JP2023120048A - 機能性不織布 - Google Patents

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明 廣瀬
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Abstract

【課題】本発明の課題は、圧力損失の上昇を伴うことなく、細菌・ウイルス、アレル物質及びそれらを含む飛沫などを高効率で捕捉し得る高い捕集効率を発現でき、また、細菌・ウイルス、アレル物質を失活・変性し得る抗菌・抗ウイルス性、抗アレルゲン性などの機能を有する機能性不織布を提供することにある。【解決手段】樹脂と加水分解型タンニンとを含む繊維を含有することを特徴とする機能性不織布。【選択図】なし

Description

本発明は、機能性不織布に関する。
近年、新型コロナウイルスによるパンデミック、新型インフルエンザの世界的流行、鳥インフルエンザの変異による人への感染リスク、O157等の細菌による人間の生命を脅かす感染症が広がりをみせ、世界的にその対策が急がれている。
また、生活環境の変化に伴い、かゆみ、鼻水、涙、くしゃみ、咳(喘息)といったアレルギー症状を訴える人が増加し、大きな社会問題となっている。アレルギーを誘発する物質として、杉、檜、セイタカアワダチソウ等の花粉といった植物由来物質、ダニの糞、死骸、犬、猫等のペットの体毛といった動物由来物質のタンパク質アレルゲン(アレル物質)が注目され、これらを如何に除去するかが課題とされている。
これら、細菌・ウイルス、アレル物質は、生活空間内での浮遊、生活用品などの付着、あるいは対人、対動物などを通して、体内に入り込まれることで、感染症を引き起こすとされ、何らかの方法で除去、捕集・不活性化できれば、ウイルスや細菌においては感染リスクを低減し、アレル物質においてはその症状が緩和できると考えられる。
このような背景から、空気清浄機、冷暖房機器などの空調機器の主要部品であるフィルターに対する期待は大きく、高捕集効率、細菌・ウイルス、アレル物質の不活性化など、要求性能も多様化しているが、全ての課題に高レベルで対応するのは難しいのが現状であり、技術は未だ十分とは言えない。
民間レベルでの健康志向、衛生観念の高まりを受け、細菌・ウイルス、アレル物質の不活性化に活用できる機能性薬剤が開発され、その機能性薬剤を付与した繊維製品として、フィルター、マスク、ワイパー、カーテン、壁紙、生活雑貨などの応用製品の開発が進んでいるが、これら機能性薬剤に対しては安心、安全性に対する要求は厳しい。
古くから天然物植物由来のエキスには多くの生理活性作用が報告されており、その安心、安全性から健康食品や飲料に用いられているものも多い。カテキン類である縮合型タンニン(例えばカテキン)及び加水分解型タンニンには各種薬理作用が報告されている。
中でも加水分解型タンニンの一種であるタンニン酸に関する薬理作用は多く示され、不織布に添着したものに関して、細菌・ウイルス、アレル物質の活性を、捕集中又は捕集後に不活化させる方法が数多く提案されている。しかしながら、フィルターとしては、繊維又は不織布の表面にバインダー成分を用いて添着させたものがほとんどで、圧力損失の上昇、捕集効率への悪影響について必ずしも考慮されたものではない(例えば、特許文献1~4参照)。
フィルターろ材として、メルトブロー不織布(繊維径1.7μm)に抗菌剤と防黴剤とを付着させた不織布をエレクトレット化してエレクトレット化メルトブロー不織布にし、その片面に剛性の大きいポリエステル系不織布を支持体として重ね合わせ、カテキン溶液を噴霧すると同時にサクションしてカテキンを付着させたフィルタが開示されている。バインダー成分を用いずにカテキンを付着させていることから、圧力損失の上昇は起こりにくいが、使用中にカテキンが脱離する恐れがある(例えば、特許文献5参照)。
また、無機粒子を直接樹脂に練り込んだ不織布が提案されているが、天然成分を活用したいという要望に応えたものではない(例えば、特許文献6及び7参照)。
縮合型タンニンを樹脂と混練する場合、抗菌・抗ウイルス、抗アレルゲン性を高度に発現させるためには、高濃度での混練が必要とされており、コストの上昇も不可避であり、混練の難易度も高いことが記載されている(例えば、特許文献8参照)。
また、加水分解型タンニンとして比較的入手しやすいタンニン酸においても、樹脂へ直接混練した例(例えば、特許文献9及び10)はあるものの、不織布を構成する繊維とし、抗菌・抗ウイルス効果について言及されたものは見当たらない。当然、当該不織布をエアフィルターとして応用された例はこれまで見られない。
以上のように、圧力損失の上昇を伴うことなく、実質的な抗菌・抗ウイルス性、抗アレルゲン性を有し、高い捕集効率を発現できるフィルターに使用可能な機能性不織布を実現できた例はない。
特開2011-132417号公報 特開2018-12799号公報 特開2011-84549号公報 特開2006-255579号公報 特開平09-141021号公報 特開2008-75226号公報 特開2011-132628号公報 特開2000-355827号公報 特開昭54-143454号公報 特開平09-118775号公報
本発明の課題は、圧力損失の上昇を伴うことなく、細菌・ウイルス、アレル物質及びそれらを含む飛沫などを高効率で捕捉し得る高い捕集効率を発現でき、また、細菌・ウイルス、アレル物質を失活・変性し得る抗菌・抗ウイルス性、抗アレルゲン性などの機能を有する機能性不織布を提供することにある。
前記の課題を解決するため鋭意研究を行った結果、以下の機能性不織布を発明するに至った。
(1)樹脂と加水分解型タンニンとを含む繊維を含有することを特徴とする機能性不織布。
(2)加水分解型タンニンがタンニン酸である上記(1)記載の機能性不織布。
