JP2023122432A - エンジン制御システム - Google Patents
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Abstract
【課題】エンジンがバルブオーバーラップの状態で停止するか否かをより高精度に予測すること。【解決手段】エンジン制御システムは、エンジンと、排気管に設けられるパティキュレートフィルタと、制御装置と、を備える。制御装置のプロセッサは、記憶媒体に記憶された命令にしたがって、パティキュレートフィルタへの粒子状物質の堆積量を推定することと、エンジンがバルブオーバーラップ状態で停止するか否かを判定するためのオーバーラップ停止範囲を、堆積量に応じて決定することと、エンジンの回転数に基づく慣性値を取得することと、慣性値がオーバーラップ停止範囲内にあるか否かを判定することと、慣性値がオーバーラップ停止範囲内にある場合、エンジンがバルブオーバーラップ状態で停止するのを回避することと、を実行するように構成される。【選択図】図1
Description
本発明は、エンジン制御システムに関する。
エンジンでは、吸気効率を向上させるために、エンジンが排気行程から吸入行程に移行する際に、排気バルブと吸気バルブとの双方が開かれる場合がある。これは、「バルブオーバーラップ」とも称され得る。しかしながら、エンジンがバルブオーバーラップの状態で停止する場合、排気バルブと吸気バルブとの双方が開いていることから、排気ガスが排気管から吸気管に逆流する可能性がある。これは、次回のエンジン始動時に燃焼不良に繋がり得る。したがって、エンジンがバルブオーバーラップの状態で停止するか否かを予測するための技術が提案されている。
例えば、特許文献1では、燃料噴射停止後、エンジン回転数に基づく慣性値が導出される。この慣性値または慣性値から推定されるエンジン停止時のクランク角の推定値が、予め設定された閾値範囲に含まれる場合、エンジンがバルブオーバーラップの状態で停止すると予測される。
エンジンは、排気ガスからPM(Particulate matter)を除去するために、排気管にパティキュレートフィルタを備える場合がある。このようなパティキュレートフィルタは、例えば、GPF(Gasoline Particulate Filter)を含む。パティキュレートフィルタにPMが堆積すると、背圧が増加する場合がある。背圧が増加すると、エンジン回転数の挙動が変化し得る。したがって、特許文献1のように、エンジン回転数に基づいてエンジンがバルブオーバーラップ状態で停止するか否かを予測する場合、パティキュレートフィルタへのPMの堆積に起因して、予測の精度が低下する可能性がある。
本発明は、エンジンがバルブオーバーラップの状態で停止するか否かをより高精度に予測することができる、エンジン制御システムを提供することを目的とする。
本発明の一態様に係るエンジン制御システムは、
エンジンと、
前記エンジンに接続される排気管に設けられるパティキュレートフィルタと、
前記エンジンを制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、1または複数のプロセッサと、前記プロセッサによって実行される命令を記憶する1または複数の記憶媒体と、を含み、
前記プロセッサは、前記命令にしたがって、
前記パティキュレートフィルタへの粒子状物質の堆積量を推定することと、
前記エンジンがバルブオーバーラップ状態で停止するか否かを判定するためのオーバーラップ停止範囲を、前記堆積量に応じて決定することと、
前記エンジンの回転数に基づく慣性値を取得することと、
前記慣性値が前記オーバーラップ停止範囲内にあるか否かを判定することと、
前記慣性値が前記オーバーラップ停止範囲内にある場合、前記エンジンがバルブオーバーラップ状態で停止するのを回避することと、
を実行するように構成される。
エンジンと、
前記エンジンに接続される排気管に設けられるパティキュレートフィルタと、
前記エンジンを制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、1または複数のプロセッサと、前記プロセッサによって実行される命令を記憶する1または複数の記憶媒体と、を含み、
前記プロセッサは、前記命令にしたがって、
前記パティキュレートフィルタへの粒子状物質の堆積量を推定することと、
