水素原子であることが特に好ましい。
式(2)で表される基Aにおいて、硫黄原子は、エチレン構造部に対してオルト位に結合していてもよく、メタ位に結合していてもよく、パラ位に結合していてもよい。なお式(1)で表される化合物の製造容易性の観点からは、硫黄原子はエチレン構造部に対してパラ位に結合していることが好ましい。
式(1)において、連結基Lには2以上の基Aが結合している。連結基Lに2以上の基Aが結合することにより、式(1)で表される化合物の耐熱性を高めることができる。連結基Lに結合する2以上の基Aは、互いに同一であっても異なっていてもよい。式(1)の連結基Lに結合する基Aの数aは、8以下が好ましく、6以下がより好ましく、4以下がさらに好ましい。安定性の高い式(1)で表される化合物を容易に製造できる点からは、aは3以下がより好ましく、2であることが特に好ましい。
連結基Lとしては、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基、-O-、-CO-、-S-、-SO-、-SO2-、-NH-等の2価の連結基;アルキル基を有していてもよいメチン基(-C<)、-N<等の3価の連結基;>C<等の4価の連結基;およびこれらを組み合わせた連結基が挙げられる。アルキレン基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。また、アルキレン基とアリーレン基は、水酸基及び/又はチオール基を有していてもよい。
連結基Lとしては、例えば下記式(4-1)~式(4-17)に示される基が挙げられる。式(4-1)~式(4-17)において、*は基Aの結合部位を表す。式(4-1)~式(4-9)の連結基Lには2つの基Aが結合し、式(4-10)~式(4-13)の連結基Lには3つの基Aが結合し、式(4-14)~式(4-15)の連結基Lには4つの基Aが結合し、式(4-16)には5つの基Aが結合し、式(4-17)には6つの基Aが結合する。
Figure 2023128389000012
式(1)で表される化合物の安定性を高める観点からは、連結基Lは、水素原子の一部が水酸基及び/又はチオール基で置き換えられていてもよいアルキレン基、水素原子の一部が水酸基及び/又はチオール基で置き換えられていてもよいアリーレン基、-O-、-S-、及びこれらの基を組み合わせた連結基が好ましい(ただし、エーテル結合およびチオエーテル結合は連続しない)。また、直鎖状又は分岐状のアルキレン基の炭素数(連続する炭素数)は6以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下がさらに好ましい。環状のアルキレン基であれば、炭素数は4以上が好ましく、5以上がより好ましく、また10以下が好ましく、8以下がより好ましい。アリーレン基の炭素数は、5以上が好ましく、6以上がより好ましく、また10以下が好ましく、8以下がより好ましい。連結基Lとしては、特に好ましくは式(4-6)に示される基である。
式(1)で表される化合物としては、下記式(5)で表される化合物が特に好ましく示される。このような化合物は、例えば、波長300nm~420nmの範囲に吸収極大を有するピークを有し、また波長380nm~430nmの光を効果的に吸収できるとともに、安定性に優れるものとなり、製造が容易になる。下記式(5)において、R1xとR1yの説明は上記のR1の説明が参照され、R2xとR2yの説明は上記のR2の説明が参照され、R3xとR3yの説明は上記のR3の説明が参照される。
Figure 2023128389000013
また、本発明の硫黄原子を含む紫外線吸収剤としては、例えば、下記式(I)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2023128389000014
[式(I)中、
A1及びRA3はそれぞれ独立に有機基を表し、
A2は水素原子、有機基、又は極性官能基を表し、複数のRA2は互いに同一又は異なっていてもよい。]
式(I)のRA1、RA2、及びRA3の有機基の具体例は、上記式(2)のR4の有機基に関する説明が参照される。
A1としては、アリール基が好ましく、置換基を有するアリール基がより好ましい。RA1のアリール基の炭素数(置換基を除く炭素数)は、6~12が好ましく、6~10がさらに好ましい。RA1のアリール基が置換基を有する場合、当該置換基としては、アルキル基又は水酸基が好ましく、置換基としての当該アルキル基は、水素原子の一部が、アルコキシ基、アリール基、水酸基、カルボン酸エステル基で置換されていてもよい。当該アルキル基の炭素数(置換基を除く炭素数)は、1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~10がさらに好ましく、1~8がよりさらに好ましい。RA1のアリール基が置換基を有する場合、水酸基を1つ以上置換基として有することが好ましく、下記式(IA1)で示される基がより好ましい。
Figure 2023128389000015
[式(IA1)中、
A11及びRA12は水素原子又はアルキル基を表し、
*は式(I)の窒素原子への結合部位を表す。]
A11及びRA12のアルキル基の具体例は、上記のR11のアルキル基に関する説明が参照される。RA11及びRA12のアルキル基としては、炭素数1以上8以下の直鎖状アルキル基又は炭素数3以上10以下の分岐状アルキル基が好ましい。
A3としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基、又はヘテロアリール基が好ましく、アルキル基又はアリール基がより好ましく、アルキル基がさらに好ましい。RA3のアルキル基の炭素数(置換基を除く炭素数)は、1~18が好ましく、3~12がさらに好ましい。RA3のアルキル基は直鎖状であることが好ましい。
A2の極性官能基の具体例は、上記式(2)のR4の極性官能基に関する説明が参照される。
A2としては、水素原子であることが好ましく、なかでも、式(IA1)中の3つのRA2のうち、2つ以上が水素原子であることが好ましく、3つ全部が水素原子であることがより好ましい。
硫黄原子を含む紫外線吸収剤としては、上記式(1)で表される化合物又は上記式(I)で表される化合物が好ましく、式(1)で表される化合物がより好ましい。