(3)エレクトレット加工が施されている上記(1)又は(2)記載の機能性不織布。
(4)樹脂と加水分解型タンニンとを含む繊維の平均繊維径が0.7~10μmである上記(1)~(3)のいずれか記載の機能性不織布。
本発明によれば、圧力損失の上昇を伴うことなく、細菌・ウイルス、アレル物質及びそれらを含む飛沫などを高効率で捕捉し得る高い捕集効率を発現でき、また、細菌・ウイルス、アレル物質を失活・変性し得る抗菌・抗ウイルス性、抗アレルゲン性などの機能を有する機能性不織布を提供できる。
本発明は、樹脂と加水分解型タンニンとを含む繊維を含有することを特徴とする機能性不織布である。
タンニン類は加水分解型タンニンと縮合型タンニンに分類される。本発明で使用される加水分解型タンニンとは、酸、アルカリ、酵素で多価フェノール酸と多価アルコール(糖など)に加水分解される。多価フェノールとしては、主に没食子酸及びその二量体(遊離状態では脱水環化して四環性のエラグ酸となる)の二つのタイプがあり、それぞれをガロタンニン、エラジタンニンと総称される。ガロタンニンの例として、ウコギ科ヌルデの葉にヌルデノミミフシアブラムシが寄生してできる虫こぶである五倍子に含まれるタンニン酸がある。エラジタンニンの例としてフウロソウ科ゲンノショウコに含まれるゲラニインが挙げられる(富士化学工業株式会社カタログ。http://www.fujichem.co.jp/relays/download/31/69/3/90/?file=/files/libs/90/201705021803326615.pdf)。
本発明において、抗菌・抗ウイルス性、抗アレルゲン性を発現させるために繊維に含まれる成分は生理活性が報告されている加水分解型タンニンであり、特に多くの生理活性が報告されているタンニン酸がさらに好ましい。
タンニン酸は、五倍子、没食子などのタンニン酸を含有する材料から温水で抽出し、有機溶媒にて不純物を除去する方法で得ることができるが、市販されているものを購入して用いてもよい。市販品としては、例えば、富士化学工業株式会社、商品名:タンニン酸ALが挙げられる。
本発明では、バインダーなどの影響により、捕集効率を阻害されることがなく、圧力損失が上昇し難い機能性不織布を提供する。そして、フィルターとして高性能である機能性不織布を提供するためには、樹脂と加水分解型タンニンとを含む繊維において、加水分解型タンニンが樹脂に混練された状態であることが好ましい。
樹脂に対する加水分解型タンニンの配合量は、0.1~10質量%が好ましく、0.5~10質量%がより好ましく、1~10質量%がさらに好ましい。加水分解型タンニンの配合量が0.1質量%より少ないと、抗菌・抗ウイルス性、抗アレルゲン性という機能の発現が弱くなる場合がある。10質量%を超えると、機能発現には問題ないが、繊維を紡糸するために必要な樹脂の流動性が低下する場合があり、生産性が低下するだけでなく、紡糸性も悪くなる場合がある。また、繊維強度も弱くなる場合があり、得られる不織布の強度が低下する場合がある。さらに、材料を多く使うことで、コストアップにもつながる。また、加水分解型タンニンは天然物であり、加温と時間により変色が進むため、商品形態によっては商品価値の低下を招く場合がある。
本発明において、機能性不織布が含有する繊維の樹脂は、熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリスチレン、ゴム補強ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂)等のスチレン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸などのポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46等のポリアミド樹脂;ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル等のポリエーテル系樹脂;ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド等のエンジニアリング樹脂;熱可塑性エポキシ樹脂などが例示される。これらの熱可塑性樹脂は、1種を使用しても良いし、2種以上を使用しても良い。本発明で使用できる熱可塑性樹脂は、上記の熱可塑性樹脂に限定されるものではない。
繊維は単一構造のものでもよいし、二成分を用いた芯鞘構造からなる複合繊維であってもよい。芯鞘構造の場合、加水分解型タンニンは鞘成分の樹脂に含まれていることが好ましい。
天然物である加水分解型タンニンを樹脂に直接練り込むためには、その耐熱性に留意する必要がある。加水分解型タンニンの一つであるタンニン酸を一例として説明する。先述の富士化学工業株式会社のカタログによると、タンニン酸の分解温度は225~235℃である。実質的には215℃から分解が開始されるため、樹脂への加水分解型タンニンの混練は215℃よりも低い温度で行うことが好ましい。
安価で入手しやすく、軽量であること、融点が180℃程度と低いこと、減成により流動性の高い樹脂を作りやすいため、より細い繊維を紡糸しやすいという観点から、熱可塑性樹脂はポリプロピレンであることが好ましい。また、後述するエレクトレット加工を行った場合、帯電しやすく、高捕集効率の機能性不織布を作りやすいという観点からも、熱可塑性樹脂がポリプロピレンであることが最も好ましい。
本発明において、樹脂と加水分解型タンニンとを含む繊維の平均繊維径は、0.7~10μmが好ましく、0.7~7μmがより好ましく、0.7~5μmがさらに好ましい。平均繊維径が0.7μm未満の場合、繊維の生産性が悪くなる場合があり、得られる不織布の生産性も悪くなる場合がある。また、繊維強度も弱くなる場合があり、得られる不織布の強度も弱くなる場合がある。平均繊維径が10μmを超えると、不織布の表面積が小さくなり、繊維表面に抗菌・抗ウイルス性等を発現させるために十分な加水分解型タンニンを分布させようとした場合、加水分解型タンニンの配合量が多くなり過ぎる場合がある。また、細菌・ウイルス、微細なアレル物質が得られた機能性不織布の繊維間をすり抜けてしまう可能性がある。
