JP2023121381A - ヒト抗SARS-CoV2ウイルスモノクローナル抗体 - Google Patents

ヒト抗SARS-CoV2ウイルスモノクローナル抗体 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、SARS-CoV2ウイルスへの感染により生体内で増幅するSARS-CoV2ウイルスの感染を中和し、SARS-CoV2ウイルスへの感染の治療のために使用することができる、組換え抗体または組換え抗体誘導体、あるいはそのような抗体を1または複数種類含む医薬組成物を提供することを課題とする。【解決手段】本発明の発明者らは、鋭意検討を行った結果、過去にSARS-CoV2ウイルスに感染し回復した個体からSARS-CoV2ウイルスに対する抗体を産生する複数の細胞を見出し、それらから1または複数のSARS-CoV2ウイルスに対して結合性を有し、SARS-CoV2ウイルスの増幅を抑制しまたはSARS-CoV2ウイルスの感染を中和する作用を有する、抗体または抗体誘導体を作製することで、上記課題を解決することができることを示した。【選択図】なし

Description

本発明は、SARS-CoV2ウイルス感染に感染した個体中で、当該ウイルスの感染を中和するための、血液由来成分を含まない抗体または抗体誘導体、あるいはそのような抗体を含むSARS-CoV2ウイルスの感染を中和するための医薬組成物を提供することに関する。
SARS-CoV2は、(1)ヒトの細胞表面のレセプターを通して細胞内に侵入し、(2)ウイルス遺伝子由来の酵素(ヒトには存在しないRNAポリメラーゼ)を用いて複製し、(3)ヒトの細胞内でタンパク質や酵素を作って増殖し、(4)細胞外に出て他の正常な細胞に広がる、というサイクルを繰り返すことで、感染個体内で増幅される。また、重症化すると、サイトカインストームと呼ばれる過剰な免疫反応を起こしたり、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)という重度の呼吸不全を起こしたりすることが知られている。
SARS-CoV2ウイルスに対してすでに使用が承認されている医薬品として、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に結合し、SARS-CoV-2に対する中和作用を有する抗体医薬が存在する。このタイプの医薬品として、2021年には、カシリビマブ及びイムデビマブの合剤およびソトロビマブも承認されている。
カシリビマブ及びイムデビマブは、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質を認識し、SARS-CoV-2の宿主細胞への侵入を阻害することにより、ウイルスの増殖を抑制すると考えられている(非特許文献1)。この医薬品は、変異株に対しても一定の中和活性を保持していることが示唆されている。
ソトロビマブは、SARS-CoV-2ウイルススパイクタンパク質の受容体結合ドメイン上のACE2受容体結合部位とは異なる部位に結合し、SARS-CoV-2に対する中和作用を示す。また、in vitroにおいて、SARS-CoV-2ウイルススパイクタンパク質を発現する細胞に対し抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性及び抗体依存性細胞貪食(ADCP)活性を誘導したことが示されている(非特許文献2)。
しかしながら、SARS-CoV-2ウイルスの変異スピードが速い現状において、使用できる抗体のバリエーションを拡大することが急務であり、医療現場において種々のSARS-CoV-2ウイルスに対する抗体が求められている。
ロナプリーブ添付文書 ゼビュディ添付文書
本発明は、SARS-CoV2ウイルスへの感染により生体内で増幅するSARS-CoV2ウイルスの感染を中和し、SARS-CoV2ウイルスへの感染の治療のために使用することができる、組換え抗体または組換え抗体誘導体、あるいはそのような抗体を1または複数種類含む医薬組成物を提供することを課題とする。
本発明の発明者らは、鋭意検討を行った結果、過去にSARS-CoV2ウイルスに感染し回復した個体からSARS-CoV2ウイルスに対する抗体を産生する複数の細胞を見出し、それらからSARS-CoV2ウイルスに対して結合性を有し、SARS-CoV2ウイルスの増幅を抑制し、またはSARS-CoV2ウイルスの感染を中和する作用を有する、抗体または抗体誘導体を作製することで、上記課題を解決することができることを示した。
より具体的には、本件出願は、前述した課題を解決するため、以下の態様を提供する:
[1] SARS-CoV2ウイルスを構成するスパイクタンパク質に対して結合性を有し、SARS-CoV2ウイルスの感染を中和する作用を有する、血液由来成分を含まない、抗体または抗体誘導体;
[2] 重鎖の相補性決定領域、CDR1(GLIVSSNY、SEQ ID NO: 1)、CDR2(IYSGGST、SEQ ID NO: 2)、CDR3(ARDLGPYGVDV、SEQ ID NO: 3)を含み、
軽鎖の相補性決定領域、CDR1(QGISSY、SEQ ID NO: 4)、CDR2(AAS、SEQ ID NO: 5)、CDR3(QQLNSYPPFT、SEQ ID NO: 6)を含む、[1]に記載の抗体または抗体誘導体;
[3] 重鎖可変領域VHドメインが、SEQ ID NO: 7のアミノ酸配列、またはSEQ ID NO: 7のアミノ酸配列のうち、CDR1(SEQ ID NO: 1)、CDR2(SEQ ID NO: 2)、およびCDR3(SEQ ID NO: 3)以外の部分において1または数個のアミノ酸の置換、挿入、または欠失を含むアミノ酸配列を含む、[1]または[2]に記載の抗体または抗体誘導体;
[4] 軽鎖可変領域VLドメインが、SEQ ID NO: 8のアミノ酸配列、またはSEQ ID NO: 8のアミノ酸配列のうち、CDR1(SEQ ID NO: 4)、CDR2(SEQ ID NO: 5)、およびCDR3(SEQ ID NO: 6)以外の部分において1または数個のアミノ酸の置換、挿入、または欠失を含むアミノ酸配列を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の抗体または抗体誘導体;
