JP2023109704A - 繊維複合材料および繊維製品 - Google Patents

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Akihiro Asano
豊明 佐々木
Toyoaki Sasaki
拓也 岩田
Takuya Iwata
愛由 有間
Ayu Arima
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Abstract

【課題】繊維基材の表面に、該繊維基材との密着性が良好な4-メチル-1-ペンテン系重合体を含むコーティング層を形成して、繊維基材の風合いを大きく損なうことなく、撥水性と機械強度とに優れた繊維複合材料を提供する。【解決手段】繊維基材(I)と下記要件(a)~(c)を満たす4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を含む組成物(X)から形成される、厚さが10μm以下のコーティング層(II)とを含む繊維複合材料。(a)示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)が180℃を超え220℃以下である。(b)DSCで測定した融解(吸熱)曲線における吸熱終了温度(TmE)が230℃以下である。(c)DSCで測定した結晶化(発熱)曲線における発熱開始温度(TcS)が210℃以下である。【選択図】なし

Description

本発明は、4-メチル-1-ペンテン系重合体を含む層を有する繊維複合材料および繊維製品に関する。
4-メチル-1-ペンテン系重合体は、表面張力が非常に低いことにより離型性に優れ、耐熱性にも優れるため、様々な用途に用いられている。例えば、4-メチル-1-ペンテン系重合体の樹脂層を紙もしくはプラスチック基板に積層した積層体は、産業用離型フィルム、合成皮革用部材(例えば、合成皮革の表面層)製造用の離型紙等として、しばしば利用されている。4-メチル-1-ペンテン系重合体を含む層を形成する際には、4-メチル-1-ペンテン系重合体と溶媒とを含む組成物が用いられることがある。
例えば、4-メチル-1-ペンテンおよび/または3-メチル-1-ペンテンに由来する構成単位を80~99モル%含み、エチレンおよび炭素数3~4のα-オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種類のオレフィンに由来する構成単位を1~20モル%含む共重合体の層を有する組成物が提案されている(例えば、特許文献1)。また、4-メチル-1-ペンテンおよび/または3-メチル-1-ペンテンに由来する構成単位を50~95モル%含み、エチレンおよび炭素数3~4のα-オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種類のオレフィンに由来する構成単位を5~50モル%含む共重合体の層を有する組成物も提案されている(例えば、特許文献2)。
また、4-メチル-1-ペンテン系重合体は疎水性であることから、4-メチル-1-ペンテン系重合体を紡糸することにより撥水性に優れた繊維が得られる。
特開2013-227421号公報 特開2015-34258号公報
しかしながら、4-メチル-1-ペンテン系重合体を紡糸した繊維で製造した布地に代表される繊維基材は、例えばポリアミド繊維から製造した繊維基材に比べると破断強度等の機械的強度が低く、用途によっては、繊維強度が不十分な場合があった。そこで、機械強度に優れるが撥水性の乏しい繊維基材の表面に、特許文献1、2に記載の組成物を用いて4-メチル-1-ペンテン系重合体の層を形成し、該繊維基材に撥水性を付与することが考えられるが、特許文献1、2に記載の組成物を用いて製造された4-メチル-1-ペンテン系重合体の層は、用途によっては、靭性が不十分でクラックが発生しやすくなる。このため、特許文献1および2に記載の組成物で繊維基材を加工しても、クラックの発生等に起因して、4-メチル-1-ペンテン系重合体が繊維基材の表面から除去され、撥水性が保てないおそれがある。また、繊維基材の表面に重合体の層を形成すると繊維基材の風合い(繊維基材の触感)が損なわれることがある。例えば、4-メチル-1-ペンテン系重合体からなる層を芯鞘構造の鞘部分として繊維基材の表面に形成した場合、繊維基材の風合いが損なわれることが多い。
本発明は、繊維基材の表面に、該繊維基材との密着性が良好な4-メチル-1-ペンテン系重合体を含むコーティング層を形成して、繊維基材の風合いを大きく損なうことなく、撥水性と機械強度とに優れた繊維複合材料を提供することを目的とする。
本発明者らが検討を進めた結果、繊維基材(I)と特定の要件を満たす4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を含むコーティング層(II)とを有する繊維複合材料によれば、前記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、例えば以下[1]~[8]の事項を有する。
[1] 繊維基材(I)と下記要件(a)~(c)を満たす4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を含む組成物(X)から形成される、厚さが10μm以下のコーティング層(II)とを含む繊維複合材料。
(a)示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)が180℃を超え220℃以下である。
(b)DSCで測定した融解(吸熱)曲線における吸熱終了温度(TmE)が230℃以下である。
(c)DSCで測定した結晶化(発熱)曲線における発熱開始温度(TcS)が210℃以下である。
[2] 前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5~6.0dl/gの範囲にある、[1]に記載の繊維複合材料。
[3] 前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)における、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位の量(U1)が84~100モル%であり、エチレンまたは炭素数3~20のα-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く)から導かれる構成単位の総量(U2)が16~0モル%(ただし、前記U1および前記U2の合計を100モル%とする)である、[1]または[2]に記載の繊維複合材料。
[4] 前記繊維基材(I)を構成する繊維が、ポリアミドおよびポリエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種を主成分として含む繊維である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の繊維複合材料。
[5] 前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)が変性されている、[1]~[4]のいずれか1つに記載の繊維複合材料。
[6] 前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)がグラフト変性体であり、グラフト変性量が0.1~5.0質量%である、[5]に記載の繊維複合材料。
[7] 前記組成物(X)が、さらにイソシアネート化合物(B)を含む、[1]~[6]のいずれか1つに記載の繊維複合材料。
[8] [1]~[7]のいずれか1つに記載の繊維複合材料を含む、繊維製品。
本発明によれば、繊維基材の表面に、該繊維基材との密着性が良好な4-メチル-1-ペンテン系重合体を含むコーティング層を形成して、繊維基材の風合いを大きく損なうことなく、撥水性と機械強度とに優れた繊維複合材料を製造できる。
≪繊維複合材料≫
本発明の繊維複合材料は、繊維基材(I)と、所定の要件を満たす4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を含む組成物(X)から形成される、厚さが10μm以下であるコーティング層(II)とを含む。
<コーティング層(II)>
[4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)]
コーティング層(II)に含まれる4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、下記要件(a)~(c)を満たす。なお、以下の記載において、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)における、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位を「構成単位(i)」と記載することがある。同様に、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)における、エチレンまたは炭素数3~20のα-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く)から導かれる構成単位を「構成単位(ii)」と記載することがある。
〔要件(a)〕
後述する実施例に記載の方法により、示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)が、180℃を超え220℃以下であり、好ましくは184~217℃、より好ましくは188~215℃である。示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)が前記範囲にあると、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を含むコーティング層(II)の耐熱性が良好である。
前記融点(Tm)の値は、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の立体規則性、および、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)における構成単位(ii)の含有率に依存する傾向がある。このため後述するオレフィン重合用触媒を用い、さらには構成単位(ii)の含有率を制御することにより、融点(Tm)を調整することができる。
〔要件(b)〕
後述する実施例に記載の方法により、示差走査熱量計(DSC)で測定した融解(吸熱)曲線における吸熱終了温度(TmE)が、230℃以下であり、好ましくは230℃未満、より好ましくは228℃以下、さらに好ましくは228℃未満である。ここで、吸熱終了温度とは、融解が終了した温度を意味する。吸熱終了温度および後述する発熱開始温度は、一般にいう、ベースラインと定常ライン接線との交点であるオンセット、オフセットとは異なる指標である。
前記吸熱終了温度は、例えば、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を重合する際のオレフィン重合用触媒を適切に選択すること、構成単位(ii)の含有率を制御すること等により所望の値とすることができる。
