JP2023087330A - 生体成分濃度測定試薬、測定方法およびセンサ - Google Patents

生体成分濃度測定試薬、測定方法およびセンサ Download PDF

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Abstract

【課題】テトラゾリウム塩から生成するホルマザンと遷移金属イオンとのキレート化合物において、時間とともに発色特性が変化することを抑制できる手段を提供する。【解決手段】テトラゾリウム塩と、正四面体の配位構造を取りうる遷移金属イオンを生成できる化合物と、酸化還元酵素とを含む、生体成分濃度測定試薬。【選択図】なし

Description

本発明は、試薬、測定方法およびセンサに関する。特に、本発明は、全血試料に含まれる、グルコース等の生体成分(分析対象物)の濃度を測定するために使用される試薬、測定方法およびセンサに関する。
従来から、臨床化学検査において、血液や尿等の生体試料中に含まれる分析対象物(例えば、グルコース)を電気化学的手段や光学的手段(比色法)により測定する技術が知られている。
例えば、特許文献1には、水溶性テトラゾリウム化合物を、酵素反応系に遷移金属イオンと共に共存させて、該テトラゾリウム化合物から得られる還元体である水溶性ホルマザンを、該金属イオンとの有色のキレート化合物に変換、その呈色を測定する方法が記載されている。
特開昭60-75470号公報
特許文献1に記載のホルマザンと遷移金属イオンとのキレート化合物を用いる場合、時間とともに発色特性が変化する場合がある。迅速測定を行う場合、時間経過に対応した特別なアルゴリズム作成や補正が必要となる。
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、テトラゾリウム塩から生成するホルマザンと遷移金属イオンとのキレート化合物において、時間とともに発色特性が変化することを抑制できる手段を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、テトラゾリウム塩と特定の配位構造を取りうる遷移金属イオンを生成できる化合物とを組み合わせて使用することによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、上記目的は、テトラゾリウム塩と、正四面体の配位構造を取りうる遷移金属イオンを生成できる化合物と、酸化還元酵素とを含む、生体成分濃度測定試薬によって達成できる。
本発明によれば、テトラゾリウム塩から生成するホルマザンと遷移金属イオンとのキレート化合物を形成し、時間とともに発色特性が変化することを抑制する手段を提供することができる。
図1は、本形態に係る測定用センサが装着された血糖計(成分測定装置)を概略的に示す平面図である。 図2は、図1のセンサと装置本体の測光部を拡大して示す斜視図である。 図3は、図1の測定用センサを示す側面図である。 図4Aは、図1の測定用センサと装置本体の装着動作を示す第1平面図である。 図4Bは、図4Aに続く装着動作を示す第2平面断面図である。 図5Aは、実施例で用いた血糖計センサの模式図である。 図5Bは、図5Aの血糖計センサの内面の長さ、幅、厚みを説明するための図である。 図6は、酢酸亜鉛または酢酸ニッケルを適用した血糖計センサ(血糖値測定センサ)に血液検体を作用させた際の、吸光度と波長との関係を示すグラフである。 図7は、テトラゾリウム塩1を適用した血糖計センサ(血糖値測定センサ)にグルコース水溶液を作用させた際のグルコース濃度と、ホルマザンおよびZn2+のキレート化合物の吸光度との関係を示すグラフである。
以下、本開示の実施の形態を説明する。なお、本開示は、以下の実施の形態のみには限定されない。
本開示の第1の態様は、テトラゾリウム塩と、正四面体の配位構造を取りうる遷移金属イオンを生成できる化合物と、酸化還元酵素とを含む、生体成分濃度測定試薬である。
本開示の第2の態様は、全血試料を、本開示の第1の態様に係る生体成分濃度測定試薬と接触させて、発色量を測定し、当該発色量に基づいて前記全血試料中の生体成分の濃度を定量することを有する、生体成分濃度の測定方法である。
本開示の第3の態様は、反応部を有する、全血試料中の生体成分濃度を測定するためのセンサであって、前記反応部は、本開示の第1の態様に係る生体成分濃度測定試薬を含む、センサである。
本開示によれば、ホルマザンと遷移金属イオンとのキレート化合物において、時間とともに発色特性が変化することを抑制することができる。
本明細書において、生体成分濃度測定試薬を、単に「試薬」または「本開示の試薬」とも称する。
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
また、本明細書において、範囲を示す「X~Y」は、XおよびYを含み、「X以上Y以下」を意味する。「M」は、mol/Lを意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件で行う。
<生体成分濃度測定試薬>
本開示の第1の態様は、テトラゾリウム塩と、正四面体の配位構造を取りうる遷移金属イオンを生成できる化合物と、酸化還元酵素とを含む、生体成分濃度測定試薬である。以下、試薬を構成する各成分について詳細に説明する。
(テトラゾリウム塩)
本開示の試薬は、テトラゾリウム塩を含む。テトラゾリウム塩は、発色試薬であり、テトラゾリウム塩から生成するホルマザンは、後述の遷移金属イオンとキレート化合物を形成する。
テトラゾリウム塩の例としては、2-ベンゾチアゾリル-3-(4-カルボキシ-2-メトキシフェニル)-5-[4-(2-スルホエチルカルバモイル)フェニル]-2H-テトラゾリウム(2-Benzothiazolyl-3-(4-carboxy-2-methoxyphenyl)-5-[4-(2-sulfoethylcarbamoyl)phenyl]-2H-tetrazolium)、国際公開第2018/051822号パンフレットに記載されるテトラゾリウム塩、3-(4,5-ジメチル-チアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド((3-(4,5-di-methylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyltetrazolium bromide)(MTT)などが挙げられる。
テトラゾリウム塩は、1種を単独で使用しても、または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本開示の好ましい形態によると、テトラゾリウム塩は、2-ベンゾチアゾリル-3-(4-カルボキシ-2-メトキシフェニル)-5-[4-(2-スルホエチルカルバモイル)フェニル]-2H-テトラゾリウム(WST-4)または下記式(1)で示されるテトラゾリウム塩からなる群より選択される少なくとも一種である。本開示の特に好ましい形態によると、テトラゾリウム塩は、下記式(1)で示されるテトラゾリウム塩である。
Figure 2023087330000001
上記式(1)において、Rは、水素原子、水酸基、メトキシ基、およびエトキシ基からなる群から選択されるいずれか一つであり、Rは、ニトロ基、-OR、およびカルボキシル基からなる群から選択されるいずれか一つであり、Rは、水素原子、メチル基またはエチル基であり、少なくとも1はメチル基またはエチル基であり、Rは、メチル基またはエチル基であり、mは、スルホ基(-SO )がテトラゾール骨格の5位のフェニル基に結合する数であり、1または2であり、nは、Rがテトラゾール骨格の3位のフェニル基に結合する数であり、0~2の整数であり、pは、スルホ基(-SO )がテトラゾール骨格の3位のフェニル基に結合する数であり、0または1であり、n+pは1以上であり、qは1または2であり、qが2の場合、各ORは隣接して配置され、この際、各ORが互いに環を形成してもよく、Xは、水素原子またはアルカリ金属を表わす。
上記式(1)において、テトラゾール骨格の2位には置換ベンゾチアゾリル基が存在する。上記式(1)において、テトラゾール環の2位にベンゾチアゾリル基が存在することにより、遷移金属化合物と効率よくかつ速やかにキレート化合物を形成できる(ホルマザン化合物の極大吸収波長を長波長域にシフトできる)。そして、テトラゾール骨格の2位のベンゾチアゾリル基に、少なくとも1のメトキシ基またはエトキシ基が導入されることで、さらに生成するホルマザンとZn2+等の遷移金属イオンとのキレート時の極大吸収波長が長波長側にシフトする。
上記式(1)において、qは1または2であり、好ましくは1である。ここで、q=1の場合、Rは、メチル基またはエチル基であり、水溶性の観点からはメチル基であることが好ましい。Rが炭素原子数3以上のアルキル基である場合には、テトラゾリウム塩およびテトラゾリウム塩から生じるホルマザンは、水溶性に劣るため好ましくない。
上記式(1)において、テトラゾール骨格の2位に存在する置換ベンゾチアゾリル基の-ORの少なくとも1がベンゾチアゾリル基の6位に結合することが好ましい。当該形態によれば、Zn2+等の遷移金属イオンとのキレート時の極大吸収波長を長波長側にシフトできる。
上記式(1)において、q=1の場合、テトラゾール骨格の2位に存在するベンゾチアゾリル基の置換基である-ORの置換位置は特に限定されるものではなく、4位、5位、6位、または7位のいずれであってもよい。-ORの置換位置は、ベンゾチアゾリル基の6位に結合することが好ましい。すなわち、本発明の好ましい形態では、qが1でありかつ-ORがベンゾチアゾリル基の6位に結合することが好ましい。当該形態によれば、Zn2+等の遷移金属イオンとのキレート時の極大吸収波長を長波長側にシフトできる。
