JP2023123150A - インクジェット用インク - Google Patents

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Abstract

【課題】ノズル詰まりの発生を抑制できるインクジェット用インクを提供する。【解決手段】インクジェット用インクは、水性媒体と、前記水性媒体に分散する顔料粒子とを含有する。前記顔料粒子は、顔料及び特定樹脂を含む。前記特定樹脂は、オキサゾリン基含有架橋剤に由来する架橋構造を有する。前記特定樹脂の架橋率は、45%以上82%以下である。1,050,000Gで3時間遠心処理して得られる上澄み液における固形分の含有割合は、2.0質量%以下である。【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット用インクに関する。
インクジェット記録装置には、顔料及び水性媒体を含有する水性のインクジェット用インクが用いられることがある。インクジェット用インクには、インクジェット記録装置の記録ヘッドのノズル詰まりの発生を抑制できることが要求される。
このような要求に対して、例えば、着色剤を含有する架橋ポリマー粒子を用いたインクジェット用インクが提案されている(特許文献1)。上述のインクジェット用インクは、保存安定性に優れるとされている。
特開2008-150535号公報
しかしながら、特許文献1に記載のインクジェット用インクによっても、ノズル詰まりを十分に抑制することはできない。
本発明の目的は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ノズル詰まりの発生を抑制できるインクジェット用インクを提供することである。
本発明に係るインクジェット用インクは、水性媒体と、前記水性媒体に分散する顔料粒子とを含有する。前記顔料粒子は、顔料及び特定樹脂を含む。前記特定樹脂は、オキサゾリン基含有架橋剤に由来する架橋構造を有する。前記特定樹脂の架橋率は、45%以上82%以下である。本発明のインクにおいて、1,050,000Gで3時間遠心処理して得られる上澄み液における固形分の含有割合は、2.0質量%以下である。
本発明に係るインクジェット用インクは、ノズル詰まりの発生を抑制できる。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下において、質量平均分子量(Mw)の測定値は、何ら規定していなければ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定した値である。
体積中位径(D50)の測定値は、何ら規定していなければ、動的光散乱式粒径分布測定装置(マルバーン社製「ゼータサイザーナノZS」)を用いて測定された値である。
本明細書において、酸価は、JIS(日本産業規格)K0070:1992に記載の方法に従って求めることができる。
本明細書では、アクリル及びメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。
<インクジェット用インク>
以下、本発明の実施形態に係るインクジェット用インク(以下、単にインクと記載することがある)を説明する。本発明のインクは、水性媒体と、水性媒体に分散する顔料粒子とを含有する。顔料粒子は、顔料及び特定樹脂を含む。特定樹脂は、オキサゾリン基含有架橋剤に由来する架橋構造を有する。特定樹脂の架橋率は、45%以上82%以下である。本発明のインクにおいて、1,050,000Gで3時間遠心処理して得られる上澄み液における固形分の含有割合は、2.0質量%以下である。
本明細書において、架橋率とは、特定樹脂において、架橋剤と反応する官能基を有するモノマーに由来する繰り返し単位の総モル数を100%とした際に、架橋構造を有する繰り返し単位のモル数の百分率を示す。架橋率は、実施例に記載の方法によって算出することができる。
本発明のインクの用途としては、特に限定されないが、例えば、浸透性の記録媒体又は非浸透性の記録媒体への画像形成に用いることができる。本発明のインクは、浸透性の記録媒体への画像形成に好適である。浸透性の記録媒体は、インクの浸透性に優れる。浸透性の記録媒体としては、例えば、印刷用紙、及び繊維を原料とする媒体(例えば、布地)が挙げられる。印刷用紙としては、例えば、普通紙、コピー紙、再生紙、薄紙、厚紙、及び光沢紙が挙げられる。
本発明のインクは、上述の構成を備えることにより、ノズル詰まりの発生を抑制できる。その理由は以下のように推察される。インクの上澄み液に含まれる固形分は、インクジェット記録装置の記録ヘッドのノズル詰まりの原因となることがある。本発明のインクは、上澄み液に含まれる固形分の量が少ないため、上述の固形分に起因するノズル詰まりの発生を抑制できる。
また、本発明のインクは、顔料及び特定樹脂を含む顔料粒子を含有する。顔料は、単独では水性媒体に対する分散性が低い成分である。一方、特定樹脂は、水性媒体との親和性に優れる成分である。顔料粒子は、顔料と共に特定樹脂を含むことにより、水性媒体に対する優れた分散性を発揮する。そして、特定樹脂は、オキサゾリン基含有架橋剤によって架橋されているため、顔料粒子から特定樹脂が脱離し難い。これにより、本発明のインクは、顔料粒子から特定樹脂が脱離し、剥き出しとなった顔料が凝集することを抑制できる。一方、特定樹脂は、オキサゾリン基含有架橋剤によって過度に架橋されているわけではないため(架橋率が82%以下)、水性媒体に対する顔料粒子の分散性を維持できる。ここで、オキサゾリン基含有架橋剤は、優れた反応性を有し、上述の架橋構造を容易かつ確実に形成できる。また、オキサゾリン基含有架橋剤は、親水性の高い架橋構造を形成できる。そのため、オキサゾリン基含有架橋剤を架橋剤として用いることで、特定樹脂に適度な親水性を付与できる。更に、オキサゾリン基含有架橋剤は、他の架橋剤(例えば、エポキシ架橋剤)と比較して腐食性が低く、インクジェット記録装置の記録ヘッドのノズルを腐食させ難い。これらの結果、本発明のインクはノズル詰まりの発生を抑制できる。
本発明のインクは、顔料粒子の体積中位径が80nm以上130nm以下であることが好ましい。そして、パルスNMRによりRSP値を測定したときに、顔料の含有割合Vに対するRSP値の比(RSP/V)が50以上80以下であることが好ましい。本発明のインクは、上述の構成を備えることにより、ノズル詰まりの発生を更に効果的に抑制できると共に、所望する画像濃度を有する画像を形成できる。その理由は以下のように推察される。比(RSP/V)は、その値が大きいほど、顔料表面に多く水が保持されていることを示す。本発明のインクは、比(RSP/V)を50以上と比較的高い場合、顔料が分散樹子にきちんと覆われた状態であり、顔料粒子が極めて優れた分散性を発揮できる。その結果、本発明のインクは、優れた保存安定性を発揮し、長期保存された場合にも安定した吐出が可能となる。これにより、本発明のインクは、ノズル詰まりの発生を更に効果的に抑制できる。一方、顔料粒子の水性媒体に対する親和性が過度に高い場合、記録媒体の表面にインクが着弾した後に、顔料粒子が水性媒体と共に記録媒体の内部に浸透することがある。このような現象が発生すると、インクにより形成される画像の画像濃度が低下する。これに対して、本発明のインクは、比(RSP/V)が80以下であり、顔料粒子の水性媒体に対する親和性が過度に高いわけではない。そのため、本発明のインクは、所望する画像濃度を有する画像を形成できる。