[5] 重鎖が、SEQ ID NO: 9のアミノ酸配列、またはSEQ ID NO: 9のアミノ酸配列のうち、CDR1(SEQ ID NO: 1)、CDR2(SEQ ID NO: 2)、およびCDR3(SEQ ID NO: 3)以外の部分において1または数個のアミノ酸の置換、挿入、または欠失を含むアミノ酸配列を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の抗体または抗体誘導体;
[6] 軽鎖が、SEQ ID NO: 10のアミノ酸配列、またはSEQ ID NO: 10のアミノ酸配列のうち、CDR1(SEQ ID NO: 4)、CDR2(SEQ ID NO: 5)、およびCDR3(SEQ ID NO: 6)以外の部分において1または数個のアミノ酸の置換、挿入、または欠失を含むアミノ酸配列を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の抗体または抗体誘導体;
[7] 抗体がヒト抗体である、[1]~[6]のいずれかに記載の抗体または抗体誘導体;
[8] 遺伝子組換えにより製造される、[1]~[7]のいずれかに記載の抗体または抗体誘導体;
[9] 抗体誘導体が、一本鎖抗体、多価抗体、および多重特異性抗体から選択されるヒト型抗体改変体またはその機能的断片から選択される、[1]~[8]のいずれかに記載の抗体または抗体誘導体;
[10] 機能的断片が、F(ab')2である、[9]に記載の抗体または抗体誘導体;
[11] [1]~[10]のいずれかに記載の抗体または抗体誘導体を含む、SARS-CoV2ウイルスの感染を中和するための医薬組成物;
[12] 他の抗体または抗体誘導体と組み合わせて含む、[11]に記載の医薬組成物。
SARS-CoV2ウイルスに対するこれまでの血清療法または血漿療法の場合には、ヒトの血液から作製される抗SARS-CoV2ウイルス抗体を含む血清または血漿を投与するが、血液製剤特有の種々の問題が存在している。本発明の組換え抗体または組換え抗体誘導体を使用することにより、血液製剤に起因する問題点をすべて解消することができる。また、これらの抗体は、研究用試薬、診断薬等としても使用することができる。
図1は、実施例1で得られたSARS-CoV2ウイルス反応性NIBIC-71抗体が、in vitroにおいてSARS-CoV2ウイルスの細胞への感染に対して中和活性を有することを示す図である。 図2は、精製リコンビナントNIBIC-71抗体が、in vivoにおいてSARS-CoV2ウイルス感染の中和活性を有することを示す図である。 図3は、精製リコンビナントNIBIC-71抗体のSARS-CoV2ウイルススパイクタンパク質への結合親和性を確認した表面プラズモン共鳴(SPR)の結果を示す図である。 図4は、精製リコンビナントNIBIC-71抗体のSARS-CoV2ウイルススパイクタンパク質の結合領域の解析結果を示す図である。 図5は、精製リコンビナントNIBIC-71抗体のSARS-CoV2ウイルススパイクタンパク質に対する親和性を、表面プラズモン共鳴(Surface plasmon resonance、SPR)解析で調べた結果を示す図である。 図6は、精製リコンビナントNIBIC-71抗体が、スパイクタンパク質のReceptor Binding Domain(RBD)(319~541アミノ酸)に結合する可能性が高いことを示す図である。
本発明は、一態様において、SARS-CoV2ウイルスを構成するスパイクタンパク質に対して結合性を有し、SARS-CoV2ウイルスの感染を中和する作用を有する、血液由来成分を含まない、抗体または抗体誘導体を提供することができる。この発明は、SARS-CoV2ウイルスに感染した個体または感染が疑われる個体に対して、体内におけるSARS-CoV2ウイルスの増幅を抑制しあるいはSARS-CoV2ウイルスの感染を中和することにより、SARS-CoV2ウイルスの感染により発生する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を予防、治療するために使用することができる。
<抗体または抗体誘導体>
本発明において使用する抗体または抗体誘導体は、血清療法や血漿療法で使用される血液製剤に特有の種々の問題(特に、感染性の問題、免疫性の問題)を解決することを目的とするため、血液中に含まれる(血液製剤に混入する危険性がある)B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)などのウイルスなどの病原体を含まず、また血液中に含まれる抗原性タンパク質やヒトタンパク質と結合する抗体といった、投与された個体に免疫異常を生じさせる危険性のある血液由来成分を含まないことを特徴とする。
血液由来成分を含まない抗体として、抗体産生細胞に由来する不死化細胞を、血液由来成分を含まない条件下で取得し、その細胞から血液由来成分を含まない培養条件下で調製される抗体や、上記不死化細胞から取得した抗体タンパク質を規定するDNAを使用して組換え的に抗体タンパク質を発現させて調製することができる組換え抗体を使用することができる。
すなわち、一態様において、本発明における抗体は、過去にSARS-CoV2ウイルスに感染し回復した個体の血液から、SARS-CoV2ウイルスに対する抗体を産生する細胞クローンを取得・不死化することにより抗体産生細胞に由来する不死化細胞を得て、その不死化抗体産生細胞からin vivoにおいてSARS-CoV2ウイルスの増幅を抑制しまたはSARS-CoV2ウイルスの感染を中和する作用を有するものを選択することにより得ることができる。
また別の一態様において、上述した方法により選択されたSARS-CoV2ウイルスの増幅を抑制しまたはSARS-CoV2ウイルスの感染を中和する作用を有する不死化抗体産生細胞から、周知の方法に従って、mRNAの取得、cDNAの作成を経て、抗体タンパク質を規定するDNA配列を取得し、ベクターを介して、血液由来成分を含まない哺乳動物発現系において発現させることにより、組換え抗体として調製することもできる。
本発明においては、これらの抗体の誘導体を使用することもできる。本発明において使用することができる抗体誘導体としては、例えば、ヒト化抗体、キメラ抗体、多価抗体、および多重特異性抗体から選択されるヒト型抗体改変体またはその機能的断片を使用することができるが、これらには限定されない。このうち、機能的断片としては、例えば、F(ab')2を使用することができるが、これらには限定されない。
これらの抗体の誘導体は、抗体が得られたのち、当該技術分野において周知の方法に従って作製することができる。
