JP2023104257A - 回転慣性質量ダンパ - Google Patents

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滋樹 中南
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千秋 籠宮
Chiaki Kagomiya
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Abstract

【課題】圧力モータとして市販のものを用いた場合においても、大きな押しのけ容積を確保しながら、圧力モータの実際の回転数を許容回転数以下に抑制できる回転慣性質量ダンパを提供する。【解決手段】本発明のマスダンパ(回転慣性質量ダンパ)1は、作動油HFが充填されたシリンダ2と、シリンダ2内に摺動自在に設けられ、シリンダ2内を第1及び第2油室2e、2fに区画するピストン3と、作動油HFが充填され、ピストン3をバイパスし、第1及び第2油室2e、2fに連通し、複数の並列通路部4cを有する連通路4と、各並列通路部4cに設けられ、並列通路部4c内の作動流体の流動を回転運動に変換する複数の歯車モータ5と、各歯車モータ5に連結され、歯車モータ5で駆動されることによって、回転慣性質量効果を発揮する複数の回転体6と、を備え、複数の歯車モータ5の諸元及び複数の回転体6の諸元は、それぞれ互いに同一に設定されている。【選択図】図1

Description

本発明は、圧力モータで駆動される回転マスの回転慣性質量効果によって、構造物の振動を抑制する回転慣性質量ダンパに関する。
出願人は、この種の回転慣性質量ダンパを、例えば特許文献1において開示している。この回転慣性質量ダンパは、構造物を含む系内の第1及び第2部位の間に設置されるものであり、作動流体が充填され、第1部位に連結されるシリンダと、シリンダ内に摺動自在に設けられ、シリンダ内を第1流体室と第2流体室に区画するとともに、第2部位に連結されるピストンと、ピストンをバイパスし、第1及び第2流体室に連通する連通路を備える。連通路には、圧力モータとして歯車モータが設けられ、歯車モータには回転マスが連結されている。
この回転慣性質量ダンパでは、地震時などに第1及び第2部位が相対的に変位すると、その相対変位がシリンダ及びピストンに伝達されることによって、ピストンがシリンダに対して往復動する。それに伴い、第1及び第2流体室の一方の作動流体が、ピストンで押し出されることで、連通路を流動し、歯車モータに流入する。これに伴い、作動流体の流動が歯車モータにより回転運動に変換され、回転マスに伝達されることにより、回転マスによる回転慣性質量効果が発揮される。また、作動流体が連通路を流動する際の粘性抵抗により、粘性減衰効果が発揮される。
特開2018-127875号公報
上述したような歯車モータ式の回転慣性質量ダンパを、例えば、構造物と地盤の間で免震装置として用いる場合には、構造物内で制震装置として用いる場合と比較して、ダンパのストローク及び速度(相対変位の大きさ及び速度)は非常に大きい。このような傾向に対応し、歯車モータが過剰に回転しないよう、歯車モータの押しのけ容積(歯車が1回転するのに必要な作動流体の容積)を可能な限り、大きくすることが望ましい。
しかし、市販されている歯車モータを含む圧力モータの仕様は、通常、押しのけ容積が大きくなるほど、許容回転数がより小さくなるように設定されている。例えば、後述する検討例でも示すように、市販のある圧力モータでは、押しのけ容積Vm=32000mm/revの許容回転数は6300rpmであるのに対して、その4倍の押しのけ容積Vm=128000mm/revの許容回転数は4000rpmになっている。このため、押しのけ容積の大きな市販の歯車モータを用いた場合、ダンパの動作中、歯車モータの実際の回転数が許容回転数を超えるおそれがあり、このことから、実際には、押しのけ容積の大きな市販の歯車モータを採用できないという問題がある。