吸熱終了温度が前記範囲にある4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、耐熱性に優れる。このため、吸熱終了温度が前記範囲にある4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を含む組成物から得られるコーティング剤等から形成されるコーティング層も耐熱性に優れる傾向がある。また、吸熱終了温度が前記範囲にある4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、吸熱終了温度が前記範囲にない4-メチル-1-ペンテン系重合体に比べて、コーティング剤の調製時に使用可能な溶媒に溶解しやすい。このため、吸熱終了温度が前記範囲にある4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を用いて調製されたコーティング剤等の性状が均一になる傾向にある。
〔要件(c)〕
後述する実施例に記載の方法により、示差走査熱量計(DSC)で測定した結晶化(発熱)曲線における発熱開始温度(TcS)が、210℃以下であり、好ましくは210℃未満、より好ましくは200℃以下、さらに好ましくは200℃未満である。
前記発熱開始温度は、例えば、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を重合する際のオレフィン重合用触媒を適切に選択すること、構成単位(ii)の含有率を制御すること等により所望の値とすることができる。
発熱開始温度が前記範囲にある4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、耐熱性に優れる。このため、発熱開始温度が前記範囲にある4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を含む組成物から得られるコーティング剤等から形成されるコーティング層も耐熱性に優れる傾向がある。また、発熱開始温度が前記範囲にある4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、発熱開始温度が前記範囲にない4-メチル-1-ペンテン系重合体に比べて、コーティング剤の調製時に使用可能な溶媒に溶解しやすい。このため、発熱開始温度が前記範囲にある4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を用いて調製されたコーティング剤等の性状が均一になる傾向にある。
本発明の積層体に用いられる4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、要件(a)~(c)を満たすので、耐熱性を保ちつつ、溶媒への溶解性にも優れる。また、要件(a)~(c)を満たす4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、溶媒への溶解性に優れるため、溶媒中で溶解したままの状態を保ちやすい。このため、要件(a)~(c)を満たす4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、要件(a)~(c)のいずれか1つ以上を満たさない4-メチル-1-ペンテン系重合体に比べて、溶媒に溶解された場合の保存安定性も良好である。すなわち、要件(a)~(c)を満たす4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を含む組成物(X)を溶解させることで、性状が均一でありかつ保存安定性の良好なコーティング剤を製造することができる。その結果、該コーティング剤を用いて、繊維基材(I)の表面に形成されるコーティング層(II)の性状が均一になる。また、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を含む組成物(X)を溶解したコーティング剤は、繊維基材(I)に容易にコーティング可能であり、得られたコーティング層(II)と繊維基材(I)との密着性が良好になる。
なお、組成物(X)を溶解したコーティング剤は、繊維基材(I)の強度を損なうことなく、繊維基材(I)の表面にコーティング層(II)を形成できる。このため、本発明の繊維複合材料は、コーティング層(II)の形成により、繊維基材(I)自体の機械強度を損なうことなく、繊維基材(I)よりも高い撥水性を獲得し得る。
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、さらに、下記要件(d)~(g)の1つ以上を満たしてもよく、より好ましくは下記要件(d)~(g)の2つ以上を満たす。
〔要件(d)〕
後述する実施例に記載の方法により135℃デカリン中で測定した、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の極限粘度[η]が、好ましくは0.5~6.0dl/g、より好ましくは0.65~5.6dl/g、さらに好ましくは0.8~5.4dl/gである。
極限粘度[η]の値が前記範囲にある4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、耐熱性が良好である。また、極限粘度[η]の値が前記範囲にある4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を含む組成物(X)を溶解して得られるコーティング剤は、塗工性が良好であり、コーティング層の形成に適している。極限粘度[η]が0.5~6.0dl/gの範囲内である重合体を含むコーティング剤は、該コーティング剤の塗布時にダマになりにくかったり、塗工面が均一になりやすかったり、広範囲にスムーズに塗工しやすかったりする等、塗工性が良好となる場合がある。
極限粘度[η]は、例えば、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を製造する際の重合工程における水素の添加量により調整することが可能である。
〔要件(e)〕
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)における、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位を「構成単位(i)」、エチレンまたは炭素数3~20のα-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く)から導かれる構成単位を「構成単位(ii)」とすると、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、好ましくは下記(e1)および(e2)を満たす。
(e1)4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)における構成単位(i)の量(U1)は、好ましくは84~100モル%、より好ましくは87~99.0モル%、さらに好ましくは90~98.5モル%である(ただし、構成単位(i)と構成単位(ii)との合計を100モル%とする)。
(e2)4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)における、構成単位(ii)の量(U2)は、好ましくは0~16モル%、より好ましくは1.0~13モル%、さらに好ましくは1.5~10モル%である(ただし、構成単位(i)と構成単位(ii)との合計を100モル%とする)。
なお、U1およびU2は、実施例記載の方法により求められる。U1およびU2が前記範囲にある4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、耐熱性に優れる。このため、U1およびU2が前記範囲にある4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を含む組成物から得られるコーティング剤を用いて形成されるコーティング層も耐熱性に優れる傾向にある。
前記構成単位(ii)を導くα-オレフィンは、直鎖状のα-オレフィンとすることができる。前記構成単位(ii)を導くα-オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等が挙げられる。
これらの中でも耐熱性の観点から、炭素数が6~18の直鎖状のαオレフィンが好ましい。具体的には、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン等が好ましく、中でも、1-デセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセンが特に好ましい。
前記構成単位(ii)は、エチレンまたは炭素数3~20のα-オレフィンからなる群から選択される1種のみに由来するものであってもよく、また、エチレンまたは炭素数3~20のα-オレフィンからなる群から選択される2種以上に由来するものであってもよい。
ここで、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)としては、構成単位(i)および構成単位(ii)のみからなる共重合体が挙げられる。この場合、構成単位(i)と構成単位(ii)との合計は100モル%である。
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、本発明の目的を損なわない程度の少量、具体的には10モル%以下、好ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下であれば、構成単位(i)および構成単位(ii)の他に、4-メチル-1-ペンテン、エチレン、および炭素数3~20のα-オレフィン以外の他の重合性モノマーから導かれる構成単位をさらに含んでいてもよい。
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)に含まれる他の重合性モノマーから導かれる構成単位は、1種でもよく、2種以上でもよい。
当該4-メチル-1-ペンテン、エチレンおよび炭素数3~20のα-オレフィン、並びに他の重合性モノマーは、化石原料に由来するものであってもよく、動植物系原料に由来するものであってもよい。
このような他の重合性モノマーの好ましい具体例としては、スチレン、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルナン等の環状構造を有するビニル化合物;酢酸ビニル等のビニルエステル類;無水マレイン酸等の不飽和有機酸またはその誘導体;ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン等の共役ジエン類;1,4-ヘキサジエン、1,6-オクタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ジシクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、6-クロロメチル-5-イソプロペニル-2-ノルボルネン、2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-プロペニル-2,2-ノルボルナジエン等の非共役ポリエン類が挙げられる。
ここで、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)が、他の重合性モノマーから導かれる構成単位を含む場合、構成単位(ii)と他の重合性モノマーから導かれる構成単位との合計含有量が、前記構成単位(ii)の含有量の範囲を満たすことが好ましい。この場合、構成単位(i)と構成単位(ii)と他の重合性モノマーから導かれる構成単位との合計は100モル%である。
〔要件(f)〕