上述した方法により取得した抗体または抗体誘導体は、SARS-CoV2ウイルスに対して結合性を有するものであるが、本発明においては、このようなSARS-CoV2ウイルスに対して結合性を有するものの中から、さらにSARS-CoV2ウイルスの増幅を抑制しまたはSARS-CoV2ウイルスの感染を中和する作用を有することに基づいてスクリーニングを行い、当該中和作用を有する抗体または抗体誘導体を提供することを特徴とする。
後述する実施例においても実際に取得した抗体を複数種類示しているが、これらに限定されるわけではない。
<抗体またはその誘導体が標的とするSARS-CoV2ウイルス由来抗原>
抗体またはその誘導体が標的とするSARS-CoV2ウイルス由来抗原は、SARS-CoV2ウイルスの構成成分であるエンベロープタンパク質、メンブレンタンパク質、ヌクレオカプシドタンパク質、スパイクタンパク質のいずれか1つであるかまたは複数の組み合わせであってもよい。抗体またはその誘導体が結合しやすいSARS-CoV-2ウイルスの外部に存在する(すなわち、表面に露出している)タンパク質(例えば、エンベロープタンパク質、スパイクタンパク質)を抗原とすることが好ましい。
本発明において抗体またはその誘導体が標的とすることができるSARS-CoV-2ウイルスを構成するタンパク質は、すでに公的データベースに登録されているSARS-CoV-2ウイルスの完全ゲノム配列に基づいて取得することができるものである。本発明においては、代表性の観点から、NCBI RefSeqデータベースに登録されているSARS-CoV-2ウイルスの参照ゲノム配列NC_045512を使用し、この参照ゲノム配列に基づいて特定されるSARS-CoV-2ウイルスを構成するタンパク質を使用することが好ましい。
<抗体または抗体誘導体の作用>
本発明の抗体または抗体誘導体は、上述したSARS-CoV-2ウイルス由来抗原に結合するものであって、結果としてSARS-CoV2ウイルスの感染・増幅を抑制しまたはSARS-CoV2ウイルスの感染を中和する作用を有するものであれば、本発明の目的の達成のために使用することができる。本発明の抗体または抗体誘導体は、SARS-CoV2ウイルス治療薬として使用することを目的としていることから、かかる作用を有することが求められる。
抗体または抗体誘導体の上記作用は、in vitroにおいて抗体または抗体誘導体の存在下、SARS-CoV2ウイルスへの感染を引き起こすことができる細胞(例えば、VERO細胞など)にSARS-CoV2ウイルスを感染させ、当該細胞においてSARS-CoV2ウイルスの感染抑制がみられるかどうかにより特定することができる。
<本発明の抗体の例>
本発明においては、過去にSARS-CoV2ウイルスに感染し回復した個体から血液を採取し、その中から得られたSARS-CoV2ウイルスに対する抗体を使用することができる。具体的には、過去にSARS-CoV2ウイルスに感染し回復した個体から、前述したSARS-CoV2ウイルス由来抗原に対して結合する抗体を産生する細胞を上述の<抗体または抗体誘導体>の通り採取し、得られた抗体または抗体誘導体に関して上述の<抗体またはその誘導体の作用>の通りSARS-CoV2ウイルスの増幅を抑制しまたはSARS-CoV2ウイルスの感染を中和する作用を調べた。その結果、複数の抗体およびその抗体を産生する細胞が得られた。
そのような中で、実施例において検討を行った具体的なものとして、
重鎖の相補性決定領域、CDR1(GLIVSSNY、SEQ ID NO: 1)、CDR2(IYSGGST、SEQ ID NO: 2)、CDR3(ARDLGPYGVDV、SEQ ID NO: 3)を含み、
軽鎖の相補性決定領域、CDR1(QGISSY、SEQ ID NO: 4)、CDR2(AAS、SEQ ID NO: 5)、CDR3(QQLNSYPPFT、SEQ ID NO: 6)を含む;
抗体またはこれらの抗体誘導体を提供することができる。
このような抗体または抗体誘導体としては:
重鎖可変領域VHドメインが、SEQ ID NO: 7のアミノ酸配列、またはSEQ ID NO: 7のアミノ酸配列のうち、CDR1(SEQ ID NO: 1)、CDR2(SEQ ID NO: 2)、およびCDR3(SEQ ID NO: 3)以外の部分において1または数個のアミノ酸の置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むアミノ酸配列を含む抗体または抗体誘導体、
軽鎖可変領域VLドメインが、SEQ ID NO: 8のアミノ酸配列、またはSEQ ID NO: 8のアミノ酸配列のうち、CDR1(SEQ ID NO: 4)、CDR2(SEQ ID NO: 5)、およびCDR3(SEQ ID NO: 6)以外の部分において1または数個のアミノ酸の置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むアミノ酸配列を含む抗体または抗体誘導体、
として表すこともできる。
本明細書の以下の実施例において、具体的な抗体として、
・NIBIC-71クローン:
重鎖が、SEQ ID NO: 9のアミノ酸配列、またはSEQ ID NO: 9のアミノ酸配列のうち、CDR1(SEQ ID NO: 1)、CDR2(SEQ ID NO: 2)、およびCDR3(SEQ ID NO: 3)以外の部分において1または数個のアミノ酸の置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むアミノ酸配列を含み、および
軽鎖が、SEQ ID NO: 10のアミノ酸配列、またはSEQ ID NO: 10のアミノ酸配列のうち、CDR1(SEQ ID NO: 4)、CDR2(SEQ ID NO: 5)、およびCDR3(SEQ ID NO: 6)以外の部分において1または数個のアミノ酸の置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むアミノ酸配列を含む、
抗体または抗体誘導体を作製した。
<医薬組成物>
本発明においては、一態様において、これまでに説明した抗体または抗体誘導体を含む、SARS-CoV2ウイルスの増幅を抑制しまたはSARS-CoV2ウイルスの感染を中和するための医薬組成物を提供することができる。この医薬組成物は、SARS-CoV2ウイルスに感染した個体または感染が疑われる個体に対して、SARS-CoV2ウイルスに対する抗ウイルス薬として、あるいはSARS-CoV2ウイルスにより生じる症状の発現を予防、治療する目的で、使用することができる。
