JP2023091619A - 腫瘍を縮小、又は消失させるための組成物 - Google Patents

腫瘍を縮小、又は消失させるための組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】腫瘍を縮小、又は消失させるための新たな組成物及びその使用を提供することを目的とする。【解決手段】一側面において、本開示は以下の発明を提供する。腫瘍を縮小、又は消失させるための組成物であって、未成熟な樹状細胞と、間葉系幹細胞、又は間葉系幹細胞の培養上清と、を成分として含む、組成物。【選択図】なし

Description

本開示は、腫瘍を縮小、又は消失させるための組成物に関する。
腫瘍(又は新生物)は、細胞が生体内の制御に反して自律的に過剰に増殖することによってできる。腫瘍は、悪性腫瘍と良性腫瘍を含む。悪性腫瘍は一般的にはがん(上皮細胞から発生する癌腫、「癌」も含む)と呼ばれる。
腫瘍に対して長らく行われた治療方法としては、手術による切除、抗がん剤投与、放射線による治療などが挙げられる。近年、免疫システムを活用した新たな治療方法が開発されてきた。一例として、樹状細胞を活用した新たな方法が着目されている。樹状細胞は、攻撃対象の細胞が提示する抗原を記憶し、その抗原の情報を、他の免疫細胞に提示する役割を担う。
この仕組みを利用して、腫瘍細胞特有の抗原を樹状細胞に記憶させる手法が開発されてきた。例えば、体外に抽出した樹状細胞に、腫瘍細胞を提示したりしてもよく、或いは、樹状細胞を、腫瘍が存在する部位に投与してもよい。
樹状細胞に関する知見として、非特許文献1では、間葉系幹細胞から生じたVesicleが樹状細胞の機能などを弱めることを報告している。非特許文献2~5でも同様の報告をしている。すなわち、これまでの知見からは、間葉系幹細胞が樹状細胞療法の効果を弱めることはあっても、増強する可能性は低いと考えられた。
さらに別の例として、遺伝子改変技術と組み合わせたCAR-T(himeric ntigen eceptor- cells)療法が挙げられる。この療法では、がん細胞だけを特異的に認識する抗体と、T細胞を活性化させるシグナルドメインを融合した遺伝子を、がん患者由来T細胞に遺伝子導入・強制発現させることで、がん細胞を特異的に攻撃するT細胞を患者の体内に導入し、がんを消失させることを目的としている。この原理を用いて、再生医療等製品として承認された製剤も存在している(非特許文献6)。
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fimmu.2018.02538/full BLOOD, 15 MAY 2005 VOLUME 105, NUMBER 10 4120-4126 J Immunology 2006; 177:2080-2087; Frontiers in Immunology 09 November 2018 Vol9 Article 2538 Immunology Letters 115 (2008) 50-58 https://www.kymriah.jp/hcp/
CAR-T療法は非常に強力であり、効果性が高いことが明らかとなっている。一方で、その原理上、がん細胞に特異的に発現している(好ましくはがん細胞の表面に特異的に発現している)タンパク質が存在することが前提であり、そのタンパク質を同定し、さらにそのタンパク質に対する非常に特異的な抗体が作製できるかどうか、が非常にクリティカルなステップとなっている。また、現在承認されている再生医療等製品はいずれも血液がん(白血病など)に対するもののみであり、固形がん(上皮から発生したものなど)に対するCAR-T療法は未だ開発段階となっている。
一方、樹状細胞療法に関しても、期待されたほどの効果を発揮している、という報告はなく、寛解率は10%程度であり、再発率も高いという報告もある(https://www.tella.jp/company/release/wp-content/uploads/2014/05/%E6%A8%B9%E7%8A%B6%E7%B4%B0%E8%83%9E%E3%83%AF%E3%82%AF%E3%83%81%E3%83%B3%E3%80%8C%E3%83%90%E3%82%AF%E3%82%BB%E3%83%AB%C2%AE%E3%80%8D%E3%81%AE%E8%87%A8%E5%BA%8A%E6%88%90%E7%B8%BE%E3%80%81%E3%80%8CJournal-of-Ovarian-Research%E3%80%8D%E3%81%AB%E3%81%A6%E7%99%BA%E8%A1%A8.pdf)。
従って、腫瘍を縮小又は消失させるための新たな方法に関するニーズは依然として存在する。そこで、本開示は、腫瘍を縮小、又は消失させるための新たな組成物及びその使用を提供することを目的とする。
本発明者が鋭意検討したところ、間葉系幹細胞、及び間葉系幹細胞から得られる培養上清に着目した。マウスを用いて、腫瘍が存在する部位に、未成熟な樹状細胞と、間葉系幹細胞、又は間葉系幹細胞から得られる培養上清とを投与したところ、腫瘍を縮小、又は消失させることに成功した。
