JP2023112601A - 赤外光カットフィルター、固体撮像素子用フィルター、固体撮像素子、および、固体撮像素子用フィルターの製造方法 - Google Patents

赤外光カットフィルター、固体撮像素子用フィルター、固体撮像素子、および、固体撮像素子用フィルターの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】赤外光カットフィルターの現像性と赤外光の吸収能との両立を図ることを可能とした赤外光カットフィルター、固体撮像素子用フィルター、固体撮像素子、および、固体撮像素子用フィルターの製造方法を提供する。【解決手段】赤外光カットフィルター13は、ポリメチン、および、ポリメチンの各末端に位置し、窒素を含む複素環を有するカチオンと、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸アニオンとを含むシアニン色素と、下記式(1)または下記式(2)によって表される繰り返し単位を含む重合体と、ナフトキノンジアジド化合物とを含む。JPEG2023112601000116.jpg31170JPEG2023112601000117.jpg31170【選択図】図1

Description

本発明は、赤外光カットフィルター、固体撮像素子用フィルター、固体撮像素子、および、固体撮像素子用フィルターの製造方法に関する。
CMOSイメージセンサーおよびCCDイメージセンサーなどの固体撮像素子は、光の強度を電気信号に変換する光電変換素子を備える。固体撮像素子の一例は、複数の色に対応する光を検出することが可能である。固体撮像素子は、各色用のカラーフィルターと各色用の光電変換素子とを備え、各色用の光電変換素子によって各色用の光を検出する(例えば、特許文献1を参照)。固体撮像素子の他の例は、有機光電変換素子と無機光電変換素子とを備え、カラーフィルターを用いずに、各光電変換素子によって各色の光を検出する(例えば、特許文献2を参照)。
固体撮像素子は、光電変換素子上に赤外光カットフィルターを備える。赤外光カットフィルターが有する赤外光吸収色素が赤外光を吸収することによって、各光電変換素子が検出し得る赤外光を光電変換素子に対してカットする。これによって、各光電変換素子での可視光の検出精度が高められる。赤外光カットフィルターは、例えば、赤外光吸収色素であるシアニン色素を含む(例えば、特許文献3を参照)。
特開2003-060176号公報 特開2018-060910号公報 特開2007-219114号公報
固体撮像素子が備える赤外光カットフィルターには、固体撮像素子における積層構造に応じて、パターニングが必要とされる場合がある。赤外光カットフィルターのような薄膜をパターニングする方法には、例えば、フォトリソグラフィまたはドライエッチングを用いることが可能である。このうち、フォトリソグラフィは真空下での処理を必要としない分だけ、ドライエッチングに比べて、固体撮像素子の製造に係るコストを削減することが可能である。そのため、赤外光カットフィルターには、フォトリソグラフィによってパターニングが可能であること、言い換えれば、フォトリソグラフィによる現像性を有することが求められる。
フォトリソグラフィの転写方式には、ネガ型とポジ型とが存在する。ネガ型では、パターニングの対象物のうち、露光された部分が所望のパターンを形成する。これに対して、ポジ型では、パターニングの対象物のうち、露光されていない部分が所望のパターンを形成する。赤外光カットフィルターのパターニングでは、露光の対象である赤外光カットフィルターがシアニン色素を含んでいる。赤外光カットフィルターに含まれるシアニン色素が露光されることによって、シアニン色素が劣化する場合がある。そのため、シアニン色素の劣化を抑える観点では、赤外光カットフィルターをフォトリソグラフィによってパターニングする場合に、転写方式としてポジ型が選択されることが好ましい。
一方、ナフトキノンジアジド化合物とノボラック型フェノール樹脂とを含むポジ型レジストが半導体装置を形成するためのレジストとして広く用いられている。しかしながら、ノボラック型フェノール樹脂を含むポジ型レジストを用いて赤外光カットフィルターを形成した場合には、ノボラック型フェノール樹脂の極性とシアニン色素の極性との違いに起因して、シアニン色素が会合した状態のまま、赤外光カットフィルターが形成される場合がある。これにより、赤外光カットフィルターに含まれるシアニン色素における赤外光の吸収能が低下する。
上記課題を解決するための赤外光カットフィルターは、ポリメチン、および、前記ポリメチンの各末端に位置し、窒素を含む複素環を有するカチオンと、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸アニオンとを含むシアニン色素と、下記式(1)または下記式(2)によって表される繰り返し単位を含む重合体と、ナフトキノンジアジド化合物と、を含む。
Figure 2023112601000002
Figure 2023112601000003
ただし、式(1)において、Aは水素原子、ハロゲン原子、または、炭素数が1から4のアルキル基であり、R1はアルキル基、置換アルキル基、アリール基、または、置換アリール基である。なお、置換アルキル基は、アルキル基が含む原子がハロゲン原子、アリール基、アミド基、アルコキシ基、または、アルコキシカルボニル基によって置換されたアルキル基である。置換アリール基は、アリール基が含む原子がハロゲン原子、アルキル基、炭素数が1から10のアルコキシ基、または、アミド基で置換されたアリール基である。
式(2)において、Aは水素原子、ハロゲン原子、または、炭素数が1から4のアルキル基であり、Bはフェニレン基であり、R1はアルキル基、置換アルキル基、アリール基、または、置換アリール基である。なお、置換アルキル基は、アルキル基が含む原子がハロゲン原子、アリール基、アミド基、アルコキシ基、または、アルコキシカルボニル基によって置換されたアルキル基である。置換アリール基は、アリール基が含む原子がハロゲン原子、アルキル基、炭素数が1から10のアルコキシ基、または、アミド基で置換されたアリール基である。mは、0または1である。
上記課題を解決するための固体撮像素子用フィルターの製造方法は、ポリメチン、および、前記ポリメチンの各末端に位置し、窒素を含む2つの複素環を有するカチオン、および、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸アニオンを含むシアニン色素と、上記式(1)または上記式(2)によって表される繰り返し単位を含む重合体と、ナフトキノンジアジド化合物とを含む赤外光カットフィルターを形成することと、前記赤外光カットフィルターをフォトリソグラフィによってパターニングすることと、を含む。
上記赤外光カットフィルター、および、固体撮像素子用フィルターの製造方法によれば、重合体が上述した式(1)に由来する繰り返し単位、または、式(2)に由来する繰り返し単位を含む。上述した式(1)によって表されるモノマーは、酸性を呈するスルホンアミド構造(‐SO‐N‐)を含んでいる。これにより、ナフトキノンジアジド化合物中のナフトキノンジアジドがスルホンアミド構造と相互作用することが可能であり、結果として、重合体とナフトキノンジアジド化合物との混合物が、アルカリ現像液に対する不溶性を有することが可能である。
また、上述した式(2)によって表されるモノマーは、酸性を呈するスルホンイミド構造(‐SO‐NH‐SO‐)を含んでいる。これにより、ナフトキノンジアジド化合物中のナフトキノンジアジドがスルホンイミド構造と相互作用することが可能であり、結果として、重合体とナフトキノンジアジド化合物との混合物が、アルカリ現像液に対する不溶性を有することが可能である。
また、ナフトキノンジアジド化合物に対する露光によって、ナフトキノンジアジド化合物がインデンカルボン酸に変化した際には、重合体が有するスルホンアミド構造またはスルホンイミド構造に対してインデンカルボン酸が相互作用しない。これにより、重合体とナフトキノンジアジド化合物との混合物が、アクリル現像液に対する可溶性を有することが可能である。
また、式(1)に由来する繰り返し単位、または、式(2)に由来する繰り返し単位を含む重合体は、シアニン色素との相溶性が高い。これにより、重合体とシアニン色素とを混合した場合に、シアニン色素同士の会合を抑えることが可能である。結果として、シアニン色素を赤外光カットフィルターにおいて、赤外光の吸収能における低下を抑えることが可能である。
上記赤外光カットフィルターにおいて、前記繰り返し単位は、前記式(1)によって表され、前記重合体は、30重量%以上100重量%以下の前記繰り返し単位を含んでもよい。
上記赤外光カットフィルターにおいて、前記繰り返し単位は、前記式(2)によって表され、前記重合体は、30重量%以上100重量%以下の前記繰り返し単位を含んでもよい。
上記赤外光カットフィルターによれば、30重量%以上の上述した繰り返し単位を含むことにより、重合体を含む赤外光カットフィルターの現像性をさらに高めることが可能である。
上記赤外光カットフィルターにおいて、前記ナフトキノンジアジド化合物の重量は、前記重合体の重量に対する5重量%以上30重量%以下であってもよい。この赤外光カットフィルターによれば、ナフトキノンジアジド化合物の量が5重量%以上であることによって、赤外光カットフィルターにおいて、未露光部の現像性が低下し、かつ、露光部の現像性が向上する。これにより、赤外光カットフィルターの形状における精度が高められる。また、ナフトキノンジアジド化合物の量が30重量%以下であることによって、シアニン色素の劣化が抑えられるから、赤外光カットフィルターの吸光度における低下が抑えられる。
上記赤外光カットフィルターにおいて、前記重合体の平均分子量は、3000以上30万以下であってもよい。この赤外光カットフィルターによれば、重合体の分子量が30万以下であることによって、現像液に対するアクリル重合体の溶解性が低下しにくいから、赤外光カットフィルター13の現像時における赤外光カットフィルターの剥離が抑えられる。そのため、赤外光カットフィルターのパターニングが容易である。また、重合体の分子量が3000以上であることによって、赤外光カットフィルターに含まれるシアニン色素の会合が重合体によって抑えられる。これにより、赤外光カットフィルターにおける赤外領域での吸光度の低下が抑えられる。
上記課題を解決するための固体撮像素子用フィルターは、上記赤外光カットフィルターと、前記赤外光カットフィルターを覆い、前記赤外光カットフィルターを酸化する酸化源の透過を抑えるバリア層と、を備える。
上記課題を解決するための固体撮像素子は、光電変換素子と、上記固体撮像素子用フィルターと、を備える。
本発明によれば、赤外光カットフィルターの現像性と赤外光の吸収能との両立を図ることが可能である。
一実施形態の固体撮像素子における構造を示す分解斜視図である。
図1を参照して、赤外光カットフィルター、固体撮像素子用フィルター、および、固体撮像素子における一実施形態を説明する。以下では、固体撮像素子、固体撮像素子用フィルターの製造方法、製造例、および、試験例を順に説明する。なお、本実施形態において、赤外光は、0.7μm以上1mm以下の範囲に含まれる波長を有した光であり、近赤外光は、赤外光のなかで特に700nm以上1100nm以下の範囲に含まれる波長を有した光である。
