JP2023082415A - 検出セルおよびfaims装置 - Google Patents

検出セルおよびfaims装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2023082415A
JP2023082415A JP2021196173A JP2021196173A JP2023082415A JP 2023082415 A JP2023082415 A JP 2023082415A JP 2021196173 A JP2021196173 A JP 2021196173A JP 2021196173 A JP2021196173 A JP 2021196173A JP 2023082415 A JP2023082415 A JP 2023082415A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
electrode
detection
detection cell
cell according
coating layer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2021196173A
Other languages
English (en)
Inventor
友貴 大塚
Yuki Otsuka
知裕 小坂
Tomohiro Kosaka
知子 寺西
Tomoko Teranishi
慶 生田
Kei Ikuta
和也 辻埜
Kazuya Tsujino
レシヤン マドゥカ アベシンゲ
Maduka Abeysinghe Reshan
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sharp Display Technology Corp
Original Assignee
Sharp Display Technology Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sharp Display Technology Corp filed Critical Sharp Display Technology Corp
Priority to JP2021196173A priority Critical patent/JP2023082415A/ja
Publication of JP2023082415A publication Critical patent/JP2023082415A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Other Investigation Or Analysis Of Materials By Electrical Means (AREA)

Abstract

【課題】インプレーン型のFAIMSの改善。【解決手段】検出セル20は、対向配置される第1電極21および第2電極22であって、当該第1電極21および第2電極22の間に測定対象物が所定の流れ方向に沿って導入される、第1電極21および第2電極22と、第1電極21に対して流れ方向の前方に離間して配置される検出電極26と、少なくとも第1電極21および検出電極26を支持する第1基板23と、第1電極21および第2電極22の表面を覆い、水よりも低い表面張力を有する被覆層25と、を備える。【選択図】図1

Description

ここに開示される技術は、検出セルおよびFAIMS装置に関する。
従来より、複数の成分を含む分析対象物をイオン化し、流動させながら成分分離して検出する分析手法が広く利用されている。例えば、下記の特許文献1には、IMS(Ion Mobility Spectrometry)セル内に、長さ方向に沿って平行電極対を配置するとともに、下流側の端部において長さ方向に交わるように検出電極(コレクタ板)を備えた、検出装置が開示されている。この検出装置は、電極間にイオンを引き寄せるようにドリフト電界を印加することが可能な、いわゆるFAIMS(Field Asymmetric Ion Mobility Spectrometry:電界非対称性イオン移動度分析)装置である。キャリアガスを用いてイオン化物質を電極間に導入することで、特定の移動度を持つイオン化分子のみが電極間を通過して検出されるようになっている。
特表2009-531698号公報
ところで、FAIMSは原理的に、各種環境条件のうちでも湿度による分析結果への影響が大きいことが知られている。とりわけ、検出電極をフィルタ電極の一方と並べて配置する、いわゆるインプレーン型のFAIMSにおいては、測定シグナルの強度低下やノイズの発生、さらには沿面放電が起きやすいという課題がある。
ここに開示される技術は、上記事情に鑑みて完成されたものであって、インプレーン型のFAIMSの改善を目的とする。
(1)本技術に係る検出セルは、対向配置される第1電極および第2電極であって、当該第1電極および第2電極の間に測定対象物が所定の流れ方向に沿って導入される、第1電極および第2電極と、前記第1電極に対して前記流れ方向の前方に離間して配置される検出電極と、少なくとも前記第1電極および前記検出電極を支持する支持体と、前記第1電極から前記検出電極の前記流れ方向に沿う後方の端部にわたる表面および前記第2電極の表面の少なくとも一部を覆い、水よりも低い表面張力を有する被覆層と、を備える。
(2)また、本技術に係る検出セルの一実施形態では、上記(1)の構成に加え、前記被覆層は、前記第1電極および前記第2電極の表面を全て覆っていてもよい。
(3)本技術に係る検出セルの一実施形態では、上記(1)または(2)の構成に加え、前記被覆層は、電気絶縁性を有し、前記検出電極の前記後方の端部から前記第1電極までの領域を全て覆っていてもよい。
(4)本技術に係る検出セルの一実施形態では、上記(1)~(3)のいずれかの構成に加え、前記被覆層は、パーフルオロアルキル基を有していてもよい。
