JP2023097685A - インクセット - Google Patents

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尚義 加賀田
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Abstract

【課題】グリーンの彩度が高く、鮮やかなグリーンを有し、そのうえ、優れた耐光性及び粒状性を有する染色物を得ることが可能なインクセットを得る。【解決手段】本発明のインクセットは、第1インクジェットインク組成物と、第2インクジェットインク組成物と、を備え、前記第1インクジェットインク組成物が、昇華性及び蛍光性を有する下記式(I)で表される化合物と、水溶性有機溶剤と、水とを含み、前記第2インクジェットインク組成物が、昇華性及び蛍光性を有するイエロー染料(i)と、水溶性有機溶剤と、水とを含む。JPEG2023097685000011.jpg30170(式(I)中、Rは、水素原子又は炭素数1以上18以下のアルキル基を表し、該アルキル基は水素原子が炭素数1以上6以下のアルコキシ基で置換されていてもよく、Xは、酸素原子又はイミノ基を表す。)【選択図】図2

Description

本発明は、インクセットに関する。
インクジェット記録方法を用いて、織布や不織布等の布帛を染色(捺染)することが行われている。捺染の一態様として、昇華性染料を用いた転写型の捺染方法がある。かかる捺染方法は、捺染対象の布帛などの媒体に直接インク組成物を付着させず、転写元となる紙などの他の媒体へインク組成物を付着させた後、該他の媒体から捺染対象の媒体へと染料を転写し、染色する方法である。
このような染色においてグリーンの色相を再現する方法として、例えば、特許文献1には、シアンインクと、イエローインクとを有するインクセットを用いて、耐光性を有するグリーンの色相の染色物を得る方法が記載されている。
特開2019-1870号公報
しかしながら、特許文献1に記載のインクセットでは、染色物におけるグリーンの彩度が低く、鮮やかなグリーンを得ることが困難であり、また、染色物の耐光性も不十分である。
また、グリーンの色相を再現する方法として、記録媒体上にて、シアン染料とイエロー染料とを混合する方法も考えられる。しかしながら、記録媒体上での混合方法においても、高彩度なグリーンを得ることが困難であり、良好な耐光性を有する印刷物を得るのも困難である。
本発明は、第1インクジェットインク組成物と、第2インクジェットインク組成物と、を備え、前記第1インクジェットインク組成物が、昇華性及び蛍光性を有する下記式(I)で表される化合物と、水溶性有機溶剤と、水とを含み、前記第2インクジェットインク組成物が、昇華性及び蛍光性を有するイエロー染料(i)と、水溶性有機溶剤と、水とを含む、インクセットである。
Figure 2023097685000002
(式(I)中、Rは、水素原子又は炭素数1以上18以下のアルキル基を表し、該アルキル基は水素原子が炭素数1以上6以下のアルコキシ基で置換されていてもよく、Xは、酸素原子又はイミノ基を表す。)。
図1は、本実施形態の記録方法の一例を示すフローチャートである。 図2は、実施例及び比較例におけるインクセットを用いて得られた染色物の色相であるa*及びb*を示す図である。 図3は、実施例及び比較例におけるインクセットを用いて得られた染色物の明度であるL*と彩度であるC*とを示す図である。
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
1.インクセット
本実施形態のインクセットは、第1インクジェットインク組成物(以下、「第1インク」とも称する)と、第2インクジェットインク組成物(以下、「第2インク」とも称する)と、を備え、第1インクジェットインク組成物が、昇華性及び蛍光性を有する式(I)で表される化合物と、水溶性有機溶剤と、水とを含み、第2インクジェットインク組成物が、昇華性及び蛍光性を有するイエロー染料(i)と、水溶性有機溶剤と、水とを含む。
Figure 2023097685000003
式(I)中、Rは、水素原子又は炭素数1以上18以下のアルキル基を表し、該アルキル基は水素原子が炭素数1以上6以下のアルコキシ基で置換されていてもよく、Xは、酸素原子又はイミノ基を表す。
通常、染料は混色すると、彩度が低くなる。
しかしながら、本実施形態のインクセットにおいて、第1インクに含まれる式(I)で表される化合物と、第2インクに含まれるイエロー染料(i)は、共に、優れた昇華性と、鮮やかな蛍光性を有する。そのうえで、式(I)で表される化合物は高彩度のターコイズの色調を有し、イエロー染料(i)は、高彩度のイエローの色調を有する。そのため、このような式(I)で表される化合物と、イエロー染料(i)とを用いることにより、混色による彩度の低下を引き起こさずに、高彩度であって、鮮やかなグリーンを発色することが可能となる。更に、既存の主な昇華性シアン染料は耐光性が悪いため、混色して得られるグリーンも耐光性に劣るが、式(I)で表される化合物は耐光性が良好である、そのため、得られるグリーンも優れた耐光性を有することが可能となる。
本明細書において、「昇華性を有する」とは、加熱により昇華する性質を有することをいう。かかる昇華性を有する化合物及び染料は、昇華転写を利用した布帛等に対する染色、すなわち捺染に好適である。昇華性を有する化合物及び染料は、ポリエステル、ナイロン、アセテート等の疎水性合成繊維の染着に好適に用いられる。
また、本明細書において、「蛍光性を有する」とは、分光蛍光光度計により以下の条件で蛍光強度を測定した際に、蛍光ピークの最大強度が1000以上検出されることをいう。
[測定機器]
株式会社島津製作所製RF-6000型分光蛍光光度計。
[試料]
蛍光性を有するか否かの対象となる物質の含有量が5%のインク組成物を調製し、100%濃度のベタ柄を中間記録媒体である転写紙へインクジェット記録する。得られたインク組成物の記録面を、35cm×40cmに裁断し、同じ大きさのポリエステル布帛と重ねあわせた後、200℃、60秒の熱処理を行い、中間記録媒体からポリエステル布帛へ昇華転写捺染を行う。このようにして得られた染色されたポリエステル布帛を試料とし、前記の測定機器にて蛍光ピークの最大強度の測定を行う。
