本発明は、ショベル、建設解体機等の作業機械に関する。
従来、カメラを備えた飛行体によりショベル等の重機を上空から追跡し、飛行体を遠隔操作する操縦者が、表示装置でカメラによる画像を確認することができるシステムが知られている。このようなシステムは、ショベルの上部旋回体に取り付けられたカメラでは撮像できない空間の検査等のため利用されている。
例えば、下記の特許文献1では、ショベルの上部旋回体の旋回軸上の位置を飛行体の目標飛行位置に設定し、飛行体の位置及び向きを変化させてショベルの動きに追従させている(段落0060~0061、図6A1)。
しかしながら、特許文献1の方法では、飛行体を用いてショベルのアタッチメント等を検査する場合、ショベルの作業中は、カメラで作業状況等を撮像することが難しいという問題があった。また、飛行体のみを制御しているため、ショベルが急に変化した場合等に飛行体と衝突するおそれがあった。
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、飛行体(無人飛行機)と通信して、接触を回避しつつ点検を行うことができる作業機械を提供することを目的とする。
本発明は、下部走行体と、前記下部走行体に対して旋回可能な上部旋回体と、前記上部旋回体から延在する作業機構と、前記下部走行体、前記上部旋回体及び前記作業機構のそれぞれの動作態様を制御する制御装置と、点検のための無人飛行機と通信する通信装置と、を備えている作業機械であって、前記作業機械は、所定の作業を行う作業モードと、前記無人飛行機が前記作業機械の少なくとも一部分又は前記作業機械の周辺領域を点検する点検モードとを、運転者の操作又は所定の条件に基づいて切り替えるモード切替装置をさらに備え、前記制御装置は、前記モード切替装置により前記点検モードに切り替えられたとき、前記作業機械の前記作業機構、旋回機構および前記下部走行体の少なくとも1つの動作又は一部の機能を停止し、前記通信装置を通じて前記無人飛行機に点検開始信号を送信し、前記無人飛行機が前記点検を終了し、所定の基準位置に移動したとき送信する点検終了信号に基づいて前記動作又は一部の機能の復帰準備を行うことを特徴とする。
本発明の作業機械では、運転者の操作又は所定の条件が満たされ、点検モードに切り替えられた場合に、制御装置が作業機械の動作又は一部の機能を停止するとともに、無人飛行機に向けて点検開始信号を送信する。無人飛行機は、点検開始信号を受信すると、作業機械の少なくとも一部分又は周辺領域の点検を開始する。
また、作業機械は、無人飛行機から点検終了信号を受信すると、制御装置によって前記動作又は一部の機能の復帰準備を行うため、再び作業モードに移行する。このように、所定の作業を行わない点検モードにおいて無人飛行機を飛行させるため、作業機械と無人飛行機との衝突を回避しながら、作業機械の点検を行うことができる。
本発明の作業機械において、前記制御装置は、前記点検モードを解除する場合に、前記点検モードを解除する点検解除信号を送信し、前記無人飛行機を前記所定の基準位置に移動させることが好ましい。
無人飛行機は、点検作業中に作業機械から点検モードの点検解除信号を受信することがある。この場合、間もなく作業モードに移行する可能性があるため、制御装置は、無人飛行機による点検を中止し、所定の基準位置に移動するように制御する。これにより、作業機械の始動によって作業機構(アーム、作業アタッチメント等)が急に動作して、無人飛行機と接触するおそれを低減することができる。
また、本発明の作業機械において、前記モード切替装置は、前記作業モードにおける前記作業機械の作動状態に基づいて、前記点検モードへの切り替えを許可することが好ましい。
この構成によれば、作業機械のモード切替装置は、作業機械の作動状態(アームやアタッチメントが作動しているか否か)によって、点検モードへの切り替えを許可する。例えば、作業機械が停止している非作動状態にあるとき点検モードへの切り替えを許可することで、作業機械と無人飛行機との接触を回避することができる。
また、本発明の作業機械において、前記点検モードへの切り替えに伴い、前記作業機械が点検中であることを報知する第1報知手段を備えていることが好ましい。
この構成によれば、作業機械は第1報知手段を備えており、第1報知手段は、作業モードから点検モードへの切り替えられた際、点検中であることを報知する。これにより、作業機械の運転者は、現在、点検中であることを容易に認識することができる。
また、本発明の作業機械において、前記無人飛行機から前記点検終了信号を受信したとき、前記作業機械の運転者に前記点検モードの終了を報知する第2報知手段を備えていることが好ましい。
この構成によれば、無人飛行機による点検が終了したとき、無人飛行機から作業機械に点検終了信号が送信される。また、作業機械は第2報知手段を備えており、作業機械が点検終了信号を受信したとき、第2報知手段によりその旨が報知される。これにより、作業機械の運転者は、点検が終了したことを容易に認識することができる。
実施形態に係る作業機械の概略図。
作業機械の操作機構を説明する図。
本発明の実施形態に係る作業機械及び無人飛行機のシステム構成図。
作業機械と無人飛行機とが行う処理のフローチャート。
無人飛行機が行う処理のフローチャート(第1の変更例)。
無人飛行機が行う処理のフローチャート(第2の変更例)。
以下では、図面を参照しつつ、本発明の作業機械の点検動作制御システムについて説明する。
まず、図1、図2を参照して、点検動作制御システム1を構成する本発明の一実施形態の作業機械10について説明する。
図1に示されている作業機械10は、無人飛行機40と連携しながら所定の作業を遂行する。作業機械10は、例えば、クローラショベル(建設機械)であり、クローラ式の下部走行体110と、下部走行体110に旋回機構130を介して旋回可能に搭載されている上部旋回体120とを備えている。上部旋回体120の前方左側部にはキャブ(運転室)122が設けられている。また、上部旋回体120の前方中央部には作業機構140としての作業アタッチメントが設けられている。
作業機構140は、上部旋回体120に起伏可能に装着されているブーム141と、ブーム141の先端に回動可能に連結されているアーム143と、アーム143の先端に回動可能に連結されているバケット145とを備えている。また、作業機構140には、伸縮可能な油圧シリンダにより構成されるブームシリンダ142、アームシリンダ144及びバケットシリンダ146が装着されている。バケット145に代えてニブラ等の他のアタッチメントがアーム143の先端部に取り付けられていてもよい。
