JP2023114182A - 高炉の操業方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】アンモニアガスによる炭素削減効果をより高めることができる高炉の操業方法を提供する。【解決手段】上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、液体アンモニアを高炉まで輸送し、液体アンモニアを気化させてアンモニアガスとし、アンモニアガスを熱分解させて窒素ガス及び水素ガスの混合ガスとして高炉の羽口へ吹き込むことを特徴とする、高炉の操業方法が提供される。この観点によれば、アンモニアガスによる炭素削減効果をより高めることができる。【選択図】なし
Description
本発明は高炉の操業方法に関する。
鉄鋼業においては、高炉法が銑鉄製造工程の主流を担っている。高炉法においては、高炉の炉頂から高炉用鉄系原料(酸化鉄を含む原料。主として、焼結鉱。以下、単に「鉄系原料」とも称する)及びコークスを高炉内に交互かつ層状に装入する一方で、高炉下部の羽口から熱風を高炉内に吹き込む。熱風は、熱風とともに吹き込まれる微粉炭、及び、高炉内のコークスと反応することで、高炉内で高温の還元ガス(ここでは主としてCOガス)を発生させる。すなわち、熱風は、高炉内でコークス及び微粉炭をガス化させる。還元ガスは、高炉内を上昇し、鉄系原料を加熱しながら還元する。鉄系原料は、高炉内を降下する一方で、還元ガスにより加熱及び還元される。その後、鉄系原料は溶融し、コークスによってさらに還元されながら高炉内を滴下する。鉄系原料は、最終的には炭素を5質量%弱含む溶銑(銑鉄)として炉床部に溜められる。炉床部の溶銑は、出銑口から取り出され、次の製鋼プロセスに供される。したがって、高炉法では、コークス及び微粉炭等の炭材を還元材として使用する。
ところで、近年、地球温暖化が社会問題になっており、その対策として温室効果ガスの一つである二酸化炭素(CO2ガス)の排出量削減が叫ばれている。上述したように、高炉法では、還元材として炭材を使用して大量の銑鉄を製造するので、大量のCO2を発生する。したがって、鉄鋼業はCO2ガス排出量において主要な産業のひとつとなっており、その社会的要請に応えねばならない。具体的には、高炉操業での更なる還元材比(溶銑1トンあたりの還元材使用量)の削減が急務となっている。なお、還元材比とは、具体的には、溶銑1トンを製造するのに要したコークス及び微粉炭の合計質量をいう。
還元材は炉内で熱となって装入物を昇温させる役割と、炉内の鉄系原料を還元する役割があり、還元材比を低減させるためには炉内の還元効率を上げる必要がある。炉内の還元反応は様々な反応式で表記することができる。これらの還元反応のうち、コークスによる直接還元反応(反応式:FeO+C⇒Fe+CO)は大きな吸熱を伴う吸熱反応である。したがって、直接還元反応を極力発生させないことが還元材比の低減において重要となる。直接還元反応を発生させないようにすれば、直接還元反応に要するコークス、及び熱源として使用される還元材の使用量を低減することができるからである。この直接還元反応は高炉炉下部で生じる反応であるため、鉄系原料が炉下部に至るまでにCO、H2等の還元ガスで鉄系原料を十分に還元することができれば、直接還元反応の対象となる鉄系原料を減らすことができる。
上記課題を解決するための従来技術として、羽口から熱風と共に炭素を含む還元ガス(COG、LPG、メタンガス等)を吹き込むことで、炉内の還元ガスポテンシャルを向上させる技術が知られている。この技術では、羽口から吹き込まれる還元ガス中の炭素が高炉内でCOガスとなり、鉄系原料を還元する。これにより、直接還元反応の対象となる鉄系原料を減らすことができる。
さらに、近年では、特許文献1、2に開示されるように、液体アンモニアを還元ガスの原料とする技術が知られている。特許文献1、2に開示された技術では、液体アンモニアを気化してアンモニアガスとし、生成したアンモニアガスを羽口から熱風と共に吹き込む。アンモニアガスは高炉内で熱分解されて窒素ガス及び水素ガスの混合ガスとなり、水素ガスが高炉内の鉄系原料を還元する。アンモニアガスを液体とすることで体積を大幅に減少させることができる。したがって、アンモニアガスを液体の状態で大量かつ容易に高炉に搬送することができる。また、アンモニアガスは工業的に大量生産できるため、所要ガス量の多い高炉操業への適用も比較的容易と考えられる。
