JP2023127140A - 金属配線 - Google Patents

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宏幸 萩原
Hiroyuki Hagiwara
憲正 深澤
Norimasa Fukazawa
亘 冨士川
Wataru Fujikawa
潤 白髪
Jun Shiraga
悠大 吉村
Yudai Yoshimura
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Abstract

【課題】導電性の高い銀を用いた配線において、銀イオンの生成~銀の析出に至るサイクルを抑制することによって、エレクトロケミカルマイグレーションの発生を抑え、絶縁信頼性の高い金属配線を提供することである。
【解決手段】銀を用いた金属配線において、配線からの銀イオン生成(銀の溶出)を抑制することによって、絶縁信頼性の高い良好な金属配線を形成できることを見出した。また、配線表面の金属組成比を再現した代替の配線、もしくは、試験基板の電気化学測定を実施し、銀の溶出量を測定することによって、金属配線のマイグレーション耐性を推定できることを見出し、本発明を完成させた。
【選択図】図3

Description

本発明は、電源線、信号線など電気伝導に用いることのできる金属配線に関するものである。
現代生活は、様々な家電製品、電子機器によって支えられており、電気を伝導する金属配線に囲まれて生活していると言っても良い。家電製品や電子機器への市場要求は小型化・高性能化へ進んでおり、金属配線は、極めて近接して配置される様になってきており、絶縁信頼性に対する要求が高まっている。また、省エネルギー化や高速信号伝送の要求から、金属配線内の電気伝送損失を可能な限り抑制することが求められている。
家電製品や電子機器内部に搭載された金属配線には、銅、銀、金、鉛、錫、ニッケル、コバルト、クロムなど様々な金属種が用いられているが、加工性、コスト、及び導電性の観点から、電気伝導に用いられる配線の金属としては、主として銅が用いられてきた。一方、電気伝導の損失を抑制するためには、電気抵抗がより低い銀を配線として用いることが好ましい。しかしながら、銀は、エレクトロケミカルマイグレーションが最も発生しやすい金属として知られており、配線の材料として銀を用いることに関して絶縁信頼性の懸念があった(非特許文献1)。
エレクトロケミカルマイグレーションとは、配線金属の溶出による金属イオンの生成、拡散、及び析出に起因する電気化学現象であり、最終的に配線、電極間が短絡して、故障の原因となるものである。すなわち、銀を用いた配線は、前記金属イオンの生成~溶出金属の析出に至るサイクルが起こりやすいことが問題であった。
http://www1.coralnet.or.jp/fjk/migre/mg100.htm、「マイグレーション現象の概要 (coralnet.or.jp)」
本発明が解決しようとする課題は、導電性の高い銀を用いた配線において、銀イオンの生成~銀の析出に至るサイクルを抑制することによって、エレクトロケミカルマイグレーションの発生を抑え、絶縁信頼性の高い金属配線を提供することである。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究した結果、銀を用いた金属配線において、配線からの銀イオン生成(銀の溶出)を抑制することによって、絶縁信頼性の高い良好な金属配線を形成できることを見出した。また、配線表面の金属組成比を再現した代替の配線、もしくは、試験基板の電気化学測定を実施し、銀の溶出量を測定することによって、金属配線のマイグレーション耐性を推定できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
1.銀を使用する金属配線であって、その金属組成の表面が、下記電気化学測定法によって、溶出する銀の溶出率が400ppb以下であることを特徴とする金属配線。
(電気化学測定法)
電気化学測定法として、作用極、対極、および参照極からなる三電極法を用い、前記作用極として、金属配線を用い、下記電解液に露出する。前記対極として、不溶性金属の白金線材もしくは板材として使用し、前記参照極としては、飽和銀塩化銀電極を用い、前記参照極の溶液としては、飽和KCl溶液を使用する。