本発明における平均繊維径は以下の方法で求める。光学顕微鏡にて倍率を500~1000倍に設定し任意に視野を選択する。各視野において深度の異なる画像を複数枚撮影し、これを合成した画像を得る。各画像においては、測定対象選択における個人差(私意)が入らないように、認識可能な繊維の繊維径の全数の測定を行う。得られた繊維径の数平均値として平均繊維径を算出する。
本発明において、エレクトレット加工は、ハイドロチャージ処理やコロナ放電処理などの方法を選択して用いることができる。
ハイドロチャージ処理とは、液体と固体の間に摩擦により発生する流動帯電の原理を利用する。具体的には、非導電性繊維を含有する不織布に液体である極性溶媒を浸透させ、速やかに吸引や乾燥などの方法で除去することにより,液体と固体表面に電荷分離が生じる静電気現象のことを指し、不織布に帯電処理を行うことができる(「流動帯電によるポリプロピレン不織布のエレクトレット特性」、繊維機械学会誌、2007年53巻6号、P.231-236)。
また、不織布と極性溶媒との摩擦を促進させて帯電させる方法として、超音波発振子などで極性溶媒を高周波領域で振動させる方法を用いてもよい。
コロナ放電処理とは、電極と金属アースの間に高圧電圧を印可し、電極と金属アース間に電流(コロナ放電)を流すことで、非導電性の樹脂内に電荷をトラップさせ、半永久的に帯電状態を保持させる処理である。機能性不織布をフィルターとして用いた場合に、圧力損失を上昇させることなく、機能性不織布による細菌・ウイルス、アレル物質等の粒子の捕集効率を向上させることができる。
コロナ放電処理について、さらに具体的に説明する。コロナ放電処理には、交流コロナ処理と直流コロナ処理に分類させる。本発明において、より高捕集効率の機能性不織布を得る方法としては、直流コロナ法が好ましい。交流コロナ処理では、電圧は高くなるが、チャージされた電荷が正負で中和されるためか、十分な捕集効率が得られない場合がある。電極の形状は針状が好ましい。
本発明において、直流コロナ放電処理では、針状電極と金属アースの間の距離は5~100mmが好ましく、印可電圧は1~50KV/cmが好ましく、照射時間は0.5~10秒が好ましい。針状電極と金属アースの間の距離が5mm未満の場合は、絶縁破壊によるスパークが発生する場合があり、100mmを超えると、帯電効果が低下する場合がある。印可電圧が1KV/cm未満の場合は、帯電効果が低下する場合があり、50KV/cmを超えると、絶縁破壊によるスパークが発生する場合がある。照射時間が0.5秒未満の場合又は10秒を超えた場合、帯電効果が低くなる場合がある。
本発明の機能性不織布がエレクトレット加工を施された場合、繊維が樹脂と加水分解型タンニンとを含んでいることから、抗菌・抗ウイルス性などの機能が損なわれることなく、また、圧力損失が変動することなく、捕集効率が向上するという予想外の効果も見出された。下記に説明する加水分解型タンニンの酸化防止剤としての効果が作用したと考えられる。
本発明において、エレクトレット加工の効果を向上させるため、樹脂と加水分解型タンニンとを含む繊維が、帯電を促進させる添加剤(帯電促進剤)をさらに含むことが好ましい。帯電促進剤としては、樹脂の耐候性、耐光性、耐熱性を向上させることができる光安定化剤、酸化防止剤が好適であり、これらの添加剤から一種類以上のものを選択して用いることができる。これらの帯電促進剤は、樹脂の分解(光、酸素、熱などによる)を促進するラジカルをトラップする役割があるとされる作用機構と同様に、エレクトレット加工により繊維・樹脂に照射される電荷をトラップすることにより、捕集効率を向上させることができると推定される。
光安定化剤としては、ヒンダードアミン系添加剤又はトリアジン系添加剤が挙げられる。ヒンダードアミン系添加剤としては、例えばポリ[[6-[(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル][(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)イミノ)]-1,6-ヘキサンジイル[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)イミノ]](BASF社製、キマソーブ(登録商標)944FDL、CAS番号:70624-18-9)、コハク酸ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物(BASF社製、チヌビン(登録商標)622SF、CAS番号:65447-77-0)、上記キマソーブ944FDLとチヌビン622SFの混合物(BASF社製、チヌビン(登録商標)783)、(2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)(BASF社製、チヌビン(登録商標)144、CAS番号:63843-89-0)、ポリ[(6-モルフォリノ-S-トリアジン-2,4-ジイル)〔2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル〕イミノ]-ヘキサメチレン[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ](サイテック社製、サイアソーブ(登録商標)UV-3346、CAS番号:82451-48-7)、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、及び1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β′,β′-テトラメチル-3,9-(2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン)ジエタノールとの縮合物(ADEKA社、アデカスタブ(登録商標)LA-63P、CAS番号:101357-36-2、85631-00-1)などが挙げられる。
