JP2023067695A - 高炉の操業方法 - Google Patents

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薫 中野
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隆信 稲田
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Abstract

【課題】本発明は、水素系還元ガスを多量に吹き込む高炉の操業方法において、炭素消費量の増大を抑制して、二酸化炭素の排出量を低減する。【解決手段】水素吹込量が250(Nm3/pig-ton)以上となるように水素系還元ガスを吹き込む高炉の操業方法において、鉄源原料を還元炉において少なくともウスタイトまで還元させて還元鉄を製造する還元ステップと、前記還元ステップで得られた還元鉄を高炉の炉頂から装入する装入ステップと、を有することを特徴とする高炉の操業方法。【選択図】図2

Description

本発明は、水素系還元ガスを吹き込みながら鉄源原料を還元して銑鉄を製造する高炉の操業方法に関するものである。
高炉法では、炉頂から鉱石層を形成するための鉄源原料及びコークスを交互に層状に装入しながら、高炉下部の羽口から微粉炭とともに熱風を吹き込むことにより、銑鉄が製造される。コークス及び微粉炭等の炭材は、還元材として使用される。
近年、地球温暖化が社会問題となっており、その対策として温室効果ガスの一つである二酸化炭素の排出削減が求められている。上述の通り、高炉法では炭材を使用して大量に銑鉄を製造するため、二酸化炭素が大量に排出される。そのため、鉄鋼分野では炭材の使用量を削減することが重要な課題とされている。
還元材比を低減する方法として、羽口から熱風とともに水素系還元ガスを吹き込むことによって、還元ガス中の水素を利用した水素還元反応を促進して、直接還元反応を低減させる技術が知られている。
高炉内における水素は、還元ガスとして機能し燃料としては機能しないこと、水素による還元反応は吸熱反応であることから、多量に吹き込むことによって炉内の熱バランスが崩れる問題が懸念される。具体的には、微粉炭吹込みを行う通常の高炉操業において、溶銑温度、出銑量、送風温度及び羽口前温度を一定に維持しながら、水素系還元ガスの吹込量を高めていくと、水素吹込量:250(Nm3/pig-ton)程度で水素系還元ガスの吹込量が限界に達し、送風量、微粉炭比、酸素富化率を調整しても、溶銑温度等を所望の温度に維持することができないため、銑鉄の製造に支障をきたす。したがって、水素系還元ガスを多量(水素吹込量:250(Nm3/pig-ton)以上)に吹き込む場合には、同時に顕熱補償を行う必要がある。
ここで、顕熱補償として、送風温度を昇温する方法、酸素富化率を低下させ送風原単位を増加させる方法、還元ガスを予め昇温して吹き込む方法が知られている。しかしながら、現在の操業方法では送風温度が上限温度近くまで引き上げられており、上げ代は殆ど残されていない。また、現在の操業方法では酸素富化率が下限値近くまで引き下げられており、下げ代は殆ど残されていない。さらに、1200℃レベルの高温空気を炉内に送風している高炉において、予め1000℃以上に昇温された水素系還元ガスを吹き込むと、羽口前の燃焼帯域における温度が過度に高くなりプロセス操作上のリスクが増大することに加えて、高炉設備が水素脆化する等の問題も懸念される。
特許文献1には、ガス化炉において石炭系燃料を、酸素を主成分とするガスで燃焼ガス化することによってCOとH2Oを主成分とする高温ガスを製造し、この高温ガスを還元炉に吹き込みことによって還元鉄を製造する方法が開示されている。特許文献1に開示された技術は、石炭をベースとする還元材を想定しており、水素系還元ガスの多量吹込みは想定されていない。
特許文献2には、水素を含有する還元材を吹き込み、予熱ガスをシャフト部から炉内に吹き込むことで、炉頂ガス温度を110℃以上に昇温させる高炉の操業方法が開示されている。しかしながら、特許文献2の表1に開示された実施例から換算される水素吹込量は、200(Nm3/pig-ton)以下であり、水素系還元ガスの多量吹込みを前提とした課題は一切考慮されていない。
特開昭58-171510号公報 特許第4661890号公報 特開平8-253801号公報 特許第5549227号公報 特開2020-45508号公報
鉄と鋼、68巻(1982)、15号、2369頁(羽田野ほか) 鉄と鋼、62巻(1976)、3号、315頁(原ほか) 鉄と鋼、74巻(1988)、12号、2254頁(山岡ほか)
本発明は、水素系還元ガスを多量に吹き込む高炉の操業方法において、炭素消費量の増大を抑制して、二酸化炭素の排出量を低減することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明に係る高炉の操業方法は、(A1)水素吹込量が250(Nm3/pig-ton)以上となるように水素系還元ガスを吹き込む高炉の操業方法において、鉄源原料を還元炉において少なくともウスタイトまで還元させて還元鉄を製造する還元ステップと、前記還元ステップで得られた還元鉄を前記高炉に装入する装入ステップと、を有することを特徴とする。
(A2)前記還元ステップで得られた還元鉄の還元率をX(%)、水素吹込量をY(Nm3/pig-ton)としたとき、以下の式(1)を超えない範囲で水素系還元ガスの吹込みを行うとともに、前記の式(1)は、水素吹込量(Nm3/pig-ton)と高炉炭素消費量(kg/pig-ton)との関係性を規定する関係情報を還元率毎に取得しておき、この取得結果に基づき導出することを特徴とする上記(A1)に記載の高炉の操業方法。
