JP2023114021A - ポリマーアロイ繊維 - Google Patents

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Abstract

【課題】海成分と島成分に分離した繊維横断面において海成分中に点在する島成分を偏在させることにより、機能性分や機能性粒子を効率的に機能させるポリマーアロイ繊維を提供する。【解決手段】複数のポリマーが海成分と島成分に分離した繊維横断面において、繊維表面から繊維中心方向へ30%以内の領域で島成分径CV%が50%以上であることを特徴とするポリマーアロイ繊維。【選択図】図1

Description

本発明は、異なる2種類以上のポリマーが混合されたポリマーアロイ繊維に関するものである。
ポリエステルやポリアミドなどの熱可塑性ポリマーを用いた繊維は、優れた力学特性や寸法安定性を利用し、衣料用途から、インテリア、車両内装等の産業用途まで幅広く展開されており、素材に求められる特性が多様化するに伴い、様々な機能性繊維が開発されてきた。
例えば、繊維径を細くすることにより、柔軟な風合い等を付与したり、繊維断面を通常の丸断面から異形断面化することで、吸水速乾性の付与や外観を変化させたりする手段がある。また、繊維を構成するポリマー自身を、機能性粒子を含有するものとしたり、他の成分を共重合したりして、防透けやUVカット等の新たな機能性を付与する手段や、2種類以上のポリマーにより繊維を構成する複合繊維とする手段がある。
複合繊維は、単独ポリマーでは達成できない機能の両立、さらには、全く新しい機能を付与出来る場合があり、機能性繊維の達成手段として、主流技術となっている。
複合繊維の製造方法には、複数のポリマーを流路内で溶融混合するポリマーアロイ法と、溶融した複数のポリマーを別々の流路で計量・制御し、その目的に応じた所望の繊維断面を形成させる複合紡糸法が存在し、中でもポリマーアロイ法は、汎用的な紡糸設備で機能性繊維の製造が可能であり、繊維製品の機能高度化を狙う開発として取り入れやすく、幅広い展開が進められている。
ポリマーアロイ法には、2種類以上の樹脂をドライブレンドし、混合状態で溶融する手法や、予め混練機能を有した溶融押出機により組み合わせた樹脂を混練する手法など、種々の手法が存在する。これ等の手法においては、その混合条件を適宜調整して2種類以上のポリマーを組み合わせることにより、マトリクスとなる海成分の中に、他方のポリマーが島成分として微分散したポリマーアロイ繊維の製造が可能となる。
ポリマーアロイ繊維においては、組み合わせるポリマーの中間成分である相溶化剤等を活用することにより、海成分の中に島成分を一様に微分散させることで、海成分のポリマーの欠点解消や機能性向上を可能とすることが可能であり、特許文献1あるいは特許文献2の技術開示がある。
特許文献1では、特定の相溶化剤を用いることにより比較的親和性が低いポリマーの組み合わせであるポリ乳酸とポリプロピレンを混合し、ポリプロピレンが海、ポリ乳酸が島となる複合繊維を得る技術が開示されている。特許文献1においては、それぞれのポリマーの特性を組み合わせることで、従来では達成されていなかった耐熱性と染色性を両立可能としている。
また、特許文献2においては、ポリアミドにポリオレフィンを溶融混合し、ポリアミドのマトリクスに該ポリオレフィンが微分散して存在することにより、ポリアミド繊維の特性である親水性、染色性を維持しつつ、課題の耐酸性の付与を実現している。
特開2010-15072号公報(特許請求の範囲) 特開平3-51314号公報(特許請求の範囲)
特許文献1は、ポリプロピレン繊維の耐熱性向上効果を狙うためポリプロピレンを海成分、耐熱性の高いポリ乳酸を島成分とし、島成分を均一に分散させた繊維横断面を有するものである。また、ポリプロピレンとポリ乳酸の親和性が低いことによる界面剥離の懸念から、島成分のポリ乳酸が繊維表層に露出していないことが記載されている。しかしながら、ポリマーアロイ繊維としてバルクの特性を評価した場合には、確かに、耐熱性の向上効果が得られるものとなるが、繊維最外層では耐熱性の低いポリプロピレンのみが露出しているため、例えば、アイロン耐熱など加熱されながら圧縮方向に力がかかる場合や糸束として加熱される場合には、繊維表層のポリプロピレンが溶融し、繊維が潰れたり、隣り合う繊維間で融着を起こしたりと、実用的な耐熱性を付与出来ているとは言い難い。
特許文献2は、海成分をポリアミド、島成分をポリオレフィンとしているが、ポリアミドに耐薬品性が高いポリオレフィンが分散して混合されていることにより、ポリアミド単独繊維の課題である耐酸性の付与を期待するもので、繊維表層において一部にのみ島成分が存在していることが記載されている。しかしながら、実質的に酸性溶液に接触する繊維最外層にポリアミドが露出する部分が存在しそこから脆化していくため、期待した程度の耐薬品性を得られない場合があった。
特許文献1および特許文献2は、特性の異なる2種類のポリマーを溶融混合したポリマーアロイ繊維に関するものであり、相溶化剤等も活用することで、マトリクスとなる海成分中に島成分が微分散した状態とすることを技術思想としており、海成分ポリマー単独の場合では発現されない、耐熱性や耐薬品性などの機能を付与できる可能性がある。
しかしながら、特許文献1および特許文献2では、島成分の分散形態は基本的には均一分散であり、繊維断面において任意に配置できないため、機能付与を担う島成分の特性を有効に利用できない場合がある。このため、目標とする特性を発現させるためには、島成分の混率を過剰に高めることが必要になる場合がある。特に、狙いとする特性を出すために繊維最外層の特性変化させることが重要になる場合には、最外層における島成分の存在比率を高める必要が生じ、自ずと、島成分の混率を過剰に増加させることとなる。