トリアジン系添加剤としては、例えば前述のポリ[[6-[(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル][(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)イミノ)]-1,6-ヘキサンジイル[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)イミノ]](BASF社製、キマソーブ(登録商標)944FDL、CAS番号:70624-18-9)、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-((ヘキシル)オキシ)-フェノール(BASF社製、チヌビン(登録商標)1577FF、CAS番号:147315-50-2)などを挙げることができる。
これらの中でも、特にヒンダードアミン系添加剤がエレクトレット加工による捕集効率向上効果が高いため好ましい。
光安定化剤の配合量としては、特に限定されないが、繊維質量に対して、好ましくは0.05~5質量%であり、より好ましくは0.1~3質量%である。光安定化剤の配合量が0.05~5質量%である場合、除塵性能や、捕集効率が向上し易い。光安定化剤の配合量が0.05質量%未満では、目的とするさらなる高レベルのエレクトレット加工による性能向上効果を得られない場合がある。また、5質量%を超えると、コストがアップするだけでなく、紡糸性が低下する場合があり、繊維強度が弱くなる場合もある。
酸化防止剤としては、例えば、N-フェニル-1,1,3,3-テトラメチルブチルナフタレン-1-アミン、ジフェニルアミン誘導体(ジフェニルアミンと2,4,4-トリメチルペンテンとの反応生成物)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-di-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ベンゼンプロパン酸,3,5-ビス(1,1-ジメチル-エチル)-4-ヒドロキシ-,C7-C9側鎖アルキルエステル等が挙げられる。これらの酸化防止剤のうちでは、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)が好ましい。これらの酸化防止剤は、1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記酸化防止剤の配合量としては、特に限定されないが、繊維質量に対して、好ましくは0.1~5質量%であり、より好ましくは0.2~5質量%である。酸化防止剤の含有量が0.1~5質量%である場合、除塵性能や捕集効率が向上しやすい。また、経時的な捕集効率の低下を抑制することもできる。酸化防止剤の添加剤の配合添加量が0.1質量%未満では、目的とするさらなる高レベルのエレクトレット処理エレクトレット加工による性能向上効果を得ることが難しくなる。また、5質量%を超えると、コストがアップするだけでなく、紡糸性が低下する場合があり、繊維強度が弱くなる場合もある。
本発明の機能性不織布は、下記の製造方法によって製造することができる。
本発明において、加水分解型タンニンが樹脂内に均質に含まれていることが好ましい。好ましくは、加水分解型タンニンが均質に混練された樹脂を用いて繊維を製造する。そして、製造された繊維を用いて、任意の方法で機能性不織布を製造することができる。
本発明の機能性不織布は、加水分解型タンニンを含む樹脂を紡糸して作製された連続繊維を、所望する繊維長にカットし、得られた25~75mm程度の繊維長のステープル繊維を用い不織布を製造する乾式法、あるいは3~25mm程度の繊維長のチョップド繊維を用いて不織布を製造する湿式法などの間接法で作製されたものでも良いし、樹脂から紡糸した繊維を直接不織布化するスパンボンド法やメルトブロー法などの直接紡糸法であっても良い。
加水分解型タンニンを含む樹脂から直接不織布を得られる点で、スパンボンド法、メルトブロー法、エレクトロスピニング法(特に溶融エレクトロスピニング法)などの直接紡糸法が簡便であり、生産性が良く、生産工程が簡略である点から、スパンボンド法又はメルトブロー法がより好ましい方法である。
本発明における好ましい平均繊維径は先述した0.7~10μmである。直接紡糸法において、このような細い繊維を得やすい方法であるメルトブロー法が好ましい。メルトブロー法を用いた場合、使用する樹脂の流動性は、ポリプロピレンを例にとると、メルトフローレート(MFR)が、500~2000g/10分のものが好ましい。
メルトフローレートは、JIS K 7210-1:2014記載のメルトマスフローレートを指し、9項記載のB法を用い、230℃で溶融し、荷重2.16Kgの荷重下でのメルトボリュームレート値から、樹脂の溶融密度(例えば、ポリプロピレンの溶融密度は0.711g/cm)を乗ずることで、算出した流動性を示す値で、単位はg/10分である。数値が大きいほど流動性は高い。
メルトブロー不織布の製造方法は、原材料となる少なくとも一種類の樹脂を混練溶融する溶融工程、溶融した樹脂をノズルから吐出する紡糸工程、紡糸された繊維状樹脂を捕集し、完全に固化する前の繊維同士が融着する不織布化工程からなる。