電解液として、硫酸ナトリウム水溶液(濃度:100ppm)を使用し、前記作用極と前記対極を前記電解液中に浸漬させ、向かい合わせて配置する。
前記電解液と前記参照極の溶液は、飽和KCl溶液を寒天で固めた塩橋でつなぎ、前記電解液側の前記塩橋の先端は、前記電解液を満たしたルギン管と接続する。
電流および電圧の制御に用いる制御装置として、ポテンショスタット(北斗電工株式会社製、HA―501)を使用し、電解測定の条件として、1mA/cm2の電流密度となるように、10分間電圧を印加する。電圧の印加後、直ちに前記作用極を前記電解液から引き上げ、電解液中に溶出した銀の濃度を測定する。
前記電解液中に溶出した銀の濃度を測定する装置としては、ICP―MS分析装置(Agilent社製、Agilent 8900)を用いる。
2.銀の表面部分に対し、表面積で0.07%以上99.9%以下の銅で被覆されたことを特徴とする1記載の金属配線。
3.隣接する金属配線の電解強度が0.001V/μm~400V/μmの範囲であることを特徴とする1または2記載の金属配線。
4.隣接する金属配線との距離(間隔)が0.1μm~20mmの範囲であることを特徴とする1~3記載のいずれか1つ記載の金属配線。
5.1~4記載のいずれか1つに記載の金属配線を用いたことを特徴とする積層体。
6.5記載の積層体を用いたことを特徴とするプリント配線板。
を提供するものである。
本発明は、電源線や信号線など、電気を伝導するための絶縁信頼性の高い金属配線を与えることができ、種々の電気配線、プリント配線板、MID(成型回路基板)などに好適に用いることができる。
ウォータードロップ試験の模式図である。 ウォータードロップ試験に用いる本発明の一実施形態を示す模式図である。 電気化学測定法の模式図である 電気化学測定法に用いる本発明の一実施形態を示す模式図である。
1 ウォータードロップ試験の模式図
2 スライドガラス
3 金属線
4 水滴
5 ポテンショスタット
6 ウォータードロップ試験に用いる本発明の一実施形態を示す模式図
7 ラッカー
8 金属線
9 被覆金属
10 電気化学測定法の模式図
11 ポテンショスタット
12 金属板
13 電解液
14 対極
15 ルギン管
16 塩橋
17 参照極
18 飽和KCl溶液
19 電気化学測定法に用いる本発明の一実施形態を示す模式図
20 金属板
21 ラッカー
22 電解液に露出する金属板または被覆金属の表面
本発明の金属配線は、銀を使用する金属配線であって、後述する電気化学測定法によって、溶出する銀の溶出率が400ppb以下であることを特徴とする金属配線である。
銀は、耐酸化性があり、最も電気伝導率が高く(電気抵抗が低く)、熱伝導率も高い金属であり、さらに、展延性に優れて加工性が高いことから、エレクトロニクス分野で古くから利用されている金属であるが、電場と湿度が共存する環境において、エレクトロケミカルマイグレーションが起こり、短絡による故障を起こしやすいことが懸念されてきた。
本発明の金属配線においては、銀の導電性、耐酸化性を活用しながら、エレクトロケミカルマイグレーションの課題を解決する手段として、銀表面の一部を、銀よりもイオン化傾向の大きい金属で被覆することによって、局所的なガルバニック電池を形成し、銀の溶出を抑制することによって、エレクトロケミカルマイグレーション耐性を向上させることが可能である。銀を被覆するために用いる金属としては、銀よりもイオン化傾向が大きく、銀との密着性が保たれる限り、種々の金属を好適に用いることができるが、金属配線としての導電性が銀に次いで高く、コスト、加工性に優れる観点から、被覆に用いる金属としては、銅を用いることが好ましい。
イオンマイグレーションは、銅配線でも発生することが知られているが、銅配線は、従来から幅広く用いられてきていることから、銀を銅で被覆した金属配線から、銀の溶出が抑制され、銅の溶出量が、銅単独での溶出量と同程度で保持される限り、通常使用でのイオンマイグレーション耐性は問題がないレベルである。この観点からも、銀を被覆する金属種は、銅であることが特に好ましい。
