JP2023089751A - サーボ型振動検出器、及び、サーボ型振動検出器の組立方法 - Google Patents
サーボ型振動検出器、及び、サーボ型振動検出器の組立方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】従来サーボ型加速度センサの場合、(1)共振ピークの低減、(2)応答性の向上、(3)センサ感度向上、上記3つの相反する課題を同時に満足させる狭い範囲で、センサを構成せざるを得なかった。そのため、性能向上には限界があった。【解決手段】電極空隙部における動的流体圧力による減衰作用が、電極の相対移動面に流通穴、流通溝などを形成することで低減できることに注目して、サーボアンプの比例ゲインKP、慣性質量m、減衰係数をCで決まる減衰比ζ0を、0.2≦ζ0≦0.6の範囲を満足するように前記溝部、及び、又は、前記穴部を形成すれば、センサ感度向上を図ると共に、共振ピーク値とセンサの応答性(位相遅れ)を許容範囲に収めることができる。【選択図】図1
Description
本発明は、基礎に対して支持され、外乱を受けて振動する制御対象物の加速度、あるいは、慣性空間に対する絶対速度、又は、絶対変位を、広い周波数帯域で信号検出する振動センサ、もしくは除振制御装置に関するものである。
1.世の中のトレンド
半導体製造プロセス、液晶製造プロセス、精密機械加工などの様々な分野で、微細な振動を遮断・抑制するための振動制御の利用が広がっている。これらのプロセスで用いられる走査型電子顕微鏡、半導体露光装置(ステッパ)などの微細加工・検査装置は、装置の性能を保障するための厳しい振動許容条件が要求される。今後、製品のさらなる高集積化・微細化と共に、加工プロセスの高速化と装置の大型化が進み、振動許容条件はますます厳しくなる傾向にある。
半導体製造プロセス、液晶製造プロセス、精密機械加工などの様々な分野で、微細な振動を遮断・抑制するための振動制御の利用が広がっている。これらのプロセスで用いられる走査型電子顕微鏡、半導体露光装置(ステッパ)などの微細加工・検査装置は、装置の性能を保障するための厳しい振動許容条件が要求される。今後、製品のさらなる高集積化・微細化と共に、加工プロセスの高速化と装置の大型化が進み、振動許容条件はますます厳しくなる傾向にある。
2.除振装置が除去すべき外乱
近年、振動制御対象の構造物(たとえば、精密除振台)の複数箇所に配置された振動センサからの変位・速度・加速度情報に基づいて制御信号を作り、制御装置を制御するアクティブ振動制御技術が普及している。
近年、振動制御対象の構造物(たとえば、精密除振台)の複数箇所に配置された振動センサからの変位・速度・加速度情報に基づいて制御信号を作り、制御装置を制御するアクティブ振動制御技術が普及している。
図26に、従来のアクティブ除振台のモデル図を示す。このアクティブ除振台は、特許文献1、特許文献2にも記載されているように公知のものである。床面500には、定盤501を支持するための複数組の空気圧アクチュエータ(502a、502b)が配置されている。この定盤501の上に精密装置(図示せず)が搭載される。503は、定盤501の垂直・水平方向の加速度を検出するための加速度センサ、504は、床面500の加速度(基礎の振動状態)を検出する加速度センサである。505a、505bは、床面500に対する定盤501の垂直・水平方向相対変位をそれぞれ検出するための変位センサである。これら各センサからの出力信号がそれぞれコントローラ506に入力される。空気圧アクチュエータ502aには、配管507を介して、コントローラ506により制御されるサーボ弁508が接続されている。このサーボ弁508により、空気圧アクチュエータ502aへ供給・排気される圧縮空気の流量を調整することで、アクチュエータ502aの内圧が制御されて、空気圧アクチュエータを駆動する。
除振装置において除去すべき外乱は、設置床の振動に起因する地動外乱と、除振台上から入力される直動外乱に大別される。
地動外乱となる振動の発生源として、歩行振動と呼ばれる人の移動によるものは1~3Hz、エアコンなどのモータによるものは6~35Hz、床や壁の共振点は10~100Hz程度である。超高層・免振ビルでは0.2~0.3Hz近傍に固有振動数を有する。また風揺れによって、建築物は0.1~1.0Hzの微振動が発生する。したがって、除振台には、高周波の振動抑制だけではなく、低い周波数の振動を取り除くことも要求される。
直動外乱による高周波振動の発生源として、除振台にたとえば位置決めステージ509が搭載されている場合、ステージの加減速運転によって、除振台を含めた構造物は打撃を受け、かつ駆動反力によって揺動する。この打撃による振動および駆動反力に起因した揺れを抑制しなければステージの性能を維持できない。要約すれば、除振装置は地動外乱による「除振」に加えて、直動外乱による「制振」の両方を併せ持つ機能が要求される。
3.振動センサのアクティブ除振装置における役割
アクティブ振動制御では、状態フィードバックによる制御方法が採られている。これは、振動制御対象の構造物の複数個所に配置された振動センサからの加速度・速度・変位情報に基づいて、制御装置を制御する方法である。広い周波数領域で除振性能を得るために、たとえば、加速度信号は主に10Hz以上の状態量を制御し、速度信号は1~10Hz、変位信号は1Hz以下の状態量を制御するのに用いられる。たとえば、
a.定盤401上に配置された加速度センサ(図44の加速度センサ403を利用)からの信号を用いて、加速度フィードバックを施せば、質量Mの増加と等価となり、固有振動数を低下させ、共振ピークを低減させるなどの効果が得られる。
b.上記加速度センサ(図44の403)からの信号を絶対速度あるいは絶対変位信号に変換し、フィードバックあるいはフィードフォワードを施せば、広い周波数領域で大幅な除振性能の改善ができる。
c.定盤401直下に配置された加速度センサ(図38の404)からの信号を用いて、その信号を絶対速度あるいは絶対変位信号に変換し、同様にフィードフォワードを施せば、広い周波数領域で除振性能の改善ができる。
アクティブ振動制御では、状態フィードバックによる制御方法が採られている。これは、振動制御対象の構造物の複数個所に配置された振動センサからの加速度・速度・変位情報に基づいて、制御装置を制御する方法である。広い周波数領域で除振性能を得るために、たとえば、加速度信号は主に10Hz以上の状態量を制御し、速度信号は1~10Hz、変位信号は1Hz以下の状態量を制御するのに用いられる。たとえば、
a.定盤401上に配置された加速度センサ(図44の加速度センサ403を利用)からの信号を用いて、加速度フィードバックを施せば、質量Mの増加と等価となり、固有振動数を低下させ、共振ピークを低減させるなどの効果が得られる。
b.上記加速度センサ(図44の403)からの信号を絶対速度あるいは絶対変位信号に変換し、フィードバックあるいはフィードフォワードを施せば、広い周波数領域で大幅な除振性能の改善ができる。
c.定盤401直下に配置された加速度センサ(図38の404)からの信号を用いて、その信号を絶対速度あるいは絶対変位信号に変換し、同様にフィードフォワードを施せば、広い周波数領域で除振性能の改善ができる。
上記b.c.の制御を行うためには、慣性空間に対する速度、位置情報が必要である。加速度センサは慣性空間に対する加速度を計測することができるため、加速度センサを制御対象に取り付けることで、制御対象に加わる加速度が検出できる。したがって、従来のアクティブ除振装置では、加速度センサの出力を1回積分することで速度信号を求め、さらに2回積分することで変位信号を求める方法が採用されている。
4.加速度センサの基本構成と検出原理
図27は、静電容量型加速度センサの基本構成と検出原理を示すモデル図である。301はセンサの各部材を収納する本体部、302は質量体、303は振動測定面Aに対して質量体302を機械的に支持するバネ、304は減衰器である。質量体302は静電容量型センサの可動側電極も兼ねている。305は可動側電極(質量体302)の対抗面側に配置された固定側電極、306は前記2つの電極間の空隙部である。
図27は、静電容量型加速度センサの基本構成と検出原理を示すモデル図である。301はセンサの各部材を収納する本体部、302は質量体、303は振動測定面Aに対して質量体302を機械的に支持するバネ、304は減衰器である。質量体302は静電容量型センサの可動側電極も兼ねている。305は可動側電極(質量体302)の対抗面側に配置された固定側電極、306は前記2つの電極間の空隙部である。
307は振動測定面Aに対して、質量体302を垂直方向に駆動する電磁アクチュエータである。空隙部306の間隙の大きさで静電容量Cが決まるため、この静電容量Cを計測することにより、地動絶対変位Uと質量体の絶対変位Xの差である相対変位U-Xを検出できる。サーボ回路310(2点鎖線で示す)は、記相対変位信号U-Xを検出する変位検出器311を経て、利得KPで増幅する比例増幅器312から構成される。
以下、加速度センサの検出原理について、数式を用いて説明する。質量体302の質量をm、前記質量体を支持する機械ばね303のばね定数をk、減衰器304の減衰係数をc、アクチュエータ307の駆動力をF=Afi0とすれば、次の運動方程式が成り立つ。
相対変位u-xが零になるように、比例ゲイン定数KPの増幅器により、アクチュエータの電流i0が制御される。
比例ゲイン定数KPが十分に大きく、式(3)の右辺における第3項と比べて、第1項、第2項が無視できるとすれば、
式(2)、式(4)からアクチュエータに流す電流i0を検出すれば、質量体302の加速度を近似的に求めることができる。
5.従来のサーボ型加速度センサの具体構造
図28は、従来の静電容量式加速度センサの具体構造例[特許文献(3)]を示す正面断面図であり、図27で示した基本構成と検出原理により構成されている。11は永久磁石、12はポールピース部、13はポールピース凸部、14は永久磁石側ヨーク材、15はコイル側ヨーク材、16aはフォースコイル、16bは検定コイル、17はコイルボビン、18,19は非磁性でかつ非導伝性材料によるコイルボビン支持部材、20はフロント側ディスク状ばね、21はリアー側ディスク状ばね、22はフロント側ディスク状ばね20とコイル側ヨーク材15のフロント側連結部材、23はリアー側ディスク状ばね21とコイル側ヨーク材15のリアー側連結部材である。
図28は、従来の静電容量式加速度センサの具体構造例[特許文献(3)]を示す正面断面図であり、図27で示した基本構成と検出原理により構成されている。11は永久磁石、12はポールピース部、13はポールピース凸部、14は永久磁石側ヨーク材、15はコイル側ヨーク材、16aはフォースコイル、16bは検定コイル、17はコイルボビン、18,19は非磁性でかつ非導伝性材料によるコイルボビン支持部材、20はフロント側ディスク状ばね、21はリアー側ディスク状ばね、22はフロント側ディスク状ばね20とコイル側ヨーク材15のフロント側連結部材、23はリアー側ディスク状ばね21とコイル側ヨーク材15のリアー側連結部材である。
24は可動側電極、25は固定側電極、26はフロント側パネル、27は中央プレート、28は固定側電極25とフロント側パネル26の締結部材である。
ポールピース部12の外周部とコイル側ヨーク材15の内周部間は半径方向の磁気空隙部29が形成されている。29aは永久磁石側空隙部、29bはヨーク材側空隙部である。「永久磁石11→ポールピース部12→磁気空隙部29→コイル側ヨーク材15→永久磁石側ヨーク材14」により、閉ループ磁気回路を形成している。磁気空隙部29の空間に配置されたフォースコイル16aに電流が流れると、可動側電極24を軸方向に移動させるローレンツ力が発生する。30は、可動側電極24と固定側電極25で形成される空隙部である。空隙部30の間隙の大きさで静電容量Cが決まるため、静電容量Cを計測することにより、地動絶対変位Uと質量体の絶対変位Xの差である相対変位U-Xを検出できる。サーボ回路は、変位検出器31、増幅器32、ドライバー33から構成される。増幅器32、ドライバー33は、記相対変位信号U-Xを利得KPで増幅する変位増幅器である。相対変位u-xが零になるように、比例ゲイン定数KPの増幅器により、アクチュエータの電流i0が制御される。フォースコイル16aに流す電流i0を検出すれば、前述したように、可動部に作用する加速度を求めることができる。
サーボ型加速度センサをアクティブ除振台に適用する場合、次の3つの条件を同時に満足させる必要がある。
(1) 共振周波数が充分に高く、かつ共振ピーク値が小さい
(2) 応答性の向上(共振点以下の周波数域における位相遅れの低減)
(3) 高いセンサ感度を得る
(1) 共振周波数が充分に高く、かつ共振ピーク値が小さい
(2) 応答性の向上(共振点以下の周波数域における位相遅れの低減)
(3) 高いセンサ感度を得る
