JP2023088159A - 双性イオン化合物の製造方法 - Google Patents

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JP2023088159A JP2021202852A JP2021202852A JP2023088159A JP 2023088159 A JP2023088159 A JP 2023088159A JP 2021202852 A JP2021202852 A JP 2021202852A JP 2021202852 A JP2021202852 A JP 2021202852A JP 2023088159 A JP2023088159 A JP 2023088159A
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亮太 高橋
Ryota Takahashi
文男 西村
Fumio Nishimura
直宏 高村
Naohiro Takamura
幹人 安澤
Mikito Yasuzawa
均 松木
Hitoshi Matsuki
雨濛 趙
Yumeng Zhao
俊樹 中尾
Toshiki Nakao
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University of Tokushima NUC
DKS Co Ltd
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Dai Ichi Kogyo Seiyaku Co Ltd
University of Tokushima NUC
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Abstract

【課題】重合性部位、4級アンモニウムカチオン部位及びリン酸部位を有する双性イオン化合物を簡便な方法で収率良く合成することができる製造方法を提供する。【解決手段】双性イオン化合物の製造方法は、下式(1)で表される化合物Hと、ポリリン酸とを反応させ、下式(2)で表される双性イオン化合物Pを得る工程を備える。TIFF2023088159000011.tif24170TIFF2023088159000012.tif25170(R1は、水素原子又はメチル基であり、X1は、-O-又は-N(Q1)-であり、Q1は、水素原子又はC1-6アルキル基であり、R2は、OH又はO-であり、mは、1~12の整数であり、nは、1~4の整数である)【選択図】なし

Description

本発明は、双性イオン化合物の製造方法に関する。
人工臓器等の人工医療材料は、近年の医療分野で欠かすことができない材料である。人工医療材料は、生体内で好ましくない生体反応を引き起こさないことが重要であり、そのための人工医療材料開発が広く行われている。従来、ポリエチレングリコール(PEG)等の高分子化合物は、タンパク質吸着抑制材料として有用であることが知られており、人工医療材料として適用されている。一方で、PEG鎖は酸化によって分解されやすく、生体内で長期間安定に使用することが難しい場合があることから、生体内で分解されにくく、かつ、高いタンパク質吸着抑制作用を持つ材料が求められている。
例えば、非特許文献1には、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)の重合体が開示されており、斯かる重合体が優れたタンパク質吸着抑制作用を有することが示されている。
また、特許文献1には、MPCがpHの低下によって親水性が低下しやすいという問題点を解消すべく、MPCのホスホリルコリン(PC)基において4級アンモニウムカチオン基とホスホジエステル基とを入れ替えた構造を有する双性イオン化合物が開示されている。この双性イオン化合物の重合体は、広範なpH領域において優れたタンパク質吸着抑制作用をもたらすことを可能にしている。
国際公開第2021/107141号
Vaisocherova, Hら、Biosens. Bioelectron. 2009, 24, 1924~1930頁
前述の特許文献1に開示される双性イオン化合物は、優れたタンパク質吸着抑制作用を有することから、斯かる化合物を効率よく製造することは、人工医療材料に代表される医療材料の分野においても極めて重要である。この点、当該双性イオン化合物を効率よく合成するための方法はいまだ確立されていない。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、双性イオン化合物、特に、重合性部位、4級アンモニウムカチオン部位及びリン酸部位を有する双性イオン化合物を簡便な方法で収率良く合成することができる製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の化合物Hと、ポリリン酸とを反応することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、例えば、以下の項に記載の主題を包含する。