この場合、確かに繊維表層には機能性ポリマー(島成分)が配置されることとなるが、内層に配置された過剰な島成分は効果を発揮することにならず、繊維全体で言えば、不要な島成分が多く存在することになる。すなわち、内層には不要な島成分が多く存在することになり、繊維の基本特性である力学特性が低下したり、必要としていた海成分ポリマーの特性がうまく発現しなかったりと、ポリマーアロイ法に期待された効果が奏されない場合があった。
また、島成分の混率を必要以上に高める必要がある場合には、経時的な混率の変動を抑制するために、混合条件を高度に制御する必要があったり、2種類のポリマーの比率がどちらかに偏ることなく存在するポリマーアロイは2種類のポリマーの流動性が存在する複雑なレオロジー特性となることが多いため、紡糸口金から吐出された際の挙動が安定しない等の不安定な吐出挙動になり、製糸性が大きく低下する場合もあった。
このため、ポリマーアロイ繊維における島成分の分散形態、さらにはその配置が制御可能なポリマーアロイ繊維が求められていた。
本発明の目的は、以下の手段によって達成される。すなわち、
(1)複数のポリマーが海成分と島成分に分離した繊維横断面において、繊維表面から繊維中心方向へ30%以内の領域で島成分径CV%が50%以上であることを特徴とするポリマーアロイ繊維。
(2)複数のポリマーが海成分と島成分に分離した繊維横断面において、繊維表面から繊維中心方向30%以内の領域の島成分平均径(A)と繊維中心から繊維表面方向30%以内の領域の島成分平均径(B)との比(A/B)が5以上であることを特徴とするポリマーアロイ繊維。
本発明のポリマーアロイ繊維は、海成分中に島成分を偏在させることにより、機能性成分を効率的に機能させることを特徴とする。
本発明のポリマーアロイ繊維において偏在化が誘起された島成分が存在する横断面構造の概略図である。 本発明のポリマーアロイ繊維における、「繊維表面」、「繊維中心」、「繊維表面から繊維中心方向へ30%以内の領域」、「繊維中心から繊維表面方向へ30%以内の領域」を理解するための図である。 本発明のポリマーアロイ繊維の製造に使用される長尺流路の一例に係る図であり、(a)は長尺流路が設置される紡糸口金の概略図、(b)は紡糸口金内に設置される長尺流路の概略図、(c)は長尺流路の横断面の概略図である。
以下、本発明について望ましい実施形態と共に詳述する。
本発明のポリマーアロイ繊維は、複数のポリマーが海成分と島成分とに分離した繊維横断面において、繊維表面から繊維中心方向へ30%以内の領域で島成分径CV%が50%以上であることが重要である。
係る範囲であれば、繊維横断面において島成分が偏在化していると言うことができ、従来のポリマーアロイ繊維の欠点であった海成分の表層への露出を最小限に留め所望の機能を効率的に発現することができる。
なお、本発明のポリマーアロイ繊維の横断面において、繊維表面から繊維中心方向へ30%以内の領域で島成分径CV%が50%以上であることが重要であるが、その領域を除く、繊維中心から繊維表面方向70%以内の領域においては島成分径CV%が50%未満であることがより好ましい。
本発明で言うポリマーアロイ繊維とは、ブレンドした複数のポリマーが繊維横断面内で海成分と島成分に分離し、各島成分は繊維軸方向に不連続に存在することを意味する。ここで言う海成分、島成分とは、ブレンドすることで海島状に分離された異なる成分のうち、それぞれ島部、海部の成分を意味する。また、海島状とは島部が海部により複数に区別されていることを示す。
本発明における島成分径CV%は下記式によって算出されるものである。
島成分径CV%=(径の標準偏差/平均径)×100 (1)
ここで言う、径の標準偏差、平均径は次のようにして求める。すなわち、ポリマーアロイ繊維の単繊維の繊維軸に対して垂直な断面を透過型電子顕微鏡(TEM)あるいは走査型電子顕微鏡(SEM)で150個以上の島成分ポリマーが観察できる倍率として撮影する。この際、必要に応じて金属染色を施し、海成分と島成分のコントラストをはっきりさせることができる。2次元的に撮影された該画像から、画像処理ソフト(例えば、三谷商事製WinROOF)を用いて同一画像内で無作為に抽出した島成分の直径を測定する。ここで繊維横断面に現れる島成分ポリマーは必ずしも真円であるとは限らないが、真円で無い場合にはその面積を測定し、円換算で求められる値を採用する。また、これらの値に関しては、nm単位で小数点1桁目まで測定し、小数点以下を四捨五入するものである。平均径は抽出した150個の島成分のそれぞれの径を測定し、その単純な数平均値を求めるものであり、径の標準偏差は島成分のそれぞれの径と平均径から算出する。
なお、本発明で言う繊維表面とは、繊維横断面における最外周を意味し、繊維中心とは繊維横断面の面積を2等分するような任意の2本の直線の交点を意味する。
本発明のポリマーアロイ繊維の横断面において、繊維表面から繊維中心方向へ30%以内の領域で島成分径CV%が50%以上であることで、所望の機能を効果的に発現することができるが、表層に存在する海成分が及ぼす悪影響をより小さくするために島成分径CV%75%以上であることが好ましい。ただし、様々な大きさの島成分が存在することで複雑なレオロジー特性を持ち、紡糸口金から吐出された際の挙動が安定しない等、製糸性が大きく低下する可能性があるため、島成分径CV%は100%以下であることがより好ましい。