アクティブ除振台の制御対象となる空気圧アクチュエータ等のパッシブ系要素機器の共振周波数は、通常はf0 =4~6Hzである。このパッシブ系要素を制御するためには、アクティブ除振台の制御範囲は0~50Hzは必要である。この制御範囲で充分な制御性能を得るためには、制御対象となる空気圧アクチュエータ以外の制御要素(加速度センサー、サーボバルブ)に高い応答性が必要とされる。多くの経験値をベースとした評価指標として、加速度センサのf=100Hzにおける位相遅れ(応答性)は、Δθ≦10degの実現が理想とされていた。
上記(1)において、加速度センサに高い共振周波数f0が要求される理由は、共振周波数f0 が高い程、上記(2)の評価指標である共振点以下の周波数域における位相遅れを小さくできるからである。但し、サーボ型加速度センサの共振周波数は、可動部の質量mとアクチュエータに復元力を与えるサーボ剛性Kにより、次式で決定される。
サーボ剛性Kは制御ゲインに比例する。この制御ゲインの大きさは質量mと剛性Kによる2次遅れ要素に加えて、コイルのインダクダンスなどの遅れ要素により制約される。そのため、サーボ型加速度センサの共振周波数は通常f0 =350~500Hzが限界とされていた。
上記(1) において、加速度センサの共振周波数f0の範囲(f0 =350~500Hz)が大きく変えられないという前提で評価すれば、共振点における共振ピーク値をできるだけ小さくするのが望ましい。その理由は、共振ピーク値が小さい程、制御系の安定裕度を決めるゲイン余裕を大きくできて、サーボ剛性を決める制御ゲインを大きくとれるからである。減衰が大きい程、この共振ピーク値を小さくできる。しかし、減衰が大きくなると、応答性が低下して、f=100Hzにおける位相遅れを増大させてしまう。したがって、上記(1)(2)は相反する関係(トレードオフの関係)にある。
上記(3)において、高いセンサ感度を得る最も有効な方策は、変位検出器の静電容量を大きく設定することである。よく知られているように、平行して設置された2枚の導体板の面積をA、隙間をd、誘電率をε0、空気の比誘電率をεrとしたとき、静電容量CSは
すなわち、電極間隙間dが狭い程、また電極面積Aが大きい程、静電容量CSは大きく、センサ感度は向上する。センサ感度向上の要請に応えるために、図28で示した従来の静電容量式加速度センサを対象に、電極間隙間dを充分に狭く、たとえば、 d=30→15μmにして、センサ性能を求める実験を行った。この場合、センサ出力は2倍に増加すると見込まれる。しかしこの方策では、サーボ型センサとして正常な動作ができない程、センサ動特性が劣化しまうことが分かった。この理由は次のようである。サーボ型加速度センサの可動部材に加わる減衰力は、次式のダンピング定数(減衰係数)Dに比例する。
前述したように、従来サーボ型加速度センサの場合、センサに要求される条件、すなわち、(1)共振ピークの低減、(2)応答性の向上(位相遅れの低減)、(3)センサ感度向上、上記3つの相反する課題を同時に満足させる狭い範囲で、センサを構成せざるを得なかった。そのため、性能向上には限界があった。これらの3つのトレードオフ関係を解きほぐして、それぞれの課題を分離してクリアする方策はないか・・・というのが、本発明の発想の原点である。静電容量式サーボ型加速度センサの場合、その構造上の特徴から、上記3つの特性を支配する減衰作用が電極間の空隙部に発生する動的流体圧力(スクイーズ圧力)であることに注目した。
しかして、本願第1の発明のサーボ型振動検出器は、固定部材であるハウジングと、このハウジングに対して所定方向に移動可能に設けられた可動部材と、前記ハウジングに対して前記可動部材が空隙部を介して配置されるように支持する弾性部材と、前記可動部材の所定方向の変位を検出する変位検出部と、前記変位検出部で前記可動部材の原点位置からの相対変位が検出された場合に、前記可動部材を原点位置に戻す発生力が生じるようにサーボアンプにより駆動される駆動手段と、前記可動部材に設けられた可動側電極と、前記可動側電極と対向して前記ハウジング側に設けられた固定側電極と、を備え、前記変位検出部が、前記可動側電極と前記固定側電極間の空隙部で形成される静電容量を検出するように構成されており、前記空隙部に発生する動的流体圧力による減衰作用を低減するように、前記可動側電極と前記固定側電極の相対移動面には大気と繋がる流路を有する溝部、又は、穴部が形成されており、振動検出器本体をスイープ加振させたときのセンサ出力の動特性から求まる減衰比をζ0としたとき、0.2≦ζ0≦0.6を満足するように、前記溝部、又は、前記穴部を形成したことを特徴とするものである。
すなわち、本発明は、センサ感度向上を図る方策の不具合は、電極間の狭い隙間に発生する空気粘性流体の動的圧力(スクイーズ圧力)に起因することに着目したものである。このスクイーズ圧力は、電極面に大気と連絡する溝部、あるいは、複数個の穴部を形成することで低減することができる。このスクイーズ圧力の低減が減衰作用を低減させることを利用すれば、電極間隙間を小さく、あるいは、電極外径を大きくすることで、減衰作用を増加させないで、センサ感度向上を図ることができる。但し、加速度センサの共振周波数f0の範囲(f0 =350~500Hz)が大きく変えられないという前提で評価すれば、(1)共振点における共振ピーク値をできるだけ小さする、(2)センサの応答性を高くする、上記(1)(2)を満足するのが望ましい。その理由は、上記2つを満足すれば、制御系の安定裕度を決めるゲイン余裕を大きくできて、サーボ剛性を決める制御ゲインを大きくとれるからである。
したがって、サーボアンプの比例ゲインKP、慣性質量m、減衰係数をCで決まる減衰比ζ0を、多くの経験値をベースとした評価指標として、0.2≦ζ0≦0.6の範囲を満足するように前記溝部、及び、又は、前記穴部を形成すれば、大幅なセンサ感度向上を図ると共に、サーボ型加速度センサに要求される共振ピーク値の上限値に加えて、センサの応答性(位相遅れ)を許容範囲に収めることができる。
本願第2の発明のサーボ型振動検出器は、前記溝部、又は、前記穴部と大気と繋がる前記流路を遮蔽した状態で、振動検出器本体をスイープ加振させたときのセンサ出力の動特性から求まる減衰比をζdとしたとき、ζd>0.6となるように構成したことを特徴とするものである。
すなわち、本発明は、次の条件(1)(2)を同時に満足させる効果を有することを検証するものである。
(1)センサ感度が向上できる電極仕様である。
(2)センサ動特性が許容範囲に収められている。
たとえば、大気と繋がっていた貫通穴を流路遮蔽板により遮蔽する。その結果、前記貫通穴と流路が繋がる溝内部は、大気圧一定の条件を維持できなる。すなわち、電極間隙間に発生する動的流体圧力(スクイーズ圧力)を抑制する作用が無くなるのである。この状態で、センサ本体をスイープ加振させて、センサ出力の動特性(ゲイン・位相特性)を求める。この動特性から得られる減衰比をζdとして、前記流路遮蔽板を装着前の減衰比をζ0と比較する。その結果、センサ動特性は許容範囲を満足せず、ζd>0.6となれば、電極面に形成される大気と繋がる流路を有する溝部、及び、又は穴部は本発明を成立させるのに有効に機能していることが検証される。
(1)センサ感度が向上できる電極仕様である。
(2)センサ動特性が許容範囲に収められている。
たとえば、大気と繋がっていた貫通穴を流路遮蔽板により遮蔽する。その結果、前記貫通穴と流路が繋がる溝内部は、大気圧一定の条件を維持できなる。すなわち、電極間隙間に発生する動的流体圧力(スクイーズ圧力)を抑制する作用が無くなるのである。この状態で、センサ本体をスイープ加振させて、センサ出力の動特性(ゲイン・位相特性)を求める。この動特性から得られる減衰比をζdとして、前記流路遮蔽板を装着前の減衰比をζ0と比較する。その結果、センサ動特性は許容範囲を満足せず、ζd>0.6となれば、電極面に形成される大気と繋がる流路を有する溝部、及び、又は穴部は本発明を成立させるのに有効に機能していることが検証される。
本願第3の発明のサーボ型振動検出器は、前記溝部は前記固定側電極、又は、前記可動側電極の軸心に対して、概略同心円形状、又は、半径方向に概略放射線形状の流通溝であることを特徴とするものである。
すなわち、本発明は、大気と連絡する溝部を前記固定側電極、又は、前記可動側電極の軸芯に対して概略同芯円状、あるいは、半径方向に概略放射線状に形成する。溝幅は狭く、かつ溝深さは、電極間隙間と比べて充分に深く形成することで、各溝部は電極間隙間の大きさに無関係に大気圧を維持できる。
本願第4の発明のサーボ型振動検出器は、前記溝部、又は、前記穴部が表面加工技術によって形成された板状部材が、前記可動側電極と前記固定側電極にボルト、あるいは、接着剤により装着されていることを特徴とするものである。
すなわち、本発明は、薄い板状部材に前記溝部、及び、又は前記穴部をエッチング加工で形成して、かつ前記板状部材を前記可動側電極と前記固定側電極の相対移動面にボルト、あるいは接着剤などにより装着したものである。エッチング工法の適用により、大きな面積の一枚の金属板に、数十枚に接合されたマイクログルーブ付き電極が同時に生産できる。使用時には、個々のプレート単体間の接合部(ブリッジ)を切断すればよい。そのために、量産性に優れて、大幅なコストダウンが図れると共に、減衰性能(減衰係数C)のばらつきを僅少にできる。
本願第5の発明のサーボ型振動検出器は、前記可動側電極と前記固定側電極の相対移動面には、大気と連絡する複数個の細径穴部が開口しており、かつ前記複数個の細径穴部は概略軸対称に配置されていることを特徴とするものである。
すなわち、本発明は、連続した溝形状ではなく、多数個の貫通穴だけを形成することで、スクイーズ圧力の低減を図ったものである。リング溝の本数などではなく、貫通穴の個数nでスクイーズ圧力の低減効果を調節するというのが、本発明のポイントである。貫通穴の配置は、電極に減衰力によるモーメント荷重が加わらないように軸対称である。貫通穴の個数nが多い程、減衰作用(減衰係数)は小さくなり、逆にnが少ない程、減衰作用(減衰係数)は増大する。このnの設定により、減衰係数を微調節できる。
本願第6の発明のサーボ型振動検出器は、固定部材であるハウジングと、このハウジングに対して所定方向に移動可能に設けられた可動部材と、前記ハウジングに対して前記可動部材が空隙部を介して配置されるように支持する弾性部材と、前記可動部材の所定方向の変位を検出する変位検出部と、前記変位検出部で前記可動部材の原点位置からの相対変位が検出された場合に、前記可動部材を原点位置に戻す発生力が生じるようにサーボアンプにより駆動される駆動手段と、前記可動部材に設けられた可動側電極と、前記可動側電極と対向して前記ハウジング側に設けられた固定側電極と、を備え、前記変位検出部が、前記可動側電極と前記固定側電極間の空隙部で形成される静電容量を検出するように構成され、前記可動側電極と前記固定側電極間の空隙部に発生する動的流体圧力による減衰作用を低減するように、前記可動側電極と前記固定側電極の相対移動面に、大気と連絡する不連続形状の溝部が形成されており、前記不連続形状の溝部は、表面加工技術により板状部材を貫通して形成されていることを特徴とするものである。
すなわち、本発明は、貫通エッチング加工により、大きな面積の一枚の金属板に、数十枚に接合されたマイクログルーブ付き電極が同時に生産できる。たとえば、複数本の不連続リング形状溝に加えて、複数本の不連続放射溝を形成できる。「溝が形成されない箇所」と「溝」を繋ぐ流路は十分に狭くてよい。一枚のプレートが溝の形成によって分断されなければよいのである。そのため、各溝間の流路の粘性流体抵抗は充分に小さくできる。たとえば、前記不連続リング形状溝は、機械加工で形成した円周溝と比べて、「疑似的な円周溝」と考えてよい。かつ、各溝内の圧力は大気と連絡する貫通穴により大気圧に保たれているため、充分に大きな減衰作用の低減効果が得られる。
本願第7の発明のサーボ型振動検出器は、前記可動側電極よりも外径が大きい前記板状部材がその外周部で前記固定側電極に取り付けられており、前記不連続形状の溝部と大気を連絡する穴部が前記固定側電極、もしくは、前記可動側電極に形成されていることを特徴とするものである。
すなわち、本発明は、前記板状部材(固定側電極プレート)の外径は可動側電極のそれよりも大きめに形成した。そのため、前記前記板状部材は固定側電極ベースと前記外周部で接着固定されている。前記外周部には不連続溝を形成しないため、接着固定には支障をきたさない。また、この前記外周部の空間を利用してボルト締結も可能である。
本願第8の発明のサーボ型振動検出器は、前記板状部材の外周部は前記固定側電極に取り付けられており、前記不連続形状の溝部が形成された箇所は大気に対して解放されていることを特徴とするものである。
すなわち、本発明は、前記固定側電極プレートに形成された各不連続溝部(マイクログルーブ)は、前記可動電極側の反対側で大気に直接開放されている。そのため、前述した実施形態で示したような溝部と大気を繋ぐための貫通穴は不要である。溝部と大気を繋ぐ貫通穴で電極を構成した場合、溝部に沿って空気が流れるための粘性流体抵抗Rmが充分に小さくなるように溝幅hGを設定せねばならなかった。