なお、前記インク組成物に用いる溶媒としては、水系、又は非水系のいずれも用いることができる。例えば、本明細書の実施例中で調製したインク組成物を用いることができる。
更に、本明細書において、「水溶性有機溶剤」とは、水に容易に溶解する有機溶剤であり、具体的には、水1000mL(20℃)に対する溶解性が0.1g以上の有機溶剤を称する。
本実施形態に係るインクセットは、本発明による効果をより有効かつ確実に奏する観点から、第3インクジェットインク組成物(以下、「第3インク」とも称する)を更に備え、第3インクジェットインク組成物が、昇華性を有し、かつ、蛍光性を有しないシアン染料と、水溶性有機溶剤と、水とを含むことが好ましい。
本実施形態に係るインクセットは、本発明による効果をより有効かつ確実に奏する観点から、第4インクジェットインク組成物(以下、「第4インク」とも称する)を更に備え、第4インクジェットインク組成物が、昇華性を有し、かつ、蛍光性を有しないイエロー染料(ii)と、水溶性有機溶剤と、水とを含むことがより好ましい。
次に、第1インク、第2インク、第3インク及び第4インク(以下、「第1~第4インク」と称する)、並びにそれらの各インクに含まれる成分について説明する。なお、各インクに含まれる成分において、式(I)で表される化合物、イエロー染料(i)、シアン染料、及びイエロー染料(ii)以外の成分、物性、及び製法については、後述にてまとめて説明する。
1.1.第1インクジェットインク組成物
本実施形態に係る第1インクは、昇華性及び蛍光性を有する下記式(I)で表される化合物と、水溶性有機溶剤と、水とを含む。
1.1.1.式(I)で表される化合物
本実施形態に係る第1インクは、ターコイズ染料として、昇華性及び蛍光性を有する下記式(I)で表される化合物を含む。式(I)で表される化合物は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
Figure 2023097685000004
式(I)中、Rは、水素原子又は炭素数1以上18以下のアルキル基を表し、該アルキル基は水素原子が炭素数1以上6以下のアルコキシ基で置換されていてもよく、Xは、酸素原子又はイミノ基を表す。
Rが示す炭素数1以上18以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等の直鎖アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、ネオペンチル基、2-ヘキシル基、2-オクチル基、2-デシル基、2-ドデシル基等の分岐アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロドデシル基等の環状アルキル基が挙げられる。
Rが示すアルキル基の炭素数は、1以上18以下であり、好ましくは2以上10以下であり、より好ましくは3以上8以下である。
また、Rが示す炭素数1以上18以下のアルキル基は、水素原子が炭素数1以上6以下のアルコキシ基で置換されていてもよい。このような基としては、例えば、下記式(II)であらわされるような基が挙げられる。
-Cn2n-O-Cm2m+1 ・・・ (II)
式(II)中、nは、1以上18以下であり、好ましくは2以上10以下であり、より好ましくは3以上8以下である。また、mは、1以上6以下であり、好ましくは2以上5以下であり、より好ましくは3以上4以下である。
式(I)で表される化合物としては、例えば、下記式(IA)で表される化合物、及び下記式(IB)で表される化合物、並びにC.I.Disperse Blue 3、5、6、7、9、14、16、19、20、24、26、26:1、27、35、43、44、52、54、55、56、58、60、61、62、64、64:1、71、72、72:1、73、75、77、77:1、79、81、81:1、82、83、85、87、88、90、91、93、94、95、96、99、102、106、108、112、113、115、118、120、122、125、128、130、131、139、141、142、143、145、146、148、149、153、154、158、165、167、171、173、174、176、181、183、185、186、187、189、197、198、200、201、205、207、211、214、224、225、241、257、259、267、268、270、284、285、287、288、291、293、295、297、301、315、330、333、354、359、360、367、C.I.Solvent Blue 2、11、14、24、25、35、36、38、48、55、59、63、67、68、70、73、83、105、111、132の中で、式(I)で表される化合物に該当するものが挙げられる。
Figure 2023097685000005
Figure 2023097685000006
式(IA)で表される化合物は、例えば、実施例に記載の方法で調製することができる。
式(IB)で表される化合物は、例えば、下記の方法で調製することができる。なお、下記の説明において「部」は質量部を示す。
まず、スルホラン75部中に、1,4-ジアミノ-2,3-アンスラキノンジカルボキシイミド3.0部、1-アミノブタン25部を加えて溶液を得る。この溶液をオートクレーブ中で140℃に加熱し、6時間反応させる。その後、室温まで冷却して固体を析出させ、その固体を濾過分離し、メタノール100部、水200部で洗浄し、乾燥することにより、上記式(IB)で表される化合物を得ることができる。
これらの中でも、式(IA)で表される化合物、式(IB)で表される化合物、及び下記式(IC)で表される化合物であるC.I.Disperse Blue 60が好ましく、式(IA)で表される化合物及びC.I.Disperse Blue 60がより好ましい。このような化合物を用いることにより、より優れた昇華性及び蛍光性を有するため、グリーンの彩度が一層高く、一層鮮やかなグリーンを有し、一層優れた耐光性及び粒状性を有する印刷物を得ることができる傾向にある。なお、本明細書においては、粒状性に優れるほど、目視した際に粒状感を認識しにくくなる。
