JP2023106794A - 積層電解質膜、膜電極接合体及び固体高分子形燃料電池 - Google Patents

積層電解質膜、膜電極接合体及び固体高分子形燃料電池 Download PDF

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Gautama Zulfi
灯 林
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一成 佐々木
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Abstract

【課題】ガスバリア性に由来する高い化学的耐久性を有する積層電解質膜を提供する。【解決手段】少なくとも三層の電解質膜からなるサンドイッチ構造の積層電解質膜であって、一方面に配置された第1のプロトン伝導性電解質膜と、他方面に配置された第2のプロトン伝導性電解質膜と、前記第1のプロトン伝導性電解質膜及び第2のプロトン伝導性電解質膜の間に配置された中間電解質膜と、を有し、前記中間電解質膜は、ガスバリア性ポリマー及びプロトン伝導性ポリマーとの混合物からなる積層電解質膜。【選択図】図2

Description

特許法第30条第2項適用申請有り (1)令和3年1月22日に九州大学エネルギーウィーク2021にて公開 (2)令和3年3月26日に第1回 トヨタ自動車-九州大学FC連絡会にて公開 (3)令和3年6月16日にNEDOプロジェクト「燃料電池等利用の飛躍的拡大に向けた共通課題解決型産学官連携研究開発事業/水素利用等高度化先端技術開発」についての担当者との打合せにて公開 (4)令和3年9月6日に第70回高分子討論会(オンライン開催)にて公開 (5)令和3年9月16日にトヨタ自動車九州株式会社担当者との打ち合わせにて公開 (6)令和3年12月9日に1st UK-Japan Symposium on Advanced Materials for Hydrogen and Fuel Cells (Online)にて公開 (7)令和3年12月17日にトヨタモビリティ基金2021年度第3回評価委員会にて公開 (8)令和4年1月13日に第7回NEXT-FC基盤研究報告会(Web開催)にて公開 (9)令和4年1月20日に2021東海シンポジウム(Web開催)にて公開
本発明は、固体高分子形燃料電池に適した電解質膜、これを使用した膜電極接合体及び固体高分子形燃料電池に関する。
固体高分子形燃料電池(PEFC)は、これを動力源とする燃料電池自動車(FCV)が既に市販され、今後トラックやバス、船舶などへの用途拡大と普及展開が期待されている。PEFCは、図1に示すように一般的に固体高分子電解質膜の両面に一対の電極(アノード及びカソード)を配置させた膜電極接合体(MEA)を、ガス流路が形成されたセパレータで挟持した構造のセルを基本単位とする。
固体高分子電解質膜には、フッ素系高分子電解質であるナフィオン(Nafion、登録商標)が広く用いられているが、耐久性には改善の余地があった。
耐久性向上させた電解質膜として、複数の固体高分子電解質膜を積層化させた積層電解質膜が報告されている。例えば、特許文献1には、プロトン伝導性高分子と合成樹脂とを含む第1電解質膜を両側から挟む一対の前記第2電解質膜を具備する積層電解質膜が報告されている。この積層電解質膜では、ポリビニルアセタール樹脂、ポリイミド、フェノールホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、尿素樹脂およびポリアミド等の縮合性樹脂を第1電解質膜に配合することによって機械的強度を保つことができ、かつ、プロトン伝導性に優れるとされている。
特開2020-21549号公報
しかしながら、特許文献1の積層電解質膜に配合される縮合性樹脂は、第1電解質膜(中間層)の機械的強度の向上に寄与するが、ガスバリア性による化学的耐久性の向上に寄与するものではない。また、機械的強度を保つために中間層である第1電解質膜の膜厚を、外側の第2電解質膜の膜厚よりも大きくなるように設計する必要があった。また、製造に当たり、第1電解質膜に配合する合成樹脂の前駆体を縮合させる処理が必要になる等、製造面で煩雑であるという課題もあった。
このように従来の積層電解質膜は、耐久性の点において改善の余地があるのが実情である。
かかる状況下、本発明の目的は、ガスバリア性に由来する高い化学的耐久性を有する積層電解質膜、及びこれを備える膜電極接合体及び固体高分子形燃料電池を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> 少なくとも三層の電解質膜からなるサンドイッチ構造の積層電解質膜であって、
一方面に配置された第1のプロトン伝導性電解質膜と、他方面に配置された第2のプロトン伝導性電解質膜と、前記第1のプロトン伝導性電解質膜及び第2のプロトン伝導性電解質膜の間に配置された中間電解質膜と、を有し、
前記中間電解質膜は、ガスバリア性ポリマー及びプロトン伝導性ポリマーとの混合物からなる積層電解質膜。
