JP2023104633A - 高温下で試験体の物性を測定する装置及びそれを用いて試験体の物性を測定する方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】試験体の昇温と冷却とを高速で行うことができて、短い間隔で測定を繰り返すことができるとともに、外部から試験体を観察し易い、高温下で試験体の物性を測定する装置を提供する。【解決手段】高温下で試験体の物性を測定する装置であって、前記試験体の下側、又は下側と上側の両側にカーボンヒーターが配置され、前記カーボンヒーターがステンレス鋼製の筐体内に収容され、前記筐体の少なくとも側面及び上面に観察窓が設置され、前記筐体の外側に前記観察窓を介して前記試験体の物性を測定するための測定器が設置された装置である。【選択図】図1
Description
特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年3月1日 耐火物技術協会発行の「耐火物(第33回 耐火物技術協会 年次学術講演会 講演概要集)」 〔刊行物等〕 令和3年10月1日 一般財団法人岡山セラミックス技術振興財団発行の「セラミックス岡山」 〔刊行物等〕 令和3年12月10日 一般財団法人岡山セラミックス技術振興財団発行の「装置デモンストレーションのお知らせ」 〔刊行物等〕 令和3年12月22日 耐火物技術協会発行の「第9回 鉄鋼用耐火物研究会講演会 報告集」 〔刊行物等〕 令和3年12月23日 耐火物技術協会主催の「第9回 鉄鋼用耐火物研究会講演会」
本発明は、高温下で試験体の物性を測定する装置及びそれを用いて試験体の物性を測定する方法に関する。
製鉄所の各種炉等に用いられる耐火物は1500℃以上の高温下で使用される。このような環境下で,当該耐火物が銑鉄、鋼鉄、スラグ等と接触して、侵食や浸潤が進んだ結果、剥離、亀裂、破壊等が引き起こされると重篤な事故が発生することがある。この防止のため、高温下での材料物性の評価技術は特に重要である。
従来、1000℃以上の高温下でセラミックスや金属等の物性を測定する場合、電気炉等(特許文献1)が用いられていたが、試験体の昇温に数時間かかるうえに、装置の冷却にはさらに数時間かかるため、1回の測定に長時間を要していた。また、観察窓の位置や大きさが制約されることにより、筐体の外から内部の試験体を思い通りに観察することができない場合もあった。
一方、特許文献2には、赤外線を用いた高速加熱装置が記載されている。当該装置によれば、合成石英粉を、大気下または減圧下、10~30℃/secの昇温速度で1700℃~1800℃まで加熱することができると記載されている。しかしながら、赤外線を用いて試験体を高速加熱する方法は集光加熱であり、試験体全体を高速で均一加熱しにくいという問題があった。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、試験体の昇温と冷却とを高速で行うことができて、短い間隔で測定を繰り返すことができるとともに、外部から試験体を観察し易い、高温下で試験体の物性を測定する装置を提供することを目的する。
上記課題は、高温下で試験体の物性を測定する装置であって、前記試験体の下側、又は下側と上側の両側にカーボンヒーターが配置され、前記カーボンヒーターがステンレス鋼製の筐体内に収容され、前記筐体の少なくとも側面及び上面に観察窓が設置され、前記筐体の外側に前記観察窓を介して前記試験体の物性を測定するための測定器が設置された装置を提供することによって解決される。
このとき、前記測定器がカメラ又は温度計であることが好ましい。前記装置が状態観察装置であることが好ましく、当該状態観察装置が接触角測定装置であることがより好ましい。
前記カーボンヒーターで前記試験体を加熱する工程と、前記測定器を用いて前記試験体を測定する工程とを有する、前記装置を用いた試験体の測定方法が本発明の好適な実施態様である。前記カーボンヒーターで前記試験体を加熱して溶融させる工程と、前記カメラを用いて前記溶融した試験体の接触角を測定する工程とを有する、前記接触角測定装置を用いた試験体の接触角測定方法が本発明のより好適な実施態様である。