上記式(1)において、q=2の場合、Rは、水素原子、メチル基またはエチル基であり、少なくとも1がメチル基、またはエチル基である。また、qが2である場合、各ORは隣接して配置され、各ORが互いに環を形成してもよい。この際、好適な組み合わせとしては、Rが、水素原子およびメチル基の組み合わせ、メチル基およびメチル基の組み合わせである。q=2の場合、テトラゾール骨格の2位に存在するベンゾチアゾリル基の置換基である-ORの置換位置は2つの-ORが隣接して配置されれば特に限定されるものではなく、4,5位、5,6位、または6,7位のいずれであってもよい。Zn2+等の遷移金属イオンとのキレート時の長波長側への極大吸収波長のシフトの効果の点では、少なくとも1の-ORの置換位置は、ベンゾチアゾリル基の6位に結合することが好ましく、すなわち、2つの-ORの置換位置は、5,6位、または6,7位であることが好ましい。具体的には、qが2である場合、テトラゾール骨格の2位に存在する置換ベンゾチアゾリル基は以下のいずれかの置換基であることが好ましい。
Figure 2023087330000002
上記式(1)において、qが2である場合、テトラゾール骨格の2位に存在する置換ベンゾチアゾリル基は上記いずれかの置換基である場合、テトラゾール骨格の3位に存在する置換スルホ化フェニル基が、4-メトキシ-5-スルホフェニル基であることが、Zn2+等の遷移金属イオンとのキレート時の長波長側への極大吸収波長のシフトの効果の点で好ましい。
本発明の好ましい形態では、テトラゾリウム塩は、Rは、水素原子、水酸基、メトキシ基、およびエトキシ基からなる群から選択されるいずれか一つであり、Rは、ニトロ基、-OR、およびカルボキシル基からなる群から選択されるいずれか一つであり、かつ少なくとも1のRが-OR基であり、Rは、水素原子、メチル基またはエチル基であり、少なくとも1はメチル基またはエチル基であり、Rは、メチル基またはエチル基であり、mは、スルホ基(-SO )がテトラゾール骨格の5位のフェニル基に結合する数であり、1または2であり、nは、Rがテトラゾール骨格の3位のフェニル基に結合する数であり、1または2であり、pは、スルホ基(-SO )がテトラゾール骨格の3位のフェニル基に結合する数であり、0または1であり、n+pは1以上であり、qは1または2であり、qが2の場合、各ORは隣接して配置され、この際、各ORが互いに環を形成してもよく、各ORが互いに環を形成する場合には、テトラゾール骨格の2位に存在する置換ベンゾチアゾリル基は以下で表される置換基のいずれかであり、
Figure 2023087330000003
Xは、水素原子またはアルカリ金属を表わす、上記式(1)で示されるテトラゾリウム塩である。
上記式(1)において、テトラゾール骨格の5位には置換スルホ化フェニル基が存在する。該スルホ化フェニル基の置換基であるRは、水素原子、水酸基、メトキシ基、およびエトキシ基からなる群から選択されるいずれか一つである。テトラゾリウム塩およびテトラゾリウム塩から生じるホルマザンの水溶性を向上させるという観点からは、Rは、水素原子または水酸基であることが好ましく、幅広いpH領域で遷移金属イオンとのキレートを安定的に形成できることから、Rは水素原子であることがより好ましい。また、Rが水酸基、メトキシ基、およびエトキシ基である場合の置換位置は特に限定されないが、4位であることが好ましい。
テトラゾール骨格の5位には、スルホ基(-SO )が少なくとも1個存在する(m=1または2)。これにより、テトラゾリウム塩およびテトラゾリウム塩から生じるホルマザンの水溶性が向上するものと考えられる。式(1)において、mは、スルホ基(-SO )がテトラゾール骨格の5位のフェニル基に結合する数であり、1または2である。特にスルホ基が2位または4位にある場合、さらには、2,4位にある場合には、よりいっそうの水溶性の向上が発揮出来る。さらにスルホ基が2,4位にある場合には合成するためのビルディングブロックの合成が容易である点で、有利である。水溶性が高く、また、幅広いpH領域で遷移金属イオンとのキレート化合物を安定的に形成することができる、または水溶性が向上することから、m=2であることが好ましく、m=2であり、Rが水素原子であることがより好ましい。
この際、m=2である場合には、スルホ基(-SO )がテトラゾール骨格の3位のフェニル基に結合する数であるpが1であることが好ましい。かような置換基数を選択することで、テトラゾリウム塩およびこれから生じるホルマザンの水溶性が一層向上する。
なお、水溶性の観点からは、下記(1)~(4):(1)m=2かつp=1である、(2)m=1かつn=0である、(3)テトラゾール骨格の5位に存在するフェニル基において、Rが水酸基であり、この際、スルホ基(SO )および水酸基が2,4位、または4,6位にある、(4)p=0かつ少なくとも1のRがカルボキシル基である、のいずれかを満たすことが好ましく、(1)m=2かつp=1または、(4)p=0かつ少なくとも1のRがカルボキシル基であることがより好ましい。また、上記(3)では、スルホ基(SO )および水酸基が、ベンゼン環上で隣接した置換基として存在しないため、水素結合することがなく、または少なく、両置換基が効率的に水溶性に寄与できるためであると考えられる。
ここで、テトラゾール骨格の5位に存在するフェニル基へのスルホ基(-SO )の結合位置は特に制限されない。テトラゾリウム塩およびテトラゾリウム塩から生じるホルマザンの水溶性のさらなる向上効果、極大吸収波長を長波長側へシフトすることができることの点から、m=2の場合には、スルホ基(-SO )は、フェニル基の、2,4位、3,5位に存在することが好ましい。フェニル基の2,4位にスルホ基が存在することが特に好ましく、高濃度の遷移金属イオンの存在下でも沈殿が発生しないテトラゾリウム塩化合物とすることができる。すなわち、このテトラゾリウム塩を発色試薬として使用することで、分析対象物(生体成分)が高濃度な場合であっても、定量可能な試薬を調製できる。すなわち、本発明の好ましい形態では、テトラゾール骨格の5位のフェニル基が、スルホ基(-SO )が2,4位に存在するフェニル基であることが好ましい。
上記式(1)において、テトラゾール骨格の3位には置換フェニル基が存在する。フェニル基は必須に置換されるため、n+pは1以上である。
テトラゾール骨格の3位のフェニル基の置換基としてのRは、ニトロ基、-OR、およびカルボキシル基からなる群から選択されるいずれか一つである。Rは、ホルマザンと遷移金属イオンとのキレート形成性の観点からは、ニトロ基または-ORであることが好ましく、水溶性の観点からは、カルボキシル基であることが好ましい。また、nは、Rがテトラゾール骨格の3位のフェニル基に結合する数であり、0~2の整数である。Rを導入することで、化合物の極大吸収波長を長波長域に移動させることや、化合物の安定性を向上させることが可能となるため、n=1または2であることが好ましい。Rが2存在する場合、すなわち、n=2である場合、Rは同じであっても異なるものであってもよい。
上記式(1)において、n=1または2である場合、少なくとも1のRが-OR基であることが好ましい。すなわち、本発明の好適な形態は、nが1または2であり、かつ、少なくとも1のRが-OR基である。フェニル基の置換基としてアルコキシ基を導入することで、化合物の安定性が向上する。テトラゾリウム塩およびテトラゾリウム塩から生じるホルマザンの水溶性を向上させるという観点からは、-OR基がメトキシ基であることが好ましい。ここで、Rは、メチル基またはエチル基であり、水溶性の観点からはメチル基であることが好ましい。Rが炭素原子数3以上のアルキル基である場合には、テトラゾリウム塩およびテトラゾリウム塩から生じるホルマザンは、水溶性に劣るため好ましくない。
nが1または2である場合の、Rの置換位置は特に限定されないが、テトラゾール骨格の3位に存在するフェニル基の2位、3位、4位、5位または6位であることが好ましく、少なくとも1のRが2位または4位にあることが好ましく、2位および/または4位であることが好ましい。かような構造とすることで、水溶性が向上するとともに、テトラゾリウム塩およびテトラゾリウム塩から生じるホルマザンの安定性を向上させることができる。
上記式(1)において、pは、スルホ基(-SO )がテトラゾール骨格の3位のフェニル基に結合する数であり、0または1である。テトラゾリウム塩およびテトラゾリウム塩から生じるホルマザンの水溶性を向上させるという観点からは、p=1であることが好ましい。なお、p=1の場合、スルホ基は電子吸引性基であるため、他の電子吸引性基(例えば、ニトロ基)があると、テトラゾリウム環上の窒素原子のカチオン電荷を不安定化させ、化合物の安定性を低下させる場合がある。上述したとおり、フェニル基の置換基としてアルコキシ基を導入することで、化合物の安定性が向上するが、ニトロ基が同時に導入されると、アルコキシ基導入による安定性の向上が発揮されない場合がある。このため、安定性向上という観点からは、p=1の場合には、nが1または2であり、好ましくは、nが1であり、かつ、Rは、-OR、およびカルボキシル基からなる群から選択されるいずれか一つであることが好ましく、Rは-ORであることがより好ましい。または、テトラゾリウム塩およびテトラゾリウム塩から生じるホルマザンの水溶性を向上させるという観点からは、p=0かつ少なくとも1のRがカルボキシル基であることが好ましい。すなわち、好適な実施形態は、式(1)において、pが1である、またはp=0かつ少なくとも1のRがカルボキシル基である。より好適には、m=2かつp=1である、またはp=0かつ少なくとも1のRがカルボキシル基である。
p=1である場合、テトラゾール骨格の3位のフェニル基を置換するスルホ基(-SO )の置換位置は特に限定されるものではないが、3位または5位であることが好ましい。この位置にスルホ基が置換することで、テトラゾリウム塩およびテトラゾリウム塩から生じるホルマザンの安定性をより有効に向上できる。
上記式(1)において、テトラゾール骨格の3位に存在する置換基が、4-メトキシ-3-スルホフェニル基、2-メトキシ-5-スルホフェニル基、2-メトキシ-4-ニトロ-5-スルホフェニル基、2-メトキシ-4-ニトロフェニル基、4-スルホフェニル基、4-カルボキシ-2-メトキシフェニル基、5-カルボキシ-2-メトキシフェニル基、3-カルボキシ-4-メトキシフェニル基、または4-メトキシ-5-スルホフェニル基が好ましく、4-メトキシ-3-スルホフェニル基、2-メトキシ-5-スルホフェニル基、3-カルボキシ-4-メトキシフェニル基、または4-メトキシ-5-スルホフェニル基であることがより好ましく、4-メトキシ-3-スルホフェニル基、4-メトキシ-5-スルホフェニル基、または、2-メトキシ-5-スルホフェニル基であることが特に好ましい。かような構造とすることで、発色感度が向上し、水溶性が向上するとともに、テトラゾリウム塩およびテトラゾリウム塩から生じるホルマザンの安定性を向上させることができる。また、ホルマザン化合物自体の極大吸収波長をより長波長域にすることができることから、テトラゾール骨格の3位に存在するフェニル基が、4-メトキシ-3-スルホフェニル基であることが特に好ましい。