Figure 2023097685000007
第1インクにおける式(I)で表される化合物の含有量は、第1インク100質量%に対して、好ましくは0.2質量%以上15.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上13.0質量%以下、更に好ましくは1.0質量%以上10.0質量%以下、更により好ましくは2.5質量%以上6.0質量%以下である。式(I)で表される化合物の含有量が上記範囲であることにより、グリーンの彩度がよい一層高く、よい一層鮮やかなグリーンを有し、そのうえ、より一層優れた耐光性及び粒状性を有する染色物を得ることができる傾向にある。
1.2.第2インクジェットインク組成物
本実施形態に係る第2インクは、昇華性及び蛍光性を有するイエロー染料(i)と、水溶性有機溶剤と、水とを含む。
1.2.1.イエロー染料(i)
本実施形態に係る第2インクは、昇華性及び蛍光性を有するイエロー染料(i)を含む。イエロー染料(i)は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
イエロー染料(i)としては、例えば、C.I.Disperse Yellow 1、3、4、5、7、8、9、13、16、23、24、30、31、33、34、39、41、42、44、49、50、51、54、56、58、60、61、63、64、66、68、71、74、76、77、78、79、82、83、85、86、88、90、91、93、98、99、100、104、108、114、116、118、119、122、124、126、135、140、141、149、153、160、162、163、164、165、179、180、182、183、184、186、192、198、199、201、202、204、210、211、215、216、218、224、227、231、232、233、245、C.I.Solvent Yellow 2、6、14、16、21、25、29、30、33、51、56、77、80、88、89、93、112、113、114、116、136、150、155、157、160、160:1、163、176、179、199の中で、昇華性及び蛍光性を有するイエロー染料が挙げられる。
これらの中でも、C.I.Solvent Yellow 160:1、及びC.I.Disperse Yellow 82が好ましい。このような化合物を用いることにより、より優れた昇華性及び蛍光性を有するため、グリーンの彩度が一層高く、一層鮮やかなグリーンを有し、一層優れた耐光性及び粒状性を有する印刷物を得ることができる傾向にある。
第2インクにおけるイエロー染料(i)の含有量は、第2インク100質量%に対して、好ましくは0.2質量%以上15.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上13.0質量%以下、更に好ましくは1.0質量%以上10.0質量%以下、更により好ましくは2.0質量%以上7.0質量%以下である。イエロー染料(i)の含有量が上記範囲であることにより、グリーンの彩度がよい一層高く、よい一層鮮やかなグリーンを有し、そのうえ、より一層優れた耐光性及び粒状性を有する染色物を得ることができる傾向にある。
1.3.第3インクジェットインク組成物
本実施形態に係る第3インクは、昇華性を有し、かつ、蛍光性を有しないシアン染料と、水溶性有機溶剤と、水とを含む。
1.3.1.シアン染料
本実施形態に係る第3インクは、昇華性を有し、かつ、蛍光性を有しないシアン染料を含む。シアン染料は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
本実施形態に係るシアン染料は、分散安定性が比較的良好であるため、インクジェットインク組成物の分散安定性も確保できる傾向にある。また、シアン染料を用いることで、低彩度領域において、一層良好なグリーンの発色性を得ることができる。そのため、インクセットにおいて、第1インクと第2インクと共に、第3インクを用いることで、グリーンの彩度が一層高く、一層鮮やかなグリーンを有し、一層優れた耐光性を有し、そのうえで、更に一層優れた粒状性を有する印刷物を得ることができる傾向にある。
シアン染料としては、上記の式(I)で表される化合物において例示した中で、昇華性を有し、かつ、蛍光性を有しないシアン染料が挙げられる。
これらの中でも、グリーンの彩度がより一層高く、より一層鮮やかなグリーンを有し、より一層優れた耐光性を有すると共に、更により一層優れた粒状性を有する印刷物を得ることができる傾向にあることから、C.I.Disperse Blue 359が好ましい。
第3インクにおけるシアン染料の含有量は、第3インク100質量%に対して、好ましくは0.2質量%以上15.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上13.0質量%以下、更に好ましくは1.0質量%以上10.0質量%以下、更により好ましくは2.5質量%以上6.0質量%以下である。シアン染料の含有量が上記範囲であることにより、グリーンの彩度がより一層高く、より一層鮮やかなグリーンを有し、より一層優れた耐光性を有すると共に、更により一層優れた粒状性を有する印刷物を得ることができる傾向にある。
本実施形態に係るインクセットにおいて、第1インク100質量%に対する式(I)で表される化合物の含有量は、第3インク100質量%に対するシアン染料の含有量よりも少ないことが好ましい。第1インク100質量%に対する式(I)で表される化合物の含有量が、第3インク100質量%に対するシアン染料の含有量より、0.01質量%以上5.0質量%以下少ないことがより好ましく、0.1質量%以上3.0質量%以下少ないことが更に好ましい。各インクにおいて、式(I)で表される化合物とシアン染料との含有量が上記範囲であることにより、グリーンの彩度がより一層高く、より一層鮮やかなグリーンを有し、より一層優れた耐光性を有すると共に、特に一層優れた粒状性を有する印刷物を得ることができる傾向にある。
