JP2023113513A - 繊維強化熱可塑性樹脂シートの製造方法 - Google Patents

繊維強化熱可塑性樹脂シートの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 ダブルベルトプレス装置を使用して、繊維間に熱可塑性樹脂が含浸済みの予備成形体から、シート表面の損傷を避け、シート内部まで十分に積層させた予備成形体が密着することで、内部ボイドが極めて少ない繊維強化熱可塑性樹脂シートの製造方法を提供する。【解決手段】 強化繊維と熱可塑性樹脂とを含有する繊維強化熱可塑性樹脂シートの製造方法であって、各種工程を有し、特にダブルベルトプレス装置を用いて連続的に行われ、ダブルベルトプレス装置が、上部ベルトと下部ベルトでプレスする領域に、装置入口側から、積層された予備成形体を予熱する予熱部、積層された予備成形体の加熱と加圧を同時に行い再溶融する加熱部、及び再溶融された予備成形体の冷却と加圧を同時に行い密着固化する冷却部をこの順で有し、各部で特定の条件を満たす繊維強化熱可塑性樹脂シートの製造方法である。【選択図】 なし

Description

本発明は、ダブルベルトプレス装置を用いた、繊維強化熱可塑性樹脂シートの製造方法に関する。より詳細には、連続強化繊維を開繊後、熱可塑性樹脂槽を通し熱可塑性樹脂にて連続含浸させた後、カッティングして予備成形体を用いて、ダブルベルトプレス装置において、カッティングした予備成形体を積層堆積させ、加熱・加圧しながら予備成形体における熱可塑性樹脂を再溶融させ、予備成形体間を密着、冷却固化させて連続シート化することを特徴とする繊維強化熱可塑性樹脂成形体の製造方法に関する。
近年、繊維強化熱可塑性樹脂シートが成形用中間体として、または成形品として幅広く用いられている。特に、成形用中間体はスタンパブルシートと呼ばれ、例えば、所定の形状に切断され、遠赤外線加熱などにより熱可塑性樹脂の軟化点または融点付近、あるいはそれ以上の温度まで加熱され、所定の温度の金型に配置され、そして加圧および冷却固化されて最終成形品に成形される。
このような繊維強化熱可塑性樹脂シート成形用中間体は、従来、強化繊維(例えば、ガラス繊維、炭素繊維)のマット状物(例えば、チョップストランドマット)または引きそろえ品などに、熱可塑性樹脂の粉体、フィルムまたはシートを、少なくとも熱可塑性樹脂の軟化点または融点よりも高い温度で溶融含浸させて製造される。
上記繊維強化熱可塑性樹脂シート成形用中間体としては、エネルギー問題、環境問題の観点から、高剛性、高強度で軽量化効果の高い繊維強化樹脂が注目されている。特に、マトリックス樹脂としての熱可塑性樹脂を用いる繊維強化熱可塑性樹脂は、加工性、耐衝撃性に優れており、自動車等の車両分野や、建築分野への適用が検討されている。その際、最終製品の形状の特性上、成形用中間体には、大判である要望が強い。その点、ダブルベルトプレス装置は、機台TD方向は機台のベルト幅で制約を受けるものの、MD方向は長さの制約は受けないため成形用中間体の製造には好適である。
繊維樹脂強化熱可塑性樹脂シート成形用中間体の製造方法として、ダブルベルトプレス装置による製造方法の例としては、以下のようなものがある。
例えば特許文献1では、ダブルベルトプレス方式によって繊維強化熱可塑性樹脂抄造ウェブをシートに成形する方法で、均一厚みの表面形状の優れた高強度のシート状成形品が連続的に作ることを目的しているが、ダブルベルトプレス装置において、加熱領域はトップロール1か所のみであり、それ以降の4か所のロールはすべて冷却領域である。そのため、当該装置前に予備加熱装置が必要であり、ダブルベルトプレス装置のみで繊維強化樹脂熱可塑性樹脂シートの成形は困難である。
特許文献2は、ダブルベルトプレス装置において、プレス成形品が多様化する中で、押圧形態が異なる多種多様のプレス成形品を製造するには、製造すべきプレス成形品ごとに機台各ゾーンにおける押圧ユニットを選択することを特徴とする発明であるが、カッティングした強化繊維間に熱可塑性樹脂が含浸済みである予備成形体を積層堆積させ、加熱・加圧しながら予備成形体における熱可塑性樹脂を再溶融させ、予備成形体を密着、冷却固化させてシート化する際の各ゾーンの選択については、具体的な開示がない。
特許文献3は、繊維強化熱可塑性樹脂シートを製造するにあたって、高強度でばらつきの少ない繊維強化プラスチックの製造に関する発明である。強化繊維および熱可塑性樹脂を含む一方向プリプレグが、繊維がランダムになるように積層する方法であり、特許文献2と同様、カッティングした強化繊維間に熱可塑性樹脂が含浸済みである予備成形体を積層堆積させたものを、ダブルベルトプレス装置にてシート化する手法については記載がない。
特許文献4は、強化繊維を不織布、マトリックス樹脂をポリイミドと想定したダブルベルトプレス装置を用いた繊維強化熱可塑性樹脂シートの製造方法であり、加熱ゾーンと冷却ゾーンにおいて下ベルトと上ベルト間の距離を規定した特許である。具体的には、加熱ゾーンは機台入口側から出口側に向かって徐々に上下のベルト間を狭く、冷却ゾーンにおいては上下のベルト間の傾斜をつけずに平行としている。あらかじめ繊維間に熱可塑性樹脂が含浸させた不連続の予備成形体をベルト上に積層させ、ダブルベルトプレス装置にて良品を生産することを想定した機台条件設定ではない。
特開平5-245866号公報 特開2014-221490号公報 特開2018-203907号公報 国際公開WO2021/050078号