<2> 前記中間電解質膜の膜厚は、前記第1のプロトン伝導性電解質膜と第2のプロトン伝導性電解質膜の膜厚よりも小さい<1>に記載の積層電解質膜。
<3> 前記第1のプロトン伝導性電解質膜と第2のプロトン伝導性電解質膜とが、前記中間電解質膜を包み込むように密着してなる請求項<1>また<2>に記載の積層電解質膜。
<4> 前記中間電解質膜を構成するガスバリア性ポリマーが、ポリビニルアルコール(PVA)である<1>から<3>のいずれかに記載の積層電解質膜。
<5> 前記中間電解質膜を構成するプロトン伝導性ポリマーが、スルホン酸基を有するプロトン伝導性ポリマーである<1>から<4>のいずれかに記載の積層電解質膜。
<6> 前記中間電解質膜を構成するガスバリア性ポリマーとプロトン伝導性ポリマーとの割合が、プロトン伝導性ポリマー1モル部に対し、ガスバリア性ポリマーが0.5モル部以上500モル部以下である<1>から<5>のいずれかに記載の積層電解質膜。
<7> 前記第1のプロトン伝導性電解質膜及び第2のプロトン伝導性電解質膜が、フッ素系プロトン伝導性ポリマーからなる<1>から<6>のいずれかに記載の積層電解質膜。
<8> 固体高分子電解質膜と、前記固体高分子電解質膜の一方面に接合されたカソードと、前記固体高分子電解質膜の他方面に接合されたアノードと、を有する膜電極接合体であって、前記固体高分子電解質膜が、<1>から<7>のいずれかに記載の積層電解質膜である膜電極接合体。
<9> <8>に記載の膜電極接合体を備えてなる固体高分子形燃料電池。
<1A> <1>から<9>のいずれかに記載の積層電解質膜の製造方法であって、
第1のプロトン伝導性電解質膜に、中間電解質膜の形状及び厚みに対応するマスクを配置する工程と、
前記マスクの上から前記ガスバリア性ポリマー及びプロトン伝導性ポリマーを含む水溶液を塗布または噴霧した後に乾燥させて、第1のプロトン伝導性電解質膜の上に前記ガスバリア性ポリマー及びプロトン伝導性ポリマーの混合物からなる中間電解質膜を形成する工程と、
前記マスクを除去した後に、前記中間電解質膜の上から第2のプロトン伝導性電解質膜を配置して、前記中間電解質膜を、前記第1のプロトン伝導性電解質膜と前記第2のプロトン伝導性電解質膜とで挟みこむ工程と、
を有する製造方法。
<2A> 前記中間電解質膜を、前記第1のプロトン伝導性電解質膜と前記第2のプロトン伝導性電解質膜とで挟みこむ工程において、前記中間電解質膜を包み込むように第1のプロトン伝導性電解質膜と第2のプロトン伝導性電解質膜とを密着させる<1A>に記載の製造方法。
本発明によれば、ガスバリア性に由来する高い化学的耐久性を有する積層電解質膜、及びこれを備える膜電極接合体及び固体高分子形燃料電池が提供される。
固体高分子形燃料電池の代表的な構成を示す概念図である。 本発明の積層電解質膜(第1の実施形態)の断面模式図である。 PEFC運転時の電解質膜のガス透過による化学劣化とガスバリア性との関係を示す説明図であり、(a)は従来の電解質膜(単層膜)、(b)は本発明の積層電解質膜である。 本発明の積層電解質膜(第2の実施形態)の説明図であり、(a)は断面模式図、(b)は積層電解質膜における電解質膜の構成を示す斜視図である。 本発明の膜電極接合体の断面模式図である。 本発明の固体高分子形燃料電池の構成を示す概念図である。 実施例1の積層電解質膜の製造工程を示す図であり、(a)は第1のプロトン伝導性電解質膜(Nafion膜)の上に中間電解質膜(PVA-PVS混合物)を形成する工程の説明図、(b)は、形成した中間電解質膜を第1のプロトン伝導性電解質膜と第2のプロトン伝導性電解質膜(Nafion膜)で挟み込み圧着させる工程の説明図、(c)は製造された実施例1の積層電解質膜の断面模式図である。 実施例1の積層電解質膜の断面SEM像である。 実施例1の積層電解質膜、比較例1の電解質膜(Nafion212)をPEFCによる化学的耐久性試験(OCV保持試験)の結果である。 実施例1の積層電解質膜、比較例1の電解質膜(Nafion212)の膜劣化の指標となる水素の膜透過を電気化学的に評価した結果である。 異なるPVA及びPVSの割合(モル比)の中間電解質膜を有する積層電解質膜の酸素透過性の評価結果である。
以下、本発明について例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下の例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。なお、本明細書において、「~」とはその前後の数値又は物理量を含む表現として用いるものとする。
<1.積層電解質膜>
本発明は、少なくとも三層の電解質膜からなるサンドイッチ構造の積層電解質膜であって、一方面に配置された第1のプロトン伝導性電解質膜と、他方面に配置された第2のプロトン伝導性電解質膜と、前記第1のプロトン伝導性電解質膜及び第2のプロトン伝導性電解質膜の間に配置された中間電解質膜と、を有し、前記中間電解質膜は、ガスバリア性ポリマー及びプロトン伝導性ポリマーとの混合物からなる積層電解質膜(以下、「本発明の積層電解質膜」と記載する。)に関する。
