JP2023123186A - プレス成形品の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】加熱された加熱ワークをプレス成形位置まで搬送する時間において、加熱ワークの温度降下を効率よく緩和する。【解決手段】プレス成形品の製造方法は、加熱装置14で少なくとも2枚の板状のワークW1、W2を同時に加熱する加熱工程と、2枚の加熱ワークW1、W2をプレス機20まで搬送する搬送工程と、2枚の加熱ワークW1、W2をプレス機20により加工するプレス工程と、を備える。搬送工程では、2枚の加熱ワークW1、W2は、互いに対向する状態で保持され、且つ、2枚の加熱ワークのうち第1加熱ワークW1の端の少なくとも一部において、前記第1加熱ワークの端を含む端部領域は、第2加熱ワークW2に向かって曲がった形状を有し、且つ、第1加熱ワークW1の端と第2加熱ワークW2との対向方向の距離Dが、2枚の加熱ワークの対向方向の最大間隔Dmaxよりも小さくなっている。【選択図】図1

Description

本発明は、プレス成形品の製造方法に関する。
従来、所定の温度まで加熱した素材をプレス機でプレスする技術が用いられている。例えば、熱間プレスでは、素材である熱間プレス用鋼板をオーステナイト域(約900℃以上)まで加熱し,熱間でプレス成形する。これにより、成形加工とともに焼入れ処理を施し、例えば1500MPa級以上の強度を有するプレス成形品を得ることができる。一般的な熱間プレスでは、焼入れはプレス成形時に金型との接触熱伝達により急冷されることで施される。このため、十分な焼入れの効果を得るためには、焼入れ開始温度におおよそ相当するプレス成形開始時の素材の温度を所定温度以上に確保する必要がある。この場合、プレス成形開始時の所定温度は、素材にもよるが、例えば700℃以上である。
特許第5910305号公報及び特許第5910306号公報には、重ね合わせられた導電性の複数の板状ワークに電極を取り付けて通電することにより複数の板状ワークを加熱する工程を有する熱間プレス成形方法が開示されている。加熱された複数の板状ワークを通電位置とは異なる所定のプレス位置に配置される。プレス位置に配置された複数の板状ワークはそれぞれプレス成形される。複数の板状ワークを通電によって同時に加熱することで、生産性の向上が図られる。
特開2019-177394号公報に開示の熱間プレス加工方法では、第1ワークと第2ワークを各々互いに重ねることなく加熱して、上型と下型の間に搬入し、第1ワークの上に第2ワークが重なった姿勢にして、上型を下降させてプレスする。プレス工程の前後において、上型とは独立して型具を下降させ、第1ワーク及び第2ワークを塑性変形させる。これにより、第1ワークと第2ワークの重なり部分が互いに係合してずれない状態となる。また、第1ワークを運搬するアームと、第2ワークを運搬するホルダを備える搬入装置が開示されている。
上記従来技術においては、ワークの搬送中に熱が放散してワークの温度が低下する。その結果、ワークをプレス機の金型に搬入する際にワークに必要な温度を維持できず、プレス成形品の焼き入れが十分になされないおそれがある。
そこで、特許第5814669号公報には、ホットプレスを行う生産ラインの各工程間で加熱状態のパネル状被搬送物を保持して搬送するホットプレス用搬送装置が開示されている。ホットプレス用搬送装置は、加熱状態の被搬送物を保温カバーで覆いながら搬送する。これにより、搬送中の被搬送物を焼き入れに必要な温度に維持する。
また、特許第4673656号公報に開示の熱間プレス成形装置は、被加工材である金属板の加熱装置として、誘導加熱又は通電加熱による1次加熱手段と、輻射伝熱による2次加熱手段とを有する。1次加熱手段から熱間プレス成形金型までの搬送装置に、輻射伝熱による2次加熱手段が配置される。輻射伝熱による2次加熱により、金属板を均一に加熱でき、金属板の温度偏差を少なくできる。
特許第5910305号公報 特許第5910306号公報 特開2019-177394号公報 特許第5814669号公報 特許第4673656号公報
発明者らは、熱間プレスの素材を薄肉化すると、素材を加熱した後にプレス機まで搬送する間の温度降下がプレス成形品の品質に影響し得ることに気付いた。そこで、搬送中の素材の温度降下を抑える方法を検討した。検討において、上記従来技術のように、搬送中の素材を保温カバーで覆うだけでは、十分に温度降下を抑えるのが難しい場合があることがわかった。また、搬送中に、素材を加熱する2次加熱手段を設けることも考えられる。しかし、この場合、2次加熱手段のための熱源を含む設備を搬送経路上に追加する必要がある。これにより、設備が大型化するとともに、設備コストや運転コストの増大に繋がる可能性がある。
そこで、本願は、加熱された加熱ワークをプレス成形位置まで搬送する時間において、加熱ワークの温度降下を効率よく緩和することができるプレス成形品の製造方法を開示する。
本発明の実施形態におけるプレス成形品の製造方法は、加熱装置により少なくとも2枚の板状のワークを同時に加熱する加熱工程と、前記加熱工程にて加熱された前記2枚の加熱ワークをプレス機まで搬送する搬送工程と、前記搬送工程にて前記プレス機まで搬送された前記2枚の加熱ワークを前記プレス機により加工するプレス工程と、を備える。前記搬送工程では、前記2枚の加熱ワークは、互いに対向する状態で保持される。前記2枚の加熱ワークのうち第1加熱ワークの端の少なくとも一部において、前記第1加熱ワークの端を含む端部領域は、第2加熱ワークに向かって曲がった形状を有し、且つ、前記第1加熱ワークの端と前記第2加熱ワークとの前記2枚の加熱ワークの対向方向の距離が、前記2枚の加熱ワークの前記対向方向の最大間隔よりも小さくなっている。
本開示によれば、プレス成形における素材の加熱後からプレス成形を開始するまでの搬送時間において、加熱ワークの温度降下を、効率よく緩和することができる。
本実施形態に係るプレス製造ラインの概略を示す図である。 図1に示す搬送中の加熱ワークの一例を示す図である。 図2に示す状態の加熱ワークの放射熱を示す図である。 平板の加熱ワークを垂直方向に重ねた状態の放射熱を示す図である。 第1加熱ワークW1の対向方向に垂直な1方向の両端部に傾斜部が設けられる場合の例を示す斜視図である。 第1加熱ワークW1の対向方向に垂直な仮想平面内の2方向の両端部に傾斜部が設けられる場合の例を示す斜視図である。 搬送工程における2枚の加熱ワークの変形例を示す図である。 搬送工程における2枚の加熱ワークの変形例を示す図である。 搬送工程における2枚の加熱ワークの変形例を示す図である。 搬送工程における2枚の加熱ワークの変形例を示す図である。 搬送工程における2枚の加熱ワークの変形例を示す図である。 図1の搬送装置の構成例を示す側面図である。 図12の搬送装置の第2アームが開いた状態を示す側面図である。 図1の搬送装置の構成例を示す他の方向から見た側面図である。 本実施形態に係るプレス製造ラインの変形例を示す図である。 図16は、図1に示すトレイの上面図である。 図16に示すトレイを矢印Fの方向から見た側面図である。 (a)は、実施例の鋼板の配置を示し、(b)は、比較例1の鋼板の配置を示す図である。 図19は、測定結果としての上の鋼板の平均降温速度のグラフである。 図20は、測定結果としての下の鋼板の平均降温速度のグラフである。
プレス成形において、プレス成形開始時の温度は、素材の加熱温度、及び素材の加熱後にプレス成形用の金型まで搬送する時間内にどれだけ温度が降下するかにより左右される。素材の加熱温度については、冶金的な条件によって決まる。また、加熱後の金型までの搬送時間については設備構成や仕様によって決まる。その搬送の間の温度の降下量は、素材の熱容量に依存する。例えば、鋼板の場合は主に表裏面からの大気への熱伝達と熱放射(輻射)によって熱が逃げる。発明者らは、温度の降下量は、素材の板厚に大きく依存することを見出した。すなわち、前述のように素材の板厚が薄くなっていくと,同じ搬送時間でも温度の下降量が大きくなり、焼入れに必要な成形開始温度を確保することが困難になる場合がある。その結果、プレス成形品に必要な部品強度が得られなくなる場合が生じ得る。