溝幅hGが広い程、また、溝本数が多い程、静電容量の有効面積が低下する。各溝部が背面で大気に開放される本発明では、粘性流体抵抗Rm=0にできる。その結果、各溝幅hGを充分に狭くできるために、マイクログルーブ形成による静電容量の影響を充分に小さくできる。
本願第9の発明のサーボ型振動検出器は、サーボ型振動検出器の前記可動部材の質量をm、前記サーボアンプの比例ゲインをKP、前記mと前記KPで決まる共振周波数をfn、前記板状部材の外周部を固定したときの1次の共振周波数をfPとして、fP>f0を満足するように前記不連続形状の溝部が形成されていることを特徴とするものである。
すなわち、本発明は、センサ動特性(ゲイン・位相特性)への影響を回避できる不連続溝形状の条件を与えるものである。たとえば、前記板状部材にリング形状と十文字形状に不連続溝を形成した場合を想定する。前記2つの不連続溝間の間隙が狭くなると前記板状部材の軸方向剛性は低下するため、外周部を固定支持された前記板状部材の共振周波数fPは低下する。但し、不連続溝間の間隙が狭い程、スクイーズ圧力の低減効果は向上する。前記可動部材の質量mと前記サーボアンプの比例ゲインKPで決まる共振周波数をfnとして、fP>f0を満足すれば、不連続溝はセンサ動特性に影響を与えない。
本願第10の発明のサーボ型振動検出器は、固定部材であるハウジングと、このハウジングに対して所定方向に移動可能に設けられた可動部材と、前記ハウジングに対して前記可動部材が空隙部を介して配置されるように支持する弾性部材と、前記可動部材の所定方向の変位を検出する変位検出部と、前記変位検出部で前記可動部材の原点位置からの相対変位が検出された場合に、前記可動部材を原点位置に戻す発生力が生じるようにサーボアンプにより駆動される駆動手段と、前記可動部材に設けられた可動側電極と、前記可動側電極と対向して前記ハウジング側に設けられた固定側電極と、を備え、前記変位検出部が、前記可動側電極と前記固定側電極間の空隙部で形成される静電容量を検出するように構成されており、前記可動側電極と前記固定側電極間の空隙部に発生する動的流体圧力による減衰作用を低減するように、前記可動側電極と前記固定側電極の相対移動面には、大気と連絡する溝部が形成されており、前記溝部は板状部材の表裏にハーフエッチング加工で概略対称形状に形成されており、前記板状部材の一方の面をボルト、あるいは接着剤で電極面に装着して、前記板状部材に対向するもう一方の電極面は大気と連絡する穴部が形成されていることを特徴とするものである。
すなわち、本発明は、両面ハーフエッチングによる微細溝加工で前記板状部材の表裏にマイクログルーブを形成したものである。その効果として
(1)大きなスクイーズ圧力による減衰作用に対して、その減衰作用を抑制できる最適なマイクログルーブが形成できる。
(2)両面ハーフエッチングにより、板状部材の反りを解消できる。
(3)マイクログルーブを形成した板状部材は、可動側電極ベースに接着固定される。この構成により、流体溝内に接着剤が流入して、接着強度が大幅に増加できる。
(1)大きなスクイーズ圧力による減衰作用に対して、その減衰作用を抑制できる最適なマイクログルーブが形成できる。
(2)両面ハーフエッチングにより、板状部材の反りを解消できる。
(3)マイクログルーブを形成した板状部材は、可動側電極ベースに接着固定される。この構成により、流体溝内に接着剤が流入して、接着強度が大幅に増加できる。
本願第11の発明のサーボ型振動検出器は、固定部材であるハウジングと、このハウジングに対して所定方向に移動可能に設けられた可動部材と、前記ハウジングに対して前記可動部材が空隙部を介して配置されるように支持する弾性部材と、前記可動部材の所定方向の変位を検出する変位検出部と、前記変位検出部で前記可動部材の原点位置からの相対変位が検出された場合に、前記可動部材を原点位置に戻す発生力が生じるようにサーボアンプにより駆動される駆動手段と、前記可動部材に設けられた可動側電極と、前記可動側電極と対向して前記ハウジング側に設けられた固定側電極と、前記変位検出部が、前記可動側電極と前記固定側電極間の空隙部で形成される静電容量を検出するように構成されており、前記可動側電極と前記固定側電極の相対移動面において、この相対移動面のいずれかは非導電性材料で構成されており、この非導電性材料面の上に円周方向に分割して固定された複数個の電極面と、これらの電極面間の境界部に形成された概略放射線状の流通溝と、この流通溝は前記可動側電極と前記固定側電極間の空隙部に発生する動的流体圧力による減衰作用の低減と電極面間の電気的絶縁を兼ねて形成されており、前記複数個の電極面と対向する電極面により複数組の独立した静電容量型変位検出器を構成したことを特徴とするものである。
すなわち、本発明は、2つの電極面のいずれかの面にスクイーズ圧力を低減する放射状の溝を円周方向で分割して形成する。かつこの放射状の溝は分割された電極面間の電気的絶縁を兼ねている。すなわち、本発明によりセンサ動特性(ゲイン・位相特性)の向上を図ると共に、複数個の独立した変位・速度・加速度信号を検出するマルチ電極方式のサーボ型振動検出器が実現できる。
本願第12の発明のサーボ型振動検出器の組立方法は、本願第11の発明のサーボ型振動検出器において、前記複数組の前記静電容量型変位検出器の信号を基に前記相対移動面の空隙部の傾斜角を測定して、この測定により傾斜を補正する組立方法を示すものである。
すなわち、本発明は、たとえば、放射状の溝を円周方向で4分割して軸対称に形成する。この場合、180度離れた電極面の2つの変位信号から、前記可動側電極と前記固定側電極の空隙部の傾斜角を計測できる。この傾斜角Δθ→0になるように、前記可動側電極に対する前記固定側電極の傾きを補正することができる。
本願第13の発明のサーボ型振動検出器は、前記固定部材側に固定されたコイルと、前記固定部材に対して空隙部を介して配置された前記可動部材と、前記空隙部に磁束が流れるように配置された永久磁石と、前記可動部材は前記永久磁石、及び、この永久磁石と磁路を繋ぐ可動側ヨーク材、あるいはこの可動側ヨーク材だけで構成されており、前記可動部材、前記空隙部、前記固定部材、前記永久磁石で閉ループ磁気回路を形成することで、前記可動部材を軸方向に移動させる電磁気力による前記駆動手段を構成していることを特徴とする。
本願第14の発明のサーボ型振動検出器は、前記固定部材側に固定されたコイルと、前記空隙部に磁束が流れるように配置された永久磁石と、をさらに備え、前記可動部材は、前記永久磁石、及び、この永久磁石と磁路を繋ぐ可動側ヨーク材、あるいはこの可動側ヨーク材だけで構成されており、前記可動部材、前記空隙部、前記固定部材、前記永久磁石で閉ループ磁気回路を形成することで、前記可動部材を軸方向に移動させる電磁気力による前記駆動手段を構成していることを特徴とする。
本発明のサーボ型振動検出器によれば、サーボアンプの比例ゲインKP、慣性質量m、減衰係数をCで決まる減衰比ζ0を、多くの経験値をベースとした評価指標として、0.2≦ζ0≦0.6の範囲を満足するように前記溝部、及び、又は、前記穴部を形成しているので、大幅なセンサ感度向上を図ると共に、サーボ型加速度センサに要求される共振ピーク値の上限値に加えて、センサの応答性(位相遅れ)を許容範囲に収めることができる。
[第1実施形態]
[1] 本実施形態の具体構造(以下、MC型原形)
図1は、本発明の実施形態1に係るサーボ型加速度センサの一例を示すもので、図1(a)は図1(b)のDD矢視図、図1(b)はセンサ本体の正面断面図である。図1(b)における鎖線AB部は可動部を軸方向に駆動するムービング・コイル型(MC型)のアクチュータ部である。鎖線BB部は静電容量を検出する変位検出部を示す。また、鎖線CC部はアクチュータを駆動するサーボアンプが内蔵された制御回路部の概要である。前述したように、MC型のアクチュータ部は公知の構造である。以下、本実施形態の具体構造を、アクチュエータ部、変位検出部、制御回路部に分けて説明する。
[1] 本実施形態の具体構造(以下、MC型原形)
図1は、本発明の実施形態1に係るサーボ型加速度センサの一例を示すもので、図1(a)は図1(b)のDD矢視図、図1(b)はセンサ本体の正面断面図である。図1(b)における鎖線AB部は可動部を軸方向に駆動するムービング・コイル型(MC型)のアクチュータ部である。鎖線BB部は静電容量を検出する変位検出部を示す。また、鎖線CC部はアクチュータを駆動するサーボアンプが内蔵された制御回路部の概要である。前述したように、MC型のアクチュータ部は公知の構造である。以下、本実施形態の具体構造を、アクチュエータ部、変位検出部、制御回路部に分けて説明する。
[2-1] アクチュータ部
図1(b)におけるアクチュータ部(2点鎖線AB部)において、201は永久磁石、202はポールピース部、203はポールピース凸部、204は永久磁石側ヨーク材、205はコイル側ヨーク材、206aはフォースコイル、206bは検定コイル、207はコイルボビン、208,209は非磁性でかつ非導伝性材料によるコイルボビン支持部材、210はフロント側ディスク状ばね、211はリアー側ディスク状ばね、212は前記フロント側ディスク状ばねと前記コイル側ヨーク材のフロント側連結部材、213は前記リアー側ディスク状ばねと前記コイル側ヨーク材のリアー側連結部材、214は可動側電極、215は可動側電極とフロント側ディスク状ばね210の接合部である。
図1(b)におけるアクチュータ部(2点鎖線AB部)において、201は永久磁石、202はポールピース部、203はポールピース凸部、204は永久磁石側ヨーク材、205はコイル側ヨーク材、206aはフォースコイル、206bは検定コイル、207はコイルボビン、208,209は非磁性でかつ非導伝性材料によるコイルボビン支持部材、210はフロント側ディスク状ばね、211はリアー側ディスク状ばね、212は前記フロント側ディスク状ばねと前記コイル側ヨーク材のフロント側連結部材、213は前記リアー側ディスク状ばねと前記コイル側ヨーク材のリアー側連結部材、214は可動側電極、215は可動側電極とフロント側ディスク状ばね210の接合部である。
ポールピース部202の外周部とコイル側ヨーク材205の内周部間は半径方向の磁気空隙部216が形成されている。216aは永久磁石側空隙部、216bはヨーク材側空隙部である。「永久磁石201→ポールピース部202→磁気空隙部216→コイル側ヨーク材205→永久磁石側ヨーク材204」により、閉ループ磁気回路BMを形成している。磁気空隙部216の空間に配置されたフォースコイル206aに電流が流れると、可動側電極214を軸方向に移動させるローレンツ力が発生する。
[2-2] 変位検出部
図1(b)における変位検出部(2点鎖線BB部)において、217は固定側電極、218は絶縁リング、219は固定リングである。固定側電極217は前記絶縁リングを介在して、前記固定リングに対して矜持される。218はコイル側ヨーク材205に対して、固定リング219を固定するための接着剤塗布部である。220は前記固定側電極と前記可動側電極間の空隙部である。組立調整段階で、空隙部220の隙間dが目標値になるように、コイル側ヨーク材205に対する固定リング219の位置が調整される。
図1(b)における変位検出部(2点鎖線BB部)において、217は固定側電極、218は絶縁リング、219は固定リングである。固定側電極217は前記絶縁リングを介在して、前記固定リングに対して矜持される。218はコイル側ヨーク材205に対して、固定リング219を固定するための接着剤塗布部である。220は前記固定側電極と前記可動側電極間の空隙部である。組立調整段階で、空隙部220の隙間dが目標値になるように、コイル側ヨーク材205に対する固定リング219の位置が調整される。
可動側電極214に対する固定側電極217の対向面には、リング形状溝と貫通穴が形成されている。221は中心貫通穴、223は第1リング形状溝、224は第2リング形状溝である。2つの電極間の空隙部220の間隙h0が変化するとき、空気の粘性による動的圧力(スクイーズ圧力)が発生する。前記第1リング形状溝、前記第2リング形状溝は、このスクイーズ圧力を低減するために形成されるものである。以下、スクイーズ圧力を低減するために電極面に形成する溝(前記第1・第リング形状溝)を総称して、マイクログルーブと呼ぶことにする。223a、223b、223c、223dは第1リング形状溝223内部に形成された貫通穴である。224a、224b、224c、224dは第2リング形状溝224内部に形成された貫通穴である。225は大気に開放された凹部である。前記マイクログルーブの溝深さは、想定される電極間隙間h(10~50μm)と比べて、充分に深く形成しため、各溝部は電極間隙間hの大きさに無関係に大気圧を維持できる。その結果、広い面積を有する電極面は独立した複数個の電極面に分割される。中心貫通穴221と第1リング形状溝223間の電極面を第1電極217a、第1リング形状溝223と第2リング形状溝224間の電極面を第2電極217b、第2リング形状溝224と固定側電極217の外周部間の電極面を第3電極217cと呼ぶことにする。上記3つの独立した電極面217a、217b、217cは、たとえば、平板上に3つのリング形状部材を装着するなどの方法で構成してもよい。
