JP2023084057A - 植物栽培方法、及び植物栽培装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】植物の生育速度を速め、かつ有用物質量生産を促進できる植物栽培方法を提供する。【解決手段】播種から収穫までの栽培期間の少なくとも一部で、光合成のための主光の照射と、主光に追加して照射可能な追加光の照射とを行い、追加光は、光強度が周期的に変動する追加シグナル光と、光強度が前記追加シグナル光よりも緩やかに変化する追加緩和光の内の少なくとも追加シグナル光を含む。【選択図】図4

Description

本発明は、例えば、植物の生育と有用成分生産を促進させる植物栽培法、及び植物栽培装置に関する。
農作物の生育は気象条件によって大きく変動する。圃場栽培やハウス栽培では日照量が少なくなると、光合成に必要な光エネルギーが不足して、植物の生育速度が低下する。一方、人工光を使用する植物工場では、十分な光エネルギーを照射するための照明機器やランニングコストが大きく、採算性の面での改善が望まれている。そのため、低照明コストで、農作物の路地栽培、ハウス栽培、植物工場の生育速度を促進できる照明技術が望まれている。特許文献1には、低コストで植物の成長を促進できる発明が開示されている。
国際公開第2019/031559号公報
特許文献1に記載の方法は、植物の光合成が行われていない光環境下で、比較的デューティー比が小さい光を照射する。発明者らの実験では、植物が比較的強い刺激によるダメージを受け、変質するという結果が得られている。さらに、生育速度と有用物質生産を独立して制御できないという課題もある。
本発明は、植物の生育速度を速め、かつ有用物質量生産を促進できる植物栽培方法、及び植物栽培装置を提供することを課題とする。
本発明は、以下の構成を有する植物栽培法、及び植物栽培装置を提供する。
(1)播種から収穫までの栽培期間の少なくとも一部で、光合成のための主光の照射と、前記主光に追加して照射可能な追加光の照射とを行い、
前記追加光は、光強度が周期的に変動する追加シグナル光と、光強度が前記追加シグナル光よりも緩やかに変化する追加緩和光の内の少なくとも前記追加シグナル光を含む植物栽培方法。
(2)植物の光合成のための主光が照射される植物栽培装置であって、
前記主光に追加して追加光の照射を行う追加光光源と、
前記追加光光源を駆動制御することが可能な照射光制御部と、を備え、
前記追加光光源が、
光強度が周期的に変動する追加シグナル光を照射する追加シグナル光光源と、
光強度が前記追加シグナル光よりも緩やかに変化する追加緩和光を照射する追加緩和光光源との内の少なくとも前記追加シグナル光光源を備えた植物栽培装置。
本発明によれば、植物の生育速度を速め、かつ有用物質量生産を促進できる植物栽培方法、及び植物栽培装置を提供できる。
光―光合成曲線の一例を示すグラフである。 先行技術のパルス光と実施形態の追加シグナル光とを比較して示す説明図である。 光合成で生産されるグルコースが転流経路と二次代謝経路に分配されるまでの流れを示す説明図である。 シグナル光と緩和光を概略的に示す説明図である。 植物栽培装置の概略構成図である。 実施例2の実験結果を画像により示す説明図である。
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
<植物栽培方法>
<<本実施形態における植物栽培方法の概要>>
植物は、光合成によって生命維持と成長に必要な糖質を自己生産している。光合成では、原料である水(H20)と二酸化炭素(CO2)から糖質であるグルコース(C6H12O6)が生産される。生産のための反応が進行するには、光エネルギーが不可欠である。光エネルギーは、光アンテナとよばれる色素集合組織により吸収される。
本実施形態は、太陽光(自然光)やLEDなどの人工光により植物が生育されている環境で、光強度が周期的に変化する光を追加して照射する植物栽培方法を提供する。追加する光が植物のDNAの生存能力を刺激することで、光合成を間接的に促進させることができる。追加する光は、以下では「追加光」ともいう。追加光については後述する。
<<主光による植物の成長>>
植物は、光合成と呼吸を同時に行っている。光合成は、二酸化炭素を吸収して酸素を放出する。呼吸は、酸素を吸収して二酸化炭素を放出する。光合成における二酸化炭素吸収速度(単位:μmolCO2 m-2s-1)は光強度に依存しているが(図1参照)、呼吸における二酸化炭素吸収量は光強度には依存しない。
光合成における二酸化炭素吸収速度(μmolCO2 m-2s-1)と、呼吸における二酸化炭素放出速度(μmolCO2 m-2s-1)の差が、光合成速度(μmolCO2 m-2s-1)である。光合成速度がゼロになるPPFD(光合成有効量子束密度、後述する)が光補償点(図1)であるが、この値は植物によって異なる。
光合成における光強度は、単位面積当たり、1秒あたりに、葉面に照射される光の個数で定義する。これを、光合成有効量子束密度(Photosynthesis Photon Flux Density、以後、PPFDと略す)と呼ぶ。
水と二酸化炭素が十分に供給されている場合には、グルコース生産量は、PPFDに比例して一定の飽和値まで増加する。グルコース生産量が飽和するときの光強度を光合成飽和光強度と定義する。植物の生育を促進するためには、光合成飽和光強度程度の光が必要である。図1における「光飽和点」が光合成飽和光強度に該当する。
照射する光が光合成飽和強度以下になると、光の不足分を補うためにLEDの光などの人工光を照射することがある。このように光不足を補うことを「補光」と呼ぶ。補光は、光合成を直接的に増加させる方法である。光合成を直接的に増加させる人工光を「補光」と称することも可能である。