発明者らは、熱源を追加せずに、搬送時の温度降下を抑制する方法を検討した。検討の結果、同時に加熱した複数の板状の素材(加熱ワーク)を、互いに対向する状態で同時に搬送する構成に想到した。この構成により、向かい合う加熱ワーク同士が互いの輻射熱を受けることで、熱量を補填し合うことができる。さらに、向かい合う加熱ワーク同士の間の空間には、両加熱ワークからの熱伝達により暖められた空気が滞留することによる保温効果を得ることができる。その結果、搬送中の温度降下を緩和することができる。
発明者らは、さらなる検討により、搬送中の2枚の加熱ワークの少なくとも一方の加熱ワークの端を含む端部領域が、対向する他方の加熱ワークの方向に曲がった形状を有する構成に想到した。これにより、加熱ワークの温度降下を効率よく緩和できることを見出した。下記実施形態は、この知見に基づくものである。
本発明の実施形態におけるプレス成形品の製造方法は、
加熱装置により少なくとも2枚の板状のワークを同時に加熱する加熱工程と、
前記加熱工程にて加熱された前記2枚の加熱ワークをプレス機まで搬送する搬送工程と、
前記搬送工程にて前記プレス機まで搬送された前記2枚の加熱ワークを前記プレス機により加工するプレス工程と、を備える。
前記搬送工程では、
前記2枚の加熱ワークは、互いに対向する状態で保持され、
前記2枚の加熱ワークのうち第1加熱ワークの端の少なくとも一部において、前記第1加熱ワークの端を含む端部領域は第2加熱ワークに向かって曲がった形状を有し、且つ、前記第1加熱ワークの端と前記第2加熱ワークとの前記2枚の加熱ワークの対向方向の距離が、前記2枚の加熱ワークの前記対向方向の最大間隔よりも小さくなっている。
上記製造方法によれば、搬送中において、第1加熱ワークの端の少なくとも一部において、端を含む端部領域が第2加熱ワークへ向かって曲がる形状を有し、且つ第1加熱ワークの端と第2加熱ワークとの距離が小さくなる。すなわち、第1加熱ワークの端部領域は、端に近づくに従って第2加熱ワークとの距離が近くなる形状を含む。これにより、2枚の加熱ワークの端部領域から放射される放射熱のうち対向する面に到達せずに外れる熱量を減らせるとともに、2枚の加熱ワークに挟まれた空間の暖められた滞留空気が逃げにくくなる。そのため、加熱された加熱ワークをプレス成形位置まで搬送する時間において、加熱ワークの端部領域を含む全体の温度降下を効率よく緩和することができる。
搬送における2枚の加熱ワークが対向する状態は、第1加熱ワークの板面(側面(すなわち端の面)以外の面)と第2加熱ワークの板面(側面以外の面)とが向かい合う状態である。互いに対向する2枚の加熱ワークの板面が平行になる部分がある場合、当該平行な板面に垂直な方向を対向方向とする。2枚の加熱ワークの板面に平行な部分がない場合、第1加熱ワークの重心における板面に対する法線方向を対向方向とする。2枚の加熱ワークの板面に平行な部分が複数ある場合、平行な部分の板面の面積が最も大きい部分の板面に垂直な方向を対向方向とする。
2枚の加熱ワークの対向方向から見て、第1加熱ワークの少なくとも一部が、第2加熱ワークと重なる。温度降下の緩和の観点から、第1加熱ワーク及び第2加熱ワークは、いずれも、対向方向から見て7割以上、好ましくは8割以上が、対向する他方の加熱ワークと重なることが好ましい。
第1加熱ワーク及び第2加熱ワークにおいて、端部領域は、ワークの端と端の近傍を含む領域である。ワークの端から一定の距離の範囲内を端部領域としてもよい。例えば、対向方向に垂直な方向において、ワークの端からワークの寸法の20%の距離の部分を端部領域としてもよい。
2枚の加熱ワークの対向方向は、これに限られないが、例えば、垂直方向(すなわち重力方向)であってもよい。この場合、2枚の加熱ワークは、垂直方向に重なる状態で搬送される。
前記搬送工程では、前記第1加熱ワークの前記対向方向に垂直な少なくとも1つの方向における両端において、前記第1加熱ワークの端を含む端部領域に前記第2加熱ワークに向かって曲がった形状を有し、且つ、前記第1加熱ワークの端と前記第2加熱ワークとの前記対向方向の距離が、前記最大間隔より小さくなっていてもよい。これにより、より効率よく、加熱ワークの温度降下を緩和することができる。なお、前記第1加熱ワークの前記対向方向に垂直な方向における両端のうち一方の端のみにおいて、第2加熱ワークとの前記対向方向の距離が、前記最大間隔より小さくなっていてもよい。この場合も、温度降下の緩和効率向上の効果が得られる。
例えば、前記第1加熱ワークの対向方向に垂直な少なくとも1つの方向における両端のうち一方端の端部領域と、他方端の端部領域の両方において、前記第2加熱ワークとの距離が、前記2枚の加熱ワークの対向方向の最大間隔より小さくなっていてもよい。この場合、前記一方端と前記他方端の間に、前記2枚の加熱ワークの対向方向の間隔が最大になる部分が存在してもよい。
前記搬送工程では、前記第2加熱ワークの端の少なくとも一部において、前記第2加熱ワークの端を含む端部領域は、前記第1加熱ワークに向かって曲がった形状を有してもよい。これにより、より効率よく、加熱ワークの温度降下を緩和することができる。
前記搬送工程では、前記第2加熱ワークとの距離が前記最大間隔より小さくなっている前記第1加熱ワークの端を含む前記第1加熱ワークの前記端部領域が、前記対向方向に垂直な仮想平面に対して前記第2加熱ワーク側へ傾斜している傾斜部を含んでもよい。これにより、傾斜部から放射される放射熱のうち第2加熱ワークに到達せずに外れる熱量を効率よく減少させることができる。
前記搬送工程では、前記第1加熱ワークの前記端部領域の前記傾斜部と、前記傾斜部に最も近い前記第2加熱ワークの端を含む部分との間の角度が、20°以上であることが好ましい。これにより、より効果的に、加熱ワークの温度降下を緩和することができる。同様の観点から、上記角度は、40°以上がより好ましく、60°以上がさらに好ましい。なお、第1加熱ワークの傾斜部に最も近い第2加熱ワークの端は、第1加熱ワークの傾斜部との距離が最も小さくなる位置にある第2加熱ワークの端である。第1加熱ワークの傾斜部の板面と、この傾斜部に最も近い第2加熱ワークの端を含む部分の板面とがいずれも平面である場合は、これら平面またはそれを延長した仮想平面の間の角度が、上記の第1加熱ワークの傾斜部と第2加熱ワークの部分との角度となる。第2加熱ワークの前記部分が、対向方向に垂直な仮想平面に対して第1加熱ワークへ向かって傾斜する傾斜部を含む場合、この第2加熱ワークの傾斜部の板面の平面又はそれを延長した仮想平面を基準として、上記角度を決定する。第1加熱ワークの傾斜部の板面が曲面の場合は、この傾斜部の板面において第1加熱ワークの端に最も近い位置において板面に接する仮想平面を基準として、上記角度を決定する。第1加熱ワークの傾斜部に最も近い第2加熱ワークの端を含む部分の板面が曲面を含む場合、その曲面の第2加熱ワークの端に最も近い位置の板面に接する仮想平面を基準として上記角度を決定する。なお、第1加熱ワークの傾斜部において、対向方向内側の板面すなわち第2加熱ワークへ向く板面と、その裏側の対向方向外側の板面すなわち第2加熱ワークとは反対側の板面とが平行でない場合、対向方向内側の板面を基準として上記角度を決定する。第2加熱ワークにおいても、第1加熱ワークの傾斜部に最も近い端を含む部分において、対向方向内側の板面(第1加熱ワークを向く板面)と対向方向外側の板面(第1加熱ワークとは反対側の板面)とが平行でない場合は、対向方向内側の板面を基準として、上記角度を決定する。
前記搬送工程では、前記第1加熱ワークの前記端部領域の前記傾斜部に対向する前記第2加熱ワークの端を含む端部領域が、前記対向方向に垂直な仮想平面に対して前記第1加熱ワーク側へ傾斜している傾斜部を含んでもよい。これにより、第2加熱ワークの傾斜部から放射される放射熱のうち第1加熱ワークに到達せずに外れる熱量をより効率よく減少させることができる。
前記搬送工程では、前記最大間隔より小さくなっている前記第1加熱ワークの端と前記第2加熱ワークとの前記対向方向の距離は、30mm以下であることが好ましい。これにより、より効果的に、加熱ワークの温度降下を緩和することができる。同様の観点から、上記距離は、20mm以下がより好ましく、10mm以下がさらに好ましい。なお、第1加熱ワーク及び第2加熱ワーク間の対向方向の最大間隔は、特に限定されないが、温度降下を緩和する観点からは、小さい方が好ましい。前記最大間隔は、例えば、300mm以下が好ましく、200mm以下がより好ましく、100mmm以下がさらに好ましい。
前記搬送工程では、搬送装置により前記2枚の加熱ワークが搬送されてもよい。この場合、前記搬送工程は、