本発明の金属配線において、前記銀を被覆する金属の銀表面に対する表面積は、後述する電気化学測定法を用いて測定される銀の溶出量が400ppb以下となる様に設定すれば良く、導電性やコストの観点から、適宜選択すれば良いが、被覆する金属として銅を使用する場合には、銀の表面部分に対し、表面積で0.07%以上99.9%以下の銅で被覆されることが好ましい。銀の溶出量を抑制する観点からは、銅の被覆量は、表面積で1%以上あれば良いが、配線形成コストの観点から、50%以上99.9%以下がより好ましい。
本発明で用いる電気化学測定法には、作用極、対極、および参照極からなる三電極法を用いる。三電極法の電気化学測定に用いる装置、容器については、特に制限はなく、公知慣用のものを用いれば良いが、例えば一例として下記の仕様、サイズ、容量のものを好適に用いることができる。
前記作用極として、本発明の金属配線を、面積が0.5cmとなるように設定し、電解液である硫酸ナトリウム水溶液(濃度;100ppm)に露出する。対極としては、不溶性金属を用いることが好ましく、特に白金を用いることが好ましい。対極の面積は0.5cm以上とするのがよい。参照極には、飽和銀塩化銀電極を用い、参照極の溶液としては、飽和KCl溶液を用いる。
前記作用極と前記対極とは、前記電解液中に浸漬させ、向かい合わせて配置する。
前記電解液と前記参照極の溶液とは、飽和KCl溶液を寒天で固めた塩橋でつなぐ。前記電解液側の前記塩橋の先端は、前記電解液を満たしたルギン管と接続し、前記ルギン管の先端は、前記作用極から数mm程度の位置に配置する。
電流および電圧の制御に用いる制御装置として、ポテンショスタットを用いる。ポテンショスタットには、例えば、北斗電工株式会社製、HA―501を用いれば良い。
電解測定の条件として、1mA/cmの電流密度となるように、10分間電圧を印加する。電圧の印加後、すみやかに前記作用極を前記電解液から引き上げる。
前記電解液中に溶出した銀の濃度は、ICP―MS分析装置を用いて測定する。ICP―MS分析装置としては、例えばAgilent社製、Agilent 8900を用いることができる。
実際に使用する配線の場合、配線のサイズが、前記電気化学測定に適さない場合には、配線表面の金属組成比を再現した代替の試験基板を用いて、前記電気化学測定を行うことができる。
例えば、基材上に形成された配線の場合には、前記電気化学測定に適したサイズの基板表面に、目的とする配線表面の金属組成比に相当する金属膜を作製した代替の試験基板を用いた測定を実施すれば良く、金属配線が線材等の場合には、前記電気化学測定に適した面積となる様に線材を複数本用いて電気化学測定を実施すれば良い。
本発明の金属配線は、前記、電気化学測定による銀の溶出量が400ppbを超えない範囲で、銀と、銀の表面を被覆する金属の他に、さらに異なる金属を含有していても良い。銀の溶出量が400ppbを超えると、マイグレーション耐性が著しく低下するので好ましくない。ここで、異なる金属を含有するとは、配線中に含有されていても良いし、金属配線の表面の一部に存在しても良い。異なる金属が金属配線の表面の一部に存在するとは、例えば、本発明の金属配線と部品を接続する際に、ハンダ金属が金属配線を被覆する様な場合や、部分的にニッケル/金めっきやスズめっき等が形成された場合などを意味している。
本発明の金属配線は、銀を用いるにも関わらず、イオンマイグレーション耐性に優れるものである。イオンマイグレーションは、電界の影響で配線や電極の金属成分が、非金属媒体の上や内部を横切って移動する現象であり、電界中に配置された金属配線に起こるものである。本発明の金属配線は、隣接する金属配線間の電界強度が0.001V/μm~400V/μmの範囲で使用できるものであるが、小型の家電製品等では、0.001V/μm~20V/μmの範囲で使用できれば、特に問題は無い。ここで、前記電界強度は、対象とする金属配線間に印加されている電場を配線間の距離で除した値である。
イオンマイグレーションが発生する際には、電位差の存在する少なくとも2本の金属配線が存在する。本発明においては、この2本の金属配線を隣接する金属配線と定義する。隣接する金属配線は、直線上の金属配線が平行に配置されていても良いし、直線状の配線の横に、屈曲部のある配線の角部が隣接していても良く、金属配線を使用する目的に応じて、任意の形態を選択すれば良い。
