JP2023111411A - パイプ瑕疵判定装置 - Google Patents

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大二 奥田
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Abstract

【課題】細径薄壁パイプの亀裂を磁気的方法で検知するとき、パイプの変形や物性のばらつきまたはパイプ搬送に伴う振動がノイズとなり正しい判定ができない課題があった。【解決手段】励振コイル1と信号コイル2とから構成される2つのプローブ3を、パイプを挟みこむように対向して設置し、その隙間空間を垂直に設置した非導電性平板でできた試料台にパイプを搭載し、試料台を動かすことで通過させて、2つのプローブ3で交互に渦電流信号を測定し、その2つの信号の同相成分の信号の大きさによりパイプの亀裂判定を行う。【選択図】図2

Description

非磁性、超弾性の金属細径パイプの亀裂や傷などの瑕疵を渦電流法により判定する装置に関するものである。
本発明は、医療処置具などに多用される超弾性をもつ細径薄壁パイプの亀裂や傷を高精度に検査することを目的としている。これらのパイプは非磁性でもある。
細長い物体を検査するための方法として、例えば特許5806117号にフィールドスルーコイル構造の検査装置が示されている。実施例によると約0.3~3mmのワイヤ断面のワイヤを、非磁性材料の薄壁管に通し、その外側にフィードスルーコイルを設置して、ワイヤを移動させながらフィードスルー法で渦電流検査を行う。薄壁管はガイドスリーブの機能を持ち検査試料の表面と薄壁管の内面との空間は30~50μmとしている。また管は検査試料とフィードスルーコイル構造との間に磁気絶縁体を形成しているが、高い充填係数を実現するため管の壁厚は0.1~0.2mmの範囲とし、比較的細い検査試料でも、高い欠陥信号レベル、それと同時に、低い干渉レベルによる検査が可能になるとしている。
この検査装置は、検査試料を薄壁管に通して巻き取り機構などで移動させることで、ワイヤ全体を検査する構造となっている。巻き取り方式は必要長さに加工したパイプには適用できない。あるいは、限られた長さのパイプを管に通して移動させるには、はじめは入口側から押し込み、次に出口側から引き出すというように、持ち替えが必要となるが、持ち替えに伴い検査試料がフィードスルーコイル内で微小ながら位置変動が起こりノイズの原因となる。
また、超弾性細径薄壁パイプは、撓みが起こりやすく、小さい力で大きな変形が起こるため、フィードスルーコイルをはさんで離れた位置でパイプを保持すると、撓みが生じて薄壁管との摺動が起こり振動を誘起してノイズの原因となる。
特許第5806117号 明細書
特許第5806117号の検査法を細径薄壁の超弾性、非磁性の比較的短いパイプの検査に適用しようとする場合には、パイプの両端付近を検査できない、被検査体が超弾性であるため撓みや変形が起きやすく、フィードスルーコイル内で位置変動や振動によりノイズが発生して、精度のよい検査ができないという問題点がある。
本発明は、被検査体より僅かに広い空間をはさんで2つの渦電流探傷用のプローブを設置し、平板状の試料台に被検査体のパイプを搭載し、パイプが試料台以外と接触することなくプローブ間を走行させる。さらに2つのプローブの信号の同相成分を抽出して評価をおこなうことで、亀裂および薄壁化の欠陥検知に対してノイズとなる要因を排除し、瑕疵判定精度を向上させることができる。
上記手段は、パイプをプローブ表面で摺動させた場合にノイズが発生しやすいという実験結果と各プローブで得られる信号を比較検討したところ、典型的に2つのプローブの信号が同相で変化する場合と、逆相で変化する場合とがあり、亀裂があるパイプにおいては同相成分が支配的であることを見出したことに基づく。
本発明により細径薄肉で超弾性、非磁性パイプの欠陥検査において、各プローブの渦電流信号のノイズレベルを低減するとともに、2つのプローブの同相成分に注目した信号処理を行うことにより、パイプの欠陥の検査精度高めたパイプ瑕疵判定装置を提供することができる。
