JP2023097441A - 電池用ポリイミド多孔質フイルム - Google Patents

電池用ポリイミド多孔質フイルム Download PDF

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Abstract

【課題】ポリイミド多孔質フイルムをセパレータとして組み込んだ蓄電デバイスの更なる高性能化が求められている。特に、ポリイミド多孔質フイルムをセパレータとして組み込んだリチウム金属電池の初期の充放電特性を改善する。【解決手段】ポリイミド多孔質フイルムにおけるそれぞれの開孔を互いに連通させ、更にこれら開孔のサイズを特定の大きさ以下となるように形成する。特に本発明の電池用ポリイミド多孔質フイルムは、第1空孔と、第2空孔と、これら第1空孔と第2空孔とを連通する連通部と、を有する電池用ポリイミド多孔質フイルムであって、この連通部の径は460nm未満である。連通部の径はある程度小さい方が好ましく、例えば380nm以下にするとより好ましい。また、連通部の径は、第1空孔と第2空孔とのうちの少なくともどちらか一方の空孔径の1/3以上のサイズであることが望ましい。【選択図】図1

Description

本発明は、電池用ポリイミド多孔質フイルムに関する。
近年、様々な蓄電デバイスが実用化されており、中でもリチウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタ、リチウム金属電池に関する技術は著しく発展している。リチウムイオン電池やリチウム金属電池などの蓄電デバイスは、正極、セパレータ、負極が順に積層配置され電解液が満たされ、セパレータによって正極と負極とが絶縁された構造を有している。負極としては、例えば金属リチウム、リチウムと他の金属との合金、カ-ボンやグラファイト等のリチウムイオンを吸着もしくはインターカレーションにより吸蔵する能力を有する炭素材料、リチウムイオンをド-ピングした導電性高分子材料などがよく知られている。
セパレータとしては、近年、耐熱性の高いポリイミド材料で構成した多孔質膜を絶縁用のセパレータとして用いることが検討されている(特許文献1)。
この特許文献1では、ピロメリット酸無水物とジアミノジフェニルエーテルとを用いて作製したポリアミド酸からワニスを調製し、このワニスを製膜・焼成してポリイミド多孔質膜を形成する技術が記載されている。
特開2020-203283号公報
特許文献1に記載されるようなポリイミド多孔質フイルムは電池用のセパレータとして用いることができるが、ポリイミド多孔質フイルムをセパレータとして組み込んだ電池の更なる高性能化が求められている。特に、負極として金属リチウムを用いるリチウム金属電池における初期の充放電特性の改善ないし安定化は重要な課題のひとつとなっている。ポリイミド多孔質フイルムの連通部の開孔サイズが大きすぎると、リチウム析出による短絡という問題が起こる場合があり、充放電時に早期の短絡やサイクル特性を低下させる原因となる。
本発明は上記の課題に対してなされたものである。特にリチウム金属電池の初期における充放電特性などの電池特性を改善することを目的になされたものである。
すなわち、本発明の電池用ポリイミド多孔質フイルムは以下を特徴とする:
第1空孔と、
第2空孔と、
これら第1空孔と第2空孔とを連通する連通部と、を有する電池用ポリイミド多孔質フイルムであって、この連通部の径が460nm未満である。
連通部の径はある程度小さい方が好ましく、例えば380nm以下にするとより好ましい。連通部の孔径を380nm以下にすることでリチウム金属電池における短絡の発生を確実に低減することができる。
また、第1空孔、第2空孔、および連通部(連通孔)は開孔用の粒子を除去して形成するが、この開孔粒子は無機粒子よりも樹脂粒子が望ましい。
また、連通部の径は、第1空孔と第2空孔とのうちの少なくともどちらか一方の空孔径の1/3以上のサイズであることが望ましい。このとき第1空孔と第2空孔とがほぼ同じ孔径サイズの場合は、第1空孔と第2空孔との両方の空孔径の1/3以上のサイズであることが望ましい。
より好ましくは、少なくともどちらか一方の空孔径の2/5から4/5のサイズであることが望ましい。このとき第1空孔と第2空孔とがほぼ同じ孔径サイズの場合は、第1空孔と第2空孔との両方の空孔径の2/5から4/5のサイズであることが望ましい。
このため例えば第1空孔と第2空孔の細孔径が約800nm程度であれば連通部の径は320nm~640nm程度、細孔径が500nm程度であれば連通部の径は200nm~400nm程度、細孔径が400nm程度であれば連通部の径は160nm~320nm程度、細孔径が300nm程度であれば連通部の径は120nm~240nm程度、細孔径が150nm程度であれば連通部の径は60nm~120nm程度が望ましい。
第1空孔と第2空孔それぞれの細孔径と連通部の径とを上述のような比率にすることにより、極端なくびれの形成を防ぎ、例えばポリイミド多孔質フイルムの膜厚方向に圧力が加わった場合でも連通部の孔を確実に確保することができる。
また、第1空孔と第2空孔との孔径は800nm以下であることが望ましい。第1空孔と第2空孔の孔径を800nm以下にすることで表面粗さRaを200nm以下にすることが可能となる。
製法にもよるが、第1空孔と第2空孔との孔径を小さくすることで表面粗さRaを小さくすることが可能となる。第1空孔と第2空孔との孔径を小さくする以外の方法としては、例えば表面開口率を小さくすることで表面粗さを低減することは可能であるが、表面開口率のコントロールは製法に依存するところが大きく、このため表面粗さのばらつきが大きくなるという問題がある。
一方、第1空孔と第2空孔との孔径は開孔用の粒子のサイズ/粒径を変えることで調製可能なため、比較的容易に表面粗さを制御することができる。開孔用の粒子としては典型的なもので700~800nmの無機粒子や樹脂粒子を用いるものであるが、無機粒子と樹脂粒子とでは製造工程の違いからか開孔態様が異なる。
いずれの開孔用の粒子を用いるにしても細孔径を大きくすると表面粗さも大きくなる傾向がある。表面粗さが大きくなると正極や負極との界面における特性(例えば密着性など)にバラつきが生じ、このためにリチウムの移動領域に著しい偏りが発生してしまうことがあった。このような事態の発生を避けるため、表面粗さはある程度小さい方が好ましく、表面粗さを例えば200nm以下にするには細孔径を800nm以下にするとよい。
表面粗さを200nm以下にするためには使用する粒子を小径にするとよく、とりわけ400nm以下の粒子を用いて開孔した場合は、表面粗さを140nm以下にできる。
正極および負極の間に本発明のポリイミド多孔質フイルムを介装した電極構造体を作製することで、リチウムの移動を従来よりも均一にすることができ、これにより短絡が発生するリスクの低減が期待できる。
特に、表面粗さが200nm以下の面を負極に向けて電極構造体を形成することで、従来よりもリチウムの偏った蓄積の発生頻度を低減でき、短絡の低減が可能になる。もちろん、表面粗さは200nm以下といったものに限らず、好ましくは150nm以下、更に好ましくは100nm以下、最も好ましくは60nm以下であり、このように表面粗さを小さくすることで、短絡の発生頻度を小さくすることができる。
また、ポリイミド多孔質フイルムを作製するときに使用する開孔用の粒子としては樹脂粒子がこのましい。中でもポリメチルメタクリレート(PMMA)が好ましい。このPMMAは後述するスラリーの溶媒に分散するものが望ましい。スラリー用の溶媒にPMMAを混合し分散させて成膜することで、同径のシリカ粒子で開孔させる場合に比べて連通孔径を大きくすることができ、ポリイミド多孔質フイルムの透気抵抗を低減することができる。これによりリチウムイオンをよりスムーズに移動させることなどが期待できる。