通常、上記電位差の存在する2本の金属配線間の最短距離部分において、電界強度が最も大きくなるため、イオンマイグレーションは、金属配線間の最短距離となる部分が、最も起こりやすくなる。従って、隣接する2本の金属配線間の距離は、配線間の最短距離を考えれば良く、金属配線を利用するデバイスや製品の仕様、目的によって、適宜選択することができるが、小型家電製品等に用いられる場合は、隣接する金属配線間の距離は、0.1μm~20mmの範囲にあるものを、特に好適に用いることができる。
本発明の金属配線は、長さに関しての制限は特に無いが、データセンターに使用される様な、大型の制御基板上に形成された金属配線の場合には、100cm以下を考えれば良く、一般家電製品等に使用される基板上に形成される金属配線では、20cm以下の長さの配線を考えれば良い。
本発明の金属配線は、前記電気化学測定によって規定される銀の溶出量が、金属配線の全長にわたって均一であることが好ましいが、銀の溶出量が400ppbよりも低い値であれば、分布があっても良い。
また、前述の様に、イオンマイグレーションは、電界強度が最も大きい金属配線間、すなわち金属配線間の最短距離となる部分で、最も起こりやすくなる。前述の電気化学測定によって規定される銀の溶出量が400ppbを超えない組成が、少なくとも、隣接する2本の金属配線が最短距離となる領域において実現されていれば良い。隣接する2本の金属配線が最短距離となる領域とは、金属配線の最短距離部分を中心点として、金属配線に沿って中心点から金属配線厚みの1000倍の距離に相当する範囲を考えれば良い。
本発明において、金属配線の厚みとは、金属配線が、基材上に形成されている場合には、基材面から、配線の厚さ方向の頂点までの距離のことを示す。金属配線が線材の場合、線材の断面が円形、もしくは楕円形の場合には、線材の直径、および、長経を線材の厚みとすれば良く、線材断面が矩形の場合には、対角線の長さを厚みと考えれば良い。金属配線の断面が異形の場合には、断面の一番長い長さを配線の厚みと考えることができる。
本発明の金属配線の製造は、市販の銀線等に銅など、銀よりもイオン化傾向の大きい金属を被覆することで達成される。被覆の方法は、特に限定されることなく、公知慣用の方法を、目的に応じて選択すれば良いが、例えば、銀線を銅で被覆する場合には、銀線に無電解銅めっきを実施する方法や、銀線をカソードとして電解銅めっきを実施する方法が挙げられる。また、銀よりもイオン化傾向の大きい金属の金属線に、銀を被覆しても良い。銅線に銀を被覆する場合には、銅線に無電解銀めっき、もしくは、電解銅めっきを実施しても良い。
本発明の金属配線の断面形状は、必要な電気伝導の目的が達成される限り、特に制限はなく、例えば、円形、半円形、楕円形、半楕円計、矩形など、任意の形状のものを、目的に応じて選択すれば良い。また、本発明においては、金属配線とは、線状のものだけでなく、配線端部の電極部も含有する。
本発明の前記金属配線は、その表面が絶縁性の材料で被覆されていても良い。金属配線の表面を被覆する方法は、例えば、線状の配線が一本ずつ被覆された状態でも良いし、前記隣接する金属配線が、複数まとめて被覆されていても良い。また、金属配線の全表面積が絶縁性材料で被覆されていても良いし、一部が絶縁性材料によって絶縁されていても良い。
前記、金属配線の表面が絶縁性材料で被覆される場合、表面を被覆する絶縁性材料は、1種類の材料でも良いし、複数の材料を併用することもできる。例えば、線状の金属配線を一本毎に被覆する場合、ポリ塩化ビニルやフッ素樹脂、架橋ポリエチレン、天然ゴム・合成ゴム等の絶縁性材料を好適に用いることができ、例えば加熱溶融した前記絶縁性材料に金属配線を浸漬した後、冷却して固化させ、表面を被覆する方法を用いることができる。また、絶縁性基材の材料として後述する種々の絶縁性材料の溶液、溶融液、分散液を、金属線に塗布、乾燥して金属配線の表面を被覆しても良い。
金属配線の表面が絶縁性材料で被覆される場合は、また、絶縁性の基材上に形成された複数の金属配線を異なる絶縁性基材で被覆しても良い。前記金属配線が絶縁性基材上に形成される場合、絶縁性基材としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、アクリル樹脂をグラフト共重合化した塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ウレタン樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリスチレン、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンスルホン(PPSU)、セルロースナノファイバー、シリコン、シリコンカーバイド、窒化ガリウム、サファイア、セラミックス、ガラス、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、アルミナ等が挙げられる。
