JP2023102179A - 脂質の製造方法 - Google Patents

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Takumi ISHIZUKA
慎二 杉原
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Abstract

【課題】炭素原子数が22の長鎖多価不飽和脂肪酸を生産させる脂質の製造方法、炭素原子数が22の長鎖多価不飽和脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質の生産性を向上させた脂質の生産性の向上方法、炭素原子数が22の長鎖多価不飽和脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質の生産性を向上させ生産される全脂肪酸又は全脂質中の脂肪酸の組成を改変する脂肪酸組成の改変方法、並びに炭素原子数が22の長鎖多価不飽和脂肪酸の生産性を向上させた形質転換体を提供する。【解決手段】Δ5-エロンガーゼ及びΔ4-デサチュラーゼの発現を促進させたナンノクロロプシス(Nannochloropsis)属に属する藻類を培養し、炭素原子数22の長鎖多価不飽和脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質を生産させる、脂質の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、脂質の製造方法に関する。
脂肪酸は脂質の主要構成成分の1つであり、生体内においてグリセリンとのエステル結合により生成するトリアシルグリセロール等の脂質を構成する。また、多くの動植物において脂肪酸はエネルギー源として貯蔵され利用される物質でもある。動植物内に蓄えられた脂肪酸や脂質は、食用又は工業用として広く利用されている。
例えば、炭素原子数が18以上の長鎖脂肪酸は炭素原子数や不飽和度によって化学的性質が異なり、様々な用途に用いられている。例えば、エイコサペンタエン酸(C20:5Δ5,8,11,14,17;eicosapentaenoic acid、以下「EPA」ともいう)やドコサペンタエン酸(C22:5Δ7,10,13,16,19;docosapentaenoic acid、以下「DPA」ともいう。なお、本明細書において「DPA」とは、n-3脂肪酸である。また、本明細書において、「n-3脂肪酸」とは「ω3脂肪酸」脂肪酸を意味し、「n-6脂肪酸」とは「ω6脂肪酸」脂肪酸を意味する。)、ドコサヘキサエン酸(C22:6Δ4,7,10,13,16,19;docosahexaenoic acid、以下、「DHA」ともいう)といった長鎖多価不飽和脂肪酸(polyunsaturated fatty acid、以下、「PUFA」ともいう)の多くは、動物の生体内では合成できない必須脂肪酸であることが知られている。よってPUFAは栄養学的用途に特に有用であり、機能性食品などに用いられている。
一般に植物の脂肪酸合成経路は葉緑体に局在する。葉緑体ではアセチル-アシルキャリアプロテイン(acyl carrier protein、以下「ACP」ともいう)を出発物質とし、炭素鎖の伸長反応が繰り返され、最終的に炭素原子数が18程度のアシル-ACP(脂肪酸残基であるアシル基とACPとからなる複合体)が合成される。合成されたアシル-ACPは、アシル-ACPチオエステラーゼによって遊離脂肪酸となり、小胞体に運ばれる。そして小胞体上で、遊離脂肪酸、アシル-CoA、又は脂肪酸とグリセロールとのエステル化合物を基質とし、多数のデサチュラーゼ(Desaturase)やエロンガーゼ(Elongase)が作用する多段階反応によって、PUFAが合成される。
前述のように、脂肪酸や脂質の利用は多岐にわたる。そのため、植物や細菌等の宿主において生体内での脂肪酸や脂質の生産性を向上させる試みが行われている。さらに、脂肪酸の用途や有用性はその炭素原子数(鎖長)や不飽和結合数(不飽和度)に依存するため、脂肪酸の炭素原子数や不飽和結合数を制御する試みも行われている。例えば、植物であるセイヨウアブラナのT-DNA挿入変異株(NS-B50027-4株)は、全脂肪酸のうち、PUFAであるDHAを約10%質量%と高含有することが報告されている(非特許文献1)。
また一般的にPUFAの生産性向上には、エロンガーゼの強化が有効であると考えられており、エロンガーゼをコードする遺伝子を導入した形質転換体を用いて様々なPUFAを製造する方法が提案されている。例えば、オストレオコッカス・タウリ(Ostreococcus tauri)由来のΔ5-エロンガーゼをコードする遺伝子を油糧酵母に導入して作製した形質転換体や、ピラミモナス・コルダタ(Pyramimonas cordata)由来のΔ5-エロンガーゼをコードする遺伝子を植物細胞に導入して作製した形質転換体を用いて、EPA、DPA、DHAなどのPUFAを製造することが知られている(特許文献1及び2参照)。また、トラウストキトリウム・エスピー(Thraustochytrium sp.)由来のΔ5-エロンガーゼをコードする遺伝子も知られている(特許文献3参照)。
また、次世代の油脂生産源として注目を集めている微細藻類の一種であるナンノクロロプシス(Nannochloropsis)属に属する藻類は、基本的に炭素原子数が20のEPAまでしか製造することができないが、ナンノクロロプシス属に属する藻類にサルシノクリシス・マリナ(Sarcinochrysis marina)由来のΔ5-エロンガーゼを導入することで、DPAなどのPUFAを合成できることが報告されている(特許文献4参照)。また、ナンノクロロプシス属に属する藻類の培養においてPUFAの生産性を向上させるために、油脂蓄積期の培養温度を低温にする試みがされている(非特許文献2)。
このように、藻類の脂質合成や蓄積のメカニズム、並びに藻類の脂質生産能力や脂質蓄積能力を応用した脂質生産技術について研究が始まっており、藻類において所望の炭素原子数を有するPUFAに富む脂質を効率的に産生させる方法に対しては、当技術分野における需要がある。
国際公開第2010/057246号 国際公開第2006/052870号 国際公開第2010/101220号 特開2019-216643号公報
James R. Petrie, et al., Front. Plant Sci., 2020, Vol. 11, Article 727 Sirisuk, et al., Bioresource Technology, 2018, Vol. 270, pp. 504-511
本発明は、ナンノクロロプシス属に属する藻類において、炭素原子数が22のPUFAを生産させる、脂質の製造方法を提供することを課題とする。
また本発明は、ナンノクロロプシス属に属する藻類において、炭素原子数が22のPUFA又はこれを構成成分とする脂質の生産性を向上させた、脂質の生産性の向上方法を提供することを課題とする。
また本発明は、ナンノクロロプシス属に属する藻類において炭素原子数が22のPUFA又はこれを構成成分とする脂質の生産性を向上させ、生産される全脂肪酸又は全脂質中の脂肪酸の組成を改変する、脂肪酸組成の改変方法を提供することを課題とする。
さらに本発明は、炭素原子数が22のPUFAの生産性を向上させたナンノクロロプシス属に属する藻類の形質転換体を提供することを課題とする。
本発明者は上記課題に鑑み、鋭意検討を行った。
植物におけるPUFAの合成経路を、図1に示す。上記の通り、ナンノクロロプシス属に属する藻類は図1に記載の長鎖脂肪酸のうち、EPAなどのPUFAの生産性に優れる。しかし、ナンノクロロプシス属に属する藻類は、基本的には炭素原子数が20までの脂肪酸の産生能しか有しておらず、DPAやDHAなどの炭素原子数が20を超える長鎖の脂肪酸は産生することができないか、できたとしても極微量しか産生できない。
そこで本発明者らは、ナンノクロロプシス属などの不等毛植物に属する藻類において、通常の条件下でも炭素原子数が22のPUFA及びこれを構成成分とする脂質の製造を可能とするタンパク質(酵素)の探索を行った。その結果、特定の生物種由来のΔ5-エロンガーゼ(以下、「Δ5-ELO」ともいう。)をコードする遺伝子、及び特定の生物種由来のΔ4-デサチュラーゼ(以下、「Δ4-DES」ともいう。)をコードする遺伝子をナンノクロロプシス属に属する藻類に導入することで、得られる形質転換体において炭素原子数が22のDHAを製造できることを初めて見出した。
本発明はこれらの知見に基づき完成されるに至ったものである。
本発明は、Δ5-ELO及びΔ4-DESの発現を促進させたナンノクロロプシス属に属する藻類を培養し、脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質を生産させる、脂質の製造方法に関する。
また本発明は、Δ5-ELO及びΔ4-DESの発現を促進させることにより、ナンノクロロプシス属に属する藻類の細胞内で生産される炭素原子数22のPUFA又はこれを構成成分とする脂質の生産性を向上させる、脂質の生産性の向上方法に関する。
さらに本発明は、Δ5-ELO及びΔ4-DESの発現が促進されている、ナンノクロロプシス属に属する藻類の形質転換体に関する。
本発明の脂質の製造方法によれば、ナンノクロロプシス属に属する藻類において、炭素原子数が22のPUFA又はこれを構成成分とする脂質の生産性を向上させることができる。
また本発明のナンノクロロプシス属に属する藻類の形質転換体は、炭素原子数が22のPUFA又はこれを構成成分とする脂質の生産性に優れる。
植物でのPUFAの一般的な合成経路を示す図である。
本明細書における「脂質」は、中性脂質(トリアシルグリセロール等)、ろう、セラミド等の単純脂質;リン脂質、糖脂質、スルホ脂質等の複合脂質;及びこれらの脂質から誘導される、脂肪酸(遊離脂肪酸)、アルコール類、炭化水素類等の誘導脂質を包含するものである。
一般に誘導脂質に分類される脂肪酸は、脂肪酸そのものを指し、「遊離脂肪酸」を意味する。本発明では単純脂質及び複合脂質分子中の脂肪酸部分を「脂肪酸残基」と表記する。そして、特に断りのない限り、「脂肪酸」は「遊離脂肪酸」と、塩又はエステル化合物等に含まれる「脂肪酸残基」の総称として用いる。
また本明細書において、「脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質」は、「遊離脂肪酸」と「当該脂肪酸残基を有する脂質」を総称して用いる。更に本明細書において、「脂肪酸組成」とは、前記遊離脂肪酸と脂肪酸残基とを合計した全脂肪酸(総脂肪酸)の分子数に対する各脂肪酸の分子数の割合を意味する。脂肪酸の重量(生産量)や脂肪酸組成は、実施例で用いた方法により測定できる。
さらに本明細書において、脂肪酸や、脂肪酸を構成するアシル基の表記において「Cx:y」とあるのは、炭素原子数がxであり、二重結合の数がyであることを表す。「Cx」は炭素原子数xの脂肪酸やアシル基を表す。
本明細書において、塩基配列及びアミノ酸配列の同一性は、Lipman-Pearson法(Science,1985,vol.227,p.1435-1441)によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx-Winのホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、Unit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出される。
また本明細書において「ストリンジェントな条件」としては、例えばMolecular Cloning-A LABORATORY MANUAL THIRD EDITION[Joseph Sambrook,David W.Russell.,Cold Spring Harbor Laboratory Press]記載の方法が挙げられる。例えば、6×SSC(1×SSCの組成:0.15M塩化ナトリウム、0.015Mクエン酸ナトリウム、pH7.0)、0.5%SDS、5×デンハート及び100mg/mLニシン精子DNAを含む溶液にプローブとともに65℃で8~16時間恒温し、ハイブリダイズさせる条件が挙げられる。
さらに明細書において、遺伝子の「上流」とは、翻訳開始点からの位置ではなく、対象として捉えている遺伝子又は領域の5'側に続く領域を示す。一方、遺伝子の「下流」とは、対象として捉えている遺伝子又は領域の3'側に続く領域を示す。
本明細書においてΔ5-ELOとは、炭素原子数が22を超えるPUFAの合成に関与するタンパク質の1種であり、炭素原子数が20のアラキドン酸(C20:4Δ5,8,11,14)やEPAなどの脂肪酸から、炭素原子数が22のドコサテトラエン酸(C22:4Δ7,10,13,16)やDPAといった脂肪酸への伸長反応を触媒する脂肪酸伸長酵素である。そして、本明細書において「Δ5エロンガーゼ活性(以下、「Δ5-ELO活性」ともいう)」とは、炭素原子数20の脂肪酸から、炭素原子数22の脂肪酸への伸長サイクル(縮合、還元、脱水、還元)」のうち縮合反応を触媒する活性を意味する。この伸長サイクルが1周することにより炭素原子数20の脂肪酸に2個の炭素原子が導入された炭素原子数22の脂肪酸が生産される。
本発明のタンパク質がΔ5-ELO活性を有することは、例えば、酵母やナンノクロロプシス属に属する藻類等の宿主細胞内で機能するプロモーターの下流にΔ5-ELO遺伝子を連結したDNAを宿主細胞に導入し、導入したΔ5-ELO遺伝子が発現する条件で培養して、宿主細胞又は培養液中の脂肪酸組成の変化をガスクロマトグラフィー解析等の方法を用いて分析することにより、確認することができる。
また、酵母やナンノクロロプシス属に属する藻類等の宿主細胞内で機能するプロモーターの下流にΔ5-ELO遺伝子を連結したDNAを宿主細胞へ導入し、導入したΔ5-ELO遺伝子が発現する条件で細胞を培養した後、細胞の破砕液に対し、Yuanらの方法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1995, vol. 92(23), p. 10639-10643)によって調製したアシル-CoA、有利脂肪酸、または脂肪酸のグリセロールエステル化合物を基質とした反応を行うことにより、Δ5-ELO活性を測定することができる。
本発明で利用するΔ5-ELOは、Δ5-ELO活性を示すタンパク質(酵素)であれば特に制限はない。本発明における好ましいΔ5-ELOとしては、下記タンパク質(A)~(J)が挙げられる。

(A)配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(B)前記タンパク質(A)のアミノ酸配列と同一性が60%以上のアミノ酸配列からなり、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質。
(C)配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(D)前記タンパク質(C)のアミノ酸配列と同一性が60%以上のアミノ酸配列からなり、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質。
(E)配列番号12で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(F)前記タンパク質(E)のアミノ酸配列と同一性が60%以上のアミノ酸配列からなり、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質。
(G)配列番号15で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(H)前記タンパク質(G)のアミノ酸配列と同一性が60%以上のアミノ酸配列からなり、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質。
(I)配列番号18で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(J)前記タンパク質(I)のアミノ酸配列と同一性が60%以上のアミノ酸配列からなり、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質。
配列番号6のアミノ酸配列からなる前記タンパク質(A)は、ピラミモナス(Pyramimonas)属に属する藻類であり、国立環境研究所(NIES)に保存されているピラミモナス・コルダタ由来のΔ5-ELOである。本発明の配列番号6のアミノ酸配列からなるタンパク質(前記タンパク質(A))がΔ5-ELO活性を示すことは、後述の実施例で説明する。
配列番号9のアミノ酸配列からなる前記タンパク質(C)は、オストレオコッカス(Ostreococcus)属に属する藻類であるオストレオコッカス・タウリNIES-2673株由来のΔ5-ELOである。本発明の配列番号9のアミノ酸配列からなるタンパク質(前記タンパク質(C))がΔ5-ELO活性を示すことは、後述の実施例で説明する。
なお、オストレオコッカス・タウリNIES-2673株は、国立環境研究所(NIES)から入手することができる。
配列番号12のアミノ酸配列からなる前記タンパク質(E)は、タラシオシーラ(Thalassiosira)属に属する藻類であり、ドイツゲッチンゲン大学藻類カルチャーコレクションに保存されているタラシオシーラ・シュードナナ(Thalassiosira pseudonana)SAG 1020-1b株由来のΔ5-ELOである。本発明の配列番号12のアミノ酸配列からなるタンパク質(前記タンパク質(E))がΔ5-ELO活性を示すことは、後述の実施例で説明する。
配列番号15のアミノ酸配列からなる前記タンパク質(G)は、フィスコミトレラ(Physcomitrella)属(ニセツリガネゴケ属)に属する植物であるフィスコミトレラ・パテンス(Physcomitrella patens)由来のΔ5-ELOである。本発明の配列番号15のアミノ酸配列からなるタンパク質(前記タンパク質(G))がΔ5-ELO活性を示すことは、後述の実施例で説明する。
配列番号18のアミノ酸配列からなる前記タンパク質(I)は、マーチャンティア(Marchantia)属に属する植物であるマーチャンティア・ポリモーファ(Marchantia polymorpha)由来のΔ5-ELOである。本発明の配列番号18のアミノ酸配列からなるタンパク質(前記タンパク質(I))がΔ5-ELO活性を示すことは、後述の実施例で説明する。
一般に、酵素タンパク質をコードしているアミノ酸配列は、必ずしも全領域の配列が保存されていなければ酵素活性を示さないというものではなく、アミノ酸配列が変化しても酵素活性に影響を与えない領域も存在することが知られている。このような酵素活性に必須でない領域においては、アミノ酸の欠失、置換、挿入又は付加といった変異が導入されても酵素本来の活性を維持することができる。本発明においても、このように目的の酵素活性が保持され、かつ酵素タンパク質のアミノ酸配列が一部変異したタンパク質を用いることができる。
アミノ酸配列に変異を導入する方法としては、例えば、アミノ酸配列をコードする塩基配列に変異を導入する方法が挙げられる。変異を導入する方法としては、部位特異的な変異導入法が挙げられる。具体的な部位特異的変異の導入方法としては、Splicing overlap extension(SOE)PCR(Horton et al.,Gene 77,61-68,1989)を利用した方法、ODA法(Hashimoto-Gotoh et al.,Gene,152,271-276,1995)、Kunkel法(Kunkel,T. A.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA,1985,82,488)等が挙げられる。また、Site-Directed Mutagenesis System Mutan-SuperExpress Kmキット(タカラバイオ社)、Transformer TM Site-Directed Mutagenesisキット(Clontech社)、KOD-Plus-Mutagenesis Kit(東洋紡社)等の市販のキットを利用することもできる。また、ランダムな遺伝子変異を与えた後、適当な方法により酵素活性の評価及び遺伝子解析を行うことにより目的遺伝子を取得することもできる。
前記タンパク質(B)において、Δ5-ELO活性の点から、前記タンパク質(A)のアミノ酸配列との同一性は60%以上であり、65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、97%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。
また、前記タンパク質(B)として、前記タンパク質(A)のアミノ酸配列に、1又は複数個(例えば1個以上106個以下、好ましくは1個以上93個以下、より好ましくは1個以上80個以下、より好ましくは1個以上66個以下、より好ましくは1個以上53個以下、より好ましくは1個以上40個以下、より好ましくは1個以上26個以下、より好ましくは1個以上18個以下、より好ましくは1個以上13個以下、より好ましくは1個以上8個以下、より好ましくは1個以上5個以下、さらに好ましくは1個以上2個以下)のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されており、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質が挙げられる。
前記タンパク質(D)において、Δ5-ELO活性の点から、前記タンパク質(C)のアミノ酸配列との同一性は60%以上であり、65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、97%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。
また、前記タンパク質(D)として、前記タンパク質(C)のアミノ酸配列に、1又は複数個(例えば1個以上120個以下、好ましくは1個以上105個以下、より好ましくは1個以上90個以下、より好ましくは1個以上75個以下、より好ましくは1個以上60個以下、より好ましくは1個以上45個以下、より好ましくは1個以上30個以下、より好ましくは1個以上21個以下、より好ましくは1個以上15個以下、より好ましくは1個以上9個以下、より好ましくは1個以上6個以下、さらに好ましくは1個以上3個以下)のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されており、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質が挙げられる。
前記タンパク質(F)において、Δ5-ELO活性の点から、前記タンパク質(E)のアミノ酸配列との同一性は60%以上であり、65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、97%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。
また、前記タンパク質(F)として、前記タンパク質(E)のアミノ酸配列に、1又は複数個(例えば1個以上143個以下、好ましくは1個以上125個以下、より好ましくは1個以上107個以下、より好ましくは1個以上89個以下、より好ましくは1個以上71個以下、より好ましくは1個以上53個以下、より好ましくは1個以上35個以下、より好ましくは1個以上25個以下、より好ましくは1個以上17個以下、より好ましくは1個以上10個以下、より好ましくは1個以上7個以下、さらに好ましくは1個以上3個以下)のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されており、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質が挙げられる。
前記タンパク質(H)において、Δ5-ELO活性の点から、前記タンパク質(G)のアミノ酸配列との同一性は60%以上であり、65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、97%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。
また、前記タンパク質(H)として、前記タンパク質(G)のアミノ酸配列に、1又は複数個(例えば1個以上134個以下、好ましくは1個以上117個以下、より好ましくは1個以上100個以下、より好ましくは1個以上83個以下、より好ましくは1個以上67個以下、より好ましくは1個以上50個以下、より好ましくは1個以上33個以下、より好ましくは1個以上23個以下、より好ましくは1個以上16個以下、より好ましくは1個以上10個以下、より好ましくは1個以上6個以下、さらに好ましくは1個以上3個以下)のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されており、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質が挙げられる。
前記タンパク質(J)において、Δ5-ELO活性の点から、前記タンパク質(I)のアミノ酸配列との同一性は60%以上であり、65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、97%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。
また、前記タンパク質(J)として、前記タンパク質(I)のアミノ酸配列に、1又は複数個(例えば1個以上139個以下、好ましくは1個以上121個以下、より好ましくは1個以上104個以下、より好ましくは1個以上87個以下、より好ましくは1個以上69個以下、より好ましくは1個以上52個以下、より好ましくは1個以上34個以下、より好ましくは1個以上24個以下、より好ましくは1個以上17個以下、より好ましくは1個以上10個以下、より好ましくは1個以上6個以下、さらに好ましくは1個以上3個以下)のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されており、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質が挙げられる。
また、本発明で使用するΔ5-ELOは、前記タンパク質(A)~(J)のアミノ酸配列に、タンパク質の輸送に関与するシグナルペプチド、又はタンパク質の安定性を高める既知のアミノ酸配列等が付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であってもよい。
前記タンパク質(A)~(J)は、通常の化学的手法、遺伝子工学的手法等により得ることができる。例えば、ピラミモナス・コルダタ、オストレオコッカス・タウリ、タラシオシーラ・シュードナナ、フィスコミトレラ・パテンス、マーチャンティア・ポリモーファ等、ゲノム上にΔ5-ELOをコードする遺伝子(以下、「Δ5-ELO遺伝子」ともいう。)を有する藻類や植物から単離、精製等することで天然物由来のタンパク質を取得することができる。また、配列番号6、9、12、15及び18で表されるアミノ酸配列情報をもとに人工的に化学合成することで、前記タンパク質(A)~(J)を得ることができる。あるいは、遺伝子組み換え技術により、組換えタンパク質として前記タンパク質(A)~(J)を作製してもよい。
また本発明で用いるΔ5-ELOは、1種でもよいし、2種以上のΔ5-ELOを組合せて用いてもよい。本発明において、Δ5-ELOとして、前記タンパク質(A)~(F)からなる群より選ばれる少なくとも1種のタンパク質を用いることが好ましく、前記タンパク質(A)、(B)、(E)、及び(F)からなる群より選ばれる少なくとも1種のタンパク質を用いることがより好ましい。
本発明において、Δ5-ELO遺伝子を用いて、後述の方法に従いΔ5-ELOの発現を促進することが好ましい。
本発明で用いることができるΔ5-ELO遺伝子(好ましくは、前記タンパク質(A)~(J)をコードする遺伝子)の具体例として、下記DNA(a)~(j)からなる遺伝子が挙げられる。