本発明者らはこのアンモニアガスの特性に着目し、アンモニアガスを高炉炉内へ吹き込む検討を実施した。その結果、アンモニアガスをそのまま高炉炉内に入れた場合、羽口先において多量の分解熱を要することが判明した。即ち、アンモニアガスの熱分解反応は吸熱反応となる。したがって、羽口先での操業設計条件が厳しくなり(例えば酸素富化率を大幅に高める等)、抜本的な炭素量削減が望めないという問題があることが判明した。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、アンモニアガスによる炭素削減効果をより高めることができる高炉の操業方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、液体アンモニアを高炉まで輸送し、液体アンモニアを気化させてアンモニアガスとし、アンモニアガスを熱分解して窒素ガス及び水素ガスを含む混合ガスを生成し、前記混合ガスを高炉の羽口へ吹き込むことを特徴とする、高炉の操業方法が提供される。
ここで、アンモニアガスを400℃以上まで加熱することで、アンモニアガスを熱分解してもよい。
また、混合ガスの吹込み量は300Nm3/t未満であり、混合ガスの吹込み量が100Nm3/t以下の場合、アンモニアガスの熱分解率は0~100%であり、混合ガスの吹込み量が100Nm3/t超200Nm3/t以下の場合、アンモニアガスの熱分解率は80~100%であり、混合ガスの吹込み量が200Nm3/t超300Nm3/t未満の場合、アンモニアガスの熱分解率は90~100%であってもよい。
また、混合ガスの吹込み量は300Nm3/t以上であり、混合ガスの羽口への吹込み温度が400℃以上600℃未満の場合、アンモニアガスの熱分解率は90~100%であり、混合ガスの羽口への吹込み温度が600℃以上の場合、アンモニアガスの熱分解率は80~100%であってもよい。
本発明の上記観点によれば、アンモニアガスによる炭素削減効果をより高めることができる。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の実施形態において、「~」を用いて表される数値限定範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。「超」または「未満」と示す数値は、その値が数値範囲に含まれない。また、単位の/tは溶銑1トン当たりの値を示す。
<1.本発明者らによる検討>
(1-1.全水素投入量と高炉における炭素削減効果)
まず、本発明者らによる検討について説明する。本発明者らは、まず、水素系還元ガス(水素原子を含む還元ガス)吹込みが高炉における炭素削減効果に及ぼす影響について検討した。本発明者らは、高炉操業シミュレーションを用いて以下の各検討を行った。高炉操業シミュレーションには、例えばKouji TAKATANI、Takanobu INADA、Yutaka UJISAWA、「Three-dimensional Dynamic Simulator for Blast Furnace」、ISIJ International、Vol.39(1999)、No.1、p.15-22などに示される、所謂「高炉数学モデル」を用いることができる。この高炉数学モデルは、概略的には、高炉の内部領域を高さ方向、径方向、周方向に分割することで複数のメッシュ(小領域)を規定し、各メッシュの挙動をシミュレーションするものである。
(1-1.全水素投入量と高炉における炭素削減効果)
まず、本発明者らによる検討について説明する。本発明者らは、まず、水素系還元ガス(水素原子を含む還元ガス)吹込みが高炉における炭素削減効果に及ぼす影響について検討した。本発明者らは、高炉操業シミュレーションを用いて以下の各検討を行った。高炉操業シミュレーションには、例えばKouji TAKATANI、Takanobu INADA、Yutaka UJISAWA、「Three-dimensional Dynamic Simulator for Blast Furnace」、ISIJ International、Vol.39(1999)、No.1、p.15-22などに示される、所謂「高炉数学モデル」を用いることができる。この高炉数学モデルは、概略的には、高炉の内部領域を高さ方向、径方向、周方向に分割することで複数のメッシュ(小領域)を規定し、各メッシュの挙動をシミュレーションするものである。
