JP2023118516A - 多結晶SiC基板および半導体基板 - Google Patents
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Abstract
【課題】 単結晶SiCと接合する接合対象面の極性面が少ないことで単結晶SiCとの接合欠陥を抑制することのできる、単結晶SiCとの接合に適した多結晶SiC基板および半導体基板を提供する。【解決手段】 単結晶SiC基板と接合して半導体基板を形成する支持基板用の多結晶SiC基板であって、前記単結晶SiC基板と接合する接合対象面における極性面の面積比率が3.0%以下である、多結晶SiC基板。【選択図】図1
Description
本発明は、多結晶SiC基板および半導体基板に関する。
炭化シリコン(SiC)は、2.2~3.3eVの広い禁制帯幅を有するワイドバンドギャップ半導体であり、その優れた物理的、化学的特性から、耐環境性半導体材料として研究開発が行われている。特に近年、SiCは、高耐圧・高出力電子デバイス、高周波電子デバイス、青色から紫外にかけての短波長光デバイス向けの材料として注目されており、研究開発は盛んになっている。ところが、SiCは、良質な大口径単結晶の製造が難しく、これまでSiCデバイスの実用化を妨げてきた。
この問題点を解決するために、SiC単結晶基板を種結晶として用いて昇華再結晶を行う改良型のレーリー法が開発されてきた。この改良レーリー法を用いれば、SiC単結晶の結晶多形(4H-SiC、6H-SiC、15R-SiC等)や、形状、キャリア型、及び濃度を制御しながらSiC単結晶を成長させることができる。この改良レーリー法の最適化によって、結晶欠陥密度は大きく減少し、その基板上へショットキーダイオード(SBD)や電界効果トランジスタ(MOSFET)などの電子デバイスを形成することが実現されるようになってきた。
しかしながら、SiC単結晶基板を種結晶とする改良型のレーリー法では、単結晶SiC結晶成長速度が低いこと、およびSiC単結晶インゴットを主として切断及び研磨からなる工程を経てウエハ状に加工する際の加工費用が高いことに起因して、単結晶SiC基板の製造コストは高い。この製造コストの高さも、SiCデバイスの実用化を妨げている要因であり、半導体デバイス用途、とくに高耐圧・高出力電子素子用途のSiC基板を安価に提供できる技術の開発が強く望まれていた。
そこで、デバイス形成層部のみ品質の良い単結晶SiCを用いてそれを支持基板(デバイス製造工程に耐えうる強度・耐熱性・清浄度を持つ材料:例えば、多結晶SiC)の接合対象面に、接合界面における酸化膜の形成を伴わない接合手法にて固定して接合基板とすることにより、低コスト(支持基板部)と高品質(SiC部)を兼ね備えた半導体基板を製造する技術が提供されている(例えば、特許文献1を参照)。
接合工程においては多結晶SiCの接合対象面の表面粗さが重要視される。表面粗さ、つまり表面の微細な凹凸が大きくなると、多結晶SiC基板と単結晶SiC基板が充分に密着せず接合することができないためである。あるいは接合できたとしても、多結晶SiC基板と単結晶SiC基板の接合界面に微細な隙間が生じ、多数の欠陥(接合欠陥)が発生する。
接合欠陥が発生すると、後のエピタキシャル成膜工程にて単結晶SiC基板上に単結晶SiC層を成膜する過程において、接合欠陥を起点にキラー欠陥が生じる可能性が考えられる。そのため、多数の接合欠陥が発生しないよう、多結晶SiC基板の接合対象面の表面粗さを小さくすることが、接合基板の品質向上には必要である。
多結晶SiC基板は、例えばカーボンなどで形成された下地基材上に化学気相成長法(CVD:Chemical Vapor Deposition)によって多結晶SiCを成長させた後に下地基材を除去する手法を用いて形成される。