ここで、繊維表面から繊維中心方向30%以内の領域(図2のE)とは、繊維横断面全体の領域から繊維中心から繊維表面方向70%の領域を除いた領域を意味し、繊維中心から繊維表面方向70%の領域とは、繊維横断面に対し、同じ繊維中心かつ面積比率70%となるように縮小した部分の領域を意味する。
本発明のポリマーアロイ繊維の横断面において、繊維表面から繊維中心方向30%以内の領域の島成分平均径(A)と繊維中心から繊維表面方向30%以内の領域の島成分平均径(B)との比(A/B)が5以上であることが好ましい。
なお、AならびにBの値は次のようにして求める。すなわち、各領域内にて、透過型電子顕微鏡(TEM)あるいは走査型電子顕微鏡(SEM)で150個以上の島成分ポリマーが観察できる倍率として撮影する。この際、必要に応じて金属染色を施し、海成分と島成分のコントラストをはっきりさせることができる。2次元的に撮影された該画像から、画像処理ソフト(例えば、三谷商事製WinROOF)を用いて同一画像内で無作為に抽出した150個の島成分径を測定した後、その単純な数平均値を求める。ここで繊維横断面に現れる島成分ポリマーは必ずしも真円であるとは限らないが、真円で無い場合にはその面積を測定し、円換算で求められる値を採用する。
ここで、繊維中心から繊維表面方向30%以内の領域(図2のF)とは、繊維横断面に対し、同じ繊維中心かつ面積比率30%となるように縮小した部分の領域を意味する。
A/Bの値が5以上であれば、繊維表面付近に極大な分散構造を有していた場合にも、繊維中心部付近の島成分が微細な分散構造を有するため、ポリマーアロイ特有の複雑なレオロジー特性による不安定な伸長変形挙動を抑制し、製糸性の安定化に繋がる。また、不安定な伸長変形挙動を抑制することで、得られたポリマーアロイ繊維の繊維軸方向の過度な太さ斑の発生を最小限に留めるといった効果も得ることができる。しかしながら、A/Bの値が大きすぎる場合、繊維内に径が大きく異なる島成分が存在するため、不安定な伸長変形挙動となり、得られたポリマーアロイ繊維の繊維軸方向の過度な太さ斑が発生する場合があるため、A/Bの値は40未満であることが好ましい。
なお、ここで言う繊維軸方向の太さ斑とは、繊度斑の指標であるウスター(繊度斑)U
%の値で表すことができ、U%は1.0%未満であることが好ましい。U%が1.0%未満であれば、例えばこの繊維をテキスタイルへ加工した場合に、発現する色調斑や凹凸斑の程度がより自然なものとなり、品位の高いテキスタイルを得ることができる。
また、A/Bの値が5以上であることで、製糸性の安定化や得られたポリマーアロイ繊維の繊維軸方向の過度な太さ斑の発生を抑制する効果が得られるが、より大きな効果を得るためにA/Bの値が10以上であることがより好ましい。
本発明のポリマーアロイ繊維の横断面において、繊維表面から繊維中心方向30%以内の領域の島成分比率(C)と繊維横断面全体での島成分比率(D)の比(C/D)が1.2以上であることが好ましい。係る範囲であれば、繊維表面付近に多くの島成分が存在することとなり、所望する機能が繊維表面の特性に大きく影響を受ける場合に、繊維全体における島成分の混率を少なくしたとしても効率的に機能を発現することができる。
C/Dの値が1.2以上であれば、少量の島成分においても効率的な機能を発現することが可能となるが、それでもなお繊維内層には不要な島成分が多く存在し、力学特性低下の要因となり得るため、C/Dの値は1.5以上であることがより好ましい。
本発明における島成分比率は下記式によって算出されるものである。
島成分比率=(対象領域中の島成分面積合計/対象領域全面積)×100 (2)
ここで言う、対象領域中の島成分面積合計、対象領域全面積は以下のようにして求める。すなわち、ポリマーアロイ繊維の単繊維の繊維軸に対して垂直な断面を透過型電子顕微鏡(TEM)あるいは走査型電子顕微鏡(SEM)で断面全体と全島成分ポリマーが観察できる倍率として撮影する。この際、必要に応じて金属染色を施し、海成分と島成分のコントラストをはっきりさせることができる。2次元的に撮影された該画像から、画像処理ソフト(例えば、三谷商事製WinROOF)を用いて、対象領域全面積と対象領域内における各島成分の面積を算出することで求めることが可能である。また、これらの値に関しては、nm単位で小数点1桁目まで測定し、小数点以下を四捨五入するものである。なお、ここで言う対象領域とは、繊維の横断面全体もしくは繊維表面から繊維中心方向30%以内の領域のことを示す。
本発明のポリマーアロイ繊維を構成するポリマーとしては、複数のポリマーを用途に応じて適宜選択されるものであるが、所望とする機能性成分や機能性成分を効果的に機能発現させ、断面形態の安定性等を制御するという観点から2種類のポリマーであることが好適である。具体的な組み合わせを挙げると、ポリエステル系であれば、高粘度ポリエチレンテレフタレート/低粘度ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/5-ナトリウムスルホイソフタル酸(SSIA)‐ポリエチレングリコール(PEG)共重合ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレート、熱可塑性ポリウレタン/ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル系エラストマー/ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル系エラストマー/ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド系として、高粘度ナイロン6/低粘度ナイロン6、ナイロン6‐ナイロン66共重合体/ナイロン6または610、PEG共重合ナイロン6/ナイロン6または610、熱可塑性ポリウレタン/ナイロン6または610、ポリオレフィン系としてエチレン‐プロピレンゴム微分散ポリプロピレン/ポリプロピレン、プロピレン‐αオレフィン共重合体/ポリプロピレンなどが挙げられる。