計算条件を表1及び表2に示す。表1は図1のデータを得る際に使用した計算条件であり、表2は図2及び図3のデータを得る際に使用した計算条件である。鉄系原料はすべて焼結鉱とした。また、焼結鉱の組成はT-Fe:58.5%、FeO:7.5%、C/S:1.9、Al2O3:1.7%とした。また、コークスについては、C:87.2%、Ash:12.6%を使用する場合を想定した(%はいずれも質量%を表す)。また、還元ガス吹込み時における羽口前温度及び溶銑温度が極力一定になるよう、熱風中の空気の送風量及び酸素富化率を調整した。ここで、酸素富化率とは、概略的には、熱風の総体積に対する熱風中の酸素の体積割合であり、酸素富化率(%)={(空気の送風量[Nm3/min]×0.21+酸素富化量[Nm3/min])/(空気の送風量[Nm3/min]+酸素富化量[Nm3/min])}×100-21であらわされる。
図1は検討の結果を示す。具体的には、横軸は全水素投入量(Nm3/t)であり、縦軸は高炉における炭素削減効果(%)を示す。全水素投入量は、溶銑1トン当たりに高炉内に投入した水素ガス投入量である。水素ガス以外の還元ガスを高炉内に投入した場合、当該還元ガスの投入量を水素ガスの投入量に換算した値となる。縦軸は以下の計算で得られる。まず、以下の(1)式で示されるInput Cを算出する。
Input C(kg/t)=コークス比(kg/t)×コークス中の炭素割合(質量%)+微粉炭比(kg/t)×微粉炭中の炭素割合(質量%)+還元ガス使用量原単位(Nm3/t)×還元ガス中の炭素割合(kg/Nm3) (1)
つぎに、ベース操業(還元ガスを使用しない操業)のInput CをA、各種還元ガスを使用した際のInput CをBとしたとき、縦軸の値(Input △C)を以下の(2)式で定義する。
Input △C=(A-B)/A×100(%) (2)
図1中の点P1はベース操業の全水素投入量と高炉における炭素削減効果との相関を示し、点P2はコークス炉ガス(COG)を還元ガスとして使用した場合の全水素投入量と高炉における炭素削減効果との相関を示す。点P1の全水素投入量がプラスの値となっているのは、熱風中に微粉炭(水素を含有する)が含まれているからである。点P3は天然ガス(NG)を還元ガスとして使用した場合の全水素投入量と高炉における炭素削減効果との相関を示し、点P4は純水素ガスを還元ガスとして使用した場合の全水素投入量と高炉における炭素削減効果との相関を示す。点P5はアンモニアガスを還元ガスとして使用した場合の全水素投入量と高炉における炭素削減効果との相関を示す。こういった横軸で結果を整理することで、どのガス種が炭素削減に効果的なのかわかる。炭素削減効果が最も高い水素系還元ガスは純水素ガスであり、アンモニアガスの炭素削減効果は乏しいことがわかる。
アンモニアガス吹込みの炭素削減効果が乏しい理由として、(1)アンモニアガスの分解熱が非常に高く、羽口先で炭素を燃焼させて熱補填させる必要がある点、(2)分解熱が高く羽口先温度が低下してしまうため、酸素富化率を上げた諸元設計をする必要が生じる。その結果、熱流比が上がって(言い換えれば、高炉内に投入する熱風量が減少して)高炉内へ投入する顕熱量が低下してしまう点、等が考えられる。
そこで、本発明者らは、高炉炉内でアンモニアガスを分解させるより、炉外でアンモニアガスを分解させて分解後の窒素ガス及び水素ガスの混合ガスを高炉に吹き込む方が羽口先設計の観点からも望ましいと考え、図2のようにアンモニアガスを分解した際の炭素削減効果を検討した。
(1-2.アンモニアガスの熱分解率と高炉における炭素削減効果との相関)