前記エンジンがバルブオーバーラップ状態で停止するか否かを判定するためのオーバーラップ停止範囲を、前記堆積量に応じて決定することと、
前記エンジンの回転数に基づく慣性値を取得することと、
前記慣性値が前記オーバーラップ停止範囲内にあるか否かを判定することと、
前記慣性値が前記オーバーラップ停止範囲内にある場合、前記エンジンがバルブオーバーラップ状態で停止するのを回避することと、
を実行するように構成される。
本発明によれば、エンジンがバルブオーバーラップの状態で停止するか否かをより高精度に予測することができる。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す具体的な寸法、材料および数値等は、理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、明細書および図面において、実質的に同一の機能および構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また、本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係るエンジン制御システム100を示す概略図である。エンジン制御システム100は、本開示において、単に「システム」とも称され得る。システム100は、例えば、HEV(Hybrid Electric Vehicle)、ガソリン自動車、または、ディーゼル自動車等の車両500に適用される。本実施形態では、車両500は、ガソリン自動車である。システム100は、エンジン10を備える。
エンジン10は、シリンダ11と、ピストン12と、を含む。ピストン12は、シリンダ11内を往復移動する。シリンダ11およびピストン12によって、燃焼室13が画定される。ピストン12は、コネクティングロッド14によってクランクシャフト18に接続される。
上記のようなエンジン10では、燃焼室13において、空気および燃料(ガソリン)の混合気が燃焼し、これによって、ピストン12がシリンダ11内を往復移動する。ピストン12の直線運動が、コネクティングロッド14によってクランクシャフト18に伝達され、クランクシャフト18の回転運動に変換される。クランクシャフト18の回転数、すなわち、エンジン10の回転数が、クランク角センサSe1によって測定される。クランク角センサSe1は、後述するECU50と通信可能に接続されており、測定データをECU50に送信する。なお、より良い理解のために、図1ではシリンダ11およびピストン12の1つの組のみが示されるが、エンジン10は、シリンダ11およびピストン12の複数の組を含むことができる。
エンジン10は、吸気口15と、排気口16と、を含む。吸気口15は、不図示の吸気マニホールドを介して吸気管2に接続され、排気口16は、不図示の排気マニホールドを介して排気管3に接続される。吸気口15には、吸気バルブ15aが設けられ、排気口16には、排気バルブ16aが設けられる。吸気バルブ15aおよび排気バルブ16aの各々の動作は、例えば、不図示のカムシャフトによって制御される。カムシャフトは、例えば回転ベルト等を介してクランクシャフト18によって回転される。
エンジン10は、燃料のインジェクタ17を含む。インジェクタ17は、燃焼室13に設けられ、燃焼室13内に燃料を噴射する(いわゆる、直接噴射)。他の実施形態では、エンジン10は、予混合エンジンであってもよい。インジェクタ17は、ECU50と通信可能に接続される。ECU50は、インジェクタ17からの燃料の噴射量を制御する。
エンジン10は、点火プラグPを含む。点火プラグPは、燃焼室13に設けられ、燃焼室13において空気および燃料の混合気を着火する。点火プラグPは、ECU50と通信可能に接続される。ECU50は、点火プラグPの動作を制御する。
システム100は、エンジン10への冷却水の循環経路WPを含む。また、システム100は、循環経路WPの任意の位置に、温度センサSe2を含む。温度センサSe2は、冷却水の温度を測定する。温度センサSe2は、ECU50と通信可能に接続されており、測定データをECU50に送信する。
システム100は、吸気管2にスロットルバルブVを備える。スロットルバルブVは、吸気管2を流れる吸気量を調整する。スロットルバルブVは、ECU50と通信可能に接続される。ECU50は、スロットルバルブVの開度を制御することによって、吸気量を調整する。
