JP2023095426A - 離型用二軸配向ポリプロピレンフィルム及び離型フィルム - Google Patents

離型用二軸配向ポリプロピレンフィルム及び離型フィルム Download PDF

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浩司 山田
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徹 今井
Toru Imai
理 木下
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Abstract

【課題】剛性と耐熱性に優れ、従来品よりフィルム厚みを薄くしても、剥離し易く、離型剤の乾燥時にシワが生じにくく、塗布加工後のフィルムにカールの発生が少ない離型用二軸延伸ポリプロピレンフィルムを提供する。【解決手段】下記(1)、(2)を満足する離型用二軸配向ポリプロピレンフィルム。(1)ソリッドエコー法によるパルスNMRで求めた結晶成分(I)、拘束された非結晶成分(II)、拘束されない非晶成分(III)に分離した時の(III)の比率が7%以下である。(2)幅方向のループステフネス応力(S)と厚み(t)との関係が、下記式を満たす。S[mN]≧0.0010×厚み(μm)3【選択図】なし

Description

本発明は剛性と耐熱性に優れる離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムに関する。更に詳しくは、従来品よりフィルム厚みを薄くしても、離型加工時の平面性が良好であり、厚み斑の小さい工程離型用フィルムなどに好適な離型用二軸延伸ポリプロピレンフィルムに関する。
二軸配向ポリプロピレンフィルムは、防湿性を有し、しかも必要な剛性、耐熱性を有するため、包装用途や離型用や粘着テープ用などの工業用途に用いられている。近年、環境への配慮から、離型用フィルムに対して、リサイクル性や薄肉化による減容化が求められているため、ポリプロピレンフィルムについても著しく剛性を向上させることが不可欠となっている。剛性を向上する手段として、ポリプロピレン樹脂の重合時の触媒やプロセス技術の改良により、そのポリプロピレン樹脂の結晶性や融点が向上することや、製膜プロセス中での延伸倍率を上げてフィルムの配向度を高める技術があった。しかしながら、剛性を上げると同時に耐熱性が低下する問題があり、これまでに十分な剛性と耐熱性を有する二軸配向ポリプロピレンフィルムはなかった。
二軸配向ポリプロピレンフィルムの製造工程において、幅方向に延伸後に、幅方向延伸時の温度以下でフィルムを弛緩しながら一段目の熱処理を行い、二段目で一段目温度~幅方向延伸温度で熱処理を行う方法(例えば、特許文献1)や、幅方向延伸後にさらに、長手方向に延伸を行う方法(例えば、特許文献2、3)が提案されている。しかしながら、特許文献1記載のフィルムの配向は低く、剛性は十分でない。特許文献2に記載のフィルムは剛性には優れるが、耐熱性に劣るものであり、120℃以上の離型加工時にはシワやカールが発生する問題があった。また、特許文献3記載のフィルムは、逐次二軸延伸を行い、幅方向に配向したものを、長手方向に再延伸するため長手方向への分子鎖の配列が十分に行われず、長手方向の剛性は低いものであった。また、幅方向へ緩和を行っているため、幅方向の配向は低く、剛性が十分でない。
WO2016/182003号国際公報 特開2013-177645号公報 特開2001-40111号公報
本発明の課題は、上述した問題点を解決することにある。すなわち、フィルムの剛性と150℃もの高温での耐熱性を両立する離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムに関する。本発明の目的は、上記の従来の問題点を解消し、環境負荷を低減すべく使用後のフィルム屑を少なくするために従来品よりフィルム厚みを薄くしても、離型加工時にシワやカールが発生せず平面性が良好であり、厚み斑の小さい工程離型用フィルムなどに好適な離型用ポリプロピレンフィルムを提供することにある。
本発明者らが、かかる目的を達成するために鋭意検討した結果、下記の〔1〕~〔10〕の発明に至った。
〔1〕 下記(1)、(2)を満足する離型用二軸配向ポリプロピレンフィルム。
(1)ソリッドエコー法によるパルスNMRで求めた結晶成分(I)、拘束された非結晶成分(II)、拘束されない非晶成分(III)に分離した時の(III)の比率が7%以下である。
(2)幅方向のループステフネス応力(S)と厚み(t)との関係が、下記式を満たす。
S[mN]≧0.0010×厚み(μm)
〔2〕 前記離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムの幅方向の150℃における熱収縮率が、長手方向で10%以下であり、幅方向で30%以下である、〔1〕に記載の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルム。
〔3〕 前記離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムの幅方向の屈折率Nyが1.5250以上であり、△Nyが0.0240以上である、〔1〕又は〔2〕に記載の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルム。
〔4〕 前記離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムのヘイズが5.0%以下である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルム。
〔5〕 前記離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂のメソペンタッド分率が97.0%以上である、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルム。
〔6〕 前記離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂の結晶化温度が105℃以上であり、融点が160℃以上である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルム。
〔7〕 前記離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂のメルトフローレートが4.0g/10分以上である、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルム。
〔8〕 前記離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂の分子量10万以下の成分量が35質量%以上である、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルム。
〔9〕 〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムの少なくとも片方の面に離型塗布層が積層された離型フィルム。
〔10〕 前記離型塗布層がシリコーン樹脂からなる〔9〕に記載の離型フィルム。
〔11〕 下記(1)、(2)を満足する二軸配向ポリプロピレンフィルム、及び離型塗布層を含む積層フィルム。
(1)ソリッドエコー法によるパルスNMRで求めた結晶成分(I)、拘束された非結晶成分(II)、拘束されない非晶成分(III)に分離した時の(III)の比率が7%以下である。
(2)幅方向のループステフネス応力(S)と厚み(t)との関係が、下記式を満たす。
S[mN]≧0.0010×厚み(μm)
本発明は剛性と耐熱性に優れる離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムに関する。更に詳しくは、従来品よりフィルム厚みを薄くしても、離型加工時の平面性が良好であり、厚み斑が小さく、工程離型用フィルムなどに好適な離型用二軸延伸ポリプロピレンフィルムである。
H-パルスNMRで観測されるスピン-スピン緩和時間の減衰曲線の成分分離の模式図。
以下、さらに詳しく本発明の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムについて説明する。
本発明の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレン樹脂を主成分とするポリプロピレン樹脂組成物からなる。なお、「主成分」とは、ポリプロピレン樹脂がポリプロピレン樹脂組成物中に占める割合が90質量%以上であることを意味し、より好ましくは93質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは97質量%以上である。
(ポリプロピレン樹脂)
本発明に用いられるポリプロピレン樹脂は、ポリプロピレン単独重合体や、エチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンとの共重合体を用いることができる。実質的にエチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンを含まないプロピレン単独重合体が好ましく、エチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィン成分を含む場合であっても、エチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィン成分量は1モル%以下であるのが好ましく、より好ましくは0.5モル%以下であり、さらに好ましくは0.3モル%以下であり、特に好ましくは0.1モル以下である。上記範囲であると結晶性が向上しやすい。このような共重合体を構成する炭素数4以上のα-オレフィン成分として、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチルペンテン-1、3-メチルブテン-1、1-ヘキセン、4-メチルペンテン-1、5-エチルヘキセン-1、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。
ポリプロピレン樹脂は異なる2種以上のポリプロピレン単独重合体や、エチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンとの共重合体、及びこれらの混合物を用いることができる。
(立体規則性)
本発明に用いられるポリプロピレン樹脂の立体規則性の指標であるメソペンタッド分率(以下、[mmmm]%と略記する場合がある)は、97.0~99.9%の範囲内であることが好ましく、97.5~99.7%の範囲内であることがより好ましく、98.0~99.5%の範囲内であるとさらに好ましく、98.5~99.3%の範囲内であると特に好ましい。
97.0%以上であると、ポリプロピレン樹脂の結晶性が高まり、フィルムにおける結晶の融点、結晶化度、結晶配向度が向上し、剛性と高温での耐熱性が得られやすい。99.9%以下であるとポリプロピレン製造の点でコストを抑えやすく、製膜時に破断しにくくなる。メソペンタッド分率は核磁気共鳴法(所謂NMR法)で測定される。