本実施形態では、前記第1リング形状溝、前記第2リング形状溝の溝幅はhG =0.1mm、各溝には大気と連絡する4個の貫通穴を形成した。中心貫通穴ΦD1=0.8mm、電極外径をΦD2=13mmである。半径r1=2.0mmの位置に第1リング形状溝223の内周側、半径r2=4.5mmの位置に第2リング形状溝224の内周側が形成されている。第1と第2リング形状溝223.224の溝総面積はSm=6.15mm2、上記2つの溝が無い場合の電極面積はST=132mm2である。したがって、前記リング形状溝223.224の面積が電極総面積に占める比率は4.66%である。要約すれば、リング形状溝による静電容量の低下分は5%弱程度である。そのため、電極外径を僅かに大きく、実施形態の場合はΦD2=13mm→13.2mmにすれば静電容量の低下分を補うことができる。
[2-3] 制御回路部
図1(b)における2点鎖線CC 部は、制御回路部の概要を示すもので、226は変位検出器、227は増幅器である。可動側電極214と固定側電極217で形成される空隙部220の間隙で静電容量Cが決まるため、静電容量Cを計測することにより、地動絶対変位Uと質量体の絶対変位Xの差である相対変位を検出できる。相対変位U-Xが零になるように、増幅器227を経て、アクチュエータの電流i0が制御される。フォースコイル206aに流す電流i0を検出すれば、可動部に作用する加速度を求めることができる。
図1(b)における2点鎖線CC 部は、制御回路部の概要を示すもので、226は変位検出器、227は増幅器である。可動側電極214と固定側電極217で形成される空隙部220の間隙で静電容量Cが決まるため、静電容量Cを計測することにより、地動絶対変位Uと質量体の絶対変位Xの差である相対変位を検出できる。相対変位U-Xが零になるように、増幅器227を経て、アクチュエータの電流i0が制御される。フォースコイル206aに流す電流i0を検出すれば、可動部に作用する加速度を求めることができる。
[3] 理論解析
以下、本実施形態の効果を検証するために、次の3ケースについて理論解析を行う。
(i)従来加速度センサの電極構造を維持して、電極間隙間h0=30μmに設定する。
(ii)上記従来電極構造を変えないで、センサ感度向上のために、電極間隙間を上記1/2、すなわち、h0=15μmに設定する。
(iii)電極面にマイクログルーブを形成して、電極間隙間h0=15μmに設定する。
表1に、本理論解析の対象となるサーボ型加速度センサ具体仕様(上記3ケース)を示す。また図8に制御ブロック図を示す。
以下、本実施形態の効果を検証するために、次の3ケースについて理論解析を行う。
(i)従来加速度センサの電極構造を維持して、電極間隙間h0=30μmに設定する。
(ii)上記従来電極構造を変えないで、センサ感度向上のために、電極間隙間を上記1/2、すなわち、h0=15μmに設定する。
(iii)電極面にマイクログルーブを形成して、電極間隙間h0=15μmに設定する。
表1に、本理論解析の対象となるサーボ型加速度センサ具体仕様(上記3ケース)を示す。また図8に制御ブロック図を示す。
[3-1] 変位検出部の粘性流体解析
対向して配置された平面間の狭い隙間(電極間隙間)に、粘性流体(空気)が介在し、かつその隙間の間隙が時間と共に急峻に変化する場合、空気の粘性による動的流体圧力(スクイーズ圧力)が発生する。このスクイーズ圧力が、静電式加速度センサとしての機能に与える影響を、下記Reynolds方程式を解くことにより解明する。
対向して配置された平面間の狭い隙間(電極間隙間)に、粘性流体(空気)が介在し、かつその隙間の間隙が時間と共に急峻に変化する場合、空気の粘性による動的流体圧力(スクイーズ圧力)が発生する。このスクイーズ圧力が、静電式加速度センサとしての機能に与える影響を、下記Reynolds方程式を解くことにより解明する。
(1)正弦波入力波形の仮定
図2は、電極間隙間に与える入力波形である。電極間隙間が正弦波で振動する場合を仮定する。図2のグラフは、振動中心値をh0=0.015mm、振動振幅Δh=0.001mm、周波数f=200Hzの場合を示す。
図2は、電極間隙間に与える入力波形である。電極間隙間が正弦波で振動する場合を仮定する。図2のグラフは、振動中心値をh0=0.015mm、振動振幅Δh=0.001mm、周波数f=200Hzの場合を示す。
(2)スクイーズ圧力の半径方向分布
図3は、電極の半径方向位置に対する最大荷重発生時のスクイーズ圧力を示すもので、以下の3ケースを比較している。
(i)従来式:電極間隙間h0=30μm
(ii)従来式:電極間隙間h0=15μm
(iii)本発明:電極面にマイクログルーブを形成して、電極間隙間h0=15μm
数値解析の境界条件は、中心貫通穴外周部r=0.4mm、電極外周部r=6.5mmの位置で、圧力(ゲージ圧)は大気圧P=0である。従来式の場合、r=2.5mmの位置で、スクイーズ圧力は最大値を示しPmax=47.0Paである。
図3は、電極の半径方向位置に対する最大荷重発生時のスクイーズ圧力を示すもので、以下の3ケースを比較している。
(i)従来式:電極間隙間h0=30μm
(ii)従来式:電極間隙間h0=15μm
(iii)本発明:電極面にマイクログルーブを形成して、電極間隙間h0=15μm
数値解析の境界条件は、中心貫通穴外周部r=0.4mm、電極外周部r=6.5mmの位置で、圧力(ゲージ圧)は大気圧P=0である。従来式の場合、r=2.5mmの位置で、スクイーズ圧力は最大値を示しPmax=47.0Paである。
従来式で電極間隙間h0 =30μmとh0 =15μmを比較する。電極間隙間h0 =30μm(鎖線)の場合、r=3.0mmの位置で、スクイーズ圧力は最大値を示しPmax=27.5Paである。電極間隙間h0 =15μm(一点鎖線)の場合、スクイーズ圧力は、同位置において、Pmax=275Paに増大する。
マイクログルーブを形成した本発明(実線)の場合、第1リング形状溝223が形成された箇所(半径r1=2.0mm)、及び、第2リング形状溝224が形成された箇所(半径r2=4.5mm)の箇所で、圧力は大気圧P=0となる。両者を比較すれば明らかなように、マイクログルーブの形成により、電極間隙間h0 =15μmであるにも関わらず、発生圧力は大幅に低下する。
(3)発生荷重の正弦波応答
図4は、電極に加わる発生荷重の正弦波応答を求めたものである。従来式で電極間隙間h0 =30μm(2点鎖線)とh0 =15μm(1点鎖線)を比較する。電極間隙間h0 =30μmをh0 =15μmに狭くすると、発生荷重の最大値は概略8倍となる。この場合、減衰係数はC=3.85Ns/mからC=31.8Ns/mに増大する。マイクログルーブを形成した本発明(実線:h0 =15μm)は、従来式で電極間隙間(2点鎖線:h0 =30μm)と同レベルの波形になる。
図4は、電極に加わる発生荷重の正弦波応答を求めたものである。従来式で電極間隙間h0 =30μm(2点鎖線)とh0 =15μm(1点鎖線)を比較する。電極間隙間h0 =30μmをh0 =15μmに狭くすると、発生荷重の最大値は概略8倍となる。この場合、減衰係数はC=3.85Ns/mからC=31.8Ns/mに増大する。マイクログルーブを形成した本発明(実線:h0 =15μm)は、従来式で電極間隙間(2点鎖線:h0 =30μm)と同レベルの波形になる。
[3-2] センサ動特性解析
(1)アクチュエータの応答性
図5、図6は、アクチュエータの応答性を、前述した(i)~(iii)の条件について、インデシャル応答により比較したグラフである。電極間隙間h0 が応答性に与える影響を評価するために、サーボ型センサのアクチュエータはスクイーズ・ダンパーを有する2次遅れ要素と仮定する。加速度センサの具体仕様を表1に示す。
(1)アクチュエータの応答性
図5、図6は、アクチュエータの応答性を、前述した(i)~(iii)の条件について、インデシャル応答により比較したグラフである。電極間隙間h0 が応答性に与える影響を評価するために、サーボ型センサのアクチュエータはスクイーズ・ダンパーを有する2次遅れ要素と仮定する。加速度センサの具体仕様を表1に示す。
図5は、いずれも従来式の電極構造で、電極間隙間h0 =30μm(実線)とh0 =15μm(1点鎖線)を比較したものである。アクチュエータが目標値の90% 到達時間を、立ち上がり時間(Rise time)Tr と定義する。センサ感度を向上させるために、電極間隙間 h0=30→15μmに狭くした場合[上記(ii)]、応答性は大幅に低下して、立ち上がり時間は12倍(Tr =0.97→11.5ms)長くなる。
図6は、従来式(1点鎖線:h0 =30μm)と本発明(実線:h0 =15μm)を比較したものである。両者の応答性に大きな差は見られない。上記結果から、マイクログルーブを形成した本発明センサ[上記(iii)]は、センサ感度を2倍に向上したにも関わらず、応答性は同レベルを維持できることが分かる。
但し、図5、図6で示したグラフは、実際のサーボ型加速度センサの過渡応答特性とは異なる。サーボ型加速度センサにおいては、加速度が衝撃的に加わった場合、電極間隙間hは、設定値(目標値)h0 に対する偏差(ε=h0-h)→0になるように制御される。図5、図6で示したグラフは、減衰の大きさがアクチュエータの応答性に与える影響の度合いを相対評価したものである。
(2)ゲイン・位相特性
図7は、電極を前述した(i)~(iii)の条件で構成した場合について、サーボ型センサのゲイン・位相特性を比較したグラフである。制御ブロック図を図8に示す。
(i)従来式:電極間隙間h0=30μm
(ii)従来式:電極間隙間h0=15μm
(iii)本発明:電極面にマイクログルーブを形成して、電極間隙間h0=15μm
図7は、電極を前述した(i)~(iii)の条件で構成した場合について、サーボ型センサのゲイン・位相特性を比較したグラフである。制御ブロック図を図8に示す。
(i)従来式:電極間隙間h0=30μm
(ii)従来式:電極間隙間h0=15μm
(iii)本発明:電極面にマイクログルーブを形成して、電極間隙間h0=15μm
上記(i)(iii)を比較すると、両者のゲイン・位相特性に大きな差は見られない。
上記(ii)の場合、共振点におけるゲインは、-20dB近傍まで低下する。またf=100Hzにおける位相遅れΔθ=14.5→64.7dBまで低下する。ゆえに、従来式の電極構造のままで、センサ感度向上を図った場合、あきらかにオーバーダンピングでありアクティブ除振台には適用不可である。
上記(ii)の場合、共振点におけるゲインは、-20dB近傍まで低下する。またf=100Hzにおける位相遅れΔθ=14.5→64.7dBまで低下する。ゆえに、従来式の電極構造のままで、センサ感度向上を図った場合、あきらかにオーバーダンピングでありアクティブ除振台には適用不可である。
以上、要約すれば、電極面にマイクログルーブを形成した本実施形態においては、センサのゲイン・位相特性、応答性を維持したままで、センサ感度を2倍に向上することができる。
図8の制御ブロック図において、KSはセンサ感度ゲイン、KPEは電気的比例ゲイン、KCは調整ゲイン、Raはコイル抵抗、Ktはアクチュエータの力定数である。ここで、比例ゲインKPを次のように定義する。
[4] 本発明の数値限定
以下、本発明の特性と効果を、従来センサと対比の基で総括的に評価するために、周波数fの軸を無次元して、減衰係数C、慣性質量m、比例ゲインKPを、代表物理量である減衰比ζに置き換えて整理する。図8の制御ブロック図において、KSはセンサ感度ゲイン、KPEは電気的比例ゲイン、KCは調整ゲイン、Raはコイル抵抗、Ktはアクチュエータの力定数である。ここで、比例ゲインKPを次のように定義する。
以下、本発明の特性と効果を、従来センサと対比の基で総括的に評価するために、周波数fの軸を無次元して、減衰係数C、慣性質量m、比例ゲインKPを、代表物理量である減衰比ζに置き換えて整理する。図8の制御ブロック図において、KSはセンサ感度ゲイン、KPEは電気的比例ゲイン、KCは調整ゲイン、Raはコイル抵抗、Ktはアクチュエータの力定数である。ここで、比例ゲインKPを次のように定義する。
加速度入力Λに対するセンサ出力Zの伝達関数G(=Z/Λ)は
ここで、機械的ばね剛性をkとする。通常はKP≫kであるため、共振周波数ωnは次式に近似できる。
減衰比ζは次式となる。
上式において、機械的ばね剛性をkの値が無視できない場合は、KP+k→KPとして、比例ゲインKPを定義すればよい。以下、周波数軸を無次元化した場合について、ゲイン・位相特性を求めた結果を図9に示す。図10は、図9において、0.1<ω/ωn<0.3の範囲に限定したゲイン・位相特性を示す。上記グラフから、サーボ型加速度センサに要求される下記条件について評価する。すなわち、
(1)共振点におけるピーク値は10 dB以下
(2)ω/ωn=0.2における位相遅れΔθは15deg以下