[固体撮像素子]
図1を参照して、固体撮像素子を説明する。図1は、固体撮像素子の一部における各層を分離して示す概略構成図である。
図1が示すように、固体撮像素子10は、固体撮像素子用フィルター10F、および、複数の光電変換素子11を備える。複数の光電変換素子11は、赤色用光電変換素子11R、緑色用光電変換素子11G、青色用光電変換素子11B、および、赤外光用光電変換素子11Pを備える。各色用の光電変換素子11R,11G,11Bは、その光電変換素子11R,11G,11Bに対応付けられた特定の波長を有する可視光の強度を測定する。各赤外光用光電変換素子11Pは、赤外光の強度を測定する。
固体撮像素子10は、複数の赤色用光電変換素子11R、複数の緑色用光電変換素子11G、複数の青色用光電変換素子11B、および、複数の赤外光用光電変換素子11Pを備える。なお、図1では、図示の便宜上、固体撮像素子10における光電変換素子11の繰り返し単位が示されている。
固体撮像素子用フィルター10Fは、複数の可視光用フィルター、赤外光パスフィルター12P、赤外光カットフィルター13、複数の可視光用マイクロレンズ、および、赤外光用マイクロレンズ15Pを備える。
可視光用カラーフィルターは、赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、および、青色用フィルター12Bから構成される。赤色用フィルター12Rは、赤色用光電変換素子11Rに対して光の入射側に位置する。緑色用フィルター12Gは、緑色用光電変換素子11Gに対して光の入射側に位置する。青色用フィルター12Bは、青色用光電変換素子11Bに対して光の入射側に位置する。
赤外光パスフィルター12Pは、赤外光用光電変換素子11Pに対して光の入射側に位置する。赤外光パスフィルター12Pは、赤外光用光電変換素子11Pが検出し得る可視光を赤外光用光電変換素子11Pに対してカットする。これによって、赤外光用光電変換素子11Pによる赤外光の検出精度が高められる。赤外光用光電変換素子11Pが検出し得る赤外光は、例えば近赤外光である。
赤外光カットフィルター13は、各色用フィルター12R,12G,12Bに対して光の入射側に位置する。赤外光カットフィルター13は、貫通孔13Hを備える。赤外光カットフィルター13が広がる平面と対向する視点から見て、貫通孔13Hが区画する領域内には、赤外光パスフィルター12Pが位置する。一方で、赤外光カットフィルター13が広がる平面と対向する視点から見て、赤外光カットフィルター13は、赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、および、青色用フィルター12B上に位置する。
赤外光カットフィルター13は、赤外光吸収色素であるシアニン色素を含む。シアニン色素は、近赤外光に含まれるいずれかの波長において、赤外光の吸収率における最大値を有する。そのため、赤外光カットフィルター13によれば、赤外光カットフィルター13を通過する近赤外光を確実に吸収することが可能である。これにより、各色用の光電変換素子11で検出され得る近赤外光が、赤外光カットフィルター13によって十分にカットされる。赤外光カットフィルター13は、例えば、300nm以上3μm以下の厚さを有することが可能である。
バリア層14は、赤外光カットフィルター13の酸化源の透過を抑制する。酸化源は、酸素および水などである。バリア層14が有する酸素透過率は、例えば、5.0cc/m/day/atm以下であることが好ましい。酸素透過率は、JIS K7126:2006に準拠した値である。酸素透過率が5.0cc/m/day/atm以下に定められるから、バリア層14によって赤外光カットフィルター13に酸化源が到達することが抑制されるため、赤外光カットフィルター13が酸化源によって酸化されにくくなる。そのため、赤外光カットフィルター13の耐光性が向上可能である。
バリア層14を形成する材料は、無機化合物である。バリア層14を形成する材料は、珪素化合物であることが好ましい。バリア層14を形成する材料は、例えば、窒化珪素、酸化珪素、および、酸窒化珪素からなる群から選択される少なくとも一つであってよい。
マイクロレンズは、赤色用マイクロレンズ15R、緑色用マイクロレンズ15G、青色用マイクロレンズ15B、および、赤外光用マイクロレンズ15Pから構成される。赤色用マイクロレンズ15Rは、赤色用フィルター12Rに対して光の入射側に位置する。緑色用マイクロレンズ15Gは、緑色用フィルター12Gに対して光の入射側に位置する。青色用マイクロレンズ15Bは、青色用フィルター12Bに対して光の入射側に位置する。赤外光用マイクロレンズ15Pは、赤外光パスフィルター12Pに対して光の入射側に位置する。
各マイクロレンズ15R,15G,15B,15Pは、外表面である入射面15Sを備える。各マイクロレンズ15R,15G,15B,15Pは、入射面15Sに入る光を各光電変換素子11R,11G,11B,11Pに向けて集めるための屈折率差を外気との間において有する。各マイクロレンズ15R,15G,15B,15Pは、透明樹脂を含む。
[赤外光カットフィルター]
以下、赤外光カットフィルター13についてより詳細に説明する。
赤外光カットフィルター13は、シアニン色素、重合体、および、ナフトキノンジアジド化合物を含む。シアニン色素は、カチオンとアニオンとを含む。カチオンは、ポリメチン、および、ポリメチンの各末端に位置し、窒素を含む複素環を有する。アニオンは、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸アニオンである。
重合体は、下記式(1)または下記式(2)によって表される繰り返し単位を含む。
Figure 2023112601000004
Figure 2023112601000005
ただし、式(1)において、Aは水素原子、ハロゲン原子、または、炭素数が1から4のアルキル基であり、R1はアルキル基、置換アルキル基、アリール基、または、置換アリール基である。なお、置換アルキル基は、アルキル基が含む原子がハロゲン原子、アリール基、アミド基、アルコキシ基、または、アルコキシカルボニル基によって置換されたアルキル基である。置換アリール基は、アリール基が含む原子がハロゲン原子、アルキル基、炭素数が1から10のアルコキシ基、または、アミド基で置換されたアリール基である。
式(2)において、Aは水素原子、ハロゲン原子、または、炭素数が1から4のアルキル基であり、Bはフェニレン基であり、R1はアルキル基、置換アルキル基、アリール基、または、置換アリール基である。なお、置換アルキル基は、アルキル基が含む原子がハロゲン原子、アリール基、アミド基、アルコキシ基、または、アルコキシカルボニル基によって置換されたアルキル基である。置換アリール基は、アリール基が含む原子がハロゲン原子、アルキル基、炭素数が1から10のアルコキシ基、または、アミド基で置換されたアリール基である。mは、0または1である。
半導体装置を形成するためのポジ型レジストとして、ナフトキノンジアジド化合物とノボラック型フェノール樹脂とを含むポジ型レジストが広く用いられている。ノボラック型フェノール樹脂は、フェノール性水酸基を複数有している。ナフトキノンジアジド化合物は、ナフトキノンジアジドを含む原子団を複数有している。未露光のポジ型レジストでは、ノボラック型フェノール樹脂のフェノール性水酸基と、ナフトキノンジアジド化合物のジアゾナフトキノンとが相互作用することによって、ポジ型レジストがアルカリ現像液に対して不溶性を有する。これに対して、露光後のポジ型レジストでは、ナフトキノンジアジド化合物中のナフトキノンジアジドが、フェノール性水酸基との相互作用を有しないインデンカルボン酸に変化する。これにより、ポジ型レジストがアルカリ現像液に対して可溶性を有する。
上述したポジ型レジストを用いて赤外光カットフィルターを形成した場合には、赤外光カットフィルターは高い現像性を有する。一方で、ノボラック型フェノール性樹脂がフェノール性水酸基を含むから、フェノール性水酸基が有する極性と、シアニン色素が有する極性との違いに起因して、シアニン色素の会合が生じる。これによって、会合した状態のシアニン色素を含む赤外光カットフィルターが形成される。会合した状態のシアニン色素が有する分光特性は、会合していない状態のシアニン色素が有する分光特性とは異なり、結果として、赤外光カットフィルターにおける赤外光の吸収能が低下する。
この点、本開示の赤外光カットフィルターは、重合体が上述した式(1)に由来する繰り返し単位、または、式(2)に由来する繰り返し単位を含む。上述した式(1)によって表されるモノマーは、酸性を呈するスルホンアミド構造(‐SO‐N‐)を含んでいる。これにより、ナフトキノンジアジド化合物中のナフトキノンジアジドがスルホンアミド構造と相互作用することが可能であり、結果として、重合体とナフトキノンジアジド化合物との混合物が、アルカリ現像液に対する不溶性を有することが可能である。
また、上述した式(2)によって表されるモノマーは、酸性を呈するスルホンイミド構造(‐SO‐NH‐SO‐)を含んでいる。これにより、ナフトキノンジアジド化合物中のナフトキノンジアジドがスルホンイミド構造と相互作用することが可能であり、結果として、重合体とナフトキノンジアジド化合物との混合物が、アルカリ現像液に対する不溶性を有することが可能である。
また、ナフトキノンジアジド化合物に対する露光によって、ナフトキノンジアジド化合物がインデンカルボン酸に変化した際には、重合体が有するスルホンアミド構造またはスルホンイミド構造に対してインデンカルボン酸が相互作用しない。これにより、重合体とナフトキノンジアジド化合物との混合物が、アクリル現像液に対する可溶性を有することが可能である。
また、式(1)に由来する繰り返し単位、または、式(2)に由来する繰り返し単位を含む重合体は、シアニン色素との相溶性が高い。これにより、重合体とシアニン色素とを混合した場合に、シアニン色素同士の会合を抑えることが可能である。結果として、シアニン色素を赤外光カットフィルターにおいて、赤外光の吸収能における低下を抑えることが可能である。
シアニン色素は、下記式(3)に示される構造を有してもよい。
Figure 2023112601000006
上記式(3)において、Xは、1つのメチン、または、ポリメチンである。メチンが含む炭素原子に結合された水素原子は、ハロゲン原子、または、有機基に置換されてもよい。ポリメチンは、ポリメチンを形成する炭素を含む環状構造を有してもよい。環状構造は、ポリメチンを形成する複数の炭素において、連続する3つの炭素を含むことができる。ポリメチンが環状構造を有する場合には、ポリメチンの炭素数は5以上であってよい。各窒素原子は、五員環または六員環の複素環に含まれている。複素環は、縮環されてもよい。Yは、アニオンである。
また、シアニン色素は、下記式(4)に示される構造を有してもよい。
Figure 2023112601000007