99.5%以下であることがより好ましい。メソペンタッド分率は核磁気共鳴法(所謂NMR法)で測定される。
ポリプロピレン樹脂のメソペンタッド分率を上述の範囲内とするためには、得られたポリプロピレン樹脂パウダーをn-ヘプタンなどの溶媒で洗浄する方法や、触媒および/または助触媒の選定、ポリプロピレン樹脂組成物の成分の選定を適宜行う方法などが好ましく採用される。
(融解温度)
本発明の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムを構成する上記ポリプロピレン樹脂のDSCで測定される融解温度(Tm)の下限は好ましくは160℃であり、より好ましくは161℃であり、さらに好ましくは162℃であり、よりさらに好ましくは163℃であり、さらに好ましくは164℃である。Tmが160℃以上であると剛性と高温での耐熱性が得られやすい。Tmの上限は、好ましくは170℃であり、より好ましくは169℃であり、さらに好ましくは168℃であり、よりさらに好ましくは167℃であり、特に好ましくは166℃である。Tmが170℃以下であると、ポリプロピレン製造の点でコストアップを抑制しやすかったり、製膜時に破断しにくくなる。前述のポリプロピレン樹脂に結晶核剤を配合することによって、融解温度をより上げることもできる。
Tmとは、1~10mgのサンプルをアルミパンに詰めて示差走査熱量計(DSC)にセットし、窒素雰囲気下で、230℃で5分間融解し、走査速度-10℃/分で30℃まで降温した後、5分間保持し、走査速度10℃/分で昇温した際に観察される、融解にともなう吸熱ピークの主たるピーク温度である。
(結晶化温度)
本発明の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムを構成する上記ポリプロピレン樹脂のDSCで測定される結晶化温度(Tc)の下限は105℃であり、好ましくは108℃であり、より好ましくは110℃である。Tcが105℃以上であると、幅方向延伸とそれに続く冷却工程において結晶化が進みやすく、剛性と高温での耐熱性が得られやすい。Tcの上限は、好ましくは135℃であり、より好ましくは133℃であり、さらに好ましくは132℃であり、よりさらに好ましくは130℃であり、特に好ましくは128℃であり、最も好ましくは127℃である。Tcが135℃以下であるとポリプロピレン製造の点でコストアップしにくかったり、製膜時に破断しにくくなる。前述のポリプロピレン樹脂に結晶核剤を配合することによって、結晶化温度をより上げることもできる。
Tcとは、1~10mgのサンプルをアルミパンに詰めてDSCにセットし、窒素雰囲気下で、230℃で5分間融解し、走査速度-10℃/分で30℃まで降温したときに観察される発熱ピークの主たるピーク温度である。
(メルトフローレート)
本発明の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムを構成する上記ポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(MFR)は、JIS K 7210(1995)の条件M(230℃、2.16kgf)に準拠して測定した場合において、4.0~30g/10分であることが好ましく、4.5~25g/10分であるとより好ましく、4.8~22g/10分であるとさらに好ましく、5.0~20g/10分であると特に好ましく、6.0~20g/10分であると最も好ましい。
ポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(MFR)が4.0g/10分以上であると、熱収縮が低い離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムを得られやすい。
また、ポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(MFR)が30g/10分以下であると、フィルムの製膜性を維持しやすい。
フィルム特性の観点からは、フィルムを構成するポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kgf)の下限を好ましくは5.0g/10分、より好ましくは5.5g/10分、さらに好ましくは6.0g/10分、特に好ましくは6.3g/10分、最も好ましくは6.5g/10分とするのが良い。
ポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(MFR)が5.0g/10分以上であると、フィルムを構成するポリプロピレン樹脂の低分子量成分量が多くなるため、後述するフィルム製膜工程での幅方向延伸工程を採用することにより、ポリプロピレン樹脂の配向結晶化がより促進されること、及びフィルムにおける結晶化度がより高まりやすくなることに加えて、非晶部分のポリプロピレン分子鎖同士の絡み合いがより少なくなり、耐熱性をより高めやすい。
ポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(MFR)を上記の範囲内とするためには、ポリプロピレン樹脂の平均分子量や分子量分布を制御する方法などを採用するのが好ましい。
すなわち、本発明のフィルムを構成するポリプロピレン樹脂のGPC積算カーブにおける分子量10万以下の成分の量の下限は35質量%であり、好ましくは38質量%であり、より好ましくは40質量%であり、さらに好ましくは41質量%であり、特に好ましくは42質量%である。
GPC積算カーブでの分子量10万以下の成分の量の上限は、好ましくは65質量%であり、より好ましくは60質量%であり、さらに好ましくは58質量%である。GPC積算カーブでの分子量10万以下の成分の量が65質量%以下であるとフィルム強度が低下しにくい。
このとき、緩和時間の長い高分子量成分や長鎖分岐成分を含むと、ポリプロピレン樹脂に含まれる分子量10万以下の成分の量を、全体の粘度を大きく変えずに、調整しやすくなるので、剛性や熱収縮にあまり影響させずに、製膜性を改善しやすい。
(分子量分布)
本発明に用いるポリプロピレン樹脂は、分子量分布の広さの指標である質量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の下限が、好ましくは3.5であり、より好ましくは4であり、さらに好ましくは4.5であり、特に好ましくは5である。Mw/Mnの上限は、好ましくは30であり、より好ましくは25であり、さらに好ましくは23であり、特に好ましくは21であり、最も好ましくは20である。
Mw/Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて得ることができる。Mw/Mnが上記範囲であると、分子量10万以下の成分の量を多くすることが容易である。
なお、ポリプロピレン樹脂の分子量分布は、異なる分子量の成分を多段階に一連のプラントで重合したり、異なる分子量の成分をオフラインで混練機にてブレンドしたり、異なる性能をもつ触媒をブレンドして重合したり、所望の分子量分布を実現できる触媒を用いたりすることで調整することが可能である。GPCで得られる分子量分布の形状としては、横軸に分子量(M)の対数(logM)、縦軸に微分分布値(logMあたりの重量分率)をとったGPCチャートにおいて、単一ピークを有するなだらかな分子量分布であってもよく、複数のピークやショルダーを有する分子量分布であってよい。
(離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムの製膜方法)
本発明の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムは、上述したポリプロピレン樹脂を主成分とするポリプロピレン樹脂組成物からなる未延伸シートを作製し、二軸延伸することによって得ることが好ましい。二軸延伸の方法としては、インフレーション同時二軸延伸法、テンター同時二軸延伸法、テンター逐次二軸延伸法のいずれによっても得られるが、製膜安定性、厚み均一性の観点でテンター逐次二軸延伸法を採用することが好ましい。特に長手方向に延伸後、幅方向に延伸することが好ましいが、幅方向に延伸後に長手方向に延伸する方法でもよい。
次に本発明の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムの製造方法を以下に説明するが、必ずしもこれに限定されるものではない。なお、本発明の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムは、少なくとも片面に他の機能を有する層を積層させてもよい。積層するのは片面でも両面でも良い。その時は他の一方の層、また中央層の樹脂組成物を上述のポリプロピレン樹脂組成物を採用すればよい。また、上述のポリプロピレン樹脂組成物と異なるものでも良い。
積層する層の数は、片面につき、1層や2層、3層以上でもよいが、製造の観点から、1層または2層が好ましい。積層の方法としては、例えば、フィードブロック方式やマルチマニホールド方式による共押出が好ましい。特に、離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムの加工性を向上させる目的で、ヒートシール性を有する樹脂層を、特性を低下させない範囲で積層することができる。また、印刷性付与のために、片面、もしくは両面にコロナ処理を施すこともできる。
以下には、単層の場合の例について、テンター逐次二軸延伸法を採用した場合について述べる。
まず、ポリプロピレン樹脂を含む樹脂組成物を単軸または二軸の押出機で加熱溶融させ、Tダイからシート状に押出し、冷却ロール上に接地させて冷却固化する。固化を促進する目的で、冷却ロールで冷却したシートを水槽に浸漬するなどして、さらに冷却することが好ましい。
ついで、シートを加熱した2対の延伸ロールで、後方の延伸ロールの回転数を大きくすることでシートを長手方向に延伸し、一軸延伸フィルムを得る。
引き続き、一軸延伸フィルムを予熱後、テンター式延伸機でフィルム端部を把持しながら、特定の温度で幅方向に延伸を行い、二軸延伸フィルムを得る。この幅方向延伸工程については後に詳細に述べる。
幅方向延伸工程が終了後、二軸延伸フィルムを特定の温度で熱処理を行い、離型用二軸配向フィルムを得る。熱処理工程においては、幅方向にフィルムを弛緩してもよい。
こうして得られた離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムに、必要に応じて、例えば少なくとも片面にコロナ放電処理を施した後、ワインダーで巻取ることによりフィルムロールを得ることができる。
以下それぞれの工程について詳しく説明する。
(押出し工程)
まず、ポリプロピレン樹脂を主成分とするポリプロピレン樹脂組成物を単軸または二軸の押出機で200℃~300℃の範囲で加熱溶融させ、Tダイから出たシート状の溶融ポリプロピレン樹脂組成物を押出し、金属製の冷却ロールに接触させて冷却固化させる。得られた未延伸シートはさらに水槽に投入するのが好ましい。