上記式(1)において、Xは、水素原子またはアルカリ金属を表わす。ここで、Xは、アニオン(スルホ基(-SO ))を中和するために存在する。このため、アルカリ金属の種類は特に制限されず、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムのいずれでもよい。
テトラゾリウム塩の好ましい例としては、以下の構造を有するものが挙げられる。なお、下記構造において、Xは、アルカリ金属を表わす。
Figure 2023087330000004
Figure 2023087330000005
Figure 2023087330000006
Figure 2023087330000007
Figure 2023087330000008
テトラゾリウム塩の特に好ましい例としては、以下の構造がある。すなわち、本発明の好ましい形態では、テトラゾリウム塩は、下記構造を有する。
Figure 2023087330000009
テトラゾリウム塩は、合成しても、または市販品を使用してもよい。例えば、本開示で好ましく使用される2-ベンゾチアゾリル-3-(4-カルボキシ-2-メトキシフェニル)-5-[4-(2-スルホエチルカルバモイル)フェニル]-2H-テトラゾリウム(2-Benzothiazolyl-3-(4-carboxy-2-methoxyphenyl)-5-[4-(2-sulfoethylcarbamoyl)phenyl]-2H-tetrazolium)は、Dojindo Molecular Technologies, Incから、WST-4の商品名で市販されている。また、本開示で好ましく使用される上記式(1)のテトラゾリウム塩は、以下に制限されないが、例えば、国際公開第2018/051822号に記載の方法、または当該方法を適宜修飾した方法によって製造できる。一例としては、アルデヒドとヒドラジンの脱水縮合によりヒドラゾンを合成し、次いで、対応するジアゾニウム塩を水性溶媒中、塩基性条件下で反応させて、ホルマザンを得る。ここで、塩基性化剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが用いられる。次いで得られたホルマザンを亜硝酸エチル、亜硝酸ブチル又は次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤を用いアルコール溶媒(例えば、メタノール、エタノール)中で酸化し、式(1)のテトラゾリウム塩を得ることができる。一実施形態を挙げると、下記構造:
Figure 2023087330000010
を有するヒドラジノ置換ベンゾチアゾールと、下記構造:
Figure 2023087330000011
を有する置換スルホ化ベンズアルデヒドとを反応させて、下記構造:
Figure 2023087330000012
を有するヒドラゾン化合物を得る。一方、下記構造:
Figure 2023087330000013
を有する置換スルホ化アニリンを氷冷しながら塩酸を加え、さらに亜硝酸ナトリウム溶液を滴下して、下記構造:
Figure 2023087330000014
を有する塩化ベンゼンジアゾニウム化合物を得る。上記にて得られたヒドラゾン化合物と塩化ベンゼンジアゾニウム化合物とを塩基性条件(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム存在)下で反応させて、下記構造:
Figure 2023087330000015
を有するホルマザン化合物を得る。次いで、このようにして得られたホルマザン化合物を、酸化剤(例えば、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸エチル、亜硝酸ブチル等の亜硝酸エステル)を用いてアルコール溶媒(例えば、メタノール、エタノール)中で酸化することによって、上記式(1)のテトラゾリウム塩が得られる。
本開示の試薬が液状である場合のテトラゾリウム塩の濃度は、所望の生体成分濃度を測定できる濃度であれば特に制限されないが、テトラゾリウム塩が所望の生体成分の存在量に対して十分量含まれることが好ましい。例えば、上記観点及び通常測定すべき生体成分濃度などを考慮すると、式(1)のテトラゾリウム塩の濃度は、例えば10~200mmol/Lであり、好ましくは30~100mmol/Lであり、より好ましくは40~80mmol/Lである。このような量であれば、式(1)のテトラゾリウム塩は、生体試料に含まれる実質的にすべて(例えば、95モル%以上、好ましくは98モル%以上、特に好ましくは100モル%)の生体成分の量に応じて反応する。このため、所望の生体成分濃度を正確にかつ良好な感度で速やかに測定できる。
本開示の試薬が固体(乾燥試薬)である場合のテトラゾリウム塩の含有量は、試薬100質量部に対して、例えば10~40質量部であり、好ましくは18~30質量部である。テトラゾリウム塩の含有量は、試薬を調製する際の発色色素の仕込み量の割合と実質的に同等である。
テトラゾリウム塩の濃度および含有量が上記範囲であれば、テトラゾリウム塩は十分な発色量を呈することができる。ゆえに、全血サンプルにおける分析対象物濃度(例えば、グルコース濃度)をより高い精度で測定できる。試薬が2種以上のテトラゾリウム塩を含む場合には、上記テトラゾリウム塩の濃度および含有量は配合するテトラゾリウム塩の合計量を意図する。
上記式(1)のテトラゾリウム塩から生成するホルマザン、またはホルマザンと遷移金属イオンとのキレート化合物は、単独でまたは遷移金属化合物とのキレート化合物を形成することにより、血色素の主な吸収帯と重ならない波長域(600nm以上)に大きな吸収波長帯を有する。また、上記式(1)のテトラゾリウム塩は、高い水溶性を有する。このため、上記式(1)のテトラゾリウム塩を用いることによって、全血試料に対しても感度よく生体成分濃度を測定できる。具体的には、上記式(1)のテトラゾリウム塩から生成したホルマザン、またはホルマザンと遷移金属イオンとのキレート化合物の600nm以上800nm以下における最大吸光度(200mg/dLのグルコース水溶液中、セル長=0.045mm)は、0.3以上、より好ましくは0.5以上である。このような極大吸収波長を有するホルマザンまたはホルマザンと遷移金属イオンとのキレート化合物(ゆえに、このようなホルマザンを生成できるテトラゾリウム塩)であれば、血液の吸収の影響を受けにくく、生体成分濃度をより正確にかつ良好な感度で測定できる。なお、本明細書において、特記しない限り、ホルマザンと遷移金属イオンとのキレート化合物の最大吸収波長(λmax)は、下記方法に従って測定された値を採用する。
-ホルマザンと遷移金属イオンとのキレート化合物の最大吸収波長(λmax)の評価-
ホルマザン化合物の終濃度が50~200mMとなるように、10mM MOPS水溶液を加えて、試料を作製した。別途、1Mの遷移金属(例えば、ニッケルイオン)水溶液を作製した。
上記試料 100μLに、別途調製した遷移金属イオン水溶液を10μL加え、素早く攪拌し、混合液を調製した。この混合溶液について、スペクトルを、分光光度計(測定セル長:10mm)にて測定する。スペクトルに基づいて、600nm以上における最大吸収及びその波長(最大吸収波長(λmax))を求める。なお、最大吸収波長(λmax)として、600nm以上において最大吸光度(0.3以上)を満たす範囲において、任意の波長を選択することができる。
(正四面体の配位構造を取りうる遷移金属イオンを生成できる化合物)
本開示の試薬は、正四面体の配位構造を取りうる遷移金属イオンを生成できる化合物を含む。
正四面体の配位構造を取りうる遷移金属イオンとしては、亜鉛イオン(Zn2+)、コバルトイオン(Co2+)などが挙げられ、発色特性(キレート構造)の変化をより抑制できるとの観点から、好ましくは亜鉛イオンである。本発明の好ましい形態では、正四面体の配位構造を取りうる遷移金属イオンを生成できる化合物における遷移金属は、亜鉛である。
テトラゾリウム塩から生成するホルマザンとキレート化合物を形成しうる遷移金属イオンとしては、ニッケルイオン(Ni2+)、銅イオン(Cu2+)などが知られている。ニッケルイオンおよび銅イオンは、主に2つの配位構造を取るため、時間とともにキレート構造が変化し、波長シフトが発生することが考えられる。一方、亜鉛イオンは、主に1つの配位構造を取るため、キレート構造の変化による波長シフトが発生しない。したがって、時間とともに発色特性(キレート構造)が変化することを抑制できると考えられる。
正四面体の配位構造を取りうる遷移金属イオンを生成できる化合物の例としては、酢酸亜鉛、塩化亜鉛、塩化コバルトなどが挙げられる。正四面体の配位構造を取りうる遷移金属イオンを生成できる化合物は、本発明の効果をより発揮できるとの観点から、酢酸亜鉛である。
本開示の試薬が液状である場合の正四面体の配位構造を取りうる遷移金属イオンを生成できる化合物の濃度は、例えば10~500mmol/Lであり、好ましくは50~110mmol/Lである。
本開示の試薬が固体(乾燥試薬)である場合の正四面体の配位構造を取りうる遷移金属イオンを生成できる化合物の含有量(固形分換算)は、乾燥試薬100質量部に対して、好ましくは5~30質量部であり、より好ましくは7~30質量部である。
正四面体の配位構造を取りうる遷移金属イオンを生成できる化合物の濃度は、テトラゾリウム塩1モルに対して、例えば0.1~10モルであり、好ましくは0.5~4モルであり、より好ましくは1~3モルである。
正四面体の配位構造を取りうる遷移金属イオンを生成できる化合物のテトラゾリウム塩に対するモル比率は、例えば100~250%であり、血液展開性をより向上できるとの観点から、好ましくは116%以上231%未満であり、より好ましくは116~145%である。
(酸化還元酵素)
本開示の試薬は、酸化還元酵素を含む。