上述の比(RSP/V)は、55以上65以下がより好ましい。なお、比(RSP/V)は、実施例に記載の方法、又はこれに準拠した方法により測定される。
以下、本発明のインクについて、更に詳細に説明する。なお、以下に説明する各成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[顔料粒子]
顔料粒子は、顔料及び特定樹脂を含む。顔料粒子は、例えば、顔料を含むコアと、コアを被覆する特定樹脂とにより構成される。顔料粒子における顔料及び特定樹脂の合計含有割合としては、90質量%以上が好ましく、100質量%がより好ましい。
本発明のインクの色濃度、色相、又は安定性を最適化する観点から、顔料粒子の体積中位径としては、30nm以上200nm以下が好ましく、80nm以上130nm以下がより好ましい。
本発明のインクにおいて、顔料粒子の含有割合としては、5.0質量%以上30.0質量%以下が好ましく、8.0質量%以上15.0質量%以下がより好ましい。顔料粒子の含有割合を5.0質量%以上とすることで、本発明のインクは、所望する画像濃度を有する画像を形成できる。また、顔料粒子の含有割合を30.0質量%以下とすることで、本発明のインクの流動性を最適化できる。
(顔料)
顔料としては、例えば、黄色顔料、橙色顔料、赤色顔料、青色顔料、紫色顔料、及び黒色顔料が挙げられる。黄色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー(74、93、95、109、110、120、128、138、139、151、154、155、173、180、185、及び193)が挙げられる。橙色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ(34、36、43、61、63、及び71)が挙げられる。赤色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド(122及び202)が挙げられる。青色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー(15、より具体的には15:3)が挙げられる。紫色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントバイオレット(19、23、及び33)が挙げられる。黒色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラック(7)が挙げられる。
本発明のインクにおいて、顔料の含有割合としては、3.0質量部以上20.0質量部が好ましく、7.0質量部以上12.0質量部以下がより好ましい。顔料粒子における顔料の含有割合としては、50質量%以上90質量%以下が好ましく、70質量%以上80質量%以下がより好ましい。
(特定樹脂)
特定樹脂は、例えば、顔料粒子において、顔料を被覆する。特定樹脂は、オキサゾリン基含有架橋剤に由来する架橋構造を有する。特定樹脂の架橋率は、45%以上82%以下であり、57%以上72%以下が好ましい。特定樹脂の架橋率を45%以上とすることで、顔料粒子から特定樹脂が脱離することを抑制できる。特定樹脂の架橋率を82%以下とすることで、水性媒体に対する優れた分散性を顔料粒子に付与できる。
本発明のインクにおいて、特定樹脂の含有割合としては、0.5質量部以上10.0質量部が好ましく、2.0質量部以上4.0質量部以下がより好ましい。顔料粒子における特定樹脂の含有割合としては、10質量%以上50質量%以下が好ましく、20質量%以上30質量%以下がより好ましい。
特定樹脂は、例えば、オキサゾリン基含有架橋剤と、オキサゾリン基と反応可能な官能基を有する樹脂との反応生成物である。官能基としては、例えば、カルボキシ基、芳香族チオール基及びフェノール基が挙げられる。官能基としては、カルボキシ基が好ましい。即ち、特定樹脂は、オキサゾリン基含有架橋剤とカルボキシ基含有樹脂との反応生成物であることが好ましい。カルボキシ基含有樹脂は、例えば、カルボキシ基含有モノマーに由来する繰り返し単位を有する。カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、多価カルボン酸、多価カルボン酸誘導体及び不飽和カルボン酸が挙げられる。
特定樹脂は、例えば、未開環オキサゾリン基及びアミドエステル基を有する。特定樹脂は、下記一般式(A)で表される繰り返し単位(1)と、下記一般式(B)で表される繰り返し単位(2)とを有することが好ましい。繰り返し単位(1)は、未開環オキサゾリン基を有する。繰り返し単位(2)は、アミドエステル基を有する。
Figure 2023123150000001
一般式(A)中、R1は、水素原子、又はフェニル基で置換されていてもよい炭素原子数1以上10以下のアルキル基を表す。一般式(B)中、R2は、水素原子、又はフェニル基で置換されていてもよい炭素原子数1以上10以下のアルキル基を表す。*は、カルボキシ基含有樹脂に含まれる原子との結合部位を表す。
一般式(A)又は(B)において、R1又はR2で表される炭素原子数1以上10以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、直鎖状又は分枝鎖状のヘキシル基、直鎖状又は分枝鎖状のヘプチル基、直鎖状又は分枝鎖状のオクチル基、直鎖状又は分枝鎖状のノニル基、及び直鎖状又は分枝鎖状のデシル基が挙げられる。
一般式(A)において、R1は、水素原子、メチル基、エチル基又はイソプロピル基を表すことが好ましい。一般式(B)において、R2は、水素原子、メチル基、エチル基又はイソプロピル基を表すことが好ましい。
(カルボキシ基含有樹脂)
カルボキシ基含有樹脂の酸価としては、50mgKOH/g以上200mgKOH/g以下が好ましく、75mgKOH/g以上120mgKOH/g以下がより好ましい。カルボキシ基含有樹脂の酸価を50mgKOH/g以上とすることで、オキサゾリン基含有架橋剤によって容易に架橋することができる。カルボキシ基含有樹脂の酸価を200mgKOH/g以下とすることで、本発明のインクの保存安定性を最適化できる。
カルボキシ基含有樹脂の質量平均分子量(Mw)としては、5000以上100000以下が好ましく、15000以上30000以下がより好ましい。
カルボキシ基含有樹脂は、ランダム重合体でもよく、ブロック重合体でもよい。カルボキシ基含有樹脂は、ランダム重合体であることが好ましい。具体的なカルボキシ基含有樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチレン-(メタ)アクリル樹脂、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸ハーフエステル共重合体、ビニルナフタレン-(メタ)アクリル酸共重合体及びビニルナフタレン-マレイン酸共重合体が挙げられる。カルボキシ基含有樹脂としては、スチレン-(メタ)アクリル樹脂が好ましい。
(スチレン-(メタ)アクリル樹脂)