冷却ロール、又は冷却ロールと水槽の温度は、10℃からTcまでの範囲であることが好ましく、フィルムの透明性を上げたい場合は、10~50℃の範囲の温度の冷却ロールで冷却固化するのが好ましい。冷却温度を50℃以下にすると未延伸シートの透明性が高まりやすく、好ましくは40℃以下であり、さらに好ましくは30℃以下である。逐次二軸延伸後の結晶配向度を増大させるには冷却温度を40℃以上とするのも好ましい場合があるが、上述のようにメソペンダット分率が97.0%以上のプロピレン単独重合体を用いる場合は、冷却温度を40℃以下とするのが次工程の延伸を容易に行い、また厚み斑を低減する上で好ましく、30℃以下とするのがより好ましい。
未延伸シートの厚みは3500μm以下とするのが、冷却効率の上で好ましく、3000μm以下とするのがさらに好ましく、逐次二軸延伸後のフィルム厚みに応じて、適宜調整できる。未延伸シートの厚みはポリプロピレン樹脂組成物の押出し速度及びTダイのリップ幅等で制御できる。
(長手方向延伸工程)
長手方向延伸倍率の下限は好ましくは3.5倍であり、より好ましくは3.8倍であり、特に好ましくは4.2倍である。上記範囲であると強度を高めやすく、膜厚ムラも少なくなる。
長手方向延伸倍率の上限は好ましくは7.0倍であり、より好ましくは6.0倍であり、特に好ましくは7倍である。上記範囲であると、幅方向延伸工程での幅方向延伸がしやすく、生産性が向上する。
長手方向延伸温度の下限は、好ましくはTm-30℃であり、より好ましくはTm-27℃であり、さらに好ましくはTm-25℃である。上記範囲であると引き続いて行われる幅方向延伸が容易になり、厚みムラも少なくなる。長手方向延伸温度の上限は好ましくはTm-7℃であり、より好ましくはTm-10℃であり、さらに好ましくはTm-12℃である。上記範囲であると熱収縮率を小さくしやすく、延伸ロールに付漕し延伸しにくくなったり、表面の粗さが大きくなることにより品位が低下することも少ない。
なお、長手方向延伸は3対以上の延伸ロールを使用して、2段階以上の多段階に分けて延伸してもよい。
(予熱工程)
幅方向延伸工程の前に、長手方向延伸後の一軸延伸フィルムをTm~Tm+25℃の範囲で加熱して、ポリプロピレン樹脂組成物を軟化させる必要がある。Tm以上とすることにより、軟化が進み、幅方向の延伸が容易になる。Tm+25℃以下とすることで、横延伸時の配向が進み、剛性が発現しやすくなる。より好ましくはTm+2~Tm+20℃であり、特に好ましくはTm+3~Tm+15℃である。ここで、予熱工程での最高温度を予熱温度とする。
(幅方向延伸工程)
予熱工程後の幅方向延伸工程においては、好ましい方法は以下のとおりである。
幅方向延伸工程においては、Tm-10℃以上、予熱温度以下の温度で延伸するのが好ましい。このとき、幅方向延伸の開始時は予熱温度に達した時点でも良いし、予熱温度に達した後に温度を降下させ予熱温度よりも低い温度に達した時点でもよい。
幅方向延伸工程における温度の下限は、より好ましくはTm-9℃であり、さらに好ましくはTm-7℃であり、特に好ましくはTm-5℃である。幅方向延伸温度がこの範囲であると、得られる二軸配向フィルムの剛性を向上させやすい。
幅方向延伸工程における温度の上限は、好ましくはTm+10℃であり、さらに好ましくはTm+7℃であり、特に好ましくはTm+5℃である。幅方向延伸温度がこの範囲であると、延伸ムラが生じにくい。
幅方向延伸工程において、上記の温度範囲での幅方向延伸に引き続き、より低温で延伸する後期延伸工程を加えてもよい。
つまり、Tm-10℃以上、Tm+10℃以下の温度で延伸する区間(前期区間)に続いて、前期区間の温度よりも低く、かつTm-70℃以上、Tm-5℃以下の温度で延伸する区間(後期区間)を設けても良い。前期区間及び後期区間を設けることでより剛性を高めやすい。
後期区間の延伸温度の下限は、好ましくはTm-65℃であり、より好ましくはTm-60℃であり、さらに好ましくはTm-55℃である。後期区間の延伸温度がこの範囲であると製膜が安定しやすい。
幅方向延伸工程における最終幅方向延伸倍率の下限は、10倍以上が好ましく、11倍以上がより好ましく、11.5倍以上がさらに好ましい。10倍以上であるとフィルムの剛性を高めやすく、厚みムラも少なくなりやすい。幅方向延伸倍率の上限は、好ましくは20倍であり、より好ましくは17倍であり、さらに好ましくは15倍である。20倍以下であると熱収縮率を小さくしやすく、延伸時に破断しにくい。
後期区間を加える場合は、合計の延伸倍率が上記範囲となるようにする。このとき前期延伸工程の延伸倍率の下限は、好ましくは4倍であり、より好ましくは5倍であり、さらに好ましくは6倍であり、特に好ましくは6.5倍である。前期区間終了時の延伸倍率の上限は、好ましくは15倍であり、より好ましくは14倍であり、さらに好ましくは13倍である。
幅方向延伸終了時、すなわち幅方向最終延伸倍率に到達した時の直後に、フィルムを冷却するのが好ましい。この時の冷却の温度は、幅方向延伸の温度以下で、かつTm-80℃以上、Tm-15℃以下の温度にするのが好ましく、Tm-80℃以上、Tm-20℃以下の温度にすることがより好ましく、Tm-80℃以上、Tm-30℃以下の温度とすることがさらに好ましく、Tm-70℃以上、Tm-40℃以下の温度とすることが特に好ましい。冷却工程を加えることで、結晶化が起こり、結晶配向が固定化され、その後、融解以上の温度に昇温しても配向の履歴が維持され、結果的にフィルム中の結晶配向を大きくすることができる。
幅方向延伸終了時の温度から冷却時の温度へは徐々に低下させることもできるが、段階的にあるいは一段階で低下させることもできる。温度を段階的にあるいは一段階で低下させると、フィルム中の結晶配向をより大きくしやすいため好ましい。
フィルムを冷却した後に、高温で再度幅方向に延伸(以下、幅方向再延伸ともいう)を行うのが好ましい。フィルムを冷却した後に高温で再度幅方向に延伸すると、フィルムの結晶配向を高めやすいので、剛性を高くしやすい。再度幅方向に延伸する時の延伸温度の下限はTm-5℃であり、好ましくはTm℃であり、より好ましくはTm+5℃であり、さらに好ましくはTm+7℃であり、特に好ましくはTm+9℃である。Tm-5℃以上であると、剛性を高めやすく、熱収縮率も低下させやすい。
幅方向再延伸温度の上限は好ましくはTm+20℃であり、より好ましくはTm+18℃であり、さらに好ましくはTm+16℃である。Tm+20℃以下であると、剛性を高めやすい。
高温での幅方向再延伸倍率の下限は好ましくは1.05倍であり、より好ましくは1.1倍であり、さらに好ましくは1.15倍である。
高温での幅方向再延伸倍率の上限は好ましくは2倍であり、より好ましくは1.7倍であり、さらに好ましくは1.5倍である。再延伸倍率が大きすぎると、熱収縮率が大きくなりすぎたり、厚みムラが生じたり、フィルムが破断したりすることがある。
つまり、従来のように幅方向延伸後に、直ちに高温で弛緩させるのではなく、再度幅方向に融点よりも十分に高い温度で延伸することによって、熱収縮率を低下させながら、剛性をより向上させることが可能であることを見出した。
すなわち、最初の幅方向延伸後の工程において、Tm+5℃以上で、延伸を行うことが好ましい。Tm+5℃以上では、分子鎖の運動性が十分に高くなり、延伸により、分子鎖の絡み合いの影響を解消しやすくなり、その結果、分子鎖が拘束されにくいために、乱れた分子配向になりにくく、結晶化も十分に進行する。
高温で幅方向に延伸後にフィルムを結晶化可能な温度以下に冷却することにより、結晶配向が固定化され、結晶化度が高く、結晶ラメラも厚い高融点のフィルムを得ることができる。
また、結晶ラメラ以外の部分においても、絡み合い点によって拘束された分子配向の歪が大きい分子鎖が少なく、結晶の融解が始まっても、フィルムは収縮しにくい。さらに、結晶化度が向上し、結晶ラメラが厚いと、融点が高くなりやすく、融点以下では融解が起こりにくい。これにより、熱収縮率が低下しやすい。
この結果、剛性をより向上させながら、熱収縮率を低下させることが可能になった。
通常の製膜プロセス(押出し―縦方向延伸―幅方向延伸―熱処理)においては、融点よりも低温で行う幅方向延伸による歪を解消するために、熱処理工程でフィルムを融点以上の高温に曝すとともに、数%から数十%の弛緩を施すことで、熱収縮率を低くしていた。弛緩させることで、分子鎖が拘束されていることにより結晶化が進行しにくいことを解消することができ、熱収縮率の低下に寄与する。しかしながら、逆に、横延伸過程で生成した分子鎖の幅方向の配向が低下することで剛性も低下するため、低熱収縮率と高剛性を両立させることは困難であった。また、あまり高温にすると、フィルムが白化する問題もあった。
通常の製膜プロセス(押出し―縦方向延伸―幅方向延伸―熱処理)においては、幅方向延伸工程の温度を高くすることにより、分子鎖の運動性が高く、歪が残らないように延伸すると、縦方向延伸により生成した結晶の融解が進むため、結晶配向が低下する。 本発明の方法では、一度、幅方向延伸を行い、十分に幅方向に配向させた後に、冷却によって固定された結晶配向が融解しても十分な張力をもったフィルムを、Tm+5℃以上の高温下で再び延伸するため、再度延伸する際にも、十分な張力があり、厚みムラが生じたり、フィルムが破断する懸念も少ない。
高温での延伸倍率は、分子鎖の絡み合いをほぐし、整列させることができる程度であればよく、1.05倍以上であればよい。2倍以下の延伸倍率にすると厚みムラが生じにくい。
このように、立体規則性が高く、高融点である結晶性の高いポリプロピレン樹脂を用い、上述の縦延伸工程、幅方向延伸工程、冷却工程、高温延伸工程を採用することにより、ポリプロピレン樹脂の分子が著しく高度に主配向方向に(上述した幅方向延伸工程では幅方向が該当する。)に整列するため、得られる二軸配向フィルム中の結晶配向が強く、融点も高い結晶がより多く生成しやすくなる。
また、ポリプロピレン樹脂の低分子量成分を増やすことで、分子鎖の絡み合いがより少なくなり、フィルムの結晶化度がより高まりやすくなり、結晶ラメラ以外の部分が少なくなる。また、結晶ラメラ以外の部分の熱収縮応力を弱くなることで、熱収縮率をさらに低下しやすい。
従来技術では、結晶配向を強くしながら結晶に拘束されない非晶成分を少なくすることを両立することは困難であった。つまり、剛性と熱収縮率のどちらかが向上すれば、他方の特性が低下する傾向となる。これらを考慮すると、本発明は画期的な効果を有すると言える。
(熱処理工程)
二軸延伸フィルムは必要に応じて、熱収縮率をさらに小さくするために、熱処理することができる。熱処理温度の上限は好ましくは、上述の高温再延伸温度であり、より好ましくは高温再延伸温度-2℃であり、さらに好ましくは高温再延伸温度-3℃である。高温再延伸温度以下にすることで、剛性が低下しにくく、フィルム表面の粗さが大きくなりすぎず、フィルムが白化しにくい。熱処理温度の下限は好ましくはTm-3℃であり、より好ましくはTm-2℃であり、特に好ましくはTmである。
熱収縮率を調整する目的で、熱処理時に幅方向にフィルムを弛緩(緩和)させてもよいが、弛緩率の上限は好ましくは5%であり、より好ましくは3%であり、さらに好ましくは1%である。上記範囲内であると、剛性が低下しにくく、フィルム厚み変動が小さくなりやすい。剛性をより高めるときは、熱処理を行わなくてもよい。