本発明の装置によれば、高温下で試験体の物性を測定することが可能であり、試験体の昇温と冷却とを高速で行うことができて、短い間隔で測定を繰り返すことも可能であるうえに、外部から容易に前記試験体を測定できる。
本発明は、高温下で試験体の物性を測定する装置であって、前記試験体の下側、又は下側と上側の両側にカーボンヒーターが配置され、前記カーボンヒーターがステンレス鋼製の筐体内に収容され、前記筐体の少なくとも側面及び上面に観察窓が設置され、前記筐体の外側に前記観察窓を介して前記試験体の物性を測定するための測定器が設置されたものである。当該装置では、前記試験体の下側、又は下側と上側の両側に設置されたカーボンヒーターによって、前記試験体が効率的に加熱されるため、短時間で試験体が極めて高温に加熱される。一方、このときのカーボンヒーターや試験体の輻射熱の筐体等への影響は小さい上に、カーボンヒーターや筐体の熱容量も小さいため、試験体の冷却も短時間で可能である。したがって、試験体を極めて高温に加熱した場合でも、短い間隔で測定を繰り返すことができる。さらに、カーボンヒーターや試験体の輻射熱の影響が小さいため、筐体の内部に断熱材を設置する必要がなく、観察窓の位置、大きさ、数に対する制限も小さい。したがって、筐体の外側の測定器を用いて、高温下における前記試験体の様々な物性を容易に測定することができる。
以下、図面を用いて説明する。図1は、本発明の装置1の一例の概略図である。図1では、筐体2の内部を示すため、筐体2の側面部及び上面部の右側が図示されていない。筐体2の中に、カーボンヒーター3が収容される。カーボンヒーター3は試験体4の下側、又は下側と上側の両側に配置される。カーボンヒーター3を試験体4の下側にのみ配置するか、下側と上側の両側に配置するかは、測定される物性や試験体の種類に応じて適宜選択すればよい。
本発明では、カーボンヒーター3として、板状のものが好適に用いられ、通常、下側のカーボンヒーター3の加熱部5の上に試験体4が載置される。図2は、試験体4が載置されたカーボンヒーター3の上面写真の一例である。カーボンヒーター3の両端が、筐体2の底面に設置された固定部6にクランプで固定されるとともに、電源に接続するための端子7に接続される。そして、カーボンヒーター3の両端に電圧を印加することにより、加熱部5の上に載置された試験体4が加熱される。このときの端子等へのダメージを防ぐため、固定部6内に冷却管を設置することが好ましい。カーボンヒーター3の抵抗値は、通常、0.002~0.1Ωである。
カーボンヒーター3の加熱部5の面積は、通常0.2~40cm2である。当該面積が40cm2を超える場合、装置1の冷却時間が長くなり過ぎたり、カーボンヒーター3や試験体4の輻射熱によって、観察窓8や筐体2内を密封するためのシール部材がダメージを受けたりするおそれがある。前記面積は25cm2以下が好ましく、10cm2以下がより好ましく、試験体を極めて高温に加熱できる点から、1cm2以下がさらに好ましい。一方、当該面積は0.8cm2以上が好ましく、1cm2以上がより好ましい。試験体4の上側にもカーボンヒーター3が設置される場合、下側に設置されるものと同様のものが用いられ、加熱部5が下側に向くようにして設置される。
本発明の装置1では、ステンレス鋼製の筐体2が用いられ、筐体2によって、その内部が密封される。筐体2の形状は特に限定されないが、箱型などが挙げられる。筐体2の厚みは箱型の場合、通常、3~50mmであり、好ましくは10~20mmである。図1に示される装置1では、筐体2の上面部が開閉可能なように、側面部に対してヒンジで取り付けられており、筐体2の上部から試験体4が所定の位置に載置される。また、筐体2の内部を密封するため、通常、上面部と側面部の間にはシール材が介装される。当該シール材としては、フッ素ゴム、シリコンゴム等が用いられる。
