JP2023122790A - 耐火断熱シート - Google Patents

耐火断熱シート Download PDF

Info

Publication number
JP2023122790A
JP2023122790A JP2022026500A JP2022026500A JP2023122790A JP 2023122790 A JP2023122790 A JP 2023122790A JP 2022026500 A JP2022026500 A JP 2022026500A JP 2022026500 A JP2022026500 A JP 2022026500A JP 2023122790 A JP2023122790 A JP 2023122790A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
layer
fireproof
heat insulating
heat
fire
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2022026500A
Other languages
English (en)
Inventor
直樹 片山
Naoki Katayama
泰弘 本荘
Yasuhiro Honjo
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Riko Co Ltd
Original Assignee
Sumitomo Riko Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Riko Co Ltd filed Critical Sumitomo Riko Co Ltd
Priority to JP2022026500A priority Critical patent/JP2023122790A/ja
Publication of JP2023122790A publication Critical patent/JP2023122790A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Laminated Bodies (AREA)
  • Thermal Insulation (AREA)

Abstract

【課題】 耐火性および断熱性に優れる耐火断熱シートを提供する。【解決手段】 耐火断熱シートは、複数の粒子が連結して骨格をなし、内部に細孔を有し、表面および内部のうち少なくとも表面に疎水部位を有する多孔質構造体を有する断熱層と、該断熱層の厚さ方向一面に配置され、耐熱性を有する繊維シートからなる第一耐火層と、該第一耐火層に積層され、イントメッセント系難燃剤および膨張黒鉛から選ばれる一種以上の難燃剤と、有機バインダーと、を有する第二耐火層と、を備える。【選択図】 図1