本実施形態では、太陽光(自然光)や、人工的な補光を、光合成のための「主光」と称する。この主光は、光合成を直接的に起こしたり、増大させたりするための光である。主光は、太陽光やLED等から発せられる光で、光合成を主に担う光である。
<<追加光による成長促進>>
本実施形態では、主光とは異なる補助的な光を人工的に作成し、植物に照射する。この補助的な光を「追加光」とする。この追加光の照射は、詳細は後述するが、所定の時期や期間に行われる。追加光は、光合成を間接的に促進させるための光である。
例えば、本実施形態の植物栽培方法は、太陽光や人工光を光合成のための主光(メイン光)として照射する過程で、播種から収穫までの任意の栽培期間に、追加光を照射する。追加光は、光強度が周期的に変動する光(追加シグナル光)、及び、光強度が緩やかに変化する光(追加緩和光)の内の少なくとも1つである。追加シグナル光のみを追加光として照射する場合もある。
本実施形態の植物栽培方法は、この追加光を、1日の任意の時間帯に追加して照射する植物栽培法であって、追加光の光強度(PPFD)の変動が周期的で、その変動周期が8μs以上200μs以下で、該周期的変動光の波長が220nm以上2000nm以下であり、該周期的変動光のデューティー比が0.2以上である。この点については後述する。
以下、光強度(PPFD)が周期的に変化する追加光が、光合成を促進させるメカニズムについて説明する。
植物には光の積算機能があることが知られていて、植物は太陽光の強度や照射時間を日々積算している。主光におけるPPFDの低下(PPDF低下)が積算機能により検知されると、植物の葉緑体にあるDNAは、光アンテナ内の葉緑素を増産させる指令を出す。これにより、光吸収量が増加して、光合成が促進される。
本実施形態では、植物に潜在的に備わっている光の強度変化率を検出する微分機能を活用する。植物の微分機能をもっとも効率的に刺激できるのが、一定の時間間隔で点灯と消灯を繰り返すパルス光(シグナル光)である。このパルス光(シグナル光)を、以下では「追加シグナル光」と称する。追加シグナル光は、追加光に含まれる光である。本実施形態では、この追加シグナル光を単独で、又は、追加緩和光とともに、植物に照射する。
追加シグナル光は、主光と比較して、光合成を起こすには不十分である。このため、植物は、一時的に光合成の飢餓状態であると認識する。DNAが光合成飢餓状態を検知すると、光合成に必要な光をもっと吸収させるために、DNAが葉緑素を増産する指令を出す。さらに追加シグナル光により、DNAは二酸化炭素の吸収量が増えるように、外気の出入り口である気孔の開閉制御指令を出す。この結果、追加パルス光照射によって、光合成に必要な光エネルギーと二酸化炭素の吸収量が増加する。すなわち、本実施形態における追加シグナル光は、DNAに葉緑素増産指令と気孔開閉指令を出させるためのトリガー信号として機能する。このような考え方における追加シグナル光の効果を、追加シグナル光のDNAトリガー効果と定義する。
DNAトリガー効果は、時間あたりのトリガー回数には比例して増加するが、トリガー信号の強さには依存しない。トリガー信号の時間間隔が短くなりすぎると、DNAトリガー効果は減少する。また、追加シグナル光を含む追加光による光合成促進効果は、主光のPPFDがどのような値であっても得られる。
図2は、前掲の特許文献1に開示された発明(先行技術)におけるパルス光と、本実施形態の追加シグナル光とを比較して示している。図2における左側のグラフが先行技術を示しており、図2における右側のグラフが本実施形態を示している。図2における左右のグラフは、葉面に入射する光子数(光合成有効量子束密度(PPFD)を表す)の時間変化を示している。
図2の左側のグラフに示すように、先行技術においては、光子数(光合成有効量子束密度、PPFD)のパルスの形状が矩形であり、急峻な立ち上がりと立ち下りを示している。図2の左側のグラフのTはパルスの周期を示しており、ΔTはパルスの幅を示している。周期Tは、追加シグナル光が点滅を繰り返す最小の時間であり、Tの値は、2μs<T<500μsである。
光子数(光合成有効量子束密度、PPFD)の値は、0.001<PPFD<4.0であり、光子数(光合成有効量子束密度、PPFD)の単位は、μmol・m-2・s-1である。パルスのデューティー比(ΔT/T)は、ΔT/T<0.2である。
これに対し、図2の右側のグラフに示す本実施形態においては、追加シグナル光に係るパルスの形状が台形であり、先行技術のパルスに比べて、緩やかな立ち上がりと立ち下りを示している。追加シグナル光の周期(基本周期)がTであり、一つのパルスの立ち上がり時間がΔT1、ピーク時間がΔT2、立ち下がり時間がΔT3である。これらのうちΔT1及びΔT3の光強度は、時間とともに変化する。これらのΔT1及びΔT3における時間変化の勾配は、ΔT1とΔT3とで同じであっても、異なっていてもよい。さらに、ΔT1やΔT3における勾配を、ΔT1やΔT3の途中で変化させてもよい。これらのΔT1やΔT3における勾配を途中で異ならせる形態としては、ΔT1やΔT3における波形を、例えば、曲線状(弓形状、円弧状、波状など)や、ステップ状(段差状、階段状など)等とすることを例示できる。
発明者らの実験によれば、追加光による光合成促進効果は、追加シグナル光の周期Tが、8μs<T<200μsのときに得られる。また、ピーク時間ΔT2の前後のΔT1とΔT3については、どちらか一方が5μs以下であるときに得られる。