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、好ましくは、官能基により変性されている重合体である。4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)が変性されている場合、該4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、好ましくは、グラフト変性体である。
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を変性する際には、官能基を有するエチレン性不飽和単量体が用いられる。変性に使用されるエチレン性不飽和単量体は、好ましくは不飽和カルボン酸および/またはその誘導体である。不飽和カルボン酸および/またはその誘導体としては、カルボン酸基を1以上有する不飽和化合物、カルボン酸基を有する化合物とアルキルアルコールとのエステル、無水カルボン酸基を1以上有する不飽和化合物等を挙げることができる。
不飽和化合物が有する不飽和基としては、ビニル基、ビニレン基、不飽和環状炭化水素基等を挙げることができる。不飽和カルボン酸および/またはその誘導体は、1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合せて使用することもできる。これらエチレン性不飽和単量体の中では、不飽和ジカルボン酸またはその酸無水物が好適であり、特にマレイン酸、ナジック酸またはこれらの酸無水物が好ましい。
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)をエチレン性不飽和単量体でグラフト変性させる方法は、特に限定されず、溶液法、溶融混練法等、従来公知のグラフト重合法を採用することができる。例えば、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を溶融し、エチレン性不飽和単量体を添加してグラフト変性させる方法、あるいは4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を溶媒に溶解して溶液とし、そこへエチレン性不飽和単量体を添加してグラフト変性させる方法等がある。
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)がグラフト変性されている場合、グラフト変性量は、変性後の4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の質量を100質量%とすると、好ましくは、0.1~5.0質量%、より好ましくは0.4~3.0質量%、さらに好ましくは0.8~2.0質量%である。4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)のグラフト変性量が前記範囲にあると、繊維基材(I)との密着性に優れる傾向にある。
〔要件(g)〕
後述する実施例に記載の方法により、示差走査熱量計(DSC)で求めた結晶化温度(Tc)が、好ましくは110~220℃、より好ましくは120~210℃、さらに好ましくは130~200℃である。結晶化温度は、例えば、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を重合する際のオレフィン重合用触媒を適切に選択すること、構成単位(ii)の含有率を制御すること等により所望の値とすることができる。
結晶化温度が前記範囲にある4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、耐熱性の観点から好ましい。また、結晶化温度が前記範囲にある4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を含む組成物から得られるコーティング剤等は、性状や保存安定性が良好になる傾向にある。その結果、該コーティング剤を用いて繊維基材(I)の表面に形成されるコーティング層(II)の性状が均一になる。
[4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の製造方法]
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、オレフィン重合用触媒の存在下、4-メチル-1-ペンテンと、上述した構成単位(ii)を導く特定のオレフィン、さらに必要に応じて前記他の重合性モノマーとを、公知の方法により重合することにより得ることができる。
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の製造の際に使用可能なオレフィン重合用触媒の例として、メタロセン触媒を挙げることができる。好ましいメタロセン触媒としては、国際公開第01/53369号、国際公開第01/27124号、特開平3-193796号公報、特開平02-41303号公報、国際公開第06/025540号、あるいは、国際公開第2014/123212号に記載のメタロセン触媒が挙げられる。
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、一旦前記触媒等で製造した4-メチル-1-ペンテン系重合体を、押出機やミキサー等の中で熱処理することにより、要件(a)~(c)を満たすように調製した4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)であってもよい。また、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、市販の4-メチル-1-ペンテン系重合体(例えば、三井化学株式会社製TPX等)を、押出機やミキサー等の中で熱処理することにより、要件(a)~(c)を満たすように調製した4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)であってもよい。
[組成物(X)]
組成物(X)は、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を含み、任意にイソシアネート化合物(B)等の他の成分をさらに含む。
組成物(X)中の4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の含有量は、好ましくは50~100質量%、より好ましくは60~100質量%、さらに好ましくは70~100質量%である。組成物(X)中の4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の含有量が前記範囲であると、得られる繊維複合材料の撥水性および機械強度が優れており、組成物(X)から形成されるコーティング層(II)と繊維基材(I)との間の密着性に優れる。
[イソシアネート化合物(B)]
組成物(X)は、イソシアネート化合物(B)を含むことができる。イソシアネート化合物(B)は、イソシアネート基を有する化合物であれば、特に限定されないが、コーティング層(II)と繊維基材(I)との間の密着性を向上させる観点から、1分子内に2以上のイソシアネート基を有する多官能イソシアネート化合物であることが好ましい。
1分子内に2つのイソシアネート基を有する2官能イソシアネート化合物としては、例えば、メチレンジイソシアネート、ジメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジプロピルエーテルジイソシアネート、2,2-ジメチルペンタンジイソシアネート、3-メトキシヘキサンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルペンタンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、3-ブトキシヘキサンジイソシアネート、1,4-ブチレングリコールジプロピルエーテルジイソシアネート、チオジヘキシルジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;
m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ジメチルベンゼンジイソシアネート、エチルベンゼンジイソシアネート、イソプロピルベンゼンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,4-ナフタレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、2,6-ナフタレンジイソシアネート、2,7-ナフタレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、パラキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;および
水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン4,4'-ジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネートが挙げられる。
イソシアネート化合物(B)は、2官能イソシアネート化合物の3量体であるビウレット体又はイソシアヌレート体であってもよく、トリメチロールプロパン等のポリオールと2官能イソシアネート化合物との付加体(すなわち、アダクト体)であってもよく、メタノール等のアルコールと2官能イソシアネート化合物との付加体(すなわち、アロファネート体)であってもよい。
これらの中でも、繊維複合材料の変色防止の観点から、イソシアネート化合物(B)は、脂肪族イソシアネート化合物であることが好ましく、1分子内に2以上のイソシアネート基を有する脂肪族イソシアネート化合物であることがより好ましく、脂肪族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネートのイソシアヌレート体、脂肪族ジイソシアネートとアルコールとのアロファネート体、又は脂肪族ジイソシアネートとポリオールとのアダクト体であることがさらに好ましく、脂肪族ジイソシアネート、又は脂肪族ジイソシアネートのイソシアヌレート体であることが特に好ましい。
イソシアネート化合物(B)は、市販品であってもよく、市販品としては、例えば、タケネートD103H、D204、D160N、D170N、D165N、D178NL、D110N、D370N等のタケネートシリーズ(三井化学株式会社製)、およびコロネートHX、HXR、HXL、HXLV、HK、HK-T、HL、2096(日本ポリウレタン工業株式会社製)が挙げられる。
組成物(X)がイソシアネート化合物(B)を含む場合、その含有量は、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)100質量部に対して、通常、2.00質量部以下であり、1.50質量部以下であることが好ましい。また、組成物(X)がイソシアネート化合物(B)を含む場合、イソシアネート化合物(B)の含有量の下限値は特に限定されないが、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)100質量部に対して、通常、0.001質量部以上である。
イソシアネート化合物(B)は、組成物(X)中に1種単独で含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
〔組成物(X)に含まれるその他の成分〕
