JP2023148947A - 機能性不織布 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の課題は、圧力損失の上昇を伴うことなく、抗菌性、抗ウイルス性、抗アレルゲン性を有し、高い捕集効率をも兼ね備える機能性不織布を提供することにある。【解決手段】樹脂と加水分解型タンニン及び帯電を促進する成分とを含む繊維を含有し、ハイドロチャージ処理によってエレクトレット化されていることを特徴とする機能性不織布であり、より好ましくは、樹脂と加水分解型タンニン及び帯電を促進する成分とを含む繊維の平均繊維径が1~5μmである機能性不織布。【選択図】なし

Description

本発明は、機能性不織布に関する。
近年、健康志向、衛生観念の高まりを受け、浮遊粉塵中に存在するウイルス、細菌、アレル物質の不活性化に関心が持たれている。他の浮遊粉塵と同様に、これらウイルス、細菌もフィルターでの捕集が可能である。しかし、ウイルス等はしばらくの間は活性を保っており、すぐさま死滅するわけではない。また、捕集したウイルス、細菌がフィルター上で繁殖する場合があり、悪臭の発生、再飛散して室内を汚染する等の欠点がある。そのため、ミクロンサイズであるウイルス、細菌、アレル物質を高効率で捕集でき、捕集したウイルス等を不活化させる機能がフィルターに求められている。
フィルターの捕集効率を向上させるための技術として、エレクトレット加工が有効であることが知られている。エレクトレット加工方法としては、コロナ放電処理、ハイドロチャージ処理等の方法が知られている。ハイドロチャージ処理は、コロナ放電処理とは異なり、繊維の内部まで帯電処理が施されるため、初期捕集効率を高めることができる。また、フィルターへの成形加工やフィルターの保管時に、静電電荷の減衰によって捕集効率が低下するが、ハイドロチャージ処理ではこの捕集効率の低下を抑制することができる。そのため、ハイドロチャージ処理によるエレクトレット処理の方がコロナ放電処理よりも帯電性能が高いと考えられている(例えば、特許文献1参照)。
古くから天然物植物由来のエキスには多くの生理活性作用が報告されており、その安心、安全性から健康食品や飲料に用いられているものも多い。カテキン類である縮合型タンニン(例えばカテキン)及び加水分解型タンニンには各種薬理作用が報告されている。
中でも加水分解型タンニンの一種であるタンニン酸に関する薬理作用は多く示され、不織布に添着したものに関して、細菌、ウイルス、アレル物質の活性を、捕集中又は捕集後に不活化させる方法が数多く提案されている。しかしながら、フィルターとしては、繊維又は不織布の表面にバインダー成分を用いて添着させたものがほとんどで、圧力損失の上昇、捕集効率への悪影響について必ずしも考慮されたものではない(例えば、特許文献2~4参照)。
また、加水分解型タンニンとして比較的入手しやすいタンニン酸においても、樹脂へ直接混練した例(例えば、特許文献5及び6参照)はあるものの、不織布を構成する繊維とし、抗菌性、抗ウイルス性について言及されたものは見当たらない。当然、当該不織布をエアフィルターとして応用された例はこれまで見られない。
縮合型タンニンを樹脂と混練する場合、抗菌性・抗ウイルス性、抗アレルゲン性を高度に発現させるためには、高濃度での混練が必要とされており、コストの上昇も不可避であり、混練の難易度も高いことが記載されている(例えば、特許文献7参照)
高捕集効率を有するために、不織布に帯電を促進する成分(帯電促進剤)として、光安定化剤又は熱安定化剤を添加する方法が提案されている。帯電促進剤としては、ヒンダードアミン系、ヒンダードフェノール系が例示されている(例えば、特許文献1、8及び9参照)。また、特許文献9には、メルトブロー法によって製造された平均繊維が1~10μmの極細繊維Aを含む繊維層と、メルトブロー法によって製造された平均繊維径が0.1~5μmの極細繊維Bを含む繊維層とが積層されてなり、抗菌剤を含んだ平均粒子径が3μm以下の無機粒子が極細繊維Aの樹脂成分中に含まれており、極細繊維Aの平均繊維径が前記無機粒子の平均粒子径よりも大きく、極細繊維Bの平均繊維径が極細繊維Aの平均繊維径よりも小さいことを特徴とする不織布が開示され、極細繊維Aを構成する樹脂成分がヒンダードアミン系化合物を含むこと、及び不織布がエレクトレット加工されていることが開示されているが、抗菌剤は無機粒子として樹脂成分中に含まれており、タンニン酸のような有機系化合物において、帯電促進剤との組み合わせについて詳細に書かれた事例はない。
また、特許文献10には、抗菌剤加工を施した合成繊維を用いて形成した不織布状のエレクトレットフィルター用フィルター材料が開示されていて、抗菌剤の処理液を用いて不織布に抗菌剤を付与した後、コロナ放電でエレクトレット化してフィルター材料を製造している。しかし、このフィルター材料では、繊維表面に付着した抗菌剤がエレクトレット化する際や、フィルターの使用中に脱離する場合があった。
以上のように、圧力損失の上昇を伴うことなく、実質的な抗菌性、抗ウイルス性、抗アレルゲン性を有し、高い捕集効率を発現できるフィルターに使用可能な機能性不織布を実現できた例はない。
特開2018-84001号公報 特開2018-12799号公報 特開2011-132417号公報 特開2006-25579号公報 特開昭54-143454号公報 特開平9-118775号公報 特開2000-355827号公報 特開2021-115521号公報 特開2008-75227号公報 特開昭62-42716号公報
本発明の課題は、圧力損失の上昇を伴うことなく、抗菌性、抗ウイルス性、抗アレルゲン性を有し、高い捕集効率をも兼ね備える機能性不織布を提供することにある。
前記の課題を解決するため鋭意研究を行った結果、以下の機能性不織布を発明するに至った。
すなわち本発明は以下の構成からなる。
(1)樹脂と加水分解型タンニン及び帯電を促進する成分とを含む繊維を含有し、ハイドロチャージ処理によってエレクトレット化されていることを特徴とする機能性不織布。
(2)樹脂と加水分解型タンニン及び帯電を促進する成分とを含む繊維の平均繊維径が1~5μmである上記(1)記載の機能性不織布。