プローブの構成を示す模式図 対向する2つのプローブの亀裂による信号の模式図 第1実施例におけるパイプ瑕疵判定装置の模式図 第1実施例におけるパイプ瑕疵判定装置の制御的な構成を示すブロック図 信号処理のブロック図 第1実施例におけるプローブ(1)とプローブ(2)の動作タイミング図 第2実施例におけるパイプハンドリング部の模式図 パイプハンドリング部のパイプ回転機能をもつグリッパー部の模式図 パイプ回転に伴うプローブ(1)とプローブ(2)の信号の事例 パイプ回転に伴う信号振幅の変動の事例 パイプピックアップ円筒の回転動作を示すチャート図
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施例に使用しているプローブ3の構成を示す模式図である。励磁コイル1の一部が非磁性の幅広導体1Wで構成されており、その広がりの中央部に信号コイル2が配置されている。この励磁コイル1の形状により励磁コイル面に平行な磁界を発生させることができ、長手方向に延びる亀裂に対応する渦電流変化がより顕著に現れる。
図2は、2つのプローブで検知される亀裂201からの誘導磁界202による信号の模式図である。亀裂201からはほぼ同相、同程度の大きさの信号が得られる。しかし、多数の測定データによると、2つのプローブの信号が逆相で大きい値をとる場合が比較的多くみられ、それらはパイプの歪みによるものであった。亀裂を検査するときは、これらを区別することが必要であった。
図3は、パイプ101全体をセンサユニット4で走査する瑕疵判定装置の模式図である。パイプ101は試料台5に載せられ、パイプ走査部6のスライダー部7が走行することでパイプ101全体を測定する。
図4は制御的な構成を示すブロック図である。パイプ走査制御部はパイプ走査部6を制御する。パイプ走査部6の動きに同期して信号処理が行われ、合否判定が行われる。尚、本実施例では被検査体のパイプは人手で搭載および検査結果に基づく振り分けを行うので、パイプハンドリング制御部は不要である。
図5は、2つの信号コイル2で得られた信号の処理内容を示すブロック図である。2つの信号コイル2の信号を同期検波しバンドパスフィルタリング(BPF)したのち和信号と差信号をとり、それぞれを区間振幅検波して和信号から同相信号振幅A_IP_S(0)、 差信号から逆相信号振幅A_OP_S(0)を求める。区間振幅検波とはパイプ長手方法の指定された区間でのIP_S(0)及びOP_S(0)のの変動幅、つまり(最大値―最小値)である。 亀裂検査判定では、図4に示す合否判定部で、「(A_IP_S(0)) ― α・(A_OP_S(0)) > 閾値」により判定する。尚αは、亀裂以外の要因で発生する逆相信号が非常に大きい場合に、2つのプローブの信号に僅かながら差が生じて同相成分へ影響する部分を差し引くためのパラメータで、その値は0~0.2の範囲で設定するのが適切である。
図6はプローブ(1)とプローブ(2)が交互に測定を行うタイミングを示す。図示例では0.01s周期で測定が実施されている。0.01s間でのパイプの移動量は小さく、交互にパイプの逆方向から測定していることになる。
以上の構成により、次のように機能する。図1に示すプローブの励磁コイル構成により励磁磁界をパイプの長軸方向に概略平行に発生し、従って渦電流がパイプの円周に沿って回転する方向に生じる。もし亀裂があるときは、円周方向の渦電流の流れが効果的に阻害されるので、容積の小さい、非磁性金属に対しても高感度に亀裂の信号を検知できる。またパイプ101は試料台5に搭載され重力以外の外力が全くかからずにセンサユニットの狭い空隙を通過するように設計されており、撓みや、掴みや摺動摩擦による外力を受けることがなく、細径薄壁の超弾性のパイプであっても測定中に変形や振動が発生せず、動きに伴うノイズ発生がない。