(5)本技術に係る検出セルの一実施形態では、上記(1)~(4)のいずれかの構成に加え、前記被覆層の厚みは、10μm以下であってもよい。
(6)本技術に係る検出セルの一実施形態では、上記(1)~(5)のいずれかの構成に加え、前記第1電極および前記第2電極の離間距離は、50μm以上300μm以下であってもよい。
(7)本技術に係る検出セルの一実施形態では、上記(1)~(6)のいずれかの構成に加え、前記支持体は、前記第1電極、前記第2電極、および前記検出電極を支持する支持面を有し、前記支持体の前記支持面とは反対側の背面には、ヒータが備えられていてもよい。
(8)本技術に係る検出セルの一実施形態では、上記(1)~(6)のいずれかの構成に加え、前記支持体は、前記第1電極、前記第2電極、および前記検出電極を支持する支持面を有し、前記支持面には、前記第1電極、前記第2電極、および前記検出電極との間に絶縁層を介してヒータが備えられていてもよい。
(9)本技術に係る検出セルの一実施形態では、上記(7)または(8)の構成に加え、前記ヒータは、電気伝導性を有する膜体であてもよい。
(10)本技術に係る検出セルの一実施形態では、上記(1)~(9)のいずれかの構成に加え、前記検出電極に対向する偏向電極をさらに備えていてもよい。
(11)本技術に係るFAIMS装置は、上記(10)に記載の検出セルと、前記第1電極および前記第2電極の間に印加する電圧を制御する第1制御部と、前記検出電極および前記偏向電極の間に印加する電圧を制御する第2制御部と、を備える。
てもよい。
(12)本技術に係るFAIMS装置の一実施形態では、上記(11)の構成に加え、前記測定対象物をイオン化させるイオン化源と、イオン化された前記測定対象物を前記流れ方向に沿って流動させる送気装置と、を備えていてもよい。
ここに開示される技術によれば、微量成分についての検出精度を高めることができる。
図1は、一実施形態に係る検出セルを備えるFAIMS装置による移動度分析の様子を示す概略図である。 図2は、測定対象物が水和クラスタイオン化される様子を示す模式図である。 図3は、一実施形態に係る検出セルを備えるFAIMS装置による他の移動度分析の様子を示す概略図である。 図4は、一実施形態に係るFAIMS装置における制御部のブロック図である。 図5Aは、一実施形態に係るFAIMS装置の印加電圧(フィルタ電圧)を示すグラフである。 図5Bは、一実施形態に係るFAIMS装置の印加電圧(補償電圧)を示すグラフである。 図6Aは、一実施形態に係る検出セルの一製造工程を示す平面図である。 図6Bは、一実施形態に係る検出セルの一製造工程を示す断面図である。 図7Aは、一実施形態に係る検出セルの一製造工程を示す平面図である。 図7Bは、一実施形態に係る検出セルの一製造工程を示す断面図である。 図8Aは、一実施形態に係る検出セルの一製造工程を示す平面図である。 図8Bは、一実施形態に係る検出セルの一製造工程を示す断面図である。 図9Aは、一実施形態に係る検出セルの一製造工程を示す平面図である。 図9Bは、一実施形態に係る検出セルの一製造工程を示す断面図である。 図10Aは、一実施形態に係る検出セルの一製造工程を示す平面図である。 図10Bは、一実施形態に係る検出セルの一製造工程を示す断面図である。 図11は、一実施形態に係る検出セルの一製造工程を示す平面図である。 図12は、一実施形態に係る検出セルの一製造工程を示す平面図である。 図13Aは、一実施形態に係る検出セルの一製造工程を示す平面図 図13Bは、一実施形態に係る検出セルの一製造工程を示す断面図 図14Aは、一実施形態に係る検出セルの一製造工程を示す平面図 図14Bは、一実施形態に係る検出セルの一製造工程を示す断面図 図15は、他の実施形態に係るFAIMS装置の構成を示す概略断面図である。 図16は、他の実施形態に係るFAIMS装置の構成を示す概略断面図である。 図17は、他の実施形態に係るFAIMS装置の構成を示す概略断面図である。
以下、ここに開示される技術の好適な実施形態を説明する。本明細書において特に言及している事項(例えば、ここで開示される検出セルの構造)以外の事柄であって、本技術の実施に必要な事柄(例えば、イオン化源の構成やその駆動技術、ドリフト電界の発生条件等に関する一般的事項、ならびに、検出セルによる検出情報の処理や解析に関する一般的事項)は、分析工学分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
≪実施形態1≫
まず、ここに開示される検出セルの特徴について、図1~図14Bを適宜に参照しつつ説明する。図1は、FAIMSを利用した移動度分析装置1(以下、単に「分析装置」という。)の大まかな構成を示す図である。分析装置1は、イオン化源10と、検出セル20と、ポンプ30(送気装置の一例)と、制御部40と、を含む。以下、各要素について説明する。
イオン化源10は、測定対象物である化合物の原子および分子をイオン化する装置である。測定対象物は、イオン化源10によってイオン化されることで、検出セル20において検出可能な構成に変化される。イオン化源10のイオン化手法は特に制限されず、従来の各種のイオン化源を用いることができる。具体的には、イオン化手法としては、例えば、電子衝撃(Electron Impact:EI)法、化学イオン化法、ガス放電法、光イオン化法、脱着イオン化法、エレクトロスプレーイオン化(ESI)法、熱イオン化法、および周囲イオン化法等や、これらを組み合わせた方法などであってよく、検出したい成分をイオン化できるイオン化源を適宜選択するとよい。本例では、具体的には図示しないが、イオン化源10として針電極を備えており、この針電極によって大気圧下でコロナ放電を発生させることにより反応イオンを生じさせ、試料原子や試料分子と反応させることで、間接的に試料イオン(荷電粒子)を発生させるようにしている。試料イオンは、測定対象物のイオンに限定されず、反応物イオン、イオンクラスタ等であってもよい。