酸化還元酵素は、特に制限されず、測定される対象である生体成分の種類によって適切に選択されうる。具体的には、グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)、ピロロキノリンキノン(PQQ)を補酵素とするグルコースデヒドロゲナーゼ(PQQ-GDH)、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)を補酵素とするグルコースデヒドロゲナーゼ(FAD-GDH)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)を補酵素とするグルコースデヒドロゲナーゼ(NAD-GDH)およびニコチンアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)を補酵素とするもの(NADP-GDH)等のグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)、グルコースオキシダーゼ(GOD)、乳酸脱水素酵素(LDH)、コレステロールデヒドロゲナーゼ、コレステロールオキシダーゼ、尿酸デヒドロゲナーゼなどが挙げられる。ここで、酸化還元酵素は、1種を単独で使用しても、または2種以上を組み合わせてもよい。例えば、分析対象物(生体成分)がグルコースである場合には、酸化還元酵素がグルコースデヒドロゲナーゼやグルコースオキシダーゼであることが好ましい。また、分析対象物(生体成分)がコレステロールである場合には、酸化還元酵素がコレステロールデヒドロゲナーゼやコレステロールオキシダーゼであることが好ましい。酸化還元酵素の濃度は、特に制限されず、テトラゾリウム塩の量に応じて適宜選択できる。
(その他の成分)
本開示の試薬は、テトラゾリウム塩、正四面体の配位構造を取りうる遷移金属イオンを生成できる化合物および酸化還元酵素に加えて、その他の成分を含むことができる。その他の成分としては、溶血剤、亜硝酸またはその塩、二糖類またはその誘導体、糖アルコール、pH緩衝剤などが挙げられる。
生体成分が含まれる生体試料が全血試料である場合、本開示の試薬は、好ましくは溶血剤、亜硝酸またはその塩、およびスクラロースをさらに含み、より好ましくは溶血剤、亜硝酸またはその塩、スクラロースおよび糖アルコールをさらに含む。
(溶血剤)
本開示の試薬は、溶血剤を含むことができる。一般に血漿中のグルコース濃度を測定する場合には、赤血球量(ヘマトクリット値)を考慮する必要がある。通常、赤血球量は血色素量で判断するが、血色素量を光学的に測定することは難しい。また、実際の赤血球量と血色素量が一致しないことがある。このため、補正が困難である場合がある。また、赤血球による光散乱により、赤血球量の測定自体に特別な測定手法が必要な場合がある。これに対して、本開示の試薬は、赤血球を溶血させるので、より簡易な手法で、より正確なヘマトクリット値を得ることができる。また、通常、血漿中に含まれる分析対象物(例えば、グルコース)と同じ濃度の分析対象物が赤血球中に含まれている。このため、本開示の試薬によれば、血漿および血球(すなわち、全血試料)中の分析対象物(生体成分)(例えば、グルコース)の濃度を測定できる(すなわち、全血試料中の分析対象物濃度を把握できる)。溶血剤は、1種を単独で使用しても、または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
溶血剤としては、例えば、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、アニオン性界面活性剤などが使用できる。酵素の活性を阻害しない観点から、非イオン性界面活性剤が好ましい。
溶血剤は、1種を単独で使用しても、または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
非イオン性界面活性剤としては、11以上15以下(より好ましくは、12以上14以下)のHLB値を有することが好ましい。このような非イオン性界面活性剤としては、オキシエチレン基の平均付加モル数が1以上150以下であり、かつアルキル基の炭素数が1以上18以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテル、ノニルフェニルポリエチレングリコールなどが挙げられる。このような非イオン性界面活性剤は、合成しても、または市販品を使用してもよい。市販品としては、ポリオキシエチレン(9)オクチルフェニルエーテル(オクチルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノールまたはオクチルフェニル-ポリエチレングリコール)(Sigma-Aldrich社製、NonidetTM P-40)、Triton(登録商標) X-100(ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル)、Triton(登録商標) X-114(ポリオキシエチレン(8)オクチルフェニルエーテル)等のポリオキシエチレンp-t-オクチルフェニルエーテル(Triton系界面活性剤);Tween(登録商標) 85等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;Dodecyl-β-D-maltose;Octyl-β-D-glucoside;Nonidet(登録商標)P-40(オクチルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール、)及びNonidet(登録商標)P-40代替品;Tergitol(登録商標) NP-10 Surfactant(Nonylphenol Ethoxylate);IGEPAL(登録商標) CA-630(オクチルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール);エマルゲン(登録商標) 108(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)、エマルゲン(登録商標) 109P;Brij(登録商標) 96ポリエチレングリコールモノオレイルエーテル(n=約2)などが使用できる。
また、両性界面活性剤およびアニオン性界面活性剤もまた、合成しても、または市販品を使用してもよい。市販品としては、CHAPS(3-(3-cholamidepropyl)dimethylammonio-1-propanesulphonate)、塩化アルキルポリアミノエチルグリシン;ドデシル硫酸ナトリウムなどが使用できる。その他、サポニンも使用できる。
溶血剤の濃度は、サンプル量(全血量)に応じて適切に選択できる。本開示の試薬が液体である場合、溶血剤の濃度は、試薬の全質量に対して、例えば2~10質量%であり、好ましくは3~5質量%である。また、センサ形状にした場合、溶血剤の含有量は、試薬100質量部に対して、例えば10~50質量部であり、好ましくは15~40質量部であり、より好ましくは20~35質量部程度である。例えば、1.0μLの全血試料に対するセンサの場合、試薬における溶血剤の組成(含有量)(固形分換算)は、体積比率として1~10%である。
試薬が2種以上の溶血剤を含む場合には、上記溶血剤の濃度は配合する溶血剤の合計量を意図する。
(亜硝酸またはその塩(亜硝酸(塩))
溶血した全血試料を対象とする際、赤血球からヘモグロビン(Fe(II))が遊離する。ヘモグロビンは、テトラゾリウム塩を非酵素的に還元することにより、着色したホルマザンが生成する(偽発色が発生する)。しかし、亜硝酸(塩)は、ヘモグロビンに含まれる2価の鉄イオン(Fe2+)を3価の鉄イオン(Fe3+)に酸化するメト化剤として作用する。このため、溶血した全血試料を測定の対象としても、亜硝酸(塩)が赤血球から遊離したヘモグロビンに対してテトラゾリウム塩に比べて優先して電子を受け取る。これにより、テトラゾリウム塩の非酵素的な還元(偽発色)を抑制する。
亜硝酸塩としては、例えば、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸アンモニウムなどが使用できる。亜硝酸塩は、安定性や汎用性の高さから、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウムが好ましく、亜硝酸ナトリウムがより好ましい。亜硝酸(塩)は、1種を単独で使用しても、または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
亜硝酸(塩)の濃度は、例えば10~200mmol/Lであり、分析対象物濃度(例えば、グルコース濃度)をより高い精度および感度で測定できることから、好ましくは50~80mmol/Lである。
亜硝酸(塩)の濃度は、テトラゾリウム塩1モルに対して、例えば0.2~10モルであり、分析対象物濃度(例えば、グルコース濃度)をより高い精度および感度で測定できることから好ましくは1.0~3.0モルである。
亜硝酸(塩)の含有量(亜硝酸ナトリウムとして計算)は、センサ形状にした場合、試薬100質量部に対して、例えば0.8~10質量部であり、好ましくは1.0~7.5質量部であり、より好ましくは1.3~5質量部である。亜硝酸カリウム等の他の塩化合物や亜硝酸を配合する場合の含有量も、亜硝酸ナトリウムとして算出したこれらの範囲を換算した値とできる。
(その他添加剤)
二糖類またはその誘導体
本開示の試薬が乾燥試薬の場合、二糖類またはその誘導体を使用することにより、正四面体の配位構造を取りうる遷移金属イオンを生成できる化合物、亜硝酸(塩)などの析出を抑え、試薬の透明化を図ることができる。ゆえに、試料に対する乾燥試薬の溶解が促進されるため、分析対象物(生体成分)濃度をより高精度で測定できる。
本発明の好ましい形態では、生体成分濃度測定試薬は、発色色素としてテトラゾリウム塩(特に上記式(1)のテトラゾリウム塩)を含み、さらに二糖類またはその誘導体として、スクラロース(1’,4,6’-トリクロロガラクトスクロース)、スクロース、およびトレハロースの少なくともいずれか1つを含む。これらのうち、スクラロースが最も好ましい。
二糖類またはその誘導体の濃度は、特に制限されず、試薬の組成などに応じて適切に選択できる。二糖類またはその誘導体の濃度は、例えば100~200mmol/Lである。