スチレン-(メタ)アクリル樹脂は、スチレン単位と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する繰り返し単位とを有する樹脂である。スチレン-(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸に由来する繰り返し単位を更に有することが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル及び(メタ)アクリル酸n-ブチルが挙げられる。
スチレン-(メタ)アクリル樹脂において、全繰り返し単位に対するスチレン単位の含有割合としては、20.0質量%以上80.0質量%以下が好ましく、30.0質量%以上50.0質量%以下がより好ましい。
スチレン-(メタ)アクリル樹脂において、全繰り返し単位に対する(メタ)アクリル酸に由来する繰り返し単位の含有割合としては、4.0質量%以上30.0質量%以下が好ましく、8.0質量%以上22.0質量%以下がより好ましい。(メタ)アクリル酸に由来する繰り返し単位の含有割合を4.0質量%以上30.0質量%以下とすることで、スチレン-(メタ)アクリル樹脂に適度な酸価を付与できると共に、特定樹脂に架橋構造を適度に導入できる。
スチレン-(メタ)アクリル樹脂において、全繰り返し単位に対する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する繰り返し単位の含有割合としては、15.0質量%以上65.0質量%以下が好ましく、35.0質量%以上55.0質量%以下がより好ましい。
スチレン-(メタ)アクリル樹脂の原料モノマーとしては、以下の組み合わせ(I)、(II)又は(III)が好ましく、組み合わせ(Ia)、(IIa)又は(IIIa)がより好ましい。
組み合わせ(I):スチレン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、及び(メタ)アクリル酸n-ブチル
組み合わせ(II):スチレン、(メタ)アクリル酸、及び(メタ)アクリル酸n-ブチル
組み合わせ(III):スチレン、(メタ)アクリル酸、メタクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸エチル
組み合わせ(Ia):スチレン、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、及びアクリル酸n-ブチル
組み合わせ(IIa):スチレン、アクリル酸、及びアクリル酸n-ブチル
組み合わせ(IIIa):スチレン、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、及びアクリル酸エチル
特定樹脂としては、オキサゾリン基含有架橋剤とスチレン-(メタ)アクリル樹脂との反応生成物が好ましい。
(オキサゾリン基含有架橋剤)
オキサゾリン基含有架橋剤は、例えば、分子中に複数のオキサゾリン基を有する樹脂である。オキサゾリン基含有架橋剤は、例えば、上述の繰り返し単位(1)を有する。
オキサゾリン基含有架橋剤は、ビニル化合物に由来する繰り返し単位(3)を更に有していてもよい。ビニル化合物としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブタジエン、塩化ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル(好ましくは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル)、アクリロニトリル、及びスチレンが挙げられる。オキサゾリン基含有架橋剤は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する繰り返し単位又はスチレンに由来する繰り返し単位を更に有していることが好ましい。
オキサゾリン基含有架橋剤は、例えば、分子中に複数のオキサゾリン基を有する(メタ)アクリル樹脂又はスチレン-(メタ)アクリル樹脂である。
オキサゾリン基含有架橋剤としては、例えば、株式会社日本触媒製「エポクロス(登録商標)WS-300」及び「エポクロス(登録商標)WS-700」が挙げられる。「エポクロス(登録商標)WS-300」は、2-ビニル-2-オキサゾリンとメタクリル酸メチルとの共重合体(オキサゾリン基含有(メタ)アクリル樹脂)を含む。この共重合体を構成するモノマーの質量比は、(2-ビニル-2-オキサゾリン):(メタクリル酸メチル)=9:1である。「エポクロス(登録商標)WS-700」は、2-ビニル-2-オキサゾリンとメタクリル酸メチルとアクリル酸ブチルとの共重合体(オキサゾリン基含有(メタ)アクリル樹脂)を含む。共重合体を構成するモノマーの質量比は、(2-ビニル-2-オキサゾリン):(メタクリル酸メチル):(アクリル酸ブチル)=5:4:1である。2-ビニル-2-オキサゾリンは、下記化学式(A-1)で表される化合物である。
Figure 2023123150000002
オキサゾリン基含有架橋剤におけるオキサゾリン基量としては、3mmol/g以上10mmol/g以下が好ましい。オキサゾリン基含有架橋剤の質量平均分子量としては、1000以上15000以下が好ましい。
[上澄み液中の固形分]
本発明のインクは、1,050,000Gで3時間遠心処理して得られる上澄み液における固形分の含有割合が2.0質量%以下である。上述の固形分の含有割合は、1.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましい。上述の固形分は、例えば、本発明のインクの製造時及び保管時に、顔料粒子に含まれる特定樹脂のうちの一部が脱離し、水性媒体に遊離することで生じる。上述の固形分は、インクジェット記録装置の記録ヘッドのノズル詰まりの原因となる場合がある。そのため、上述の固形分は、可能な限り少ないことが好ましい。
上述の固形分の含有割合は、実施例に記載の方法又はこれに準拠した方法により測定できる。
[水性媒体]
本発明のインクが含有する水性媒体は、水を含む媒体である。水性媒体は、溶媒として機能してもよく、分散媒として機能してもよい。水性媒体の具体例としては、水及び水溶性有機溶媒を含む水性媒体が挙げられる。
(水)
本発明のインクにおいて、水の含有割合としては、25.0質量%以上80.0質量%以下が好ましく、35.0質量%以上60.0質量%以下がより好ましい。
水溶性有機溶媒としては、例えば、グリコール化合物、トリオール化合物、グリコールエーテル化合物、ラクタム化合物、含窒素化合物、アセテート化合物、チオジグリコール及びジメチルスルホキシドが挙げられる。
グリコール化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,8-オクタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、2-エチル-1,2-ヘキサンジオールが挙げられる。グリコール化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、2-エチル-1,2-ヘキサンジオール、3-メチルー1,5-ペンタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール又はプロピレングリコールが好ましい。
トリオール化合物としては、例えば、グリセリン及び1,2,3-ブタントリオールが挙げられる。