Description

本開示は、シリカエアロゲルなどの多孔質構造体を用いた耐火断熱シートに関する。
建築分野においては、火災時に火炎や熱から建築物を保護するため、鉄骨、壁材などの建材に耐火シートが用いられる。例えば、特許文献1には、難燃剤、発泡剤、炭化剤、および充填剤を有する発泡耐火性付与粉体と、熱可塑性樹脂と、から製造される耐火シートが記載されている。この種の耐火シートは、加熱されると含有成分が発泡し、それにより膨張した不燃性の炭化層が形成されることにより、耐火断熱性能を発現する。
特開2000-202846号公報 特開2010-12465号公報 特開2019-2555号公報
従来の耐火シートの場合、耐火断熱性能を発現させるためには、シートが厚さ方向に膨張するためのスペースが必要になる。よって、スペース上の制約がある場所には、シートの膨張が制限され炭化層が充分に形成されないため、適用が難しい。例えば、建材は、高温になると機械的強度が低下する。このため、耐火シートの役割として、保護対象における着火の抑制だけでなく、温度上昇を抑制することも重要になる。また、耐火シートを自動車に搭載される燃料タンク、バッテリーの筐体などに適用する場合にも、熱の伝達を抑制して温度上昇を抑制することが重要になる。この点、従来の耐火シートは、防火を主な目的としているため、断熱性は充分ではなく、保護対象の温度上昇を抑制することは難しい。
他方、断熱材としては、熱伝導率が小さいシリカエアロゲルを用いたものが知られている。例えば、特許文献2には、シリカエアロゲルおよび水性バインダーを含む絶縁ベース層と、保護バインダーおよび赤外線反射剤を含む熱反射性トップ層と、を備える複合材料が記載されている。特許文献2の段落[0034]などには、各層に難燃剤が配合される形態が記載されている。また、特許文献3には、フィルム基材と、接着層と、シリカエアロゲルを含む断熱層と、を備える断熱シートが記載されている。特許文献3の段落[0036]などには、断熱層に難燃剤が配合される形態が記載されている。
しかしながら、断熱層に難燃剤を配合すると、その分だけシリカエアロゲルの配合比率が低下するため、断熱性の低下を招く。また、断熱層に難燃剤を配合するだけでは、火災時に断熱層が火炎に晒されて高温になり、断熱機能が損なわれるおそれがある。
本開示は、このような実情に鑑みてなされたものであり、耐火性および断熱性に優れる耐火断熱シートを提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本開示の耐火断熱シートは、複数の粒子が連結して骨格をなし、内部に細孔を有し、表面および内部のうち少なくとも表面に疎水部位を有する多孔質構造体を有する断熱層と、該断熱層の厚さ方向一面に配置され、耐熱性を有する繊維シートからなる第一耐火層と、該第一耐火層に積層され、イントメッセント系難燃剤および膨張黒鉛から選ばれる一種以上の難燃剤と、有機バインダーと、を有する第二耐火層と、を備えることを特徴とする。
本開示の耐火断熱シートは、断熱層、第一耐火層、および第二耐火層からなる三層構造を有する。本開示の耐火断熱シートにおいては、複数の層を積層させて、耐火性と断熱性との機能を分離している。本開示の耐火断熱シートは、断熱層が保護対象側、第二耐火層が外側になるように配置される。第一耐火層および第二耐火層は、耐火性に優れ、主に火炎の侵入を抑制する。断熱層は、断熱性に優れ、主に熱の伝達を抑制する。ここで、第二耐火層は、加熱されると難燃剤の作用により膨張した不燃層を形成する。よって、第二耐火層は、耐火性に加えて断熱性にも優れる。機能が異なるこれらの層を積層することにより、各層の厚さを抑えてシート全体の厚さが薄くても、耐火性および断熱性に優れる耐火断熱シートを実現することができる。本開示の耐火断熱シートは、薄く、比較的柔軟で、軽量なシート状を呈する。このため、施工性に優れ、比較的狭い場所にも適用することができ、軽量化が要求される車両部品にも好適である。
第一実施形態の耐火断熱シートの厚さ方向断面図である。 第二実施形態の耐火断熱シートの厚さ方向断面図である。
以下、本開示の耐火断熱シートの実施の形態について説明する。
<第一実施形態>
[構成]
まず、本実施形態の耐火断熱シートの構成を説明する。図1に、本実施形態の耐火断熱シートの厚さ方向断面図を示す。図1においては、厚さ方向(積層方向)を内外方向として示す。内側は、保護対象側に対応する。図1に示すように、耐火断熱シート10は、内側から順に断熱層11と、第一耐火層12と、第二耐火層13と、を備えている。耐火断熱シート10の厚さは、2.5mmである。
断熱層11は、シリカエアロゲルと、バインダーとしてのウレタン樹脂と、増粘剤としてのカルボキシルメチルセルロース(CMC)と、を有している。シリカエアロゲルは、本開示における「多孔質構造体」の概念に含まれる。断熱層11の厚さは1mmである。断熱層11は、燃料タンクなどの保護対象に貼着されている。
第一耐火層12は、断熱層11の外側の一面(厚さ方向一面)に配置されている。第一耐火層12は、ガラス繊維を含む耐熱不織布からなる。当該耐熱不織布は、1000℃の火炎を5分間当てても穴あきしない程度の耐火性を有する。当該耐熱不織布は、本開示における「耐熱性を有する繊維シート」の概念に含まれる。第一耐火層12の厚さは0.5mmである。
第二耐火層13は、第一耐火層12の外側の一面に配置されている。第二耐火層13は、ポリリン酸アンモニウムと、ウレタン樹脂と、を有している。第二耐火層13の全体質量を100質量%とした場合、ポリリン酸アンモニウムの含有量は45質量%である。ポリリン酸アンモニウムは、本開示における「イントメッセント系難燃剤」の概念に含まれる。ウレタン樹脂は、本開示における「有機バインダー」の概念に含まれる。第二耐火層13の厚さは1mmである。
[製造方法]