また、前記絶縁性基材として、熱硬化性樹脂及び無機充填材を含有する樹脂基材を好適に用いることもできる。前記熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和イミド樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、オキセタン樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、シリコーン樹脂、トリアジン樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。一方、前記無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、マイカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ珪酸ガラス等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂と無機充填剤は、それぞれ1種で用いることも2種以上併用することもできる。
前記絶縁性基材の形態としては、フレキシブル材、リジッド材、リジッドフレキシブル材のいずれのものも用いることができる。より具体的には、前記絶縁性基材がフィルム、シート、板状に成形された市販材料を用いてもよいし、上記した樹脂の溶液、溶融液、分散液から、成形して用いてもよい。
本発明の金属配線が絶縁性基材上に形成される場合、上記の絶縁性基材と金属配線の間に、前記絶縁性基材と金属配線の接着性を向上させる絶縁性材料が、挿入されていても良い。
前記絶縁性基材上に、金属配線を製造する方法としては、例えば、前記絶縁性基材上に銀箔を貼り合わせた後、エッチングによって、目的とする幅の銀線を形成すれば良く、銀の表面を無電解めっき、電解めっき、もしくは、無電解と電解めっきの組み合わせにより、銀よりもイオン化傾向の大きい金属で被覆することで、本発明の金属配線を形成することができる。また、銀よりもイオン化傾向の大きい金属の箔を前記絶縁性基材上に貼り合わせた後、エッチングにより、目的とする幅の金属線を形成し、無電解銀めっき、電解銀めっき、もしくは、無電解銀、電解銀めっきの組み合わせにより、本発明の金属配線を形成することが可能である。
この様に、絶縁性基材上に形成された金属配線は、さらに、その上部を絶縁性材料で被覆することができる。この場合、金属配線の上部を被覆する絶縁性材料は、金属配線が形成された絶縁性基材と同じ材料であっても良いし、異なる絶縁性材料であっても良い。前記絶縁積基材上に形成された金属配線の上部を被覆する絶縁性材料は、前記絶縁性基材として記載した種々の材料を用いることができる。また、金属配線を用いる用途や使用に応じて、市販のカバーレイ、ボンディングシート、ソルダーレジスト等を用いて被覆しても良い。
このように金属配線が絶縁性材料で被覆された場合、断面を観察すると、金属配線層と絶縁性材料が積層された状態となっており、これを本発明における積層体と呼ぶ。本発明の積層体は、金属配線と絶縁性材料の組み合わせが単数であっても良いし、複数であっても良い。例えば、平面基材上に形成された金属配線層の上が絶縁性材料で被覆された構造が複数層積層された形態で形成されても良い。この様に、金属配線層が絶縁性材料で被覆された構造が複数層組み合わされて形成された積層体は、『多層化された』積層体と考えることができるが、本発明の積層体においては、異なる層の金属配線が、一箇所、もしくは、多数の箇所で接続されていても良い。
このような多層化された積層体は、金属配線と絶縁性材料を1層ずつ、積層して製造しても良いし、金属配線を絶縁性基材で被覆した構造を複数用意して、まとめて積層して製造しても良い。
本発明の前記積層体は、プリント配線板として好適に用いることができる。プリント配線板は、絶縁の基材上や絶縁性材料の内部に、目的に応じた形状の前記金属配線が作製されて、電気回路が形成されたものである。