(a)配列番号4で表される塩基配列からなるDNA。
(b)前記DNA(a)の塩基配列と同一性が60%以上の塩基配列からなり、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(c)配列番号7で表される塩基配列からなるDNA。
(d)前記DNA(c)の塩基配列と同一性が60%以上の塩基配列からなり、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(e)配列番号10で表される塩基配列からなるDNA。
(f)前記DNA(e)の塩基配列と同一性が60%以上の塩基配列からなり、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(g)配列番号13で表される塩基配列からなるDNA。
(h)前記DNA(g)の塩基配列と同一性が60%以上の塩基配列からなり、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(i)配列番号16で表される塩基配列からなるDNA。
(j)前記DNA(i)の塩基配列と同一性が60%以上の塩基配列からなり、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質をコードするDNA。
配列番号4で表される塩基配列からなる前記DNA(a)は、配列番号6のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子であり、ピラミモナス・コルダタ由来のΔ5-ELO遺伝子である。
前記DNA(b)において、Δ5-ELO活性の点から、前記DNA(a)の塩基配列との同一性は60%以上であり、65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、97%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。
また前記DNA(b)として、配列番号4で表される塩基配列において、1又は複数個(例えば1個以上321個以下、好ましくは1個以上281個以下、より好ましくは1個以上241個以下、より好ましくは1個以上201個以下、より好ましくは1個以上160個以下、より好ましくは1個以上120個以下、より好ましくは1個以上80個以下、より好ましくは1個以上56個以下、より好ましくは1個以上40個以下、より好ましくは1個以上24個以下、より好ましくは1個以上16個以下、さらに好ましくは1個以上8個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質をコードする遺伝子も好ましい。
さらに前記DNA(b)として、前記DNA(a)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質をコードする遺伝子も好ましい。
配列番号7で表される塩基配列からなる前記DNA(c)は、配列番号9のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子であり、オストレオコッカス・タウリNIES-2673株由来のΔ5-ELO遺伝子である。
前記DNA(d)において、Δ5-ELO活性の点から、前記DNA(c)の塩基配列との同一性は60%以上であり、65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、97%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。
また前記DNA(d)として、配列番号7で表される塩基配列において、1又は複数個(例えば1個以上361個以下、好ましくは1個以上316個以下、より好ましくは1個以上270個以下、より好ましくは1個以上225個以下、より好ましくは1個以上180個以下、より好ましくは1個以上135個以下、より好ましくは1個以上90個以下、より好ましくは1個以上63個以下、より好ましくは1個以上45個以下、より好ましくは1個以上27個以下、より好ましくは1個以上18個以下、さらに好ましくは1個以上9個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質をコードする遺伝子も好ましい。
さらに前記DNA(d)として、前記DNA(c)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質をコードする遺伝子も好ましい。
配列番号10で表される塩基配列からなる前記DNA(e)は、配列番号12のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子であり、タラシオシーラ・シュードナナSAG 1020-1b株由来のΔ5-ELO遺伝子である。
前記DNA(f)において、Δ5-ELO活性の点から、前記DNA(e)の塩基配列との同一性は60%以上であり、65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、97%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。
また前記DNA(f)として、配列番号10で表される塩基配列において、1又は複数個(例えば1個以上430個以下、好ましくは1個以上376個以下、より好ましくは1個以上323個以下、より好ましくは1個以上269個以下、より好ましくは1個以上215個以下、より好ましくは1個以上161個以下、より好ましくは1個以上107個以下、より好ましくは1個以上75個以下、より好ましくは1個以上53個以下、より好ましくは1個以上32個以下、より好ましくは1個以上21個以下、さらに好ましくは1個以上10個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質をコードする遺伝子も好ましい。
さらに前記DNA(f)として、前記DNA(e)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質をコードする遺伝子も好ましい。
配列番号13で表される塩基配列からなる前記DNA(g)は、配列番号15のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子であり、フィスコミトレラ・パテンス由来のΔ5-ELO遺伝子である。
前記DNA(h)において、Δ5-ELO活性の点から、前記DNA(g)の塩基配列との同一性は60%以上であり、65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、97%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。
また前記DNA(h)として、配列番号13で表される塩基配列において、1又は複数個(例えば1個以上403個以下、好ましくは1個以上352個以下、より好ましくは1個以上302個以下、より好ましくは1個以上252個以下、より好ましくは1個以上201個以下、より好ましくは1個以上151個以下、より好ましくは1個以上100個以下、より好ましくは1個以上70個以下、より好ましくは1個以上50個以下、より好ましくは1個以上30個以下、より好ましくは1個以上20個以下、さらに好ましくは1個以上10個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質をコードする遺伝子も好ましい。
さらに前記DNA(h)として、前記DNA(g)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質をコードする遺伝子も好ましい。
配列番号16で表される塩基配列からなる前記DNA(i)は、配列番号18のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子であり、マーチャンティア・ポリモーファ由来のΔ5-ELO遺伝子である。
前記DNA(j)において、Δ5-ELO活性の点から、前記DNA(i)の塩基配列との同一性は60%以上であり、65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、97%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。
また前記DNA(j)として、配列番号16で表される塩基配列において、1又は複数個(例えば1個以上418個以下、好ましくは1個以上366個以下、より好ましくは1個以上314個以下、より好ましくは1個以上261個以下、より好ましくは1個以上209個以下、より好ましくは1個以上157個以下、より好ましくは1個以上104個以下、より好ましくは1個以上73個以下、より好ましくは1個以上52個以下、より好ましくは1個以上31個以下、より好ましくは1個以上20個以下、さらに好ましくは1個以上10個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質をコードする遺伝子も好ましい。
さらに前記DNA(j)として、前記DNA(i)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質をコードする遺伝子も好ましい。
変異としては、塩基の欠失、置換、付加、又は挿入が挙げられる。塩基配列に変異を導入する方法としては、例えば、部位特異的な変異導入法が挙げられる。具体的な部位特異的変異の導入方法としては、SOE-PCRを利用した方法、ODA法、Kunkel法等が挙げられる。また、Site-Directed Mutagenesis System Mutan-SuperExpress Kmキット(タカラバイオ社)、Transformer TM Site-Directed Mutagenesisキット(Clontech社)、KOD-Plus-Mutagenesis Kit(東洋紡社)等の市販のキットを利用することもできる。また、ランダムな遺伝子変異を与えた後、適当な方法により酵素活性の評価及び遺伝子解析を行うことにより目的遺伝子を取得することもできる。
また、本発明で使用するΔ5-ELO遺伝子として、前記DNA(a)~(j)の塩基配列にタンパク質の輸送に関与するシグナルペプチド、又はタンパク質の安定性を高める既知のアミノ酸配列等をコードするDNAが付加された塩基配列からなる遺伝子であってもよい。
前記DNA(a)~(j)は、通常の遺伝子工学的手法により得ることができる。例えば、配列番号6、9、12、15及び18で表されるアミノ酸配列又は配列番号4、7、10、13及び16で表される塩基配列に基づいて、Δ5-ELO遺伝子を人工的に合成できる。Δ5-ELO遺伝子の合成は、例えば、インビトロジェン社等のサービスを利用することができる。また、Pyramimonas cordataOstreococcus tauriThalassiosira pseudonanaPhyscomitrella patensMarchantia polymorpha等、ゲノム上にΔ5-ELO遺伝子を有する藻類や植物のゲノムからクローニングによって取得することもできる。例えば、Molecular Cloning-A LABORATORY MANUAL THIRD EDITION[Joseph Sambrook, David W. Russell, Cold Spring Harbor Laboratory Press(2001)]記載の方法等により行うことができる。
また、使用する宿主の種類に応じて、配列番号4、7、10、13及び16で表される塩基配列の一部を最適化してもよい。例えば、Thermo Fisher Scientific社のGeneArt人工遺伝子合成サービスを利用することができる。各種生物が使用するコドンの情報は、Codon Usage Database(www.kazusa.or.jp/codon/)などから入手可能である。なお、本発明において、コドン使用頻度をナンノクロロプシス・オセアニカ(Nannochloropsis oceanica)に最適化した配列番号4、7、10、13及び16に示される塩基配列は、それぞれ配列番号5、8、11、14及び17に示される塩基配列に対応する。
また本発明で用いるΔ5-ELO遺伝子は、1種でもよいし、2種以上のΔ5-ELO遺伝子を組合せて用いてもよい。本発明において、Δ5-ELO遺伝子として、前記DNA(a)~(f)のいずれか1つからなる遺伝子を用いることが好ましく、前記DNA(a)、(b)、(e)、又は(f)のいずれか1つからなる遺伝子を用いることがより好ましい。
本明細書においてΔ4-DESとは、ドコサテトラエン酸又はDPAのΔ4位に不飽和結合を導入し、ドコサペンタエン酸(n-6)(C22:5Δ4,7,10,13,16)又はDHAを生成する反応を触媒するタンパク質(酵素)を意味する。そして、本明細書において「Δ4デサチュラーゼ活性(以下、「Δ4-DES活性」ともいう)とは、ドコサテトラエン酸又はDPAのΔ4位に不飽和結合を導入する活性を意味する。
本発明のタンパク質がΔ4-DES活性を有することは、例えば、Δ4-DES合成遺伝子欠損株を用いた系により確認することができる。あるいは、宿主細胞内で機能するプロモーターの下流にΔ4-DES遺伝子を連結したDNAをΔ4-DES合成遺伝子欠損株に導入し、導入したΔ4-DES遺伝子が発現する条件で培養して、ドコサペンタエン酸(n-6)(C22:5Δ4,7,10,13,16)又はDHAの生成を検討することで確認することができる。
また、酵母やナンノクロロプシス属に属する藻類等の宿主細胞内で機能するプロモーターの下流にΔ4-DES遺伝子を連結したDNAを宿主細胞へ導入し、導入したΔ4-DES遺伝子が発現する条件で細胞を培養した後、細胞の破砕液に対し、Yuanらの方法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1995, vol. 92(23), p. 10639-10643)によって調製したアシル-CoA、有利脂肪酸、または脂肪酸のグリセロールエステル化合物を基質とした反応を行うことにより、Δ4-DES活性を測定することができる。
本発明で利用するΔ4-DESは、Δ4-DES活性を示すタンパク質(酵素)であれば特に制限はない。本発明における好ましいΔ4-DESとしては、下記タンパク質(K)~(N)が挙げられる。

(K)配列番号27で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(L)前記タンパク質(K)のアミノ酸配列と同一性が60%以上のアミノ酸配列からなり、かつΔ4-DES活性を有するタンパク質。
(M)配列番号30で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(N)前記タンパク質(M)のアミノ酸配列と同一性が60%以上のアミノ酸配列からなり、かつΔ4-DES活性を有するタンパク質。
配列番号27のアミノ酸配列からなる前記タンパク質(K)は、パブロバ(Pavlova)属に属する藻類であるパブロバ・ルテリ(Pavlova lutheri)CCAP 931/1株由来のΔ4-DESである。本発明の配列番号27のアミノ酸配列からなるタンパク質(前記タンパク質(K))がΔ4-DES活性を示すことは、後述の実施例で説明する。
なお、パブロバ・ルテリCCAP 931/1株は、Culture Collection of Algae and Protozoa(CCAP)から入手することができる。
前記タンパク質(L)において、Δ4-DES活性の点から、前記タンパク質(K)のアミノ酸配列との同一性は60%以上であり、65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、97%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。
また、前記タンパク質(L)として、前記タンパク質(K)のアミノ酸配列に、1又は複数個(例えば1個以上178個以下、好ましくは1個以上155個以下、より好ましくは1個以上133個以下、より好ましくは1個以上111個以下、より好ましくは1個以上89個以下、より好ましくは1個以上66個以下、より好ましくは1個以上44個以下、より好ましくは1個以上31個以下、より好ましくは1個以上22個以下、より好ましくは1個以上13個以下、より好ましくは1個以上8個以下、さらに好ましくは1個以上4個以下)のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されており、かつΔ4-DES活性を有するタンパク質が挙げられる。
配列番号30のアミノ酸配列からなる前記タンパク質(M)は、パブロバ属に属する藻類であるパブロバ・サリナ(Pavlova salina)由来のΔ4-DESである。本発明の配列番号30のアミノ酸配列からなるタンパク質(前記タンパク質(M))がΔ4-DES活性を示すことは、後述の実施例で説明する。
前記タンパク質(N)において、Δ4-DES活性の点から、前記タンパク質(M)のアミノ酸配列との同一性は60%以上であり、65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、97%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。
また、前記タンパク質(N)として、前記タンパク質(M)のアミノ酸配列に、1又は複数個(例えば1個以上178個以下、好ましくは1個以上156個以下、より好ましくは1個以上134個以下、より好ましくは1個以上111個以下、より好ましくは1個以上89個以下、より好ましくは1個以上67個以下、より好ましくは1個以上44個以下、より好ましくは1個以上31個以下、より好ましくは1個以上22個以下、より好ましくは1個以上13個以下、より好ましくは1個以上8個以下、さらに好ましくは1個以上4個以下)のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されており、かつΔ4-DES活性を有するタンパク質が挙げられる。
アミノ酸配列に変異を導入する方法としては、例えば、Δ5-ELOについて前述した方法が挙げられる。
また、本発明で使用するΔ4-DESとして、前記タンパク質(K)~(N)のアミノ酸配列に、タンパク質の輸送に関与するシグナルペプチド、又はタンパク質の安定性を高める既知のアミノ酸配列等が付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であってもよい。
前記タンパク質(K)~(N)は、通常の化学的手法、遺伝子工学的手法等により得ることができる。例えば、パブロバ・ルテリ、及びパブロバ・サリナ等、ゲノム上にΔ4-DESをコードする遺伝子(以下、「Δ4-DES遺伝子」ともいう)を有する藻類から単離、精製等することで天然物由来のタンパク質を取得することができる。また、配列番号27及び30で表されるアミノ酸配列情報をもとに人工的に化学合成することで、前記タンパク質(K)~(N)を得ることができる。あるいは、遺伝子組み換え技術により、組換えタンパク質として前記タンパク質(K)~(N)を作製してもよい。
また本発明で用いるΔ4-DESは、1種でもよいし、2種以上のΔ4-DESを組合せて用いてもよい。
本発明において、Δ4-DESをコードする遺伝子を用いて、後述の方法に従いΔ4-DESの発現を促進することが好ましい。
本発明で用いることができるΔ4-DES遺伝子(好ましくは、前記タンパク質(K)~(N)をコードする遺伝子)の具体例として、下記DNA(k)~(n)からなる遺伝子が挙げられる。

(k)配列番号25で表される塩基配列からなるDNA。
(l)前記DNA(k)の塩基配列と同一性が60%以上の塩基配列からなり、かつΔ4-DES活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(m)配列番号28で表される塩基配列からなるDNA。
(n)前記DNA(m)の塩基配列と同一性が60%以上の塩基配列からなり、かつΔ4-DES活性を有するタンパク質をコードするDNA。
配列番号25で表される塩基配列からなる前記DNA(k)は、配列番号27のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子であり、パブロバ・ルテリCCAP 931/1株由来のΔ4-DES遺伝子である。
前記DNA(l)において、Δ4-DES活性の点から、前記DNA(k)の塩基配列との同一性は60%以上であり、65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、97%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。
また前記DNA(l)として、配列番号25で表される塩基配列において、1又は複数個(例えば1個以上535個以下、好ましくは1個以上468個以下、より好ましくは1個以上401個以下、より好ましくは1個以上334個以下、より好ましくは1個以上267個以下、より好ましくは1個以上200個以下、より好ましくは1個以上133個以下、より好ましくは1個以上93個以下、より好ましくは1個以上66個以下、より好ましくは1個以上40個以下、より好ましくは1個以上26個以下、さらに好ましくは1個以上13個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつΔ4-DES活性を有するタンパク質をコードする遺伝子も好ましい。
さらに前記DNA(l)として、前記DNA(k)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつΔ4-DES活性を有するタンパク質をコードする遺伝子も好ましい。
配列番号28で表される塩基配列からなる前記DNA(m)は、配列番号30のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子であり、パブロバ・サリナ由来のΔ4-DES遺伝子である。
前記DNA(n)において、Δ4-DES活性の点から、前記DNA(m)の塩基配列との同一性は60%以上であり、65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、97%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。
また前記DNA(n)として、配列番号28で表される塩基配列において、1又は複数個(例えば1個以上537個以下、好ましくは1個以上470個以下、より好ましくは1個以上403個以下、より好ましくは1個以上336個以下、より好ましくは1個以上268個以下、より好ましくは1個以上201個以下、より好ましくは1個以上134個以下、より好ましくは1個以上94個以下、より好ましくは1個以上67個以下、より好ましくは1個以上40個以下、より好ましくは1個以上26個以下、さらに好ましくは1個以上13個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつΔ4-DES活性を有するタンパク質をコードする遺伝子も好ましい。
さらに前記DNA(n)として、前記DNA(m)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつΔ4-DES活性を有するタンパク質をコードする遺伝子も好ましい。
塩基配列に変異を導入する方法としては、例えば、Δ5-ELOについて前述した方法が挙げられる。
また、本発明で使用するΔ4-DES遺伝子として、前記DNA(k)~(n)の塩基配列にタンパク質の輸送に関与するシグナルペプチド、又はタンパク質の安定性を高める既知のアミノ酸配列等をコードするDNAが付加された塩基配列からなる遺伝子であってもよい。
前記DNA(k)~(n)は、通常の遺伝子工学的手法により得ることができる。例えば、配列番号27又は30で表されるアミノ酸配列又は配列番号25又は28で表される塩基配列に基づいて、Δ4-DES遺伝子を人工的に合成できる。Δ4-DES遺伝子の合成は、例えば、インビトロジェン社等のサービスを利用することができる。また、パブロバ・ルテリ、及びパブロバ・サリナ等、ゲノム上にΔ4-DES遺伝子を有する藻類のゲノムからクローニングによって取得することもできる。例えば、Molecular Cloning-A LABORATORY MANUAL THIRD EDITION[Joseph Sambrook, David W. Russell, Cold Spring Harbor Laboratory Press(2001)]記載の方法等により行うことができる。
また、使用する宿主の種類に応じて、配列番号25又は28で表される塩基配列の一部を最適化してもよい。例えば、Thermo Fisher Scientific社のGeneArt人工遺伝子合成サービスを利用することができる。なお、本発明において、コドン使用頻度をナンノクロロプシス・オセアニカに最適化した配列番号25及び28に示される塩基配列は、それぞれ配列番号26及び29に示される塩基配列に対応する。
また本発明で用いるΔ4-DES遺伝子は、1種でもよいし、2種以上のΔ4-DES遺伝子を組合せて用いてもよい。
さらに本発明に用いる宿主は、前記Δ5-ELO及びΔ4-DESに加えて、ACPの発現が促進されていることが好ましく、ACPをコードする遺伝子(以下単に、「ACP遺伝子」ともいう)の発現が促進されていることがより好ましい。
ACPは脂肪酸の生合成反応(脂肪酸の伸長反応)の足場(担体)として機能する。脂肪酸のアシル基は、ACPのセリン残基に結合したホスホパンテテイン基とチオエステル結合を形成する。この状態で脂肪酸が伸長される。
そのため、ACPの発現を促進することで、好ましくはACP遺伝子の発現を促進することで、脂質の生産性、特に脂肪酸の生産性を一層向上させることができる。
本発明において、「ACP活性」とは、脂肪酸のアシル基とチオエステル結合を形成することで脂肪酸の伸長反応の足場として機能する活性を意味する。
タンパク質がACP活性を有することは、例えば、ACP遺伝子欠損株に、宿主内で機能するプロモーターの下流に前記タンパク質をコードする遺伝子を連結したDNAを導入し、脂肪酸合成能を相補させることで確認することができる。あるいは、宿主細胞内で機能するプロモーターの下流に前記タンパク質をコードする遺伝子を連結したDNAを宿主細胞へ導入し、導入した遺伝子が発現する条件下で細胞を培養し、宿主細胞内又は培養液中の脂肪酸の生産量や組成の変化を常法により分析することで確認できる。あるいは、前記タンパク質を、Dall’aglio, et al., Biochemistry, 2011, vol. 50(25), p. 5704-5717等の文献を参考にして、補酵素A(CoA)と適当なACPシンターゼ(ACP synthase)(ホスホパンテテイニルトランスフェラーゼ(phosphopantetheinyl transferase))と反応させ、ホスホパンテテイン基が結合したholo-ACPを形成させることで確認することができる。あるいは、Rock, Garwin, The Journal of Biological Chemistry, 1979, vol. 254(15), p. 7123-7128等の文献を参考にして、前記holo-ACPを脂肪酸及び適当なアシル-ACPシンセターゼ(acyl-ACP synthetase)と反応させ、アシル基が結合したacyl-ACPを形成させることで確認することができる。
本発明における好ましいACPとしては、ACP活性を示すタンパク質であれば特に制限はない。本発明における好ましいACPとしては、下記タンパク質(O)又は(P)が挙げられる。

(O)配列番号31で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、好ましくは配列番号31で表されるアミノ酸配列における23~146番目のアミノ酸配列からなるタンパク質、より好ましくは前記ナンノクロロプシス属に属する藻類の細胞内で機能する葉緑体移行シグナル配列が配列番号31で表されるアミノ酸配列における23~146番目のアミノ酸配列のN末端側に付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質。
(P)前記タンパク質(O)のアミノ酸配列と同一性が60%以上のアミノ酸配列からなり、かつアシルキャリアープロテイン活性(以下、「ACP活性」ともいう)を有するタンパク質。

配列番号31のアミノ酸配列からなるタンパク質は、ナンノクロロプシス属に属する藻類であるナンノクロロプシス・オセアニカNIES2145株由来のACP(以下、「NoACP1」ともいう)である。
前記タンパク質(P)において、ACP活性の点から、前記タンパク質(O)のアミノ酸配列との同一性は60%以上であり、65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、97%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。
また、前記タンパク質(P)として、前記タンパク質(O)のアミノ酸配列に、1又は複数個(例えば1個以上58個以下、好ましくは1個以上51個以下、より好ましくは1個以上43個以下、より好ましくは1個以上36個以下、より好ましくは1個以上29個以下、より好ましくは1個以上21個以下、より好ましくは1個以上14個以下、より好ましくは1個以上10個以下、より好ましくは1個以上7個以下、より好ましくは1個以上4個以下、より好ましくは1個以上2個以下、より好ましくは1個)のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されており、かつACPを有するタンパク質が挙げられる。
アミノ酸配列に変異を導入する方法としては、例えば、Δ5-ELOについて前述した方法が挙げられる。
さらに、ナンノクロロプシス属に属する藻類において、ACPは葉緑体に局在することが好ましい。例えば、ナンノクロロプシス属に属する藻類由来のACP遺伝子の塩基配列に、ナンノクロロプシス属に属する藻類の細胞内で機能する葉緑体移行シグナルをコードする塩基配列を付加した遺伝子の発現を促進することがより好ましい。このような葉緑体移行シグナルをコードする塩基配列としては、たとえば配列番号33で示されるVCP1葉緑体移行シグナル断片などが挙げられる。あるいは、ナンノクロロプシス属に属する藻類由来のACPをコードする遺伝子を葉緑体ゲノム中に導入し、導入した遺伝子の発現を促進することがより好ましい。
前記タンパク質(O)及び(P)は、通常の化学的手法、遺伝子工学的手法等により得ることができる。例えば、ナンノクロロプシス・オセアニカから単離、精製等することで天然物由来のタンパク質を取得することができる。また、配列番号31に示すアミノ酸配列情報をもとに人工的に化学合成することで、前記タンパク質(O)及び(P)を得ることができる。あるいは、遺伝子組み換え技術により、組換えタンパク質として前記タンパク質(O)及び(P)を作製してもよい。組換えタンパク質を作製する場合には、後述する、ACPをコードする遺伝子を用いることができる。
前記ACP(好ましくは前記タンパク質(O)又は(P))をコードする遺伝子(以下、「ACP遺伝子」ともいう)として、下記DNA(o)又は(p)からなる遺伝子が挙げられる。

(o)配列番号32で表される塩基配列からなるDNA、好ましくは配列番号32で表される塩基配列における67~441番目の塩基配列からなるDNA、より好ましくは前記ナンノクロロプシス属に属する藻類の細胞内で機能する葉緑体移行シグナル配列をコードする塩基配列が配列番号32で表される塩基配列における67~441番目の塩基配列の5’末端側に付加された塩基配列からなるDNA。
(p)前記DNA(o)の塩基配列と同一性が60%以上の塩基配列からなり、かつACP活性を有するタンパク質をコードするDNA。