上記の方法、特に特許文献4の方法では、ダブルベルトプレス機を用いた繊維強化熱可塑性シートの製造において、加熱ゾーンと冷却ゾーンの2つのゾーンに区分し、それぞれのゾーンにおいて上下のベルト間の距離について規定している。まず、加熱ゾーンについては、上下のベルト間を出口側に向かって狭くしている。しかし、特許文献4とは異なる素材、具体的には強化繊維間に熱可塑性樹脂の含浸が完了している予備成形体を積層させて一体化させ繊維強化熱可塑性樹脂シートとする場合、予備成形体に十分に熱が付与されていない段階において無理に上下のベルト間の距離を狭くする設定にすると、繊維強化熱可塑性樹脂シート表面がベルトによって乱され損傷する。表面が損傷した繊維強化熱可塑性樹脂シートは、後工程で成形加工を行う際、加熱時に強化繊維が面外方向に飛び出すスプリングバックと呼ばれる不具合を発生する原因ともなる。また、冷却ゾーンにおいても上下のベルト間の距離を等しく設定すると、繊維強化熱可塑性樹脂シートが冷却過程において成形後収縮する過程の中で、十分な加圧ができず、繊維強化熱可塑性樹脂シート内の微細ボイド等の残留、繊維強化熱可塑性樹脂シート表面のヒケなどの不具合原因となる。
本発明は、上記従来の課題を解決するためになされたものである。その目的とするところは、ダブルベルトプレス装置を使用して、繊維間に熱可塑性樹脂が含浸済みの予備成形体を用いた繊維強化熱可塑性樹脂シートの良品を生産することである。シート表面の損傷を避け、シート内部まで十分に積層させた予備成形体が密着することで、内部ボイドが極めて少ない良品シートの製造方法を提供することにある。
本発明者は、鋭意検討を行った結果、ダブルベルトプレス装置を用いること、特にダブルベルトプレス装置における各部の条件を最適化することで、良品の繊維強化熱可塑性シートを生産する方法に改善した。
本発明は以下の通りである。
[1] 強化繊維と熱可塑性樹脂とを含有する繊維強化熱可塑性樹脂シートの製造方法であって、
連続強化繊維の繊維束を開繊する開繊工程、
開繊された連続強化繊維の繊維束を溶融した熱可塑性樹脂を含む槽に通して熱可塑性樹脂を含浸する含浸工程、
熱可塑性樹脂を含浸した連続強化繊維の繊維束を賦形ローラーで潰し、冷却固化してテープ状プリプレグとする冷却固化工程、
テープ状プリプレグをカッティングして予備成形体とするカッティング工程、
予備成形体を強化繊維の方向が面内ランダムとなるように積層する積層工程、及び
積層された予備成形体を一体化して繊維強化熱可塑性樹脂シートとする一体化工程
を有し、
前記一体化工程が、ダブルベルトプレス装置を用いて連続的に行われ、ダブルベルトプレス装置が、上部ベルトと下部ベルトでプレスする領域に、装置入口側から、積層された予備成形体を予熱する予熱部、積層された予備成形体の加熱と加圧を同時に行い再溶融する加熱部、及び再溶融された予備成形体の冷却と加圧を同時に行い密着固化する冷却部をこの順で有し、各部で下記の条件を満たすことを特徴とする繊維強化熱可塑性樹脂シートの製造方法。
予熱部:積層された予備成形体の厚みの変動に応じて、上部ベルトと下部ベルトの間のクリアランスが追従して変動する
加熱部:上部ベルトと下部ベルトの間のクリアランスが、装置入口側に比べて装置出口側が0.5mm~10mm小さい
冷却部:上部ベルトと下部ベルトの間のクリアランスが、装置入口側に比べて装置出口側が0.2mm~5mm小さい
[2] 前記予備成形体が、長さ5mm~100mm、幅4mm~60mm、厚み0.05mm~0.4mmの短冊状であることを特徴とする、[1]に記載の繊維強化熱可塑性樹脂シートの製造方法。
[3] 前記繊維強化熱可塑性樹脂シートに含有される強化繊維と熱可塑性樹脂との質量比が85/15~30/70の範囲である、[1]又は[2]に記載の繊維強化熱可塑性樹脂シートの製造方法。
[4] 前記繊維強化熱可塑性樹脂シートに含有される強化繊維が、ガラス繊維又は/及び炭素繊維である、[1]~[3]のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂シートの製造方法。
[5] 前記繊維強化熱可塑性樹脂シートが、厚み1~10mmの範囲である、[1]~[4]のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂シートの製造方法。
本発明により、外観良好で内部ボイドが極めて少ない繊維強化熱可塑性樹脂シートを得ることができる。予備成形体が十分に加熱されていない状態で必要以上に加圧を避けることでシート表面の損傷を回避し、シート内のボイドを効果的に外に排出することで、高い工程安定性と廃棄する予備成形体量も少なくなるという効果も有する。
本明細書において、「予備成形体」とは、連続強化繊維と熱可塑性樹脂を含有し、これを短冊状にカットしたものである。したがって、後工程であるダブルベルトプレス装置において予備成形体を積層して、繊維強化熱可塑性樹脂シートに成形後、所望の最終成形体に再成形が可能である。
[強化繊維]
強化繊維は特に限定されないが、代表例としては、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、ガラス繊維などの無機繊維、ボロン繊維などの金属繊維、アラミド繊維などの有機繊維が挙げられる。コスト、ならびに得られる成形品の弾性率および機械的強度の点から、ガラス繊維、炭素繊維などの無機繊維が好ましい。
[熱可塑性樹脂]
熱可塑性樹脂は特に限定されないが、代表例としては、ポリアミド6、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド46などのポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。これら熱可塑性樹脂は、変性されたものであっても良い。
特に好ましい熱可塑性樹脂の代表例は、以下の通りである。これらは、成形品の用途(または所望の特性)に応じて、適宜使用され得る。
(1)低コスト、成形時の流動性、耐水性、耐熱水性、または耐化学薬品性が要求される場合には、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。入手が容易であるという理由で、ポリプロピレンが特に好ましく、本発明においては、酸変性されたポリプロピレンを用いることが好ましい。前述の強化繊維との接着性に特に優れるからである。