上記式(4)において、nは1以上の整数である。nは、ポリメチン鎖に含まれる繰り返し単位の数を示している。R11およびR12は水素原子、または、有機基である。R13およびR14は、水素原子または有機基である。R13およびR14は、炭素数1以上の直鎖状アルキル基、または、分岐鎖状アルキル基であることが好ましい。各窒素原子は、五員環または六員環の複素環に含まれている。複素環は、縮環されてもよい。
なお、式(3)において、ポリメチンが環状構造を含む場合には、環状構造は、例えば、環状構造がエチレン性二重結合などの不飽和結合を少なくとも一つ有し、かつ、当該不飽和結合がポリメチン鎖の一部として電子共鳴する環状構造であってよい。こうした環状構造は、例えば、シクロペンテン環、シクロペンタジエン環、シクロヘキセン環、シクロヘキサジエン環、シクロヘプテン環、シクロオクテン環、シクロオクタジエン環、および、ベンゼン環などであってよい。これらの環状構造は、いずれも置換基を有してもよい。
また、式(4)において、nが1である化合物はシアニンであり、nが2である化合物はカルボシアニンであり、nが3である化合物はジカルボシアニンである。式(4)において、nが4である化合物はトリカルボシアニンである。
R11およびR12の有機基は、例えば、アルキル基、アリール基、アラルキル基、および、アルケニル基であってよい。アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n‐ブチル基、sec‐ブチル基、イソブチル基、tert‐ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、および、デシル基などであってよい。アリール基は、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、および、ナフチル基などであってよい。アラルキル基は、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基などであってよい。アルケニル基は、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、および、オクテニル基などであってよい。
なお、各有機基が有する水素原子の少なくとも一部が、ハロゲン原子またはシアノ基によって置換されてもよい。ハロゲン原子は、フッ素、臭素、および、塩素などであってよい。置換後の有機基は、例えば、クロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、および、シアノエチル基などであってよい。
R13またはR14は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n‐ブチル基、sec‐ブチル基、イソブチル基、tert‐ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、および、デシル基などであってよい。
各窒素原子が含まれる複素環は、例えば、ピロール、イミダゾール、チアゾール、および、ピリジンなどであってよい。
こうしたシアニン色素が含むカチオンは、例えば、下記式(5)および下記式(6)によって表される構造であってよい。
Figure 2023112601000008
Figure 2023112601000009
なお、シアニン色素が含むカチオンは、例えば、下記式(7)から式(46)に示される構造を有してもよい。すなわち、シアニン色素が含む各窒素原子は、以下に示される環状構造中に含まれてもよい。
Figure 2023112601000010
Figure 2023112601000011
Figure 2023112601000012
Figure 2023112601000013
Figure 2023112601000014
Figure 2023112601000015
Figure 2023112601000016
Figure 2023112601000017
Figure 2023112601000018
Figure 2023112601000019
Figure 2023112601000020
Figure 2023112601000021
Figure 2023112601000022
Figure 2023112601000023
Figure 2023112601000024
Figure 2023112601000025
Figure 2023112601000026
Figure 2023112601000027
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シアニン色素は、700nm以上1100nm以下に含まれるいずれかの波長において、赤外光の吸光度における最大値を有する。そのため、赤外光カットフィルター13によれば、赤外光カットフィルター13を通過する近赤外光を確実に吸収することが可能である。これにより、各色用の光電変換素子11で検出され得る近赤外光が、赤外光カットフィルター13によって十分にカットされる。
赤外光カットフィルター13は、シアニン色素を1種のみ含んでもよいし、2種以上のシアニン色素を含んでもよい。
なお、波長λにおける吸光度Aλは、下記式によって算出される。
Aλ=-log10(%T/100)
透過率Tは、赤外光にシアニン色素を有する赤外光カットフィルター13を透過させたときの、入射光の強度(IL)に対する透過光の強度(TL)の比(TL/IL)によって表される。赤外光カットフィルター13において、入射光の強度を1としたときの透過光の強度が透過率Tであり、透過率Tに100を乗算した値が透過率パーセント%Tである。
トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸アニオン([(CPF)は、下記式(47)によって示される構造を有する。
Figure 2023112601000050
固体撮像素子10の製造過程において、赤外光カットフィルター13は、200℃程度に加熱される。上述したシアニン色素は、200℃程度に加熱されることによって、シアニン色素が有する構造が変わり、これによって、シアニン色素における赤外光に対する透過率が変化することがある。
この点で、FAPアニオンは、シアニン色素におけるポリメチン鎖の近傍に位置することが可能な分子量および分子構造を有するため、シアニン色素のポリメチン鎖が、シアニン色素の加熱によって切断されることが抑えられる。それゆえに、シアニン色素の加熱に起因してシアニン色素が有する赤外光の透過率が変化することが抑えられ、結果として、赤外光カットフィルター13における赤外光の透過率が変化することが抑制される。
上述したように、赤外光カットフィルター13は、重合体を含んでいる。重合体は、下記式(1)または下記式(2)によって表される繰り返し単位を含んでいる。
Figure 2023112601000051
Figure 2023112601000052
ただし、式(1)において、Aは水素原子、ハロゲン原子、または、炭素数が1から4のアルキル基であり、R1はアルキル基、置換アルキル基、アリール基、または、置換アリール基である。なお、置換アルキル基は、アルキル基が含む原子がハロゲン原子、アリール基、アミド基、アルコキシ基、または、アルコキシカルボニル基によって置換されたアルキル基である。置換アリール基は、アリール基が含む原子がハロゲン原子、アルキル基、炭素数が1から10のアルコキシ基、または、アミド基で置換されたアリール基である。
式(2)において、Aは水素原子、ハロゲン原子、または、炭素数が1から4のアルキル基であり、Bはフェニレン基であり、R1はアルキル基、置換アルキル基、アリール基、または、置換アリール基である。なお、置換アルキル基は、アルキル基が含む原子がハロゲン原子、アリール基、アミド基、アルコキシ基、または、アルコキシカルボニル基によって置換されたアルキル基である。置換アリール基は、アリール基が含む原子がハロゲン原子、アルキル基、炭素数が1から10のアルコキシ基、または、アミド基で置換されたアリール基である。mは、0または1である。
式(1)および式(2)において、Aは水素原子またはメチル基であることが好ましい。R1がアルキル基である場合には、アルキル基は、鎖状、分岐鎖状、環状のいずれかを有してよく、アルキル基における炭素数は1から20であってよい。アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基などであってよい。
R1が置換アルキル基である場合には、例えば上述した未置換のアルキル基が含む原子が、ハロゲン原子、アリール基、アミド基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基によって置換されてよい。ハロゲン原子は、例えば塩素または臭素などであってよい。アリール基は、例えばフェニル基であってよい。アミド基は、例えばアセトアミドなどであってよい。アルコキシ基は、メトキシ基、または、ブチルオキシ基などであってよい。アルコキシカルボニル基は、例えばエトキシカルボニル基などであってよい。
R1がアリール基である場合には、アリール基は、炭素環式芳香族基、または、複素環式芳香族基であってよい。炭素環式芳香族基は、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基などであってよい。複素環式芳香族基は、例えばベンゾフリル基などであってよい。
R1が置換アリール基である場合には、ハロゲン原子は、例えば塩素または臭素などであってよい。炭素数が1から10のアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基などであってよい。炭素数が1から10のアルコキシ基は、例えば、メトキシ基、ブチルオキシ基などであってよい。アミド基は、例えばアセトアミド基などであってよい。
上記式(1)で表される繰り返し単位は、例えば下記式(48)から式(97)によって表される構造を有してよい。なお、式(1)で表される繰り返し単位は、以下に示す例のうち、式(48)から式(51)で表される構造を有することが好ましい。
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また、上記式(2)で表される繰り返し単位は、例えば下記式(98)から式(102)によって表される構造を有してよい。なお、式(2)で表される繰り返し単位は、以下に示す例のうち、式(98)で表される構造を有することが好ましい。
Figure 2023112601000103
Figure 2023112601000104
Figure 2023112601000105
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重合体が式(1)によって表される繰り返し単位を含む場合には、重合体は、30質量%以上100重量%以下の当該繰り返し単位を含んでよい。また、重合体が式(2)によって表される繰り返し単位を含む場合には、重合体は、30重量%以上100重量%以下の当該繰り返し単位を含んでよい。