組成物(X)は、本発明の目的を損なわない範囲で、さらに必要に応じて、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、スリップ剤、レベリング剤、強化剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、充填剤等を含有することができる。なお、組成物(X)から形成されるコーティング層(II)にも、組成物(X)に含まれるその他成分が含まれ得る。
その他の成分の配合量は、本発明の目的を損なわない任意の量とすることができるが、その他の成分の配合量の総量は、組成物(X)100質量部に対して通常0.005~5質量部、好ましくは0.01~3質量部である。
酸化防止剤としては、公知の酸化防止剤が使用可能である。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、イオウ系酸化防止剤、ラクトーン系酸化防止剤、有機ホスファイト化合物、有機ホスフォナイト化合物、あるいはこれらを数種類組み合わせたものが使用できる。
滑剤としては、例えばラウリル酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸等の飽和または不飽和脂肪酸のナトリウム、カルシウム、マグネシウム塩等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。またかかる滑剤の配合量は、組成物(X)100質量部に対して通常0.01~3質量部、好ましくは0.1~2質量部程度であることが望ましい。
スリップ剤としては、ラウリル酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、エルカ酸、ヘベニン酸等の飽和または不飽和脂肪酸のアミド、あるいはこれらの飽和または不飽和脂肪酸のビスアマイドを用いることが好ましい。これらのうちでは、エルカ酸アミドおよびエチレンビスステアロアマイドが特に好ましい。これらの脂肪酸アミドは、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)100質量部に対して0.01~5質量部の範囲で配合することが好ましい。
アンチブロッキング剤としては、微粉末シリカ、微粉末酸化アルミニウム、微粉末クレー、粉末状、もしくは液状のシリコーン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂、微粉末架橋樹脂、例えば架橋されたアクリル、メタクリル樹脂粉末等を挙げることができる。これらのうちでは、微粉末シリカおよび架橋されたアクリル、メタクリル樹脂粉末が好ましい。
また後述するように組成物(X)を溶解したコーティング剤を用いてコーティング層(II)を形成する場合には、組成物(X)にレベリング剤を添加するのも好ましい態様である。コーティング剤を用いて形成したコーティング層(II)の表面粗さを小さくするためのレベリング剤としてはフッ素系ノニオン界面活性剤、特殊アクリル樹脂系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤等を用いることができ、溶媒と相溶性が良いものが好ましく、添加量は組成物(X)中の4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)に対して1~50,000ppmの範囲である。
強化剤としては、ケイ素、チタン、アルミニウム、ジルコニウム等の金属の酸化物、多官能アルコキシ化合物あるいはそのオリゴマー、粘土鉱物を組成物(X)中の4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)100質量部に対して、例えば5~50質量部、配合することもでき、組成物(X)から形成されるコーティング層(II)の硬度や弾性率を高めることができる。添加量が5質量部未満では効果が低すぎ、50質量部を超えるとコーティング層(II)の透明性または機械強度が損なわれることがある。
〔組成物(X)の製造方法〕
組成物(X)は、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)と、イソシアネート化合物(B)等の他の成分を混合することにより製造され得る。また、組成物(X)自体は製造せずに、組成物(X)に含まれる全成分を溶媒に溶解させることにより、組成物(X)を溶解したコーティング剤を製造し、該コーティング剤を乾燥させることにより結果的に組成物(X)が製造されてもよい。
[コーティング層(II)の厚さ]
本発明の繊維複合材料に含まれるコーティング層(II)は、厚さが10μm以下であり、好ましくは0.001~9.5μm、より好ましくは0.01~9.0μm、さらに好ましくは0.01μm以上、4μm未満であり、特に好ましくは0.1~3μmである。コーティング層(II)の厚さが前記範囲にあると、撥水性と触感に優れる。
コーティング層(II)の厚さは、例えば、コーティング層(II)を形成する際に用いられるコーティング剤中の4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の濃度によって調整され得る。コーティング剤に含まれる4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の濃度が低いほど、得られるコーティング層(II)の厚さが薄くなる傾向がある。
<繊維基材(I)>
本発明の繊維複合材料に含まれる繊維基材(I)は、繊維、あるいは、繊維から形成される基材である。繊維基材(I)は、典型的には布地であり、布地は、織布、ニット(編物)、不織布、組物、レース、網等を含む。織布としては、平織物(経糸、緯糸とも最少2本ずつ用いた最小構成単位を有する)、バスケット織物(例えば2×2、3×3、4×4等の正則バスケット織、3×2、4×2、4×3、5×3、2×3、2×4、3×4、3×5等の不規則バスケット織)、綾織物(経糸、緯糸とも最少3本ずつ用いた最小構成単位を有する:3枚斜文、4枚斜文、5枚斜文、6枚斜文、8枚斜文等)、朱子織物(経糸、緯糸とも最少5本ずつ用いた最小構成単位を有する:2飛び、3飛び、4飛び、5飛び等の正則朱子)、および変化平織物、変化綾織物、変化朱子織物等、さらに蜂巣織物、梨子地織物、破れ斜文織物、昼夜朱子織物、もじり織物(紗織物、絽織物)、縫取織物、二重織物等も使用できる。上記の織物には精練、漂白、染色、柔軟化、撥水、防水、防炎、毛焼き、カレンダー、バインダー固着、接着剤塗布等の公知の繊維処理加工を単数、または複数を施したものを使用することもできる。不織布としては、スパンボンド法により製造された長繊維不織布であっても、カード法や湿式抄造法等で製造された短繊維不織布であってもよい。
本発明の繊維複合材料に含まれる繊維基材(I)を構成する繊維は、任意の種類の繊維でよく、合成繊維、天然繊維、半合成繊維、無機繊維またはこれらの2種以上から成る混合繊維等、何れも使用できる。使用可能な合成繊維としては、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル(PET、PBT、PNT)繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリアミド繊維(ナイロン繊維、全芳香族ポリアミド繊維等)、芳香族ヘテロ環ポリマー(ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール等)繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、フッ素系繊維、アラミド系繊維、サルフォン系繊維、または、これらの混合繊維等が挙げられる。使用可能な半合成繊維としては、レーヨン、アセテート等が挙げられる。使用可能な天然繊維としては木綿、羊毛、羽毛、絹、麻等が挙げられる。
これらの中でも、コーティング層(II)による撥水性の改善が顕著であることから、繊維基材(I)を構成する繊維としては、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維等の、ポリアミドおよびポリエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種を主成分として含む繊維が好ましい。
繊維基材(I)を構成する繊維の形態としては、丸形断面のものだけでなく、断面が扁平やY型等の異型断面繊維、中空糸や捲縮糸等の特殊な形態のものを用いることができ、特に限定されるものではない。
繊維基材(I)を構成する繊維の態様は、モノフィラメント、マルチフィラメント、短繊維紡績(スパン)、スプリット、テープ等であるが、繊維基材(I)のフレキシブル性、および引裂強度を確保するためにはマルチフィラメント、または短繊維紡績(スパン)が好ましい。また、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、炭素繊維等のマルチフィラメント糸条も繊維基材(I)を構成する繊維として使用できる。
繊維基材(I)の目付量は、好ましくは10~500g/m2、より好ましくは30~
400g/m2、さらに好ましくは50~300g/m2である。
[繊維基材(I)の製造方法]
繊維基材(I)の製造方法は、該繊維基材(I)の形態に応じた任意の製造方法で製造され得る。例えば、繊維基材(I)が織布、ニット、不織布、組物、レース、網等の布地である場合、その布地の種類に応じた製造方法で繊維基材(I)が製造され得る。
<繊維複合材料>
本発明の繊維複合材料は、上述した繊維基材(I)とコーティング層(II)とを含む。
本発明の繊維複合材料に含まれるコーティング層(II)は、1層からなるものであってもよく、また、2層以上からなるものであってもよい。例えば、コーティング層(II)は、中間層と外層の2層からなってもよく、また、複数の中間層と外層とを含む3層以上を含んでもよい。本発明の積層体に含まれるコーティング層(II)は、該コーティング層(II)が2層以上の層からなる場合であっても、上述したコーティング層(II)の要件を満たす。なお、コーティング層(II)に複数の層が含まれる場合、これらの複数の層は同一でも異なっていてもよい。例えば、繊維基材(I)上のコーティング層(II)は、変性されている4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を含む中間層と、未変性の4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を含む外層とがこの順で積層されていてもよい。
本発明の繊維複合材料としては、コーティング層(II)に含まれる層のうち、繊維基材(I)に直接接している層が、変性されている4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を含む層であることが好ましい一形態である。
繊維基材(I)が布地などのように面を有する形態である場合、繊維複合材料は、繊維基材(I)の片面のみにコーティング層(II)を有してもよく、また、繊維基材(I)の両面に、コーティング層(II)を有してもよい。ここで、繊維基材(I)の片面のみにコーティング層(II)が形成されている場合と、繊維基材(I)の両面にコーティング層(II)が形成されている場合のいずれにおいても、コーティング層(II)は1層からなるものであってもよく、2層以上からなるものであってもよい。
コーティング層(II)が繊維基材(I)の片面のみに形成される場合、コーティング層(II)の厚さが10μm以下であると、繊維複合材料の風合いが良好である。