1.4.第4インクジェットインク組成物
本実施形態に係る第4インクは、昇華性を有し、かつ、蛍光性を有しないイエロー染料(II)と、水溶性有機溶剤と、水とを含む。
1.4.1.イエロー染料(ii)
本実施形態に係る第4インクは、昇華性を有し、かつ、蛍光性を有しないイエロー染料(ii)を含む。イエロー染料(ii)は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
本実施形態に係るイエロー染料(ii)は、分散安定性が比較的良好であるため、インクジェットインク組成物の分散安定性も確保できる傾向にある。また、イエロー染料(ii)を用いることで、耐光性に優れ、低彩度領域において、一層良好なグリーンの発色性を得ることができる。そのため、インクセットにおいて、第1インクと第2インクと共に、第4インクを用いることで、グリーンの彩度が一層高く、一層鮮やかなグリーンを有し、一層優れた粒状性を有し、そのうえで、更に一層優れた耐光性を有する印刷物を得ることができる傾向にある。更に、インクセットにおいて、第1インクと第2インクと第3インクと共に、第4インクを用いることで、グリーンの彩度が更に一層高く、更に一層鮮やかなグリーンを有し、更に一層優れた耐光性及び更に一層優れた粒状性を有する印刷物を得ることができる傾向にある。
イエロー染料(ii)としては、上記のイエロー染料(i)において例示した中で、昇華性を有し、かつ、蛍光性を有しないイエロー染料が挙げられる。
これらの中でも、グリーンの彩度がより一層高く、より一層鮮やかなグリーンを有し、より一層優れた粒状性を有し、そのうえで、更により一層優れた耐光性を有する印刷物を得ることができる傾向にあることから、C.I.Disperse Yellow 54が好ましい。
第4インクにおけるイエロー染料(ii)の含有量は、第4インク100質量%に対して、好ましくは0.2質量%以上15.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上13.0質量%以下、更に好ましくは1.0質量%以上10.0質量%以下、更により好ましくは1.5質量%以上5.0質量%以下である。イエロー染料(ii)の含有量が上記範囲であることにより、グリーンの彩度がより一層高く、より一層鮮やかなグリーンを有し、より一層優れた粒状性を有し、そのうえで、更により一層優れた耐光性を有する印刷物を得ることができる傾向にある。
1.5.水溶性有機溶剤
本実施形態に係る第1~第4インクは、それぞれ、水溶性有機溶剤を含む。水溶性有機溶剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
水溶性有機溶剤としては、例えば、1,2-ペンタンジオール、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール(メチルトリグリコール)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテルトリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-メチル-3-フェノキシ-1,2-プロパンジオール、3-(3-メチルフェノキシ)-1,2-プロパンジオール、3-ヘキシルオキシ-1,2-プロパンジオール、2-ヒドロキシメチル-2-フェノキシメチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール等のグリコール類をはじめとするポリオール類;2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、ε-カプロラクタム、ヒドロキシエチルピロリドン等のラクタム類が挙げられる。
各インクにおいて、水溶性有機溶剤の含有量は、インク100質量%に対して、0.2質量%以上70.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上60.0質量%以下であることがより好ましく、5.0質量%以上50.0質量%以下であることが更に好ましく、10.0質量%以上40.0質量%以下であることが更により好ましい。水溶性有機溶剤の含有量が上記範囲であることにより、インクの粘度をインクジェット法により適したものに調整しやすい傾向にある。また、保湿効果も得られやすくなることから、例えば、吐出ノズルの目詰まりを低減できる傾向にある。
1.6.水
本実施形態に係る第1~第4インクは、それぞれ、水を含む。
第1~第4インクは、それぞれ水系インクである。水系とは主要な溶媒成分の1つとして水を含有する組成物である。水系インクであることで、環境負荷を低減でき、例えば、臭気等の少ない記録を行うことができる。
水は、乾燥により蒸発飛散する成分である。水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水又は超純水のようなイオン性不純物を極力除去したものであることが好ましい。また、紫外線照射又は過酸化水素添加等により滅菌した水を用いると、インクを長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を抑制できるので好適である。
各インクにおいて、水の含有量は、インク100質量%に対して、40.0質量%以上90.0質量%以下であることが好ましく、50.0質量%以上85.0質量%以下であることがより好ましい。水の含有量が上記範囲であることにより、インクの粘度をインクジェット法により適したものに調整しやすい傾向にある。
1.7.分散剤
本実施形態に係る第1~第4インクは、それぞれ、分散剤を含んでもよい。分散剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
分散剤は、式(I)で表される化合物及び染料をインク中で安定に分散させる機能を有している。分散剤としては、例えば、アニオン系分散剤、ノニオン系分散剤、及び高分子分散剤が挙げられる。これらの中でも、インクジェットインク組成物の分散安定性により優れるという点から、アニオン系分散剤が好ましい。