本発明のプリント配線板は、部品は実装されず、絶縁の基材上や絶縁性材料の内部に、目的に応じた形状の前記金属配線が作製されて、電気回路が形成されたものであっても良いし、各種電子部品が実装されたものであっても良い。
本発明の金属配線は、電源線や信号線など、電気を伝導するための絶縁信頼性の高い金属配線を与えることができ、種々の電気配線、プリント配線板、MID(成型回路基板)などに好適に用いることができる。
以下、実施例および比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例および比較例において、「部」および「%」は、いずれも質量基準である。
[作製例1]
直径2mmの銀線を準備し、先端から1cmの銀線の表面を、無電解銅めっき液(ローム・アンド・ハース電子材料株式会社製「CIRCUPOSIT6550」)中に35℃で14分間浸漬することにより、銅めっき層(膜厚0.34μm)を形成し、銅被覆銀線からなる金属配線を作製した。
前記銅被覆銀線の先端をエメリ紙で研磨し、前記銀被覆銅線の断面における銀と銅との面積比が、銀:銅=99.93:0.07となるようにした。金属溶出部が、銅被覆銀線の断面のみになる様に、この銅被覆銀線の側面をラッカー(絶縁性膜)で覆って金属配線試料とした。
[作製例2]
直径0.5mmの銀線を準備し、先端から1cmの銀線の表面を、無電解銅めっき液(ローム・アンド・ハース電子材料株式会社製「CIRCUPOSIT6550」)中に35℃で5分間浸漬することにより、銅めっき層(膜厚0.13μm)を形成し、銅被覆銀線からなる金属配線を作製した。
前記銅被覆銀線の先端をエメリ紙で研磨し、前記銀被覆銅線の断面における銀と銅との面積比が、銀:銅=99.9:0.1となるようにした。金属溶出部が、銅被覆銀線の断面のみになる様に、この銅被覆銀線の側面をラッカー(絶縁性膜)で覆って金属配線試料とした。
[作製例3]
直径0.5mmの銀線を、直径1mmの銀線に変更し、無電解めっき液への浸漬時間を5分から、11分に変更して銅めっき層(膜厚0.25μm)を形成した以外は、作製例2と同様にして、銀被覆銅線の断面における銀と銅との面積比が、銀:銅=99.9:0.1である金属配線試料を作製した。
[作製例4]
直径0.5mmの銀線を、直径2mmの銀線に変更し、無電解めっき液への浸漬時間を5分から、20分に変更した以外は、作製例2と同様にして、銀被覆銅線の断面における銀と銅との面積比が、銀:銅=99.9:0.1である金属配線試料を作製した。
[作製例5]
作製例3で作製した金属配線を4本束ねることによって、作製例4と銀:銅比率、断面積が同じ金属配線を作製した。
[作製例6]
直径1mmの銀線を準備し、先端から1cmの銀線の表面を、電解銅めっき液(奥野製薬工業株式会社製、トップルチナSF)に浸漬し、5分間電解銅めっきを実施することにより、銀線上に2.5μm厚の銅めっき層を形成し、銅被覆銀配線を作製した。前記銅被覆銀線の先端をエメリ紙で研磨し、前記銀被覆銅線の断面における銀と銅との面積比が、銀:銅=99:1となるようにした。金属溶出部が、銅被覆銀線の断面のみになる様に、この銅被覆銀線の側面をラッカー(絶縁性膜)で覆って金属配線試料とした。
[作製例7]
直径2mmの銀線を準備し、先端から1cmの銀線の表面を、電解銅めっき液(奥野製薬工業株式会社製、トップルチナSF)に浸漬し、10分間電解銅めっきを実施することにより、銀線上に5μm厚の銅めっき層を形成し、銅被覆銀配線を作製した。前記銅被覆銀線の先端をエメリ紙で研磨し、前記銀被覆銅線の断面における銀と銅との面積比が、銀:銅=99:1となるようにした。金属溶出部が、銅被覆銀線の断面のみになる様に、この銅被覆銀線の側面をラッカー(絶縁性膜)で覆って金属配線試料とした。
[作製例8]
作製例6で作製した金属配線を4本束ねることによって、作製例7と銀:銅比率、断面積が同じ金属配線を作製した。
[作製例9]
直径2mmの銀線を準備し、先端から1cmの銀線の表面を、電解銅めっき液(奥野製薬工業株式会社製、トップルチナSF)に浸漬し、銀線上に54μm厚の銅めっき層を形成し、銀:銅面積比率の異なる銅被覆銀配線を作製した。前記銅被覆銀線の先端をエメリ紙で研磨し、前記銀被覆銅線の断面における銀と銅との面積比が、銀:銅=90:10となるようにした。金属溶出部が、銅被覆銀線の断面のみになる様に、この銅被覆銀線の側面をラッカー(絶縁性膜)で覆って金属配線試料とした。