ブームシリンダ142は、作動油の供給を受けることにより伸縮してブーム141を起伏方向に回動させるように当該ブーム141と上部旋回体120との間に介在する。アームシリンダ144は、作動油の供給を受けることにより伸縮して、アーム143をブーム141に対して水平軸回りに回動させるように、当該アーム143と当該ブーム141との間に介在する。バケットシリンダ146は、作動油の供給を受けることにより伸縮してバケット145をアーム143に対して水平軸回りに回動させるように当該バケット145と当該アーム143との間に介在する。
作業機械10は、その内部に制御装置200、無線通信機器210、入力インターフェース220、出力インターフェース230等を備えている。制御装置200は、演算処理装置(シングルコアプロセッサ又はマルチコアプロセッサ若しくはこれを構成するプロセッサコア)により構成され、メモリなどの記憶装置から必要なデータ及びソフトウェアを読み取り、当該データを対象として当該ソフトウェアに基づく演算処理を実行する。
入力インターフェース220を構成する操作装置221には、走行用操作装置と、旋回用操作装置と、ブーム用操作装置と、アーム用操作装置と、バケット用操作装置とが含まれている。各操作装置は、回動操作を受ける操作レバーを有している。走行用操作装置の操作レバー(走行レバー)は、下部走行体110を動かすために操作される。走行レバーは、走行ペダルを兼ねていてもよい。例えば、走行レバーの基部又は下端部に固定されている走行ペダルが設けられていてもよい。
旋回用操作装置の操作レバー(旋回レバー)は、旋回機構130を構成する油圧式の旋回モータを動かすために操作される。ブーム用操作装置の操作レバー(ブームレバー)は、ブームシリンダ142を動かすために操作される。アーム用操作装置の操作レバー(アームレバー)はアームシリンダ144を動かすために操作される。バケット用操作装置の操作レバー(バケットレバー)はバケットシリンダ146を動かすために操作される。
操作装置221を構成する各操作レバーは、図2に示されているように、オペレータが着座するためのシートSの周囲に配置されている。シートSは、アームレスト付きのハイバックチェアのような形態であるが、ヘッドレストがないローバックチェアのような形態、又は背もたれがないチェアのような形態、オペレータが着座できる任意の形態であってもよい。
また、シートSの前方に左右のクローラに応じた左右一対の走行レバー2110が左右横並びに配置されている。一の操作レバーが複数の操作レバーを兼ねていてもよい。例えば、図2に示されているシートSの右側フレームの前方に設けられている右側操作レバー2111が、前後方向に操作された場合にブームレバーとして機能し、かつ、左右方向に操作された場合にバケットレバーとして機能してもよい。
同様に、図2に示されているシートSの左側フレームの前方に設けられている左側操作レバー2112が、前後方向に操作された場合にアームレバーとして機能し、かつ、左右方向に操作された場合に旋回レバーとして機能してもよい。レバーパターンは、オペレータの操作指示によって任意に変更されてもよい。
出力インターフェース230を構成する画像出力装置231は、図2に示されているように、シートSの前方に配置されている。また、画像出力装置231の音声を出力する音声出力装置232(スピーカ)を備えている(図示省略)。
無人飛行機40は、制御装置400、無線通信機器410、撮像装置420等を備えている。ここで、無人飛行機40は回転翼機(いわゆる、ドローン)であり、複数(例えば、4、6又は8枚)の羽根、当該複数の羽根を回転させるための電動モータ(アクチュエータ)及びモータ等に電力を供給するバッテリ等を備えている。
無人飛行機40は、作業機械10の入力インターフェース220から指示して動作するが、例えば、遠隔操作装置(コントローラ)を通じて操作するようにしてもよい。
また、無人飛行機40は、点検動作制御システム1において、作業機械10の少なくとも一部分、又はその周辺領域を点検するため利用される。無人飛行機40は、図1に示されるように、待機位置P(本発明の「所定の基準位置」に相当)にセットされ、待機位置Pから移動して点検を実施し、終了すると待機位置Pに戻る。
本実施形態では、無人飛行機40による点検作業時に作業機械10は停止している。しかしながら、待機位置Pは、例えば、作業機械10(上部旋回体120)の旋回中心軸の上空位置のように、作業機械10と無人飛行機40との衝突が起こりにくい位置が好ましい。作業機械10のアームの一部分に基準となる(マーカ)を付けて、その上空位置を待機位置Pとしてもよい。
次に、図3を参照して、作業機械10と無人飛行機40の各システム構成と、各種信号の送受信について説明する。
まず、作業機械10のシステム構成を説明する。作業機械10の制御装置200は、操作装置221を構成する各操作レバーの入力に基づいて、下部走行体110、上部旋回体120、作業機構140等を作動させる。
モード切替装置222は、ボタン式のスイッチやレバーによって、建設作業等を行う「作業モード」と、無人飛行機40により作業機械10の一部分や全体、その周辺領域を点検する「点検モード」とを切り替える装置である。モード切替装置222は、制御装置200に対してモード切替信号(点検開始信号及び作業開始信号)を送信する。なお、モードの切り替え操作は、主に作業機械10の運転者が行うが、安全を確認した上、遠隔操作装置で指示する等、所定の条件が成立したときに行われるようにしてもよい。
制御装置200は、モード切替装置222から点検開始信号を受信したとき、動作規制装置240に動作規制信号を送信する。これにより、例えば、油圧回路がオフされて作業機構140等の動作が規制され、建設作業は行えなくなる。作業機械10の一部の機能のみを停止するようにしてもよい。
また、制御装置200は、モード切替装置222から点検開始信号を受信したとき、当該信号を無線通信機器210の発信機211を通じて無人飛行機40に送信する。これにより、無人飛行機40による点検作業が開始する。無線通信機器210は、本発明の「通信装置」に相当する。