(2)耐摩耗性、耐油性、または長期耐熱特性が要求される場合には、ポリアミド系樹脂が好ましく、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミドMXD6樹脂が特に好ましい。
(3)耐熱性、機械的強度、クリープ特性、耐薬品性、または耐油性が要求される場合には、ポリエステル系樹脂が好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
[開繊工程]
本発明は、連続強化繊維の繊維束を開繊する開繊工程を有する。開繊工程は、撚りが殆ど入らない状態で行われるのが望ましく、通常、ローラーおよび空気開繊工程が用いられるが、これに限定されるものではない。
[含浸工程]
本発明は、開繊された連続強化繊維の繊維束を溶融した熱可塑性樹脂を含む槽に通して熱可塑性樹脂を含浸する含浸工程を有する。本発明で使用される含浸装置は、熱可塑性樹脂の融点以上の温度で、熱可塑性樹脂を溶融し充填した高圧の槽(以下、樹脂槽と称する場合もある)内にて、連続強化繊維に熱可塑性樹脂を含浸させるものである。
熱可塑性樹脂を連続的に効率よく含浸させるため、0.1MPa以上の圧力を有する樹脂槽を通すのが好ましい。0.1MPa未満である場合、含浸性が十分に得られにくくなる。樹脂槽内の圧力は高い方がより含浸性が向上し好ましく、より好ましくは0.3MPa以上、更に好ましくは、0.5MPa以上である。樹脂槽内の圧力は高い方がより含浸性が向上し好ましいが、設備コストも高くなるので、2MPa以下であることが好ましい。また、連続強化繊維が樹脂槽に入る前に、樹脂吐出スリットを有する曲面ダイに接触させる事が好ましい。樹脂吐出スリットから溶融させた熱可塑性樹脂を吐出させて、連続強化繊維の繊維束が曲面ダイに接触している側から熱可塑性樹脂の一部を含浸させることで、連続強化繊維が開繊された状態を保持したまま、プレ含浸が良好に行われ得るためである。
[冷却固化工程]
本発明は、熱可塑性樹脂を含浸した連続強化繊維の繊維束を賦形ローラーで潰し、冷却固化してテープ状プリプレグとする冷却固化工程を有する。樹脂槽を通過した連続強化繊維は、引取張力により集束しやすく、この状態では連続強化繊維の細部に熱可塑性樹脂が含浸しきれていない。賦形ローラーで潰し冷却固化させることにより樹脂含浸性と、取り扱い性を向上させることができる。
[テープ状プリプレグ]
テープ状プリプレグに含有される強化繊維と熱可塑性樹脂との質量比(強化繊維/熱可塑性樹脂)は、85/15~30/70である事が好ましく、85/15~50/50である事がより好ましく、85/15~60/40である事がさらに好ましい。この質量比は、予備成形体、繊維強化熱可塑性樹脂シートでも同様である。テープ状プリプレグのサイズは、長さは特に限定されず、幅4mm~60mm、厚み0.05mm~0.4mmが好ましい。幅は10mm~50mmがより好ましい。厚みは0.07mm~0.2mmがより好ましい。
[カッティング工程]
本発明は、テープ状プリプレグをカッティングして予備成形体とするカッティング工程を有する。カッティングは通常、ファンカッターで行われるが、特に限定はされない。
[予備成形体]
生産されたテープ状プリプレグは、使用しやすいようにカッティングし、予備成形体とする。予備成形体のサイズは、長さ5mm~100mm、幅4mm~60mm、厚み0.05mm~0.4mmが好ましい。
厚みが0.05mm未満であると生産効率が悪く、0.4mmを超えると含浸性が不足する傾向となる。厚みは、より好ましくは0.07mm~0.2mmの範囲内である。また幅は4mm未満、もしくは、60mmを超えると、後工程で繊維強化熱可塑性樹脂シートを生産する際に生産効率が悪くなる傾向がある。幅は、より好ましくは10mm~50mmの範囲である。長さに関しても5mm未満、若しくは100mmを超える場合、後工程で繊維強化熱可塑性樹脂シートを生産する際に生産性が悪くなる傾向がある。長さは、より好ましくは10mm~50mmの範囲内である。含有される強化繊維の質量比も85%を超えると樹脂含浸性が不十分となり破壊の起点となりやすく、30%未満の場合、強化繊維補強効果が得られにくくなる。
また、テープ状プリプレグ、及び予備成形体は、必要に応じて、熱劣化防止剤、酸化劣化防止剤、紫外線吸収剤、などの添加剤を含有し得る。これらの添加剤の含有量は、目的に応じて変化し得るが、通常、テープ状プリプレグ、又は予備成形体の質量に対し、それぞれ0.5質量%以下が好ましく、より好ましくはそれぞれ0.2~0.5質量%の範囲内で添加される。添加剤については、繊維強化熱可塑性樹脂シートでも同様である。
[積層工程]
本発明は、予備成形体を強化繊維の方向が面内ランダムとなるように積層する積層工程を有する。予備成形体を散布して積層するための散布口を備える散布部は、所定量の予備成形体を散布口から被散布面に散布することができる限りその構成は特に限定されない。例えば、予備成形体を散布するための散布口は、落下させる予備成形体の重量を調整するための計量部、予備成形体を貯留しておくための貯留槽、貯留槽から計量部へと予備成形体を輸送するための輸送部等を備えていても良い。該装置においては、貯留槽に貯留された予備成形体が、輸送部を経て計量部へと供給され、計量部にて重量調整が行われ、散布口から予備成形体が被散布面へと自由落下する。この際、散布口から被散布面までの環境は、重力以外の外力が加わらない環境とすることが好ましい。なお、該装置の計量部にて予備成形体の重量調整を行う際、計量部のギヤの回転数で調整を行う方式によっても良い。予備成形体を積層させるための積層部は、散布口から散布された予備成形体が被積層面に積層されるような装置である限り、その構成は特に限定されない。被積層面は、通常、散布口の下方に位置し、散布口から重力により落下した予備成形体が、被積層面に積層されるように設定される。本発明では、この積層工程はダブルベルトプレス装置の入口側にある下部ベルト上で行うことが好ましい。そのため、使用するダブルベルトプレス装置の構造として下部ベルト側が上部ベルト側に比較して入口側方向に長い(下部ベルト長>上部ベルト長)装置を採用する方が、延長された装置入口側の下部ベルト上に直接予備成形体を散布することが可能となり、製造工程の設計観点上から好ましい。