また対向する2つのプローブの信号から同相成分IP_S(0) = S1(0)+S2(0) と 逆相成分 OP_S(0) =S1(0)-S2(0) を抽出し、その信号の長手方向の区間振幅検波により同相成分振幅A_IP_S(0)と逆相信号振幅A_OP_S(0)を求め、「(A_IP_S(0)) ― α・(A_OP_S(0)) > 閾値」により判定することで、パイプの歪みによる信号を排除して、亀裂に注目した判定を精密に行うことができる。より小さい亀裂を検知しようとすると、そのほかのパイプの歪みや物性のばらつき等のパイプ特性による信号を低減することが重要で、上記の信号処理により亀裂検査の精度を大幅に向上できた。
(変形例)
図7にパイプハンドリング部9の模式図を示す。パイプピックアップ円筒11が回転すると、パイプストッカー10に積まれた複数本のパイプから1本のパイプ101がパイプ溝111に入り取り上げられ、頂上位置で一旦停止する。引き続いてロボット12のグリッパー部13がパイプ111を掴み、試料台5の溝に移動させる。このパイプハンドリング部は判定結果に基づいて、パイプを良品ビン20、亀裂ビン21、変形ビン22に振り分ける機能も果たす。このパイプハンドリング部9を実施例1に付加することで、多数本パイプを自動で検査することができる。
図7のパイプピックアップ円筒11には、パイプ溝111のほかにディンプル溝112が形成されている。また、パイプピックアップ円筒11は、図11に示すようにパイプ溝の角度位置に応じてその回転速度等を制御するようになっている。これらは、パイプストッカー10に積まれたパイプ111を確実に1本ずつ取り上げるためのものである。
ディンプル溝は、パイプ径の1~2倍のピッチでパイプが入り込むことがないように浅く形成され、回転速度はパイプをピックアップするタイミングではパイプ径の1~2倍のピッチで、ステップ状の回転を行う。このことにより積み上げられたパイプの整列効果とパイプ101がパイプ溝111に入り込む時間が確保され、より確実にパイプ1本のピックアップができる。
図8は、図7のグリッパー部13にスライド機構で構成されるパイプ回転部14を追加したものを示す。この機能を追加したハイプハンドリング部を含む装置では、試料台5上でパイプ111を掴み、パイプ回転部14を用いてパイプを任意の角度に回転させて、再度試料台5に置き測定を行うことができる。望ましくは45°毎に回転させて実施例1の変形例により測定データを取得する。
図9に実験で得られたパイプ111を回転させたときの信号の典型的な角度依存性を示す。図9(a)は亀裂があるときの波形で2つのプローブ3の信号は同相で、回転させても信号の大きさと形の変化は小さい。図9(b)は2つのプローブ3の信号が逆相の事例で、かつ回転を行うと2つの信号が互いに逆相のまま振幅が小さくなり、さらに回転させると、各信号の位相が反転する、という変化を示す。
図10はパイプ回転に伴う信号振幅の変化を示す。図10(a)に亀裂に注目して図9(a)の同相信号振幅の、図10(b)に歪みに注目して図9(b)の逆相信号振幅の、回転角依存性を示す。図9(a)の逆相信号振幅、図9(b)の同相信号振幅は、図10に図示した信号振幅より大幅に小さい値となる。
図10に対応した具体的な信号は、パイプ回転角が離散化されるので、同相信号振幅A_IP_S(i)、逆相信号振幅 A_OP_S(i)とあらわされ、(i)が角度に対応している。角度に関する平均値をそれぞれA_IP_S、A_OP_S とする。また、その変動をパイプ1回転に対して2回転する正弦波で近似して、その振幅を同相振幅についてAS_IP_S、逆相振幅についてAS_OP_S と求める。
上記の測定値を用いて、亀裂を「(A_IP_S) ― α・(A_OP_S) > 閾値(1)かつ (AS_IP_S)/(A_IP_S)<閾値(2)」で、変形を「(A_OP_S) >閾値(3) かつ (AS_OP_2)/(A_OP_S) >閾値(4)」で判定する。閾値は対象品の寸法、目的により設定するが、比率の閾値、閾値(2)は0.1~0.3、 閾値(4)は0.3~1.0の範囲が適当である。