配列番号32の塩基配列は、配列番号31のアミノ酸配列からなるタンパク質(NoACP)をコードする遺伝子(以下、「NoACP1遺伝子」ともいう)の塩基配列である。
前記DNA(p)において、ACP活性の点から、前記DNA(o)の塩基配列との同一性は60%以上であり、65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、97%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。
また前記DNA(p)として、前記DNA(o)の塩基配列において1又は複数個(例えば1個以上176個以下、好ましくは1個以上154個以下、より好ましくは1個以上132個以下、より好ましくは1個以上110個以下、より好ましくは1個以上88個以下、より好ましくは1個以上66個以下、より好ましくは1個以上44個以下、より好ましくは1個以上30個以下、より好ましくは1個以上22個以下、より好ましくは1個以上13個以下、より好ましくは1個以上8個以下、より好ましくは1個以上4個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつACP活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
さらに前記DNA(p)として、前記DNA(o)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつACP活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
塩基配列に変異を導入する方法としては、例えば、Δ5-ELO遺伝子について前述した方法が挙げられる。
さらに本発明に用いる宿主は、前記Δ5-ELO及びΔ4-DESに加えて、Δ12-デサチュラーゼ(以下、「Δ12-DES」ともいう。)の発現が促進されていることが好ましく、Δ12-DESをコードする遺伝子(以下単に、「Δ12-DES遺伝子」ともいう)の発現が促進されていることがより好ましい。
本明細書において「Δ12-DES」とは、オレイン酸(C18:1Δ9)のΔ12位に不飽和結合を導入し、ω-6脂肪酸であるリノール酸(C18:2Δ9,12)を生成する反応を触媒するタンパク質(酵素)を意味する。そして本明細書において「Δ12-デサチュラーゼ活性(以下、「Δ12-DES活性」ともいう)」とは、オレイン酸のΔ12位に不飽和結合を導入する活性を意味する。
タンパク質がΔ12-DES活性を有することは、例えば、Δ12-DES合成遺伝子欠損株を用いた系により確認することができる。あるいは、宿主細胞内で機能するプロモーターの下流に前記タンパク質をコードする遺伝子を連結したDNAをΔ12-DES合成遺伝子欠損株に導入し、リノール酸の生成を検討することで確認できる。あるいは、Δ12-DES又はこれを含有する細胞破砕液を調製し、オレイン酸、オレオイルCoAなどを含む反応液と反応させ、常法に従いオレイン酸量の減少又はリノール酸量の増加を測定することで確認できる。
本発明における好ましいΔ12-DESとしては、下記タンパク質(Q)又は(R)が挙げられる。
(Q)配列番号34で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(R)前記タンパク質(Q)のアミノ酸配列と同一性が60%以上のアミノ酸配列からなり、かつΔ12-デサチュラーゼ活性を有するタンパク質。

配列番号34のアミノ酸配列からなるタンパク質は、ナンノクロロプシス属に属する藻類であるナンノクロロプシス・オセアニカNIES2145株由来のΔ12-DES(以下、「NoΔ12-DES」ともいう)である。
前記タンパク質(R)において、Δ12-DES活性の点から、前記タンパク質(Q)のアミノ酸配列との同一性は60%以上であり、65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、97%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。
また、前記タンパク質(R)として、前記タンパク質(Q)のアミノ酸配列に、1又は複数個(例えば1個以上175個以下、好ましくは1個以上153個以下、より好ましくは1個以上131個以下、より好ましくは1個以上109個以下、より好ましくは1個以上87個以下、より好ましくは1個以上65個以下、より好ましくは1個以上43個以下、より好ましくは1個以上30個以下、より好ましくは1個以上21個以下、より好ましくは1個以上13個以下、より好ましくは1個以上8個以下、より好ましくは1個以上4個以下)のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されており、かつΔ12-DESを有するタンパク質が挙げられる。
アミノ酸配列に変異を導入する方法としては、例えば、Δ5-ELOについて前述した方法が挙げられる。
前記タンパク質(Q)及び(R)は、通常の化学的手法、遺伝子工学的手法等により得ることができる。例えば、ナンノクロロプシス・オセアニカから単離、精製等することで天然物由来のタンパク質を取得することができる。また、配列番号34に示すアミノ酸配列情報をもとに人工的に化学合成することで、前記タンパク質(Q)及び(R)を得ることができる。あるいは、遺伝子組み換え技術により、組換えタンパク質として前記タンパク質(Q)及び(R)を作製してもよい。組換えタンパク質を作製する場合には、後述する、Δ12-DESをコードする遺伝子を用いることができる。
前記Δ12-DES(好ましくは前記タンパク質(Q)又は(R))をコードする遺伝子(以下、「Δ12-DES遺伝子」ともいう)として、下記DNA(q)又は(r)からなる遺伝子が挙げられる。

(q)配列番号35で表される塩基配列からなるDNA。
(r)前記DNA(q)の塩基配列と同一性が60%以上の塩基配列からなり、かつΔ12-DES活性を有するタンパク質をコードするDNA。

配列番号35の塩基配列は、配列番号34のアミノ酸配列からなるタンパク質(NoΔ12-DES)をコードする遺伝子(以下、「NoΔ12-DES遺伝子」ともいう)の塩基配列である。
前記DNA(r)において、Δ12-DES活性の点から、前記DNA(q)の塩基配列との同一性は60%以上であり、65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、97%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。
また前記DNA(r)として、前記DNA(q)の塩基配列において1又は複数個(例えば1個以上526個以下、好ましくは1個以上460個以下、より好ましくは1個以上395個以下、より好ましくは1個以上329個以下、より好ましくは1個以上263個以下、より好ましくは1個以上197個以下、より好ましくは1個以上131個以下、より好ましくは1個以上92個以下、より好ましくは1個以上65個以下、より好ましくは1個以上39個以下、より好ましくは1個以上26個以下、より好ましくは1個以上13個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつΔ12-DES活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
さらに前記DNA(r)として、前記DNA(q)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつΔ12-DES活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
塩基配列に変異を導入する方法としては、例えば、Δ5-ELO遺伝子について前述した方法が挙げられる。
さらに本発明に用いる宿主は、前記Δ5-ELO及びΔ4-DESに加えて、Δ6-デサチュラーゼ(以下、「Δ6-DES」ともいう。)の発現が促進されていることが好ましく、Δ6-DESをコードする遺伝子(以下単に、「Δ6-DES遺伝子」ともいう)の発現が促進されていることがより好ましい。
本明細書において「Δ6-DES」とは、リノール酸(C18:2Δ9,12)のΔ6位に不飽和結合を導入し、γ-リノレン酸(C18:3Δ6,9,12)を生成する反応を触媒するタンパク質(酵素)を意味する。そして本明細書において「Δ6-デサチュラーゼ活性(以下、「Δ6-DES活性」ともいう)」とは、リノール酸のΔ6位に不飽和結合を導入する活性を意味する。
タンパク質がΔ6-DES活性を有することは、例えば、Δ6-DES合成遺伝子欠損株を用いた系により確認することができる。あるいは、宿主細胞内で機能するプロモーターの下流に前記タンパク質をコードする遺伝子を連結したDNAをΔ6-DES合成遺伝子欠損株に導入し、γ-リノレン酸の生成を検討することで確認できる。あるいは、Δ6-DES又はこれを含有する細胞破砕液を調製し、リノール酸、リノレオイルCoAなどを含む反応液と反応させ、常法に従いリノール酸量の減少又はγ-リノレン酸量の増加を測定することで確認できる。
本発明における好ましいΔ6-DESとしては、下記タンパク質(S)又は(T)が挙げられる。
(S)配列番号36で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(T)前記タンパク質(S)のアミノ酸配列と同一性が60%以上のアミノ酸配列からなり、かつΔ6-デサチュラーゼ活性を有するタンパク質。

配列番号36のアミノ酸配列からなるタンパク質は、ナンノクロロプシス・オセアニカNIES2145株由来のΔ6-DES(以下、「NoΔ6-DES」ともいう)である。
前記タンパク質(T)において、Δ6-DES活性の点から、前記タンパク質(S)のアミノ酸配列との同一性は60%以上であり、65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、97%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。
また、前記タンパク質(T)として、前記タンパク質(S)のアミノ酸配列に、1又は複数個(例えば1個以上189個以下、好ましくは1個以上165個以下、より好ましくは1個以上142個以下、より好ましくは1個以上118個以下、より好ましくは1個以上94個以下、より好ましくは1個以上71個以下、より好ましくは1個以上47個以下、より好ましくは1個以上33個以下、より好ましくは1個以上23個以下、より好ましくは1個以上14個以下、より好ましくは1個以上9個以下、より好ましくは1個以上4個以下)のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されており、かつΔ6-DESを有するタンパク質が挙げられる。
アミノ酸配列に変異を導入する方法としては、例えば、Δ5-ELOについて前述した方法が挙げられる。
前記タンパク質(S)及び(T)は、通常の化学的手法、遺伝子工学的手法等により得ることができる。例えば、ナンノクロロプシス・オセアニカから単離、精製等することで天然物由来のタンパク質を取得することができる。また、配列番号36に示すアミノ酸配列情報をもとに人工的に化学合成することで、前記タンパク質(S)及び(T)を得ることができる。あるいは、遺伝子組み換え技術により、組換えタンパク質として前記タンパク質(S)及び(T)を作製してもよい。組換えタンパク質を作製する場合には、後述する、Δ6-DESをコードする遺伝子を用いることができる。
前記Δ6-DES(好ましくは前記タンパク質(S)又は(T))をコードする遺伝子(以下、「Δ6-DES遺伝子」ともいう)として、下記DNA(s)又は(t)からなる遺伝子が挙げられる。

(s)配列番号37で表される塩基配列からなるDNA。
(t)前記DNA(s)の塩基配列と同一性が60%以上の塩基配列からなり、かつΔ6-DES活性を有するタンパク質をコードするDNA。

配列番号37の塩基配列は、配列番号36のアミノ酸配列からなるタンパク質(NoΔ6-DES)をコードする遺伝子(以下、「NoΔ6-DES遺伝子」ともいう)の塩基配列である。
前記DNA(t)において、Δ6-DES活性の点から、前記DNA(s)の塩基配列との同一性は60%以上であり、65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、97%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。
また前記DNA(t)として、前記DNA(s)の塩基配列において1又は複数個(例えば1個以上570個以下、好ましくは1個以上498個以下、より好ましくは1個以上427個以下、より好ましくは1個以上356個以下、より好ましくは1個以上285個以下、より好ましくは1個以上213個以下、より好ましくは1個以上142個以下、より好ましくは1個以上99個以下、より好ましくは1個以上71個以下、より好ましくは1個以上42個以下、より好ましくは1個以上28個以下、より好ましくは1個以上14個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつΔ6-DES活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
さらに前記DNA(t)として、前記DNA(s)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつΔ6-DES活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
塩基配列に変異を導入する方法としては、例えば、Δ5-ELO遺伝子について前述した方法が挙げられる。
さらに本発明に用いる宿主は、前記Δ5-ELO及びΔ4-DESに加えて、ω3-デサチュラーゼ(以下、「ω3-DES」ともいう。)の発現が促進されていることが好ましく、ω3-DESをコードする遺伝子(以下単に、「ω3-DES遺伝子」ともいう)の発現が促進されていることがより好ましい。
本明細書において「ω3-DES」とは、アラキドン酸又はドコサテトラエン酸のω3位に不飽和結合を導入し、EPA又はDPAを生成する反応を触媒するタンパク質(酵素)を意味する。そして本明細書において「ω3-デサチュラーゼ活性(以下、「ω3-DES活性」ともいう。)」とは、アラキドン酸又はドコサテトラエン酸のω3位に不飽和結合を導入する活性を意味する。
タンパク質がω3-DES活性を有することは、例えば、ω3-DES合成遺伝子欠損株を用いた系により確認することができる。あるいは、宿主細胞内で機能するプロモーターの下流に前記タンパク質をコードする遺伝子を連結したDNAをω3-DES合成遺伝子欠損株に導入し、EPAの生成を検討することで確認できる。あるいは、ω3-DES又はこれを含有する細胞破砕液を調製し、アラキドン酸誘導体(CoAとのチオエステル化合物、グリセロールとのエステル化合物など)を含む反応液と反応させ、常法に従いアラキドン酸量の減少又はEPA量の増加を測定することで確認できる。
本発明における好ましいω3-DESとしては、下記タンパク質(U)又は(V)が挙げられる。
(U)配列番号38で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(V)前記タンパク質(U)のアミノ酸配列と同一性が60%以上のアミノ酸配列からなり、かつω3-デサチュラーゼ活性を有するタンパク質。

配列番号38のアミノ酸配列からなるタンパク質は、ナンノクロロプシス・オセアニカNIES2145株由来のω3-DES(以下、「Noω3-DES」ともいう)である。
前記タンパク質(V)において、ω3-DES活性の点から、前記タンパク質(U)のアミノ酸配列との同一性は60%以上であり、65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、97%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。
また、前記タンパク質(V)として、前記タンパク質(U)のアミノ酸配列に、1又は複数個(例えば1個以上164個以下、好ましくは1個以上143個以下、より好ましくは1個以上123個以下、より好ましくは1個以上102個以下、より好ましくは1個以上82個以下、より好ましくは1個以上61個以下、より好ましくは1個以上41個以下、より好ましくは1個以上28個以下、より好ましくは1個以上20個以下、より好ましくは1個以上12個以下、より好ましくは1個以上8個以下、より好ましくは1個以上4個以下)のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されており、かつω3-DES活性を有するタンパク質が挙げられる。
アミノ酸配列に変異を導入する方法としては、例えば、Δ5-ELOについて前述した方法が挙げられる。
前記タンパク質(U)及び(V)は、通常の化学的手法、遺伝子工学的手法等により得ることができる。例えば、ナンノクロロプシス・オセアニカから単離、精製等することで天然物由来のタンパク質を取得することができる。また、配列番号38に示すアミノ酸配列情報をもとに人工的に化学合成することで、前記タンパク質(U)及び(V)を得ることができる。あるいは、遺伝子組み換え技術により、組換えタンパク質として前記タンパク質(U)及び(V)を作製してもよい。組換えタンパク質を作製する場合には、後述する、ω3-DESをコードする遺伝子を用いることができる。
前記ω3-DES(好ましくは前記タンパク質(U)又は(V))をコードする遺伝子(以下、「ω3-DES遺伝子」ともいう)として、下記DNA(u)又は(v)からなる遺伝子が挙げられる。

(u)配列番号39で表される塩基配列からなるDNA。
(v)前記DNA(u)の塩基配列と同一性が60%以上の塩基配列からなり、かつω3-DES活性を有するタンパク質をコードするDNA。

配列番号39の塩基配列は、配列番号38のアミノ酸配列からなるタンパク質(Noω3-DES)をコードする遺伝子(以下、「Noω3-DES遺伝子」ともいう)の塩基配列である。
前記DNA(v)において、ω3-DES活性の点から、前記DNA(u)の塩基配列との同一性は60%以上であり、65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、97%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。
また前記DNA(v)として、前記DNA(u)の塩基配列において1又は複数個(例えば1個以上493個以下、好ましくは1個以上431個以下、より好ましくは1個以上369個以下、より好ましくは1個以上308個以下、より好ましくは1個以上246個以下、より好ましくは1個以上184個以下、より好ましくは1個以上123個以下、より好ましくは1個以上86個以下、より好ましくは1個以上61個以下、より好ましくは1個以上36個以下、より好ましくは1個以上24個以下、より好ましくは1個以上12個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつω3-DES活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
さらに前記DNA(v)として、前記DNA(u)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつω3-DES活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
塩基配列に変異を導入する方法としては、例えば、Δ5-ELO遺伝子について前述した方法が挙げられる。
さらに本発明に用いる宿主は、前記Δ5-ELO及びΔ4-DESに加えて、Δ9-デサチュラーゼ(以下、「Δ9-DES」ともいう。)の発現が促進されていることが好ましく、Δ9-DESをコードする遺伝子(以下単に、「Δ9-DES遺伝子」ともいう)の発現が促進されていることがより好ましい。
本明細書において「Δ9-DES」とは、ステアリン酸(C18:0)のΔ9位に不飽和結合を導入し、オレイン酸を生成する反応を触媒するタンパク質(酵素)を意味する。そして本明細書において「Δ9-デサチュラーゼ活性(以下、「Δ9-DES活性」ともいう。)」とは、ステアリン酸のΔ9位に不飽和結合を導入する活性を意味する。
タンパク質がΔ9-DES活性を有することは、例えば、Δ9-DES合成遺伝子欠損株を用いた系により確認することができる。あるいは、宿主細胞内で機能するプロモーターの下流に前記タンパク質をコードする遺伝子を連結したDNAをΔ9-DES合成遺伝子欠損株に導入し、オレイン酸の生成を検討することで確認できる。あるいは、Δ9-DES又はこれを含有する細胞破砕液を調製し、ステアリン酸誘導体(CoAとのチオエステル化合物、グリセロールとのエステル化合物など)を含む反応液と反応させ、常法に従いステアリン酸量の減少又はオレイン酸量の増加を測定することで確認できる。
本発明における好ましいΔ9-DESとしては、下記タンパク質(W)又は(X)が挙げられる。
(W)配列番号40で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(X)前記タンパク質(W)のアミノ酸配列と同一性が60%以上のアミノ酸配列からなり、かつΔ9-デサチュラーゼ活性を有するタンパク質。

配列番号40のアミノ酸配列からなるタンパク質は、ナンノクロロプシス・オセアニカNIES2145株由来のΔ9-DES(以下、「NoΔ9-DES」ともいう)である。
前記タンパク質(X)において、Δ9-DES活性の点から、前記タンパク質(W)のアミノ酸配列との同一性は60%以上であり、65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、97%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。
また、前記タンパク質(X)として、前記タンパク質(W)のアミノ酸配列に、1又は複数個(例えば1個以上143個以下、好ましくは1個以上125個以下、より好ましくは1個以上107個以下、より好ましくは1個以上89個以下、より好ましくは1個以上71個以下、より好ましくは1個以上53個以下、より好ましくは1個以上35個以下、より好ましくは1個以上25個以下、より好ましくは1個以上17個以下、より好ましくは1個以上10個以下、より好ましくは1個以上7個以下、より好ましくは1個以上3個以下)のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されており、かつΔ9-DES活性を有するタンパク質が挙げられる。
前記タンパク質(W)及び(X)は、通常の化学的手法、遺伝子工学的手法等により得ることができる。例えば、ナンノクロロプシス・オセアニカから単離、精製等することで天然物由来のタンパク質を取得することができる。また、配列番号40に示すアミノ酸配列情報をもとに人工的に化学合成することで、前記タンパク質(W)及び(X)を得ることができる。あるいは、遺伝子組み換え技術により、組換えタンパク質として前記タンパク質(W)及び(X)を作製してもよい。組換えタンパク質を作製する場合には、後述する、Δ9-DESをコードする遺伝子を用いることができる。
前記Δ9-DES(好ましくは前記タンパク質(W)又は(X))をコードする遺伝子(以下、「Δ9-DES遺伝子」ともいう)として、下記DNA(w)又は(x)からなる遺伝子が挙げられる。

(w)配列番号41で表される塩基配列からなるDNA。
(x)前記DNA(w)の塩基配列と同一性が60%以上の塩基配列からなり、かつΔ9-DES活性を有するタンパク質をコードするDNA。

配列番号41の塩基配列は、配列番号40のアミノ酸配列からなるタンパク質(NoΔ9-DES)をコードする遺伝子(以下、「NoΔ9-DES遺伝子」ともいう)の塩基配列である。
前記DNA(x)において、Δ9-DES活性の点から、前記DNA(w)の塩基配列との同一性は60%以上であり、65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、97%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。
また前記DNA(x)として、前記DNA(w)の塩基配列において1又は複数個(例えば1個以上432個以下、好ましくは1個以上378個以下、より好ましくは1個以上324個以下、より好ましくは1個以上270個以下、より好ましくは1個以上216個以下、より好ましくは1個以上162個以下、より好ましくは1個以上108個以下、より好ましくは1個以上75個以下、より好ましくは1個以上54個以下、より好ましくは1個以上32個以下、より好ましくは1個以上21個以下、より好ましくは1個以上10個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつΔ9-DES活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
さらに前記DNA(x)として、前記DNA(w)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつΔ9-DES活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
塩基配列に変異を導入する方法としては、例えば、Δ5-ELO遺伝子について前述した方法が挙げられる。
さらに本発明に用いる宿主は、前記Δ5-ELO及びΔ4-DESに加えて、Δ6-エロンガーゼ(以下、「Δ6-ELO」ともいう。)の発現が促進されていることが好ましく、Δ6-ELOをコードする遺伝子(以下単に、「Δ6-ELO遺伝子」ともいう)の発現が促進されていることがより好ましい。
本明細書において「Δ6-ELO」とは、γ-リノレン酸又はステアリドン酸(C18:4Δ6,9,12,15)から、ジホモ-γ-リノレン酸(C20:3Δ8,11,14)又はエイコサテトラエン酸(C20:4Δ8,11,14,17)への伸長反応を触媒するタンパク質(酵素)を意味する。そして本明細書において「Δ6-エロンガーゼ活性(以下、「Δ6-ELO活性」ともいう」)とは、炭素原子数18の脂肪酸から、炭素原子数20の脂肪酸への伸長反応を触媒する活性を意味する。
タンパク質がΔ6-ELO活性を有することは、例えば、Δ6-ELO合成遺伝子欠損株を用いた系により確認することができる。あるいは、宿主細胞内で機能するプロモーターの下流に前記タンパク質をコードする遺伝子を連結したDNAをΔ6-ELO合成遺伝子欠損株に導入し、エイコサテトラエン酸の生成を検討することで確認できる。あるいは、Δ6-ELO又はこれを含有する細胞破砕液を調製し、γ-リノレン酸誘導体(CoAとのチオエステル化合物、グリセロールとのエステル化合物など)を含む反応液と反応させ、常法に従いγ-リノレン酸量の減少又はジホモ-γ-リノレン酸量の増加を測定することで確認できる。
本発明における好ましいΔ6-ELOとしては、下記タンパク質(Y)又は(Z)が挙げられる。
(Y)配列番号42で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(Z)前記タンパク質(Y)のアミノ酸配列と同一性が60%以上のアミノ酸配列からなり、かつΔ6-エロンガーゼ活性を有するタンパク質。

配列番号42のアミノ酸配列からなるタンパク質は、ナンノクロロプシス・オセアニカNIES2145株由来のΔ6-ELO(以下、「NoΔ6-ELO」ともいう)である。
前記タンパク質(Z)において、Δ6-ELO活性の点から、前記タンパク質(Y)のアミノ酸配列との同一性は60%以上であり、65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、97%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。
また、前記タンパク質(Z)として、前記タンパク質(Y)のアミノ酸配列に、1又は複数個(例えば1個以上110個以下、好ましくは1個以上96個以下、より好ましくは1個以上82個以下、より好ましくは1個以上69個以下、より好ましくは1個以上55個以下、より好ましくは1個以上41個以下、より好ましくは1個以上27個以下、より好ましくは1個以上19個以下、より好ましくは1個以上13個以下、より好ましくは1個以上8個以下、より好ましくは1個以上5個以下、より好ましくは1個以上2個以下)のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されており、かつΔ6-ELOを有するタンパク質が挙げられる。
アミノ酸配列に変異を導入する方法としては、例えば、Δ5-ELOについて前述した方法が挙げられる。
前記タンパク質(Y)及び(Z)は、通常の化学的手法、遺伝子工学的手法等により得ることができる。例えば、ナンノクロロプシス・オセアニカから単離、精製等することで天然物由来のタンパク質を取得することができる。また、配列番号45に示すアミノ酸配列情報をもとに人工的に化学合成することで、前記タンパク質(Y)及び(Z)を得ることができる。あるいは、遺伝子組み換え技術により、組換えタンパク質として前記タンパク質(Y)及び(Z)を作製してもよい。組換えタンパク質を作製する場合には、後述する、Δ6-ELOをコードする遺伝子を用いることができる。
前記Δ6-ELO(好ましくは前記タンパク質(Y)又は(Z))をコードする遺伝子(以下、「Δ6-ELO遺伝子」ともいう)として、下記DNA(y)又は(z)からなる遺伝子が挙げられる。

(y)配列番号43で表される塩基配列からなるDNA。
(z)前記DNA(y)の塩基配列と同一性が60%以上の塩基配列からなり、かつΔ6-ELO活性を有するタンパク質をコードするDNA。