親和性が低い組み合わせとしては、ポリエチレンテレフタレート/ナイロン6、ポリエチレンテレフタレート/ナイロン66、ポリエチレンテレフタレート/ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン、ナイロン6/ポリプロピレン、ナイロン6/ポリエチレン、ナイロン66/ポリプロピレン、ナイロン66/ポリエチレンなどが挙げられる。また、酸化チタン、シリカ、酸化バリウムなどの無機質、カーボンブラック、染料や顔料などの着色剤、難燃剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、あるいは紫外線吸収剤などの各種添加剤をポリマー中に含んでいてもよい。
本発明の特徴である島成分が繊維表面付近に偏在化する特異現象を誘起するには、最大粘度と最小粘度の比が1.5倍以上となるポリマーの組合せが好ましい。詳細は後述するが、係る範囲においては、島成分として存在する低粘度ポリマーが壁面へ効率的に移動し、島成分の偏在化が問題なく誘起されることとなる。また、粘度比が1.5倍以上あれば偏在化は誘起されるが、偏在化を顕著にし、さらに島成分のサイズ分布を大きくするには5.0倍以上であることがより好ましい。なお、ここで言う粘度比とは、東洋精機製キャピログラフ等を用いて各々のポリマーをせん断速度(1216s-1)にて測定した溶融粘度の比を算出したものである。この時、測定温度は使用ポリマーおよびポリマー組合せによって適宜設定されるべきであるが、例えばポリエステル系ポリマーの組合せであれば、290℃にて測定を行う。
さらに、本発明のポリマーアロイ繊維を構成するポリマーを最大粘度と最小粘度の比が1.5倍以上のポリエステル系ポリマーの組合せにすることで、繊維表面付近において低粘度ポリエステルが多く存在し、高配向、高結晶化が抑制されるため、良好な耐摩耗性を有する繊維を得ることができる。また、海成分に高粘度ポリエステルを使用した場合は、高強度化が可能となるため、本発明のポリマーアロイ繊維を用いた高密度薄地織物としてスポーツおよびアウトドア向け衣料としての用途展開が可能である。
以下に本発明のポリマーアロイ繊維の製造方法の一例を詳述する。
本発明のポリマーアロイ繊維を製造する方法としては、公知の紡糸方法、例えば、エクストルーダーなどの溶融混練押出機にて混練して得ることができ、これを溶融紡糸方法に基づいて、ポリマーアロイ繊維とすることができるが、該プロセスにおいて、溶融混練したポリマーアロイを流路径に対する流路長が10倍以上である流路内でせん断速度50~3000s―1で流動させる必要がある。
本発明のポリマーアロイ繊維の特徴である溶融混合したポリマーの島成分が繊維表面付近に偏在化する特異現象を誘起するには、流動場における圧力損失を制御することが重要である。すなわち、粘度の異なる複数のポリマーを混合し流動させると、流動場を安定にするために、流路内の圧力損失の勾配を最小限にする現象が誘起される。
このため、混合したポリマーに流動性の差異があると、流動性が良好な、例えば、低粘度成分が流路壁面付近に押し出されることとなる。この場合、流路内の圧力損失の勾配を顕著にさせるに伴い、低粘度成分が壁面付近に押し出される現象は強く発現し、長尺流路等ではポリマーアロイにおける低粘度成分の偏在化が誘起されるのである。
この技術思想は、2種類以上のポリマーが混合されたポリマーアロイについて、特殊な流動場内を流動する際に誘起される特異現象の発見に基づくものであり、この特殊な流動場を作り出すための流路が重要になる。ここで言う流路とは、溶融ポリマーが流動するための通路のことを言い、流路径および流路長により、特殊な流動場の制御が可能となる。
また、ここで言う流路径とは、ポリマーが流動するための通路において、通路をポリマーの流動方向から垂直に見た場合の横断面における直径を意味し、該横断面が円形でない場合には、横断面から求めた面積を円換算して算出される円相当直径を指す。また、本発明の流路長とは、流路入口における横断面の中心から、流路出口における横断面の中心までを、ポリマー流動方向に沿って結んだ線の長さを意味する。
本発明のポリマーアロイ繊維の製造に用いる流路径に対する流路長が10倍以上である流路は、通常の溶融紡糸プロセスに用いる流路に比べて、流路径に対する流路長の割合が十分に長い流路であることを意味する。
この特殊な流路が、混合ポリマーが加熱ヒーター等で溶融されて、各溶融紡糸部材を経由した後に口金吐出孔から繊維状に吐出されるまでのいずれかに設置されていればよく、用いる溶融紡糸装置、配管および紡糸パック等に合わせた仕様にすることが可能である。ただし、目的とするポリマーが偏在化した特徴ある繊維断面をより顕著にさせる必要がある場合には、ポリマー流を特殊な流動場により偏在化現象を誘起された直後に吐出孔から繊維状で吐出させることが好適であり、紡糸口金を含めた溶融紡糸パックのいずれかの部材に穿設されていることが好ましい。
この場合、親和性が低いポリマーの組み合わせや融点が大幅に異なるポリマーの組み合わせを同じ溶融温度で繊維化する場合には、ポリマーの劣化や偏在化された成分同士の過剰な再結合を抑制する効果も得られる。このため、本発明のポリマーアロイ繊維を製造する好ましい実施形態として挙げることができ、さらには、片成分が偏在化された特殊な複合流の制御という観点からも、紡糸口金に本発明を実施するための流路を穿設することがより好ましいのである。