Y=aX+b(ただし、a及びbは定数である)・・・・・・・・・式(1)
(A3)前記関係情報から高炉炭素消費量(kg/pig-ton)の最小値に対応する水素吹込量(Nm3/pig-ton)を求め、この求めた水素吹込量(Nm3/pig-ton)及び還元率に基づき、前記の式(1)を導出すること特徴とする上記(A2)に記載の高炉の操業方法。
(A4)前記高炉の炉頂排ガスに対して脱湿処理を施した脱湿高炉排ガスを、前記還元炉に吹き込むことにより前記還元ステップを実施することを特徴とする上記(A1)乃至(A3)のうちいずれか一つに記載の高炉の操業方法。
(A5)脱湿高炉排ガスに加えて、前記還元炉の炉頂排ガスに対して脱湿処理を施した脱湿還元炉ガスを前記還元炉にさらに吹き込むことにより、前記還元ステップを実施することを特徴とする上記(A4)に記載の高炉の操業方法。
(A6)前記高炉及び前記還元炉とは異なる供給源から前記還元炉に水素系還元ガスをさらに吹き込むことにより、前記還元ステップを実施することを特徴とする上記(A4)又は(A5)に記載の高炉の操業方法。
(A7)高炉の炉頂排ガスに対して前記脱湿処理及び二酸化炭素分離処理を施した脱湿高炉排ガスを、前記還元炉に吹き込むことにより前記還元ステップを実施することを特徴とする上記(A4)に記載の高炉の操業方法。
(A8)前記高炉の炉頂排ガスに対して前記脱湿処理及び二酸化炭素分離処理を施した脱湿高炉排ガスと、前記還元炉の炉頂排ガスに対して前記脱湿処理及び二酸化炭素分離処理を施した脱湿還元炉ガスとを前記還元炉に吹き込むことにより、前記還元ステップを実施することを特徴とする上記(A5)に記載の高炉の操業方法。
(A9)前記装入ステップは、還元鉄を還元処理がされていない鉄源原料とともに装入するステップであり、前記装入ステップにおける還元鉄の使用率を事前に決定する事前準備工程を有し、前記事前準備工程は、予め還元鉄の還元率毎に還元鉄の使用率と高炉炭素消費量削減率との第1の関係を取得する工程、及び、予め還元鉄の還元率毎に還元鉄の使用率とソルロスカーボン量との第2の関係を取得する工程のうち少なくとも一方を実施する第1の事前準備工程と、前記第1の事前準備工程で取得した第1の関係及び/又は第2の関係に基づき、還元鉄の使用率を決定する第2の事前準備工程と、を有し、前記事前準備工程で決定した使用率にて、前記装入ステップを実施することを特徴とする上記(A1)に記載の高炉の操業方法。
本発明によれば、少なくともウスタイト以上に還元された還元鉄を高炉に装入することにより、水素系還元ガスの多量吹込みによって生じる熱不足の問題を回避することができる。その結果、炭素消費量の増大を抑制して、二酸化炭素の排出量を削減することができる。
高炉の付帯設備を除いた炉体の概略図である。 還元率毎に整理した水素吹込量と高炉炭素消費量との関係を示すグラフである。 還元率に応じた最適な水素吹込量を実現するグラフである。 高炉と還元炉の連結プロセスを実行する設備の概略図である(第3実施形態)。 還元炉で得られる還元鉄及び高炉に装入される還元鉄の還元率の関係をシミュレーションしたシミュレーション結果である(第3実施形態)。 高炉と還元炉の連結プロセスを実行する設備の概略図である(第4実施形態)。 図5に対応するシミュレーションの結果である(第4実施形態)。 高炉及び還元炉の連結プロセスによる操業の可否を評価した評価結果である(第4実施形態) 高炉と還元炉の連結プロセスを実現する設備の概略図である。 所望の還元率を達成するための水素吹込量を実現するグラフである。 高炉及び還元炉の連結プロセスを実現する設備の概略図である(第6実施形態)。 図8に対応しており、高炉及び還元炉の連結プロセスによる操業の可否を評価した評価結果である(第6実施形態) 還元鉄の使用率と高炉炭素消費量削減率との関係をシミュレーションしたシミュレーション結果である。 還元鉄の使用率とソルロスカーボン量との関係をシミュレーションしたシミュレーション結果である。
(第1実施形態)
図1は、高炉の付帯設備を除いた炉体の概略図である。炉体100は、炉口部K、炉口部Kの下端部に連設するシャフト部L、シャフト部Lの下端部に連設する炉腹部M、炉腹部Mの下端部に連設する朝顔部N、朝顔部Nの下端部に連設する羽口部O及び羽口部Oの下端部に連設する炉底部Pからなる。シャフト部Lは、上部から下部に向かって徐々に拡径するテーパ形状に形成されている。
羽口部Oには、羽口101が形成されており、この羽口101を介して、炉体100の内部に水素系還元ガスや熱風を吹き込むことができる。本実施形態の高炉の操業方法は、水素系還元ガスの多量吹込みを前提としており、水素吹込量が250(Nm3/pig-ton)以上となるように高炉を操業する。つまり、銑鉄1(ton)を製造するのに要した水素吹込量が250(Nm3)以上となるように高炉を操業する。水素系還元ガスは、水素ガスそのものであってもよいし、COGガス、天然ガス、LPGガス、メタンガス等の水素含有ガスであってもよい。水素系還元ガスとして水素含有ガスを用いる場合には、水素含有ガスの吹込量を水素吹込量に換算して、この求めた水素吹込量が250(Nm3/pig-ton)以上となるように操業する。