配列番号43の塩基配列は、配列番号42のアミノ酸配列からなるタンパク質(NoΔ6-ELO)をコードする遺伝子(以下、「NoΔ6-ELO遺伝子」ともいう)の塩基配列である。
前記DNA(z)において、Δ6-ELO活性の点から、前記DNA(y)の塩基配列との同一性は60%以上であり、65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がより好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がより好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上がより好ましく、97%以上がより好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましい。
また前記DNA(z)として、前記DNA(y)の塩基配列において1又は複数個(例えば1個以上332個以下、好ましくは1個以上290個以下、より好ましくは1個以上249個以下、より好ましくは1個以上207個以下、より好ましくは1個以上166個以下、より好ましくは1個以上124個以下、より好ましくは1個以上83個以下、より好ましくは1個以上58個以下、より好ましくは1個以上41個以下、より好ましくは1個以上24個以下、より好ましくは1個以上16個以下、より好ましくは1個以上8個以下)の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加されており、かつΔ6-ELO活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
さらに前記DNA(z)として、前記DNA(y)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつΔ6-ELO活性を有するタンパク質をコードするDNAも好ましい。
塩基配列に変異を導入する方法としては、例えば、Δ5-ELO遺伝子について前述した方法が挙げられる
本発明の形質転換体は、前記Δ5-ELO遺伝子及びΔ4-DES遺伝子を常法により前記宿主に導入することで得ることができる。具体的には、前記遺伝子を宿主細胞中で発現させることのできる組換えベクターや遺伝子発現カセットを調製し、これを宿主細胞に導入して宿主細胞を形質転換させることにより作製できる。本発明の形質転換体において、当該遺伝子の発現が促進されていることが好ましい。
また、本発明の形質転換体は、前記Δ5-ELO遺伝子及びΔ4-DES遺伝子に加えて、好ましくは前記ACP遺伝子、並びに前記Δ5-ELO遺伝子及びΔ4-DES遺伝子以外の各デサチュラーゼ遺伝子及びエロンガーゼ遺伝子が導入されていることも好ましい。
また、本発明の形質転換体は、前記Δ5-ELO遺伝子及びΔ4-DES遺伝子をゲノム上に有する宿主において、常法により当該遺伝子の発現調節領域を改変して、当該遺伝子の発現を促進させることで得ることができる。具体的には、当該宿主のゲノム上に存在するΔ5-ELO遺伝子又はΔ4-DES遺伝子の上流に位置するプロモーター配列を、より高いプロモーター活性を示すものに置換すること等で作製できる。
なお本明細書において、目的のタンパク質をコードする遺伝子の発現を促進させたものを「形質転換体」ともいい、目的のタンパク質をコードする遺伝子の発現を促進させていないものを「宿主」又は「野生株」ともいう。
本発明で用いる形質転換体は、宿主自体に比べ、炭素原子数が22のPUFA及びこれを構成成分とする脂質の生産性が有意に向上する。またその結果、当該形質転換体では、脂質中の脂肪酸組成が改変される。そのため、当該形質転換体を用いた本発明は、特定の炭素原子数の脂肪酸及びこれを構成成分とする脂質、特に炭素原子数が22のPUFA及びこれを構成成分とする脂質、好ましくはDPA、DHA及びこれを構成成分とする脂質、より好ましくはDHA及びこれを構成成分とする脂質の生産に好適に用いることができる。
また、炭素原子数が22のPUFAの産生能を有さない宿主に前記Δ5-ELO遺伝子及びΔ4-DES遺伝子を導入することで、宿主に炭素原子数が22のPUFAの産生能を付与することができる。
なお、宿主や形質転換体の脂肪酸及び脂質の生産性については、実施例で用いた方法により測定することができる。
本発明の形質転換体の作製方法について説明する。しかし本発明は、これに制限するものではない。
形質転換体の宿主としては通常用いられるものより適宜選択することができる。本発明で用いることができる宿主としては、ナンノクロロプシス属の藻類が挙げられる。製造効率及び得られた脂質の利用性の点から、宿主は微生物又は植物体であることが好ましく、微生物であることがより好ましく、微細藻類であることがさらに好ましい。
前記ナンノクロロプシス属の藻類の具体例としては、ナンノクロロプシス・オセアニカ、ナンノクロロプシス・オキュラータ(Nannochloropsis oculata)、ナンノクロロプシス・ガディタナ(Nannochloropsis gaditana)、ナンノクロロプシス・サリナ(Nannochloropsis salina)、ナンノクロロプシス・リムネティカ(Nannochloropsis limnetica)、ナンノクロロプシス・グラニュラータ(Nannochloropsis granulata)、ナンノクロロプシス・エスピー(Nannochloropsis sp.)等が挙げられる。なかでも、脂質生産性の観点から、ナンノクロロプシス・オセアニカ、又はナンノクロロプシス・ガディタナが好ましく、ナンノクロロプシス・オセアニカがより好ましい。
なお、ナンノクロロプシス・オセアニカ等の藻類は、私的又は公的な研究所等の保存機関より入手することができる。例えば、ナンノクロロプシス・オセアニカNIES-2145株は、国立環境研究所(NIES)から入手することができる。
遺伝子発現用プラスミド又は遺伝子発現カセットの母体となるベクター(プラスミド)としては、目的のタンパク質をコードする遺伝子を宿主に導入することができ、宿主細胞内で目的の遺伝子を発現させることができるベクターであればよい。例えば、使用する宿主の種類に応じたプロモーターやターミネーター等の発現調節領域を有するベクターであって、複製開始点や選択マーカー等を有するベクターを用いることができる。また、プラスミド等の染色体外で自立増殖・複製するベクターであってもよいし、染色体内に組み込まれるベクターであってもよい。
本発明で好ましく用いることができる発現用ベクターとしては、例えば、pUC18(タカラバイオ社製)、pUC19(タカラバイオ社製)、pUC118(タカラバイオ社製)、P66(Chlamydomonas Center)、P-322(Chlamydomonas Center)、pPha-T1(Journal of Basic Microbiology, 2011, vol. 51, p. 666-672参照)、又はpJET1(コスモ・バイオ社製)が挙げられる。特に、pUC18、pPha-T1、又はpJET1が好ましく用いられる。また、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 2011, vol. 108(52)の記載の方法を参考にして、目的の遺伝子、プロモーター及びターミネーターからなるDNA断片(遺伝子発現カセット)を用いて宿主を形質転換することもできる。
また、前記発現ベクターに組み込んだ目的のタンパク質をコードする遺伝子の発現を調整するプロモーターの種類も、使用する宿主の種類に応じて適宜選択することができる。本発明で好ましく用いることができるプロモーターとしては、ハウスキーピング遺伝子プロモーター(例えば、チューブリンプロモーター、アクチンプロモーター、ユビキチンプロモーター等)、ヒートショックプロテインプロモーター、ナンノクロロプシス属由来のビオラキサンチン/クロロフィルa結合タンパク質遺伝子のプロモーター(VCP1プロモーター、VCP2プロモーター)(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 2011, vol. 108(52))、ナンノクロロプシス属由来のオレオシン様タンパクLDSP(lipid droplet surface protein)遺伝子のプロモーター(LDSPプロモーター)(PLOS Genetics, 2012; 8(11): e1003064. doi: 10. 1371)、ACP遺伝子のプロモーター(ACPプロモーター)、デサチュラーゼ遺伝子のプロモーター、AT遺伝子のプロモーター(ATプロモーター)、ナンノクロロプシス属由来のグルタミン合成酵素遺伝子のプロモーター(GSプロモーター)、及びナンノクロロプシス属由来のアンモニウムトランスポーター遺伝子のプロモーター(AMTプロモーター)を好ましく用いることができる。また、ナンノクロロプシス属に属する藻類は一般に栄養(特に窒素)欠乏条件や強光条件において効率的に脂質を生産することが知られるため、これらの条件下で強く発現するプロモーターを用いることがより好ましい。栄養欠乏条件や強光条件において強く発現するという観点から、脂肪酸合成経路やTAG合成経路に関わる遺伝子のプロモーターや窒素同化に関わる遺伝子のプロモーターが好ましく、LDSP遺伝子のプロモーター、ACPプロモーター、デサチュラーゼ遺伝子のプロモーター、ATプロモーター、GSプロモーター、及びAMTプロモーターがより好ましく、LDSP遺伝子のプロモーター、GSプロモーター、及びAMTプロモーターがさらに好ましい。
また、目的のタンパク質をコードする遺伝子が組み込まれたことを確認するための選択マーカーの種類も、使用する宿主の種類に応じて適宜選択することができる。本発明で好ましく用いることができる選択マーカーとしては、アンピシリン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、エリスロマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、スペクチノマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、ブラストサイジンS耐性遺伝子、ビアラフォス耐性遺伝子、ゼオシン耐性遺伝子、パロモマイシン耐性遺伝子、ゲンタマイシン耐性遺伝子、及びハイグロマイシン耐性遺伝子等の薬剤耐性遺伝子が挙げられる。さらに、栄養要求性に関連する遺伝子の欠損等を選択マーカー遺伝子として使用することもできる。
目的のタンパク質をコードする遺伝子の前記ベクターへの導入は、制限酵素処理やライゲーション等の常法により行うことができる。
また、形質転換方法は、使用する宿主の種類に応じて常法より適宜選択することができる。例えば、カルシウムイオンを用いる形質転換方法、一般的なコンピテントセル形質転換方法、プロトプラスト形質転換法、エレクトロポレーション法、LP形質転換方法、アグロバクテリウムを用いた方法、パーティクルガン法等が挙げられる。宿主としてナンノクロロプシス属の藻類を用いる場合、Randor Radakovits, et al.,Nature Communications,DOI:10.1038/ncomms1688,2012等に記載のエレクトロポレーション法を用いて形質転換を行うこともできる。
目的遺伝子断片が導入された形質転換体の選択は、選択マーカー等を利用することで行うことができる。例えば、薬剤耐性遺伝子が、形質転換時に目的DNA断片とともに宿主細胞中に導入された結果、形質転換体が獲得する薬剤耐性を指標に行うことができる。また、ゲノムを鋳型としたPCR法等によって、目的DNA断片の導入を確認することもできる。
前記Δ5-ELO遺伝子及びΔ4-DES遺伝子をゲノム上に有する宿主において、当該遺伝子の発現調節領域を改変して、当該遺伝子の発現を促進させる方法について説明する。
「発現調節領域」とは、プロモーター、ターミネーター、及び非翻訳領域を示し、これらの配列は一般に隣接する遺伝子の発現量(転写量、翻訳量)の調節に関与している。ゲノム上に前記Δ5-ELO遺伝子及びΔ4-DES遺伝子を有する宿主においては、当該遺伝子の発現調節領域を改変して当該遺伝子の発現を促進させることで、炭素原子数が22のPUFAの生産性を向上させることができる。
発現調節領域の改変方法としては、例えばプロモーターの入れ替えが挙げられる。ゲノム上に前記Δ5-ELO遺伝子及びΔ4-DES遺伝子などを有する宿主において、当該遺伝子のプロモーターを、より転写活性の高いプロモーターに入れ替えることで、当該遺伝子の発現を促進させることができる。
前記宿主としては、前述した生物種のうち、ゲノム上にΔ5-ELO遺伝子及びΔ4-DES遺伝子などを有するものを好適に用いることができる。
プロモーターの入れ替えに用いるプロモーターとしては特に限定されず、Δ5-ELO遺伝子及びΔ4-DES遺伝子のプロモーターよりも転写活性が高く、PUFAの生産に適したものから適宜選択することができる。
例えば、チューブリンプロモーター、ヒートショックプロテインプロモーター、ビオラキサンチン/クロロフィルa結合タンパク質遺伝子のプロモーター(VCP1プロモーター、VCP2プロモーター)、ナンノクロロプシス属由来のオレオシン様タンパクLDSP遺伝子のプロモーター、ACPプロモーター、デサチュラーゼ遺伝子のプロモーター、ATプロモーター、GSプロモーター、及びAMTプロモーターを好ましく用いることができる。脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質の生産性向上の観点から、脂肪酸合成経路やTAG合成経路に関わる遺伝子のプロモーターや窒素同化に関わる遺伝子のプロモーターが好ましく、LDSP遺伝子のプロモーター、ACPプロモーター、デサチュラーゼ遺伝子のプロモーター、ATプロモーター、GSプロモーター、及びAMTプロモーターがより好ましく、LDSP遺伝子のプロモーター、GSプロモーター、及びAMTプロモーターがさらに好ましい。
前述のプロモーターの改変は、相同組換えなどの常法に従い行うことができる。具体的には、標的とするプロモーターの上流、下流領域を含み、標的プロモーターに代えて別のプロモーターを含む直鎖状のDNA断片を構築し、これを宿主細胞に取り込ませ、宿主ゲノムの標的プロモーターの上流側と下流側とで2回交差の相同組換えを起こす。その結果、ゲノム上の標的プロモーターが別のプロモーター断片と置換され、プロモーターを改変することができる。
このような相同組換えによる標的プロモーターの改変方法は、例えば、Methods in molecular biology,1995, vol. 47, p. 291-302等の文献を参考に行うことができる。特に、宿主がナンノクロロプシス属に属する藻類の場合、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 2011, vol. 108(52)等の文献を参考にして、相同組換え法によりゲノム中の特定の領域を改変することができる。
本発明の形質転換体は、炭素原子数が22を超えるPUFAの生産性が、前記Δ5-ELO遺伝子及びΔ4-DES遺伝子などの発現がともに促進されていない宿主と比較して向上している。したがって、本発明の形質転換体を適切な条件で培養又は栽培し、次いで得られた培養物から炭素原子数が22を超えるPUFAを回収すれば、炭素原子数が22を超えるPUFAを効率よく製造することができる。
ここで「培養物」とは培養した後の培養液及び形質転換体をいう。
本発明の形質転換体の培養条件は、形質転換体の宿主に応じて適宜選択することができ、その宿主に対して通常用いられる培養条件を使用できる。また脂肪酸の生産効率の点から、培地中に、例えば脂肪酸生合成系に関与する前駆物質としてグリセロール、酢酸、又はグルコース等を添加してもよい。
前記培養に用いる培地は、天然海水又は人工海水をベースにしたものを使用してもよいし、市販の培養培地を使用してもよい。具体的な培地としては、f/2培地、ESM培地、ダイゴIMK培地、L1培地、MNK培地、等を挙げることができる。なかでも、脂質の生産性向上及び栄養成分濃度の観点から、f/2培地、ESM培地、又はダイゴIMK培地が好ましく、f/2培地、又はダイゴIMK培地がより好ましく、f/2培地がさらに好ましい。藻類の生育促進、脂肪酸の生産性向上のため、培地に、窒素源、リン源、金属塩、ビタミン類、微量金属等を適宜添加することができる。
培地に接種する形質転換体の量は適宜選択することができ、生育性の点から培地当り1~50%(vol/vol)が好ましく、1~10%(vol/vol)がより好ましい。培養温度は、藻類の増殖に悪影響を与えない範囲であれば特に制限されないが、通常、5~40℃の範囲である。藻類の生育促進、脂肪酸の生産性向上、及び生産コストの低減の観点から、好ましくは10~35℃であり、より好ましくは15~30℃である。
また前記培養は、光合成ができるよう光照射下で行うことが好ましい。光照射は、光合成が可能な条件であればよく、人工光でも太陽光でもよい。光照射時の光強度としては、藻類の生育促進、脂肪酸の生産性向上の観点から、好ましくは1~4,000μmol/m2/sの範囲、より好ましくは10~2,500μmol/m2/sの範囲、より好ましくは100~2,500μmol/m2/sの範囲、より好ましくは200~2,500μmol/m2/sの範囲、より好ましくは250~2,500μmol/m2/sの範囲、より好ましくは300~2,500μmol/m2/sの範囲である。また、光照射の間隔は、特に制限されないが、前記と同様の観点から、明暗周期で行うことが好ましく、24時間のうち明期が好ましくは8~24時間、より好ましくは10~18時間、さらに好ましくは12時間である。
また前記培養は、光合成ができるように二酸化炭素を含む気体の存在下、又は炭酸水素ナトリウムなどの炭酸塩を含む培地で行うことが好ましい。気体中の二酸化炭素の濃度は特に限定されないが、生育促進、脂肪酸の生産性向上の観点から0.03(大気条件と同程度)~10%が好ましく、より好ましくは0.05~5%、さらに好ましくは0.1~3%、よりさらに好ましくは0.3~1%である。炭酸塩の濃度は特に限定されないが、例えば炭酸水素ナトリウムを用いる場合、生育促進、脂肪酸の生産性向上の観点から0.01~5質量%が好ましく、より好ましくは0.05~2質量%、さらに好ましくは0.1~1質量%である。
培養時間は特に限定されず、脂質を高濃度に蓄積する藻体が高い濃度で増殖できるように、長期間(例えば150日程度)行なってもよい。藻類の生育促進、脂肪酸の生産性向上、及び生産コストの低減の観点から、培養期間は、好ましくは3~90日間、より好ましくは7~30日間、さらに好ましくは14~21日間である。なお、培養は、通気攪拌培養、振とう培養又は静置培養のいずれでもよく、通気性の向上の観点から、通気撹拌培養が好ましい。
培養物から脂質を採取する方法としては、常法から適宜選択することができる。例えば、前述の培養物から、ろ過、遠心分離、細胞の破砕、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、クロロホルム/メタノール抽出法、ヘキサン抽出法、又はエタノール抽出法等により脂質成分を単離、回収することができる。より大規模な培養を行った場合は、培養物より油分を圧搾又は抽出により回収後、脱ガム、脱酸、脱色、脱蝋、脱臭等の一般的な精製を行い、脂質を得ることができる。このように脂質成分を単離した後、単離した脂質を加水分解することで脂肪酸を得ることができる。脂質成分から脂肪酸を単離する方法としては、例えば、アルカリ溶液中で70℃程度の高温で処理をする方法、リパーゼ処理をする方法、又は高圧熱水を用いて分解する方法等が挙げられる。
本発明の製造方法において製造される脂質は、その利用性の点から、脂肪酸又は脂肪酸化合物を含んでいることが好ましく、脂肪酸又は脂肪酸エステル化合物を含んでいることがさらに好ましい。
脂質中に含まれる脂肪酸又は脂肪酸エステル化合物は、炭素原子数が22のPUFA又はその脂肪酸エステル化合物がより好ましく、DPA若しくはDHA又はその脂肪酸エステル化合物がさらに好ましく、DHA又はその脂肪酸エステル化合物がさらに好ましい。
脂肪酸エステル化合物は、生産性の点から、単純脂質又は複合脂質が好ましく、単純脂質がさらに好ましく、TAGがさらにより好ましい。
また、Δ5-ELO及びΔ4-DESの発現を促進させたナンノクロロプシス属に属する藻類の細胞内で生産される全脂肪酸中のDHAの含有量(%TFA)は、0.5質量%以上であることが好ましく、1.5質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることがさらに好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましく、8質量%以上であることがさらに好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。
また、本発明の製造方法により生産される脂質はトリアシルグリセロールを含むことが好ましい。また、前記トリアシルグリセロールはDHAを0.5質量%以上含有することが好ましく、1.5質量%以上含有することがより好ましく、3質量%以上含有することがさらに好ましく、5質量%以上含有することがさらに好ましく、8質量%以上含有することがさらに好ましく、10質量%以上含有することがさらに好ましい。
本発明の製造方法により得られる脂肪酸は、食用として用いる他、可塑剤、化粧品等の乳化剤、石鹸や洗剤等の洗浄剤、繊維処理剤、毛髪リンス剤、又は殺菌剤や防腐剤として利用することができる。
本発明は、Δ5-ELO遺伝子を含有する組換えベクター、及びΔ4-DES遺伝子を含有する組換えベクターを含んでなる、ナンノクロロプシス属に属する藻類の形質転換体の作製用キットも提供する。本発明のキットは、PUFA又はこれを構成成分とする脂質の生産性に優れた形質転換体の作製に使用することができる。本発明のキットは、ACP遺伝子を含有する組換えベクター、Δ12-DES遺伝子を含有する組換えベクター、Δ6-DES遺伝子を含有する組換えベクター、ω3-DES遺伝子を含有する組換えベクター、Δ9-DES遺伝子を含有する組換えベクター、及びΔ6-ELO遺伝子を含有する組換えベクターからなる群より選ばれる少なくとも1種の組換えベクターを含んでもよく、ACP遺伝子を含有する組換えベクター、Δ12-DES遺伝子を含有する組換えベクター、Δ6-DES遺伝子を含有する組換えベクター、ω3-DES遺伝子を含有する組換えベクター、Δ9-DES遺伝子を含有する組換えベクター、及びΔ6-ELO遺伝子を含有する組換えベクターを全て含んでもよい。
なお本発明のキットは、前記組換えベクターの他、宿主、前記ベクターで宿主を形質転換するために通常用いられる試薬、形質転換用緩衝液、形質転換体を選抜するための指標となる試薬等、形質転換体の作製の検出に必要な他の要素を含んでいてもよい。
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の脂質の製造方法、脂質生産性の向上方法、脂質の組成の改変方法、形質転換体、形質転換体の製造方法を開示する。
<1>Δ5-ELO及びΔ4-DESの発現を促進させたナンノクロロプシス属に属する藻類を培養し、炭素原子数22の長鎖多価不飽和脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質を生産させる、脂質の製造方法。
<2>Δ5-ELO及びΔ4-DESの発現を促進させることにより、ナンノクロロプシス属に属する藻類の細胞内で生産される炭素原子数22の長鎖多価不飽和脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質の生産性を向上させる、脂質の生産性の向上方法。
<3>Δ5-ELO及びΔ4-DESの発現を促進させ、ナンノクロロプシス属に属する藻類の細胞内で生産される炭素原子数22の長鎖多価不飽和脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質の生産性を向上させ、生産される全脂肪酸又は全脂質中の脂肪酸の組成を改変する、脂肪酸組成の改変方法。
<4>Δ5-ELOをコードする遺伝子及びΔ4-DESをコードする遺伝子の発現を前記ナンノクロロプシス属に属する藻類の細胞内で促進させ、Δ5-ELO及びΔ4-DESの発現を促進する、前記<1>~<3>のいずれか1項記載の方法。
<5>Δ5-ELOをコードする遺伝子及びΔ4-DESをコードする遺伝子を前記ナンノクロロプシス属に属する藻類に導入し、導入したΔ5-ELOをコードする遺伝子及びΔ4-DESをコードする遺伝子の発現を促進させる、前記<1>~<4>のいずれか1項記載の方法。
<6>前記Δ5-ELOが下記タンパク質(A)~(J)からなる群より選ばれる少なくとも1種のタンパク質、好ましくは下記タンパク質(A)~(F)からなる群より選ばれる少なくとも1種のタンパク質、より好ましくは下記タンパク質(A)、(B)、(E)、及び(F)からなる群より選ばれる少なくとも1種のタンパク質である、前記<1>~<5>のいずれか1項に記載の方法。