以下、紡糸工程までについて具体的に説明する。なお、加水分解型タンニンについては、タンニン酸を例に一部説明するが、加水分解型タンニンはタンニン酸に限定されない。本発明において、タンニン酸と樹脂との混練は、樹脂の流動性が発現する温度(例えば、ポリプロピレンの場合は180℃)以上で、且つタンニン酸の分解温度以下の温度で行うことが好ましい。タンニン酸の分解温度は225~235℃であることから、225℃を超えた温度で混練すると、タンニン酸が分解し、生理活性が損なわれる場合があることは言うまでもなく、タンニン酸が着色して外観上好ましくない場合もある。なお、タンニン酸以外の加水分解型タンニンに関しては、その成分の分解温度を考慮して工程の温度管理を行えばよい。
本発明においては、溶融された樹脂が紡糸工程に移行するときに、加水分解型タンニンが失活又は分解せず、樹脂内で均質に分散し、紡糸工程に影響を与えないように留意する必要がある。加水分解型タンニンを直接樹脂に添加する方法と、キャリア樹脂に加水分解型タンニンを混練して得られたマスターバッチを樹脂に添加して用いる方法とがある。加水分解型タンニンは樹脂内で凝集しやすい。樹脂内で加水分解型タンニンを均質に分散させ、加水分解型タンニンの性能を効率良く発現させ、生産性に影響を与えない方法としては、後者の方法が好ましく、より具体的には、キャリア樹脂に加水分解型タンニンを混練して得られたマスターバッチを、樹脂にて希釈し、マスターバッチより低濃度で溶融混練する方法が好ましい。
マスターバッチにおける加水分解型タンニンの配合量は、マスターバッチ全体に対して、5~50質量%が好ましく、さらに好ましくは5~30質量%である。5質量%より少ないと、適正な配合量の加水分解型タンニンを機能性不織布に含ませようとした場合、機能性不織布中に占めるキャリア樹脂の割合が多くなり、紡糸性に影響を及ぼす場合がある。50質量%より多いと、加水分解型タンニンが均質に分散した状態のマスターバッチを作製することが困難である。
加水分解型タンニンの形状に特に制限はないが、溶融から混練への工程移行及び混練を行いやすいことから、粉体形状である方が好ましい。加水分解型タンニンの大きな粒子は、混練の工程で比較的小さな粒子に粉砕されるが、粉砕された微粒子を均質に分散することが難しく、微粒子同士が二次、三次凝集を形成しやすい。100メッシュ(150μm)通過区分が95質量%以上あれば、本発明の方法により、マスターバッチ作製、メルトブロー作製前の混練の工程を経ることで、目的である機能性不織布を得ることができる。
以下、上記溶融工程において、加水分解型タンニンと熱可塑性樹脂が均質に分散できる混練方法について具体的に説明する。
本発明の溶融工程は、加水分解型タンニンの熱分解温度(T1)より低い温度で、加水分解型タンニンとキャリア樹脂とを混練し、マスターバッチとする第一段階、該マスターバッチのキャリア樹脂と相溶性があり、キャリア樹脂よりメルトフローレートが高い樹脂を希釈樹脂として、T1より低い温度で希釈樹脂とマスターバッチとを混練して加水分解型タンニンを希釈する第二段階とを含むことが好ましい。
キャリア樹脂とは、第一段階で添加剤である加水分解型タンニンを混練する際のベースとなる樹脂を指す。希釈樹脂とは、マスターバッチと混練される樹脂であり、添加剤を適正な濃度に分散させるベースとなる樹脂を指す。
加水分解型タンニンがタンニン酸の場合、第一段階としてタンニン酸を、225℃以下の温度でキャリアとなる熱可塑性樹脂と混練し、マスターバッチとする。マスターバッチにおいて、タンニン酸の分散が不十分で未分散物が残ると、希釈樹脂とマスターバッチとを混練したものが不均一なものとなり、紡糸性も悪くなるばかりか、前述したエレクトレット加工の一種であるコロナ放電処理の際、スパークが発生しやすく、不織布に穴が開く場合がある。そのためマスターバッチにおける分散には留意する必要がある。
マスターバッチを作製する上で、キャリア樹脂と加水分解型タンニンを混練する方法としては、連続式である一軸又は二軸以上の多軸を備えた押出機を用いても良いし、バッチ式密閉型混練装置(例えば、国際公開2004/076044号パンフレット記載のバッチ式密閉型混練装置)などを用いてもよい。加水分解型タンニンが水酸基を持つ場合、粉体の状態で水分が含まれるため、前者押出機の場合、混練工程で発生する水蒸気をベントよりガス抜きしながら混練を行うとよい。後者の場合、圧力容器中で、加温せずにせん断発熱のみで混練することが可能であり、熱分解温度より低い温度で混練するための適した方法の一つである。
マスターバッチの形状は、混練物を円形のダイから押し出したストランドをカットしたペレット状、混練物の塊がランダムに粉砕されたフレーク状が好ましい。
キャリア樹脂の流動性としては、MFRが30~500g/10分が好ましい。キャリア樹脂のMFRが30g/10分より低いと、得られたマスターバッチと希釈樹脂が混ざりにくく、混練に時間がかかり、加温状態が長くなると、加水分解型タンニンが変色する場合がある。
第二段階として、該マスターバッチのキャリア樹脂と相溶性があり、キャリア樹脂よりメルトフローレートが高い樹脂を希釈樹脂として用い、加水分解型タンニンがタンニン酸の場合は、225℃以下の温度でマスターバッチと希釈樹脂とを混練する。
キャリア樹脂、希釈樹脂及び加水分解型タンニンの分散状態が良好となるためには、キャリア樹脂のMFRが希釈樹脂のMFR以上であることが好ましい。キャリア樹脂のMFRが希釈樹脂のMFRがより小さいと、キャリア樹脂と希釈樹脂の混ざり具合が不均一となり、加水分解型タンニンの分散状態が悪くなる場合がある。そして、メルトブロー法においては、糸切れやショットが発生し、得られた不織布の外観が悪くなる場合がある。また、加水分解型タンニンの凝集が発生する場合、コロナ放電処理でスパークが発生しやすくなる場合がある。
このようにして、所望する加水分解型タンニンの配合量となるように、マスターバッチと希釈樹脂とを混合するとよい。