単結晶SiC基板と多結晶SiC基板とを接合する接合工程に用いる多結晶SiC基板の接合対象面の算術表面粗さRaは、0.1~0.5nm程度が求められる。このような表面粗さとするために、接合対象面を例えばCMP(化学的機械研磨)してCMP研磨面を得るが、接合欠陥を発生させないためには、研磨方法もさることながら、多結晶SiC基板の物性(結晶粒サイズ、結晶構造、配向)も重要となる。単結晶SiCは言い換えれば同一方位を向いた一つの大きな結晶粒であるため、CMPによって単結晶SiC基板の研磨対象面を均一に研磨できることから、多結晶SiC基板と比べて表面粗さの小さい高精度な研磨面を容易に得ることができる。その一方で、多結晶SiCは様々な方位を向いた小さな結晶粒の集合体であるため、CMPした際の研磨対象面の研磨速度は各結晶粒によって異なることから各結晶粒によって摩耗量が異なっており、結果として研磨対象面は粒界に沿って無数の凹凸が発生しやすく表面粗さの小さい研磨面を得ることが単結晶SiC基板と比べて難しい。
特に、研磨対象面においてSi終端面またはC終端面が露出する面(極性面)は、その他の方位面に比べてCMPによる研磨速度の差が大きく、粒界に沿った凹凸が発生しやすくなる。極性面はSiCの結晶構造によって異なるが、具体的には3C(111)や6H(0001)が極性面として挙げられる。例えばCVD法によって成膜された多結晶SiCは、その成膜条件によって配向性が変化するが、例えばほぼ無配向な研磨対象面の中に局所的に極性面となる結晶粒が存在すると、その部分はSi終端面やC終端面に従って凹凸が発生してしまう。なお研磨速度の変化は特異性があり、同一の条件で研磨したとしてもSi終端面の場合には研磨速度が遅く摩耗量が少ないため出っ張って凸状面となり、C終端面の場合には研磨速度が速く摩耗量が多いためへこみが生じて凹状面となる。
そこで、上記の課題を解決するべく、本発明は、単結晶SiCと接合する接合対象面の極性面が少ないことで単結晶SiCとの接合欠陥を抑制することのできる、単結晶SiCとの接合に適した多結晶SiC基板および半導体基板を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するべく、本発明の多結晶SiC基板は、単結晶SiC基板と接合して半導体基板を形成する支持基板用の多結晶SiC基板であって、前記単結晶SiC基板と接合する接合対象面における極性面の面積比率が3.0%以下である。
前記接合対象面における結晶粒子の面積加重平均粒子径が10μm以下であってもよい。
前記接合対象面の算術表面粗さRaが0.5nm以下であってもよい。
また、上記課題を解決するため、本発明の半導体基板は、上記本発明の多結晶SiC基板と、単結晶SiC基板と、が接合した半導体基板であって、前記多結晶SiC基板と前記単結晶SiC基板との接合界面における接合欠陥の数が1個/cm2以下である。
本発明であれば、単結晶SiCと接合する接合対象面の極性面が少ないことで単結晶SiCとの接合欠陥を抑制することのできる、単結晶SiCとの接合に適した多結晶SiC基板および半導体基板を提供することができる。
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施形態の一例について説明する。
[多結晶SiC基板100]
図1に多結晶SiC基板100の概略斜視図を示し、図2に半導体基板300の概略図を示す。本発明の多結晶SiC基板100は、単結晶SiC基板200と接合して、接合基板である半導体基板300を形成する支持基板用の多結晶SiC基板である。
図1に多結晶SiC基板100の概略斜視図を示し、図2に半導体基板300の概略図を示す。本発明の多結晶SiC基板100は、単結晶SiC基板200と接合して、接合基板である半導体基板300を形成する支持基板用の多結晶SiC基板である。
多結晶SiC基板100は、例えば厚さが350μm程度の円盤状に形成され、多結晶SiCは、4H-SiC結晶、6H-SiC結晶および3C-SiC結晶の何れか、あるいはこれらの混合物で構成されている。
(接合対象面110における極性面の面積比率)
多結晶SiC基板100は、単結晶SiC基板200と接合する接合面となる接合対象面110を備える。接合対象面110における極性面の面積比率が、3.0%以下であることで、接合対象面110の平滑性が良好に保たれ、後述する1枚の半導体基板300あたりの接合界面310における接合欠陥の数が1個/cm2以下に維持することができる。極性面の面積比率が3.0%より大きいと、接合対象面110の平滑性が低下して、接合界面310の接合欠陥の数が増える傾向にある。極性面の面積比率の下限値は0%であってもよいが、実際には0.3%辺りが下限値となる。