項1
双性イオン化合物の製造方法であって、
下記一般式(1)
Figure 2023088159000001
(式(1)中、
は、水素原子又はメチル基であり、
は、-O-又は-N(Q)-であり、
は、水素原子又はC1-6アルキル基であり、
mは、1~12の整数であり、
nは、1~4の整数である)
で表される化合物Hと、ポリリン酸との反応により、
下記一般式(2)
Figure 2023088159000002
(式(2)中、
、X、m及びnはそれぞれ、前記式(1)のR、X、m及びnと同義であり、
は、OH又はOである)
で表される双性イオン化合物Pを得る工程を備える、双性イオン化合物の製造方法。
項2
前記ポリリン酸は、オルトリン酸換算量が105~120重量%であるポリリン酸を含む、項1に記載の双性イオン化合物の製造方法。
項3
前記反応では、前記ポリリン酸1モル(P換算)あたり、前記化合物Hを0.5~1.5モル使用する、項1又は2に記載の製造方法。
項4
前記反応は溶媒中で行われる、項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
項5
前記反応を50~100℃で行う、項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
本発明の製造方法によれば、重合性部位、4級アンモニウムカチオン部位及びリン酸部位を有する双性イオン化合物を簡便な方法で収率良く合成することができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
本発明の双性イオン化合物の製造方法は、
下記一般式(1)
Figure 2023088159000003
(式(1)中、
は、水素原子又はメチル基であり、
は、-O-又は-N(Q)-であり、
は、水素原子又はC1-6アルキル基であり、
mは、1~12の整数であり、
nは、1~4の整数である)
で表される化合物Hと、ポリリン酸との反応により、
下記一般式(2)
Figure 2023088159000004
(式(2)中、
、X、m及びnはそれぞれ、前記式(1)のR、X、m及びnと同義であり、Rは、OH又はOである)
で表される双性イオン化合物Pを得る工程を備える。以下、この工程を「工程A」と表記する。
本発明の製造方法は、上記工程Aを具備することで、重合性部位、4級アンモニウムカチオン部位及びリン酸部位を有する双性イオン化合物を簡便な方法で収率良く合成することができ、特に、リン酸モノエステルである双性イオン化合物をより高純度で得ることができる。ここで、重合性部位とは、前記式(2)からも明らかなように、(メタ)アクリロイル基部位を意味する。なお、本明細書において、「(メタ)アクリ」とは「アクリル」または「メタクリル」を意味する。
工程Aは、前記化合物Hとポリリン酸とを反応させるための工程である。この反応によって、目的物である双性イオン化合物Pが生成する。
(化合物H)
化合物Hは、式(1)で表される化合物であって、双性イオン化合物Pを得るための原料である。化合物Hは、式(1)で表されるように、カチオン性の化合物である。
式(1)において、Xが-N(Q)-である場合、QはC1-6アルキル基、すなわち、炭素数が1以上6以下のアルキル基である。斯かるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基(n-プロピル基又はi-プロピル基)、ブチル基(n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基)等が挙げられる。Qは、好ましくは水素原子又はC1-4アルキル基であり、より好ましくは水素原子又はC1-3アルキル基である。
式(1)において、Xは、好ましくは-O-又は-N(H)-であり、より好ましくは-O-である。Xが-N(H)-である場合は、-O-よりも結合の切断を受けにくく、高温などの過酷な条件下でも安定となり得る。
式(1)において、mは、溶媒への溶解性などに応じて適宜選択することができる。mは、有機溶媒への溶解性を向上する点からは4~12の整数が好ましく、他方、水溶性を向上する点においては1~3である整数が好ましい。
式(1)において、nは好ましくは1~3の整数であり、さらに好ましくは1又は2である。