前記搬送装置が備えるベースフレームに回転可能に取り付けられた一対の第1アームを駆動して、前記一対の第1アームの爪で、前記第1加熱ワークの両端部の下面を支持して持ち上げる工程と、
前記搬送装置が備える前記ベースフレームに回転可能に取り付けられた一対の第2アームを駆動して、前記一対の第2アームの爪で、前記第2加熱ワークの両端部の下面を支持して持ち上げる工程と、
前記搬送装置の前記一対の第1アームの爪で両端部の下面を支持された前記第1加熱ワークと、前記一対の第2アームの爪で両端部の下面を支持された前記第2加熱ワークを、互いに対向する状態で、搬送する工程と、
前記一対の第1アームを駆動して、前記一対の第1アームに支持された前記第1加熱ワークを、前記プレス機のプレス位置(第1プレス位置)に降ろす工程と、
前記一対の第2アームを駆動して、前記一対の第2アームに支持された前記第2加熱ワークを、前記プレス機のプレス位置(第2プレス位置)に降ろす工程と、を含んでもよい。
これにより、簡便な装置構成により、第1加熱ワークと第2加熱ワークが、互いに効率よく熱輻射を受けられる状態で搬送することができる。第1加熱ワーク及び第2加熱ワークの両端部をそれぞれ、第1爪及び第2爪で支持するため、2つのワークの両端部における間隔を安定して保つことができる。そのため、第1及び第2加熱ワークの温度降下を抑えつつ、簡便且つ効率よく搬送することができる。
上記製造方法において、前記搬送装置の前記一対の第1アームは、前記一対の第2アームとは異なる系統で駆動されてもよい。第1プレス位置は、第2プレス位置と異なる位置であってもよい。
前記搬送工程では、前記第1加熱ワーク及び前記第2加熱ワークのうち一方の加熱ワークは、上から見て上下に貫通する中空部を有するトレイ本体から上方に延びる少なくとも3本の第1支柱群の上に置かれ、前記第1加熱ワーク及び前記第2加熱ワークの他方の加熱ワークは、前記トレイ本体から上方に延びる少なくとも3本の第2支柱群の上に置かれ、且つ、前記一方の加熱ワークの上方において、垂直方向に前記一方の加熱ワークと重ねて配置された状態で、前記トレイ本体とともに搬送されてもよい。
上記の製造方法においては、加熱後は、第1加熱ワークと第2加熱ワークはトレイごと加熱装置から持ち上げ位置まで搬送される。そのため、加熱装置を出てから、例えば、搬送装置に持ち上げられるまで、第1加熱ワークと第2加熱ワークは、上下にすなわち垂直方向に重なった状態となる。また、第1支柱群に一方の加熱ワークが置かれ、その上方に第2支柱群に置かれた他方の加熱ワークが配置される。支柱群はトレイ本体から上方に延びて形成される。そのため、例えば、支柱群の上に置かれた第2加熱ワーク及び第1加熱ワークを、順次、又は同時に、搬送装置で上方に持ち上げる際に、支柱群が障害にならない。持ち上げ動作を簡単且つ迅速に行うことができる。結果として、第1及び第2加熱ワークの温度降下を抑えつつ、簡便且つ効率よく搬送することができる。
上記製造方法においては、前記加熱工程において、前記搬送工程と同様に、前記一方の加熱ワークは、前記トレイ本体から上方に延びる少なくとも3本の第1支柱群の上に置かれ、前記他方の加熱ワークは、前記トレイ本体から上方に延びる少なくとも3本の第2支柱群の上に置かれ、且つ、前記一方の加熱ワークの上方において、垂直方向に前記一方の加熱ワークと重ねて配置された状態で、加熱されてもよい。これにより、2枚の加熱ワークを、加熱工程の状態のまま、トレイ本体に載せて搬送することができる。
以下、図面を参照し、本発明の実施形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。各図に示された構成部材間の寸法比は、必ずしも実際の寸法比を示すものではない。
(実施形態1)
図1は、本実施形態に係るプレス成形品の製造方法に用いられるプレス製造ライン10の概略を示す図である。図1では説明のため、垂直方向をz方向とするxyz直交座標系を定義している。垂直方向は、重力方向と同じである。プレス製造ライン10は、加熱装置14と、搬送テーブル16と、搬送装置46と、マニピュレータ44と、プレス機20と、コントローラ22を備える。
加熱装置14において、2枚の加熱ワークW1、W2が同時に加熱される。加熱された加熱ワークW1、W2は、搬送テーブル16上で、持ち上げ位置RMまで搬送される。持ち上げ位置RMにおいて、加熱ワークW1、W2は、搬送装置46により、持ち上げられ、プレス機20のプレス位置まで搬送される。持ち上げ位置RMは、加熱装置14の出口14Aに近い位置が好ましい。搬送装置46は、加熱ワークW1、W2を互いに対向する状態で保持して、持ち上げ位置RMからプレス機20のプレス位置まで搬送する。プレス機20は、加熱ワークW1、W2をプレス成形する。これにより、加熱ワークW1、W2は、プレス成形品に加工される。
図2は、図1に示す搬送装置46によって搬送中の加熱ワークW1、W2の一例を示す図である。図2に示すように、加熱ワークW1、W2の搬送においては、2枚の加熱ワークW1、W2は、垂直方向に重なる状態で保持される。2枚の加熱ワークW1、W2は、互いに対向した状態で搬送される。本例では、対向方向は、一例として、垂直方向と同じである。また、2枚の加熱ワークW1、W2のうち第1加熱ワークW1の端の少なくとも一部において、端を含む端部領域が第2加熱ワークW2に向かって曲がった形状を有する。さらに、第1加熱ワークW1の端の少なくとも一部において、第2加熱ワークW2との対向方向の距離Dが、2枚の加熱ワークW1、W2の対向方向の最大間隔Dmaxよりも小さくなっている。すなわち、第1加熱ワークW1の端の少なくとも一部において、端を含む端部領域が、対向する第2加熱ワークW2の部分と平行でない部分を含む。図2の例では、第1加熱ワークW1の板面における端部領域より内側の領域において、第1加熱ワークの板面と、対向する第2加熱ワークの板面とが平行になっている。
このように、2つの加熱ワークの端部領域が互いに近づくよう配置された状態で加熱ワークを搬送することで、加熱ワークW1、W2の端部領域から放射される放射熱のうち対向する加熱ワークの面に到達せずに外れる熱量を減らせる。図3は、図2に示す状態の加熱ワークW1、W2の放射熱を示す図である。図4は、平板の加熱ワークを互いに対向させた状態の放射熱を示す図である。図3に示すように、加熱ワークW1、W2のうち一方の加熱ワークの端部領域を内向きに曲げて傾斜させることで、対向する他方の加熱ワークへ届く放射熱を増やすことができる。すなわち、図4に示すように、端部領域の傾斜がない平板の加熱ワークを重ねた状態では、加熱ワークの端部領域から放射した熱の一部(例えば、図4の矢印N1、N2の方向の放射熱)が対向する加熱ワークに到達せずに外れる。図3の例では、加熱ワークW1、W2の端部領域の傾斜により、加熱ワークに届かずに外れる放射熱を減らすことができる。また、2枚の加熱ワークW1、W2に挟まれた空間の暖められた滞留空気が、空間外へ逃げにくくなる。その結果、搬送中の加熱ワークW1、W2において、効率良く温度降下を緩和できる。
図2の例では、第1加熱ワークW1の端部領域が、第2加熱ワークW2へ向かって曲がり、且つ、第2加熱ワークW2の端部領域が、第1加熱ワークW1に向かって曲がっている。このように、2枚の加熱ワークW1、W2の双方の端部領域が互いに近づくように傾斜した状態で搬送することで、温度降下の緩和の効果が得られやすくなる。
具体的には、第1加熱ワークW1の端部領域は、対向方向に垂直な仮想平面に対して第2加熱ワーク側へ傾斜する傾斜部W1kを含む。同様に、第2加熱ワークW2の端部領域も、対向方向に垂直な仮想平面に対して第1加熱ワーク側へ傾斜する傾斜部W2kを含む。このように、互いに対向する第1加熱ワークW1の端部領域と、第2加熱ワークW2の端部領域の両方に、端に近づくに従って互いに近づく傾斜部が設けられる。これにより、熱放射及び滞留空気の漏れを効果的に抑えることができる。
第1加熱ワークW1の端部領域の傾斜部W1kと、傾斜部W1kに最も近い第2加熱ワークW2の端を含む部分の一例である傾斜部W2kとの間の角度θ1は、これに限定されないが、20°以上(θ1≧20°)とすることができる。これにより、効果的に温度降下を緩和できる。この観点から、θ1≧40°がより好ましく、θ1≧60°がさらに好ましい。
図2の例では、第1加熱ワークW1及び第2加熱ワークW2の傾斜部W1k、W2kは、平らな板状であるが、傾斜部W1k、W2kは、板面が曲面となるよう湾曲した形状であってもよい。例えば、傾斜部W1k、W2kは、曲率(R)を有してもよい。なお、傾斜部が湾曲する形態は、傾斜部において曲率が一定の形態に限られない。