イオン化源10としては、上記の針電極の他、ニッケル同位体(63Ni)やアメリシウム同位体(241Am)等を含む放射性イオン源を備え、放射性イオン源から発生される試料をイオン化するイオン化ユニットや、紫外線パルスレーザ発振器を備え、紫外線パルスレーザ光を照射して試料を直接的にアブレーションしてイオン化するイオン化ユニット等であってもよい。イオン化源10によって生成された試料イオンは、大気,キャリアガス等の雰囲気ガス(中性のバッファガス)が、後述するポンプ30によって送気されることで発生する気流に乗って、検出セル20に向けて送られる。
ポンプ30は、試料イオンを含む雰囲気ガスを、検出セル20内を流れ方向に沿って移動させるための要素である。本実施形態のポンプ30は、流れ方向について検出セル20の下流側に設置されている。ポンプ30としては、イオン化源10によって生成された試料イオンを、後述する検出セル20に所定の速度で送ることができる各種の送気装置を用いることができる。ポンプ30の送気機構は特に制限されず、ダイアフラム式、回転翼式、ピストン式、ロータリーベーン式、その他の送気装置等であってよい。検出セル20の大きさ等にもよるが、ポンプ30として、一例では、最大吐出圧力が約0.03MPa以下程度、送気量約1L/min以下程度のマイクロブロアを用いることができる。例えば、圧電セラミックスによる高周波振動(例えば超音波振動)によってダイアフラムを変動させるようにしたマイクロブロアによると、脈動を抑制して送気できる点において、本実施形態で用いるポンプ30として好ましい。
検出セル20は、イオン化源10で生成されたイオンを、移動度の差に基づいて分離(フィルタリング)して所定の移動度のイオンごと検出する要素である。検出セル20は、第1電極21、第2電極22、第1基板23(支持体の一例)、第2基板24(支持体の一例)、被覆層25、検出電極26、および偏向電極27を含む。検出セル20のこれらの各要素は、図示しないチャンバ内に配置されていてもよい。
第1電極21および第2電極22は、互いに対向して配置されることで、平行平板型の一対のフィルタ電極を構成する。第1電極21および第2電極22は、典型的には略同じ寸法の電極が離間して平行に配置されている。そしてこれら第1電極21と第2電極22との間に、試料イオンの流れが導入されるようになっている。以下、第1電極21および第2電極22の間で試料イオンが流れる方向(主方向)を「流れ方向」という。第1電極21と第2電極22との間は、イオン分離空間(ドラフト空間)とされる。本例の第1電極21および第2電極22はそれぞれ、後述する第1基板23および第2基板24の対向面上に備えられている。
第1電極21および第2電極22の形状および大きさ等は特に制限されない。本例の第1電極21および第2電極22はそれぞれ、流れ方向についてやや長尺の矩形状をなしている。第1電極21および第2電極22の試料イオンの流れ方向に沿う寸法は、これに限定されるものではないが、例えば、0.1cm以上(例えば、1cm以上)程度であり、50cm以下(例えば、10cm以下)程度とすることができる。第1電極21および第2電極22の厚みは特に制限されず、例えば、それぞれ独立して、50nm以上1μm以下程度の範囲で適宜設定することができる。第1電極21および第2電極22の厚みは、典型的には600nm以下、例えば400nm以下であり、また、典型的には100nm以上、例えば200nm以上とすることができる。以下、第1電極21と第2電極22とを区別する必要がないときには、これらをフィルタ電極21,22のように総称する場合がある。
フィルタ電極21,22の離間距離(フィルタギャップ)は、厳密には制限されない。フィルタギャップは、狭くすることでイオン分離空間に形成する電界の強度(後述する分散電圧に相当)を効果的に高めることができるために好ましい。ここで、フィルタ電極21,22間における試料イオンの流れが、フィルタ電極21,22の表面に沿った層流を形成すると、試料イオンを効率的に輸送できるために好ましい。しかしながら、フィルタギャップが狭すぎると、第1電極21と第2電極22との間で放電や試料イオンの流れに乱流が生じやすくなるという背反がある。したがって、フィルタギャップは、例えば30μm以上(典型的には、50μm以上)程度であって、例えば500μm以下(典型的には、300μm以下)程度とするとよい。
フィルタ電極21,22を構成する材料は特に制限されない。フィルタ電極21,22を構成する材料は、両電極間に後述する電界を発生させることができる各種の導電性材料であればよく、金属材料、無機導電性材料、および有機導電性材料のいずれであってもよい。分析対象である試料およびそのイオンが金属腐食性を示すことが考えられる場合は、フィルタ電極21,22の表面を構成する導電性材料として、無機導電性材料および有機導電性材料のいずれかを採用するとよい。フィルタ電極21,22を構成する金属材料としては特に制限はなく、例えばArFエキシマレーザを用いたリソグラフィ技術によってフィルタ電極21,22を作製する場合、金(Au)、銅(Cu)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、Cr(クロム)、モリブデン(Mo)、Ta(タンタル)、およびタングステン(W)等の高導電性金属の中から選択されるいずれか1種類の金属やその金属の合金、いずれか2種以上を含む合金等によって構成するとよい。これらの金属材料は、例えば上層側から順に、W/Ta,Ti/Al,Ti/Al/Ti,またはCu/Ti等の積層構造として、下地(典型的には、基板23,24)に対する密着性等の物性を高めるようにしてもよい。無機導電性材料としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium-Zinc-Oxide)、IGZO(Indium-Gallium-Zinc-Oxide)、ZnO等が挙げられる。有機導電性材料としては、ポリアセチレン、ポリチオフェン類等が挙げられる。フィルタ電極21,22は、金属材料、無機導電性材料、および有機導電性材料のいずれか2種以上を積層して構成してもよい。