先行技術のようなパルス光(図2の左側、矩形波の光)は、相対的に短い時間に強度が変化するので、植物には光の照射によるストレス(光ストレス)として作用する。これに対し、本実施形態の追加シグナル光(図2の右側、台形波)のような光は、先行技術のパルス光と同様に光強度が周期的に変動する光である。しかし、波形上において、光強度が傾斜しながら上昇する期間ΔT1と、傾斜しながら下降する期間ΔT3が付加されているため、先行技術に比べて、光強度の変化が緩やかである。したがって、植物が感じる光ストレスを和らげることができる。
本実施形態ではこれに加え、追加シグナル光に、追加シグナル光(図2の左側)よりも更に光強度が緩やかに変化する光(追加緩和光)が、所望の光合成促進効果に応じて合成される。追加緩和光は、図2の右側に示すように、正弦波状の波形を有しており、基本周期は1ms以上である。追加シグナル光の周期は8μs<T<200μsであり、追加緩和光の基本周期は、追加シグナル光の周期Tの125~2倍以上である。
このように、追加シグナル光に追加緩和光を組み合わせて得られた追加光を植物に照射することにより、追加シグナル光を単独で照射した場合に比べて、より一層、植物が感じる光ストレスを緩和できる。すなわち、本実施形態の追加光は、追加シグナル光と追加緩和光とを組み合わせて、追加光による光ストレスの軽減効果を、可及的に向上させることが可能な光である。
追加シグナル光とは、点灯と消灯を任意の周期で繰り返す光である。追加緩和光とは、強度がほぼ一定の光である。本実施形態において、追加緩和光には、60Hz程度の周波数のリップルがわずかに含まれていることもある。
本実施形態の追加シグナル光は、先行技術のパルス光に比べれば、植物に対する光ストレスを緩和できると考えられる。しかし、本実施形態の追加シグナル光のみだけではなく、更に他の態様の光(ここでは追加緩和光)を加えることで、追加光が植物に与える光ストレスを、より効果的に軽減できる。
追加シグナル光による光ストレスを可能な限り緩和するためには、追加緩和光のPPFDは、追加シグナル光と同程度以上であることが望ましい。追加シグナル光と追加緩和光の波長域(波長帯)は、同じであっても、異なっていてもよい。いずれの場合も、光合成促進効果がある。ただし、追加シグナル光の波長帯と、追加緩和光の波長帯とは、互いに共通する部分(重なり部分)があること(少なくとも一部の波長帯が共通すること)が望ましい。
植物は、光強度の時間的変化に敏感である。したがって、追加シグナル光と追加緩和光が同時に植物に照射されると、植物は、追加シグナル光による光合成を優先的に検知する。このような植物の反応を、植物の光検知におけるカクテルパーティー効果と定義する。
主光による光合成よりも弱い光合成が周期的に起きると、植物は光合成の飢餓状態であると認識し、DNAは光アンテナの葉緑素合成の指令を出す。その結果、光合成のための光利用効率が向上し、太陽光や人工光による主光のPPFDが一定であっても、光合成速度は増える。光合成速度の増加は、追加シグナル光のみを照射した場合でも観察される。
光合成の促進効果と、より安定した生育促進効果は、追加シグナル光よりも緩やかに変化する追加緩和光を重ね合わせることで得られる。追加シグナル光はDNAにトリガー信号を与える光なので、PPFDに制約はない。一方、追加緩和光のPPFDは、追加シグナル光と同等以上であることが望ましい。
図3は、パルス光(追加シグナル光)のバイオマスや有用物質生産の促進効果を示している。図中の上段における右側に示すように、太陽光などの主光に加えて追加シグナル光が植物(図3では葉の図により示す)照射され、光合成が促進される(丸数字の1を付して示す)。増産されたグルコースは、分配比率コントロールの下、生命維持のための基礎代謝で使用された転流経路(丸数字の2を付して示す)、及び、二次代謝経路(丸数字の3を付して示す)に流れる。グルコースは、それぞれの経路で、バイオマスと有用物質に変換される。
このように、追加シグナル光には、光合成促進効果のほかに、グルコースの転流経路と二次代謝経路への分配比率を制御する効果がある。
追加シグナル光は、1日における24時間のうちの任意の時間帯に照射してもよく、予め決められた所定の時間帯に照射してもよい。追加シグナル光の波長は、可視光のみでなく、紫外線光から赤外線までの任意の波長帯でよい。この波長帯において、光合成促進効果が得られる。一般的に、波長が短くなるとバイオマス増加効果が高くなり、波長が長くなると二次代謝促進効果が高くなる。特に、波長が680nmよりも長い光には、顕著な二次代謝促進効果がある。
光合成促進効果は、追加シグナル光を照射しているときだけでなく、照射が完了した後も継続する。したがって、播種から収穫までの任意の期間に追加シグナル光を照射することで、生育促進効果が得られる。そして、照射が完了した後にも、生育促進効果が得られる。
また、追加シグナル光と追加緩和光とを同時に照射する場合、追加緩和光は、追加シグナル光による光ストレスを緩和する。さらに、葉にはそれぞれ、表面と裏面がある。そして、追加光を、葉の同一面(表面又は裏面)に照射することが、生育促進を最大化するためには望ましい。
追加シグナル光と追加緩和光を葉の同一面に照射する場合、それぞれの照射方向は必ずしも同じである必要はない。例えば、異なる方向から、追加シグナル光と追加緩和光とを、同一の葉面(表面又は裏面)に照射してもよい。しかし、生育促進を最大化するためには、追加シグナル光と追加緩和光とを、葉の同一面に照射することが望ましい。
本実施形態による植物栽培方法は、すべての種類の植物の光合成に有効である。したがって、葉菜類、花き、果樹、海草、藻類、及び、微細藻類の生育促進に応用できる。さらに、圃場、ハウス、植物工場、陸上養殖、海面、海中、及び、中山間地での植物栽培に効果がある。