この医薬組成物に含まれる本発明の抗体または抗体誘導体は血液原料に由来しないものであることから、この医薬組成物は、血液製剤に混入する危険性があるリスク因子(例えば、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)などのウイルスなどの病原体、抗原性タンパク質やヒトタンパク質と結合する抗体などの投与された個体に免疫異常を生じさせる危険性のある血液由来成分)を含まないことを特徴とする。
本発明における医薬組成物には、上述した抗体または抗体誘導体を1種類含んでいてもよいし、複数種類含んでいてもよい。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に示す。下記に示す実施例はいかなる方法によっても本発明を限定するものではない。
実施例1:改変EBV法を用いた抗体の単離
本実施例においては、エプスタイン・バー・ウイルス(EBV)を用いるEBV法により、SARS-CoV2ウイルスに対する抗体を産生する細胞クローンを取得し、そこから抗体を単離することを目的として実験を行った。
EBVは、ガンマヘルペスウイルス亜科に属するdsDNAウイルスであり、様々な癌に関わっている。主にB細胞に感染することが知られており、ヒトB細胞にEBVをin vitroで感染させると、B細胞は持続増殖して不死化ヒトリンパ芽球様細胞(LCL)に形質転換することが知られている。
(1-1)PBMCの単離とLCLへの分化
過去にSARS-CoV2ウイルスに感染し回復したドナー(n=1)より血液を採取し(国立生育医療研究センターより入手)、Lymphoprep(Abbott Diagnostics Technologies AS)を用いて末梢血単核球(PBMC、リンパ球・単球)を採取した。細胞懸濁液に対してAnti-human IgM 磁気ビーズ(Miltenyi)を加えて除去することでネガティブセレクションし、IgMを細胞表面に発現していない細胞を採取した。
ネガティブセレクションした細胞を回収し、EBV(B95-8株)とともに、37℃にて、1時間、インキュベートした。インキュベート後、遠心して細胞を回収し、LCL培養培地に懸濁した。この細胞懸濁液を200μLずつ(104 cells/well)、96穴プレート(U底 delta: NUNC)に播種した後に、2週間培養を行い、不死化ヒトリンパ芽球様細胞(LCL)への分化を行った。
本実施例で使用するLCL培養培地として、15%FBS(SIGMA)、L-glutamine(GIBCO)、Penicillin/streptomycin(Nacalai tesque)、Sodium Pyruvate(Nacalai tesque)、2-Mercaptoethanol(GIBCO)、Non-essential amino acids(GIBCO)、K3(GeneDesign)、シクロスポリン(ノバルティスファーマ)、各種添加物を添加したRPMI培地(Nacalai tesque)を使用した。同様の操作を2回行った。
(1-2)SARS-CoV2ウイルス反応性クローンのスクリーニング
SARS-CoV2ウイルスのスパイクタンパク質(SARS-CoV2 Spike ECD protein(GenScript社))1μg/mLをELISA用96穴プレートに50μL/wellで添加し固相化し、LCLの培養上清(抗SARS-CoV2ウイルスIgGを含む可能性があるもの)を50μL/well添加して、抗原-抗体の結合反応を行った。この後、2次抗体としてGoat Anti-Human IgG-AP(SouthernBiotech)、発色基質としてPhosphatase substrate(SIGMA)を用い、405 nmおよび650 nmの吸光度を測定した。
この結果、18クローンが、SARS-CoV2ウイルススパイクタンパク質に対して結合性を有する抗体を産生するクローンとして得られた。
実施例2:in vitroでの機能解析(SARS-CoV2ウイルス感染中和実験)
本実施例においては、実施例1で得られたSARS-CoV2ウイルス反応性クローンのin vitroにおける機能を解析することを目的として実験を行った。
SARS-CoV2ウイルスのスパイクタンパク質は標的細胞表面にある受容体への結合およびそれに引き続く細胞侵入に中心的な役割を果たしている。そのため、細胞表面の受容体へのスパイクタンパク質の結合阻害がSARS-CoV2ウイルスの感染の中和活性に重要であると考えられることから、実施例1で得られたクローンのうち、SARS-CoV2ウイルス反応性クローン(NIBIC-71抗体産生クローン)が、SARS-CoV2ウイルスの細胞への感染を中和する活性を有するか否かについて検討した。
感染実験1日前、Vero細胞(1×105個/ml)を1ウェルあたり細胞培養液D10(DMEM(High Glucose)、10%FBS、ペニシリン/ストレプトマイシン添加)にて調製し、96ウェルプレートに各100μL分注して、1×104個の細胞を播種し、37℃、5%CO2雰囲気下で18から20時間培養した。
感染実験当日に、実施例1で得られたNIBIC-71抗体産生クローンについてのLCL培養上清30μLに対して、細胞培養液R15(RPMI1640、15%FBS、2 mM L-グルタミン、1 mMピルビン酸ナトリウム、非必須アミノ酸、2-メルカプトメタノール、ペニシリン/スプレプマイシ添加)を70μL添加し、全量100μLにした。そこに、感染MOI 0.01になるように1×105 TCID50/mLのSARS-CoV2ウイルス懸濁液を1μL添加し、全量101μLとした。このウイルス再懸濁液を37℃で1時間インキュベーションした。
Vero細胞培養物において、培養液D10(100μL)を取り除き、代わりにウイルス再懸濁液の全量(101μL)を添加し、37℃、5%CO2雰囲気下で1時間培養し、細胞にSARS-CoV2ウイルスを感染させた。その後、ウイルス再懸濁液を取り除き、細胞培養液D1(DMEM(High Glucose)、1%FBS、ペニシリン/ストレプトマイシン添加)100μLを添加して、37℃、5%CO2雰囲気下で3日間培養した。