上記(1)(2)の条件を満足するζの範囲を求める。上記(2)における評価指標は次の仮定で設定した。サーボ型加速度センサの共振周波数の上限値をfn=500Hzとしたとき、f=100Hz、すなわち、ω/ωn=0.2における位相遅れを評価指標とする。実際のサーボ型加速度センサの実現可能な共振周波数は、前述したように、fn=500Hz以下のため上記(2)は理想のセンサ動特性を満足させるための十分条件となる。
(1)共振点におけるピーク値は10 dB以下
(2)ω/ωn=0.2における位相遅れΔθは15deg以下
上記(1)(2)の条件を満足するζの範囲を求める。上記(2)における評価指標は次の仮定で設定した。サーボ型加速度センサの共振周波数の上限値をfn=500Hzとしたとき、f=100Hz、すなわち、ω/ωn=0.2における位相遅れを評価指標とする。実際のサーボ型加速度センサの実現可能な共振周波数は、前述したように、fn=500Hz以下のため上記(2)は理想のセンサ動特性を満足させるための十分条件となる。
上記(1)を満足させるζの条件は、図10のグラフから下式となる。
上記(2)の位相遅れの条件を満足させるζの条件は次のようである。図10のグラフから、ω/ωn=0.2における位相遅れが15deg以下の条件は
式(7)において、m= KP/ω2
nとすれば、ζ= Cωn/2 KPとして評価してもよい。揺動運動式センサのように、質量mが容易に求められない場合には、上式を用いればよい。
[追記]
可動部に働く減衰作用は、電極間隙間の空気粘性に依存する機械的減衰だけではない。サーボアンプに減衰回路を設ければ、前記機械的減衰に減衰回路による電気的減衰が加わることになる。また、加速度センサには、前記機械的減衰と前記電気的減衰以外にも減衰要素が存在する。たとえば、図1(b)において、コイルボビン207に導体(アルミ)を用いた場合は、渦電流による減衰が発生する。しかし、渦電流による減衰は他の減衰と比べて充分に小さく、通常は無視できる値である場合が多い。ここで、前記機械的減衰で決まる減衰係数をCM、前記電気的減衰で決まる減衰係数をCE、たとえば渦電流に依存する減衰係数をCMEとして、本発明を評価する減衰係数C= CM+ CE+CMEとして定義する。したがって、式(13)における減衰比ζは、上記定義による減衰係数Cを用いるものとする。
可動部に働く減衰作用は、電極間隙間の空気粘性に依存する機械的減衰だけではない。サーボアンプに減衰回路を設ければ、前記機械的減衰に減衰回路による電気的減衰が加わることになる。また、加速度センサには、前記機械的減衰と前記電気的減衰以外にも減衰要素が存在する。たとえば、図1(b)において、コイルボビン207に導体(アルミ)を用いた場合は、渦電流による減衰が発生する。しかし、渦電流による減衰は他の減衰と比べて充分に小さく、通常は無視できる値である場合が多い。ここで、前記機械的減衰で決まる減衰係数をCM、前記電気的減衰で決まる減衰係数をCE、たとえば渦電流に依存する減衰係数をCMEとして、本発明を評価する減衰係数C= CM+ CE+CMEとして定義する。したがって、式(13)における減衰比ζは、上記定義による減衰係数Cを用いるものとする。
[5] 本発明の検証方法
本発明は次の条件(1)(2)を同時に満足させる効果を有する。センサ本体を解体しないで、この効果を検証する方法を提案する。
(1)センサ感度が向上できる電極仕様である。
センサ感度向上を図るためには、(i)電極間隙間を狭くする、(ii)電極外径を大きくする、上記(i)(ii)の方策が必須である。但し、いずれの方策も減衰を増大させる。
(2)センサ動特性が許容範囲に収められている。
上記(1)の方策が施されているにも関わらず、電極の相対移動面に形成された大気と繋がる流路を有する溝部、及び、又は穴部により、センサ動特性は許容範囲(0.2≦ζ0≦0.6)を満足している。
本発明は次の条件(1)(2)を同時に満足させる効果を有する。センサ本体を解体しないで、この効果を検証する方法を提案する。
(1)センサ感度が向上できる電極仕様である。
センサ感度向上を図るためには、(i)電極間隙間を狭くする、(ii)電極外径を大きくする、上記(i)(ii)の方策が必須である。但し、いずれの方策も減衰を増大させる。
(2)センサ動特性が許容範囲に収められている。
上記(1)の方策が施されているにも関わらず、電極の相対移動面に形成された大気と繋がる流路を有する溝部、及び、又は穴部により、センサ動特性は許容範囲(0.2≦ζ0≦0.6)を満足している。
[5-1] 本発明検証の具体的方法
図1(b)において、228は流路遮蔽板(想像線で示す)ある。この流路遮蔽板を固定側電極217の可動側電極214と反対側の面に、図中の矢印に示すように装着する。
図1(b)において、228は流路遮蔽板(想像線で示す)ある。この流路遮蔽板を固定側電極217の可動側電極214と反対側の面に、図中の矢印に示すように装着する。
その結果、大気と繋がっていた貫通穴223a~223d、及び、貫通穴224a~224dは密閉状態となる。また、前記貫通穴と流路が繋がる第1リング形状溝223と第2リング形状溝224の溝内部は、大気圧一定の条件を維持できなる。すなわち、電極間隙間に発生する動的流体圧力(スクイーズ圧力)を抑制する作用が無くなるのである。この状態で、センサ本体をスイープ加振させて、センサ出力の動特性(ゲイン・位相特性)を求める。この動特性から得られる減衰比をζdとして、前記流路遮蔽板を装着前の減衰比をζ0と比較する。
その結果、センサ動特性は許容範囲を満足せず、ζd>0.6となれば、電極面に形成される大気と繋がる流路を有する溝部、及び、又は穴部は本発明を成立させるのに有効に機能していることが検証される。
[5-2] 減衰比の定義
アクチュエータ部が発生する発生力は、前記可動部材の加速度と慣性質量で決まる慣性力と、前記可動部材の速度と減衰係数で決まる減衰力と、前記可動部材の変位と前記弾性部材の剛性で決まる復元力と力学的に平衡している。前記発生力を生じる前記サーボアンプの比例ゲインをKP、前記慣性質量をm、前記減衰係数をCとしたとき、減衰比ζ= C/2 (m KP)0.5である。
アクチュエータ部が発生する発生力は、前記可動部材の加速度と慣性質量で決まる慣性力と、前記可動部材の速度と減衰係数で決まる減衰力と、前記可動部材の変位と前記弾性部材の剛性で決まる復元力と力学的に平衡している。前記発生力を生じる前記サーボアンプの比例ゲインをKP、前記慣性質量をm、前記減衰係数をCとしたとき、減衰比ζ= C/2 (m KP)0.5である。
電極面に形成される溝部、及び、又は穴部の効果を無くする方法は、前記流路遮蔽板に限定されない。たとえば、前記穴223a~223d、及び、貫通穴224a~224dの開口部を着脱可能な止めネジなどで封止してもよい。本節で説明した本発明の検証方法は後述する全ての実施形態に適用できる。
[第2実施形態] エッチング加工の弱点解消(その1) 不連続溝の貫通加工
図11は、本発明の実施形態2に係るサーボ型加速度センサの一例を示すもので、図11(a)は図11(b)のAA矢視図、図11(b)はセンサ本体の正面断面図である。図12は固定側電極プレート単体の形状を示す図である。
図11は、本発明の実施形態2に係るサーボ型加速度センサの一例を示すもので、図11(a)は図11(b)のAA矢視図、図11(b)はセンサ本体の正面断面図である。図12は固定側電極プレート単体の形状を示す図である。
図11(b)における鎖線AA部は可動部を軸方向に駆動するムービング・マグネット型(MM型)のアクチュータ部である。鎖線BB部は静電容量を検出する変位検出部を示す。本発明は、電極に形成するマイクログルーブにエッチング工法を用いることで、(i)最適な減衰性能が得られる溝形状の形成、(ii)量産性の大幅向上、上記(i)(ii)を同時に実現させたものである。また、本実施形態におけるMM式サーボ型加速度センサは本発明者らによって出願中のもので、そのアクチュエータ部にさらに改良を施したものである。以下、本実施形態の具体構造を、アクチュエータ部、変位検出部に分けて説明する。
[1-1] アクチュータ部
801は軸方向に着磁された永久磁石、802aはフロント側ポールピース部、802bはリアー側ポールピース部、803はコイル側ヨーク材、804はコイルボビン、805はこのコイルボビンと前記コイル側ヨーク材の締結ボルト、806aはフロント側コイル、806bはリアー側コイルである。前記フロント側コイルと前記リアー側コイルに働くローレンツ力が同一方向になるように、各コイルの巻線方向が設定されている。807aと807bは、フロント側とリアー側ポールピース部802a、802bの中心部に形成された空隙部である。808aはフロント側磁気空隙部、808bはリアー側磁気空隙部であり、それぞれ前記2つのポールピース部と前記コイル側ヨーク材間の半径方向の空隙を示す。「永久磁石801→フロント側ポールピース部802a→フロント側磁気空隙部808a→コイル側ヨーク材803→リアー側磁気空隙部808b→永久磁石801」により閉ループ磁気回路BMを形成している。809aは前記ポールピース部のフロント側内周支持部材、809bはリアー側内周支持部材、810aはフロント側ディスク、810bはリアー側ディスクである。811は可動側電極である。812は可動側電極811と内周支持部材809aの締結ボルトである。813aと813bは2つのディスク810a、810bとコイル側ヨーク材803を外周側で締結するボルトである。
801は軸方向に着磁された永久磁石、802aはフロント側ポールピース部、802bはリアー側ポールピース部、803はコイル側ヨーク材、804はコイルボビン、805はこのコイルボビンと前記コイル側ヨーク材の締結ボルト、806aはフロント側コイル、806bはリアー側コイルである。前記フロント側コイルと前記リアー側コイルに働くローレンツ力が同一方向になるように、各コイルの巻線方向が設定されている。807aと807bは、フロント側とリアー側ポールピース部802a、802bの中心部に形成された空隙部である。808aはフロント側磁気空隙部、808bはリアー側磁気空隙部であり、それぞれ前記2つのポールピース部と前記コイル側ヨーク材間の半径方向の空隙を示す。「永久磁石801→フロント側ポールピース部802a→フロント側磁気空隙部808a→コイル側ヨーク材803→リアー側磁気空隙部808b→永久磁石801」により閉ループ磁気回路BMを形成している。809aは前記ポールピース部のフロント側内周支持部材、809bはリアー側内周支持部材、810aはフロント側ディスク、810bはリアー側ディスクである。811は可動側電極である。812は可動側電極811と内周支持部材809aの締結ボルトである。813aと813bは2つのディスク810a、810bとコイル側ヨーク材803を外周側で締結するボルトである。
本実施例の可動部は、永久磁石801、ポールピース部802a、802b、及び、可動側電極811から構成される。固定部は各コイルが収納されたコイルボビン804、コイル側ヨーク材803から構成される。
本実施形態の加速度センサでは、上記可動部の駆動手段は、既提案中のムービング・マグネット式を用いている。良く知られているように、磁界中に置かれた導体に電流が流れると、電磁力であるLorentz力が発生する。あらゆるアクチュータは、その駆動原理の種類に関わらず、固定側と移動側の力関係は相対的である。すなわち、固定側と移動側のいずれか一方を固定すれば、もう一方が移動する。本実施例では、コイルボビン804に収納されたフォースコイル806a、806bに電流が流れると、可動部を軸方向に移動させるLorentz力の反力が発生する。
[1-2] 変位検出部
図11(b)における変位検出部(鎖線BB部)において、814は固定側電極ベース、815は固定側電極プレートである。この固定側電極プレートは固定側電極ベース814と外周部816で接着固定されている。817は絶縁リング、818は固定リングである。固定側電極ベース814は前記絶縁リングを介在して、前記固定リングに対して矜持される。819はコイル側ヨーク材803に対して、固定リング818を固定するための接着剤塗布部である。
図11(b)における変位検出部(鎖線BB部)において、814は固定側電極ベース、815は固定側電極プレートである。この固定側電極プレートは固定側電極ベース814と外周部816で接着固定されている。817は絶縁リング、818は固定リングである。固定側電極ベース814は前記絶縁リングを介在して、前記固定リングに対して矜持される。819はコイル側ヨーク材803に対して、固定リング818を固定するための接着剤塗布部である。
本実施形態では、前記固定側電極プレートの外径は可動側電極811のそれよりも大きめに形成した。そのため、前記固定側電極プレートは固定側電極ベース814と外周部816で接着固定されている。外周部816には不連続溝を形成しないため、接着固定には支障をきたさない。後述するように、この外周部816を利用してボルト締結も可能である。
(1)固定側電極プレートのエッチング加工