システム100は、排気管3にパティキュレートフィルタ4を備える。本開示において、パティキュレートフィルタ4は、単にフィルタとも称され得る。フィルタ4は、排気ガスから粒子状物質(PM)を除去する。PMは、例えば煤を含む。フィルタ4は、例えば、GPF(Gasoline particulate filter)である。他の実施形態では、例えば、エンジン10がディーゼルエンジンである場合には、パティキュレートフィルタ4は、DPF(Diesel Particulate Filter)であってもよい。
システム100は、差圧センサ(堆積センサ)Se3を備える。差圧センサSe3は、フィルタ4の上流の位置における排気管3内の圧力と、フィルタ4の下流の位置における排気管3内の圧力と、の間の圧力差を検出する。差圧センサSe3は、ECU50と通信可能に接続されており、測定データをECU50に送信する。
システム100は、エンジン10のスタートスイッチ19を備える。スタートスイッチ19は、ECU50と通信可能に接続される。スタートスイッチ19がオンされると、エンジン10を始動させるための信号がスタートスイッチ19からECU50に送信される。スタートスイッチ19がオフされると、エンジン10を停止させるための信号がスタートスイッチ19からECU50に送信される。
システム100は、ECU(制御装置)50を備える。例えば、ECU50は、CPU等の1または複数のプロセッサ51と、ROMおよびRAM等の1または複数の記憶媒体52と、1または複数のコネクタ53と、を含む。ECU50は、他の構成要素をさらに有してもよい。ECU50の構成要素は、バスによって互いに通信可能に接続される。記憶媒体52は、プロセッサ51によって実行される1または複数のプログラムを記憶する。プログラムは、プロセッサ51に対する命令を含む。本開示に示されるECU50の動作は、記憶媒体52に記憶された命令をプロセッサ51で実行することによって、実現される。ECU50は、コネクタ53を介してシステム100の構成要素と通信可能に接続される。
上記のようなシステム100では、吸気効率を向上させるために、エンジン10が排気行程から吸入行程に移行する際に、排気バルブ16aと吸気バルブ15aとの双方が開かれる場合がある。これは、「バルブオーバーラップ」と称される。また、本開示において、エンジン10がバルブオーバーラップ状態で停止することは、「オーバーラップ停止」とも称され得る。オーバーラップ停止では、排気バルブ16aと吸気バルブ15aとの双方が開かれた状態でエンジン10が停止することから、排気ガスが排気管3から吸気管2に逆流する可能性がある。これは、次回のエンジン始動時に燃焼不良に繋がり得る。したがって、システム100では、エンジン10の運転中にスタートスイッチ19が押され、エンジン10を停止させるための信号がスタートスイッチ19からECU50に送信されると、オーバーラップ停止を回避するために、エンジン10がバルブオーバーラップ状態で停止するか否かを予測する。
図2は、ECU50の機能ブロック図である。プロセッサ51は、記憶媒体52に記憶された命令にしたがって、堆積推定部54、オーバーラップ停止範囲決定部55、慣性値取得部56、オーバーラップ停止判定部57、および、オーバーラップ停止回避部58として機能する。
堆積推定部54として機能する場合、プロセッサ51は、差圧センサSe3から検出された圧力差を受信する。例えば、記憶媒体52は、圧力差と、フィルタ4へのPMの堆積量と、の間の関係を示すマップを備えてもよい。プロセッサ51は、検出された圧力差に対応するPMの堆積量を、マップから読み出してもよい。このような構成によって、プロセッサ51は、フィルタ4へのPMの堆積量を推定することができる。他の実施形態では、他の手段を用いてフィルタ4へのPMの堆積量を推定してもよい。例えば、ECU50は、エンジン10の運転状態を示す1つまたは複数のパラメータと、フィルタ4へのPMの堆積量と、の関係を示すマップを記憶媒体52に記憶していてもよい。エンジン10の運転状態を示すこのようなパラメータは、例えば、エンジン10の回転数、負荷、空燃比もしくは冷却水の温度、または、これらの履歴の少なくとも1つを含んでもよい。ECU50は、ある時点に取得されるパラメータに対応するPMの堆積量を、マップから読み取ってもよい。ECU50は、その他の公知の手段を用いて、フィルタ4へのPMの堆積量を推定してもよい。