[一体化工程]
本発明は、積層された予備成形体を一体化して繊維強化熱可塑性樹脂シートとする一体化工程を有する。一体化工程は、ダブルベルトプレス装置を用いて連続的に行われる。ダブルベルトプレス装置は、上部ベルトと下部ベルトでプレスする領域に、装置入口側から、積層された予備成形体を予熱する予熱部、積層された予備成形体の加熱と加圧を同時に行い再溶融する加熱部、及び再溶融された予備成形体の冷却と加圧を同時に行い密着固化する冷却部をこの順で有する。前記の各部で下記の条件を満たすことが重要である。
予熱部:積層された予備成形体の厚みの変動に応じて、上部ベルトと下部ベルトの間のクリアランスが追従して変動する。
加熱部:上部ベルトと下部ベルトの間のクリアランスが、装置入口側に比べて装置出口側が0.5mm~10mm小さい。
冷却部:上部ベルトと下部ベルトの間のクリアランスが、装置入口側に比べて装置出口側が0.2mm~5mm小さい。
[ダブルベルトプレス装置]
本発明で使用するダブルベルトプレス装置は、上下2つのベルトを備える装置である。下部ベルトは、装置入口側と出口側にそれぞれ回転軸に軸支えされた入口側ドラムと出口側ドラムに装着されている。同様に、上部ベルトも、装置入口側と出口側にそれぞれ回転軸に軸支えされた入口側ドラムと出口側ドラムに装着されている。装着されているベルトはスチール製のエンドレスベルトであり、ドラムの回転と同期してエンドレスに周回する。下部ベルト入口側ドラムと下部ベルト出口側ドラムとの間、並びに上部ベルト入口側ドラムと上部ベルト出口ドラムとの間には、予熱部、加熱部、冷却部が備えられている。
本発明においては、下部ベルトおよび上部ベルトが周回するベルト内へ、散布した予備成形体を供給することで、ダブルベルトプレス装置から付与された熱と圧力により予備成形体中の熱可塑性樹脂が溶融し予備成形体の層間を密着させ、その後、その状態を保持したまま冷却し圧力を加えることで隙間の無い積層状の繊維強化熱可塑性樹脂シートを得ることができる。
本発明で使用するダブルベルトプレス装置の加圧機構としては、一般的に用いられるプレスロール、油圧、振動加圧プレートによるプレスなどが用いられる。散布した予備成形体から積層状の繊維強化熱可塑性樹脂シートを得る過程において、厚みが10分の1程度に急減させながら加圧する必要性があるため、大きな厚み変化に追従性が良いプレスロール方式が好ましい。また、加熱手段としては、特に制限がなく、IRヒーター、温風ヒーター、若しくはオイルを使用した熱媒ヒーターを使用することが可能である。
本発明においては、加熱加圧により、散布した予備成形体をスチールベルトで挟まれた状態で冷却加圧し、繊維強化熱可塑性樹脂シートとする。冷却手段としては、特に制限がなく、冷風や冷却水循環方式や冷媒循環方式などがある。
本発明において、繊維強化熱可塑性樹脂シートは、スチールベルトから剥離した後、装置直交方向に切断される。装置長手方向の長さは任意で設定可能であり、切断手法としては、特に制限がなく、シャーリング刃、ノコ刃などがある。
前述した特徴を持つ本発明で使用するダブルベルトプレス装置は、装置入口側の下部ベルト上に予備成形体を積層させる。積層量は成形体の狙い厚みに相当する重量で管理する。その後、下部ベルト上に積層した予備成形体は、ベルトの搬送によってダブルベルトプレス装置内に搬送される。当該装置内は、前述のとおり3つの成形領域(予熱部、加熱部、冷却部)に区分して設定している。それぞれの領域は、装置入口側より、積層された予備成形体を予熱する予熱部、積層された予備成形体の加熱と加圧を同時に行い再溶融する加熱部、再溶融された予備成形体の冷却と加圧を同時に行い密着固化する冷却部であり、このような領域設定と装置の条件設定が今回の具体的な改善点の特徴でもある。
当該装置において、入口側に近い積層された予備成形体を予熱する予熱部においては、装置入口側から投入された予備成形体に熱を付与し、予備成形体に含まれる熱可塑性樹脂を熱により溶融することで積層された予備成形体間を密着させることを目的としている。その際、予備成形体間が密着する過程で、積層された予備成形体の厚みは装置入口側から出口側に向かって徐々に厚みが小さくなる。装置側の設定として、この積層された予備成形体を予熱する領域においては、装置のクリアランス(上下のベルト間の距離)は特に設定せず、油圧ジャッキ等でシートに積極的に加圧しないことが特徴である。積層された予備成形体が予熱工程を進むに従って厚みが減少し、上部ベルトの自重に任せる形で上部ベルト位置が追従する設定である。
例えば、装置入口側から出口側に向かって積層された予備成形体が予熱工程を進むに従って厚みが減少する以上にクリアランスを狭くして油圧ジャッキ等で加圧設定、あるいは、クリアランスを狙い厚みに相当する厚みに一律調整して油圧ジャッキ等で加圧する設定等で積層された予備成形体を予熱すると、装置内にて積層された予備成形体が詰まり、装置停止につながる不具合を生じる。また、装置停止までに至らない場合においても、得られる繊維強化熱可塑性樹脂シートの表面がベルトによって損傷し毛羽立つことによって、後工程で成形加工を行う際、加熱時に強化繊維が面外方向に飛び出すスプリングバックと呼ばれる不具合を生じる原因にもつながる。予熱部を積層された予備成形体が通過するに従って厚みが小さくなるとともに、自然と上下のベルト間のクリアランスが小さくなる設定により無理なく積層された予備成形体が予熱部を通過することが可能となり、得られる繊維強化熱可塑性樹脂シートの表面の損傷を極小化できる。