第1のプロトン伝導性電解質膜及び第2のプロトン伝導性電解質膜、中間電解質膜(ガスバリア性ポリマー及びプロトン伝導性ポリマー)の詳細については後述する。
なお、以下において、第1のプロトン伝導性電解質膜及び第2のプロトン伝導性電解質膜の区別をする必要がない場合には、これらを「プロトン伝導性電解質膜(外層)」と称す場合がある。
図2に本発明の積層電解質膜1(第1の実施形態)の概念模式図を示す。なお、図2では、本発明の積層電解質膜の構造の理解を容易にするために、中間電解質膜3に対する第1のプロトン伝導性電解質膜2a及び第2のプロトン伝導性電解質膜2bの厚みや大きさは、実際より大きく示している。
図2に示す積層電解質膜1は、第1のプロトン伝導性電解質膜2a、第2のプロトン伝導性電解質膜2b及び中間電解質膜3からなるが、本発明の積層電解質膜は、少なくともこれらの三層の電解質膜を含めばよく、本発明の目的を損なわない範囲で、他の電解質膜(例えば、より機械的強度の高い電解質膜)を有していてもよい。但し、層数が増加すると積層電解質膜の膜抵抗が増加し、膜全体としてのプロトン伝導性が低下するおそれがあるため、本発明の積層電解質膜は、第1のプロトン伝導性電解質膜、第2のプロトン伝導性電解質膜及び中間電解質膜のみからなることが好ましい。
PEFC運転時の電解質膜のガス透過による化学劣化とガスバリア性との関係を図3に基づいて説明する。
図3(a)に示す従来のフッ素系プロトン伝導性ポリマーからなる電解質膜(典型的にはNafionの単層膜)を使用したPEFCでは、以下のメカニズムでラジカルが発生し、電解質膜を化学劣化させる。
(i)酸素が膜を透過し、アノードで水素と反応し、過酸化水素を形成、ラジカル化
(ii)カソードでの不完全な酸素還元反応により、過酸化水素が形成、ラジカル化
このように電解質膜の化学劣化の主因は、ラジカルに起因し、ラジカル発生メカニズムに、酸素の膜透過が関与している。このメカニズムのようにラジカルが生成して電解質膜を攻撃するのであれば、酸素の膜透過を限りなく0に近づける事ができれば、化学劣化は抑えられるはずである。
これに対し、図3(b)に示す本発明の積層電解質膜を使用したPEFCでは、ガスバリア性の中間電解質膜により、酸素及び水素の透過が実質的に遮断されるため、上記(i)のラジカル生成反応が抑制される。そのため、本発明の積層電解質膜を使用することで、長期の耐久性に優れるPEFCを与えることができる。
なお、従来の電解質膜(単層膜)では、ラジカルからの攻撃に対して耐久性があるフッ素系電解質材料や芳香族系炭化水素電解質材料を使用している。これに対し、本発明の積層電解質膜は、ガスバリア性に優れる中間電解質膜を中間に有することによって“ラジカル発生を減らして、ラジカルの攻撃をさせない環境を作る”という技術的思想である点で、従来の電解質膜(単層膜)とは異なる。
積層電解質膜1において、中間電解質膜3は、第1のプロトン伝導性電解質膜2a及び第2のプロトン伝導性電解質膜2bの膜厚より小さい。中間電解質膜3は、プロトン伝導性を有さないガスバリア性ポリマーを含むため、第1のプロトン伝導性電解質膜2a及び第2のプロトン伝導性電解質膜2bより、プロトン伝導性が小さい。そのため、中間電解質膜3を薄膜(膜厚を小さく)し、中間電解質膜3由来の抵抗を小さくし、積層電解質膜1全体としてのプロトン伝導性を保つようにしている。
また、図4に本発明の積層電解質膜1A(第2の実施形態)の概念模式図を示す。図4(a)は断面模式図、図4(b)は積層電解質膜における電解質膜の構成を示す斜視図である。なお、図4では、本発明の積層電解質膜の構造の理解を容易にするために、中間電解質膜3に対する他の構成部材の厚みや大きさは、実際より大きく示している。
上述した本発明の積層電解質膜1では、中間電解質膜3と、これを挟みこむ第1のプロトン伝導性電解質膜2a及び第2のプロトン伝導性電解質膜2bとが、同じ大きさ(平面視)であるため、中間電解質膜3の外縁部は外部環境に接している。そのため、ガスバリア性ポリマーやプロトン伝導性ポリマーが外縁部から溶出するおそれがあった(特に水溶性ポリマーである場合)。
これに対し、本発明の積層電解質膜1Aは、第1のプロトン伝導性電解質膜2aと第2のプロトン伝導性電解質膜2bとが、中間電解質膜3を包み込むように密着しているため、中間電解質膜3の外縁部は外部環境に接することがない。そのため、中間電解質膜3を構成するガスバリア性ポリマーやプロトン伝導性ポリマーが外縁部から溶出することがなく、長期間安定して使用することが可能である。
また、積層電解質膜1と同様に、積層電解質膜1Aにおいても、中間電解質膜3は、第1のプロトン伝導性電解質膜2a及び第2のプロトン伝導性電解質膜2bの膜厚より小さい。中間電解質膜3は、プロトン伝導性を有さないガスバリア性ポリマーを含むため、第1のプロトン伝導性電解質膜2a及び第2のプロトン伝導性電解質膜2bより、プロトン伝導性が小さい。そのため、中間電解質膜3を薄膜(膜厚を小さく)し、中間電解質膜3由来の抵抗を小さくし、積層電解質膜1A全体としてのプロトン伝導性を保つようにしている。