オーバーラップ停止範囲決定部55として機能する場合、プロセッサ51は、堆積推定部54によって推定されたPMの堆積量に応じて、オーバーラップ停止範囲を決定する。
図3は、フィルタ4へ堆積したPMが、どのようにエンジン10の挙動に影響を与えるかを示すグラフである。実線L1は、フィルタ4へのPMの堆積が無いまたは少ないケースを示す。一点鎖線L2は、フィルタ4へのPMの堆積があるケースを示す。より良い理解のために、実線L1は、行程P1,P2,P3について示される一方で、一点鎖線L2は、行程P2についてのみ示される。実線L1および一点鎖線L2は、例えば、PMの堆積が無いまたは少ないフィルタ4と、PMの堆積があるフィルタ4と、を用いた実験によって得ることができる。
図3において、横軸は、エンジン10の回転数に基づく慣性値を示す。本開示において、「慣性値」とは、エンジン10(クランクシャフト18)に作用する慣性量を示す指標値を意味する。例えば、本実施形態においては、慣性値は、エンジン10の回転数の二乗である。他の実施形態では、慣性値は、エンジン10の回転数であってもよい。例えば、慣性値は、クランクシャフト18が所定の角度にあるときの、エンジン10の回転数に基づいて計算される。例えば、慣性値は、ピストン12が上死点(=180度)にあるときの、エンジン10の回転数に基づいて計算されてもよい。
縦軸は、クランクシャフト18が停止する位置(角度)を示す。すなわち、図3は、エンジン10を停止させるための信号がスタートスイッチ19からECU50に送信され、インジェクタ17からの燃料の噴射が停止された後に、上記の「所定の角度」(例えば、上死点)においてエンジン10に作用する慣性量と、その慣性量に対応してクランクシャフト18が停止する角度と、の間の関係を示す。
バルブオーバーラップは、上死点(=180度)付近で発生する。したがって、縦軸は、180度を含む90度から270度の角度範囲を示す。本実施形態では、エンジン10は、例えば4気筒を有する。この場合、バルブオーバーラップは、1サイクル(720度)の間に4気筒の間で順番に発生する。すなわち、エンジン10が4気筒を有する場合、バルブオーバーラップの実行周期(1行程)は、180度(=720度/4)である。図3は、ある連続する行程P1,P2,P3の例を示す。
図3は、バルブオーバーラップが発生する角度範囲VOLを示す。また、図3は、実線L1の行程P1,P2,P3の各々について、角度範囲VOLに対応する、慣性値のオーバーラップ停止範囲T1,T2,T3を示す。さらに、図3は、オーバーラップ停止範囲T1,T2,T3の各々について、下限LL1,LL2,LL3、および、上限UL1,UL2,UL3を示す。なお、図3は、3つのオーバーラップ停止範囲T1,T2,T3のみを示すが、オーバーラップ停止範囲の数はこれに限定されない。
フィルタ4にPMが堆積すると、排気管3内の背圧が増加する場合がある。背圧が増加すると、エンジン10への負荷も増加し得る。したがって、フィルタ4へのPMの堆積があるケースでエンジン10が停止されると、フィルタ4へのPMの堆積が無いまたは少ないケースに比して、クランクシャフト18は早く停止し得る。この場合、行程P2の実線L1および一点鎖線L2によって示されるように、クランクシャフト18が停止する位置はシフトし得る。この場合、角度範囲VOLに対応する慣性値のオーバーラップ停止範囲T1,T2,T3もシフトする。
また、図3には示されないが、クランクシャフト18が停止する位置は、エンジン10の冷却水の温度にも依存し得る。例えば、冷却水の温度が低い場合、冷却水の温度が高い場合に比してエンジン10内のフリクションが高いため、クランクシャフト18は早く停止し得る。この場合にも、クランクシャフト18が停止する位置はシフトし得る。
したがって、本実施形態では、ECU50は、フィルタ4へのPMの堆積量、および、エンジン10の冷却水の温度に応じて、オーバーラップ停止範囲T1,T2,T3・・・を示すマップを記憶する。