二糖類またはその誘導体の濃度は、テトラゾリウム塩1モルに対して、例えば1~10モルであり、好ましくは2~4モルである。
二糖類またはその誘導体の含有量(固形分換算)は、センサ形状にした場合、試薬100質量部に対して、例えば10~45質量部であり、好ましくは15~40質量部であり、より好ましくは20質量部以上40質量部未満である。
糖アルコール
本開示の試薬が乾燥試薬の場合、糖アルコールを使用することにより、濡れ性を向上できる。ゆえに、乾燥試薬が試料と素早くなじみ、溶解できる。このため、乾燥試薬と試料との反応が、ムラなく均一に進むため、濃度をより高精度で測定できる。
糖アルコールの例としては、ラクチトール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、マルチトール、マルトトリオースなどが挙げられる。これらのうち、濡れ性のさらなる向上などの観点から、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マンニトールが好ましく、エリスリトール、ソルビトール、キシリトールおよびマンニトールがより好ましく、ソルビトールが特に好ましい。
糖アルコールは、1種を単独で使用しても、または2種以上を併用してもよい。
糖アルコールの濃度は、特に制限されず、試薬の組成などに応じて適切に選択できる。糖アルコールの濃度は、例えば5~100mmol/Lであり、濡れ性をより向上させるとの観点から、好ましくは15~30mmol/Lである。
糖アルコールの濃度は、テトラゾリウム塩1モルに対して、例えば0.1~3.0モルであり、好ましくは0.3~2.0モルである。
糖アルコールの含有量は、センサ形状にした場合、試薬100質量部に対して、例えば0.1~15質量部であり、好ましくは0.5~10質量部であり、より好ましくは1質量部を超えて8質量部未満である。
本開示の試薬が二糖類またはその誘導体および糖アルコールを含む場合、二糖類またはその誘導体による効果および糖アルコールによる効果をバランスよく両立できるとの観点から、糖アルコールの含有量は、二糖類またはその誘導体100モルに対して、例えば1モル以上であり、好ましくは10モル超である。糖アルコールの含有量は、二糖類またはその誘導体100モルに対して、例えば0を超えて60モル以下であり、好ましくは0を超えて25モル未満である。
試薬の使用形態は、特に制限されず、固体、ゲル状、ゾル状、または液体のいずれの形態であってもよい。試薬は、さらに水、バッファー(pH緩衝剤)等を含んでもよい。ここで、バッファーは、特に制限されず、一般的に生体成分濃度を測定する際に使用されるバッファーが同様にして使用できる。具体的には、リン酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、クエン酸-リン酸緩衝剤、トリスヒドロキシメチルアミノメタン-HCl緩衝剤(トリス塩酸緩衝剤)、MES緩衝剤(2-モルホリノエタンスルホン酸緩衝剤)、TES緩衝剤(N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸緩衝剤)、酢酸緩衝剤、MOPS緩衝剤(3-モルホリノプロパンスルホン酸緩衝剤)、MOPS-NaOH緩衝剤、HEPES緩衝剤(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸緩衝剤)、HEPES-NaOH緩衝剤などのGOOD緩衝剤、グリシン-塩酸緩衝剤、グリシン-NaOH緩衝剤、グリシルグリシン-NaOH緩衝剤、グリシルグリシン-KOH緩衝剤などのアミノ酸系緩衝剤、トリス-ホウ酸緩衝剤、ホウ酸-NaOH緩衝剤、ホウ酸緩衝剤などのホウ酸系緩衝剤、またはイミダゾール緩衝剤などが用いられる。これらのうち、リン酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、クエン酸-リン酸緩衝剤、トリス塩酸緩衝剤、MES緩衝剤、酢酸緩衝剤、MOPS緩衝剤、HEPES-NaOH緩衝剤が好ましい。ここで、緩衝剤の濃度としては、特に制限されないが、0.01~1.0Mであるのが好ましい。なお、本発明において緩衝剤の濃度とは、水性溶液中に含まれる緩衝剤の濃度(M、mol/L)をいう。上記観点から、緩衝液のpHは、中性付近、例えば、5.0~8.0程度であることが好ましい。
好ましくは、試薬は、固体(乾燥状態)で使用される。すなわち、本発明の好ましい形態では、試薬は、乾燥試薬である。
乾燥試薬に含まれる各成分の含有量は、液体試薬に含まれる各成分の濃度と、使用した液体試薬の体積とから算出することができる。
本開示の試薬を用いることにより、生体試料(生体成分測定対象)に含まれる特定の生体成分濃度を高精度に測定できる。生体成分測定対象は、目的とする生体成分を含むものであれば特に制限されない。具体的には、血液、ならびに尿、唾液、間質液等の体液などが挙げられる。一実施形態では、生体成分測定対象は、血液であり、好ましくは全血である。
本開示の第2の態様は、全血試料を、本開示の第1の態様に係る生体成分濃度測定試薬と接触させて、発色量を測定し、当該発色量に基づいて前記全血試料中の生体成分の濃度を定量することを有する、生体成分濃度の測定方法である。
本開示の第2の態様において、生体成分測定対象は、全血試料である。全血試料を上述の生体成分濃度測定試薬または当該試薬を含むセンサもしくは成分測定装置(例えば、血糖計)に添加して、全血試料を試薬と溶解・混合することにより、測定する。また、生体成分は、特に制限されず、通常、比色法または電極法により測定される生体成分が同様にして使用できる。具体的には、グルコース、コレステロール、中性脂肪、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)、尿酸などが挙げられる。すなわち、本発明の好ましい形態によると、本開示の試薬は、全血中の、グルコース、コレステロール、中性脂肪、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)または尿酸の濃度の測定のために使用される。また、本発明の好ましい形態によると、生体成分は、グルコース、コレステロール、中性脂肪、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)または尿酸である。
本開示において、測定方法は、特に制限されず、測定対象となる生体成分の種類に応じて適宜選択できる。例えば、生体成分がβ-D-グルコースであり、酸化還元酵素がグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)である場合には、グルコースがGDHによって酸化されてグルコン酸を生成する。その際にGDHの補酵素または電子伝達物質が還元されることを利用し、具体的には結果として還元されたテトラゾリウム塩(ゆえにホルマザンまたはホルマザンと遷移金属イオンとのキレート化合物)の呈色度合を光学的に測定する方法(比色法)、および酸化還元反応によって生じた電流を測定する方法(電極法)に大別される。上記方法のうち、比色法による血糖値の測定は、血糖値の算出の際にヘマトクリット値を用いた補正を行ないやすい、製造工程が簡易である等の利点を有している。このため、全血成分濃度測定用試薬は比色法に好適に使用できる。特に全血試料中のグルコース濃度を測定する場合には、比色法が好ましく使用される。
本開示の試薬は、そのままの形態で生体成分濃度の測定に使用されてもよいが、センサ(生体成分濃度測定用センサ)に組み込まれてもよい。すなわち、本発明は、反応部を有する、全血試料中の生体成分濃度を測定するためのセンサであって、前記反応部は、本開示の生体成分濃度測定試薬を含む、センサ(以下では、単に「センサ」とも称する)をも提供する。本開示の試薬や方法は、自動分析機や測定キット、簡易血糖計等に組み込まれ、日常的な臨床検査に使用できる。本開示の試薬を市販のバイオセンサに組み込むことも可能である。なお、本開示の試薬をセンサに組み込む場合には、1センサ当たりの試薬の含有量は、特に制限されず、通常当該分野において使用される量が同様にして採用できるが、テトラゾリウム塩(特に、式(1)のテトラゾリウム塩)が所望の生体成分の存在量に対して十分量で含まれることが好ましい。上記観点及び通常測定すべき生体成分濃度などを考慮すると、テトラゾリウム塩の濃度は、1センサ当たり、好ましくは3~50nmol、より好ましくは10~30nmolである。このような量であれば、テトラゾリウム塩は、全血試料に含まれる実質的にすべての生体成分の量に応じて反応する。このため、所望の生体成分濃度を正確にかつ良好な感度で速やかに測定できる。
以下では、比色法により血糖値を測定するに使用される本開示の測定用センサ(比色式血糖計)の形態を、図を参照しながら説明する。しかしながら、本発明は、本開示の生体成分濃度測定試薬を使用することを特徴とし、センサの構造は特に制限されない。このため、本開示の生体成分濃度測定試薬を、市販の測定用センサまたはチップならびに国際公開第2016/051930号、国際公開第2018/51822号、国際公開第2020/137532号等の公報に記載されるセンサまたはチップに適用してもよい。同様にして、下記実施形態では、血糖値の測定を目的としたセンサの具体的な形態を説明するが、測定用センサは当該用途に限定されず、他の用途にも同様にしてまたは適切に修飾して適用できる。
図1は、本実施形態に係る測定用センサを用いたグルコース(血糖)の検出に用いられる血糖計を概略的に示す平面図である。
図1において、血糖計10は、全血試料中のグルコース(血糖)を測定する機器として構成されている。この血糖計10は、主に、ユーザ(被検者)が操作するパーソナルユースとして用いられ得る。ユーザは、食前の血糖を測定して自身の血糖管理を行うこともできる。また、医療従事者が被検者の健康状態を評価するために血糖計10を使用することもでき、この場合、血糖計10を適宜改変して医療施設等に設置可能な構成としてもよい。
血糖計10は、全血試料中に含まれるグルコースの含有量(血糖値)を光学的に測定する、比色法の原理を採用している。特に、この血糖計10は、所定波長の測定光を分析サンプル(血液)に照射し、分析サンプルを透過した光を受光する、透過タイプの測定部14により血糖測定を行う。