前述のとおり、予熱工程におけるクリアランスは特に設定は必要なく、積層された予備成形体が予熱工程を進むに従って厚みが減少し、上部ベルトの自重に任せる形で上部ベルト位置が追従する。したがって、圧力設定も特に必要ない。
予熱部での設定温度は、積層された予備成形体の中心温度が予熱部を通過中に、同じく予備成形体中に含まれる熱可塑性樹脂の融点(Tm)~Tm+100℃になるようにベルト表面温度を設定する。装置の特性上、装置出口で冷却されたベルトが装置入口側で再度加熱され、ベルトから積層された予備成形体に熱が付与される構造であるため、ベルト表面温度が低い場合、予熱工程で十分に積層された予備成形体中心まで熱が付与されず、加熱不足から積層した予備成形体どうしの密着が不完全となり、成形後の繊維強化熱可塑性樹脂シート中に微細ボイドを多く含む等の不良を生じる。逆に、ベルト表面温度が高すぎる場合、予備成形体がベルトとの接触部を中心に過加熱となり、含まれる熱可塑性樹脂由来の焦げ、ベルトへの貼り付き等の不良を生じる。なお、ベルト表面温度の調整は、直接加熱装置の設定温度調整、風量等調整のほか、搬送の速度調整等がある。
当該装置において積層させた予備成形体の加熱と加圧を同時に行う加熱部においては、装置入口側から出口側に向かって上下のベルト間のクリアランスが小さくなる設定、油圧ジャッキ等による加圧が特徴である。この装置設定は、入口側から加熱された予備成形体を更に熱可塑性樹脂の融点(Tm)+50℃以上に加熱し、予備成形体内に含まれるボイドを積極的に装置入口側に抜くためである。加熱部での温度の上限は、熱可塑性樹脂の融点(Tm)+100℃以下であることが好ましい。上下のベルト間のクリアランスの傾斜は、装置入口側に比べて装置出口側が0.5mm~10mm小さいことが重要である。得られる繊維強化熱可塑性樹脂シートの狙い厚みにもよるが0.5mmより小さい場合、積層された予備成形体内のボイドを効果的に抜くことが期待できない。10mmより大きい場合、入口側にて積層された予備成形体とベルト間にすき間が生じる可能性があり好ましくない。上下のベルト間のクリアランスの傾斜(装置入口側と装置出口側の差)は、0.5mm~5mmが好ましく、1mm~3mmがより好ましく、1mm~2mmがさらに好ましい。
加熱部でのクリアランス調整は、前述のとおり装置入口側から出口側に向かって上下のベルト間のクリアランスが小さくなる設定が特徴である。具体的には、装置出口側において得られる繊維強化熱可塑性樹脂シートの厚み相当~厚み相当+1.0mm、装置入口側において装置出口側のクリアランス+0.5mm~10mmが好ましい。仮に適切な加圧力、温度条件としても、クリアランスを適切な設定より狭い方向に設定した場合、加熱部で積層された予備成形体が詰まり、装置停止等の不具合を生じる。逆に、クリアランスを適切な設定より広い方向に設定した場合、積層された予備成形体内のボイドを効果的に装置入口側に抜くことができず、成形後の繊維強化熱可塑性樹脂シート中に微細ボイドを多く含む等の不良を生じる。
加熱部での加圧力は、前述のとおり、積層させた予備成形体内に含まれるボイドを積極的に装置入口側に抜くためのものであり、入口側から出口側に向かってベルト間のクリアランスが小さくなるに従って、積層させた予備成形体に生じる厚み方向に設定クリアランス以上に広がろうとする圧力以上であれば良い。つまり、上部ベルトの自重による加圧力より大きい圧力であれば良い。加圧力が小さい場合、予備成形体中内に含まれるボイドを効果的に装置入口側に抜くことができず、成形後の繊維強化熱可塑性樹脂シート中に微細ボイドを多く含む等の不良を生じる。加圧力が高い場合、クリアランス設定が適切であれば特に問題は生じないが、クリアランス設定が適切でない場合、加熱部で装置内にて積層された予備成形体が詰まり、装置停止につながる不具合を生じる。具体的にはシート狙い厚み以下のクリアランス設定等であり、装置停止までに至らない場合においても、得られる繊維強化熱可塑性樹脂シートの表面がベルトによって損傷し毛羽立つことによって、後工程で成形加工を行う際、加熱時に強化繊維が面外方向に飛び出すスプリングバックと呼ばれる不具合を生じる原因にもつながる。以上から、加熱部における加圧圧力は積層させた予備成形体にかかる面圧相当で経験的に0.1kg/cm以上が好ましく、更に好ましくは1kg/cm以上あれば良い。
加熱部での温度設定は、積層された予備成形体の中心温度が加熱部を通過中に、同じく予備成形体中に含まれる熱可塑性樹脂のTm+50℃~Tm+100℃を保持するようにベルト表面温度を設定する。ベルト表面温度が低い場合、加熱工程で十分に積層された予備成形体中心まで熱が付与されず、加熱不足から積層した予備成形体どうしの密着が不完全となり、成形後の繊維強化熱可塑性樹脂シート中に微細ボイドを多く含む等の不良を生じる。逆に、ベルト表面温度が高すぎる場合、予備成形体がベルトとの接触部を中心に過加熱となり、含まれる熱可塑性樹脂由来の焦げ、ベルトへの貼り付き等の不良を生じる。なお、予熱部、加熱部の加熱方法は特に限定されないが、例えばIRヒーター、温風ヒーター、若しくはオイルを使用した熱媒ヒーターを使用することが可能である。具体的に温風ヒーターを使用する場合、ベルト表面温度の調整は、直接加熱装置の設定温度調整、風量調整等のほか、搬送の速度調整等がある。
当該装置において積層された予備成形体の冷却と加圧を同時に行う冷却部においては、上下のベルト間のクリアランスが装置入口側に比べて装置出口側が小さく、油圧ジャッキ等により積極的な加圧が特徴である。この装置設定は、入口側から加熱、加圧後の再溶融された予備成形体を冷却しながら加圧することで、冷却固化時の成形後収縮に伴う、得られる繊維強化熱可塑性樹脂シート内の微細ボイドを積極的に装置入口側に抜くためである。上下のベルト間のクリアランスの傾斜は、装置入口側に比べて装置出口側が0.2mm~5mm小さいことが重要である。得られる繊維強化熱可塑性樹脂シートの狙い厚みにもよるが、0.2mmより小さい場合、再溶融された予備成形体内のボイドを効果的に抜くことが期待できない。5mmより大きい場合、入口側にて再溶融された予備成形体とベルト間にすき間が生じる可能性があり好ましくない。上下のベルト間のクリアランスの傾斜(装置入口側と装置出口側の差)は、0.2mm~3mmが好ましく、0.3mm~2mmがより好ましく、0.4mm~1mmがさらに好ましい。