重合体が上述した繰り返し単位を30重量%以上含むことによって、赤外光カットフィルターの現像性がより高められる程度に、スルホンアミド構造またはスルホンイミド構造を含むことが可能である。これにより、赤外光カットフィルターのうち、露光部がアルカリ現像液に溶解しやすくなる。なお、上述した式(1)または式(2)によって表される繰り返し単位を含む重合体は、シアニン色素に対する相溶性が高いから、重合体とシアニン色素とを混合した際に、シアニン色素の会合が生じにくい。そのため、重合体は、上述した繰り返し単位を100重量%含むことが可能である。
なお、重合体は、式(1)によって表される繰り返し単位と、式(2)によって表される繰り返し単位との両方を含んでもよい。
なお、重合体は、上述した式(1)または式(2)によって表される繰り返し単位以外の繰り返し単位を含んでもよい。当該繰り返し単位が由来するモノマーは、例えば、スチレン系モノマー、(メタ)アクリルモノマー、ビニルエステル系モノマー、ビニルエーテル系モノマー、ハロゲン元素含有ビニル系モノマー、および、ジエン系モノマーなどであってよい。
スチレン系モノマーは、例えば、スチレン、α‐メチルスチレン、p‐メチルスチレン、m‐メチルスチレン、p‐メトキシスチレン、p‐ヒドロキシスチレン、p‐アセトキシスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、フェニルスチレン、および、ベンジルスチレンなどであってよい。
(メタ)アクリルモノマーは、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2‐(メタ)アクリロイルオキシエチル‐2‐ヒドロキシプロピルフタレート、2‐ヒドロキシ‐3‐フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2‐(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2‐(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、エトキシ化オルト‐フェニルフェノール(メタ)アクリレート、o‐フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、3‐フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、4‐ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、2‐ナフトール(メタ)アクリレート、4‐ビフェニル(メタ)アクリレート、9‐アントリルメチル(メタ)アクリレート、2‐[3‐(2H‐ベンゾトリアゾール‐2‐イル)‐4‐ヒドロキシフェニル]エチル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキシド(EO)変性アクリレート、ノニルフェノールEO変性アクリレート、フタル酸2‐(メタ)アクリロイルオキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸2‐(メタ)アクリロイルオキシエチル、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4‐t‐シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、テトラシクロドデシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2‐メチルグリシジル(メタ)アクリレート、2‐エチルグリシジル(メタ)アクリレート、2‐オキシラニルエチル(メタ)アクリレート、2‐グリシジルオキシエチル(メタ)アクリレート、3‐グリシジルオキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジルオキシフェニル(メタ)アクリレート、オキセタニル(メタ)アクリレート、3‐メチル‐3‐オキセタニル(メタ)アクリレート、3‐エチル‐3‐オキセタニル(メタ)アクリレート、(3‐メチル‐3‐オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(3‐エチル‐3‐オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、2‐(3‐メチル‐3‐オキセタニル)エチル(メタ)アクリレート、2‐(3‐エチル‐3‐オキセタニル)エチル(メタ)アクリレート、2‐[(3‐メチル‐3‐オキセタニル)メチルオキシ]エチル(メタ)アクリレート、2‐[(3‐エチル‐3‐オキセタニル)メチルオキシ]エチル(メタ)アクリレート、3‐[(3‐メチル‐3‐オキセタニル)メチルオキシ]プロピル(メタ)アクリレート、3‐[(3‐エチル‐3‐オキセタニル)メチルオキシ]プロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2‐エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2‐エチルヘキシルメタクリレートなどであってよい。
ビニルエステル系モノマーは、例えば、酢酸ビニルなどであってよい。ビニルエーテル系モノマーは、例えば、ビニルメチルエーテルなどであってよい。ハロゲン元素含有ビニル系モノマーは、例えば、塩化ビニルなどであってよい。ジエン系モノマーは、例えば、ブタジエン、および、イソブチレンなどであってよい。
また、重合体は、重合体が有する極性を調整するためのモノマーを含んでもよい。極性を調整するためのモノマーは、酸基または水酸基を共重合体に付加する。こうしたモノマーは、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸ハーフエステル、アクリル酸-2ヒドロキシエチル、および、(メタ)アクリル酸-4‐ヒドロキシフェニルなどであってよい。
また、重合体は、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、および、グラフト共重合体のいずれの構造を有していてもよい。共重合体の構造がランダム共重合体であれば、製造工程およびシアニン色素との調製が容易である。そのため、ランダム共重合体は、他の共重合体よりも好ましい。
重合体を得るための重合方法は、例えば、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、リビングラジカル重合、リビングカチオン重合、および、リビングアニオン重合などであってよい。重合体を得るための重合方法には、工業的に生産が容易なことから、ラジカル重合が選択されることが好ましい。ラジカル重合は、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法、および、懸濁重合法などであってよい。ラジカル重合には、溶液重合法を用いることが好ましい。溶液重合法を用いることによって、重合体における平均分子量の制御が容易である。さらに、モノマーの重合後に共重合体を含む溶液を当該溶液の状態で固体撮像素子用フィルターの製造に使用することができる。
ラジカル重合では、上述したモノマーを重合溶剤によって希釈した後に、ラジカル重合開始剤を加えてモノマーの重合を行ってもよい。
重合溶剤は、例えば、エステル系溶剤、アルコールエーテル系溶剤、ケトン系溶剤、芳香族系溶剤、アミド系溶剤、および、アルコール系溶剤などであってよい。エステル系溶剤は、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n‐ブチル、酢酸イソブチル、酢酸t‐ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、および、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどであってよい。アルコールエーテル系溶剤は、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、3‐メトキシ‐1‐ブタノール、および、3‐メトキシ‐3-メチル‐1‐ブタノールなどであってよい。ケトン系溶剤は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、および、シクロヘキサノンなどであってよい。芳香族系溶剤は、例えば、ベンゼン、トルエン、および、キシレンなどであってよい。アミド系溶剤は、例えば、ホルムアミド、および、ジメチルホルムアミドなどであってよい。アルコール系溶剤は、例えば、メタノール、エタノール、n‐プロパノール、イソプロパノール、n‐ブタノール、イソブタノール、s‐ブタノール、t‐ブタノール、ジアセトンアルコール、および、2‐メチル‐2‐ブタノールなどであってよい。このうち、ケトン系溶剤、および、エステル系溶剤は、固体撮像素子用フィルターの製造に用いることができるため好ましい。なお、上述した重合溶剤において、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
ラジカル重合において、重合溶剤の使用量は特に限定されないが、モノマーの合計を100重量部に設定する場合に、重合溶剤の使用量は、1重量部以上1000重量部以下であることが好ましく、10重量部以上500重量部以下であることがより好ましい。
ラジカル重合開始剤は、例えば、過酸化物およびアゾ化合物などであってよい。過酸化物は、例えば、ベンゾイルペルオキシド、t‐ブチルパーオキシアセテート、t‐ブチルパーオキシベンゾエート、および、ジ‐t‐ブチルパーオキシドなどであってよい。アゾ化合物は、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスアミジノプロパン塩、アゾビスシアノバレリックアシッド(塩)、および、2,2’‐アゾビス[2‐メチル‐N‐(2‐ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]などであってよい。
ラジカル重合開始剤の使用量は、モノマーの合計を100重量部に設定した場合に、0.0001重量部以上20重量部以下であることが好ましく、0.001重量部以上15重量部以下であることがより好ましく、0.005重量部以上10重量部以下であることがさらに好ましい。ラジカル重合開始剤は、モノマーおよび重合溶剤に対して、重合開始前に添加されてもよいし、重合反応系中に滴下されてもよい。ラジカル重合開始剤をモノマーおよび重合溶剤に対して重合反応系中に滴下することは、重合による発熱を抑制することができる点で好ましい。
ラジカル重合の反応温度は、ラジカル重合開始剤および重合溶剤の種類によって適宜選択される。反応温度は、製造上の容易性、および、反応制御性の観点から、60℃以上110℃以下であることが好ましい。
重合体のガラス転移温度は、75℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましい。ガラス転移温度が75℃以上であれば、赤外光カットフィルターにおいて、赤外光カットフィルター13が加熱された場合に、赤外光の透過率における変化を抑える確実性を高めることが可能である。