上記知見に基づいて発明が完成され、本開示は、一側面において、以下の発明を包含する。
(発明1)
腫瘍を縮小、又は消失させるための組成物であって、
未成熟な樹状細胞と、
間葉系幹細胞、又は間葉系幹細胞から得られる培養上清と、
を成分として含む、組成物。
(発明2)
発明1に記載の組成物であって、間葉系幹細胞から得られる培養上清が、エクソソームを含む画分からなる、組成物。
(発明3)
発明1に記載の組成物であって、間葉系幹細胞から得られる培養上清が、エクソソームを含まない画分からなる、組成物。
(発明4)
発明1~3いずれか1つに記載の組成物であって、腫瘍に直接投与されるために使用される、組成物。
(発明5)
発明1~3いずれか1つに記載の組成物であって、前記腫瘍が転移性腫瘍の場合、
前記組成物が血管投与用である、組成物。
(発明6)
腫瘍による心臓の機能低下を回復させるための組成物であって、
未成熟な樹状細胞と、
間葉系幹細胞、又は間葉系幹細胞から得られる培養上清と、
を成分として含む、組成物。
(発明7)
発明6に記載の組成物であって、間葉系幹細胞から得られる培養上清が、エクソソームを含む画分からなる、組成物。
(発明8)
発明6に記載の組成物であって、間葉系幹細胞から得られる培養上清が、エクソソームを含まない画分からなる、組成物。
(発明9)
発明6~発明8のいずれか1つに記載の組成物であって、
前記機能が、心臓が収縮し血液を送り出す機能である、組成物。
(発明10)
腫瘍を縮小若しくは消失させる、又は腫瘍による心臓の機能低下を回復させるための組成物であって、
前記組成物が、未成熟樹状細胞を含み、
間葉系幹細胞、又は間葉系幹細胞から得られる培養上清を投与する前、同時、又は、後に投与される、組成物。
(発明11)
腫瘍を縮小若しくは消失させる、又は腫瘍による心臓の機能低下を回復させるための組成物であって、
前記組成物が、間葉系幹細胞、又は間葉系幹細胞から得られる培養上清を含み、
未成熟樹状細胞を投与する前、同時、又は、後に投与される、組成物。
(発明12)
発明10又は11に記載の組成物であって、間葉系幹細胞から得られる培養上清が、エクソソームを含む画分からなる、組成物。
(発明13)
発明10又は11に記載の組成物であって、間葉系幹細胞から得られる培養上清が、エクソソームを含まない画分からなる、組成物。
(発明14)
腫瘍消失部位の組織修復のために投与される組成物であって、
前記組成物は、間葉系幹細胞、又は間葉系幹細胞から得られる培養上清を含み、
発明1~発明13いずれか1つに記載の組成物投与によって腫瘍の消失を確認したのちに、腫瘍消失部位の組織修復のために投与され、
前記間葉系幹細胞、又は間葉系幹細胞から得られる培養上清、又はそのエクソソームを成分として含む、組成物。
一側面において、上記発明は、未成熟な樹状細胞と、間葉系幹細胞、その培養上清、又はそのエクソソームとを含む組成物である。これを投与することで腫瘍を縮小、又は消失させることができる。
腫瘍を移植して一定時間経過した後の、マウスの体内の腫瘍の状態を、マウスの腹部を切開することにより確認した写真を示す。矢印は腫瘍が存在する位置を示す。培養上清+DC(樹状細胞)の例では、腫瘍がほとんど視認できなかった(消失した)ため、矢印を示していない。 腫瘍を移植して一定時間経過した後の、マウスの体内の腫瘍のサイズ(重量)を示す。コントロールと、培養上清+DCとで、有意差が生じている。グラフ内のpはp値(probability value;危険率とも言う)を示す(検定方法:one-way ANOVA with bonferroni post hoc test)。 腫瘍を移植して一定時間経過した後の、マウスの体内の腫瘍のサイズ(重量)を示す。AD-MSCは脂肪組織由来幹細胞の培養上清を用いた例を示す。UC-MSCは臍帯組織由来幹細胞の培養上清を用いた例を示す。グラフ内のpはp値を示す(検定方法:one-way ANOVA with bonferroni post hoc test)。 左のグラフは、CD63をマーカーとしてELISAによりエクソソームの量を測定した結果を示す。縦軸は、培養上清におけるELISAでの測定値を100としたときの相対値を示す。右のグラフは腫瘍を移植して一定時間経過した後の、マウスの体内の腫瘍のサイズ(重量)を示す。AD・Exosomeは脂肪組織由来幹細胞の培養上清から得られたエクソソームを示す。UC・Exosomeは臍帯組織由来幹細胞の培養上清から得られたエクソソームを示す。グラフ内のpはp値を示す(検定方法:one-way ANOVA with bonferroni post hoc test)。 腫瘍を移植して一定時間経過した後の、マウスの体内の腫瘍のサイズ(重量)を示す。AD(-Exo)は脂肪組織由来幹細胞の培養上清からエクソソームを除いた画分を示す。UC(-Exo)は臍帯組織由来幹細胞の培養上清からエクソソームを除いた画分を示す。グラフ内のpはp値を示す(検定方法:one-way ANOVA with bonferroni post hoc test)。 腫瘍を移植して一定時間経過した後の、マウスの体内の腫瘍のサイズ(重量)を示す。AD-MSCは脂肪組織由来幹細胞を用いた例を示す。UC-MSCは臍帯組織由来幹細胞を用いた例を示す。