多結晶SiC基板100は、単結晶SiC基板200と接合する接合面となる接合対象面110を備える。接合対象面110における極性面の面積比率が、3.0%以下であることで、接合対象面110の平滑性が良好に保たれ、後述する1枚の半導体基板300あたりの接合界面310における接合欠陥の数が1個/cm2以下に維持することができる。極性面の面積比率が3.0%より大きいと、接合対象面110の平滑性が低下して、接合界面310の接合欠陥の数が増える傾向にある。極性面の面積比率の下限値は0%であってもよいが、実際には0.3%辺りが下限値となる。
極性面の面積比率は、結晶方位測定装置(SEM-EBSD)を用いて算出することができる。その手順としては、まず走査電子顕微鏡(SEM)で、ピクセルで構成される接合対象面110の反射電子像を取得し、さらにフェーズマップによってSiC-3C、SiC-2H、SiC-4H、SiC-6H等の結晶系に層別を行った。さらに結晶方位マップによって極性面と認識された領域を求め、これによって極性面の面積比率を算出した。また、極性面と認識された領域の数値化には、視野内のピクセル数を用いた。下記式(1)に示すように、各結晶系で極性面と判定されたピクセル数を合算してこれを分子とし、視野内の総ピクセル数を分母として100を乗じた数値が極性面の面積比率となる。
[式1]
極性面の面積比率=極性面と認識されたピクセル数/視野内の総ピクセル数 (1)
極性面の面積比率=極性面と認識されたピクセル数/視野内の総ピクセル数 (1)
(面積加重平均粒子径)
接合対象面110における結晶粒子の面積加重平均粒子径が10μm以下である。面積加重平均粒子径が10μm以下であれば、極性面1つあたりの面積が小さくなり、接合対象面110の平滑性が良好に保たれ、後述する1枚の半導体基板300あたりの接合界面310における接合欠陥の数が1個/cm2以下に維持することができる。面積加重平均粒子径が10μmよりも大きいと、極性面1つあたりの面積が大きくなり、接合対象面110の平滑性が低下して、接合界面310の接合欠陥の数が増える傾向にある。面積加重平均粒子径の下限値は特に限定されないが、実際には0.1μm辺りが下限値となる。
接合対象面110における結晶粒子の面積加重平均粒子径が10μm以下である。面積加重平均粒子径が10μm以下であれば、極性面1つあたりの面積が小さくなり、接合対象面110の平滑性が良好に保たれ、後述する1枚の半導体基板300あたりの接合界面310における接合欠陥の数が1個/cm2以下に維持することができる。面積加重平均粒子径が10μmよりも大きいと、極性面1つあたりの面積が大きくなり、接合対象面110の平滑性が低下して、接合界面310の接合欠陥の数が増える傾向にある。面積加重平均粒子径の下限値は特に限定されないが、実際には0.1μm辺りが下限値となる。
面積加重平均粒子径は、結晶方位測定装置(SEM-EBSD)を用いて算出することができる。その手順としては、まず走査電子顕微鏡(SEM)で、ピクセルで構成される接合対象面110の反射電子像を取得し、反射電子像を基に方位差10°以上を粒界と定義して結晶粒マップを作成する。次に、各結晶粒を真円換算し結晶粒直径のデータを取得する。さらに得られた結晶粒直径のデータを用い、視野の面積との面積比による加重平均を求め、これを面積加重平均粒子径と定義する。
(接合対象面の算術表面粗さRa)
接合対象面110の算術表面粗さRaが0.5nm以下である。算術表面粗さRaが0.5nm以下であることで、接合対象面110の平滑性が良好に保たれ、後述する1枚の半導体基板300あたりの接合界面310における接合欠陥の数が1個/cm2以下に維持することができる。算術表面粗さRaが0.5nmよりも大きいと、接合対象面110の平滑性が低下して、接合界面310の接合欠陥の数が増える傾向にある。算術表面粗さRaの下限値は特に限定されないが、実際には0.1nm辺りが下限値となる。