<植物栽培装置10>
図5は、本実施形態の植物栽培装置10に係る概略構成を示している。植物栽培装置10は、水耕又は土耕用の栽培床12と、栽培床12に向けて光を照射する光照射部14と、光照射部14を点灯駆動する照射光制御部16とを備えている。植物栽培装置10は、栽培床12を覆って栽培室を形成する保護部材18を有している。保護部材18を省略することも可能である。
光照射部14は、主光の照射を行う主光光源20と、追加光の照射を行う追加光光源22とを有する。主光光源20と追加光光源22は、照射光制御部16の制御(ここでは電流制御)により個々に駆動制御される。図5では、主光光源20と追加光光源22とが、左右に並んで示されているが、主光光源20の光と追加光光源22の光は、図示を省略する拡散板(拡散レンズであってもよい)を介し、同様の経路で栽培床12に向けて照射される。追加光光源22の光は、図示を省略する光ファイバーを介し、栽培床12に向けて照射してもよい。光ファイバーは、端面発光または側面発光のものを適宜用いることができる。
主光光源20は、所定の時間内で連続点灯し、主光(「連続照射光」ともいう)を連続して出射する。主光光源20には、例えば、LED、蛍光灯、プラズマランプ、水銀灯、白熱電球、メタルハライドランプ、ナトリウムランプ、又は、無電極ランプ等の人工光源が用いられる。
他の主光として、太陽光を使用することも可能である。太陽光を使用する場合、主光光源20を使用しないことや、主光光源20を省略することが可能である。太陽光と主光光源20の光とを併用することも可能である。この場合、太陽光と主光光源20の光を、時間帯等の条件に応じて使い分けてもよい。さらに、太陽光と主光光源20の光を、同時に出射する場合があってもよい。
追加光光源22は、追加シグナル光光源24と追加緩和光光源26とを有する。追加シグナル光光源24は追加シグナル光を照射し、追加緩和光光源26は追加緩和光を照射する。追加シグナル光と追加緩和光は追加光を構成する(図4)。
図5では、追加シグナル光光源24と追加緩和光光源26とが、左右に並んで示されているが、追加シグナル光と追加緩和光は、図示を省略する拡散板(拡散レンズであってもよい)を介し、同様の経路で栽培床12に向けて照射される。追加光光源22は、追加シグナル光光源24と追加緩和光光源26とを集積し、一体化したものであってもよい。
追加光光源22は、追加シグナル光光源24により、220nm~2000nmの波長の範囲内の光を発することができる。追加シグナル光光源24には、栽培対象とする植物の育成に適した波長の光を出射できれば、例えば、LED、EL(エレクトロルミネセンス)、レーザ、紫外光、赤外光などの各種の光源を採用できる。また、追加シグナル光光源24には、パルス点灯制御が容易な光源を用いることが望ましい。追加緩和光光源26としては、例えば、電灯線(50Hzまたは60Hz)で駆動する冷陰極蛍光灯、LED単色灯、LED蛍光灯などの各種の光源を採用できる。
図示は省略するが、追加光光源22は、連続発光する光源と、光路途中に配置されたシャッタを備えたものであってもよい。この場合、シャッタにより光路を断続的に遮って、シグナル光を形成する。また、白色光光源に波長制限フィルタを取り付けて、必要な波長の光を形成することも可能である。シャッタやフィルタは、追加シグナル光光源24と追加緩和光光源26の各々に設けてもよい。
光照射部14は、保護部材18の天井面や側壁の上方、又は栽培床12に設置された柱の上方等に設置される。光照射部14は、照射光制御部16からの指令に応じて、栽培床12を照明する。
光照射部14は、主光光源20、及び、追加光光源22を、それぞれ複数を備えたものとすることが可能である。この場合、複数の主光光源20、及び、複数の追加光光源22を、異なる位置で、かつ、照射角度を異ならせて配置することが可能である。例えば、複数の主光光源20、及び、複数の追加光光源22を、交互に配置するといったことも可能である。また、複数の主光光源20と単数の追加光光源22(又は単数の主光光源20と複数の追加光光源22)を備えるといったことも可能である。栽培床12に複数の方向から光が照射されるように、追加光光源22を設置することも可能である。このようにすると、より安定した生育促進効果が得られる。
このように、複数の主光光源20、及び/又は、複数の追加光光源22を備えることにより、より緻密な光照射を行うことが可能となる。そして、複数の光源の配置や照射角度を異ならせることにより、栽培床12の植物に均一に光照射でき、場所による成長ムラを抑制できる。
照射光制御部16は、本実施形態の植物栽培方法に基づいて、光照射部14を点灯駆動する。照射光制御部16は、主光光源20のみを点灯駆動することや、追加光光源22のみを点灯駆動すること、及び、主光光源20と追加光光源22の両方を同時に点灯駆動することが可能である。
光照射部14が複数の主光光源20、及び/又は、複数の追加光光源22を備える場合には、照射光制御部16は、同種の光源を同期させて点灯させることが可能である。また、栽培床12を複数のプロック(試験区)に分ける場合には、照射光制御部16は、それぞれのプロックで、主光光源20及び追加光光源22を個別に制御することが可能である。
照射光制御部16は、プロック単位で、主光光源20及び追加光光源22を同期させてもよく、複数ブロック又は全ブロックの主光光源20及び追加光光源22を同期させてもよい。追加光光源22における追加シグナル光を同期させることで、植物に照射する追加シグナル光のデューティー比を正確に維持できる。