温度降下の緩和効果を高める観点から、第1加熱ワークW1の端と第2加熱ワークW2との対向方向の距離Dは、小さい方がよい。これらに限定されないが、例えば、距離Dは、D≦30mmであることが好ましく、D≦20mmがより好ましく、D≦10mmがさらに好ましい。
図2の例では、第1加熱ワークW1の対向方向に垂直な方向であるx方向における両端において、第2加熱ワークW2との対向方向の距離Dが、最大間隔Dmaxより小さくなっている(D<Dmax)。このように、対向方向に垂直な方向の両端で、2枚の加熱ワーク間の距離を小さくすることで、第1加熱ワークW1と第2加熱ワークW2の間で暖められた滞留空気が、加熱ワーク間の空間からより漏れにくくなる。また、図2の例では、第1加熱ワークW1のx方向の両端それぞれの端部領域に傾斜部W1kが設けられる。両端の端部領域に傾斜部を設けることで、両端の端部領域からの放射熱のうち対向する加熱ワークに到達せずに外れる熱量が少なくなる。図2の例では、第2加熱ワークW2のx方向の両端部にも、傾斜部W2kが設けられる。
図2の例では、第1加熱ワークW1の対向方向に垂直な方向の両端における端部領域の傾斜部の形状は、同じである。これに対して、これら両端の傾斜部の形状(例えば、傾斜角、寸法、又は曲率等)は、互いに異なっていてもよい。
なお、第1加熱ワークW1又は第2加熱ワークW2の傾斜部は、対向方向に垂直な仮想平面内の互いに直交する2方向、例えば、x方向及びy方向の両端の端部領域で設けられてもよい。これにより、温度降下の緩和効果をより高めることができる。また、第1加熱ワークW1の端の全周にわたって、D<Dmaxとなるよう、2枚の加熱ワークW1、W2を配置してもよい。
図5は、第1加熱ワークW1のx方向の両端の端部領域に傾斜部が設けられ、y方向の両端の端部領域には傾斜部が設けられない場合の例を示す斜視図である。図5の例では、第1加熱ワークW1の端の一部において、端部領域が、第2加熱ワークに向かって曲がった形状を有する。図6は、第1加熱ワークW1のx方向及びy方向の両端の端部領域で傾斜部が設けられる場合の例である。図6の例では、第1加熱ワークW1の端の全体において、端部領域が、第2加熱ワークに向かって曲がった形状を有する。
図7~図11は、搬送工程における第1加熱ワークW1及び第2加熱ワークW2の配置の変形例を示す図である。図7の例では、第1加熱ワークW1の対向方向に垂直な1方向(一例としてx方向)の両端の端部領域に、傾斜部W1kが設けられる。第2加熱ワークW2は、平板である。この場合も、第1加熱ワークW1のx方向の両端のそれぞれと第2加熱ワークW2との対向方向の距離Dは、D<Dmaxとなる。図7の例では、第1加熱ワークW1の端は、第2加熱ワークW2の端と対向方向において重なる位置にある。これに対して、第1加熱ワークW1の端と、第2加熱ワークW2の端は、対向方向において重なっていなくてもよい。例えば、対向方向から見て、第2加熱ワークW2の端が、第1加熱ワークW1の端よりも内側に位置してもよい。このような場合、第2加熱ワークW2の対向方向内側の板面を延長した仮想平面と第1加熱ワークW1の端との対向方向の距離を、第1加熱ワークW1の端と第2加熱ワークW2との対向方向の距離Dとする。
図8の例では、第1加熱ワークW1の対向方向に垂直な1方向(一例としてx方向)の両端のうち一方の端の端部領域に傾斜部W1kが設けられる。傾斜部W1kに対向する第2加熱ワークW2の端部領域は、傾斜部は設けられず、水平方向に延びる。第2加熱ワークW2の対向方向に垂直な方向(x方向)の両端のうち一方の端の端部領域に傾斜部W2kが設けられる。傾斜部W2kに対向する第1加熱ワークW1の端部は、傾斜部は設けられず、水平方向に延びる。この場合も、第1加熱ワークW1のx方向の両端のそれぞれと第2加熱ワークW2との対向方向の距離Dは、D<Dmaxとなる。このように、2枚の加熱ワークW1、W2の対向する端部領域の一方に傾斜部が配置され、他方に傾斜部が配置されない状態で、加熱ワークW1、W2が搬送されてもよい。なお、図8は、第1加熱ワークの端の一部において、端部領域が第2加熱ワークへ曲がった形状を有する場合の例である。また、図7及び図8の例においても、第1加熱ワークW1の傾斜部W1kと、傾斜部W1kに最も近い第2加熱ワークW2の端を含む部分の間の角度θ1の好ましい範囲は、上記の図2の場合と同様である。
図9の例では、第1加熱ワークW1の傾斜部W1k及び第2加熱ワークW2の傾斜部W2kはいずれも対向方向に垂直な仮想平面に対して直角に延びている。第1加熱ワークW1の傾斜部W1kと、傾斜部W1kに最も近い第2加熱ワークW2の端を含む部分(傾斜部W2k)との間の角度θ1は、θ1=180°となる。このように、角度θ1は、θ1=180°であってもよい。しかし、角度θ1を大きくするには、ワークを曲げる角度を大きくする必要がある。この場合、ワークの加工のコストが高くなりやすい。ワークの加工性の観点から、θ1≦180°が好ましく、θ1≦160°がより好ましく、θ1≦140°がさらに好ましい。なお、加熱ワークW1、W2の傾斜部は、熱間プレス工程を経て、所望の製品形状に加工される場合がある。この場合、傾斜部の角度θ1は、目的とする製品形状にプレス成形しやすいように適切な角度とすることができる。
図9の例では、第1加熱ワークW1のx方向の両端は、第2加熱ワークW2に接している。このように、第1加熱ワークW1の端の少なくとも一部が第2加熱ワークW2に接した状態で、加熱ワークW1、W2が搬送されてもよい。これにより、温度降下の緩和効果をより高めることができる。
図10の例では、第1加熱ワークW1及び第2加熱ワークW2は、中央部が同じ方向に板厚方向に突出する凸形状を有し、端部領域が互いに近づく方向に曲がる形状を含むように成形されている。このように、中間成形された2枚のワークを、第1加熱ワークW1及び第2加熱ワークW2として対向した状態で搬送することができる。図10の例では、第1加熱ワークW1及び第2加熱ワークW2がハット部材である。ハット部材のフランジの一部が傾斜部W1k、W2kとなっている。変形例として、ハット部材のフランジの全体が傾斜部W1k、W2kであってもよい。なお、ハット部材は、天板と天板の両端から延びる一対の縦壁と、縦壁の天板とは反対の端から延びるフランジとを有する部材である。
図11の例では、第1加熱ワークW1及び第2加熱ワークW2は、全体的に曲率(R)を有するよう湾曲している。そのため、第1加熱ワークW1及び第2加熱ワークW2の端部領域の傾斜部W1k、W2kは、曲率(R)を有する。傾斜部W1k、W2kの板面は曲面となっている。このように、第1加熱ワークW1は、中央部が対向方向の外側に突出するように全体的に曲げられた形状であってもよい。第1加熱ワークW1又は第2加熱ワークW2の端部領域の傾斜部が曲率を有する場合、例えば、図11に示すように、第1加熱ワークW1の傾斜部の板面において最も第1加熱ワークの端に近い位置において板面に接する仮想平面と、第2加熱ワークW2の傾斜部の板面において最も第2加熱ワークの端に近い位置において第2加熱ワークW2の板面に接する仮想平面との角度を角度θ1とする。なお、図10及び図11の例において、角度θ1の好ましい範囲は、上記の図2の場合と同様である。
上記の図2、図5~図11に示す2枚の加熱ワークW1、W2は、図7の第2加熱ワークW2を除き、金属板を曲げ加工することにより形成できる。本実施形態では、加熱装置14において、曲げ加工された第1加熱ワークW1及び第2加熱ワークW2が加熱される。すなわち、ワークの曲げ加工は、加熱前に施される。ワークの曲げ加工は、例えば、プレス成形により行われる。
(プレス製造ラインの具体例)
以下に、図1に示すプレス製造ライン10の装置構成の例を説明する。プレス製造ライン10は、一例として、熱間プレス製造ラインである。図1に示す例では、加熱装置14からプレス機20への経路上に、搬送テーブル16が配置される。搬送テーブル16の端部は、加熱装置14の出口14Aに接続されている。加熱装置14の入口14Bは、例えば、他の搬送テーブル(図示せず)に接続されてもよい。搬送テーブル16上の一部が、持ち上げ位置RMとなっている。
(加熱装置)