硫黄原子を含む紫外線吸収剤は、トルエン中で測定した波長300nm~600nmの範囲(好ましくは300nm~700nmの範囲であり、より好ましくは300nm~800nmの範囲)の吸収スペクトルにおいて、波長420nm以下に最大吸収ピークを有することが好ましい。すなわち硫黄原子を含む紫外線吸収剤は、トルエン中で吸収スペクトルを測定したとき、波長300nm~420nmの範囲に吸収極大を有するピークを有し、且つ当該吸収ピークの吸収極大が波長300nm~600nmの範囲で最大値をとることが好ましい。このような吸収スペクトルを示す化合物であれば、紫外~紫色領域の光を効果的に吸収できる。前記吸収ピークの極大波長は、310nm以上がより好ましく、315nm以上がさらに好ましく、また410nm以下がより好ましく、405nm以下がさらに好ましい。
硫黄原子を含む紫外線吸収剤は、前記最大吸収ピークの極大波長における吸光度を1としたときに、当該吸収ピークの吸光度0.5におけるピーク幅が100nm以下であることが好ましく、80nm以下がより好ましく、70nm以下がさらに好ましい。化合物がこのような吸収スペクトルを示せば、紫外~紫色領域の光を選択的に吸収できるものとなる。当該ピーク幅の下限値は特に限定されないが、例えば、20nm以上であってもよく、30nm以上であってもよい。
硫黄原子を含む紫外線吸収剤は、前記最大吸収ピークの極大波長における吸光度を1としたときに、波長400nmにおける吸光度が、0.1以上であることが好ましく、0.15以上であることがより好ましい。硫黄原子を含む紫外線吸収剤がこのような吸収スペクトルを示せば、波長380nm~430nmの光を効果的に吸収できる。
硫黄原子を含む紫外線吸収剤は、前記最大吸収ピークの極大波長における吸光度を1としたときに、波長470nm~600nmの範囲(好ましくは波長450nm~700nmの範囲)の平均吸光度が0.03以下であることが好ましく、0.02以下がより好ましく、0.01以下がさらに好ましい。このような吸収スペクトルを示せば、可視光領域の広い範囲において、光透過率を高めることができる。
吸収スペクトルは、所定の波長範囲で測定ピッチ1nm毎に吸光度を測定することにより求める。測定ピッチ(1nm)未満における波長の吸光度の値は、1nmピッチの吸光度の測定値から線形補間することにより算出する。トルエン中の紫外線吸収剤の濃度は、最大吸収ピークの吸収極大における吸光度が1±0.003となるように調整する。波長470nm~600nmの範囲の平均吸光度は、波長470nm~600nmの範囲において1nmピッチで測定した131点の吸光度の値を平均することにより求める。
硫黄原子を含む紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾオキサジノン誘導体、トリアジン誘導体等でもよい。
ドープに含まれる硫黄原子を含む紫外線吸収剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
本発明の硫黄原子を含む紫外線吸収剤であれば、ドープ中の紫外線吸収剤の含有量が、(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して6質量部以下であっても、溶液製膜法にて波長380nm~430nm(特に、波長400nm)の光透過抑制性に優れたフィルムを形成可能である。また、ドープ中の紫外線吸収剤の含有量が6質量部以下と少ないため、フィルム形成時に紫外線吸収剤がブリードアウトすることもなく、内部ヘイズも低減できるため、フィルムの外観不良や成形装置(フィルムロール等)の汚染も生じないものである。
1.3 溶媒
本発明のドープは、溶媒を含んでいることが好ましい。本発明のドープにおいて、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体と硫黄原子を含む紫外線吸収剤は、溶媒に溶解又は分散していることが好ましい。
ドープに含まれる溶媒としては、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体と硫黄原子を含む紫外線吸収剤とを溶解又は分散することができる溶媒である限り特に限定されず、塩素系有機溶媒、非塩素系溶媒とのいずれをも用いることができるが、(メタ)アクリル系重合体の溶解性に優れる点から塩素系有機溶媒を用いることが好ましい。溶媒は、1種のみを有していてもよいし、2種以上を有していてもよい。塩素系有機溶媒と非塩素系溶媒とを用いる場合、溶媒全量中、塩素系有機溶媒の含有量が50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、上限は特にないが、99質量%以下であってもよい。
塩素系有機溶媒としては、例えば、ジクロロエタン、塩化メチレン、クロロホルム等が挙げられ、塩化メチレンが特に好ましい。非塩素系有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、s-ブタノール、t-ブタノール、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2-トリフルオロエタノール、2,2,3,3-ヘキサフルオロ-1-プロパノール、1,3-ジフルオロ-2-プロパノール、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メチル-2-プロパノール、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール、2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロパノール、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、γ-ブチロラクトン、ニトロエタン等が挙げられる。
主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体のドープ中の含有量は、特に限定されず、使用する溶媒に対する(メタ)アクリル系重合体の溶解性、分散性、及び製膜実施条件等を考慮して決定することができるが、好ましくは3質量%以上40質量%以下、より好ましくは5質量%以上38質量%以下、さらに好ましくは8質量%以上35質量%以下である。