次に、制御装置200は、無線通信機器210の受信機212から映像情報と点検終了信号を受信する。映像情報は、無人飛行機40の撮像装置420が撮像した画像、動画の情報である。制御装置200は、映像情報を出力インターフェース230の画像出力装置231に送信することで、作業機械10の運転者は、前記画像及び動画を確認することができる。
点検終了信号は、点検の終了時に無人飛行機40から送信される信号である。制御装置200は、無線通信機器210の受信機212で点検終了信号を受信し、画像出力装置231及び(又は)音声出力装置232に送信する。これにより、例えば、画像出力装置231で点検が終了した旨が運転者に報知される。画像出力装置231及び音声出力装置232は、本発明の「第1報知手段」及び「第2報知手段」に相当する。
次に、無人飛行機40のシステム構成を説明する。無人飛行機40は、無線通信機器410の受信機412で点検開始信号を受信すると、当該信号は、制御装置400に送信される。これにより、制御装置400は、無人飛行機40による点検作業を開始する。
また、無人飛行機40は、GPS装置430と各種センサ440とを備えている。GPS装置430は、無人飛行機40が現在の飛行位置を取得するため必要であり、位置情報を制御装置400に常時送信する。各種センサ440には、無人飛行機40の傾きを検知し、補正するためのジャイロセンサや地磁気を検知するための磁気方位センサ、無人飛行機40の高度を検知する気圧高度センサや超音波センサ等が含まれる。各センサは、検知信号を制御装置400に常時送信する。
撮像装置420が取得した映像情報は、無線通信機器410の受信機412で受信された後、発信機411を通じて作業機械10に送信される。作業機械10の運転者は、映像情報に基づいて画像及び動画を確認することができるが、特に、作業アタッチメントや掘削している穴の内部等、キャブ122から視認し難い場所の画像等が得られるため有益である。
次に、図4を参照して、点検時の作業機械10と無人飛行機40の各処理、信号の送受信に関するフローチャートを説明する。
まず、作業機械10において、点検モードを入力する(STEP101)。これは、運転者がモード切替装置222(図3参照)により、作業モードから点検モードに切り替える操作である。その後、STEP102に進む。
次に、作業機械10において、操作装置221が中立か否かが判定される(STEP102)。すなわち、点検モードが入力されたとき、作業機械10による作業が停止中(操作装置221が中立)である場合にはSTEP103に進み、そうでない場合にはSTEP101にリターンする。これは、作業機械10の作業中に突然、点検モードに移行しないようにするためであり、作業機械10が非作動状態にあるとき点検モードへの切り替えを許可する。
作業機械10の操作装置221が中立である場合(STEP102で「YES」)、点検モードに切り替えられたことの画像出力を開始する(STEP103)。これは、作業機械10の画像出力装置231(図3参照)で、点検モードの表示を開始する処理である。同時に、音声出力装置232による音声出力で、点検モードの開始を報知してもよい。なお、本ステップにて、作業機械10の操作は無効となる。その後、STEP104に進む。
次に、作業機械10は、点検開始開始信号を送信する(STEP104)。具体的には、作業機械10の無線通信機器210(発信機211)から、無人飛行機40に向けて当該信号が送信される。その後、STEP105に進む。
ここで、無人飛行機40の処理を説明する。まず、無人飛行機40は、点検開始信号を受信したか否かを判定する(STEP401)。作業機械10から送信された点検開始信号を無線通信機器410(受信機412)で受信した場合にはSTEP402に進み、未だ受信していない場合には受信するまでループする。
無人飛行機40が点検開始信号を受信した場合(STEP401で「YES」)、無人飛行機40は、点検のための飛行を開始する(STEP402)。すなわち、制御装置400により無人飛行機40を制御して、作業機械10やその周辺領域を点検する作業を開始する。なお、無人飛行機40は基準位置(上述した待機位置P)にセットされており、そこから始動する。その後、STEP403に進む。
次に、無人飛行機40が点検解除信号を受信したか否かを判定する(STEP403)。ここで、点検解除信号は、無人飛行機40による点検の終了に関わらず、作業機械10の場所を移動させる等の理由で、点検を一時中断する際に送信される信号である。当該信号の送信は必須でないため、作業機械10の処理に含まれていないが、無人飛行機40の作業中の期間であるSTEP104とSTEP105の間に送信される。
作業機械10から送信された点検解除信号を無線通信機器410(受信機412)で受信した場合にはSTEP405に進み、未だ受信していない場合にはSTEP404に進む。
無人飛行機40が点検解除信号を受信していない場合(STEP403で「NO」)、無人飛行機40は、点検が終了したか否かを判定する(STEP404)。無人飛行機40による点検が終了した場合にはSTEP405に進み、終了していない場合には受信するまでSTEP403にリターンする。
無人飛行機40が点検解除信号を受信した場合(STEP403で「YES」)、又は点検が終了した場合(STEP404で「YES」)、無人飛行機40は、点検のための飛行を中止する(STEP405)。具体的には、制御装置400により無人飛行機40を制御して、基準位置(待機位置P)に移動させる。その後、STEP406に進む。
次に、無人飛行機40が基準位置に到達したか否かを判定する(STEP406)。無人飛行機40は、GPS装置430の位置情報、又は撮像装置420による画像、風景等で基準位置へ到達したことを確認する。無人飛行機40が基準位置に到達した場合にはSTEP407に進み、未だ到達していない場合には到達するまでループする。
無人飛行機40が基準位置に到達した場合(STEP406で「YES」)、無人飛行機40は、点検終了信号を送信する(STEP407)。具体的には、無人飛行機40の無線通信機器410(発信機411)から、作業機械10に向けて当該信号が送信される。これで一連の処理が終了となり、STEP401にリターンする。
ここで、再び作業機械10の処理に戻り、作業機械10が点検終了信号を受信したか否かを判定する(STEP105)。無人飛行機40から送信された点検終了信号を無線通信機器210(受信機212)で受信した場合にはSTEP106に進み、未だ受信していない場合には受信するまでループする。