固定側電極プレート815には、2列の不連続リング形状溝と中心貫通穴、及び、4本の不連続放射溝が、前記固定側電極プレートに貫通エッチング加工により形成されている。図12に、前記固定側電極プレートだけの形状を示す。820は中心貫通穴、821a、821b、821c、821dは円周方向に4等分された不連続第1リング形状溝である。822a、822b、822c、822dは、同様に円周方向に4等分された不連続第2リング形状溝である。さらに前記固定側電極プレートには、上記2列の不連続リング形状溝に加えて、4本の不連続放射溝が形成されている。823aは不連続第1放射溝、823bは不連続第2放射溝、823cは不連続第3放射溝、823dは不連続第4放射溝である。
固定側電極プレート815には、2列の不連続リング形状溝と中心貫通穴、及び、4本の不連続放射溝が、前記固定側電極プレートに貫通エッチング加工により形成されている。図12に、前記固定側電極プレートだけの形状を示す。820は中心貫通穴、821a、821b、821c、821dは円周方向に4等分された不連続第1リング形状溝である。822a、822b、822c、822dは、同様に円周方向に4等分された不連続第2リング形状溝である。さらに前記固定側電極プレートには、上記2列の不連続リング形状溝に加えて、4本の不連続放射溝が形成されている。823aは不連続第1放射溝、823bは不連続第2放射溝、823cは不連続第3放射溝、823dは不連続第4放射溝である。
本実施形態の電極面において、不連続円周溝と不連続放射溝の両方でマイクログルーブを形成したのは、センサ感度を向上させるために電極間隙間を狭くしたときの減衰作用の増加を低減させるためである。センサ感度を向上させるために電極外径を大きくした場合も同様な方法で対応できる。
(2)固定側電極ベースの穴加工
固定側電極プレート815に形成された2列の前記不連続リング形状溝、及び、4本の前記不連続放射溝において、上記溝内圧力を大気圧にするための貫通穴が固定側電極ベース814に形成されている。たとえば、824a、824bは前記不連続第2放射溝用貫通穴、824c、824dは前記不連続第4放射溝用貫通穴である。これらの貫通穴は溝幅よりも大き目に形成されている。その他の溝と連絡する貫通穴も同様である(詳細説明は省略)。
固定側電極プレート815に形成された2列の前記不連続リング形状溝、及び、4本の前記不連続放射溝において、上記溝内圧力を大気圧にするための貫通穴が固定側電極ベース814に形成されている。たとえば、824a、824bは前記不連続第2放射溝用貫通穴、824c、824dは前記不連続第4放射溝用貫通穴である。これらの貫通穴は溝幅よりも大き目に形成されている。その他の溝と連絡する貫通穴も同様である(詳細説明は省略)。
第1実施形態では、図1(a)で示したように、機械加工により固定側電極217に連続したリング形状溝と貫通穴を形成した。本実施形態では、貫通エッチング加工により、薄いプレートである固定側電極プレート815に、前記不連続リング形状溝と前記不連続放射溝を形成した。これらの不連続溝と大気圧と連絡する前記貫通穴は固定側電極ベース814に形成した。そのため、これらの不連続溝は常時、大気圧を保つことができる。本発明により、次の効果が得られる。
(1)最適な減衰性能が得られる溝形状を形成できる。
たとえば、高いセンサ感度を得るために、電極外径をより大きく、電極間隙間をより狭くした場合、スクイーズ圧力による減衰はさらに増加する。この減衰を低減するためには、第1実施形態で示したようなリング形状溝(図1(a))だけではなく、たとえば、放射形状の溝も必要となる。静電容量の低下分を極力減らすために、たとえば、溝幅hG =0.1mm程度で形成する場合を想定する。機械加工の場合、旋盤加工の適用は難しく、リング形状溝と放射形状溝は共に、生産コストの高いエンドミル加工となる。しかし本発明では、エッチング加工によりマイクログルーブを形成しているために、溝の本数と形状の選択は生産コストに影響を与えない。
たとえば、高いセンサ感度を得るために、電極外径をより大きく、電極間隙間をより狭くした場合、スクイーズ圧力による減衰はさらに増加する。この減衰を低減するためには、第1実施形態で示したようなリング形状溝(図1(a))だけではなく、たとえば、放射形状の溝も必要となる。静電容量の低下分を極力減らすために、たとえば、溝幅hG =0.1mm程度で形成する場合を想定する。機械加工の場合、旋盤加工の適用は難しく、リング形状溝と放射形状溝は共に、生産コストの高いエンドミル加工となる。しかし本発明では、エッチング加工によりマイクログルーブを形成しているために、溝の本数と形状の選択は生産コストに影響を与えない。
さらに、本発明では必要とする減衰性能(減衰係数C)を、多くの選択肢から選ぶことができる。第1実施形態で説明したように、電極外径と電極間隙間が定まったとき、最適なゲイン・位相特性を得る減衰性能(減衰係数C)の許容される幅は極めて狭い。その理由は、前述したように、センサ動特性である(i)共振ピーク値、(ii)位相遅れ、及び、(iii)センサ感度、上記3つがトレードオフの関係にあるからである。減衰が大きすぎれば、オーバーダンピングとなり、上記(ii)の位相遅れが増大する。減衰が不足すれば、上記(i)の共振ピーク値が増大する。さらに、上記(iii)のセンサ感度を考慮したとき、減衰性能(減衰係数Cの値)の許容される幅は極めて狭い。所定の条件下で、所定の減衰係数Cを得るためのマイクログルーブの形状は、前述した粘性流体解析により、高精度に予測可能である。エッチングのパターンは、機械加工のような制約がなく、任意の形状を選択できる。したがって、本発明によりベストな減衰性能を有するマイクログルーブ付き電極をローコストで実現できる。
(2)量産性に優れる
貫通エッチング加工により、大きな面積の一枚の金属板に、数十枚に接合されたマイクログルーブ付き電極(図12の固定側電極プレート)が同時に生産できる。使用時には、個々のプレート単体間の接合部(ブリッジ)を切断すればよい。そのために、量産性に優れて、大幅なコストダウンが図れると共に、減衰性能(減衰係数C)のばらつきを僅少にできる。
貫通エッチング加工により、大きな面積の一枚の金属板に、数十枚に接合されたマイクログルーブ付き電極(図12の固定側電極プレート)が同時に生産できる。使用時には、個々のプレート単体間の接合部(ブリッジ)を切断すればよい。そのために、量産性に優れて、大幅なコストダウンが図れると共に、減衰性能(減衰係数C)のばらつきを僅少にできる。
本実施形態では、2列の前記不連続リング形状溝に加えて、4本の前記不連続放射溝を形成した。本実施形態では、「溝が形成されない箇所」と「溝」を繋ぐ流路は充分に狭くできる。たとえば、図12に示すように、第1リング形状溝822aの左端(A)と第2放射溝823b(B)間の距離は充分に狭くできる。一枚のプレートが溝の形成によって分断されなければ、実用上は支障が無く、各溝間の流路[(A)~(B)間]の粘性流体抵抗は小さくできる。したがって、本実施形態の前記不連続リング形状溝は、第1実施形態で示した円周溝と比べて、「疑似的な円周溝」と考えてよい。かつ、各溝内の圧力は大気と連絡する貫通穴により大気圧に保たれているため、充分に大きな減衰作用の低減効果が得られる。また逆に減衰作用が大きすぎる場合は、不連続溝間の距離、たとえば、前記(A)と前記(B)間の距離を大きく形成することで、減衰作用を調節できる。
[補足:ボルト締結構造]
図13は、本実施形態の構造を大きく変えないで、前記固定側電極プレートを前記固定側電極ベースにボルト締結したものである。図13(a)は図13(b)のBB矢視図、図13(b)は電極部分だけの正面断面図である。830は締結リング、831は締結ボルトである。固定側電極プレート815aは、締結リング830を介して、締結ボルト831により固定側電極ベース814aに固定される。
図13は、本実施形態の構造を大きく変えないで、前記固定側電極プレートを前記固定側電極ベースにボルト締結したものである。図13(a)は図13(b)のBB矢視図、図13(b)は電極部分だけの正面断面図である。830は締結リング、831は締結ボルトである。固定側電極プレート815aは、締結リング830を介して、締結ボルト831により固定側電極ベース814aに固定される。
[第3実施形態] 貫通エッチング加工した1枚のプレートで固定側電極
図14は、本発明の実施形態3に係るサーボ型加速度センサの一例を示すもので、エッチング加工で溝形成した1枚のプレートだけで、固定側電極を形成したものである。図14(a)は図14(b)のCC矢視図、図14(b)は電極部分だけの正面断面図である。
図14は、本発明の実施形態3に係るサーボ型加速度センサの一例を示すもので、エッチング加工で溝形成した1枚のプレートだけで、固定側電極を形成したものである。図14(a)は図14(b)のCC矢視図、図14(b)は電極部分だけの正面断面図である。
850は固定側電極プレート、851は固定側電極ベース、852は絶縁リング、853は固定リング、854はコイル側ヨーク材、855は可動側電極、856aはフロント側ディスクである。また、固定側電極プレート850には、第2実施形態と同様に、不連続第1リング形状溝(857a~857d)、不連続第2リング形状溝(858a~858d)、不連続放射溝(859a~859d)が形成されている。前記固定側電極プレートは前記固定側電極ベースに接着部860で接着固定される。
本実施形態では、前記固定側電極プレートに形成された各不連続溝部(マイクログルーブ)は、前記可動電極側の反対側で大気に直接開放されている。そのため、前述した実施形態で示したような溝部と大気を繋ぐための貫通穴は不要である。溝部と大気を繋ぐ貫通穴で電極を構成した場合、溝部に沿って空気が流れるための粘性流体抵抗Rmが充分に小さくなるように溝幅hGを設定せねなならなかった。溝幅hGが広い程、また、溝本数が多い程、静電容量の有効面積が低下する。各溝部が背面で大気に開放される本実施形態では、粘性流体抵抗Rm=0にできる。その結果、各溝幅hGを充分に狭くできるために、マイクログルーブ形成による静電容量の影響を充分に小さくできる。但し、不連続溝の形状は次の条件を満足する必要がある。
(i) 不連続溝の形成によって、前記固定側電極プレートが変形・分断しない強度を保つ。
(ii) 前記固定側電極プレート単体の外周部を固定したときの1次の共振周波数をfPとする。加速度センサ全体の可動部質量mとサーボアンプの比例ゲインKPで決まる共振周波数をfnとしたとき、fP>fnに設定する。
(i) 不連続溝の形成によって、前記固定側電極プレートが変形・分断しない強度を保つ。
(ii) 前記固定側電極プレート単体の外周部を固定したときの1次の共振周波数をfPとする。加速度センサ全体の可動部質量mとサーボアンプの比例ゲインKPで決まる共振周波数をfnとしたとき、fP>fnに設定する。
前述したように、サーボ型加速度センサの共振周波数は通常fn=350~500Hzを限界として設定されている。上記(ii)を満足するように、不連続溝の形状を選定すれば、センサ動特性(ゲイン・位相特性)への影響を回避できる。
[補足]
図14(b)において、861は固定側電極ベース851の開口部に装着したエアーフィルター(想像線)である。このエアーフィルターはゴミ、塵埃などが電極間隙間へ侵入するのを防止して、電極間隙間を常時クリーンな状態を維持するために装着するものである。前記エアーフィルターの装着効果は、本発明のすべての実施形態に適用できる。またエアーフィルターの装着箇所は前記固定側電極ベースに限定されない。
図14(b)において、861は固定側電極ベース851の開口部に装着したエアーフィルター(想像線)である。このエアーフィルターはゴミ、塵埃などが電極間隙間へ侵入するのを防止して、電極間隙間を常時クリーンな状態を維持するために装着するものである。前記エアーフィルターの装着効果は、本発明のすべての実施形態に適用できる。またエアーフィルターの装着箇所は前記固定側電極ベースに限定されない。
[第4実施形態] 両面ハーフエッチングで微細溝加工
図15は、本発明の実施形態4に係るサーボ型加速度センサの一例を示すもので、両面ハーフエッチングによる微細溝加工でプレート面にマイクログルーブを形成したものである。図15(a)は図15(c)のAA矢視図、図15(b)は図15(c)のBB矢視図、図15(c)はセンサ本体の電極部だけの正面断面図である。図16は前記プレート単体の形状を示すもので、図16(a)は前記プレートの正面図、図16(b)は側面図、図16(c)は図16(a)の裏面である。
図15は、本発明の実施形態4に係るサーボ型加速度センサの一例を示すもので、両面ハーフエッチングによる微細溝加工でプレート面にマイクログルーブを形成したものである。図15(a)は図15(c)のAA矢視図、図15(b)は図15(c)のBB矢視図、図15(c)はセンサ本体の電極部だけの正面断面図である。図16は前記プレート単体の形状を示すもので、図16(a)は前記プレートの正面図、図16(b)は側面図、図16(c)は図16(a)の裏面である。