アニオン系分散剤としては、芳香族スルホン酸のホルマリン縮合物が好ましい。芳香族スルホン酸のホルマリン縮合物における「芳香族スルホン酸」としては、例えば、ナフタレンスルホン酸、クレオソート油スルホン酸、クレゾールスルホン酸、フェノールスルホン酸、β-ナフトールスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸等のアルキルナフタレンスルホン酸、β-ナフタレンスルホン酸とβ-ナフトールスルホン酸との混合物、クレゾールスルホン酸と2-ナフトール-6-スルホン酸との混合物、及びリグニンスルホン酸が挙げられる。
また、アニオン系分散剤としては、β-ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、及びクレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物からなる群より選択される1種以上が好ましい。これらの中でもβ-ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物がより好ましい。
ノニオン系分散剤としては、例えば、フィトステロールのエチレンオキサイド付加物、及びコレスタノールのエチレンオキサイド付加物が挙げられる。
また、高分子分散剤としては、例えば、ポリアクリル酸部分アルキルエステル、ポリアルキレンポリアミン、ポリアクリル酸塩、スチレン-アクリル酸共重合物、及びビニルナフタレン-マレイン酸共重合物が挙げられる。
各インクにおいて、分散剤の含有量は、インク100質量%に対して、0.1質量%以上30.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上25.0質量%以下であることがより好ましく、10.0質量%以上20.0質量%以下であることが更に好ましい。分散剤の含有量が上記範囲にあることにより、式(I)で表される化合物及び染料の分散安定性を確保することができ、かつ、インクの粘度をインクジェット法により適したものに調整しやすい傾向にある。
1.8.界面活性剤
本実施形態に係る第1~第4インクは、それぞれ、界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤としては、例えば、シリコーン系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤が挙げられる。これらの中でも、界面活性が高く気泡性の少ないシリコーン系界面活性剤が好ましい。
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、ポリシロキサン系化合物、及びポリエーテル変性オルガノシロキサンが挙げられる。シリコーン系界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール及び2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのアルキレンオキサイド付加物、並びに2,4-ジメチル-5-デシン-4-オール及び2,4-ジメチル-5-デシン-4-オールのアルキレンオキサイド付加物からなる群より選択される1種以上が好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルベタイン、及びパーフルオロアルキルアミンオキサイド化合物が挙げられる。フッ素系界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
各インクにおいて、界面活性剤の含有量は、インク100質量%対して、0.01質量%以上2.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上1.5質量%以下であることがより好ましい。界面活性剤の含有量が上記範囲にあることにより、式(I)で表される化合物及び染料の分散安定性を確保することができ、かつ、インクの粘度をインクジェット法により適したものに調整しやすい傾向にある。
1.9.pH調整剤
本実施形態に係る第1~第4インクは、それぞれ、pH調整剤を含んでもよい。pH調整剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
pH調整剤としては、例えば、酸、塩基、弱酸、及び弱塩基が挙げられる。
酸としては、例えば、硫酸、塩酸、及び硝酸等の無機酸;アジピン酸、クエン酸、コハク酸、乳酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸(BES)、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、モルホリノエタンスルホン酸(MES)、カルバモイルメチルイミノビス酢酸(ADA)、ピペラジン-1,4-ビス(2-エタンスルホン酸)(PIPES)、N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸(ACES)、コラミン塩酸、及びN-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸(TES)等の有機酸が挙げられる。
塩基としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、及びアンモニア等の無機塩基;トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、及びトリスヒドロキシメチルアミノメタン(THAM)等の有機塩基が挙げられる。
また、塩基として、アセトアミドグリシン、トリシン、グリシンアミド、及びビシン等のグッドバッファー、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、並びにトリス緩衝液を用いてもよい。