第1基板23は、第1電極21を支持する要素である。本例において第1基板23は、図1に示すように、第1電極21と、検出電極26とを、流れ方向について互いに離間した位置に備えている。第2基板24は、偏向電極27を支持する要素である。本例において第2基板24は、第2電極22と、偏向電極27とを、流れ方向について互いに離間した位置に備えている。第1基板23と第2基板24とは、これらの電極が備えられた面(支持面の一例)が互いに対向するように配置される。以下、第1基板23と第2基板24とを区別する必要がないときには、これらを基板23,24のように総称する。本例の基板23,24は、互いに長尺の矩形をなす平板状であり、長手方向に沿って試料イオンが移動するようにポンプ30の送気方向が定められるとともに、その上流側にフィルタ電極21,22が配され、下流側に、検出電極26および偏向電極27が配されている。しかしながら、基板23,24の形状は、第1電極21と第2電極22、検出電極26と偏向電極27を、所定のギャップで平行に支持することができるものであればその形状は特に制限されない。例えば、第1基板23と第2基板24とは、一体となって筒状(角筒状、円筒状等)であってもよい。
本例の基板23,24は、電気絶縁性を有する各種の絶縁性材料によって構成することができる。絶縁性材料としては、室温(例えば25℃)における体積抵抗率が10Ωcm以上(例えば、1010Ωcm以上、1012Ωcm以上、さらには1015Ωcm以上)の材料が挙げられ、例えば、上記体積抵抗率を有する有機材料または無機材料等であってよい。これに限定されるものではないが、本例においては、上記電極をリソグラフィ技術によって好適に形成できるとの観点から、基板23,24として、平板状のガラス基板を用いている。基板23,24の厚みに制限はないが、例えば、0.1~1mm程度(一例として、0.5mm、0.7mm等)とすることが例示される。
検出電極26は、検出セル20に導入された試料イオンが接触することでその電荷を受け取る要素である。検出電極26は、試料イオンを受ける捕集面26Aを有している。また、検出電極26は、制御部40と接続されている。このような構成によって、検出電極26は、捕集面26Aにおいて受け取った試料イオンの量を制御部40にて把握することができるようになっている。
偏向電極27は、検出セル20に導入された試料イオンを検出電極26に捕集させるように、試料イオンを検出電極26に向けて偏向させるための要素である。偏向電極27は、検出電極26に対向するように配置される。偏向電極27は、第2電位調整部42に接続されている。偏向電極27は、後述する第2電位調整部42によって電圧が印加されることによって、検出電極26と偏向電極27との間に試料イオンを検出電極26に偏向させる電界を形成することができるようになっている。検出電極26と偏向電極27との間は、イオン分離空間を通過した試料イオンを検出するための検出空間である。
検出電極26および偏向電極27の形状は特に制限されない。検出電極26および偏向電極27の厚みはそれぞれ、例えば1μm以下程度であってよく、典型的には600nm以下、例えば500nm以下、400nm以下、200nm以下などであってよい。また、検出電極26および偏向電極27の厚みは、それぞれ独立して、10nm以上程度であってよく、典型的には50nm以上、例えば100nm以上であってよい。検出電極26および偏向電極27を構成する材料およびその構造については、上記のフィルタ電極21,22と同様であってよい。
なおここで、分析対象である試料イオンの周囲に水分子が存在すると、図2に示すように、試料イオンは水分子と水和して水クラスタ(水クラスタ付加イオン、水和クラスタ等を包含する用語である。)を形成する。またこのとき、試料イオンの他に、意図せず混入する異物分子も水クラスタを形成し得る。一方で、発明者らの検討によると、フィルタ電極21,22の間で試料イオンを含むキャリアガスが上記のとおり層流を形成しているとき、フィルタ電極21,22の表面付近においては微視的にキャリアガスの滞留層が形成される。このとき、キャリアガス中の水クラスタ異物分子は、フィルタ電極21,22の表面に吸着しやすく、フィルタ電極21,22の表面を汚染しやすい。フィルタ電極21,22の汚染(コンタミ)は、測定シグナルの強度低下を招いたり、ノイズの原因となるために好ましくない。そこで、本技術における検出セル20は、被覆層25を備えている。
被覆層25は、検出セル20の内面を、水よりも低い表面張力を有する表面に改質するための要素である。被覆層25の表面は撥水性を呈する。したがって、被覆層25によって覆われている領域は、水をはじく撥水性を備えるものとなる。被覆層25は、検出セル20の内面のうち、第1電極21から検出電極26の流れ方向に沿う後方の端部26Eにわたる表面、および、第2電極22の表面、の少なくとも一部を覆う。本実施形態において被覆層25は、第1電極21と第2電極22の表面(上面および側面)を全て覆い、第1電極21および第2電極22がイオン分離空間に露出されないようにしている。被覆層25は、第1電極21および第2電極22を確実に覆うために、第1電極21および第2電極22の周縁において基板23,24の表面をも覆っている。
このような被覆層25は、検出セル20の使用温度領域において安定して撥水性を呈することができる撥水性材料によって構成することができる。水の表面張力は、例えば、75.64mN/m(0℃)から58.85mN/m(100℃)であり、典型的には72.75mN/m(20℃)程度である。したがって、被覆層25は、例えば0~100℃において、表面張力が75.64~58.85mN/mよりも低い撥水性を呈することができる撥水性材料によって構成することができる。被覆層25の表面張力は、水に比して低ければ低いほど、より高い撥水性を呈することができるために好ましい。被覆層25の表面張力は、好ましくは50mN/m(20℃)以下であり、より好ましくは30mN/m(20℃)以下であり、例えば、25mN/m(20℃)以下、20mN/m(20℃)以下、15mN/m(20℃)以下等であるとより好ましい。なお、被覆層25を積層構造とする場合には、少なくとも最表面の層が上記表面張力を有していればよい。