本発明ではポリイミド多孔質フイルムが有する連通部の孔径を460nm未満にすることにより、蓄電デバイスにおける初期の充放電を従来よりも確実に行うことができる。特に連通部の径が380nm以下の場合では、リチウム金属電池の充電をより安定した状態で行うことができる。
本発明のセパレータの断面を概略的に示す模式図である。
以下に、本発明のポリイミド多孔質フイルム、およびこの多孔質フイルムをセパレータとして用いた電池について説明する。本発明のポリイミド多孔質フイルムは単層構造もしくは多層構造を有することができ、電池用のセパレータとして用いることができる。また、ポリイミド多孔質フイルムは、上に多孔性のコーティング層を設けてもよい。
図1に示すように、本発明のポリイミド多孔質フイルム2は、第1空孔5と、第2空孔7と、これら第1空孔5と第2空孔7とを連通する連通部9と、を有する。連通部9の径は460nm未満であり、連通部9の径はある程度小さい方が好ましく、例えば380nm以下にするとより好ましい。なお、連通部9の孔径は後述するパームポロシメータなどの細孔測定機器によって測ることができる。
連通部9の径は、第1空孔5と第2空孔7とのうちの少なくともどちらか一方の空孔径の1/3以上のサイズであることが望ましく、より好ましくは、少なくともどちらか一方の空孔径の2/5から4/5のサイズであることが望ましい。第1空孔5の径および第2空孔7の径はほぼ等しく、連通口9の径はこれら第1,第2空孔径5、7の2/5から4/5のサイズとなる。このため例えば第1空孔5と第2空孔7の細孔径が約800nm程度であれば連通部の径は320nm~640nm程度、細孔径が500nm程度であれば連通部の径は200nm~400nm程度、細孔径が400nm程度であれば連通部9の径は160nm~320nm程度、細孔径が300nm程度であれば連通部の径は120nm~240nm程度、細孔径が150nm程度であれば連通部の径は60nm~120nm程度が望ましい。
第1空孔5と第2空孔7との孔径は800nm以下であることが望ましい。第1空孔5と第2空孔7の孔径を800nm以下にすることで表面粗さRaを200nm以下にすることが可能となる。
第1空孔5と第2空孔7との孔径を小さくすることで表面粗さRaを小さくすることが可能となる。第1空孔5と第2空孔7との孔径を小さくする以外の方法としては、例えば表面開口率を小さくすることで表面粗さを低減することは可能であるが、表面開口率のコントロールは製法に依存するところが大きく、このため表面粗さのばらつきが大きくなるという問題があった。
一方、第1空孔5と第2空孔7との孔径は開孔用の粒子のサイズ/粒径を変えることで調製することができる。この開孔用の粒子サイズを利用することで、比較的に容易に表面粗さを制御することができる。開孔用の粒子としては典型的なもので700~800nmの無機粒子や樹脂粒子を用いる。
無機粒子および樹脂粒子のいずれの開孔用の粒子を用いるにしても細孔径を大きくすると表面粗さも大きくなる傾向がある。表面粗さが大きくなると正極や負極との界面における特性(例えば密着性など)にバラつきが生じ、このためにリチウムの移動領域に著しい偏りが発生してしまうことがあった。このような事態の発生を避けるため、表面粗さはある程度小さくする方が好ましく、表面粗さを例えば200nm以下にするには細孔径を800nm以下にするとよい。
正極および負極の間に本発明のポリイミド多孔質フイルム2を介装した電極構造体とすることで、リチウムの移動を従来よりも均一にすることができ、これにより短絡が発生するリスクの低減が期待できる。
特に、200nm以下の面を負極に向けて電極構造体を形成することで、確実にリチウムの偏った蓄積を低減でき、短絡を防ぐことが可能になる。もちろん、表面粗さは200nm以下に限らず、好ましくは150nm以下、更に好ましくは100nm以下、最も好ましくは60nm以下であり、このように表面粗さを小さくすることで、短絡のリスクを低減することができる。
本発明のポリイミド多孔質フイルムはコーティング層のほか、接着層や粘着層を備えてもよい。接着層や粘着層を備えた場合、接着層は樹脂層の熱収縮を抑え、樹脂層の破膜に起因する電池の内部短絡を防止する機能を高められることが期待できる。コーティング層、接着層、粘着層は、樹脂層の一方の面にのみに設けてもよいし、両方の面に設けてもよい。
ポリイミド多孔質フイルムは、重量法による空孔率が45~75%であることが好ましい。空孔率45%以上であれば、例えば膜厚20μmでガーレ値を300秒/100cc以下にでき、Li反応量の観点だけでなく、ガーレ値の観点からも好ましい多孔質フイルムを提供することができる。空孔率を高くすると上述の界面は減らせるが、例えば空孔率75%超では多孔質フイルムの強度が弱まり、電池を製造する際に当該フイルムが損傷してしまうことがあるため、空孔率75%以下にして電池製造におけるハンドリング性を向上させる。
ポリイミド多孔質フイルムの厚みは、例えば4μm~50μm程度が好ましい。ポリイミド多孔質フイルムの厚みが厚すぎるとイオン伝導性が低下する傾向が見られる。これに対し、ポリイミド多孔質フイルムの厚みが薄すぎるとイオン伝導性は比較的良好になるが、膜強度の低下傾向が見られる。ポリイミド多孔質フイルムの厚みは、走査型電子顕微鏡によって膜の断面画像を解析する、もしくは打点式の厚み測定装置等によって求めることができる。
セパレータとして用いるポリイミド多孔質フイルムの製造では、例えば、ポリアミック酸を化学イミド化または加熱によってイミド化させる方法など、公知の手法を用いることができる。
本発明のポリイミド多孔質フイルムは、例えば以下の工程で作製することができる:
カルボン酸無水物と有機アミン化合物とからポリアミック酸(いわゆるポリイミドワニス)を含有したポリイミド前駆体溶液を作製する工程、
ポリイミド前駆体溶液に開孔用の微粒子を混ぜてスラリーを作製する工程、
作製されたスラリーを薄膜状に形成して無孔の原反を形成する工程、
原反から開孔用の微粒子を除去する工程、
原反を焼成してイミド化する工程。
なお、開孔用の微粒子を除去する工程と原反のイミド化は同時並行的に実施することもできるが、原反から微粒子を除去して開孔化したのちにイミド化することもできる。以下ではポリイミド多孔質フイルムを製造するためのそれぞれの工程について詳しく説明する。
[ポリイミド前駆体溶液の製造]
このポリイミド前駆体溶液は、カルボン酸無水物と有機アミン化合物とから作製されるポリアミック酸を含む。ポリアミック酸、もしくはポリアミック酸と溶媒との混合物をポリイミド前駆体溶液とし、後述するスラリーを作製する。なお、ポリイミド前駆体溶液は、有機溶媒の存在下でテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを重合反応させて得られる溶液であってもよいが、ポリアミック酸を有機溶媒に溶解させて得られる溶液でもどちらでもかまわない。
[スラリーの作製]
ポリイミド前駆体溶液、開孔用の粒子、および溶剤などを混合して成膜用のスラリーを作製する。このスラリーを薄膜状に成形することで無孔の原反を作製することができる。当該微粒子や分散剤については以下で説明する。なお、分散剤は必須ではなく、必要に応じ適宜用いるようにするとよい。
<開孔用の微粒子>
開孔用の微粒子(以降、フィラーともいう)の材質は、ポリイミド前駆体溶液に使用する有機溶剤に不溶で、成膜後に選択的に除去可能なものであれば特に制限なく用いることができる。例えば、無機材料で構成されるフィラーとしては、シリカ(二酸化珪素)、酸化チタン、アルミナ(Al2O3)等の金属酸化物などがあげられる。