(A)配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(B)前記タンパク質(A)のアミノ酸配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、のアミノ酸配列からなり、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質。
(C)配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(D)前記タンパク質(C)のアミノ酸配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、のアミノ酸配列からなり、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質。
(E)配列番号12で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(F)前記タンパク質(E)のアミノ酸配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、のアミノ酸配列からなり、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質。
(G)配列番号15で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(H)前記タンパク質(G)のアミノ酸配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、のアミノ酸配列からなり、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質。
(I)配列番号18で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(J)前記タンパク質(I)のアミノ酸配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、のアミノ酸配列からなり、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質。
<7>前記タンパク質(B)が、前記タンパク質(A)のアミノ酸配列に、1又は複数個、好ましくは1個以上106個以下、より好ましくは1個以上93個以下、より好ましくは1個以上80個以下、より好ましくは1個以上66個以下、より好ましくは1個以上53個以下、より好ましくは1個以上40個以下、より好ましくは1個以上26個以下、より好ましくは1個以上18個以下、より好ましくは1個以上13個以下、より好ましくは1個以上8個以下、より好ましくは1個以上5個以下、さらに好ましくは1個以上2個以下、のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質である、前記<6>項に記載の方法。
<8>前記タンパク質(D)が、前記タンパク質(C)のアミノ酸配列に、1又は複数個、好ましくは1個以上106個以下、より好ましくは1個以上120個以下、好ましくは1個以上105個以下、より好ましくは1個以上90個以下、より好ましくは1個以上75個以下、より好ましくは1個以上60個以下、より好ましくは1個以上45個以下、より好ましくは1個以上30個以下、より好ましくは1個以上21個以下、より好ましくは1個以上15個以下、より好ましくは1個以上9個以下、より好ましくは1個以上6個以下、さらに好ましくは1個以上3個以下、のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質である、前記<6>項に記載の方法。
<9>前記タンパク質(F)が、前記タンパク質(E)のアミノ酸配列に、1又は複数個、好ましくは1個以上143個以下、より好ましくは1個以上125個以下、より好ましくは1個以上107個以下、より好ましくは1個以上89個以下、より好ましくは1個以上71個以下、より好ましくは1個以上53個以下、より好ましくは1個以上35個以下、より好ましくは1個以上25個以下、より好ましくは1個以上17個以下、より好ましくは1個以上10個以下、より好ましくは1個以上7個以下、さらに好ましくは1個以上3個以下、のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質である、前記<6>項に記載の方法。
<10>前記タンパク質(H)が、前記タンパク質(G)のアミノ酸配列に、1又は複数個、好ましくは1個以上134個以下、より好ましくは1個以上117個以下、より好ましくは1個以上100個以下、より好ましくは1個以上83個以下、より好ましくは1個以上67個以下、より好ましくは1個以上50個以下、より好ましくは1個以上33個以下、より好ましくは1個以上23個以下、より好ましくは1個以上16個以下、より好ましくは1個以上10個以下、より好ましくは1個以上6個以下、さらに好ましくは1個以上3個以下、のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質である、前記<6>項に記載の方法。
<11>前記タンパク質(J)が、前記タンパク質(I)のアミノ酸配列に、1又は複数個、好ましくは1個以上139個以下、より好ましくは1個以上121個以下、より好ましくは1個以上104個以下、より好ましくは1個以上87個以下、より好ましくは1個以上69個以下、より好ましくは1個以上52個以下、より好ましくは1個以上34個以下、より好ましくは1個以上24個以下、より好ましくは1個以上17個以下、より好ましくは1個以上10個以下、より好ましくは1個以上6個以下、さらに好ましくは1個以上3個以下、のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質である、前記<6>項に記載の方法。
<12>前記Δ5-ELO、好ましくは前記タンパク質(A)~(J)のいずれか1つ、をコードする遺伝子が、下記DNA(a)~(j)のいずれか1つからなる遺伝子、より好ましくは下記DNA(a)~(f)のいずれか1つからなる遺伝子、より好ましくは下記DNA(a)、(b)、(e)、又は(f)のいずれか1つからなる遺伝子である、前記<1>~<11>のいずれか1項記載の方法。

(a)配列番号4で表される塩基配列からなるDNA。
(b)前記DNA(a)の塩基配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(c)配列番号7で表される塩基配列からなるDNA。
(d)前記DNA(c)の塩基配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(e)配列番号10で表される塩基配列からなるDNA。
(f)前記DNA(e)の塩基配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(g)配列番号13で表される塩基配列からなるDNA。
(h)前記DNA(g)の塩基配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(i)配列番号16で表される塩基配列からなるDNA。
(j)前記DNA(i)の塩基配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質をコードするDNA。
<13>前記DNA(b)が、前記DNA(a)の塩基配列に、1若しくは複数個、好ましくは1個以上321個以下、より好ましくは1個以上281個以下、より好ましくは1個以上241個以下、より好ましくは1個以上201個以下、より好ましくは1個以上160個以下、より好ましくは1個以上120個以下、より好ましくは1個以上80個以下、より好ましくは1個以上56個以下、より好ましくは1個以上40個以下、より好ましくは1個以上24個以下、より好ましくは1個以上16個以下、さらに好ましくは1個以上8個以下、の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加された塩基配列からなり、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質をコードするDNA、又は前記DNA(a)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質をコードするDNAである、前記<12>項記載の方法。
<14>前記DNA(d)が、前記DNA(c)の塩基配列に、1若しくは複数個、好ましくは1個以上361個以下、より好ましくは1個以上316個以下、より好ましくは1個以上270個以下、より好ましくは1個以上225個以下、より好ましくは1個以上180個以下、より好ましくは1個以上135個以下、より好ましくは1個以上90個以下、より好ましくは1個以上63個以下、より好ましくは1個以上45個以下、より好ましくは1個以上27個以下、より好ましくは1個以上18個以下、さらに好ましくは1個以上9個以下、の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加された塩基配列からなり、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質をコードするDNA、又は前記DNA(c)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質をコードするDNAである、前記<12>項記載の方法。
<15>前記DNA(f)が、前記DNA(e)の塩基配列に、1若しくは複数個、好ましくは1個以上430個以下、より好ましくは1個以上376個以下、より好ましくは1個以上323個以下、より好ましくは1個以上269個以下、より好ましくは1個以上215個以下、より好ましくは1個以上161個以下、より好ましくは1個以上107個以下、より好ましくは1個以上75個以下、より好ましくは1個以上53個以下、より好ましくは1個以上32個以下、より好ましくは1個以上21個以下、さらに好ましくは1個以上10個以下、の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加された塩基配列からなり、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質をコードするDNA、又は前記DNA(e)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質をコードするDNAである、前記<12>項記載の方法。
<16>前記DNA(h)が、前記DNA(g)の塩基配列に、1若しくは複数個、好ましくは1個以上403個以下、より好ましくは1個以上352個以下、より好ましくは1個以上302個以下、より好ましくは1個以上252個以下、より好ましくは1個以上201個以下、より好ましくは1個以上151個以下、より好ましくは1個以上100個以下、より好ましくは1個以上70個以下、より好ましくは1個以上50個以下、より好ましくは1個以上30個以下、より好ましくは1個以上20個以下、さらに好ましくは1個以上10個以下、の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加された塩基配列からなり、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質をコードするDNA、又は前記DNA(g)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質をコードするDNAである、前記<12>項記載の方法。
<17>前記DNA(j)が、前記DNA(i)の塩基配列に、1若しくは複数個、好ましくは1個以上418個以下、より好ましくは1個以上366個以下、より好ましくは1個以上314個以下、より好ましくは1個以上261個以下、より好ましくは1個以上209個以下、より好ましくは1個以上157個以下、より好ましくは1個以上104個以下、より好ましくは1個以上73個以下、より好ましくは1個以上52個以下、より好ましくは1個以上31個以下、より好ましくは1個以上20個以下、さらに好ましくは1個以上10個以下、の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加された塩基配列からなり、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質をコードするDNA、又は前記DNA(i)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつΔ5-ELO活性を有するタンパク質をコードするDNAである、前記<12>項記載の方法。
<18>前記Δ4-DESが下記タンパク質(K)~(N)からなる群より選ばれる少なくとも1種のタンパク質である、前記<1>~<17>のいずれか1項記載の方法。

(K)配列番号27で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(L)前記タンパク質(K)のアミノ酸配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、のアミノ酸配列からなり、かつΔ4-DES活性を有するタンパク質。
(M)配列番号30で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(N)前記タンパク質(M)のアミノ酸配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、のアミノ酸配列からなり、かつΔ4-DES活性を有するタンパク質。
<19>前記タンパク質(L)が、前記タンパク質(K)のアミノ酸配列に、1又は複数個、好ましくは1個以上178個以下、より好ましくは1個以上155個以下、より好ましくは1個以上133個以下、より好ましくは1個以上111個以下、より好ましくは1個以上89個以下、より好ましくは1個以上66個以下、より好ましくは1個以上44個以下、より好ましくは1個以上31個以下、より好ましくは1個以上22個以下、より好ましくは1個以上13個以下、より好ましくは1個以上8個以下、さらに好ましくは1個以上4個以下、のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつΔ4-DES活性を有するタンパク質である、前記<18>項に記載の方法。
<20>前記タンパク質(N)が、前記タンパク質(M)のアミノ酸配列に、1又は複数個、好ましくは1個以上178個以下、より好ましくは1個以上156個以下、より好ましくは1個以上134個以下、より好ましくは1個以上111個以下、より好ましくは1個以上89個以下、より好ましくは1個以上67個以下、より好ましくは1個以上44個以下、より好ましくは1個以上31個以下、より好ましくは1個以上22個以下、より好ましくは1個以上13個以下、より好ましくは1個以上8個以下、さらに好ましくは1個以上4個以下、のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつΔ4-DES活性を有するタンパク質である、前記<18>項に記載の方法。
<21>前記Δ4-DES、好ましくは前記タンパク質(K)~(N)のいずれか1つ、をコードする遺伝子が、下記DNA(k)~(n)のいずれか1つからなる遺伝子である、前記<1>~<20>のいずれか1項記載の方法。

(k)配列番号25で表される塩基配列からなるDNA。
(l)前記DNA(k)の塩基配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつΔ4-DES活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(m)配列番号28で表される塩基配列からなるDNA。
(n)前記DNA(m)の塩基配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつΔ4-DES活性を有するタンパク質をコードするDNA。
<22>前記DNA(l)が、前記DNA(k)の塩基配列に、1若しくは複数個、好ましくは1個以上535個以下、より好ましくは1個以上468個以下、より好ましくは1個以上401個以下、より好ましくは1個以上334個以下、より好ましくは1個以上267個以下、より好ましくは1個以上200個以下、より好ましくは1個以上133個以下、より好ましくは1個以上93個以下、より好ましくは1個以上66個以下、より好ましくは1個以上40個以下、より好ましくは1個以上26個以下、さらに好ましくは1個以上13個以下、の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加された塩基配列からなり、かつΔ4-DES活性を有するタンパク質をコードするDNA、又は前記DNA(k)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつΔ4-DES活性を有するタンパク質をコードするDNAである、前記<21>項記載の方法。
<23>前記DNA(n)が、前記DNA(m)の塩基配列に、1若しくは複数個、好ましくは1個以上537個以下、より好ましくは1個以上470個以下、より好ましくは1個以上403個以下、より好ましくは1個以上336個以下、より好ましくは1個以上268個以下、より好ましくは1個以上201個以下、より好ましくは1個以上134個以下、より好ましくは1個以上94個以下、より好ましくは1個以上67個以下、より好ましくは1個以上40個以下、より好ましくは1個以上26個以下、さらに好ましくは1個以上13個以下、の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加された塩基配列からなり、かつΔ4-DES活性を有するタンパク質をコードするDNA、又は前記DNA(m)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつΔ4-DES活性を有するタンパク質をコードするDNAである、前記<21>項記載の方法。
<24>前記ナンノクロロプシス属に属する藻類において、ACPの発現、又はACP遺伝子の発現を促進させた、前記<1>~<23>のいずれか1項記載の方法。
<25>ACP遺伝子の発現を前記ナンノクロロプシス属に属する藻類の細胞内で促進させ、ACPの発現を促進する、前記<24>項記載の方法。
<26>ACP遺伝子を前記ナンノクロロプシス属に属する藻類に導入し、導入したACP遺伝子の発現を促進させる、前記<24>又は<25>項記載の方法。
<27>前記ACPが下記タンパク質(O)又は(P)、である、前記<24>~<26>のいずれか1項記載の方法。

(O)配列番号31で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、好ましくは配列番号31で表されるアミノ酸配列における23~146番目のアミノ酸配列からなるタンパク質、より好ましくは前記ナンノクロロプシス属に属する藻類の細胞内で機能する葉緑体移行シグナル配列が配列番号31で表されるアミノ酸配列における23~146番目のアミノ酸配列のN末端側に付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質。
(P)前記タンパク質(O)のアミノ酸配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、のアミノ酸配列からなり、かつACP活性を有するタンパク質。
<28>前記タンパク質(P)が、前記タンパク質(O)のアミノ酸配列に、1又は複数個、好ましくは1個以上58個以下、より好ましくは1個以上51個以下、さらに好ましくは1個以上43個以下、さらに好ましくは1個以上36個以下、さらに好ましくは1個以上29個以下、さらに好ましくは1個以上21個以下、さらに好ましくは1個以上14個以下、さらに好ましくは1個以上10個以下、さらに好ましくは1個以上7個以下、さらに好ましくは1個以上4個以下、さらに好ましくは1個以上2個以下、さらに好ましくは1個、のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたタンパク質であり、かつACP活性を有するタンパク質である、前記<27>項記載の方法。
<29>前記ACP、好ましくは前記タンパク質(O)又は(P)をコードする遺伝子が、下記DNA(o)又は(p)からなる遺伝子である、前記<24>~<28>のいずれか1項記載の方法。

(o)配列番号32で表される塩基配列からなるDNA、好ましくは配列番号32で表される塩基配列における67~441番目の塩基配列からなるDNA、より好ましくは前記ナンノクロロプシス属に属する藻類の細胞内で機能する葉緑体移行シグナル配列をコードする塩基配列が配列番号32で表される塩基配列における67~441番目の塩基配列の5’末端側に付加された塩基配列からなるDNA。
(p)前記DNA(o)の塩基配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつACP活性を有するタンパク質をコードするDNA。
<30>前記DNA(p)が、前記DNA(o)の塩基配列に、1若しくは複数個、好ましくは1個以上176個以下、より好ましくは1個以上154個以下、より好ましくは1個以上132個以下、より好ましくは1個以上110個以下、より好ましくは1個以上88個以下、より好ましくは1個以上66個以下、より好ましくは1個以上44個以下、より好ましくは1個以上30個以下、より好ましくは1個以上22個以下、より好ましくは1個以上13個以下、より好ましくは1個以上8個以下、より好ましくは1個以上4個以下、の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加された塩基配列からなり、かつACP活性を有するタンパク質をコードするDNA、又は前記DNA(o)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつACP活性を有するタンパク質をコードするDNAである、前記<29>項記載の方法。
<31>ACP遺伝子が葉緑体ゲノムに導入され、導入した遺伝子の発現を促進させる、前記<24>~<30>のいずれか1項記載の方法。
<32>前記ナンノクロロプシス属に属する藻類において、Δ12-DESの発現、又はΔ12-DES遺伝子の発現を促進させた、前記<1>~<31>のいずれか1項記載の方法。
<33>Δ12-DES遺伝子の発現を前記ナンノクロロプシス属に属する藻類の細胞内で促進させ、Δ12-DESの発現を促進する、前記<32>項記載の方法。
<34>Δ12-DES遺伝子を前記ナンノクロロプシス属に属する藻類に導入し、導入したΔ12-DES遺伝子の発現を促進させる、前記<32>又は<33>項記載の方法。
<35>前記Δ12-DESが下記タンパク質(Q)又は(R)、である、前記<32>~<34>のいずれか1項記載の方法。

(Q)配列番号34で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(R)前記タンパク質(Q)のアミノ酸配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、のアミノ酸配列からなり、かつΔ12-DES活性を有するタンパク質。
<36>前記タンパク質(R)が、前記タンパク質(Q)のアミノ酸配列に、1又は複数個、好ましくは1個以上175個以下、好ましくは1個以上153個以下、より好ましくは1個以上131個以下、より好ましくは1個以上109個以下、より好ましくは1個以上87個以下、より好ましくは1個以上65個以下、より好ましくは1個以上43個以下、より好ましくは1個以上30個以下、より好ましくは1個以上21個以下、より好ましくは1個以上13個以下、より好ましくは1個以上8個以下、より好ましくは1個以上4個以下、のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたタンパク質であり、かつΔ12-DES活性を有するタンパク質である、前記<35>項記載の方法。
<37>前記Δ12-DES、好ましくは前記タンパク質(Q)又は(R)をコードする遺伝子が、下記DNA(q)又は(r)からなる遺伝子である、前記<32>~<36>のいずれか1項記載の方法。

(q)配列番号35で表される塩基配列からなるDNA。
(r)前記DNA(q)の塩基配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつΔ12-DES活性を有するタンパク質をコードするDNA。
<38>前記DNA(r)が、前記DNA(q)の塩基配列に、1若しくは複数個、好ましくは1個以上526個以下、好ましくは1個以上460個以下、より好ましくは1個以上395個以下、より好ましくは1個以上329個以下、より好ましくは1個以上263個以下、より好ましくは1個以上197個以下、より好ましくは1個以上131個以下、より好ましくは1個以上92個以下、より好ましくは1個以上65個以下、より好ましくは1個以上39個以下、より好ましくは1個以上26個以下、より好ましくは1個以上13個以下、の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加された塩基配列からなり、かつΔ12-DES活性を有するタンパク質をコードするDNA、又は前記DNA(q)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつΔ12-DES活性を有するタンパク質をコードするDNAである、前記<37>項記載の方法。
<39>前記ナンノクロロプシス属に属する藻類において、Δ6-DESの発現、又はΔ6-DES遺伝子の発現を促進させた、前記<1>~<38>のいずれか1項記載の方法。
<40>Δ6-DES遺伝子の発現を前記ナンノクロロプシス属に属する藻類の細胞内で促進させ、Δ6-DESの発現を促進する、前記<39>項記載の方法。
<41>Δ6-DES遺伝子を前記ナンノクロロプシス属に属する藻類に導入し、導入したΔ6-DES遺伝子の発現を促進させる、前記<39>又は<40>項記載の方法。
<42>前記Δ6-DESが下記タンパク質(S)又は(T)、である、前記<39>~<41>のいずれか1項記載の方法。

(S)配列番号36で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(T)前記タンパク質(S)のアミノ酸配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、のアミノ酸配列からなり、かつΔ6-DES活性を有するタンパク質。
<43>前記タンパク質(T)が、前記タンパク質(S)のアミノ酸配列に、1又は複数個、好ましくは1個以上189個以下、より好ましくは1個以上165個以下、より好ましくは1個以上142個以下、より好ましくは1個以上118個以下、より好ましくは1個以上94個以下、より好ましくは1個以上71個以下、より好ましくは1個以上47個以下、より好ましくは1個以上33個以下、より好ましくは1個以上23個以下、より好ましくは1個以上14個以下、より好ましくは1個以上9個以下、より好ましくは1個以上4個以下、のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたタンパク質であり、かつΔ6-DES活性を有するタンパク質である、前記<42>項記載の方法。
<44>前記Δ12-DES、好ましくは前記タンパク質(S)又は(T)をコードする遺伝子が、下記DNA(s)又は(t)からなる遺伝子である、前記<39>~<43>のいずれか1項記載の方法。

(s)配列番号37で表される塩基配列からなるDNA。
(t)前記DNA(s)の塩基配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつΔ6-DES活性を有するタンパク質をコードするDNA。
<45>前記DNA(t)が、前記DNA(s)の塩基配列に、1若しくは複数個、好ましくは1個以上570個以下、好ましくは1個以上498個以下、より好ましくは1個以上427個以下、より好ましくは1個以上356個以下、より好ましくは1個以上285個以下、より好ましくは1個以上213個以下、より好ましくは1個以上142個以下、より好ましくは1個以上99個以下、より好ましくは1個以上71個以下、より好ましくは1個以上42個以下、より好ましくは1個以上28個以下、より好ましくは1個以上14個以下、の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加された塩基配列からなり、かつΔ6-DES活性を有するタンパク質をコードするDNA、又は前記DNA(s)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつΔ6-DES活性を有するタンパク質をコードするDNAである、前記<44>項記載の方法。
<46>前記ナンノクロロプシス属に属する藻類において、ω3-DESの発現、又はω3-DES遺伝子の発現を促進させた、前記<1>~<45>のいずれか1項記載の方法。
<47>ω3-DES遺伝子の発現を前記ナンノクロロプシス属に属する藻類の細胞内で促進させ、ω3-DESの発現を促進する、前記<46>項記載の方法。
<48>ω3-DES遺伝子を前記ナンノクロロプシス属に属する藻類に導入し、導入したω3-DES遺伝子の発現を促進させる、前記<46>又は<47>項記載の方法。
<49>前記ω3-DESが下記タンパク質(U)又は(V)、である、前記<46>~<48>のいずれか1項記載の方法。

(U)配列番号38で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(V)前記タンパク質(U)のアミノ酸配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、のアミノ酸配列からなり、かつω3-デサチュラーゼ活性を有するタンパク質。
<50>前記タンパク質(V)が、前記タンパク質(U)のアミノ酸配列に、1又は複数個、好ましくは1個以上164個以下、好ましくは1個以上143個以下、より好ましくは1個以上123個以下、より好ましくは1個以上102個以下、より好ましくは1個以上82個以下、より好ましくは1個以上61個以下、より好ましくは1個以上41個以下、より好ましくは1個以上28個以下、より好ましくは1個以上20個以下、より好ましくは1個以上12個以下、より好ましくは1個以上8個以下、より好ましくは1個以上4個以下、のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたタンパク質であり、かつω3-DES活性を有するタンパク質である、前記<49>項記載の方法。
<51>前記ω3-DES、好ましくは前記タンパク質(U)又は(V)をコードする遺伝子が、下記DNA(u)又は(v)からなる遺伝子である、前記<46>~<50>のいずれか1項記載の方法。

(u)配列番号39で表される塩基配列からなるDNA。
(v)前記DNA(u)の塩基配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつω3-DES活性を有するタンパク質をコードするDNA。
<52>前記DNA(v)が、前記DNA(u)の塩基配列に、1若しくは複数個、好ましくは1個以上493個以下、好ましくは1個以上431個以下、より好ましくは1個以上369個以下、より好ましくは1個以上308個以下、より好ましくは1個以上246個以下、より好ましくは1個以上184個以下、より好ましくは1個以上123個以下、より好ましくは1個以上86個以下、より好ましくは1個以上61個以下、より好ましくは1個以上36個以下、より好ましくは1個以上24個以下、より好ましくは1個以上12個以下、の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加された塩基配列からなり、かつω3-DES活性を有するタンパク質をコードするDNA、又は前記DNA(u)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつω3-DES活性を有するタンパク質をコードするDNAである、前記<51>項記載の方法。
<53>前記ナンノクロロプシス属に属する藻類において、Δ9-DESの発現、又はΔ9-DES遺伝子の発現を促進させた、前記<1>~<52>のいずれか1項記載の方法。
<54>Δ9-DES遺伝子の発現を前記ナンノクロロプシス属に属する藻類の細胞内で促進させ、Δ9-DESの発現を促進する、前記<53>項記載の方法。
<55>Δ9-DES遺伝子を前記ナンノクロロプシス属に属する藻類に導入し、導入したΔ9-DES遺伝子の発現を促進させる、前記<53>又は<54>項記載の方法。
<56>前記Δ9-DESが下記タンパク質(W)又は(X)、である、前記<53>~<55>のいずれか1項記載の方法。

(W)配列番号40で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(X)前記タンパク質(W)のアミノ酸配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、のアミノ酸配列からなり、かつΔ9-DES活性を有するタンパク質。
<57>前記タンパク質(X)が、前記タンパク質(W)のアミノ酸配列に、1又は複数個、好ましくは1個以上143個以下、好ましくは1個以上125個以下、より好ましくは1個以上107個以下、より好ましくは1個以上89個以下、より好ましくは1個以上71個以下、より好ましくは1個以上53個以下、より好ましくは1個以上35個以下、より好ましくは1個以上25個以下、より好ましくは1個以上17個以下、より好ましくは1個以上10個以下、より好ましくは1個以上7個以下、より好ましくは1個以上3個以下、のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたタンパク質であり、かつΔ9-DES活性を有するタンパク質である、前記<56>項記載の方法。
<58>前記Δ9-DES、好ましくは前記タンパク質(W)又は(X)をコードする遺伝子が、下記DNA(w)又は(x)からなる遺伝子である、前記<53>~<57>のいずれか1項記載の方法。