図4は、オーバーラップ停止範囲を示すマップMの一例である。記憶媒体52は、フィルタ4へのPMの堆積量に応じて、複数のマップMを記憶する。図4に示されるマップMは、ある堆積量に対応するマップの例を示しており、記憶媒体52は、同様なマップMを他の堆積量についても記憶する。例えば、記憶媒体52は、PMの堆積量について、所定の閾値を記憶してもよい。記憶媒体52は、堆積推定部54によって推定された堆積量が、この閾値よりも小さい場合に使用される第1のマップと、堆積推定部54によって推定された堆積量が、この閾値以上である場合に使用される第2のマップと、を記憶してもよい。この場合、マップMの数は2つであるが、マップMの数はこれに限定されない。
各マップMは、複数の冷却水の温度の各々について、オーバーラップ停止範囲T1,T2,T3・・・を含む。なお、図4は、複数の冷却水の温度の各々について、3つのオーバーラップ停止範囲T1,T2,T3のみを示すが、オーバーラップ停止範囲の数はこれに限定されない。例えば、マップMは、所定の間隔で複数の温度を記憶する。図4では、マップMは、20℃間隔で複数の温度を記憶するが、温度の間隔はこれに限定されない。また、冷却水の温度は、図4に示される温度範囲に限定されない。例えば、-40℃のオーバーラップ停止範囲T1,T2,T3は、温度センサSe2によって測定された冷却水の温度が-50℃以上でかつ-30℃未満の場合に使用されてもよい。同様に、-20℃のオーバーラップ停止範囲T1,T2,T3は、温度センサSe2によって測定された冷却水の温度が-30℃以上でかつ-10℃未満の場合に使用されてもよい。同じことが、他の温度のオーバーラップ停止範囲T1,T2,T3にも当てはまる。
プロセッサ51は、記憶媒体52に記憶された複数のマップのなかから、堆積推定部54によって推定されたPMの堆積量に対応するマップを選択する。また、プロセッサ51は、温度センサSe2から冷却水の温度を受信する。プロセッサ51は、測定された冷却水の温度に対応する温度のオーバーラップ停止範囲T1,T2,T3を選択する。
このような複数のマップMは、例えば、PMの堆積が無いまたは少ないフィルタ4と、PMの堆積があるフィルタ4と、を用いて、複数の冷却水の温度において実験を実施することによって得られてもよい。
慣性値取得部56として機能する場合、プロセッサ51は、クランクシャフト18が所定の角度にあるときのエンジン10の回転数に基づいて、上記の「慣性値」を取得する。具体的には、プロセッサ51は、クランク角センサSe1から、ピストン12が上死点にあるときのエンジン10の回転数を取得してもよい。プロセッサ51は、取得されたエンジン10の回転数の二乗を慣性値として算出してもよい。
オーバーラップ停止判定部57として機能する場合、プロセッサ51は、慣性値取得部56によって取得された慣性値が、オーバーラップ停止範囲決定部55によって選択されたオーバーラップ停止範囲T1,T2,T3内にあるか否かを判定する。慣性値がオーバーラップ停止範囲T1,T2,T3のいずれかの範囲内にある場合、プロセッサ51は、エンジン10はバルブオーバーラップ状態で停止すると判定する。慣性値がオーバーラップ停止範囲T1,T2,T3のいずれの範囲内にもない場合、プロセッサ51は、エンジン10はバルブオーバーラップ状態で停止しないと判定する。
オーバーラップ停止回避部58として機能する場合、プロセッサ51は、エンジン10がバルブオーバーラップ状態で停止することを回避する。例えば、プロセッサ51は、エンジン10がバルブオーバーラップ状態で停止すると判定される場合に、クランクシャフト18が停止する角度をシフトさせてもよい。例えば、プロセッサ51は、スロットルバルブVの開度を増加させて、クランクシャフト18が停止する角度をシフトさせてもよい。また、例えば、車両500がHEVである場合には、プロセッサ51は、不図示のモータによってクランクシャフト18を回転させて、クランクシャフト18が停止する角度をシフトさせてもよい。オーバーラップ停止を回避する処理は、他の方法によって実行されてもよい。
続いて、システム100の動作について説明する。
図5は、実施形態に係るエンジン制御システム100の動作を示すフローチャートである。例えば、図5に示される動作は、エンジン10の運転中にスタートスイッチ19が押され、エンジン10を停止させるための信号がスタートスイッチ19からECU50に送信されると、開始されてもよい。また、図5に示される動作は、エンジン10が停止するまでに複数回繰り返し実行されてもよい。