炉体100の炉頂部102には垂直軸周りに回転する旋回シュート(不図示)が設けられており、この旋回シュートから炉体100の内部に向かって還元鉄及びコークス原料が交互に層状に装入される。還元鉄は、鉄源原料を少なくともウスタイト(FeO)まで予め還元した還元鉄であり、ウスタイト(FeO)であってもよいし、ウスタイト(FeO)よりも還元率の高い酸化鉄であってもよい。鉄源原料には、焼結鉱、ペレット、塊鉱石、非焼成含炭塊成鉱を用いることができる。ここで、還元鉄の還元率は以下の数式で定義され、一般的な鉄源原料をウスタイト(FeO)まで還元した場合の還元率は概ね30~33%程度となる。
(還元率)=(1-(還元鉄中の未還元酸素量)/(鉄源原料中の被還元酸素量))×100(%)
ただし、未還元酸素量および被還元酸素量は、それぞれ還元鉄および鉄源原料中の酸化鉄成分(Fe、Fe、FeO)の分析値から次式により算出できる。

(還元鉄中の未還元酸素量)≡(還元鉄中のFe重量分率)×48/160+(還元鉄中のFe重量分率)×64/232+(還元鉄中のFeO重量分率)×16/72

(鉄源原料中の被還元酸素量)≡(鉄源原料中のFe重量分率)×48/160+(鉄源原料中のFe重量分率)×64/232+(鉄源原料中のFeO重量分率)×16/72
なお、還元鉄及び還元率の意味は、他の実施形態においても同様である。
コークス原料には、コークスの他、フェローコークスが含まれていてもよい。
還元鉄及びコークス原料を高炉に装入することにより、炉口部K及びシャフト部Lの上部において、塊状帯103を形成することができる。なお、本発明は、旋回シュートを有しないベル高炉にも適用することができる。塊状帯103は、炉内を降下しながら、羽口101から吹き込まれた熱風によって昇温され、朝顔部Nからシャフト部Lの下部に向かって略円錐形の融着帯104が形成される。
融着帯104で溶融した鉄分105は、滴下帯106を通過して降下し、溶銑107として炉底部Pに貯留される。コークス等は滴下帯106を通過して降下し、炉底部Pに積み上がり、溶銑107の上に円錐形の炉芯109が形成される。炉底部Pには、出銑口108が形成されており、出銑口108から炉底部Pに溜まった溶銑107を高炉の外部に取り出すことができる。
本実施形態の操業方法によれば、水素吹込量:250(Nm3/pig-ton)以上となるように水素系還元ガスを吹き込む高炉の操業方法において、水素系還元ガスの多量吹込みにより生じる熱不足の問題を、少なくともウスタイト(FeO)まで還元した還元鉄を装入原料として用いることにより回避できる。その結果、還元材として使用される石炭由来の炭素消費量を削減できるため、高炉操業における二酸化炭素の排出を低減することができる。
(第2実施形態)
第1実施形態で説明した通り、鉄源原料を予め還元した還元鉄を高炉に装入することにより、水素吹込量(Nm3/pig-ton)の増大による熱不足問題を回避することができる。
ただし、水素吹込量(Nm3/pig-ton)を過度に増大すると、水素還元による吸熱反応が還元鉄を装入することによる効果(熱不足を解消する効果)を上回り、炉頂ガス温度や溶銑温度が所望の温度よりも低下してしまうため、高炉の炭素消費量を増大させなければならない。そこで、本発明者等は、水素吹込量(Nm3/pig-ton)の増大によって高炉炭素消費量(kg/pig-ton)を削減する効果が無くなる臨界点を還元率毎に把握し、これを超えない範囲で水素系還元ガスを高炉に吹き込む方法を検討した。
本発明者等は、水素系還元ガスの吹込みと還元鉄の装入による高炉炭素消費量(kg/pig-ton)の削減効果を定量的に評価するため、炉内状態を理論的に推定して操業成績を予測する高炉数学モデルを用いてシミュレーションを行った。高炉数学モデルは、非特許文献1に開示された高炉数学モデルを利用した。シミュレーションは、表1に示す諸元を前提とした。コークス比(ただし、微粉炭比は0で固定)及び送風量を調整手段とした。酸素富化率(言い換えると、羽口前温度)については、与えられた水素ガス原単位及び還元率において、高炉炭素消費量(kg/pig-ton)が最小となるように調整した。各還元率に対応する還元鉄の組成は、表2のように設定した。還元率32%は、還元鉄に含まれる酸化鉄の全量がウスタイト(FeO)である場合に対応する。
Figure 2023067695000002
Figure 2023067695000003
シミュレーションの結果を、還元率毎に整理して、図2に示す。図2の横軸は高炉の水素吹込量(Nm3/pig-ton)であり、左側の縦軸は高炉炭素消費量(kg/pig-ton)、右側の縦軸は高炉炭素消費量削減率(%)である。なお、高炉炭素消費量削減率は、水素系還元ガスを吹き込まない従来の操業(微粉炭吹込みをベースにした操業)に対する削減率であり、この従来操業(以下、基準操業という)における高炉炭素消費量は425(kg/pig-ton)である。還元なしの鉄源原料を炉内に装入し、水素吹込量:約450(Nm3/pig-ton)の条件にて高炉を操業すると、高炉炭素消費量(kg/pig-ton)の削減効果が限界に達する。
一方、ウスタイト(FeO)以上に還元された還元鉄を炉内に装入しで、水素吹込量:250(Nm3/pig-ton)以上の条件にて高炉を操業すると、還元なしの鉄源原料を炉内に装入して高炉を操業した場合と比較して、同一の水素吹込量(Nm3/pig-ton)で比較したときに、炭素消費量(kg/pig-ton)を削減することができる。図2に示された、この還元率毎に整理した高炉の水素吹込量(Nm3/pig-ton)と高炉炭素消費量(kg/pig-ton)との関係を規定したグラフが、請求項2に記載の「関係情報」に相当する。なお、関係情報のデータ形式はグラフに限るものではなく、データテーブルの形式であってもよい。