コーティング層(II)が繊維基材(I)の両面に形成される場合、各々の面に形成されたコーティング層(II)の厚さが10μm以下(すなわち、両面のコーティング層(II)の合計の厚さが20μm以下)であると、コーティング層(II)を有するいずれの面の触感も良好である。なお、コーティング層(II)が繊維基材(I)の両面に形成される場合、両面のコーティング層(II)の合計の厚さが10μm以下であると、繊維複合材料の触感が柔らかくなる傾向があり、風合いが良好になる。
一方、繊維基材(I)が繊維である場合、繊維複合材料は、繊維基材(I)を芯とし、コーディング層(II)を鞘とする芯鞘構造を有しており、コーティング層(II)は繊維の表面全体に形成され得る。なお、繊維複合材料の1つ以上の末端において、繊維の表面となっている該繊維の断面には、コーティング層(II)が形成されていてもよく、また、該断面にはコーティング層(II)が形成されていなくてもよい。繊維基材(I)が繊維である場合もコーティング層(II)の厚さが10μm以下であると、繊維基材(I)の風合いが大きく損なわれない。
≪繊維複合材料の製造方法≫
本発明の繊維複合材料は、例えば以下の製造方法により好適に製造できる。すなわち、前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)、溶媒(C)、および任意にイソシアネート化合物(B)と組成物(X)に含まれるその他の成分を混合することにより、組成物(X)を溶解したコーティング剤を準備する工程(1)と、繊維基材(I)の表面の一部もしくは全体に前記コーティング剤を付着させ、溶媒(C)を除去することによりコーティング層(II)を形成する工程(2)とを含む方法等により、本発明の繊維複合材料が製造され得る。
[組成物(X)を溶解したコーティング剤]
組成物(X)を溶解したコーティング剤は、前記組成物(X)を溶媒(C)に溶解させたものである。このため、前記コーティング剤は、前記コーティング剤の調製のために使用される組成物(X)に含まれる成分と溶媒とを含む。例えば、組成物(X)が4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を100質量%含む場合、前記コーティング剤は、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を溶媒(C)に溶解させたものである。また、コーティング剤の調製に用いられる組成物(X)が4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の他にイソシアネート化合物(B)およびその他の成分を含む場合、得られるコーティング剤には、これらの物質が含まれる。
組成物(X)を溶解したコーティング剤における4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の含有量は、通常、0.01~50質量%であり、好ましくは0.05~30質量%、より好ましくは0.07~25質量%、さらに好ましくは0.1~20質量%、特に好ましくは0.2~20質量%、最も好ましくは0.3~20質量%である。前記コーティング剤における溶媒(C)の含有量は、通常、50~99.99質量%であり、好ましくは70~99.95質量%、より好ましくは75~99.93質量%、さらに好ましくは80~99.9質量%、特に好ましくは80~99.8質量%、最も好ましくは80~99.7質量%である。
前記コーティング剤における4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)および溶媒(C)の含有量が前記範囲内であることにより、ハンドリング性とコーティング剤からコーティング層(II)を形成する際の溶媒の除去のしやすさとのバランスが良好となる。
〔溶媒(C)〕
溶媒(C)は、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)およびイソシアネート化合物(B)を溶解することができれば特に制限はないが、有機系溶媒を好適に用いることができる。溶媒(C)としては、例えば、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等を挙げることができる。これらの中でも、トルエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等を好適に用いることができる。
〔組成物(X)を溶解したコーティング剤の製造方法〕
組成物(X)を溶解したコーティング剤の製造方法は特に限定されず、通常用いられる方法で製造することができる。例えば、溶媒(C)に4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を添加し、溶媒(C)の沸点以下の温度で、所定の時間攪拌することで製造することができる。また、別途準備した4-メチル-1-ペンテン系重合体を熱処理して、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を調整した後、得られた4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を溶媒(C)に添加し、溶媒(C)の沸点以下の温度で、所定の時間攪拌することでも、組成物(X)を製造することができる。
コーティング剤がイソシアネート化合物(B)を含む場合、イソシアネート化合物(B)は、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を溶解した溶媒(C)に添加され得る。また、イソシアネート化合物(B)は、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を溶解する前の溶媒(C)に添加されてもよい。この場合、イソシアネート化合物(B)を溶解した溶媒(C)に4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)が添加され得る。さらに、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)とイソシアネート化合物(B)とが同時に溶媒(C)に添加され得る。また、コーティング剤が4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)およびイソシアネート化合物(B)以外の前記その他の成分を含む場合、前記その他の成分が添加されるタイミングも任意である。
[コーティング層(II)を形成する工程]
以下、コーティング層(II)を形成する工程(工程(2))で行われる処理の例を説明する。工程(2)では、具体的には、組成物(X)を溶解したコーティング剤を、繊維基材(I)の表面に付着させ、コーティング剤中の溶媒(C)の沸点に近い温度に加熱することで組成物(X)中の溶媒(C)をある程度、除去する。コーティング剤を塗布する方法は、特に限定されないが、はけやブラシを用いた塗布、スプレーによる吹き付け、スクリーン印刷法、フローコーティング、スピンコート、ディッピングによる方法や、バーコーター、Tダイ、バー付きTダイ、ドクターナイフ、ロールコート、ダイコート等を用いてロールや平板に塗布する方法等が挙げられる。なお、ディッピングには、繊維基材(I)の片面をコーティング剤に浸す方法、繊維基材(I)の両面をコーティング剤に浸す方法、繊維基材(I)の片面をコーティング剤に浸したまま繊維基材(I)を所定期間保持することで繊維基材(I)の両面にコーティング剤を付着させる方法等が含まれる。
なお本願でいう溶媒の除去とは、コーティング剤中から溶媒(C)を完全に取り去ることのみを意味するものではなく、コーティング剤中に含まれている4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)をコーティング層(II)として形成し得る程度に溶媒(C)を取り去ることも含む。具体的には、組成物(X)を用いて作製したコーティング層(II)の質量100%に対して、溶媒が0.001~0.5質量%程度になるまで、溶媒を取り去ることが含まれる。溶媒を除去する方法は特に限定されず、放置することで乾燥してもよいが、一般的には30~220℃で加熱し乾燥することで除去される。また4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の熱劣化や熱分解を防ぐために、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の融点(Tm)以下の温度で溶媒(C)を除去するのが好ましい。一方、乾燥温度が低すぎると乾燥時間が長くなるため生産性が悪化し、高すぎると発泡や劣化等の問題が生じる。発泡を防ぎながら短時間で乾燥させるために、2段階以上もしくは連続的に温度を上昇させながら乾燥してもよい。また、乾燥工程の後に水、メタノール、エタノール、アセトン、塩化メチレン等の4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)が溶解しにくい溶媒に浸漬する工程、あるいはその溶媒の蒸気雰囲気下に曝す工程を経ることによってコーティング層(II)に残留する溶媒を低減することもできる。乾燥後のコーティング層(II)中に残留する溶媒は、0.5質量%以下、好ましくは0.05質量%以下さらに好ましくは0.01質量%以下である。
≪繊維複合材料の用途≫
本発明の繊維複合材料は、繊維製品を製造する際に用いられ得る。
≪繊維製品≫
本発明の繊維製品は、本発明の繊維複合材料の用途となり得る任意の製品である。繊維製品の例としては、ロープ、養生ネット、漁網、釣り糸、ライフジャケット、防虫網、婦人服、紳士服、裏地、アンダーウエア、ダウン、ベスト、ウインドブレーカー、靴下、靴の中敷き、マスク、手術用ガウン、離型布、吸油布、防水布、アウトドアウエア、サポーター、包帯、寝袋用生地、テント用生地、スキーウエア、ゴルフウエア、水着等のスポーツウエア、人工芝、布団用中綿、布団用側地、布団カバー、毛布、毛布用側地、毛布カバー、シーツ、枕用中綿、枕カバー、ぬいぐるみ用中綿、紙おむつ、生理用品、衛生用品、縫糸、フィルター、バグフィルター、集塵用フィルター、エアクリーナー、中空糸フィルター、浄水フィルター、ガス分離膜、デンタルフロス、歯ブラシ、ブラシ、カツラ、ベルト、鞄、靴、テーブルクロス、カーテン、カーペット、自動車用マット、ベルトコンベア基布、光ファイバー、吸音材、断熱材等が挙げられる。なお、本発明の繊維製品(繊維複合材料の用途)はこれらに限定されるものではない。
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<重合体の物性の測定方法>
[組成]
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)中の構成単位(i)の量(4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位の量、U1)、および、構成単位(ii)の量(α-オレフィンから導かれる構成単位の量、U2)は、以下の装置および条件により、13C-NMRスペクトルより算出した。
日本電子(株)製ECP500型核磁気共鳴装置を用い、溶媒としてo-ジクロロベンゼン/重ベンゼン(80/20容量%)混合溶媒、試料濃度55mg/0.6mL、測定温度120℃、観測核は13C(125MHz)、シーケンスはシングルパルスプロトンデカップリング、パルス幅は4.7μ秒(45°パルス)、繰り返し時間は5.5秒、積算回数は1万回以上、27.50ppmをケミカルシフトの基準値として測定した。得られた13C-NMRスペクトルにより、4-メチル-1-ペンテン、α-オレフィンの組成を定量化した。