なお、被覆層25における表面張力の発現機構は特に制限されず、例えば、被覆層25を表面自由エネルギーが小さい材料によって構成することや、被覆層25を撥水性を呈する程度の微細な凹凸表面によって構成すること、等が挙げられる。被覆層25を形成するに適した表面自由エネルギーが小さい材料としては、各種の有機材料や無機材料を考慮することができる。表面自由エネルギーが小さい有機材料としては、例えば、トリフルオロメチル基等に代表されるパーフルオロアルキル基、アルキルシリル基、フルオロシリル基、長鎖アルキル基(例えば、炭素数6以上)等の官能基を有する合成樹脂材料や、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂等の絶縁性合成樹脂材料が挙げられる。上記官能基は、いずれか1種を単独で有していてもよいし、2種以上を組み合わせて有していてもよい。これに限定されるものではないが、被覆層25を構成する材料としては、AGC株式会社製のサイトップ、AGCセイミケミカル株式会社製のエスエフコート等が好適例として挙げられる。本実施形態では、被覆層25の最表面を、パーフルオロアルキル基を有する絶縁性のフッ素樹脂(サイトップSタイプ,表面張力19mN/m以下,水接触角110°以上、いずれも@25℃)によって構成している。表面自由エネルギーが小さい無機材料としては、例えば、窒化ケイ素(例えば、Si、SiNと表すこともある)、シリコン酸窒化物(例えば、SiONと表すこともある)
被覆層25は、電気伝導性を有していてもよいし、電気伝導性を有していなくてもよい。被覆層25が電気伝導性を有していない場合、被覆層25が第1電極21と第2電極22との間を完全に絶縁してしまうと、イオン分離空間に適切なドリフト電界を発生させることが困難となるために好ましくない。したがって、フィルタ電極21,22を覆う被覆層25の厚みは、ドリフト電界の形成に影響を与えるような電界損失を招かない程度であることが好ましい。より具体的には、被覆層25の厚みは、例えば、10μm以下程度を目安とすることができ、1μm以下がより好ましく、例えば800nm以下等とすることができる。被覆層25の厚みの下限は、被覆層25の耐久性等を損ねない範囲において適宜設定することができ、これに限定されるものではないが、例えば、50nm以上とすることが挙げられる。
なお、フィルタ電極21,22の離間距離を安定して保つために、必ずしもこれに限定されるものではないが、基板23,24間に、スペーサ28(図12等参照)を配置することができる。スペーサ28は、フィルタ電極21,22の離間距離を適切に保つことができれば、その形状および構成等は特に制限されない。スペーサ28をフィルタ電極21,22上に配置する場合には、スペーサ28は電気絶縁性を有する材料により構成するとよい。これに限定されるものではないが、スペーサ28は、所定の粒径(例えば約30μm以上500μm以下程度、典型的には約50μm以上300μm以下程度)を有するスペーサ粒子(例えば、スチレンビーズ、ガラスビース等)と、スペーサ粒子を基板23,24(またはフィルタ電極21,22)に固定するためのバインダと、を含むとよい。スペーサ28は、スペーサ粒子の間隙を埋めるマトリックス樹脂材料を含んでいてもよい。スペーサ28は、流れ方向に沿って連続的または断続的に設けることで、試料イオンを含むキャリアガスの流路を形成することができるために好適である。本実施形態においてスペーサ28は、フィルタ電極21,22、検出電極26、および偏向電極27の両端において、流れ方向に沿うように連続して延びる、2本のライン状に形成されている。これにより、イオン分離空間は、二条のスペーサ28とフィルタ電極21,22とによって四方が取り囲まれ、流路が形成されている。また、検出空間は、二条のスペーサ28と検出電極26および偏向電極27とによって四方が取り囲まれ、流路が形成されている。また、イオン分離空間と検出空間との間についても、二条のスペーサ28と基板23,24とによって四方が取り囲まれ、流路が形成されている。
制御部40は、分析装置1の駆動を制御する要素である。本実施形態の制御部40は、検出セル20と接続されている。より具体的には、制御部40は、第2電極22、検出電極26、および偏向電極27と接続されており、これらの動作を制御することができるように構成されている。なお、本実施形態における検出セル20のうち、第1電極21は接地されている。また、本実施形態の制御部40は付加的に、イオン化源10、ポンプ30に接続されるとともに、分析装置1に電力を供給するための外部電源と接続できるようになっている。
制御部40は、図4に示すように、各種情報等を送受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(central processing unit:CPU)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、各種の情報を記憶する記憶部Mと、計時機能を有するタイマT等と、を有するマイクロコンピュータによって構成されている。これに限定されるものではないが、ROMには、例えば、第1電位調整部41および第2電位調整部42のそれぞれについて電圧を印加するために用いられるコンピュータプログラム、データベース、データテーブルや、検出された試料イオンの量に基づく各種解析処理を行うためのコンピュータプログラム、データベース、テーブル等が格納されていてもよい。また記憶部には、例えば、分析対象のID情報、検出された試料イオンの量に関する情報、各種解析処理に用いられる情報、解析結果等に関する情報等を格納することができる。
制御部40は、第1電位調整部41と、第2電位調整部42と、計測部43と、イオン化源制御部44と、流量調整部45と、を備えている。これらの各部は独立して、ハードウェアによって構成されていてもよいし、CPUがプログラムを実行することにより機能的に実現されていてもよい。