また、図2から、高炉炭素消費量(kg/pig-ton)の削減効果を最大化するための水素吹込量(Nm3/pig-ton)を、還元率毎に推定することができる。具体的には、水素吹込量が250(Nm3/pig-ton)以上の範囲において、各還元率のグラフは、下に凸のグラフ(言い換えると、水素吹込量が所定値に達するまでは水素吹込量の増大に応じて高炉炭素消費量が減少し、水素吹込量が当該所定値を超えると水素吹込量の増大に応じて高炉炭素消費量が増大するグラフ)となるため、これらの関係情報から、還元率毎に高炉炭素消費量(kg/pig-ton)の最小値を特定することができる。そして、当該最小値に対応した水素吹込量(Nm3/pig-ton)を図2から読み取り、この水素吹込量(Nm3/pig-ton)と還元率との関係を一次関数にフィッティングさせることにより、各還元率毎に、高炉炭素消費量(kg/pig-ton)を最小化するための水素吹込量(Nm3/pig-ton)を把握することができる。
式(1)は、図2から導出した一次関数である。一次関数の相関係数は、「0.9993」であった。
Y=-13.8X+1160・・・・・・・式(1)
ただし、Yは水素吹込量(Nm3/pig-ton)、Xは還元率(%)である。
還元鉄の還元率(%)を式(1)のXに代入することによりYを算出し、このYを超えないように水素吹込量(Nm3/pig-ton)を設定することにより、本実施形態の効果(水素吹込量(Nm3/pig-ton)を上げることによる高炉炭素消費量(kg/pig-ton)の削減効果)を享受することができる。図3は、本実施形態の操業範囲をハッチングにより示しており、水素吹込量(Nm3/pig-ton)が250(Nm3/pig-ton)以上で、かつ、式(1)を超えない範囲において本実施形態の操業を行うことができる。シミュレーションの前提となる諸元が変化した場合、式(1)の定数が変化することは言うまでもない。
なお、本実施形態では、還元率が70%に達すると、高炉炭素消費量(kg/pig-ton)の最小値に対応した水素吹込量(Nm3/pig-ton)が250(Nm3/pig-ton)未満に低下する。
したがって、表1及び表2に示す諸元を前提とする場合には、還元率の上限を70%に設定して、本実施形態の操業を行う必要がある。ただし、この上限は諸元によって変動するため、例えば、還元率が70%以上の場合でも、水素吹込量(Nm3/pig-ton)が250(Nm3/pig-ton)以上の条件下で、水素吹込量(Nm3/pig-ton)の最小値が確認できる場合には、還元率の上限を70%超にして、本実施形態の操業方法を実施することができる。
(第3実施形態)
第1及び第2実施形態で説明した通り、水素系還元ガスを吹き込むとともに還元鉄を装入することにより高炉炭素消費量を削減することができるが、還元鉄を還元する際の炭素消費量が増加しては、高炉炭素消費量を削減したメリットが薄れてしまう。そこで、本発明者等は、高炉の炉頂ガス(以下、BFGガスともいう)を利用して還元鉄を還元する方法について検討した。
図4は、本実施形態の高炉と還元炉の連結プロセスを実現する設備の概略図である。
高炉100の前段には、還元炉200が設けられている。還元炉200には、シャフト炉を用いることができる。高炉100の炉頂から排気されるBFGガスには、主に一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、水素ガス、窒素ガス及び水蒸気が含まれている。このBFGガスに対して脱湿処理(冷却処理)を行うことにより、BFGガスに含まれる水蒸気をHOにして取り除くことができる。HOを取り除いたBFGガスは、100℃未満に温度低下するため、加熱してから還元炉200に吹き込む。以下、還元炉200に吹き込まれる脱湿処理後のBFGガスのことを、脱湿高炉排ガスと言い換える場合がある。脱湿高炉排ガスには水素ガスが含まれているため、鉄源原料を還元鉄に還元することができる。なお、脱湿高炉排ガスは、還元炉200に吹き込まれる前に除塵処理される。
ここで、脱湿高炉排ガスを還元ガスとして還元炉200に吹き込むことにより、鉄源原料をウスタイト(FeO)以上に還元することができるか否かについて、本発明者等は数学モデル(非特許文献2及び3参照)を利用して検証した。この数学モデルは、炉内状態を理論的に推定して操業成績を予測する点で、非特許文献1に開示された高炉数学モデルと同じである。
数学モデルによる検証を行う際の前提条件(還元炉の運転条件)を表3に示す。
Figure 2023067695000004
シミュレーションの計算対象は、還元炉200の還元反応帯に相当する空間とし、還元ガスは脱失後のBFGガスの全量とし、送風温度は商用シャフト炉の代表的温度(900℃)とした。また、詳細は後述するが、商用シャフト炉において一般化している炉頂排ガスの一部を循環利用する操作についても考慮できるようにした。
図5は、シミュレーションの結果であり、横軸は高炉100に装入される還元鉄の還元率(A%)であり、縦軸はこの還元鉄を装入して高炉100を操業したとき(羽口前温度2000℃)に発生するBFGガスを由来とする脱湿高炉排ガスを還元炉200に吹き込むことによって得られる還元鉄の還元率(A´%)を示す。
点線より上の領域(つまり、ハッチングにより示す不整合領域を除いた領域)にプロットされた条件であれば、本実施形態の高炉100と還元炉200の連結プロセスを実現することができる。つまり、脱湿高炉排ガスを還元ガスとして還元炉200に吹き込むことにより、鉄源原料をウスタイト(FeO)以上の還元鉄に還元できる操業条件が存在することがわかった。