メルトブロー法における紡糸工程と不織布化工程を具体的に説明する。紡糸工程では、上記の溶融工程を経た加水分解型タンニンを含む樹脂を、複数の孔を有する紡糸口金(ノズル)から紡糸し、随伴する高速の加熱ガスにより紡糸された熱可塑性樹脂をより細く、引き延ばして、細化することで連続する繊維状樹脂とする。
メルトブロー法は、樹脂を冷却せずに繊維状樹脂を捕集するため、不織布化工程では、溶融紡糸された繊維状樹脂は未固化の状態で、ノズルに対して相対的に移動する多孔質のコンベヤ上に捕集、堆積され、繊維同士が固化、融着することで不織布が作製される。
吐出時のノズルの温度(紡糸温度)は、先の溶融工程と同様に、225℃以下で行うことが好ましい。
ノズルの単孔径(ノズル径)は、好ましくは0.1~2mmであり、さらに好ましくは0.1~0.5mmである。単孔径が0.1~2mmの範囲であれば、生産性を大きく損なわず、0.1~10μmの繊維を得ることが可能となる。単孔当たりの吐出量(単孔吐出量)は5~500mg/分であることが好ましく、5~300mg/分であることがより好ましく、6~200mg/分がさらに好ましい。
加熱ガスは、清浄な大気成分を取り込み、加温して用いることが簡便である。加熱ガスの温度は、紡糸温度±30℃の温度範囲であることが好ましく、さらに好ましくは、紡糸温度から+20℃の範囲が好ましい。加熱ガスの基準流量は、250~1000Nm/hr/mであることが好ましく、500~800Nm/hr/mであることがより好ましい。
ノズルの単孔径及び吐出量並びに加熱ガスの温度及び流量が上記範囲である場合、糸切れの発生も少なく、ショットやフライの発生を抑えた状態で、平均繊維径が小さな繊維が得られやすい。
本発明において、ノズルに対して相対的に移動するコンベヤとノズルとの距離により、不織布の厚みを調整することができる。距離が近いほど、繊維状樹脂同士が融着した状態で捕集され、距離が遠くなるほど、繊維状樹脂の温度が下がってからコンベヤ上に捕集されるので、繊維同士が融着せずに、綿状となる。ノズルとコンベヤとの距離は50~500mmの範囲が好ましく、さらに好ましくは100~350mmである。
紡糸された繊維の捕集は、コンベヤの裏側から空気を吸引しつつ行ってもよい。裏側から空気を吸引すると、フライ発生を防止できる場合がある。
捕集の工程において、コンベヤ上に、他の不織布などの多孔質材料を配置することで、メルトブロー法で製造された機能性不織布と多孔質材料が積層一体化された複合不織布を得ることができる。
機能性不織布の目付に制限はないが、安定して巻取りを製造するという観点から、5~100g/mが好ましい。空気清浄装置、マスクなどのフィルターろ材としては、圧力損失を過度に上昇させない点から、5~50g/mの範囲がさらに好ましい。
なお、必要に応じて、本発明の趣旨を逸脱せず、他の性能を付加する目的において、脱臭、防黴、より一層の抗菌、より一層の抗ウイルス、より一層の抗アレルゲン、防虫、殺虫、消臭、芳香、感温、保温、畜温、蓄熱、発熱、吸熱、防水、耐水、撥水、疎水、親水、除湿、調湿、吸湿、撥油、親油、油などの吸着、水や揮発性薬剤などの蒸散又は徐放などの各種機能を新たに付加したものでも良い。
本発明の機能性不織布は、機能性不織布の性能を阻害しない範囲であれば二次加工をさらに施してもよい。二次加工としては、例えば、交絡処理、押圧加工、ギア加工、印刷加工、塗布加工、ラミネート加工、加熱処理、賦型加工、親水加工、撥水加工、プレス加工等が挙げられる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例において記載の部や百分率は断りのない限り、全て質量によるものである。実施例及び比較例で得られた(機能性)不織布の物性の測定及び評価を行い、本発明の有効性の確認を行った。物性及び評価結果を表2に示した。なお、本発明において、特に記載のない限り、物性の測定及び評価は、25℃、50%RHの条件で行った。
<目付>
機能性不織布を20×25cmの大きさにカットし、5枚の質量を平均し、単位面積当たりの質量(目付)を求めた。単位はg/mである。
<抗ウイルス性の評価>
JIS L 1922:2016(繊維製品の抗ウイルス性試験方法)に定める抗ウイルス試験を実施した。試験概要は以下のとおりである。
1)試験ウイルス懸濁液を作製する。
試験ウイルス種としてA型インフルエンザウイルス(A/Hong Kong/8/68(H3N2)ATCC VR-1679H3N2)を用いた。
2)試験片0.4gに試験ウイルス液0.2mlを滴下し、25℃で2時間静置する。対照試料は標準綿布を用いた。
3)SCDLP培地20mlを加えて試験片からウイルスを洗い出し、プラーク測定法により感染価を算出する。
4)抗ウイルス活性値の算出方法は以下のとおりである。
抗ウイルス活性値=対照試料の2時間作用後の感染価常用対数-機能性不織布の感染価常用対数
抗ウイルス活性値が2.0以上の場合を効果ありと判断した。
<抗菌特性の評価>
JIS L 1902:2015(繊維製品の抗菌性試験)に定める抗菌性試験を実施した。試験概要は以下のとおりである。
1)試験菌懸濁液を作製する。
試験菌種として黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus NBRC 12732)、大腸菌(Escherichia coil NBRC 3301)の2種類を使用した。
2)試験片0.4gに、試験菌液0.2ml(0.05%の界面活性剤(Tween(登録商標)80(シグマ-アルドリッチ社製))を含む)を滴下後、37℃で18時間培養する。対象試料は標準綿布を用いた。
3)洗い出し液20mlを加えて試験片から試験菌を洗い出し、洗い出し液中の生菌数を混釈平板培養法又は発光測定法により測定する。
4)抗菌活性値の算出方法は以下のとおりである。