これらの中でも、pH緩衝効果がより安定に得られることから、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、アジピン酸、クエン酸、コハク酸、及び乳酸からなる群より選択される1種以上が好ましい。
各インクにおいて、pH調整剤の含有量は、インク100質量%対して、0.01質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上1.5質量%以下であることがより好ましい。pH調整剤の含有量が上記範囲にあることにより、式(I)で表される化合物及び染料の分散安定性を確保することができ、かつ、インクの粘度をインクジェット法により適したものに調整しやすい傾向にある。
1.10.その他の成分
本実施形態に係る第1~第4インクは、それぞれ、上記の各成分の他に、従来のインクジェットインクに用いられ得る任意の成分の1種又は2種以上を含んでもよい。そのような任意の成分としては、例えば、溶解助剤、粘度調整剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、腐食防止剤、及び分散に影響を与える金属イオンを捕獲するためのキレート化剤その他の添加剤及び上述の溶媒以外の溶媒等が挙げられる。これらはそれぞれ、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
1.11.第1~第4インクの物性及び製造
本実施形態に係る第1~第4インクの25.0℃における表面張力は、それぞれ、10.0mN/m以上40.0mN/mであることが好ましく、20.0mN/m以上35.0mN/m以下であることがより好ましい。表面張力は、協和界面科学(株)製、自動表面張力計CBVP-Zを用いて、25.0℃の環境下で白金プレートを組成物で濡らしたときの表面張力を確認することにより測定することができる。
本実施形態に係る第1~第4インクの20.0℃における粘度は、それぞれ、1.5mPa・s以上10.0mPa・s以下であることが好ましく、2.0mPa・s以上8.0mPa・s以下であることがより好ましい。表面張力及び粘度を前記範囲内とするには、例えば、上述した有機溶剤や界面活性剤の種類、及びこれらと水の添加量等を適宜調整すればよい。なお、粘度は、(株)アントンパール・ジャパン製、粘弾性試験機MCR-300を用いて、20.0℃の環境下で、Shear Rateを10から1000に上げていき、Shear Rateが200のときの粘度を読み取ることにより測定することができる。
本実施形態に係る第1~第4インクは、それぞれ、pHが5.8以上10.5以下であることが好ましく、6.0以上10.0以下であることがより好ましい。インクのpHがこの範囲であれば、例えば、記録ヘッドやインクジェット記録装置の部材の腐食を抑制することができる。
本実施形態に係る第1~第4インクは、式(I)で表される化合物又は染料と、水溶性有機溶剤と、水と、必要に応じてその他の成分とを、任意の順序で混合し、必要に応じてろ過などを実施して不純物や異物などを除去することで調製することができる。各成分の混合方法としては、メカニカルスターラー、及びマグネティックスターラーなどの撹拌装置を備えた容器に、各成分を順次添加して撹拌、及び混合する方法が用いられる。ろ過方法としては、例えば、遠心ろ過、及びフィルターろ過などが挙げられる。
2.記録方法
本実施形態に係る記録方法は、少なくとも、第1~第4インクを、記録ヘッドから吐出して転写紙上に付着させるインク付着工程と、第1~第4インクに含まれる、式(I)で表される化合物及び染料を転写紙から昇華転写させて記録媒体に転写する転写工程とを含む。なお、本実施形態の記録方法は、その他必要に応じてその他の工程を含んでいてもよい。
このような昇華転写を利用した記録方法としては、例えば、転写紙等のシート状の中間転写媒体に第1~第4インクを用いてインクジェット法による印刷を行って転写画像を形成した後、布帛等の記録媒体(転写先媒体)に中間転写媒体を重ねて、加熱により得られた転写画像を昇華転写する方法がある。
2.1.インク付着工程
本工程では、インクジェット法を用いて、第1~第4インクを記録ヘッドから吐出して中間転写媒体である転写紙上の記録面に付着させて転写画像を形成する。インクジェット法による第1~第4インクの吐出は、例えば、インクジェット記録装置等の液滴吐出装置を用いて行うことができる。
インク付着工程において、ノズル開放時間が1分以上であることが好ましい。ノズル開放時間は、インクジェットヘッドのノズルの一部からインクが吐出された後、該ノズルの一部に対して吸引クリーニングを行うまでの間における、該ノズルの一部が開放された状態が持続する時間である。
インクジェット記録装置としては、第1~第4インクを収容するカートリッジやタンク等のインク収容容器及びこれに接続される記録ヘッドを少なくとも有し、第1~第4インクを記録ヘッドから吐出して中間転写媒体である転写紙に画像を形成することができるものであれば特に限定されない。また、インクジェット記録装置としては、シリアル型及びライン型のいずれでも使用することができる。これらの型のインクジェット記録装置には記録ヘッドが搭載されており、転写紙と記録ヘッドとの相対的な位置関係を変化させながら、記録ヘッドのノズル孔から第1~第4インクの液滴を所定のタイミングで、間欠的にかつ所定の体積で吐出する。これにより、転写紙に第1~第4インクを付着させて、所定の転写画像を形成することができる。
一般に、シリアル型のインクジェット記録装置では、転写紙の搬送方向と、記録ヘッドの往復動作の方向が交差しており、記録ヘッドの往復動作と転写紙の搬送動作との組み合わせによって、転写紙と記録ヘッドとの相対的な位置関係を変化させる。またこの場合、一般的には、記録ヘッドには複数のノズル孔が配置され、転写紙の搬送方向に沿ってノズル孔の列、すなわちノズル列が形成されている。また、記録ヘッドには、第1~第4インクの種類や数に応じて、複数のノズル列が形成される場合もある。
また、一般に、ライン型のインクジェット記録装置では、記録ヘッドは往復動作を行わず、転写紙の搬送によって転写紙と記録ヘッドとの相対的な位置関係を変化させる。この場合においても、一般的には、記録ヘッドには、ノズル孔が複数配置され、転写紙の搬送方向に交差する方向に沿ってノズル列が形成されている。