本発明によれば、圧力損失の上昇を伴うことなく、抗菌性、抗ウイルス性、抗アレルゲン性を有し、高い捕集効率をも兼ね備える機能性不織布を提供できる。
本発明は、樹脂と加水分解型タンニン及び帯電を促進する成分とを含む繊維を含有し、ハイドロチャージ処理によってエレクトレット化されていることを特徴とする機能性不織布である。
タンニン類は加水分解型タンニンと縮合型タンニンに分類される。本発明で使用される加水分解型タンニンとは、酸、アルカリ、酵素で多価フェノール酸と多価アルコール(糖など)に加水分解される。多価フェノールとしては、主に没食子酸及びその二量体(遊離状態では脱水環化して四環性のエラグ酸となる)の二つのタイプがあり、それぞれをガロタンニン、エラジタンニンと総称される。ガロタンニンの例として、ウコギ科ヌルデの葉にヌルデノミミフシアブラムシが寄生してできる虫こぶである五倍子に含まれるタンニン酸がある。エラジタンニンの例としてフウロソウ科ゲンノショウコに含まれるゲラニインが挙げられる(富士化学工業株式会社カタログ。http://www.fujichem.co.jp/relays/download/31/69/3/90/?file=/files/libs/90/201705021803326615.pdf)。
本発明において、抗菌性、抗ウイルス性、抗アレルゲン性を発現させるために、繊維に含まれる成分は、生理活性が報告されている加水分解型タンニンであり、特に多くの生理活性が報告されているタンニン酸がさらに好ましい。
タンニン酸は、五倍子、没食子などのタンニン酸を含有する材料から温水で抽出し、有機溶媒にて不純物を除去する方法で得ることができるが、市販されているものを購入して用いてもよい。市販品としては、例えば、富士化学工業株式会社、商品名:タンニン酸ALが挙げられる。
本発明では、バインダーなどの影響により、捕集効率を阻害されることがなく、圧力損失が上昇し難い機能性不織布を提供する。そして、フィルターとして高性能である機能性不織布を提供するためには、樹脂と加水分解型タンニンとを含む繊維において、加水分解型タンニンが樹脂に混練された状態であることが好ましい。
樹脂に対する加水分解型タンニンの配合量は、0.1~10質量%が好ましく、0.5~10質量%がより好ましく、1~10質量%がさらに好ましい。該配合量が0.1質量%より少ないと、抗菌性、抗ウイルス性、抗アレルゲン性という機能の発現が弱くなる場合がある。該配合量が10質量%を超えると、機能発現には問題ないが、繊維を紡糸するために必要な樹脂の流動性が低下する場合があり、生産性が低下するだけでなく、紡糸性も悪くなる場合がある。また、繊維強度も弱くなる場合があり、機能性不織布の強度が低下する場合がある。さらに、材料を多く使うことで、コストアップにもつながる。また、加水分解型タンニンは天然物であり、加温と時間により変色が進むため、商品形態によっては商品価値の低下を招く場合がある。
本発明において、機能性不織布が含有する繊維の樹脂は、熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリスチレン、ゴム補強ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂)等のスチレン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸などのポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46等のポリアミド樹脂;ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル等のポリエーテル系樹脂;ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド等のエンジニアリング樹脂;熱可塑性エポキシ樹脂などが例示される。これらの熱可塑性樹脂は、1種を使用しても良いし、2種以上を使用しても良い。本発明で使用できる熱可塑性樹脂は、上記の熱可塑性樹脂に限定されるものではない。
繊維は単一構造のものでもよいし、二成分を用いた芯鞘構造からなる複合繊維であってもよい。芯鞘構造の場合、加水分解型タンニンは鞘成分の樹脂に含まれていることが好ましい。
天然物である加水分解タンニンを樹脂に直接混練するためには、加水分解型タンニンの耐熱性に留意する必要がある。加水分解型タンニンの一つであるタンニン酸を一例として説明する。先述の富士化学工業社カタログによると、タンニン酸の分解温度は225~235℃である。実質的には215℃から分解が開始されるため、樹脂への加水分解型タンニン混練は、215℃よりも低い温度で行うことが好ましい。
安価で入手しやすく、軽量であること、融点が180℃程度と低いこと、減成により流動性の高い樹脂を作りやすいため、より細い繊維を紡糸しやすいという観点から、熱可塑性樹脂はポリプロピレンであることが好ましい。また、ハイドロチャージ処理によってエレクトレット化した場合、帯電しやすく、高捕集効率の機能性不織布を作りやすいという観点からも、熱可塑性樹脂がポリプロピレンであることが最も好ましい。
本発明おいて、ハイドロチャージ処理によるエレクトレット化の効果を促進させるため、樹脂と加水分解型タンニンとを含む繊維は、帯電を促進させる成分(帯電促進剤)も含んでいる。帯電促進剤としては、樹脂の耐候性、耐光性、耐熱性を向上させることができる光安定化剤、酸化防止剤等の添加剤が好適であり、これらの添加剤から一種類以上のものを選択して用いることができる。これらの帯電促進剤は、樹脂の分解(光、酸素、熱などによる)を促進するラジカルをトラップする役割があるとされる作用機構と同様に、エレクトレット加工により繊維・樹脂に付与される電荷をトラップすることにより、捕集効率を向上させることができると推定される。