硫黄原子を含む紫外線吸収剤のドープ中含の有量は、所望の性能を発現させる点から、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上6質量部以下、より好ましくは0.8質量部以上5.0質量部以下、さらに好ましくは1.0質量部以上4.5質量部以下の範囲内である。
1.4 その他の添加剤
本発明のドープは、本発明の効果を損なわない範囲であれば、種々の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、上記硫黄原子を含む紫外線吸収剤以外の公知の紫外線吸収剤;フェノール系酸化防止剤(例えば、ヒドロキノン、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、トコフェロール、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン等)、リン系酸化防止剤(例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト等)、イオウ系酸化防止剤(例えば、2-メルカプトベンズイミダゾール、ジラウリル3,3’-チオジプロピオネート等)等の酸化防止剤;耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤等の安定剤;ガラス繊維、炭素繊維等の補強材;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモン等の難燃剤;位相差上昇剤、位相差低減剤、位相差安定剤等の位相差調整剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤を含む帯電防止剤;相溶化剤;安定化剤;無機顔料、有機顔料、染料等の着色剤;有機フィラーや無機フィラー(例えば、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化チタン等の無機粒子);樹脂改質剤;等が挙げられる。ドープ中の各添加剤の含有量は、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して、好ましくは0質量部以上5質量部以下、より好ましくは0質量部以上2質量部以下、さらに好ましくは0質量部以上1質量部以下の範囲内である。
硫黄原子を含む紫外線吸収剤以外の紫外線吸収剤(以下、その他の紫外線吸収剤とも称する)としては、硫黄原子を含まない公知の紫外線吸収剤であればよいが、例えば、ベンゾフェノン系化合物、サリシレート系化合物、ベンゾエート系化合物、トリアゾール系化合物、及びトリアジン系化合物等が挙げられる。
ベンゾフェノン系化合物としては、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、4-n-オクチルオキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
サリシレート系化合物としては、p-t-ブチルフェニルサリシレート等が挙げられる。
ベンゾエート系化合物としては、2,4-ジ-t-ブチルフェニル-3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。
トリアゾール系化合物としては、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]、2-(3,5-ジ-tert-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-ベンゾトリアゾール-2-イル-4,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2-[5-クロロ(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル]-4-メチル-6-t-ブチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-t-ブチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール等が挙げられる。
トリアジン系化合物としては、2-[4,6-ビス(ビフェニル-4-イル)-1,3,6-トリアジ-2-イル]-5-[(2-エチルヘキシル)オキシ]フェノール、2-モノ(ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン化合物、2,4-ビス(ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン化合物、2,4,6-トリス(ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン化合物等が挙げられる。
市販のその他の紫外線吸収剤としては、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤であるチヌビン(登録商標)1577、チヌビン(登録商標)460、チヌビン(登録商標)477(BASFジャパン社製)、アデカスタブ(登録商標)LA-F70(ADEKA社製)、トリアゾール系紫外線吸収剤であるアデカスタブ(登録商標)LA-31(ADEKA社製)等が挙げられる。
その他の紫外線吸収剤は、1種のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
その他の紫外線吸収剤を含有する場合、硫黄原子を含む紫外線吸収剤とその他の紫外線吸収剤との含有量比(硫黄原子を含む紫外線吸収剤:その他の紫外線吸収剤)は、1:0.01~1:1が好ましく、1:0.05~1:0.8がより好ましい。
1.5 ドープの調製