化合物Hは、対イオンを有してもよく、例えば、Cl、Br等のアニオンを対イオンとして有することができる。
化合物Hを製造する方法は特に限定されない。例えば、公知の製造方法によって化合物Hを入手することができ、あるいは、市販品等から化合物Hを入手することもできる。
化合物Hは、下記式(3)で表される化合物を、下記式(4)で表される化合物と反応させることで製造することができる。
Figure 2023088159000005
ここで、式(3)において、Lはハロゲン原子であり、式(4)において、R、X、及び、mはそれぞれ、前記式(1)のR、X、及び、mと同義である。
式(4)で表される化合物の使用量は、式(3)で表される化合物1モルに対して、例えば、0.5~2.0モル、好ましくは0.9~1.1モルであり、通常は約1モルとすることができる。
式(3)で表される化合物と式(4)で表される化合物との反応は、溶媒中で行うことができる。溶媒としては、例えば、極性非プロトン性溶媒が挙げられ、その具体例としては、ジクロロメタン、ジクロロエタンなどのハロアルカン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドが挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
式(3)で表される化合物と式(4)で表される化合物との反応温度及び反応時間は、反応が進行する限り特に制限されない。反応温度は、例えば、10~150℃、好ましくは20~120℃、反応時間は、例えば1~48時間、好ましくは2~36時間である。
(ポリリン酸)
工程Aで使用するポリリン酸は、化合物Hにリン酸部位を導入するための原料である。工程Aで使用するポリリン酸は、Hn+23n+1(nは2以上の整数)で表される化合物である。工程Aで使用するポリリン酸を使用することで、目的物である双性イオン化合物Pは、リン酸モノエステル体の割合が高くなり、副生成物(例えば、ジエステル体)を少なくすることができる。
工程Aで使用するポリリン酸は、オルトリン酸換算量が105~120重量%であるポリリン酸を含むことが好ましい。斯かるポリリン酸を使用することで、ポリリン酸中のリンの反応効率が高まるので工程Aの反応が進行しやすく、より高い収率で目的物の双性イオン化合物Pを得ることができ、しかも、リン酸モノエステルをより高い純度で得ることができる。ポリリン酸のオルトリン酸換算量は、110重量%以上であることがより好ましく、また、120重量%以下であることがより好ましく、118重量%以下であることがさらに好ましい。工程Aで使用するポリリン酸は、オルトリン酸換算量が異なる2種以上を併用してもよい。
工程Aで使用するポリリン酸は、オルトリン酸換算量が105~120重量%であるポリリン酸のみを使用することができ、あるいは、オルトリン酸換算量が105~120重量%の範囲を外れるポリリン酸を併用することもできる。工程Aで使用するポリリン酸は、オルトリン酸換算量が105~120重量%であるポリリン酸の含有割合が80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、99質量%以上であることが特に好ましい。なお、工程Aでは、ポリリン酸の他、オルトリン酸、五酸化リン、水等を併用することもできる。
ポリリン酸は、塩であってもよく、例えば、ポリリン酸のアルカリ金属塩、ポリリン酸のアルカリ土類金属塩、ポリリン酸のアンモニウム塩、ポリリン酸の有機アミン塩が挙げられる。より具体的に、ポリリン酸の塩としては、ポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸カルシウム、ポリリン酸第2鉄等を例示することができる。工程Aで使用するポリリン酸は、塩でないポリリン酸と、ポリリン酸の塩の混合物であってもよい。
ポリリン酸は、例えば、直鎖状の高分子であってもよいし、あるいは、環状、分岐状の高分子であってもよく、これらの混合物であってもよい。
ポリリン酸は、例えば、公知の方法で製造することで入手することができ、あるいは、市販品から入手することも可能である。ポリリン酸の市販品として、ラサ工業社製の116%ポリリン酸、105%ポリリン酸等を挙げることができ、その他、日本化学工業社、太平化学産業社、富士フイルム和光純薬社の各種ポリリン酸を挙げることもできる。
(工程A)
工程Aでは、前記化合物Hと前記ポリリン酸とを反応する。
前記反応では、前記ポリリン酸1モル(P換算)あたり、前記化合物Hを0.3~2モル使用することが好ましい。この場合、目的物である双性イオン化合物Pを高い収率で得ることができる。前記ポリリン酸1モルあたりの前記化合物Hの使用量は、0.4モル以上であることがより好ましく、0.5モル以上であることがさらに好ましく、また、2.0モル以下であることがより好ましく、1.5モル以下であることがさらに好ましい。