光安定化剤としては、ヒンダードアミン系添加剤又はトリアジン系添加剤が挙げられる。ヒンダードアミン系添加剤としては、例えばポリ[[6-[(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル][(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)イミノ)]-1,6-ヘキサンジイル[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)イミノ]](BASF社製、キマソーブ(登録商標)944FDL、CAS番号:70624-18-9)、コハク酸ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物(BASF社製、チヌビン(登録商標)622SF、CAS番号:65447-77-0)、上記キマソーブ944FDLとチヌビン622SFの混合物(BASF社製、チヌビン(登録商標)783)、(2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)(BASF社製、チヌビン(登録商標)144、CAS番号:63843-89-0)、ポリ[(6-モルフォリノ-S-トリアジン-2,4-ジイル)〔2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル〕イミノ]-ヘキサメチレン[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ](Solvay社製、サイアソーブ(登録商標)UV-3346、CAS番号:82451-48-7)、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、及び1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β′,β′-テトラメチル-3,9-(2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン)ジエタノールとの縮合物(株式会社ADEKA、アデカスタブ(登録商標)LA-63P、CAS番号:101357-36-2、85631-00-1)などが挙げられる。
トリアジン系添加剤としては、例えば前述のポリ[[6-[(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル][(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)イミノ)]-1,6-ヘキサンジイル[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)イミノ]](BASF社製、キマソーブ(登録商標)944FDL、CAS番号:70624-18-9)、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-((ヘキシル)オキシ)-フェノール(BASF社製、チヌビン(登録商標)1577FF、CAS番号:147315-50-2)などを挙げることができる。
これらの中でも、特にヒンダードアミン系添加剤がエレクトレット処理による捕集効率向上効果が高いため好ましい。
光安定化剤の配合量としては、特に限定されないが、繊維質量に対して、好ましくは0.05~5質量%であり、より好ましくは0.1~3質量%である。該配合量が0.05質量%未満では、目的とするさらなる高レベルのエレクトレット加工による性能向上効果を得られない場合がある。また、該配合量が5質量%を超えると、コストがアップするだけでなく、紡糸性が低下する場合があり、繊維強度が弱くなる場合もある。
酸化防止剤としては、例えば、N-フェニル-1,1,3,3-テトラメチルブチルナフタレン-1-アミン、ジフェニルアミン誘導体(ジフェニルアミンと2,4,4-トリメチルペンテンとの反応生成物)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-di-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ベンゼンプロパン酸,3,5-ビス(1,1-ジメチル-エチル)-4-ヒドロキシ-,C7-C9側鎖アルキルエステル等が挙げられる。これらの酸化防止剤のうちでは、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)が好ましい。これらの酸化防止剤は、1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
酸化防止剤の配合量としては、特に限定されないが、繊維質量に対して、好ましくは0.1~5質量%であり、より好ましくは0.2~5質量%である。該配合量が0.1~5質量%である場合、除塵性能や捕集効率が向上しやすい。また、経時的な捕集効率の低下を抑制することもできる。該配合量が0.1質量%未満では、目的とするさらなる高レベルのエレクトレット加工による性能向上効果を得ることが難しくなる。また、5質量%を超えると、コストがアップするだけでなく、紡糸性が低下する場合があり、繊維強度が弱くなる場合もある。
本発明の機能性不織布は、ハイドロチャージ処理によってエレクトレット化されていることによって、優れた捕集効率を達成している。エレクトレット加工によって、機能性不織布が帯電し、静電気力により細菌、ウイルス、アレル物質及びこれらの飛沫を高効率で捕集することが可能となり、エレクトレット化されていない不織布の機械的捕集効率を上回る高捕集効率を発揮することができる。エレクトレット加工は、コロナ放電処理やハイドロチャージ処理などの方法があるが、本発明では、ハイドロチャージ処理を用いる。
コロナ放電処理とは、電極と金属アースの間に高圧電圧を印可し、電極と金属アース間に電流(コロナ放電)を流すことで、非導電性の樹脂内に電荷をトラップさせ、半永久的に帯電状態を保持させる処理である。しかしながら、コロナ放電処理では、帯電量を多くするために、電圧をできるだけ上げる必要があるが、電圧を上げ過ぎると、電極と金属アース間に火花放電が発生し、不織布が損傷するという問題が発生する場合がある。また、不織布の表層部分、すなわち、コロナイオンに曝されている部分にのみ電荷が蓄積してしまう。そのため蓄積電荷により形成される反発電界により、コロナイオンが不織布内部まで浸透することができず、その結果、不織布内部まで十分に帯電されないという欠点がある。