グリコールエーテル化合物としては、例えば、ジエチルジグリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。グリコールエーテル化合物としては、トリエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。
ラクタム化合物としては、例えば、2-ピロリドン及びN-メチル-2-ピロリドンが挙げられる。ラクタム化合物としては、2-ピロリドンが好ましい。
含窒素化合物としては、例えば、1,3-ジメチルイミダゾリジノン、ホルムアミド及びジメチルホルムアミドが挙げられる。
アセテート化合物としては、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートが挙げられる。
水溶性有機溶媒としては、グリコール化合物、トリオール化合物、グリコールエーテル化合物又はラクタム化合物が好ましく、以下の組み合わせで混合された混合溶媒がより好ましい。
組み合わせ(i):エチレングリコール及びジエチルジグリコール
組み合わせ(ii):グリセリン、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、3-メチルー1,5-ペンタンジオール及び2-ピロリドン
組み合わせ(iii):トリエチレングリコールモノブチルエーテル、2-ピロリドン、1,3-プロパンジオール及び1,5-ペンタンジオール
組み合わせ(iv):3-メチルー1,5-ペンタンジオール、1,2,3-ブタントリオール、2-エチル-1,2-ヘキサンジオール及びプロピレングリコール
本発明のインクにおける水溶性有機溶媒の含有割合としては、15.0質量%以上50.0質量%以下が好ましく、30.0質量%以上40.0質量%以下がより好ましい。
[界面活性剤]
本発明のインクは、界面活性剤を更に含有することが好ましい。界面活性剤は、記録媒体に対する本発明のインクの浸透性(濡れ性)を最適化できる。界面活性剤としては、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤が挙げられる。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤が好ましい。
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートエーテル、モノデカノイルショ糖、及びアセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物が挙げられる。ノニオン界面活性剤としては、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物が好ましい。
本発明のインクにおける界面活性剤の含有割合としては、0.05質量%以上3.0質量%以下が好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下がより好ましい。
[他の成分]
本発明のインクは、必要に応じて、公知の添加剤(例えば、溶解安定剤、乾燥防止剤、酸化防止剤、粘度調整剤、pH調整剤及び防カビ剤)を更に含有してもよい。
[インクの製造方法]
次に、本発明のインクを製造する方法の一例について説明する。本発明のインクの製造方法は、例えば、顔料及びカルボキシ基含有樹脂を水中で分散処理することで顔料粒子分散液を調製する分散処理工程と、顔料粒子分散液にオキサゾリン基含有架橋剤を添加する架橋工程と、架橋工程後の顔料粒子分散液に水性媒体を添加することでインクを調製する添加工程とを備える。本発明のインクの製造方法は、架橋工程後の顔料粒子分散液を遠心した後に上澄み液を水性媒体で置換する遠心工程を更に備えることが好ましい。
(顔料処理工程)
本工程では、顔料及びカルボキシ基含有樹脂を水中で分散処理することで顔料粒子分散液を調製する。分散処理に用いる分散装置としては、例えば、メディア型分散機等の湿式分散装置が挙げられる。
本工程に用いるカルボキシ基含有樹脂は、予め塩基性化合物(例えば、KOH又はNaON)で中和処理しておくことが好ましい。この場合、カルボキシ基含有樹脂を完全に中和せず、部分的に中和することが好ましい。具体的には、カルボキシ基含有樹脂の中和率としては、30%以上70%以下が好ましく、40%以上60%以下がより好ましい。なお、中和率とは、カルボキシ基含有樹脂を完全に中和するために必要な塩基性化合物の量の理論値をMA、本工程での塩基性化合物の実際の使用量をMBとしたときに、理論値MAに対する使用量MBの百分率(100×MB/MA)を示す。
本工程において、分散処理に供する溶液におけるカルボキシ基含有樹脂の含有割合としては、例えば、5.0質量%以上25.0質量%以下である。分散処理に供する溶液における顔料の含有割合としては、例えば、1.0質量%以上10.0質量%以下である。本工程において、分散処理に供する溶液は、消泡剤を更に含有することが好ましい。分散処理に供する溶液における消泡剤の含有割合としては、例えば、0.01質量%以上0.1質量%以下である。
本工程では、得られた顔料粒子分散液に対して、フィルター(例えば、孔径5μm)によるろ過で粗大粒子を除去することが好ましい。
(架橋工程)
本工程では、顔料粒子分散液にオキサゾリン基含有架橋剤を添加する。これにより、顔料粒子分散液に含まれるカルボキシ基含有樹脂とオキサゾリン基含有架橋剤とが反応し、カルボキシ基含有樹脂が架橋される。その結果、カルボキシ基含有樹脂及びオキサゾリン基含有架橋剤の反応生成物である特定樹脂が生じる。本工程では、オキサゾリン基含有架橋剤の添加後、顔料粒子分散液を攪拌しながら加熱することが好ましい。加熱温度としては、例えば、70℃以上95℃以下とすることができる。加熱時間としては、例えば、30分以上2時間以下とすることができる。
(遠心工程)
本工程では、架橋工程後の顔料粒子分散液を遠心した後に上澄み液を水性媒体で置換する。これにより、顔料粒子分散液の水性媒体に含まれていた遊離成分を除去することができる。遠心条件としては、例えば、回転速度10000rpm以上100000rpm以下、遠心時間12時間以上48時間以下とすることができる。
(添加工程)
本工程では、架橋工程後の顔料粒子分散液(遠心工程を行っている場合、遠心工程後の顔料粒子分散液)に水性媒体を添加する。これにより、インクを得ることができる。なお、本工程では、必要に応じて他の成分(より具体的には、界面活性剤、溶解安定剤、保湿剤、浸透剤、及び粘度調整剤のうちの少なくとも1つ)を更に添加してもよい。本工程では、水性媒体の添加後、得られた混合液を攪拌機で攪拌することが好ましい。得られたインクは、フィルター(例えば孔径5μm以下のフィルター)により異物及び粗大粒子を除去してもよい。
以下、本発明の実施例を説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されない。
[樹脂(R-1)の調製]
スターラー、窒素導入管、コンデンサー及び滴下漏斗を備える四つ口フラスコに、200.0質量部のイソプロピルアルコールと、500.0質量部のメチルエチルケトンとを投入した。別途、70質量部のメタクリル酸メチルと、80質量部のスチレンと、20.0質量部のアクリル酸n-ブチルと、30.0質量部のメタクリル酸と、0.6質量部のアゾビスイソブチロニトリル(AIBN、重合開始剤)とを混合し、モノマー溶液を調製した。また、300.0質量部のメチルエチルケトンと、0.2質量部のAIBNとを混合し、メチルエチルケトン溶液を調製した。