本発明のドープは、溶媒中に、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体及び硫黄原子を含む紫外線吸収剤、並びに必要に応じてその他の重合体や添加剤を溶解又は分散することにより調製できる。溶媒への溶解又は分散方法としては、従来公知の方法を広く適用できる。例えば、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体及び硫黄原子を含む紫外線吸収剤、並びに必要に応じてその他の重合体や添加剤を溶媒に投入し、適宜剪断及び/又は攪拌により混合してもよい。溶媒への投入順は特に限定されず、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体及び硫黄原子を含む紫外線吸収剤、並びに必要に応じてその他の重合体や添加剤を全て同時に投入してもよく、順次投入してもよい。また、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体及び硫黄原子を含む紫外線吸収剤、並びに必要に応じてその他の重合体や添加剤を予め混合、好ましくは加熱溶融させた上で適宜剪断力を加えて溶融混練し、樹脂組成物(例えば、ペレット状又は粉体状の樹脂組成物)を作製した後に、当該樹脂組成物を用いて溶媒と混合して、ドープを調製してもよい。これらの混合工程は、温度及び圧力を適宜調節して実施することができる。また以上の混合工程の後、得られたドープをろ過したり、脱泡したりしてもよい。
1.5 ドープの特性
本発明のドープは、粘度が25℃において、0.1Pa・S以上50Pa・S以下であることが好ましく、より好ましくは0.3Pa・S以上40Pa・S以下であり、さらに好ましくは0.4Pa・S以上30Pa・S以下である。前記粘度範囲内であれば、溶液製膜法において均一なフィルムを形成し易い。
本発明のドープは、ヘイズが、20%以下であることが好ましく、より好ましくは15%以下であり、さらに好ましくは10%以下であり、下限は特にないが、0%であってもよい。前記ヘイズ範囲内であれば、透明性が高いフィルムを形成することが可能であるため、光透過性が要求される光学部材等に好適に用いられる。なお、ドープのヘイズは、後述の実施例に記載の方法によって算出した値である。
本発明のドープは、固形分濃度が、3質量%以上40質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以上38質量%以下であり、さらに好ましくは8質量%以上35質量%以下である。前記固形分濃度範囲内であれば、溶液製膜法において均一なフィルムを形成できる。
本発明のドープは、溶液製膜法によってフィルム(例えば、厚さが20μmのフィルム)形成したときに、当該フィルムが、波長400nmの光透過率が15%以下、波長589nmの光に対する面内位相差Reが10nm以下、且つ波長589nmの光に対する厚さ方向位相差Rthの絶対値が20nm以下という特性を示すものであることが好ましい。
2. フィルム
本発明のフィルムは、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体と紫外線吸収剤とを含み、波長400nmの光透過率が15%以下であり、波長589nmの光に対する面内位相差Reが10nm以下であり、且つ波長589nmの光に対する厚さ方向位相差Rthの絶対値が20nm以下であることに特徴を有する。本発明のフィルムは、上記ドープを用いて溶液製膜法にて形成されることが好ましい。
本発明のフィルムが含有する主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体の具体例及び好ましい態様は、上記ドープが含有する(メタ)アクリル系重合体の具体例及び好ましい態様と同様である。
本発明のフィルムが含有する紫外線吸収剤としては、硫黄原子を含有する紫外線吸収剤を含むことが好ましい。当該硫黄原子を含む紫外線吸収剤の具体例及び好ましい態様としては、上記ドープが含有する硫黄原子を含む紫外線吸収剤の具体例及び好ましい態様と同様である。
また、本発明のフィルムは、上記ドープが含有してもよい、その他の重合体や添加剤を含んでいてもよく、その具体例及び好ましい態様は、上記ドープが含有してもよいその他の重合体及びその他添加剤の具体例及び好ましい態様と同様である。
本発明のフィルムにおける紫外線吸収剤の含有量は、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して、0.5質量部以上6質量部以下が好ましく、より好ましくは0.8質量部以上5.0質量部以下、さらに好ましくは1.0質量部以上4.5質量部以下である。また紫外線吸収剤として、硫黄原子を含有する紫外線吸収剤とその他の紫外線吸収剤を含有する場合、硫黄原子を含む紫外線吸収剤とその他の紫外線吸収剤との含有量比(硫黄原子を含む紫外線吸収剤:その他の紫外線吸収剤)は、1:0.01~1:1が好ましく、1:0.05~1:0.8がより好ましい。
本発明のフィルムにおけるその他の重合体の含有量は、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して、100質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましく、5質量部以下がよりさらに好ましく、0質量部であってもよい。
本発明のフィルムにおけるその他の添加剤の含有量は、主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して、0質量部以上5質量部以下が好ましく、より好ましくは0質量部以上2質量部以下、さらに好ましくは0質量部以上1質量部以下である。
2.1 フィルムの製造方法
本発明のフィルムは、例えば、上記のドープを用いて溶液製膜法にて形成される。具体的には、ドープを支持体上に流延又は塗布した後、乾燥させて溶媒を蒸発することにより製造できる。なお、光学特性の高度な管理が必要な場合、クリーンブース内等で操作を行うことが好ましい。
溶液製膜法の実施態様を以下に説明するが、以下に限定されるものではない。
まず、ドープ(例えば、液温度は-20℃以上50℃以下)を送液ポンプ等により送液し、バーコーター、T-ダイ、バー付きT-ダイ、ダイ・コート等を用いて、金属や合成樹脂製の板状、シート状、ベルト状、又はドラム状等の支持体の表面上に流延又は塗布して、ドープ膜を形成する。