血糖計10は、血液を取り込んだ測定用センサ12を装着して、または測定用センサ12を装着した状態で測定用センサ12に血液を取り込み、測定部14によりグルコースを検出する。測定用センサ12は、1回の測定毎に廃棄するディスポーザブルタイプに構成されてもよい。一方、血糖計10は、ユーザが測定を簡易に繰り返すことができるように、携帯可能且つ頑強な機器に構成されることが好ましい。
測定用センサ12は、図2に示すように、板状に形成されたセンサ本体部18と、センサ本体部18の内部で板面の面方向に延びる空洞部20(液体用空洞部)とを備える。
センサ本体部18は、図1及び図2に示すように、血糖計10の挿入および離脱方向(血糖計10の先端および基端方向、すなわちB方向)に長辺22を有すると共に、A方向に短い短辺24を有する長方形状に形成されている。例えば、センサ本体部18の長辺22の長さは、短辺24の2倍以上の長さに設定されるとよい。これにより測定用センサ12は、血糖計10に対して充分な挿入量が確保される。
また、センサ本体部18の厚みは、長方形状に形成された側面に比べて極めて小さく(薄く)形成される(図2では、敢えて十分な厚みを有するように図示している)。例えば、センサ本体部18の厚みは、上述した短辺24の1/10以下に設定されることが好ましい。このセンサ本体部18の厚みについては、血糖計10の挿入孔58の形状に応じて適宜設計されるとよい。
測定用センサ12は、空洞部20を有するように、一対の板片30と、一対のスペーサ32とによりセンサ本体部18を構成している。
図3は、図1の測定用センサを示す上面視図である。図3中では、センサ本体部18の角部が尖っているが、例えば角部は丸角に形成されてもよい。また、センサ本体部18は、薄板状に限定されるものではなく、その形状を自由に設計してよいことは勿論である。例えば、センサ本体部18は、上面視で、正方形状や他の多角形状、または円形状(楕円形状を含む)等に形成されてもよい。
センサ本体部18の内部に設けられる空洞部20は、センサ本体部18の短軸方向中間位置にあり、センサ本体部18の長手方向にわたって直線状に形成される。この空洞部20は、センサ本体部18の先端辺24aに形成された先端口部20aと、基端辺24bに形成された基端口部20bにそれぞれ連なり、センサ本体部18の外側に連通している。空洞部20は、先端口部20aからユーザの血液を取り込むと、毛細管現象に基づき延在方向に沿って血液を流動させ得る。空洞部20を流動する血液は少量であり、基端口部20bまで移動しても張力により漏れが抑止される。なお、センサ本体部18の基端辺24b側には、血液を吸収する吸収部(例えば、後述するスペーサ32を基端側のみ多孔質体としたもの等)が設けられていてもよい。
また、空洞部20の所定位置(例えば、図3中に示す先端口部20aと基端口部20bの中間点よりも若干基端寄りの位置)には、血液中のグルコース(血糖)と反応することにより血液中のグルコース(血糖)濃度に応じた色に呈色する試薬(発色試薬)26が塗布され、血糖計10により測定がなされる測定対象部28が設定されている。空洞部20を基端方向に流動する血液が測定対象部28に塗布された試薬26と接触し、血液と試薬26とが反応することで呈色する。なお、空洞部20の長手方向上において、試薬26の塗布位置と測定対象部28は互いにずれていてもよく、例えば試薬26が塗布された反応部を測定対象部28の血液流動方向上流側に設けてもよい。
測定用センサ12は、以上の空洞部20を有するように、一対の板片30と、一対のスペーサ32とによりセンサ本体部18を構成している。一対の板片30は、側面視でそれぞれ上述した長方形状に形成され、互いに積層方向に配置される。つまり、一対の板片30は、センサ本体部18の両側面(上面および下面)を構成している。各板片30の板厚は、非常に小さく、例えば、5~50μm程度の同一寸法に設定されるとよい。2つ(一組)の板片30の厚みは、相互に異なっていてもよい。
一対の板片30は、面方向と直交する方向からある程度の押圧力が加えられても、板形状を維持して塑性変形しない強度を有する。また、各板片30は、測定光が透過可能となるように透明部又は半透明部分を備える。さらに、各板片30は、空洞部20において血液を流動させ得るように適度な親水性を有する平坦状の板面に形成されていることが好ましい。
各板片30を構成する材料は、特に限定されるものではないが、熱可塑性樹脂材料、ガラス、石英等を適用するとよい。熱可塑性樹脂材料としては、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプ口ピレンなど)、シクロオレフィンポリマー、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレートなど)、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド、フッ素樹脂等の高分子材料又はこれらの混合物が挙げられる。
また、一対のスペーサ32は、一対の板片30の間に挟まれるように配置され、所定の接合手段(接着剤等)よりに各板片30の対向面に強固に接着される。つまり各スペーサ32は、一対の板片30同士を離間させるように間に配置されることで、一対の板片30と一対のスペーサ32自体の間に空洞部20を形成させる部材である。この場合、一方のスペーサ32は、図3中のセンサ本体部18の上側長辺22aに接し、この上側長辺22aに沿って先端および基端方向に延びるように配置される。他方のスペーサ32は、図3中のセンサ本体部18の下側長辺22bに接し、この下側長辺22bに沿って先端および基端方向に延びるように配置される。
一対のスペーサ32を構成する材料(基材)は、特に限定されるものではないが、例えば、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマーが挙げられる。または、熱可塑性エス卜ラマ一以外にも、弾性変形可能な種々の材料を適用してもよく、また弾性変形可能な多孔質体(例えばスポンジ)等の構造体を適用してもよい。さらに、一対の板片30の間で硬化状態又は半硬化状態となることにより板片30同士を接着する接着剤を基材の一方または両面に有するスペーサ32として適用してもよい。またさらに、スペーサ32は、試薬26を含有することで、空洞部20に試薬26を溶出する構成であってもよい。
板片30やスペーサ32は、親水化処理されたものであってもよい。親水化処理の方法としては、例えば界面活性剤、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、水溶性シリコーンの他、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド等の親水性高分子を含有した水溶液を浸漬法またはスプレー法等により塗布する方法や、プラズマ照射、グロー放電、コロナ放電、紫外線照射(例えば、エキシマ光照射)等の方法等が挙げられ、これらの方法を単独又は組み合わせてもよい。
次に血糖計10の装置本体16について説明する。図1に示すように、血糖計10は、外観を構成する筐体40を有する。筐体40は、ユーザが把持操作し易い大きさでその内部に血糖計10の制御部42を収容する箱体部44と、箱体部44の一辺(先端側)から先端方向に突出し内部に光学系の測定部14を収容する筒状の測光部46とを含む。また、箱体部44の上面には、電源ボタン48、操作ボタン50、ディスプレイ52が設けられ、測光部46の上面にはイジェク卜レバー54が設けられている。
電源ボタン48は、ユーザの操作下に、血糖計10の起動と起動停止を切り換える。操作ボタン50は、起動状態となった血糖計10において、ユーザの操作に基づき、血糖値の測定や表示を行う、測定結果(過去の測定結果を含む)の表示を切り換える等の操作部として機能する。ディスプレイ52は、液晶や有機EL等により構成され、測定結果の表示やエラー表示等のように測定操作においてユーザに提供する情報を表示する。
イジェク卜レバー54は、先端および基端方向に移動可能に設けられ、測光部46内に設けられる図示しないイジェク卜ピンのロックを解除して、イジェク卜ピンを先端方向に進出可能とする。
一方、装置本体16の測光部46は、ユーザの指等に先端を押し当てるために、箱体部44から先端方向に長く延出している。図2に示すように、この測光部46には、挿入孔58を有するセンサ装着部60と、血中のグルコース(血糖)を光学的に検出する測定部14とが設けられる。
センサ装着部60は、高い硬質性(剛性)を有する材料(例えば、ステンレス)により、外方向に突出するフランジ部60aを先端側に備え、軸方向に所定長さを有する筒状に形成される。このセンサ装着部60は、樹脂材料で構成された測光部46の先端面と軸心部(中心部)にわたって位置決め固定される。測光部46の内面には、図4Aに示すように、センサ装着部60を強固に固定する固定壁46aが突出形成されている。
センサ装着部60を構成する材料としては、例えば、ステンレスやチタン等の金属、アルマイト皮膜処理をしたアルミニウム、液晶ポリマー、ガラスやマイカ等のフィラーを添加したプラスティック、ニッケルめっき等で表面を硬化皮膜したプラスティック、カーボンファイバー、ファインセラミック等、硬質で安易に寸法が変化せず、また繰り返し測定用センサの抜き差しをしても摩耗しにくく、且つ寸法精度良く加工可能な材料が挙げられる。この中でも金属材料を適用すれば、センサ装着部60の製造(射出成形やプレス成形等)時に、高い寸法精度且つ容易に挿入孔58を成形することができる。なお、装置本体16は、測光部46自体を硬質な材料(例えば、金属材料)により構成することで、センサ装着部60を一体成形していてもよい。
センサ装着部60の軸心部には、このセンサ装着部60の壁部62に囲われることにより挿入孔58が設けられる。挿入孔58は、挿入方向(B方向)に長く、左右幅方向(A方向)に短い断面長方形状に形成されている。挿入孔58は、センサ装着部60が測光部46に固着された状態で、その先端面から奥部(基端方向)に向かって所定深さを有する。