951は固定側電極ベース、952は絶縁リング、953は固定リング、954はコイル側ヨーク材、955は可動側電極ベース、956は可動側電極プレート、957aはフロント側ディスクである。958は前記固定側電極ベースに形成された中心貫通穴である。
可動側電極プレート956の表面と裏面には、以下に示す各種溝と中心部の凹部が対称に形成されている。図16(a)は可動側電極プレート956の表面を示す。可動側電極プレート956の前記表面において、第1リング形状溝959、第2リング形状溝960が同芯円状に形成されている。さらに、軸芯を中心に水平方向放射溝961と垂直方向放射溝962の2本の溝が十文字形状に形成されている。963は軸芯部に形成された凹部、964は可動側電極プレート956の外周部である。この凹部963と第1リング形状溝959の間をA区間965A、及び、第1リング形状溝959と第2リング形状溝960の間をB区間965B、第2リング形状溝960と外周部964の間をC区間965Cとする。たとえば、前記A区間には放射溝966a、前記B区間には放射溝966b、前記C区間には放射溝966cなど、多数の放射溝が形成されている。
図15(a)において、固定側電極ベース951には、大気と繋がる貫通穴が形成されている。959aは第1リング形状溝相当円、960aは第2リング形状溝相当円である。この2つの相当円の位置に大気圧と連絡する貫通穴、たとえば、967a、967b、967c、967dなどが形成されている。これらの貫通穴により、第1リング形状溝959と第2リング形状溝960は大気圧を維持できる。これらの貫通穴は、中心貫通穴958も含めてエッチング加工で形成してもよい。図16(c)は前記可動側電極プレートの裏面(細部の図番省略)であり、表面(図15(b)に相当)と同一溝形状が形成されている。この裏面は、可動側電極ベース955に接着剤により固定される。
両面ハーフエッチングによる微細溝加工でプレート面にマイクログルーブを形成した本実施例は次に示す効果(1)~(3)が得られる。
(1)最適な溝形状を選択できる。前述した貫通エッチング工法と異なり、微細で複雑な連続溝を形成できる。そのため、より大きなスクイーズ圧力による減衰作用に対して、その減衰作用を抑制できる最適なマイクログルーブが形成できる。
(2)基板の反りを解消できる。片面ハーフエッチングの場合、図17(b)に示すように、基板が薄くなると剛性が低下し、残留応力による反りが発生する。両面ハーフエッチングを適用した本実施形態では、基板(可動側電極プレート956)の反りを解消できた。図17は可動側電極プレート968に片面ハーフエッチングと貫通穴により、マイクログルーブを形成した場合を示し、図17(a)は可動側電極プレート968の正面図、図17(b)は側面図、図17(c)は裏面図である。
(3)接着強度UPが図れる。両面ハーフエッチングによりマイクログルーブを形成した可動側電極プレート956の裏面(図16(c))は、可動側電極ベースに接着固定される。この構成により、可動側電極プレート956の流体溝内に接着剤が流入して、接着強度が大幅に増加できることが分かった。
(1)最適な溝形状を選択できる。前述した貫通エッチング工法と異なり、微細で複雑な連続溝を形成できる。そのため、より大きなスクイーズ圧力による減衰作用に対して、その減衰作用を抑制できる最適なマイクログルーブが形成できる。
(2)基板の反りを解消できる。片面ハーフエッチングの場合、図17(b)に示すように、基板が薄くなると剛性が低下し、残留応力による反りが発生する。両面ハーフエッチングを適用した本実施形態では、基板(可動側電極プレート956)の反りを解消できた。図17は可動側電極プレート968に片面ハーフエッチングと貫通穴により、マイクログルーブを形成した場合を示し、図17(a)は可動側電極プレート968の正面図、図17(b)は側面図、図17(c)は裏面図である。
(3)接着強度UPが図れる。両面ハーフエッチングによりマイクログルーブを形成した可動側電極プレート956の裏面(図16(c))は、可動側電極ベースに接着固定される。この構成により、可動側電極プレート956の流体溝内に接着剤が流入して、接着強度が大幅に増加できることが分かった。
[第5実施形態] 電極面に多数(n個)の細径穴を形成、個数nで減衰作用を微調節
図18は、本発明の実施形態5に係るサーボ型加速度センサの一例を示すもので、図18(a)は図18(b)のAA矢視図、図18(b)は加速度センサの正面断面図である。
図18は、本発明の実施形態5に係るサーボ型加速度センサの一例を示すもので、図18(a)は図18(b)のAA矢視図、図18(b)は加速度センサの正面断面図である。
前述した実施形態では、空気粘性流体の動的圧力を低減するために、電極面にリング形状溝、あるいは、十文字形状の放射溝を形成した場合を示した。本実施形態では連続した溝形状ではなく、多数個の貫通穴だけを形成することで、スクイーズ圧力の低減を図ったものである。リング溝の本数などではなく、貫通穴の個数nでスクイーズ圧力の低減効果を調節するというのが、本実施形態のポイントである。貫通穴の配置は、電極に減衰力によるモーメント荷重が加わらないように軸対称である。貫通穴の個数nが多い程、減衰作用(減衰係数)は小さくなり、逆にnが少ない程、減衰作用(減衰係数)は増大する。このnの設定により、減衰係数を微調節できる。
図18(a)において、751は薄いディスクで構成された固定側電極であり、752は中心貫通穴である。本実施形態では、固定側電極751に個数n=52の貫通穴753が形成されている。図18(b)において、754は内周側固定リング、755は絶縁リング、756は外周側固定リング、757は可動側電極である。内周側固定リング754の前記可動側電極の対向面にディスク形状の固定側電極751が固定されている。前記貫通穴の総面積をΔSとしたとき、電極総面積SAからこのΔSを除く面積が、静電容量センサとしての有効面積SEとなる。前記可動側電極の厚みを薄くすれば、前記貫通穴の穴径は充分に小さくて良い。電極外径をΦ13mmとしたとき、電極総面積SA=133mm2である。貫通穴径Φ0.1mmの場合は、前記貫通穴の個数をn=52個として、総面積をΔS=0.41mm2である。静電容量センサとしての有効面積SE=132.6mm2であり、静電容量の低下率は0.3%でしかない。貫通穴径Φ0.3mmの場合は、ΔS=3.67mm2であり、静電容量の低下率は2.76%である。いずれの場合も、静電容量の低下率は無視できる値である。
[第6実施形態] マルチ電極構造により電極の傾斜計測
図19は、本発明の実施形態6に係るサーボ型加速度センサの一例を示すもので、独立した複数電極を電極面に装着することにより、各電極の静電容量から電極間隙間と傾斜角を計測可能にしたものである。図19(a)はセンサ本体の正面図、図19(b)は正面断面図である。図19(b)における鎖線AA部は可動部を軸方向に駆動するムービング・マグネット型(MM式)のアクチュータ部である。鎖線BB部は静電容量を検出する変位検出部を示す。
図19は、本発明の実施形態6に係るサーボ型加速度センサの一例を示すもので、独立した複数電極を電極面に装着することにより、各電極の静電容量から電極間隙間と傾斜角を計測可能にしたものである。図19(a)はセンサ本体の正面図、図19(b)は正面断面図である。図19(b)における鎖線AA部は可動部を軸方向に駆動するムービング・マグネット型(MM式)のアクチュータ部である。鎖線BB部は静電容量を検出する変位検出部を示す。
[1-1] アクチュータ部の構成
図19(b)におけるアクチュータ部(2点鎖線AA部)において、101はフロント側永久磁石、102はリアー側永久磁石、103はポールピース部(可動側ヨーク材)である。前記フロント側永久磁石、前記リアー側永久磁石共に半径方向に着磁した複数のセグメント型永久磁石より構成されて、ポールピース部103に装着されている。フロント側永久磁石101とはリアー側永久磁石102の半径方向の着磁方向は逆である。104と105はポールピース部103を軽量化するために、前記ポールピース部の左右に形成された円筒形状の空隙部である。106はフロント側ディスク、107はリアー側ディスク、108は前記フロント側ディスクによって支持された可動側電極、109はコイル側ヨーク材、110はコイルボビン、111aはフロント側フォースコイル、111bはフロント側検定コイル、112aはリアー側フォースコイル、112bはリアー側検定コイル、113はコイルボビン締結ボルト(想像線で示す)である。
図19(b)におけるアクチュータ部(2点鎖線AA部)において、101はフロント側永久磁石、102はリアー側永久磁石、103はポールピース部(可動側ヨーク材)である。前記フロント側永久磁石、前記リアー側永久磁石共に半径方向に着磁した複数のセグメント型永久磁石より構成されて、ポールピース部103に装着されている。フロント側永久磁石101とはリアー側永久磁石102の半径方向の着磁方向は逆である。104と105はポールピース部103を軽量化するために、前記ポールピース部の左右に形成された円筒形状の空隙部である。106はフロント側ディスク、107はリアー側ディスク、108は前記フロント側ディスクによって支持された可動側電極、109はコイル側ヨーク材、110はコイルボビン、111aはフロント側フォースコイル、111bはフロント側検定コイル、112aはリアー側フォースコイル、112bはリアー側検定コイル、113はコイルボビン締結ボルト(想像線で示す)である。
114はコイルボビン110の内周面と2つの永久磁石の間に形成される磁気空隙部であり、114aはフロント側磁気空隙部、114bはリアー側磁気空隙部である。「リアー側永久磁石102→リアー側磁気空隙部114b→コイル側ヨーク材109→フロント側磁気空隙部114a→永久磁石101→ポールピース部103→リアー側永久磁石102」により、鎖線の矢印で示すように、閉ループ磁気回路BMを形成している。フロント側ディスク106は、可動部の支持と静電容量を検出する導通路を兼ねている。可動側電極108と固定側電極(後述)間の微小な静電容量信号を検出するために、可動側電極108と外部を繋ぐ導通路は、完全な電気的絶縁が図られている。すなわち、フロント側ディスク106は外周リング115を介在して、ボルト116によりコイル側ヨーク材109に締結される。外周リング115は非導電性材料で構成されており、フロント側ディスク106と外周リング115は接着剤によって、予め固定されている。またフロント側ディスク106に形成したボルト用穴径をボルト径よりも大きくすることで、ボルト116とフロント側ディスク106は電気的に絶縁されている。可動側電極108はフロント側ディスク106と接合部117で接着固定される。また可動側電極108の中心部は、非導電性材料118を介して、前記ポールピース部端面と接着固定されている。前記ポールピース部、及び、前記コイル側ヨーク材には渦電流が発生するが、この電気的絶縁対策(非導電性材料115、118)によって、2つの電極間(可動側、及び、固定側)の静電容量信号はこの渦電流の影響を回避できる。非導電性材料としては、無機固体絶縁材料であるマイカ(雲母)、磁器(セラミックス)、ガラス、ポリイミド(エンジニアリング・プラスティック)などが適用できる。2つのフォースコイル111a、112aと検定コイル111b、112bに流れる電流を制御するために、これらのコイルの引き出し線は、コイル側ヨーク材109を貫通して外部に設置された制御回路と繋がっている(図示せず)。
本実施例の可動部は、2つの永久磁石101と102、ポールピース部103、及び、可動側電極108から構成される。固定部は各コイルが収納されたコイルボビン110、コイル側ヨーク材109から構成される。
[1-2] 変位検出部の構成
図19(b)における変位検出部(鎖線BB部)において、119は固定側電極ベース、120は固定側電極プレートである。固定側電極ベース119は非電導性材料(セラミック材)で構成されている。前記固定側電極プレートは前記固定側電極ベースと接着固定されている。121は絶縁リング、122は固定リングである。前記固定側電極ベースは前記絶縁リングを介在して、前記固定リングに対して矜持される。123はコイル側ヨーク材109に対して、固定リング121を固定するための接着剤塗布部である。
図19(b)における変位検出部(鎖線BB部)において、119は固定側電極ベース、120は固定側電極プレートである。固定側電極ベース119は非電導性材料(セラミック材)で構成されている。前記固定側電極プレートは前記固定側電極ベースと接着固定されている。121は絶縁リング、122は固定リングである。前記固定側電極ベースは前記絶縁リングを介在して、前記固定リングに対して矜持される。123はコイル側ヨーク材109に対して、固定リング121を固定するための接着剤塗布部である。