次に、形成されたドープ膜を前記支持体上で加熱し、溶媒を蒸発除去してフィルムを形成する。溶媒を蒸発させる際の条件としては、(メタ)アクリル系重合体のガラス転移温度及び使用する溶媒の種類に応じて適宜決定することができるが、発泡を抑制する観点から、流延又は塗工直後の乾燥温度は好ましくは30℃以上110℃以下であり、残像溶媒量に応じて徐々に温度を上げていくことが好ましい。また、乾燥時間は好ましくは1分間以上60分間以下である。乾燥方法は、前記温度で溶媒の蒸発除去が可能であれば特に制限はなく、例えば、オーブン、乾燥炉、ホットプレート、赤外線加熱等を用いることができる。さらに、フィルム面上での結露を抑制する観点から、除湿エアー中で乾燥することが好ましいが、塗液表面が固まるまでに温風等を塗液に直接吹き付けることは表面形状が悪化するため好ましくない。
そして、形成されたフィルムを支持体表面から剥離する。得られたフィルムは、適宜、乾燥工程や加熱工程、延伸工程等に付してもよい。
乾燥工程及び/又は加熱工程を行う場合には、フィルムにおいて乾燥及び/又は加熱が不均一に起こり、フィルムに歪みが生じることを防止する目的で、フィルムを枠体に固定する等してフィルムに適宜張力をかけながら乾燥及び/又は加熱を行うことが好ましい。フィルムをさらに乾燥工程及び/又は加熱工程に付すことにより、残留溶媒を低減することができる。工業的に連続生産する際には、テンターにて幅方向両端部を把持しながら、場合によってはフィルムのたるみや乾燥による収縮に応じた拡縮調整を行いながら乾燥する、またはオーブン内の上下に配置した多数のロールにフィルムを交互に通し乾燥させる方式(垂直パス方式)にて乾燥することが好ましい。テンター方式及び/又は垂直パス方式での乾燥は、支持体表面から剥離したフィルムの残存溶媒量に応じて適宜選定すればよく、両方ともを実施してもよいし、それぞれ複数回実施してもよい。
また、フィルムの機械的強度の向上、フィルム厚さの精度の向上の点から延伸工程を行うことが好ましい。
フィルムの延伸は、未延伸状態のフィルムを成形した後、一旦フィルムを保管してから行ってもよく、未延伸状態のフィルムを成形した後すぐに連続的に行ってもよい。延伸フィルムは、一軸延伸フィルムと二軸延伸フィルムのいずれであってもよいが、二軸延伸フィルムがより好ましい。二軸延伸した場合は、直交する2つの方向に延伸するため、フィルム面内の任意の方向についての機械的強度を向上させることができる。またフィルムの面内位相差を小さくし、光学等方性の高いフィルムを得やすくなる。
フィルムの延伸は、従来公知の任意の延伸方法で行えばよく、具体的には、例えば、ロールや熱風炉を用いた縦延伸、テンターを用いた横延伸、及びこれらを逐次組み合わせた延伸等が挙げられる。また、縦と横とを同時に延伸する同時二軸延伸方法でもよく、ロール縦延伸を行った後、テンターによる横延伸を行う逐次二軸延伸方法でもよい。
フィルムの延伸温度は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜決定でき、延伸温度は、例えば、DSC法によって求めたフィルムのガラス転移温度をTgとしたときに、好ましくは、Tg以上Tg+30℃以下の範囲である。
フィルムの縦延伸と横延伸の延伸倍率は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜決定でき、延伸倍率としては、例えば、縦方向及び当該縦方向に直交する横方向において、それぞれ、1.1倍~8.0倍程度であることが好ましく、1.2倍~6.0倍程度であることがより好ましい。
2.2 フィルムの特性
本発明のフィルムの厚さは、機械的強度の点から、好ましくは5μm以上であり、10μm以上がより好ましく、15μm以上がさらに好ましい。一方フィルムの薄型化の点から、フィルムの厚さは、200μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましく、100μm以下がさらに好ましい。フィルムの厚さは、例えば、ミツトヨ社製のデジマチックマイクロメーターを用いて測定することができる。
本発明のフィルムは、波長400nmにおける光透過率が15%以下であることが好ましい。また、波長400nmにおける光透過率が14%以下であることがより好ましく、13%以下であることがさらに好ましい。波長400nmにおける光透過率が前記範囲内であることにより、特に有機EL表示装置に好適に使用することができる。
本発明のフィルムは、波長589nmの光に対する面内位相差(Re)が10nm以下であることが好ましく、より好ましくは7nm以下、さらに好ましくは5nm以下、よりさらに好ましくは3nm以下である。また、波長589nmの光に対する厚さ方向位相差(Rth)の絶対値が20nm以下であることが好ましく、より好ましくは15nm以下、さらに好ましくは10nm以下である。このような位相差を有するフィルムは、表示装置の偏光板が備える偏光子保護フィルムとして好適に使用することができる。一方、フィルムの面内位相差の絶対値が10nmを超えたり、厚み方向位相差の絶対値が20nmを超えたりすると、表示装置の偏光板が備える偏光子保護フィルムとして用いる場合、表示装置においてコントラストが低下するなどの問題が発生する場合がある。
位相差は複屈折をベースに算出される指標値であり、面内位相差(Re)及び厚さ方向位相差(Rth)は、それぞれ、以下の式により算出することができる。3次元方向について完全光学等方である理想的なフィルムでは、面内位相差Re、厚さ方向位相差Rthがともに0となる。
Re=(nx-ny)×d
Rth=((nx+ny)/2-nz)×d
上記式中において、nxはフィルムの面内における遅相軸方向の屈折率、nyはフィルムの面内における進相軸方向の屈折率、nzはフィルムの厚さ方向の屈折率、dはフィルム厚さを表す。
本発明のフィルムは、全光線透過率が85%以上であることが好ましく、88%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましく、92%以上がよりさらに好ましい。全光線透過率が前記範囲内であれば、透明性が高いため、光透過性が要求される光学部材等に好適に使用できる。