紡糸口金に本発明の実施に用いる流路を穿設することにより、上記した本発明の効果を採取した繊維に有効に作用させることができることに加えて、比較的簡易な部材等の変更で、種々制御された繊維断面を変更することも可能になるため、不要な部材の確保や複雑な紡糸装置の改造が不要になる等、工業的な観点でも好適なのである。
本発明のポリマーアロイ繊維の製造においては、上記した特殊流路において、特定の流動条件で流動させることが必要であり、この2つの要件が揃うことで、混合したポリマーの片成分を偏在化させる特異現象を誘起することが可能となる。
その特定の流動条件とは、せん断応力を利用して混合したポリマーの片成分を断面方向に移動させることを原理としており、流動におけるせん断速度を特定の範囲にすることが重要となる。すなわち、流路内のポリマー流動において、せん断速度が50~3000s-1となるように制御することが必要となる。
ここで言うせん断速度とは、流動させるポリマーの溶融密度、吐出量および流路の径から下記式に基づいて一義的に決定されるものであるが、ここでは吐出量を所望の条件に設定することにより制御が可能となる。
せん断速度=吐出量/{π×溶融密度×(流路径)} (3)
ここで言う吐出量は、計量された溶融ポリマーが流路内を1分間に流動する質量を意味し、溶融密度は使用するポリマー組成に応じた特性値であり、既知の値を用いることができる。異なるポリマーが混合されたポリマー組成においては、式(3)に基づいて、ポリマー固有の溶融密度を用いて、その混合比率から試算した溶融密度を適用することで算出することが可能となる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(溶融密度1.18g/cm)およびナイロン6(溶融密度0.74g/cm)が70:30で混合されたポリマーの場合には、1.18×0.7+0.74×0.3=1.05g/cmとその混合ポリマーの溶融密度を試算し、式(3)に基づいてせん断速度を算出するものである。
本発明の実施にあたり、重要となる流路の仕様は流路径に対する流路長が前述の範囲を満足するように3次元的に設計されていることが重要であり、流路形態および断面形状については、設置する装置や部材に適合するように設置すると良い。
単純な長尺流路を用いた場合において、この流動場における特異現象を誘起させるためには、ポリマーを専用に設けられた長尺流路を低速で流動させる必要がある。特に、溶融成形プロセスにおいては、流路内を流動するに伴い、加水分解や酸化分解等の樹脂の劣化が課題となる場合がある。2種類以上の異なるポリマーが溶融状態で混合されたポリマーでは、片方のポリマーの分解物が他方のポリマー劣化を促進することがあり、繊維を成型する工程通過性への影響や最終的な繊維特性で期待した効果が得られない等、実際の成形プロセスに適用するには困難な場合があった。
特に、溶融成形プロセスの中でも、ポリマー流量が少なく、溶融状態での滞留時間が長い溶融紡糸プロセス等においては、上記影響が顕著に見られる場合が多く、一般の溶融成形プロセスに比べて、さらに適用が困難になることが多い。これ等の従来技術の課題に対し、本発明者が鋭意検討を重ね、溶融紡糸プロセスにおいて、設備等を不要に複雑にすることなく、溶融混合した複数のポリマーのうちの一成分が偏在化される特異現象を見出し、これを溶融紡糸プロセス等へ適用することに成功したのである。
本発明のポリマーアロイ繊維の製造方法に必要となる流路は、流路径に対する流路長が前述の範囲を満足するように予め部材の設計にて仕様を確定させるものであるが、部材に設置された流路の仕様の実測は以下の方法で可能となる。すなわち、流路仕様の評価においては、間接的かつ非破壊による測定が多様な部材の測定に適用可能であり、なかでもX線CT装置で連続断層画像を取得し、画像解析ソフトを用いた測定が本発明では好適である。具体例として、島津製作所製XDimensus300を用いて3次元的に撮影したCT画像を撮影し、画像解析ソフトである三谷商事製WinROOFを用いてグレースケール画像に変換し、閾値を調整して2値化処理を行うことにより流路横断面を抽出し面積と周長を計測する。
本発明のポリマーアロイ繊維の製造方法において、流路径に対し流路長が10倍以上の範囲において、目的とする用途に応じて適宜設定されるべきであるが、圧力損失を増加させ、偏在化をより顕著にさせる場合には、流路径に対し流路長を30倍以上とすることが好ましい。ただし、流路を非常に長くすることで、紡糸プロセスに適用できない場合や、滞留時間が長くなることから耐熱性が低いポリマーを使用できない場合があるため、流路径に対し流路長が30倍以上、100倍以下とすることがより好ましい。
また、本発明の製造方法においては流路中をせん断速度50~3000s-1の範囲において流動するよう適宜設定されるべきであるが、3000s-1付近の高いせん断速度域においては、凝集した偏在化層が切断され、偏在化が抑制されることもあるため、せん断速度50~1000s-1とすることが好ましい。せん断速度を低下させるためには、同一ポリマー、同じ紡糸温度の場合、式(3)より吐出量を小さくする、流路径を大きくする方法が挙げられるが、吐出量を小さくする場合は滞留時間が長くなり熱劣化が起こる可能性があるため、流路径を小さくする方が好ましい。
本発明のポリマーアロイ繊維の製造方法におけるポリマーの吐出量は、安定性を維持しつつ溶融吐出できる範囲として、吐出孔当たり0.1g/min/hole~20.0g/min/holeを挙げることができる。この際、吐出の安定性を確保できる吐出孔における圧力損失を考慮することが好ましい。ここで言う圧力損失は、0.1MPa~40MPaを目安にポリマーの溶融粘度、吐出孔径、吐出孔長との関係から吐出量を係る範囲より決定することが好ましい。