一方、ハイドロチャージ処理では、液体と固体の間で摩擦により発生する流動帯電の原理を利用する。具体的には、非導電性繊維を含有する不織布に極性溶媒である水を付与して浸透させ、速やかに吸引、乾燥などの方法で除去することにより、液体と固体表面に電荷分離が生じる静電気現象のことを指し、不織布に帯電処理を行うことができる(「流動帯電によるポリプロピレン不織布のエレクトレット特性」、繊維機械学会誌、2007年53巻6号、P.231-236)。吸引作用により、水は非導電性繊維を含有する不織布を貫通し、不織布全体に満遍なく浸透するので、均一かつ高密度に内部まで帯電し、高性能のエレクトレット化不織布を得ることができる。そのため、ハイドロチャージ処理は、繊維内部までエレクトレット化されるため、コロナ放電処理よりも高捕集効率を発揮する不織布を得ることができる。
本発明の機能性不織布は、繊維が樹脂と加水分解型タンニン及び帯電促進剤とを含んでいることから、水を使用するハイドロチャージ処理でエレクトレット化しても、加水分解型タンニンの脱落が抑えられる。そのため、抗菌性、抗ウイルス性、抗アレルゲン性などの機能が損なわれることなく、また、圧力損失が大きく変動することなく、捕集効率が向上するという予想外の効果が見出された。
ハイドロチャージ処理としては、例えば、不織布を水中に浸漬した状態で、該不織布に圧縮気体を吹き付けて水を不織布に浸透させ、次いで、該不織布を乾燥してエレクトレット化する方法、不織布に対し極性液体を介して超音波振動を作用させてエレクトレット化する方法、ウォータージェットパンチの口金から噴出する高圧水流により不織布全面に水を衝突させてエレクトレット化する方法、水に浸漬した不織布から水をノズルで吸引することによりエレクトレット化する方法等がある。これら一連の水付与、吸引、乾燥の各工程は、連続的に行ってもよく、バッチ式で行ってもよい。また、本発明では、ハイドロチャージ処理によるエレクトレット化の前に、機能性不織布をあらかじめコロナ放電処理によってエレクトレット化してもよい。
本発明において、ハイドロチャージ処理で用いられる極性溶媒である水は、液体フィルター等で汚れを除去した水であって、できるだけ清浄な水を使用することが好ましい。特に、イオン交換水、蒸留水、逆浸透膜の濾過水等の純水を使用することが好ましい。また、より低い電気伝導度の水を用いることが好ましく、好ましい水の電気伝導度は5μS/cm以下である。
水を吸引する時の吸引圧力は、0.01~0.3MPaが好ましい。該吸引圧力が0.01MPa未満であると、吸引が不十分となり、十分な帯電効果が得られない場合がある。該吸引圧力が0.3MPaを超えると、これ以上の捕集効率は向上せず、装置の負荷が高くなるだけである。また、吸引が強くなり過ぎて、機能性不織布が破れる場合がある。
水の供給量(機能性不織布の単位面積あたりに供給する水量)は、好ましくは0.05~3g/cmであり、より好ましくは0.1~1.5g/cmである。水の供給量が0.05g/cm未満では、帯電効果が得られない場合がある。水の供給量が3g/cmを超えると、吸引圧力を大きくする必要があり、また、乾燥工程におけるエネルギー負荷が大きくなる場合がある。
水付与してから吸引するまでの時間は、好ましくは5秒以下であり、より好ましくは3秒以下であり、さらに好ましくは1秒以下である。
ハイドロチャージ処理後の機能性不織布の乾燥方法としては、従来公知の方法がいずれも使用可能である。例えば、熱風乾燥法、真空乾燥法、自然乾燥法等の方法が適用可能である。これらのうちでも、熱風乾燥法は、連続処理が可能であるため、好ましい。熱風乾燥法の場合、乾燥温度としてはエレクトレット化による帯電を失活させない温度にする必要があり、好ましくは120℃以下であり、より好ましくは100℃以下である。また、乾燥前に、過剰な水分を取り除いておくと、乾燥効率が良くなるため、好ましい。
本発明において、樹脂と加水分解型タンニン及び帯電促進剤とを含む繊維の平均繊維径は、好ましくは1~5μmである。該平均繊維径が1μm未満の場合、圧力損失が高くなる場合があり、ハイドロチャージ処理での水の通過速度が遅くなるため、帯電効果が少なくなり、高い捕集効率が得られない場合がある。該平均繊維径が5μmを超えると、細菌、ウイルス、アレル物質等が機能性不織布の繊維間をすり抜ける可能性がある。また、高い捕集効率が得られない場合がある。
本発明における平均繊維径は以下の方法で求める。光学顕微鏡にて倍率を500~1000倍に設定し任意に視野を選択する。各視野において深度の異なる画像を複数枚撮影し、これを合成した画像を得る。各画像においては、測定対象選択における個人差(私意)が入らないように、認識可能な繊維の繊維径の全数の測定を行う。得られた繊維径の数平均値として平均繊維径を算出する。
本発明の機能性不織布は、下記の製造方法によって製造することができる。
本発明において、加水分解型タンニン及び帯電促進剤が樹脂内に均質に含まれていることが好ましい。好ましくは、加水分解型タンニン及び帯電促進剤が均質に混練された樹脂を用いて繊維を製造する。そして、製造された繊維を用いて、任意の方法で機能性不織布を製造することができる。
本発明の機能性不織布は、加水分解型タンニン及び帯電促進剤を含む樹脂を紡糸して作製された連続繊維を、所望する繊維長にカットし、得られた25~75mm程度の繊維長のステープル繊維を用い不織布を製造する乾式法、3~25mm程度の繊維長のチョップド繊維を用いて不織布を製造する湿式法等の間接法で作製されたものでも良い。また、樹脂から紡糸した繊維を直接不織布化するスパンボンド法、メルトブロー法等の直接紡糸法で作製されたものでも良い。
加水分解型タンニン及び帯電促進剤を含む樹脂から直接不織布が得られる点で、スパンボンド法、メルトブロー法、エレクトロスピニング法(特に溶融エレクトロスピニング法)などの直接紡糸法が簡便であり、生産性、生産工程が簡略である点から、スパンボンド法又はメルトブロー法がより好ましい方法である。
本発明における好ましい平均繊維径は、先述した1~5μmである。直接紡糸法において、このような細い繊維を得やすい方法であるメルトブロー法がさらに好ましい。メルトブロー法を用いた場合、使用する熱可塑性繊維の流動性は、ポリプロピレン樹脂を例にとると、メルトフローレート(MFR)が、500~2000g/10分のものが好ましい。