次に、本実施形態の耐火断熱シートの製造方法を説明する。まず、水にウレタン樹脂エマルジョンおよびCMCを加えて撹拌した後、シリカエアロゲルを加えて撹拌して、断熱層用組成物を調製する。また、水にウレタン樹脂エマルジョンおよびポリリン酸アンモニウム粉末を加えて撹拌して、第二耐火層用組成物を調製する。次に、調製した断熱層用組成物を、第一耐火層12としての耐熱不織布の一面(内側表面)に塗布し乾燥させて、断熱層11を形成する。それから、調製した第二耐火層用組成物を、耐熱不織布の他面(外側表面)に塗布し乾燥させて、第二耐火層13を形成する。
[作用効果]
次に、本実施形態の耐火断熱シートの作用効果について説明する。耐火断熱シート10における断熱層11は、シリカエアロゲルを有するため、断熱性に優れる。また、バインダーとしてウレタン樹脂を用いることで、シリカエアロゲルの脱落を抑制すると共に、断熱層11に柔軟性を付与することができる。また、増粘剤としてCMCを用いることで、断熱層用組成物の粘性が高くなる。これにより、疎水性のシリカエアロゲルの水懸濁性が向上して、シリカエアロゲルが分散しやすくなると共に、塗工性が向上する。加えて、断熱層11に柔軟性を付与することができる。
第二耐火層13が加熱されると、ポリリン酸アンモニウムが分解してガスが発生し、これにより、ウレタン樹脂などの有機化合物から生成した炭素から形成される炭化層が膨張して、多孔質の膨張不燃層が形成される。耐火断熱シート10においては、この第二耐火層13と、耐熱性が高く優れた火炎遮断効果を有する第一耐火層12と、の二層により、火炎の侵入を抑制する。このため、第二耐火層13における難燃剤(ポリリン酸アンモニウム)の量が比較的少なくても、所望の耐火性を実現することができる。よって、第二耐火層13の膨張に必要なスペースは、比較的小さくてよい。また、断熱層11の外側に、第二耐火層13および第一耐火層12の二層が配置されるため、断熱層11が火炎に晒されにくくなり、断熱機能を維持することができる。このように、耐火断熱シート10によると、機能が異なる三層を積層することにより、全体の厚さが薄くても、所望の耐火性および断熱性を実現することができる。耐火断熱シート10は、薄く、比較的柔軟で、軽量であるため、施工性に優れ、比較的狭い場所にも適用することができる。
<第二実施形態>
本実施形態の耐火断熱シートと第一実施形態の耐火断熱シートとの相違点は、断熱層の保護対象側の表面(厚さ方向他面)にカバー層を配置した点である。ここでは、相違点を中心に説明する。図2に、本実施形態の耐火断熱シートの厚さ方向断面図を示す。図2に示すように、耐火断熱シート20は、内側から順にカバー層24と、断熱層21と、第一耐火層22と、第二耐火層23と、を備えている。耐火断熱シート20の厚さは、2.8mmである。カバー層24以外の層の構成および厚さは、第一実施形態と同じであるため説明を省略する。
カバー層24は、厚さ0.3mmのポリエステル繊維不織布からなる。カバー層24は、燃料タンクなどの保護対象に貼着されている。耐火断熱シート20によると、断熱層21がカバー層24により被覆されるため、シリカエアロゲルの脱落抑制効果が高く、取り扱い性が向上する。
耐火断熱シート20の製造方法は以下のとおりである。まず、第一実施形態と同様にして、断熱層用組成物および第二耐火層用組成物を調製する。次に、調製した断熱層用組成物を、第一耐火層22としての耐熱不織布の一面(内側表面)に塗布する。続いて、塗布した断熱層用組成物の表面に、カバー層24としてのポリエステル繊維不織布を配置する。この状態で、断熱層用組成物を乾燥させて、断熱層21を形成する。それから、調製した第二耐火層用組成物を、耐熱不織布の他面(外側表面)に塗布し乾燥させて、第二耐火層23を形成する。
<その他の形態>
本開示の耐火断熱シートは、上記形態に限定されるものではなく、当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することが可能である。
[耐火断熱シートの構成]
本開示の耐火断熱シートは、断熱層、第一耐火層、および第二耐火層を備えればよく、これ以外の構成については特に限定されない。耐火断熱シートは、第二耐火層が外側になるように、換言すると断熱層が保護対象側になるように配置される。耐火断熱シートの厚さは、用途に応じて適宜決定すればよく、例えば、10mm以下、8mm以下などにすればよい。特に薄型化、柔軟性を高めるなどの観点においては、厚さを5mm以下にすることが望ましい。
(1)断熱層
断熱層の厚さは、用途に応じて適宜決定すればよい。断熱性の観点から、断熱層の厚さは、0.1mm以上、0.5mm以上、または1mm以上であることが望ましい。断熱層が厚すぎると、コスト高になるだけでなく、強度が低下して脆くなる。このため、断熱層の厚さは、5mm以下、3mm以下、または2mm以下であることが望ましい。
断熱層は、多孔質構造体を有する。多孔質構造体は、複数の粒子が連結して骨格をなし内部に細孔を有する。骨格をなす粒子(一次粒子)の直径は、2~5nm程度、骨格と骨格との間に形成される細孔の大きさは、10~50nm程度であることが望ましい。細孔の多くは、50nm以下のいわゆるメソ孔である。メソ孔は、空気の平均自由行程よりも小さいため、空気の対流が制限され熱の移動が阻害される。多孔質構造体の形状は、球状、異形状の塊状など、特に限定されないが、面取りされた形状または球状が望ましい。この場合、液中での分散性が向上するため、断熱層を製造するための組成物(断熱層用組成物)の調製が容易になる。また、多孔質構造体間の空隙を少なくして充填量を多くすることができ、断熱性を高めることができる。多孔質構造体は、製造された状態で使用してもよいが、それをさらに粉砕処理して使用してもよい。粉砕処理には、ジェットミルなどの粉砕装置または球状化処理装置などを使用すればよい。粉砕処理することにより、粒子の角が取れ、粒子が丸みを帯びた形状になる。これにより、断熱層の表面が平滑になり、クラックが入りにくくなる。また、バインダーを配合する場合には、バインダーにより結合されやすくなるため、多孔質構造体がより脱落しにくくなる。