この問題を解決するために、例えば、押しのけ容積及び許容回転数がいずれも大きい歯車モータを開発することが考えられる。しかし、その場合には、許容回転数などの条件を満たす歯車モータを確実に開発できるかが不明であるとともに、開発できたとしても、その費用を含めて歯車モータが高価になり、歯車モータ自体、ひいては回転慣性質量ダンパのコストパフォーマンスが低下してしまう。
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、圧力モータとして市販のものを用いた場合においても、大きな押しのけ容積を確保しながら、圧力モータの実際の回転数を許容回転数以下に抑制することができる回転慣性質量ダンパを提供することを目的とする。
この目的を達成するために、請求項1に係る発明は、構造物を含む系内の相対変位する第1部位と第2部位の間に設けられ、構造物の振動を抑制する回転慣性質量ダンパであって、作動流体が充填され、第1部位に連結されるシリンダと、シリンダ内に摺動自在に設けられ、シリンダ内を第1流体室と第2流体室に区画するとともに、第2部位に連結されるピストンと、作動流体が充填され、ピストンをバイパスし、第1及び第2流体室に連通するとともに、互いに並列の複数の並列通路部を有する連通路と、複数の並列通路部にそれぞれ設けられ、並列通路部内の作動流体の流動を回転運動に変換する複数の圧力モータと、複数の圧力モータにそれぞれ連結され、圧力モータで駆動されることによって、回転慣性質量効果を発揮する複数の回転マスと、を備え、複数の圧力モータの諸元は互いに同一に設定され、複数の回転マスの諸元は互いに同一に設定されていることを特徴とする。
本発明の回転慣性質量ダンパは、上述した構成のシリンダ、ピストン、連通路、圧力モータ及び回転マスを有する圧力モータ型のものであり、振動の抑制対象である構造物を含む系内の相対変位する第1部位と第2部位の間に設けられる。この回転慣性質量ダンパでは、地震時などに構造物に振動が入力され、第1及び第2部位の間に相対変位が発生すると、その相対変位がシリンダ及びピストンに伝達されることによって、ピストンがシリンダ内を摺動する。このピストンの移動に伴い、その両側の第1又は第2流体室内の作動流体がピストンで押し出され、圧力モータが設けられた連通路に流入する。これに伴い、作動流体の流動が圧力モータにより回転運動に変換され、回転マスに伝達されることによって、回転マスによる回転慣性質量効果が発揮され、それにより、構造物の振動が抑制される。
また、本発明によれば、連通路が互いに並列の複数の並列通路部を有し、各並列通路部に圧力モータが設けられているため、ピストンの移動に伴い、第1又は第2流体室から連通路に押し出された作動流体は、複数の並列通路部に分散して流入し、複数の圧力モータを同時に作動させる。この場合、複数の圧力モータの諸元が互いに同一に設定され、かつ複数の回転マスの諸元が互いに同一に設定されているので、複数の圧力モータの動作、例えば回転数と、複数の回転マスによる回転慣性質量効果を、互いにほぼ同一にすることができる。
さらに、並列通路部及び圧力モータの設置数をNとすると、設置数=1である通常の場合と比較し、ピストン移動量が同一の条件において、各圧力モータへの作動流体の流入量は1/Nになり、圧力モータの回転数は1/Nになる。換言すれば、複数の圧力モータ全体として、押しのけ容量が実質的にN倍になり、各圧力モータの回転数が格段に抑制される。その結果、圧力モータとして市販のものを用いた場合においても、大きな押しのけ容積を確保しながら、圧力モータの実際の回転数を許容回転数以下に抑制することができる。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の回転慣性質量ダンパにおいて、複数の並列通路部の通路面積は互いに同一に設定されていることを特徴とする。
この構成によれば、複数の並設通路部の通路面積が互いに同一であることで、各圧力モータへの作動流体の流入量が同一になるので、複数の圧力モータの動作や複数の回転マスによる回転慣性質量効果の同一性が担保され、請求項1による作用をより確実かつ円滑に得ることができる。