また有機材料で構成されるフィラーとしては、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン、ポリスチレン(PS)、アクリル系樹脂(例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸イソブチル、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等)、ポリウレタン樹脂(PUR)、メラミン樹脂(MF)、ユリア樹脂(UF)、フェノール樹脂(PF)、エポキシ樹脂、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ABS樹脂、AS樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエステル、ポリエーテル等の有機高分子で構成された微粒子(以降、樹脂微粒子という)が挙げられる。
無機材料のフィラーとしては、典型的にはシリカを用いることができる。なかでも単分散球状シリカ粒子は均一で微小な開孔を形成するうえで望ましい。
樹脂微粒子は、線状ポリマーからなっていてもよいし、解重合性ポリマーであってもよい。線状ポリマーは、熱分解時にポリマーの分子鎖がランダムに切断され、一方、解重合性ポリマーは、熱分解時にポリマーが単量体に分解する。いずれも、加熱時に、単量体、低分子量体、あるいは、CO2まで分解することによって、複合膜から除去可能である。使用される樹脂微粒子の分解温度は200~320℃であることが好ましく、230~260℃であればより低い温度で樹脂粒子を除去できるため好ましい。
分解温度が200℃以上であれば、ポリイミド前駆体溶液に高沸点溶剤を使用した場合も成膜を行うことができ、ポリイミド系樹脂の焼成条件の選択の幅が広くなる。また、分解温度が320℃以下であれば、ポリイミド系樹脂に熱的なダメージを与えることなく樹脂微粒子のみを消失させることができる。
解重合性ポリマーとしては、熱分解温度の低いメタクリル酸メチルもしくはメタクリル酸イソブチルの単独(ポリメチルメタクリレートもしくはポリイソブチルメタクリレート)、あるいはこれを主成分とする共重合ポリマーが孔形成時の取り扱い上好ましい。
フィラーとして用いられる微粒子の形状としては特に制限はないが、球状または略球状が望ましい。基本的に真球に近い形状が望ましいが、多少の歪みや細かい凹凸等を有する、楕円形状など略球状の形状であってもかまわない。
また真球形状に近く粒径分布指数の小さい(言いかえると粒径のバラツキの小さい)フィラーが好ましい。シャープな粒度分布を有する微粒子を開孔形成に用いることでポリイミド多孔質フイルムに形成される細孔における孔径のばらつきを小さくすることができ、表面粗さを低減できる。
使用する微粒子の粒径としては、800nm以下のものを用いるとよい。これにより、微粒子を取り除いて得られる多孔質フイルムの開孔径を800nm以下にすることができる。微粒子の孔径は800nmに限らず、例えば、700nm、500nm、400nm、300nm、280nm、200nm、170nm、150nm、100nm、80nmなど、目的とする細孔径に合わせて用いる微粒子を決定するとよい。当該微粒子によって形成される細孔の孔径はほぼ微粒子の孔径と同じものとなる。また開孔用の粒子としては粒度分布の比較的狭い同一サイズの粒子を使用して開孔してもよいが、サイズの異なる複数種類の微粒子を混合して開孔してもよい。後述の実施例では同一サイズの粒子を使用して開孔したポリイミド多孔質フイルムを例示しており、第1空孔の孔径と第2空孔の孔径とはほぼ同じ孔径を有する空孔となっている。例えば800nmの開口用の微粒子を用いて多孔質フイルムを作製した場合では、第1空孔および第2空孔ともに略800nmの孔径にできる。
<分散剤>
分散剤の種類は特に限定されず、公知のものを使用することができる。分散剤は、2種以上を混合して使用してもよい。
分散剤を添加することにより、ポリアミック酸とフィラーとをより均一に混合することができ、後述する原反においてフィラーをより均一に分布させることができる。フィラーを均一に分布させることで、最終的にフィラーを除去して得られるポリイミド多孔質フイルムにおいて、細孔の分布をより均一にすることができる。また分散剤を添加せずに混合時間やミキサーの回転数などを適切に調整するなどの手法をもって分散度を調整してもよい。
<カルボン酸無水物およびポリアミック酸>
ポリアミック酸としては、カルボン酸二無水物とジアミンとを重合して得られるものを使用することができる。カルボン酸二無水物およびジアミンの使用量も特に制限はないが、カルボン酸二無水物1モルに対して、ジアミンを0.50~1.50モルが好ましく、0.60~1.30モルがより好ましく、0.70~1.20モルが特に好ましい。
カルボン酸二無水物は、従来からポリアミック酸の合成原料として使用されているものの中から適切に選択するとよい。カルボン酸二無水物は、芳香族テトラカルボン酸二無水物であっても、脂肪族テトラカルボン酸二無水物であってもよいが、得られるポリイミド樹脂の耐熱性の点から、芳香族テトラカルボン酸二無水物を使用することが好ましい。カルボン酸二無水物は、2種以上を組合せて用いてもよい。
芳香族テトラカルボン酸二無水物の好適な具体例としては、ピロメリット酸二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2,6,6-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸無水物、4,4-(p-フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、4,4-(m-フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、9,9-ビス無水フタル酸フルオレン、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独あるいは二種以上混合して用いることもできる。
<有機アミン化合物>
有機アミン化合物であるジアミンは、従来からポリアミック酸の合成原料として使用されているジアミンから適宜選択するとよい。ジアミンは、芳香族ジアミンであっても、脂肪族ジアミンであってもよく、目的とするポリイミド樹脂の特性に鑑み、適宜選択することができるが、芳香族ジアミンが好ましい。またジアミンは2種以上を組合せて用いてもよい。
芳香族ジアミンとしては、フェニレンジアミンおよびその誘導体、ジアミノビフェニル化合物およびその誘導体、ジアミノジフェニル化合物およびその誘導体、ジアミノトリフェニル化合物およびその誘導体、ジアミノナフタレンおよびその誘導体、アミノフェニルアミノインダンおよびその誘導体、ジアミノテトラフェニル化合物およびその誘導体、ジアミノヘキサフェニル化合物およびその誘導体、カルド型フルオレンジアミン誘導体などを挙げることができる。
ベンゼン核の数に基づいてジアミンの具体例を挙げると以下の1)~4)である:
1)ベンゼン核1つのベンゼンジアミン
2,4-ジアミノトルエン、フェニレンジアミン、2,6-ジアミノトルエンなど。
2)ベンゼン核2つのジアミン
3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジカルボキシ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ビス(4-アミノフェニル)スルフィド、4,4’-ジアミノベンズアニリド、ジメチルベンジジン、3,3’-ジメトキシベンジジン、2,2’-ジメトキシベンジジン、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、オキシジアニリン、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジクロロベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’-ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4‘-ジアミノ-3,3‘-ジメチルジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホキシドなど。