[作製例10、11]
直径0.5mmの銀線を準備し、先端から1cmの銀線の表面を、電解銅めっき液(奥野製薬工業株式会社製、トップルチナSF)に浸漬し、時間を変えて電解銅めっきを実施することにより、銀線上に銅めっき層を形成し、銀:銅面積比率の異なる銅被覆銀配線を作製した。前記銅被覆銀線の先端をエメリ紙で研磨し、前記銀被覆銅線の断面における銀と銅との面積比が、銀:銅=70:30、50:50となるようにした。金属溶出部が、銅被覆銀線の断面のみになる様に、この銅被覆銀線の側面をラッカー(絶縁性膜)で覆って金属配線試料とした。
[作製例12]
直径0.5mmの銅線を準備し、先端から1cmの銅線の表面を、置換型無電解銀めっき液(大和化成株式会社製「ダインシルバーEL-3S」)中に50℃で5分間浸漬することにより、導線の表面を置換した銀めっき層(膜厚0.13μm)を形成し、銀被覆銅線からなる金属配線を作製した。
前記銅被覆銀線の先端をエメリ紙で研磨し、前記銀被覆銅線の断面における銀と銅との面積比が、銀:銅=0.1:99.9となるようにした。金属溶出部が、銅被覆銀線の断面のみになる様に、この銅被覆銀線の側面をラッカー(絶縁性膜)で覆って金属配線試料とした。
[作製例13]
(銀粒子分散体の調製)
エチレングリコール45質量部及びイオン交換水55質量部の混合溶媒に、分散剤としてポリエチレンイミンにポリオキシエチレンが付加した化合物を用いて平均粒径30nmの銀粒子を分散させることによって、ナノサイズの銀粒子分散体を調製した。
(金属配線の形成)
直径0.5mmの銅線を準備し、先端から1cmの銅線の表面を、前記銀粒子の分散体に浸漬し、ディップコート法(銅線の引き上げ速度4mm/s)によって、銅線の表面に銀ナノ粒子塗膜を形成した。次いで、180℃で5分間、加熱して乾燥させ、厚さ0.1μmの銀ナノ粒子層を形成し、銀被覆銅線とした。
前記銀被覆銅線の先端をエメリ紙で研磨し、前記銀被覆銅線の断面における銀と銅との面積比が、銀:銅=0.1:99.9となるようにした。金属溶出部が、銅被覆銀線の断面のみになる様に、この銅被覆銀線の側面をラッカー(絶縁性膜)で覆って金属配線試料とした
(比較作製例1)
無電解銅めっき液への浸漬時間を20分から、11分に変更する以外は、作製例4と同様にして、銀線上に銅めっき層(膜厚0.13μm)を形成し、銅被覆銀線からなる金属配線を形成した。
作製例4と同様にして、前記銅被覆銀線の先端をエメリ紙で研磨し、前記銀被覆銅線の断面における銀と銅との面積比が、銀:銅=99.95:0.05となるようにした。金属溶出部が、銅被覆銀線の断面のみになる様に、この銅被覆銀線の側面をラッカー(絶縁性膜)で覆って金属配線試料とした。
(比較作製例2)
直径2mmの銀線を準備し、片方の先端をエメリ紙で研磨し、断面における銀と銅との面積比が、銀:銅=100:0となる銀線を得た。
(実施例1~13、及び比較例1、2)
上記作製例で作製した金属配線を用い、下記に記すウォータードロップ試験によるエレクトロケミカルマイグレーション耐性の評価を行った結果を表1、表2に示す。
(エレクトロケミカルマイグレーション耐性の評価方法)
金属配線のエレクトロケミカルマイグレーション耐性を評価するために、強制的にエレクトロケミカルマイグレーションを発生させるウォータードロップ試験を実施した。陽極および陰極として、上記作製例、比較作製例で作製した金属配線を用い、ガラス基板上に両電極間のギャップが約1.1mmとなるように設置した。電極上に純水を滴下し、さらにカバーガラスをかぶせた。金属配線のギャップ間にポテンショスタットで15Vの電圧を印加して、ギャップ間の電圧をモニタし、電圧が10Vに低下するまでの時間を短絡時間として判定した。短絡時間が60秒以上のものを、耐マイグレーション性良好と判断し、以下の基準で耐マイグレーション性を評価した。
(エレクトロケミカルマイグレーション耐性の評価基準)
A 180秒以上で短絡
B 120秒以上180秒未満で短絡
C 60秒以上120秒未満で短絡
D 10秒以上60秒未満で短絡
E 10秒未満に短絡
Figure 2023127140000002