本発明の実施形態によるマスダンパを示す断面図である。 マスダンパ及び支持部材で構成される付加振動系をモデル化して示す図である。 時刻歴応答解析に用いられるマスダンパの諸元を示す表である。 時刻歴応答解析に用いられる過大振幅の入力波の諸元を示す表である。 時刻歴応答解析によって得られた主要な結果を示す表である。
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。図1に示すように、実施形態による回転慣性質量ダンパ(以下「マスダンパ」という)1は、水平に延びるシリンダ2(内筒)と、シリンダ2の外側に設けられた外筒9と、シリンダ2内に摺動自在に設けられたピストン3と、ピストン3をバイパスし、シリンダ2内に連通する連通路4と、連通路4の並列通路部4c、4cに配置された、圧力モータとしての2つの歯車モータ5、5と、各歯車モータ5に連結された回転体6などを備える。
シリンダ2は、円筒状の周壁2aと、周壁2aの両端部に設けられた、薄い板状の第1端壁2b及び厚いブロック状の第2端壁2cを一体に有する。これらの3つの壁2a~2cによって、シリンダ2の内部空間が画成されている。
ピストン3は、シリンダ2内に軸線方向に摺動自在に設けられており、シリンダ2の内部空間を、第1端壁2b側の第1油室2eと第2端壁2c側の第2油室2fに区画している。第1及び第2油室2e、2fと連通路4には、作動油HFが充填されている。作動油HFは、適度な粘性を有する通常のものである。
ピストン3には、ピストンロッド10が同心状に一体に設けられている。ピストンロッド10は、ピストン3からシリンダ2の第1油室2e側にのみ延びており、第1端壁2b及び外筒9の第1端壁9bを液密に貫通し、外方に延びている。ピストンロッド10の外端部には、自在継手を介して第1取付具FL1が設けられている。
外筒9は、シリンダ2の全体を取り囲んでおり、円筒状の周壁9aと、その両端部に設けられた板状の第1及び第2端壁9b、9cを一体に有し、第1端壁9bはシリンダ2の第1端壁2bに接している。一方、シリンダ2及び外筒9の周壁2a、9aの間と第2端壁2c、9cの間には、空間が画成され、この空間がタンク室12になっている。タンク室12には、最上部に空気層Aを残した状態で、作動油HFが貯留されている。また、外筒9の第2端壁9cには、自在継手を介して第2取付具FL2が設けられている。
連通路4は、例えば、各2つの油室連通部4a、分岐通路部4b及び並列通路部4cを有する。油室連通部4a、4aは、下端部においてシリンダ2の第1及び第2油室2e、2fにそれぞれ連通しており、シリンダ2及び外筒9の周壁2a、9aを液密に貫通し、上方に延びている。分岐通路部4bは、各油室連通部4aの上端部から両側に分岐し、水平に延びている。並列通路部4c、4cは、分岐通路部4b、4bの各端部間に互いに並列に設けられ、水平に延びている。油室連通部4a、4aの通路面積、分岐通路部4b、4bの通路面積、及び並列通路部4c、4cの通路面積は、それぞれ互いに同一に設定されている。
歯車モータ5は、各並列通路部4cに設けられている。2つの歯車モータ5、5の諸元(例えば押しのけ容積や許容回転数)は、互いに同一に設定されている。歯車モータ5は、例えば内接式のものであり、2つの出入口(図示せず)を介して、連通路4(並列通路部4c)に連通するハウジング7と、ハウジング7に収容され、互いに噛み合う回転自在の入力ギヤ及び出力ギヤ(いずれも図示せず)と、出力ギヤに一体に設けられた出力軸8を有する。ハウジング7内には、作動油HFを排出するためのドレン通路(図示せず)が設けられている。出力軸8は、シール(図示せず)を介して、ハウジング7に液密に支持されている。なお、歯車モータ5として、内接式に代えて外接式のものを用いてもよい。
回転体6は、各歯車モータ5の出力軸8に一体に取り付けられている。回転体6は、比重が比較的大きな材料、例えば鋼材などで円板状に形成されており、出力軸8に同軸状に一体に設けられている。2つの回転体6、6の諸元(例えば材質や比重、径、厚さなど)は、互いに同一に設定されている。