3)ベンゼン核3つのジアミン
1,3-ビス(3-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェニル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼンなど。
4)ベンゼン核4つのジアミン
3,3’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、2,2-ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンなど。
フェニレンジアミンはo-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン等が挙げられ、フェニレンジアミン誘導体としては、メチル基、エチル基等のアルキル基が結合したジアミン、例えば、2,4-ジアミノトルエン、2,4-トリフェニレンジアミン等を挙げることができる。
なお、これらのジアミンの水素原子がハロゲン原子、メチル基、メトキシ基、シアノ基、フェニル基等の群より選択される少なくとも1種の置換基により置換された化合物であってもよい。
ポリアミック酸を製造する手段に特に制限はなく、例えば有機溶剤中で酸およびジアミン成分を反応させる方法等の公知の手法を用いることができる。
<有機溶剤>
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応は、一般に有機溶剤中で行われる。テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応に使用される有機溶剤は、テトラカルボン酸二無水物およびジアミンを溶解させることができ、テトラカルボン酸二無水物およびジアミンと反応しないものであれば特に限定されない。有機溶剤は単独でもちいてもよいし2種以上を混合して用いてもよく、適宜選択するとよい。
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応に用いる有機溶剤の例としては、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N-メチルカプロラクタム、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジオキサン、フェノール系溶剤、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等の環状ケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族類、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式化合物挙げられる。これらの有機溶剤は単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。
ポリイミド前駆体溶液に用いる有機溶剤としては、使用するポリアミック酸またはポリイミド系樹脂を溶解することができ、微粒子を溶解しないものであれば、特に限定されず、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応に用いる溶剤として上述したものを用いることができる。
ポリイミド前駆体溶液中の全成分のうち、有機溶剤の含有量は、50~95質量%が好ましく、60~85質量%がより好ましい。ポリイミド前駆体溶液における固形分は、5~50質量%が好ましく、より15~40質量%がより好ましい
ポリイミド前駆体溶液には、上記の成分のほかに、帯電防止、難燃性付与、低温焼成化、離型性、塗布性、低吸湿性、低線膨張率性、低下熱収縮性等を目的とし、帯電防止剤、難燃剤、化学イミド化剤、縮合剤、離型剤、表面調整剤、寸法安定剤など、適宜混合するとよい。
一例を示すと、ポリイミド多孔質フイルムのより具体的な製造手順は下記(1)~(6)のとおりであるが、シリカなど開孔用の無機粒子を用いて原反を多孔化する場合は無機粒子を除去するために原反を溶媒に浸漬する必要があるため、多孔化工程と焼成工程とを同時に実行することは難しい。この場合、焼成工程の前に多孔化工程を実施するのが望ましい。
他方、樹脂製の粒子を用いて原反を多孔化する場合では、多孔化工程と焼成工程とを同時に実行することができ、工程をよりコンパクトにすることが可能となる:
(1)カルボン酸無水物および有機アミン化合物から合成されるポリアミック酸を有するポリイミド前駆体溶液を調製する工程;
(2)ポリイミド前駆体溶液とフィラーとを混合したスラリーを作製する工程;
(3)スラリーを基材上に塗工して無孔の原反を形成する原反形成工程;
(4)原反形成工程で形成された原反を基材から引き剥す剥離工程;
(5)剥離工程によって基材から剥離された原反を多孔化する多孔化工程;
(6)原反を焼成する焼成工程、
[ポリイミド前駆体溶液の作製条件など]
上述したように、ポリアミック酸は、カルボン酸二無水物と有機アミン化合物とを重合することで得ることができる。ポリアミック酸に熱を付与することによってイミド化(熱イミド化)するか、もしくはポリアミック酸を化学的にイミド化(化学イミド化)することで、カルボン酸部分が閉環してポリイミド化することができる。
イミド化率は約80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上であることが望ましい。
ジアミンは、p-フェニレンジアミン、ジメチルベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4‘-ジアミノ-3,3‘-ジメチルジフェニルメタン、o-ジアニシジン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレンの中から選択される少なくとも1種であることが望ましい。ジアミンは1種でもよいし、2種以上を混合してもよい。
またカルボン酸に関して、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物としては、3,3’,4,4‘-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物が好ましい。
すなわちカルボン酸としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4‘-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物から選択される少なくとも1種であることが望ましい。
上述したように、ポリアミック酸を重合するための溶媒としては例えば有機極性溶媒を用いることができ、好ましい有機極性溶媒としては、例えば、テトラメチル尿素、フェノール、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ピリジン、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジメチルホルムアミド、p-クロロフェノール、o-クロルフェノール、ジメチルスルホキシド、クレゾール、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)が挙げられる。