なお、後述する比較例で使用している4-メチル-1-ペンテン系重合体についても同様の方法で、構成単位(i)および構成単位(ii)の量を求めた。
[極限粘度[η]]
極限粘度[η]は、デカリン溶媒を用いて、135℃で測定した。すなわち、試料である4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を約20mg計り取り、デカリン15mLに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5mL追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿したときのηsp/Cの値を極限粘度として求めた(下式参照)。
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)
なお、後述する比較例で使用している4-メチル-1-ペンテン系重合体についても同様の方法で極限粘度[η]を求めた。
[グラフト量]
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)がグラフト変性されている場合のグラフト変性量(すなわち、変性後の4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)の質量を100質量%とした場合における、変性に使用されたエチレン性不飽和モノマーから導かれる構成単位の含有量)は、以下の方法で求めた。まず、試料とする4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を250℃、予熱5分、プレス3分で処理してプレスフィルムを作成し、該プレスフィルムに対して、フーリエ変換赤外分光光度計(日本分光株式会社製、FT-IR410型)により、透過法でIR測定を行った。下記実施例では、グラフト変性に無水マレイン酸を用いたため、1860cm-1と4321cm-1のピーク強度より、グラフト変性量を算出した。
[融点(Tm)、吸熱終了温度(TmE)、発熱開始温度(TcS)、結晶化温度(Tc)]
セイコーインスツル(株)製のDSC測定装置(DSC220C)を用い、ASTM D3418に準拠して発熱・吸熱曲線を求め、以下のように融点(Tm)と結晶化温度(Tc)を求めた。
試料約5mgを測定用アルミパンにつめ、10℃/分の加熱速度で20℃から280℃に昇温し、280℃で5分間保持した後、10℃/分の冷却速度で20℃まで降温し、20℃で5分間保持した後、再度10℃/分の加熱速度で20℃から280℃に昇温した。1回目の降温時に発現した結晶化ピークを、結晶化温度(Tc)とした。結晶化ピークが複数検出された場合は、温度が最大のものを結晶化温度(Tc)とした。2回目の昇温時に発現した融解ピークを、融点(Tm)とした。融解ピークが複数検出された場合は、温度が最大のものを融点(Tm)とした。
前記融解(吸熱)曲線の、吸熱が終了したときの温度を吸熱終了温度(TmE)とした。また、前記結晶化(発熱)曲線の、発熱が開始されたときの温度を発熱開始温度(TcS)とした。
前記開始および終了点は、吸熱または発熱の、開始または終了時に熱量が一定になるベースラインに対し、ベースラインから曲線が乖離して熱量に差が出始めたことが確認できる点である。
<調製例1:(8-オクタメチルフルオレン-12’-イル-(2-(アダマンタン-1-イル)-8-メチル-3,3b,4,5,6,7,7a,8-オクタヒドロシクロペンタ[a]インデン))ジルコニウムジクロライドの調製>
国際公開第2014/123212号の予備実験5(段落0346~0348)に記載の方法を用いて、(8-オクタメチルフルオレン-12’-イル-(2-(アダマンタン-1-イル)-8-メチル-3,3b,4,5,6,7,7a,8-オクタヒドロシクロペンタ[a]インデン))ジルコニウムジクロライドを合成した。
<製造例1:重合体1の製造>
充分窒素置換した容量1.5Lの攪拌翼付SUS製オートクレーブに、23℃で4-メチル-1-ペンテン500mLとヘプタン220mLを装入した。このオートクレーブに、1-デセン30mLと、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mLトルエン溶液0.3mLとを続けて装入し、攪拌を開始した。次に、オートクレーブに水素を140mL装入し、オートクレーブを内温60℃まで加熱した。
その後、液体状のメチルアルミノキサンをアルミニウム原子換算で0.039mmol含み、さらに、前記調製例1で得られた(8-オクタメチルフルオレン-12’-イル-(2-(アダマンタン-1-イル)-8-メチル-3,3b,4,5,6,7,7a,8-オクタヒドロシクロペンタ[a]インデン))ジルコニウムジクロライドを0.00013mmol含むトルエン溶液2mLを、窒素でオートクレーブに圧入し、重合を開始した。
重合反応中、オートクレーブ内温が60℃になるように温度調整した。重合開始10分後、オートクレーブにメタノール5mLを窒素で圧入して重合を停止し、オートクレーブを大気圧まで脱圧した。アセトンに反応溶液を攪拌しながら注ぎ、重合体1を析出させた。得られた重合体1を130℃、減圧下で10時間乾燥した。
重合体1中の構成単位の含有量を求めたところ、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位の量は94.1mol%、α-オレフィンから導かれる構成単位の量は5.9mol%であった。重合体1の融点(Tm)は190℃であり、極限粘度[η](135℃デカリン中)は2.3dl/gであった。重合体1のその他の物性を表1に示す。
<製造例2:重合体2の製造>
充分窒素置換した容量1.5Lの攪拌翼付SUS製オートクレーブに、23℃で4-メチル-1-ペンテン500mLとヘプタン230mLを装入した。このオートクレーブに、リニアレン168(出光興産製、1-ヘキサデセンと1-オクタデセンの混合物)20mLと、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mLトルエン溶液0.3mLとを続けて装入し、攪拌を開始した。次に水素を140mL装入し、オートクレーブを内温60℃まで加熱した。
その後、液体状のメチルアルミノキサンをアルミニウム原子換算で0.033mmol含み、さらに、前記調製例1で得られた(8-オクタメチルフルオレン-12’-イル-(2-(アダマンタン-1-イル)-8-メチル-3,3b,4,5,6,7,7a,8-オクタヒドロシクロペンタ[a]インデン))ジルコニウムジクロライドを0.00011mmol含むトルエン溶液2mLを、窒素でオートクレーブに圧入し、重合を開始した。
重合反応中、オートクレーブ内温が60℃になるように温度調整した。重合開始13分後、オートクレーブにメタノール5mLを窒素で圧入して重合を停止し、オートクレーブを大気圧まで脱圧した。アセトンに反応溶液を攪拌しながら注ぎ、重合体2を析出させた。得られた重合体2を130℃、減圧下で10時間乾燥した。
重合体2中の構成単位の含有量を求めたところ、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位の量は97.6mol%、α-オレフィンから導かれる構成単位の総量は2.4mol%であった。重合体2の融点(Tm)は207℃であり、極限粘度[η](135℃デカリン中)は2.4dl/gであった。重合体2のその他の物性を表1に示す。
<製造例3:重合体3の製造>
充分窒素置換した容量1.5Lの攪拌翼付SUS製オートクレーブに、23℃で4-メチル-1-ペンテン500mLとヘプタン230mLを装入した。このオートクレーブに、1-デセン15mLと、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mLトルエン溶液0.3mLとを続けて装入し、攪拌を開始した。次に水素を140mL装入し、オートクレーブを内温60℃まで加熱した。
その後、予め調製しておいた液体状のメチルアルミノキサンをアルミニウム原子換算で0.06mmol含み、さらに、前記調製例1で得られた(8-オクタメチルフルオレン-12’-イル-(2-(アダマンタン-1-イル)-8-メチル-3,3b,4,5,6,7,7a,8-オクタヒドロシクロペンタ[a]インデン))ジルコニウムジクロライドを0.0002mmol含むトルエン溶液2mLを、窒素でオートクレーブに圧入し、重合を開始した。
重合反応中、オートクレーブ内温が60℃になるように温度調整した。重合開始30分後、オートクレーブにメタノール5mLを窒素で圧入して重合を停止し、オートクレーブを大気圧まで脱圧した。アセトンに反応溶液を攪拌しながら注ぎ、重合体3を析出させた。得られた重合体3を130℃、減圧下で10時間乾燥した。
重合体3中の構成単位の含有量を求めたところ、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位の量は96.7mol%、α-オレフィンから導かれる構成単位の量は3.3mol%であった。重合体3の融点(Tm)は212℃であり、極限粘度[η](135℃デカリン中)は2.3dl/gであった。重合体3のその他の物性を表1に示す。
<製造例4:重合体4の製造>
[合成例4-1:オレフィン重合触媒の製造]
30℃下、充分に窒素置換した200mLの攪拌機を付けた三つ口フラスコ中に、窒素気流下で精製デカン30mLおよび粒子状でありD50が28μm、アルミニウム原子含有量が43質量%である固体状ポリメチルアルミノキサン(国際公開第2014/123212号に記載の方法を用いて合成)をアルミニウム原子換算で14.65mmol装入し、懸濁液とした。その懸濁液に、前記調製例1で得られた(8-オクタメチルフルオレン-12’-イル-(2-(アダマンタン-1-イル)-8-メチル-3,3b,4,5,6,7,7a,8-オクタヒドロシクロペンタ[a]インデン))ジルコニウムジクロライド50.0mg(0.0586mmol)を4.58mmol/Lのトルエン溶液として撹拌しながら加えた。1時間後、攪拌を止め、得られた混合物をデカンテーション法によりデカン100mLで洗浄した後、デカンを加え50mLのスラリー液とした(ジルコニウム原子担持率98%)。
[合成例4-2:予備重合触媒成分の調製]
合成例4-1で調製したスラリー液に、25℃、窒素気流下でトリイソブチルアルミニウム(TIBAL)のデカン溶液(アルミニウム原子換算で0.5mmol/mL)を1.0mL装入した。15℃に冷却した後、4-メチル-1-ペンテン10mLを60分かけて反応器内に装入した。4-メチル-1-ペンテンの装入開始時点を予備重合開始とした。予備重合開始から2.0時間後に攪拌を止め、得られた混合物をデカンテーション法によりデカン100mLで3回洗浄した。予備重合触媒成分はデカンスラリー(9.5g/L、ジルコニウム原子換算で0.56mmol/L)とした。
[重合体4aの製造]
室温、窒素気流下で、内容積1Lの攪拌機を付けたSUS製重合器に、精製デカンを425mL挿入し40℃まで昇温した。40℃到達後、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)のデカン溶液(アルミニウム原子換算で0.5mmol/mL)を0.8mL(アルミニウム原子換算で0.4mmol)装入し、次いで前記合成例4-2の予備重合触媒成分のデカンスラリーをジルコニウム原子換算で0.00175mmol装入した。水素を23.75NmL装入し、次いで、4-メチル-1-ペンテン230mLとリニアレン168(出光興産製、1-ヘキサデセンと1-オクタデセンの混合物)22.4mLとの混合液を2時間かけて重合器内へ連続的に一定の速度で装入した。前記混合液の装入開始時点を重合開始とし、45℃で4.5時間保持した。重合開始から1時間後および2時間後にそれぞれ水素を23.75NmL装入した。重合開始から4.5時間経過後、室温まで降温し、脱圧した後、ただちに白色固体を含む重合液を濾過して固体状物質を得た。この固体状物質を減圧下、80℃で8時間乾燥し、重合体4aを得た。収量は142gであった。