3日後に、細胞培養液D1を取り除き、10%中性緩衝ホルムアルデヒド液100μLを添加して固定し、CPE(細胞変性効果)を観察し、実施例1で得られたSARS-CoV2ウイルス反応性クローン(NIBIC-71抗体産生クローン)がSARS-CoV2ウイルスの細胞への感染に対して中和活性を有するか否かを検討した。CPEは死細胞数をカウントすることで判断した。
結果を図1に示す。その結果、NIBIC-71抗体は、in vitroにおいて、培養細胞に対する感染に対して高い中和活性を有していることが示された(図1)。
実施例3:組換え抗体の機能解析
この実施例においては、実施例2においてSARS-CoV2ウイルスの細胞への感染に対して中和活性を有すると判明したNIBIC-71抗体に関して、抗体遺伝子のクローニングを行い、組換え抗体を作製することを目的として実験を行った。
(3-1)抗体遺伝子の取得
本実施例においては、実施例1で作製したLCLから、ハイブリドーマの作成を行わずに、直接的にRNAを抽出し、これを用いたRT-PCR法により抗体遺伝子のクローニングを行った。
実施例2(2-1)のin vitro機能性試験で実施例2において感染に対する中和活性が示されたNIBIC-71抗体遺伝子(重鎖、軽鎖)のクローニングを行い、発現ベクターを構築した。すなわち、NIBIC-71クローンのLCLから、miRNeasy Micro kit(QIAGEN)を用い、添付プロトコールに従って、total RNAの抽出を行った。
抗体遺伝子の重鎖IgG1遺伝子、および、軽鎖IgL遺伝子を単離するために、上記の方法より抽出したtotal RNAを鋳型として、5’全長cDNAの増幅が可能なSMART cDNA Library Construction Kit(TAKARA)を用いて、添付プロトコールに従い逆転写反応を行い、cDNAを作製した。
上記の方法により合成したcDNAを鋳型として、KOD FX(TOYOBO)を用いて2回のPCR(1st PCR、2nd PCR)を行った。1st PCRは、各LCLから逆転写したcDNA 1μlを鋳型として、プライマーとして以下のフォワードプライマー(Primer 1)およびリバースプライマー(Primer 2)を使用して、94℃・2分間の後、「98℃・10秒、55℃・30秒、68℃・2分]を35サイクル、最後に68℃・3分の反応でPCR反応を行った。
Figure 2023121381000001

2nd PCRは、1st PCRの伸長生成物0.5μlを鋳型として使用し、プライマーとして以下のフォワードプライマー(Primer 3)およびリバースプライマー(Primer 4)を使用して、94℃・2分間の後、「98℃・10秒、60℃・30秒、68℃・2分]を35サイクル、最後に68℃・3分の反応でPCR反応を行った。
Figure 2023121381000002
PCRサンプルは、QIAquick Purification Kit(QIAGEN)に供し、未反応プライマーおよび酵素の除去を行い、精製物を得た。
精製したPCR精製物を制限酵素処理し、アガロースゲル電気泳動により分離、精製した後、ベクターに組み込んだ。重鎖遺伝子を含むベクター調製のためにはpQEFIP vector(pQCXIP(TAKARA)をバックボーンとしてCMVプロモーターをヒトEF1 alphaプロモーターに置き換えたレトロウイルスベクター)を、軽鎖遺伝子を含むベクター調製のためにはpQEFIN vector(pQCXIN(TAKARA)をバックボーンとしてCMVプロモーターをヒトEF1 alphaプロモーターに置き換えたレトロウイルスベクター)をそれぞれ使用した。Ligation high(TOYOBO)を使用してPCR生成物をベクターに組み込み、コンピテントセル(DH-5alpha:ニッポンジーン)を形質転換させた。
アンピシリン含有LB液体培地中で培養した大腸菌から、NucleoSpin Plasmid EasyPure(MACHEREY-NAGEL)を用いて、添付プロトコールに従い、プラスミドの抽出を行った。
(3-2)リコンビナント抗体の発現
実施例3(3-1)の方法で得られた重鎖、軽鎖の発現プラスミドベクターを、Expi293 Expression System(Thermo Fisher Scientific)を用いてExpi 293F細胞(Thermo Fisher Scientific)に一過性にコトランスフェクションし、リコンビナント抗体の発現、分泌を行った。
ExpiFectamine 293試薬80μLと重鎖と軽鎖のプラスミド(各15μg)を、それぞれ1.5 mLのOpti-MEM I(gibco)と混合し、5分間室温で静置した。静置後、2つの溶液を合わせ室温で20分間静置し、125 mLフラスコ(Corning)で培養した4.5~5.5×106 cells / mL(30 mL)の細胞に加えて旋回培養(37℃、8%CO2)した。18~20時間培養後、Expi Fectamine 293 Transfection Enhancer 1 50μLとExpi Fectamine 293 Transfection Enhancer 2 1.5 mLを加えて5~6日旋回培養した。
Expi 293F細胞を用いた発現系により発現させたリコンビナント抗体は、Protein Gアフィニティークロマトグラフィー(GE Hitrap protein GHP(1 mL))を使用して精製した。
(3-3)精製リコンビナントNIBIC-71抗体のSARS-CoV2ウイルススパイクタンパク質への反応性の確認
精製リコンビナント抗体のSARS-CoV2ウイルススパイクタンパク質への反応性の検討のために、前述の(1-2)と同様の方法を用いてELISAを行った。SARS-CoV2ウイルススパイクタンパク質への反応性の検討は、1μg/mLのSARS-CoV2ウイルスのスパイクタンパク質(SARS-CoV2 Spike ECD protein(GenScript社))を96穴プレートに50μL/wellでコートした96穴ELISA用プレートを使用し、1次抗体として精製リコンビナント抗体を0.001、0.01、0.1、1、10μg/mLで添加し、2次抗体としてGoat Anti-Human IgG-APを用いた。なお、ネガティブコントロールとしては、発明者らが単離したヒト由来抗体(以下、コントロール抗体という)を使用した。
結果を図2に示す。この図において示されるように、精製リコンビナントNIBIC-71抗体は、SARS-CoV2ウイルススパイクタンパク質に対して用量依存的に結合することが確認された。
(3-4)精製リコンビナントNIBIC-71抗体のin vivoにおける機能解析