センサ装着部60の先端側には、挿入孔58に連なると共に、外部に連通する挿入開口部58aが形成される。この挿入開口部58aの挿入方向(B方向)の寸法は、測定用センサ12の短辺24の寸法(A方向の長さ)に一致している。また、挿入開口部58aの左右幅方向の寸法、すなわち挿入孔58の側面を構成する一対の壁部62の間隔は、図4Aに示すように、測定用センサ12の積層方向の厚み(図4A中のTall)と実質的に同じである。
センサ装着部60は、挿入孔58(測定用孔部59)が延在する途中位置に、測光部46の固定壁46aと協働して一対の素子収容空間64を形成している。一対の素子収容空間64は、測定部14の一部であり、挿入孔58を挟んで互いに対向位置に設けられ、センサ装着部60により形成された各導光部66を介して測定用孔部59に連通している。
測定部14は、一方の素子収容空間64に発光素子68を収容することで発光部70を構成し、他方の素子収容空間64に受光素子72を収容することで受光部74を構成している。センサ装着部60の導光部66は、適宜な直径を有する円形状の穴に形成されることで、所謂アパーチャの役割を果たしている。
発光部70の発光素子68は、第1の波長を有する測定光を測定用センサ12に照射する第1発光素子68aと、第1の波長とは異なる第2の波長を有する測定光を測定用センサ12に照射する第2発光素子68bとを含む(図2中では図示を省略する)。第1発光素子68aと第2発光素子68bは、素子収容空間64の導光部66を臨む位置に並設されている。
発光素子68(第1及び第2発光素子68a、68b)は、発光ダイオード(LED)で構成され得る。第1の波長は、血糖量に応じた試薬26の呈色濃度を検出するための波長であり、例えば、600nm~680nmである。第2の波長は、血液中の赤血球濃度を検出するための波長であり、例えば、510nm~540nmである。箱体部44内の制御部42は、駆動電流を供給して、第1及び第2発光素子68a、68bをそれぞれ所定タイミングで発光させる。この場合、呈色濃度から得られる血糖値を赤血球濃度から得られるヘマトクリット値を用いて補正し、血糖値を求める。なお、さらに他の測定波長で測定することで、血球に起因するノイズを補正してもよい。
受光部74は、素子収容空間64の導光部66を臨む位置に1つの受光素子72を配置して構成される。この受光部74は、測定用センサ12からの透過光を受光するものであり、例えば、フォトダイオード(PD)で構成され得る。
また、挿入孔58の底部(基端面)には、イジェクトレバー54に連結されたイジェクトピン56(イジェクト部)が設けられている。イジェクトピン56は、測光部46の軸方向に沿って延びる棒部56aと、棒部56aの先端部で径方向外側に大径な受部56bとを備える。受部56bには、挿入孔58に挿入された測定用センサ12の基端辺24bが接触する。また、挿入孔58の底部とイジェクトピン56の受部56bの間には、イジェクトピン56を非接触に囲うコイルバネ76が設けられている。コイルバネ76は、イジェクトピン56の受部56bを弾性的に支持する。
測定用センサ12の挿入が完了すると、図4Bに示すように、測定用センサ12の測定対象部28が導光部66に重なる位置に配置される。
イジェクトピン56は、ユーザによる測定用センサ12の挿入に伴い受部56bが押されることで基端方向に変位し、筐体40内に設けられた図示しないロック機構によりロック(固定)される。コイルバネ76は、受部56bの変位に従って弾性的に収縮する。そして、ユーザのイジェクトレバー54の操作により、イジェクトピン56が多少移動するとロック機構のロックが解除され、コイルバネ76の弾性復元力により先端方向にスライドする。これにより、測定用センサ12がイジェクトピン56に押し出されて、挿入孔58から取り出される。
図1に戻り、装置本体16の制御部42は、例えば、図示しない演算部、記憶部、入出力部を有する制御回路によって構成される。この制御部42は、周知のコンピュータを適用することが可能である。制御部42は、例えば、ユーザの操作ボタン50の操作下に、測定部14を駆動制御して血中のグルコースを検出及び算出し、ディスプレイ52に算出した血糖値を表示する。
例えば、測定用センサ12に対し測定光を透過させて分析対象物(例えば、グルコース)を測定する血糖計10において、制御部42は、以下の式(A)で示すBeer-Lambert則に基づいて測定結果を算出する。
Figure 2023087330000016
上記式(A)において、lは全血試料に入射する前の光の強度、lは全血試料から出射した後の光の強度、αは吸光係数、Lは測定光が通過する距離(セル長)である。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)で行われた。また、特記しない限り、「%」および「部」は、それぞれ、「質量%」および「質量部」を意味する。
<テトラゾリウム塩1の合成>
下記方法に従って、下記構造を有する化合物(テトラゾリウム塩1)を合成した。
Figure 2023087330000017
1.ヒドラゾン化合物1の合成
4-ホルミルベンゼン-1,3-ジスルホン酸二ナトリウム(Disodium 4-Formylbenzene-1,3-disulfonate)(東京化成工業株式会社製)1.59g及び(6-メトキシベンゾチアゾール-2-イル)ヒドラジン(2-Hydrazino-6-methoxy-1,3-benzothiazole)(Santa Cruz Biotechnology社製)1.0gをRO水60mLに懸濁させた。この懸濁液を、酢酸酸性下、ウォーターバスにて60℃で2時間、加熱・攪拌した。加熱攪拌終了後、溶媒を除去した。この残渣をイソプロパノールで洗浄した後、沈殿を濾別した。この沈殿をドラフト中で乾燥させて、ヒドラゾン化合物1を得た。
2.ホルマザン化合物1の合成
上記1.のヒドラゾン化合物1 0.76gをRO水10mLおよびDMF10mLの混合液に溶解して、ヒドラゾン化合物1溶液を調製した。p-アニシジン-3-スルホン酸(p-anisidin-3-sulfonic acid)(東京化成工業株式会社製)0.264gをRO水4.09mLに懸濁させ、10N NaOH 130μLを加え溶解させた。この溶液を0℃に保持しつつ、9.6N HCl 280μLを加え、亜硝酸ナトリウム溶液を滴下し、ジアゾ化を行った。このジアゾ化溶液を-20℃に保持し、ヒドラゾン化合物1溶液に滴下した。滴下終了後、10N NaOH300μLを滴下し、2時間室温(25℃)で攪拌して、ホルマザン化合物1を含む溶液(ホルマザン化合物1溶液)を調製した。このホルマザン化合物1溶液を、9.6N HClにてpHを中性に調整し、溶媒を除去した。得られた残渣をイソプロパノールで洗浄した後、沈殿を濾別した。この沈殿を乾燥させ、ホルマザン化合物1を得た。
3.ホルマザン化合物1の精製およびテトラゾリウム塩1の合成
上記2.のホルマザン化合物1をRO水10mLに溶解して、ホルマザン化合物1溶液を調製した。ディスポーザブルカラム(大きさ:20cm×5cm)に、カラムクロマトグラフィー用充填剤(ナカライテスク株式会社製、COSMOSIL 40C18-PREP)を充填し、カラム分取システム(日本ビュッヒ社製、商品名:セパコア)にセットした。このカラムシステムを用いて、ホルマザン化合物1溶液を精製した。採取したフラクションの溶媒を除去し、得られた固形成分にメタノール15mL、9.6N HCl 250μL、15%亜硝酸エチル(CHCHNO)-エタノール溶液5mLを加えて、72時間、室温(25℃)遮光にて攪拌した。
4.テトラゾリウム塩1の回収
上記3.の反応溶液に対し、ジエチルエーテル加えて、テトラゾリウム塩1を沈殿させた。この沈殿を遠心分離し、上澄みを除去後、さらにジエチルエーテルで洗浄した。得られた沈殿をドラフト内で乾燥させ、テトラゾリウム塩1を得た。なお、得られたテトラゾリウム塩1から生成したホルマザンの600nm以上800nm以下における、最大吸光度(200mg/dLのグルコース水溶液中、セル長=0.045mm)を測定したところ、0.5以上であった。
<試薬の調製>
(試薬1:実施例)
酢酸亜鉛、合成例1のテトラゾリウム塩1、酸化還元酵素としてのグルコースデヒドロゲナーゼ(FAD-GDH)(東洋紡株式会社、商品名:GLD-351(D-Glucose:(flavine adenine dinucleotide)-dehydrogenase))、溶血剤としてのNonidet P-40、亜硝酸ナトリウム、スクラロースおよび糖アルコールとしてのソルビトールを含む水溶液を下記表1に示される組成となるように調製して、試薬1を得た。
具体的には、1M 酢酸亜鉛水溶液(1M=183.48g/L)とRO水とを混合して、混合液1を調製した。次に、この混合液1に、亜硝酸ナトリウムを加えて、混合液2を調製した。次に、この混合液2に、スクラロース(1M=397.64g/L)を加えて、混合液3を調製した。次に、この混合液3に、ソルビトール(1M=182.17g/L)を加えて、混合液4を調製した。次に、この混合液4に、テトラゾリウム塩1(1M=693g/L)を加えて、混合液5を調製した。混合液5、30質量% Nonidet水溶液およびFAD-GDHを混合して、試薬1を調製した。
(試薬2:比較例)
酢酸亜鉛に代えて、酢酸ニッケルを使用したこと以外は、試薬1と同様にして、試薬2を調製した。
(試薬3~16:実施例)
下記表1の組成となるようにしたこと以外は、試薬1と同様にして、試薬3~16を調製した。
Figure 2023087330000018
<血糖計センサ(血糖値測定センサ)1~16の作製>
以下のようにして図5に示される血糖計センサ(血糖値測定センサ)を作製した。まず、ステージ上に載置されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム40(製造会社名:東レ株式会社、商品名:ルミラーT60、厚み188μm、8mm×80mm)上に(図5A中の「試薬塗布面3」側に)、上記にて調製した塗布液3.15μLをインクジェット(マイクロジェット社製、Labojet-500Bio)を用いて、±8μm以内のパターニング精度および1pL~1000pLの吐出液量のヘッドを用いて塗布し、25℃で10分間乾燥することにより、試薬層をPETフィルム40に形成した(試薬層付PET)。この試薬層付PETを所定の大きさ(8mm×1.6mm)に切り出してフィルム片(図5A中の「フィルム片2」)を作製した。このフィルム片には、1個あたり0.063μLの試薬が塗布されていた。このフィルム片は、1個あたり、下記表2に示す成分を乾燥試薬の形態で含む。なお、血糖値測定センサ1個あたりの試薬質量(塗布液 0.063μL)は、試薬を調製する際に添加した各試薬成分の組成(質量)と、調製した試薬液の最終容量(731.3μL)および、試薬層付PETから作成したフィルム片2の個数から、算出した。