インクジェット記録方式は、第1~第4インクを微細なノズル孔より液滴として吐出して該液滴を転写紙に付着させることができれば、特に限定されない。例えば、インクジェット記録方式としては、ピエゾ方式や、インクを加熱して発生した泡によりインクを吐出させる方式等を用いることができる。本実施形態においては、第1~第4インクの変質のしにくさ等の観点から、ピエゾ方式を用いることが好ましい。
インクジェット記録装置には、例えば、加熱ユニット、乾燥ユニット、ロールユニット、巻き取り装置等の公知の構成を採用することができる。
本実施形態において、中間転写媒体である転写紙としては、例えば、普通紙等の紙、インクジェット用専用紙、コート紙等のインク受容層が設けられた記録媒体等を用いることができるが、シリカ等の無機微粒子でインク受容層が設けられた紙が好ましい。これにより、中間転写媒体に付与された第1~第4インクが乾燥する過程で、記録面に滲み等が抑制された中間記録物を得ることができる。また、このような媒体であれば、さらに記録面の表面に式(I)で表される化合物及び染料を留めやすく、後の転写工程において、式(I)で表される化合物及び染料の昇華をより効率的に行うことができる。
2.2.転写工程
本実施形態に係る記録方法は、第1~第4インクが付与された転写紙の記録面を、被捺染物であるポリエステル布帛等の記録媒体と対向させた状態、つまり、転写紙の記録面に布帛等を配置した状態で加熱し、第1~第4インクに含まれる式(I)で表される化合物及び染料を被捺染物に昇華させて布帛等に転写する転写工程を含む。これにより、布帛等を被捺染物とした捺染物、すなわち印刷物が得られる。
転写工程での加熱温度は、例えば、160℃以上220℃以下であることが好ましく、180℃以上210℃以下であることがより好ましい。これにより、式(I)で表される化合物及び染料を被捺染物に転写させるために十分なエネルギーを与えることができ、印刷物の生産性を優れたものとすることができる。
転写工程での加熱時間は、加熱温度にもよるが、30秒以上120秒以下であることが好ましく、30秒以上90秒以下であることがより好ましい。これにより、式(I)で表される化合物及び染料を被捺染物に転写させるために十分なエネルギーを得ることができ、印刷物の生産性をより優れたものとすることができる。
また、転写工程は、第1~第4インクが付与された転写紙を、被捺染物と対向させた状態で加熱することにより行えばよいが、転写紙と被捺染物とを密着させた状態で加熱することにより行うことが好ましい。これにより、例えば、より鮮明な画像を布帛等に記録した印刷物が得られる。
記録媒体、すなわち被捺染物としては、例えば、疎水性繊維布帛であるポリエステル布帛が挙げられるが、樹脂フィルム等のシート状の物や、シート状以外の球状、直方体形状や曲面を有する物体等の立体的な形状を有する物を用いてもよい。
2.3.その他の工程
本実施形態に係る記録方法は、インク付着工程の後に転写紙を加熱する工程を含んでもよい。この工程は、第1~第4インクを転写紙へ吐出して付着させた後に加熱する工程である。この工程を行うことにより、インク付着工程で付着された第1~第4インクの乾燥が促進され、画像の滲みが抑制されるとともに、裏移りも抑制される場合がある。なお、裏移りとは、例えば、転写紙がロールで巻き取られる等、重ねられる場合に、記録面に接した裏面に対して第1~第4インクの成分が移動する現象を指す。
この工程における転写紙の到達温度は、60℃以上であることが好ましく、70℃以上120℃以下であることがより好ましい。このような範囲であれば、式(I)で表される化合物及び染料が昇華しにくく、かつ良好な乾燥速度を得ることができる。
本実施形態に記録方法によれば、グリーンの彩度がより高く、より鮮やかなグリーンを有し、より優れた耐光性及び粒状性を有する印刷物を得ることができる。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。以下、「部」及び「%」は、特に記載のない限り、質量基準である。なお、評価は、特に断りがない場合、温度25.0℃、相対湿度40.0%の環境下で行った。
1.インク組成物の調製
表1に示す組成になるように各成分を容器に入れて、マグネティックスターラーで2時間混合及び攪拌した後、さらに、直径0.3mmのジルコニアビーズを充填したビーズミルにて分散処理を行うことにより十分に混合した。1時間攪拌してから、5.0μmのPTFE製メンブランフィルターを用いて濾過することで、表1に示す第1~第4インクを得た。表1中の数値は、質量%を示す。水はイオン交換水を用い、各インクの質量がそれぞれ100質量%となるように添加した。
また、表2に示す組み合わせになるように第1~第4インクを選択することにより、各インクセットを得た。
Figure 2023097685000008
表1中で使用した略号や製品の成分は、以下のとおりである。
〔色材〕
・DB359…C.I.Disperse Blue 359
・化合物A…上記式(IA)で表される化合物(下記製造例1によって得た化合物)
・DB60…C.I.Disperse Blue 60、上記式(IC)で表される化合物
・DY54…C.I.Disperse Yellow 54
・SY160:1…C.I.Solvent Yellow 160:1
・DY82…C.I.Disperse Yellow 82
〔分散剤〕
・NSNaF…β-ナフタレンスルホン酸ナトリウム ホルマリン縮合物(花王(株)デモール(登録商標)NL(商品名))
〔水溶性有機溶剤〕
・グリセリン
・プロピレングリコール
・メチルトリグリコール
〔界面活性剤〕
・BYK348…ポリエーテル変性シロキサン界面活性剤(ビックケミー・ジャパン(株)BYK(登録商標)-348(商品名))
〔pH調整剤〕
・トリエタノールアミン
〔製造例1〕
上記式(IA)で表される化合物は、以下のように製造した。なお、以下の説明において「部」は質量部を示す。