接合対象面110の算術表面粗さRaが0.5nm以下である。算術表面粗さRaが0.5nm以下であることで、接合対象面110の平滑性が良好に保たれ、後述する1枚の半導体基板300あたりの接合界面310における接合欠陥の数が1個/cm2以下に維持することができる。算術表面粗さRaが0.5nmよりも大きいと、接合対象面110の平滑性が低下して、接合界面310の接合欠陥の数が増える傾向にある。算術表面粗さRaの下限値は特に限定されないが、実際には0.1nm辺りが下限値となる。
算術表面粗さRaは、SiCウエハ欠陥検査/レビュー装置を用いて計測することができる。このような装置としては、例えばLasertec社製SICA88が挙げられる。
[半導体基板300]
次に、本発明の半導体基板300について説明する。半導体基板300は、上記の本発明の多結晶SiC基板100と、単結晶SiC基板200と、が接合した半導体基板である。多結晶SiC基板100の接合対象面110と、単結晶SiC基板200の接合対象面210とが接合することで、半導体基板300が形成される。
次に、本発明の半導体基板300について説明する。半導体基板300は、上記の本発明の多結晶SiC基板100と、単結晶SiC基板200と、が接合した半導体基板である。多結晶SiC基板100の接合対象面110と、単結晶SiC基板200の接合対象面210とが接合することで、半導体基板300が形成される。
(単結晶SiC基板200)
単結晶SiC基板200は、単結晶SiCで、例えば厚さが1μm程度の円盤状に形成される。なお、単結晶SiC基板200の単結晶SiCは、4H-SiC結晶、6H-SiC結晶および3C-SiC結晶の何れか、あるいはその混合物で構成されている。
単結晶SiC基板200は、単結晶SiCで、例えば厚さが1μm程度の円盤状に形成される。なお、単結晶SiC基板200の単結晶SiCは、4H-SiC結晶、6H-SiC結晶および3C-SiC結晶の何れか、あるいはその混合物で構成されている。
(接合欠陥の数)
半導体基板300における多結晶SiC基板100の接合対象面110と、単結晶SiC基板200の接合対象面210とが接合した界面を接合界面310とすると、接合界面310において接合対象面110と接合対象面210との間は隙間が全く無く完全に接合していることが好ましい。接合界面310に隙間があることで接合していない部分、すなわちボイドや未転写欠陥等の接合欠陥がある場合も許容されるが、接合欠陥のある部分はSBDやMOSFET等の電子デバイスの材料として用いることができないため、1枚の半導体基板300あたりの接合界面310における接合欠陥の数が1個/cm2以下であることが好ましい。
半導体基板300における多結晶SiC基板100の接合対象面110と、単結晶SiC基板200の接合対象面210とが接合した界面を接合界面310とすると、接合界面310において接合対象面110と接合対象面210との間は隙間が全く無く完全に接合していることが好ましい。接合界面310に隙間があることで接合していない部分、すなわちボイドや未転写欠陥等の接合欠陥がある場合も許容されるが、接合欠陥のある部分はSBDやMOSFET等の電子デバイスの材料として用いることができないため、1枚の半導体基板300あたりの接合界面310における接合欠陥の数が1個/cm2以下であることが好ましい。
接合界面310における接合欠陥は、SiCウエハ欠陥検査/レビュー装置を用いて計測することができる。このような装置としては、例えばLasertec社製SICA88が挙げられる。
[多結晶SiC基板100および半導体基板300の製造方法]
以下、多結晶SiC基板100および半導体基板300の製造方法の一例について説明する。図3は、多結晶SiC基板100および半導体基板300の製造方法を示すフローチャートである。図4は、多結晶SiC基板100の製造方法を示す断面図である。図5は、下地基材であるカーボン基材21上に成長した多結晶SiC22を示す断面図である。また、図6は、バッチ式成長炉30の概略構成を示す図である。
以下、多結晶SiC基板100および半導体基板300の製造方法の一例について説明する。図3は、多結晶SiC基板100および半導体基板300の製造方法を示すフローチャートである。図4は、多結晶SiC基板100の製造方法を示す断面図である。図5は、下地基材であるカーボン基材21上に成長した多結晶SiC22を示す断面図である。また、図6は、バッチ式成長炉30の概略構成を示す図である。