グラフ内のpはp値を示す(検定方法:one-way ANOVA with bonferroni post hoc test)。 腫瘍を尾静脈から移植して一定時間経過した後の、マウスの体内の各臓器における腫瘍の数(結節数)の変化を示す。pはp値を示す(検定方法:one-way ANOVA with Bonferroni post hoc test)。 腫瘍を移植して一定時間経過した後の、マウスの心機能(左室内径短縮率)の変化を示す。n.s.は、統計的有意差なし(Not Significant)を示す。pはp値を示す(検定方法:one-way ANOVA with Dunnett's post hoc test)。 腫瘍を移植して一定時間経過した後の、マウスの心機能(駆出率)の変化を示す。n.s.は、統計的有意差なし(Not Significant)を示す。pはp値を示す(検定方法:one-way ANOVA with Dunnett's post hoc test)。 腫瘍を移植して一定時間経過した後の、マウスの体内の腫瘍のサイズ(重量)を示す。AD-MSCは脂肪組織由来幹細胞の培養上清を用いた例を示す。グラフ内のpはp値を示す(検定方法:one-way ANOVA with bonferroni post hoc test)。
以下、発明を実施するための具体的な実施形態について説明する。以下の説明は、発明の理解を促進するためのものである。即ち、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
1.定義
本明細書で使用される用語「腫瘍」とは、細胞が生体内の制御に反して自律的に過剰に増殖する組織塊を意味する。腫瘍は、悪性腫瘍、及び良性腫瘍等を含む。
また、本明細書で使用される用語「新生物」は、腫瘍と置換可能に使用される。
また、本明細書で使用される用語「がん」は、悪性腫瘍に該当する物を意味する。また、「がん」は、上皮内で発生する組織塊を含む。
また、本明細書で使用される用語「未成熟な樹状細胞」とは、例えば、マーカー遺伝子CD80、CD83、及びCD86のうちいずれか1以上の発現が検出できない状態の樹状細胞を指す。これらのマーカー遺伝子は、樹状細胞の成熟度を検証する際に当分野で使用される。
また、本明細書で使用される用語「培養上清」は、特定の細胞(例えば、間葉系幹細胞)を液体培地で培養することによって得られる上清に由来する物を指す。従って、本明細書で使用される用語「培養上清」は、培養上清そのものだけでなく、培養上清からの抽出物(例えば、エクソソーム、又は、エクソソーム以外の画分等)を含む。あるいは、本明細書で使用される用語「培養上清」は、培養上清に任意の成分を追加した物を含む。
2.組成物
一実施形態において、本開示は、腫瘍を縮小、又は消失させるための組成物に関する。「腫瘍を縮小、又は消失させる」とは、例えば、比較投与の結果、腫瘍の重量において統計的有意差が生じる事象を意味してもよい。あるいは、複数の腫瘍がある場合には、腫瘍の数(結節数)が減少する事象を意味しても良い。
組成物は、少なくとも間葉系幹細胞、又は間葉系幹細胞の培養上清を含む。
上記間葉系幹細胞は、液体培地を用いて間葉系幹細胞を培養した後、剥離剤(例えば、アクターゼ、トリプシン等)、セルスクレイパーなどを用いて回収することで得られる。培養上清は、液体培地を用いて間葉系幹細胞を培養した後、液体培地を回収することで得られる。培養の期間、及び、培養条件(例えば、温度、培地の種類等)などは特に限定されず、当分野で公知の培養の期間、及び、培養条件を採用することができる。例えば、温度は、35℃~40℃、典型的には37℃であってもよい。適宜、CO2が5%になるようインキュベータを制御してもよい。あるいは、酸素濃度をコントロールして、低酸素状態(例えば、15%以下、好ましくは10%以下、又は、5%以下)にしても良い。培養期間は、特に限定されないが、少なくとも24h、好ましくは48h以上培養することが好ましい。上限は特に限定されないが、168h以下である。
更に、本明細書で記載される「間葉系幹細胞から得られる」とは、直接的に得られる物に限定されず、間接的に得られる物も含む。前者の例としては、間葉系幹細胞を培養した後の間葉系幹細胞、及び、培養上清が挙げられる。後者の例としては、培養上清を加工した物、例えば、他の成分を添加した物、及び、更なる処理を行ったものが挙げられる。更なる処理の例としては、例えば、培養上清を、フィルター処理した物、水分除去して濃縮した物、当該上清から特定の成分(例えば、細胞分泌物やエクソソーム)を分画・抽出した物などが挙げられる。
液体培地は、特に限定されず、当分野で公知の培地(例えば、DMEM、F12、RPMI等)を使用することができる。培地の例としては、インビトロジェン製の間葉系幹細胞基礎培地、三光純薬製の間葉系幹細胞基礎培地、TOYOBO社製のMF培地、バイオミメティクスシンパシーズ社のsf-DOT(登録商標)等が挙げられる。
また、培養上清は、血清を含んでもよく、又は含まなくてもよい。好ましくは、培養上清は血清を含まない。すなわち、無血清培地を用いて培養することによって、培養上清が得られることが好ましい。これは、ヒト投与を考えた際に、血清由来の未知の病原菌・ウィルスなどの感染を予防するためにも、重要であると考えられる。