Figure 2023127140000003
(実施例14~17、及び比較例3、4)
上記作製例、および比較作製例で作製した金属配線を用い、下記に記す電気化学測定によって溶出した銀の溶出量を測定した。
<銀溶出量の評価方法>
金属配線からの銀溶出量を測定する方法として、、容量300mlのフラスコを用い、三電極法なる電気化学測定(図3)を用いた。作用極に上記作製例及び比較作製例で作製した金属配線を面積が、0.5cmとなるように本数を設定して評価した。対極には白金からなる電極を用い、対極の面積は0.5cm以上とした。参照極として飽和銀塩化銀電極を用いた。電解液として、200mlの硫酸ナトリウム水溶液(濃度;100ppm)を用い、前記作用極と前記対極とは、前記電解液中に浸漬させ、向かい合わせて配置した。
前記電解液と前記参照極の溶液とは、飽和KCL溶液を寒天で固めた塩橋でつないだ。前記電解液側の前記塩橋の先端は、前記電解液を満たしたルギン管と接続し、前記ルギン管の先端は、前記作用極から数mm程度の位置に配置した。定電流電解測定に用いる制御装置として、ポテンショスタット(北斗電工株式会社製、HA―501)を用いた。電流電解測定の条件として、1mA/cmの電流密度で10分間電圧を印加し、電解液に露出する作用極の面積は0.5cmとなるように設定した。銀の溶出率の測定装置として、ICP―MS分析装置(Agilent社製、Agilent 8900)を用いて、電解液中の銀の溶出率を測定した。表3に電気化学測定による金属配線の溶出量と前記ウォータードロップ試験によるマイグレーション耐性の評価結果を示す。






Figure 2023127140000004
以上の実施例、比較例の結果から、電気化学測定によって、銀の溶出量が400ppb以下である、銀を用いる配線では、強制的にエレクトロケミカルマイグレーションを発生させるウォータードロップ試験においても、短絡が抑制され、充分なエレクトロケミカルマイグレーション耐性を有していた。また、銀の溶出量が400ppb以下である銀を用いた配線の様態は、その表面の一部が銅で被覆され、銅の被覆する面積が表面積で0.07%以上が好適であった。

Claims (6)

  1. 銀を使用する金属配線であって、下記電気化学測定法によって、溶出する銀の溶出率が400ppb以下である表面組成を有することを特徴とする金属配線。
    (電気化学測定法)
    電気化学測定法として、作用極、対極、および参照極からなる三電極法を用い、前記作用極として、金属配線を用い、下記電解液に露出する。前記対極として、不溶性金属の白金線材もしくは板材として使用し、前記参照極としては、飽和銀塩化銀電極を用い、前記参照極の溶液としては、飽和KCl溶液を使用する。
    電解液として、硫酸ナトリウム水溶液(濃度:100ppm)を使用し、前記作用極と前記対極を前記電解液中に浸漬させ、向かい合わせて配置する。
    前記電解液と前記参照極の溶液は、飽和KCl溶液を寒天で固めた塩橋でつなぎ、前記電解液側の前記塩橋の先端は、前記電解液を満たしたルギン管と接続する。
    電流および電圧の制御に用いる制御装置として、ポテンショスタット(北斗電工株式会社製、HA―501)を使用し、電解測定の条件として、1mA/cmの電流密度となるように、10分間電圧を印加する。電圧の印加後、直ちに前記作用極を前記電解液から引き上げ、電解液中に溶出した銀の濃度を測定する。
    前記電解液中に溶出した銀の濃度を測定する装置としては、ICP―MS分析装置(Agilent社製、Agilent 8900)を用いる。
  2. 銀の表面部分に対し、表面積で0.07%以上99.9%以下の銅で被覆されたことを特徴とする請求項1記載の金属配線。
  3. 隣接する金属配線間の電解強度が0.001V/μm~400V/μmの範囲であることを特徴とする請求項1または2記載の金属配線。
  4. 隣接する金属配線間の距離(間隔)が0.1μm~20mmの範囲であることを特徴とする請求項1~3いずれか1項記載の金属配線。
  5. 請求項1~4いずれか1項記載の金属配線を用いたことを特徴とする積層体。
  6. 請求項5記載の積層体を用いたことを特徴とするプリント配線板。
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