図3に示すように、多結晶SiC基板100および半導体基板300の製造方法では、まずステップS10にて、下地基材作製工程が行われる。本実施形態の下地基材とは、多結晶SiCを成長させるための下地となる材料のことをいう。下地基材作製工程では、まず、図5に示すように、カーボンで円盤状に形成されたカーボン基材21の表面に、化学気相成長法(CVD:Chemical Vapor Deposition)により、例えば2mmの厚さの多結晶SiC22を成長させる。Siの原料ガスとしては、テトラクロロシラン、トリクロロシランおよびジクロルシランが挙げられる。Cの原料ガスとしては、エタン、プロパンおよびアセチレンが挙げられる。また、原料ガスとしてテトラメチルシラン等の単一ガスを用いてもよい。この化学気相成長法における成長温度は、例えば1400℃である。多結晶SiC22の成長後に、カーボン基材21の表面に多結晶SiC22が形成された円盤状部材の外周を研削する。その後、この円盤状部材を1000℃の大気雰囲気で加熱する。これにより、カーボン基材21が大気雰囲気で燃焼し、多結晶SiC22からカーボン基材21が除去される。次に、多結晶SiC22の成長最表面22aを例えば0.2mm研削して平坦化した後に、多結晶SiC22におけるカーボン基材側の面22bを例えば1.45mm研削する。これにより、厚さが0.35mmの下地基材11が得られる(図4の下地基材11を参照)。
次に、ステップS20にて、SiC成長工程が行われる。SiC成長工程では、まず、図6に示すように、下地基材11を成長炉30に装填する。下地基材11を装填した後に、化学気相成長法により、例えば400μmの厚さの多結晶SiC12を成長させる。成長炉を用いた化学気相成長法であるため、図4に示すように、下地基材11の表面と裏面に多結晶SiC12が成長する。Siの原料ガスとしては、テトラクロロシラン、トリクロロシランおよびジクロルシランが挙げられる。Cの原料ガスとしては、エタン、プロパンおよびアセチレンが挙げられる。また、原料ガスとしてテトラメチルシランなどの単一ガスを用いてもよい。この化学気相成長法における成長温度は例えば1400℃である。
次に、ステップS30にて、剥離工程が行われる。剥離工程では、図4に示すように、多結晶SiC12の表面から例えば深さ400μmの位置にレーザ光LS(波長532nm)を照射し、SiCを昇華させる。そして、下地基材11において多結晶SiC12が接触する接触面と平行な面に沿ってレーザ光LSを2次元走査することにより、表面から400μmの位置に切断面を形成し、多結晶SiC12を下地基材11から剥離する。
次に、ステップS40にて、表面研磨工程が行われる。表面研磨工程では、まず高精度研削によって、つぎにCMP研磨によって、多結晶SiC12の表面に形成された非晶質層を除去するとともに、多結晶SiC12の表面を平滑にする。表面研磨工程が行われた後に得られる多結晶SiC12が多結晶SiC基板100として用いられる。なお、ステップS30において、下地基材11の表面に形成された非晶質層は、成長炉30内の昇温過程で供給される水素ガスによって除去される。すなわち、第2の下地基材11は、多結晶SiC基板100を製造するために再利用することが可能である。
次に、ステップS50にて、貼り合せ工程が行われる。貼り合せ工程では、まず、事前に準備された単結晶SiC基板の表面側から単結晶SiC基板の表面に向けて、単結晶SiC基板200の厚さに応じて予め設定された注入エネルギーの水素イオンを注入する。これにより、単結晶SiC基板には、単結晶SiC基板の表面から、注入エネルギーに応じた所定の深さに、イオン注入層が形成される。その後、ステップS40で製造された多結晶SiC12の表面に表面活性化手法を用いて、単結晶SiC基板の表面を貼り合わせる。そして、互いに貼り合わされた状態の多結晶SiC12および単結晶SiC基板を加熱する。これにより、上記のイオン注入層で単結晶SiC基板が破断し、多結晶SiC基板100の表面に単結晶SiC基板200が貼り合わされた状態で、単結晶SiC基板200が単結晶SiC基板から剥離し、半導体基板300が得られる。