培養上清は、細胞を培養した後に回収される上清そのものに限定されず、適宜種々の加工を施してもよい。例えば、後述するように他の成分を添加したり、滅菌を行ったり、ろ過処理を行ったりしてもよい。
間葉系幹細胞は、様々な組織に存在するが、上記培養上清を得るために必要な間葉系幹細胞の種類は特に限定されない。例えば、幹細胞は、胎盤由来であってもよく、臍帯組織由来であってもよく、脂肪組織由来であってもよく、或いは、骨髄由来であってもよい。
また、間葉系幹細胞の種は、特に限定されず、投与対象に応じて決定することができる。例えば、ヒトに培養上清を投与する場合には、ヒト由来の間葉系幹細胞を使用することができる。また、投与対象の患者以外のヒトから抽出した間葉系幹細胞を当該患者に投与してもよい。あるいは間葉系幹細胞を用いて培養上清、及びエクソソームを調製して、患者に投与してもよい。
エクソソームを有効成分とした組成物を得る場合、上記培養上清を遠心分離、アフィニティクロマトグラフィー法や限外濾過法などの技術を利用して、培養上清からエクソソームを濃縮、あるいは精製することができる。こうした手法を応用することで、エクソソーム以外の画分も抽出することができる。
組成物は、上述した培養上清及びエクソソーム以外に、当分野で公知の成分を更に含んでもよい。例えば、防腐剤、賦形剤、抗生物質、pHバッファ、浸透圧調整剤等のうちいずれか1つ以上を含んでもよい。
組成物は、腫瘍に直接、又は血管を通じて投与されてもよい。ここで述べる「直接」は、腫瘍が存在する部位又はその付近に投与されることを意味する。したがって、直接投与は、静脈注射などを通して、尚且つ、血液の循環などを通して、腫瘍から遠い部位から投与される形態とは異なる。また、投与する際には、カテーテルを用いて腫瘍に投与する、あるいは注射針を用いて体外から直接穿刺して投与する、などの公知の手段を用いて投与することができる。「血管を通じて投与」は、静脈、又は動脈からの投与を意味する。具体的には、例えば肺癌の場合、静脈から投与しても良いし、肺動脈から投与することも良い。
組成物の投与対象は、腫瘍組織であり、好ましくは、悪性腫瘍組織であり、更に好ましくは上皮内に存在する悪性腫瘍組織、又は、上皮から浸潤して他臓器へ転移、あるいは腹膜などへ播種した悪性腫瘍組織である。
間葉系幹細胞は、一般的に好ましい作用を及ぼし、例えば、体内の組織の再生などに寄与することができる。一方で、腫瘍は、一般的には好ましくない作用を及ぼし、例えば、生体のコントロールを超えて、異常増殖を行う性質がある。したがって、間葉系幹細胞と腫瘍は、それぞれ人体へ反対の作用を及ぼす。しかしながら、増殖能を有するという点で、間葉系幹細胞と腫瘍は共通する。
ここで、培養上清は、間葉系幹細胞を増殖させるために使用された培養液の結果物である。従って、培養上清を腫瘍に投与すれば、同様に、腫瘍も増殖すると予想される。しかしながら、こうした予想に反して、後述する実施例にも示す通り、本開示の一実施形態において、間葉系幹細胞の培養上清は、腫瘍を縮小又は消失させる作用を及ぼす。こうした培養上清の性質は、技術常識からみて、予想を超えるものである。
また、一般的に腫瘍が悪化すると心機能に悪影響を及ぼす。しかし、本開示の一実施形態において、間葉系幹細胞、及びその培養上清(及び、後述する培養上清と樹状細胞の組み合わせ)は、心機能に有用な効果をもたらすことができる。
組成物の投与と並行して、樹状細胞を生体内に投与する治療方法は、任意のタイミングで実施することができる。例えば、樹状細胞を生体内に投与する治療方法は、組成物の投与の前に実施してもよく、組成物の投与の後に実施してもよく、或いは、組成物の投与と同時に実施してもよい。同時に投与される場合には、一実施形態における本開示の組成物は、樹状細胞を含む(すなわち、培養上清及び/又は間葉系幹細胞とともに、組成物の成分として含まれる)。別の一実施形態における本開示の組成物は、樹状細胞を含む(すなわち、間葉系幹細胞、又は間葉系幹細胞から得られる培養上清を投与する前、同時、又は、後に投与される組成物として、樹状細胞を含む)。
好ましくは、樹状細胞を生体内に投与するタイミングは、組成物の投与と同じタイミングか、或いは、組成物の投与の後である。更に好ましくは、樹状細胞を生体内に投与するタイミングは、組成物の投与の前後から72時間以内、好ましくは48時間以内、更に好ましくは24時間以内である。以下の理論は発明の範囲を限定することを意図するものではないが、この理由として、培養上清は、上述した腫瘍の縮小又は消失に寄与するだけでなく、樹状細胞の機能増強に寄与すると考えられるからである。換言すれば、培養上清を生体内に投与してから有効に作用する時間内に、樹状細胞を投与することが好ましい。
さらに、間葉系幹細胞、又は間葉系幹細胞から得られる培養上清、又はそのエクソソーム若しくはエクソソーム以外の成分と、樹状細胞の投与後に、他の治療用組成物を適宜追加しても良い。例として、細胞障害性T細胞(Cytotoxic T Lymphocyte;CTL)やγδT細胞などが挙げられる。これらのうち、特にCTLは樹状細胞から抗原提示を受けることで、腫瘍を攻撃相手として認識するため、本開示組成物との相乗効果が期待される。