冷却部でのクリアランス調整は、前述のとおり装置入口側から出口側に向かって上下のベルト間のクリアランスが小さくなる設定が特徴である。具体的には、装置出口側において得られる繊維強化熱可塑性樹脂シートの厚み相当~厚み相当+0.5mm、装置入口側において装置出口側のクリアランス+0.2mm~5mmが好ましい。仮に適切な加圧力、温度条件であっても、クリアランスを適切な設定より狭く設定した場合、冷却部で積層された予備成形体が詰まり、装置停止等の不具合を生じる。逆に、クリアランスを適切な設定より広く設定した場合、積層された予備成形体中の冷却固化時における体積収縮に伴うボイドを効果的に装置入口側に抜くことができず、成形後の繊維強化熱可塑性樹脂シート中に微細ボイドを多く含む等の不良を生じる。
冷却部での加圧力は、前述のとおり、積層された予備成形体中の冷却固化時における体積収縮に伴うボイドを積極的に装置入口側に抜くためであり、入口側から出口側に向かってベルト間のクリアランスが小さくなるに従って、積層させた予備成形体に生じる厚み方向に設定クリアランス以上に広がろうとする圧力以上であれば良い。つまり、上部ベルトの自重による加圧力より大きい圧力であれば良い。加圧力が小さい場合、予備成形体内に含まれるボイドを効果的に装置入口側に抜くことができず、成形後の繊維強化熱可塑性樹脂シート中に微細ボイドを多く含む等の不良を生じる。逆に加圧力が高い場合、クリアランス設定が適切であれば特に問題は生じないが、クリアランス設定を適切な設定より狭く設定した場合等においては、冷却部で装置内にて積層した予備成形体が通過することができず、装置停止につながる不具合を生じる。あるいは、装置停止までに至らないが、得られる繊維強化熱可塑性樹脂シートの表面がベルトによって損傷し毛羽立つことによって、後工程で成形加工を行う際、シート加熱時に強化繊維が面外方向に飛び出すスプリングバックと呼ばれる不具合を生じる原因にもつながる。加熱時における加圧力は積層させた予備成形体にかかる面圧相当で経験的に0.5kg/cm以上が好ましく、更に好ましくは2kg/cm以上あれば良い。
冷却部での温度は、積層された予備成形体中の中心温度が冷却部を通過中に、同じく予備成形体中に含まれる熱可塑性樹脂が融点(Tm)-20°~融点(Tm)-120℃(非晶性樹脂においてはガラス転移点(Tg)-20℃~ガラス転移点(Tg)-120℃)を到達するようにベルト表面温度を設定する。ベルト表面温度が適切な設定温度より高い場合、装置出口にて成形後の繊維強化熱可塑性シートが冷却不足による装置ベルトからの離形困難、シートの反り等の不具合を生じる。逆にベルト表面温度が適切な設定温度より低い場合、装置および成形後の繊維強化熱可塑性樹脂シートに特段の不具合は生じないが、生産性が犠牲になる。冷却部での設定温度は、積層された予備成形体中の中心温度が冷却部を通過中に同じく予備成形体中に含まれる熱可塑性樹脂のTm-30℃~Tm-100℃(非晶性樹脂においてはTg-30℃~Tg-100℃)がより好ましい。なお、冷却部の冷却機構は特に限定されないが、例えばブロアを使用した空冷方式、チルロールを使用した水冷方式等を使用することが可能である。ベルト表面温度の調整は、直接冷却装置の設定温度調整、風量調整、水量調整等のほか、搬送の速度調整等がある。
装置の速度設定は、得られる繊維強化熱可塑性樹脂シートの狙い厚みによって左右される。一般に狙い厚みが薄いシートの場合、装置ベルトから積層された予備成形体中の中心までの距離が短いため、装置ベルトから伝わる熱が伝わりやすく、温まりやすく、冷えやすい傾向である。従って、装置速度を遅く設定すると、予熱部、加熱部、冷却部の各部を通過する時間が長くなり、結果、特に予熱部、加熱部において、積層された予備成形体の過加熱傾向となりやすく、得られる繊維強化熱可塑性樹脂シートの表面の焦げ等の不具合につながる。また、狙い厚みが厚いシートを成形する場合、装置ベルトから積層された予備成形体の中心までの距離が長いため、装置ベルトから伝わる熱が伝わりにくく、温めにくく、冷えにくい傾向となる。従って装置速度を速く設定すると、予熱部、加熱部、冷却部の各部を通過する時間が短くなり、結果、予熱部、加熱部において積層された予備成形体の加熱不足傾向となりやすく、また、冷却部において積層された予備成形体の冷却不足傾向となりやすく、加熱不足による繊維強化熱可塑性樹脂シート中における予備成形体どうしの密着不足、層間ボイド含有等の不良、冷却不足による装置ベルトからの繊維強化熱可塑性樹脂シートの離形困難、反り等の不具合につながる。そのため、本装置における速度設定は、得られる繊維強化熱可塑性樹脂シートの厚みが薄い場合は速く設定、厚い場合は遅く設定するのが良い。具体的な装置の速度調整方法としては、装置の性能、特に予熱部および加熱部の加熱方法(繊維強化熱可塑性樹脂シートの加熱能力)、冷却部の冷却方法(繊維強化熱可塑性樹脂シートの冷却能力)に左右されるが、各部の温度設定を最適化後、装置の速度を最適化していくのが好ましい。その際、装置各部を通過する積層された予備成形体の中心温度を把握するために、熱電対等の直接温度を測定できる機器にて温度を測定するのが良い。当該検討装置においては、厚みが薄い(厚み1.0~3.0mmt)の繊維強化熱可塑性樹脂シートを成形する際における装置の設定速度は1.0~2.0m/分、厚みが厚い(厚み3.0~10.0mmt)の繊維強化熱可塑性樹脂シートを成形する際における装置の設定速度は0.2~1.0m/分が好ましい。