次に、上述の四つ口フラスコ内に窒素ガスを導入することで窒素雰囲気とした。次に、上述の四つ口フラスコ内容物を70℃で加熱還流しながら、滴下漏斗を用い、上述のモノマー溶液の全量を2時間かけて上述の四つ口フラスコ内へ供給した。モノマー溶液を供給した後、更に6時間にわたって上述の四つ口フラスコ内容物を70℃で加熱還流を行った。次に、上述の四つ口フラスコ内容物を70℃で加熱還流しながら、滴下漏斗を用い、上述のメチルエチルケトン溶液の全量を15分かけて上述の四つ口フラスコ内へ供給した。メチルエチルケトン溶液を供給した後、更に5時間にわたって上述の四つ口フラスコ内容物を70℃で加熱還流を行った。これにより、スチレン-(メタ)アクリル樹脂である樹脂(R-1)を含有する樹脂溶液を得た。樹脂溶液からメチルエチルケトン及びイソプロピルアルコールを留去することにより、樹脂(R-1)を単離した。
[樹脂(R-2)~(R-3)の調製]
モノマー溶液の調製において、使用するモノマーの種類及び量を下記表1に示す通りに変更すると共に、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン及びアゾビスイソブチロニトリル(AIBN、重合開始剤)を3/4量にそれぞれ変更した以外は、樹脂(R-1)の調製と同様の方法により、樹脂(R-2)~(R-3)を調製した。
(質量平均分子量の測定)
以下の条件のゲルろ過クロマトグラフィ(GPC)により、樹脂(R-1)~(R-3)の質量平均分子量(Mw)を測定した。測定結果を下記表1に示す。
(GPC条件)
測定装置:東ソー株式会社製「HLC-8020GPC」
カラム:超高性能セミミクロSEC用カラム(東ソー株式会社製「TSKgel SuperMultipore HZ-H」、充填剤:スチレン-ジビニルベンゼン樹脂、カラムサイズ:内径4.6mm×長さ15cm、充填剤粒子径:6μm)
カラム本数:3本
溶離液:テトラヒドロフラン
溶出液流速:0.35mL/分
試料溶液量:10μL
カラム温度:40℃
検出器:RI(屈折率)検出器
検量線:東ソー株式会社製の単分散ポリスチレン標準試料(F-40、F-20、F-4、F-1、A-5000、A-2500及びA-1000)と、n-プロピルベンゼンとを用いて作成された検量線
(酸価の測定)
JIS(日本産業規格)K0070:1992(化学製品の酸価、けん化価、エステル価、よう素価、水酸基価及び不けん化物の試験方法)に記載の方法に準拠し、樹脂(R-1)~(R-3)の酸価を測定した。測定結果を下記表1に示す。
下記表1で用いられている略語を説明する。
MMA:メタクリル酸メチル
BA:アクリル酸n-ブチル
EA:アクリル酸エチル
Figure 2023123150000003
<インクの調製I>
以下の方法により、下記表2に示す実施例1~11及び比較例1~12のインクを調製した。まず、実施例において使用した顔料及び架橋剤を以下に示す。
(顔料)
顔料(BK-1):カーボンブラック(オリオンエンジニアドカーボンズ株式会社製「Printex(登録商標)80」)
顔料(BK-2):カーボンブラック(オリオンエンジニアドカーボンズ株式会社製「NIPex(登録商標)180IQ」)
顔料(C-1):フタロシアニンブルー(BASF株式会社製「Heliogen(登録商標)Blue D 7088」)
顔料(C-2):フタロシアニンブルー(大日精化工業株式会社製「ECB-301」)
顔料(M-1):キナクリドンマゼンタ(DIC株式会社製「FASTROGEN(登録商標)Super Magenta RGT」)
顔料(M-2):キナクリドンマゼンタ(クラリアント株式会社製「Ink Jet Magenta E-S」)
顔料(Y-1):モノアゾイエロー(クラリアント株式会社製「Hansa(登録商標)Brilliant Yellow 5GX01」)
顔料(Y-2):モノアゾイエロー(山陽色素株式会社製「FAST Yellow 7413」)
(架橋剤)
WS-300:オキサゾリン基含有(メタ)アクリル樹脂を含む水溶液(株式会社日本触媒製「エポクロス(登録商標)WS-300」)、有効成分10質量%、有効成分1g当たりのオキサゾリン基量7.7mmol
WS-500:オキサゾリン基含有(メタ)アクリル樹脂を含む水溶液(株式会社日本触媒製「エポクロス(登録商標)WS-500」)、有効成分39質量%、有効成分1g当たりのオキサゾリン基量4.5mmol
WS-700:オキサゾリン基含有(メタ)アクリル樹脂を含む水溶液(株式会社日本触媒製「エポクロス(登録商標)WS-700」)、有効成分25質量%、有効成分1g当たりのオキサゾリン基量4.5mmol
K-2010E:オキサゾリン基含有スチレン-(メタ)アクリル樹脂を含むエマルション(株式会社日本触媒製「エポクロス(登録商標)K-2010E」)、有効成分40質量%、有効成分1g当たりのオキサゾリン基量1.8mmol
EX-810:エチレングリコールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製「デナコール(登録商標)EX-810」)、有効成分100質量%、エポキシ当量113g/eq
EX-830:ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製「デナコール(登録商標)EX-830」)、有効成分100質量%、エポキシ当量268g/eq
[実施例1]
(中和処理)
樹脂(R-1)30質量部と、水酸化カリウムと、水とを混合し、樹脂濃度30質量%の樹脂水溶液を調製した。水酸化カリウムの添加量は、樹脂(R-1)の中和当量の50質量%に相当する量とした(樹脂(R-1)の中和率50%)。水の添加量は、樹脂(R-1)、水酸化カリウム及び水の合計が100質量部となる量とした。
(分散処理)
顔料(BK-1)(オリオンエンジニアドカーボンズ株式会社「Printex(登録商標)80」、カーボンブラック)15.0質量部と、上述の樹脂水溶液15.0質量部(樹脂(R-1)4.5質量部を含有)と、消泡剤(サンノプコ株式会社製「SNデフォーマー1340」、アマイドワックス系界面活性剤)0.1質量部と、イオン交換水とを混合し、混合物を得た。イオン交換水の添加量は、混合物が100質量部となる量とした。
メディア型分散機(ウィリー・エ・バッコーフェン社(WAB社)製「ダイノミル」)を用いて、上述の混合物に対して4時間の分散処理を行った。分散処理においては、メディアとして、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いた。メディアの充填率は、ベッセルの容量に対して60体積%とした。分散処理における処理温度(チラー温度)は、10℃に設定した。分散処理後、メディア型分散機の内容物からメディアを除去することにより、顔料粒子分散液を得た。次に、顔料粒子分散液を孔径5μmのフィルターでろ過することにより、異物及び粗大粒子を除去した。
(架橋処理)