重合体4a中の構成単位の含有量を求めたところ、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位の量は96.5mol%、α-オレフィンから導かれる構成単位の総量は3.5mol%であった。重合体4aの融点(Tm)は201℃であり、極限粘度[η](135℃デカリン中)は4.2dl/gであった。
[重合体4の製造]
重合体4aに、耐熱安定剤としてフェノール系安定剤Irganox1010 0.02phr(チバBASF製)を配合し、東洋精機製作所社製ラボプラストミルのミキサーを使用して、樹脂温度280℃、スクリュー回転数150rpmで混錬することにより、重合体4を得た。
重合体4中の構成単位の量は、重合体4aと同じであるとした。重合体4の融点(Tm)は201℃であり、極限粘度[η](135℃デカリン中)は1.0dl/gであった。重合体4のその他の物性を表1に示す。
<製造例5:重合体5の製造>
[重合体5aの製造]
室温、窒素気流下で、内容積1Lの攪拌機を付けたSUS製重合器に、精製デカンを425mL挿入し40℃まで昇温した。40℃到達後、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)のデカン溶液(アルミニウム原子換算で0.5mmol/mL)を0.8mL(アルミニウム原子換算で0.4mmol)装入し、次いで前記合成例4-2の予備重合触媒成分のデカンスラリーをジルコニウム原子換算で0.0020mmol装入した。水素を16.25NmL装入し、次いで、4-メチル-1-ペンテン231mLとリニアレン168(出光興産製、1-ヘキサデセンと1-オクタデセンの混合物)20.6mLとの混合液を2時間かけて重合器内へ連続的に一定の速度で装入した。前記混合液の装入開始時点を重合開始とし、45℃で4.5時間保持した。重合開始から1時間後および2時間後にそれぞれ水素を16.25NmL装入した。重合開始から4.5時間経過後、室温まで降温し、脱圧した後、ただちに白色固体を含む重合液を濾過して固体状物質を得た。この固体状物質を減圧下、80℃で8時間乾燥し、重合体5aを得た。収量は128gであった。
重合体5a中の構成単位の含有量を求めたところ、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位の量は97.0mol%、α-オレフィンから導かれる構成単位の総量は3.0mol%であった。重合体5aの融点(Tm)は203℃であり、極限粘度[η](135℃デカリン中)は5.3dl/gであった。
[重合体5の製造]
重合体5a(100質量部)と、無水マレイン酸2質量部と、有機過酸化物として、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3(パーヘキシン25B、日油株式会社製)を0.02質量部とを配合し、東洋精機製作所社製ラボプラストミルのミキサーを使用して、樹脂温度280℃、スクリュー回転数150rpmで混錬することにより、重合体5を得た。
重合体5中の構成単位の量は、重合体5aと同じであるとした。重合体5の融点(Tm)は203℃であり、極限粘度[η](135℃デカリン中)は0.8dl/g、グラフト量は1.5質量%であった。重合体5のその他の物性を表1に示す。
<製造例6:重合体6の製造>
重合体5aの代わりに重合体4aを用いた以外は、重合体5と同様に製造を行うことにより、重合体6を得た。
重合体6中の構成単位の量は、重合体4aと同じであるとした。重合体6の融点(Tm)は201℃であり、極限粘度[η](135℃デカリン中)は0.9dl/g、グラフト量は1.5質量%であった。重合体6のその他の物性を表1に示す。
<製造例7:重合体7の製造>
[重合体7aの製造]
室温、窒素気流下で、内容積1Lの攪拌機を付けたSUS製重合器に、精製デカンを425mL挿入し40℃まで昇温した。40℃到達後、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)のデカン溶液(アルミニウム原子換算で0.5mmol/mL)を0.8mL(アルミニウム原子換算で0.4mmol)装入し、次いで前記合成例4-2の予備重合触媒成分のデカンスラリーをジルコニウム原子換算で0.00175mmol装入した。水素を23.75NmL装入し、次いで、4-メチル-1-ペンテン232mLとリニアレン168(出光興産製、1-ヘキサデセンと1-オクタデセンの混合物)19.6mLとの混合液を2時間かけて重合器内へ連続的に一定の速度で装入した。前記混合液の装入開始時点を重合開始とし、45℃で4.5時間保持した。重合開始から1時間後および2時間後にそれぞれ水素を23.75NmL装入した。重合開始から4.5時間経過後、室温まで降温し、脱圧した後、ただちに白色固体を含む重合液を濾過して固体状物質を得た。この固体状物質を減圧下、80℃で8時間乾燥し、重合体7aを得た。収量は146gであった。
重合体7a中の構成単位の含有量を求めたところ、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位の量は96.7mol%、α-オレフィンから導かれる構成単位の総量は3.3mol%であった。重合体7aの融点(Tm)は203℃であり、極限粘度[η](135℃デカリン中)は4.0dl/gであった。
[重合体7の製造]
重合体5aの代わりに重合体7aを用いた以外は、重合体5と同様に製造を行うことにより、重合体7を得た。
重合体7中の構成単位の量は、重合体7aと同じであるとした。重合体7の融点(Tm)は203℃であり、極限粘度[η](135℃デカリン中)は0.9dl/g、グラフト量は1.6質量%であった。重合体7のその他の物性を表1に示す。
<製造例8:重合体8の製造>
国際公開第2006/054613号の比較例7や比較例9に記載の重合方法に準じた方法で、4-メチル-1-ペンテン、1-デセン、水素の割合を変更してモノマーを重合することによって、重合体8を得た。重合体8の融点(Tm)は233℃であり、極限粘度[η](135℃デカリン中)は1.3dl/gであった。重合体8のその他の物性を表1に示す。
<製造例9:重合体9の製造>
無水マレイン酸の配合量を1質量部とした以外は重合体5の製造例と同様にして、重合体9を得た。
重合体9中の構成単位の量は、重合体5aと同じであるとした。重合体9の融点(Tm)は203℃であり、極限粘度[η](135℃デカリン中)は0.8dl/g、グラフト量は0.6質量%であった。重合体9のその他の物性を表1に示す。
<製造例10:重合体10の製造>
重合体5aの代わりに重合体4aを用い、無水マレイン酸の配合量を1.5質量部とした以外は、重合体5と同様に製造を行うことにより、重合体10を得た。
重合体10中の構成単位の量は、重合体4aと同じであるとした。重合体10の融点(Tm)は201℃であり、極限粘度[η](135℃デカリン中)は0.9dl/g、グラフト量は1.1質量%であった。重合体10のその他の物性を表1に示す。
<製造例11:重合体11の製造>
重合体5aの代わりに重合体7aを用い、無水マレイン酸の配合量を2.5質量部とした以外は、重合体5と同様に製造を行うことにより、重合体11を得た。
重合体11中の構成単位の量は、重合体7aと同じであるとした。重合体11の融点(Tm)は203℃であり、極限粘度[η](135℃デカリン中)は0.9dl/g、グラフト量は2.2質量%であった。重合体11のその他の物性を表1に示す。
<原材料>
以下の調製例2~12および比較例で使用した原材料は以下のとおりである。
・「4-メチル-1-ペンテン系重合体」:前記製造例1~11により製造された重合体1~11
・「イソシアネート化合物(B)」:タケネートD170N(三井化学株式会社製、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体(HDIのイソシアヌレート変性体)、イソシアネート基含有量20.7質量%)
・「溶媒(C)」:メチルシクロヘキサン(和光純薬工業株式会社製)
Figure 2023109704000001
Figure 2023109704000002
<調製例2:組成物(X1)を溶解したコーティング剤の調製>
10gの重合体1に対して(すなわち、重合体1の質量を100質量%として)、酸化防止剤としてのトリ(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェートを0.1質量%、耐熱安定剤としてのn-オクタデシル-3-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネートを0.1質量%添加し、固形分濃度が5質量%になるようにメチルシクロヘキサン(和光純薬工業株式会社製)を添加して、90℃、1時間、200rpmで攪拌して、重合体1を含む組成物(X1)を溶解したコーティング剤を製造した。
<調製例3:組成物(X2)を溶解したコーティング剤の調製>
重合体1の代わりに重合体2を用いた以外は、調製例2と同様の方法により、コーティング剤の調製を行った。
<調製例4:組成物(X3)を溶解したコーティング剤の調製>
重合体1の代わりに重合体3を用いた以外は、調製例2と同様の方法により、コーティング剤の調製を行った。
<調製例5:組成物(X4)を溶解したコーティング剤の調製>
重合体1の代わりに重合体4を用いた以外は、調製例2と同様の方法により、コーティング剤の調製を行った。
<調製例6:組成物(X5)を溶解したコーティング剤の調製>
10gの重合体5に対して(すなわち、重合体5の質量を100質量%として)、酸化防止剤としてのトリ(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェートを0.1質量%、耐熱安定剤としてのn-オクタデシル-3-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネートを0.1質量%添加し、固形分濃度が5質量%になるようにメチルシクロヘキサン(和光純薬工業株式会社製)を添加して、90℃、1時間、200rpmで攪拌した。23℃へ降温後、タケネートD170N(三井化学株式会社製)を0.01質量%添加して5分間、200rpmで攪拌し、重合体5を含む組成物(X5)を溶解したコーティング剤を製造した。
<調製例7:組成物(X6)を溶解したコーティング剤の調製>
重合体5の代わりに重合体6を用いた以外は、調製例6と同様の方法により、コーティング剤の調製を行った。
<調製例8:組成物(X7)を溶解したコーティング剤の調製>
重合体5の代わりに重合体7を用いた以外は、調製例6と同様の方法により、コーティング剤の調製を行った。
<調製例9:組成物(X8)を溶解したコーティング剤の調製>
比較的薄いコーティング層(II)を形成するために、固形分濃度が0.3質量%となるように組成物(X8)を溶解したコーティング剤を以下のように調製した。重合体5の代わりに重合体6を用い、固形分濃度が0.3質量%になるようにメチルシクロヘキサン(和光純薬工業株式会社製)を添加したこと以外は、調製例6と同様の方法により、コーティング剤の調製を行った。
<調製例10:組成物(X9)を溶解したコーティング剤の調製>