上述したいくつかの非特許文献では、培養上清は、樹状細胞の機能に対してネガティブに作用することが報告されている。しかしながら、こうした報告に反して、一実施形態における本開示の発明は、少なくとも腫瘍の縮小又は消失という観点から、ポジティブに作用する効果を有する。さらに言えば、一実施形態における本開示の発明により、間葉系幹細胞の培養上清を含む組成物の効果と、樹状細胞の効果との相乗効果を得ることができる。こうした相乗効果は、上述したいくつかの非特許文献から予想される範囲を超えるものである。
上述した実施形態に関する具体例を、以下の実施例にて説明するが、発明の範囲を限定するものではない。
1.概要
腫瘍に対する効果は以下の実験系にて検証することができる。まず、マウスなどの検体を準備する。検体には放射線を照射して免疫システムをいったん消失させる。その後、ヒト由来のCD34+造血幹細胞を検体に移植する。免疫システムをいったん消失させているため、拒絶反応は起こらない。上記移植より、ヒトCD34+造血幹細胞を基礎としたヒト免疫システムが検体内で構築される(以下ヒト化マウスと呼称する)。その後、ヒト由来の腫瘍を移植する。これにより、ヒトにおいて生じた腫瘍と免疫システムを有する状況に類する状況をマウスに構築できる。このようなマウスは市販で使用可能になっている(https://www.criver.com/products-services/research-models-services/animal-models/mice/humanized-mice?region=28)。
2.培養上清の調製(実施例1)
2-1.間葉系幹細胞の初代培養
はじめに、脂肪組織由来間葉系幹細胞を準備した。具体的には、脂肪組織由来間葉系幹細胞を用いた再生医療を受ける予定の患者より、皮下脂肪組織を分取した。当該皮下脂肪組織は、投与用細胞の調製に必要な原料となる。当該皮下脂肪組織を分取した後の剰余を、初代培養に供した。なお、予め、患者から研究利用に関する同意を取得しておいた。
皮下脂肪組織を遠心分離(400×gで5分間)に供し、3層に分離した。具体的には、上層から順に脂質画分、脂肪組織画分、及び水性画分の3層に分離した。中層の脂肪組織画分を残して、上層と下層を破棄した。残した脂肪組織画分に対して、組織重量当たり4倍量の0.15%コラゲナーゼ酵素溶液を添加した。37℃で1時間浸透させ、酵素処理を行った。脂肪組織が酵素処理によって分散された後、当該脂肪組織を、遠心分離(400×gで5分間)に供した。間葉系幹細胞を含む間質血管細胞画分として、沈殿画分を30mLのPBS(-)溶液で懸濁した。その後、セルストレーナー(メッシュサイズ70μm径)に懸濁液を通液し、セルストレーナーに捕捉された組織残渣等は破棄した。そして、通液画分を再度遠心分離(400×gで5分間)に供し、沈殿画分を6mLの無血清培養液sf-DOT(バイオミメティクスシンパシーズ社)で懸濁した。細胞懸濁液全量を、T25フラスコ(CellBIND;Corning,3289)に播種し、インキュベータ内(37℃,5%CO2)に静置して初代培養を開始した。
2-2.継代培養、P0⇒P1⇒P2
3日に1回の頻度で培地全交換を実施した。上澄みは破棄して、フラスコ底面上で増殖する細胞を選択的に増殖させた。セミコンフルエントまで増殖したT-25フラスコ内の細胞に対して、2mLの酵素溶液(TrypLE Express;Thermo Fisher Scientific,12604021)を添加し、細胞をフラスコの底面から剥離した(37℃、5分間静置)。細胞をPBS(-)で希釈し、遠心分離(400×gで5分間)に供した。沈殿した細胞を培養液sf-DOTで懸濁し、一部を分取してトリパンブルー染色法による細胞数計測を行った。新たなT75フラスコ(CellBIND;Corning,3290)にsf-DOTで懸濁した細胞を播種し、インキュベータ内(37℃,5%CO2)に静置して継代培養を行った(P0→P1)。その後も同様の手順で継代培養を行い、必要な細胞数を得た(P1→P2)。
2-3.培養上清の調製
まず脂肪組織由来間葉系幹細胞を上述の通りsf-DOTで培養した。同培地で脂肪組織由来間葉系幹細胞をT75フラスコ1枚当たり6000cells/cm2で播種した。4日目に培養上清を回収した。
回収した培養上清は0.2μmのPESシリンジフィルター(25mm GD/Xシリンジフィルター(PES 0.2μm滅菌済);6896-2502;GEヘルスケア・ジャパン)でろ過した。ろ過後の培養上清は、解析に使用するまで-28℃で冷凍保管した。
2-4.癌細胞の調製
ヒト乳癌由来細胞MDA-MB-231(ATCC,HTB-26)をRPMI-1640(Gibco,11875-093)+10%FBS(Fetal Bovine Serum;SIGMA,F7524)を用いてT175フラスコ(CellBIND;Corning,3292)に播種し、インキュベータ内(37℃,5%CO2)に静置して培養をした。セミコンフルエントまで達した細胞を、酵素溶液(TrypLE Express)を用いて剥離し、細胞をPBS(-)で希釈し、遠心分離(400×gで5分間)に供した。沈殿した細胞を培養液で再懸濁し、再びT175フラスコに播種し、動物実験のタイミングに合うよう細胞を継代培養し続けた。