温度計及び攪拌羽根を備える3つ口フラスコを反応容器として用いた。ろ過後の顔料粒子分散液100.0質量部を反応容器内に投入した。ウォーターバスを用い、反応容器の内容物の温度を30℃に維持した。次に、反応容器に、架橋剤(WS-300)6.2質量部(オキサゾリン基含有架橋剤0.62質量部を含有)を投入した。次に、反応容器の内容物を250rpmで攪拌しながら、昇温速度0.5℃/分で80℃まで反応容器の内容物を昇温させた。次に、反応容器の内容物の温度を80℃に維持しつつ、反応容器の内容物を250rpmで1時間攪拌した。これにより、反応容器の内容物を反応させた。反応により、樹脂(R-1)は架橋剤(WS-300)で架橋され、特定樹脂を形成した。次に、反応容器の内容物の温度が室温になるまで放冷した。これにより、架橋処理後の顔料粒子分散液を得た。
(遠心処理)
架橋処理後の顔料粒子分散液を容器に移し、この容器を遠心法付着力測定装置(株式会社ナノシーズ製「NS-C100」)に設置した。上述の遠心法付着力測定装置を用い、回転速度50000rpmの条件で24時間にわたって上述の架橋処理後の顔料粒子分散液を遠心処理した。遠心処理後、容器から上澄み液を除去し、その後、除去した上澄み液と同体積のイオン交換水を容器へ加えた。このようにして、架橋処理後の顔料粒子分散液の水性媒体から遊離成分を除去した。
(混合処理)
容器に、遠心処理後の顔料粒子分散液60.0質量部(顔料約9質量部、樹脂約2.7質量部)と、エチレングリコール20.0質量部と、ジエチルジグリコール15.0質量部と、ノニオン界面活性剤(日信化学工業株式会社製「オルフィン(登録商標)E1004」)0.3質量部と、イオン交換水4.7質量部とを投入した(処方A)。攪拌機(新東科学株式会社製「スリーワンモーター BL-600」)を用いて、上述の容器の内容物を回転速度400rpmの条件で攪拌し、混合物を得た。得られた混合液を、フィルター(孔径:5μm)を用いて濾過した。これにより、実施例1のインクを得た。
[実施例2~11及び比較例1~12]
中和処理で使用する樹脂の種類と、分散処理で使用する原料の種類及び量と、架橋処理で使用する架橋剤の種類及び量と、混合処理における処方(下記表3)とを下記表2に示す通りに変更した以外は、実施例1のインクの調製と同様の方法により、実施例2~11及び比較例1~12のインクを調製した。なお、下記表3において、「界面活性剤」は、ノニオン界面活性剤(日信化学工業株式会社製「オルフィン(登録商標)E1004」)を示す。分散処理における樹脂の質量部は、使用した樹脂水溶液に含まれる樹脂(固形分)の質量部を示す。
Figure 2023123150000004
Figure 2023123150000005
(上澄み液中の固形分の測定)
以下の方法により、実施例1~11及び比較例1~12のインクを遠心分離した。そして、得られた上澄み液に含まれる固形分の含有割合を測定した。
まず、測定対象(実施例1~11及び比較例1~12のインクの何れか)に対して、超遠心機(エッペンドルフ・ハイマック・テクノロジーズ株式会社製「himac(登録商標)CS150FNX」、ローター:S140AT)を用いて、回転数140,000rpm(1,050,000G)で3時間遠心処理した。これにより測定対象に含まれる顔料粒子を沈殿させた。
次に、遠心処理後の測定対象に含まれる上澄み液30μLを熱質量測定用アルミ容器に移した。次に、上澄み液30μLの質量(A)を測定した。次に、熱質量分析装置(株式会社日立ハイテクサイエンス製「TG/DTA7200」)を用いて、下記表4に示すスキームに沿って熱質量分析を行った。そして、温度200℃~500℃の間での測定対象の減質量(B)を測定した。減質量(B)を、上澄み液中の固形分(主に遊離樹脂)の質量と見做した。上澄み液中の固形分の含有割合は、下記式に沿って算出した。測定結果を下記表5に示す。
固形分含有割合[質量%]=100×B/A
Figure 2023123150000006
(架橋率)
以下の方法により、実施例1~11及び比較例1~12のインクに含まれる樹脂の架橋率を計算した。まず、各インクの調製時の架橋処理において、使用した架橋剤に含まれる架橋官能基(オキサゾリン基又はエポキシ基)のモル当量数をX、使用した樹脂に含まれるカルボキシ基のモル当量数をYとした。そして、下記式に沿って各インクに含まれる樹脂の架橋率を計算した。計算結果を下記表5に示す。
架橋率[%]=100×X/Y
Figure 2023123150000007
<評価I>
実施例1~11及び比較例1~12のインクの各々について、以下の方法により、ノズル詰まり及び腐食性を評価した。なお、評価は、特に断りのない限り、温度25℃、湿度60%RHの環境下において行った。評価結果を下記表6に示す。
[ノズル詰まり]
ノズル詰まりの評価においては、評価機として、ラインヘッド搭載インクジェット記録装置(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製試験機)を用いた。評価対象となる実施例1~11及び比較例1~12のインクは、それぞれ、評価機のブラック用インクタンク(実施例1~4、比較例1~4、11)、シアン用インクタンク(実施例5~7、比較例5~6)、マゼンタ用インクタンク(実施例8~9、比較例7~8)又はイエロー用インクタンク(実施例10~11、比較例9~10、12)に充填した。
評価機を用いて、マット紙(セイコーエプソン株式会社製「スーパーファイン紙」)100枚に対して連続してソリッド画像(150mm×200mm)を連続で形成した。次に、評価機の記録ヘッドからインクをパージするパージ処理を行った。次に、評価機の記録ヘッドにおけるインク吐出面をクリーニングワイパーでワイプするワイプ処理を行った。次に、評価機を用いて、上述のマット紙に対してノズルチェックパターンの形成を行った。その結果、何れの評価対象においても、全てのノズル(7968本)からインクが吐出されていることが確認された。即ち、ノズル詰まりが発生したノズルの本数は0本であった。次に、評価機の記録ヘッドについて、パージ処理及びワイプ処理を行った。次に、評価機の記録ヘッドにキャップを付けない状態で、評価機を7日間静置した。次に、評価機の記録ヘッドについて、上述のパージ処理及びワイプ処理を行った。次に、評価機を用いて、上述のマット紙に対してノズルチェックパターンの形成を行った。そして、形成されたノズルチェックパターンを観察し、ノズル詰まりが発生したノズルの本数を確認した。評価機の記録ヘッドの全ノズル本数に対するノズル詰まりが発生したノズルの本数の割合を、ノズル詰まりの評価値とした。ノズル詰まりは、下記基準に沿って判定した。
(ノズル詰まりの基準)
A(良好):評価値が10%未満
B(不良):評価値が10%以上
[腐食性]
SUS板(縦3cm×横4cm×厚さ0.3mm)を用いて評価対象(実施例1~11及び比較例1~12のインクの何れか)の腐食性を評価した。まず、ガラス瓶にSUS板及び評価対象を投入した。この際、SUS板の全体が評価対象に浸漬するように、十分な量の評価対象を投入した。次に、ガラス瓶からSUS板を取り出し、SUS板をイオン交換水で洗浄した。次に、60℃に設定した恒温槽でSUS板を24時間乾燥させた。そして、SUS板の質量(初期質量)を測定した。次に、ガラス瓶にSUS板及び評価対象を再度投入した。この際、SUS板の全体が評価対象に浸漬するように、十分な量の評価対象を投入した。次に、ガラス瓶の蓋を閉めた。次に、60℃に設定した恒温槽にガラス瓶を入れ、3か月間恒温処理した。恒温処理後、ガラス瓶からSUS板を取り出し、SUS板をイオン交換水で洗浄した。次に、60℃に設定した恒温槽でSUS板を24時間乾燥させた。そして、SUS板の質量(処理後質量)を測定した。下記式に沿って恒温処理の前後でのSUS板の質量の変化率を測定した。また、SUS板の表面を顕微鏡で観察し、腐食の発生の有無を確認した。腐食性は、以下の基準に沿って判定した。