以上の構成により、次のように機能する。パイプの歪みによる信号は図9(b)に示すようにパイプの回転により信号振幅が大きく変動するため、一つの回転角だけの測定ではパイプの変形を見落とす可能性があるが、複数の回転角でのデータを収集できれば正確なパイプ変形の判定が行える。亀裂は1つの回転角の測定でも、かなり確実な判定をおこなうことができるが、複数の回転角での測定値の平均値を用いて判定することは、更にS/Nの改善になる。
判定基準に、回転に対する信号振幅の変動の相対評価(AS_IP_S)/(A_IP_S)<閾値(2)または(AS_OP_2)/(A_OP_S)>閾値(4) を取り入れことにより、パイプの亀裂の信号は2つのプローブの信号が同相で、かつ回転に対する変動が小さいという特徴、パイプの歪みの信号は信号が逆相で、かつ角度依存性が顕著であるという特徴を忠実に反映させてより精度の高い「亀裂」と「歪み」の判定が可能となった。
本発明は、医療処置具に用いられる超弾性を持つ細径薄壁パイプの品質確保のため効率的な、自動化された検査法として用いられる。
1 励磁コイル
2 信号コイル
3 プローブ
4 センサユニット
5 試料台
6 パイプ走査部
9 パイプハンドリング部
10 パイプストッカー
11 パイプピックアップ円筒
12 ロボット
13 グリッパー部
14 パイプ回転部
111 パイプ溝
112 ディンプル溝

Claims (3)

  1. 非磁性導体の一部が幅広で、そこを一方向に電流が流れるように構成された励振コイルとその幅広導体の中央部の一部に非磁性導体からなる信号コイルとから構成されたプローブ、 前記プローブ2組(プローブ(1)とプローブ(2))を狭い空隙をあけて対向して設置して構成されたセンサユニットと、前記センサユニットの空隙を、被検査体を試料台に搭載して通過するパイプ走査部と、前記励振コイルに高周波電流を流すとともに前記信号コイルで得られた信号を処理するセンサ制御部とで構成され、2つのプローブでの測定を時分割で交互に行い、プローブ(1)の信号をS1(0)、プローブ(2)の信号をS2(0) とし、同相成分 IP_S(0) = S1(0)+S2(0)、逆相成分 OP_S(0) = S1(0)ーS2(0)、さらにそれらの指定した区間での信号の変動幅を同相信号振幅A_IP_S(0)、逆相信号振幅 A_OP_S(0)とするとき、亀裂の判定を「(A_IP_S(0)) ― α・(A_OP_S(0)) > 閾値」により行うことを特徴とするパイプ瑕疵判定装置。ただし、αは0~0.2の範囲で設定する。
  2. 多数本の前記被検査体から順次1本ずつ取り上げ前記パイプ走査部に搭載して検査し、検査後に判定結果に応じて、前記被検体を分別収納するパイプハンドリング部を有する請求項1に記載のパイプ瑕疵判定装置。
  3. 請求項2のパイプハンドリング部のグリッパー部にパイプ回転機構を組み込み、被検査体を回転させて複数回測定し、プローブ(1)およびプローブ(2)の信号S1(i)、S2(i)を取得して、同相成分 IP_S(i) = S1(i)+S2(i)、逆相成分 OP_S(i) = S1(i)―S2(i)を計算し、さらにそれらの指定した区間での信号の変動幅を同相信号振幅A_IP_S(i)、逆相信号振幅 A_OP_S(i)とし、同相信号振幅の角度に関する平均値A_IP_S, 逆相信号振幅の角度に関する平均値A_OP_Sを求める。また、同相信号振幅A_IP_S(i) およびA_OP_S(i) の角度依存性の変動をパイプ1回転に対して2回転の正弦波で近似し、その成分の振幅を同相信号についてAS_IP_S、逆相信号についてAS_OP_S とする。これらの測定値を用いて、亀裂判定を「(A_IP_S) ― α・(A_OP_S) > 閾値(1)かつ (AS_IP_S)/(A_IP_S)<閾値(2)」で、変形判定を「(A_OP_S) >閾値(3) かつ (AS_OP_2)/(A_OP_S) >閾値(4)」で、行うことを特徴とするパイプ瑕疵判定装置。ただしαは0~0.2の範囲で設定する。
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