作業機械10が点検終了信号を受信した場合(STEP105で「YES」)、作業機械10は、点検終了を報知する(STEP106)。具体的には、作業機械10の画像出力装置231による表示、及び(又は)音声出力装置232による音声、ブザー等で点検終了が報知されるため、運転者は容易に点検の終了を認識することができる。その後、STEP107に進む。
最後に、作業機械10は、点検モードを解除する(STEP107)。これにより、作業機械10の油圧回路がオンになる等、復帰準備が行われる。その後、運転者がモード切替装置222(図3参照)を操作して点検モードから作業モードに切り替える(作業開始信号を送信)。もちろん、作業も点検も行わないようにしてもよい。これで一連の処理が終了となり、STEP101にリターンする。
このように、作業機械10と無人飛行機40は、それぞれの無線通信機器で各種信号を送受信して、点検作業の開始、終了、中断等を制御する。
次に、図5、図6を参照して、無人飛行機40による点検時の各処理、信号の送受信に関するフローチャートの変更例を説明する。なお、作業機械10が行う処理は、図4のフローチャートと同じである。
図5は、第1の変更例を示すフローチャートであるが、STEP501~507の処理は、図4のSTEP401~407と同じであるため、説明を省略する。図4のフローチャートとの相違点は、無人飛行機40が点検解除信号を受信した場合(STEP503で「YES」)に、無人飛行機40が作業機械の周辺から離脱する点(STEP508)にある。
具体的には、無人飛行機40をアームや作業アタッチメントが届かない領域に退避させる処理であり、このようにすることで、作業機械10と無人飛行機40との接触を確実に回避することができる。なお、その後は、無人飛行機40が点検終了信号を送信する(STEP507)。これで一連の処理が終了となり、STEP501にリターンする。
また、図6は、第2の変更例を示すフローチャートであるが、STEP601~607の処理は、図4のSTEP401~407と同じであるため、説明を省略する。図4のフローチャートとの相違点は、無人飛行機40が点検解除信号を受信した場合(STEP603で「YES」)に、無人飛行機40が基準位置に移動するか、若しくは作業機械の周辺から離脱する点(STEP608)にある。
この処理についても、作業機械10と無人飛行機40との接触を確実に回避するため行われる。その後、STEP609に進む。
次に、無人飛行機40は、一定時間が経過したか否かを判定する(STEP609)。直ちに点検終了信号の送信(STEP607)に進み、作業機械10が「作業モード」に切り替わると、接触のおそれがある。このため、無人飛行機40が確実に基準位置に戻るか、作業機械10の周辺から離脱するのを待つ時間(例えば、30~60秒)を確保するための処理である。
一定時間が経過した場合にはSTEP607に進み、未だ一定時間が経過していない場合には受信するまでループする。一定時間が経過した場合(STEP609で「YES」)、点検終了信号を送信し(STEP607)、その後、一連の処理が終了となり、STEP601にリターンする。
以上のように、実施形態の作業機械10は、無人飛行機40と通信して、安全かつ確実に作業機械10の点検を行うことができる。今回、作業機械10としてクローラショベルの例を挙げ説明したが、これに限られず、クレーン、建設解体機等の様々な作業機械に本発明を適用することができる。無人飛行機についても、そのタイプは問わない。
また、無人飛行機40が撮像した画像及び動画は、作業機械10のキャブ122に設置された画像出力装置231で確認可能であった。しかしながら、運転者がキャブ122から離れて、無人飛行機40の位置を確認しながら画像及び動画を確認できるように、携帯端末で映像情報を受信可能としてもよい。
また、点検作業は、キャブ122に搭乗していない外部の点検作業者が行う場合や、一旦録画した画像により点検を行う場合等もある。このため、点検モード中であることや点検の終了についての報知は、画像出力装置231に代えて、図示しない既存のクラスターの画面に表示させたり、音声出力のみであってもよい。そのようにすることで、画像出力装置231を追加で設置する必要がなくなり、その追加工事やコストアップを抑えることができる。
1‥点検動作制御システム、10‥作業機械、40‥無人飛行機、110‥下部走行体、120‥上部旋回体、122‥クローラショベル、130‥旋回機構、140‥作業機構、141‥ブーム、142‥ブームシリンダ、143‥アーム、144‥アームシリンダ、145‥バケット、146‥バケットシリンダ、200‥制御装置、210‥無線通信機器、211‥発信機、212‥受信機、220‥入力インターフェース、221‥操作装置、222‥モード切替装置、230‥出力インターフェース、231‥画像出力装置、232‥音声出力装置、240‥動作規制装置、400‥制御装置、410‥無線通信機器、411‥発信機、412‥受信機、420‥撮像装置、430‥GPS装置、440‥各種センサ。
本発明は、ショベル、建設解体機等の作業機械に関する。
従来、カメラを備えた飛行体によりショベル等の重機を上空から追跡し、飛行体を遠隔操作する操縦者が、表示装置でカメラによる画像を確認することができるシステムが知られている。このようなシステムは、ショベルの上部旋回体に取り付けられたカメラでは撮像できない空間の検査等のため利用されている。
例えば、下記の特許文献1では、ショベルの上部旋回体の旋回軸上の位置を飛行体の目標飛行位置に設定し、飛行体の位置及び向きを変化させてショベルの動きに追従させている(段落0060~0061、図6A1)。
しかしながら、特許文献1の方法では、飛行体を用いてショベルのアタッチメント等を検査する場合、ショベルの作業中は、カメラで作業状況等を撮像することが難しいという問題があった。また、飛行体のみを制御しているため、ショベルが急に変化した場合等に飛行体と衝突するおそれがあった。
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、飛行体(無人飛行機)と通信して、接触を回避しつつ点検を行うことができる作業機械を提供することを目的とする。