多孔質構造体の平均粒子径は1~200μm程度が望ましい。多孔質構造体の粒子径が大きいほど、表面積が小さくなり細孔容積が大きくなるため、断熱性を高める効果は大きくなる。例えば、平均粒子径が10μm以上のものが好適である。他方、断熱層用組成物の安定性や塗工のしやすさを考慮すると、平均粒子径が100μm以下のものが好適である。また、粒子径が異なる二種以上を併用すると、小径の多孔質構造体が大径の多孔質構造体間の隙間に入りこむため、充填量を多くすることができ、断熱性を高める効果が大きくなる。平均粒子径は、レーザー回折・散乱法により測定される体積基準の粒度分布から求められるメジアン径(D50)を採用すればよい。なお、市販品についてはカタログ値を採用してもよい。
多孔質構造体は、表面および内部のうち少なくとも表面に疎水部位を有する。表面に疎水部位を有すると、水分などの染み込みを抑制することができるため、細孔構造が維持され、断熱性が損なわれにくい。例えば、シランカップリング剤などで表面処理することにより、多孔質構造体の表面に疎水性などの機能を付与することができる。また、多孔質構造体の製造過程において、疎水基を付与するなどの疎水化処理を施してもよい。
多孔質構造体の種類は特に限定されない。一次粒子として、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニアなどが挙げられる。なかでも化学的安定性に優れるという理由から、一次粒子がシリカである、すなわち複数のシリカ微粒子が連結して骨格をなすシリカエアロゲルが望ましい。シリカエアロゲルは白色を呈し赤外線を反射する。よって、シリカエアロゲルを用いると、断熱層に遮熱効果を付与することができる。
シリカエアロゲルの製造方法は、特に限定されず、乾燥工程を常圧で行ったものでも、超臨界で行ったものでも構わない。例えば、疎水化処理を乾燥工程前に行うと、超臨界で乾燥する必要がなくなる、すなわち常圧で乾燥すればよいため、より容易かつ低コストに製造することができる。エアロゲルを製造する際の乾燥方法の違いにより、常圧で乾燥したものを「キセロゲル」、超臨界で乾燥したものを「エアロゲル」と呼び分けることがあるが、本明細書においては、その両方を含めて「エアロゲル」と称す。
断熱層における多孔質構造体の含有量は、断熱性、機械的強度などを考慮して適宜決定すればよい。例えば、熱伝導率を小さくする(断熱性を高くする)という観点では、多孔質構造体の含有量は、断熱層全体の質量を100質量%とした場合の40質量%以上であることが望ましい。50質量%以上、60質量%以上であるとより好適である。他方、多孔質構造体が多くなると、多孔質構造体が脱落しやすくなるおそれがある。このため、多孔質構造体の含有量は、断熱層全体の質量を100質量%とした場合の75質量%以下であることが望ましい。70質量%以下であるとより好適である。
断熱層は、液状(スラリー状を含む)の断熱層用組成物を塗布、乾燥して形成してもよく、多孔質構造体と後述するバインダーの粉末などとを加圧して成形してもよい。また、多孔質構造体を、その前駆体であるゾル状態でポリエステルやガラス繊維などの繊維基材に含侵させ、それを加熱するなどしてゲル化、乾燥したシートでもよい。
多孔質構造体の脱落を抑制するという観点から、断熱層にバインダーを配合してもよい。バインダーとしては、断熱層用組成物を調製しやすいという観点から、水(純水、水道水などを含む)を溶媒とするバインダー(水性バインダー)を用いるとよい。バインダーの成分は、有機材料でも無機材料でも構わない。バインダーの成分が有機材料である有機バインダーとしては、水溶性のバインダー、エマルジョン状のバインダーがあるが、なかでもエマルジョン状のバインダー(水性エマルジョン系バインダー)が好適である。水性エマルジョン系バインダーは、界面活性剤または親水基の導入により乳化されている。水性エマルジョン系バインダーによると、乾燥時に界面活性剤や親水基が揮発することにより親水性が低下し、水に溶解しにくくなるため、断熱層用組成物を硬化した後にべたつきが生じにくいと考えられる。エマルジョン化する方法としては、界面活性剤を乳化剤として使用した強制乳化型でも、親水基が導入された自己乳化型でも構わない。
有機材料は、樹脂でもゴムでもよい。多孔質構造体に対する粘着性が高く、断熱層を柔軟にしてクラックを入りにくくするという観点から、バインダーのガラス転移温度(Tg)は-5℃以下、さらには-20℃以下であることが望ましい。例えば、水性エマルジョン系バインダーの場合、樹脂エマルジョンでもゴムエマルジョンでもよい。樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂とウレタン樹脂との混合物などが挙げられる。ゴムとしては、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴムなどが挙げられる。断熱層を柔軟にするという観点から、ウレタン樹脂、SBRなどが好適である。バインダー部分の強度を高めて断熱層の強度を向上させるという観点から、架橋剤などを併用してバインダー成分を架橋させてもよい。
高温雰囲気における有機成分の分解、劣化を低減し、クラックなどの発生を抑制するという観点においては、バインダーの成分が無機材料である無機バインダーを用いることが望ましい。無機材料としては、シリカ、チタニア、酸化亜鉛、ジルコニアなどの金属酸化物の他、水ガラス(ケイ酸ナトリウム)、セメント、石こう、ケイ酸マグネシウム、生石灰、消石灰などが挙げられる。なかでも、多孔質構造体と相溶しやすく、安価で入手しやすいという理由から、シリカを有するバインダーが好適である。また、溶媒である水と反応しながら、多孔質構造体同士の間の隙間を埋めながらバインダー化することで高強度な断熱層を形成することができ、安価で入手しやすいという理由から、水硬性材料であるセメント、石こう、ケイ酸マグネシウムも好適である。