このような植物栽培装置10は、一般家庭で手軽に家屋内にて栽培するための小型栽培キット、農業用ハウス、建造された栽培室を有する植物工場等の大型のもの等に広く適用することが可能である。
ここで、農業用ハウスとは、透光性を有するフィルムがハウス全面に展張された農業用ビニールハウスのほか、ガラス窓の内側の全面にフィルムが伸ばし拡げられた農業用ガラスハウスとすることもできる。農業用ガラスハウスにおいては、ハウス内の栽培空間における水分を含んだ空気が、フィルムを透過して、ガラス窓とガラス窓の骨組み部分との隙間を通じてハウス外に出る。そのため、農業用ガラスハウスにおいても、ハウス内が高温多湿になることを抑制できる。なお、上記した「透光性」とは、昼間に植物を育てるのに必要な光を通すことを意味する。
追加光の光源(ここでは追加光光源22)を、農業用ハウス内に設置した場合、追加光の一部は、ガラス板、樹脂板、樹脂製フィルムなどにより反射及び拡散(反射拡散)がされるので、追加光の照射効率があがるという利点がある。小型栽培キットや植物工場などでも、同様の照射効率向上の効果は得られる。
また、追加光(追加シグナル光、及び/又は、追加緩和光)の有効な照射方向についても考えることができる。追加光を、主光と同じ方向から照射した場合も、主光と異なる方向から照射した場合も、いずれも生育促進効果は得られる。さらに、主光が十分に届いていない場所(例えば、日陰に位置する葉の表裏の葉面や、日の当たる場所にある葉の裏面など)に追加光を照射すれば、より大きな生育促進効果が得られる。
具体的には、例えば葡萄のように、枝が水平方向に伸びている植物に対して、地面から上方向(斜め上方向を含む)に追加光を照射する。この場合、日陰にある葉の裏面(地面の側の面)に当たる光が増加する。そして、追加光を照射しない場合に比べて、盛んに光合成が行われ、葡萄の甘みが増す。このように、追加光の照射方向を、植物の栽培が行われている環境や、植物の特性等に応じ設定することで、植物の成長をより一層効果的に促進できる。
<先行技術と本実施形態の比較>
以下の表1は、先行技術(前掲の特許文献1に開示された技術事項)と、本実施形態に係る植物栽培方法の基本的な技術事項とを比較して示している。
Figure 2023084057000002
表1に示すように、主光は、先行技術も本実施形態も、太陽光及び人口光(LEDなど)である。追加シグナル光の周期は、先行技術が8μs~500μsであり、本実施形態が8μs~200μsである。追加シグナル光のデューティー比は、先行技術には20%以下の制約があるのに対し、本実施形態では制約がない。
追加シグナル光の光合成光量子密度(μmol・m-2・s-1)は、先行技術には0.001~4.0の制約があるのに対し、本実施形態では制約がない。主光に付加する光の種類は、先行技術が1種類であり、本実施形態が、追加シグナル光と追加緩和光の2種類である。波長帯は、先行技術が400nm~500nmであり、本実施形態が220nm~2000nmである。
照射期間は、先行技術が定植後の生育期であり、本実施形態が、播種から育苗期及び生育期までのうちの任意の期間(全体の期間を含む)である。播種から定植までを育苗期、定植から収穫までを生育期と定義している。
1日の照射時間帯は、先行技術が夜間の時間帯であり、本実施形態が1日の24時間のうちの任意時間帯である。技術的な効果は、先行技術が、生育の促進及び有用成分の増加を可能とすることであり、本実施形態が、生育及び有用成分生産の個別制御を可能とすることである。
また、表1には記載されていないが、先行技術では、パルス光により相対的に強い刺激が植物に与えられる。また、パルス光の波長帯を青色の波長帯に限っているので、葉が重なっているような状況では、隠れている葉まで光が到達し難い。さらに、生育と二次代謝の個別制御(生育速度と有用物質生産を独立して制御すること)は難しい。
これに対して、本実施形態では、点滅光(追加シグナル光)と緩やかに変化する光(追加緩和光)の重畳により、先行技術に比べて、植物に与えられる刺激が少ない。そして、本実施形態の植物栽培方法や植物栽培装置10は、生育と二次代謝の個別制御が可能である。生育と二次代謝の個別制御は、追加シグナル光や追加緩和光の波長や光強度を変化させることにより可能である。
なお、本実施形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
以下、実施例によって本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
<実施例1>
実施例1では、レタスの生育に及ぼす追加光照射の影響を調べた。
最初に、水を含んでいるスポンジにレタスの種を撒き、暗所で3日保管したのち、主光を7日間照射して、苗を育てた。次に、この苗を水耕栽培キットに定植し、28日間栽培した。栽培中、気温22℃、湿度40~50%に保持した。液肥には、ハイポネックス(登録商標:ハイポネックスジャパン社製液体肥料)を1000倍に希釈して使用した。
レタスには、主光と追加光の2種類を照射した。追加光は、追加シグナル光と追加緩和光を組み合わせた光である。
1日の24時間のうち、主光は0時から12時まで照射し、追加光は6時から14時まで照射した。それぞれの光のPPFD(μmol・m-2・s-1)は、主光が220、追加シグナル光が0.01、追加緩和光は0.01であった。
主光は播種後3日目から38日まで照射し、追加光は定植した10日目から38日目まで照射した。
以下では、主光のみで栽培した試験を、コントロール(以後、「CNT」と略す場合がある)と呼び、追加光を照射した試験を、比較試験と呼ぶ。
本実施例1では、以下の「1.」~「3.」の3種類の比較試験を行った。