スルホラン75部中に、1,4-ジアミノ-2,3-アンスラキノンジカルボキシイミド3部、3-アミノペンタン25部を加えて液を得た。得られた液をオートクレーブ中で140℃に加熱し、6時間反応させた後、室温まで冷却して液を得た。得られた液から析出した固体を濾過分離し、メタノール100部、水200部で洗浄した後、乾燥することより、上記式(IA)で表される化合物3.1部を得た。
2.染色物の作製
第1~第4インクをインクジェットプリンター「PX-G930」(商品名、セイコーエプソン(株))にそれぞれ充填した。その後、プリンターの記録ヘッドにおいて、目詰まりしているノズルがなく、通常の記録ができることを確認した。次に、このインクジェットプリンターにより、中間転写媒体である「TRANSJET Classic」(商品名、Cham Paper社)に対して、Duty100%及び解像度1440×720dpiにて記録を行い、ベタパターンを印刷した。
その後、中間転写媒体のインク付着側を白色記録媒体である布帛(ポリエステル100%、アミーナ、東レ社製)と密着させ、ヒートプレス機(TP-608M、太陽精機社製)を用いて200℃で60秒の条件で加熱し、昇華転写を行い、各染色物を得た。
3.評価方法
3.1.耐光性
キセノンレーザーメーターXL-75(商品名、スガ試験機(株))を用いて、得られた染色物に対して24℃、相対湿度60%RHの条件下で、照度70000luxの照射を7日間行った。照射後の染色物に対して、EN ISO 105B02に準拠して、耐光性を級数として評価した。その結果を表2に示す。
なお、表2において、級数が高いほど、耐光性に優れることを示す。「3級」あるいは「4級」は、それぞれ、3級の標準染料あるいは4級の標準染料と同程度の耐光性を有することを意味する。
3.2.発色性
測色器(商品名「FD-7」、コニカミノルタ社製)を用いて、得られた染色物の色相であるa*値及びb*値と、明度であるL*値と、彩度であるC*値とを測定した。これらの値を用いて、以下の基準にて発色性を評価した。その結果を表2、図1及び2に示す。
なお、評価が基準Aである場合、高彩度のグリーンを得ることができる。
(基準)
A:b*値が50以上であるときにa*値が-20以下であり、かつ、L*値が70以上であるときにC*値が75以上である。
C:b*値が50以上であるときにa*値が-20より大きい値があり、及び/又はL*値が70以上であるときにC*値が75未満である値がある。
3.3.粒状性
得られた染色物の印刷面を、印刷面から30cm離れた距離で目視にて観察し、以下の基準に従って粒状性を評価した。その結果を表2に示す。
評価結果がB以上である場合、本発明の効果が得られているということができる。
(基準)
A:印刷面から30cm離れた距離での目視観察では粒状感を認識できない。
B:印刷面から30cm離れた距離での目視観察において粒状感を認識できる。
C:印刷面から30cmを超える距離での目視観察においても粒状感を認識できる。
Figure 2023097685000009
表2に示すとおり、本実施形態のインクセットによれば、グリーンの彩度が高く、鮮やかなグリーンを有し、優れた耐光性及び粒状性を有する印刷物を得ることができることがわかった。
実施例1と2との対比から、イエロー染料(i)として、C.I.Disperse Yellow 82を用いることで、より耐光性に優れる印刷物を得ることができることがわかった。
実施例1と4との対比、及び実施例2と5との対比から、第1インクと第2インクと共に、第3インクを用いることで、一層優れた粒状性を有する印刷物を得ることができることがわかった。
実施例1と6との対比、及び実施例2と7との対比から、第1インクと第2インクと共に、第4インクを用いることで、一層優れた耐光性を有する印刷物を得ることができることがわかった。
実施例4と9との対比、及び実施例6と9との対比から、第1~第4インクを用いることで、グリーンの彩度がより高く、一層鮮やかなグリーンを有し、一層優れた耐光性及び粒状性を有する印刷物を得ることができることがわかった。

Claims (7)

  1. 第1インクジェットインク組成物と、第2インクジェットインク組成物と、を備え、
    前記第1インクジェットインク組成物が、昇華性及び蛍光性を有する下記式(I)で表される化合物と、水溶性有機溶剤と、水とを含み、
    前記第2インクジェットインク組成物が、昇華性及び蛍光性を有するイエロー染料(i)と、水溶性有機溶剤と、水とを含む、
    インクセット。
    Figure 2023097685000010
    (式(I)中、Rは、水素原子又は炭素数1以上18以下のアルキル基を表し、該アルキル基は水素原子が炭素数1以上6以下のアルコキシ基で置換されていてもよく、Xは、酸素原子又はイミノ基を表す。)。
  2. 第3インクジェットインク組成物を更に備え、
    前記第3インクジェットインク組成物が、昇華性を有し、かつ、蛍光性を有しないシアン染料と、水溶性有機溶剤と、水とを含む、
    請求項1に記載のインクセット。
  3. 第4インクジェットインク組成物を更に備え、
    前記第4インクジェットインク組成物が、昇華性を有し、かつ、蛍光性を有しないイエロー染料(ii)と、水溶性有機溶剤と、水とを含む、
    請求項1又は2に記載のインクセット。
  4. 前記第1インクジェットインク組成物100質量%に対する前記式(I)で表される化合物の含有量が、前記第3インクジェットインク組成物100質量%に対する前記シアン染料の含有量よりも少ない、
    請求項2に記載のインクセット。
  5. 前記イエロー染料(I)が、C.I.Solvent Yellow 160:1、及びC.I.Disperse Yellow 82からなる群より選ばれる1種以上である、
    請求項1~4のいずれか一項に記載のインクセット。
  6. 前記シアン染料が、C.I.Disperse Blue 359である、
    請求項2に記載のインクセット。
  7. 前記イエロー染料(ii)が、C.I.Disperse Yellow 54である、
    請求項3に記載のインクセット。
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