実施例2のVero細胞を用いたSARS-CoV2ウイルス感染中和実験でSARS-CoV2ウイルスの感染阻害活性が認められた精製NIBIC-71抗体について、ルシフェラーゼアッセイを行い、細胞へのSARS-CoV2ウイルス感染の中和活性を検討した。
感染実験1日前、Vero細胞(1×105個/ml)を1ウェルあたり細胞培養液D10(DMEM(High Glucose)、10%FBS、ペニシリン/ストレプトマイシン添加)にて調製し、96ウェルプレートに各100μL分注して、1×104個の細胞を播種し、37℃、5%CO2雰囲気下で18から20時間培養した。
感染実験当日に、精製抗体を10、3、1、0.3、0.1、0.03、0.01、0.003、0μg/mLになるように、細胞培養液D1(DMEM(High Glucose)、1%FBS、ペニシリン/ストレプトマイシン添加)を使って、各濃度の溶液を各250μLずつ調製した。そこに、感染MOI 0.1になるように1×105 TCID50/mLルシフェラーゼ遺伝子を導入したSARS-CoV2ウイルス懸濁液を25μLずつ添加し、全量275μLとした。このウイルス再懸濁液を37℃で1時間インキュベーションした。
Vero細胞培養物において、培養液D10を取り除き、ウイルス再懸濁液を100μL添加し、37℃、5%CO2雰囲気下で1時間培養し、細胞にSARS-CoV2ウイルスを感染させた。その後、ウイルス再懸濁液を取り除き、細胞培養液D1(DMEM(High Glucose)、1%FBS、ペニシリン/ストレプトマイシン添加)100μLを添加して、37℃、5%CO2雰囲気下で24時間培養した。
24時間後に、細胞培養液D1を取り除き、Passive lysis bufferを50μL添加し、感染細胞を溶解させた。感染細胞溶解液25μLと基質液25μLを混合し、ルシフェラーゼの発光を測定した。発光強度とウイルス感染には正の相関関係が認められる。
結果を図3に示す。NIBIC-71抗体は、6.3 ng/mlの濃度において、ウイルスによる細胞の感染を50%以下にまで低下させ、それ以上の濃度においても用量依存的にウイルスによる細胞の感染を低下させることができることを明らかにした。
SARS-CoV2ウイルスのスパイクタンパク質は標的細胞表面にある受容体への結合およびそれに引き続く細胞侵入に中心的な役割を果たしていると考えられている。そのため、細胞表面の受容体へのスパイクタンパク質の結合阻害がSARS-CoV2ウイルスの感染の中和活性に重要であると考えられることから、実施例1で得られたクローンのうち、実施例1で得られたSARS-CoV2ウイルス反応性クローンが、SARS-CoV2ウイルスへの感染を中和する活性を有するか否かについて検討した。
実験動物として、3週齢オスのシリアンハムスターSlc:Syrian(SLC)を用いた。感染実験直前に、動物用イソフルラン(MSD Animal Health)を用いて吸入麻酔を行った。その後、4 mg/kgの組換えヒト抗SARS-CoV2抗体NIBIC-71、もしくはネガティブコントロール抗体を静注投与した。
続いて、103 TICD50/20μLのSARS-CoV2懸濁液を経鼻投与した。経鼻感染後4日目に、解剖し、肺を採取した。肺の一部をウイルスコピー数測定用とTCID50測定用に分取した。
ウイルスコピー数については、分取した肺組織にTRIzol Reagent(Thermo Fisher Scientific)を1 mL加え、ビーズ式破砕機を用いて物理的に破砕し、RNAを抽出した。1サンプルあたりRNAの量を10 ngとして、病原体検出マニュアル2019-nCoV(国立感染症研究所)に従い、TaqManプローブを用いたリアルタイムone-step RT-PCR法により測定した。
一方、TCID50については、分取した肺組織を計量し、0.5 mL PBSを加え、ビーズ式破砕機を用いて物理的に破砕し、遠心分離後上清を回収した。上清を500倍希釈し、さらに10倍ずつ7段階希釈を行なった。前日に、1ウェルあたり細胞培養液D10(DMEM(High Glucose)、10%FBS、ペニシリン/ストレプトマイシン添加)100μL中に1×104個、96ウェルプレートに播種し、37℃、5%CO2雰囲気下で18から20時間培養したVero細胞を準備した。1サンプルに対して4ウェルずつ細胞を用意し、段階希釈した肺組織破砕液を50 μLずつVero細胞培養液中に添加し、37℃、5%CO2雰囲気下で4日間培養した。それぞれのウェルにおける細胞変性効果を観察し、TCID50/gを算出した。計算にはBehrens-Karber法を用いた。
結果を図4に示す。ウイルスコピー数とTCID50測定結果から、ネガティブコントロール抗体投与群と比較して、組換えヒト抗SARS-CoV2抗体NIBIC-71抗体投与群は有意にSARS-CoV2感染を抑制した。この結果から、NIBIC-71抗体は、生体内(in vivo)においても、SARS-CoV2に対して中和活性を有することが示された。
実施例4:リコンビナントNIBIC-71抗体の機能解析
本実施例においては、実施例3で作製されたリコンビナントNIBIC-71抗体を改変し、その活性を確認することを目的として実験を行った。
(4-1)NIBIC-71抗体の表面プラズモン共鳴(Surface plasmon resonance: SPR)による親和性解析
組換えヒト抗SARS-CoV2抗体NIBIC-71のSARS-CoV2 Spikeタンパク質に対する親和性を、表面プラズモン共鳴(Surface plasmon resonance、以下SPR)解析により決定した。ネガティブコントロールとしては、コントロール抗体を使用した。
SPR解析にはBiacore T200(Cytiva)を使用し、機器の操作および実験試薬の準備はBiacore T200 version2 日本語取扱説明書に従った。
ランニングバッファーとして、PBS-T(1×Phsophate Buffered Saline、0.05%Tween 20)を作成し、使用前に0.22μmのフィルターでろ過を行なった。なお、ランニングバッファーはすべての工程において常温で使用した。