抗菌活性値=(対照試料の培養後生菌数の常用対数-対照試料の接種直後生菌数の常用対数)-(機能性不織布の培養後生菌数の常用対数-機能性不織布の接種直後生菌数の常用対数)
抗菌活性値が2.2以上の場合を効果ありと判断した。
<抗アレルゲン性の評価>
アレルゲン不活性化試験により評価を行った。概要は以下のとおりである。
1.薬品の調薬
(1)アレルゲン溶液の調製
精製ダニアレルゲンrDerf2(生化学工業社製)をPBS(-)に溶解し、試験用アレルゲン溶液として500ng/mlとなるように調製した。
(2)抗体溶液の調製
抗rDerf2モノクロナール抗体15E11(生化学工業社製)を2μg/mlの濃度となるようにPBS(-)で希釈した。
(3)標識抗体溶液の調製
西洋ワサビペルオキシダーゼ標識抗rDerf2モノクロナール抗体13A4PO(生化学工業社製)をPBS-Tで5000倍希釈した。PBS-Tについては、0.5gのTween(登録商標)20(シグマ-アルドリッチ社製)を1000mlのPBS(-)に溶解して使用した。
(4)1%-BSA-PBS(-)の調製
0.2gのBSAを20mlのPBS(-)に溶解して使用した。
(5)0.3mg/ml-ABTS(基質溶液)の調製
3mgのABTSを10mlの0.3M-Cirate buffer(pH4.0)で溶解し、これに10μlの30%過酸化水素を添加して使用した。
2.試験方法
本試験方法は機能性不織布上で捕捉したアレルゲンが、不活化されることの確認試験である。
(1)概要
実施例及び比較例で得た機能性不織布を、それぞれ2mm×4mmの大きさに裁断して検体とし、個々に試験した。検体を48ウェルプレートの底に置き、1ウェル当たり300μlのアレルゲン溶液(初期アレルゲン量:500ng/ml)を添加し、室温で2時間静置した。静置後、50μlを採取し、その中に存在するアレルゲン濃度をサンドイッチELISA法により定量した。サンドイッチELISA法の詳細は以下のとおりである。
(2)サンドイッチELISA法
1) コーティング溶液(抗体溶液、2μg/ml)50μlをELISAプレートの各ウェルに添加し、4℃で一晩静置した。
2) コーティング溶液を除去し、300μlのPBS(-)で3回洗浄後、200μlの1%-BSA-PBA(-)を添加し、室温で1時間静置した。
3) ELISAプレートを300μlのPBS-Tで3回洗浄後、検体と2時間接触させたアレルゲン溶液50μlを採取して添加し、室温で2時間静置した。
4) ELISAプレートを300μlのPBS-Tで3回洗浄後、標識抗体溶液を50μl添加して、室温で2時間静置した。
5) ELISAプレートを300μlのPBS-Tで3回洗浄後、100μlの0.3mg/ml-ABTSを添加して室温で発色させ、20~30分反応後にミキシングさせ、マイクロプレートリーダーにより405nmの吸光度を測定した。
6) 吸光度より検体接触させたアレルゲン溶液中の精製ダニアレルゲンrDerf2濃度(アレルゲン残存量:ng/ml)を算出した。
7)アレルゲン除去率算出方法は以下のとおりである。
アレルゲン除去率(%)=[1-(アレルゲン残存量)/(初期アレルゲン量)]×100
<通気性の評価(圧力損失)>
JIS B9908:2011に準じて、面風速5.3cm/秒の条件で、機能性不織布の上流側と下流側の差圧を圧力損失として測定した。単位はPaである。
<補足性能の評価(捕集効率)>
JIS B9908:2011に準じて、面風速5.3cm/秒の条件で、機能性不織布の上流側と下流側の粒子径0.3μm以上、5.0μm未満の大気塵粒子の粒子数をパーティクルカウンター(リオン社製、商品名KC-11)を用い測定した。上流側の測定粒子数から下流側の測定粒子数を減じ、補足した粒子数を求め、上流側の粒子数で除し、百分率(%)で表したものを捕集効率とした。単位は%である。
<タンニン酸の脱落評価>
得られた機能性不織布を平織り綿布に、手で擦り付けた際、綿布へのタンニン酸の移行の有無を光学顕微鏡を用いて観察した。移行が見られないものを○、少し見られるものを△として合格とし、甚だしい移行が見られるものを×として不合格とした。
(マスターバッチ作製例1)
MFR60g/10分のポリプロピレン樹脂80部に対し、100メッシュ通過区分が99質量%以上であるタンニン酸粉体20部をタンブラー装置に入れ、36rpmの回転数で10分間混合したものを、ベントを有する二軸押出機のホッパーから投入し、タンニン酸の分解温度より低い180℃を超えないように混練する。混練中にタンニン酸が持つ水分が蒸発することにより発生する水蒸気はベントよりガス抜きを行いながら混練を行い、吐出されたストランドを水中に導入冷却し、ペレタイザーにてカット長約3mmのペレットを作製した。
当該ペレットをサンプリングし、ホットプレート上でタンニン酸の分解温度を超える240℃で溶融して引き延ばした。タンニン酸は当該温度では茶褐色にするため、タンニン酸の分散の度合いが観察できる。目視によりタンニン酸の凝集が見られる場合は、再度ホッパー内に投入し、同じ工程で混練によるタンニン酸の分散を行い、再ペレット化する。タンニン酸の凝集が見られなくなるまで、混練を繰り返し、タンニン酸が樹脂成分内で均質に分散したマスターバッチ(mbT1)を作製した。
(マスターバッチ作製例2)
MFR1300のポリプロピレン樹脂80部に対し、光安定化剤としてキマソーブ944FDL(BASF社製)18部、チヌビン622SF(BASF社製)2部をポリ袋に入れて手振りで簡単に混合したものを、二軸押出機のホッパーから投入し、200℃で混練することで光安定化剤のマスターバッチ(mbE1)を作製した。
(実施例1~5)
一軸押出機が装備されたメルトブロー製造装置を用い、機能性不織布の作製を行った。