ポリアミック酸を作製するときの他の条件としては、例えば、テトラカルボン酸二無水物およびジアミンをだいたい等モル(略等モル)で、好ましくは約80℃以下、より好ましくは70℃以下、さらに好ましくは0~65℃、特に好ましくは10~60℃の温度条件下で反応させるとよい。
反応時間としては、好ましくは約0.1時間以上、より好ましくは0.2~72時間、さらに好ましくは0.5~60時間で反応させることで、ポリアミック酸を作製することができる。なお、ポリイミド前駆体溶液を製造するときに、分子量を調整するための成分を反応溶液に加えることもできる。
作製されたポリイミド前駆体溶液は、例えばポリアミック酸5~50質量%と有機極性溶媒50~95質量%とからなる。ポリアミック酸の含有量が5質量%未満だと多孔質ポリイミド膜を作製した際のフイルム強度が低下し、50質量%を超えると多孔質ポリイミド膜の粘度が高くなりすぎ、ハンドリング性が低下する。
[スラリーの作製における他の条件]
上述したポリイミド前駆体溶液とフィラーとを混合してスラリーを作製するが、スラリーには濃度調整用の有機溶剤、さらには帯電防止、難燃性付与、低温焼成化、離型性、塗布性、低吸湿性、低線膨張率性、低下熱収縮性等を目的とし、帯電防止剤、難燃剤、化学イミド化剤、縮合剤、離型剤、表面調整剤、寸法安定剤などの薬品(以下添加剤)を加えてもよい。
スラリーはポリイミド前駆体溶液5~90質量%と開孔用の微粒子2~40%、濃度調整用に有機溶剤を0~95質量%、添加剤については特に限定されないが好ましくは0~20質量%からなり、それらを攪拌装置で混合する。なお攪拌では「あわとり練太郎」((株)シンキー製)などの自転公転攪拌機を用いるとよい。
スラリーの溶液粘度は、塗工で使用するダイやコータマシンの特性に応じて適宜決めるとよい。例えば、塗工のしやすさやフイルム強度の観点から、例えば0.1~1000Pa・s、好ましくは0.5~300Pa・s、更に好ましくは1~250Pa・s程度の粘度とすることで様々なダイやコータマシンで使用することができる。
[原反形成工程]
まず、スラリーを基材上に塗工して原反を形成する。塗工方法については特に制限はなく、例えば、スラリーブレードやTダイなどを用いてガラス板、ステンレス板、PET(ポリエチレンテレフタレート)フイルム、PEN(ポリエチレンナフタレート)フイルム等の基材の上に塗工する。これにより、基材上にスラリーが層状に拡がった原反を形成することができる。
また、無端ベルトなど無端状の基材表面にスラリーを塗工して原反を形成することもできる。当該ベルトとしては、ポリイミド前駆体溶液スラリーの影響を受けないものであればよく、ステンレスなどの金属板やポリテトラフルオロエチレンなどの樹脂板をベルトとして用いることができる。
[剥離工程]
原反形成工程後であって焼成工程前など適切なタイミングで基材から原反を剥離する剥離工程を設けるとよい。原反の長さとしては特に制限はないが、生産性の観点から長尺(例えば、5m以上)であることが好ましく、10m以上であることがより好ましく、20m以上であることが更に好ましい。原反の長さの上限値としては特に制限はないが、例えば、4000m以下であり、典型的には1000m以下にすると原反の取り扱いが容易になる。上述の工程により、原反には、基材から剥離される第1面と、第1面と反対側の第2面とが形成される。このとき、第1面の表面粗さは基材の表面粗さに依存する性質がある。基材の表面粗さを小さくすることにより、第1面の表面粗さを小さくすることが可能となる。また、基材の表面粗さやうねりといった空間周波数を低減することにより、より平滑な原反を形成することができる。また一般的に第1面よりも第2面の方が粗くなる傾向があり、表面粗さは第1面よりも第2面の方が大きくなる。
[多孔化工程]
製膜した原反からフィラーを適切な方法を選択して除去することにより、球状または略球状の孔を有するポリイミド多孔質フイルムを製造することができる。原反においてフィラーが互いに接触していた部分は、フィラーが除去された後、複数の孔が連通している連通口となる。
フィラーの除去方法としては溶媒や酸、アルカリで微粒子を溶かして除去する方法や、焼成によってフィラーを除去する方法がある。開孔粒子として、シリカ等の無機粒子を用いる場合も、酸やアルカリと接触させて無機粒子を溶解させることにより除去することができる。無機アルカリ溶液として例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物の溶液、有機アルカリ溶液としては、アンモニア溶液、水酸化アルカリとヒドラジンと1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンを主成分とするエッチング液等を挙げることができる。
フィラーが樹脂粒子である場合、ポリイミドフイルムを溶解せずに、樹脂粒子が可溶な有機溶剤により、樹脂粒子を溶解除去することができる。このような有機溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン等のエーテル類;トルエン等の芳香族類;アセトンなどのケトン類;酢酸エチルなどのエステル類;が挙げられる。これらの中でも、テトラヒドロフラン等のエーテル類が好ましく、テトラヒドロフランを用いることがさらに好ましい。また樹脂微粒子の場合は、樹脂微粒子の熱分解温度以上、かつ、ポリイミド系樹脂の熱分解温度未満の温度に加熱することで樹脂微粒子を分解させることもできる。
[焼成工程]
得られた原反もしくは既に多孔化された原反に熱を付与してイミド化(以降、熱イミド化という)し、これによりポリイミド多孔質フイルムを作製することができる。この熱イミド化後のポリイミド多孔質フイルムの機械方向(MD方向)の収縮率は5%以下、また幅方向(TD方向)の収縮率も5%以下に抑制するとよい。収縮率の抑制手段や方法に特に制限はないが、原反や開孔後のフイルムにかかるテンションは可能な限り抑えるとよい。
温度条件は、例えば250~500℃の温度範囲で、1~300分、好ましくは5~240分間、より好ましくは10~120分間で適宜実行するとよい。生産性を高めるには加熱時間はなるべく短くするとよい。
焼成されたポリイミド多孔質フイルムは、例えば直径2.5cm(1インチ)以上25cm(10インチ)以下の巻き芯に捲回するとよい。巻き芯の直径としては5cm(2インチ)以上10cm(4インチ)以下が好ましい。巻き芯の材質としては特に制限はないが、紙、ステンレスなどの金属製、ABSやPP、PE、PVC、PET、FRP、ベークライトなどの硬質プラスチック製が挙げられる。
熱イミド化処理では、200℃以上の温度域での昇温速度が、20℃/分以上、好ましくは30℃/分以上であることが望ましく、実際には120~200℃/分である。イミド化反応が顕著に起こる100~250℃の温度域において上記の昇温速度で加熱することにより、表面開口率および孔径が大幅に向上した本発明の多孔質ポリイミド膜を得ることができる。
焼成温度はポリアミック酸の種類や目的とするイミド化の度合いによっても異なるが、120~500℃が好ましく、150~500℃がさらに好ましい。
焼成を行う際は、乾燥工程と焼成工程とを分けてもよいが、厳密に分けずに実施してもよい。例えば、360℃で焼成を行う場合、室温から360℃まで連続的に昇温させた後に360℃で数十分間焼成する方法や、室温から360℃まで段階的に昇温させて360℃で数十分焼成する方法があるが、適宜好ましい手順を選択するとよい。
上記の焼成工程が樹脂粒子の除去を兼ねるとき、樹脂粒子を構成する有機材料が、ポリイミドよりも低温で分解するものであれば、ポリイミドに熱的なダメージを与えることなく樹脂粒子のみを消失させることができる。このため樹脂微粒子の分解温度は例えば、120℃以上500℃以下であることが好ましい。
[アルカリエッチング]