Figure 2023087330000019
第2基材としての親水処理ポリエステルフィルム(3M社製、商品名:親水処理ポリエステルフィルム9901P、厚み:100μm)(図5A中の「ポリエステルフィルム5」)の両側に、両面テープ(製造会社名:日東電工、商品名:5605BN、厚み:50μm)(図5A中の「両面テープ4」)をスペーサ及び接着部として設けた(センサ土台)。このセンサ土台に、上記にて作製したフィルム片(図5A中の「フィルム片2」)を、試薬層(図5A中の「試薬塗布面3」)がセンサ土台と対向し、かつ、流路(図5A中の「流路6」)の中心となるように貼り付けた。フィルム片を貼り付ける際には、フィルム片が両面テープに所定量埋め込まれるように押圧した。さらに、フィルム片が貼り付けられたセンサ土台に、親水処理ポリエステルフィルムに両面テープ(製造会社名:3M社、商品名:ポリエステルフィルム基材、両面粘着テープ9965、厚み:80μm)が貼り付けられたフィルム片(図5A中の「ポリエステルフィルム7」)を被せて、血糖計センサ(血糖値測定センサ)1~16を作製した。
作製した血糖計センサ(血糖値測定センサ)は、流路部と測定部(試薬部)とを有する。図5B中の流路部において、流路長さ(図5B中の「L1」)は9mmであり、幅(図5B中の「W」)は1.1mmであり、厚み(図5B中の「t1」)は0.13mmであった。図5B中の測定部において、試薬長さ(図5B中の「L2」)は1.6mmであり、幅(図5B中の「W」)は1.1mmであり、厚み(図5B中の「t2」)は0.05mmであった。
なお、流路部におけるセンサ厚み方向に対して直交する方向(流路長手方向)の長さL1としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5~10mmが好ましい。ここで、長さL1は、長いと、成分測定装置への装着(挿入)が容易となる点、および光学測定部への外乱光の進入が減少するという点で有利である。長さL1が短いと、検体量を少なくできる点で有利となる。よって、成分測定装置への装着(挿入)のしやすさ、外乱光の影響、及び検体量のバランスを考慮して、長さL1の上限と下限が決定される。試薬部における流路のセンサ厚み方向に対して直交する方向(流路長手方向)の長さL2としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1~4mmが好ましい。ここで、長さL2は、長い方が、照射スポットの面積を長さ方向に大きく取れるため、精度良く測定ができる点で有利であるが、短い方が、検体量を少なくできる点で有利となる。よって、測定精度と検体量とのバランスを考慮して、長さL2の上限と下限が決定される。
<試験例1>
血液(血漿、ヘマトクリット値(Ht)0)に、高濃度のグルコース溶液(40g/dL)を添加して、グルコース濃度(BG)が400mg/dLの血液検体(BG400)を調製した。
調製した血液検体1μLを作製した血糖値測定センサ1または2に点着し、反応開始から所定の時間における吸光度スペクトルを測定した。なお、環境温度は25℃で行った。結果を図6に示す。
図6に示されるように、遷移金属イオンを生成できる化合物として酢酸亜鉛を使用した試薬1を含む血糖値測定センサ1では、経時的な色変化を抑制できることが分かる。しかし、遷移金属イオンを生成できる化合物として酢酸ニッケルを使用した試薬2を含む血糖値測定センサ2では、時間変化により、構造が変わることで、波長シフトが発生することが分かる。
ニッケルイオンは、主に平面正方形および正八面体形の2つの配位構造を取るため、時間とともにキレート構造が変化すると考えられる。一方、亜鉛イオンは、主に正四面体形の配位構造を取るため、色変化を抑制できると考えられる。
<試験例2>
血液(全血、ヘマトクリット値(Ht)40)に、高濃度のグルコース溶液(40g/dL)を添加して、グルコース濃度(BG)が100mg/dLの血液検体(BG100)、200mg/dLの血液検体(BG200)、400mg/dLの血液検体(BG400)および550mg/dLの血液検体(BG550)を調製した。また、対照として、血液(全血、ヘマトクリット値(Ht)40)に、グルコース分解酵素を添加して、グルコース濃度(BG)が0mg/dLの血液検体(BG0)を調製した。
作製した血糖値測定センサ3の流路入口に、BG0、BG100、BG200、BG400およびBG550を点着した。各検体を試薬部に点着してから9秒後に、ファイバー分光光度計を用いて605nmでの吸光度を測定した。結果を図7に示す。図7は各サンプルを血糖値測定センサで測定した際のグルコース濃度と、ホルマザンおよびZn2+のキレート化合物の極大吸収波長(605nm)における吸光度との関係を示すグラフである。
図7に示されるように、吸光度とグルコース濃度とは直線関係(比例関係)を示す。これから、本開示のセンサを用いることにより、吸光度に基づき血糖値を正確に測定できることが考察される。
これらのことから、本開示の試薬(血糖値測定センサ)に全血の溶血試料を適用して発色量を測定し、当該発色量に基づいて検量線を作製することにより、全血試料中の生体成分の濃度を正確に算出できる。
<試験例3>
血液の粘性が高くなる高ヘマトクリット値の血液(全血、ヘマトクリット値(Ht)60)に、高濃度のグルコース溶液(40g/dL)を添加して、グルコース濃度(BG)が100mg/dLの血液検体(BG100)を調製した。
調製した血液検体1μLを、作製した血糖値測定センサ4~16に点着し、目視で下記評価基準により血液展開性評価を行った。なお、環境温度は25℃で行った:
評価基準
◎:全領域にすぐに血液検体が広がった
○:中央の測定範囲にはすぐに広がったが、全領域に広がるのにやや時間がかかった
△:中央の測定範囲にはすぐに広がったが、全領域に広がるのに時間がかかった。
結果を表3に示す。
Figure 2023087330000020
表3に示されるように、テトラゾリウム塩1に対する酢酸亜鉛のモル比が116%以上とすることにより、許容範囲の血液展開性を維持することができる。
1 試薬リボン、
2 フィルム片、
3 試薬塗布面、
4 両面テープ、
5 ポリエステルフィルム、
6 流路、
7 ポリエステルフィルム、
10 血糖計、
12 測定用センサ、
14 測定部、
16 装置本体、
18 センサ本体部、
20 空洞部、
20a 先端口部、
20b 基端口部、
22 長辺、
22a 上側長辺、
22b 下側長辺、
24 短辺、
24a 先端辺、
24b 基端辺、
26 試薬、
28 測定対象部、
30 板片、
32 スペーサ、
40 筺体、
42 制御部、
44 箱体部、
46 測光部、
48 電源ボタン、
50 操作ボタン、
52 ディスプレイ、
54 イジェクトレバー、
56 イジェクトピン、
56a 棒部、
56b 受部、
58 挿入孔、
58a 挿入開口部、
59 測定用孔部、
60 センサ装着部、
60a フランジ部、
62 壁部、
64 素子収容空間、
66 導光部、
68 発光素子、
70 発光部、
72 受光素子、
74 受光部、
76 コイルバネ。

Claims (9)

  1. テトラゾリウム塩と、正四面体の配位構造を取りうる遷移金属イオンを生成できる化合物と、酸化還元酵素とを含む、生体成分濃度測定試薬。
  2. 前記テトラゾリウム塩は、下記式(1):
    Figure 2023087330000021

    上記式(1)中、Rは、水素原子、水酸基、メトキシ基、およびエトキシ基からなる群から選択されるいずれか一つであり、Rは、ニトロ基、-OR、およびカルボキシル基からなる群から選択されるいずれか一つであり、Rは、水素原子、メチル基またはエチル基であり、少なくとも1はメチル基またはエチル基であり、Rは、メチル基またはエチル基であり、mは、スルホ基(-SO )がテトラゾール骨格の5位のフェニル基に結合する数であり、1または2であり、nは、Rがテトラゾール骨格の3位のフェニル基に結合する数であり、0~2の整数であり、pは、スルホ基(-SO )がテトラゾール骨格の3位のフェニル基に結合する数であり、0または1であり、n+pは1以上であり、qは1または2であり、qが2の場合、各ORは隣接して配置され、この際、各ORが互いに環を形成してもよく、Xは、水素原子またはアルカリ金属を表わす;で示される、テトラゾリウム塩である、請求項1に記載の生体成分濃度測定試薬。
  3. 前記遷移金属は、亜鉛である、請求項1または2に記載の生体成分濃度測定試薬。
  4. 溶血剤、亜硝酸またはその塩、およびスクラロースをさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の生体成分濃度測定試薬。
  5. 前記テトラゾリウム塩に対する前記遷移金属のモル比率は、116%以上231%未満である、請求項1~4のいずれか1項に記載の生体成分濃度測定試薬。
  6. 乾燥試薬である、請求項1~5のいずれか1項に記載の生体成分濃度測定試薬。
  7. 全血試料を、請求項1~6のいずれか1項に記載の生体成分濃度測定試薬と接触させて、発色量を測定し、当該発色量に基づいて前記全血試料中の生体成分の濃度を定量することを有する、生体成分濃度の測定方法。
  8. 前記生体成分が、グルコース、コレステロール、中性脂肪、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)、尿酸である、請求項7に記載の方法。
  9. 反応部を有する、血液試料中の生体成分濃度を測定するためのセンサであって、
    前記反応部は、請求項1~6のいずれか1項に記載の生体成分濃度測定試薬を含む、センサ。
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