本発明は、動作規制信号を受信した際に、作業機械の動作又は一部の機能を規制または停止させる動作規制装置と、前記動作規制装置に前記動作規制信号を送信する制御装置と、所定の作業を行う作業モードと、点検のための無人飛行機が前記作業機械の少なくとも一部分又は前記作業機械の周辺領域を点検する点検モードとを、運転者の操作又は所定の条件に基づいて切り替えるモード切替装置と、を備えている作業機械であって、前記制御装置は、前記モード切替装置によって前記点検モードに切り替えられたとき、前記動作規制装置に前記動作規制信号を送信することを特徴とする。
また、本発明の作業機械において、走行体をさらに備え、前記動作規制装置は、前記動作規制信号を受信した際に、前記作業機械の前記走行体の動作又は一部の機能を停止することが好ましい。
また、本発明の作業機械において、旋回体をさらに備え、前記動作規制装置は、前記動作規制信号を受信した際に、前記作業機械の前記旋回体の動作又は一部の機能を停止することが好ましい。
また、本発明の作業機械において、作業機構をさらに備え、前記動作規制装置は、前記動作規制信号を受信した際に、前記作業機械の前記作業機構の動作又は一部の機能を停止することが好ましい。
また、本発明の作業機械において、 前記無人飛行機と通信する通信装置を更に備え、
前記モード切替装置によって前記点検モードに切り替えられたとき、前記通信装置を通じて前記無人飛行機に点検開始信号を送信することが好ましい。
また、本発明の作業機械において、前記制御装置は、前記点検モードを解除する場合に、前記点検モードを解除する点検解除信号を送信し、前記無人飛行機を所定の基準位置に移動させることが好ましい。
また、本発明の作業機械において、前記モード切替装置は、前記作業モードにおける前記作業機械の作動状態に基づいて、前記点検モードへの切り替えを許可することが好ましい。
また、前記モード切替装置は、前記作業機械を操作する操作装置が中立時において、前記点検モードへの切り替えを許可することが好ましい。
また、本発明の作業機械において、前記点検モードへの切り替えに伴い、前記作業機械が点検中であることを報知する第1報知手段を備えていることが好ましい。
また、本発明の作業機械において、前記無人飛行機から点検終了信号を受信したとき、前記作業機械の運転者に前記点検モードの終了を報知する第2報知手段を備えていることが好ましい。
実施形態に係る作業機械の概略図。
作業機械の操作機構を説明する図。
本発明の実施形態に係る作業機械及び無人飛行機のシステム構成図。
作業機械と無人飛行機とが行う処理のフローチャート。
無人飛行機が行う処理のフローチャート(第1の変更例)。
無人飛行機が行う処理のフローチャート(第2の変更例)。
以下では、図面を参照しつつ、本発明の作業機械の点検動作制御システムについて説明する。
まず、図1、図2を参照して、点検動作制御システム1を構成する本発明の一実施形態の作業機械10について説明する。
図1に示されている作業機械10は、無人飛行機40と連携しながら所定の作業を遂行する。作業機械10は、例えば、クローラショベル(建設機械)であり、クローラ式の下部走行体110と、下部走行体110に旋回機構130を介して旋回可能に搭載されている上部旋回体120とを備えている。上部旋回体120の前方左側部にはキャブ(運転室)122が設けられている。また、上部旋回体120の前方中央部には作業機構140としての作業アタッチメントが設けられている。
作業機構140は、上部旋回体120に起伏可能に装着されているブーム141と、ブーム141の先端に回動可能に連結されているアーム143と、アーム143の先端に回動可能に連結されているバケット145とを備えている。また、作業機構140には、伸縮可能な油圧シリンダにより構成されるブームシリンダ142、アームシリンダ144及びバケットシリンダ146が装着されている。バケット145に代えてニブラ等の他のアタッチメントがアーム143の先端部に取り付けられていてもよい。
ブームシリンダ142は、作動油の供給を受けることにより伸縮してブーム141を起伏方向に回動させるように当該ブーム141と上部旋回体120との間に介在する。アームシリンダ144は、作動油の供給を受けることにより伸縮して、アーム143をブーム141に対して水平軸回りに回動させるように、当該アーム143と当該ブーム141との間に介在する。バケットシリンダ146は、作動油の供給を受けることにより伸縮してバケット145をアーム143に対して水平軸回りに回動させるように当該バケット145と当該アーム143との間に介在する。
作業機械10は、その内部に制御装置200、無線通信機器210、入力インターフェース220、出力インターフェース230等を備えている。制御装置200は、演算処理装置(シングルコアプロセッサ又はマルチコアプロセッサ若しくはこれを構成するプロセッサコア)により構成され、メモリなどの記憶装置から必要なデータ及びソフトウェアを読み取り、当該データを対象として当該ソフトウェアに基づく演算処理を実行する。
入力インターフェース220を構成する操作装置221には、走行用操作装置と、旋回用操作装置と、ブーム用操作装置と、アーム用操作装置と、バケット用操作装置とが含まれている。各操作装置は、回動操作を受ける操作レバーを有している。走行用操作装置の操作レバー(走行レバー)は、下部走行体110を動かすために操作される。走行レバーは、走行ペダルを兼ねていてもよい。例えば、走行レバーの基部又は下端部に固定されている走行ペダルが設けられていてもよい。
旋回用操作装置の操作レバー(旋回レバー)は、旋回機構130を構成する油圧式の旋回モータを動かすために操作される。ブーム用操作装置の操作レバー(ブームレバー)は、ブームシリンダ142を動かすために操作される。アーム用操作装置の操作レバー(アームレバー)はアームシリンダ144を動かすために操作される。バケット用操作装置の操作レバー(バケットレバー)はバケットシリンダ146を動かすために操作される。
操作装置221を構成する各操作レバーは、図2に示されているように、オペレータが着座するためのシートSの周囲に配置されている。シートSは、アームレスト付きのハイバックチェアのような形態であるが、ヘッドレストがないローバックチェアのような形態、又は背もたれがないチェアのような形態、オペレータが着座できる任意の形態であってもよい。