加熱装置14は、加熱対象物(ワーク)を加熱する装置である。加熱装置14の例として、抵抗加熱炉、ガス加熱炉、遠赤外線加熱炉及び近赤外線加熱炉等が挙げられる。加熱装置14は、加熱炉に限られず、例えば、高周波誘導加熱装置、低周波誘導加熱装置、又は、加熱対象物に直接通電して加熱する通電加熱装置であってもよい。加熱装置14は、加熱室を有してもよい。加熱装置14は、図示しない駆動機構で回転駆動される複数の室内ローラーを加熱室の内部に備えてもよい。室内ローラーを回転させることにより、室内ローラー上の加熱対象物を搬送する。
(搬送テーブル)
搬送テーブル16は、図示しない駆動機構で回転駆動される複数の搬送ローラー26を備える。各搬送ローラー26が室内ローラーと同期して回転することで、搬送対象物(加熱ワーク)を搬送テーブル16と加熱装置14の加熱室内との間で搬送することができる。複数の搬送ローラー26は、間隔をおいて配置されている。搬送テーブル16は、加熱装置で加熱された加熱ワークが置かれる台の一例である。また、搬送テーブル16は、加熱ワークを加熱装置から持ち上げ位置まで搬送する搬送路の一例でもある。なお、搬送路の構成は、図1に示す搬送テーブル16に限られない。例えば、搬送路は、ベルトコンベア又はレール等であってもよい。また、図1に示す例では、持ち上げ位置は、搬送路にあるが、持ち上げ位置は搬送路上でなくてもよい。持ち上げ位置となる台を搬送路とは別に設けてもよい。
(プレス機)
プレス機20は、プレス対象物をプレス成形する下金型と上金型とを備える。下金型は、一例として、パンチ金型で構成され、上金型は、一例として、ダイ金型で構成される。上金型及び下金型には冷媒の流路が設けられてもよい。これにより、プレス時にプレス対象物から奪った熱を、冷媒を介して放出することができる。上金型と下金型の間に2つの加熱ワークが配置可能である。上金型と下金型は、相対的に移動可能である。プレス機20は、上金型と下金型の間に2つの加熱ワークが配置された状態で、上金型と下金型を相対的に近づけることで、2つの加熱ワークをプレス成形する。上金型と下金型の動作は、例えば、コントローラ22によって制御可能である。本例では、プレス機20の下金型と上金型は、同時に複数のプレス成形品を製造できる形状となっている。これは、2組の一対の金型が1台のプレス機に設けられる場合の例である。この例では、プレス機20の下金型と上金型の間に複数のワークが配置され、複数のワークが同時にプレスされる。なお、プレス機は、複数台設けられてもよい。例えば、1組の一対の金型を備えるプレス機が2台設けられてもよい。
(マニピュレータ)
マニピュレータ44は、搬送装置46を用いて搬送対象物を搬送テーブル16、プレス機20の間で搬送する。搬送装置46は、搬送対象物であるワークを持ち上げる、保持する、及び、置く動作をする。マニピュレータ44は、搬送装置46の位置及び姿勢を制御する。搬送装置46は、マニピュレータ44のエンドエフェクタであってもよい。マニピュレータ44は、搬送装置46を、搬送テーブル16の上方の位置と、プレス機20の2組の一対の金型(上金型と下金型)の間の位置との間で移動させる。マニピュレータ44は、少なくとも1つの軸を中心に回転可能な基部と、基部から延び少なくとも1つの関節を有する腕部とを備える。腕部の先に搬送装置46が回転可能に取り付けられる。なお、搬送装置46を移動させる移動装置は、マニピュレータに限られない。例えば、移動装置は、搬送テーブル16とプレス機20の間を結ぶレールと、レールに搬送装置46を上下可動に懸架する懸架装置を含む構成であってもよい。
(コントローラ)
コントローラ22は、加熱装置14、搬送テーブル16、プレス機20、マニピュレータ44を制御する。コントローラ22は、例えば、少なくとも1つのコンピュータを含む制御システムとして構成される。一例として、コントローラ22は、加熱装置14、搬送テーブル16、マニピュレータ44及びプレス機20の各々に設けられ、各装置を制御する制御部(例えば、回路又はプロセッサで構成される)を含んでもよい。この場合、コントローラ22は、各装置の制御部に対して、制御情報を供給し、プレス製造ライン10の全体の動作を制御する全体制御コンピュータを含んでもよい。後述する搬送装置46のアームの動作は、コントローラ22の一部、例えば、マニピュレータ44の制御部によって制御されてもよい。
(搬送装置)
図12は、図1の搬送装置46の横方向(y方向)から見た構成例を示す側面図である。図13は、図12の搬送装置46の第2アーム72が外側に開いた状態を示す図である。図14は、図1の搬送装置46の横方向(x方向)から見た構成例を示す側面図である。なお、図12~図14では、第2加熱ワークW2の上に第1加熱ワークW1が重ねられる場合の例を示している。
(ベースフレーム)
図12及び図13に示す例では、搬送装置46は、ベースフレーム48、ベースフレーム48に回転可能に取り付けられた一対の第1アーム71及び一対の第2アーム72を備える。ベースフレーム48の形状は、上から見ると長方形である。本例では、上下方向(垂直方向)をz方向とする。上下方向に垂直な面内の方向を横方向とする。横方向のうち、ベースフレーム48の長尺方向をy方向、短尺方向をx方向とする。
ベースフレーム48の上面には、マニピュレータ44に接続されるジョイント56が設けられる。ジョイント56は、ベースフレーム48がマニピュレータ44に対して上下方向を軸に回転可能となるように接続される。
(第1アーム及び第2アーム)
一対の第1アーム71は、横方向(x方向)に離間して配置される。一対の第1アーム71の各々は、ベースフレーム48から上下方向に延びる第1基部71aと、第1基部71aから横方向に屈曲して延びる第1爪71bを有する。各第1アーム71は、y方向の回転軸60を中心に回転可能にベースフレーム48に取り付けられる。第1基部71aの一方端部がベースフレーム48に回転可能に接続され、他方端部から第1爪71bが延びる。
一対の第2アーム72は、横方向(x方向)に離間して配置される。一対の第2アーム72の各々は、ベースフレーム48から上下方向に延びる第2基部72aと、第2基部72aから横方向に屈曲して延びる第2爪72bを有する。各第2アーム72は、y方向の回転軸60を中心に回転可能にベースフレーム48に取り付けられる。第2基部72aの一方端部がベースフレーム48に回転可能に接続され、他方端部から第2爪72bが延びる。
一対の第1爪71bの上下方向における位置と、一対の第2爪72bの上下方向における位置は互いに異なっている。図12及び図13に示す例では、上下方向において、第1基部71aの方が、第2基部72aより短くなっている。第1爪71bの方が、第2爪72bよりもベースフレーム48に近い位置にある。
図12及び図13に示す例では、第1アーム71の回転軸60と、第2アーム72の回転軸60は同軸である。これにより、ベースフレーム48に第1アーム71及び第2アーム72を効率よく配置することができる。なお、第1アーム71の回転軸60と、第2アーム72の回転軸60は同軸でなくてもよい。
(駆動部)
一対の第2アーム72は、第2駆動部により駆動される。第2駆動部は、一対の第2アーム72をベースフレーム48に対して回転させることで、一対の第2爪72bの横方向(x方向)の距離を変化させる。図12及び図13に示す例では、第2駆動部は、各第2アーム72に対して設けられるアクチュエータ82で構成される。
アクチュエータ82は、例えば、エアシリンダである。アクチュエータ82は、軸方向に移動する作動軸82Aの延び出し量を調整する。作動軸82Aの端部には、ピン82Bが設けられる。ピン82Bは、第2アーム72に固定されたリンク90の長穴に移動及び回転自在に挿入されている。
各アクチュエータ82が作動軸82Aを延び出した際には、図12に示すように、対応する第2アーム72が下方へ延び、一対の第2アーム72の一対の第2爪72bが互いに近づいた閉状態となる。また、各アクチュエータ82が作動軸82Aを後退させた際には、図13に示すように、一対の第2アーム72の一対の第2爪72bが互いに離れるよう移動して開状態となる。
一対の第1アーム71は、第1駆動部により駆動される。第1駆動部は、一対の第1アーム71をベースフレーム48に対して回転させることで、一対の第1爪71bの横方向(x方向)の距離を変化させる。第1アーム71を駆動する第1駆動部も、例えば、図12及び図13に示すアクチュエータ82と同様のアクチュエータを備える構成とすることができる。一対の第1アーム71も、第1駆動部により、一対の第1爪71bが互いに近づいた閉状態(図12参照)、又は、一対の第1爪71bが、閉状態よりも互いに離れた開状態になるよう制御される。なお、第1駆動部及び第2駆動部のアクチュエータは、エアシリンダに限られず、例えば、モータ、又は、液圧シリンダであってもよい。