質量の変化率[%]=100×(処理後質量-初期質量)/初期質量
(腐食性の基準)
A(良好):質量の変化率の絶対値が5%未満であり、かつ顕微鏡観察で腐食が確認されなかった。
B(不良):質量の変化率の絶対値が5%以上であるか、又は顕微鏡観察で腐食が確認された。
Figure 2023123150000008
表2及び表5に示す通り、実施例1~11のインクは、水性媒体と、水性媒体に分散する顔料粒子とを含有していた。顔料粒子は、顔料及び特定樹脂を含んでいた。特定樹脂は、オキサゾリン基含有架橋剤に由来する架橋構造を有していた。特定樹脂の架橋率は、45%以上82%以下であった。実施例1~11のインクにおいて、1,050,000Gで3時間遠心処理して得られる上澄み液における固形分の含有割合は、2.0質量%以下であった。実施例1~11のインクは、ノズル詰まりの発生を抑制できた。また、実施例1~11のインクは、腐食性も低かった。
一方、比較例1及び9のインクは、上澄み液における固形分の含有割合が2.0質量%超であり、かつ特定樹脂の架橋率が82%超であった。上澄み液における固形分が2.0質量%超であると、インクジェット記録装置の記録ヘッドのノズルを上述の固形分が詰まらせる場合があると判断される。また、特定樹脂の架橋率が82%超であると、顔料粒子の分散安定性が低下すると判断される。その結果、比較例1及び9のインクは、ノズル詰まりの発生を抑制できなかった。
比較例2及び6のインクは、特定樹脂の架橋率が45%未満であった。特定樹脂の架橋率が45%未満であると、特定樹脂が顔料粒子から脱離し易いと判断される。その結果、比較例2及び4のインクは、ノズル詰まりの発生を抑制できなかった。
比較例3、8及び10のインクは、上澄み液における固形分の含有割合が2.0質量%超であり、かつ特定樹脂の架橋率が45%未満であった。その結果、比較例3、8及び10のインクは、ノズル詰まりの発生を抑制できなかった。
比較例4、5及び7のインクは、上澄み液における固形分の含有割合が2.0質量%超であった。その結果、比較例4、5及び7のインクは、ノズル詰まりの発生を抑制できなかった。
比較例11のインクは、上澄み液における固形分の含有割合が2.0質量%超であり、かつ特定樹脂がエポキシ架橋剤に由来する架橋構造を有していた。エポキシ架橋剤には、不純物として塩素が含まれる場合がある。そのため、エポキシ架橋剤で架橋された特定樹脂を含む比較例11のインクは、上述の塩素に由来する腐食性を有していたと判断される。そして、比較例11のインクは、インクジェット記録装置の記録ヘッドのノズルを腐食させることで、ノズル詰まりを発生させたと判断される。
比較例12のインクは、特定樹脂がエポキシ架橋剤に由来する架橋構造を有していた。その結果、比較例12のインクは、上述の塩素に由来する腐食性を有していたと判断される。そして、比較例12のインクは、インクジェット記録装置の記録ヘッドのノズルを腐食させることで、ノズル詰まりを発生させたと判断される。
<インクの調製II>
以下の方法により、下記表8に示す実施例12~20及び比較例13~15のインクを調製した。まず、各インクの調製に用いる架橋剤を調製した。
(架橋剤水溶液(C-1))
攪拌機、還流冷却器、窒素導入管、温度計及び滴下漏斗を備えたフラスコを用意した。上述のフラスコに脱イオン水900質量部を投入した。次に、フラスコに適量のアンモニア水(濃度28質量%)を投入し、フラスコの内容物のpHを9.0に調整した。次に、フラスコの内部に窒素ガスをゆるやかに吹き込みながら、フラスコの内容物の温度を70℃に昇温させた。次に、フラスコに過硫酸カリウム水溶液(濃度5質量%)64質量部を投入した。次に、フラスコに、メタクリル酸メチル37質量部及び2-イソプロペニル-2-オキサゾリン63質量部の単量体混合物を3時間かけて滴下した。滴下中は窒素ガスをフラスコに吹き込み続けると共に、フラスコの内容物の温度を70±1℃に保った。滴下終了後、フラスコの内容物の温度を70℃で2時間保持した。次に、フラスコの内容物の温度を80℃に昇温させた。次に、フラスコの内容物の温度を80℃で保持したまま、内容物を1時間攪拌した。その後、フラスコの内容物の温度を室温まで冷却した。これにより、オキサゾリン基含有架橋剤を含む水溶液である架橋剤水溶液(C-1)を得た。架橋剤水溶液(C-1)は、オキサゾリン基量5.9mmol/g、有効成分10.1質量%、pH8.0であった。なお、上述の「オキサゾリン基量」は、架橋剤水溶液に含まれるオキサゾリン基含有架橋剤(有効成分)1g当たりのオキサゾリン基量である。
(架橋剤水溶液(C-2)~(C-5))
メタクリル酸メチル及び2-イソプロペニル-2-オキサゾリンの使用量を下記表7に示す通りに変更した以外は、架橋剤水溶液(C-1)と同様の方法により、架橋剤水溶液(C-2)~(C-5)を得た。
Figure 2023123150000009
[実施例12~20及び比較例13~15]
架橋処理における架橋剤の種類及び量と、混合処理における処方(表3)とを下記表8に示す通りに変更した以外は、実施例1のインクの調製と同様の方法により、実施例12~20及び比較例13~15のインクを調製した。なお、比較例13のインクの調製では、架橋処理を行わなかった。すなわち、比較例13のインクの調製では、分散処理で得られたろ過後の分散液を遠心処理に供した。
Figure 2023123150000010
(体積中位径)
評価対象(詳しくは、実施例12~20及び比較例13~15のインクの何れか)をイオン交換水で100倍に希釈して希釈液を得た。この希釈液をサンプルとし、動的光散乱式粒径分布測定装置(マルバーン社製「ゼータサイザーナノZS」)を用いて評価対象の体積中位径(D50)を測定した。測定結果を下記表9に示す。
(パルスNMR)
評価対象(詳しくは、実施例12~20及び比較例13~15のインクの何れか)5mLをNMRチューブに投入した。NMRチューブをパルスNMR粒子界面特性評価装置(Xigo Nanotools社製「Acorn Area」、共鳴周波数:13MHz、データ解析法:CPMG法)にセットし、緩和時間Tavを測定した。測定された緩和時間Tavの逆数(1/Tav)を、緩和速度Ravとした。
次に、評価対象を超遠心機(エッペンドルフ・ハイマック・テクノロジーズ株式会社製「himac(登録商標)CS150FNX」、ローター:S140AT)を用いて、温度23℃、回転数140,000rpm(1,050,000G)で3時間遠心処理した(加速及び減速の設定目盛り:9)。これにより測定対象に含まれる顔料粒子を沈殿させた。次に、遠心処理により得られた上澄み液5mLをNMRチューブに投入した。次に、NMRチューブを上述のパルスNMR粒子界面特性評価装置にセットし、緩和時間Tbを測定した。測定された緩和時間Tbの逆数(1/Tb)を、緩和速度Rbとした。次に、下記式に基づいて、Rsp値を算出した。