本発明のポリマーアロイ繊維を紡糸する際の高粘度成分ポリマーと低粘度成分ポリマーの比率は、吐出量を基準に重量比で5/95~95/5の範囲で選択することができる。この範囲においては、偏在化が誘起され、かつ安定的に製造することができるが、ポリマー間の粘度差によっては、海成分が高粘度成分である場合、低粘度成分が外側へ押し出されにくくなるため、ポリマーの比率は5/95~70/30であることが好ましい。
吐出孔から溶融吐出されたポリマー流は冷却固化され、油剤等を付与することにより収束し、周速が規定されたローラーによって引き取られる。本発明では、安定に製造できるという観点から、ローラーの引取速度は500~6000m/min程度とするとよく、ポリマーの物性や繊維の使用目的によって変更可能である。延伸に際しては、ポリマーのガラス転移温度など、軟化できる温度を目安として、予熱温度を適切に設定することが好ましい。
予熱温度の上限としては、予熱過程で繊維の自発伸長により糸道乱れが発生しない温度とすることが好ましい。例えば、ガラス転移温度が70℃付近に存在するPETの場合には、通常この予熱温度は80~95℃程度で設定される。また、ガラス転移を示さないポリマーの場合には、複合繊維の動的粘弾性測定(tanδ)を行い、得られるtanδの高温側のピーク温度以上の温度を予備加熱温度として、選択すればよい。
ここで、延伸倍率を高め、力学物性を向上させるという観点から、この延伸を多段で施すことも好適な手段である。延伸については、紡糸した複合繊維を一旦巻き取った後で延伸を施すことも良いし、一旦、巻き取ることなく、紡糸に引き続いて延伸を行うことも良い。また延伸に加えて仮撚加工を加えてもよい。
仮撚加工の方法としては、ポリエステル等で汎用的に用いられている方法であれば特に限定するものではないが、生産性を考慮するとディスクやベルトを用いた摩擦仮撚機を用いて加工することが好ましい。
以上の様に、本発明のポリマーアロイ繊維の製造方法について説明したが、メルトブロー法およびスパンボンド法でも製造可能であることは言うまでもなく、さらには、湿式および乾湿式などの溶液紡糸法などによって製造することも可能である。
以下、実施例を挙げて、本発明の極細繊維について具体的に説明する。
実施例および比較例については、下記の評価を行った。
A.島成分径CV%および偏在化評価
各実施例・比較例の繊維横断面について、前述のとおりの方法(SEM使用、画像処理ソフトは三谷商事製WinROOF)で島成分の平均径、標準偏差を測定し、繊維表面から繊維中心方向30%以内の領域の島成分径CV%を、式(1)を用いて算出し、それぞれの島成分径CV%の値から偏在化を以下の3段階で評価した。
極めて良好 S :75%以上
良好 A :50%以上、75%未満
不良 B :50%未満。
B.島成分平均径の比(A/B)
各実施例・比較例の繊維横断面について、前述のとおりの方法(SEM使用、画像処理ソフトは三谷商事製WinROOF)で島成分の平均径を測定し、繊維表面から繊維中心方向30%以内の領域の島成分平均径(A)と繊維中心から繊維表面方向30%以内の領域の島成分平均径(B)との比(A/B)を算出した。
C.ウスターU%
繊度斑測定装置Zellweger製(UT-4)を用いて、供糸速度100m/分、
ツイスター回転数6000rpm、測定長100mの条件で、ポリマーアロイ繊維のウスターU%(H)を測定し、U%の値が1.0%未満であれば良好(A)、1.0%以上であれば不良(B)とする。
D.島成分比率の比(C/D)
各実施例・比較例の繊維横断面について、前述のとおりの方法(SEM使用、画像処理ソフトは三谷商事製WinROOF)で対象領域全面積と対象領域内における各島成分の面積を測定し、繊維表面から繊維中心方向30%以内の領域の島成分比率(C)と繊維横断面全体での島成分比率(D)の比(C/D)を算出した。なお、CならびにDは式(2)を用いて算出する。
E.ポリマーの溶融粘度、粘度比
チップ状のポリマーを真空乾燥機によって水分率200ppm以下とし、東洋精機製キャピログラフ1Bによって溶融粘度を測定した。さらに、高粘度成分ポリマーの溶融粘度を低粘度成分ポリマーの溶融粘度で除した値について、小数点2桁以下を四捨五入した値を粘度比とした。なお、測定温度は紡糸温度と同様にし、実施例あるいは比較例には、せん断速度1216s-1の溶融粘度を記載している。また、加熱炉にサンプルを投入してから測定開始までを5分とし、窒素雰囲気下で測定を行った。
F.耐摩耗性
筒編み地を筒編み機にて度目50となるように調整して作製した後、JIS L1096(2010)に従い、E法(マーチンデール法)に準拠して耐摩耗性評価を実施した。試験条件は、ポリエステル製の標準摩擦布を用い、押圧荷重は9kPaで実施した。判定は、毛羽が発生するまでの摩耗回数とし、以下の3段階で評価した。
極めて良好 S :5000回以上
良好 A :3000回以上5000回未満
不良 B :3000回未満。
G.流路長と流路径の比
島津製作所製XDimensus300を用いて3次元的に撮影したCT画像を撮影し、画像解析ソフトである三谷商事製WinROOFを用いてグレースケール画像に変換し、閾値を調整して2値化処理を行った後に、流路径であれば流路横断面を抽出し面積と周長を計測することで算出し、流路長であれば、流路入口における横断面の中心から、流路出口における横断面の中心までを、ポリマー流動方向に沿って結んだ線の長さを計測した。さらに、流路長を流路径で除した値について、小数点2桁以下を四捨五入した値を流路長と流路径の比とした。