以上のような各部の設定条件の最適化により、ダブルベルトプレス装置を使用した繊維強化熱可塑性樹脂シートの製造方法により、良品を安定して生産することが可能となる。
[繊維強化熱可塑性樹脂シート]
繊維強化熱可塑性樹脂シートの厚みは、1~10mmの範囲であることが好ましい。成形後シート厚みが1mmより薄い場合、積層された予備成形体の散布ムラ起因のシートの穴が発生しやすい。また、成形後シート厚みが10mmより厚い場合、装置ベルトから積層された予備成形体の中心までの距離が長くなり、予熱部および加熱部においてベルトからの熱が伝わりにくく、加熱不足起因の不良、もしくは冷却部においてベルトに熱が伝わりにくく、冷却不足起因の不良が生じやすくなる。繊維強化熱可塑性樹脂シートの幅は、使用する装置のベルト幅に左右される。ベルトに積層する予備成形体の厚みも関係するが、一般に使用するベルト幅-50mm程度が繊維強化熱可塑性樹脂シートの幅となる。幅方向のシート端部は、元の積層された予備成形体の形状が残るため、装置から成形後、適宜トリミングして整形するのが良い。繊維強化熱可塑性樹脂シートは、装置入口にて予備成形体を積層するため装置出口においてスチールベルトから剥離した後は連続したシート形状として排出される。そのため、そのままではハンドリング性に乏しいため、スチールベルトから繊維強化熱可塑性樹脂シートを剥離後、装置直交方向に切断するのが良い。そのため、繊維強化熱可塑性樹脂シートの長さは任意で設定可能であり、切断手法としては特に制限がなく、シャーリング刃、ノコ刃等がある。成形した繊維強化熱可塑性樹脂シートは、前述したとおり、強化繊維にあらかじめ樹脂を含浸させた予備成形体を使用し、当該装置で積層させて予備成形体間の層間を密着させたシート状物である。そのため、後工程に相当する顧客において、成形物の大きさに合わせて繊維強化熱可塑性樹脂シートを切り出し、含有する熱可塑性樹脂のTm~Tm+100℃に再加熱し、成形用金型に投入し加圧することで任意の形状に成形可能である。成形方法としては、切り出した繊維強化熱可塑性樹脂シートをIRヒーター等の外部熱源を用いて加熱し、あらかじめ結晶化温度付近に調整した金型に投入して加圧成形を行うスタンピング成形法、あるいは同一の金型内で切り出した繊維強化熱可塑性樹脂シートを加熱、冷却を加圧した状態で連続して行うヒート&クール成形法等がある。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
強化繊維として、連続ガラス繊維の繊維束(日本電気硝子(製)製、ER2310-431N、2310Tex、4000f)を直径2cmのローラーに通し開繊後、0.6MPaの圧力を有する酸変性されたポリプロピレン樹脂((株)プライムポリマー製、J139、およびMMP006のブレンド(ブレンド質量比 J139:MMP006=3:1、ブレンド後のMI=40g/10min)、融点160℃)からなる240℃の樹脂槽を通し、樹脂を連続的に含浸させ、その後、賦形ローラーで潰し冷却固化させた後、カッティングし、ガラス繊維75質量部にポリプロピレン樹脂25質量部が含浸されてなる、幅15mm、長さ35mm、厚み0.1mmの短冊状の予備成形体を作製した。
この予備成形体を、ダブルベルトプレス装置(SANDVIK社製)を用いて繊維強化熱可塑性樹脂シートに成形した。なお、ダブルベルトプレス装置の装置概要、各部の製造条件を、以下に記す。
装置全長:7500mm
下部ベルトのプレス長:5220mm(入口側ドラムと出口側ドラムとの間)
上部ベルトのプレス長:4000mm(入口側ドラムと出口側ドラムとの間)
装置ベルト幅:500mm
有効散布幅:450mm(積層させた予備成形体を散布可能な幅)
加圧方式:ロール式
予熱部全長:1500mm
加熱部全長:750mm
冷却部全長:750mm
加圧方式:油圧ジャッキにて各部(予熱部、加熱部、冷却部)の4隅を加圧、内部に格納されている4本のロールに圧力伝達
搬送速度:0.20m/分
予熱部クリアランス:特に設定せず(成形狙い厚み6mmより大幅に広い8.0mmに仮設定した。なお、基材投入時の厚みはおよそ60mm)
加熱部クリアランス:入口側8.0mm、出口側6.5mm(出口側に向かって-1.5mm)
冷却部クリアランス:入口側6.5mm、出口側6.0mm(出口側に向かって-0.5mm)
予熱部加圧力:加圧なし(上部ベルトの自重のみ)
加熱部加圧力:15MPa(油圧ジャッキシリンダー部ゲージ圧)
冷却部加圧力:15MPa(油圧ジャッキシリンダー部ゲージ圧)
予熱部設定温度:260℃(ベルト表面温度、実測)
加熱部設定温度:260℃(ベルト表面温度、実測)
冷却部設定温度:40℃(ベルト表面温度、実測)
狙いクリアランスは装置出口(冷却部出口)で、シート狙い厚み相当に調整した。
上記の設定を行ったダブルベルトプレス装置の入口側ベルト上に、シート狙い厚み6mm相当の予備成形体を積層散布した。その結果、装置中に予備積層体が詰まることもなく、外観良好な繊維強化熱可塑性樹脂シートを得た。また、検品のため、シート内部の観察も行ったが、明瞭なボイドもなく良品であった。
(比較例1)
実施例1において、ダブルベルトプレス装置のクリアランス条件を入口側から出口側にかけてシート狙い厚み相当に全て同じクリアランスに変更した。また、加圧条件も予熱部~冷却部すべてにおいて等しく15MPa加圧した条件である。以下に、比較例1のダブルベルトプレス装置のクリアランスと圧力条件について、記載する。なお、各部の設定温度、搬送速度は実施例1と同一である。
予熱部クリアランス:入口側6.0mm、出口側6.0mm(出口側に向かって傾斜なし。なお、基材投入時の厚みはおよそ60mm)
加熱部クリアランス:入口側6.0mm、出口側6.0mm(出口側に向かって傾斜なし)
冷却部クリアランス:入口側6.0mm、出口側6.0mm(出口側に向かって傾斜なし)
予熱部加圧力:15MPa(油圧ジャッキシリンダーゲージ圧)