無機材料がナノ粒子(ナノメートルオーダーの粒子)である場合には、断熱層が無機材料を有することによる硬さや脆さの欠点を改善することができる。シリカのナノ粒子を有するバインダーとしては、水を分散媒とするコロイダルシリカ、ケイ酸ナトリウム溶液などを用いればよい。チタニアのナノ粒子を有するバインダーとしては、チタニアの水分散液などを用いればよい。
断熱層は、多孔質構造体およびバインダーの他に、架橋剤、増粘剤、補強繊維などの他の成分を含んでいてもよい。表面や内部に疎水部位を有する多孔質構造体は、水になじみにくい。なかでもシリカエアロゲルは比重が小さいため、水に浮きやすい。このため、水を溶媒とするバインダー液にシリカエアロゲルを分散させるのは難しく、分散工程に時間を要する。例えば、増粘剤を配合すると、バインダー液の粘性が高くなり、疎水性の多孔質構造体の水懸濁性が向上して、多孔質構造体が分散しやすくなる。これにより、多孔質構造体の分散に要する時間を短縮することができ、生産性を高めることができる。また、断熱層に柔軟性が付与されるため、クラックの発生も抑制される。増粘剤としては、CMCの他、ポリエチレンオキサイド(PEO)、カルボキシエチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、キサンタンガム、アガロース、カラギナンなどの多糖類や、ポリビニルアルコール、グルコマンナンなどを用いればよい。
補強繊維を配合すると、多孔質構造体の周りに物理的に絡み合って存在することにより、断熱層の機械的強度が向上し、多孔質構造体の脱落を抑制することができる。補強繊維の種類は特に限定されないが、耐熱性などを考慮すると、ガラス繊維、セラミック繊維などが好適である。
(2)第一耐火層
第一耐火層は、断熱層の厚さ方向一面に配置され、耐熱性を有する繊維シートからなる。繊維シートは、耐熱性を高め断熱層への火炎の侵入を抑制するという観点から、軟化点が700℃以上の繊維を含んで形成されていることが望ましい。好適な繊維として、ガラス繊維、セラミック繊維などが挙げられる。繊維シートは、さらにポリイミドやポリアミドなどの耐熱樹脂繊維を含んでもよい。また、繊維以外の成分として、無機粒子、繊維同士を結合するバインダーなどを含んでもよい。無機粒子としては、タルク、カオリナイト、モンモリナイト、マイカ、シリカ、チタン酸カリウム、酸化チタン、窒化ケイ素、アルミナ、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、ジルコニアなどが挙げられる。例えば、次の条件(a)を満足する繊維シートは、火炎遮断効果が高いため好適である。
(a)プロパンガスバーナーにより1000℃の火炎を噴出させ、繊維シートを当該火炎に当てた状態で5分間保持した場合に穴あきしないこと。
第一耐火層(繊維シート)の厚さは、火炎遮断性能に応じて適宜調整すればよく、例えば、0.2mm以上、0.5mm以上、または1mm以上にするとよい。他方、薄型化、柔軟性などを考慮すると、2mm以下または1.5mm以下にするとよい。
(3)第二耐火層
第二耐火層は、第一耐火層に積層され、イントメッセント系難燃剤および膨張黒鉛から選ばれる一種以上の難燃剤と、有機バインダーと、を有する。難燃剤としては、加熱された際に膨張不燃層を形成するための薬剤として、イントメッセント系難燃剤および膨張黒鉛のいずれか一方または両方を用いるが、さらにこれら以外の難燃剤を加えてもよい。イントメッセント系難燃剤は、加熱されると分解してガスを発生する。このガスが、有機バインダーなどの有機化合物から生成した炭素から形成される炭化層を膨張させて、膨張不燃層が形成される。イントメッセント系難燃剤としては、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミンなどが挙げられる。耐水性、難燃性を向上させるという観点から、これらの粒子表面がメラミン樹脂などで被覆処理されたものでもよい。膨張黒鉛は、鱗片状の黒鉛の層間に、加熱によりガスを発生する物質が挿入されたものである。膨張黒鉛は、加熱されると層間物質から発生するガスにより層間が広がり膨張する。これにより、膨張不燃層が形成される。
難燃効果を高めるという観点から、難燃剤の含有量は、第二耐火層の全体質量を100質量%とした場合の30質量%以上にするとよい。40質量%以上が好適である。他方、火炎の侵入を抑制する機能は、第二耐火層だけでなく第一耐火層も有するため、第二耐火層における難燃剤の量をそれほど多くしなくても、耐火断熱シート全体として所望の耐火性を実現することができる。例えば、難燃剤の含有量を80質量%以下、さらには70質量%以下にすることができる。
有機バインダーは、難燃剤同士を結合すると共に、イントメッセント系難燃剤を用いた場合に膨張不燃層を形成するための炭素を供給する役割を果たす。有機バインダーの種類は特に限定されないが、結着性に優れ、柔軟であるという理由から、アクリルポリマー、ウレタンポリマーおよび多価アルコールから選ばれる一種以上を有することが望ましい。これらのうちの一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。ここで、「ポリマー」は、樹脂およびゴムを含む概念である。
第二耐火層の厚さは、火炎遮断性能に応じて適宜調整すればよく、例えば、0.5mm以上または1mm以上にするとよい。他方、薄型化、柔軟性などを考慮すると、2mm以下または1.5mm以下にするとよい。第二耐火層は、加熱されると膨張するが、難燃剤の含有量などにより膨張後の厚さを調整することができる。例えば、加熱後(膨張後)の厚さを加熱前の厚さの1.5~5倍程度にすることができる。
(4)カバー層