化合物Hとポリリン酸との反応は、溶媒中で行うことが好ましい。溶媒としては、例えば、非プロトン性溶媒が挙げられ、その具体例としては、アセトニトリル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
工程Aの反応で溶媒を使用する場合は、溶媒と各原料の使用割合は特に限定されない。例えば、溶媒100mLに対して、ポリリン酸の使用量を0.1~100gとすることができる。
化合物Hとポリリン酸との反応温度は反応が進行する限りは特に限定されず、例えば10~150℃、好ましくは50~100℃、より好ましくは60~80℃である。反応時間は反応温度に応じて適宜設定することができ、例えば0.1~20時間、好ましくは0.5~12時間である。
工程Aにおいて、化合物Hとポリリン酸との反応の後、引き続き、加水分解することもできる。加水分解は、例えば、化合物Hとポリリン酸との反応で得られた反応物に水を混合すること行うことができる。例えば、化合物Hとポリリン酸との反応で生じた副生成物を適宜の方法で分離してから水を混合することで、加水分解することができる。
加水分解において、水の使用量は特に限定されず、例えば、生成物100質量部あたり、5~100質量部とすることができる。
上記工程Aの反応後、もしくは反応後の加水分解の後、得られた生成物を適宜の方法で精製処理することができる。この場合、目的物である双性イオン化合物Pの収率及び純度をより高くすることができる。精製処理の方法は特認限定されず、例えば、ろ過、クロマトグラフィー、再沈殿、濃縮等を挙げることができ、これら単独または組み合わせで複数回繰り返すこともできる。
上記工程Aを経ることによって、目的物である双性イオン化合物Pが生成する。工程Aでは、化合物Hとポリリン酸とを原料として反応を行うことから、双性イオン化合物Pを高い収率で得ることができ、特に、リン酸モノエステル体の割合が高く、副生成物(例えば、ジエステル体)が少なく、しかも工程Aにおける反応中に不溶物が生成するのを抑制することもできる。
従来、リン酸ジエステル体は簡単には除けないので、リン酸ジエステル体の量を低減するにはシリカゲルやイオン交換樹脂等を利用した精製処理が必要であったところ、本発明の製造方法では、工程Aを具備することで、リン酸ジエステル体の量が極めて少ないので、従来のように精製処理を行う必要性が低いものである。
この観点から、工程Aで得られる双性イオン化合物Pにおいて、リン酸モノエステル体の割合は80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましく、95モル%以上であることがさらに好ましく、99モル%以上であることが特に好ましい。なお、リン酸モノエステルの含有割合は公知の方法で算出することができ、具体的に、31P-NMRの積分値から算出することができる。
(双性イオン化合物P)
本発明の製造方法で得られる双性イオン化合物Pは、前記式(2)で表される化合物である。双性イオン化合物Pは、重合性を有する化合物である。双性イオン化合物Pの重合体は、例えば、タンパク質吸着抑制作用を有するので、タンパク質吸着抑制剤として好適に使用することができる。すなわち、本発明の製造方法で得られる、双性イオン化合物Pは、タンパク質吸着抑制剤の製造用原料として好適に使用することができる。
双性イオン化合物Pは、重合体のタンパク質吸着抑制機能が向上しやすい点で、式(2)におけるXが、-O-又は-N(H)-であることが好ましく、-O-であることがより好ましい。また、同様の理由で、双性イオン化合物Pは、式(2)におけるnが1又は2であることが好ましい。双性イオン化合物Pは、有機溶媒への溶解性を向上する点から式(2)におけるmが4~12の整数が好ましく、他方、水溶性を向上する点においては1~3である整数が好ましい。また、双性イオン化合物Pは、RがOHであることが好ましい。
双性イオン化合物Pの一例として、(2-(メタクリロイルオキシ)エチルジメチルアンモニオ)エチルホスフェートを挙げることができる。
双性イオン化合物Pは、対イオンを有してもよい。双性イオン化合物PにおけるNの対イオンとしては、例えば、Cl、Br等のハロゲンが挙げられる。双性イオン化合物Pにおける末端のリン酸部位の対イオンとしては、例えば、Na、Kなどのアルカリ金属、Mg、Caなどアルカリ土類金属等のイオンが挙げられ、その他、第3級アミン、第4級アミンを対イオンとすることもできる。