以下に、本発明の実施例を示してさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
異なる条件で成膜されたCVD成膜製の6インチ多結晶SiC基板A、B、Cを入手し、それぞれ多結晶SiC基板に対してSEM-EBSDによる解析、研磨面の面粗さ、および半導体基板の接合欠陥の数を調査した。
SEM-EBSDの解析に際しては、SEMはCarl Zeiss社製ULTRA55、EBSDはHKL社製Channel5を用いた。
多結晶SiC基板の接合対象面を、金属定盤とダイヤ微粒子粉の組み合わせにて高精度研削を行い、最後にCMP研磨にて表面状態を仕上げて、研磨面とした。
研磨後の多結晶SiC基板の接合対象面の面粗さ、および半導体基板における多結晶SiC基板と単結晶SiC基板との接合界面の接合欠陥の数の測定に際しては、SiCウエハ欠陥検査/レビュー装置(Lasertec社製SICA88)を用いた。
単結晶SiCの接合対象面はCMP研磨によって表面粗さRa=0.1nm前後に仕上げた。Ra=0.1nmは、現実的にSiC単結晶を研磨して得らえる表面粗さの下限値であり、またSiCの代表的な原子間距離が0.188nmであることから、接合対象面に原子レベルの段差がほとんどないことを表している。このような表面性状に整えた基板を用いることにより、単結晶SiC基板の表面粗さに起因する接合欠陥の発生を防止した。
接合方法について説明する。接合工程は主に照射工程と接触工程に分けられる。まず照射工程では多結晶SiCの接合対象面、および、単結晶SiCの接合対象面に粒子線を照射する。粒子線については、例えば高速原子ビーム(FAB:Fast Atom Beam)がある。粒子線は多結晶SiCおよび単結晶SiCの接合対象面の全面に照射される。これにより、接合対象面の酸化膜や吸着層を除去して結合手を表出させることができる。これを活性状態と呼ぶ。また照射工程は真空中での処理であるため、接合対象面は、酸化等されず活性状態を保持することができる。次に接触工程では、多結晶SiCおよび単結晶SiCの接合対象面を真空中で接触させる。これにより、活性状態の表面に存在する結合手同士が結びつき、多結晶SiCと単結晶SiCを接合することができる。なお、照射工程、接触工程の実施に際しては三菱重工工作機械(株)製常温接合装置MWV-06/08-AX-FABを用いた。
各多結晶SiC基板A、B、Cの接合対象面における極性面の面積比率、結晶粒子の面積加重平均粒子径、算術表面粗さRa、および半導体基板の接合欠陥の数を表1にまとめた。
極性面の面積比率、および面積加重平均粒子径が大きくなるに従い、粒界に沿った凹凸が大きくなり、算術表面粗さRaが悪化する傾向が確認できた。特に極性面の面積比率が3.0%以上、かつ、面積加重平均粒子径が10.0μm以上となると、算術表面粗さRaが顕著に悪化し、接合欠陥数が増加することが確認できた。
以上より、本発明であれば、単結晶SiCと接合する接合対象面の極性面が少ないことで単結晶SiCとの接合欠陥を抑制することのできる、単結晶SiCとの接合に適した多結晶SiC基板および半導体基板を提供することができるため、産業上有用である。
11…下地基材、12、22…多結晶SiC、21…カーボン基材、100…多結晶SiC基板、110…接合対象面、200…単結晶SiC基板、210…接合対象面、300…半導体基板、310…接合界面
Claims (4)
- 単結晶SiC基板と接合して半導体基板を形成する支持基板用の多結晶SiC基板であって、
前記単結晶SiC基板と接合する接合対象面における極性面の面積比率が3.0%以下である、多結晶SiC基板。 - 前記接合対象面における結晶粒子の面積加重平均粒子径が10μm以下である、請求項1に記載の多結晶SiC基板。
- 前記接合対象面の算術表面粗さRaが0.5nm以下である、請求項1または2に記載の多結晶SiC基板。
- 請求項1~3のいずれかに記載の多結晶SiC基板と、
単結晶SiC基板と、が接合した半導体基板であって、
前記多結晶SiC基板と前記単結晶SiC基板との接合界面における接合欠陥の数が1個/cm2以下である、半導体基板。
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