上記第二実施形態に示したように、本開示の耐火断熱シートは、断熱層の厚さ方向他面に配置されるカバー層を備えてもよい。カバー層の材質などの形態は、特に限定されず、織布、不織布の他、樹脂、紙などから形成されるフィルム、シートなどが挙げられる。カバー層は、一層からなるものでも、同じ材料または異なる材料が二層以上に積層された積層体でもよい。なかでも、軽量、柔軟、安価であり、多孔質構造体の脱落抑制効果が高いなどの理由から、不織布が望ましい。使用される繊維としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミドなどの合成繊維、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、セラミック繊維、ロックウールなどの無機繊維などが挙げられる。カバー層の厚さは、用途に応じて適宜決定すればよい。例えば、薄型化、柔軟性などを考慮すると、1mm以下または0.5mm以下にするとよく、補強効果などを考慮すると、0.1mm以上または0.3mm以上にするとよい。
(5)その他
本開示の耐火断熱シートは、層同士の接着力を高めるため、層間に接着層を備えてもよい。接着層は、接着成分の他、難燃剤などを含んでもよい。
[耐火断熱シートの製造方法]
本開示の耐火断熱シートは、上記第一、第二実施形態に示したように、第一耐火層の繊維シートの一面に断熱層用組成物を塗布、乾燥して断熱層を形成し、同繊維シートの他面に第二耐火層用組成物を塗布、乾燥して第二耐火層を形成して、製造することができる。また、カバー層を備える形態においては、第二実施形態とは異なる製造方法として、カバー層の一面に断熱層用組成物を塗布し、この上に第一耐火層の繊維シートを配置した後、乾燥して断熱層を形成してもよい。それから、繊維シートの表面に第二耐火層用組成物を塗布、乾燥して第二耐火層を形成すればよい。組成物の塗布には、刷毛塗りしたり、ブレードコーター、バーコーター、ダイコーター、コンマコーター(登録商標)、ロールコーターなどの塗工機や、スプレーなどを使用すればよい。乾燥は、80~150℃の温度下で、数分~数十分程度行えばよい。また、断熱層がシート状に形成されている場合には、当該断熱層に第一耐火層の繊維シート、必要に応じてカバー層を貼着するなどして積層すればよい。
次に、実施例を挙げて本開示をより具体的に説明する。本実施例においては、本開示の耐火断熱シートのサンプルと、従来の耐火シートのサンプルと、を準備して、各々の断熱性を評価した。
<サンプルの準備>
(1)実施例1
(a)断熱層用組成物の調製
水に、ウレタン樹脂エマルジョン(三洋化成工業(株)製「パーマリン(登録商標)UA-368」、固形分50質量%)と、CMC(第一工業製薬(株)製「セロゲン(登録商標)BSH-12」)と、を添加して、撹拌羽根で撹拌しながらシリカエアロゲル(平均粒子径90μm)を添加して、断熱層用組成物を調製した。
(b)第二耐火層用組成の調製
水に、ウレタン樹脂エマルジョン(同上)と、ポリリン酸アンモニウム粉末(平均粒子径10μm)と、を添加して、撹拌羽根で撹拌して、第二耐火層用組成物を調製した。
(c)耐火断熱シートの製造
まず、調製した断熱層用組成物を、耐熱不織布(三菱製紙(株)「GP100-TRX」、厚さ0.5mm)の表面に、ブレードコーターを用いて塗布した。次に、塗布した断熱層用組成物の表面に、ポリエステル繊維不織布(厚さ0.3mm)を配置して、150℃下で10分間保持することにより、断熱層用組成物を乾燥させた。続いて、耐熱不織布の裏面に、第二耐火層用組成物をブレードコーターを用いて塗布し、150℃下で10分間保持することにより、第二耐火層用組成物を乾燥させた。このようにして、「ポリエステル繊維不織布(カバー層)/断熱層/耐熱不織布(第一耐火層)/第二耐火層」からなる耐火断熱シートを製造した。製造した耐火断熱シートは、縦150mm、横150mmの正方形のシートであり、厚さは2.8mmである。断熱層におけるシリカエアロゲルの含有量は60質量%であり、第二耐火層における難燃剤の含有量は45質量%である(いずれも層全体の質量を100質量%とする)。製造した耐火断熱シートを、実施例1のサンプルとした。
(2)比較例1
エスケー化研(株)製の耐火シートである「SKタイカシート(登録商標)」(厚さ3.5mm)を、実施例1のサンプルと同じ大きさの正方形状に切り出して、比較例1のサンプルとした。
(3)比較例2
積水化学工業(株)製の耐火シートである「フィブロック(登録商標)TBCZ001」(厚さ2.25mm)を、実施例1のサンプルと同じ大きさの正方形状に2枚切り出して、それらを同じ向きで重ね合わせた積層シートを、比較例2のサンプルとした。
<断熱性の評価>
[実験方法]
各サンプルに対して、火炎暴露実験を実施した。火炎暴露実験においては、サンプルの表面にプロパンガスバーナーの火炎を当て、その状態で15分後保持した後、サンプルの裏面温度を測定した。シートの断熱性が高いほど、裏面温度は低くなる。バーナーの火炎温度は、サンプルの表面から25mm離れた位置で800℃になるように調整した。実施例1のサンプルについては、第二耐火層の表面に火炎を当て、ポリエステル繊維不織布の表面(サンプルの裏面)の温度を測定した。
[実験結果]
表1に、サンプルの種類、厚さ、および断熱性の評価結果を示す。
Figure 2023122790000002
表1に示すように、実施例1のサンプルの裏面温度は182℃であり、サンプルの穴あきもなかった。これに対して、比較例1、2のサンプルの裏面温度は、いずれも200℃を超えていた。このように、本開示の耐火断熱シートは、断熱性に優れ、保護対象の温度上昇を抑制する効果が高いことが確認された。
本開示の耐火断熱シートは、鉄骨、壁材などの建材、車両に搭載される燃料タンク、燃料電池車用の水素タンク、電気自動車用のバッテリー筐体などに適用することができる。
10、20:耐火断熱シート、11、21:断熱層、12、22:第一耐火層、13、23:第二耐火層、24:カバー層。