一対の第1爪71bは、横方向に互いに近づいた状態すなわち閉状態で、第1加熱ワークW1の横方向両端部の下面を支持可能である。一対の第2爪72bは、横方向に互いに近づいた状態すなわち閉状態で、第2加熱ワークW2の横方向両端部の下面を支持可能である。
(第3アーム及び第4アーム)
図12、図13及び図14に示す例では、ベースフレーム48に、一対の第3アーム73及び一対の第4アーム74が回転可能に取り付けられる。また、図示しないが、一対の第3アーム73を駆動する第3駆動部、及び一対の第4アーム74を駆動する第4駆動部が、ベースフレーム48に設けられる。なお、図14において、第1~第4駆動部の図示を省略している。
一対の第3アーム73は、一対の第1アーム71の並ぶ方向(x方向)に垂直な方向(y方向)に並んで配置される(図14参照)。各第3アーム73は、第1アームの回転軸60に垂直な方向(x方向)の回転軸62を中心に回転可能にベースフレーム48に取り付けられる。各第3アーム73は、各第1アーム71と同様に構成することができる。各第3アーム73は、第3基部73a及び第3爪73bを有する。一対の第3爪73bと、一対の第1爪71bとで、第1加熱ワークW1の下面を支持する。本例では、第3爪73bのベースフレーム48からの距離は、第1爪71bのベースフレーム48からの距離と異なる。第3爪73bのベースフレーム48からの距離は、支持するワークの形状によって決めることができる。
一対の第4アーム74は、一対の第2アーム72の並ぶ方向(x方向)に垂直な方向(y方向)に並んで配置される(図14参照)。各第4アーム74は、第2アームの回転軸60に垂直な方向(x方向)の回転軸62を中心に回転可能にベースフレーム48に取り付けられる。各第4アーム74は、各第2アーム72と同様に構成することができる。各第4アーム74は、第4基部74a及び第4爪74bを有する。一対の第4爪74bと、一対の第2爪72bとで、第2加熱ワークW2の下面を支持する。本例では、第4爪74bのベースフレーム48からの距離は、第2爪72bのベースフレーム48からの距離と異なる。第4爪74bのベースフレーム48からの距離は、支持するワークの形状によって決めることができる。
(制御系統)
本実施形態では一例として、第1アーム71及び第2アーム72は異なる系統で駆動される。すなわち、第1アーム71の回転と、第2アーム72の回転は、互いに独立して制御される。また、第3アーム73及び第4アーム74も異なる系統で駆動される。第1アーム71と第3アーム73は同じ系統で駆動される。第2アーム72と第4アーム74は同じ系統で駆動される。なお、第1アーム71と第3アーム73は異なる系統で駆動されてもよい。第2アーム72と第4アーム74も異なる系統で駆動されてもよい。
(トレイを用いた搬送例)
第1加熱ワークW1及び第2加熱ワークW2は、垂直方向に重なった状態でトレイに載せられて持ち上げ位置RMまで搬送されてもよい。図15は、図1のプレス製造ライン10の変形例を示す図である。図15に示すプレス製造ライン10では、2枚の加熱ワークW1、W2が、トレイを用いて加熱及び搬送される。トレイ1は、加熱装置14及び搬送テーブル16において第1加熱ワークW1及び第2加熱ワークW2を載せるトレイである。トレイ1は、トレイ本体2と、トレイ本体2から上方に延びる支柱群3とを有する。支柱群3は、2枚の加熱ワークW1、W2のうち一方の加熱ワークを置くための第1支柱群と、他方の加熱ワークを置くための第2支柱群を有する。第1支柱群は、一方の加熱ワークの下面を支持可能に構成された少なくとも3本の支柱を含む。第2支柱群は、第1支柱群に支持された一方の加熱ワークの上方において他方の加熱ワークを支持可能に構成された少なくとも3本の支柱を含む。第1支柱群は、上から見て、支柱同士を結ぶ仮想直線が少なくとも1つの三角形を形成するよう配置される。第2支柱群は、上から見て第1支柱群とは異なる位置に配置され、且つ、上から見て支柱同士を結ぶ仮想直線が少なくとも1つの三角形を形成するよう配置される。第2支柱群は、いずれも第1支柱群のうち最も低い支柱よりも高い。
加熱装置14において、第2加熱ワークW2は、第1支柱群の上に置かれ、第1加熱ワークW1は、第2支柱群の上に置かれ、且つ、第2加熱ワークW2の上方に重ねて配置された状態で、加熱される。第1加熱ワークW1及び第2加熱ワークW2は、トレイ1に載せられた状態で、加熱装置14から搬送テーブル16上の搬送装置46による持ち上げ位置に搬送される。これにより、第1及び第2加熱ワークW1、W2は、加熱後から搬送装置46に持ち上げられるまでの期間に互いに対向する状態となる。そのため、温度降下が緩和される。
搬送テーブル16上の持ち上げ位置において、第1支柱群に置かれた第2加熱ワークW2及び第2支柱群に置かれた第1加熱ワークW1は、それぞれ搬送装置46の第2アーム72の第2爪72b及び第1アーム71の第1爪71bによって支持された状態で、同時に上方に持ち上げられて、搬送装置46によってプレス機20のそれぞれのプレス位置に搬送されてもよい。この時、第1アーム71を駆動して一対の第1爪71bを第1加熱ワークW1の下面に配置する動作と、第2アーム72を駆動して一対の第2爪72bを第2加熱ワークW2の下面に配置する動作とが同時に行われてもよいし、順次行われてもよい。トレイ1に載せられた第1及び第2加熱ワークW1、W2を同時に搬送装置46で持ち上げることで、搬送時間を短縮することができ、温度降下をさらに低減できる。また、第2支柱群に置かれた第1加熱ワークW1が搬送装置46の第1アーム71の第1爪71bによって上方に持ち上げられ、その後に第1支柱群に置かれた第2加熱ワークW2が搬送装置46の第2アーム72によって持ち上げられて、それぞれ、搬送装置46によってプレス機20のプレス位置に搬送されてもよい。搬送装置46が支柱群3のうち第1支柱群の上に置かれた第2加熱ワークW2及び第2支柱群の上に置かれた第1加熱ワークW1を、同時に、又は順次、上方に持ち上げる際に、支柱群3は障害にならない。
トレイ本体2は、上下方向に垂直に広がる形状であり、上下に貫通する中空部を含んでもよい。これにより、加熱工程において、トレイ本体2の下からの熱が第1加熱ワークW1及び第2加熱ワークW2に伝わりやすくなる。第1支柱群及び第2支柱群は、上から見てトレイ本体2の中空部の間に位置してもよい。これにより、トレイ本体2の下からの熱が、第1支柱群及び第2支柱群の周りの中空部を通って、第1支柱群に置かれた第2加熱ワークW2及び第2支柱群に置かれた第1加熱ワークW1により伝わりやすくなる。
(トレイ)
図16は、トレイ1を上から見た上面図である。図17は、図16に示すトレイ1を矢印Fの方向から見た側面図である。図16に示す例では、トレイ本体2は、上下方向に垂直な面に沿って広がる形状を有し、上下に貫通する中空部2Gを含む。上から見て、中空部2Gの領域の方が、トレイ本体2の構成部材の領域より広い。トレイ1は、トレイ本体2から上方に延びる複数の支柱3(3a、3b)を有する。複数の支柱3は、第2加熱ワークW2を載置可能な第1支柱群3aと、第1加熱ワークW1を、第2加熱ワークW2の上方に載置可能な第2支柱群3bとを含む。第1支柱群3a及び第2支柱群3bは、いずれも、上から見てトレイ本体2の中空部2Gの間に位置している。
(トレイ本体)
図16に示す例では、トレイ本体2は、枠2cと、枠2cの内側に架け渡される棒部材2fを有する。枠2cは、一対の縦枠2b及び一対の横枠2aを含む。一対の縦枠2bは、横方向に離間して平行に配置される。一対の横枠2aは、一対の縦枠2bの間で、縦方向に離間して平行に配置される。一対の縦枠2b及び横枠2aにより、上から見て長方形の枠2cを形成する。棒部材2fは、縦棒部材2dと、横棒部材2eを含む。縦棒部材2dは、一対の横枠2aの間に架け渡される。横棒部材2eは、一対の縦枠2bの間に架け渡される。枠2cの中に棒部材2fが格子状に配置される。
棒部材2f(縦棒部材2d及び横棒部材2eの少なくとも一方)は、枠2cにおける位置を調整可能に構成されてもよい。例えば、枠2cに、位置決め穴又は係止片が複数設けられてもよい。この場合、棒部材2fが、枠2cの穴又は係止片に、必要に応じて締結具等を用いて固定される。棒部材2fを固定する穴又は係止片の位置を変えることで、枠2cにおける棒部材2fの位置を調整することができる。