メルトフローレートは、JIS K 7210-1:2014記載のメルトマスフローレートを指し、9項記載のB法を用い、230℃で溶融し、荷重2.16Kgの荷重下でのメルトボリュームレート値から、樹脂の溶融密度(例えば、ポリプロピレンの溶融密度は0.711g/cm)を乗ずることで、算出した流動性を示す値で、単位はg/10分である。MFRの数値が大きいほど、樹脂の流動性は高い。
メルトブロー不織布の製造方法は、原材料となる樹脂と加水分解型タンニン、帯電促進剤を混練溶融する溶融工程、溶融した樹脂混練物をノズルから吐出する紡糸工程、紡糸された繊維状樹脂を捕集し、完全に固化する前の繊維同士を融着させる不織布化工程からなる。
以下、紡糸工程までを具体的に説明する。まずは、加水分解型タンニン及び帯電促進剤を均質に混合・混練する方法について説明する。
本発明においては、溶融された樹脂混練物が紡糸工程に移行する時に、加水分解型タンニンが失活又は分解せず、樹脂内で均質に分散し、紡糸工程に影響を与えないように留意する必要がある。
加水分解型タンニン及び帯電促進剤を直接樹脂に添加する方法と、キャリア樹脂に混練して得られたマスターバッチを(希釈)樹脂に添加して用いる方法がある。また、加水分解型タンニンと帯電促進剤を同時に混練してマスターバッチを作製する方法と、それぞれ個別に混練し、個別のマスターバッチを作製する方法がある。
特に加水分解型タンニンは凝集しやすいため、樹脂内で均質に分散させ、加水分解型タンニンの性能を効率良く発現させ、生産性に影響を与えない方法としては、マスターバッチを作製する方法が好ましく、帯電促進剤と個別のマスターバッチを作製する方法が好ましい。
以下、天然物であり耐熱性の低い加水分解型タンニン酸の扱いについて、説明するにあたり、加水分解型タンニンについては、タンニン酸を例に一部説明するが、加水分解型タンニンはタンニン酸に限定されない。本発明において、タンニン酸との混練は、樹脂の流動性が発現する温度(例えば、ポリプロピレンの場合は180℃)以上で、且つタンニン酸の分解温度以下の温度で行うことが好ましい。タンニン酸の分解温度は225~235℃であることから、225℃以上の温度で混練すると、タンニン酸が分解し、生理活性が損なわれる場合があることは言うまでもなく、タンニン酸が着色して外観上好ましくない場合もある。なお、タンニン酸以外の加水分解型タンニンに関しては、その成分の分解温度を考慮して工程の温度管理を行えば良い。
マスターバッチにおける加水分解型タンニンの配合量は、マスターバッチ全体に対して、5~50質量%が好ましく、さらに好ましくは5~30質量%である。該配合量が5質量%より少ないと、適正な配合量の加水分解型タンニンを機能性不織布に含ませようとした場合、機能性不織布中に占めるキャリア樹脂の割合が多くなり、紡糸性に影響を及ぼす場合がある。該配合量が50質量%より多いと、加水分解型タンニンが均質に分散した状態のマスターバッチを作製することが困難になる場合がある。
加水分解型タンニンの形状に特に制限はないが、溶融から混練への工程移行及び混練を行いやすいことから、粉体形状である方が好ましい。加水分解型タンニンの大きな粒子は、混練の工程で比較的小さな粒子に粉砕されるが、粉砕された微粒子を均質に分散することが難しく、微粒子同士が二次、三次凝集を形成しやすい。100メッシュ(150μm)通過区分が95質量%以上であれば、本発明の方法により、マスターバッチ作製、メルトブロー作製前の混練の工程を経ることで、目的である機能性不織布を得られやすくなり、好ましい。
以下、上記溶融工程において、加水分解型タンニンを樹脂に均質に分散できる混練方法について具体的に説明する。
本発明の溶融工程は、加水分解型タンニンの熱分解温度(T1)より低い温度で、加水分解型タンニンとキャリア樹脂とを混練し、マスターバッチとする第一段階、該マスターバッチのキャリア樹脂と相溶性があり、キャリア樹脂よりMFRが高い樹脂を希釈樹脂として、T1より低い温度で希釈樹脂とマスターバッチとを混練して加水分解型タンニンを希釈する第二段階とを含むことが好ましい。
キャリア樹脂とは、第一段階で添加剤である加水分解型タンニンを混練する際のベースとなる樹脂を指す。希釈樹脂とはマスターバッチと混練される樹脂であり、添加剤を適正な濃度に分散させるベースとなる樹脂を指し、機能性不織布の繊維を構成する主要樹脂を指す。
紡糸前に第一工程でキャリア樹脂と混練しマスターバッチを作製し、第二工程でマスターバッチを(希釈)樹脂で希釈混練した状態とする。
加水分解型タンニンがタンニン酸の場合、第一段階としてタンニン酸を、225℃よりも低い温度でキャリア樹脂と混練し、マスターバッチとする。マスターバッチにおいて、タンニン酸の分散が不十分で未分散物が残ると、希釈樹脂とマスターバッチとを混練したものが不均一なものとなり、ノズル詰まりが発生するなど、紡糸性も悪くなるばかりか、ハイドロチャージ処理の際、均一な帯電処理がされず、高捕集効率が出ない場合がある。そのため、マスターバッチにおける分散には留意する必要がある。
マスターバッチを作製する上で、キャリア樹脂と加水分解型タンニンとを混練する方法としては、連続式である一軸又は二軸以上の多軸を備えた押出機を用いても良いし、バッチ式密閉型混練装置(例えば、国際公開2004/076044号パンフレット記載のバッチ式密閉型混練装置)などを用いても良い。加水分解型タンニンが水酸基を持つ場合、粉体の状態で水分が含まれるため、前者押出機の場合、混練工程で発生する水蒸気はベントよりガス抜きしながら混練を行うとよい。後者の場合、圧力容器中で、加温せずにせん断発熱のみで混練することが可能であり、加水分解型タンニンの分解温度より低い温度で混練するための適した方法の一つである。
上記加水分解型タンニンのマスターバッチの形状は、混練物を円形のダイから押し出したストランドをカットしたペレット状、混練物の塊がランダムに粉砕されたフレーク状が好ましい。
キャリア樹脂の流動性としては、MFRが30~500g/10分が好ましい。キャリア樹脂のMFRが30g/10分より低いと、得られたマスターバッチと希釈樹脂とが混ざりにくく、混練に時間がかかり、加温状態が長くなると、加水分解型タンニンが変色する場合がある。