第1電位調整部41は、フィルタ電極21,22の間に電位差を調整して付与する要素である。第1電位調整部41がフィルタ電極21,22に電位差(フィルタ電圧)を発生させることにより、フィルタ電極21,22間に電界が形成される。ここで、イオンの移動度は、低電界中では電界強度によらず一定であるが、高電界中では電界強度に依存してその値が変化する。そこで第1電位調整部41は、典型的にはパルス電圧発生装置等の可変電圧発生器を備えており、例えば、図5Aに示す矩形波状の分散電圧(Dispersion Voltage:DV)を印加できるようになっている。フィルタ電極21,22間に印加される分散電圧は、正と負の両方の極性を示す双極性パルス電圧である。正と負の両方の極性における電位は、典型的には、非対称に切り替えられるようになっている。電圧波形は、高電界を形成する高電圧レベルVである期間Tと、低電界を形成する低電圧レベルVである期間Tと、を交互に含む非対称パルス波形となっている。この電圧波形において、電圧の時間平均はゼロとなるように設定されている。
フィルタ電極21,22の間のイオン分離空間には、後述する流量調整部45によるポンプ30の駆動によって、試料イオンを含むキャリアガス(典型的には中性)の流れが一定の流速で形成されている。ここで、第1電位調整部41によって高電圧レベルVの電圧が印加されることで、イオン分離空間に高電界が形成される。また、第1電位調整部41によって低電圧レベルVの電圧が印加されることで、イオン分離空間に低電界が形成される。高電界と低電界とでは、極性が異なっている。このような非対称な電界が交互に発生する環境に試料イオンが送られると、試料イオンは、第1電極21および第2電極22に交互に引き寄せられながらジグザグに進行する。このとき、第1電極21または第2電極22に大きく偏向された試料イオンは、第1電極21または第2電極22に衝突し、フィルタ電極21,22を通過できない。第1電極21と第2電極22との間でバランスした試料イオンのみが、フィルタ電極21,22を通過して、下流側の検出電極26に送られる。フィルタ電極21,22を通過するイオン種は、第1電位調整部41によって、フィルタ電極21,22の間に、分散電圧DVに重畳させて、例えば図5Bに示す補償電圧(Compensation Voltage:CV)を大きさを変えながら印加することで、変化させることができる。補償電圧は、直流電圧であり、所定の分散電圧DVごとに一定の変化率および周期TCVで変化させることで、移動度の異なるイオン種を順に検出空間に送ることができる。図5Bは、補償電圧CVを、周期TCVで下限電圧VCVLから上限電圧VCVHの範囲で変化させる様子を示している。
第2電位調整部42は、検出電極26と偏向電極27との間に所定の電位差を付与する要素である。本例における第2電位調整部42は、偏向電極27に接続されており、偏向電極27に対して電位を付与するようになっている。第2電位調整部42は、検出セル20に導入された試料イオンがプラスイオンであれば、検出電極26に対して偏向電極27が高電位となるように、検出セル20に導入された試料イオンがマイナスイオンであれば、検出電極26に対して偏向電極27が低電位となるように、偏向電極27の電位を調整する。これにより、イオン分離空間を通過した試料イオンを検出電極26に向けて偏向させることができる。
計測部43は、検出電極26に到達した試料イオンの数を検出する要素である。計測部43は、検出電極26に接続されており、検出電極26に到達した試料イオンの数量に関する情報を電気信号として取得する。計測部43は、当該試料イオンの数量を計測するだけでなく、例えば第1電位調整部41と協働して、試料イオンを定性および定量することができるように構成されていてもよい。計測部43によって計測された試料イオンの数量等に関する情報は、例えば、記憶部Mに記憶される。
イオン化源制御部44は、イオン化源10に接続されており、イオン化源10の動作を制御できるように構成されている。イオン化源制御部44は、例えば、イオン化源10において針電極に印加する電圧の極性をプラスとマイナスとで切り替えることで、発生させる試料イオンの極性を、プラスイオンとマイナスイオンとに切り替えることができるようになっている。これに限定されるものではないAg、イオン化源制御部44が、マイナスの試料イオンを発生させたときは、第1電位調整部41および第2電位調整部42は、マイナスの試料イオンがフィルタ電極21,22を通過できるように、フィルタ電極21,22に印加する電圧を調整する(図1参照)。また、イオン化源制御部44が、プラスの試料イオンを発生させたときは、第1電位調整部41および第2電位調整部42は、プラスの試料イオンがフィルタ電極21,22を通過できるように、フィルタ電極21,22に印加する電圧を調整する(図3参照)。
流量調整部45は、ポンプ30に接続されており、ポンプ30の動作を制御できるように構成されている。流量調整部45は、例えば、ポンプ30の駆動と停止のタイミングや、ポンプ30に備えられたファンの回転速度を制御することで、検出セル20内の気体の流速等を調整できるようになっている。
以上の移動度分析装置1について、検出セル20の製造方法について以下に説明する。本技術に係る検出セル20は、上記のとおりフィルタ電極21,22や、検出電極26、被覆層25が、比較的薄い膜が積層された積層構造をなしていることから、例えば図6A~図14Bに示すように、リソグラフィ技術(例えば、フォトリソグラフィ)によって好適に作成することができる。