以下、本発明の積層電解質膜をより詳細に説明する。
(中間電解質膜)
本発明の積層電解質膜において、中間電解質膜は、第1のプロトン伝導性電解質膜及び第2のプロトン伝導性電解質膜の間に配置され、ガスバリア性ポリマー及びプロトン伝導性ポリマーとの混合物からなる。
本発明において、「ガスバリア性ポリマー」は、電解質膜に広く使用されているNafion212(酸素透過性(80℃):10Barrer)(水素透過性(80℃):70Barrer)より、酸素透過性及び水素透過性が小さい高分子材料である。
なお、1Barrer=1×10‐10cm3・cm/(cm2 ・s・cmHg)である。
本発明に係る中間電解質膜で使用されるガスバリア性ポリマーは、80℃における酸素透過率が、0.5Barrer以下であることを必須とし、好適には0.1Barrer以下である。
本発明に係る中間電解質膜で使用されるガスバリア性ポリマーは、80℃における水素透過率が、7Barrer以下であることが好適であり、より好適には3.5Barrer以下である。
本発明の積層電解質膜の特徴は、中間電解質膜をガスバリア性ポリマー及びプロトン伝導性ポリマーとの混合物で構成していることにある。
ガスバリア性ポリマーを縮合させずにプロトン伝導性ポリマーと混合させて用いることによって中間電解質膜が薄膜(例えば、10μm以下)であっても優れたガスバリア性(酸素バリア性及び水素バリア性)を有する。さらに、ガスバリア性ポリマーは、それ自体がプロトン伝導性を有さないが、プロトン伝導性ポリマーと混合することによって混合物全体としてプロトン伝導性を有する。
また、本発明の積層電解質膜において、中間電解質膜のガスバリア性ポリマーは縮合や架橋させる必要がないため、第1のプロトン伝導性電解質膜の上に、ガスバリア性ポリマー及びプロトン伝導性ポリマーを含む水溶液を塗布または噴霧した後に乾燥させて、第1のプロトン伝導性電解質膜の上に前記ガスバリア性ポリマー及びプロトン伝導性ポリマーの混合物からなる中間電解質膜を形成し、これを挟み込みように中間電解質膜の上から第2のプロトン伝導性電解質膜を配置する簡易な方法によって製造することが可能であるという利点がある。この製造方法では、中間電解質膜を薄膜にすることができるため、非プロトン伝導性のガスバリア性ポリマーを使用しても、積層電解質膜全体のプロトン伝導性を損なうことが回避できる。
ガスバリア性ポリマーとしては、本発明の目的を損なわない限り特に制限はされず、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。
これらのガスバリア性ポリマーは架橋させることもできるが、中間電解質膜のガスバリア性を損なう場合があるため、架橋させずに使用することが好ましい。
ガスバリア性ポリマーが水溶性ポリマー又は水分散性ポリマーであれば、溶媒に水を用いることができる点で好ましい。ここで、水溶性または水分散性ポリマーとは、常温で水に完全に溶解もしくは微分散可能な高分子を意味する。
この中でも、ポリビニルアルコール(PVA)が好適な一例である。PVAは、ガスバリア性(特に酸素バリア性)に優れ、酸素透過を抑えることでラジカル発生を抑え、化学劣化がそもそも起こりにくくすることが可能な材料である。
一方、PVAは、それ自体はプロトン伝導性を有さず、これのみで電解質膜を形成することはできないが、上述の通り、本発明の積層電解質膜では、第1のプロトン伝導性電解質膜と第2のプロトン伝導性電解質膜とが、中間電解質膜を挟みこむことによって、中間電解質膜を薄膜(例えば、10μm以下)にすることができるので、PVAのような非プロトン伝導性のガスバリア性ポリマーを使用しても、積層電解質膜全体のプロトン伝導性を損なうことが回避できる。
なお、電解質材料にPVAを使用した従来例では、PVAは化学架橋材料としての役割が求められており、本発明の積層電解質膜のように、高いガスバリア性に由来する化学的耐久性を有する中間電解質膜に使用した例はない。
プロトン伝導性ポリマーは、本発明の効果を損なわない限り、PEFCの電解質材料として用いられる公知のフッ素系電解質材料、炭化水素系電解質材料を使用することができる。
フッ素系電解質材料としては、下記構造を有するパーフルオロスルホン酸系樹脂を使用することができ、電気陰性度の高いフッ素原子を導入する事で化学的に非常に安定し、スルホ基の解離度が高く、高いプロトン導電性が実現できる。
市販品としては、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)、アクイビオン(登録商標、ソルベイ社製)などが好適例として挙げられる。
炭化水素系高分子電解質材料としては、例えば、ポリスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリールエーテルケトンスルホン酸、ポリフェニルスルホン酸、ポリベンズイミダゾールスルホン酸、ポリベンズイミダゾールホスホン酸、ポリイミドスルホン酸等のポリマーや、これらにアルキル基等の側鎖を有するポリマー等が挙げられる。