同図を参照して、353(Nm3/pig-ton)の水素ガス原単位にて高炉を操業した場合、実施形態2で説明した基準操業に対する高炉炭素消費量の削減効果は17%程度である。
これに対して、353(Nm3/pig-ton)の水素ガス原単位にて高炉を操業するとともに、発生したBFGガスを脱湿して還元炉200にて鉄源原料を還元した場合には、還元率40%程度の還元鉄が得られる。この還元鉄を高炉に装入することにより、基準操業に対して高炉炭素消費量を約27%程度削減することができる。
このように、本実施形態によれば、高炉100の前段に還元炉200を設けるとともに、高炉100から発生するBFGガスを脱湿処理した脱湿高炉排ガスを還元ガスとして還元炉200に吹き込むことにより、高炉100及び還元炉200の連結プロセスの外部から水素系還元ガスを吹き込むことなく、ウスタイト(FeO)以上に還元が進んだ還元鉄を製造することができる。これにより、炭素消費量を効果的に削減することができる。
(第4実施形態)
図6を参照しながら、本発明の第4実施形態について説明する。図6は、本実施形態の高炉と還元炉の連結プロセスを実現する設備の概略図である。本実施形態の高炉の操業方法は、第3実施形態の高炉の操業方法に対して、還元炉200から排出された炉頂排ガスを脱湿処理したガス(以下、脱湿還元炉ガスともいう)を、還元炉200にて還元ガスとして再利用する技術を付加した点に特徴を有する。すなわち、第3実施形態で説明した通り、脱湿高炉排ガスのみを還元炉200に吹き込む場合、ハッチングで示す図5の不整合領域では操業することはできないが、更に脱湿還元炉ガスを還元炉200に吹き込むことにより、操業範囲を広げることができる。
還元炉200の炉頂排ガスには、主に一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、水素ガス、窒素ガス及び水蒸気が含まれている。この還元炉200の炉頂排ガスに対して脱湿処理(冷却処理)を行うことにより、炉頂排ガスに含まれる水蒸気がHOとして取り除かれ、脱湿還元炉ガスを得ることができる。脱湿還元炉ガスは、冷却処理によって温度低下しているため、加熱してから還元炉200に吹き込まれる。このように、本実施形態では、高炉100の脱湿高炉排ガス及び還元炉200の脱湿還元炉ガスに含まれる水素ガスにより、鉄源原料の還元処理が実施される。なお、還元炉200の炉頂排ガスは、還元炉200に再循環される前に除塵処理される。
還元炉200に対する脱湿高炉排ガスの吹込み量をS1、還元炉200の炉頂排ガスの回収量をS2と定義したときに、以下の式(2)で定義される「循環率」を用いて排ガス循環の効果をシミュレーションにより評価した。評価には、第3実施形態で説明した数学モデルを使用した。
循環率=S2/S1・・・・・・・・式(2)
図7は、図5に対応するシミュレーションの結果である。図7を参照して、脱湿還元炉ガスを利用しない場合(つまり、第3実施形態に示す脱湿高炉排ガスのみで還元鉄を製造する場合)、例えば353(Nm3/pig-ton)の水素ガス原単位にて高炉を操業するとともに、脱湿高炉排ガスを還元炉200に吹き込むことにより鉄源原料を還元した場合、還元率は40%程度に留まる。一方、脱湿高炉排ガスに加えて、循環率25%の条件にて脱湿還元炉ガスを更に吹き込むと、還元率45%程度の還元鉄が得られる。言い換えると、第3実施形態では、353(Nm3/pig-ton)の水素ガス原単位にて高炉を操業しても、還元率45%の還元鉄を得ることができないが、本実施形態の操業方法によれば、水素ガス原単位を変えることなく、還元率45%の還元鉄を得ることができる。つまり、第3実施形態に対して、連結プロセス外部から吹き込む水素系還元ガスの吹込量を増やさなくても、より高い還元率の還元鉄を製造することができる。そして、後述する通り、高炉炭素消費量の削減効果を上積みすることができる。
図8は、本実施形態の高炉100及び還元炉200の連結プロセスによる操業の可否を評価した評価結果であり、点線内側のハッチングした領域が本実施形態で説明した連結操業が可能な範囲である。つまり、還元率T%の還元鉄を高炉に装入したときに、高炉100に対する水素吹込量(Nm3/pig-ton)を変えることなく、還元率T%の還元鉄が得られる範囲を示している。
例えば、350(Nm3/pig-ton)の水素ガス原単位にて高炉を操業したとき、本実施形態の連結プロセスを適用することにより製造された還元率45%の還元鉄を用いることにより、還元を行わない場合と比較して、高炉炭素消費量削減率を17%から32%に増加させることができる。
また、図8から、高炉に吹き込まれる水素系還元ガスの水素吹込量(Nm3/pig-ton)が増えるほど、還元率の高い還元鉄を得ることができる。これは、還元炉200の排ガスに含まれるH分率が高いほど、脱湿による脱湿還元炉ガスの還元力回復効果が高くなるため、より高い還元率の還元鉄を製造することができることによる。
(第5実施形態)
第4実施形態で説明した通り、脱湿高炉排ガスと脱湿還元炉ガスを還元炉200に吹き込むことにより、ハッチングで示す図8の領域内での連結操業を行うことができる。一方、第4実施形態の連結操業では、水素系還元ガスの不足により当該領域の下方での連結操業を行うことができない。例えば、図8に星印で示す還元率55%の還元鉄は、第4実施形態の連結操業では水素系還元ガスの不足により製造することができない。また、当然のことながら、脱湿高炉排ガスのみを還元炉200に吹き込む、第3実施形態の連結プロセスでも、同様の問題が起こる。