また、シートSの前方に左右のクローラに応じた左右一対の走行レバー2110が左右横並びに配置されている。一の操作レバーが複数の操作レバーを兼ねていてもよい。例えば、図2に示されているシートSの右側フレームの前方に設けられている右側操作レバー2111が、前後方向に操作された場合にブームレバーとして機能し、かつ、左右方向に操作された場合にバケットレバーとして機能してもよい。
同様に、図2に示されているシートSの左側フレームの前方に設けられている左側操作レバー2112が、前後方向に操作された場合にアームレバーとして機能し、かつ、左右方向に操作された場合に旋回レバーとして機能してもよい。レバーパターンは、オペレータの操作指示によって任意に変更されてもよい。
出力インターフェース230を構成する画像出力装置231は、図2に示されているように、シートSの前方に配置されている。また、画像出力装置231の音声を出力する音声出力装置232(スピーカ)を備えている(図示省略)。
無人飛行機40は、制御装置400、無線通信機器410、撮像装置420等を備えている。ここで、無人飛行機40は回転翼機(いわゆる、ドローン)であり、複数(例えば、4、6又は8枚)の羽根、当該複数の羽根を回転させるための電動モータ(アクチュエータ)及びモータ等に電力を供給するバッテリ等を備えている。
無人飛行機40は、作業機械10の入力インターフェース220から指示して動作するが、例えば、遠隔操作装置(コントローラ)を通じて操作するようにしてもよい。
また、無人飛行機40は、点検動作制御システム1において、作業機械10の少なくとも一部分、又はその周辺領域を点検するため利用される。無人飛行機40は、図1に示されるように、待機位置P(本発明の「所定の基準位置」に相当)にセットされ、待機位置Pから移動して点検を実施し、終了すると待機位置Pに戻る。
本実施形態では、無人飛行機40による点検作業時に作業機械10は停止している。しかしながら、待機位置Pは、例えば、作業機械10(上部旋回体120)の旋回中心軸の上空位置のように、作業機械10と無人飛行機40との衝突が起こりにくい位置が好ましい。作業機械10のアームの一部分に基準となる(マーカ)を付けて、その上空位置を待機位置Pとしてもよい。
次に、図3を参照して、作業機械10と無人飛行機40の各システム構成と、各種信号の送受信について説明する。
まず、作業機械10のシステム構成を説明する。作業機械10の制御装置200は、操作装置221を構成する各操作レバーの入力に基づいて、下部走行体110、上部旋回体120、作業機構140等を作動させる。
モード切替装置222は、ボタン式のスイッチやレバーによって、建設作業等を行う「作業モード」と、無人飛行機40により作業機械10の一部分や全体、その周辺領域を点検する「点検モード」とを切り替える装置である。モード切替装置222は、制御装置200に対してモード切替信号(点検開始信号及び作業開始信号)を送信する。なお、モードの切り替え操作は、主に作業機械10の運転者が行うが、安全を確認した上、遠隔操作装置で指示する等、所定の条件が成立したときに行われるようにしてもよい。
制御装置200は、モード切替装置222から点検開始信号を受信したとき、動作規制装置240に動作規制信号を送信する。これにより、例えば、油圧回路がオフされて作業機構140等の動作が規制され、建設作業は行えなくなる。
作業機械10の一部の機能のみを停止するようにしてもよい。
また、制御装置200は、モード切替装置222から点検開始信号を受信したとき、当該信号を無線通信機器210の発信機211を通じて無人飛行機40に送信する。これにより、無人飛行機40による点検作業が開始する。無線通信機器210は、本発明の「通信装置」に相当する。
次に、制御装置200は、無線通信機器210の受信機212から映像情報と点検終了信号を受信する。映像情報は、無人飛行機40の撮像装置420が撮像した画像、動画の情報である。制御装置200は、映像情報を出力インターフェース230の画像出力装置231に送信することで、作業機械10の運転者は、前記画像及び動画を確認することができる。
点検終了信号は、点検の終了時に無人飛行機40から送信される信号である。制御装置200は、無線通信機器210の受信機212で点検終了信号を受信し、画像出力装置231及び(又は)音声出力装置232に送信する。これにより、例えば、画像出力装置231で点検が終了した旨が運転者に報知される。画像出力装置231及び音声出力装置232は、本発明の「第1報知手段」及び「第2報知手段」に相当する。
次に、無人飛行機40のシステム構成を説明する。無人飛行機40は、無線通信機器410の受信機412で点検開始信号を受信すると、当該信号は、制御装置400に送信される。これにより、制御装置400は、無人飛行機40による点検作業を開始する。
また、無人飛行機40は、GPS装置430と各種センサ440とを備えている。GPS装置430は、無人飛行機40が現在の飛行位置を取得するため必要であり、位置情報を制御装置400に常時送信する。各種センサ440には、無人飛行機40の傾きを検知し、補正するためのジャイロセンサや地磁気を検知するための磁気方位センサ、無人飛行機40の高度を検知する気圧高度センサや超音波センサ等が含まれる。各センサは、検知信号を制御装置400に常時送信する。
撮像装置420が取得した映像情報は、無線通信機器410の受信機412で受信された後、発信機411を通じて作業機械10に送信される。作業機械10の運転者は、映像情報に基づいて画像及び動画を確認することができるが、特に、作業アタッチメントや掘削している穴の内部等、キャブ122から視認し難い場所の画像等が得られるため有益である。
次に、図4を参照して、点検時の作業機械10と無人飛行機40の各処理、信号の送受信に関するフローチャートを説明する。
まず、作業機械10において、点検モードを入力する(STEP101)。これは、運転者がモード切替装置222(図3参照)により、作業モードから点検モードに切り替える操作である。その後、STEP102に進む。
次に、作業機械10において、操作装置221が中立か否かが判定される(STEP102)。すなわち、点検モードが入力されたとき、作業機械10による作業が停止中(操作装置221が中立)である場合にはSTEP103に進み、そうでない場合にはSTEP101にリターンする。これは、作業機械10の作業中に突然、点検モードに移行しないようにするためであり、作業機械10が非作動状態にあるとき点検モードへの切り替えを許可する。