本発明の効果を阻害しない範囲であれば、本発明の装置1のステンレス鋼製の筐体2の内面又は外面に断熱材が配置されていてもよいが、筐体2の内面及び外面に断熱材が配置されていないことが好ましい。従来、高温下での材料物性の評価に用いられていた電気炉等では、炉内全体が昇温するため、筐体の内側には熱容量が高い断熱材を配置する必要があった。そのため、一旦昇温すると装置の冷却に数時間を要するため、1日あたりの測定回数が限られていた。それに対して、本発明の装置1では、カーボンヒーター3の加熱部5のみが発熱して試験体4が効率的に加熱されるため、カーボンヒーター3や試験体4の輻射熱の筐体への影響は小さい。そのため、断熱材を設置する必要がないうえに、断熱材を設置しないことによって装置1全体の熱容量を低くすることができるため、装置1の冷却時間がさらに短縮され、短い間隔で測定を繰り返すことができる。
本発明の装置1では、筐体2の少なくとも側面及び上面に観察窓8が設置されている必要がある。前記筐体2の外側に設置された測定器により、観察窓8を介して、筐体2内の試験体4の物性が測定される。図1に示される装置1には、筐体2の、前側面、後側面、上面、及び下面にそれぞれ1個、合計4個の観察窓8が設置されている。筐体2の側面、上面及び下面のうち、少なくとも3面以上に観察窓8が設置されていることが好ましく、4面以上に観察窓8が設置されていることがより好ましい。筐体2の外側に配置された測定器を用いて、観察窓8を介して、内部の試験体4を測定することができれば、観察窓8の位置は特に限定されないが、筐体2の外面に対して垂直方向から、観察窓8を介して、カーボンヒーター3又は試験体4を見ることができる位置に観察窓8が設置されることが好ましい。
観察窓8の大きさや形状は特に限定されず、試験体4の大きさや測定される物性の種類に応じて適宜調整すればよい。観察窓8の形状としては、矩形、円形、楕円形などが挙げられ、円形が好ましい。観察窓8が円形である場合、その有効直径は、30~300mmが好ましい。前記直径が30mm以上であることにより、前記筐体2の外側に設置された測定器による試験体4の測定がさらに容易になる。前記直径は、60mm以上がより好ましく、70mm以上がさらに好ましく、90mm以上が特に好ましい。一方、保守・耐久性の観点からは、前記直径は、200mm以下がより好ましく、150mm以下がさらに好ましく、120mm以下が特に好ましい。入手性や耐熱性の点から、観察窓8の材質はホウケイ酸ガラス、石英ガラスが好ましく、ホウケイ酸ガラスがより好ましい。観察窓8の厚みは、通常、3~40mmであり、好ましくは6~20mmである。図1に示される装置1では、筐体2の各外面に、管状の接続部9を介して観察窓8が設置されているが、筐体2に直接観察窓8を設置してもよい。図1には示されていないが、観察窓8と接続部9の間には、通常、シール部材が介装される。当該シール部材として、フッ素ゴム、シリコンゴム等が用いられる。図1には示されていないが、カーボンヒーター3や試験体4の輻射熱による、シール部材や観察窓8へのダメージを防ぐため、観察窓8の周縁に冷却ジャケットが沿設されていることが好ましい。
観察窓8と試験体4の距離は、50~500mmが好ましい。当該距離が50mm以上であることにより、カーボンヒーター3や試験体4の輻射熱による、シール部材や観察窓8へのダメージが防止される。当該距離は、60mm以上がより好ましく、80mm以上がさらに好ましく、100mm以上が特に好ましく、120mm以上が最も好ましい。一方、前記距離が500mm以下であることにより、測定精度がさらに向上する。前記距離は、400mm以下がより好ましく、300mm以下がさらに好ましく、200mm以下が特に好ましく、180mm以下が最も好ましい。
また、カーボンヒーター3や試験体4の輻射熱による、シール部材や観察窓8へのダメージが防止される観点や、観察目的により観察範囲を狭くすることが有効であることがある点から、観察窓8とカーボンヒーター3の間にリフレクターが設置されていることも好ましい。当該リフレクターとして、例えば、円形開口式のものやスリット開口式のものが用いられる。前記リフレクターの材質は特に限定されないが、ステンレス鋼、チタン等が好ましい。