次に帯電促進剤のマスターバッチ作製方法について説明する。上記加水分解型タンニンのマスターバッチの第一工程と同様の方法で、樹脂の流動性が発現する温度(例えば、ポリプロピレンの場合は180℃)以上で行うことができる。帯電促進剤は加水分解型タンニンよりも樹脂内における均質な分散が容易であることから、キャリア樹脂との相溶性の観点から、希釈樹脂と同程度の流動性の樹脂を帯電促進剤のキャリア樹脂として用いることが可能である。
上記帯電促進剤マスターバッチの形状は、加水分解型タンニンと同様の形状のものを用いることができる。
マスターバッチにおける帯電促進剤の配合量は、マスターバッチ全体に対して、5~50質量%が好ましく、さらに好ましくは5~30質量%である。該配合量が5質量%より少ないと、適正な配合量の帯電促進剤を機能性不織布に含ませようとした場合、機能性不織布中に占めるキャリア樹脂の割合が多くなり、紡糸性に影響を及ぼす場合ある。該配合量が50質量%より多いと、帯電促進剤が均質に分散した状態のマスターバッチを作製することが困難になる場合がある。
第二段階として、上記二種類のマスターバッチをキャリア樹脂と混練するに際し、キャリア樹脂と相溶性があり、加水分解型タンニンのマスターバッチで用いたキャリア樹脂よりMFRが高い樹脂を希釈樹脂として用い、加水分解型タンニンがタンニン酸の場合は、225℃より低い温度でマスターバッチと希釈樹脂とを混練する。
希釈樹脂がポリプロピレンである場合、MFRは500~2000g/10分が好ましい。
希釈樹脂のMFRがキャリア樹脂のMFRより高いことで、キャリア樹脂、希釈樹脂、加水分解型タンニン及び帯電促進剤の分散状態が良好となる。希釈樹脂のMFRがキャリア樹脂のMFR以下であると、キャリア樹脂と希釈樹脂との混ざり具合が不均一となり、加水分解型タンニン及び帯電促進剤の分散状態が悪くなり、メルトブロー法においては、糸切れやショットが発生し、得られた不織布の外観が悪くなる場合がある。また、加水分解型タンニンの凝集が発生する場合、ハイドロチャージ処理による帯電が不均一になる場合がある。
このようにして、所望する加水分解型タンニン及び帯電促進剤の配合量となるように、マスターバッチと希釈樹脂とを混合するとよい。
メルトブロー法における紡糸工程と不織布化工程を具体的に説明する。紡糸工程では、上記の溶融工程を経た加水分解型タンニン及び帯電促進剤を含む樹脂を、複数の孔を有する紡糸口金(ノズル)から紡糸し、随伴する高速の加熱ガスによって、紡糸された樹脂をより細く引き延ばして、細化することで連続する繊維状樹脂とする。
メルトブロー法は、樹脂を冷却せずに繊維状樹脂を捕集するため、不織布化工程では、溶融紡糸された繊維状樹脂は未固化の状態で、ノズルに対して相対的に移動する多孔質のコンベヤ上に捕集、堆積され、その後、繊維状樹脂同士が固化、融着することで不織布が作製される。
吐出時のノズルの温度(紡糸温度)は、先のマスターバッチ製造工程、溶融工程同様に、加水分解型タンニンの分解温度より低い温度で行うことが好ましい。
ノズルの単孔径(ノズル径)は、好ましくは0.1~2mmであり、より好ましくは0.15~0.5mmである。該ノズル径が0.1~2mmの範囲であれば、生産性を損なわず、1~5μmの繊維を得ることが可能となる。単孔当たりの吐出量(単孔吐出量)は5~150mg/分であることが好ましく、7~100mg/分であることがより好ましく、10~70mg/分であることがさらに好ましい。
加熱ガスは、清浄な大気成分を取り込み、加温して用いることが簡便である。加熱ガスの温度は、紡糸温度±30℃の温度範囲であることが好ましく、さらに好ましくは、紡糸温度から+20℃の範囲が好ましい。加熱ガスの基準流量は250~1000Nm/hr/mであることが好ましく、500~800Nm/hr/mであることがより好ましい。
ノズル径、単孔吐出量並びに加熱ガスの温度及び基準流量が上記範囲である場合、糸切れの発生も少なく、ショットやフライの発生を抑えた状態で、平均繊維径が小さな繊維が得られやすい。
本発明において、ノズルに対して相対的に移動するコンベヤとノズルとの距離により、不織布の厚みを調整することができる。距離が近いほど、繊維状樹脂同士が融着した状態で捕集され、距離が遠くなるほど、繊維状樹脂の温度が下がってからコンベヤ上に捕集されるので、繊維状樹脂同士が融着せずに、綿状となる。ノズルとコンベヤとの距離は、好ましくは50~500mmであり、より好ましくは100~350mmである。
紡糸された繊維状樹脂の捕集は、コンベヤの裏側から空気を吸引しつつ行ってもよい。裏側から空気を吸引すると、フライ発生を防止できる場合がある。
捕集の工程において、コンベヤ上に、他の不織布などの多孔質材料を配置することで、メルトブロー法で製造された機能性不織布と多孔質材料が積層一体化された複合不織布を得ることができる。
機能性不織布の目付に制限はないが、安定して巻取りを製造するという観点から、5~100g/mが好ましい。空気清浄装置、マスクなどのフィルターとしては、圧力損失を過度に上昇させない点から、5~50g/mの範囲がさらに好ましい。
なお、必要に応じて、本発明の趣旨を逸脱せず、他の性能を付加する目的において、脱臭、防黴、より一層の抗菌、より一層の抗ウイルス、より一層の抗アレルゲン、防虫、殺虫、消臭、芳香、感温、保温、蓄温、蓄熱、発熱、吸熱、防水、耐水、撥水、疎水、親水、除湿、調湿、吸湿、撥油、親油、油などの吸着、及び水や揮発性薬剤などの蒸散又は徐放などの各種機能を、機能性不織布に新たに付加しても良い。
本発明の機能性不織布は、機能性不織布の性能を阻害しない範囲であれば二次加工をさらに施してもよい。二次加工としては、例えば、交絡処理、押圧加工、ギア加工、印刷加工、塗布加工、ラミネート加工、加熱処理、賦型加工、親水加工、撥水加工、プレス加工等が挙げられる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例において記載の部や百分率は断りのない限り、全て質量によるものである。実施例及び比較例で得られた(機能性)不織布の物性測定及び評価を行い、本発明の有効性の確認を行った。物性測定及び評価結果を表1に示した。なお、本発明において、特に記載のない限り、物性測定及び評価は、25℃、50%RHの条件で行った。