重合体の平均分子量は、3万以上30万以下であることが好ましく、5000以上10万以下であることがより好ましい。重合体の平均分子量がこの範囲に含まれることによって、赤外光カットフィルター13に含まれるシアニン色素の分光特性を保持しながら、赤外光カットフィルター13の現像性を保持することが可能である。
重合体が30万を超える平均分子量を有する場合には、現像液に対する重合体の溶解性が低下する。これにより、重合体を含む赤外光カットフィルター13が現像された場合には、赤外光カットフィルター13が現像液に溶解しにくく、これによって、赤外光カットフィルター13が、赤外光カットフィルター13の支持体から剥離しやすくなる。そのため、重合体の平均分子量が30万を超える場合には、赤外光カットフィルター13をパターニングすることが容易ではない。これに対して、重合体の平均分子量が30万以下であれば、現像液に対する重合体の溶解性が低下しにくいから、赤外光カットフィルター13の現像時における赤外光カットフィルター13の剥離が抑えられる。そのため、赤外光カットフィルター13のパターニングが容易である。
また、重合体の平均分子量が3000未満である場合には、赤外光カットフィルター13に含まれるシアニン色素の会合を抑制する効果が得られにくい。そのため、赤外光カットフィルター13における赤外領域での吸光度が低下しやすい。一方で、重合体の平均分子量が3000以上である場合には、重合体によって、赤外光カットフィルター13に含まれるシアニン色素の会合が抑えられる。これにより、赤外光カットフィルター13における赤外領域での吸光度の低下が抑えられる。
なお、重合体の平均分子量は、重量平均分子量である。重合体の重量平均分子量は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー法によって測定することが可能である。例えば、ラジカル重合反応において、溶液中のモノマーおよびラジカル重合開始剤の濃度を変更することによって、重合体の平均分子量を制御することができる。
重合体の製造によって得られたポリマー溶液中には、重合体と、アクリルモノマーとが含まれる。アクリルモノマーは、重合体を製造するために準備されたアクリルモノマーのうち、重合体の製造に用いられなかったモノマーである。ポリマー溶液中において、重合体の重量が第1重量W1であり、アクリルモノマーの重量が第2重量W2である。
第1重量W1と第2重量W2との総和(W1+W2)に対する第2重量W2の百分率({W2/(W1+W2)}×100)は、20%以下であることが好ましい。すなわち、重合体を製造するために準備されたモノマーのうち、残存モノマーは、20%以下であることが好ましい。残存モノマーが20%以下であることによって、残存モノマーが20%よりも多い場合に比べて、赤外光カットフィルターにおける透過率の向上が抑えられる。
なお、第1重量W1と第2重量W2との総和に対する第2重量W2の百分率は、10%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましい。第1重量W1、および、第2重量W2は、重合体の分析結果に基づき定量することが可能である。重合体の分析方法は、例えば、ガスクロマトグラフィー量分析法(GC‐MS)、核磁気共鳴分光法(NMR)、および、赤外分光法(IR)などであってよい。
例えば、NMRによる分析結果を用いて第1重量W1と第2重量とを定量する場合には、まず、NMRによる分析によってポリマー溶液に対するスペクトルを得る。次いで、得られたスペクトルにおいて、重合体のピークとアクリルモノマーのピークとを特定する。そして、各ピークの面積比を算出する。重合体のピークにおける面積比が第1重量W1であり、アクリルモノマーのピークにおける面積比が第2重量W2である。
第1重量W1と第2重量W2との総和に対する第2重量W2の百分率を変更する方法は、例えば、重合時間を変更する方法、および、重合温度を変更する方法などであってよい。また、第1重量W1と第2重量W2との総和に対する第2重量W2の百分率を変更する方法は、重合反応の開始時におけるモノマーおよびラジカル重合開始剤の濃度を変更する方法であってよい。また、第1重量W1と第2重量W2との総和に対する第2重量W2の百分率を変更する方法は、重合反応後の精製条件を変更する方法であってもよい。このうち、重合時間を変更する方法は、第2重量W2の割合を変更する制御の精度が高いため好ましい。
共重合体の重合時に使用するラジカル重合開始剤が、側鎖に芳香環を有する有機過酸化物である場合には、赤外光カットフィルターに含まれる共重合体を100重量部に設定する場合に、赤外光カットフィルターが、0.35重量部未満の有機過酸化物を含むことが好ましい。赤外光カットフィルターが0.35重量部未満の有機過酸化物を含むことで、可視光領域、および、赤外光領域における赤外光カットフィルターの分光特性の劣化が抑えられる。
ナフトキノンジアジド化合物は、ナフトキノンジアジド系感光剤であってよい。ナフトキノンジアジド系感光剤は、ポジ型フォトレジストの感光剤としても用いられる。ナフトキノンジアジド系感光剤は、例えば、ナフトキノンジアジドスルホン酸クロリドとフェノール性化合物とのエステル化合物であってよい。
ナフトキノンジアジドスルホン酸クロリドは、例えば、1,2‐ナフトキノン‐2‐ジアジド‐5‐スルホン酸クロリド、1,2‐ナフトキノン‐2‐ジアジド‐4‐スルホン酸クロリドであってよい。
フェノール性化合物は、例えば、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ペンタヒドロキシベンゾフェノン、ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、(ポリヒドロキシフェニル)アルカン、2,3,4‐トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6‐トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’‐テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,3’‐テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’‐テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,2’‐テトラヒドロキシ‐4’‐メチルベンゾフェノン、2,3,4,4’‐テトラヒドロキシ‐3’‐メトキシベンゾフェノン、2,3,4,2’,6’‐ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6,3’,4’,5’‐ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、3,4,5,3’,4’,5’‐ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2,4‐ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(p‐ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(p‐ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1‐トリス(p‐ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(2,3,4‐トリヒドロキシフェニル)メタン、2,2‐ビス(2,3,4‐トリヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3‐トリス(2,5‐ジメチル‐4‐ヒドロキシフェニル)‐3‐フェニルプロパン、4,4’‐〔1‐{4‐(1‐[4‐ヒドロキシフェニル]‐1‐メチルエチル)フェニル}エチリデン〕ビスフェノール、ビス(2,5‐ジメチル‐4‐ヒドロキシフェニル)‐2‐ヒドロキシフェニルメタン、3,3,3’,3’‐テトラメチル‐1,1’‐スピロビインデン‐5,6,7,5’,6’,7’‐ヘキサノール、2,2,4‐トリメチル‐7,2’,4’‐トリヒドロキシフラバン、2‐メチル‐2‐(2,4‐ジヒドロキシフェニル)‐4‐(4‐ヒドロキシフェニル)‐7‐ヒドロキシクロマン、1‐[1‐{3‐(1‐[4‐ヒドロキシフェニル]‐1‐メチルエチル)‐4,6‐ジヒドロキシフェニル}‐1‐メチルエチル]‐3‐〔1‐{3‐(1‐[4‐ヒドロキシフェニル]‐1‐メチルエチル)‐4,6‐ジヒドロキシフェニル}‐1‐メチルエチル〕ベンゼン、4,6‐ビス{1‐(4‐ヒドロキシフェニル)‐1‐メチルエチル}‐1,3‐ジヒドロキシベンゼンであってよい。
赤外光カットフィルター13は、ナフトキノンジアジド化合物を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
ナフトキノンジアジド化合物の重量は、重合体の重量に対する5重量%以上30重量%以下であってよい。すなわち、重合体の全量を100重量%に設定する場合に、ナフトキノンジアジド化合物の重量は、重合体の全量に対して、5重量%以上30重量%以下であってよい。
ナフトキノンジアジド化合物の量が5重量%以上であることによって、赤外光カットフィルター13において、未露光部の現像性が低下し、かつ、露光部の現像性が向上する。これにより、赤外光カットフィルター13の形状における精度が高められる。また、ナフトキノンジアジド化合物の量が30重量%以下であることによって、シアニン色素の劣化が抑えられるから、赤外光カットフィルター13の吸光度における低下が抑えられる。
赤外光カットフィルター13は、界面活性剤、保存安定剤、接着助剤、耐熱性向上剤などを含んでもよい。赤外光カットフィルター13は、これらのうちの1種のみを含んでもよいし、2種以上を含んでもよい。
[固体撮像素子用フィルターの製造方法]
固体撮像素子用フィルター10Fの製造方法は、赤外光カットフィルター13を形成することと、赤外光カットフィルター13をフォトリソグラフィによってパターニングすることと、含む。赤外光カットフィルター13を形成することでは、シアニン色素、重合体、および、ナフトキノンジアジド化合物を含む赤外光カットフィルター13を形成する。重合体は、上述した式(1)または式(2)によって表される繰り返し単位を含む。以下、固体撮像素子用フィルター10Fの製造方法をより詳細に説明する。
各色用フィルター12R,12G,12B、および、赤外光パスフィルター12Pは、着色感光性樹脂を含む塗膜の形成、および、フォトリソグラフィー法を用いた塗膜のパターニングによって形成される。例えば、赤色用感光性樹脂を含む塗膜は、赤色用感光性樹脂を含む塗布液の塗布、および、塗布によって形成された塗膜の乾燥によって形成される。赤色用フィルター12Rは、赤色用感光性樹脂を含む塗膜に対し、赤色用フィルター12Rの領域に相当する露光、および、現像を経て形成される。なお、緑色用フィルター12G、青色用フィルター12B、および、赤外光パスフィルター12Pも、赤色用フィルター12Rと同様の方法によって形成される。
赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、および、青色用フィルター12Bの着色組成物に含有される顔料には、有機または無機の顔料を単独でまたは2種類以上混合して用いることができる。顔料は、発色性が高く、かつ、耐熱性の高い顔料、特に耐熱分解性の高い顔料であることが好ましく、有機顔料であることが好ましい。有機顔料は、例えば、フタロシアニン系、アゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、アンサンスロン系、インダンスロン系、ペリレン系、チオインジゴ系、イソインドリン系、キノフタロン系、ジケトピロロピロール系などであってよい。
また、赤外光パスフィルター12Pに含有される着色成分には、黒色色素、あるいは、黒色染料を用いることができる。黒色色素は、単一で黒色を有する色素、あるいは、2種以上の色素によって黒色を有する混合物であってよい。黒色染料は、例えば、アゾ系染料、アントラキノン系染料、アジン系染料、キノリン系染料、ペリノン系染料、ペリレン系染料、および、メチン系染料などであってよい。
各色の感光性着色組成物にはさらに、バインダー樹脂、光重合開始剤、重合性モノマー、有機溶剤、および、レベリング剤などが含まれる。
赤外光カットフィルター13を形成する際には、上述したシアニン色素、重合体、ナフトキノンジアジド化合物、および、有機溶剤を含む塗布液を各色用フィルター12R,12G,12B、および、赤外光パスフィルター12P上に塗布する。これによって、赤外光カットフィルター13を形成する。次に、ポジ型のフォトマスクを用いて、赤外光カットフィルター13を露光する。その後、アルカリ現像液を用いて露光後の赤外光カットフィルター13を現像し、次いで、現像後の赤外光カットフィルター13を水洗し、そして、乾燥させる。乾燥後の赤外光カットフィルター13を加熱することによって、硬化させる。これにより、赤外光カットフィルター13がパターニングされる。
アルカリ現像液には、水酸化テトラアンモニウム(TMAH)水溶液を用いることができる。TMAH水溶液の濃度は、赤外光カットフィルター13の現像が可能な濃度であれば、特に制限されない。赤外光カットフィルター13と現像液とを接触させる方法は、ディップ法、スプレー法、および、スピン法などであってよい。
バリア層14は、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法などの気相成膜法、あるいは、塗布法などの液相成膜法を用いた成膜によって形成される。酸化珪素から形成されるバリア層14は、例えば、赤外光カットフィルター13が形成された基板に対し、酸化珪素からなるターゲットを用いたスパッタリングによる成膜を経て形成される。酸化珪素から形成されるバリア層14は、例えば、赤外光カットフィルター13が形成された基板に対し、シランと酸素とを用いたCVDによる成膜を経て形成される。酸化珪素から形成されるバリア層14は、例えば、ポリシラザンを含む塗布液の塗布、改質、および、塗膜の乾燥によって形成される。バリア層14の層構造は、単一の化合物からなる単層構造でもよいし、単一の化合物からなる層の積層構造であってもよいし、相互に異なる化合物からなる層の積層構造であってもよい。
各マイクロレンズ15R,15G,15B,15Pは、透明樹脂を含む塗膜の形成、フォトリソグラフィー法を用いた塗膜のパターニング、および、熱処理によるリフローによって形成される。透明樹脂は、例えば、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、および、ノルボルネン系樹脂などである。
[製造例]
表1を参照して、赤外光カットフィルターを製造するためのアクリル重合体における製造例を説明する。なお、アクリル重合体が2種以上のモノマーを用いて生成された共重合体である場合には、生成された共重合体における各モノマーに由来する繰り返し単位での重量比が、共重合体の生成時における各モノマーの重量比に等しい。
なお、表1において、化合物Aは式(48)によって表される繰り返し単位が由来するモノマーであり、化合物Bは式(49)によって表される繰り返し単位が由来するモノマーである。化合物Cは式(50)によって表される繰り返し単位が由来するモノマーである。化合物Dは、式(98)によって表される繰り返し単位が由来するモノマーである。また、MAAは、メタクリル酸であり、PhMAは、フェニルメタクリレートである。
Figure 2023112601000108
[製造例1]
150重量部のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAc)を重合溶剤として準備し、100重量部の化合物Aをモノマーとして準備した。また、1.5重量部のベンゾイルペルオキシド(BPO)をラジカル重合体として準備した。これらを攪拌装置と還流管とが設置された反応容器に入れ、反応容器に窒素ガスを導入しつつ、80℃に加熱しながら8時間にわたって攪拌しかつ還流した。これにより、化合物Aから生成された単独重合体を含むポリマー溶液を得た。単独重合体の重量平均分子量は10,000であった。
[製造例2]
50重量部の化合物Aと50重量部のPhMAとをモノマーとして準備した。それ以外は、製造例1と同様の方法によって、化合物AとPhMAとから生成された共重合体を含むポリマー溶液を得た。共重合体の重量平均分子量は11,000であった。
[製造例3]
30重量部の化合物Aと70重量部のPhMAとをモノマーとして準備した。それ以外は、製造例1と同様の方法によって、化合物AとPhMAとから生成された共重合体を含むポリマー溶液を得た。共重合体の重量平均分子量は15,000であった。
[製造例4]
50重量部の化合物Bと50重量部のPhMAとをモノマーとして準備した。それ以外は、製造例1と同様の方法によって、化合物BとPhMAから生成された共重合体を含むポリマー溶液を得た。重合体の重量平均分子量は14,000であった。
[製造例5]
50重量部の化合物Cと50重量部のPhMAとをモノマーとして準備した。それ以外は、製造例1と同様の方法によって、化合物CとPhMAとから生成された共重合体を含むポリマー溶液を得た。アクリル共重合体の重量平均分子量は12,000であった。
[製造例6]
50重量部の化合物Dと50重量部のPhMAとをモノマーとして準備した。それ以外は、製造例1と同様の方法によって、化合物DとPhMAAとから生成されたアクリル共重合体を含むポリマー溶液を得た。アクリル共重合体の重量平均分子量は10,000であった。
[製造例7]
20重量部の化合物Aと80重量部のPhMAとをモノマーとして準備した。それ以外は、製造例1と同様の方法によって、化合物AとPhMAとから生成された共重合体を含むポリマー溶液を得た。アクリル共重合体の重量平均分子量は15,000であった。
[製造例8]
50重量部のMAAと50重量部のPhMAとをアクリルモノマーとして準備した。それ以外は、製造例1と同様の方法によって、MAAとPhMAとから生成されたアクリル共重合体を含むポリマー溶液を得た。アクリル共重合体の重量平均分子量は15,000であった。
[製造例9]
30重量部のMAAと70重量部のPhMAとをアクリルモノマーとして準備した。それ以外は、製造例1と同様の方法によって、MAAとPhMAとから生成されたアクリル共重合体を含むポリマー溶液を得た。アクリル共重合体の重量平均分子量は10,000であった。
[製造例10]
20重量部のMAAと80重量部のPhMAとをアクリルモノマーとして準備した。それ以外は、製造例1と同様の方法によって、MAAとPhMAとから生成されたアクリル共重合体を含むポリマー溶液を得た。アクリル共重合体の重量平均分子量は15,000であった。
[製造例11]
15重量部のMAAと85重量部のPhMAとをアクリルモノマーとして準備した。それ以外は、製造例1と同様の方法によって、MAAとPhMAとから生成されたアクリル共重合体を含むポリマー溶液を得た。アクリル共重合体の重量平均分子量は11,000であった。
[試験例1]
各製造例において、ポリマー溶液の重量に対する単独重合体またはアクリル共重合体の重量が25%であるようにポリマー溶液を希釈することによって、25%ポリマー溶液を得た。なお、製造例1から11の25%ポリマー溶液を順に用いることによって、試験例1‐1から1‐11の赤外光カットフィルターを得た。各試験例における露光前の赤外光カットフィルターを以下の方法で作成した。
0.4gのシアニン色素、12.5gの25%ポリマー溶液、0.625gのナフトキノンジアジド化合物、および、10gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含む塗液を作製した。この際に、シアニン色素として、上記式(5)によって表される色素を用い、かつ、上述した製造例1から製造例11によって得られたアクリル重合体をそれぞれ含む11種のポリマー溶液を用いた。また、ナフトキノンジアジド化合物として、4,4’‐[1‐[4‐[1‐(4‐ヒドロキシフェニル)‐1‐メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノールと、1,2‐ナフトキノン‐2‐ジアジド‐5‐スルホン酸クロリドとのエステルを用いた。塗液を透明基板上に塗布することによって塗膜を形成し、次いで、塗膜を90℃に加熱した。これによって、塗膜を乾燥させ、結果として、1.0μmの厚さを有する露光前の赤外光カットフィルターを得た。
また、ノボラック系のポジ型レジスト(OFPR-800、東京応化工業(株)製)を用いて、以下の方法により、試験例1‐12の赤外光カットフィルターを得た。
固形分が25重量%となるようにポジ型レジストをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートにて希釈した。次いで、0.4gのシアニン色素を希釈後のポジレストに混合し、これによって塗液を作製した。この際に、シアニン色素として、上記式(5)によって表される色素を用いた。塗液を透明基板上に塗布することによって塗膜を形成し、次いで、塗膜を90℃に加熱した。これによって、塗膜を乾燥させることによって、1.0μmの厚さを有する試験例1‐12の赤外光カットフィルターを得た。
[現像性の評価]
以下に記載する方法によって、露光部における赤外光カットフィルターのアルカリ現像液への現像速度(R1)と、未露光部における赤外光カットフィルターのアルカリ現像液への現像速度(R2)とをそれぞれ算出した。未露光部における現像速度R2に対する露光部における現像速度R1の比(R1/R2)を現像コントラストとして算出した。
[露光部における現像速度R1]
未露光の赤外光カットフィルターを、露光機(FPA‐5510iZ、キヤノン(株)製)を用いて露光した。この際に、露光機の露光量を5000J/mに設定した。次いで、水酸化テトラアンモニウム(TMAH)の濃度が1.0重量%になるように、TMAHを純水で調整し、これによって、アルカリ現像液を生成した。露光後の赤外光カットフィルターを1秒から30秒の範囲内における所定時間にわたってアルカリ現像液に浸した後、純水を用いて30秒間にわたって赤外光カットフィルターを洗浄した。その後、アルカリ現像液に浸漬した後における赤外光カットフィルターの厚さを測定した。アルカリ現像液に浸漬する前と後での赤外光カットフィルターの厚さにおける変化量と、赤外光カットフィルターをアルカリ現像液に浸漬した時間とに基づいて、以下の式を用いて露光部の現像速度R1(nm/s)を算出した。