双性イオン化合物Pが重合してなる重合体において、その重合体中に含まれる双性イオン化合物Pに基づく構造単位の含有割合は特に限定されない。例えば、タンパク質吸着抑制機能が向上しやすい点で、双性イオン化合物Pに基づく構造単位の含有割合は、前記重合体中、10モル%以上とすることができ、好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上、さらに好ましくは40モル%以上、特に好ましくは50モル%以上である。また、双性イオン化合物Pに基づく構造単位の含有割合は、前記重合体中、100モル%であってもよい。
前記重合体は、双性イオン化合物Pに基づく構造単位以外の構造単位を含むことができる。その他の構造単位を形成するためのモノマーとしては、例えば、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを挙げることができ、具体的には、不飽和カルボン酸又はその塩、エステル、若しくはアミド;ビニルエーテル;ビニルエステル;スチレンスルホン酸又はその塩などの単官能モノマーが挙げられる。
前記重合体を調製する方法は特に限定されず、例えば、公知の重合方法を広く採用することができる。
前記重合体の構造は特に限定されず、は、例えば、線状、櫛型、星型、又は梯子型等の公知の構造を広く挙げることができる。前記重合体は、例えば、特許文献1に開示されるように成形体とすることができ、また、ポリマーブラシとすることもできる。成形体及びポリマーブラシを形成する方法は特に限定されず、特許文献1に記載される方法と同様の方法を採用することができる。
前記重合体は、タンパク質吸着抑制機能に優れることから、生体適合性材料として好適であり、例えば、材料の表面に適用することにより、材料に生体適合性を付与することができ、あるいは材料の生体適合性を向上することができる。「生体適合性材料」とは、タンパク質、細胞などが接着しにくい性質を有する材料をいう。
斯かる生体適合性材料としては、例えば、人工血管、カテーテル、人工臓器、人工関節、人工透析膜、人工皮膚、人工骨(関節部など)、コンタクトレンズ、絆創膏、包帯などの医療材料の表面被覆材(又は表面コーティング材);コンタクトレンズの保存液;バイオチップ、マイクロアレイチップなどの診断医療デバイスの表面改質材;細胞培養シート;血液、タンパク質、細胞の保存材;タンパク質の凝固防止材;保湿剤、パック材料(化粧料)などが挙げられる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
(合成例1)
窒素置換したへそつきフラスコに2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(0.5mL、3.0mmol)、2-ブロモエタノール(0.2mL、3mmol)、及びアセトニトリル(6mL)を加え、室温(25℃)で24時間攪拌させた。この溶液を濃縮し、粗生成物を無色の粘稠液として得た。粗生成物をクロロホルムで溶かし、酢酸エチルに再沈殿し、ろ過及び酢酸エチルでの洗浄により白色固体(0.81g、96%)を得た。
1H NMR (400 MHz,CD3OD): δ=1.97(s, 3H, CH3-), 3.276(s, 6H, -N+(CH3)2-), 3.613(m, 2H, -N+(CH3)2-CH2-CH2-OH), 3.88(m, 2H, -O-CH2-CH2-), 4.028(m, 2H, -CH2-OH), 4.641(m, 2H, -O-CH2-), 5.717, 6.162(2s, 2H, C=CH2)
得られた白色固体の上記H NMR測定(400MHz、CDOD)の結果から、下記式(1a)で表される2-コリニウムメタクリレートブロミド(以下、CMBと表記する)が生成していることを確認した。
Figure 2023088159000006
(実施例1)
窒素雰囲気下のへそ付きフラスコに化合物Hとして合成例1で得たCMB(100mmol、28.2g)及び乾燥アセトニトリル(100mL)を入れた。オイルバスでフラスコ内温度を50℃に調節しながら、前記フラスコにポリリン酸として、オルトリン酸換算量が116重量%である、ラサ工業製「116%ポリリン酸」(100mmol(P換算)、17.7g)を添加した。添加後、70℃で5時間反応を行った。その後、前記フラスコに水(30mL)を滴下し、70℃で3時間撹拌し、凍結乾燥して粗生成物を得た。粗生成物をメタノールに溶かし、脱水アセトンに窒素雰囲気下で滴下して沈殿物を得る再沈殿操作を3回繰り返し、析出物を得た。得られた析出物を少量のアセトニトリルに溶かし、不溶部を濾過により取り除いた後、脱水アセトンに窒素雰囲気下で滴下し、生成物(70mmol、19.7g)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO -d6): δ=1.899 (s, 3H,CH 3-), 3.148 (s, 6H, -N+(CH 3)2-), 3.484 (m, 2H, -N+(CH3)2-CH 2-CH2-OP), 3.760 (m, 2H, -O-CH2-CH 2-N), 4.262 (m, 2H, -CH 2-OP), 4.515 (m, 2H, -O-CH 2-), 5.758, 6.081 (s, 2H, C=CH2)(純度99.9%)