H.せん断速度
各実施例・比較例における流路内を流れるポリマーのせん断速度(s-1)について、式(3)を用いて算出した。なお、溶融密度はポリエチレンテレフタレートの値(1.18g/cm)を使用する。
I.繊度
ポリマーアロイ繊維の100mの重量を測定し、100倍することで繊度を算出した。これを10回繰り返し、その単純平均値の小数点第2位以下を四捨五入した値を繊度とした。
[実施例1]
粘度比が1.5となるように、高粘度成分ポリマーとして、ポリエチレンテレフタレート(PET、溶融粘度:120Pa・s)、低粘度成分ポリマーとして、5-ナトリウムスルホイソフタル酸8.0モル%、ポリエチレングリコールを9wt%共重合したポリエチレンテレフタレート(SSIA-PEG共重合PET、溶融粘度:80Pa・s)の2つのポリマーを準備した。高粘度成分ポリマーと低粘度成分ポリマーを重量比が70/30となるように調整しエクストルーダーを用いて290℃で溶融混合した後、紡糸温度を290℃としてポンプによる計量を行い、図3に示すような流路径に対し流路長が40倍の長尺流路をせん断速度50s-1で流動させ、吐出孔から0.70g/min/孔にて吐出した。
吐出孔から吐出されたポリマー流は冷却固化後に油剤を付与し、紡糸速度1000m/minで巻取り、90℃と130℃に加熱したローラー間で3.0倍延伸を行うことで、紡糸・延伸工程を通じて56dtex-24フィラメント(単繊維繊度2.3dtex)のポリマーアロイ繊維を得た。
得られたポリマーアロイ繊維の横断面は、高粘度成分ポリマーが海成分、低粘度成分ポリマーが島成分となる断面であり、繊維表面から繊維中心方向30%以内の領域の島成分径CV%が76.1%と繊維断面の局所で、サイズの大きい島成分が存在し、偏在化が極めて良好に誘起されているものであった。また、A/Bの値が13.9と、偏在化が誘起されながらも繊度斑の指標であるU%は0.7%であり、繊維軸方向の太さ均一性に優れたものであった。
該ポリマーアロイ繊維からなる筒編地は摩耗回数5000回でも毛羽の発生は無く、極めて良好な耐摩耗性を示した。結果を表1に示す。
[実施例2、3]
流路設計により長尺流路内をせん断速度500s-1(実施例2)、1000s-1(実施例3)で流動させる以外は全て実施例1に従い、56dtex-24フィラメントのポリマーアロイ繊維を得た。
流路内のせん断速度を実施例1より高くすることで、流路内の圧力損失が増大し島成分が凝集しやすくなったため、得られたポリマーアロイ繊維横断面における繊維表面から繊維中心方向30%以内の領域の島成分径CV%は83.1%(実施例2)、88.3%(実施例3)となり、実施例1と比較しても良好に島成分の偏在化が誘起されているものであった。また、A/Bの値が22.1(実施例2)、27.4(実施例3)と、偏在化が誘起されながらも繊度斑の指標であるU%は0.8%であり、繊維軸方向の太さ均一性に優れたものであった。
該ポリマーアロイ繊維からなる筒編地は摩耗回数6000回でも毛羽の発生は無く、極めて良好な耐摩耗性を示した。結果を表1に示す。
[実施例4]
流路設計により長尺流路内をせん断速度3000s-1で流動させる以外は全て実施例1に従い、56dtex-24フィラメントのポリマーアロイ繊維を得た。
流路内のせん断速度を実施例1より高くすることで、流路内の圧力損失は増加したが、高いせん断により島成分が切断されるため、得られたポリマーアロイ繊維横断面における繊維表面から繊維中心方向30%以内の領域の島成分径CV%は64.2%と、島成分の偏在化が確認できるものであった。また、A/Bの値が8.3と、偏在化が誘起されながらも繊度斑の指標であるU%は0.6%であり、繊維軸方向の太さ均一性に優れたものであった。
該ポリマーアロイ繊維からなる筒編地は摩耗回数4500回でも毛羽の発生は無く、良好な耐摩耗性を示した。結果を表1に示す。
[実施例5]
流路径に対し流路長が10倍の長尺流路内でポリマーを流動させる以外は全て実施例1に従い、56dtex-24フィラメントのポリマーアロイ繊維を得た。
実施例1より短尺の流路であるため、流路内の圧力損失は低くなり、得られたポリマーアロイ繊維横断面における繊維表面から繊維中心方向30%以内の領域の島成分径CV%は52.8%であった。また、A/Bの値が5.3と、偏在化が誘起されながらも繊度斑の指標であるU%は0.6%であり、繊維軸方向の太さ均一性に優れたものであった。
該ポリマーアロイ繊維からなる筒編地は摩耗回数4500回でも毛羽の発生は無く、良好な耐摩耗性を示した。結果を表1に示す。
[実施例6、7]
流路径に対し流路長が70倍(実施例6)、100倍(実施例7)の長尺流路内でポリマーを流動させる以外は全て実施例1に従い、56dtex-24フィラメントのポリマーアロイ繊維を得た。
実施例1より長尺の流路とすることで、流路内の圧力損失が増大し島成分が凝集しやすくなったため、得られたポリマーアロイ繊維横断面における繊維表面から繊維中心方向30%以内の領域の島成分径CV%は84.5%(実施例6)、95.3%(実施例7)となり、実施例1と比較しても極めて良好に島成分の偏在化が誘起されているものであった。また、A/Bの値が25.8(実施例6)、32.7(実施例7)と、偏在化が誘起されながらも繊度斑の指標であるU%は0.7%(実施例6)、0.9%(実施例7)であり、繊維軸方向の太さ均一性に優れたものであった。
該ポリマーアロイ繊維からなる筒編地は摩耗回数6000回でも毛羽の発生は無く、極めて良好な耐摩耗性を示した。結果を表1に示す。
[実施例8]