一方、ピストン3には、軸線方向に貫通し、第1及び第2油室2e、2fに連通する4つの連通路が形成されている。これらの連通路にはそれぞれ、第1調圧弁21、第1リリーフ弁22、第2調圧弁23及び第2リリーフ弁24が設けられている。これらの弁21~24はいずれも、常閉弁として構成されており、連通路を開閉する弁体と、弁体を閉弁方向に付勢するばねを有する。
第1調圧弁21は、第1油室2e内の圧力が第1所定圧に達したときに開弁し、作動油HFを第2油室2f側に流出させることで、第1油室2e内の圧力を調整し、第1リリーフ弁22は、第1油室2e内の圧力が第1所定圧よりも高い第2所定圧(リリーフ荷重相当)に達したときに開弁し、作動油HFを第2油室2f側に逃がすことで、第1油室2e内の圧力を第2所定圧以下(リリーフ後の減衰係数を0に設定した場合)に制限する。
上記とは逆に、第2調圧弁23は、第2油室2f内の圧力が第1所定圧に達したときに開弁することで、第2油室2f内の圧力を調整し、第2リリーフ弁24は、第2油室2f内の圧力が第2所定圧(リリーフ荷重相当)に達したときに開弁することで、第2油室2f内の圧力を第2所定圧以下(リリーフ後の減衰係数を0に設定した場合)に制限する。
また、シリンダ2の第2端壁2cには、軸線方向に貫通し、第2油室2f及びタンク室12に連通する2つの連通路が形成されている。これらの連通路にはそれぞれ、上記の弁21~24と同様に構成された第3調圧弁25及び第3リリーフ弁26が設けられている。第3調圧弁25は、第2油室2f内の圧力が第1所定圧に達したときに開弁し、作動油HFをタンク室12側に流出させることで、第2油室2f内の圧力を調整する。第3リリーフ弁26は、第2油室2f内の圧力が第2所定圧に達したときに開弁し、作動油HFをタンク室12側に逃がすことで、第2油室2f内の圧力を第2所定圧以下(リリーフ後の減衰係数を0に設定した場合)に制限する。
さらに、シリンダ2の第2端壁2cには、軸線方向に貫通する2つの連通孔が形成されており、これらの連通孔は逆止弁27によって開閉される。逆止弁27は、連通孔を開閉する弁体27a、27aと、弁体27aを連通路側に付勢するばね27bで構成されており、それにより、タンク室12側から第2油室2f側への作動油HFの流れのみを許容する。
また、歯車モータ5のハウジング7のドレン通路には、ドレン配管31の一端部が接続されている。ドレン配管31は、外筒9の周壁9aを液密に貫通し、他端部はタンク室12に挿入されている。ドレン配管31には逆止弁32が設けられている。逆止弁32は、歯車モータ5からタンク室12側への作動油HFの流れのみを許容するように構成されている。
以上の構成のマスダンパ1は、図示しないが、例えば、剛性を調整するための支持部材とともに、構造物と地盤の間に、第1及び第2取付具FL1、FL2を介して取り付けられ、免震装置として用いられる。以下、マスダンパ1の動作について説明する。
まず、構造物が振動していないとき、マスダンパ1は、図1に示す初期状態にある。この初期状態から、地震時などに地盤が振動すると、地盤と構造物の間の相対変位に応じて、ピストン3がシリンダ2内を往復動する。
例えば、ピストン3が第1油室2e側に移動するとき(ピストンロッド10の伸長時)には、ピストン3で押圧されることにより、第1油室2e内の圧力が上昇し、第1所定圧に達することで、第1調圧弁21が開弁し、作動油HFが第2油室2f側に流出する。また、作動油HFは、第1油室2eから連通路4の一方の油室連通部4aに流入し、さらに分岐通路部4bを介して並列通路部4c、4cにそれぞれ流入し、各歯車モータ5のハウジング7内を流動した後、他方の分岐通路部4b及び油室連通部4aを経て、第2油室2fに戻る。この場合、ピストンロッド10の有無に応じた第1及び第2油室2e、2fの間の断面積の差異による、第2油室2fの不足分の作動油HFは、逆止弁27が開弁することによって、タンク室12から第2油室2fに補充される。