本発明のフィルムは、ガラス転移温度が110℃以上であることが好ましく、115℃以上であることがより好ましく、120℃以上がさらに好ましい。ガラス転移温度が前記範囲内であれば、耐熱性に優れたフィルムを得ることができる。
本発明のフィルムは、厚さ100μm換算(厚み100μmあたり)での内部ヘイズが2.0%以下であることが好ましく、1.0%以下がより好ましく、0.5%以下がさらに好ましく、0.3%以下がよりさらに好ましい。内部ヘイズが前記範囲内であれば、透明性が高いため、光透過性が要求される光学部材等に好適に使用できる。なお、内部ヘイズは、後述の実施例に記載の方法によって測定又は算出してもよい。
2.3 フィルムの用途
本発明のフィルムの用途は特に限定されるものではなく、各種用途(例えば、光学フィルムとして保護フィルム、位相差フィルム、視野角補償フィルム、光拡散フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、輝度向上フィルム、タッチパネル用導電フィルムや、自動車や各種機器の内外装、或るいは加飾フィルム等)に使用することができるが、耐熱性及び透明性を有しつつ、特定波長(好ましくは380nm~430nm、特に400nm)の光透過抑制性に優れ、または低い位相差を有することから、有機EL表示装置の光学フィルムとして好適に使用することができる。特定波長の光透過抑制性に優れることにより、表示装置内の有機EL素子の劣化を抑制することが可能である。
本発明の有機EL表示装置は、上記のフィルムを含むものであり、当該フィルムを含むことにより、光学特性に優れながら、有機EL素子の劣化が抑制されている。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、以下においては、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
始めに、以下の製造例、実施例及び比較例で採用した測定方法について説明する。
(1)重量平均分子量、数平均分子量
重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン換算により求めた。測定に用いた装置及び測定条件は、以下のとおりである。
システム:東ソー製GPCシステムHLC-8220
測定側カラム構成:
・ガードカラム(東ソー製、TSKguardcolumn SuperHZ-L)
・分離カラム(東ソー製、TSKgel SuperHZM-M) 2本直列接続
リファレンス側カラム構成:
・リファレンスカラム(東ソー製、TSKgel SuperH-RC)
展開溶媒:クロロホルム(和光純薬工業製、特級)
展開溶媒の流量:0.6mL/分
標準試料:TSK標準ポリスチレン(東ソー製、PS-オリゴマーキット)
カラム温度:40℃
(2)重合体のガラス転移温度(Tg)
重合体のガラス転移温度は、JIS K 7121の規定に準拠して求めた。具体的には、示差走査熱量計(リガク製、Thermo plus EVO DSC-8230)を用い、窒素ガス雰囲気下、約10mgのサンプルを常温から200℃まで昇温(昇温速度20℃/分)して得られたDSC曲線から、始点法により評価した。リファレンスには、α-アルミナを用いた。
(3)ドープのヘイズ
ドープのヘイズはヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH-1001DP)を用いて、光路長10mmの石英セルを用いて測定した。具体的には、空の石英セルで標準校正を行った後、ドープのヘイズを測定した。
(4)ドープの粘度
ドープの粘度は、BHII型粘度計(東機産業株式会社製)を用いて25℃にて測定した。
(5)フィルムの内部ヘイズ
フィルムの内部ヘイズはJIS K7136の規定に準拠して求めた。具体的には、ヘイズメーター(日本電色工業社製、NDH-1001DP)を用いて、光路長10mmの石英セルに1,2,3,4-テトラヒドロナフタリン(テトラリン)を満たし、その中に作製したフィルムを浸漬して測定し、厚さ100μmあたりの内部ヘイズ値として算出した。
(6)フィルムの厚さ
フィルムの厚さは、デジマチックマイクロメーター(ミツトヨ社製)により求めた。
(7)フィルムの光線透過率
フィルムの光線透過率は、分光光度計(島津製作所社製、UV-3600)を用いて、各波長の光に対する透過率を測定することにより評価した。
(8)フィルムの位相差
フィルムの波長589nmの光に対する面内位相差Re、及び厚さ方向位相差Rthを、全自動複屈折計(王子計測機器社製、KOBRA-WR)を用いて入射角40°の条件で測定した。具体的には、フィルムの面内における遅相軸方向の屈折率をnx、フィルムの面内における進相軸方向の屈折率をny、フィルムの厚さ方向の屈折率をnz、フィルムの厚さをdとして、下記式から面内位相差Reと厚さ方向位相差Rthをそれぞれ求めた。
面内位相差Re=|nx-ny|×d
厚さ方向位相差Rth=[(nx+ny)/2-nz]×d
なお、下記製造例におけるメタクリル酸メチル(MMA)、α-メチレン-γ-ブチロラクトン(ML)、及びメチルエチルケトン(MEK)は、東京化成工業から入手した。パーロイルL(ジラウロイルパーオキサイド、LPO)は、日油から入手した。ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム(ハイテノール(登録商標)NF-08)は、第一工業製薬から入手した。
製造例1
攪拌装置、温度センサー、冷却管、及び窒素導入管を備えた反応容器に、メタクリル酸メチル(MMA)229.6部、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)33部、酸化防止剤(ADEKA社製「アデカスタブ(登録商標)2112」)0.138部、溶媒としてトルエン248.6部、およびn-ドデシルメルカプタン(nDM)0.1925部を仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温させた。昇温に伴う還流が始まったところで、重合開始剤としてt-アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富社製「ルペロックス(登録商標)570」)0.2838部を添加するとともに、上記t-アミルパーオキシイソノナノエート0.5646部とスチレン(St)12.375部とを2時間かけて滴下しながら約105~110℃の還流下で溶液重合を進行させ、滴下終了後、同温度でさらに4時間の熟成を行った。