すなわち、まず図6Aおよび図6Bに示すように、ガラス基板からなる第2基板24上に、第2電極22および偏向電極27を同時に形成するための電極層22Xをほぼ全面に製膜する。第2電極22および偏向電極27をMoにより構成する場合、例えば、スパッタ法によりMo層を100~600nmの厚みで堆積させることでこの電極層22Xを形成することができる。次いで、既知のフォトリソグラフィ法(すなわち、フォトリソグラフィ工程、ウェットエッチング工程、およびレジスト剥離洗浄工程)によって電極層22Xを所定の形状にパターニングすることで、図7Aおよび図7Bに示すように、第2電極22および偏向電極27を形成することができる。第2電極22および偏向電極27は、Moの他に、Ti、Al、Cu、Au、W、Ta、MoW等の金属材料や、ITO、IZO、ZnO等の導電性酸化物により形成してもよい。さらに電極層22Xは、密着性を向上させるために、上層側からW/Ta、Ti/Al、Ti/Al/Ti、Cu/Ti等の金属層の組み合わせからなる積層構造としてもよい。第2電極22および偏向電極27にはそれぞれ、制御部40等と電気的に接続するために、第2基板24の端部にまで延びる配線部22Yを延設するとよい。
その後、図8Aおよび図8Bに示すように、第2電極22を覆うように被覆層25を形成する。被覆層25の形成手法は特に制限されず、各種の成膜手法を採用することができる。合成樹脂材料からなる被覆層25を形成する場合は、一例として、スピンコーティング法、ディップコーティング法、スプレーコーティング法、ダイコーティング法、スクリーン印刷法、ポッティング法等が挙げられる。本実施形態において被覆層25の厚みは、約1μmとなるように形成した。
その一方で、図9Aおよび図9Bに示すように、ガラス基板からなる第1基板23上に、第1電極21および検出電極26を同時に形成するための電極層21Xをほぼ全面に製膜する。第1電極21および検出電極26は、上記の第2電極22および偏向電極27と同様に、例えば、スパッタ法により電極層21Xを形成したのち、既知のフォトリソグラフィ法によって電極層21Xを所定の形状にパターニングすることで、第1電極21および検出電極26を形成することができる(図10Aおよび図10B参照)。第1電極21および検出電極26にはそれぞれ、制御部40等と電気的に接続するために、第1基板23の端部にまで延びる配線部21Yを延設するとよい。
その後、図10Aおよび図10Bに示すように、第1電極21を覆うように被覆層25を形成する。被覆層25の形成手法は、第2電極22を覆う被覆層25と同様とすることができる。以上の第1基板23上への各層の形成と、第2基板24上への各層の成形とは、いずれを先に実施してもよく、並行して実施してもよい。
次に、それぞれ電極を形成した第1基板23と第2基板24とを貼り合わせる。基板23,24の貼り合わせに際しては、第1電極21と第2電極22とが、また、検出電極26と偏向電極27とが対向するように、第2基板24の裏表を変えるとよい(図11参照)。また、第1基板23上に、第1基板23と第2基板24とが所定のフィルタギャップを維持できるように、スペーサ用材料28Xを供給する。本実施形態では、例えば図12に示すように、流れ方向に沿って、第1電極21および検出電極26の両端部に重なるように、ディスペンサ等の供給手段によってスペーサ用材料28Xを二条に供給している。本実施形態のスペーサ用材料28Xは、所定の粒径スペーサ粒子を含むペースト状の絶縁性シール材料(例えば、乾燥硬化性の樹脂組成物)である。そしてスペーサ用材料28Xが硬化しないうちに、図13Aおよび図13Bに示すように、第1基板23の上に第2基板24を載せて両者を固着させる。このとき、配線部21Y,22Yの端部が、平面視で対向する基板24,23からそれぞれ露出するように、基板24,23をずらして重ね合わせたときに、第1電極21および第2電極22と、検出電極26および偏向電極27がそれぞれ対向するように、電極を形成する位置を調整するとよい。なお、第1基板23の配線部21Yと第2基板24との間、および、第2基板24の配線部22Yと第1基板23との間を確実に接続するために、これらの接続部分に導電性ペースト(例えば銀ペースト、図示せず)を供給してもよい。
必須の工程ではないが、第1基板23と第2基板24とを貼り合わせた後に、必要に応じて、第1基板23と第2基板24とを加圧したり、アニール処理を施すなどして、各要素の密着性を高めるようにしてもよい。これにより、検出セル20を得ることができる。
このように得られた検出セル20に対し、例えば図14Aおよび図14Bに示すように、入口部材51と、出口部材52と、を装着してもよい。入口部材51は、イオン化源10と検出セル20の上流側の端部とを接続する部材である。出口部材52は、検出セル20の下流側の端部とポンプ30とを接続する部材である。入口部材51および出口部材52は、基板23,24を所定の間隔で安定して保持するための保持部材としての機能を有していてもよい。
<実施形態1の構成と効果>
上記の検出セル20は、対向配置される第1電極21および第2電極22であって、当該第1電極21および第2電極22の間に測定対象物が所定の流れ方向に沿って導入される、第1電極21および第2電極22と、第1電極21に対して流れ方向の前方に離間して配置される検出電極26と、少なくとも第1電極21および検出電極26を支持する第1基板23(支持体)と、第1電極21および第2電極22の表面を覆い、水よりも低い表面張力を有する被覆層25と、を備える。
FAIMS等の分析装置1においては、ドリフト電界中に分析対象物とともに水分子が導入されると、水分子はイオン化分子と結合して水クラスタを生成する。そのためFAIMS分析装置1は原理的に、各種環境条件のうちでも湿度の影響を受けやすい。しかしながら、上記構成の検出セル20によると、フィルタ電極21,22を構成する第1電極21および第2電極22の表面に被覆層25が設けられ、表面張力の低い撥水性領域とされている。フィルタ電極21,22の表面が撥水性領域とされることにより、キャリアガスとともに混入する異物の水クラスタは被覆層25に弾かれて、フィルタ電極21,22上への吸着が抑制される。その結果、フィルタ電極21,22の表面に付着した異物に起因する測定シグナルの強度低下やノイズの発生を抑制することができる。このような検出セル20は、インプレーン型のFAIMS装置に特に好ましく適用される。