加熱部加圧力:15MPa(油圧ジャッキシリンダーゲージ圧)
冷却部加圧力:15MPa(油圧ジャッキシリンダーゲージ圧)
上記の設定を行ったダブルベルトプレス装置に、実施例1と同様に予備成形体を積層散布して狙い厚み6mm相当の繊維強化熱可塑性樹脂シートを作製した。その結果、予熱部においてシート詰まりを生じ、装置を停止した。シート表面は損傷が激しく、毛羽だっていた。
(比較例2)
比較例1において、ダブルベルトプレス装置のクリアランス条件は同一であるが、圧力条件を予熱部にでは加圧しない条件へ変更して生産を行った。使用した予備成形体は、実施例1と同一である。以下に、比較例2のダブルベルトプレス装置のクリアランスと圧力条件について、記載する。なお、各部の設定温度、搬送速度は実施例1と同一である。
予熱部クリアランス:入口側6.0mm、出口側6.0mm(出口側に向かって傾斜なし。なお、基材投入時の厚みはおよそ60mm)
加熱部クリアランス:入口側6.0mm、出口側6.0mm(出口側に向かって傾斜なし)
冷却部クリアランス:入口側6.0mm、出口側6.0mm(出口側に向かって傾斜なし)
予熱部加圧力:加圧なし(上部ベルトの自重のみ)
加熱部加圧力:15MPa(油圧ジャッキシリンダーゲージ圧)
冷却部加圧力:15MPa(油圧ジャッキシリンダーゲージ圧)
上記の設定を行ったダブルベルトプレス装置に、実施例1と同様に予備成形体を積層散布して狙い厚み6mm相当の繊維強化熱可塑性樹脂シートを作製した。その結果、予備成形体は予熱部を通過したが、続いての加熱部においてシート詰まりを発生し、装置を停止させた。シート表面は損傷が著しく、毛羽立っていた。
(比較例3)
実施例1において、ダブルベルトプレス装置のクリアランス条件は同一であるが、圧力条件を冷却部において加圧しない条件とした。使用した予備成形体は、実施例1と同一である。以下に、比較例3のダブルベルトプレス装置のクリアランスと圧力条件について、記載する。なお、各部の設定温度、搬送速度は実施例1と同一である。
予熱部クリアランス:特に設定せず(成形狙い厚み6mmより大幅に広い8.0mmに仮設定した。なお、基材投入時の厚みはおよそ60mm)
加熱部クリアランス:入口側8.0mm、出口側6.5mm(出口側に向かって-1.5mm)
冷却部クリアランス:入口側6.5mm、出口側6.0mm(出口側に向かって-0.5mm)
予熱部加圧力:加圧なし(上部ベルトの自重のみ)
加熱部加圧力:15MPa(油圧ジャッキシリンダーゲージ圧)
冷却部加圧力:加圧なし(上部ベルトの自重のみ)
冷却部において加圧する領域がない条件で、実施例1と同様に予備成形体を積層散布して狙い厚み6mm相当の繊維強化熱可塑性樹脂シートを作製した。その結果、装置中にシート基材が詰まることないが、シート表面に加圧不足由来の多数の凹凸を生じていた。また、生産したシートを切断し、内部観察を行うと微細ボイドを多数含んでいる状況であった。
本発明によれば、繊維間に熱可塑性樹脂が含浸済みの予備成形体を使用した繊維強化熱可塑性樹脂シートをダブルベルトプレス装置にて生産した場合、シート表面の損傷を回避し、かつシート内部のボイドも極めて少ない良品を安定して生産することができる。結果的に、高い含浸性を有する物性ばらつきの少ない繊維強化熱可塑性樹脂シートの製造方法を提供できる。

Claims (5)

  1. 強化繊維と熱可塑性樹脂とを含有する繊維強化熱可塑性樹脂シートの製造方法であって、
    連続強化繊維の繊維束を開繊する開繊工程、
    開繊された連続強化繊維の繊維束を溶融した熱可塑性樹脂を含む槽に通して熱可塑性樹脂を含浸する含浸工程、
    熱可塑性樹脂を含浸した連続強化繊維の繊維束を賦形ローラーで潰し、冷却固化してテープ状プリプレグとする冷却固化工程、
    テープ状プリプレグをカッティングして予備成形体とするカッティング工程、
    予備成形体を強化繊維の方向が面内ランダムとなるように積層する積層工程、及び
    積層された予備成形体を一体化して繊維強化熱可塑性樹脂シートとする一体化工程
    を有し、
    前記一体化工程が、ダブルベルトプレス装置を用いて連続的に行われ、ダブルベルトプレス装置が、上部ベルトと下部ベルトでプレスする領域に、装置入口側から、積層された予備成形体を予熱する予熱部、積層された予備成形体の加熱と加圧を同時に行い再溶融する加熱部、及び再溶融された予備成形体の冷却と加圧を同時に行い密着固化する冷却部をこの順で有し、各部で下記の条件を満たすことを特徴とする繊維強化熱可塑性樹脂シートの製造方法。
    予熱部:積層された予備成形体の厚みの変動に応じて、上部ベルトと下部ベルトの間のクリアランスが追従して変動する
    加熱部:上部ベルトと下部ベルトの間のクリアランスが、装置入口側に比べて装置出口側が0.5mm~10mm小さい
    冷却部:上部ベルトと下部ベルトの間のクリアランスが、装置入口側に比べて装置出口側が0.2mm~5mm小さい
  2. 前記予備成形体が、長さ5mm~100mm、幅4mm~60mm、厚み0.05mm~0.4mmの短冊状であることを特徴とする、請求項1に記載の繊維強化熱可塑性樹脂シートの製造方法。
  3. 前記繊維強化熱可塑性樹脂シートに含有される強化繊維と熱可塑性樹脂との質量比が85/15~30/70の範囲である、請求項1又は2に記載の繊維強化熱可塑性樹脂シートの製造方法。
  4. 前記繊維強化熱可塑性樹脂シートに含有される強化繊維が、ガラス繊維又は/及び炭素繊維である、請求項1~3のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂シートの製造方法。
  5. 前記繊維強化熱可塑性樹脂シートが、厚み1~10mmの範囲である、請求項1~4のいずれかに記載の繊維強化熱可塑性樹脂シートの製造方法。
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