1.比較試験1 波長域が350nmから600nmの追加光を照射
2.比較試験2 波長域が600nmから800nmの追加光を照射
3.比較試験3 波長域が380nmから500nm、及び、670nmから1000nmまでの追加光を照射
上記の比較試験1~比較試験3では、追加シグナル光のパラメーターは以下の値に固定した。
T=25μs 、ΔT1=2μs、ΔT2=2μs、ΔT3=2μs
ここで、T、ΔT1、ΔT2、及び、ΔT3図2について説明したのと同様の意味である。
播種から38日目に収穫して、根を除いた部分の収穫湿重量を計測し、湿重量比を以下の(1)式により算出した。湿重量は5株の平均値から求めた。

[収穫湿重量比]=試験区の収穫湿重量/コントロール(CNT)の収穫湿重量 (1)

レタスの収穫湿重量1gあたりに含まれるアスコルビン酸(ビタミンC)の重量を高速液体クロマトグラフィー装置(以後、HPLC 装置)で定量分析した。アスコルビン酸比を(2)式により算出した。

[アスコルビン酸重量比]=試験区のアスコルビン酸重量/コントロール(CNT)の湿アスコルビン酸重量 (2)
レタスに含まれるアスコルビン酸の総重量比は以下の(3)式により算出した。

[アスコルビン酸総重量比]=[収穫湿重量比]x[アスコルビン酸重量比] (3)
表2に、各比較試験における、収穫湿重量比、アスコルビン酸重量比、及び、アスコルビン酸総重量比の計算結果を示す。
Figure 2023084057000003
本実施例1によれば、コントロール(CNT)との比率を表す「収穫湿重量比」と「アスコルビン酸重量比」の結果から、追加光の照射(追加光照射)には、レタスの収穫湿重量と、二次代謝成分であるアスコルビン酸を増加させる効果がある。さらに、比較試験1と比較試験2の結果から、追加光照射には、波長が短いほど収穫重量を増加させる効果があり、波長が長くなるにつれて二次代謝を増加させる効果がある。
<実施例2>
実施例2では、レタスの生育に及ぼす追加シグナル光照射の影響を調べた。
最初に、水を含んでいるスポンジにレタスの種を撒き、暗所で3日保管したのち、主光を7日間照射して、苗を育てた。次に、この苗を水耕栽培キットに定植し、10日間栽培した。栽培中、気温22℃、湿度40~50%に保持した。液肥には、ハイポネックス(登録商標:ハイポネックスジャパン社製液体肥料)を1000倍に希釈して施用した。
レタスには、主光と追加光の2種類を照射した。
1日の24時間のうち、主光は0時から12時まで、追加光は10時から18時まで照射した。
主光は播種から20日まで、追加光は播種から定植までの10日照射した。
主光のPPFD(μmol・m-2・s-1)は、定植までの10日間は220、定植からの10日間は20に設定した。
追加光のPPFD(μmol・m-2・s-1)については、追加シグナル光は0.01、追加緩和光は0.02に設定した。播種から10日間照射した。追加シグナル光のパラメーターは以下の値に固定した。
T=30μs 、ΔT1=2μs、ΔT2=2μs、ΔT3=5μs
以下の条件で比較試験(比較試験1)を行った。

比較試験1 波長範囲が400nmから600nmの追加光を照射

比較試験1の結果、定植時の湿重量については、コントロール(CNT)の試験区と追加シグナル光を照射した試験区とで、有意な差はなかった。
比較試験1を行い収穫したレタスの外形比較を図6に示す。図6の左側(試験区 育苗期照射)のレタスが、主光と追加光(追加シグナル光及び追加緩和光)を照射した試験区のレタスであり、図6の右側(コントロール 育苗期照射なし)のレタスが、主光のみを照射した試験区のレタスである。比較試験1によるレタス(図6の左側)は、CNT(図6の右側)に比べて格段に大きい。
播種から20日目に収穫して、根を除いた部分の収穫湿重量を計測した。
収穫湿重量は5株の平均値から求めた。湿重量比は、実施例1で説明した(1)式により算出した。
実施例2の比較試験1における収穫湿重量比は、22±0.1であった。
本実施例2によれば、播種から定植までの期間に限定して追加光(追加シグナル光及び追加緩和光)を照射すると、その後に、PPFDが20(μmol・m-2・s-1)の主光の照射下でも生育が促進することがわかった。
レタスの光補償点はPPFD=20(μmol・m-2・s-1)程度である。従って、PPFDが20(μmol・m-2・s-1)の主光を照射しても、レタスは十分に育つことはできない。
本実実施例2は、一定の期間だけ追加光を照射することで、その後も促進効果が持続することの証拠である。
<実施例3>
実施例3では、レタスの生育に及ぼす追加シグナル光の周期(追加シグナル光周期)の影響を調べた。
最初に、水を含んでいるスポンジにレタスの種を撒き、暗所で3日保管したのち、主光を7日間照射して、苗を育てた。次に、この苗を水耕栽培キットに定植し、28日間栽培した。栽培中、気温22℃、湿度40~50%に保持した。液肥には、ハイポネックス(登録商標:ハイポネックスジャパン社製液体肥料)を1000倍に希釈して施用した。
主光は播種後3日目から38日まで、追加光は定植した10日目から38日目まで照射した。
1日の24時間のうち、主光は0時から12時まで、追加光は6時から14時まで照射した。それぞれの光のPPFD(μmol・m-2・s-1)は、主光が220、追加シグナル光が0.15、追加緩和光は0.01であった。
追加シグナル光の波長範囲は380nmから600nmであった。追加緩和光の波長範囲は500nmから680nmであった。
コントロール(CNT)においては主光のみを照射した。主光のPPFDは0.15(μmol・m-2・s-1)とした。