ポリイミド多孔質フイルムの製造において、フィラーを除去する前の原反の少なくとも一部を除去するか、またはフィラーを除去した後のポリイミド多孔質フイルムの少なくとも一部を除去するために、公知のアルカリエッチングを行ってもよい。なお後述する本発明の実施例ではアルカリエッチングは実施はしていない。
アルカリエッチングは、多孔化工程の前もしくは多孔化工程の後のどちらで実施してもよいが、多孔化工程および焼成工程後にエッチングを実施するのが好ましい。
なお、上記のイミド化工程で得られたポリイミド多孔質フイルムに対して適宜表面処理を実施してもよい。例えば片面もしくは両面に、コロナ放電処理、低温プラズマ放電や常圧プラズマ放電などのプラズマ放電処理、化学エッチングなどを施して表面処理してもよい。これらの処理はリチウムイオン二次電池用セパレータの分野では既によく知られており、濡れ性を向上させることができる。
[ポリイミド多孔質フイルム]
上記の手順で作製されたポリイミド多孔質フイルムは、複数の球状孔または略球状孔が内部に形成されており、孔の少なくとも一部が互いに連通している。この連通の程度が高ければガーレ値は小さく透気抵抗は低いが、独立した孔の割合が増すとガーレ値は大きく透気抵抗も高いものとなる。
ポリイミド多孔質フイルムの孔径は、フイルムを製造する際にフィラーとして用いる微粒子の種類とサイズ、また、アルカリエッチングの度合いを調整することによりコントロールすることができる。また、ポリイミド多孔質フイルム内の連通部の径も、使用する微粒子やアルカリエッチングの度合い等で調整することができる。
本発明のポリイミド多孔質フイルムにおいて、孔は孔径のばらつきが少なく、また、分布もより均一であることが好ましい。フイルム内の孔の孔径や分布のばらつきの少なさを示す指標として、フイルムのガーレ値を場所を変えて数点測定し、その際の値のばらつきを評価する方法を用いることができる。ポリイミド多孔質フイルムの任意の10点について、JIS P 8117に準拠し、ガーレ法により透気度(100mLの空気がフイルムを透過する秒数。ガーレ値ともいう)を測定し、透気度の平均値と標準偏差とを求めることができる。このとき、標準偏差の値が均値に対して10%未満である場合、フイルム内の孔の孔径や分布のばらつきが小さいと考えられるため、好ましい。より好ましくは8%以下であり、さらに好ましくは6%以下である。フイルム内の孔の孔径や分布のばらつきが小さいと、フイルムをリチウムイオン電池のセパレータとして用いた際に、セパレータ上でリチウムイオンを均一に移動させることができ、リチウムイオンの偏在を回避でき、これが影響するためなのか推測の域をでないが、電池の短絡が生じにくい。
孔径や分布のばらつきの小さい孔を有するフイルムは、フイルムの製造時に、真球率が高く、粒径分布指数の小さい微粒子をフィラーとして用いることや、微粒子とポリアミック酸またはポリイミド系樹脂とを含むポリイミド前駆体溶液の粘度を均一な塗布が可能となるような適切な粘度に調整すること等により製造することができる。
上記の方法で測定したガーレ法による透気度は400秒以下が好ましく、300秒以下であることがより好ましく、250秒以下がより好ましい。このような透気度となることにより、リチウムやリチウムイオンをより低抵抗に移動させることができるものと考えられる。
本発明のポリイミド多孔質フイルムの膜厚は、フイルムを電池用セパレータとして使用する場合には、2μm以上100μm以下が好ましく、3μm以上80μm以下がより好ましく、4μm以上50μm以下がさらに好ましい。膜厚はマイクロメータ等で複数の箇所の厚さを測定し平均することで求めることができる。
[ポリイミド多孔質フイルムの用途]
本発明のポリイミド多孔質フイルムは、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、キャパシタ、負極に黒鉛を用いるリチウムイオン一次/二次電池、負極に金属リチウムを用いるリチウム金属一次/二次電池などの蓄電デバイスにおいてセパレータとして使用することができる。これらの中でもリチウムイオン二次電池用もしくはリチウム金属二次電池用のセパレータとして用いることが好ましい。また本発明のポリイミド多孔質フイルムを燃料電池用の電解質膜として用いることもできる。
[電池一般]
本発明のポリイミド多孔質フイルムをセパレータとして用いた電池は、通常、セパレータに加えて、負極、正極、および電解液を有する。後述するが捲回型(円筒もしくは角型)、ラミネート型、コイン型など様々な形式の電池があるが、基本的には正極、セパレータ、および負極が順に積層された電極構造体が外装体に内容され、この外装体内に電解液が注液され電池が作製される。
電池の負極は、負極活物質、導電助剤およびバインダからなる負極合剤が、集電体上に成形された構造をとることができる。例えば、負極活物質として、ニッケルカドミウム電池の場合は水酸化カドミウムを、ニッケル水素電池の場合は水素吸蔵合金を、それぞれ用いることができる。また、リチウムイオン二次電池の場合は、リチウムを電気化学的にドープすることが可能な材料が採用できる。このような、活物質として、例えば、炭素材料、シリコン、アルミニウム、スズ、ウッド合金等が挙げられる。
負極を構成する導電助剤としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラックといった炭素材料が挙げられる。バインダは有機高分子からなり、例えば、ポリフッ化ビニリデン、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。集電体には、銅箔、ステンレス箔、ニッケル箔等を用いることが可能である。
また、正極は、正極活物質、導電助剤およびバインダからなる正極合剤が、集電体上に成形された構造とすることができる。例えば、正極活物質としては、ニッケルカドミウム電池の場合は水酸化ニッケルを、ニッケル水素電池の場合は水酸化ニッケルやオキシ水酸化ニッケルを、それぞれ用いることができる。リチウムイオン二次電池の場合、正極活物質としては、リチウム含有遷移金属酸化物等が挙げられ、具体的にはLiCoO2、LiNiO2、LiMn0.5Ni0.5O2、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2、LiMn2O4、LiFePO4、LiCo0.5Ni0.5O2、LiAl0.25Ni0.75O2等が挙げられる。導電助剤はアセチレンブラック、ケッチェンブラックといった炭素材料が挙げられる。バインダは有機高分子からなり、例えばポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。集電体にはアルミ箔、ステンレス箔、チタン箔等を用いることが可能である。
電解液としては、例えば、ニッケルカドミウム電池やニッケル水素電池の場合には、水酸化カリウム水溶液が使用される。またリチウムイオン電池やリチウム金属電池の電解液は、リチウム塩を非水系溶媒に溶解したものが典型的に使用される。リチウム塩としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiFSI等が挙げられる。非水系溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ-ブチロラクトン、ビニレンカーボネート等が挙げられ、これらは単独で用いても混合して用いてもどちらでもよい。
外装材は、金属缶またはアルミラミネートパック等が挙げられる。電池の形状は角型、円筒型、コイン型等があるが、本発明のセパレータはいずれの形状においても好適に適用することが可能である。
一例として、以下にラミネート型電池、円筒電池、およびコイン電池の作製手順について説明する。
[ラミネート型リチウムイオン二次電池およびリチウム金属二次電池]
[正極・負極]