(w)配列番号41で表される塩基配列からなるDNA。
(x)前記DNA(w)の塩基配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつΔ9-DES活性を有するタンパク質をコードするDNA。
<59>前記DNA(x)が、前記DNA(w)の塩基配列に、1若しくは複数個、好ましくは1個以上432個以下、好ましくは1個以上378個以下、より好ましくは1個以上324個以下、より好ましくは1個以上270個以下、より好ましくは1個以上216個以下、より好ましくは1個以上162個以下、より好ましくは1個以上108個以下、より好ましくは1個以上75個以下、より好ましくは1個以上54個以下、より好ましくは1個以上32個以下、より好ましくは1個以上21個以下、より好ましくは1個以上10個以下、の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加された塩基配列からなり、かつΔ9-DES活性を有するタンパク質をコードするDNA、又は前記DNA(w)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつΔ9-DES活性を有するタンパク質をコードするDNAである、前記<58>項記載の方法。
<60>前記ナンノクロロプシス属に属する藻類において、Δ6-ELOの発現、又はΔ6-ELO遺伝子の発現を促進させた、前記<1>~<59>のいずれか1項記載の方法。
<61>Δ6-ELO遺伝子の発現を前記ナンノクロロプシス属に属する藻類の細胞内で促進させ、Δ6-ELOの発現を促進する、前記<60>項記載の方法。
<62>Δ6-ELO遺伝子を前記ナンノクロロプシス属に属する藻類に導入し、導入したΔ6-ELO遺伝子の発現を促進させる、前記<60>又は<61>項記載の方法。
<63>前記Δ6-ELOが下記タンパク質(Y)又は(Z)、である、前記<60>~<62>のいずれか1項記載の方法。

(Y)配列番号42で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(Z)前記タンパク質(Y)のアミノ酸配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、のアミノ酸配列からなり、かつΔ6-ELO活性を有するタンパク質。
<64>前記タンパク質(Z)が、前記タンパク質(Y)のアミノ酸配列に、1又は複数個、好ましくは1個以上110個以下、より好ましくは1個以上96個以下、より好ましくは1個以上82個以下、より好ましくは1個以上69個以下、より好ましくは1個以上55個以下、より好ましくは1個以上41個以下、より好ましくは1個以上27個以下、より好ましくは1個以上19個以下、より好ましくは1個以上13個以下、より好ましくは1個以上8個以下、より好ましくは1個以上5個以下、より好ましくは1個以上2個以下、のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたタンパク質であり、かつΔ6-ELO活性を有するタンパク質である、前記<63>項記載の方法。
<65>前記Δ6-ELO、好ましくは前記タンパク質(Y)又は(Z)をコードする遺伝子が、下記DNA(y)又は(z)からなる遺伝子である、前記<60>~<64>のいずれか1項記載の方法。

(y)配列番号43で表される塩基配列からなるDNA。
(z)前記DNA(y)の塩基配列と同一性が60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、の塩基配列からなり、かつΔ6-ELO活性を有するタンパク質をコードするDNA。
<66>前記DNA(z)が、前記DNA(y)の塩基配列に、1若しくは複数個、好ましくは1個以上432個以下、より好ましくは1個以上378個以下、より好ましくは1個以上324個以下、より好ましくは1個以上270個以下、より好ましくは1個以上216個以下、より好ましくは1個以上162個以下、より好ましくは1個以上108個以下、より好ましくは1個以上75個以下、より好ましくは1個以上54個以下、より好ましくは1個以上32個以下、より好ましくは1個以上21個以下、より好ましくは1個以上10個以下、の塩基が欠失、置換、挿入、若しくは付加された塩基配列からなり、かつΔ6-ELO活性を有するタンパク質をコードするDNA、又は前記DNA(y)と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつΔ6-ELO活性を有するタンパク質をコードするDNAである、前記<65>項記載の方法。
<67>前記ナンノクロロプシス属に属する藻類が、ナンノクロロプシス・オセアニカ、ナンノクロロプシス・オキュラータ、ナンノクロロプシス・ガディタナ、ナンノクロロプシス・サリナ、ナンノクロロプシス・リムネティカ、ナンノクロロプシス・グラニュラータ、ナンノクロロプシス・エスピー、好ましくはナンノクロロプシス・オセアニカ又はナンノクロロプシス・ガディタナ、より好ましくはナンノクロロプシス・オセアニカである、前記<1>~<66>のいずれか1項記載の方法。
<68>前記炭素原子数22の長鎖多価不飽和脂肪酸が、DPA及び/又はDHA、好ましくはDHAである、前記<1>~<67>のいずれか1項記載の方法。
<69>前記ナンノクロロプシス属に属する藻類の細胞内で生産される全脂肪酸中のDHAの含有量(%TFA)が0.5質量%以上、好ましくは1.5質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは8質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上である、前記<1>~<68>のいずれか1項記載の方法。
<70>前記脂質が、トリアシルグリセロールを含む、前記<1>~<69>のいずれか1項記載の方法。
<71>前記トリアシルグリセロールが、DHAを0.5質量%以上、好ましくは1.5質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは8質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上含有するトリアシルグリセロールである、前記<70>に記載の方法。
<72>Δ5-ELO及びΔ4-DESの発現、又はΔ5-ELOをコードする遺伝子及びΔ4-DESをコードする遺伝子の発現が促進されている、ナンノクロロプシス属に属する藻類の形質転換体。
<73>Δ5-ELOをコードする遺伝子及びΔ4-DESをコードする遺伝子の発現が前記藻類の細胞内で促進され、Δ5-ELO及びΔ4-DESの発現が促進されている、前記<72>項記載の形質転換体。
<74>Δ5-ELOをコードする遺伝子及びΔ4-DESをコードする遺伝子、又はΔ5-ELOをコードする遺伝子を含有する組換えベクター及びΔ4-DESをコードする遺伝子を含有する組換えベクターを含んでなる、前記<72>又は<73>項記載の形質転換体。
<75>Δ5-ELOをコードする遺伝子及びΔ4-DESをコードする遺伝子、又はΔ5-ELOをコードする遺伝子を含有する組換えベクター及びΔ4-DESをコードする遺伝子を含有する組換えベクターを、ナンノクロロプシス属に属する藻類に導入する、形質転換体の作製方法。
<76>Δ5-ELOをコードする遺伝子を含有する組換えベクター、及びΔ4-DESをコードする遺伝子を含有する組換えベクターを含んでなる、ナンノクロロプシス属に属する藻類の形質転換体の作製用キット。
<77>前記Δ5-ELOが前記タンパク質(A)~(J)からなる群より選ばれる少なくとも1種のタンパク質、好ましくは前記タンパク質(A)~(F)からなる群より選ばれる少なくとも1種のタンパク質、より好ましくは前記タンパク質(A)、(B)、(E)、及び(F)からなる群より選ばれる少なくとも1種のタンパク質である、前記<72>~<76>のいずれか1項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
<78>前記タンパク質(B)、(D)、(F)、(H)、(J)が、前記<7>~<11>のいずれか1項で規定するタンパク質である、前記<77>項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
<79>前記Δ5-ELO、好ましくは前記タンパク質(A)~(J)のいずれか1つ、より好ましくは前記タンパク質(A)~(F)のいずれか1つ、さらにより好ましくは前記タンパク質(A)、(B)、(E)、又は(F)のいずれか1つをコードする遺伝子が、前記<12>~<17>のいずれか1項で規定する遺伝子である、前記<72>~<78>のいずれか1項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
<80>前記Δ4-DESが前記タンパク質(K)~(N)からなる群より選ばれる少なくとも1種のタンパク質である、前記<72>~<79>のいずれか1項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
<81>前記タンパク質(L)又は(N)が、前記<19>又は<20>で規定するタンパク質である、前記<80>項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
<82>前記Δ4-DES、好ましくは前記タンパク質(K)~(N)のいずれか1つをコードする遺伝子が、前記<21>~<23>のいずれか1項で規定する遺伝子である、前記<72>~<81>のいずれか1項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
<83>前記形質転換体において、ACPの発現、又はACP遺伝子の発現が促進されている、前記<72>~<82>のいずれか1項記載の形質転換体。
<84>ACP遺伝子の発現が前記藻類の細胞内で促進され、ACPの発現が促進されている、前記<83>項記載の形質転換体。
<85>ACP遺伝子、又はACP遺伝子を含有する組換えベクターを含んでなる、前記<83>又は<84>項記載の形質転換体。
<86>ACP遺伝子、又はACP遺伝子を含有する組換えベクターを、前記藻類に導入する、前記<72>~<82>のいずれか1項記載の形質転換体の作製方法。
<87>ACP遺伝子を含有する組換えベクターを含む、前記<72>~<82>のいずれか1項記載の形質転換体の作製用キット。
<88>前記ACPが前記タンパク質(O)又は(P)である、前記<83>~<87>のいずれか1項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
<89>前記タンパク質(P)が、前記<28>で規定するタンパク質である、前記<88>項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
<90>前記ACP、好ましくは前記タンパク質(O)又は(P)をコードする遺伝子が、前記<29>又は<30>で規定する遺伝子である、前記<83>~<89>のいずれか1項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
<91>ACP遺伝子が、前記ナンノクロロプシス属に属する藻類の細胞内で機能する葉緑体移行シグナル配列をコードする塩基配列が付加された遺伝子である、前記<83>~<90>のいずれか1項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
<92>ACP遺伝子が葉緑体ゲノムに導入され、導入した遺伝子の発現が促進されている、前記<83>~<90>のいずれか1項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
<93>前記形質転換体において、Δ12-DESの発現、又はΔ12-DES遺伝子の発現が促進されている、前記<72>~<92>のいずれか1項記載の形質転換体。
<94>Δ12-DES遺伝子の発現が前記藻類の細胞内で促進され、Δ12-DESの発現が促進されている、前記<93>項記載の形質転換体。
<95>Δ12-DES遺伝子、又はΔ12-DES遺伝子を含有する組換えベクターを含んでなる、前記<93>又は<94>項記載の形質転換体。
<96>Δ12-DES遺伝子、又はΔ12-DES遺伝子を含有する組換えベクターを、前記藻類に導入する、前記<72>~<92>のいずれか1項記載の形質転換体の作製方法。
<97>Δ12-DES遺伝子を含有する組換えベクターを含む、前記<72>~<92>のいずれか1項記載の形質転換体の作製用キット。
<98>前記Δ12-DESが前記タンパク質(Q)又は(R)である、前記<72>~<97>のいずれか1項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
<99>前記タンパク質(R)が、前記<36>で規定するタンパク質である、前記<99>項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
<100>前記Δ12-DES、好ましくは前記タンパク質(Q)又は(R)をコードする遺伝子が、前記<37>又は<38>で規定する遺伝子である、前記<72>~<99>のいずれか1項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
<101>前記形質転換体において、Δ6-DESの発現、又はΔ6-DES遺伝子の発現が促進されている、前記<72>~<100>のいずれか1項記載の形質転換体。
<102>Δ6-DES遺伝子の発現が前記藻類の細胞内で促進され、Δ6-DESの発現が促進されている、前記<101>項記載の形質転換体。
<103>Δ6-DES遺伝子、又はΔ6-DES遺伝子を含有する組換えベクターを含んでなる、前記<101>又は<102>項記載の形質転換体。
<104>Δ6-DES遺伝子、又はΔ6-DES遺伝子を含有する組換えベクターを、前記藻類に導入する、前記<72>~<100>のいずれか1項記載の形質転換体の作製方法。
<105>Δ6-DES遺伝子を含有する組換えベクターを含む、前記<72>~<100>のいずれか1項記載の形質転換体の作製用キット。
<106>前記Δ6-DESが前記タンパク質(S)又は(T)である、前記<72>~<105>のいずれか1項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
<107>前記タンパク質(T)が、前記<43>で規定するタンパク質である、前記<107>項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
<108>前記Δ6-DES、好ましくは前記タンパク質(S)又は(T)をコードする遺伝子が、前記<44>又は<45>のいずれか1項で規定する遺伝子である、前記<72>~<107>のいずれか1項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
<109>前記形質転換体において、ω3-DESの発現、又はω3-DES遺伝子の発現が促進されている、前記<72>~<108>のいずれか1項記載の形質転換体。
<110>ω3-DES遺伝子の発現が前記藻類の細胞内で促進され、ω3-DESの発現が促進されている、前記<109>項記載の形質転換体。
<111>ω3-DES遺伝子、又はω3-DES遺伝子を含有する組換えベクターを含んでなる、前記<109>又は<110>項記載の形質転換体。
<112>ω3-DES遺伝子、又はω3-DES遺伝子を含有する組換えベクターを、前記藻類に導入する、前記<72>~<108>のいずれか1項記載の形質転換体の作製方法。
<113>ω3-DES遺伝子を含有する組換えベクターを含む、前記<72>~<108>のいずれか1項記載の形質転換体の作製用キット。
<114>前記ω3-DESが前記タンパク質(U)又は(V)である、前記<72>~<113>のいずれか1項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
<115>前記タンパク質(V)が、前記<50>で規定するタンパク質である、前記<115>項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
<116>前記ω3-DES、好ましくは前記タンパク質(U)又は(V)をコードする遺伝子が、前記<51>又は<52>のいずれか1項で規定する遺伝子である、前記<72>~<115>のいずれか1項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
<117>前記形質転換体において、Δ9-DESの発現、又はΔ9-DES遺伝子の発現が促進されている、前記<72>~<116>のいずれか1項記載の形質転換体。
<118>Δ9-DES遺伝子の発現が前記藻類の細胞内で促進され、Δ9-DESの発現が促進されている、前記<117>項記載の形質転換体。
<119>Δ9-DES遺伝子、又はΔ9-DES遺伝子を含有する組換えベクターを含んでなる、前記<117>又は<118>項記載の形質転換体。
<120>Δ9-DES遺伝子、又はΔ9-DES遺伝子を含有する組換えベクターを、前記藻類に導入する、前記<72>~<116>のいずれか1項記載の形質転換体の作製方法。
<121>Δ9-DES遺伝子を含有する組換えベクターを含む、前記<72>~<116>のいずれか1項記載の形質転換体の作製用キット。
<122>前記Δ9-DESが前記タンパク質(W)又は(X)である、前記<72>~<121>のいずれか1項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
<123>前記タンパク質(X)が、前記<57>で規定するタンパク質である、前記<123>項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
<124>前記Δ9-DES、好ましくは前記タンパク質(W)又は(X)をコードする遺伝子が、前記<58>又は<59>で規定する遺伝子である、前記<72>~<123>のいずれか1項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
<125>前記形質転換体において、Δ6-ELOの発現、又はΔ6-ELO遺伝子の発現が促進されている、前記<72>~<124>のいずれか1項記載の形質転換体。
<126>Δ6-ELO遺伝子の発現が前記藻類の細胞内で促進され、Δ6-ELOの発現が促進されている、前記<125>項記載の形質転換体。
<127>Δ6-ELO遺伝子、又はΔ6-ELO遺伝子を含有する組換えベクターを含んでなる、前記<125>又は<126>項記載の形質転換体。
<128>Δ6-ELO遺伝子、又はΔ6-ELO遺伝子を含有する組換えベクターを、前記藻類に導入する、前記<72>~<124>のいずれか1項記載の形質転換体の作製方法。
<129>Δ6-ELO遺伝子を含有する組換えベクターを含む、前記<72>~<124>のいずれか1項記載の形質転換体の作製用キット。
<130>前記Δ6-ELOが前記タンパク質(Y)又は(Z)である、前記<72>~<129>のいずれか1項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
<131>前記タンパク質(Z)が、前記<64>で規定するタンパク質である、前記<131>項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
<132>前記Δ6-ELO、好ましくは前記タンパク質(Y)又は(Z)をコードする遺伝子が、前記<65>又は<66>で規定する遺伝子である、前記<72>~<131>のいずれか1項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
<133>前記ナンノクロロプシス属に属する藻類が、ナンノクロロプシス・オセアニカ、ナンノクロロプシス・オキュラータ、ナンノクロロプシス・ガディタナ、ナンノクロロプシス・サリナ、ナンノクロロプシス・リムネティカ、ナンノクロロプシス・グラニュラータ、ナンノクロロプシス・エスピー、好ましくはナンノクロロプシス・オセアニカ又はナンノクロロプシス・ガディタナ、より好ましくはナンノクロロプシス・オセアニカである、前記<72>~<132>のいずれか1項記載の形質転換体、その作製方法、又は形質転換体の作製用キット。
<134>脂質を製造するための、前記<72>~<133>のいずれか1項記載の形質転換体、その作製方法により作製された形質転換体、又は形質転換体の作製用キットの使用。
<135>前記脂質が、炭素原子数22以上のPUFA又はその脂肪酸エステル化合物、好ましくはDPA及びDHA又はその脂肪酸エステル化合物、より好ましくはDHA又はその脂肪酸エステル化合物を含む、前記<134>項記載の使用。
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。ここで、本実施例で用いるプライマーの塩基配列を表1及び2に示す。
Figure 2023102179000001
Figure 2023102179000002
調製例1 ナンノクロロプシス・オセアニカ由来アシルキャリアープロテイン(ACP)遺伝子発現プラスミドの作製、ナンノクロロプシスの形質転換、及び形質転換体による脂質の製造
(1)ゼオシン耐性遺伝子発現用プラスミドの構築
ゼオシン耐性遺伝子(配列番号44)、及び文献(Randor Radakovits, et al., Nature Communications, DOI:10.1038/ncomms1688, 2012)記載のナンノクロロプシス・ガディタナCCMP526株由来チューブリンプロモーター配列(配列番号49)を人工合成した。合成したDNA断片を鋳型として、表1に示すプライマー57(配列番号57)及びプライマー58(配列番号58)のプライマー対、並びにプライマー59(配列番号59)及びプライマー60(配列番号60)のプライマー対を用いてPCRを行い、ゼオシン耐性遺伝子及びチューブリンプロモーター配列をそれぞれ増幅した。また、ナンノクロロプシス・オセアニカ NIES2145株のゲノムを鋳型として、表1に示すプライマー61(配列番号61)及びプライマー62(配列番号62)のプライマー対を用いてPCRを行い、ヒートショックプロテインターミネーター配列(配列番号50)を増幅した。さらに、プラスミドベクターpUC19(タカラバイオ社製)を鋳型として、表1に示すプライマー63(配列番号63)及びプライマー64(配列番号64)のプライマー対を用いたPCRを行い、プラスミドベクターpUC19を増幅した。これら4つの増幅断片をそれぞれ制限酵素DpnI(東洋紡株式会社製)にて処理し、High Pure PCR Product Purification Kit(Roche Applied Science社製)を用いて精製した。その後、得られた4つの断片をIn-Fusion HD Cloning Kit(Clontech社製)を用いて融合し、ゼオシン耐性遺伝子発現用プラスミドを構築した。なお、本発現プラスミドは、チューブリンプロモーター配列、ゼオシン耐性遺伝子、ヒートショックプロテインターミネーター配列の順に連結したインサート配列(ゼオシン耐性遺伝子発現カセット)とpUC19ベクター配列からなる。
(2)ナンノクロロプシス・オセアニカ由来ACP1遺伝子の取得、及び葉緑体移行シグナル連結ACP1遺伝子発現用プラスミドの構築
ナンノクロロプシス・オセアニカNIES2145株の全RNAを抽出し、SuperScript(商標) III First-Strand Synthesis SuperMix for qRT-PCR(invitrogen社製)を用いて逆転写を行ってcDNAを得た。このcDNAを鋳型として、表1に示すプライマー65(配列番号65)及びプライマー66(配列番号66)のプライマー対を用いたPCRを行い、配列番号32の塩基配列からなる遺伝子断片(以降、NoACP1遺伝子とも記載)を取得した。
また、ナンノクロロプシス・オセアニカNIES2145株のゲノムを鋳型として、表1に示すプライマー67(配列番号67)及びプライマー68(配列番号68)のプライマー対、並びにプライマー69(配列番号69)及びプライマー70(配列番号70)のプライマー対をそれぞれ用いたPCRを行い、LDSPプロモーター配列(配列番号51)及びVCP1ターミネーター配列(配列番号52)を取得した。さらに、前記ゼオシン耐性遺伝子発現プラスミドを鋳型として、表1に示すプライマー71(配列番号71)及びプライマー64(配列番号64)のプライマー対を用いたPCRを行い、ゼオシン耐性遺伝子発現カセット及びpUC19配列からなる断片を増幅した。NoACP1遺伝子断片を、LDSPプロモーター断片、VCP1ターミネーター断片、ゼオシン耐性遺伝子発現カセット及びpUC19配列からなる断片と混和し、これら4つの増幅断片を、調製例1(1)と同様の方法にて融合してNoACP1遺伝子発現用プラスミドを構築した。なお、本発現プラスミドはLDSPプロモーター配列、NoACP1遺伝子、VCP1ターミネーター配列、チューブリンプロモーター配列、ゼオシン耐性遺伝子、ヒートショックプロテインターミネーター配列の順で連結したインサート配列とpUC19ベクター配列からなる。
ナンノクロロプシス・オセアニカNIES2145株由来のcDNAを鋳型として、表1に示すプライマー72(配列番号72)及びプライマー73(配列番号73)に示すプライマー対を用いてPCRを行い、配列番号33の塩基配列からなるVCP1葉緑体移行シグナル断片を取得した。また、上記で作製したNoACP1遺伝子発現用プラスミドを鋳型として、表1に示すプライマー74(配列番号74)及びプライマー68(配列番号68)のプライマー対を用いてPCRを行い、得られた増幅断片とVCP1葉緑体移行シグナル断片を上記と同様の方法にて連結し、葉緑体移行シグナル連結NoACP1遺伝子発現用プラスミド(ゼオシン耐性)を構築した。なお、本発現プラスミドはLDSPプロモーター配列、VCP1葉緑体移行シグナル配列、ミトコンドリア移行シグナルを削除したNoACP1遺伝子(配列番号32の67~441位からなる配列)、VCP1ターミネーター配列、チューブリンプロモーター配列、ゼオシン耐性遺伝子、ヒートショックプロテインターミネーター配列の順で連結したインサート配列とpUC19ベクター配列からなる。また、VCP1葉緑体移行シグナルがナンノクロロプシス内でタンパク質を葉緑体に局在化させられることは、D. Moog, et al., Protist. 2015 Feb;166(1):161-71に示されている。
(3)ナンノクロロプシス・オセアニカ由来の各種遺伝子の取得、及び各種遺伝子発現用プラスミドの構築
ナンノクロロプシス・オセアニカNIES2145株由来のcDNAを鋳型として、表1に示すプライマー75(配列番号75)及びプライマー76(配列番号76)のプライマー対、プライマー77(配列番号77)及びプライマー78(配列番号78)のプライマー対、プライマー79(配列番号79)及びプライマー80(配列番号80)のプライマー対、プライマー81(配列番号81)及びプライマー82(配列番号82)のプライマー対、並びにプライマー83(配列番号83)及びプライマー84(配列番号84)のプライマー対、をそれぞれ用いたPCR反応により、配列番号35の塩基配列からなる遺伝子(以降、「Δ12-DES遺伝子」ともいう)断片、配列番号37の塩基配列からなる遺伝子(以降、「Δ6-DES遺伝子」ともいう)断片、配列番号39の塩基配列からなる遺伝子(以降、「ω3-DES遺伝子」ともいう)断片、配列番号41の塩基配列からなる遺伝子(以降、「Δ9-DES遺伝子」ともいう)断片、配列番号43の塩基配列からなる遺伝子(以降、「Δ6-ELO遺伝子」ともいう)断片、をそれぞれ取得した。葉緑体移行シグナル連結ACP1遺伝子発現用プラスミドの構築方法と同様の方法で、各デサチュラーゼ遺伝子若しくはエロンガーゼ遺伝子断片と、LDSPプロモーター断片、VCP1ターミネーター断片、ゼオシン耐性遺伝子発現カセット並びにpUC19配列からなる断片を融合し、Δ12-DES遺伝子発現用プラスミド、Δ6-DES遺伝子発現用プラスミド、ω3-DES遺伝子発現用プラスミド、Δ9-DES遺伝子発現用プラスミド、Δ6-ELO遺伝子発現用プラスミド、をそれぞれ構築した。なお、本発現プラスミドはLDSPプロモーター配列、各デサチュラーゼ遺伝子若しくはエロンガーゼ遺伝子、VCP1ターミネーター配列、チューブリンプロモーター配列、ゼオシン耐性遺伝子、並びにヒートショックプロテインターミネーター配列の順で連結したインサート配列とpUC19ベクター配列からなる。
ナンノクロロプシス・オセアニカNIES2145株のゲノムを鋳型として、表1に示すプライマー91(配列番号91)及びプライマー92(配列番号92)のプライマー対、並びにプライマー93(配列番号93)及びプライマー94(配列番号94)のプライマー対を用いたPCRを行い、グルタミン合成酵素(GS)プロモーター配列(配列番号53)及びLDSPターミネーター配列(配列番号54)を取得した。
また、上記で構築したΔ12-DES遺伝子発現用プラスミド又はω3-DES遺伝子発現用プラスミドを鋳型として、表1に示すプライマー95(配列番号95)及びプライマー64(配列番号64)のプライマー対を用いたPCRを行い、Δ12-DES遺伝子発現カセット若しくはω3-DES遺伝子発現カセット、ゼオシン耐性遺伝子発現カセット並びにpUC19ベクターを含む断片をそれぞれ取得した。さらに、上記で構築したΔ6-DES遺伝子発現用プラスミド又はΔ9-DES遺伝子発現用プラスミドを鋳型として、表1に示すプライマー85(配列番号85)及びプライマー86(配列番号86)のプライマー対を用いたPCR、プライマー87(配列番号87)及びプライマー88(配列番号88)のプライマー対を用いたPCRをそれぞれ行い、Δ6-DES遺伝子断片及びΔ9-DES遺伝子断片を取得した。得られた断片を、ゼオシン耐性遺伝子発現用プラスミドの構築方法と同様の方法にて適宜融合し、Δ6-DES遺伝子+Δ12-DES遺伝子発現用プラスミド、及びΔ9-DES遺伝子+ω3-DES遺伝子発現用プラスミドを構築した。なお、本発現プラスミドはGSプロモーター配列、Δ6-DES遺伝子若しくはΔ9-DES遺伝子、LDSPターミネーター配列、LDSPプロモーター配列、Δ12-DES遺伝子若しくはω3-DES遺伝子、VCP1ターミネーター配列、チューブリンプロモーター配列、ゼオシン耐性遺伝子、並びにヒートショックプロテインターミネーター配列の順で連結したインサート配列とpUC19ベクター配列からなる。
ナンノクロロプシス・オセアニカNIES2145株のゲノムを鋳型として、表1に示すプライマー96(配列番号96)及びプライマー97(配列番号97)のプライマー対、プライマー98(配列番号98)及びプライマー99(配列番号99)のプライマー対を用いたPCRを行い、アシルキャリアープロテイン2(ACP2)プロモーター配列(配列番号55)及びΔ9-DESターミネーター配列(配列番号56)を取得した。また、上記で構築したΔ9-DES遺伝子+ω3-DES遺伝子発現用プラスミドを鋳型として、プライマー100(配列番号100)及びプライマー64(配列番号64)のプライマー対を用いたPCRを行い、Δ9-DES遺伝子+ω3-DES遺伝子発現カセット、ゼオシン耐性遺伝子発現カセット及びpUC19ベクターを含む断片を取得した。さらに、上記で構築したΔ6-ELO遺伝子発現用プラスミドを鋳型として、表1に示すプライマー89(配列番号89)及びプライマー90(配列番号90)のプライマー対を用いたPCRを行い、Δ6-ELO遺伝子断片を取得した。得られた断片を、ゼオシン耐性遺伝子発現用プラスミドの構築方法と同様の方法にて融合し、Δ6-ELO遺伝子+Δ9-DES遺伝子+ω3-DES遺伝子発現用プラスミドを構築した。なお、本発現プラスミドはACP2プロモーター配列、Δ6-ELO遺伝子、Δ9-DESターミネーター配列、GSプロモーター配列、Δ9-DES遺伝子、LDSPターミネーター配列、LDSPプロモーター配列、ω3-DES遺伝子、VCP1ターミネーター配列、チューブリンプロモーター配列、ゼオシン耐性遺伝子、ヒートショックプロテインターミネーター配列の順で連結したインサート配列とpUC19ベクター配列からなる。
(4)Δ6-DES遺伝子+Δ12-DES遺伝子発現用プラスミド(パロモマイシン耐性)及びΔ6-ELO遺伝子+Δ9-DES遺伝子+ω3-DES遺伝子発現用プラスミド(ハイグロマイシン耐性)の構築
パロモマイシン耐性遺伝子(配列番号45)及びハイグロマイシン耐性遺伝子(配列番号46)を人工合成した。これらを鋳型として、表1に示すプライマー105(配列番号105)及びプライマー106(配列番号106)のプライマー対、プライマー107(配列番号107)及びプライマー108(配列番号108)のプライマー対を用いたPCRをそれぞれ行い、パロモマイシン耐性遺伝子断片及びハイグロマイシン耐性遺伝子断片を取得した。また、前記のΔ6-DES遺伝子+Δ12-DES遺伝子発現用プラスミド、Δ6-ELO遺伝子+Δ9-DES遺伝子+ω3-DES遺伝子発現用プラスミドをそれぞれ鋳型として、表1に示すプライマー60(配列番号60)及びプライマー61(配列番号61)のプライマー対を用いたPCRを行った。得られた断片を、ゼオシン耐性遺伝子発現用プラスミドの構築方法と同様の方法にて適宜融合し、Δ6-DES遺伝子+Δ12-DES遺伝子発現用プラスミド(パロモマイシン耐性)及びΔ6-ELO遺伝子+Δ9-DES遺伝子+ω3-DES遺伝子発現用プラスミド(ハイグロマイシン耐性)を構築した。
(5)各種遺伝子発現カセットのナンノクロロプシスへの導入、形質転換体の培養、培養液中の脂質の抽出、及び構成脂肪酸の分析
前記の葉緑体移行シグナル連結NoACP1遺伝子発現用プラスミド(ゼオシン耐性)、Δ6-DES遺伝子+Δ12-DES遺伝子発現用プラスミド(パロモマイシン耐性)、及びΔ6-ELO遺伝子+Δ9-DES遺伝子+ω3-DES遺伝子発現用プラスミド(ハイグロマイシン耐性)を鋳型として、表1に示すプライマー104(配列番号104)、並びにプライマー101(配列番号101)、プライマー102(配列番号102)若しくはプライマー103(配列番号103)のプライマー対を用いたPCRを行い、葉緑体移行シグナル連結NoACP1遺伝子発現用カセット(ゼオシン耐性)、Δ6-DES遺伝子+Δ12-DES遺伝子発現用カセット(パロモマイシン耐性)及びΔ6-ELO遺伝子+Δ9-DES遺伝子+ω3-DES遺伝子発現用カセット(ハイグロマイシン耐性)をそれぞれ取得した。なお、本発現用カセットは、鋳型とした発現用プラスミドのpUC19ベクター配列以外の配列からなる。増幅した断片を、High Pure PCR Product Purification Kit(Roche Applied Science社製)を用いて精製した。なお、精製の際の溶出には、キットに含まれる溶出バッファーではなく、滅菌水を用いた。
約1×10細胞のナンノクロロプシス・オセアニカNIES2145株を、384mMのソルビトール溶液で洗浄して塩を除去し、形質転換の宿主細胞として用いた。上記で増幅した葉緑体移行シグナル連結NoACP1遺伝子発現用カセット(ゼオシン耐性)を約500ngを宿主細胞に混和し、50μF、500Ω、2,200v/2mmの条件でエレクトロポレーションを行った。f/2液体培地(NaNO 75mg、NaHPO・2HO 6mg、ビタミンB12 0.5μg、ビオチン 0.5μg、チアミン 100μg、NaSiO・9HO 10mg、NaEDTA・2HO 4.4mg、FeCl・6HO 3.16mg、CoSO・7HO 12μg、ZnSO・7HO 21μg、MnCl・4HO 180μg、CuSO・5HO 7μg、NaMoO・2HO 7μg/人工海水1L)にて24時間回復培養を行った後に、2μg/mLのゼオシン含有f/2寒天培地に塗布し、25℃、0.3%CO雰囲気下、12h/12h明暗条件にて2~3週間培養した。得られたコロニーの中から、葉緑体移行シグナル連結ACP1遺伝子発現用カセットを含む株を選抜した。
続いて、選抜した葉緑体移行シグナル連結ACP1遺伝子発現用カセット導入株を親株として、上記と同様の方法でΔ6-DES遺伝子+Δ12-DES遺伝子発現用カセット(パロモマイシン耐性)を導入した。なお、形質転換体の選抜は2μg/mLのゼオシン及び100μg/mLのパロモマイシン含有f/2寒天培地にて行った。得られたコロニーの中から、葉緑体移行シグナル連結ACP1遺伝子発現用カセット及びΔ6-DES遺伝子+Δ12-DES遺伝子発現用カセットを含む株を選抜した。
さらに、選抜した葉緑体移行シグナル連結ACP1遺伝子発現用カセット及びΔ6-DES遺伝子+Δ12-DES遺伝子発現用カセット導入株を親株として、上記と同様の方法でΔ6-ELO遺伝子+Δ9-DES遺伝子+ω3-DES遺伝子発現用カセット(ハイグロマイシン耐性)を導入した。なお、形質転換体の選抜は500μg/mLのハイグロマイシン含有f/2寒天培地にて行った。得られたコロニーの中から、葉緑体移行シグナル連結ACP1遺伝子発現用カセット、Δ6-DES遺伝子+Δ12-DES遺伝子発現用カセット、及びΔ6-ELO遺伝子+Δ9-DES遺伝子+ω3-DES遺伝子発現用カセットを含む株(以下、「EPA株」とも記載する)を選抜した。
ナンノクロロプシス・オセアニカNIES2145株(以下、「野生株」とも記載する)及びEPA株を、f/2培地の窒素濃度を5倍、リン濃度を5倍に増強した培地(以下、N5P5培地)20mLに播種し、25℃、0.3%CO雰囲気下、12h/12h明暗条件にて5日間振盪培養し、前々培養液とした。96穴プレート及びInfinite M200 PRO (TECAN社)を用いて750nmにおける濁度(以降、「OD750」ともいう)を測定した。18mLのN5P5培地に対し、OD750が終濃度0.1になるように前々培養液を播種し、同条件にて5日間培養し、前培養液とした。同様にしてOD750が終濃度0.1になるように前培養液をN5P5培地18mLに播種し、同条件にて20日間の本培養を行った。
(6)ナンノクロロプシス培養液中の脂質の抽出及び構成脂肪酸の分析
培養液0.25mLに、内部標準として1mg/mLのGlyceryl triheptadecanoate(シグマアルドリッチ社製)クロロホルム溶液を50μL添加後、0.5mLのクロロホルム及び1mLのメタノールを培養液に添加して激しく攪拌後10分間放置した。その後さらに、0.5mLのクロロホルム及び0.5mLの1.5%KClを添加して攪拌後、3,000rpmにて5分間間遠心分離を行い、パスツールピペットにてクロロホルム層(下層)を回収した。得られたクロロホルム層に窒素ガスを吹き付けて乾固し、50μLのクロロホルム及び0.5mLの14%三フッ化ホウ素溶液(シグマアルドリッチ社製)を添加し、80℃にて30分間恒温した。その後、ヘキサン0.5mL、飽和食塩水1mLを添加し激しく撹拌し、室温にて10分間放置後、上層であるヘキサン層を回収して脂肪酸エステルを得た。
得られた脂肪酸エステルをガスクロマトグラフィー解析に供した。測定条件を以下に示す。