(冷却工程)
幅方向延伸後、再度幅方向にTm-5℃以上で延伸した直後、あるいは熱処理工程直後に、フィルムを冷却するのが好ましい。この時の冷却の温度は、10℃以上、140℃以下の温度にするのが好ましく、20℃以上、120℃以下の温度にすることがより好ましく、80℃以下の温度にすることがさらに好ましく、50℃以下の温度にすることが特に好ましい。冷却工程を設けることで、フィルムの状態を固定することができる。
(フィルム厚み)
本発明の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムの厚みは各用途に合わせて設定されるが、フィルムの強度を得るには、フィルム厚みの下限は好ましくは2μmであり、より好ましくは3μmであり、さらに好ましくは4μmであり、特に好ましくは8μmであり、最も好ましくは10μmである。フィルム厚みが2μm以上であるとフィルムの剛性を得やすい。フィルム厚みの上限は好ましくは100μmであり、より好ましくは80μmであり、さらに好ましくは60μmであり、特に好ましくは50μmであり、最も好ましくは40μmである。フィルム厚みが100μm以下であると押出工程時の未延伸シートの冷却速度が小さくなりにくい。
本発明の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムは通常、幅2000~12000mm、長さ1000~50000m程度のロールとして製膜され、フィルムロール状に巻き取られる。さらに、各用途に合わせてスリットされ、幅300~2000mm、長さ500~5000m程度のスリットロールとして供される。本発明の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムはより長尺のフィルムロールを得ることが可能である。
(厚み均一性)
本発明の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムの厚み均一性の下限は好ましくは0%であり、より好ましくは0.1%であり、さらに好ましくは0.5%であり、特に好ましくは1%である。厚み均一性の上限は好ましくは20%であり、より好ましくは17%であり、さらに好ましくは15%であり、特に好ましくは12%であり、最も好ましくは10%である。上記範囲だとコートや印刷などの後加工時に不良が生じにくく、精密性を要求される用途に用いやすい。
測定方法は下記のとおりとした。フィルムの長さ方向にフィルム物性が安定している定常領域から幅方向40mmの試験片を切り出し、ミクロン計測器(株)製のフィルム送り装置(製番:A90172を使用)及びアンリツ株式会社製フィルム厚み連続測定器(製品名:K-313A広範囲高感度電子マイクロメーター)を用い、20000mmにわたって連続してフィルム厚みを計測し、下式から厚み均一性を算出した。
厚み均一性(%)=[(厚みの最大値-厚みの最低値)/厚みの平均値]×100
(フィルム特性)
本発明の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムは、下記特性に特徴がある。ここで本発明の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムにおける「長手方向」とは、フィルム製造工程における流れ方向に対応する方向であり、「幅方向」とは、前記のフィルム製造工程における流れ方向と直交する方向である。フィルム製造工程における流れ方向が不明なポリプロピレンフィルムについては、フィルム表面に対して垂直方向に広角X線を入射し、α型結晶の(110)面に由来する散乱ピークを円周方向にスキャンし、得られた回折強度分布の回折強度が最も大きい方向を「長手方向」、それと直交する方向を「幅方向」とする。
(パルスNMRで求めた結晶成分(I)、拘束された非結晶成分(II)、拘束されない非晶成分(III))
H-パルスNMRで観測されるスピン-スピン緩和時間T2のFID(Free Induction Decay)の減衰時定数は、2つ以上の減衰時定数の和として観測されることが知られている。たとえば、Polymer Journal,Vol.3,No.4,pp448-462(1972)によるとパルスNMRのソリッドエコー法で、結晶性高分子の緩和時間の減衰時定数を結晶成分/中間相成分/非晶成分の3成分の和で解析している。
H-パルスNMRで観測されるスピン-スピン緩和時間T2は、結晶、中間相、非晶の順に緩和時間が遅くなる。中間相は非晶よりもT2が速く、運動性が拘束された非晶と考えられる。分子鎖の絡み合いをほぐしながら延伸した場合、配向が強い結晶成分(I)が生成し、その結晶付近に運動性が拘束された非晶鎖成分(II)(上記中間相に相当)が生成する。一方、絡み合いが大きく、延伸時に乱れた配向をとった場合、結晶に拘束されない非晶成分(III)(上記非晶に相当)が生じ易くなる。拘束されない非晶成分(III)は運動性が高く、高温になると、歪を解消するように運動しやすくなり、高温での収縮の原因になると考えられる。一方、拘束された非晶鎖(II)は非晶成分(III)に比べると高温でも運動が抑制されるために、高温で収縮しにくいと考えられる。
本発明の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムのパルスNMRで求めた拘束されない非晶成分(III)の上限は7%であり、好ましくは6%であり、より好ましくは5%である。
非晶成分(III)が7%以下であると、離型塗布膜の乾燥時にシワが生じにくくなり、さらに離型加工後のフィルムにカールが生じにくくなる。
拘束されない非晶成分(III)を小さくするためには、特に製膜時の面積倍率を高め、逐次二軸延伸した後に高温で再度幅方向に延伸を行うことが有効である。
また、高メソペンタッド分率のポリプロピレン原料を使用することが有効である。
さらには、フィルムを構成するポリプロピレン樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)積算カーブを測定した場合の分子量10万以下の成分の量の下限を35質量%とするのが有効である。
ここで、パルスNMRで求めた拘束されない非晶成分(III)が7%以下であることは、絡み合い点によって拘束された分子配向の歪が大きい分子鎖が少なく、結晶の融解が始まっても、フィルムは収縮しにくく、高温で離型塗布膜の乾燥した場合もシワが生じにくく、離型加工後のフィルムにカールが生じにくいフィルムであることを意味する。
パルスNMRで求めた拘束されない非晶成分(III)が7%を超える場合には、絡み合い点によって拘束された分子配向の歪が大きい分子鎖が多いため、結晶の融解が開始すると同時に収縮が起こり、高温で離型加工後のフィルムにシワが生じやすく、離型塗布膜の乾燥後のフィルムにカールが生じやすいフィルムとなる。
また、拘束されない非晶成分(III)の下限は特に制限されないが、0.1%以上であることが実用的である。拘束されない非晶成分(III)を0.1%未満にしようとすると、逐次二軸延伸した後にさらに高温で再度幅方向に延伸する必要があり、融解にともなう延伸時の張力が低下し、破断が生じる場合がある。また、フィルム中の結晶配向が弱くなり、剛性が低くなる場合がある。
(150℃での熱収縮率)
本発明の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムの150℃での長手方向の熱収縮率の上限は10%であり、好ましくは7.0%であり、より好ましくは6.0%であり、よりさらに好ましくは5.0%であり、特に好ましくは4.0%以下である。150℃での幅方向の熱収縮率の上限は30%であり、好ましくは20%であり、より好ましくは16%であり、特に好ましくは15%以下である。
長手方向の熱収縮率が10%以下、かつ、幅方向の熱収縮率が30%以下であると、離型塗布膜の乾燥時にシワが生じにくくなり、さらに離型加工後のフィルムにカールが生じにくい。特に150℃での長手方向の熱収縮率が8.0%以下、150℃での幅方向の熱収縮率が15%以下であると、離型加工時のロール張力の制御幅が広がるため、結果的に離型塗布膜の乾燥時にシワが生じにくくなり、さらに離型加工後のフィルムにカールが生じにくく好ましい。長手方向の熱収縮率が10%以上、かつ、幅方向の熱収縮率が30%以上であると、離型塗布膜の乾燥時にシワが生じ、さらに離型塗布膜したフィルムがカールするためハンドリング性が悪くなる。150℃での熱収縮率を小さくするには、フィルムを構成するポリプロピレン樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)積算カーブを測定した場合の分子量10万以下の成分の量の下限を35質量%とするのが有効である。
(23℃での引張弾性率)
本発明の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムの23℃での長手方向の引張弾性率の下限は2.0GPaであり、好ましくは2.1GPaであり、より好ましくは2.2GPaであり、さらに好ましくは2.3GPaであり、特に好ましくは2.4GPaであり、最も好ましくは2.6GPaである。2.0GPa以上では、剛性が高いため、離型塗布膜の乾燥時にシワが生じにくくなり、さらに離型加工後のフィルムにカールが生じにくい。長手方向の引張弾性率の上限は、好ましくは4.0GPaであり、より好ましくは3.8GPaであり、さらに好ましくは3.7GPaであり、特に好ましくは3.6GPaであり、最も好ましくは3.5GPaである。4.0GPa以下では現実的な製造が容易であったり、長手方向-幅方向の特性のバランスが良化しやすい。
本発明の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムの23℃での幅方向の引張弾性率の下限は好ましくは5.5GPaであり、より好ましくは5.6GPaであり、より好ましくは5.7GPaであり、さらに好ましくは5.8GPaであり、特に好ましくは5.9GPaであり、最も好ましくは6.0GPaである。5.5GPa以上では、剛性が高いため、離型塗布膜の乾燥時にシワが生じにくくなり、さらに離型加工後のフィルムにカールが生じにくい。幅方向の引張弾性率の上限は、好ましくは15GPaであり、より好ましくは13GPaであり、さらに好ましくは12GPaである。15GPa以下だと現実的な製造が容易であったり、長手方向-幅方向の特性のバランスが良化しやすい。
引張弾性率は延伸倍率やリラックス率を調節したり、製膜時の温度を調整することで範囲内とすることが出来る。
(23℃での引張破断強度)
本発明の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムの23℃での長手方向の引張破断強度の下限は、好ましくは90MPaであり、より好ましくは100MPaであり、さらに好ましくは110MPaであり、特に好ましく115MPaである。90MPa以上だと離型加工後のフィルムにカールが発生しにくくなり、また離型加工時のフィルム破断が起こりにくい。長手方向の引張破断強度の上限は、現実的な値として好ましくは200MPaであり、より好ましくは180MPaであり、さらに好ましくは160MPaである。200MPa以下だとフィルムの破断が少なくなりやすい。