ガスバリア性ポリマーに水溶性ポリマーを使用する場合、プロトン伝導性ポリマーも水溶性であることが好ましい。ガスバリア性ポリマー及びプロトン伝導性ポリマーがそれぞれ水溶性であれば、溶媒に水を用いることができ、膜形成が容易になる。
水溶性のプロトン伝導性ポリマーとして、ポリビニルスルホン酸(PVS)は、好適な一例である。
中間電解質膜を構成するガスバリア性ポリマー及びプロトン伝導性ポリマーとの混合物における好適な組み合わせの一例は、架橋されていないポリビニルアルコール(PVA)とポリビニルスルホン酸(PVS)との混合物である。
ガスバリア性ポリマー及びプロトン伝導性ポリマーの配合割合は、目的とするガスバリア性及びプロトン伝導性を担える範囲で適宜決定されるが、例えば、プロトン伝導性ポリマー1モル部に対し、ガスバリア性ポリマーが0.5モル部以上500モル部以下である。
中間電解質膜の膜厚は、第1のプロトン伝導性電解質膜及び第2のプロトン伝導性電解質膜の膜厚より小さいことが好ましい。
具体的な膜厚は、使用するガスバリア性ポリマー及びプロトン伝導性ポリマーの種類や配合割合、第1のプロトン伝導性電解質膜及び第2のプロトン伝導性電解質膜の種類や膜厚等にもよるが、目的とするガスバリア性とプロトン伝導性を有する範囲で小さい方が好ましい。
中間電解質膜の膜厚は、通常、10μm以下であり、好適には5μm以下、より好適には2.5μm以下である。膜厚が大きくなりすぎるとガスバリア性が向上してもプロトン伝導性が小さくなる傾向にある。
また、中間電解質膜の膜厚が小さすぎると、膜欠陥ができてガスリークが生じる恐れがあるため、通常、0.1μm以上、好適には1μm以上である。
中間電解質膜の製造方法は任意であるが、それぞれを化学的に結合させていない、ガスバリア性ポリマー及びプロトン伝導性ポリマーを含む水溶液を塗布または噴霧した後に乾燥させることで形成することができる。このような製法であれば、ガスバリア性の高さから、膜厚を薄くしてもガスのクロスリークによる性能低下が起こりにくい。同時に薄膜化することにより電解質膜のイオン伝導に対する抵抗が下がるため、発電性能が低下することを抑制できる。
(プロトン伝導性電解質膜(外層))
プロトン伝導性電解質膜(外層)である第1のプロトン伝導性電解質膜及び第2のプロトン伝導性電解質膜は、中間電解質膜を挟み込むように配置される(図2参照)。また、好適な態様では、第1のプロトン伝導性電解質膜及び第2のプロトン伝導性電解質膜は、中間電解質膜を包み込むように外周が密着している(図4参照)。
第1のプロトン伝導性電解質膜及び第2のプロトン伝導性電解質膜は、異なる種類の電解質膜を使用することもできるが、典型的には同じ種類の電解質膜が使用される。
プロトン伝導性電解質膜(外層)としては、PEFCの電解質材料として用いられる公知のフッ素系電解質材料からなる電解質膜を好適に使用することができる。
本発明の積層電解質膜では、外層である第1のプロトン伝導性電解質膜及び第2のプロトン伝導性電解質膜は、中間電解質膜と比較して膜厚が大きく設定されるため、よりプロトン伝導性に優れるフッ素系電解質材料からなる電解質膜が好適に使用される。
フッ素系電解質材料については、中間電解質膜の説明で上述したため、詳細な説明は省略する。
フッ素系電解質材料からなる電解質膜の市販品としては、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)、アクイビオン(登録商標、ソルベイ社製)などが好適例として挙げられる。
なお、プロトン伝導性電解質膜(外層)には、フッ素系電解質材料からなる電解質膜に代えて他の電解質膜を使用することもできる。
例えば、プロトン伝導性電解質膜(外層)として、炭化水素系電解質材料からなる電解質膜を使用することができる。炭化水素系電解質材料としては、例えば、ポリスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリールエーテルケトンスルホン酸、ポリフェニルスルホン酸、ポリベンズイミダゾールスルホン酸、ポリベンズイミダゾールホスホン酸、ポリイミドスルホン酸等のポリマーや、これらにアルキル基等の側鎖を有するポリマー等が挙げられる。
また、プロトン伝導性電解質膜(外層)として、細孔フィリング電解質膜を使用することができる。細孔フィリング電解質膜は、多孔質基材、例えばポリイミド多孔質膜、ポリオレフィン架橋膜、好適にはポリイミド多孔質膜の細孔内に、各種プロトン伝導性高分子電解質を充填した電解質膜を例示できる。
また、第1のプロトン伝導性電解質膜及び第2のプロトン伝導性電解質膜は、異なる膜厚のものを使用することもできるが、典型的には同じ膜厚のものが使用される。
プロトン伝導性電解質膜(外層)(第1のプロトン伝導性電解質膜又は第2のプロトン伝導性電解質膜)の膜厚は、通常、50μm以下であり、好適には30μm以下である。膜厚が大きすぎると膜抵抗が大きくなるため好ましくない。
また、プロトン伝導性電解質膜(外層)の膜厚が小さすぎると、強度が保てず、膜欠陥ができてガスリークが生じるおそれがあるため、通常、2μm以上、好適には10μm以上である。