分析装置:7890B(Agilent technology社製)
キャピラリーカラム:DB-WAX(10m×100μm×0.10μm、J&W Scientific社製)
移動相:ヘリウム
オーブン温度:100℃ 保持0.5分→100~250℃(20℃/min昇温)→250℃保持10分(ポストラン:1分)
注入口温度:300℃
注入方法:スプリット注入(スプリット比:25:1)
注入量:5μL
洗浄バイアル:メタノール
検出方法:FID
検出器温度:300℃
また、脂肪酸エステルの同定は、同サンプルを同条件でガスクロマトグラフ質量分析解析に供することにより行った。
ガスクロマトグラフィー解析により得られた波形データのピーク面積より、各脂肪酸のメチルエステル量を定量した。各ピーク面積を、内部標準であるGlyceryl triheptadecanoate由来のC17脂肪酸メチルエステルのピーク面積と比較することで試料間の補正を行い、培養液1リットルあたりの各脂肪酸量を算出した。さらに、各脂肪酸量の総和を総脂肪酸量とし、総脂肪酸量に占める各脂肪酸量の割合を算出した。結果を表3に示す。それぞれの株について N=3で培養・脂質解析を行っており、その平均値と標準偏差を示した。
なお、以下の表において、「脂肪酸組成(%TFA)」は総脂肪酸の重量に対する各脂肪酸の重量を示す。また、「Cx:y」は、炭素原子数がxで二重結合数がyの脂肪酸を表す。
Figure 2023102179000003
表3から明らかなように、EPA株は野生株と比較して総脂肪酸に占めるEPA(C20:5(n-3))の割合が大幅に上昇しており、EPAの生産性が向上していることが明らかとなった。
調製例2 Δ5-ELO遺伝子発現プラスミドの作製、ナンノクロロプシスの形質転換、及び形質転換体による脂質の製造
(1)pavELO遺伝子発現用プラスミドの構築
パブロバ・エスピー(Pavlova sp.)由来のΔ5-ELO(アミノ酸配列:配列番号3)をコードするΔ5-ELO遺伝子(塩基配列:配列番号1)について、コドン使用頻度をナンノクロロプシスに最適化した配列(配列番号2、以降「pavELO遺伝子」とも記載する。なお、配列番号2の塩基配列は、配列番号3のアミノ酸配列をコードする。)を人工合成した。合成したDNA断片を鋳型として、表2に示すプライマー109(配列番号109)及びプライマー110(配列番号110)のプライマー対を用いたPCRを行い、pavELO遺伝子断片を増幅した。また、前記NoACP1遺伝子発現用プラスミドを鋳型として、表2に示すプライマー145(配列番号145)及びプライマー146(配列番号146)のプライマー対を用いたPCRを行い、LDSPプロモーター配列、ゼオシン耐性遺伝子発現カセット(チューブリンプロモーター配列、ゼオシン耐性遺伝子、ヒートショックプロテインターミネーター配列)、VCP1ターミネーター配列及びpUC19配列からなる断片を増幅した。得られた断片をpavELO遺伝子断片と混和し、ゼオシン耐性遺伝子発現用プラスミドの構築方法と同様の方法にて融合してpavELO遺伝子発現用プラスミド(ゼオシン耐性)を構築した。なお、本発現プラスミドはLDSPプロモーター配列、pavELO遺伝子、VCP1ターミネーター配列、チューブリンプロモーター配列、ゼオシン耐性遺伝子、ヒートショックプロテインターミネーター配列の順で連結したインサート配列とpUC19ベクター配列からなる。
(2)pavELO遺伝子発現用プラスミド(ビアラフォス耐性)の構築
前記のpavELO遺伝子発現用プラスミド(ゼオシン耐性)を鋳型として、表2に示すプライマー149(配列番号149)及びプライマー150(配列番号150)のプライマー対を用いたPCRを行い、チューブリンプロモーター配列、pavELO遺伝子発現カセット(LDSPプロモーター配列、pavELO遺伝子、VCP1ターミネーター配列)、ヒートショックプロテインターミネーター配列及びpUC19配列からなる断片を増幅した。また、ビアラフォス耐性遺伝子(配列番号47)を人工合成し、合成したDNA断片を鋳型として表2に示すプライマー143(配列番号143)及びプライマー144(配列番号144)のプライマー対を用いたPCRを行い、ビアラフォス耐性遺伝子断片を増幅した。得られたビアラフォス耐性遺伝子断片を、前記にて作製したチューブリンプロモーター配列、pavELO遺伝子発現カセット(LDSPプロモーター配列、pavELO遺伝子、VCP1ターミネーター配列)、ヒートショックプロテインターミネーター配列及びpUC19配列からなる断片と連結し、pavELO遺伝子発現用プラスミド(ビアラフォス耐性)を構築した。なお、本発現プラスミドはLDSPプロモーター配列、pavELO遺伝子、VCP1ターミネーター配列、チューブリンプロモーター配列、ビアラフォス耐性遺伝子、ヒートショックプロテインターミネーター配列の順で連結したインサート配列とpUC19ベクター配列からなる。
(3)pavELO遺伝子以外のΔ5-ELO遺伝子発現用プラスミド(ビアラフォス耐性)の構築
ピラミモナス・コルダタ由来のΔ5-ELO(アミノ酸配列:配列番号6)をコードするΔ5-ELO遺伝子(塩基配列:配列番号4)についてコドン使用頻度をナンノクロロプシスに最適化した配列(配列番号5、以降「PcELO遺伝子」とも記載する。なお、配列番号5の塩基配列は、配列番号6のアミノ酸配列をコードする。)、オストレオコッカス・タウリ由来のΔ5-ELO(アミノ酸配列:配列番号9)をコードするΔ5-ELO(遺伝子(塩基配列:配列番号7)についてコドン使用頻度をナンノクロロプシスに最適化した配列(配列番号8、以降「OtELO2遺伝子」とも記載する。なお、配列番号8の塩基配列は、配列番号9のアミノ酸配列をコードする。)、タラシオシーラ・シュードナナ由来のΔ5-ELO(アミノ酸配列:配列番号12)をコードするΔ5-ELO遺伝子(塩基配列:配列番号10)についてコドン使用頻度をナンノクロロプシスに最適化した配列(配列番号11、以降「TpELO2遺伝子」とも記載する。なお、配列番号11の塩基配列は、配列番号12のアミノ酸配列をコードする。)、フィスコミトレラ・パテンス由来のΔ5-ELO(アミノ酸配列:配列番号15)をコードするΔ5-ELO遺伝子(塩基配列:配列番号13)についてコドン使用頻度をナンノクロロプシスに最適化した配列(配列番号14、以降「PpELO1遺伝子」とも記載する。なお、配列番号14の塩基配列は、配列番号15のアミノ酸配列をコードする。)、マーチャンティア・ポリモーファ由来のΔ5-ELO(アミノ酸配列:配列番号18)をコードするΔ5-ELO遺伝子(塩基配列:配列番号16)についてコドン使用頻度をナンノクロロプシスに最適化した配列(配列番号17、以降「MpELO2遺伝子」とも記載する。なお、配列番号17の塩基配列は、配列番号18のアミノ酸配列をコードする。)、スラウストキトリウム・エスピー(Thraustochytrium sp.)FJN-10株由来のΔ5-ELO(アミノ酸配列:配列番号21)をコードするΔ5-ELO遺伝子(塩基配列:配列番号19)についてコドン使用頻度をナンノクロロプシスに最適化した配列(配列番号20、以降「FJNELO遺伝子」とも記載する。なお、配列番号20の塩基配列は、配列番号21のアミノ酸配列をコードする。)を、それぞれ人工合成した。合成したDNA断片を鋳型として、表2に示すプライマー113(配列番号113)及びプライマー114(配列番号114)のプライマー対、プライマー117(配列番号117)及びプライマー118(配列番号118)のプライマー対、プライマー121(配列番号121)及びプライマー122(配列番号122)のプライマー対、プライマー125(配列番号125)及びプライマー126(配列番号126)のプライマー対、プライマー129(配列番号129)及びプライマー130(配列番号130)のプライマー対、並びにプライマー133(配列番号133)及びプライマー134(配列番号134)のプライマー対を用いたPCRを行い、各種Δ5-ELO遺伝子断片をそれぞれ増幅した。
また、前記FJNELO遺伝子の合成DNA断片を鋳型として、表2に示すプライマー133(配列番号133)及びプライマー138(配列番号138)のプライマー対、プライマー134(配列番号134)及びプライマー137(配列番号137)のプライマー対を用いたPCRを行い、スラウストキトリウム・エスピー ATCC26185株由来のΔ5-ELO(アミノ酸配列:配列番号24)をコードするΔ5-ELO遺伝子(塩基配列:配列番号22)についてコドン使用頻度をナンノクロロプシスに最適化した配列(配列番号23、以降「ATCCELO遺伝子」とも記載する。なお、配列番号23の塩基配列は、配列番号24のアミノ酸配列をコードする。)の5’側及び3’側断片を増幅した。得られた各断片を、ゼオシン耐性遺伝子発現用プラスミドの構築方法と同様の方法にて融合し、ATCCELO遺伝子断片を得た。
また、前記pavELO遺伝子発現用プラスミド(ビアラフォス耐性)を鋳型として、表2に示すプライマー145(配列番号145)及びプライマー146(配列番号146)のプライマー対を用いたPCRを行い、LDSPプロモーター配列、ビアラフォス耐性遺伝子発現カセット(チューブリンプロモーター配列、ビアラフォス耐性遺伝子、ヒートショックプロテインターミネーター配列)、VCP1ターミネーター配列及びpUC19配列からなる断片を増幅した。得られた断片と増幅した各種Δ5-ELO遺伝子断片とを、ゼオシン耐性遺伝子発現用プラスミドの構築方法と同様の方法にて適宜融合し、各種Δ5-ELO遺伝子発現用プラスミド(ビアラフォス耐性)をそれぞれ構築した。なお、本発現プラスミドはLDSPプロモーター配列、各種Δ5-ELO遺伝子、VCP1ターミネーター配列、チューブリンプロモーター配列、ビアラフォス耐性遺伝子、ヒートショックプロテインターミネーター配列の順で連結したインサート配列とpUC19ベクター配列からなる。
(4)各種Δ5-ELO遺伝子発現カセットのEPA株への導入、形質転換体の培養、培養液中の脂質の抽出、及び構成脂肪酸の分析
前記の各種Δ5-ELO遺伝子発現用プラスミド(ビアラフォス耐性)を鋳型として、表2に示すプライマー151(配列番号151)及びプライマー153(配列番号153)のプライマー対を用いたPCRを行い、各種Δ5-ELO遺伝子発現用カセット(ビアラフォス耐性)をそれぞれ取得した。なお、本発現用カセットは、LDSPプロモーター配列、各種Δ5-ELO遺伝子、VCP1ターミネーター配列、チューブリンプロモーター配列、ビアラフォス耐性遺伝子、ヒートショックプロテインターミネーター配列からなる。増幅した断片を用いて、前述の方法と同様の方法によりEPA株の形質転換を行った。なお、形質転換体の選抜は2μg/mLのゼオシン及び267μg/mLのビアラフォス含有f/2寒天培地にて行った。得られたコロニーの中から、各種Δ5-ELO遺伝子発現用カセットを含むものをそれぞれ選抜した。得られた形質転換体を、12穴プレート(IWAKI社製)に分注した3.3mLのN5P5培地に播種し、25℃、0.3%CO雰囲気下、12h/12h明暗条件にて21日間振盪培養した。
(5)ナンノクロロプシス培養液中の脂質の抽出及び構成脂肪酸の分析
前述の方法と同様の方法により、ナンノクロロプシスの培養液0.25mLから脂質の抽出及び脂肪酸エステルへの変換を行った。得られた脂肪酸エステルを前述の方法と同様の条件でガスクロマトグラフィー解析に供した。
ガスクロマトグラフィー解析により得られた波形データより、各脂肪酸メチルエステルのピーク面積の総和に対する、各脂肪酸メチルエステルのピーク面積の割合を算出した。結果を表4に示す。各形質転換体について独立した4~6ライン(親株であるEPA株はN=2)の培養・脂質解析を行っており、その平均値と標準偏差を示した。
なお、下記表4において、例えば「pavELO株」とあるのは、EPA株にpavELO遺伝子が導入された形質転換体を意味する。他の記載についても同様である。
Figure 2023102179000004
表4より、EPA株にΔ5-ELO遺伝子を導入した各形質転換体では、C22:5 (n-3)(以降「DPA」とも記載する)の生産性が向上することが明らかになった。特に、Δ5-ELO遺伝子としてPcELO遺伝子、OtELO2遺伝子、TpELO2遺伝子、PpELO1遺伝子、又はMpELO2遺伝子を導入した形質転換体において、総脂肪酸量に占めるDPA量の割合が高いことが明らかになった。
一方で、EPA株にΔ5-ELO遺伝子を導入した形質転換体であっても、C22:6 (n-3)は検出されなかった。
実施例1 Δ5-ELO遺伝子及びPlDES1遺伝子の共発現プラスミドの作製、ナンノクロロプシスの形質転換、並びに形質転換体による脂質の製造
(1)pavELO遺伝子+PlDES1遺伝子発現用プラスミドの構築
パブロバ・ルテリ由来Δ4-DES(アミノ酸配列:配列番号27)をコードするΔ4-DES遺伝子(塩基配列:配列番号25)について、コドン使用頻度をナンノクロロプシスに最適化した配列(配列番号26、以降「PlDES1遺伝子」とも記載する。なお、配列番号26の塩基配列は、配列番号27のアミノ酸配列をコードする。)を人工合成した。合成したDNA断片を鋳型として、表2に示すプライマー139(配列番号139)及びプライマー140(配列番号140)のプライマー対を用いたPCRを行い、PlDES1遺伝子断片を増幅した。また、調製例2で作製したpavELO遺伝子発現用プラスミドを鋳型として、表2に示すプライマー111(配列番号111)及びプライマー112(配列番号112)のプライマー対を用いたPCRを行い、pavELO遺伝子断片を増幅した。さらに、調製例1で作製したΔ6-DES遺伝子+Δ12-DES遺伝子発現用プラスミドを鋳型として、表2に示すプライマー145(配列番号145)及びプライマー148(配列番号148)のプライマー対、並びにプライマー146(配列番号146)及びプライマー147(配列番号147)のプライマー対を用いたPCRを行い、GSプロモーター配列、ゼオシン耐性遺伝子発現カセット(チューブリンプロモーター配列、ゼオシン耐性遺伝子、ヒートショックプロテインターミネーター配列)、VCP1ターミネーター配列及びpUC19配列からなる断片、並びにLDSPターミネーター配列及びLDSPプロモーター配列からなる断片をそれぞれ増幅した。得られた2種類の断片と、前記にて作製したPlDES1遺伝子断片及びpavELO遺伝子断片を調製例1と同様の方法にて融合し、pavELO遺伝子+PlDES1遺伝子発現用プラスミド(ゼオシン耐性)を構築した。なお、本発現プラスミドはGSプロモーター配列、pavELO遺伝子、LDSPターミネーター配列、LDSPプロモーター配列、PlDES1遺伝子、VCP1ターミネーター配列、チューブリンプロモーター配列、ゼオシン耐性遺伝子、ヒートショックプロテインターミネーター配列の順で連結したインサート配列とpUC19ベクター配列からなる。
(2)pavELO遺伝子+PlDES1遺伝子発現用プラスミド(ビアラフォス耐性)の構築
前記のpavELO遺伝子+PlDES1遺伝子発現用プラスミド(ゼオシン耐性)を鋳型として、表2に示すプライマー149(配列番号149)及びプライマー150(配列番号150)のプライマー対を用いたPCRを行い、チューブリンプロモーター配列、PlDES1遺伝子発現カセット(LDSPプロモーター配列、PlDES1遺伝子、VCP1ターミネーター配列)、pavELO遺伝子発現カセット(GSプロモーター配列、pavELO遺伝子、LDSPターミネーター配列)、ヒートショックプロテインターミネーター配列及びpUC19配列からなる断片を増幅した。得られた断片と、調製例2で作製したビアラフォス耐性遺伝子断片を調製例1と同様の方法にて融合し、pavELO遺伝子+PlDES1遺伝子発現用プラスミド(ビアラフォス耐性)を構築した。なお、本発現プラスミドはGSプロモーター配列、pavELO遺伝子、LDSPターミネーター配列、LDSPプロモーター配列、PlDES1遺伝子、VCP1ターミネーター配列、チューブリンプロモーター配列、ビアラフォス耐性遺伝子、ヒートショックプロテインターミネーター配列の順で連結したインサート配列とpUC19ベクター配列からなる。
(3)pavELO遺伝子以外のΔ5-ELO遺伝子+PlDES1遺伝子発現用プラスミド(ビアラフォス耐性)の構築
調製例2で作製したpavELO遺伝子以外のΔ5-ELO遺伝子発現用プラスミドを鋳型として、表2に示すプライマー115(配列番号115)及びプライマー116(配列番号116)のプライマー対、プライマー119(配列番号119)及びプライマー120(配列番号120)のプライマー対、プライマー123(配列番号123)及びプライマー124(配列番号124)のプライマー対、プライマー127(配列番号127)及びプライマー128(配列番号128)のプライマー対、プライマー131(配列番号131)及びプライマー132(配列番号132)のプライマー対、並びにプライマー135(配列番号135)及びプライマー136(配列番号136)のプライマー対を用いたPCRを行い、各種Δ5-ELO遺伝子断片をそれぞれ増幅した。
また、前記pavELO遺伝子+PlDES1遺伝子発現用プラスミド(ビアラフォス耐性)を鋳型として、表2に示すプライマー145(配列番号145)及びプライマー148(配列番号148)のプライマー対を用いたPCRを行い、GSプロモーター配列、ビアラフォス耐性遺伝子発現カセット(チューブリンプロモーター配列、ビアラフォス耐性遺伝子、ヒートショックプロテインターミネーター配列)、VCP1ターミネーター配列及びpUC19配列からなる断片を増幅した。得られた断片を、前記にて作製した各種Δ5-ELO遺伝子断片、前記PlDES1遺伝子断片、並びにLDSPターミネーター配列及びLDSPプロモーター配列からなる断片を、調製例1と同様の方法にて融合し、各種Δ5-ELO遺伝子+PlDES1遺伝子発現用プラスミド(ビアラフォス耐性)を構築した。なお、本発現プラスミドはGSプロモーター配列、各種Δ5-ELO遺伝子、LDSPターミネーター配列、LDSPプロモーター配列、PlDES1遺伝子、VCP1ターミネーター配列、チューブリンプロモーター配列、ビアラフォス耐性遺伝子、ヒートショックプロテインターミネーター配列の順で連結したインサート配列とpUC19ベクター配列からなる。
(4)各種Δ5-ELO遺伝子及びPlDES1遺伝子発現カセットのEPA株への導入、形質転換体の培養、培養液中の脂質の抽出、及び構成脂肪酸の分析
前記の各種Δ5-ELO遺伝子+PlDES1遺伝子発現用プラスミド(ビアラフォス耐性)を鋳型として、表2に示すプライマー152(配列番号152)及びプライマー153(配列番号153)のプライマー対を用いたPCRを行い、各種Δ5-ELO遺伝子+PlDES1遺伝子発現用カセット(ビアラフォス耐性)をそれぞれ取得した。なお、本発現用カセットは、GSプロモーター配列、各種Δ5-ELO遺伝子、LDSPターミネーター配列、LDSPプロモーター配列、PlDES1遺伝子、VCP1ターミネーター配列、チューブリンプロモーター配列、ビアラフォス耐性遺伝子、ヒートショックプロテインターミネーター配列からなる。増幅した断片を用いて、調製例1と同様の方法によりEPA株の形質転換を行った。なお、形質転換体の選抜は2μg/mLのゼオシン及び267μg/mLのビアラフォス含有f/2寒天培地にて行った。得られたコロニーの中から、各種Δ5-ELO遺伝子+PlDES1遺伝子発現用カセットを含むものを選抜した。得られたコロニーを、24穴プレート(IWAKI社製)に分注した1.5~2mLのN5P5培地(267μg/mLのビアラフォス含有)に播種し、25℃、0.3%CO雰囲気下、12h/12h明暗条件にて20日間振盪培養した。
(5)ナンノクロロプシス培養液中の脂質の抽出及び構成脂肪酸の分析
調製例1と同様の方法により、ナンノクロロプシスの培養液0.25mLから脂質の抽出及び脂肪酸エステルへの変換を行った。得られた脂肪酸エステルを調製例1と同様の条件でガスクロマトグラフィー解析に供した。
ガスクロマトグラフィー解析により得られた波形データより、各脂肪酸メチルエステルのピーク面積の総和に対する、各脂肪酸メチルエステルのピーク面積の割合を算出した。結果を表5に示す。各形質転換体について独立した8~12ライン(親株であるEPA株はN=2)の培養・脂質解析を行っており、その平均値と標準偏差を示した。
なお、下記表5において、例えば「pavELO+PIDES1株」とあるのは、EPA株にpavELO遺伝子及びPIDES1遺伝子が導入された形質転換体を意味する。他の記載についても同様である。
Figure 2023102179000005
表5より、EPA株ではC22:6 (n-3)(以降「DHA」とも記載する)が検出されないのに対し、EPA株にΔ5-ELO遺伝子及びPlDES1遺伝子を導入した各形質転換体では、DHAが生産されることが分かった。特に、PlDES1遺伝子に加えて、Δ5-ELO遺伝子としてPcELO遺伝子、OtELO2遺伝子、又はTpELO2遺伝子を導入した形質転換体において、総脂肪酸量に占めるDHA量の割合が顕著に高く、最大で10質量%以上ものDHAが生産されることが明らかになった。
(6)脂質の分画及び各脂質画分における脂肪酸組成の解析
EPA株及びDHA株(EPA株にTpELO2遺伝子+PlDES1遺伝子発現カセットを導入した表5中の「TpELO2+PlDES1株」)を50mLフラスコに分注した20mLのN5P5培地に播種し、25℃、0.3%CO雰囲気下、12h/12h明暗条件にて14日間振盪培養した。調製例1と同様の方法により、ナンノクロロプシスの培養液0.25mLから脂質の抽出を行い、得られた脂質をTLC分画に供した。分画したそれぞれの脂質画分から脂質を回収し、脂肪酸エステルへの変換及びガスクロマトグラフィー解析に供した。また、別途ナンノクロロプシスの培養液0.25mLから脂質の抽出を行い、得られた脂質を脂肪酸エステルへの変換及びガスクロマトグラフィー解析に供した。
ガスクロマトグラフィー解析により得られた波形データのピーク面積より、各脂肪酸のメチルエステル量を定量した。各ピーク面積を、内部標準であるGlyceryl triheptadecanoate由来のC17脂肪酸メチルエステルのピーク面積と比較することで試料間の補正を行い、培養液1リットルあたりの各脂肪酸量を算出した。さらに、TLC分画後のそれぞれの脂質画分から回収した脂質、及びTLC分画を行わずに抽出した全脂質について各脂肪酸量の総和を算出し、全脂質量に対する「TAG」、「FFA」、「DAG」、「PL」画分の脂質量の割合を算出した。結果を表6に示す。それぞれの株について N=2で培養・脂質解析を行っており、その平均値と標準偏差を示した。
なお、以下の表において、「TAG」はトリアシルグリセロールを、「FFA」は遊離脂肪酸を、「DAG」はジアシルグリセロールを、「PL」は極性脂質を表す。
また、それぞれの株の「TAG」、「PL」画分において、各脂肪酸メチルエステルのピーク面積の総和に対する各脂肪酸メチルエステルのピーク面積の割合を算出した。結果を表7に示す。
なお、以下の表において、「EPA株_TAG」、「EPA株_PL」はEPA株から抽出した脂質の「TAG」又は「PL」画分を、「DHA株_TAG」、「DHA株_PL」はDHA株から抽出した脂質の「TAG」又は「PL」画分を表す。
Figure 2023102179000006
Figure 2023102179000007
表6及び表7から、DHA株は脂質として約80%をTAGとして蓄積しており、さらにTAG中のDHAの割合が10%以上に到達することが明らかになった。また、DHA株において生産されるDPAやDHAなどの脂肪酸は、TAGだけでなくPL画分にも6~8%の割合で局在することが明らかになった。
実施例2 Δ4-DES遺伝子発現プラスミドの作製、ナンノクロロプシスの形質転換、及び形質転換体による脂質の製造
(1)PlDES1遺伝子発現用プラスミド(ブラストシジン耐性)の構築
まず、実施例1で作製したPlDES1遺伝子断片及び調製例2で作製したLDSPプロモーター配列、ゼオシン耐性遺伝子発現カセット(チューブリンプロモーター配列、ゼオシン耐性遺伝子、ヒートショックプロテインターミネーター配列)、VCP1ターミネーター配列及びpUC19配列からなる断片を連結し、PlDES1遺伝子発現用プラスミド(ゼオシン耐性)を構築した。なお、本発現プラスミドはLDSPプロモーター配列、PlDES1遺伝子、VCP1ターミネーター配列、チューブリンプロモーター配列、ゼオシン耐性遺伝子、ヒートショックプロテインターミネーター配列の順で連結したインサート配列とpUC19ベクター配列からなる。
次に、前記にて作製したPlDES1遺伝子発現用プラスミド(ゼオシン耐性)を鋳型として、表2に示すプライマー149(配列番号149)及びプライマー150(配列番号150)のプライマー対を用いたPCRを行い、チューブリンプロモーター配列、PlDES1遺伝子発現カセット(LDSPプロモーター配列、PlDES1遺伝子、VCP1ターミネーター配列)、ヒートショックプロテインターミネーター配列及びpUC19配列からなる断片を増幅した。また、ブラストシジン耐性遺伝子(配列番号48)を人工合成し、合成したDNA断片を鋳型として表2に示すプライマー154(配列番号154)及びプライマー155(配列番号155)のプライマー対を用いたPCRを行い、ブラストシジン耐性遺伝子断片を増幅した。得られたブラストシジン耐性遺伝子断片を、前記にて作製したチューブリンプロモーター配列、PlDES1遺伝子発現カセット(LDSPプロモーター配列、PlDES1遺伝子、VCP1ターミネーター配列)、ヒートショックプロテインターミネーター配列及びpUC19配列からなる断片と連結し、PlDES1遺伝子発現用プラスミド(ブラストシジン耐性)を構築した。なお、本発現プラスミドはLDSPプロモーター配列、PlDES1遺伝子、VCP1ターミネーター配列、チューブリンプロモーター配列、ブラストシジン耐性遺伝子、ヒートショックプロテインターミネーター配列の順で連結したインサート配列とpUC19ベクター配列からなる。
(2)パブロバ・サリナ由来のΔ4-DES遺伝子発現用プラスミド(ブラストシジン耐性)の構築
パブロバ・サリナ由来のΔ4-DES(アミノ酸配列:配列番号30)をコードするΔ4-DES遺伝子(塩基配列:配列番号28)についてコドン使用頻度をナンノクロロプシスに最適化した配列(配列番号29、以降「Psd4DES遺伝子」とも記載する。なお、配列番号29の塩基配列は、配列番号30のアミノ酸配列をコードする。)を人工合成した。合成したDNA断片を鋳型として、表2に示すプライマー141(配列番号141)及びプライマー142(配列番号142)のプライマー対を用いたPCRを行い、Psd4DES遺伝子断片を増幅した。
また、前記PlDES1遺伝子発現用プラスミド(ブラストシジン耐性)を鋳型として、表2に示すプライマー145(配列番号145)及びプライマー146(配列番号146)のプライマー対を用いたPCRを行い、LDSPプロモーター配列、ブラストシジン耐性遺伝子発現カセット(チューブリンプロモーター配列、ブラストシジン耐性遺伝子、ヒートショックプロテインターミネーター配列)、VCP1ターミネーター配列及びpUC19配列からなる断片を増幅した。得られた断片と、前記にて作製したPsd4DES遺伝子断片を調製例1と同様の方法にて融合し、Psd4DES遺伝子発現用プラスミド(ブラストシジン耐性)を構築した。なお、本発現プラスミドはLDSPプロモーター配列、Psd4DES遺伝子、VCP1ターミネーター配列、チューブリンプロモーター配列、ブラストシジン耐性遺伝子、ヒートショックプロテインターミネーター配列の順で連結したインサート配列とpUC19ベクター配列からなる。
(3)各種Δ4-DES遺伝子発現カセットのDPA生産株への導入、形質転換体の培養、培養液中の脂質の抽出、及び構成脂肪酸の分析
前記各種Δ4-DES遺伝子発現用プラスミド(ブラストシジン耐性)を鋳型として、表2に示すプライマー151(配列番号151)及びプライマー153(配列番号153)のプライマー対を用いたPCRを行い、各種Δ4-DES遺伝子発現用カセット(ブラストシジン耐性)をそれぞれ取得した。なお、本発現用カセットは、LDSPプロモーター配列、各種Δ4-DES遺伝子、VCP1ターミネーター配列、チューブリンプロモーター配列、ブラストシジン耐性遺伝子、ヒートショックプロテインターミネーター配列からなる。増幅した断片を用いて調製例1と同様の方法により、調製例2で作製したDPA株(EPA株にPcELO遺伝子発現カセットを導入した表4中の「PcELO株」)の形質転換を行った。なお、形質転換体の選抜は2μg/mLのゼオシン及び40μg/mLのブラストシジン含有f/2寒天培地にて行った。得られたコロニーを、24穴プレート(IWAKI社製)に分注した1.5~2mLのN5P5培地(40μg/mLのブラストシジン含有)に播種し、25℃、0.3%CO雰囲気下、12h/12h明暗条件にて21日間振盪培養した。
(4)ナンノクロロプシス培養液中の脂質の抽出及び構成脂肪酸の分析
調製例1と同様の方法により、ナンノクロロプシスの培養液0.25mLから脂質の抽出及び脂肪酸エステルへの変換を行った。得られた脂肪酸エステルを調製例1と同様の条件でガスクロマトグラフィー解析に供した。
ガスクロマトグラフィー解析により得られた波形データより、各脂肪酸メチルエステルのピーク面積の総和に対する、各脂肪酸メチルエステルのピーク面積の割合を算出した。結果を表8に示す。各形質転換体について独立した12ライン(EPA株及びDPA株はN=2)の培養・脂質解析を行っており、その平均値と標準偏差を示した。
なお、下記表8において、例えば「PlDES1+PcELO株」とあるのは、DPA株にPlDES1遺伝子が導入された形質転換体を意味する。他の記載についても同様である。
Figure 2023102179000008
表8より、EPA株やDPA株では、DHAが検出されなかった。これに対し、DPA株にPIDES1遺伝子やPSd4DES遺伝子を導入したPlDES1+PcELO株及びPsd4DES+PcELO株では、DHAが生産されることが明らかとなった。