本実施形態は、還元炉200で不足する水素系還元ガスを補うことにより、還元率のより高い還元鉄を製造して、操業範囲を拡張することを目的とする。図9は、本実施形態の高炉及び還元炉の連結プロセスを実現する説明図である。
図9は、本実施形態の高炉と還元炉の連結プロセスを実現する設備の概略図である。
本実施形態の連結プロセスでは、還元炉200に水素系還元ガスを吹き込むルートを三ルート設けている。
(1)脱湿高炉排ガスを吹き込む(第3実施形態で説明した吹込みルート)
(2)脱湿還元炉ガスを吹き込む(第4実施形態で説明した吹込みルート)
(3)連結プロセスの外部から水素系還元ガスを吹き込む(本実施形態で付加したルート)
本実施形態では三ルートを同時利用する場合について説明するが、(2)のルートは省略してもよい。なお、(3)の吹込みルートとして、高炉100に吹き込まれる水素系還元ガスを分岐流入させる方法が考えられる。
図8に星印で示すポイントは、高炉100に還元率55%の還元鉄を装入するとともに、水素吹込量を352(Nm3/pig-ton)として水素系還元ガスを吹き込む操業であるが、この操業方法において発生するBFGガスを脱湿処理して還元炉200に吹き込んだとしても、還元率55%の還元鉄を製造することはできない。脱湿還元炉ガスを更に吹き込むことによって、還元率を上げることはできるが、図10に示す通り、第4実施形態で説明した還元炉200における循環率を50%に設定することにより、上記(3)のルートで吹き込む水素系還元ガスの水素吹込量を130(Nm3/pig-ton)程度に設定することができる。これにより、還元率55%の還元鉄が得られる。すなわち、第4実施形態の連結操業では得られない、還元率の高い還元鉄を得ることができる。
そして、還元率55%の還元鉄を高炉100に装入することにより、図8に示すように、基準操業に対して高炉炭素消費量削減率を40%超に高めることができる。
(第6実施形態)
本実施形態は、第4実施形態の変形例であり、BFGガス及び還元炉の排ガスに対する脱湿処理に加えて、これらのガスから二酸化炭素を分離する処理を行うものである。図11は、本実施形態の高炉及び還元炉の連結プロセスを実現する設備の概略図である。BFGガス及び還元炉の排ガスから二酸化炭素を分離する処理を行うことにより、還元炉200に吹き込まれるガスから酸化性成分を取り除くことができる。これにより、還元率がより高い還元鉄を高炉に装入できるため、水素吹込量(Nm3/pig-ton)を、より低減しながら高い高炉炭素消費量削減効果を得ることができる。つまり、脱二酸化炭素処理により、水素ガス原単位を節約することができる。
図12は、図8に対応しており、点線内側のハッチングした領域が本実施形態の連結操業が可能な範囲である。つまり、還元率T%の還元鉄を高炉に装入したときに、高炉100に対する水素吹込量(Nm3/pig-ton)を変えることなく、本実施形態の操業方法で還元率T%の還元鉄が得られる範囲を示している。なお、点線内側のハッチングした連結操業可能な領域は、非特許文献2及び3に記載された数学モデルに基づき特定した。図8及び図12を比較参照して、本実施形態によれば、高炉炭素消費量削減率を大幅に拡大することができる。
本実施形態は、第3実施形態の変形例として用いることもできる。具体的には、BFGガスに対する脱湿処理に加えて(還元炉の排ガスを吹き込まない操業パターン)、二酸化炭素を取り除く処理を付加してもよい。
(第7実施形態)
周知の通り、高炉操業におけるCO排出量を削減するためには、還元材比を低減する必要がある。還元材には、鉄源原料などの装入物を昇温する熱源としての役割と、装入物を還元する役割とがあり、還元材比を低減するためには炉内の還元効率を向上させる必要がある。炉内における還元反応は、様々な反応式で表現することができるが、直接還元(反応式:FeO+C→Fe+CO)は大きな吸熱反応となるため、還元材比低減のためには直接還元を減らす必要がある。直接還元は高炉炉下部で生じる反応であるため、直接還元を減らすためには、CO、H等の還元ガスにより装入物を十分に還元することが必要である。
この課題を解決する方法として、羽口から吹き込む還元ガスのポテンシャルを向上する技術、予めシャフト炉等で還元した還元鉄を高炉に装入して、炉内の還元負荷を低減する技術等が知られている(特許文献3乃至5参照)。しかしながら、羽口から水素系還元ガスを吹き込みながら、還元鉄と還元処理されていない鉄源原料とからなる混合原料を装入する高炉の操業方法において、還元鉄をより効率的に利用する条件については、従来技術において検討されていない。
本発明者等は、水素系還元ガスを吹き込みながら(ただし、水素吹込量≧250(Nm3/pig-ton))、前記の混合原料を装入する高炉の操業方法において、混合原料における還元鉄の使用率が所定率を超えると、還元材比を低減する効果が飽和することを発見した。この飽和点を超えて還元鉄の使用率を高めても、還元鉄の製造に必要なエネルギーが増加するだけで、還元材比を更に低減する効果が得られないため、飽和点を超過しないように使用率を制限することが望ましい。つまり、本実施形態は、還元鉄を製造する際のエネルギーロスを削減しながら、還元材比の低減効果を高めることを目的とする。