プロセッサ51は、フィルタ4へのPMの堆積量を推定する(ステップS100)。例えば、プロセッサ51は、差圧センサSe3から圧力差を受信し、この圧力差に対応するPMの堆積量を、記憶媒体52に記憶されたマップから読み出してもよい。
続いて、プロセッサ51は、冷却水の温度を取得する(ステップS102)。例えば、プロセッサ51は、温度センサSe2から冷却水の温度を受信する。
続いて、プロセッサ51は、推定されたPMの堆積量および取得された冷却水の温度に応じて、オーバーラップ停止範囲を決定する(ステップS104)。例えば、プロセッサ51は、複数のマップMのなかから、推定されたPMの堆積量に対応するマップMを選択し、さらに、取得された冷却水の温度に対応するオーバーラップ停止範囲T1,T2,T3を、選択されたマップMから読み出してもよい。
続いて、プロセッサ51は、エンジン10の回転数に基づく慣性値を取得する(ステップS106)。例えば、プロセッサ51は、ピストン12が上死点にあるときのエンジン10の回転数をクランク角センサSe1から取得し、この回転数を二乗することによって慣性値を算出してもよい。
続いて、プロセッサ51は、ステップS106において取得された慣性値が、ステップS104において決定されたいずれかのオーバーラップ停止範囲T1,T2,T3内になるか否かを判定する(ステップS108)。
ステップS108において、慣性値がいずれのオーバーラップ停止範囲T1,T2,T3内にもない場合(NO)、プロセッサ51は、エンジン10はバルブオーバーラップ状態では停止しないと判定し、一連の動作を終了する。
ステップS108において、慣性値がいずれかのオーバーラップ停止範囲T1,T2,T3内にある場合(YES)、プロセッサ51は、エンジン10はバルブオーバーラップ状態では停止すると判定し、オーバーラップ停止を回避する(ステップS110)。上記のように、例えば、プロセッサ51は、スロットルバルブVの開度を増加させて、クランクシャフト18が停止する角度をシフトさせてもよい。上記のように、オーバーラップ停止を回避する処理は、他の方法によって実行されてもよい。
以上のように、実施形態に係るシステム100は、エンジン10と、エンジン10に接続される排気管3に設けられるフィルタ4と、エンジン10を制御するECU50と、を備える。ECU50は、1または複数のプロセッサ51と、プロセッサ51によって実行される命令を記憶する1または複数の記憶媒体52と、を含む。プロセッサ51は、命令にしたがって、フィルタ4へのPMの堆積量を推定することと、エンジン10がバルブオーバーラップ状態で停止するか否かを判定するためのオーバーラップ停止範囲T1,T2,T3を、推定されたPMの堆積量に応じて決定することと、エンジン10の回転数に基づく慣性値を取得することと、慣性値がオーバーラップ停止範囲T1,T2,T3内にあるか否かを判定することと、慣性値がオーバーラップ停止範囲T1,T2,T3内にある場合、エンジン10がバルブオーバーラップ状態で停止するのを回避することと、を実行するように構成される。このような構成によれば、フィルタ4へのPMの堆積量に応じて、オーバーラップ停止範囲T1,T2,T3を決定することができる。したがって、フィルタ4へのPMの堆積量に起因する背圧の上昇を考慮して、エンジン10がバルブオーバーラップ状態で停止するか否かを判定することができる。よって、エンジン10がバルブオーバーラップの状態で停止するか否かをより高精度に予測することができる。
また、システム100では、プロセッサ51は、命令にしたがって、PMの堆積量およびエンジン10の冷却水の温度に応じて、オーバーラップ停止範囲T1,T2,T3を決定することを実行するように構成される。上記のように、クランクシャフト18が停止する位置は、エンジン10の冷却水の温度にも依存し得る。上記のような構成によれば、エンジン10の冷却水の温度をさらに考慮して、オーバーラップ停止範囲T1,T2,T3を決定することができる。よって、エンジン10がバルブオーバーラップの状態で停止するか否かをさらに高精度に予測することができる。