図2は、アンモニアガスの熱分解率が炭素削減効果に及ぼす影響を示している。図2の例では、アンモニアガスを熱分解率に従って熱分解させた後に高炉に吹き込んでいる。高炉に吹き込む混合ガスの温度は400℃とした。図2の横軸はアンモニアガスの熱分解率(%)を示し、縦軸は高炉における炭素削減効果(%)を示す。アンモニアガスの熱分解率は、熱分解されるアンモニアガスの体積を熱分解前のアンモニアガスの総体積で除算することで得られる。熱分解率は、具体的には、ガスクロマトグラフや質量分析計等のガス分析装置によって測定される。熱分解率は、アンモニアガスの加熱温度や熱分解時に使用する触媒によって調整することができる。したがって、熱分解率0%は純アンモニアガスを高炉に吹き込むことを意味し、熱分解率100%は全てのアンモニアガスが熱分解して窒素ガス及び水素ガスの混合ガスとなり、この混合ガスを高炉に吹き込むことを意味する。熱分解率が0%超100%未満となる場合、アンモニアガスとアンモニアガスの熱分解で生じた窒素ガス及び水素ガスとの混合ガスが高炉に吹き込まれる。点P6は100Nm3/tの混合ガスを高炉に吹き込んだ場合におけるアンモニアガスの熱分解率と高炉における炭素削減効果との相関を示す。点P7は200Nm3/tの混合ガスを高炉に吹き込んだ場合におけるアンモニアガスの熱分解率と高炉における炭素削減効果との相関を示す。混合ガスの吹込み量は、熱分解後のガス流量をバルブ等によって調整することで制御することができる。
図2は、アンモニアガスの熱分解率が炭素削減効果に及ぼす影響を示している。図2の例では、アンモニアガスを熱分解率に従って熱分解させた後に高炉に吹き込んでいる。高炉に吹き込む混合ガスの温度は400℃とした。図2の横軸はアンモニアガスの熱分解率(%)を示し、縦軸は高炉における炭素削減効果(%)を示す。アンモニアガスの熱分解率は、熱分解されるアンモニアガスの体積を熱分解前のアンモニアガスの総体積で除算することで得られる。熱分解率は、具体的には、ガスクロマトグラフや質量分析計等のガス分析装置によって測定される。熱分解率は、アンモニアガスの加熱温度や熱分解時に使用する触媒によって調整することができる。したがって、熱分解率0%は純アンモニアガスを高炉に吹き込むことを意味し、熱分解率100%は全てのアンモニアガスが熱分解して窒素ガス及び水素ガスの混合ガスとなり、この混合ガスを高炉に吹き込むことを意味する。熱分解率が0%超100%未満となる場合、アンモニアガスとアンモニアガスの熱分解で生じた窒素ガス及び水素ガスとの混合ガスが高炉に吹き込まれる。点P6は100Nm3/tの混合ガスを高炉に吹き込んだ場合におけるアンモニアガスの熱分解率と高炉における炭素削減効果との相関を示す。点P7は200Nm3/tの混合ガスを高炉に吹き込んだ場合におけるアンモニアガスの熱分解率と高炉における炭素削減効果との相関を示す。混合ガスの吹込み量は、熱分解後のガス流量をバルブ等によって調整することで制御することができる。
図2に示すように、混合ガスの吹込み量が多くなると、熱分解率の上昇と共に高炉における炭素削減効果が上昇することがわかる。より詳細に検討すると、混合ガスの吹込み量が100Nm3/tと比較的少ない場合、アンモニアガスの熱分解率によらず炭素削減効果はほぼ横ばいとなる。したがって、混合ガスの吹込み量が100Nm3/t以下の場合、アンモニアガスの熱分解率が0~100%でとなる場合に、高い炭素削減効果が得られると推測される。
一方、混合ガスの吹込み量が200Nm3/tと比較的多い場合、アンモニアガスの熱分解率が高い程高い炭素削減効果が得られるものの、アンモニアガスの熱分解率が低いと炭素削減効果は大きく目減りすることがわかる。このような現象が生じる理由は、上述したようにアンモニアガスそのものの分解熱の影響と、それに伴う熱流比の上昇による影響と考えられる。図2の例では、熱分解率が80~100%となる場合に、良好な炭素削減効果が得られる。したがって、混合ガスの吹込み量が100Nm3/t超200Nm3/t以下の場合、アンモニアガスの熱分解率が80~100%となる場合に、高い炭素削減効果が得られると推測される。なお、図2には例示されていないが、使用したアンモニアガスが200Nm3/t超300Nm3/t未満の場合、熱分解率が90~100%となる場合に、良好な炭素削減効果が得られると推測される。
図2の結果から、アンモニアガスを大量に使用する場合には、羽口先での分解熱影響が操業ネックになると考えられる。そこで、この課題を解決するため、アンモニアガス及びアンモニアガス由来の混合ガス(すなわちアンモニアガスの熱分解で生成した混合ガス)を昇温して羽口から吹き込むことを検討した。検討例を図3に示す。