現像速度R1(nm/s)=厚さの変化量/浸漬時間
なお、現像速度R1の算出式において、厚さの変化量を、アルカリ現像液に浸漬する前の赤外光カットフィルターの厚さからアルカリ現像液に浸漬した後の赤外光カットフィルターの厚さを減算することによって算出した。なお、上述したように、アルカリ現像液に浸漬する前の赤外光カットフィルターの厚さは、1.0μmであった。また、上述したように、浸漬時間を1秒から30秒の範囲内における所定時間に設定した。
[未露光部における現像速度R2]
TMAHの濃度が1.0重量%になるように、TMAHを純水で調整し、これによってアルカリ現像液を得た。そして、未露光の赤外光カットフィルタ-を1秒から30秒の範囲内における所定時間にわたってアルカリ現像液に浸した後、純水を用いて30秒間にわたって赤外光カットフィルターを洗浄した。その後、アルカリ現像液に浸漬後における赤外光カットフィルターの厚さを測定した。アルカリ現像液に浸漬する前と後での赤外光カットフィルターの厚さにおける変化量と、赤外光カットフィルターをアルカリ現像液に浸漬した時間とに基づいて、以下の式を用いて未露光部の現像速度R2(nm/s)を算出した。
現像速度R2(nm/s)=厚さの変化量/浸漬時間
なお、現像速度R2の算出式において、厚さの変化量を、アルカリ現像液に浸漬する前の赤外光カットフィルターの厚さからアルカリ現像液に浸漬した後の赤外光カットフィルターの厚さを減算することによって算出した。なお、上述したように、アルカリ現像液に浸漬する前の赤外光カットフィルターの厚さは、1.0μmであった。また、上述したように、浸漬時間を1秒から30秒の範囲内における所定時間に設定した。
[現像速度R2に対する現像速度R1の比]
下記式により、未露光部における現像速度R2に対する露光部における現像速度R1の比を現像コントラストとして算出した。
現像コントラスト=露光部の現像速度R1/未露光部の現像速度R2
なお、赤外光カットフィルターにおいて現像コントラストが40以上である場合には、赤外光カットフィルターにおいて、パターンの形成における精度が良好である。すなわち、赤外光カットフィルターは、高い現像性を有する。
[分光特性]
未露光の赤外光カットフィルターを200℃に加熱することによって、赤外光カットフィルターを硬化させた。硬化後の赤外光カットフィルターについて、分光光度計(U-4100、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、350nmから1150nmの各波長を有した光に対する赤外光カットフィルターの透過率を測定した。これにより、各赤外光カットフィルターについて、透過率のスペクトルを得た。なお、上記式(5)によって表されるシアニン色素における透過率のスペクトルは、950nmにおいて最も低い透過率を有する。950nmの透過率が20%以下である赤外光カットフィルターは、固体撮像素子に適用された場合に好ましい赤外光の吸収能を有する。
[評価結果]
各試験例の赤外光カットフィルターにおいて、現像速度R1、現像速度R2、現像コントラスト、および、分光特性の評価結果は、以下の表2に示す通りであった。
Figure 2023112601000109
表2が示すように、試験例1‐1から試験例1‐7の赤外光カットフィルターでは、現像コントラストがいずれも40以上であることが認められた。すなわち、試験例1‐1から試験例1‐7の赤外光カットフィルターは、フォトリソグラフィーによるパターニングにおいて高い現像性を有することが認められた。また、試験例1‐1から試験例1‐7の赤外光カットフィルターでは、950nmの波長を有した光の透過率が20%以下であることが認められた。すなわち、試験例1‐1から試験例1‐7の赤外光カットフィルターは、赤外光カットフィルターとして適した赤外光の吸収能を有することが認められた。
試験例1‐10および試験例1‐11の赤外光カットフィルターでは、950nmの波長を有した光の透過率が10%であるから、試験例1‐10および試験例1‐11の赤外光カットフィルターは、赤外光カットフィルターとして適した赤外光の吸収能を有することが認められた。しかしながら、試験例1‐10および試験例1‐11の赤外光カットフィルターでは、現像コントラストが15以下であるから、試験例1‐10および試験例1‐11の赤外光カットフィルターは、試験例1‐1から試験例1‐7の赤外光カットフィルターに比べて、フォトリソグラフィーによるパターニングにおいて低い現像性を有することが認められた。
また、試験例1‐8,1‐9の赤外光カットフィルターでは、950nmの波長を有した光の透過率が60%以上であり、かつ、現像コントラストが10未満であることが認められた。すなわち、試験例1‐8,1‐9の赤外光カットフィルターは、試験例1‐1から試験例1‐7の赤外光カットフィルターに比べて、赤外光カットフィルターとして低い赤外光の吸収能を有し、かつ、フォトリソグラフィによるパターニングにおいて低い現像性を有することが認められた。
試験例1‐12の赤外光カットフィルターでは、現像コントラストが158であることが認められた。すなわち、試験例1‐13の赤外光カットフィルターは、フォトリソグラフィによるパターニングにおいて高い現像性を有することが認められた。一方で、試験例1‐12の赤外光カットフィルターでは、950nmの波長を有した光の透過率が80%であり、試験例1‐12の赤外光カットフィルターは、赤外光カットフィルターとして低い赤外光の吸収能を有することが認められた。
このように、重合体が式(1)または式(2)によって表される繰り返し単位を含むことによって、赤外光カットフィルターにおいて、現像性と赤外光の吸収能とを両立させることが可能であることが認められた。また、アクリル重合体が式(1)によって表される繰り返し単位を30重量%以上含むことによって、赤外光カットフィルターがより高い現像性を有することが認められた。また、重合体は、現像性の観点において、式(1)によって表される繰り返し単位を50質量%以下含むことがより好ましいことが認められた。すなわち、式(1)によって表される繰り返し単位を重合体が30重量%以上50重量%以下含むことによって、より高い現像性が得られることが認められた。
[試験例2]
[ナフトキノンジアジド化合物の含有量]
製造例2のアクリル共重合体を用いることによって、以下に説明する7種の赤外光カットフィルターを得た。
0.4gのシアニン色素、12.5gの25%ポリマー溶液、ナフトキノンジアジド化合物、および、10gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含む塗液を作製した。この際に、シアニン色素として、上記式(5)によって表される色素を用いた。また、ナフトキノンジアジドとして、4,4’‐[1‐[4‐[1‐(4‐ヒドロキシフェニル)‐1‐メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノールと、1,2‐ナフトキノン‐2‐ジアジド‐5‐スルホン酸クロリドとのエステルを用いた。塗液を透明基板上に塗布することによって塗膜を形成し、次いで、塗膜を90℃に加熱した。これによって、塗膜を乾燥させ、結果として、1.0μmの厚さを有する赤外光カットフィルターを得た。
ナフトキノンジアジド化合物の量を以下に示す表3に記載のように、7通りの量に変更することによって、7種の赤外光カットフィルターを得た。
Figure 2023112601000110
表3が示すように、試験例2‐1において、ナフトキノンジアジド化合物の量を0.095gに設定し、これにより、アクリル共重合体を100重量%とした場合において、ナフトキノンジアジド化合物の量を3重量%に設定した。試験例2‐2において、ナフトキノンジアジド化合物の量を0.155gに設定し、これにより、アクリル共重合体を100重量%とした場合において、ナフトキノンジアジド化合物の量を5重量%に設定した。
試験例2‐3において、ナフトキノンジアジド化合物の量を0.315gに設定し、これにより、アクリル共重合体を100重量%とした場合において、ナフトキノンジアジド化合物の量を10質量%に設定した。試験例2‐4において、ナフトキノンジアジド化合物の量を0.625gに設定し、これにより、アクリル共重合体を100重量%とした場合において、ナフトキノンジアジド化合物の量を20重量%に設定した。
試験例2‐5において、ナフトキノンジアジド化合物の量を0.950gに設定し、これにより、アクリル共重合体を100重量%とした場合において、ナフトキノンジアジド化合物の量を30重量%に設定した。試験例2‐6において、ナフトキノンジアジド化合物の量を1.100gに設定し、これにより、アクリル共重合体を100重量%とした場合において、ナフトキノンジアジド化合物の量を35重量%に設定した。試験例2‐7において、ナフトキノンジアジド化合物の量を1.250gに設定し、これにより、アクリル共重合体を100重量%とした倍において、ナフトキノンジアジド化合物の量を40重量%に設定した。
[評価結果]
試験例1において説明した方法と同様の方法によって、各試験例の赤外光カットフィルターについて、露光部の現像速度R1、未露光部の現像速度R2、および、現像コントラストを算出した。また、試験例1において説明した方法と同様の方法によって、各試験例の赤外光カットフィルターについて、分光特性を測定した。現像速度R1、現像速度R2、現像コントラスト、および、分光特性を評価した結果は、以下の表4に示す通りであった。
Figure 2023112601000111
表4が示すように、試験例2‐1から試験例2‐7の赤外光カットフィルターによれば、アクリル重合体が、式(1)が表す繰り返し単位を含まない場合に比べて、現像コントラストおよび分光特性のいずれか一方が極端に低下することが抑えられることが認められた。すなわち、試験例2‐1から試験例2‐7の赤外光カットフィルターによれば、現像性と赤外光の吸収能とが両立されることが認められた。特に、試験例2‐1では、ナフトキノンジアジド化合物の量が少なくとも、式(1)が表す繰り返し単位を含まない場合に比べて、現像コントラストが高いあるいは同程度であることが認められた。
また、試験例2‐2から試験例2‐7の赤外光カットフィルターによれば、すなわち、アクリル共重合体を100重量%とする場合に、ナフトキノンジアジド化合物の量が5重量%以上であることによって、赤外光カットフィルターにおける現像コントラストがさらに高められることが認められた。詳細には、赤外光カットフィルターが、40以上の現像コントラストを呈することが認められた。
一方で、試験例2‐1から試験例2‐5の赤外光カットフィルターによれば、すなわち、アクリル共重合体を100重量%とする場合に、ナフトキノンジアジド化合物の量が30質量%以下であることによって、赤外光カットフィルターにおける赤外光の吸収能がさらに高められることが認められた。詳細には、赤外光カットフィルターにおいて、950nmの波長を有する光の透過率が20%以下であることが認められた。