(積層電解質膜の製造方法)
上述した本発明の積層電解質膜の製造方法は、得られる積層電解質膜が、PEFCの電解質膜として機能する限り特に限定されず、積層電解質膜を構成する中間電解質膜、第1のプロトン伝導性電解質膜及び第2のプロトン伝導性電解質膜に応じて適宜好適な方法を選択すればよい。
本発明の積層電解質膜を再現性良く製造できる点で、以下に説明する製造方法(以下、「本発明の製造方法」と称す。)によって製造することが好適である。
本発明の製造方法は、上述した本発明の積層電解質膜を製造する方法であって、第1のプロトン伝導性電解質膜に、中間電解質膜の形状及び厚みに対応するマスクを配置する工程と、前記マスクの上から前記ガスバリア性ポリマー及びプロトン伝導性ポリマーを含む水溶液を塗布または噴霧した後に乾燥させて、第1のプロトン伝導性電解質膜の上に前記ガスバリア性ポリマー及びプロトン伝導性ポリマーの混合物からなる中間電解質膜を形成する工程と、前記マスクを除去した後に、前記中間電解質膜の上から第2のプロトン伝導性電解質膜を配置して、前記中間電解質膜を、前記第1のプロトン伝導性電解質膜と前記第2のプロトン伝導性電解質膜とで挟みこむ工程と、を有することを特徴とする。
本発明の製造方法は、中間電解質膜を、前記第1のプロトン伝導性電解質膜と前記第2のプロトン伝導性電解質膜とで挟みこむ工程において、前記中間電解質膜を包み込むように第1のプロトン伝導性電解質膜と第2のプロトン伝導性電解質膜とを密着させることが好ましい。この方法は、後述する実施例で採用した方法であり、上述した積層電解質膜1A(図4参照)の構造の積層電解質膜を再現性良く製造できる。
<2.膜電極接合体(MEA)>
本発明の膜電極接合体は、上記本発明の積層電解質膜と、前記積層電解質膜の一方面に接合されたカソードと、前記積層電解質膜の他方面に接合されたアノードと、を有する膜電極接合体であって、前記カソードとアノードの少なくとも一方が、上記本発明の電極であることを特徴とする。
なお、以下において、PEFCのカソード条件とは、PEFCの通常運転時のカソードにおける条件であり、温度が室温~150℃程度、空気等の酸素を含むガスが供給される条件(酸化雰囲気)を意味し、アノード条件とは、PEFCの通常運転時のアノードにおける条件であり、温度が室温~150℃程度、水素を含む燃料ガスが供給される条件(還元雰囲気)を意味する。
図5は本発明の実施形態に係る膜電極接合体の断面構造を模式的に示したものである。図5に示すように膜電極接合体10は、カソード4及びアノード5が固体高分子電解質膜6(本発明の積層電解質膜)に対面して配置された構造を有する。
本発明の膜電極接合体(MEA)は、固体高分子形燃料電池や固体高分子形水電解装置の用途に好適に使用できる。本発明の膜電極接合体において、本発明の積層電解質膜以外の構成要素は、公知の固体高分子形燃料電池用の膜電極接合体と同様であるため、詳細な説明を省略し、以下、概要を記載する。
カソード4は、電極触媒層4aとガス拡散層4bで構成され、PEFCのカソード条件で十分な耐久性と電子伝導性を併せ持つものであればよく、公知のカソードが使用できる(例えば、特許第6598159号公報参照)。
アノード5は、電極触媒層5aとガス拡散層5bで構成され、PEFCのアノード条件で十分な耐久性と電子伝導性を併せ持つものであればよく、公知のアノードが使用できる(例えば、特許第6598159号公報参照)。
固体高分子電解質膜6には、上述の本発明の本発明の積層電解質膜が使用されるため、詳細な説明は省略する。
<3.固体高分子形燃料電池>
本発明の固体高分子形燃料電池(単セル)は、本発明の膜電極接合体を備えてなり、通常、膜電極接合体をガス流路が形成されたセパレータで挟持した構造を有する。
図6は本発明の固体高分子形燃料電池の代表的な構成を示す概念図である。図6に示すように、固体高分子形燃料電池20においてアノード5には水素が供給され、(反応1)2H2 →4H++4e-によって、生成したプロトン(H+)は固体高分子電解質膜6(本発明の積層電解質膜)を介してカソード4に供給され、また、生成した電子は外部回路21を介してカソード4へ供給され、(反応2)O2+4H++4e-→2H2Oによって、酸素と反応して水を生成する。このアノード5とカソード4の電気化学反応によって両電極間に電位差を発生させる。
また、本発明に係るPEFCにおいて、本発明の膜電極接合体以外の構成要素は、公知の固体高分子形燃料電池と同様であるため、詳細な説明を省略する(例えば、特許第6598159号公報参照)。実際には、本発明の固体高分子形燃料電池(単セル)が発電性能に応じた基数だけ積層された燃料電池スタックが形成され、ガス供給装置、冷却装置などその他付随する装置を組み立てることにより使用される。