(1-3.混合ガスの吹込み温度と高炉における炭素削減効果との相関)
図3は、混合ガス(上述したように、アンモニアガスの熱分解で生成した混合ガス。アンモニアガスの熱分解率が100%未満となる場合、混合ガスには、未分解のアンモニアガスが含まれる)の吹込み温度及びアンモニアガスの熱分解率が高炉における炭素削減効果に及ぼす影響を示す。図3の例では、混合ガスが加熱された(あるいは常温)状態で高炉に吹き込まれる。図3の横軸は混合ガスの吹込み温度(℃)を示す。なお、混合ガスは熱風と共に羽口から高炉に吹き込まれるが、ここでの吹込み温度は熱風と混合される前の温度を示す。縦軸は高炉における炭素削減効果(%)を示す。点P8は熱分解率が80%となる場合の混合ガスの吹込み温度と高炉における炭素削減効果との相関を示す。点P9は熱分解率が90%となる場合の混合ガスの吹込み温度と高炉における炭素削減効果との相関を示す。点P10は熱分解率が100%となる場合の混合ガスの吹込み温度と高炉における炭素削減効果との相関を示す。混合ガスの吹込み量は300Nm3/tで統一した。
図3は、混合ガス(上述したように、アンモニアガスの熱分解で生成した混合ガス。アンモニアガスの熱分解率が100%未満となる場合、混合ガスには、未分解のアンモニアガスが含まれる)の吹込み温度及びアンモニアガスの熱分解率が高炉における炭素削減効果に及ぼす影響を示す。図3の例では、混合ガスが加熱された(あるいは常温)状態で高炉に吹き込まれる。図3の横軸は混合ガスの吹込み温度(℃)を示す。なお、混合ガスは熱風と共に羽口から高炉に吹き込まれるが、ここでの吹込み温度は熱風と混合される前の温度を示す。縦軸は高炉における炭素削減効果(%)を示す。点P8は熱分解率が80%となる場合の混合ガスの吹込み温度と高炉における炭素削減効果との相関を示す。点P9は熱分解率が90%となる場合の混合ガスの吹込み温度と高炉における炭素削減効果との相関を示す。点P10は熱分解率が100%となる場合の混合ガスの吹込み温度と高炉における炭素削減効果との相関を示す。混合ガスの吹込み量は300Nm3/tで統一した。
図3の結果より、混合ガスの吹込み温度が低いケース(~300℃)では、アンモニアガスの熱分解率が低いと炭素削減効果が目減りする結果となる。一方で、ガス吹込み温度が上がるにつれて、アンモニア分解率の低い条件の方が高い炭素削減効果が得られることがわかる。これは、以下の理由によると考えられる。例えば、熱分解率100%の混合ガスは、25体積%N2+75体積%H2の混合ガスとなる。混合ガス吹込み量が100Nm3/tだとすると、H2の高炉への吹込み量は100×75体積%=75Nm3/tとなる。一方、熱分解率80%のガスは、20体積%NH3+20体積%N2+60体積%H2の混合ガスとなる。混合ガス吹込み量が100Nm3/tだとすると、H2の高炉への吹込み量は100×(20体積%×3/2+60体積%)=90Nm3/tとなる。したがって、分解率の低い条件では、羽口先で分解熱を要するNH3は混合ガスに含まれるものの、H2の投入量が多い条件になる。したがって、混合ガスの吹込み温度を上げて、十分な顕熱補填をした場合、NH3の分解熱の悪影響よりH2投入量が多い影響の方がより効いてくる状況となって、炭素削減効果が向上する、と考えられる。以上のことから、混合ガスの吹込み温度を制御し、その温度に応じてアンモニアガスの熱分解率を制御することでより高い炭素削減効果が得られることが分かった。例えば、混合ガスの羽口への吹込み温度が400℃以上(アンモニアガスの熱分解温度)600℃未満の場合、アンモニアガスの熱分解率が90~100%となる場合に、高い炭素削減効果が得られる。また、混合ガスの羽口への吹込み温度が600℃以上の場合、アンモニアガスの熱分解率が80~100%となる場合に、高い炭素削減効果が得られる。なお、このような傾向は混合ガスの吹込み量が400Nm3/tでも見られた。具体的に説明すると、吹込み温度400℃の場合、分解率80%の炭素削減効果:10.4%、分解率90%の炭素削減効果:12.2%、分解率100%の炭素削減効果:12.9%となった。さらに、吹込み温度1200℃の場合、分解率80%の炭素削減効果:23.1%、分解率90%の炭素削減効果:22.2%、分解率100%の炭素削減効果:21.1%となった。したがって、混合ガスの吹込み量が300Nm3/t以上となる場合、混合ガスの羽口への吹込み温度が400℃以上(アンモニアガスの熱分解温度)600℃未満の場合、アンモニアガスの熱分解率が90~100%となる場合に、高い炭素削減効果が得られる。また、混合ガスの羽口への吹込み温度が600℃以上の場合、アンモニアガスの熱分解率が80~100%となる場合に、高い炭素削減効果が得られる。