本発明の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムの23℃での幅方向の引張破断強度の下限は、好ましくは400MPaであり、より好ましくは420MPaであり、さらに好ましくは440MPaであり、特に好ましくは450MPaである。400MPa以上だと離型加工後のフィルムにカールが発生しにくくなり、また離型加工時のフィルム破断が起こりにくい。幅方向の引張破断強度の上限は、現実的な値として好ましくは650MPaであり、より好ましくは600MPaであり、さらに好ましくは550MPaである。650MPa以下だとフィルムの破断が少なくなりやすい。
引張破断強度は延伸倍率、延伸温度、熱固定温度の調整により範囲内とすることが出来る。
(23℃での引張破断伸度)
本発明の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムの23℃での長手方向の引張破断伸度の下限は、好ましくは180%であり、より好ましくは190%であり、より好ましくは200%であり、特に好ましくは210%以上である。180%以上であるとフィルムの破断が少なくなりやすい。23℃での長長手方向の引張破断伸度の上限は、現実的な値として好ましくは300%であり、より好ましくは280%である。
本発明の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムの23℃での幅方向の引張破断伸度の下限は、好ましくは15%であり、より好ましくは20%であり、より好ましくは30%であり、15%以上だと、フィルムの破断が少なくなりやすい。23℃での幅方向の引張破断伸度の上限は、好ましくは60%であり、より好ましくは55%であり、さらに好ましくは50%である。60%以下だと離型加工時のフィルム破断が起こりにくい。
引張破断伸度は延伸倍率、延伸温度、熱固定温度の調整により範囲内とすることが出来る。
(屈折率)
本発明の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムの長手方向の屈折率(Nx)の下限は、好ましくは1.4950であり、より好ましくは1.4970であり、さらに好ましくは1.4980であり、特に好ましくは1.4990であり、最も好ましくは1.5000である。1.4950以上だとフィルムの剛性を大きくしやすい。長手方向の屈折率(Nx)の上限は、好ましくは1.5100であり、より好ましくは15070であり、さらに好ましくは1.5050である。1.5100以下だとフィルムの長手方向-幅方向の特性のバランスに優れやすい。
本発明の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムの幅方向の屈折率(Ny)の下限は1.5250であり、好ましくは1.5253であり、より好ましくは1.5255であり、さらに好ましくは1.5260であり、特に好ましくは1.5265である。1.5250以上だとフィルムの剛性を大きくしやすい。幅方向の屈折率(Ny)の上限は、好ましくは1.5280であり、より好ましくは1.5275であり、さらに好ましくは1.5270である。1.5280以下だとフィルムの長手方向-幅方向の特性のバランスに優れやすい。
本発明の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムの厚み方向の屈折率(Nz)の下限は、好ましくは1.4960であり、より好ましくは14965であり、さらに好ましくは1.4970であり、特に好ましくは1.4980であり、最も好ましくは1.4990である。1.4960以上だとフィルムの剛性を大きくしやすい。厚み方向の屈折率(Nz)の上限は、好ましくは1.5020であり、より好ましくは1.5015であり、さらに好ましくは1.5010である。1.5020以下だとフィルムの耐熱性を高めやすい。
屈折率は延伸倍率、延伸温度、熱固定温度の調整により範囲内とすることが出来る。
(△Ny)
本発明の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムの△Nyの下限は0.0240であり、好ましくは0.0245であり、より好ましくは0.0247であり、さらに好ましくは0.0250であり、特に好ましくは0.0255であり、最も好ましくは0.0260である。0.0240以上だとフィルムの剛性が高くなりやすい。△Nyの上限は、現実的な値として好ましくは0.0280であり、より好ましくは0.0277であり、さらに好ましくは0.0273であり、特に好ましくは0.0270である。0.0280以下だと厚みムラも良好となりやすい。△Nyはフィルムの延伸倍率、延伸温度、熱固定温度の調整により範囲内とすることが出来る。
△Nyはフィルムの長手方向、幅方向、厚み方向に沿った屈折率をそれぞれNx、Ny、Nzとし、下記式で計算されるが、フィルムの長手方向、幅方向、厚み方向全体の配向における幅方向の配向の程度を意味する。
△Ny=Ny-[(Nx+Nz)/2]
(面配向係数)
本発明の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムの面配向係数(ΔP)の下限は、好ましくは0.0135であり、より好ましくは0.0138であり、さらに好ましくは0.0140である。0.0135以上だとフィルムの面方向のバランスが良好で、厚みムラも良好である。面配向係数(ΔP)の上限は、現実的な値として好ましくは0.0155であり、より好ましくは0.0152であり、さらに好ましくは0.0150である。0.0155以下だと高温での耐熱性に優れやすい。面配向係数(ΔP)は延伸倍率、延伸温度、熱固定温度の調整により範囲内とすることが出来る。
また、面配向係数(ΔP)は、(式)[(Nx+Ny)/2]-Nzを用いて計算した。
(平均屈折率)
本発明の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムの平均屈折率の下限は好ましくは1.5080であり、より好ましくは1.5081であり、さらに好ましくは1.5082であり、特に好ましくは1.5083であり、最も好ましくは1.5090である。平均屈折率の上限は、現実的な値として好ましくは1.5150であり、より好ましくは1.5140であり、さらに好ましくは1.5135であり、特に好ましくは1.5130である。1.5080以上だと離型塗布膜の乾燥時にシワが生じにくくなり、さらに離型加工後のフィルムにカールが生じにくい。平均屈折率はフィルムの延伸倍率、延伸温度、熱固定温度の調整により範囲内とすることが出来る。
平均屈折率はフィルムの長手方向、幅方向、厚み方向に沿った屈折率をそれぞれNx、Ny、Nzとし、下記式で計算される。
平均屈折率=(Nx+Ny+Nz)/3
(ヘイズ)
本発明の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムに透明性が要求される場合は、フィルムのヘイズの上限は好ましくは5.0%であり、より好ましくは4.5%であり、さらに好ましくは4.0%であり、特に好ましくは3.5%であり、最も好ましくは3.0%である。5.0%以下であると透明が要求される用途で使いやすい。ヘイズの下限は、現実的値としては好ましくは0.1%であり、より好ましくは0.2%であり、さらに好ましくは0.3%であり、特に好ましくは0.4%である。0.1%以上であると製造しやすい。ヘイズは、冷却ロール(CR)温度、幅方向延伸温度、テンター幅方向延伸前予熱温度、幅方向延伸温度、又は熱固定温度、若しくはポリプロピレン樹脂の分子量が10万以下の成分の量を調節することで範囲内とすることが出来るが、ブロッキング防止剤の添加や、シール層付与により、大きくなることがある。
(配向結晶に由来する回折ピークの半値幅)
本発明の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムの、フィルム面に垂直に入射した広角X線測定で得られるポリプロピレンα型結晶の(110)面の散乱ピークの方位角依存性において、フィルムの幅方向の配向結晶に由来する回折ピークの半値幅(Wh)の上限は26°であり、好ましくは25°以下であり、より好ましくは24°以下であり、特に好ましくは23°以下であり、最も好ましくは22.0°以下である。半値幅(Wh)が26°以下であるとフィルムの剛性を高くしやすい。Whの下限は、好ましくは15°であり、より好ましくは16°であり、さらに好ましくは17°である。
(X線配向度)
本発明の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムのWhから下記式で算出されるX線配向度の下限は、好ましくは0.856であり、より好ましくは0.861であり、さらに好ましくは0.867であり、特に好ましくは0.872、最も好ましくは0.878である。0.856以上とすることで剛性を高めやすい。
X線配向度=(180-Wh)/180
X線配向度の上限は、好ましくは0.917であり、より好ましくは0.911であり、さらに好ましくは0.906である。0.917以下とすることで製膜が安定しやすい。
(ループステフネス応力)
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの23℃での長手方向のループステフネス応力S(mN)の下限は、二軸配向ポリプロピレンフィルムの厚みをt(μm)とすると0.00020×tであり、好ましくは0.00025×tであり、より好ましくは0.00030×tであり、さらに好ましくは0.00035×tである。0.00020×t3以上であると、離型フィルムの剥離力が小さくなりやすい。また、フィルム剛性が高いため、離型塗布膜の乾燥時にシワが生じにくくなり、さらに離型加工後のフィルムにカールが生じにくい。23℃での長手方向のループステフネス応力S(mN)の上限は、好ましくは0.00080×tであり、より好ましくは0.00075×tであり、さらに好ましくは0.00072×tであり、特に好ましくは0.00070×tである。0.00080×t以下であると、現実的に製造しやすい。
本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムの23℃での幅方向のループステフネス応力S(mN)の下限は、二軸配向ポリプロピレンフィルムの厚みをt(μm)とすると0.0010×tであり、好ましくは0.0011×tであり、より好ましくは0.0012×tであり、さらに好ましくは0.0013×tである。0.0010×t以上であると、離型フィルムの剥離力が小さくなりやすい。また、フィルム剛性が高いため、離型塗布膜の乾燥時にシワが生じにくくなり、さらに離型加工後のフィルムにカールが生じにくい。23℃での幅方向のループステフネス応力S(mN)の上限は、好ましくは0.0020×tであり、より好ましくは0.0019×tであり、さらに好ましくは0.0018×tであり、特に好ましくは0.0017×tである。0.0020×t3以下であると、現実的に製造しやすい。