トレイ本体2の構成部材(図16の例では、枠2c及び棒部材2f)は、パイプ材であってもよいし、中実材であってもよい。また、トレイ本体2の構成部材は、断面がL字状のアングル材であってもよいし、断面がコの字状(U字状)のチャンネル材であってもよい。トレイ本体2の構成部材の材料は、特に限定されないが、耐熱性を有する材料、例えば、耐熱鋼等又はセラミックス等で形成される。構成部材の最高使用温度は、加熱装置で常用する900℃以上、加熱装置の上限設定温度である1050℃以下の範囲とすることが望ましい。構成部材として用いることのできる耐熱鋼(耐熱合金鋼)として、例えば、SCH22(0.4C-25Cr-20Ni)、SCH24(0.4C-25Cr-35Ni-Mo,Si)等が挙げられる。トレイ本体2の構成部材を耐熱合金鋼で形成すれば、加工や製作が容易となる。なお、上記のトレイ本体2の構成部材として用いることができる材料は、支柱3の材料として用いることもできる。
(支柱)
第1支柱群3aは、上から見て、支柱同士を結ぶ仮想直線が三角形を形成する少なくとも3本の支柱を含む。第2支柱群3bは、上から見て、支柱同士を結ぶ仮想直線が三角形を形成する少なくとも3本の支柱を含む。第2支柱群3bは、いずれも、上から見て第1支柱群3aとは異なる位置に配置される。第2支柱群3bは、いずれも、第1支柱群3aのうち最も低い支柱よりも高い。これにより、第1支柱群3a及び第2支柱群3bは、第1加熱ワークW1及び第2加熱ワークW2を垂直方向に重ねた状態で支持可能となる。
第2支柱群3bは、上から見て他方の加熱ワークが置かれる領域であって、一方の加熱ワークが置かれる領域と重ならない領域に配置される。また、第2支柱群3bは、上から見て、一方の加熱ワークが置かれる領域と重ならないように構成される。すなわち、第2支柱群3bは、一方の加熱ワークが、搬送装置46によって上方に持ち上げられる際に、一方の加熱ワークが第2支柱群3bに引っ掛からないように構成される。
図16に示す例では、一方の加熱ワーク(本例では第2加熱ワークW2)は、上から見て縁(端)に切欠きを有する。第2加熱ワークW2の切欠きに相当する領域に第2支柱群3bが配置される。このように、一方の加熱ワークの切欠き又は穴に相当する領域に第2支柱群3bを配置することで、上から見て一方の加熱ワークと重ならない領域に第2支柱群3bを配置することができる。なお、第1支柱群、第2支柱群、及び加熱ワークの構成は、図16に示す例に限られない。例えば、同じ形状の第1加熱ワークW1と第2加熱ワークW2が上から見てずれた位置に配置されてもよい。この場合、上から見て、第2加熱ワークW2の一部が第1加熱ワークW1と重ならないように、第1加熱ワークW1及び第2加熱ワークW2が配置される。第1加熱ワークW1の配置される領域であって、第2加熱ワークW2が配置される領域と重ならない位置に、第2支柱群3bが配置される。この場合、第2加熱ワークW2に、切り欠きや穴等を設けなくてもよい。
図17を参照し、第1支柱群3aのそれぞれの高さは、一方の加熱ワーク(本例では第2加熱ワークW2)の形状に応じた高さであり、第2支柱群3bのそれぞれの高さは、他方の加熱ワーク(本例では第1加熱ワークW1)の形状に応じた高さである。
[プレス成形品の製造工程の具体例]
上記のプレス製造ライン10を用いてプレス成形品を製造する工程の例を説明する。本実施形態におけるプレス成形品の製造工程は、上記のように、ワークを加熱する加熱工程、加熱ワークを搬送する搬送工程、及び、加熱ワークをプレスするプレス工程を有する。
(加熱工程)
加熱工程では、加熱装置14により少なくとも2枚の板状のワークW1、W2を同時に加熱する。ここで、複数のワークを同時に加熱する態様は、複数のワークの加熱の終了が同時であればよく、加熱の開始は、必ずしも同時でなくてもよい。また、複数のワークの加熱の終了時点が厳密に同時である場合の他、終了時点が若干ずれている場合も、複数のワークを同時に加熱する態様に含まれる。例えば、加熱した加熱ワークを搬送装置46で持ち上げる動作にかかる時間程度のずれがあっても、搬送中の加熱ワークの温度降下の観点から、ほぼ同時と見なすことができる。加熱が終了した加熱ワークは、加熱装置14のローラー13及び搬送テーブル16の搬送ローラー26の回転によって、加熱装置14の外へ出される。
(搬送工程)
搬送工程は、一例として、第1加熱ワークW1及び第2加熱ワークW2を加熱装置14から持ち上げ位置まで搬送する工程、第1加熱ワークW1を搬送装置46が持ち上げる工程、第2加熱ワークW2を搬送装置46が持ち上げる工程、第1及び第2加熱ワークW1、W2を搬送する工程、第1加熱ワークW1をプレス位置へ降ろす工程、及び、第2加熱ワークW2をプレス位置へ降ろす工程を含む。
第1加熱ワークW1を搬送装置46が持ち上げる工程の一例は次の通りである。搬送装置46のベースフレームに回転可能に取り付けられた一対の第1アーム71を駆動して、一対の第1アーム71の爪で、第1加熱ワークW1の両端部の下面を支持して持ち上げる。この時、一対の第1アーム71及び一対の第2アーム72を開状態にして、搬送装置46を下降させ、搬送テーブル16の搬送ローラー26上の第1加熱ワークW1に近づける。一対の第1アーム71を回転させて閉状態にすることで、一対の第1アーム71の第1爪を第1加熱ワークW1の両端部の下面の下方へ潜り込ませる。この状態で、搬送装置46を上昇させることで、第1加熱ワークW1の両端部の下面を一対の第1アーム71の第1爪で支持して持ち上げる。
第2加熱ワークW2を搬送装置46が持ち上げる工程の一例は次の通りである。搬送装置46は、第1加熱ワークW1の下面を一対の第1アーム71で支持して保持した状態で、一対の第2アーム72を駆動して、第2加熱ワークW2を持ち上げる。搬送装置46は、第1加熱ワークW1の持ち上げ動作と同様に、一対の第2アーム72の第2爪で、第2加熱ワークW2の両端部の下面を支持して持ち上げる。
搬送装置46は、一対の第1アーム71の第1爪で下面を支持された第1加熱ワークW1と、一対の第2アーム72の第2爪で下面を支持された第2加熱ワークW2を、第1加熱ワークW1の垂直方向において互いに重なる、すなわち、互いに対向する状態で、搬送する。そして、搬送装置46は、例えば、第2加熱ワークW2のプレス位置まで移動する。搬送装置46は、一対の第1アーム71で、第1加熱ワークW1の下面を支持して保持した状態で、一対の第2アーム72を駆動して開状態として、第2加熱ワークW2を、プレス機20のプレス位置に降ろす。その後、搬送装置46は、第1加熱ワークW1のプレス位置まで移動し、一対の第1アーム71を駆動して開状態とし、第1加熱ワークW1を、プレス機20のプレス位置に降ろす。
[加熱ワークの材料]
加熱ワークの材料は、成形可能な金属であればよい。加熱ワークの材料として、これらに限られないが、例えば、Fe系である炭素鋼やステンレス鋼等、Al系、およびTi系の材料等が挙げられる。また、加熱ワークは、めっき層を有してもよい。例えば、加熱ワークは、めっき鋼板であってもよい。めっき層としては、アルミニウム合金、アルミニウム系合金、亜鉛合金、または亜鉛系合金等のめっき層が挙げられる。
上記例では、加熱ワークは、全体にわたって厚みが一定である。これに対して、加熱ワークは部分的に厚みが異なる差厚板であってもよい。差厚板は、例えば、板厚の異なる鋼板の端部を突合せて接合したテーラードブランク材でもよい。
(他の変形例)
本発明は、上記実施形態に限られない。例えば、上記実施形態における第1加熱ワークW1と第2加熱ワークW2の位置は、互いに入れ替わってもよい。例えば、図7の例では、第2加熱ワークW2の上に第1加熱ワークW1が重ねて配置されるが、これとは逆に、第1加熱ワークW1の上に第2加熱ワークW2が重ねて配置されてもよい。図8、図10の例でも、同様に、第1加熱ワークW1と第2加熱ワークW2の上下の配置を入れ替えてもよい。また、上記の例では、2つの加熱ワークW1、W2の対向方向が垂直方向であるが、対向方向は垂直方向に対して傾いていてもよい。上記例(図7の例を除く)においては、第1加熱ワークW1を第2加熱ワークW2と称し、第2加熱ワークW2を第1加熱ワークW1と称してもよい。また、上記例では、第1加熱ワークの端部領域の全体が第2加熱ワークへ向かって曲がる形状となっているが、端部領域の一部が第2加熱ワークと平行であってもよい。この場合も、加熱ワークの温度降下を効率よく緩和する効果は得られる。例えば、第1加熱ワークの端部領域のうちワークの先端を含む若干部分が、第2加熱ワークの対向する部分と平行となっていてもよい。