2-5.樹状細胞の調製
まず、予め、ドナーから研究利用に関する同意を取得しておいた。採血後、Ficoll-Paque PLUS(17144002,Cytiva社)を用いて末梢血単核細胞画分を分離した。プロトコールはCytiva社推奨のものに従った。その後、RPMI-1640+10%FBSを用いてT75フラスコ(CellBIND;Corning,3290)に播種した。1時間後、フラスコに張り付かなかった細胞はリンパ球系細胞であるため、培養液を回収し、廃棄した。残った、フラスコに張り付いた細胞は単球が濃縮されており、この細胞にRPMI-1640+10%FBS+20 ng/ml IL-4(AF-200-04;PeproTech)+50 ng/ml GM-CSF(AF-300-03;PeproTech)で1週間培養した。途中3日目で培地交換した。培養後、細胞を回収し、マーカーを用いて樹状細胞に分化していることを確認した。このようにして単球から分化させて得られた樹状細胞は、未だ抗原と出会っていない、いわゆる「未成熟な」樹状細胞であり、例えば腫瘍などに投与されることで異物として腫瘍の一部を取り込んで抗原提示作用により、細胞障害性T細胞など、他の免疫細胞へと情報を提示する能力がある。一方、採血した末梢血単核細胞画分には、成熟した樹状細胞も存在しているが、これらはすでに抗原を提示している、あるいは提示能を失ったような成熟した樹状細胞であり、本発明の使用目的にはそぐわないため、使用しなかった。
3.マウス内での腫瘍のサイズの変化(実施例2)
前記のようにして作成されたヒト化マウスの皮下に、1× 106細胞数のMDA-MB-231を100μLのPBS(-)で懸濁したものに、マトリゲル(354230;コーニング社)100μLと混ぜて粘度を上げて、皮下に留まるようにしたものを1mLシリンジを用いて皮下注射投与した。1~2週間後、皮下に腫瘍が形成されている様子が目視で確認できるようになったのちに、上記調製した培養上清200μL、又は1× 106細胞数の樹状細胞を、皮下注射により腫瘍に直接投与した。培養上清を投与したパターンの場合には、更に投与後2日後に樹状細胞を投与したパターンと、投与しないパターンを設けた。約2週間後、腹部を開いて腫瘍組織の重さを計量した。コントロール、及び各投与群には、それぞれヒト化マウス5匹ずつを用いた。以下の実施例3~8に関しても同様の個体数を各群に用いた。
結果を図1及び図2に示す。図1は、マウスの腹部を切開して、移植した腫瘍の状態の写真を示している。コントロールとして、腫瘍のみを移植した場合、所定の大きさ(80mg超、図2参照)の腫瘍が形成されている。ここで、培養上清を投与した場合、コントロールと比べて、腫瘍組織の縮小傾向が観察された(約60mg、図2参照)。また、樹状細胞(DC)を投与した場合も、コントロールと比べて、腫瘍組織の縮小傾向が観察された(約50mg、図2参照)。さらには、培養上清と樹状細胞を組み合わせて投与した場合、ある個体においては腫瘍がほとんど視認できない程度に消失するなど、統計学的に有意に縮小していた(10mg以下、図2参照)。以上の結果から、培養上清と樹状細胞の組み合わせによって、有意に腫瘍を縮小、又は消失させることが可能なことが明らかとなった。なお、低酸素状態(1%又は5%酸素濃度)で培養した脂肪組織由来間葉系幹細胞から調製した培養上清にも、同様の効果があることを確認している。
4.他の組織由来の間葉系幹細胞の培養上清による効果(実施例3)
上述した実施例1~2の手順と同じ試験を実施した。ただし、間葉系幹細胞を脂肪組織由来間葉系幹細胞から臍帯組織由来間葉系幹細胞に変更した、新たな試験例を追加した。臍帯組織由来間葉系幹細胞は、以下の手順により調製した。
4-1.間葉系幹細胞の初代培養
まず、予め、出産予定者から臍帯の研究利用に関する同意を取得しておいた。出産後、臍帯をPBS(-)で洗浄し、メスで3mm程度に裁断した。組織重量当たり4倍量の0.15%コラゲナーゼ酵素溶液を添加した。37℃で2時間浸透させ、酵素処理を行った。臍帯組織が酵素処理によって分散された後、当該組織を、遠心分離(400×gで5分間)に供した。間葉系幹細胞を含む間質血管細胞画分として、沈殿画分を30mLのPBS(-)溶液で懸濁した。その後、セルストレーナー(メッシュサイズ70μm径)に懸濁液を通液し、セルストレーナーに捕捉された組織残渣等は破棄した。そして、通液画分を再度遠心分離(400×gで5分間)に供し、沈殿画分を12mLの無血清培養液sf-DOT(バイオミメティクスシンパシーズ社)で懸濁した。細胞懸濁液全量を、T75フラスコ(CellBIND;Corning,3290)に播種し、インキュベータ内(37℃,5%CO2)に静置して初代培養を開始した。
4-2.継代培養、P0⇒P1⇒P2