次に、得られた重合溶液に、環化縮合反応の触媒(環化触媒)として、リン酸ステアリル(堺化学工業社製「Phoslex A-18」)0.206部を加え、約90~110℃の還流下において2時間、ラクトン環構造を形成するための環化縮合反応を進行させた。次に、得られた重合溶液を、240℃に加熱した多管式熱交換器に通して環化縮合反応を完結させた後、バレル温度が250℃であり、1個のリアベント、4個のフォアベント(上流側から第1、第2、第3、第4ベントと称する)、及び第3ベントと第4ベントとの間にサイドフィーダーを備え、先端部にリーフディスク型のポリマーフィルタ(濾過精度5μm)が配置されたベントタイプスクリュー二軸押出機(L/D=52)で脱揮を実施した。
脱揮完了後、押出機内に残された熱溶融状態にある樹脂組成物を当該押出機の先端から上記ポリマーフィルタで濾過しながら排出し、備えたダイスを通過させた後、孔径1μmのフィルタ(オルガノ社製「製品名:ミクロポアフィルタ1EU」)で濾過し、30±10℃の範囲内の温度に保持した冷却水を満たした水槽中でストランドを冷却し、次いで切断機(ペレタイザ)に導入することで、(メタ)アクリル系重合体1を含む樹脂組成物のペレットを得た。得られた(メタ)アクリル系重合体1のMwは13.2万、Mnは5.9万、ガラス転移温度は121℃であった。
製造例2
撹拌装置、温度センサー、冷却管、及び窒素導入管を備えた反応器を用意した。容器にハイテノール(登録商標)NF-08を1部溶解した脱イオン水75部を仕込んだ。次いで、当該容器に、あらかじめ単量体としてのα-メチレン-γ-ブチロラクトン(ML)を13部、メタクリル酸メチル(MMA)を37部、重合開始剤としてのパーロイルL(ジラウロイルパーオキサイド、LPO)を0.25部混合した混合液を仕込み、T.K.ホモミクサーMARK II model2.5(プライミクス製)を用いて、3000rpmで15分間撹拌して均一な懸濁液とした。
懸濁液に脱イオン水を125部追加してから反応器に移送し、撹拌しながら窒素ガスを吹き込みながら反応液(懸濁液)が65℃になるまで加熱した。内温65℃になった時点を反応開始とし、そのまま65℃で反応器を保温して自己発熱により液温がピーク温度に到達した後に75℃で保ち、さらに反応開始2時間後に反応液(懸濁液)を90℃まで昇温して4時間撹拌して重合反応を完了させた。その後、反応液を冷却し、濾過して共重合体を濾取し、さらに熱風乾燥機を用いて乾燥することによって(メタ)アクリル系重合体2(粉体)を得た。得られた(メタ)アクリル系重合体2のMwは25.2万、Mnは11.9万、ガラス転移温度は127℃あった。
製造例3
撹拌装置、温度センサー、冷却管、及び窒素導入管を備えた反応器に、メタクリル酸メチル(MMA)67.5部、フェニルマレイミド(PMI)15.7部、n-ドデシルメルカプタン(nDM)0.03部、重合溶媒としてトルエン100部を仕込み、これに窒素を通じつつ105℃まで昇温させた。その後、重合開始剤としてt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(化薬アクゾ社製、カヤカルボン(登録商標)Bic75)を0.04部加えるとともに、スチレン(St)1.8部と、1部のトルエンに希釈した0.15部のt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートを3時間かけて一定速度で滴下しながら105~110℃で溶液重合を行い、さらに4時間熟成を行った。
次に得られた重合反応液を、リアベント数が1個、フォアベント数が2個のベントタイプスクリュー二軸押出機で脱揮を行い、次いで切断機(ペレタイザ)に導入することで(メタ)アクリル系重合体3を含む透明な樹脂組成物のペレットを得た。得られた(メタ)アクリル系重合体3のMwは14.8万、Mnは5.6万、ガラス転移温度は137℃であった。
実施例1
製造例1で得た(メタ)アクリル系重合体1を含む樹脂組成物のペレットを、80℃で8時間乾燥した後、塩化メチレンに固形分濃度が20%となるように溶解し、下記式(1-1)で表される化合物(紫外線吸収剤A)を(メタ)アクリル系重合体100部に対して2.4部となるように添加、混合後、24時間静置して溶液中の泡を除去し、ドープ1を得た。
Figure 2023128389000016
乾燥エアを満たしたクリーンブース内でドープ1を、ドライ膜厚で100μmとなるようにバーコーターを用いて支持体(PETフィルム:表面粗さRaは0.02~0.04μm)上に流延し、40~60℃で加熱して溶媒を蒸発させ、得られたフィルム(ドープ膜)を支持体から剥離した。フィルムに幅100cmあたり3kgの張力をかけながら80~120℃で乾燥をさせることで未延伸フィルムを得た。得られた未延伸フィルムを96mm×96mmの大きさに切り出し、逐次二軸延伸機(東洋精機製作所社製、X6-S)を用いて、Tg+18℃の温度にて300%/分の延伸速度で縦方向(MD方向)および横方向(TD方向)の順に面倍率が5.0倍となるように逐次二軸延伸を行い、冷却することにより延伸フィルムを得た。得られたフィルム物性を表1に示す。
実施例2~5、比較例1、2
使用する(メタ)アクリル系重合体の種類、並びに紫外線吸収剤の種類及び/又は使用量を表1に示すように変更する以外は、実施例1と同様にドープを調製し、得られたドープを用いて、実施例1と同様にフィルムを形成した。各フィルムの物性を表1に示す。
Figure 2023128389000017
表1において、各成分は以下のとおりである
(メタ)アクリル系重合体1;上記製造例1で得られた主鎖にラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系重合体1
(メタ)アクリル系重合体2;上記製造例2で得られた主鎖にラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系重合体2
(メタ)アクリル系重合体3;上記製造例3で得られた主鎖にN-置換マレイミド構造を有する(メタ)アクリル系重合体3