粘度比が5.4となるように、高粘度成分ポリマーとして、高分子量ポリエチレンテレフタレート(高分子量PET、溶融粘度:650Pa・s)、低粘度成分ポリマーとして、PET(溶融粘度:120Pa・s)を準備した以外は全て実施例1に従い、56dtex-24フィラメントのポリマーアロイ繊維を得た。
実施例1より粘度比を高くすることで、流路内の圧力損失が増大し島成分が凝集しやすくなったため、得られたポリマーアロイ繊維横断面における繊維表面から繊維中心方向30%以内の領域の島成分径CV%は52.0%であった。また、A/Bの値が5.3と、偏在化が誘起されながらも繊度斑の指標であるU%は0.7%であり、繊維軸方向の太さ均一性に優れたものであった。
該ポリマーアロイ繊維からなる筒編地は摩耗回数6000回でも毛羽の発生は無く、極めて良好な耐摩耗性を示した。結果を表1に示す。
[実施例9]
粘度比が8.1となるように、高粘度成分ポリマーとして、高分子量PET、低粘度成分ポリマーとして、SSIA-PEG共重合PETを準備した以外は全て実施例1に従い、56dtex-24フィラメントのポリマーアロイ繊維を得た。
実施例1および実施例8より粘度比を高くすることで、流路内の圧力損失が増大し島成分が凝集しやすくなったため、得られたポリマーアロイ繊維横断面における繊維表面から繊維中心方向30%以内の領域の島成分径CV%は97.4%となり、実施例1および実施例8と比較して偏在化が良好であった。また、A/Bの値が5.3と、偏在化が誘起されながらも繊度斑の指標であるU%は0.9%であり、繊維軸方向の太さ均一性に優れたものであった。
該ポリマーアロイ繊維からなる筒編地は摩耗回数7000回でも毛羽の発生は無く、極めて良好な耐摩耗性を示した。結果を表1に示す。
Figure 2023114021000002
[比較例1]
流路設計により長尺流路内をせん断速度25s-1で流動させる以外は全て実施例1に従い、56dtex-24フィラメントのポリマーアロイ繊維を得た。
流路内のせん断速度を実施例1より低くすることで、流路内の圧力損失が減少し、島成分は比較的均質に微分散されたもので、得られたポリマーアロイ繊維横断面における繊維表面から繊維中心方向30%以内の領域の島成分径CV%は25.1%と、本発明の特徴である島成分の偏在化が誘起された物とは言い難い断面形態となった。
該ポリマーアロイ繊維からなる筒編地は摩耗回数2000回で毛羽が発生し、耐摩耗性に劣るものとなった。結果を表2に示す。
[比較例2]
流路設計により長尺流路内をせん断速度4000s-1で流動させる以外は全て実施例1に従い、56dtex-24フィラメントのポリマーアロイ繊維を得た。
流路内のせん断速度が実施例1より高すぎるため、流路内の圧力損失が増加する一方で、高いせん断により島成分が切断され、得られたポリマーアロイ繊維横断面における繊維表面から繊維中心方向30%以内の領域の島成分径CV%は30.2%と、繊維断面において、島成分が比較的均質に微分散されたものであった。
該ポリマーアロイ繊維からなる筒編地は摩耗回数2500回で毛羽が発生し、耐摩耗性に劣るものとなった。結果を表2に示す。
[比較例3]
流路径に対し流路長が5倍の長尺流路内でポリマーを流動させる以外は全て実施例1に従い、56dtex-24フィラメントのポリマーアロイ繊維を得た。
実施例1より短い流路とすることで、流路内の圧力損失が減少し、島成分は均等に微分散されていたため、得られたポリマーアロイ繊維横断面における繊維表面から繊維中心方向30%以内の領域の島成分径CV%は27.4%と、本願発明の特徴である島成分があまり誘起された状態にはならなかった。
該ポリマーアロイ繊維からなる筒編地は摩耗回数2500回で毛羽が発生し、耐摩耗性に劣るものとなった。結果を表2に示す。
[比較例4]
流路径に対し流路長が9倍の長尺流路と、粘度比が1.2となるように、高粘度成分ポリマーとしてPET(溶融粘度:120Pa・s)、低粘度成分ポリマーとして、イソフタル酸を7mol%共重合したポリエチレンテレフタレート、(IPA共重合PET、溶融粘度:100Pa・s)を準備した以外は全て実施例1に従い、56dtex-24フィラメントのポリマーアロイ繊維を得た。
実施例1より粘度比を低くすることで、流路内の圧力損失が減少し、島成分は均等に微分散されていたため、得られたポリマーアロイ繊維横断面における繊維表面から繊維中心方向30%以内の領域の島成分径CV%は26.5%と、本願発明の特徴である島成分があまり誘起された状態にはならなかった。
該ポリマーアロイ繊維からなる筒編地は摩耗回数2500回で毛羽が発生し、耐摩耗性に劣るものとなった。結果を表2に示す。
Figure 2023114021000003
A:島成分が均等に分散した領域
B:島成分の偏在化が誘起された領域
C:繊維表面
D:繊維中心
E:繊維表面から繊維中心方向へ30%以内の領域
F:繊維中心から繊維表面方向へ30%以内の領域
1:計量板
2:計量孔
3:長尺流路板
4:長尺流路
5:吐出板
6:吐出孔
7:流路長
8:流路横断面
9:流路径

Claims (2)

  1. 複数のポリマーが海成分と島成分に分離した繊維横断面において、繊維表面から繊維中心方向へ30%以内の領域で島成分径CV%が50%以上であることを特徴とするポリマーアロイ繊維。
  2. 複数のポリマーが海成分と島成分に分離した繊維横断面において、繊維表面から繊維中心方向30%以内の領域の島成分平均径(A)と繊維中心から繊維表面方向30%以内の領域の島成分平均径(B)との比(A/B)が5以上であることを特徴とするポリマーアロイ繊維。
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