3日に1回の頻度で培地全交換を実施した。上澄みは破棄して、フラスコ底面上で増殖する細胞を選択的に増殖させた。セミコンフルエントまで増殖したT-25フラスコ内の細胞に対して、2mLの酵素溶液(TrypLE Express;Thermo Fisher Scientific,12604021)を添加し、細胞をフラスコの底面から剥離した(37℃、5分間静置)。細胞をPBS(-)で希釈し、遠心分離(400×gで5分間)に供した。沈殿した細胞を培養液sf-DOTで懸濁し、一部を分取してトリパンブルー染色法による細胞数計測を行った。新たなT75フラスコ(CellBIND;Corning,3290)にsf-DOTで懸濁した細胞を播種し、インキュベータ内(37℃,5%CO2)に静置して継代培養を行った(P0→P1)。その後も同様の手順で継代培養を行い、必要な細胞数を得た(P1→P2)。
4-3.培養上清の調製
まず臍帯組織由来間葉系幹細胞を上述の通りsf-DOTで培養した。同培地で脂肪組織由来間葉系幹細胞をT75フラスコ1枚当たり6000cells/cm2で播種した。4日目に培養上清を回収した。
回収した培養上清は0.2μmのPESシリンジフィルター(25mm GD/Xシリンジフィルター(PES 0.2μm滅菌済);6896-2502;GEヘルスケア・ジャパン)でろ過した。ろ過後の培養上清は、解析に使用するまで-28℃で冷凍保管した。
結果を、図3に示す。上述した実施例1~2の結果と同様、実施例3においても、コントロールに対して、脂肪組織由来間葉系幹細胞の培養上清と樹状細胞の組み合わせは、著しく腫瘍を縮小させることができた。そして、臍帯組織由来間葉系幹細胞の培養上清と樹状細胞の組み合わせにおいても、同程度の腫瘍の縮小に成功していた。このことから、培養上清を調製する際、どの組織由来の間葉系幹細胞を用いても、同様の効果を奏することが示され、間葉系幹細胞に共通の性質であることが明らかになった。
5.培養上清から抽出したエクソソームによる効果(実施例4)
上述した実施例1~3の手順と同じ試験を実施した。ただし、培養上清に代えて、培養上清から分画した10μgのエクソソーム画分を、1× 106細胞数の樹状細胞と同時に皮下注射によって腫瘍部位に直接腫瘍に投与した。エクソソーム画分は、タンジェンシャル・フィルトレーション法(MINIKROS SAMPLER 20CM 500K MPES 0.5MM 3/4TC X 3/4TC STERILE;Repligen社)を用いて、500kDa以上の大きさの分子を濃縮し、PBS(-)で洗浄、溶出した。同時に、500kDa以下の上清画分は、濃縮されずにそのままの濃度で回収されるため、そちらも投与に利用し、効果を比較検討した。エクソソーム画分のタンパク質濃度はブラッドフォードプロテインアッセイ(Bio-Rad社)を用いて定量した。エクソソームが濃縮されているか、含まれないはずの画分には確かに含まれないかは、ELISAキットを用いて検討した。
結果を図4及び図5に示す。まず、エクソソームの分画はきちんと行われており、エクソソーム画分にはエクソソームが濃縮され、含まれない画分には全く検出されなかった。その上で、図3に示す結果と同様、培養上清に代えて、エクソソームを含む画分を樹状細胞とともに投与しても、コントロールと比べて腫瘍を縮小させることに成功した。このことから、エクソソームを含む画分であっても同様の効果を奏することが示された。さらに興味深いことに、図5の結果から、エクソソームを含まない画分も同様に、腫瘍の縮小を誘導した。この結果から、培養上清の中の有効成分は一つではなく、エクソソームや、分子量の小さな液性因子の複数が協調的に作用して、未成熟な樹状細胞とともに、腫瘍の縮小、又は消失に貢献していることが明らかとなった。
6.間葉系幹細胞による効果(実施例5)
上述した実施例1~2の手順と同じ試験を実施した。ただし、培養上清ではなく、間葉系幹細胞自体を用いた。1× 106細胞数の脂肪組織由来、又は臍帯組織由来間葉系幹細胞を、1× 106細胞数の樹状細胞と同時に皮下注射によって腫瘍部位に直接投与した。
結果を図6に示す。図3に示す培養上清での結果と同様に、脂肪組織由来、又は臍帯組織由来間葉系幹細胞ともに、樹状細胞との投与によって腫瘍の劇的な縮小消失が観察された。
7.転移性腫瘍に対する効果(実施例6)
上述した実施例1~2の手順と同じ試験を実施した。ただし、MDA-MB-231細胞を皮下に投与するのではなく、尾静脈から投与することで、全身性の転移腫瘍を模した実験系を用いた。1×106細胞数のMDA-MB-231を200μLのPBS(-)で懸濁し、尾静脈投与した。1週間後、脂肪組織由来間葉系幹細胞の培養上清200μL、又は臍帯組織由来間葉系幹細胞の培養上清200μL、あるいは1× 106細胞数の脂肪組織由来、又は臍帯組織由来間葉系幹細胞を尾静脈から投与し、2時間後に、動かなくなる、呼吸が荒くなるなどの肺塞栓によると考えられるような症状がないことを確認したのち、1× 106細胞数の樹状細胞を投与した。2週間後、マウスを解剖し、肺、肝臓に腫瘍由来の結節ができているか、できていた場合はいくつあるか個数をカウントした。
結果を図7に示す。一方で、肺、及び肝臓に形成された結節数が、コントロールと比べて、培養上清又は間葉系幹細胞と樹状細胞の組み合わせによって、有意に減少していることが観察された。この結果から、間葉系幹細胞とその培養上清と樹状細胞の組み合わせは、播種を含む、全身に転移してしまう腫瘍に対しても、血管を通じて投与することで効果を発揮することが可能であることが明らかとなった。