図1には示されていないが、本発明の装置1の筐体2の外側には、試験体4の物性を測定するための測定器が設置される。測定器は、観察窓8を介して、試験体4の物性を測定することが可能な位置に配置される。測定器の数は、測定される物性や試験体4の種類に応じて適宜決定すればよいが、少なくとも側面の観察窓8の近傍に1個と上面の観察窓8の近傍に1個の合計2個以上が好ましい。1つの観察窓8の近傍に複数の測定器を設置してもよい。図3は、筐体2の外側に設置された測定器の外観写真の一例である。図3に示される装置1では、筐体2の前側面に設置された観察窓8と対向する位置に測定器としてカメラが設置され、筐体2の前側面と下面に設置された観察窓8の近傍に測定器として2色式放射温度計がそれぞれ設置されている。これらの測定器により、観察窓8を介して試験体4の物性が測定される。測定器の種類は測定される物性や試験体4の種類に応じて選択すればよく、特に限定されないが、カメラ、温度計、寸法計測器等が挙げられ、カメラ又は温度計が好ましい。前記カメラとしては、可視領域ではCCDカメラ、CMOSカメラ、FOVEON X3、有機薄膜撮像素子等が用いられ、赤外線領域ではHgCdTe、InSb、PtSi、QWIP、InGaAs、InAsSb、T2SL、マイクロボロメータ等が用いられる。温度計は温度分布を測定可能なものであってもよい。温度計として、2色式放射温度計、熱画像式温度計等が挙げられる。また、必要に応じて、上述した前記観察窓8を介して前記試験体の物性を測定するための測定器以外の他の測定器を筐体2の内部や外側に設置してもよく、このような他の測定器として、電圧計、ガスモニター、応力計等が挙げられる。
図1及び図4には示されていないが、筐体2には、通常、さらにガス導入口、ガス排出口、脱気口、内部冷却水導入口、信号入出力口等が設置される。
本発明の装置1によれば、短時間で試験体4が極めて高温に加熱されるとともに、試験体4や装置1は短時間で冷却され、短い間隔で測定を繰り返すことができる。また、筐体2はそれほど高温にはならないため、観察窓8の位置、大きさ、数に対する制限も小さい。このようなことから、筐体2の外側の測定器を用いて、前記試験体4の様々な物性を幅広い温度範囲において容易に測定することができる。中でも、本発明の装置1は状態観察装置として好適に用いられる。当該状態観察装置として、接触角測定装置、熱伝導率測定装置、比熱測定装置、熱拡散率測定装置、スポーリング測定装置及び膨張収縮測定装置等が挙げられ、中でも接触角測定装置、熱伝導率測定装置が好ましく、接触角測定装置がより好ましい。
前記カーボンヒーター3で前記試験体4を加熱する工程と、前記測定器を用いて前記試験体4を測定する工程とを有する、前記装置1を用いた試験体4の測定方法が本発明の好適な実施態様である。
以下、前記測定方法について説明する。本発明において、試験体4の種類は特に限定されず、金属、セラミックス、耐火物、耐熱材料が挙げられる。本発明において、試験体4のサイズは特に限定されないが、通常、試験体4の最も離れた2点間の距離は1~100mmである。前記距離は70mm以下が好ましく、60mm以下がより好ましい。
通常、下側のカーボンヒーター3の上に試験体4を載置する。一度に測定される試験体4の数は、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。例えば、接触角測定を行う場合、下側のカーボンヒーター3の上に、セラミックス等からなる板状の試験体4を載置し、当該試験体4の上に、金属などの加熱した際に溶融する試験体4を載置した後、これらを加熱して、前記板状の試験体4に対する溶融した試験体4の接触角を測定することができる。試験体4をさらに効率的に加熱する観点から、下側のカーボンヒーター3の上に直接試験体4を載置することが好ましい。