一方、上記とは逆に、ピストン3が第2油室2f側に移動するとき(ピストンロッド10の収縮時)には、ピストン3で押圧されることにより、第2油室2f内の圧力が上昇し、第1所定圧に達することで、第2調圧弁23が開弁し、作動油HFが第1油室2e側に流出する。また、作動油HFは、第2油室2fから連通路4の一方の油室連通部4aに流入し、さらに分岐通路部4bを介して並列通路部4c、4cにそれぞれ流入し、各歯車モータ5のハウジング7内を流動した後、他方の分岐通路部4b及び油室連通部4aを経て、第1油室2eに戻る。この場合、第1及び第2油室2e、2fの間の断面積の差異による、第2油室2fの余剰分の作動油HFは、第3調圧弁25が開弁することによって、第2油室2fからタンク室12に排出される。
そして、上記のように各歯車モータ5のハウジング7内を流動する作動油HFの圧力が、歯車モータ5の回転運動に変換され、出力軸8と一体の回転体6が回転駆動されることによって、回転慣性質量効果(慣性力)が発揮される。また、作動油HFが連通路4などを流動する際の粘性抵抗による粘性減衰効果(粘性力)が発揮されることで、回転慣性質量効果と併せて構造物の振動抑制効果が発揮される。
また、本実施形態のマスダンパ1によれば、連通路4の並列通路部4c、4cに歯車モータ5がそれぞれ設けられるとともに、並列通路部4c、4cの通路面積、歯車モータ5、5の諸元、及び回転体6、6の諸元は、それぞれ互いに同一に設定されている。この構成により、連通路4及び歯車モータ5が1つのみ設置される通常の場合と比較し、歯車モータ5、5全体として、押しのけ容量が実質的に2倍になり、各圧力モータ5の回転数は1/2になる。その結果、歯車モータ5として市販のものを用いた場合においても、大きな押しのけ容積を確保しながら、歯車モータ5の実際の回転数を許容回転数以下に抑制することができる。
また、例えば長周期地震動入力による構造物の応答などに伴い、マスダンパ1が長時間、作動することにより、歯車モータ5のハウジング7内の作動油HFの圧力が上昇すると、逆止弁32が開弁する。これにより、作動油HFが、ドレン配管31及び逆止弁32を介して、大気状態にあるタンク室12に逃がされることによって、ハウジング7内の高圧化が防止される。
次に、前述したマスダンパ1による効果・特性を確認するために行った応答解析について、説明する。応答解析の対象は、マスダンパ1及びこれに接続された支持部材(ばね要素)で構成される付加振動系であり、その解析モデルは、図2のように表される。すなわち、マスダンパ1は、互いに並列関係にある(a)回転体6及び作動油HFから成る、等価質量mdの慣性質量要素、及び(b)連通路4を流れる作動油HFから成る、減衰係数cdの粘性要素に、(c)調圧弁やリリーフ弁を流れる作動油HFから成る、リリーフ前後の減衰係数c1、c2の粘性要素が接続されたモデルであり、さらに、(c)の粘性要素に(d)作動油HFの圧縮剛性を含む支持部材から成る、剛性kbのばね要素が直列に接続されたものが、付加振動系の解析モデルになる。
図2のモデルにおいて、Fdは、マスダンパ1に作用するダンパ外力、xは、付加振動系全体の変位、Frは、第1、第2及び第3リリーフ弁22、24、26のリリーフ荷重である。xbは作動油HFを含む支持部材の変位である。xiHGDは、付加振動系全体の変位x(ダンパ外力Fd)が入力(作用)したときのピストン移動量であり、ピストン3の移動に伴う押し出し流量をV、ピストン断面積をApとすると、次式(1)で表される。
xiHGD = V/Ap ・・・(1)
また、xrは、調圧弁やリリーフ弁を通って流れる作動油HFの流量Vrをピストン断面積Apで除した見かけの移動量であり、次式(2)で表される。xdは、連通路4を通って歯車モータ5側に流れる作動油HFの流量Vdをピストン断面積Apで除した見かけの移動量であり、次式(3)で表される。
xr = Vr/Ap ・・・(2)
xd = Vd/Ap ・・・(3)
そして、V、VrとVdの間に次式(4)の関係が成立するとともに、この式(4)と式(1)~(3)から、次式(5)の関係が成立する。