正極および負極としてそれぞれ市販品を使用することができ、例えば、正極に含まれる正極活物質はスピネル構造を有するLi1.1Mn1.9O4と、リチウム・ニッケル・コバルト・マンガン酸リチウム(Ni/Liモル比0.7)との混合物であり、バインダとしてポリフッ化ビニリデン、導電助剤としてカーボンブラック粉末を用いることができる。
負極には負極活物質として黒鉛などを用いることができる。正極活物質層および負極活物質層の空孔率と空孔径は適宜調整するとよい。正極および負極の集電体の一方の面側の活物質層を剥がし、例えば29mm×40mmのサイズに切り抜いて使用する。
また黒鉛のかわりに金属リチウム層を所定の厚さで形成して負極として使用することもできる。この場合、エネルギー密度の向上が期待できる。
正極の正極集電体にアルミニウム製の正極タブを溶接し、負極の負極集電体に銅製の負極タブ(負極集電板)を溶接する。これらタブを溶接した正極の正極活物質層と負極の負極活物質層とを対向させ、間にセパレータを挟んでプレート状の1つの電極構造体を作製する。
アルミ層が設けられたラミネートフイルムによる外装材(サイズおよび形状は例えば60mm×60mmの方形状)を用いて上述の電極構造体を挟み込み、方形状の4辺のうちの3辺を熱で圧着封止して外装体を形成する。
この外装体に、真空含浸装置(例えばTOSPACK V-307GII;東静電気株式会社製)を用いて電解液を注入して、残りの1辺を熱圧着で真空封止してセルを作製する。その後、注液した電解液が電極構造体の細孔に十分含浸するまで、例えば室温で所定時間静置するとよい。
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されるものではない。まず、セパレータの各種物性の測定方法について以下に記載する。
[膜厚]
接触式厚み計(ピーコック製)により測定した。
[ガーレ値(透気度)]
製造した微多孔膜からMD方向に80mm、全幅の試験片を採取し、中央部と左右の端部(端面から50mm内側)の3点について、B型ガーレ式デンソメーター(熊谷理機工業株式会社 型録No.2060)を用い、JIS P8117に準じて、測定を行った。3点の平均値をガーレ値として算出した。
[空孔率(重量法による実測)]
20μmの試験片を3.5×4.5cmの大きさで20枚打ち抜き、膜厚と重量を測定する。これらの多孔質フィルムを真密度測定装置(BELPycno:マイクロトラック・ベル社製)にて測定を行い、多孔質フィルムの真密度を測定する。測定に使用するガスはHeガス。測定セルの大きさは3.5ccのものを使用し、測定手順は装置マニュアル通りに測定。得られた真密度の結果をD、多孔質フィルムの面積をS、膜厚をd、重量をwとして次式により空孔率を算出する。
空孔率=(1-(w/(S×d×D)×100 (1)
[細孔径測定]
細孔径の測定にはパームポロメーター(poroluxTM1000:meritics社製)を用いた。本装置はバブルポイント法JIS K 3832に準じた装置である。本測定装置は多孔質フィルムを試料として、予め表面張力が既知の湿潤液に多孔質フィルムを浸し、多孔質フィルムの全ての細孔を湿潤液で覆った状態から多孔質フィルムに圧力をかけ、湿潤液の液膜が破壊される圧力と湿潤液の表面張力とから計算される細孔の孔径を測定するものである。湿潤液としてはmeritics社製のporefilを用いて多孔質フィルムを湿潤させ下記式を用いて、孔径を求めた。表1にまとめた測定結果の単位はナノメートル(nm)である。
d=C・γ/P
(式中、d(単位:μm)は多孔質フィルムの孔径であり、γ(単位:mN/m)は湿潤液の表面張力であり、P(単位:mBar)はその孔径の湿潤液膜が破壊される圧力であり、Cは湿潤液の濡れ張力、接触角等により定まる定数である。)
[表面粗さ]
微多孔膜の表面粗さは、例えばZYGO社製の白色干渉計(NexView)を用い、×5倍(対物レンズ×50倍、ZOOM×0.5倍の条件下で、MD方向(長手方向)1270μm×TD方向(幅方向)333μmの範囲の画像を採取する。採取した画像から出力した深さ方向の数値を用いて、MD方向、TD方向についてすべての線分析を行い、各方向の最大粗さを算出した。また、各方向のRz最小5箇所のラインから各算出平均粗さRaを算出して、その平均値をRaとした。粗さの単位はナノメートル(nm)である。
[初期充放電特性の評価]
上述のように作製した各ラミネート型電池について以下の充放電試験条件に従い3回の充放電試験を実施し、初期充放電特性の評価を行った。
(充放電試験条件)
1)充放電試験機:TOSCAT-3000(東洋システム株式会社製)
2)恒温槽:LU-113(エスペック株式会社製)を用いて25℃に設定
3)充放電条件
[充電過程]4.3V、0.1C(1回目)または0.2C(2および3回目)(定電流・定電圧モード)、カットオフ電流0.02C、休止時間10分間
[放電過程]2.8V、0.1C(1回目)または0.2C(2および3回目)(定電流モード)、休止時間10分間。
[サイクル試験]
25℃の環境下で、サイクル試験を行った。
ステップ1
[充電過程]4.3V、0.2C(定電流・定電圧モード)、カットオフ電流0.02C、休止時間10分間
[放電過程]2.8V、0.1C(定電流モード)、休止時間10分間
このステップを1サイクル行った。
次にステップ2
[充電過程]4.3V、0.2C(定電流・定電圧モード)、カットオフ電流0.02C、休止時間10分間
[放電過程]2.8V、0.2C(定電流モード)、休止時間10分間
このステップ2を49サイクル行った。以降、ステップ1とステップ2を1セットとして、これを繰り返した。
上記の3回の充放電(放電後10分間休止した後に次のサイクルの充電を開始)において、
・クーロン効率が99%以上の値を示すもの。容量も安定している:○
・クーロン効率は95%以上の値を示すが、容量の変動を伴いながら電池として作動するもの:□
・電池として作動しないもの(クーロン効率は95%未満):△
として評価した。結果を下記の表1に示す。
実施例1
[ポリアミック酸の準備]
N,N-ジメチルアセトアミド:16gに4,4‘-オキシジアニリン:1.91gとピロメリット酸無水物:2.09gを添加し、セパラブルフラスコ中にて25℃で12時間攪拌して反応させ、ポリアミック酸を得た。このポリアミック酸にシリカ粒子(粒径170nm)を9.94g加えてスラリーを調製し、このスラリーをTダイから基材上に吐出して原反を作製した。得られた原反を10%HF水溶液中に8時間浸漬することで膜中の粒子を除去し、その後0.5%水酸化ナトリウムで30分中和後、水洗・乾燥を行ってポリイミド多孔質フイルムを得た。このときポリイミド多孔質フイルムの空孔率は略65%、膜厚は20μmであった。透気度は上述の測定方法において120秒、平均細孔径は上述した測定方法において89nmであった。上述したラミネート電池の作製手順にしたがい、NMC系を用いた正極、金属リチウムで構成された負極との間に当該ポリイミド多孔質フイルム(セパレータ)を設けて電極構造体を形成し、ラミネート型のリチウム金属電池を作製した。このときセパレータの第1面を負極に向けた。なお電解液としては2.63MのLiFSI、SL:DME(3:7)、HFE30体積%の組成を有するものを使用した。充放電試験を行った結果、クーロン効率99~100%の間で問題なく充放電を重ねることができた。結果を表1にまとめた。なお下記の実施例ならびに比較例についても表1に記載した。
実施例2