以上、添付図面を参照しながら実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、上記実施形態のECU50のステップは、上記の順番で実施されなくてもよく、技術的に矛盾が生じない限りにおいて、異なる順番で実施されてもよい。
例えば、上記の実施形態では、ECU50は、フィルタ4へのPMの堆積量に応じて、オーバーラップ停止範囲T1,T2,T3・・・を含むマップMを複数記憶する。しかしながら、他の実施形態では、ECU50は、基準となるオーバーラップ停止範囲と、フィルタ4へのPMの堆積量に応じた複数の補正値と、を記憶媒体52に記憶してもよい。この場合、プロセッサ51は、推定されたPMの堆積量に対応する補正値を、記憶媒体52から読み出し、基準となるオーバーラップ停止範囲を、補正値によって調整してもよい。このような構成によっても、エンジン10がバルブオーバーラップ状態で停止するか否かを判定するために使用されるオーバーラップ停止範囲を、推定されたPMの堆積量に応じて得ることができる。
3 排気管
4 パティキュレートフィルタ
10 エンジン
50 ECU(制御装置)
51 プロセッサ
52 記憶媒体
100 エンジン制御システム
T1 オーバーラップ停止範囲
T2 オーバーラップ停止範囲
T3 オーバーラップ停止範囲
4 パティキュレートフィルタ
10 エンジン
50 ECU(制御装置)
51 プロセッサ
52 記憶媒体
100 エンジン制御システム
T1 オーバーラップ停止範囲
T2 オーバーラップ停止範囲
T3 オーバーラップ停止範囲
Claims (2)
- エンジンと、
前記エンジンに接続される排気管に設けられるパティキュレートフィルタと、
前記エンジンを制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、1または複数のプロセッサと、前記プロセッサによって実行される命令を記憶する1または複数の記憶媒体と、を含み、
前記プロセッサは、前記命令にしたがって、
前記パティキュレートフィルタへの粒子状物質の堆積量を推定することと、
前記エンジンがバルブオーバーラップ状態で停止するか否かを判定するためのオーバーラップ停止範囲を、前記堆積量に応じて決定することと、
前記エンジンの回転数に基づく慣性値を取得することと、
前記慣性値が前記オーバーラップ停止範囲内にあるか否かを判定することと、
前記慣性値が前記オーバーラップ停止範囲内にある場合、前記エンジンがバルブオーバーラップ状態で停止するのを回避することと、
を実行するように構成される、エンジン制御システム。 - 前記プロセッサは、前記命令にしたがって、
前記堆積量および前記エンジンの冷却水の温度に応じて、前記オーバーラップ停止範囲を決定すること、
を実行するように構成される、請求項1に記載のエンジン制御システム。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2022026123A JP2023122432A (ja) | 2022-02-22 | 2022-02-22 | エンジン制御システム |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2022026123A JP2023122432A (ja) | 2022-02-22 | 2022-02-22 | エンジン制御システム |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2023122432A true JP2023122432A (ja) | 2023-09-01 |
Family
ID=87798888
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2022026123A Pending JP2023122432A (ja) | 2022-02-22 | 2022-02-22 | エンジン制御システム |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2023122432A (ja) |
-
2022
- 2022-02-22 JP JP2022026123A patent/JP2023122432A/ja active Pending
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