V = Vr+Vd ・・・(4)
xiHGD = xr+xd ・・・(5)
また、ピストン3に設置した調圧弁やリリーフ弁に作用する圧力と歯車モータ5に作用する圧力は、等しい。 ・・・(6)
これらの(5)及び(6)の関係などから、次式(7)~(9)が成立する。
x = xb+xiHGD = xb+xr+xd ・・・(7)
リリーフ前の条件:|Fd|≦Fr,|dxr/dt|≦Fr/c1のとき
Fd = kb・xb = c1・dxr/dt
= md・dxd/dt+cd・dxd/dt ・・・(8)
リリーフ後の条件:|Fd|>Fr,|dxr/dt|>Fr/c1のとき
Fd = kb・xb
= sgn(dxr/dt)・Fr
+c2・(dxr/dt-sgn(dxr/dt)・Fr/c1)
= md・dxd/dt+cd・dxd/dt ・・・(9)
ここで、c1:リリーフ前の減衰係数
c2:リリーフ後の減衰係数
dxr/dt:xrの速度
dxd/dt:xdの速度
xd/dt:xdの加速度
sgn(dxr/dt):dxr/dtの値に応じた符号関数
md:マスダンパ1の等価質量
cd:マスダンパ1の減衰係数
kb:支持部材剛性(作動油HFの圧縮剛性などの影響を含む)
これらのパラメータのうち、後述する検討例では、リリーフ荷重Fr=800kN、リリーフ前の減衰係数c1=2500kNs/m、リリーフ後の減衰係数c2=169.5kNs/m、マスダンパ1の減衰係数cd=500kNs/m、支持部材剛性kb=75000kN/mとして検討を行うものとする。
また、図示しないが、歯車モータ5の設置数は4であり、シリンダ2に連通する連通路4に4つの並列通路部4cが設けられ、各並列通路部4cに1つの歯車モータ5が設置されるものとした。これらの4つの歯車モータ5の諸元(例えば押しのけ容積や、許容回転数、耐力)、回転体6の諸元(例えば比重や外径、厚み)、及び並列通路部4cの諸元(例えば通路面積や長さ)は、互いに同一であり、例えば市販のものに準じて、図3に示すように設定した。
図3には、歯車モータ5の4基分の諸元が示されている。例えば、歯車モータ5(圧力モータ)の1基分の押しのけ容積は32000mm/revであり、図3には、4基分の押しのけ容積として換算された、Vm=32000×4=128000mm/revが示されている。同様に、1つの回転体6の厚みは10mmであり、図3には、回転体の4個分の厚みとして換算された、t=10×4=40mmが示され、マスダンパ1の等価質量mdは2175.342tonになっている。一方、例えば歯車モータ5(圧力モータ)の許容回転数nmaxは、1基でも4基でも変わらないため、nmax=6300rpmが示されている。
この解析モデルを対象として、前記式(7)のxに、制御対象固有振動数の過大な定常入力(x =xmax・sinωt)を加えて、時刻歴応答解析を行った。図4は、この定常入力波の一例を示しており、制御対象固有振動数f=0.25Hz、過大な入力振幅xmax =1.0mとした。図5は主要な解析結果を示す。
まず、最大ダンパ外力Fd_max については、Fd_max =1002.666kNが得られており、リリーフ荷重Fd(=800kN)を上回っていることから、第1、第2及び第3リリーフ弁22、24、26が作動するものと推定される。また、最大ダンパ外力Fd_max が、シリンダ2から算出される耐力Fdmax_c(=1201.659kN)、及び歯車モータ5から算出される耐力Fdmax_m(=1068.142kN)をいずれも下回ることが、確認された。