N,N-ジメチルアセトアミド:16gに4,4‘-オキシジアニリン:1.91gとピロメリット酸無水物:2.09gを添加し、セパラブルフラスコ中にて25℃で12時間攪拌して反応させ、ポリアミック酸を得た。このポリアミック酸にシリカ粒子(粒径280nm)を9.94g加えてスラリーを調製し、このスラリーをTダイから基材上に吐出して原反を作製した。得られた原反を10wt%HF水溶液中に8時間浸漬することで膜中の粒子を除去し、その後0.5wt%水酸化ナトリウムで30分中和後、水洗・乾燥を行ってポリイミド多孔質フイルムを得た。このとき空孔率は略65%、膜厚は20μmであり、透気度は上述の測定方法において62秒、平均細孔径も上述の測定方法において146nmであった。上述したラミネート電池の作製手順にしたがい、NMC系を用いた正極、金属リチウムで構成された負極との間に当該ポリイミド多孔質フイルムを設けて電極構造体を形成し、ラミネート型のリチウム金属電池を作製した。このときセパレータの第1面を負極に向けた。なお電解液としては2.63MのLiFSI、SL:DME(3:7)、HFE30体積%の組成を有するものを使用した。充放電試験を行った結果、クーロン効率99~100%の間で問題なく充放電を重ねることができた。
実施例3
N,N-ジメチルアセトアミド:16gに4,4‘-オキシジアニリン:1.91gとピロメリット酸無水物:2.09gを添加し、セパラブルフラスコ中にて25℃で12時間攪拌して反応させ、ポリアミック酸を得た。このポリアミック酸にシリカ粒子(粒径500nm)を9.94g加えてスラリーを調製し、このスラリーをTダイから基材上に吐出して原反を作製した。得られた原反を10wt%HF水溶液中に8時間浸漬することで膜中の粒子を除去し、その後0.5wt%水酸化ナトリウムで30分中和後、水洗・乾燥を行ってポリイミド多孔質フイルムを得た。このとき空孔率は略65%、膜厚は20μmであり、透気度は上述の測定方法において41秒、平均細孔径も上述の測定方法において225nmであった。上述したラミネート電池の作製手順にしたがい、NMC系を用いた正極、金属リチウムで構成された負極との間に当該ポリイミド多孔質フイルムを設けて電極構造体を形成し、ラミネート型のリチウム金属電池を作製した。このときセパレータの第1面を負極に向けた。なお電解液としては2.63MのLiFSI、SL:DME(3:7)、HFE30体積%の組成を有するものを使用した。充放電試験を行った結果、クーロン効率99~100%の間で問題なく充放電を重ねることができた。
実施例4
N,N-ジメチルアセトアミド:16gに4,4‘-オキシジアニリン:1.91gとピロメリット酸無水物:2.09gを添加し、セパラブルフラスコ中にて25℃で12時間攪拌して反応させ、ポリアミック酸を得た。このポリアミック酸にポリメタクリル酸メチル粒子(粒径400nm)を6.23g加えてスラリーを調製し、このスラリーをTダイから基材上に吐出し、熱処理にて粒子を除去しポリイミド多孔質フイルムを作製した。このポリイミド多孔質フイルムの空孔率は略65%、膜厚は20μmであり、透気度は上述の測定方法において29秒、上述の測定方法において263nmであった。上述したラミネート電池の作製手順にしたがい、作製したセパレータの第1面を負極に向けつつ、NMC系を用いた正極、金属リチウムで構成された負極との間にセパレータを配置して電極構造体を形成しラミネート型のリチウム金属電池を作製した。なお電解液としては2.63MのLiFSI、SL:DME(3:7)、HFE30体積%の組成を有するものを使用した。充放電試験を行った結果、クーロン効率99~100%の間で問題なく充放電を重ねることができた。
実施例5
ポリイミド多孔質フイルムの第2面を負極に向けてラミネート型のリチウム金属電池を作製したこと以外は実施例4と同様である。充放電試験を行った結果、クーロン効率が97~100%の間で大きく変動を伴いながら推移しつつ充放電を重ねることができるときと、クーロン効率99~100%の間で問題なく充放電を重ねることができるときの2つのパターンが生じており、不安定であった。
実施例6
N,N-ジメチルアセトアミド:16gに4,4‘-オキシジアニリン:1.91gとピロメリット酸無水物:2.09gを添加し、セパラブルフラスコ中にて25℃で12時間攪拌して反応させ、ポリアミック酸を得た。このポリアミック酸にポリメタクリル酸メチル粒子(粒径890nm)を6.23g加えてスラリーを調製し、このスラリーをTダイから基材上に吐出し、熱処理にて粒子を除去しポリイミド多孔質フイルムを作製した。このとき空孔率は略65%、膜厚は20μmであり、透気度は上述の測定方法において20秒、平均細孔径も上述の測定方法において377nmであった。
上述したラミネート電池の作製手順にしたがい、作製したセパレータの第1面を負極に向けつつ、NMC系を用いた正極、金属リチウムで構成された負極との間にセパレータを配置して電極構造体を形成しラミネート型のリチウム金属電池を作製した。なお電解液としては2.63MのLiFSI、SL:DME(3:7)、HFE30体積%の組成を有するものを使用した。充放電試験を行った結果、クーロン効率が100~97%の間で大きく変動を伴いながら推移しつつ充放電を重ねることができた。
実施例7
ポリイミド多孔質フイルムの第2面を負極に向けてラミネート型のリチウム金属電池を作製したこと以外は実施例6と同様である。充放電試験を行った結果、クーロン効率が100~97%の間で大きく変動を伴いながら推移しつつ充放電を重ねることができた。
比較例1
N,N-ジメチルアセトアミド:16gに4,4‘-オキシジアニリン:1.91gとピロメリット酸無水物:2.09gを添加し、セパラブルフラスコ中にて25℃で12時間攪拌して反応させ、ポリアミック酸を得た。このポリアミック酸にポリスチレン890nm粒子を6.23g加えてスラリーを調製し、このスラリーをTダイから基材上に吐出し、熱処理にて粒子を除去しポリイミド多孔質フイルムを作製した。このとき空孔率は略65%、膜厚は20μmであり、透気度は上述の測定方法において20秒、平均細孔径も上述の測定方法において466nmであった。
上述したラミネート電池の作製手順にしたがい、NMC系を用いた正極、金属リチウムで構成された負極との間にセパレータである当該ポリイミド多孔質フイルムを設けて電極構造体を形成し、ラミネート型のリチウム金属電池を作製した。このときセパレータの第1面を負極に向けた。なお電解液としては2.63MのLiFSI、SL:DME(3:7)、HFE30体積%の組成を有するものを使用した。充放電試験を行った結果、早期に短絡が発生し充放電を実施できなかった。
Figure 2023097441000002
2 ポリイミド多孔質フイルム(セパレータ)
5 第1空孔
7 第2空孔
9 連通部

Claims (8)

  1. 第1空孔と、
    第2空孔と、
    前記第1空孔と第2空孔とを連通する連通部と、を有する電池用ポリイミド多孔質フイルムであって、
    前記連通部の径が460nm未満である電池用ポリイミド多孔質フイルム。
  2. 前記連通部の径が380nm以下である請求項1に記載の電池用ポリイミド多孔質フイルム。
  3. 前記連通部の径が、前記第1空孔と第2空孔とのうちの少なくともどちらか一方の空孔径の1/3よりも大きい請求項2に記載の電池用ポリイミド多孔質フイルム。
  4. 前記連通部の径が、前記第1空孔と第2空孔とのうちの少なくともどちらか一方の空孔径の2/5から4/5である請求項3に記載の電池用ポリイミド多孔質フイルム。
  5. 前記第1空孔および第2空孔の孔径が略同一であって、かつ孔径が800nm以下である請求項3に記載の電池用ポリイミド多孔質フイルム。
  6. 表面粗さRaが200nm以下である請求項2に記載の電池用ポリイミド多孔質フイルム。
  7. 請求項1~6のいずれかに記載の電池用ポリイミド多孔質フイルムを、正極と負極との間に介装した電極構造体。
  8. 請求項7に記載の電極構造体を備えた電池。
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