重合体5の代わりに重合体9を用いた以外は、調製例6と同様の方法により、コーティング剤の調製を行った。
<調製例11:組成物(X10)を溶解したコーティング剤の調製>
重合体5の代わりに重合体10を用いた以外は、調製例6と同様の方法により、コーティング剤の調製を行った。
<調製例12:組成物(X11)を溶解したコーティング剤の調製>
重合体5の代わりに重合体11を用いた以外は、調製例6と同様の方法により、コーティング剤の調製を行った。
<実施例1>
[試験用コーティング布地の作製〕
組成物(X5)を溶解したコーティング剤にポリアミド製の布地(ニット、目付け113g/m2)の片面を浸漬し、布地の片面にコーティング剤を付着させた。布地をコーティング剤から取り出し、80℃で2分乾燥することで、1回目のコーティング処理をした。次に、布地のうち、1回目のコーティング処理によりコーティング層が形成された面を、組成物(X1)を溶解したコーティング剤に浸漬し、80℃で20時間乾燥して、試験用コーティング布地を得た。
[コーティング層の厚さ]
試験用コーティング布地を切断し、断面を走査電子顕微鏡(Regulus8220、日立ハイテク製)で観察することにより、コーティング層の厚さを計測した。得られた結果を表2に示す。なお、このとき計測されたコーティング層の厚さは、組成物(X5)から形成された層(中間層)と、組成物(X1)から形成された層(外層)の合計の厚さである。
[撥水試験]
試験用コーティング布地を水平に置いてスポイトで水を滴下し、試験用コーティング布地を水平面に対して直角にし(90°に傾斜)、水滴が流下した跡を観察して、以下の評価基準で評価を行った。評価結果を表2に示す。
〔評価基準〕
A:布地への湿潤がなく、布地表面上に水滴が目視で観察されない
B:布地への湿潤はないが、布地表面上に水滴の付着が目視で観察される
C:布地への湿潤が観察される
[密着性]
試験用コーティング布地の表面全体に対して、セロハンテープ(「CT24」,ニチバン(株)製)を貼り付け、その後セロハンテープを剥ぎ取った。セロハンテープ剥ぎ取り後のコーティング布地に対し、上記撥水試験と同様の方法で試験を行い、同様に以下の評価基準で評価を行った。評価結果を表2に示す。
〔評価基準〕
A:布地への湿潤がなく、布地表面上に水滴が目視で観察されない
B:布地への湿潤はないが、布地表面上に水滴の付着が目視で観察される
C:布地への湿潤が観察される
[引張強度]
試験用コーティング布地の強度を、以下の測定条件の下でJIS L1096に準拠して測定し、測定結果を以下の評価基準で評価した。得られた結果を表2に示す。
〔測定条件〕
つかみ間隔:200mm
引張速度:150mm/min
温度:23℃
〔評価基準〕
たて方向(ウェール方向)
A:強度300.0N以上
B:強度300.0N未満
よこ方向(コース方向)
A:強度120.0N以上
B:強度120.0N未満
<風合い評価>
10人の被験者に試験用コーティング布地の一部を握ってもらい、柔らかいと判定した人数に対し、下記評価基準で風合いを評価した。風合いの評価基準がA、B及びCの場合、風合いに優れるといえる。評価結果は表2に示す。
〔評価基準〕
A:10人全員が柔らかいと判定
B:8人以上10人未満が柔らかいと判定
C:5人以上、8人未満が柔らかいと判定
D:5人未満が柔らかいと判定
<実施例2>
組成物(X1)を溶解したコーティング剤の代わりに、組成物(X2)を溶解したコーティング剤を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、試験用コーティング布地の作製および評価を行った。得られた結果を表2に示す。
<実施例3>
組成物(X1)を溶解したコーティング剤の代わりに、組成物(X3)を溶解したコーティング剤を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、試験用コーティング布地の作製および評価を行った。得られた結果を表2に示す。
<実施例4>
組成物(X5)を溶解したコーティング剤の代わりに、組成物(X6)を溶解したコーティング剤を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、試験用コーティング布地の作製および評価を行った。得られた結果を表2に示す。
<実施例5>
組成物(X5)を溶解したコーティング剤の代わりに、組成物(X7)を溶解したコーティング剤を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、試験用コーティング布地の作製および評価を行った。得られた結果を表2に示す。
<実施例6>
組成物(X5)を溶解したコーティング剤の代わりに組成物(X6)を溶解したコーティング剤を用い、組成物(X1)を溶解したコーティング剤の代わりに組成物(X4)を溶解したコーティング剤を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、試験用コーティング布地の作製および評価を行った。得られた結果を表2に示す。
<実施例10~12>
組成物(X5)を溶解したコーティング剤の代わりに、それぞれ、組成物(X9)~(X11)のいずれか1つを溶解したコーティング剤を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、それぞれ試験用コーティング布地の作製および評価を行った。得られた結果を表2に示す。
<実施例7>
組成物(X6)を溶解したコーティング剤にポリアミド製の布地(ニット、目付け113g/m2)の片面を浸漬し、取り出し後、80℃で20時間乾燥したものを、試験用コーティング布地とした。
その後、実施例1と同様の方法で評価を行った。得られた結果を表3に示す。なお、実施例7の試験用コーティング布地では、コーティング層は1層であるため、表3に示すコーティング層の厚さは外層の厚さである。
<実施例8>
組成物(X6)を溶解したコーティング剤にポリエステル製の布地(ニット、目付け104g/m2)の片面を浸漬し、取り出し後、80℃で20時間乾燥したものを、試験用コーティング布地とした。
その後、実施例1と同様の方法で評価を行った。得られた結果を表3に示す。実施例8の試験用コーティング布地では、コーティング層は1層であるため、表3に示すコーティング層の厚さは外層の厚さである。
<実施例9>
組成物(X6)を溶解したコーティング剤の代わりに、組成物(X8)を溶解したコーティング剤を用いた以外は、実施例7と同様の方法により、試験用コーティング布地の作製および評価を行った。得られた結果を表3に示す。実施例9の試験用コーティング布地では、コーティング層は1層であるため、表3に示すコーティング層の厚さは外層の厚さである。
<実施例13~15>
組成物(X6)を溶解したコーティング剤の代わりに、それぞれ、組成物(X9)~(X11)のいずれか1つを溶解したコーティング剤を用い、コーティング層の厚さが表3の通りになるように変更した以外は、実施例7と同様の方法により、それぞれ試験用コーティング布地の作製および評価を行った。得られた結果を表3に示す。実施例13~15の試験用コーティング布地では、コーティング層は1層であるため、表3に示すコーティング層の厚さは外層の厚さである。
<比較例1>
コーティングしていないポリアミド製の布地(ニット、目付け113g/m2)を用いて、実施例1と同様の方法で評価を行った。得られた結果を表3に示す。
<比較例2>
重合体8を紡糸することによって得られた繊維を用いて製造した布地(ニット、目付け125g/m2)を用いて、実施例1と同様の方法で評価を行った。得られた結果を表3に示す。
<比較例3>
重合体8は溶媒に溶解しづらく、コーティング処理に使用可能な程度の濃度の重合体8を含むコーティング液の調製が困難である。そこで、比較のために、鞘部の厚みが比較的薄くなるように調整した口金を用いて、重合体8とポリエステルとを用いた芯鞘型複合繊維を製造した。具体的には、ポリエステルと重合体8とを、それぞれ別個の押出機を用い溶融し、計量ポンプで計量した後、紡糸ブロックに内蔵された紡糸パックに送った。紡糸パック内でろ過した後、偏心芯鞘型紡糸口金より、芯成分にポリエステル、鞘成分に重合体8を使用して溶融紡糸し、芯鞘型複合繊維を製造した。得られた芯鞘型複合繊維を冷却装置によって冷却固化させ、加熱ロールの速度比により延伸し、巻取機で巻き取った。延伸処理後の芯鞘型複合繊維では、鞘部の厚さは12μmであった。一般に、芯鞘型複合繊維の鞘部分の厚さは、コーティング処理により得られる層の厚さよりも厚くなる。比較例3の芯鞘型複合繊維の鞘部分の厚さについても、コーティング処理により形成される層の厚さと同等にすることはできなかった。
得られた芯鞘型複合繊維を編むことにより、目付け150g/m2の布地(ニット)を得た。得られた布地に対して実施例1と同様の方法で評価を行った。なお、引張強度についての試験は行わなかった。得られた結果を表3に示す。
Figure 2023109704000003
Figure 2023109704000004

Claims (8)

  1. 繊維基材(I)と下記要件(a)~(c)を満たす4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を含む組成物(X)から形成される、厚さが10μm以下のコーティング層(II)とを含む繊維複合材料。
    (a)示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)が180℃を超え220℃以下である。
    (b)DSCで測定した融解(吸熱)曲線における吸熱終了温度(TmE)が230℃以下である。
    (c)DSCで測定した結晶化(発熱)曲線における発熱開始温度(TcS)が210℃以下である。
  2. 前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5~6.0dl/gの範囲にある、請求項1に記載の繊維複合材料。
  3. 前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)における、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位の量(U1)が84~100モル%であり、エチレンまたは炭素数3~20のα-オレフィン(ただし、4-メチル-1-ペンテンを除く)から導かれる構成単位の総量(U2)が16~0モル%(ただし、前記U1および前記U2の合計を100モル%とする)である、請求項1に記載の繊維複合材料。
  4. 前記繊維基材(I)を構成する繊維が、ポリアミドおよびポリエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種を主成分として含む繊維である、請求項1に記載の繊維複合材料。
  5. 前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)が変性されている、請求項1に記載の繊維複合材料。
  6. 前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)がグラフト変性体であり、グラフト変性量が0.1~5.0質量%である、請求項5に記載の繊維複合材料。
  7. 前記組成物(X)が、さらにイソシアネート化合物(B)を含む、請求項1に記載の繊維複合材料。
  8. 請求項1~7のいずれか1項に記載の繊維複合材料を含む、繊維製品。
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