8.培養上清による心機能の改善(実施例7)
上述した実施例1~2の手順と同じ試験を実施した。ただし、腫瘍のサイズ測定に代えて、マウスの心機能を測定した。具体的には、左室内径短縮率と駆出率を測定した。左室内径短縮率、及び駆出率は超音波診断装置(Nemio SSA-550A;東芝メディカルシステムズ株式会社)により測定した。
結果を、図8及び図9に示す。左室内径短縮率と駆出率のいずれにおいても、腫瘍を移植することで、心機能の数値が低下した。一方で、培養上清と樹状細胞を投与すると、未移植と比べて、統計的有意差がなくなる程度まで数値が改善した。
9.投与手順による効果(実施例8)
上述した実施例1~2の手順と同じ試験を実施した。ただし、1× 106細胞数のMDA-MB-231を皮下に投与し、1週間経過させた。その後に1× 106細胞数の樹状細胞と、脂肪組織由来間葉系幹細胞の培養上清200μLを、以下の3種類の順序で腫瘍に投与した。
(1)培養上清投与⇒1日経過⇒樹状細胞投与
(2)樹状細胞と培養上清を同時に投与
(3)樹状細胞投与⇒1日経過⇒培養上清投与
結果を、図10に示す。上述した実施例1~2の結果と同様、実施例8においても、コントロールに対して、若干の差はありつつも、前・同時・後のいずれかのタイミングで投与した脂肪組織由来間葉系幹細胞の培養上清と樹状細胞の組み合わせは、著しく腫瘍を縮小させることができた。このことから、培養上清を投与する順序は、樹状細胞の投与前でも同時でも後でも、同様の効果を奏することが示された。
さらに、本発明の組成物によって、腫瘍の縮小、又は消失が確認された後、その腫瘍によってダメージを受けていた組織に対し、間葉系幹細胞、又は培養上清、又はそのエクソソームの投与によって、組織修復を促すことも可能である。例えば、舌における腫瘍ならば、腫瘍が消失した後は、潰瘍が残ってしまうが、その潰瘍の修復のために間葉系幹細胞、又は培養上清、又はそのエクソソームを投与することができる。
以上、発明の具体的な実施形態について説明してきた。上記実施形態は、具体例に過ぎず、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上述の実施形態の1つに開示された技術的特徴は、他の実施形態に適用することができる。また、特記しない限り、特定の方法については、一部の工程を他の工程の順序と入れ替えることも可能であり、特定の2つの工程の間に更なる工程を追加してもよい。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって規定される。

Claims (13)

  1. 腫瘍を縮小、又は消失させるための組成物であって、
    未成熟な樹状細胞と、
    間葉系幹細胞、又は間葉系幹細胞から得られる培養上清と、
    を成分として含む、組成物。
  2. 請求項1に記載の組成物であって、間葉系幹細胞から得られる培養上清が、エクソソームを含む画分からなる、組成物。
  3. 請求項1に記載の組成物であって、間葉系幹細胞から得られる培養上清が、エクソソームを含まない画分からなる、組成物。
  4. 請求項1~3いずれか1項に記載の組成物であって、腫瘍に直接投与されるために使用される、組成物。
  5. 請求項1~3いずれか1項に記載の組成物であって、前記腫瘍が転移性腫瘍の場合、
    前記組成物が血管投与用である、組成物。
  6. 腫瘍による心臓の機能低下を回復させるための組成物であって、
    未成熟な樹状細胞と、
    間葉系幹細胞、又は間葉系幹細胞から得られる培養上清と、
    を成分として含む、組成物。
  7. 請求項6に記載の組成物であって、間葉系幹細胞から得られる培養上清が、エクソソームを含む画分からなる、組成物。
  8. 請求項6に記載の組成物であって、間葉系幹細胞から得られる培養上清が、エクソソームを含まない画分からなる、組成物。
  9. 請求項6~請求項8のいずれか1項に記載の組成物であって、
    前記機能が、心臓が収縮し血液を送り出す機能である、組成物。
  10. 腫瘍を縮小若しくは消失させる、又は腫瘍による心臓の機能低下を回復させるための組成物であって、
    前記組成物が、未成熟樹状細胞を含み、
    間葉系幹細胞、又は間葉系幹細胞から得られる培養上清を投与する前、同時、又は、後に投与される、組成物。
  11. 腫瘍を縮小若しくは消失させる、又は腫瘍による心臓の機能低下を回復させるための組成物であって、
    前記組成物が、間葉系幹細胞、又は間葉系幹細胞から得られる培養上清を含み、
    未成熟樹状細胞を投与する前、同時、又は、後に投与される、組成物。
  12. 請求項10又は11に記載の組成物であって、間葉系幹細胞から得られる培養上清が、エクソソームを含む画分からなる、組成物。
  13. 請求項10又は11に記載の組成物であって、間葉系幹細胞から得られる培養上清が、エクソソームを含まない画分からなる、組成物。
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