比較試験では、追加シグナル光のPPFDを0.05(μmol・m-2・s-1)に固定し、比較試験1から比較試験6までのTを8μsから500μsの範囲で変えた。このときの追加シグナル光のパラメーターは、ΔT1=1μs、ΔT2=1μs、ΔT3=(T-2)μsで変化した。追加シグナル光のデューティー比は1.0である。追加緩和光のPPFDは0.10(μmol・m-2・s-1)に固定した。
表3は、実施例3の試験結果を示している。
Figure 2023084057000004
本実施例3により、レタスの収穫湿重量は追加シグナル光の周期に依存すること(「湿重量比」の各値を参照)、及び、Tが8から200μsの範囲で増加することがわかった。さらに、もっとも高い効果は、Tが8μsから100μsの範囲で得られることがわかった。
<実施例4>
実施例4では、ユーグレナの成長に及ぼす追加光照射の影響を調べた。
ハイポネックス(登録商標)を1000倍に希釈した水溶液を満たしたフラスコにユーグレナグラシリスを入れた。水温は27℃に保った。ミドリムシの初期濃度は1μg/Lであった。フラスコは4個用意し、それぞれのフラスコに同量のミドリムシを入れた。
ユーグレナは10日間栽培した。
1日の24時間のうち、主光は0時から12時まで、追加光は6時から13時まで照射した。
追加光のPPFD(μmol・m-2・s-1)は、追加シグナル光は0.001、緩和光は0.002に設定した。
追加シグナル光のパラメーターは、T=8μs 、ΔT1=1μs、ΔT2=1μs、ΔT3=1μsに設定した。
フラスコ1はコントロール(CNT)の試験区として使用し、フラスコ2、3、4は比較試験の試験区として使用した。
10日間の光照射完了後のユーグレナの、単体の大きさ、個体数、パラミロン含有量を測定した。
個体数とパラミロン含有量の測定結果から、個体数比を以下の(4)式で求めた。パラミロン量比を、以下の(5)式で求めた。

[個体数比]=試験区の個体数/コントロール個体数 (4)

[パラミロン重量比]=試験区のパラミロン重量/コントロールのパラミロン重量 (5)
ユーグレナ単体の大きさは、試験条件によらずほぼ同じであった。
表4に、主光と追加光のパラメーター、個体数比、パラミロン比を示す。
Figure 2023084057000005
本実施例4によれば、「個体数比」及び「パラミロン重量比」が、いずれの比較試験においてもコントロール(CNT)より増えている。したがって、追加光は、微細藻類ユーグレナの増殖とパラミロン合成を促進させる効果がある。
<実施例5>
実施例5では、赤紫蘇の育苗期における追加光の有無が、圃場への定植(圃場定植)後の生育に及ぼす影響を調べた。育苗期は、実施例2で説明したのと同様の意味であり、播種から一定の大きさの苗を生育する期間である。圃場とは、太陽光で栽培する農場である。
育苗期間は10日、圃場での栽培期間は60日であった。育苗期に、主光のみを照射するコントロール(CNT)と、主光と追加光を照射する比較試験を行った。
1日の24時間のうち、主光は6時から18時まで、追加光は15時から23時まで照射した。圃場に定植後は、太陽光のみで栽培した。
赤紫蘇の収穫重量とアントシアニン色素重量から収穫重量比とアントシアニン重量比を、それぞれ以下の(6)式と(7)式で算出した。

[収穫重量比]=試験区の収穫重量/コントロールの収穫重量 (6)

[アントシアニン重量比]=試験区アントシアニン重量/コントロールのアントシアニン重量 (7)
表5に、主光と追加光のパラメーター、収穫重量比、アントシアニン重量比を示す。
Figure 2023084057000006
圃場栽培では、育苗期にのみ追加光を照射した赤紫蘇苗は、コントロールの苗よりも、収穫重量は1.7倍から1.8倍、アントシアニン重量は1.6倍から1.6倍増加していた。
本実施例5によれば、赤紫蘇の栽培における育苗期のみの追加光照射は、その後に圃場定植を行い、太陽光による圃場栽培を行った場合に、生育と二次代謝物合成の双方を促進させる効果がある。なお、生育の促進については、表5における「収穫重量比」の各試験結果を参照のこと。二次代謝物合成の促進については、同じく表5における「アントシアニン重量比」の各試験結果を参照のこと。
<実施例6>
実施例6では、レタスの生育に及ぼす緩和光の有無の影響を調べた。
レタスの育苗期には、主光のみを10日間照射して、苗を育成した。
苗を水耕栽培キットに定植し、28日の期間、主光のみ照射のコントロール試験と、主光と追加光を照射する比較試験を行った。
レタスの栽培環境は、実施例1と同じに設定した。
収穫したレタスの収穫湿重量比は、実施例1と同じ方法で算出した。 追加シグナル光のパラメーターは、T=40μs ,ΔT1=2 μs、ΔT2=1μs,ΔT3=2μsに設定した。
表6に、主光のPPFDを10(μmol・m-2・s-1)としたときの、主光と追加光のパラメーターと収穫湿重量比を示す。緩和光がない環境では、レタスの生育は著しく阻害されていることがわかる。
Figure 2023084057000007
表7に、主光のPPFDを20(μmol・m-2・s-1)としたときの、主光と追加光のパラメーターと収穫湿重量比を示す。緩和光があることによって、コントロールに比1.6倍の生育効果があることを示している。
Figure 2023084057000008
本実施例6によれば、緩和光はシグナル光の光刺激を緩和する効果があることがわかる。
<実施形態及び実施例から抽出可能な発明>
(1)播種から収穫までの栽培期間の少なくとも一部で、光合成のための主光(太陽光、人工光など)の照射と、前記主光に追加して照射可能な追加光の照射とを行い、