ループステフネス応力はフィルムの腰感を表す指標であるが、それはフィルムの厚みにも依存する。その測定方法は以下のとおりである。フィルムの長手方向を短冊の長軸(ループ方向)、あるいはフィルムの幅方向を短冊の長軸(ループ方向)として、110mm×25.4mmの短冊をそれぞれ2枚ずつ切り出した。これらをクリップに挟んでフィルムの片方の面がループの内面になるものと、その反対面がループの内面になる測定用ループを、短冊の長軸がフィルムの長手方向及び幅方向となるものについて作製した。短冊の長軸がフィルムの長手方向となる測定用のループを、東洋精機株式会社製ループステフネステスタDAのチャック部に幅方向を垂直にした状態でセットし、クリップをはずし、チャック間隔は50mm、押し込み深さを15mm、圧縮速度を3.3mm/秒としてループステフネス応力を測定した。
測定は、フィルムの片方の面がループの内面になるようにしたもののループステフネス応力と厚みを5回測定し、その後もう片面がループの内面になるようにしたものも5回測定した。この計10回分のデータを用い、各試験片の厚みの3乗を横軸に、そのループステフネス応力を縦軸にプロットし、切片0となる直線で近似して、その傾きaを求めた。傾きa値は剛性を決める厚みによらないフィルム固有の特性値を意味する。短冊の長軸がフィルムの幅方向となる測定用のループも同様に測定した。
(離型塗布層を有する離型用二軸配向ポリプロピレンフィルム)
本発明の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムは、特に離型加工せずに離型フィルムとして使用される場合もあるが、シリコーン樹脂などの離型剤を表面に塗布して使用される場合がある。
本発明の二軸配向ポリプロピレン系フィルムの表面の濡れ張力が38mN/m以上であることが好ましい。濡れ張力は38mN/m以上であると、離型塗布層との密着性が向上する。濡れ張力を38mN/m以上とするには、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理などの物理化学的な表面処理を行うことが好ましい。
例えば、コロナ処理では、予熱ロール、処理ロールを用い、空中で放電を行うことが好ましい。濡れ張力は44mN/m以下であることが好ましく、43mN/m以下であることがより好ましく、42mN/m以下であることがさらに好ましい。
本発明の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムに塗布する離型剤は特に限定はなく、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アルキド樹脂、各種ワックス、脂肪族オレフィンなどを用いることができ、各樹脂を単独もしくは、2種類以上併用することもできる。
本発明において離型剤として使用するシリコーン樹脂としては、一般に離型剤に利用されているシリコーン樹脂を用いることができ、「シリコーン材料ハンドブック」(東レダウコーニング編、1993.8)などに記載の当該分野で一般に使用されるシリコーン樹脂の中から選んで使用することができる。一般的には、熱硬化型または電離放射線硬化型のシリコーン樹脂(樹脂および樹脂組成物を包含して言う)が用いられる。熱硬化型シリコーン樹脂としては、例えば縮合反応型および付加反応型のシリコーン樹脂、電離放射線硬化型シリコーン樹脂としては、紫外線もしくは電子線硬化型のシリコーン樹脂などを用いることができる。これらを、基材であるフィルム上に塗布し、乾燥または硬化させることにより離型層が形成される。
上記硬化型シリコーン樹脂は、その硬化後の重合度が50~20万程度、特に1000~10万程度であることが好ましく、これらの具体例としては、次の樹脂が挙げられる:信越化学工業(株)製のKS-718、KS-774、KS-775、KS-778、KS-779H、KS-830、KS-835、KS-837、KS-838、KS-839、KS-841、KS-843、KS-847、KS-847H、X-62-2418、X-62-2422、X-62-2125、X-62-2492、X-62-2494、X-62-5048、X-62-470、X-62-2366、X-62-630、X-92-140、X-92-128、KS-723A・B、KS-705F、KS-708A、KS-883、KS-709、KS-719;東芝シリコン(株)製のTPR-6701、TPR-6702、TPR-6703、TPR-3704、TPR-6705、TPR-6721、TPR-6722、TPR-6700、XSR-7029、YSR-3022、YR-3286;ダウコーニング(株)製のDK-Q3-202、DK-Q3-203、DK-Q3-204、DK-Q3-205、DK-Q3-210、DK-Q3-240、DK-Q3-3003、DK-Q3-3057、SFXF-2560;東レ・ダウコ一ニング・シリコーン(株)製のSD-7226、SD-7229、SD-7320、BY-24-900、BY-24-171、BY-24-312、BY-24-374、SRX-375、SYL-OFF23、SRX-244、SEX-290;アイ・シー・アイ・ジャパン(株)製のSILCOLEASE425など。さらに、特開昭47-34447号公報、特公昭52-40918号公報などに記載のシリコーン樹脂も用いることができる。これらの硬化型シリコーン樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記硬化型シリコーン樹脂の付加反応系のシリコーン樹脂としては、例えば末端もしくは側鎖にビニル基を導入したポリジメチルシロキサンとハイドロジエンシロキサンとを、白金触媒を用いて反応させて硬化させるものが挙げられる。このとき、120℃で30秒以内に硬化できる樹脂を用いる方が、低温での加工ができ、より好ましい。例としては、東レ・ダウコーニング社製の低温付加硬化型(LTC1006L、LTC1056L、LTC300B、LTC303E、LTC310、LTC314、LTC350G、LTC450A、LTC371G、LTC750A、LTC755、LTC760Aなど)および熱UV硬化型(LTC851、BY24-510、BY24-561、BY24-562など)、信越化学社製の溶剤付加+UV硬化型(X62-5040、X62-5065、X62-5072T、KS5508など)、デュアルキュア硬化型(X62-2835、X62-2834、X62-1980など)などが挙げられる。
上記硬化型シリコーン樹脂の縮合反応系のシリコーン樹脂としては、例えば、末端にOH基をもつポリジメチルシロキサンと末端にH基をもつポリジメチルシロキサンを、有機錫触媒を用いて縮合反応させ、3次元架橋構造をつくるものが挙げられる。
上記硬化型シリコーン樹脂の紫外線硬化型あるいは電子線硬化型のシリコーン樹脂としては、例えば最も基本的なタイプとして、通常のシリコーンゴム架橋と同様にラジカル反応により架橋し硬化する樹脂、アクリル基の導入により光硬化する樹脂、紫外線でオニウム塩を分解して強酸を発生させ、これによりエポキシ環が開裂して架橋する樹脂組成物、ビニルシロキサンへのチオールの付加反応で架橋する樹脂組成物などが挙げられる。電子線は紫外線よりもエネルギーが強いため、紫外線硬化の場合のように開始剤を用いなくてもラジカルによる架橋反応が起こる。
本発明における離型塗布層に用いる離型剤は、1種類で使用してもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。また、剥離力を調整するために、軽剥離添加剤や、重剥離添加剤といった添加剤を混合することも可能である。
本発明における離型塗布層には、粒径が1μm以下の粒子などを含有することができるが、ピンホール発生の観点から粒子などの突起を形成するものは、実質的に含有しないほうが好ましい。
本発明における離型塗布層には、密着向上剤や、帯電防止剤などの添加剤などを添加してもよい。また、基材との密着性を向上させるために、離型塗布層を設ける前に離型用二軸配向ポリプロピレンフィルム表面に、アンカーコート、コロナ処理、プラズマ処理、大気圧プラズマ処理等の前処理をすることも好ましい。
本発明における離型塗布層の厚みは、その使用目的に応じて設定すれば良く、特に限定されないが、好ましくは、硬化後の離型塗布層の厚みが0.005~2μmとなる範囲がよい。離型塗布層の厚みが0.005μm以上であると、剥離性能が保たれて好ましい。また、離型塗布層の厚みが2μm以下であると、硬化時間が長くなり過ぎず、離型フィルムの平面性の低下による厚みムラを生じおそれがなく好ましい。
本発明において、離型塗布層の形成方法は、特に限定されず、離型性の樹脂を溶解もしくは分散させた塗液を、基材の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムの一方の面に塗布等により展開し、溶等を乾燥により除去後、加熱乾燥、熱硬化または紫外線硬化させる方法が用いられる。このとき、溶媒乾燥、熱硬化時の乾燥温度は、100~170℃であることが好ましい。乾燥温度が170℃より高いと、フィルムに熱によるシワが発生する場合がある。一方、乾燥温度が低いと離型塗布層の熱硬化が不十分で離型性が得られない場合がある。二軸配向ポリプロピレンフィルムは、二軸配向ポリエステルフィルムに比べて高温での熱寸法安定性が低いため、塗布膜の乾燥において熱によるシワが発生しやすいが、本発明の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムは、シワの発生を抑えることができる。なお、加熱乾燥時間は、10~60秒が一般的である。
上記離型剤塗液の塗布方法としては、公知の任意の塗布方法が適用出来、例えばグラビアコート法やリバースコート法などのロールコート法、ワイヤーバーなどのバーコート法、ダイコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、等の従来から知られている方法が利用できる。
以下、実施例により本発明を群細に説明する。なお、特性は以下の方法により測定、評価を行った。
(1)メルトフローレート
メルトフローレート(MFR)は、JISK7210に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgfで測定した。
(2)メソペンダット分率
ポリプロピレン樹脂のメソペンタッド分率([mmmm]%)の測定は、13C-NMRを用いて行った。メソペンタッド分率は、Zambelliら、Macromolecules、第6巻、925頁(1973)に記載の方法に従って算出した。13C-NMR測定は、BRUKER社製AVANCE500を用い、試料200mgをo-ジクロロベンゼンと重ベンゼンの8:2の混合液に135℃で溶解し、110℃で行った。
(3)ポリプロピレン樹脂の数平均分子量、重量平均分子量、分子量10万以下の成分量、および分子量分布