<目付>
(機能性)不織布を20×25cmの大きさにカットし、5枚の質量を平均し、単位面積当たりの質量(目付)を求めた。単位はg/mである。
<抗菌性の評価>
JIS L 1902:2015(繊維製品の抗菌性試験方法及び抗菌効果)に定める抗菌性試験を実施した。試験概要は以下のとおりである。
1)試験菌懸濁液を作製する。
試験菌として黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus NBRC 12732)、大腸菌(Escherichia coil NBRC 3301)の2種類を使用した。
2)試験片0.4gに、試験菌液0.2ml(0.05%の界面活性剤(Tween(登録商標)80(シグマ-アルドリッチ社製))を含む)を滴下後、37℃で18時間培養する。対照試料は標準綿布を用いた。
3)洗い出し液20mlを加えて試験片から試験菌を洗い出し、洗い出し液中の生菌数を混釈平板培養法又は発光測定法により測定する。
4)抗菌活性値の算出方法は以下のとおりである。
抗菌活性値=(対照試料の培養後生菌数の常用対数-対照試料の接種直後生菌数の常用対数)-(機能性不織布の培養後生菌数の常用対数-機能性不織布の接種直後生菌数の常用対数)
抗菌活性値が2.2以上の場合を「効果あり」と判断した。
<抗ウイルス性の評価>
JIS L 1922:2016(繊維製品の抗ウイルス性試験方法)に定める抗ウイルス試験を実施した。試験概要は以下のとおりである。
1)試験ウイルス懸濁液を作製する。
試験ウイルス種としてA型インフルエンザウイルス(H3N2)を用いた。
2)試験片0.4gに試験ウイルス液0.2mlを滴下し、25℃で2時間静置する。対照試料は標準綿布を用いた。
3)SCDLP培地20mlを加えて試験片からウイルスを洗い出し、プラーク測定法により感染価を算出する。
4)抗ウイルス活性値の算出方法は以下のとおりである。
抗ウイルス活性値=対照試料の2時間作用後の感染価常用対数-機能性不織布の感染価常用対数
抗ウイルス活性値が2.0以上の場合を「効果あり」と判断した。
<抗アレルゲン性の評価>
アレルゲン不活性化試験により評価を行った。概要は以下のとおりである。
1.薬品の調薬
(1)アレルゲン溶液の調製
精製ダニアレルゲンrDerf2(生化学工業株式会社製)をPBS(-)に溶解し、試験用アレルゲン溶液として500ng/mlとなるように調製した。
(2)抗体溶液の調製
抗rDerf2モノクロナール抗体15E11(生化学工業株式会社製)を2μg/mlの濃度となるようにPBS(-)で希釈した。
(3)標識抗体溶液の調製
西洋ワサビペルオキシダーゼ標識抗rDerf2モノクロナール抗体13A4PO(生化学工業生化学工業社製)をPBS-Tで5000倍希釈した。PBS-Tについては、0.5gのTween(登録商標)20(シグマ-アルドリッチ社製)を1000mlのPBS(-)に溶解して使用した。
(4)1%-BSA-PBS(-)の調製
0.2gのBSAを20mlのPBS(-)に溶解して使用した。
(5)0.3mg/ml-ABTS(基質溶液)の調製
3mgのABTSを10mlの0.3M-Cirate buffer(pH4.0)で溶解し、これに10μlの30%過酸化水素を添加して使用した。
2.試験方法
本試験方法は(機能性)不織布上で捕捉したアレルゲンが不活化されることの確認試験である。
(1)概要
実施例及び比較例で得た(機能性)不織布を、それぞれ2mm×4mmの大きさに裁断して検体とし、個々に試験した。検体を48ウェルプレートの底に置き、1ウェル当たり300μlのアレルゲン溶液(初期アレルゲン量:500ng/ml)を添加し、室温で2時間静置した。静置後、50μlを採取し、その中に存在するアレルゲン濃度をサンドイッチELISA法により定量した。サンドイッチELISA法の詳細は以下のとおりである。
(2)サンドイッチELISA法
1) コーティング溶液(抗体溶液、2μg/ml)50μlをELISAプレートの各ウェルに添加し、4℃で一晩静置した。
2) コーティング溶液を除去し、300μlのPBS(-)で3回洗浄後、200μlの1%-BSA-PBA(-)を添加し、室温で1時間静置した。
3) ELISAプレートを300μlのPBS-Tで3回洗浄後、検体と2時間接触させたアレルゲン溶液50μlを採取して添加し、室温で2時間静置した。
4) ELISAプレートを300μlのPBS-Tで3回洗浄後、標識抗体溶液を50μl添加して、室温で2時間静置した。
5) ELISAプレートを300μlのPBS-Tで3回洗浄後、100μlの0.3mg/ml-ABTSを添加して室温で発色させ、20~30分反応後にミキシングさせ、マイクロプレートリーダーにより405nmの吸光度を測定した。
6) 吸光度より検体接触させたアレルゲン溶液中の精製ダニアレルゲンrDerf2濃度(アレルゲン残存量:ng/ml)を算出した。
7)アレルゲン除去率算出方法は以下のとおりである。
アレルゲン除去率(%)=[1-(アレルゲン残存量)/(初期アレルゲン量)]×100
<通気性の評価(圧力損失)>
JIS B9908:2011の形式1に準じて、面風速5.3cm/秒の条件で、(機能性)不織布の上流側と下流側の差圧を圧力損失として測定した。単位はPaである。
<捕捉性能の評価(捕集効率)>
JIS B9908:2011の形式1に準じて、面風速5.3cm/秒の条件で、(機能性)不織布の上流側と下流側の粒子径0.3μm以上、5.0μm未満の大気塵粒子の粒子数をパーティクルカウンター(リオン社製、商品名KC-11)を用い測定した。上流側の測定粒子数から下流側の測定粒子数を減じ、捕捉した粒子数を求め、上流側の粒子数で除し、百分率(%)で表したものを捕集効率とした。単位は%である。
(マスターバッチ作製例1)