筐体2の外側に配置された前記測定器を用いて前記試験体4を測定する。図4は、接触角測定や熱伝導率測定を行う場合の測定器の構成例である。このように、筐体2の前側面の観察窓8の近傍にメインカメラを設置し、後側面、上面及び下面の観察窓8の近傍に温度計(2色式放射温度計、二色式熱画像計測システム)を設置する。接触角測定を行う場合には、上面側及び下面側の温度計によって、上側及び下側のカーボンヒーター3の温度を測定し、後側面側の温度計によって、試験体4の温度を測定する。そして、前側面側のメインカメラによって溶融した試験体4の接触角が測定される。試験体4の熱伝導率は、上面側、後側面側及び下面側の温度計を用いて、試験体4の下面から上面までの温度勾配を測定することにより求められる。また、カメラを用いて昇温中や冷却中の試験体4の動画を撮影したり、温度計を用いて試験体4の温度分布を測定したりすることも可能であり、筐体2の外側に配置された測定器を用いて各種試験体4の様々な物性を測定することができる。
試験体4の加熱は、不活性雰囲気下(例えば、アルゴン雰囲気下、窒素雰囲気下)、真空下、還元雰囲気下等の非酸化雰囲気下で行うことが好ましい。
試験体4の加熱は、下側のカーボンヒーター3のみを用いて行ってもよいし、試験体4の上側にもカーボンヒーター3を配置して、下側と上側のカーボンヒーター3を用いて行ってもよい。接触角測定を行う場合、下側と上側のカーボンヒーター3を用いて試験体4を加熱することが好ましく、熱伝導率測定を行う場合には、下側のカーボンヒーター3のみを用いて試験体4を加熱することが好ましい。
試験体4を加熱する際にカーボンヒーター3に印加する電圧は特に限定されないが、通常、1~20Vである。電流は、交流と直流のどちらでもよい。カーボンヒーター3で試験体4を加熱する際の昇温速度は、測定される物性に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、50~20000℃/minが好ましい。本発明の装置1の特徴を活かせる点からは、昇温速度は100℃/min以上がより好ましく、1000℃/min以上がさらに好ましく、2000℃/min以上が特に好ましく、4000℃/min以上が最も好ましい。
加熱時の試験体4の最高温度は特に限定されないが、500~3000℃が好ましい。本発明の装置1によれば、試験体4が短時間で極めて高温に加熱されるうえに、冷却も短時間で可能である。しかも、測定間隔が短い。これらの特徴をより活かせる点からは、前記最高温度は1000℃以上がより好ましく、1500℃以上がさらに好ましい。加熱時間は特に限定されないが、通常、5秒~60分である。
前記測定方法が、さらに、前記試験体4を冷却する工程を有することが好ましい。試験体4の降温速度は、測定される物性に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、50~20000℃/minが好ましい。本発明の装置1の特徴をより活かせる点からは、降温速度は100℃/min以上がより好ましく、1000℃/min以上がさらに好ましく、2000℃/min以上が特に好ましく、4000℃/min以上が最も好ましい。装置1を用いる場合、カーボンヒーター3への電圧の印加を停止するだけでこのように高速で試験体4を冷却することができる。
前記測定方法によれば、試験体4が短時間で極めて高温に加熱されるうえに、冷却も短時間で可能である。しかも、測定間隔が短い。したがって、当該測定方法は、各種試験体4の様々な物性の測定に用いることができる。例えば、溶融物の接触角;各種材料の熱伝導率、比熱、熱拡散率、膨張率、収縮率、熱衝撃特性;耐火物のスポーリング等の測定に好適に用いられる。中でも、前記カーボンヒーター3で前記試験体4を加熱して溶融させる工程と、前記カメラを用いて前記溶融した試験体4の接触角を測定する工程とを有する、装置1を用いた試験体4の接触角測定方法が本発明のより好適な実施態様である。
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。
実施例1
図1及び4に示される装置1を用いて試験体4の加熱試験を行った。試験体4として、一辺の長さ10mm、厚み2mmの正方形の株式会社ニッカトー製のアルミナセラミックス「SSA-S」を用いた。当該試験体4をカーボンヒーター3(抵抗値0.002~0.02Ω)の一辺の長さが30mmの正方形の加熱部5の上面に載置した。図4は、測定器の構成を示している。図4に示されるように、筐体2の前側面の観察窓8の近傍に試験体4の動画撮影用カメラを設置した。筐体2の後側面と下面の観察窓8の近傍に試験体4とカーボンヒーター3を測定するための2色式放射温度計(株式会社チノー製「IR-CZH8N3」)をそれぞれ設置した。筐体2の上面の観察窓8の近傍に試験体4とカーボンヒーター3を測定するための2色式熱画像計測システム(株式会社ノビテック製「Thermera SeenU」)を設置した。