以上、図面を参照して本発明について述べたが、今回開示された事項は、以下に説明する燃料電池本体を除いて例示であって制限的なものではない。特に、今回開示された事項において、明示的に開示されていない事項、例えば、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用することができる。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<1.積層電解質膜の製造>
(実施例1)
実施例1の積層電解質膜は、以下の手順で作製した。
まず、ガスバリア性ポリマーであるポリビニルアルコール(PVA)とプロトン伝導性ポリマーであるポリビニルスルホン酸(PVS)とを、溶媒である水に、PVA:PVS=100:1(mol比)で溶解して水溶液(PVA-PVS溶液)とした。
次いで、図7(a)に示すように、第1のプロトン伝導性電解質膜としてNafion膜(Nafion211,9cm,膜厚25μm)の片面に中間電解質膜の形状に対応するマスク(1cm)を配置し、ヒーターで加熱(60℃)した状態で、ポリマー(PVA+PVS)重量が0.5mg/cmとなるようにPVA-PVS溶液をスプレー塗布し、60℃で10分間乾燥させることでPVA及びPVSの混合物からなる中間電解質膜を形成した。
マスクを除去した後に、図7(b)に示すように、中間電解質膜(PVA及びPVSの混合物)を、第2のプロトン伝導性電解質膜である、一枚のNafion膜(Nafion211,9cm,膜厚25μm)で挟みこみ、二枚のNafion膜で中間電解質膜を包み込むようにして、ホットプレス(132℃、0.3kPa、3分間)することによって、実施例1の積層電解質膜を得た(図7(c)参照)。
図8に実施例1の積層電解質膜を切断した観察した断面SEM像を示す。図8に示すように、実施例1の積層電解質膜は、第1、2のプロトン伝導性電解質膜(25μm)の間に、中間電解質膜2.2μmが挟み込まれていることが確認された。
以上から、実施例1の積層電解質膜は、中間電解質膜(PVA及びPVSの混合物)が二枚のNafion膜で中間電解質膜を挟み込まれて一体化し、中間電解質膜の外周は二枚のNafion膜で包み込むように密着している構造を有していることを確認した。
<2.評価>
(2-1.ガス透過性の評価)
実施例1の積層電解質膜について、酸素及び水素のガス透過性の評価を行った。なお、比較のため、PEFCの電解質膜として汎用のNafion212(膜厚55μm)についてもガス透過性の評価を行った。
電解質膜の気体透過性は以下の方法で測定した。1cmの穴を開けたアルミテープで電解質膜を両面から挟み、測定試料とした。測定試料は、気体透過性測定装置GTR-11A/31A(GTRテック製)に組み込み、気体透過量をガスクロマトグラフィーG3700T(ヤナコ製)で評価した。気体透過量は、測定試料を挟んで上流と下流の差圧が200KPaとなるように、上流側を100KPa、下流側を-100KPaとして、25℃と80℃、乾燥条件で測定を行った。気体は水素と酸素を用いた。気体透過性は、試料を透過した気体の体積を、試料の膜厚、試料面積、測定時間、差圧で除して、算出される。
実施例1の電解質膜、及び参考例のNafion212の酸素透過性を表1、水素透過性を表2に示す。
表1に示すように、実施例1の積層電解質膜は、25℃、80℃のいずれにおいても、Nafion212より酸素透過性(OP)が低かった。(25℃:423倍、80℃:286倍)。また、表2に示すように、実施例1の積層電解質膜は、25℃、80℃のいずれにおいても、Nafion212より水素透過性(HP)が低くかった(25℃:99倍、80℃:44倍)。
このように実施例1の積層電解質膜は、酸素及び水素のいずれにおいても、汎用のNafion212より優れたガスバリア性を有していることが確認された。
(2-2.PEFCによる化学的耐久性試験(OCV保持試験))
実施例1の積層電解質膜と、比較例1の電解質膜としてNafion膜(Nafion212,9cm,膜厚50μm)を用いて作製した膜電極接合体(MEA)を用いて、
電解質膜の燃料電池(PEFC)中での化学劣化の評価手法であるOCV(開回路電圧)保持試験を行い、ガスバリア性が化学的耐久性に与える影響を評価した。
まず、実施例1又は比較例1の電解質膜に、46.8wt%Pt/C(田中貴金属工業株式会社、TEC10E50E)を、ナフィオン溶液を含む所定の有機溶媒に分散させて、アノード形成用の分散溶液を調合した。得られた分散溶液をナフィオン膜上にスプレー印刷して、所定の厚みのアノード(電極触媒層)を実施例1又は比較例1の電解質膜上に作製した。
次いで、アノードと同様の方法で、カソード形成用の分散溶液を調合した。得られた分散液を、アノードを形成した電解質膜の反対面に、スプレー印刷して、電解質膜上に所定の厚みのカソード(電極触媒層)を作製した。所定の条件(0.12MPa、135℃、180秒)で電極触媒層を電解質膜に圧着し、実施例1又は比較例1のMEAを得た。
なお、実施例1及び比較例1のMEAのアノード、カソードにおけるPt量はともに0.3mg/cm2である。
実施例1、比較例1のMEAにガス拡散層として撥水性カーボンペーパー(東レ社製,型番:EC-TP1-060T)を配置し、単セル発電評価用治具(JARI)にはさみこんだ後に、90℃に設定した恒温槽内に設置し、以下の条件でOCV保持試験(電流密度0A/cm2)の評価を行った。図9にOCV保持試験の結果を示す。