搬送装置は、上記例に限られない。例えば、第3アーム73及び第4アーム74は省略してもよい。また、上記例では、一対の第1アーム71が並ぶ横方向と、一対の第2アーム72が並ぶ横方向がいずれもx方向で同じである。この変形例として、例えば、一対の第1アーム71がx方向に並び、一対の第2アーム72がx方向に垂直なy方向に並ぶ構成であってもよい。上記例では、第2アーム72が第1アーム71より長いが、第1アーム71が第2アーム72より長くてもよい。同様に、第3アーム73が第4アーム74より長くてもよい。
上記実施形態は、第1アーム71が複数対、第2アーム72が複数対設けられる。これに対して、第1アーム71が一対、第2アーム72が一対設けられてもよい。
ベースフレーム48は、横方向(x方向及びy方向の少なくともいずれか一方)において伸縮自在であってもよい。
上記例では、搬送装置46及びトレイ1は、第1加熱ワークW1と第2加熱ワークW2の対向方向が垂直方向と一致する状態で、第1加熱ワークW1と第2加熱ワークW2を搬送している。搬送装置46又はトレイ1の少なくとも一方は、第1加熱ワークW1と第2加熱ワークW2の対向方向が垂直方向に対して傾いた状態で、これらを搬送してもよい。なお、搬送装置46又はトレイ1によって、3枚以上の加熱ワークが同時に搬送されてもよい。すなわち、3枚以上の加熱ワークが1方向に重なり、且つ、そのうちの2枚が対向する状態で搬送される形態も本発明の実施形態に含まれる。
(実験例1)
鋼板を加熱し、加熱終了後の温度変化を、条件を変えて測定した。具体的には、下記の実験を行った。板厚0.8mmの鋼板の板面に熱電対を取り付けて温度を測定した。加熱炉で鋼板を950℃まで加熱し、加熱炉から出した後に搬送しながら温度降下を計測した。実施例及び比較例1、2の条件を下記のようにした。図18(a)は、実施例の鋼板の配置を示す。図18(b)は、比較例1の鋼板の配置を示す。
(実施例)鋼板2枚を上下(垂直方向)に重ねて、各鋼板の対向する2辺の端から20mmを内向きに角度30°曲げて傾斜部とした。2枚の鋼板の端の上下間距離を10mmとした。
(比較例1)平板の鋼板2枚を距離30mmで上下(垂直方向)に重ね、加熱・搬送した。
(比較例2)平板の鋼板1枚を単独で加熱・搬送した。
図19及び図20は、測定結果としての平均降温速度のグラフである。図19は、上の鋼板の測定結果、図20は、下の鋼板の測定結果を示す。測定した温度降下曲線から、出炉してからロボット搬送を終了するまでの約8秒間の平均降温速度を導出した。
測定結果では、平板1枚の条件の比較例2に対し、鋼板を上下2段に重ねて配置した条件の比較例1、実施例は、ともに、降温速度が低下した。すなわち、鋼板を上下2段に重ねて互いに対向した状態で搬送することで、温度降下の緩和効果が見られた。さらに、比較例1に対して、実施例では、端部領域の降温速度がさらに低下し,内側の測温位置との差が減少した。すなわち、平板2枚を上下2段に重ねた条件に対し,端部領域を内向きに折り曲げて上下2段に重ねた条件で搬送することで、鋼板において効率よく温度降下を緩和できることがわかった。
46 搬送装置
48 ベースフレーム
71 第1アーム
71b 第1爪
72 第2アーム
72b 第2爪
W1 第1加熱ワーク
W2 第2加熱ワーク

Claims (9)

  1. 加熱装置により少なくとも2枚の板状のワークを同時に加熱する加熱工程と、
    前記加熱工程にて加熱された前記2枚の加熱ワークをプレス機まで搬送する搬送工程と、
    前記搬送工程にて前記プレス機まで搬送された前記2枚の加熱ワークを前記プレス機により加工するプレス工程と、を備え、
    前記搬送工程では、
    前記2枚の加熱ワークは、互いに対向する状態で保持され、
    前記2枚の加熱ワークのうち第1加熱ワークの端の少なくとも一部において、前記第1加熱ワークの端を含む端部領域は第2加熱ワークに向かって曲がった形状を有し、且つ、前記第1加熱ワークの端と前記第2加熱ワークとの前記2枚の加熱ワークの対向方向の距離が、前記2枚の加熱ワークの前記対向方向の最大間隔よりも小さくなっている、プレス成形品の製造方法。
  2. 請求項1に記載のプレス成形品の製造方法であって、
    前記搬送工程では、前記第1加熱ワークの前記対向方向に垂直な少なくとも1つの方向における両端において、前記第1加熱ワークの端を含む端部領域に前記第2加熱ワークに向かって曲がった形状を有し、且つ、前記第1加熱ワークの端と前記第2加熱ワークとの前記対向方向の距離が、前記最大間隔より小さくなっている、プレス成形品の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載のプレス成形品の製造方法であって、
    前記搬送工程では、前記第2加熱ワークの端の少なくとも一部において、前記第2加熱ワークの端を含む端部領域は、前記第1加熱ワークに向かって曲がった形状を有する、プレス成形品の製造方法。
  4. 請求項1~3のいずれか1項に記載のプレス成形品の製造方法であって、
    前記搬送工程では、前記第2加熱ワークとの距離が前記最大間隔より小さくなっている前記第1加熱ワークの端を含む前記第1加熱ワークの前記端部領域が、前記対向方向に垂直な仮想平面に対して前記第2加熱ワーク側へ傾斜している傾斜部を含む、プレス成形品の製造方法。
  5. 請求項4に記載のプレス成形品の製造方法であって、
    前記搬送工程では、前記第1加熱ワークの前記端部領域の前記傾斜部と、前記傾斜部に最も近い前記第2加熱ワークの端を含む部分との間の角度が、20°以上である、プレス成形品の製造方法。
  6. 請求項4又は5に記載のプレス成形品の製造方法であって、
    前記搬送工程では、前記第1加熱ワークの前記端部領域の前記傾斜部に対向する前記第2加熱ワークの端を含む端部領域が、前記対向方向に垂直な仮想平面に対して前記第1加熱ワーク側へ傾斜している傾斜部を含む、プレス成形品の製造方法。
  7. 請求項1~6のいずれか1項に記載のプレス成形品の製造方法であって、
    前記搬送工程では、前記最大間隔より小さくなっている前記第1加熱ワークの端と前記第2加熱ワークとの前記対向方向の距離は、30mm以下である、プレス成形品の製造方法。
  8. 請求項1~7のいずれか1項に記載のプレス成形品の製造方法であって、
    前記搬送工程では、搬送装置により前記2枚の加熱ワークが搬送され、
    前記搬送工程は、
    前記搬送装置が備えるベースフレームに回転可能に取り付けられた一対の第1アームを駆動して、前記一対の第1アームの爪で、前記第1加熱ワークの両端部の下面を支持して持ち上げる工程と、
    前記搬送装置が備える前記ベースフレームに回転可能に取り付けられた一対の第2アームを駆動して、前記一対の第2アームの爪で、前記第2加熱ワークの両端部の下面を支持して持ち上げる工程と、
    前記搬送装置の前記一対の第1アームの爪で両端部の下面を支持された前記第1加熱ワークと、前記一対の第2アームの爪で両端部の下面を支持された前記第2加熱ワークを、互いに対向する状態で、搬送する工程と、
    前記一対の第1アームを駆動して、前記一対の第1アームに支持された前記第1加熱ワークを、前記プレス機のプレス位置に降ろす工程と、
    前記一対の第2アームを駆動して、前記一対の第2アームに支持された前記第2加熱ワークを、前記プレス機のプレス位置に降ろす工程と、を含む、プレス成形品の製造方法。
  9. 請求項1~8のいずれか1項に記載のプレス成形品の製造方法であって、
    前記搬送工程では、
    前記第1加熱ワーク及び前記第2加熱ワークのうち一方の加熱ワークは、上から見て上下に貫通する中空部を有するトレイ本体から上方に延びる少なくとも3本の第1支柱群の上に置かれ、前記第1加熱ワーク及び前記第2加熱ワークの他方の加熱ワークは、前記トレイ本体から上方に延びる少なくとも3本の第2支柱群の上に置かれ、且つ、前記一方の加熱ワークの上方において、垂直方向に前記一方の加熱ワークと重ねて配置された状態で、前記トレイ本体とともに搬送される、プレス成形品の製造方法。
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