図1及び4に示される装置1を用いて試験体4の加熱試験を行った。試験体4として、一辺の長さ10mm、厚み2mmの正方形の株式会社ニッカトー製のアルミナセラミックス「SSA-S」を用いた。当該試験体4をカーボンヒーター3(抵抗値0.002~0.02Ω)の一辺の長さが30mmの正方形の加熱部5の上面に載置した。図4は、測定器の構成を示している。図4に示されるように、筐体2の前側面の観察窓8の近傍に試験体4の動画撮影用カメラを設置した。筐体2の後側面と下面の観察窓8の近傍に試験体4とカーボンヒーター3を測定するための2色式放射温度計(株式会社チノー製「IR-CZH8N3」)をそれぞれ設置した。筐体2の上面の観察窓8の近傍に試験体4とカーボンヒーター3を測定するための2色式熱画像計測システム(株式会社ノビテック製「Thermera SeenU」)を設置した。
筐体2内を脱気した後、アルゴンガス流量1l/minの条件下で、試験体4の下側のカーボンヒーター3に電圧を印加し、温度変化を各2色式放射温度計及び2色式熱画像計測システムで計測した。図5は、時間に対してカーボンヒーター3に印加した電圧をプロットした図である。測定中は、観察窓8の周縁に設置された冷却ジャケット及び固定部6内の冷却管に水を流してシール部材、観察窓8及び固定部6を冷却した。電圧の印加を開始してから20秒経過後に上面側の2色式熱画像計測システムで測定した温度分布を図6に示す。このときの加熱部5の温度は約1900℃、試験体4の温度は約1660℃であった。上面側の2色式熱画像計測システムで測定された試験体4の昇温速度は5400℃/minであった。また、カーボンヒーター3への電圧印加を停止すると、2000℃/min以上の速度で試験体4が冷却された。上面側の2色式熱画像計測システム及び後側面側と下面側の2色式放射温度計の測定結果から、試験体4の下面から上面に、アルミナセラミックスの伝熱特性を反映した熱勾配が確認され、試験体4の熱伝導率を測定可能であることが示された。
実施例2
図1及び4に示される装置1を用いて耐火れんがに対する溶融した鋼材の接触角の測定を行った。一辺の長さ10mm、厚み2mmの正方形のAl2O3-SiO2系耐火れんがSK34をカーボンヒーター3の加熱部5(一辺の長さが30mmの正方形)の上面に載置し、当該耐火れんがの上に一辺の長さ2.5mmの立方体の鋼材SS400を載置した。また、図1及び4には示されていないが、上記と同様のカーボンヒーター3を試験体4の上側に、加熱部5が下側になるように配置した。
図1及び4に示される装置1を用いて耐火れんがに対する溶融した鋼材の接触角の測定を行った。一辺の長さ10mm、厚み2mmの正方形のAl2O3-SiO2系耐火れんがSK34をカーボンヒーター3の加熱部5(一辺の長さが30mmの正方形)の上面に載置し、当該耐火れんがの上に一辺の長さ2.5mmの立方体の鋼材SS400を載置した。また、図1及び4には示されていないが、上記と同様のカーボンヒーター3を試験体4の上側に、加熱部5が下側になるように配置した。
筐体2内を脱気した後、アルゴンガス流量1l/minの条件下で、上側と下側のカーボンヒーター3に、図5に示されるとおり、それぞれ電圧を印加し、温度変化を各2色式放射温度計で計測した。電圧の印加を開始してから45秒、50秒、60秒及び63秒経過後に前側面のカメラで撮影されたカーボンヒーター3及び試験体4の画像を図7に示す。各画像の右下に記載された温度1は、側面側の2色式放射温度計で測定された鋼材SS400の温度であり、温度2は、下面側の2色式放射温度計で測定されたカーボンヒーター3の温度である。