(アノード条件)
電極面積:1.0cm2
供給ガス種 :100% H2
ガス供給速度 :139mL/min
(カソード条件)
電極面積:1.0cm2
供給ガス種 :Air
ガス供給速度 :332mL/min
図9に示すように比較例1のMEA(Nafion212)は約200時間で0.6VまでOCVが低下したのに対して、実施例1のMEA(積層電解質膜)では300時間以上OCVが0.6V以上を維持していることから、実施例1の積層電解質膜を使用した実施例1のMEAは、高い耐久性を有することが示された。
それぞれの膜厚はほぼ同等であることから、実施例1の積層電解質膜の中間電解質膜を構成する中間電解質膜(PVA及びPVSの混合物)が酸素透過を抑制し、ラジカルの発生を抑えていることを明確に表している。この結果から、ガスバリア性高分子がラジカルの発生を抑え、高分子電解質膜の化学的耐久性を向上させるということを明らかにした。
(2-3.水素の膜透過の電気化学的評価)
膜の劣化を評価するために、実施例1の積層電解質膜、比較例1の電解質膜(Nafion212)の水素の膜の透過を電気化学的に評価した結果を図10に示す。
図10の通り、比較例1が徐々に水素の透過量が増えているのに対し、実施例1では、劣化する直前まで気体のバリア性を維持している。このことからも、酸素透過性を抑制することで、ラジカル発生を抑え、電解質膜の劣化を抑えていることが分かる。
(2-4.酸素透過性の評価)
実施例1の積層電解質膜において、中間電解質膜におけるPVA及びPVSの割合(モル比)を変化させて酸素透過性の評価を行った。表3に評価を行った積層電解質膜の中間電解質膜におけるPVA及びPVS(モル比)、面密度、膜厚を示す。なお、サンプル名S100は、上記実施例1の積層電解質膜に相当する。
図11に実施例の積層電解質膜(S20,S40、S100)及び比較例1の電解質膜(Nafion212)の酸素透過率(80℃、dry)の結果を示す。
図11に示すようにPVAの割合が大きくなるにつれ、積層電解質膜の酸素バリア性が向上することが確認された。
本発明によれば、ガスバリア性に由来する高い化学的耐久性を有する積層電解質膜を供することができ、自動車、電力、ガス、家電業界で使用される固体高分子形燃料電池の構成部材として有望である。
1,1A 積層電解質膜
2a 第1のプロトン伝導性電解質膜
2b 第2のプロトン伝導性電解質膜
3 中間電解質膜
4 燃料電池用電極(カソード)
4a 電極触媒層(カソード電極層)
4b ガス拡散層
5 燃料電池用電極(アノード)
5a 電極触媒層(アノード電極層)
5b ガス拡散層
6 固体高分子電解質膜
10 膜電極接合体(MEA)
20 固体高分子形燃料電池(PEFC)
21 外部回路

Claims (9)

  1. 少なくとも三層の電解質膜からなるサンドイッチ構造の積層電解質膜であって、
    一方面に配置された第1のプロトン伝導性電解質膜と、他方面に配置された第2のプロトン伝導性電解質膜と、前記第1のプロトン伝導性電解質膜及び第2のプロトン伝導性電解質膜の間に配置された中間電解質膜と、を有し、
    前記中間電解質膜は、ガスバリア性ポリマー及びプロトン伝導性ポリマーとの混合物からなることを特徴とする積層電解質膜。
  2. 前記中間電解質膜の膜厚は、前記第1のプロトン伝導性電解質膜と第2のプロトン伝導性電解質膜の膜厚よりも小さい請求項1に記載の積層電解質膜。
  3. 前記第1のプロトン伝導性電解質膜と第2のプロトン伝導性電解質膜とが、前記中間電解質膜を包み込むように密着してなる請求項1また2に記載の積層電解質膜。
  4. 前記中間電解質膜を構成するガスバリア性ポリマーが、ポリビニルアルコール(PVA)である請求項1から3のいずれかに記載の積層電解質膜。
  5. 前記中間電解質膜を構成するプロトン伝導性ポリマーが、スルホン酸基を有するプロトン伝導性ポリマーである請求項1から4のいずれかに記載の積層電解質膜。
  6. 前記中間電解質膜を構成するガスバリア性ポリマーとプロトン伝導性ポリマーとの割合が、プロトン伝導性ポリマー1モル部に対し、ガスバリア性ポリマーが0.5モル部以上500モル部以下である請求項1から5のいずれかに記載の積層電解質膜。
  7. 前記第1のプロトン伝導性電解質膜及び第2のプロトン伝導性電解質膜が、フッ素系プロトン伝導性ポリマーからなる請求項1から6のいずれかに記載の積層電解質膜。
  8. 固体高分子電解質膜と、前記固体高分子電解質膜の一方面に接合されたカソードと、前記固体高分子電解質膜の他方面に接合されたアノードと、を有する膜電極接合体であって、前記固体高分子電解質膜が、請求項1から7のいずれかに記載の積層電解質膜である膜電極接合体。
  9. 請求項8に記載の膜電極接合体を備えてなる固体高分子形燃料電池。
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