Claims (10)

  1. 複数の粒子が連結して骨格をなし、内部に細孔を有し、表面および内部のうち少なくとも表面に疎水部位を有する多孔質構造体を有する断熱層と、
    該断熱層の厚さ方向一面に配置され、耐熱性を有する繊維シートからなる第一耐火層と、
    該第一耐火層に積層され、イントメッセント系難燃剤および膨張黒鉛から選ばれる一種以上の難燃剤と、有機バインダーと、を有する第二耐火層と、
    を備えることを特徴とする耐火断熱シート。
  2. 前記繊維シートは、軟化点が700℃以上の繊維を有する請求項1に記載の耐火断熱シート。
  3. 前記繊維シートは、ガラス繊維およびセラミック繊維から選ばれる一種以上を有する請求項1または請求項2に記載の耐火断熱シート。
  4. 前記イントメッセント系難燃剤は、ポリリン酸アンモニウムおよびポリリン酸メラミンから選ばれる一種以上である請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の耐火断熱シート。
  5. 前記有機バインダーは、アクリルポリマー、ウレタンポリマーおよび多価アルコールから選ばれる一種以上を有する請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の耐火断熱シート。
  6. 前記難燃剤の含有量は、前記第二耐火層の全体質量を100質量%とした場合の30質量%以上80質量%以下である請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の耐火断熱シート。
  7. さらに、前記断熱層の厚さ方向他面に配置されるカバー層を備える請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の耐火断熱シート。
  8. 前記カバー層は、不織布からなる請求項7に記載の耐火断熱シート。
  9. 前記多孔質構造体は、複数のシリカ微粒子が連結して骨格をなすシリカエアロゲルである請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の耐火断熱シート。
  10. 全体の厚さは、10mm以下である請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の耐火断熱シート。
JP2022026500A 2022-02-24 2022-02-24 耐火断熱シート Pending JP2023122790A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022026500A JP2023122790A (ja) 2022-02-24 2022-02-24 耐火断熱シート