図7に示されるとおり、カーボンヒーター3温度に対する試験体4(鋼材SS400)温度の追従性が良好であり、加熱開始から60秒後には、カーボンヒーター3と試験体4(鋼材SS400)の温度がほぼ一致しており均熱が保たれていた。加熱開始から63秒後に撮影された耐火れんがに対する溶融した鋼材の接触角は2θ法で求めた値が105.9°であり、接線法で求めた値が104.5°であった。側面側の2色式放射温度計で測定された鋼材SS400の昇温速度及び冷却速度はいずれも2000℃/min以上であった。
1 装置
2 筐体
3 カーボンヒーター
4 試験体
5 加熱部
6 固定部
7 端子
8 観察窓
9 接続部
2 筐体
3 カーボンヒーター
4 試験体
5 加熱部
6 固定部
7 端子
8 観察窓
9 接続部
Claims (6)
- 高温下で試験体の物性を測定する装置であって、
前記試験体の下側、又は下側と上側の両側にカーボンヒーターが配置され、
前記カーボンヒーターがステンレス鋼製の筐体内に収容され、
前記筐体の少なくとも側面及び上面に観察窓が設置され、
前記筐体の外側に前記観察窓を介して前記試験体の物性を測定するための測定器が設置された、装置。 - 前記測定器がカメラ又は温度計である、請求項1に記載の装置。
- 状態観察装置である、請求項1又は2に記載の装置。
- 前記状態観察装置が接触角測定装置である、請求項3に記載の装置。
- 前記カーボンヒーターで前記試験体を加熱する工程と、前記測定器を用いて前記試験体を測定する工程とを有する、請求項1~4のいずれかに記載の装置を用いた試験体の測定方法。
- 前記カーボンヒーターで前記試験体を加熱して溶融させる工程と、前記カメラを用いて前記溶融した試験体の接触角を測定する工程とを有する、請求項4に記載の装置を用いた試験体の接触角測定方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2022005752A JP2023104633A (ja) | 2022-01-18 | 2022-01-18 | 高温下で試験体の物性を測定する装置及びそれを用いて試験体の物性を測定する方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2022005752A JP2023104633A (ja) | 2022-01-18 | 2022-01-18 | 高温下で試験体の物性を測定する装置及びそれを用いて試験体の物性を測定する方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2023104633A true JP2023104633A (ja) | 2023-07-28 |
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ID=87379596
Family Applications (1)
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JP2022005752A Pending JP2023104633A (ja) | 2022-01-18 | 2022-01-18 | 高温下で試験体の物性を測定する装置及びそれを用いて試験体の物性を測定する方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2023104633A (ja) |
-
2022
- 2022-01-18 JP JP2022005752A patent/JP2023104633A/ja active Pending
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Date | Code | Title | Description |
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A80 | Written request to apply exceptions to lack of novelty of invention |
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