作業機械10の操作装置221が中立である場合(STEP102で「YES」)、点検モードに切り替えられたことの画像出力を開始する(STEP103)。これは、作業機械10の画像出力装置231(図3参照)で、点検モードの表示を開始する処理である。同時に、音声出力装置232による音声出力で、点検モードの開始を報知してもよい。なお、本ステップにて、作業機械10の操作は無効となる。その後、STEP104に進む。
次に、作業機械10は、点検開始開始信号を送信する(STEP104)。具体的には、作業機械10の無線通信機器210(発信機211)から、無人飛行機40に向けて当該信号が送信される。その後、STEP105に進む。
ここで、無人飛行機40の処理を説明する。まず、無人飛行機40は、点検開始信号を受信したか否かを判定する(STEP401)。作業機械10から送信された点検開始信号を無線通信機器410(受信機412)で受信した場合にはSTEP402に進み、未だ受信していない場合には受信するまでループする。
無人飛行機40が点検開始信号を受信した場合(STEP401で「YES」)、無人飛行機40は、点検のための飛行を開始する(STEP402)。すなわち、制御装置400により無人飛行機40を制御して、作業機械10やその周辺領域を点検する作業を開始する。なお、無人飛行機40は基準位置(上述した待機位置P)にセットされており、そこから始動する。その後、STEP403に進む。
次に、無人飛行機40が点検解除信号を受信したか否かを判定する(STEP403)。ここで、点検解除信号は、無人飛行機40による点検の終了に関わらず、作業機械10の場所を移動させる等の理由で、点検を一時中断する際に送信される信号である。当該信号の送信は必須でないため、作業機械10の処理に含まれていないが、無人飛行機40の作業中の期間であるSTEP104とSTEP105の間に送信される。
作業機械10から送信された点検解除信号を無線通信機器410(受信機412)で受信した場合にはSTEP405に進み、未だ受信していない場合にはSTEP404に進む。
無人飛行機40が点検解除信号を受信していない場合(STEP403で「NO」)、無人飛行機40は、点検が終了したか否かを判定する(STEP404)。無人飛行機40による点検が終了した場合にはSTEP405に進み、終了していない場合には受信するまでSTEP403にリターンする。
無人飛行機40が点検解除信号を受信した場合(STEP403で「YES」)、又は点検が終了した場合(STEP404で「YES」)、無人飛行機40は、点検のための飛行を中止する(STEP405)。具体的には、制御装置400により無人飛行機40を制御して、基準位置(待機位置P)に移動させる。その後、STEP406に進む。
次に、無人飛行機40が基準位置に到達したか否かを判定する(STEP406)。無人飛行機40は、GPS装置430の位置情報、又は撮像装置420による画像、風景等で基準位置へ到達したことを確認する。無人飛行機40が基準位置に到達した場合にはSTEP407に進み、未だ到達していない場合には到達するまでループする。
無人飛行機40が基準位置に到達した場合(STEP406で「YES」)、無人飛行機40は、点検終了信号を送信する(STEP407)。具体的には、無人飛行機40の無線通信機器410(発信機411)から、作業機械10に向けて当該信号が送信される。これで一連の処理が終了となり、STEP401にリターンする。
ここで、再び作業機械10の処理に戻り、作業機械10が点検終了信号を受信したか否かを判定する(STEP105)。無人飛行機40から送信された点検終了信号を無線通信機器210(受信機212)で受信した場合にはSTEP106に進み、未だ受信していない場合には受信するまでループする。
作業機械10が点検終了信号を受信した場合(STEP105で「YES」)、作業機械10は、点検終了を報知する(STEP106)。具体的には、作業機械10の画像出力装置231による表示、及び(又は)音声出力装置232による音声、ブザー等で点検終了が報知されるため、運転者は容易に点検の終了を認識することができる。その後、STEP107に進む。
最後に、作業機械10は、点検モードを解除する(STEP107)。これにより、作業機械10の油圧回路がオンになる等、復帰準備が行われる。その後、運転者がモード切替装置222(図3参照)を操作して点検モードから作業モードに切り替える(作業開始信号を送信)。もちろん、作業も点検も行わないようにしてもよい。これで一連の処理が終了となり、STEP101にリターンする。
このように、作業機械10と無人飛行機40は、それぞれの無線通信機器で各種信号を送受信して、点検作業の開始、終了、中断等を制御する。
次に、図5、図6を参照して、無人飛行機40による点検時の各処理、信号の送受信に関するフローチャートの変更例を説明する。なお、作業機械10が行う処理は、図4のフローチャートと同じである。
図5は、第1の変更例を示すフローチャートであるが、STEP501~507の処理は、図4のSTEP401~407と同じであるため、説明を省略する。図4のフローチャートとの相違点は、無人飛行機40が点検解除信号を受信した場合(STEP503で「YES」)に、無人飛行機40が作業機械の周辺から離脱する点(STEP508)にある。
具体的には、無人飛行機40をアームや作業アタッチメントが届かない領域に退避させる処理であり、このようにすることで、作業機械10と無人飛行機40との接触を確実に回避することができる。なお、その後は、無人飛行機40が点検終了信号を送信する(STEP507)。これで一連の処理が終了となり、STEP501にリターンする。
また、図6は、第2の変更例を示すフローチャートであるが、STEP601~607の処理は、図4のSTEP401~407と同じであるため、説明を省略する。図4のフローチャートとの相違点は、無人飛行機40が点検解除信号を受信した場合(STEP603で「YES」)に、無人飛行機40が基準位置に移動するか、若しくは作業機械の周辺から離脱する点(STEP608)にある。
この処理についても、作業機械10と無人飛行機40との接触を確実に回避するため行われる。その後、STEP609に進む。
次に、無人飛行機40は、一定時間が経過したか否かを判定する(STEP609)。直ちに点検終了信号の送信(STEP607)に進み、作業機械10が「作業モード」に切り替わると、接触のおそれがある。このため、無人飛行機40が確実に基準位置に戻るか、作業機械10の周辺から離脱するのを待つ時間(例えば、30~60秒)を確保するための処理である。