このように、赤外光カットフィルターの現像性と赤外光の吸収能とを両立する観点では、アクリル共重合体を100重量%とする場合に、ナフトキノンジアジド化合物の量が5重量%以上30重量%であることが好ましいことが認められた。
以上説明したように、赤外光カットフィルター、固体撮像素子用フィルター、固体撮像素子、および、固体撮像素子用フィルターの製造方法の一実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)式(1)によって表される繰り返し単位を含む重合体は、酸性を呈するスルホンアミド構造を含む。また、式(2)によって表される繰り返し単位を含む重合体は、酸性を呈するスルホンイミド構造を含む。そのため、重合体とナフトキノンジアジド化合物とを含む混合物によれば、アルカリ現像液による現像が可能である。
(2)式(1)または式(2)によって表される繰り返し単位を含む重合体は、シアニン色素との相溶性が高いから、シアニン色素の会合を抑えることが可能である。これにより、シアニン色素を赤外光カットフィルターにおいて、赤外光の吸収能における低下を抑えることが可能である。
(3)アクリル重合体が30重量%以上の上述した繰り返し単位を含むことにより、アクリル重合体を含む赤外光カットフィルター13の現像性をさらに高めることが可能である。
(4)アクリル重合体の分子量が30万以下であれば、現像液に対するアクリル重合体の溶解性が低下しにくいから、赤外光カットフィルター13の現像時における赤外光カットフィルター13の剥離が抑えられる。そのため、赤外光カットフィルター13のパターニングが容易である。
(5)アクリル重合体の分子量が3000以上である場合には、アクリル重合体によって、赤外光カットフィルター13に含まれるシアニン色素の会合が抑えられる。これにより、赤外光カットフィルター13における赤外領域での吸光度の低下が抑えられる。
(6)ナフトキノンジアジド化合物の量が5重量%以上であることによって、赤外光カットフィルター13において、未露光部の現像性が低下し、かつ、露光部の現像性が向上する。これにより、赤外光カットフィルター13の形状における精度が高められる。また、ナフトキノンジアジド化合物の量が30重量%以下であることによって、シアニン色素の劣化が抑えられるから、赤外光カットフィルター13の吸光度における低下が抑えられる。
なお、上述した実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
[バリア層]
・バリア層14は、赤外光カットフィルター13とマイクロレンズ15R、15G,15B,15Pとの間に限らず、各マイクロレンズ15R、15G,15B,15Pの外表面に配置されてもよい。
・固体撮像素子10は、バリア層14とバリア層14の下層との間にアンカー層を備えてもよい。この場合には、バリア層14とバリア層14の下層との密着性がアンカー層によって高められる。また、固体撮像素子10は、バリア層14とバリア層14の上層との間にアンカー層を備えてもよい。この場合には、バリア層とバリア層の上層との密着性をアンカー層によって高められる。アンカー層を形成する材料は、例えば、多官能アクリル樹脂、あるいは、シランカップリング剤などである。
・バリア層14の層構造は、単一の化合物からなる単層構造でもよいし、単一の化合物からなる層の積層構造であってもよいし、相互に異なる化合物からなる層の積層構造でもよい。
・バリア層14は、赤外光カットフィルター13の表面と赤外光パスフィルター12Pの表面が形成する段差を埋める平坦化層として機能してもよい。
・固体撮像素子用フィルター10Fはバリア層14を備えていなくてもよい。この場合であっても、上述した(1)に準じた効果を得ることは可能である。
[その他]
・各色用フィルター12R,12G,12Bの厚さは、赤外光パスフィルター12Pと相互に等しい大きさであってもよいし、異なる大きさであってもよい。各色用フィルター12R,12G,12Bの厚さは、例えば、0.5μm以上5μm以下であってよい。
・カラーフィルターは、シアン用フィルター、イエロー用フィルター、マゼンタ用フィルターを含む三色用フィルターでもよい。また、カラーフィルターは、シアン用フィルター、イエロー用フィルター、マゼンタ用フィルター、ブラック用フィルターを含む四色用フィルターでもよい。また、カラーフィルターは、透明用フィルター、イエロー用フィルター、赤色用フィルター、ブラック用フィルターを含む四色用フィルターでもよい。
・各色用フィルター12R,12G,12Bは、赤外光パスフィルター12Pと互いに等しい厚さを有してもよいし、互いに異なる厚さを有してもよい。各色用フィルター12R,12G,12Bの厚さは、例えば、0.5μm以上5μm以下であってよい。
・赤外光カットフィルター13を形成する材料は、光安定剤、酸化防止剤、熱安定剤、および、帯電防止剤など添加物であって、赤外光カットフィルター13が、赤外光を吸収する機能以外の他の機能を兼ね備えるための添加物を含むことが可能である。
・固体撮像素子10において、赤外光カットフィルター13に対して入射面15Sの側に位置する積層構造での酸素透過率が、5.0cc/m/day/atm以下であってもよい。例えば、積層構造は、平坦化層や密着層などの他の機能層であって、各マイクロレンズとともに、その酸素透過率が5.0cc/m/day/atm以下であってもよい。
・固体撮像素子10は、複数のマイクロレンズに対して光の入射面側にバンドパスフィルターを備えてもよい。バンドパスフィルターは可視光と近赤外光の特定の波長を有する光のみを透過するフィルターであり、赤外光カットフィルター13と類似の機能を備える。すなわち、バンドパスフィルターにより各色用光電変換素子11R,11G,11Bが検出し得る不要な赤外光をカットすることができる。それによって、各色用光電変換素子11R,11G,11Bによる可視光の検出精度、および、赤外光用光電変換素子11Pの検出対象である850nmあるいは940nm帯域の波長を有した近赤外光の検出精度を高めることができる。
10…固体撮像素子
10F…固体撮像素子用フィルター
11…光電変換素子
12R…赤色用フィルター
12G…緑色用フィルター
12B…青色用フィルター
12P…赤外光パスフィルター
13…赤外光カットフィルター
13H…貫通孔
14…バリア層
15B…青色用マイクロレンズ
15G…緑色用マイクロレンズ
15P…赤外光用マイクロレンズ
15R…赤色用マイクロレンズ

Claims (8)

  1. ポリメチン、および、前記ポリメチンの各末端に位置し、窒素を含む複素環を有するカチオンと、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸アニオンとを含むシアニン色素と、
    下記式(1)または下記式(2)によって表される繰り返し単位を含む重合体と、
    ナフトキノンジアジド化合物と、を含む
    赤外光カットフィルター。
    ただし、式(1)において、Aは水素原子、ハロゲン原子、または、炭素数が1から4のアルキル基であり、R1はアルキル基、置換アルキル基、アリール基、または、置換アリール基である。なお、置換アルキル基は、アルキル基が含む原子がハロゲン原子、アリール基、アミド基、アルコキシ基、または、アルコキシカルボニル基によって置換されたアルキル基である。置換アリール基は、アリール基が含む原子がハロゲン原子、アルキル基、炭素数が1から10のアルコキシ基、または、アミド基で置換されたアリール基である。
    式(2)において、Aは水素原子、ハロゲン原子、または、炭素数が1から4のアルキル基であり、Bはフェニレン基であり、R1はアルキル基、置換アルキル基、アリール基、または、置換アリール基である。なお、置換アルキル基は、アルキル基が含む原子がハロゲン原子、アリール基、アミド基、アルコキシ基、または、アルコキシカルボニル基によって置換されたアルキル基である。置換アリール基は、アリール基が含む原子がハロゲン原子、アルキル基、炭素数が1から10のアルコキシ基、または、アミド基で置換されたアリール基である。mは、0または1である。
  2. 前記繰り返し単位は、前記式(1)によって表され、
    前記重合体は、30重量%以上100重量%以下の前記繰り返し単位を含む
    請求項1に記載の赤外光カットフィルター。
  3. 前記繰り返し単位は、前記式(2)によって表され、
    前記重合体は、30重量%以上100重量%以下の前記繰り返し単位を含む
    請求項1に記載の赤外光カットフィルター。
  4. 前記ナフトキノンジアジド化合物の重量は、前記重合体の重量に対する5重量%以上30重量%以下である
    請求項1から3のいずれか一項に記載の赤外光カットフィルター。
  5. 前記重合体の平均分子量は、3000以上30万以下である
    請求項1から4のいずれか一項に記載の赤外光カットフィルター。
  6. 請求項1から5のいずれか一項に記載の赤外光カットフィルターと、
    前記赤外光カットフィルターを覆い、前記赤外光カットフィルターを酸化する酸化源の透過を抑えるバリア層と、を備える
    固体撮像素子用フィルター。
  7. 光電変換素子と、
    請求項6に記載の固体撮像素子用フィルターと、を備える
    固体撮像素子。
  8. ポリメチン、および、前記ポリメチンの各末端に位置し、窒素を含む2つの複素環を有するカチオン、および、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸アニオンを含むシアニン色素と、下記式(1)または下記式(2)によって表される繰り返し単位を含む重合体と、ナフトキノンジアジド化合物とを含む赤外光カットフィルターを形成することと、
    前記赤外光カットフィルターをフォトリソグラフィによってパターニングすることと、を含む
    固体撮像素子用フィルターの製造方法。
    ただし、式(1)において、Aは水素原子、ハロゲン原子、または、炭素数が1から4のアルキル基であり、R1はアルキル基、置換アルキル基、アリール基、または、置換アリール基である。なお、置換アルキル基は、アルキル基が含む原子がハロゲン原子、アリール基、アミド基、アルコキシ基、または、アルコキシカルボニル基によって置換されたアルキル基である。置換アリール基は、アリール基が含む原子がハロゲン原子、アルキル基、炭素数が1から10のアルコキシ基、または、アミド基で置換されたアリール基である。
    式(2)において、Aは水素原子、ハロゲン原子、または、炭素数が1から4のアルキル基であり、Bはフェニレン基であり、R1はアルキル基、置換アルキル基、アリール基、または、置換アリール基である。なお、置換アルキル基は、アルキル基が含む原子がハロゲン原子、アリール基、アミド基、アルコキシ基、または、アルコキシカルボニル基によって置換されたアルキル基である。置換アリール基は、アリール基が含む原子がハロゲン原子、アルキル基、炭素数が1から10のアルコキシ基、または、アミド基で置換されたアリール基である。mは、0または1である。
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