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、単分散ポリスチレン基準としPP換算分子量として求めた。ベースラインが明確でないときは、標準物質の溶出ピークに最も近い高分子量側の溶出ピークの高分子量側のすそ野の最も低い位置までの範囲でベースラインを設定することとした。
GPC測定条件は次のとおりである。

装置:HLC-8321PC/HT(東ソー株式会社製)
検出器:RI
溶媒:1,2,4-トリクロロベンゼン+ジブチルヒドロキシトルエン(0.05%)
カラム:TSKgelguardcolumnHHR(30)HT(7.5mmI.D.×7.5cm)×1本+TSKgelGMHHR-H(20)HT(7.8mmI.D.×30cm)×3本
流量:1.0mL/min
注入量:0.3mL
測定温度:140℃

数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)はそれぞれ、分子量較正曲線を介して得られたGPC曲線の各溶出位置の分子量(M)の分子数(N)により次式で定義される。
数平均分子量:Mn=Σ(N・M)/ΣN
質量平均分子量:Mw=Σ(N・M )/Σ(N・M
ここで、分子量分布は、Mw/Mnで得ることができる。
また、GPCで得られた分子量分布の積分曲線から、分子量10万以下の成分の割合を求めた。
(4)結晶化温度(Tc)、融解温度(Tm)
ティー・エイ・インスツルメント社製Q1000示差走査熱量計を用いて、窒素雰囲気下で熱測定を行った。ポリプロピレン樹脂のペレットから約5mgを切り出して測定用のアルミパンに封入した。230℃まで昇温し5分間保持した後、-10℃/分の速度で30℃まで冷却し、発熱ピーク温度を結晶化温度(Tc)とした。また、結晶化熱量(△Hc)は、発熱ピークの面積をピークの開始からピーク終了まで、スムーズにつながるようにベースラインを設定して求めた。そのまま、30℃で5分間保持し、10℃/分で230℃まで昇温し、主たる吸熱ピーク温度を融解温度(Tm)とした。
(5)フィルム厚み
セイコー・イーエム社製ミリトロン1202Dを用いて、フィルムの厚さを計測した。
(6)ヘイズ
日本電色工業株式会社製NDH5000を用い、23℃にて、JISK7105に従って測定した。
(7)引張試験
JISK7127に準拠してフィルムの長手方向および幅方向の引張強度を23℃にて測定した。サンプルは15mm×200mmのサイズにフィルムより切り出し、チャック幅は100mmで、引張試験機(インストロンジャパンカンパニイリミテッド社製デュアルコラム卓上型試験機インストロン5965)にセットした。引張速度200mm/分にて引張試験を行った。得られた歪み-応力カーブより、5%伸長時の応力をF5とした。
引張破断強度、引張破断伸度は、それぞれ、サンプルが破断した時点での強度と伸度とした。
(8)熱収縮率
JISZ1712に準拠して以下の方法で測定した。フィルムを20mm巾で200mmの長さでフィルムの長手方向、幅方向にそれぞれカットし、120℃または150℃の熱風オーブン中に吊るして5分間加熱した。加熱後の長さを測定し、元の長さに対する収縮した長さの割合で熱収縮率を求めた。
(9)屈折率、△Ny、面配向係数、平均屈折率
(株)アタゴ製アッベ屈折計を用いて波長589.3nm、温度23℃で測定した。フィルムの長手方向、幅方向に沿った屈折率をそれぞれNx、Nyとし、厚み方向の屈折率をNzとした。△Nyは、Nx、Ny、Nzを用いて、(式)Ny-[(Nx+Nz)/2]を用いて求めた。また、面配向係数(ΔP)は、(式)[(Nx+Ny)/2]-Nzを用いて計算した。また、平均屈折率は(式)(Nx+Ny+Nz)/3を用いて計算した。
(10)X線半値幅、X線配向度
X線回折装置((株)リガク製SmartLab,αβγアタッチメント付属)を用いて透過法にて測定した。波長1.5418ÅのX線を用いて、X線出力は45kV、200mAの出力で用いた。検出器にはハイブリッド型多次元ピクセル検出器 Hypix-3000を0次元モードで使用した。平行ビーム法で入射側のスリットとして、ソーラースリット2.5°、長手制限スリット10mm、入射スリット幅1mmを使用した。また、受光側のスリットとして、パラレルスリットアナライザー0.228°を使用した。
カメラ長300mm、検出器の積分幅は2mmで行った。
400μmの厚みになるようにフィルムを重ね合わせて試料を調製した。ポリプロピレン樹脂のα型結晶の(110)面の回折ピーク位置(回折角度2θ=14.1°)に検出器を置き、サンプルをフィルムの厚み方向を軸として360°回転させ、(110)面の回折強度の方位角依存性を得た。ステップ間隔は0.5°、測定スピードは60°/minで測定した。この方位角依存性より、フィルムの幅方向の配向結晶に由来する回折ピークの半値幅Whを求めた。
また、Whを用いて、下記式よりX線配向度を算出した。
X線配向度=(180-Wh)/180
(11)パルスNMRで求めた拘束されない非晶成分(III)の比率
フィルムを断裁して、外径10mmのガラス管の管内に高さ1cmとなるまで断裁したフィルムを詰め込み、下記の測定装置と測定条件で二軸配向ポリプロピレンフィルムのH核のスピン-スピン緩和時間T2を測定し磁化強度の減衰曲線を得た。
装置:BRUKER製 Minispec mq20
温度:40℃
観測周波数:20MHz
90°パルス幅:2.74μs
パルス繰り返し時間:2.0s
パルスモード: Solido Echo法
積算回数 : 128回
Recycle Delay : 4s
Acquisition Scale : 0.1 ms
測定は二軸配向ポリプロピレンフィルムを詰めたガラス管を装置に投入して15分間保温した後に開始し、得られた磁化強度の減衰曲線とフィッティング曲線が一致するように、緩和時間が一番短い成分をガウス関数、二番目と三番目に短い成分はローレンツ関数を用いて最小二乗法により分離し、それぞれの割合を得た。なお、一番短い成分が結晶成分(I)、二番目と三番目に短い成分がそれぞれ拘束された非結晶成分(II)、拘束されない非晶成分(III)に相当する。なお、フィッティング及び解析は、上記測定装置に付属のソフトウェア(TD-NMR Analyzer)を用いた。
拘束されない非晶成分(III)の比率は、上記方法で得た結晶成分(I)、拘束された非結晶成分(II)、拘束されない非晶成分(III)の全体に対する非晶成分(III)の比率(%)
を下式(1)で計算した。
拘束されない非晶成分(III)の比率 = MIII/(M+MII+MIII) ・・・(1)
:結晶成分(I)の成分量
II:拘束された非結晶成分(II)の成分量
III:拘束されない非晶成分(III)の成分量
(12)濡れ張力(mN/m)
JIS K 6768 : 1999に順じて、フィルムを23℃、相対湿度 50%で24時間
エージング後、下記手順でフィルムのコロナ処理面を測定した。
手順1)
測定は,温度 23℃,相対湿度 50%の標準試験室雰囲気(JIS K 7100 参照)で行う。
手順2)
試験片をハンドコータ(4.1)の基板の上に置き、試験片の上に試験用混合液を数滴滴下して、直ちにワイヤーバーを引いて広げる。
綿棒又はブラシを使用して試験用混合液を広げる場合は、液体は少なくとも6cm以上の面積に速やかに広げる。液体の量は、たまりを作らないで、薄層を形成する程度にする。
濡れ張力の判定は,試験用混合液の液膜を明るいところで観察し、3秒後の液膜の状態で行う。液膜破れを生じないで、3秒以上、塗布されたときの状態を保っているのは、ぬれていることになる。濡れが3秒以上保つ場合は、さらに、次に表面張力の高い混合液に進み、また逆に、3秒以下で液膜が破れる場合は、次の表面張力の低い混合液に進む。
この操作を繰り返し、試験片の表面を正確に、3秒間で濡らすことができる混合液を選ぶ。
(13)離型性の評価
実施例に記載の離型剤を塗布した二軸延伸ポリプロピレンフィルム(離型フィルム)のロールから離型フィルムを、幅方向が長辺となるように幅30mm、長さ80mmにカットし、剥離力測定用サンプルとした。除電機(キーエンス社製、SJ-F020)を用いて除電した後に、剥離試験機(協和界面科学社製、VPA-3)を用いて、剥離角度30度、剥離温度25℃、剥離速度10m/minで剥離した。剥離する向きとしては、剥離試験機付属のSUS板上に両面接着テープ(日東電工社製、No.535A)を貼りつけ、その上に離型層と反対側を両面テープと接着する形で離型フィルムを固定し、離型層側を引っ張る形で剥離した。得られた測定値のうち、剥離距離20mm~70mmの剥離力の平均化を算出し、その値を剥離力とした。測定は計5回実施し、その剥離力の平均値の値を採用し、評価を行った。
得られた剥離力の数値から下記の基準で判定した。
○:60mN/mm以下
×:60mN/mmより大きい
なお、本評価方法における剥離角度とは、剥離試験機に固定した評価サンプル軸に対し、離型フィルムを引っ張る方向の角度を指す。
(14)離型フィルムカール
実施例に記載の離型剤を塗布した二軸延伸ポリプロピレンフィルム(離型フィルム)のロールから離型フィルムを10cm×10cmサイズにカットし、離型面が上になるようにガラス板の上に離型フィルムサンプルを置いて、ガラス板から浮いている部分の高さを測定した。離型フィルムに発生したカールを下記の方法により評価した。
このときガラス板から一番大きく浮いている部分の高さを測定値とした。以下の基準でカール性の評価を行った。
○:カールが5mm以下である
×:カールが5mmより大きい
(15)離型フィルムロールのシワ
実施例に記載の離型剤を塗布した二軸延伸ポリプロピレンフィルムのロールから離型剤を塗布した二軸延伸ポリプロピレンフィルムを巻きだし、離型フィルムに発生したシワを下記の方法により評価した。
すなわち、温度25℃、湿度65%の室内に、60cm幅の離型フィルムをフィルム長手方向が鉛直になるようにつるし、10N/mの荷重をかけ30分間静置した。蛍光灯を長手方向に連続した波板状のシワの数を計数する面から1m離して45°上方からフィルム表面に投影させ、シワを計数する面から0.5m離れて45°下方からシワの数を目視によって計数して評価した。シワは、観察する面に対してフィルム長手方向の凸状となるシワを1本とし、フィルム幅方向のシワの数を計数した。
○:シワの本数が10本/m以下
×:シワの本数が11本/m以上。
(実施例1)
(離型用二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造方法)
ポリプロピレン樹脂として、MFR=7.5g/10分、[mmmm]=98.9%、Tc=116.2℃、Tm=162.5℃であるプロピレン単独重合体PP-1(住友化学(株)製、住友ノーブレンFLX80E4)を80重量部と、MFR=11g/10分、[mmmm]=98.8%、Tc=116.5℃、Tm=161.5℃であるプロピレン単独重合体PP-2(住友化学(株)製、EL80F5)を20重量部とをブレンドして用いた。