一次抗体としては、Human Antibody Capture Kit(Cytiva)の付属品であるAnti-Human IgG(Fc)抗体(0.5 mg/mL)を用い、同製品の付属品であるImmobilization bufferを用いて25μg/mLに希釈した。Series S Sensor Chip CM5(Cytiva)の金属薄膜基板上に一次抗体固定化量が1フローセルあたり約10,000 RU(Response unit)となるように、希釈後一次抗体を流速10μL/minで360秒間基板上へ送液し、固定化を行った。
次に、リガンドとして、ランニングバッファーに溶解した1μg/mL組換えヒト抗SARS-CoV2抗体NIBIC-71もしくは0.8μg/mLネガティブコントロール抗体を、流速30μL/min、温度25℃で、60秒間送液した。
続いて、アナライトとして、ランニングバッファーに溶解した0.625 nM、1.25 nM、2.5 nM、5 nM、10 nM、20 nM、40 nM、80 nM抗原タンパク質SARS-CoV2 Spikeタンパク質(ECD, His & Flag Tag)(GenScript, Z03481)を準備した。これらを流速30μL/min、温度25℃で、240秒間送液し、リガンドに結合させ、ランニングバッファーを流速30μL/min、温度25℃で、900秒間送液し、乖離を評価した。
各濃度のアナライトを送液ごとに、3 M MgCl2溶液を流速30μL/min、温度25℃で送液し、アナライトを完全に乖離させてから、順次アナライトを送液した。
結果を表3および図5に示す。KDは、抗体親和性を評価するためのパラメータであり、結合速度定数kaと解離速度定数kdから算出される(KD=kd/ka)。Rmaxは、抗体に対する抗原の理論的な最大結合量である。
抗原タンパク質(SARS-CoV2 Spike protein)は、NIBIC-71抗体に対して1.33 nMのKD値の親和性で結合した(表3)。なお、この表で示される各パラメータは、図5のデータに基づいて、Biacore T200 Evaluation Software ver.2.0の1:1結合モデルを用いて算出したものである。一般的に、医薬品として用いられる抗体のKD値は10-9~10-10 M程度であることから、これらの抗体は抗ヒトSARS-CoV2抗体として十分な親和性を有することが示された。
他方で、Rmax(CM5センサーチップ基板上に固定化した被検抗体に抗原タンパク質が最大量結合したときの反応を示すパラメータ)は、NIBIC-71抗体で194.3 RUであったのに対し、比較対照としたコントロール抗体では約1/100程度(1.9 RU)であったことから(表3)、NIBIC-71抗体は陰性コントロールと比較して、抗原タンパク質に対し高い親和性を有することが示された。
Figure 2023121381000003
(4-2)結合領域の決定
上記(4-1)で作製された精製NIBIC-71抗体について、結合領域を決定するための実験を行った。
SARS-CoV2 Spikeタンパク質のExtra Cellular Domain(ECD)(13~1208アミノ酸)、S1(13~685アミノ酸)、S2(686~1208アミノ酸)、N-terminal Domain(NTD)(13~318アミノ酸)、Receptor Binding Domain(RBD)(319~541アミノ酸)、NTD+RBD(13~541アミノ酸)について、C末端にFlag-6×Hisタグタンパク質を融合したDNA配列をPCR法により増幅し、pFastBac Bipベクターに導入し、クローニングを行なった。これらクローニングベクターを昆虫細胞Sf9細胞に遺伝子導入し、培養上清を回収して抗原を採取した。
これらの培養上清を100倍希釈し、ELISA用96ウェルプレートの各ウェルに50μLずつ添加し、固相化した。次に、ブロッキング後、1μg/mL組換えヒト抗SARS-CoV2抗体NIBIC-71もしくはネガティブコントロール抗体を50μLずつ添加した。2次抗体としてGoat Anti-Human IgG-Apを用いて、基質を反応させ、405 nmの吸光度を測定した。
結果を図6に示す。NIBIC-71抗体は、Extra Cellular Domain(ECD)(13~1208アミノ酸)、S1(13~685アミノ酸)、Receptor Binding Domain(RBD)(319~541アミノ酸)、NTD+RBD(13~541アミノ酸)に対して結合することが示され、これらの結果から、NIBIC-71抗体はスパイクタンパク質のReceptor Binding Domain(RBD)(319~541アミノ酸)に結合する可能性が高いことが示された。
なお、この図において、BSAはネガティブコントロールのウシ血清アルブミンに対する結合を示す。
実施例5:組換え抗体の配列解析
本実施例は、実施例3で得られたリコンビナントNIBIC-71抗体の配列解析を行うことを目的とした。
リコンビナントNIBIC-71抗体を発現するためのベクターのDNA配列を解析し、それに基づいてアミノ酸配列を特定した。抗体のアミノ酸配列は以下の通りであった:
・NIBIC-71クローン:
重鎖IgG1鎖(SEQ ID NO: 9)(VH領域(SEQ ID NO: 7)に下線を引いた);
MEFWPSWVFLVAILKGVQCEVQLVESGGGLIQPGGSLRLSCEASGLIVSSNYMTWVRQAPGKGLEWVSVIYSGGSTFYADSVKGRFTVSRDNSKNTLYLQMNNLSPEDTAVYYCARDLGPYGVDVWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVRDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTXXHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
軽鎖Igλ2鎖(SEQ ID NO: 10)(VL領域(SEQ ID NO: 8)に下線を引いた):
MDMRVPAQLLGLLLLWLPGAGCAIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGISSYLAWYQQTPGKAPKLLIYAASTLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQLNSYPPFTFGPGTKVDIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKaHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC。