前記追加光は、光強度が周期的に変動する追加シグナル光と、光強度が前記追加シグナル光よりも緩やかに変化する追加緩和光の内の少なくとも前記追加シグナル光を含む植物栽培方法。
(2)前記追加光の光強度が光補償点よりも小さい、
上記(1)に記載の植物栽培方法。
(3)前記追加光の光強度が、栽培対象の植物に応じて定められた、
上記(1)又は(2)に記載の植物栽培方法。
(4)前記追加シグナル光に係る光強度の変動周期(8μs以上200μs以下など)が、栽培対象の植物の種類に応じて定められた、
上記(3)に記載の植物栽培方法。
(5)前記追加シグナル光に係る光強度の変動周期が8μs以上200μs以下である、
上記(4)に記載の植物栽培方法。
(6)前記追加シグナル光に係る光強度の変動周期が8μs以上100μs以下である、
上記(5)に記載の植物栽培方法。
(7)前記追加緩和光の光強度の変動周期が1ms以上である、
上記(5)又は(6)に記載の植物栽培方法。
(8)前記追加光の照射を行う期間が、播種から収穫までの栽培期間のうちの一部の期間(定植後の期間、1日の一部の時間帯、播種から定植までの10日、育苗期など)である、
上記(1)~(7)のいずれか一項に記載の植物栽培方法。
(9)前記追加光の照射を行う期間が育苗期である、
上記(8)に記載の植物栽培方法。
(10)植物の光合成のための主光(太陽光、人工光など)が照射される植物栽培装置(植物栽培装置10など)であって、
前記主光に追加して追加光の照射を行う追加光光源(追加光光源22など)と、
前記追加光光源を駆動制御することが可能な照射光制御部(照射光制御部16など)と、を備え、
前記追加光光源が、
光強度が周期的に変動する追加シグナル光を照射する追加シグナル光光源(追加シグナル光光源24など)と、
光強度が前記追加シグナル光よりも緩やかに変化する追加緩和光を照射する追加緩和光光源(追加緩和光光源26など)との内の少なくとも前記追加シグナル光光源を備えた植物栽培装置。
(11)前記主光を照射する主光光源(主光光源20など)を備えた、
上記(10)に記載の植物栽培装置。
本願発明の植物栽培方法は、露地栽培、ハウス栽培、植物工場栽培に有効である。光合成を行っているあらゆる植物に対して成長促進効果があるので、レタスや、紫蘇、バジル等の葉物、イチゴ等の果樹類、稲や小麦等の穀物、ワカメ等の海藻類、ヒトエグサやユーグレナ等の緑藻類、等の生産効率向上や生産コスト低減に利用できる。
10 :植物栽培装置
12 :栽培床
14 :光照射部
16 :照射光制御部
18 :保護部材
20 :主光光源
22 :追加光光源
24 :追加シグナル光光源
26 :追加緩和光光源
(1)播種から収穫までの栽培期間の少なくとも一部で、光合成のための主光の照射と、前記主光による植物の光合成を促進する追加光の照射とを行い、
前記追加光は、光強度が周期的に変動する追加シグナル光と、光強度が前記追加シグナル光よりも緩やかに変化する追加緩和光とを含む植物栽培方法。
(2)植物の光合成のための主光が照射される植物栽培装置であって、
前記主光による植物の光合成を促進する追加光の照射を行う追加光光源と、
前記追加光光源を駆動制御することが可能な照射光制御部と、を備え、
前記追加光光源が、
光強度が周期的に変動する追加シグナル光を照射する追加シグナル光光源と、
光強度が前記追加シグナル光よりも緩やかに変化する追加緩和光を照射する追加緩和光光源を備え、
前記追加緩和光を前記追加シグナル光とともに照射する植物栽培装置。

Claims (11)

  1. 播種から収穫までの栽培期間の少なくとも一部で、光合成のための主光の照射と、前記主光に追加して照射可能な追加光の照射とを行い、
    前記追加光は、光強度が周期的に変動する追加シグナル光と、光強度が前記追加シグナル光よりも緩やかに変化する追加緩和光の内の少なくとも前記追加シグナル光を含む植物栽培方法。
  2. 前記追加光の光強度が光補償点よりも小さい、
    請求項1に記載の植物栽培方法。
  3. 前記追加光の光強度が、栽培対象の植物に応じて定められた、
    請求項1又は2に記載の植物栽培方法。
  4. 前記追加シグナル光に係る光強度の変動周期が、栽培対象の植物の種類に応じて定められた、
    請求項3に記載の植物栽培方法。
  5. 前記追加シグナル光に係る光強度の変動周期が8μs以上200μs以下である、
    請求項4に記載の植物栽培方法。
  6. 前記追加シグナル光に係る光強度の変動周期が8μs以上100μs以下である、
    請求項5に記載の植物栽培方法。
  7. 前記追加緩和光の光強度の変動周期が1ms以上である、
    請求項5又は6に記載の植物栽培方法。
  8. 前記追加光の照射を行う期間が、播種から収穫までの栽培期間のうちの一部の期間である、
    請求項1~7のいずれか一項に記載の植物栽培方法。
  9. 前記追加光の照射を行う期間が育苗期である、
    請求項8に記載の植物栽培方法。
  10. 植物の光合成のための主光が照射される植物栽培装置であって、
    前記主光に追加して追加光の照射を行う追加光光源と、
    前記追加光光源を駆動制御することが可能な照射光制御部と、を備え、
    前記追加光光源が、
    光強度が周期的に変動する追加シグナル光を照射する追加シグナル光光源と、
    光強度が前記追加シグナル光よりも緩やかに変化する追加緩和光を照射する追加緩和光光源との内の少なくとも前記追加シグナル光光源を備えた植物栽培装置。
  11. 前記主光を照射する主光光源を備えた、
    請求項10に記載の植物栽培装置。
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