一定時間が経過した場合にはSTEP607に進み、未だ一定時間が経過していない場合には受信するまでループする。一定時間が経過した場合(STEP609で「YES」)、点検終了信号を送信し(STEP607)、その後、一連の処理が終了となり、STEP601にリターンする。
以上のように、実施形態の作業機械10は、無人飛行機40と通信して、安全かつ確実に作業機械10の点検を行うことができる。今回、作業機械10としてクローラショベルの例を挙げ説明したが、これに限られず、クレーン、建設解体機等の様々な作業機械に本発明を適用することができる。無人飛行機についても、そのタイプは問わない。
また、無人飛行機40が撮像した画像及び動画は、作業機械10のキャブ122に設置された画像出力装置231で確認可能であった。しかしながら、運転者がキャブ122から離れて、無人飛行機40の位置を確認しながら画像及び動画を確認できるように、携帯端末で映像情報を受信可能としてもよい。
また、点検作業は、キャブ122に搭乗していない外部の点検作業者が行う場合や、一旦録画した画像により点検を行う場合等もある。このため、点検モード中であることや点検の終了についての報知は、画像出力装置231に代えて、図示しない既存のクラスターの画面に表示させたり、音声出力のみであってもよい。そのようにすることで、画像出力装置231を追加で設置する必要がなくなり、その追加工事やコストアップを抑えることができる。
(本願発明の別の実施形態)
本発明の作業機械10は、下部走行体110と、下部走行体110に対して旋回可能な上部旋回体120と、上部旋回体120から延在する作業機構140と、下部走行体110、上部旋回体120及び作業機構140のそれぞれの動作態様を制御する制御装置200と、点検のための無人飛行機40と通信する通信装置と、を備えていてもよい。作業機械10は、所定の作業を行う作業モードと、無人飛行機40が作業機械10の少なくとも一部分又は作業機械10の周辺領域を点検する点検モードとを、運転者の操作又は所定の条件に基づいて切り替えるモード切替装置222をさらに備え、制御装置200は、モード切替装置222により点検モードに切り替えられたとき、作業機械10の作業機構140、旋回機構130および下部走行体110の少なくとも1つの動作又は一部の機能を停止し、通信装置を通じて無人飛行機40に点検開始信号を送信し、無人飛行機40が点検を終了し、所定の基準位置に移動したとき送信する点検終了信号に基づいて動作又は一部の機能の復帰準備を行ってもよい。
本発明の作業機械10では、運転者の操作又は所定の条件が満たされ、点検モードに切り替えられた場合に、制御装置200が作業機械10の動作又は一部の機能を停止するとともに、無人飛行機40に向けて点検開始信号を送信する。無人飛行機40は、点検開始信号を受信すると、作業機械10の少なくとも一部分又は周辺領域の点検を開始する。
また、作業機械10は、無人飛行機40から点検終了信号を受信すると、制御装置200によって動作又は一部の機能の復帰準備を行うため、再び作業モードに移行する。このように、所定の作業を行わない点検モードにおいて無人飛行機40を飛行させるため、作業機械10と無人飛行機40との衝突を回避しながら、作業機械10の点検を行うことができる。
本発明の作業機械10において、制御装置200は、点検モードを解除する場合に、点検モードを解除する点検解除信号を送信し、無人飛行機40を所定の基準位置に移動させることが好ましい。
無人飛行機40は、点検作業中に作業機械10から点検モードの点検解除信号を受信することがある。この場合、間もなく作業モードに移行する可能性があるため、制御装置400は、無人飛行機40による点検を中止し、所定の基準位置に移動するように制御する。これにより、作業機械10の始動によって作業機構140(アーム143、作業アタッチメント等)が急に動作して、無人飛行機40と接触するおそれを低減することができる。
また、本発明の作業機械10において、モード切替装置222は、作業モードにおける作業機械10の作動状態に基づいて、点検モードへの切り替えを許可することが好ましい。
この構成によれば、作業機械10のモード切替装置222は、作業機械10の作動状態(アーム143やアタッチメントが作動しているか否か)によって、点検モードへの切り替えを許可する。例えば、作業機械が停止している非作動状態にあるとき点検モードへの切り替えを許可することで、作業機械10と無人飛行機40との接触を回避することができる。
また、本発明の作業機械10において、点検モードへの切り替えに伴い、作業機械10が点検中であることを報知する第1報知手段を備えていることが好ましい。
この構成によれば、作業機械10は第1報知手段を備えており、第1報知手段は、作業モードから点検モードへの切り替えられた際、点検中であることを報知する。これにより、作業機械10の運転者は、現在、点検中であることを容易に認識することができる。
また、本発明の作業機械10において、無人飛行機40から点検終了信号を受信したとき、作業機械10の運転者に点検モードの終了を報知する第2報知手段を備えていることが好ましい。
この構成によれば、無人飛行機40による点検が終了したとき、無人飛行機40から作業機械10に点検終了信号が送信される。また、作業機械10は第2報知手段を備えており、作業機械10が点検終了信号を受信したとき、第2報知手段によりその旨が報知される。これにより、作業機械10の運転者は、点検が終了したことを容易に認識することができる。
1‥点検動作制御システム、10‥作業機械、40‥無人飛行機、110‥下部走行体、120‥上部旋回体、122‥クローラショベル、130‥旋回機構、140‥作業機構、141‥ブーム、142‥ブームシリンダ、143‥アーム、144‥アームシリンダ、145‥バケット、146‥バケットシリンダ、200‥制御装置、210‥無線通信機器、211‥発信機、212‥受信機、220‥入力インターフェース、221‥操作装置、222‥モード切替装置、230‥出力インターフェース、231‥画像出力装置、232‥音声出力装置、240‥動作規制装置、400‥制御装置、410‥無線通信機器、411‥発信機、412‥受信機、420‥撮像装置、430‥GPS装置、440‥各種センサ。