これらの配列を解析した結果、それぞれのクローンの重鎖および軽鎖の可変領域のうちの相補性決定領域(CDR1~CDR3)はそれぞれ以下の通りであることが確認された:
・NIBIC-71クローン:
VH鎖(SEQ ID NO: 7)(CDR1(SEQ ID NO: 1)、CDR2(SEQ ID NO: 2)、CDR3(SEQ ID NO: 3)に下線を引いた):
EVQLVESGGGLIQPGGSLRLSCEASGLIVSSNYMTWVRQAPGKGLEWVSVIYSGGSTFYADSVKGRFTVSRDNSKNTLYLQMNNLSPEDTAVYYCARDLGPYGVDVWGQGTTVTVSS
VL鎖(SEQ ID NO: 8)(CDR1(SEQ ID NO: 4)、CDR2(SEQ ID NO: 5)、CDR3(SEQ ID NO: 6)に下線を引いた):
AIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGISSYLAWYQQTPGKAPKLLIYAASTLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQLNSYPPFTFGPGTKVDIK。
SARS-CoV2ウイルスに対するこれまでの血清療法または血漿療法の場合には、ヒトの血液から作製される抗SARS-CoV2ウイルス抗体を含む血清または血漿を投与するが、血液製剤特有の種々の問題が存在している。本発明の組換え抗体または組換え抗体誘導体を使用することにより、血液製剤に起因する問題点をすべて解消することができる。また、これらの抗体は、研究用試薬、診断薬等としても使用することができる。
NIBIC-71抗体の重鎖の相補性決定領域:CDR1(GLIVSSNY、SEQ ID NO: 1)、CDR2(IYSGGST、SEQ ID NO: 2)、およびCDR3(ARDLGPYGVDV、SEQ ID NO: 3)
NIBIC-71抗体の軽鎖の相補性決定領域:CDR1(QGISSY、SEQ ID NO: 4)、CDR2(AAS、SEQ ID NO: 5)、およびCDR3(QQLNSYPPFT、SEQ ID NO: 6)
NIBIC-71抗体の重鎖可変領域VHドメインのアミノ酸配列:SEQ ID NO: 7
NIBIC-71抗体の軽鎖可変領域VLドメインのアミノ酸配列:SEQ ID NO: 8
NIBIC-71抗体の重鎖全長のアミノ酸配列:SEQ ID NO: 9
NIBIC-71抗体の軽鎖全長のアミノ酸配列:SEQ ID NO: 10
実施例3(3-1)で使用したプライマー配列:SEQ ID NO: 11~SEQ ID NO: 17

Claims (12)

  1. SARS-CoV2ウイルスを構成するスパイクタンパク質に対して結合性を有し、SARS-CoV2ウイルスの感染を中和する作用を有する、血液由来成分を含まない、抗体または抗体誘導体。
  2. 重鎖の相補性決定領域、CDR1(GLIVSSNY、SEQ ID NO: 1)、CDR2(IYSGGST、SEQ ID NO: 2)、CDR3(ARDLGPYGVDV、SEQ ID NO: 3)を含み、
    軽鎖の相補性決定領域、CDR1(QGISSY、SEQ ID NO: 4)、CDR2(AAS、SEQ ID NO: 5)、CDR3(QQLNSYPPFT、SEQ ID NO: 6)を含む、
    請求項1に記載の抗体または抗体誘導体。
  3. 重鎖可変領域VHドメインが、SEQ ID NO: 7のアミノ酸配列、またはSEQ ID NO: 7のアミノ酸配列のうち、CDR1(SEQ ID NO: 1)、CDR2(SEQ ID NO: 2)、およびCDR3(SEQ ID NO: 3)以外の部分において1または数個のアミノ酸の置換、挿入、または欠失を含むアミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載の抗体または抗体誘導体。
  4. 軽鎖可変領域VLドメインが、SEQ ID NO: 8のアミノ酸配列、またはSEQ ID NO: 8のアミノ酸配列のうち、CDR1(SEQ ID NO: 4)、CDR2(SEQ ID NO: 5)、およびCDR3(SEQ ID NO: 6)以外の部分において1または数個のアミノ酸の置換、挿入、または欠失を含むアミノ酸配列を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の抗体または抗体誘導体。
  5. 重鎖が、SEQ ID NO: 9のアミノ酸配列、またはSEQ ID NO: 9のアミノ酸配列のうち、CDR1(SEQ ID NO: 1)、CDR2(SEQ ID NO: 2)、およびCDR3(SEQ ID NO: 3)以外の部分において1または数個のアミノ酸の置換、挿入、または欠失を含むアミノ酸配列を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の抗体または抗体誘導体。
  6. 軽鎖が、SEQ ID NO: 10のアミノ酸配列、またはSEQ ID NO: 10のアミノ酸配列のうち、CDR1(SEQ ID NO: 4)、CDR2(SEQ ID NO: 5)、およびCDR3(SEQ ID NO: 6)以外の部分において1または数個のアミノ酸の置換、挿入、または欠失を含むアミノ酸配列を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の抗体または抗体誘導体。
  7. 抗体がヒト抗体である、請求項1~6のいずれか1項に記載の抗体または抗体誘導体。
  8. 遺伝子組換えにより製造される、請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体または抗体誘導体。
  9. 抗体誘導体が、一本鎖抗体、多価抗体、および多重特異性抗体から選択されるヒト型抗体改変体またはその機能的断片から選択される、請求項1~8のいずれか1項に記載の抗体または抗体誘導体。
  10. 機能的断片が、F(ab')2である、請求項9に記載の抗体または抗体誘導体。
  11. 請求項1~10のいずれか1項に記載の抗体または抗体誘導体を含む、SARS-CoV2ウイルスの感染を中和するための医薬組成物。
  12. 他の抗体または抗体誘導体と組み合わせて含む、請求項11に記載の医薬組成物。
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