mbT1と希釈樹脂としてMFR1300g/10分のポリプロピレン樹脂とを、表1記載の部数で、200℃で混練溶融した後、ノズル径0.2mm、ピッチ1.0mmのノズルを用い、紡糸温度200℃、単孔吐出量を150mg/分、加熱ガスの温度210℃、基準流量が650Nm/hr/m、ノズルとコンベヤの距離が150mmとなるように調整し、メルトブロー法による機能性不織布を得た。
(実施例6)
タンニン酸粉体を、加水分解型タンニンを含むゲンノショウコから抽出した乾燥粉末に変更する以外は実施例2と同じ方法で、機能性不織布を作製した。
(比較例1)
タンニン酸含有mbT1を用いずに、希釈樹脂のみで、実施例1と同じ方法で、メルトブロー法による不織布を作製した。
(比較例2)
比較例1の不織布に、交流コロナ処理を行い水系溶媒に対する親和性を持たせたのち、タンニン酸(富士化学工業社製、商品名:タンニン酸AL)、アクリル酸エステル系バインダー(日本エヌエスシー社製、商品名:ヨドゾール(登録商標)AD81B)を固形分比70:20となるよう水系分散液を作製し、タンニン酸の添着量が1質量%となるように分散液を含浸させたのち、120℃で乾燥することで機能性不織布を作製した。
(実施例7)
単孔吐出量を30mg/分とし、希釈樹脂はMFR2000g/10分のポリプロピレン樹脂を使用し、加熱ガスの基準流量を900Nm/hr/mとし、コンベヤ下からの吸引を強くし、さらに発生するフライを吸引除去する以外は、実施例2と同じ方法で機能性不織布を作製した。フライの発生が見られたため、飛散するフライを除去しながら作製した。
(実施例8)
単孔吐出量を50mg/分とし、希釈樹脂はMFR2000g/10分のポリプロピレン樹脂を使用し、加熱ガスの基準流量を800Nm/hr/mとし、コンベヤ下からの吸引を強くする以外は、実施例2と同じ方法で機能性不織布を作製した。
(実施例9)
単孔吐出量を300mg/分とする以外は、実施例2と同じ方法で機能性不織布を作製した。
(実施例10)
単孔吐出量を500mg/分にする以外は、実施例2と同じ方法で機能性不織布を作製した。
(実施例11)
単孔吐出量を600mg/分にする以外は、実施例2と同じ方法で機能性不織布を作製した。
(実施例12~16)
表1記載の部数で、タンニン酸を含有するmbT1、MFR1300g/10分のポリプロピレン樹脂、光安定化剤を含有するmbE1を用いた以外は、実施例2と同じ方法で、機能性不織布を作製した。
(比較例3)
表1記載の部数で、MFR1300g/10分のポリプロピレン樹脂、光安定化剤を含有するmbE1を用いた以外は、実施例2と同じ方法で、機能性不織布を作製した。
(比較例4)
比較例1の不織布を、比較例3の機能性不織布に変更した以外は、比較例2と同じ方法で機能性不織布を作製した。
(エレクトレット加工:コロナ処理)
8mmピッチで千鳥配列の針状電極を用い、針状電極とアースである金属版との距離は20mmとし、金属板の上に(機能性)不織布を配置し、印加電圧はプラス20KV/cmで、2秒間コロナ放電処理を行った。
表2の結果から、実施例1~5と比較例1の比較から、樹脂と加水分解型タンニンとを含む繊維を含有する実施例1~5の機能性不織布は、通気性を阻害することなく、抗菌・抗ウイルス性、抗アレルゲン性を備えた不織布であることが判る。また、エレクトレット加工により、機能を低減させることなく、しかも高い捕集効率が発現していることが判る。実施例6の機能性不織布も、実施例1~5の機能性不織布と同様の効果が発現していた。
タンニン酸をバインダーで添着した比較例2の機能性不織布の場合、抗菌・抗ウイルス性、抗アレルゲン性は発現しているが、圧力損失が大幅に上昇した。
実施例2、7~11において、繊維径が異なっていても、優れた抗菌・抗ウイルス性、抗アレルゲン性とエレクトレット加工によって、性能を阻害することなく、捕集効率が発現していることが判る。特に、実施例2、実施例8~10の範囲において、高い捕集効率が発現していることが判る。
実施例12~16と比較例3の比較から、繊維がさらに帯電促進剤を含むことにより、さらに高い捕集効率を発現させることができる。また、エレクトレット加工を行っても、抗菌・抗ウイルス、抗アレルゲン性に影響を及ぼさないことが判る。タンニン酸をバインダーで添着した比較例4の機能性不織布の場合、抗菌・抗ウイルス性、抗アレルゲン性は発現しているが、圧力損失が大幅に上昇し、捕集効率も大幅に低下していることが判る。
また、実施例1~16と比較例2及び4とを比較すると、混練品はタンニン酸の脱落が見られないが、添着したものはバインダーが用いられているにもかかわらず、タンニン酸の脱落が観察される結果となった。
本発明の機能性不織布は、抗菌・抗ウイルス性及び抗アレルゲン性が要求される、フィルター、マスク、除菌ワイパー、カーテン、壁紙、衣料、生活雑貨、医療分野、産業分野などの分野で使用される繊維製品として利用することができる。特に高捕集効率が要求される空調機、空気清浄機、掃除機、除湿機、乾燥機、加湿機、換気扇、扇風機、熱交換装置等の各種空気処理装置、自然給排気のための外気流入口(通気口や窓など)のフィルター用途として利用することができる。
本発明の機能性不織布は、平面的なシート状としてだけでなく、プリーツ加工、コルゲート加工、ハニカム加工、立体成型加工など組み合わせることで多様な製品を作ることができる。

Claims (4)

  1. 樹脂と加水分解型タンニンとを含む繊維を含有することを特徴とする機能性不織布。
  2. 加水分解型タンニンがタンニン酸である請求項1記載の機能性不織布。
  3. エレクトレット加工が施されている請求項1又は2記載の機能性不織布。
  4. 樹脂と加水分解型タンニンとを含む繊維の平均繊維径が0.7~10μmである請求項1~3のいずれか記載の機能性不織布。
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