本発明者等は、還元鉄の使用率と高炉炭素消費量削減率との関係について、微粉炭吹込み操業及び水素吹込み操業のそれぞれについて還元率を変えながら高炉数学モデルによりシミュレーションした。高炉数学モデルは、非特許文献1に開示された高炉数学モデルを利用した。シミュレーションは、表4に示す諸元を前提とした。コークス比及び送風量を調整手段とした。酸素富化率(言い換えると、羽口前温度)については、与えられた水素ガス原単位及び還元率において、高炉炭素消費量(kg/pig-ton)が最小となるように調整した。水素吹込量は250(Nm3/pig-ton)以上290(Nm3/pig-ton)以下とした。各還元率に対応する還元鉄の組成は、表2による。
Figure 2023067695000005
微粉炭吹込み操業は、混合原料を装入物として、微粉炭を吹き込む(言い換えると、水素系還元ガスを吹き込まない)操業である。水素吹込み操業は、混合原料を装入物として、微粉炭を吹込むとともに水素系還元ガスを吹き込む操業である。
図13は、シミュレーション結果であり、横軸が還元鉄の使用率(%)、縦軸が高炉炭素消費量削減率(%)である。黒塗りの図形でプロットしたデータが微粉炭吹込み操業に対応しており、白抜きの図形でプロットしたデータが水素吹込み操業に対応している。なお、本実施形態では、前記の混合原料を100質量%としたときの還元鉄の混合割合を使用率(%)と定義する。
微粉炭吹込み操業及び水素吹込み操業の高炉炭素消費量削減率(%)は、基準操業(第2実施形態参照)に対する削減率とした。本実施形態では、基準操業における高炉炭素消費量を426(kg/pig-ton)とした。
微粉炭吹込み操業では、還元鉄の使用率(%)を高めるにしたがって、高炉炭素消費量削減率(%)が増大し、使用率(%)が100%に達すると高炉炭素消費量削減率(%)が最大になった。つまり、還元鉄の使用率(%)が100%に達する前に、高炉炭素消費量削減率(%)の増大効果が飽和するシミュレーション結果は得られなかった。
一方、水素吹込み操業では、還元鉄の使用率(%)が80%に達するまでは、高炉炭素消費量削減率(%)が増大したが、還元鉄の使用率(%)を80%から100%に高めても、高炉炭素消費量削減率(%)は増大しなかった。つまり、還元鉄の使用率(%)が60%から80%の範囲(以下、第1の使用率飽和範囲ともいう)において、高炉炭素消費量削減率(%)の増大効果が飽和することがわかった。したがって、図13に基づき、還元鉄の使用率(%)を決定する場合には、第1の使用率飽和範囲において適宜の使用率(%)を設定するのが望ましい。
これにより、還元鉄を製造する際のエネルギーロスを削減しながら、還元材比の低減効果を高めることができる(言い換えると、還元鉄の使用率(%)が100%の場合と同様の還元材比低減効果が得られる)。本実施形態では、還元鉄の使用率を20%ずつ増加させたときの高炉炭素消費量削減効果をシミュレーションしたが、本発明はこれに限るものではなく、還元鉄の使用率をX%(ただし、X<20%)ずつ増加させたときの高炉炭素消費量削減効果をシミュレーションしてもよい。これにより、使用率飽和範囲をより正確に把握することができる。ただし、X%が過度に小さくなると、シミュレーションが煩雑となるため、X%は5%以上20%以下に設定するのが望ましい。
また、上述の例では、高炉炭素消費量削減率(%)と使用率(%)との関係(以下、「第1の関係」ともいう)から、使用率飽和範囲を推測したが、本発明はこれに限るものではなく、ソルロスカーボン量(kg/pig-ton)と還元鉄の使用率(%)との関係(以下、「第2の関係」ともいう)から使用率飽和範囲を推測してもよい。第2の関係についても、第1の関係と同様に上述の高炉数学モデルを利用して取得することができる。
図14は、シミュレーション結果であり、横軸が還元鉄の使用率(%)、縦軸がソルロスカーボン量(kg/pig-ton)である。微粉炭吹込み操業、水素吹込み操業、高炉炭素消費量削減率(%)の意味は、図13と同様であるから、説明を省略する。なお、ソルロスカーボン量(kg/pig-ton)の最小値は、一般的に10(kg/pig-ton)未満であり、必ずしも0(kg/pig-ton)にはならない。
微粉炭吹込み操業のうち「還元率70%の還元鉄(水素吹込み:無)」では、還元鉄の使用率(%)を高めるにしたがって、ソルロスカーボン量(kg/pig-ton)が低下し、使用率(%)が100%に達するとソルロスカーボン量(kg/pig-ton)が最小になった。つまり、還元鉄の使用率(%)が100%に達する前に、ソルロスカーボン量(kg/pig-ton)の低下効果が飽和するシミュレーション結果は得られなかった。
一方、水素吹込み操業のうち「還元率70%の還元鉄(水素吹込み:有)」では、還元鉄の使用率(%)が80%に達するまで、ソルロスカーボン量(kg/pig-ton)が低下したが、還元鉄の使用率(%)を80%から100%に高めても、ソルロスカーボン量(kg/pig-ton)は低下しなかった。つまり、還元率70%の還元鉄を用いる場合、使用率(%)が60%から80%の範囲(以下、第2の使用率飽和範囲ともいう)において、ソルロスカーボン量(kg/pig-ton)の低減効果が飽和することがわかった。したがって、図14に基づき、還元率70%の還元鉄の使用率(%)を決定する場合には、第2の使用率飽和範囲において適宜の使用率(%)を設定するのが望ましい。
また、水素吹込み操業のうち「還元率95%の還元鉄(水素吹込み:有)」では、還元鉄の使用率(%)が60%に達するまで、ソルロスカーボン量(kg/pig-ton)が低下したが、還元鉄の使用率(%)を60%から100%に高めても、ソルロスカーボン量(kg/pig-ton)は低下しなかった。つまり、還元率95%の還元鉄を用いる場合、使用率が40%から60%の範囲において、ソルロスカーボン量(kg/pig-ton)を低減する効果が飽和することがわかった。したがって、図14に基づき、還元率95%の還元鉄の使用率(%)を決定する場合には、40%から60%の範囲において適宜の使用率(%)を設定するのが望ましい。