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022026500A JP2023122790A (ja) 2022-02-24 2022-02-24 耐火断熱シート

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2023122790A true JP2023122790A (ja) 2023-09-05

Family

ID=87885848

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2022026500A Pending JP2023122790A (ja) 2022-02-24 2022-02-24 耐火断熱シート

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2023122790A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR102023531B1 (ko) 에어로겔 함유 조성물 및 이를 이용하여 제조된 단열 블랑켓
US6084008A (en) Fire retardant coating composition
JP2015528071A (ja) 可撓性絶縁構造体ならびにその作成および使用方法
JP2006500245A (ja) 難燃性のコーティングを有する断熱及び/又は防音用の絶縁成分
JP2002501970A (ja) 低密度防火遮断材料およびその製造方法
WO2004024833A2 (en) Flexible, insulative fire protective coatings and coated materials
CN106232555B (zh) 无机可膨胀耐火组合物
US20200048905A1 (en) Aerogel containing construction board
US20220018485A1 (en) Composite type heat insulator and method for producing the same
CN110698926A (zh) 一种疏水高效防火涂料及其制备方法
JP2001171030A (ja) 不燃耐火断熱パネル、不燃耐火断熱パネル用枠材、発泡不燃断熱材及び発泡不燃断熱材の製造方法
JP2021143733A (ja) 断熱材およびその製造方法
JP2011068853A (ja) 難燃性塗料組成物及びそれを用いた板状体
CN101864215B (zh) 环保型钢结构防火涂料及其制备方法
Cheng et al. Flexible and Transformable Ceramic Aerogels via a Fire‐Reborn Strategy for Thermal Superinsulation in Extreme Conditions
JP2022505838A (ja) 建築部材間の通路開口部および接合部をシールするための複合材料および防火要素
JP2023122790A (ja) 耐火断熱シート
JP2022055295A (ja) 断熱材用組成物および断熱材
JP2005002145A (ja) 断熱層形成耐火塗料
WO2023276441A1 (ja) 断熱材
CN114144500A (zh) 液体组合物、防火层、包括防火层的层合结构以及防火方法
JP2022125585A (ja) 断熱材
WO2023181443A1 (ja) 断熱材
JP2021121493A (ja) 耐火断熱シート
WO2022259930A1 (ja) 断熱シート