図20は固定側電極ベース119に固定側電極プレート120が装着された状態を示すもので、図20(a)は側面断面図、図20(b)は正面図である。固定側電極プレート120は4つの独立した電極で構成されている。図20(b)において、120Aは固定電極A、120Bは固定電極B、120Cは固定電極C、120Dは固定電極Dである。124aは固定電極Aと固定電極B間の溝部、124bは固定電極Bと固定電極C間の溝部、124cは固定電極Cと固定電極D間の溝部、124dは固定電極Bと固定電極A間の溝部である。前記各溝部は、(1)電極間の電気的絶縁、(2)空気粘性流体のスクイーズ圧力低減、上記(1)(2)の効果を兼ねている。125は前記固定側電極プレートに形成された中心貫通穴、126は固定側電極ベース119に形成された中心貫通穴である。127a~127hは前記各固定電極の外周部に形成された8個の流通穴である。これらの流通穴を収納するように、前記各固定電極の外周部に円周溝128が形成されている。
図20(a)において、129Aと129Cは前記固定電極A、と前記固定電極Cの静電容量を検出するための信号線である。130Aと130Cは前記信号線を引き出すための貫通穴である。前記固定電極B、と前記固定電極Dにも同様な信号線と貫通穴が形成されている(図示せず)。
[2] エッチング工法による固定側電極プレートの製作
以下、図21~図24により、前記固定側電極プレートをエッチング工法で量産製作した実施例を示す。
以下、図21~図24により、前記固定側電極プレートをエッチング工法で量産製作した実施例を示す。
図21は、Step1の「エッチング加工による量産加工」を示すもので、大きな面積の一枚の金属板に、前記固定側電極プレートを含むエッチング加工部品が数十枚に接合された状態を示す。131はリング形状部、132はこのリング形状部と他のリング形状部(図示せず)を繋ぐブリッジ(接合部)A、133はリング形状部131と固定電極120Aを繋ぐブリッジBである。図22は、Step2の「電極の一個分を切り取り」した状態を示すもので、各リング形状部間の前記ブリッジAの4個分を切り離した状態を示す。図23は、Step3の「セラミック板に電極を貼り付け」した状態を示すものである。Step2の工程で切り離されたリング形状部を含む前記固定側電極プレートは、非電導性材料(セラミック材)である前記固定側電極ベースに接着固定される。
図24は、Step4の「不要箇所を切断除去」した状態を示すものである。リング形状部131と固定電極120A、120B、120C、120D、を繋ぐ4箇所の前記ブリッジBを切断することで、リング形状部131は各固定電極から切り離される。
[3] 電極間の隙間と傾斜角の計測
図25はマルチ電極が組み込まれた本発明センサで、電極間の隙間と傾斜角の計測方法を示すモデル図である。図22に図示するX軸、Y軸に対して、図面中心方向にZ軸を定義する。さらに、Z軸を軸芯とした回転方向のZΘ軸、及び、Y軸を軸芯とした回転方向のYΘ軸を定義する。この場合、上記ZΘ、YΘの値が電極間隙間傾斜角となる。本実施形態では、上記ZΘ、YΘの値を求めるために、円周方向に4組の独立した電極を配置した。
図25はマルチ電極が組み込まれた本発明センサで、電極間の隙間と傾斜角の計測方法を示すモデル図である。図22に図示するX軸、Y軸に対して、図面中心方向にZ軸を定義する。さらに、Z軸を軸芯とした回転方向のZΘ軸、及び、Y軸を軸芯とした回転方向のYΘ軸を定義する。この場合、上記ZΘ、YΘの値が電極間隙間傾斜角となる。本実施形態では、上記ZΘ、YΘの値を求めるために、円周方向に4組の独立した電極を配置した。
たとえば、前記固定電極Aと前記固定電極Cと対向する可動側電極108間の静電容量をそれぞれ計測すれば、電極間隙間のZΘ軸方向の傾斜角が求められる。同様にYΘ軸方向の傾斜角を求める。次の工程では、ZΘとYΘの値→0となるように、かつ静電容量が目標値になるように、固定側電極ベース119の傾斜角とX軸方向位置を調整すればよい(調整治具などは記載せず)。従来加速度センサの量産組立工程において、電極間隙間の絶対値、及び、隙間の傾斜角は、高倍率カメラなどの光学的手段で、2つの電極の外表面から電極間のスリット(隙間)を観測する以外は無かった。しかし、スリットの幅:d=20~30μmが隙間調整手段である光学的方法の実用上の計測限界であった。この電極間隙間調整の難しさが、サーボ型加速度センサの感度向上を阻む重要な課題であり、また量産時における歩留まりと信頼性を低下させる主要因となっていた。
本発明のセンサ構造と工法の適用により、電極間隙間の絶対値と許容される傾斜角を目標値に充分に漸近させることができる。たとえば、電極外径を同一のままで、隙間だけを狭くすることで静電容量を増大できて、センサ感度を向上できる。センサ構造と工法は量産性に優れたエッチング加工が適用できるため、各電極の信号線を引き出す作業だけでよく、大きなコストアップにはならない。また、センサ動作中の可動部の挙動は、各固定電極の静電容量(隙間)の変化をリアルタイムで観測することができるために、可動部の動力学的安定性を向上させる方策を練るのに有効である。
204 固定部材
210、211 弾性部材
214 可動側電極
217 固定側電極
223 溝部
224a~224d 穴部
210、211 弾性部材
214 可動側電極
217 固定側電極
223 溝部
224a~224d 穴部
Claims (14)
- 固定部材であるハウジングと、
このハウジングに対して所定方向に移動可能に設けられた可動部材と、
前記ハウジングに対して前記可動部材が空隙部を介して配置されるように支持する弾性部材と、
前記可動部材の所定方向の変位を検出する変位検出部と、
前記変位検出部で前記可動部材の原点位置からの相対変位が検出された場合に、前記可動部材を原点位置に戻す発生力が生じるようにサーボアンプにより駆動される駆動手段と、
前記可動部材に設けられた可動側電極と、
前記可動側電極と対向して前記ハウジング側に設けられた固定側電極と、を備え、
前記変位検出部が、前記可動側電極と前記固定側電極間の空隙部で形成される静電容量を検出するように構成されており、
前記空隙部に発生する動的流体圧力による減衰作用を低減するように、前記可動側電極と前記固定側電極の相対移動面には大気と繋がる流路を有する溝部、又は、穴部が形成されており、
振動検出器本体をスイープ加振させたときのセンサ出力の動特性から求まる減衰比をζ0としたとき、0.2≦ζ0≦0.6を満足するように、前記溝部、又は、前記穴部を形成したことを特徴とするサーボ型振動検出器。 - 前記溝部、又は、前記穴部と大気と繋がる前記流路を遮蔽した状態で、振動検出器本体をスイープ加振させたときのセンサ出力の動特性から求まる減衰比をζdとしたとき、ζd>0.6となるように構成したことを特徴とする請求項1記載のサーボ型振動検出器。
- 前記溝部は前記固定側電極、又は、前記可動側電極の軸心に対して、概略同心円形状、又は、半径方向に概略放射線形状の流通溝であることを特徴とする請求項1記載のサーボ型振動検出器。
- 前記溝部、又は、前記穴部が表面加工技術によって形成された板状部材が、前記可動側電極と前記固定側電極にボルト、あるいは、接着剤により装着されていることを特徴とする請求項1記載のサーボ型振動検出器。
- 前記可動側電極と前記固定側電極の相対移動面には、大気と連絡する複数個の細径穴部が開口しており、かつ前記複数個の細径穴部は概略軸対称に配置されていることを特徴とする請求項1記載のサーボ型振動検出器。
- 固定部材であるハウジングと、
このハウジングに対して所定方向に移動可能に設けられた可動部材と、
前記ハウジングに対して前記可動部材が空隙部を介して配置されるように支持する弾性部材と、
前記可動部材の所定方向の変位を検出する変位検出部と、
前記変位検出部で前記可動部材の原点位置からの相対変位が検出された場合に、
前記可動部材を原点位置に戻す発生力が生じるようにサーボアンプにより駆動される駆動手段と、
前記可動部材に設けられた可動側電極と、
前記可動側電極と対向して前記ハウジング側に設けられた固定側電極と、を備え、
前記変位検出部が、前記可動側電極と前記固定側電極間の空隙部で形成される静電容量を検出するように構成され、
前記可動側電極と前記固定側電極間の空隙部に発生する動的流体圧力による減衰作用を低減するように、前記可動側電極と前記固定側電極の相対移動面に、大気と連絡する不連続形状の溝部が形成されており、
前記不連続形状の溝部は、表面加工技術により板状部材を貫通して形成されていることを特徴とするサーボ型振動検出器。 - 前記可動側電極よりも外径が大きい前記板状部材がその外周部で前記固定側電極に取り付けられており、前記不連続形状の溝部と大気を連絡する穴部が前記固定側電極、もしくは、前記可動側電極に形成されていることを特徴とする請求項6記載のサーボ型振動検出器。
- 前記板状部材の外周部は前記固定側電極に取り付けられており、前記不連続形状の溝部が形成された箇所は大気に対して解放されていることを特徴とする請求項6記載のサーボ型振動検出器。
- サーボ型振動検出器の前記可動部材の質量をm、前記サーボアンプの比例ゲインをKP、前記mと前記KPで決まる共振周波数をfn、前記板状部材の外周部を固定したときの1次の共振周波数をfPとして、fP>f0を満足するように前記不連続形状の溝部が形成されていることを特徴とする請求項8記載のサーボ型振動検出器。
- 固定部材であるハウジングと、
このハウジングに対して所定方向に移動可能に設けられた可動部材と、
前記ハウジングに対して前記可動部材が空隙部を介して配置されるように支持する弾性部材と、
前記可動部材の所定方向の変位を検出する変位検出部と、
前記変位検出部で前記可動部材の原点位置からの相対変位が検出された場合に、
前記可動部材を原点位置に戻す発生力が生じるようにサーボアンプにより駆動される駆動手段と、
前記可動部材に設けられた可動側電極と、
前記可動側電極と対向して前記ハウジング側に設けられた固定側電極と、を備え、
前記変位検出部が、前記可動側電極と前記固定側電極間の空隙部で形成される静電容量を検出するように構成されており、
前記可動側電極と前記固定側電極間の空隙部に発生する動的流体圧力による減衰作用を低減するように、前記可動側電極と前記固定側電極の相対移動面には、大気と連絡する溝部が形成されており、
前記溝部は板状部材の表裏にハーフエッチング加工で概略対称形状に形成されており、前記板状部材の一方の面をボルト、あるいは接着剤で電極面に装着して、前記板状部材に対向するもう一方の電極面は大気と連絡する穴部が形成されていることを特徴とするサーボ型振動検出器。 - 固定部材であるハウジングと、
このハウジングに対して所定方向に移動可能に設けられた可動部材と、
前記ハウジングに対して前記可動部材が空隙部を介して配置されるように支持する弾性部材と、
前記可動部材の所定方向の変位を検出する変位検出部と、
前記変位検出部で前記可動部材の原点位置からの相対変位が検出された場合に、
前記可動部材を原点位置に戻す発生力が生じるようにサーボアンプにより駆動される駆動手段と、
前記可動部材に設けられた可動側電極と、
前記可動側電極と対向して前記ハウジング側に設けられた固定側電極と、
前記変位検出部が、前記可動側電極と前記固定側電極間の空隙部で形成される静電容量を検出するように構成されており、
前記可動側電極と前記固定側電極の相対移動面において、この相対移動面のいずれかは非導電性材料で構成されており、この非導電性材料面の上に円周方向に分割して固定された複数個の電極面と、これらの電極面間の境界部に形成された概略放射線状の流通溝と、この流通溝は前記可動側電極と前記固定側電極間の空隙部に発生する動的流体圧力による減衰作用の低減と電極面間の電気的絶縁を兼ねて形成されており、
前記複数個の電極面と対向する電極面により複数組の独立した静電容量型変位検出器を構成したことを特徴とするサーボ型振動検出器。 - 請求項11記載のサーボ型振動検出器において、前記複数組の前記静電容量型変位検出器の信号を基づいて前記可動側電極と前記固定側電極間の空隙部の傾斜角を測定して、この測定結果に基づいて傾斜を補正することを特徴とするサーボ型振動検出器の組立方法。
- 前記固定部材側に固定されたコイルと、前記固定部材に対して空隙部を介して配置された前記可動部材と、前記空隙部に磁束が流れるように配置された永久磁石と、前記可動部材は前記永久磁石、及び、この永久磁石と磁路を繋ぐ可動側ヨーク材、あるいはこの可動側ヨーク材だけで構成されており、前記可動部材、前記空隙部、前記固定部材、前記永久磁石で閉ループ磁気回路を形成することで、前記可動部材を軸方向に移動させる電磁気力による前記駆動手段を構成していることを特徴とする請求項1記載のサーボ型振動検出器。
- 前記固定部材側に固定されたコイルと、
前記空隙部に磁束が流れるように配置された永久磁石と、をさらに備え、
前記可動部材は、前記永久磁石、及び、この永久磁石と磁路を繋ぐ可動側ヨーク材、あるいはこの可動側ヨーク材だけで構成されており、前記可動部材、前記空隙部、前記固定部材、前記永久磁石で閉ループ磁気回路を形成することで、前記可動部材を軸方向に移動させる電磁気力による前記駆動手段を構成していることを特徴とする請求項1記載のサーボ型振動検出器。
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