これにより、還元鉄を製造する際のエネルギーロスを削減しながら、還元材比低減効果を高めることができる。本実施形態では、還元鉄の使用率を20%ずつ増加させたときのソルロスカーボン量低減効果を還元率毎にシミュレーションしたが、本発明はこれに限るものではなく、還元鉄の使用率をX%(ただしX<20%)ずつ増加させたときのソルロスカーボン量低減効果をシミュレーションしてもよい。これにより、使用率飽和範囲をより正確に把握することができる。ただし、X%が過度に小さくなると、シミュレーションが煩雑となるため、X%は5%以上20%以下に設定するのが望ましい。
以上の知見を纏めると、本実施形態は、還元鉄を還元処理がされていない鉄源原料とともに高炉に装入する装入ステップの事前準備工程として以下のステップ1及び2を有する。
ステップ1:(1)及び/又は(2)の関係を予め求める。
(1)還元鉄の還元率毎に還元鉄の使用率(%)と高炉炭素消費量削減率(%)との関係
(2)還元鉄の還元率毎に還元鉄の使用率(%)とソルロスカーボン量(kg/pig-ton)との関係
上述の実施形態では、還元率が70%、95%の還元鉄についてシミュレーションを実施したが、還元率はこれに限るものではない。
ステップ2:(1)及び/又は(2)の関係に基づき、還元鉄の使用率を決定する。ここで、(1)及び(2)の関係に基づくとは、例えば、(1)の関係から得られた還元鉄の使用率に妥当性があるか否かを(2)の関係に基づき確認することを含む。
例えば、上述の第1の使用率飽和範囲から決定した還元鉄の使用率(%)が、上述の第2の使用率飽和範囲に含まれない場合、第1の使用率飽和範囲及び第2の使用率飽和範囲の重複範囲から改めて使用率(%)を決定することができる。
100 高炉 200 還元炉

Claims (9)

  1. 水素吹込量が250(Nm3/pig-ton)以上となるように水素系還元ガスを吹き込む高炉の操業方法において、
    鉄源原料を還元炉において少なくともウスタイトまで還元させて還元鉄を製造する還元ステップと、
    前記還元ステップで得られた還元鉄を前記高炉に装入する装入ステップと、
    を有することを特徴とする高炉の操業方法。
  2. 前記還元ステップで得られた還元鉄の還元率をX(%)、水素吹込量をY(Nm3/pig-ton)としたとき、
    以下の式(1)を超えない範囲で水素系還元ガスの吹込みを行うとともに、
    前記の式(1)は、水素吹込量(Nm3/pig-ton)と高炉炭素消費量(kg/pig-ton)との関係性を規定する関係情報を還元率毎に取得しておき、この取得結果に基づき導出することを特徴とする請求項1に記載の高炉の操業方法。

    Y=aX+b(ただし、a及びbは定数である)・・・・・・・・・式(1)
  3. 前記関係情報から高炉炭素消費量(kg/pig-ton)の最小値に対応する水素吹込量(Nm3/pig-ton)を求め、この求めた水素吹込量(Nm3/pig-ton)及び還元率に基づき、前記の式(1)を導出すること特徴とする請求項2に記載の高炉の操業方法。
  4. 前記高炉の炉頂排ガスに対して脱湿処理を施した脱湿高炉排ガスを、前記還元炉に吹き込むことにより前記還元ステップを実施することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一つに記載の高炉の操業方法。
  5. 脱湿高炉排ガスに加えて、前記還元炉の炉頂排ガスに対して脱湿処理を施した脱湿還元炉ガスを前記還元炉にさらに吹き込むことにより、前記還元ステップを実施することを特徴とする請求項4に記載の高炉の操業方法。
  6. 前記高炉及び前記還元炉とは異なる供給源から前記還元炉に水素系還元ガスをさらに吹き込むことにより、前記還元ステップを実施することを特徴とする請求項4又は5に記載の高炉の操業方法。
  7. 高炉の炉頂排ガスに対して前記脱湿処理及び二酸化炭素分離処理を施した脱湿高炉排ガスを、前記還元炉に吹き込むことにより前記還元ステップを実施することを特徴とする請求項4に記載の高炉の操業方法。
  8. 前記高炉の炉頂排ガスに対して前記脱湿処理及び二酸化炭素分離処理を施した脱湿高炉排ガスと、前記還元炉の炉頂排ガスに対して前記脱湿処理及び二酸化炭素分離処理を施した脱湿還元炉ガスとを前記還元炉に吹き込むことにより、前記還元ステップを実施することを特徴とする請求項5に記載の高炉の操業方法。
  9. 前記装入ステップは、還元鉄を還元処理がされていない鉄源原料とともに装入するステップであり、
    前記装入ステップにおける還元鉄の使用率を事前に決定する事前準備工程を有し、
    前記事前準備工程は、予め還元鉄の還元率毎に還元鉄の使用率と高炉炭素消費量削減率との第1の関係を取得する工程、及び、予め還元鉄の還元率毎に還元鉄の使用率とソルロスカーボン量との第2の関係を取得する工程のうち少なくとも一方を実施する第1の事前準備工程と、
    前記第1の事前準備工程で取得した第1の関係及び/又は第2の関係に基づき、還元鉄の使用率を決定する第2の事前準備工程と、
    を有し、
    前記事前準備工程で決定した使用率にて、前記装入ステップを実施することを特徴とする請求項1に記載の高炉の操業方法。
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