また、歯車モータ5に流れる流量から算出した見かけの最大ピストン速度Vd_max として、Vd_max =397.7915mm/sが得られた。さらに、最大モータ回転数n_max(=4979.269rpm)は、モータ許容回転数nmax(=6300rpm)を下回っており、過大な入力振幅xmax =1.0mの場合でも、歯車モータ5(圧力モータ)の実際の回転数が抑制され、許容範囲内に収まることが確認された。なお、市販のある圧力モータでは、押しのけ容積Vm=32000mm/revの許容回転数は6300rpmであるのに対して、その4倍の押しのけ容積Vm=128000mm/revの許容回転数は4000rpmになっている。したがって、後者の押しのけ容積Vm=128000mm/rev、許容回転数4000rpmを有する市販の圧力モータを単独で用いた場合には、上記の過大な入力振幅に対する最大モータ回転数n_max(=4979.269rpm)に対応できないことになり、本発明の有効性が確認できた。
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、連通路4の並列通路部4c及び歯車モータ5の設置数を2又は4としているが、これに限らず、要求される回転慣性質量効果の大きさや歯車モータ5の回転数の抑制度合などに応じて、2又は4以外の複数の設置数に増減することが可能である。
また、マスダンパ1の圧力モータとして、歯車モータを用いているが、作動流体の流動を回転運動に変換するものである限り、他の形式の圧力モータを用いてもよく、例えばピストンモータやベーンモータ、ねじモータを用いてもよい。また、実施形態では、ダンパの作動流体として、通常の作動油HFを用いると説明したが、他の適当な作動流体を用いてもよいことはもちろんである。
さらに、実施形態のマスダンパ1では、ピストン3の連通路に、第1、第2及び第3リリーフ弁22、24、26に加えて、第1、第2及び第3調圧弁21、23、25が設けられているが、これらの調圧弁21、23を省略し、図2の解析モデルにおけるリリーフ前の減衰係数c1を、十分に大きな値に設定してもよい。
また、実施形態のマスダンパ1は、ピストンロッドがピストンの一方の側にのみ延びるとともに、シリンダ(内筒)の外側に外筒が設けられた、主として免震装置用のものである。これに限らず、マスダンパとして、例えば、ピストンロッドがピストンの両側に延びるものや、外筒を有しないものなど、適当な他のタイプのものを用いてもよいことはもちろんである。
また、時刻歴応答解析のために設定されたマスダンパ1の諸元(ピストンロッド、シリンダ、圧力モータ、調圧弁やリリーフ弁などの仕様)や支持部材剛性の諸元、入力sin波の諸元、応答解析の結果を表す数値(図3~図5)は、あくまでも例示である。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
1 マスダンパ(回転慣性質量ダンパ)
2 シリンダ
2e 第1油室(第1流体室)
2f 第2油室(第2流体室)
3 ピストン
4 連通路
4c 並設通路部
5 歯車モータ(圧力モータ)
6 回転マス(回転体)
HF 作動油(作動流体)

Claims (2)

  1. 構造物を含む系内の相対変位する第1部位と第2部位の間に設けられ、前記構造物の振動を抑制する回転慣性質量ダンパであって、
    作動流体が充填され、前記第1部位に連結されるシリンダと、
    当該シリンダ内に摺動自在に設けられ、当該シリンダ内を第1流体室と第2流体室に区画するとともに、前記第2部位に連結されるピストンと、
    作動流体が充填され、前記ピストンをバイパスし、前記第1及び第2流体室に連通するとともに、互いに並列の複数の並列通路部を有する連通路と、
    前記複数の並列通路部にそれぞれ設けられ、当該並列通路部内の作動流体の流動を回転運動に変換する複数の圧力モータと、
    当該複数の圧力モータにそれぞれ連結され、当該圧力モータで駆動されることによって、回転慣性質量効果を発揮する複数の回転マスと、をさらに備え、
    前記複数の圧力モータの諸元は互いに同一に設定され、前記複数の回転マスの諸元は互いに同一に設定されていることを特徴とする回転慣性質量ダンパ。
  2. 前記複数の並列通路部の通路面積は互いに同一に設定されていることを特徴とする、請求項1に記載の回転慣性質量ダンパ。
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