sp値=(RavRb)-1
顔料の含有割合Vに対するRSP値の比(RSP/V)を算出した。算出結果を下記表9に示す。
(その他)
実施例1~11及び比較例1~12のインクと同様の方法により、実施例12~20及び比較例13~15のインクの上澄み液に含まれる固形分の含有割合と、特定樹脂の架橋率とを測定した。測定結果を下記表9に示す。
Figure 2023123150000011
<評価II>
実施例12~20及び比較例13~15のインクの各々について、以下の方法により、乾燥時D50変化率及び保存安定性を測定し、その結果に基づいてノズル詰まりの有無を判定した。また、実施例12~20及び比較例13~15のインクの各々について、形成される画像の画像濃度を評価した。なお、評価は、温度25℃、湿度60%RHの環境下において行った。評価結果を下記表10に示す。
[乾燥時D50変化率]
評価対象(詳しくは、実施例12~20及び比較例13~15のインクの何れか)について、上述の動的光散乱式粒径分布測定装置を用いて体積中位径(初期D50)を求めた。次に、測定対象を40℃の恒温槽に静置した(乾燥処理)。乾燥処理は、測定対象に含まれる水分の全量のうち40質量%が蒸発によって失われるまで行った。次に、乾燥処理後の測定対象について、上述の動的光散乱式粒径分布測定装置を用いて体積中位径(乾燥後D50)を求めた。乾燥時D50変化率は、下記式によって算出した。測定対象の乾燥時D50変化率は、以下の基準に沿って判定した。
乾燥時D50変化率[%]=100×(乾燥後D50-初期D50)/初期D50
(乾燥時D50変化率の基準)
A(良好):乾燥時D50変化率の絶対値が10%以下
B(不良):乾燥時D50変化率の絶対値が10%超
[保存安定性]
振動式粘度計(ニッテツ北海道制御システム株式会社製「VM-200T」)を用い、評価対象(詳しくは、実施例12~20及び比較例13~15のインクの何れか)の粘度(初期粘度V1)を測定した。また、上述の動的光散乱式粒径分布測定装置を用いて評価対象の体積中位径(初期D50)を求めた。次に、評価対象30gを容器に投入して密封した。上述の容器を、内温60℃に設定された恒温器に入れ、1か月間保温した。その後、上述の容器を恒温器から取り出した後、上述の容器を室温にて3時間静置した。その後、上述の容器から測定対象を取り出し、上述の振動式粘度計を用いて粘度(加熱時粘度V2)を測定した。測定された初期粘度V1及び加熱時粘度V2に基づいて、粘度変化率[%]を算出した(下記式)。また、処理後の測定対象について、上述の動的光散乱式粒径分布測定装置を用いて体積中位径(加熱時D50)を求めた。測定された初期D50及び加熱時D50に基づいて、加熱時D50変化率[%]を算出した(下記式)。算出された粘度変化率及び加熱時D50変化率を、測定対象の保存安定性の評価値とした。保存安定性は、以下の基準に沿って評価した。
粘度変化率[%]=100×(V1-V2)/V1
加熱時D50変化率[%]=100×(加熱時D50-初期D50)/初期D50
(保存安定性の基準)
A(良好):粘度変化率の絶対値が5%以下、かつ加熱時D50変化率の絶対値が5%以下
B(不良):粘度変化率の絶対値が5%超、又は加熱時D50変化率の絶対値が5%超
[ノズル詰まりの総合判定]
評価対象(詳しくは、実施例12~20及び比較例13~15のインクの何れか)がノズル詰まりの発生を抑制できるか否かは、以下の基準で総合的に判定した。
(ノズル詰まりの総合判定の基準)
A(良好):乾燥時D50変化率及び保存安定性が何れも良好であった。
B(不良):乾燥時D50変化率及び保存安定性のうち少なくとも1つが不良であった。
[画像濃度]
画像濃度の評価においては、評価機として、上述のラインヘッド搭載インクジェット記録装置を用いた。評価対象となる実施例12~20及び比較例13~15のインクは、評価機のブラック用インクタンクに充填した。記録媒体として、A4サイズのPPC用紙(富士フイルムビジネスイノベーション株式会社製「C2」)を用いた。
評価機を用いて、記録媒体にソリッド画像(サイズ:10cm×10cm、印字率:100%)を形成した。この際、記録ヘッドから吐出されるインクの各インク滴の体積(1画素当たりのインクの体積)が11pLとなるように、記録ヘッドを設定した。形成されたソリッド画像の画像濃度(ID)を反射濃度計(X-Rite社製「eXact」)で測定した。詳しくは、ソリッド画像中において無作為に選択した10箇所の画像濃度を上述の反射濃度計で測定し、10箇所の画像濃度の算術平均値を画像濃度の評価値とした。画像濃度は、以下の基準で判定した。
合格(A):評価値が1.15以上
不合格(B):評価値が1.15未満
Figure 2023123150000012
表8~10に示す通り、実施例12~20のインクは、水性媒体と、水性媒体に分散する顔料粒子とを含有していた。顔料粒子は、顔料及び特定樹脂を含んでいた。特定樹脂は、オキサゾリン基含有架橋剤に由来する架橋構造を有していた。特定樹脂の架橋率は、45%以上82%以下であった。実施例1~11のインクにおいて、1,050,000Gで3時間遠心処理して得られる上澄み液における固形分の含有割合は、2.0質量%以下であった。実施例12~20のインクは、ノズル詰まりの発生を抑制できた。
また、実施例12~18のインクは、顔料粒子の体積中位径が80nm以上130nm以下であると共に、比(RSP/V)が50以上80以下であった。実施例12~18のインクは、所望の画像濃度を有する画像を形成できた。
一方、実施例19のインクは、顔料粒子の体積中位径が80nm未満であった。実施例20のインクは、比(RSP/V)が80超であった。実施例19~20のインクは、本実施例の条件では、所望の画像濃度を有する画像の形成が困難であった。
比較例13のインクは、特定樹脂が架橋されていなかった。その結果、比較例13のインクは、ノズル詰まりの発生を抑制できなかった。
比較例15及び16のインクは、上澄み液における固形分の含有割合が2.0質量%超であった。その結果、比較例15及び16のインクは、ノズル詰まりの発生を抑制できなかった。
本発明のインクは、画像を形成するために用いることができる。

Claims (4)

  1. 水性媒体と、前記水性媒体に分散する顔料粒子とを含有し、
    前記顔料粒子は、顔料及び特定樹脂を含み、
    前記特定樹脂は、オキサゾリン基含有架橋剤に由来する架橋構造を有し、
    前記特定樹脂の架橋率は、45%以上82%以下であり、
    1,050,000Gで3時間遠心処理して得られる上澄み液における固形分の含有割合は、2.0質量%以下である、インクジェット用インク。
  2. 前記特定樹脂は、前記オキサゾリン基含有架橋剤とスチレン-(メタ)アクリル樹脂との反応生成物を含む、請求項1に記載のインクジェット用インク。
  3. 前記顔料粒子の体積中位径は、80nm以上130nm以下である、請求項1又は2に記載のインクジェット用インク。
  4. パルスNMRによりRSP値を測定したときに、
    前記顔料の含有割合Vに対する前記RSP値の比(RSP/V)は、50以上80以下である、請求項3に記載のインクジェット用インク。
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