<2.高炉の操業方法>
つぎに、上述した検討結果に基づく高炉の操業方法について説明する。本実施形態に係る高炉の操業方法では、液体アンモニアを高炉まで輸送し、液体アンモニアを気化させてアンモニアガスとし、高炉炉外でアンモニアガスを熱分解させて窒素ガス及び水素ガスの混合ガスとして高炉の羽口へ吹き込む。これにより、上述したように、高い炭素削減効果が得られる。
つぎに、上述した検討結果に基づく高炉の操業方法について説明する。本実施形態に係る高炉の操業方法では、液体アンモニアを高炉まで輸送し、液体アンモニアを気化させてアンモニアガスとし、高炉炉外でアンモニアガスを熱分解させて窒素ガス及び水素ガスの混合ガスとして高炉の羽口へ吹き込む。これにより、上述したように、高い炭素削減効果が得られる。
ここで、アンモニアガスは、適切な触媒を使用し、400℃以上まで加熱されることで熱分解される。アンモニアガスの加熱手段としては、例えば外部ヒーター等で熱を供給することが挙げられ、触媒としては白金系貴金属が挙げられる。また、好ましくは、混合ガスの吹込み量に応じて異なる制御を行う。具体的には、混合ガスの吹込み量が100Nm3/t以下の場合、アンモニアガスの熱分解率を0~100%とし、混合ガスの吹込み量が100Nm3/t超200Nm3/t以下の場合、アンモニアガスの熱分解率を80~100%とし、混合ガスの吹込み量が200Nm3/t超300Nm3/t未満の場合、アンモニアガスの熱分解率を90~100%とする。
また、混合ガスの吹込み量が300Nm3/t以上となる場合、以下の制御を行うことが好ましい。即ち、混合ガスの羽口への吹込み温度(アンモニアガスの加熱温度)が400℃以上600℃未満の場合、アンモニアガスの熱分解率を90~100%とし、混合ガスの羽口への吹込み温度が600℃以上の場合、アンモニアガスの熱分解率を80~100%とする。上記以外の操業条件は従来と同様であればよい。ここで、吹込み温度については例えば熱電対等で測温すればよく、アンモニアガス分解時に用いる外部ヒーター等の出力を調整することで制御すればよい。
(アンモニアガスの加熱温度)
(アンモニアガスの加熱温度)
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
Claims (4)
- 液体アンモニアを高炉まで輸送し、前記液体アンモニアを気化させてアンモニアガスとし、前記アンモニアガスを熱分解して窒素ガス及び水素ガスを含む混合ガスを生成し、前記混合ガスを前記高炉の羽口へ吹き込むことを特徴とする、高炉の操業方法。
- 前記アンモニアガスを400℃以上まで加熱することで、前記アンモニアガスを熱分解することを特徴とする、請求項1記載の高炉の操業方法。
- 前記混合ガスの吹込み量は300Nm3/t未満であり、
前記混合ガスの吹込み量が100Nm3/t以下の場合、前記アンモニアガスの熱分解率は0~100%であり、
前記混合ガスの吹込み量が100Nm3/t超200Nm3/t以下の場合、前記アンモニアガスの熱分解率は80~100%であり、
前記混合ガスの吹込み量が200Nm3/t超300Nm3/t未満の場合、前記アンモニアガスの熱分解率は90~100%であることを特徴とする、請求項2記載の高炉の操業方法。 - 前記混合ガスの吹込み量は300Nm3/t以上であり、
前記混合ガスの前記羽口への吹込み温度が400℃以上600℃未満の場合、前記アンモニアガスの熱分解率は90~100%であり、
前記混合ガスの前記羽口への吹込み温度が600℃以上の場合、前記アンモニアガスの熱分解率は80~100%であることを特徴とする、請求項2記載の高炉の操業方法。
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