(メタ)アクリル系重合体4;主鎖に位置するグルタルイミド構造(上記式(2X)におけるR4a及びR5aがメチル基)を含む単位と、メタクリル酸メチル単位とを構成単位として有する(メタ)アクリル系重合体(ダイセル・エボニック製、プレキシイミド8813、グルタルイミド単位の含有率42重量%、Tg:132℃、Mw:11.5万、Mn:5.5万)
紫外線吸収剤A;上記式(1-1)で表される化合物
紫外線吸収剤B;アデカスタブ LAF70(ADEKA社製)
比較例3
製造例1で得られた(メタ)アクリル系重合体1と、(メタ)アクリル系重合体1の100部に対して2.4部の紫外線吸収剤A(上記式(1-1)で表される化合物)とを、2軸混錬機を用いて混錬し、次いで切断機(ペレタイザ)に導入することで(メタ)アクリル系重合体1と紫外線吸収剤Aとを含有する樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットをΦ65mm、L/D=32、ユニメルトスクリューを有するベント付き単軸押出機に仕込んだ。押出機のシリンダ、ギアポンプ、ポリマーフィルターおよびTダイの温度は265℃に設定した。ペレットは、ホッパーに加温した除湿空気を送風することにより60℃に加温した。また、ホッパー下部に窒素導入管を設けて、押出機内に窒素ガスを導入した。
ベント口から40Torrにて吸引を行いながら、ペレットを単軸スクリューにて溶融させ、ギアポンプを用いて、ろ過面積0.75m2、ろ過精度10μmのリーフディスクフィルターを有するポリマーフィルターに通した。次いで、幅600mmのTダイより溶融樹脂を押出し、120℃の冷却ロール上にフィルムを製膜した。得られたフィルムの膜厚は100μmであった。また得られたフィルムの表面には用いた紫外線吸収剤が一部ブリードアウトしており、外観不良が発生した。

Claims (9)

  1. 主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体と硫黄原子を含む紫外線吸収剤とを含むドープであって、
    紫外線吸収剤の含有量が、(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して、0.5質量部以上6質量部以下であるドープ。
  2. 前記紫外線吸収剤が、下記式(1)で表される化合物を含む請求項1に記載のドープ。
    Figure 2023128389000018
    [式(1)中、Lは2価以上の連結基を表し、aは2以上の整数を表し、Aはそれぞれ独立して下記式(2)で示される基を表す。]
    Figure 2023128389000019
    [式(2)中、
    1はシアノ基、アシル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、又はアミド基を表し、
    2は水素原子、シアノ基、アシル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、アミド基、炭化水素基、又はヘテロアリール基を表し、
    1とR2がともにアシル基、カルボン酸エステル基、又はアミド基である場合、R1とR2は互いに連結して環を形成していてもよく、
    3は水素原子又はアルキル基を表し、
    4は水素原子、有機基、又は極性官能基を表し、複数のR4は互いに同一又は異なっていてもよく、
    *は式(1)の連結基Lとの結合部位を表す。]
  3. 前記(メタ)アクリル系重合体が主鎖に有する環構造が、ラクトン環構造、グルタルイミド構造、無水グルタル酸構造、無水マレイン酸構造、及びN-置換マレイミド構造からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載のドープ。
  4. 請求項1~3のいずれかに記載のドープを調製する工程と、調整したドープを支持体上に流延又は塗布後、乾燥する工程とを含むフィルムの製造方法。
  5. 主鎖に環構造を有する(メタ)アクリル系重合体と紫外線吸収剤とを含むフィルムであって、
    波長400nmの光透過率が15%以下であり、
    波長589nmの光に対する面内位相差Reが10nm以下であり、且つ波長589nmの光に対する厚さ方向位相差Rthの絶対値が20nm以下であるフィルム。
  6. 内部ヘイズが1.0%以下である請求項5に記載のフィルム。
  7. 前記紫外線吸収剤が、下記式(1)で表される化合物を含む請求項5又は6に記載のフィルム。
    Figure 2023128389000020
    [式(1)中、Lは2価以上の連結基を表し、aは2以上の整数を表し、Aはそれぞれ独立して下記式(2)で示される基を表す。]
    Figure 2023128389000021
    [式(2)中、
    1はシアノ基、アシル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、又はアミド基を表し、
    2は水素原子、シアノ基、アシル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、アミド基、炭化水素基、又はヘテロアリール基を表し、
    1とR2がともにアシル基、カルボン酸エステル基、又はアミド基である場合、R1とR2は互いに連結して環を形成していてもよく、
    3は水素原子又はアルキル基を表し、
    4は水素原子、有機基、又は極性官能基を表し、複数のR4は互いに同一又は異なっていてもよく、
    *は式(1)の連結基Lとの結合部位を表す。]
  8. 前記(メタ)アクリル系重合体が主鎖に有する環構造が、ラクトン環構造、グルタルイミド構造、無水グルタル酸構造、無水マレイン酸構造、及びN-置換マレイミド構造からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項5~7のいずれかに記載のフィルム。
  9. 請求項5~8のいずれかに記載のフィルムを含む有機エレクトロルミネセンス表示装置。
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