Claims (14)

  1. Δ5-エロンガーゼ及びΔ4-デサチュラーゼの発現を促進させたナンノクロロプシス(Nannochloropsis)属に属する藻類を培養し、炭素原子数22の長鎖多価不飽和脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質を生産させる、脂質の製造方法。
  2. Δ5-エロンガーゼ及びΔ4-デサチュラーゼの発現を促進させることにより、ナンノクロロプシス(Nannochloropsis)属に属する藻類の細胞内で生産される炭素原子数22の長鎖多価不飽和脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質の生産性を向上させる、脂質の生産性の向上方法。
  3. Δ5-エロンガーゼ及びΔ4-デサチュラーゼの発現を促進させ、ナンノクロロプシス(Nannochloropsis)属に属する藻類の細胞内で生産される炭素原子数22の長鎖多価不飽和脂肪酸又はこれを構成成分とする脂質の生産性を向上させ、生産される全脂肪酸又は全脂質中の脂肪酸の組成を改変する、脂肪酸組成の改変方法。
  4. 前記Δ5-エロンガーゼが下記タンパク質(A)~(J)からなる群より選ばれる少なくとも1種のタンパク質である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。

    (A)配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (B)前記タンパク質(A)のアミノ酸配列と同一性が60%以上のアミノ酸配列からなり、かつΔ5-エロンガーゼ活性を有するタンパク質。
    (C)配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (D)前記タンパク質(C)のアミノ酸配列と同一性が60%以上のアミノ酸配列からなり、かつΔ5-エロンガーゼ活性を有するタンパク質。
    (E)配列番号12で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (F)前記タンパク質(E)のアミノ酸配列と同一性が60%以上のアミノ酸配列からなり、かつΔ5-エロンガーゼ活性を有するタンパク質。
    (G)配列番号15で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (H)前記タンパク質(G)のアミノ酸配列と同一性が60%以上のアミノ酸配列からなり、かつΔ5-エロンガーゼ活性を有するタンパク質。
    (I)配列番号18で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (J)前記タンパク質(I)のアミノ酸配列と同一性が60%以上のアミノ酸配列からなり、かつΔ5-エロンガーゼ活性を有するタンパク質。
  5. 前記Δ4-デサチュラーゼが下記タンパク質(K)~(N)からなる群より選ばれる少なくとも1種のタンパク質である、請求項1~4のいずれか1項記載の方法。

    (K)配列番号27で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (L)前記タンパク質(K)のアミノ酸配列と同一性が60%以上のアミノ酸配列からなり、かつΔ4-デサチュラーゼ活性を有するタンパク質。
    (M)配列番号30で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (N)前記タンパク質(M)のアミノ酸配列と同一性が60%以上のアミノ酸配列からなり、かつΔ4-デサチュラーゼ活性を有するタンパク質。
  6. 前記ナンノクロロプシス(Nannochloropsis)属に属する藻類において、アシルキャリアープロテイン、Δ12-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ9-デサチュラーゼ、及びΔ6-エロンガーゼからなる群より選ばれる少なくとも1種のタンパク質の発現が促進されている、請求項1~5のいずれか1項記載の方法。
  7. 前記ナンノクロロプシス(Nannochloropsis)属に属する藻類が、ナンノクロロプシス・オセアニカ(Nannochloropsis oceanica)である、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
  8. 前記炭素原子数22の長鎖多価不飽和脂肪酸がドコサヘキサエン酸である、請求項1~7のいずれか1項記載の方法。
  9. 前記脂質が、トリアシルグリセロールを含む、請求項1~8のいずれか1項記載の方法。
  10. Δ5-エロンガーゼ及びΔ4-デサチュラーゼの発現が促進されている、ナンノクロロプシス(Nannochloropsis)属に属する藻類の形質転換体。
  11. 前記Δ5-エロンガーゼが下記タンパク質(A)~(J)からなる群より選ばれる少なくとも1種のタンパク質である、請求項10に記載の形質転換体。

    (A)配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (B)前記タンパク質(A)のアミノ酸配列と同一性が60%以上のアミノ酸配列からなり、かつΔ5-エロンガーゼ活性を有するタンパク質。
    (C)配列番号9で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (D)前記タンパク質(C)のアミノ酸配列と同一性が60%以上のアミノ酸配列からなり、かつΔ5-エロンガーゼ活性を有するタンパク質。
    (E)配列番号12で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (F)前記タンパク質(E)のアミノ酸配列と同一性が60%以上のアミノ酸配列からなり、かつΔ5-エロンガーゼ活性を有するタンパク質。
    (G)配列番号15で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (H)前記タンパク質(G)のアミノ酸配列と同一性が60%以上のアミノ酸配列からなり、かつΔ5-エロンガーゼ活性を有するタンパク質。
    (I)配列番号18で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (J)前記タンパク質(I)のアミノ酸配列と同一性が60%以上のアミノ酸配列からなり、かつΔ5-エロンガーゼ活性を有するタンパク質。
  12. 前記Δ4-デサチュラーゼが下記タンパク質(K)~(N)からなる群より選ばれる少なくとも1種のタンパク質である、請求項10又は11のいずれか1項記載の形質転換体。

    (K)配列番号27で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (L)前記タンパク質(K)のアミノ酸配列と同一性が60%以上のアミノ酸配列からなり、かつΔ4-デサチュラーゼ活性を有するタンパク質。
    (M)配列番号30で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (N)前記タンパク質(M)のアミノ酸配列と同一性が60%以上のアミノ酸配列からなり、かつΔ4-デサチュラーゼ活性を有するタンパク質。
  13. 前記ナンノクロロプシス(Nannochloropsis)属に属する藻類において、アシルキャリアープロテイン、Δ12-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ9-デサチュラーゼ、及びΔ6-エロンガーゼからなる群より選ばれる少なくとも1種のタンパク質の発現が促進されている、請求項10~21のいずれか1項記載の形質転換体。
  14. 前記ナンノクロロプシス(Nannochloropsis)属に属する藻類が、ナンノクロロプシス・オセアニカ(Nannochloropsis oceanica)である、請求項10~13のいずれか1項記載の形質転換体。
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