31P NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ=-0.656(純度99.9%)
得られた生成物の上記H NMR測定(400MHz、DMSO-d6)の結果から、下記式(2a)で表される(2-(メタクリロイルオキシ)エチルジメチルアンモニオ)エチルホスフェート(以下、MCHPと表記する)が生成していることを確認した。
Figure 2023088159000007
(実施例2)
ポリリン酸の使用量を150mmol(P換算)に変更したこと以外は実施例1と同様の方法でMCHPを得た。
(実施例3)
ポリリン酸の使用量を50mmol(P換算)に変更したこと以外は実施例1と同様の方法でMCHPを得た。
(比較例1)
前述の特許文献2に記載される合成例1に従ってMCHPを下記のように合成した。N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(0.18g、1.5mmol)を、窒素雰囲気下のへそ付きフラスコに入れた。これに、脱水ジクロロメタン(27mL)、脱水トリエチルアミン(3.0mL、22mmol)、及び2-ブロモエタノール(1.0mL、15mmol)を加えた。この溶液にジエチルクロロホスフェート(2.9mL、20mmol)を滴下し、0℃で1時間撹拌した。得られた反応混合物を室温(25℃)まで加温して一晩撹拌した。その後、生成したトリエチルアミン塩酸塩をろ別し、ろ液を分液漏斗に移して飽和重曹水で洗浄した。得られた有機層を水、食塩水で洗浄し、次いで2N HClで洗浄した。さらに、得られた有機層を水、食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水、ろ過、濃縮することにより、無色の液体(3.16g、81%)として得た。
1H NMR (400 MHz,CDCl3): δ=1.35-1.37(t, J=6.87, 7.16, 6H, CH3-CH2), 3.53-3.56(t, J=6.30, 2H, CH2-Br), 4.12-4.18(quin, J=6.87, 7.16, 4H, PO-CH2-CH3), 4.29-4.33(dt, J=6.30, 2H, Br-CH2-CH2-OP)
得られた粘稠液の上記記H NMR測定(400MHz、CDOD)の結果から、ジエチル2-ブロモエチルホスフェートが生成していることを確認した。
上記のように得られたジエチル2-ブロモエチルホスフェート(1.04g、4mmol)、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(0.76mL、4.5mmol)、及びアセトニトリル(7mL)を室温(25℃)で3日間撹拌した。この溶液を濃縮し、粗生成物を無色の液体として得た。この粗生成物を酢酸エチルで再沈殿し、酢酸エチルで洗浄し、無色の粘稠液(1.43g、64%)として得た。
1H NMR (400 MHz,DMSO-d6): δ=1.24-1.28 (dt,J=0.91, 7.02, 6H,CH3CH2-OP), 1.90 (s, 3H,CH3-), 3.19 (s, 6H, -N+(CH3)2-), 3.79-3.83 (m, 4H, CH2-N+(CH3)2-CH2-CH2-OP), 3.83 (dq, 4H, CH3CH2-OP), 4.43-4.67 (q, J=3.4, 6.12, 2H, -N-CH2-CH2-OP), 4.53 (br, 2H, C(O)-O-CH2-), 5.717, 6.162 (t, 2H, C=CH2)
得られた粘稠液の上記H NMR測定(400MHz、CDOD)の結果から、(2-(メタクリロイルオキシ)エチルジメチルアンモニオ)エチルジエチルホスフェートが生成していることを確認した。