250℃でTダイよりシート状に押出し、20℃の冷却ロールに接触させ、そのまま20℃の水槽に投入した。その後、142℃で二対のロールで長手方向に4.5倍に延伸し、ついで両端をクリップで挟み、熱風オーブン中に導いて、170℃で予熱後、幅方向に1段目として162℃で10倍延伸を行った。幅方向延伸直後に、クリップに把持したまま120℃で冷却し、その後、175℃で幅方向に1.2倍再延伸を行った後室温まで冷却し、フィルムの片側表面にソフタル・コロナ・アンド・プラズマGmbH社製のコロナ処理機を用いて、印加電流値:0.75Aの条件で、コロナ処理を施した後、ワインダーで巻き取った。こうして得られたフィルムの厚みは18.6μmであった。
表1にポリプロピレン樹脂の構造、表2に製膜条件を示す。その物性は、表3に示すとおり、剛性に非常に優れるものであり、高温での熱収縮率が低いフィルムが得られた。
(離型剤を塗布した二軸延伸ポリプロピレンフィルムの作製)
ロール状の離型用二軸延伸ポリプロピレンフィルムのコロナ処理した表面側に、熱硬化型シリコーン系化合物(信越シリコーン社製、KS-774)のトルエン/メチルエチルケトン=50/50溶液(固形分濃度1重量%)にPt触媒(信越シリコーン社製、PL-50T)をKS-774の固形分100重量部に対し1重量部の量を加えた塗液を塗布量(WET)3g/mでコーターを使用して塗布し、下方及び上方の空気流吹き出し口の間隔が38cmの空気浮上搬送式乾燥装置を用いて、搬送張力2000kPa、乾燥温度150℃で20秒間離型層を乾燥させ、離型層の乾燥硬化後の重量が0.03g/mの離型フィルムを得た。乾燥後、50℃の冷却ロールを用いてフィルムを20℃/秒の速度で冷却した後、ロール状に巻き取り、離型フィルムロールを得た。表1にポリプロピレン樹脂の構造、表2に製膜条件を示す。その物性は、表3に示すとおり、剛性に非常に優れるものであり、高温での熱収縮率が低く、離型剤を塗布した離型フィルムは離型性に優れ、シワやカールのない平滑なフィルムであった。
(実施例2)
165℃で幅方向に1.2倍再延伸した以外は実施例1と同様に行った。得られたフィルムの厚みは18.4μmであった。表1にポリプロピレン樹脂の構造、表2に製膜条件を示す。その物性は、表3に示すとおり、剛性に非常に優れるものであり、高温での熱収縮率が低く、離型剤を塗布した離型フィルムは離型性に優れ、シワやカールのない平滑なフィルムであった。
(実施例3)
長手方向に147℃で延伸し、幅方向に1段目として165℃で10倍延伸を行い、幅方向延伸直後に、クリップに把持したまま120℃で冷却し、その後、177℃で幅方向に1.2倍再延伸を行った以外は実施例1と同様に行った。得られたフィルムの厚みは18.9μmであった。
表1にポリプロピレン樹脂の構造、表2に製膜条件を示す。その物性は、表3に示すとおり、剛性が高く、高温での熱収縮率が低く、離型剤を塗布した離型フィルムは離型性に優れ、シワやカールのない平滑なフィルムであった。
(実施例4)
177℃で幅方向に1.1倍再延伸した以外は実施例3と同様に行った。得られたフィルムの厚みは20.6μmであった。表1にポリプロピレン樹脂の構造、表2に製膜条件を示す。
表1にポリプロピレン樹脂の構造、表2に製膜条件を示す。その物性は、表3に示すとおり、剛性が高く、高温での熱収縮率も低く、離型剤を塗布した離型フィルムは離型性に優れ、シワやカールのない平滑なフィルムであった。
(比較例1)
幅方向に1段目として162℃で12倍延伸を行い、幅方向延伸直後に、クリップに把持したまま100℃で冷却し、その後、170℃で幅一定のまま熱固定を行った以外は実施例1と同様に行った。得られたフィルムの厚みは20.8μmであった。
表1にポリプロピレン樹脂の構造、表2に製膜条件を示す。その物性は、表3に示すとおり、剛性が高いものの、高温での熱収縮理率が劣り、離型剤を塗布した離型フィルムにはシワとカールが発生したため離型フィルムとして加工適正に劣るものとなった。
(比較例2)
幅方向に1段目として162℃で12倍延伸を行い、幅方向延伸直後に、クリップに把持したまま冷却を行わず、172℃で幅一定のまま熱固定を行った以外は実施例1と同様に行った。得られたフィルムの厚みは23.1μmであった。
表1にポリプロピレン樹脂の構造、表2に製膜条件を示す。その物性は、表3に示すとおり、剛性が劣り、離型剤を塗布した離型フィルムにはシワとカールが発生したため離型フィルムとして加工適正に劣るものとなった。
(比較例3)
幅方向に1段目として168℃で12倍延伸を行い、幅方向延伸直後に、クリップに把持したまま100℃で冷却し、その後、170℃で幅一定のまま熱固定を行った以外は実施例1と同様に行った。得られたフィルムの厚みは18.7μmであった。
表1にポリプロピレン樹脂の構造、表2に製膜条件を示す。その物性は、表3に示すとおり、高温での熱収縮率が高く、剛性も劣り、離型剤を塗布した離型フィルムにはシワとカールが発生したため離型フィルムとして加工適正に劣るものとなった。
(比較例4)
ポリプロピレン樹脂として、MFR=3g/10分、[mmmm]=94.8%、Tc=117.2℃、Tm=160.6℃であるPP-3(日本ポリプロ(株)製、FL203D)を用いた。250℃でTダイよりシート状に押出し、20℃の冷却ロールに接触させ、そのまま20℃の水槽に投入した。その後、長手方向に、130℃で4.5倍延伸し、テンターでの幅方向延伸において、予熱温度を168℃とし、延伸1段目として155℃で8.2倍延伸を行った。幅方向延伸直後に、クリップに把持したまま120℃で冷却し、その後、170℃で幅方向に1.2倍再延伸を行った。最後に室温にて冷却した。得られたフィルムの厚みは18.8μmであった。
表1にポリプロピレン樹脂の構造、表2に製膜条件を示す。その物性は、表3に示すとおり、高温での熱収縮率が高く、剛性も劣るものであり、離型剤を塗布した離型フィルムにシワとカールが発生したため離型フィルムとして加工適正に劣るものとなった。
(比較例5)
ポリプロピレン樹脂として実施例1と同様にPP-1とPP-2とのブレンドを用いて、表2に示した幅方向に再延伸を行わず168℃で熱処理した製膜条件でフィルムを得た。得られたフィルムの厚みは20.0μmであった。
表1にポリプロピレン樹脂の構造、表2に製膜条件を示す。その物性は、表3に示すとおり、高温での熱収縮率は低いが、剛性も劣るものであり、離型剤を塗布した離型フィルムにはシワとカールが発生したため離型フィルムとして加工適正に劣るものとなった。
(比較例6)
ポリプロピレン樹脂として、MFR=5g/10分、[mmmm]=97.3%、Tc=116.8℃、Tm=161.6℃であるPP-4(日本ポリプロ(株)製、SA4L)を用いて、表2に示した幅方向に再延伸を行わず168℃で熱処理した製膜条件でフィルムを得た。得られたフィルムの厚みは20.0μmであった。
表1にポリプロピレン樹脂の構造、表2に製膜条件を示す。その物性は、表3に示すとおり、高温での熱収縮率が高く、剛性も劣るものであり、離型剤を塗布した離型フィルムにシワとカールが発生したため離型フィルムとして加工適正に劣るものとなった。
Figure 2023095426000001
Figure 2023095426000002
Figure 2023095426000003
本発明の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムは、剛性が高く、フィルムの薄膜化ができる。フィルムの薄膜化しても剥離し易く、離型剤の乾燥時にシワが生じにくく、塗布加工後のフィルムにカールの発生が少ないので離型用フィルムとして好適に用いることができる。

Claims (11)

  1. 下記(1)、(2)を満足する離型用二軸配向ポリプロピレンフィルム。
    (1)ソリッドエコー法によるパルスNMRで求めた結晶成分(I)、拘束された非結晶成分(II)、拘束されない非晶成分(III)に分離した時の(III)の比率が7%以下である。
    (2)幅方向のループステフネス応力(S)と厚み(t)との関係が、下記式を満たす。
    S[mN]≧0.0010×厚み(μm)
  2. 前記離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムの幅方向の150℃における熱収縮率が、長手方向で10%以下であり、幅方向で30%以下である、請求項1に記載の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルム。
  3. 前記離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムの幅方向の屈折率Nyが1.5250以上であり、△Nyが0.0240以上である、請求項1又は2に記載の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルム。
  4. 前記離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムのヘイズが5.0%以下である、請求項1~3のいずれかに記載の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルム。
  5. 前記離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂のメソペンタッド分率が97.0%以上である、請求項1~4のいずれかに記載の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルム。
  6. 前記離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂の結晶化温度が105℃以上であり、融点が160℃以上である、請求項1~5のいずれかに記載の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルム。
  7. 前記離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂のメルトフローレートが4.0g/10分以上である、請求項1~6のいずれかに記載の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルム。
  8. 前記離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂の分子量10万以下の成分量が35質量%以上である、請求項1~7のいずれかに記載の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルム。
  9. 請求項1~8のいずれかに記載の離型用二軸配向ポリプロピレンフィルムの少なくとも片方の面に離型塗布層が積層された離型フィルム。
  10. 前記離型塗布層がシリコーン樹脂からなる請求項9に記載の離型フィルム。
  11. 下記(1)、(2)を満足する二軸配向ポリプロピレンフィルム、及び離型塗布層を含む積層フィルム。
    (1)ソリッドエコー法によるパルスNMRで求めた結晶成分(I)、拘束された非結晶成分(II)、拘束されない非晶成分(III)に分離した時の(III)の比率が7%以下である。
    (2)幅方向のループステフネス応力(S)と厚み(t)との関係が、下記式を満たす。
    S[mN]≧0.0010×厚み(μm)
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