MFR60g/10分のポリプロピレン樹脂80部に対し、100メッシュ通過区分が95質量%以上であるタンニン酸粉体20部をタンブラー装置に入れ、36rpmの回転数で10分間混合したものを、ベントを有する二軸押出機のホッパーから投入し、タンニン酸の分解温度より低い180℃を超えないように混練する。混練中にタンニン酸が持つ水分が蒸発することにより発生する水蒸気はベントよりガス抜きを行いながら混練を行い、吐出されたストランドを水中に導入冷却し、ペレタイザーにてカット長約3mmのペレットを作製した。
当該ペレットをサンプリングし、ホットプレート上でタンニン酸の分解温度を超える240℃で溶融して引き延ばした。タンニン酸は当該温度では茶褐色にするため、タンニン酸の分散の度合いが観察できる。目視によりタンニン酸の凝集が見られる場合は、再度ホッパー内に投入し、同じ工程で混練によるタンニン酸の分散を行い、再ペレット化する。タンニン酸の凝集が見られなくなるまで、混練を繰り返し、タンニン酸が樹脂内で均質に分散したマスターバッチ(mbT1)を作製した。
(マスターバッチ作製例2)
MFR1300g/10分のポリプロピレン樹脂80部に対し、帯電促進剤としてキマソーブ944FDL(BASF社製)18部、チヌビン622SF(BASF社製)2部をポリ袋に入れて手振りで簡単に混合したものを、二軸押出機のホッパーから投入し、200℃で混練することで、帯電促進剤のマスターバッチ(mbE1)を作製した。
(実施例1~15)
一軸押出機が装備されたメルトブロー製造装置を用い、機能性不織布の作製を行った。 mbT1と希釈樹脂として表1記載のMFRのポリプロピレン樹脂とmbE1とを、表1記載の部数で、200℃で混練溶融した後、ノズル径0.2mm、ピッチ1.0mmのノズルを用い、紡糸温度200℃、表1記載の単孔吐出量、加熱ガスの温度210℃、基準流量650Nm/m、ノズルとコンベヤとの間隔150mmとなるように調整し、目付30g/mのメルトブロー法による不織布を得た。得られた不織布の平均繊維径を表1に示した。次に、表1に記載された電気伝導度の蒸留水を用いたハイドロチャージ処理によって、メルトブロー法による不織布をエレクトレット化し、機能性不織布を得た。
バッチ式のハイドロチャージ処理(HC)を具体的に記載する。
角型手抄き装置を流用した。100メッシュのステンレス製金網の上に不織布をセットし、ステンレス製金網下部が表1記載の吸引圧(陰圧)になるまで吸引ポンプにて減圧固定した後、不織布の上から蒸留水を不織布表面に表1記載の水量になるように付与した。次に、減圧固定を解除し、不織布上部に溜まった水を吸引通水させる処理を行った。続いて、不織布に残留する余剰の水を除去した。最後に、熱風乾燥装置にて表1記載の乾燥温度及び乾燥時間で乾燥して、ハイドロチャージ処理によってエレクトレット化された機能性不織布を得た。
(比較例1)
mbT1、mbE1を用いずに、希釈樹脂のみで、実施例1と同じ方法で、エレクトレット化された不織布を作製した。
(比較例2)
mbT1を用いずに、mbE1と希釈樹脂で、実施例1と同じ方法で、エレクトレット化された不織布を作製した。
(比較例3)
mbE1を用いずに、mbT1と希釈樹脂で、実施例1と同じ方法で、エレクトレット化された不織布を作製した。
(比較例4)
比較例2の不織布に、下記コロナ放電処理を行い水系溶媒に対する親和性を持たせたのち、タンニン酸(富士化学工業株式会社製、商品名:タンニン酸AL)、アクリル酸エステル系バインダー(日本エヌエスシー株式会社製、商品名:ヨドゾール(登録商標)AD81B)を固形分比70:20となるよう水系分散液を作製し、タンニン酸の配合量が1質量%となるように分散液を含浸させた後、120℃で乾燥させることで、タンニン酸が添着された不織布を作製した。次に、ハイドロチャージ処理によってタンニン酸が添着された不織布をエレクトレット化し、機能性不織布を得た。
(コロナ放電処理)
8mmピッチで千鳥配列の針状電極を用い、針状電極とアースである金属板との距離は20mmとし、金属板の上に不織布を配置し、印加電圧はプラス20KV/cmで、2秒間コロナ放電処理を行った。
(比較例5)
実施例1で作製したエレクトレット加工前のメルトブロー法による不織布を、上記コロナ放電処理によってエレクトレット化し、機能性不織布を得た。
実施例においては、圧力損失の上昇を伴うことなく、抗菌性、抗ウイルス性、抗アレルゲン性を有し、高い捕集効率をも兼ね備える機能性不織布が得られた。また、実施例1、12~15の比較から、平均繊維径が1~5μmである実施例1、13及び14では、実施例12及び15と比較して、高捕集効率の機能性不織布を得られることが確認された。比較例1は、繊維がタンニン酸及び帯電促進剤を含まないため、抗菌性、抗ウイルス性、抗アレルゲン性が低く、捕集効率も低かった。比較例2は、繊維がタンニン酸を含まないため、抗菌性、抗ウイルス性、アレルゲン性が発現されず、比較例3は、繊維が帯電促進剤を含まないため、捕集効率が低かった。比較例4は、タンニン酸がバインダーにより添着されているため、タンニン酸が脱落し、抗菌性等が発現されなかった。実施例1と比較例5の比較から、比較例5は、コロナ放電処理によってエレクトレット化されているため、実施例1よりも捕集効率が低かった。
本発明の機能性不織布は、抗菌性、抗ウイルス性及び抗アレルゲン性が要求される、フィルター、マスク、除菌ワイパー、カーテン、壁紙、衣料、生活雑貨、医療分野、産業分野などの分野で使用される繊維製品として利用することができる。特に高捕集効率が要求される空調機、空気清浄機、掃除機、除湿機、乾燥機、加湿機、換気扇、扇風機、熱交換装置等の各種空気処理装置、自然給排気のための外気流入口(通気口や窓など)のフィルター用途として利用することができる。
本発明の機能性不織布は、平面的なシート状としてだけでなく、プリーツ加工、コルゲート加工、ハニカム加工、立体成型加工など組み合わせることで多様な製品を作ることができる。

Claims (2)

  1. 樹脂と加水分解型タンニン及び帯電を促進する成分とを含む繊維を含有し、ハイドロチャージ処理によってエレクトレット化されていることを特徴とする機能性不織布。
  2. 樹脂と加水分解型タンニン及び帯電を促進する成分とを含む繊維の平均繊維径が1~5μmである請求項1記載の機能性不織布。
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