上記(2-(メタクリロイルオキシ)エチルジメチルアンモニオ)エチルジエチルホスフェート(0.61g、1.5mmol)を、窒素雰囲気下のへそ付きフラスコに入れた。これに、脱水アセトニトリル(15mL)を加えた。この溶液にブロモトリメチルシラン(1.2mL、9.0mmol)を滴下し、0℃で9時間撹拌した。この溶液を濃縮し、粗生成物を粘稠液として得た(収率:61%)。この粗生成物にメタノールを添加して9時間撹拌し、水及びアセトンの混合溶媒(水:アセトン=9:1)による2回の洗浄を伴って、強酸性陽イオン交換樹脂(H型)(DOWEX 50Wx8、50~100メッシュ)で精製することにより、無色の液体を得た。次いで、この液体を濃縮してアセトンを除去し、得られた溶液を一晩凍結乾燥した。最後に、凍結乾燥物を少量の脱水メタノールで溶解し、窒素雰囲気下、脱水アセトンに滴下して白色粉末沈殿物を得る再沈殿操作を3回繰り返すことにより、MCHPを得た。
(比較例2)
窒素置換した三つロフラスコに、化合物Hとして合成例1で得たCMB(28.2g、100mmol)及び乾燥アセトニトリル(100mL)を入れた。このフラスコを氷浴に設置してフラスコ内温度を10℃に調節しながら、塩化ホスホリル(28mL、300mmol)を1時間かけて滴下した。1時間後、脱イオン水(28mL)を加え、1時間撹拌した。この溶液を濃縮後、減圧乾燥させることで粗生成物を黄色い液体として得た。粗生成物を逆相シリカカラムクロマトグラフィー(0.1質量%TFA水溶液:アセトニトリル=95:5(v/v))にて単離操作を行うことにより、MCHPを得た。
(比較例3)
窒素雰囲気下のへそ付きフラスコに化合物Hとして合成例1で得たCMB(100mmol、28.2g)及び乾燥アセトニトリル(100mL)を入れた。オイルバスでフラスコ内温度を50℃に調節しながら、前記フラスコにポリリン酸として、無水リン酸(五酸化二リン)(100mmol、14.2g)を添加した。添加後、70℃で5時間反応を行った。その後、前記フラスコに水(30mL)を滴下し、70℃で3時間撹拌した。反応時に不溶物が発生した。不溶物をろ過により取り除いた後凍結乾燥して粗生成物を得た。粗生成物をメタノールに溶かし、脱水アセトンに窒素雰囲気下で滴下して沈殿物を得る再沈殿操作を3回繰り返し、析出物を得た。得られた析出物をイオン交換水に溶かし、強酸性陽イオン交換樹脂(H型)(DOWEX5OWx850~100メッシユ)に吸着させ、酢酸溶液で溶出することにより、MCHPを得た。
Figure 2023088159000008
表1には、各実施例及び比較例で実施したMCHPの合成結果(反応後のモノエステル割合、収率、及び不溶物析出有無)を示している。
なお、MCHPの収率は下記式
(得られたMCHPの収量/CMBの仕込み量)×100
により算出した。ただし、比較例1では、上記式において、CMBを(2-(メタクリロイルオキシ)エチルジメチルアンモニオ)エチルジエチルホスフェートと読み替えて産出した。また、反応後のモノエステル割合は、31P-NMRにおけるモノエステル由来のシグナル及びジエステル由来のシグナルに基づく積分値から算出した。
表1からわかるように、実施例のように化合物H及びポリリン酸を反応する工程を備える製造方法を採用した場合、比較例の方法に比べて高い収率でMCHP(双性イオン化合物P)を合成できることが示され、また、反応中の不溶物の発生も見られなかった。

Claims (5)

  1. 双性イオン化合物の製造方法であって、
    下記一般式(1)
    Figure 2023088159000009
    (式(1)中、
    は、水素原子又はメチル基であり、
    は、-O-又は-N(Q)-であり、
    は、水素原子又はC1-6アルキル基であり、
    mは、1~12の整数であり、
    nは、1~4の整数である)
    で表される化合物Hと、ポリリン酸との反応により、
    下記一般式(2)
    Figure 2023088159000010
    (式(2)中、
    、X、m及びnはそれぞれ、前記式(1)のR、X、m及びnと同義であり、
    は、OH又はOである)
    で表される双性イオン化合物Pを得る工程を備える、双性イオン化合物の製造方法。
  2. 前記ポリリン酸は、オルトリン酸換算量が105~120重量%であるポリリン酸を含む、請求項1に記載の双性イオン化合物の製造方法。
  3. 前記反応では、前記ポリリン酸1モル(P換算)あたり、前記化合物Hを0.3~2モル使用する、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記反応は溶媒中で行われる、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 前記反応を50~100℃で行う、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
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