上記の検出セル20において、被覆層25は、パーフルオロアルキル基を有する材料によって構成されている。パーフルオロアルキル基を有する材料は、高い撥水性を示す。被覆層25は、例えば水の接触角が90度を超え、例えば100度以上、典型的には110度以上である。上記構成によると、異物の水クラスタがフィルタ電極21,22上に付着して、感度低下やノイズ発生等の不具合を招くことをより好適に抑制できる。
上記の検出セル20において、被覆層25の厚みは約1μmと10μm以下である。このような構成によると、第1電極21と第2電極22との間に損失を抑えてドリフト電界を形成することができるために好ましい。
上記の検出セル20において、第1電極21および第2電極22の離間距離は、50μm以上300μm以下である。このような構成によると、小さい電圧で一対のフィルタ電極21,22間に高電界を形成でき、小さなスケールで検出セル20を構成することができるために好ましい。また、フィルタ電極21,22間に測定対象物の流路を適切に確保しつつ、微細なFAIMSを構築することができるために好ましい。
上記の検出セル20において、検出電極26に対向する偏向電極27をさらに備えている。上記構成によると、偏向電極27と検出電極26との間に偏向電界を形成することができ、第1電極21および第2電極22の間(イオン分離空間)を通過した測定対象物を検出電極26に向けて偏向させ、より確実に検出電極26に到達させることができるために好ましい。
上記の分析装置1(FAIMS装置)は、上記検出セル20と、第1電極21および第2電極22間に印加する電圧を制御する第1電位調整部41(第1制御部)と、検出電極26および偏向電極27間に印加する電圧を制御する第2電位調整部42(第2制御部)と、を備えている。上記構成によると、上記の検出セル20を採用することによって、異物に起因する測定シグナルの強度低下やノイズの発生が低減された、インプレーン型のFAIMS装置が提供される。偏向電極27と検出電極26との間に偏向電界を形成することができ、第1電極および第2電極を通過した測定対象物を検出電極に向けて偏向させ、より確実に検出電極に到達させることができる。なお、検出セル20は、分析装置1に対して容易に着脱可能に構成されていてもよい。
上記の分析装置1は、測定対象物をイオン化させるイオン化源10と、イオン化された測定対象物を流れ方向に沿って流動させるポンプ30(送気装置)と、を備えている。このような構成によると、イオン化させた測定対象物を速やかに所定の流速で検出セル20に導入することができ、高い検出精度を実現することができる。
≪実施形態2≫
実施形態2に係る検出セル120について、図15を参照して説明する。実施形態2の検出セル120は、被覆層125が設けられた領域が、実施形態1と異なっている。それ以外の構成については、実施形態1と同様であってよく、同様の構成、作用および効果についての説明は省略する。
具体的には、被覆層125は、実施形態1と同様に、第1電極21および第2電極22の表面を全て覆う。また、被覆層125は、検出電極26の流れ方向について後方の端部26Eから第1電極21までの領域と、偏向電極27の流れ方向について後方の端部27Eから第2電極22までの領域と、を全て覆っている。したがって、第1電極21と検出電極26との間および第2電極22と偏向電極27との間は、被覆層125によって覆われて撥水性領域となり、この領域において第1基板23および第2基板24は表面に露出していない。また、被覆層125は、電気絶縁性を有している。このような構成によると、第1電極21と検出電極26との間、および、第2電極22と偏向電極27との間、に水クラスタ異物分子が付着することが抑制される。その結果、第1電極21と検出電極26との間や、第2電極22と偏向電極27との間で、沿面放電が生じることを抑制することができ、その結果、フィルタ電極21,22と検出電極26および偏向電極27との間の離間距離を縮小することができる。延いては、測定シグナルのピーク強度を高めることができる。
また、被覆層125は、検出電極26および偏向電極27の後方の端部26E,27Eの側面から上面に至る部分も覆っている。このような構成によると、第1基板23の表面から突出している検出電極26および偏向電極27の端部26E,27Eに対し、後方から異物の水クラスタイオンが衝突して、端部26E,27E側面と基板23,24の上面とからなる角部に異物の水クラスタイオンがコンタミネーションとして蓄積されることが抑制される。その結果、異物に起因する測定シグナルの強度低下やノイズや沿面放電の発生を抑制することができる。
≪実施形態3≫
実施形態3に係る検出セル220について、図16を参照して説明する。実施形態3の検出セル220は、ヒータ55が設けられている点において実施形態1および2と異なっている。それ以外の構成については、実施形態1または2と同様であってよく、同様の構成、作用および効果についての説明は省略する。
第1基板23および第2基板24の電極支持面とは反対側の非対向面23B,24B(背面の一例)にはそれぞれ、ヒータ55が備えられている。ヒータ55は、電気伝導性を有する材料からなり、図示しない制御装置を介して外部電源に接続されている。ヒータ55は、電力を供給されることによって発熱する。これによって、検出セル220の構成要素(典型的には、第1基板23,第2基板24、フィルタ電極21,22、被覆層25、検出電極26、および偏向電極27)と検出セル220内部の雰囲気とを加熱することができるようになっている。これに限定されるものではないが、本実施形態のヒータ55は、膜状をなしており、第1基板23および第2基板24の非対向面23B,24Bの全面を覆うように配されている。なお、具体的には図示しないが、ヒータ55は、絶縁膜によって覆われていてもよい。
ヒータ55を構成する材料としては、各種の発熱材料等を考慮することができ、一例として、銅,Ni-Cr系合金,Fe-Cr-Al系合金,モリブデン,タングステン,白金,二珪化モリブデン等の金属発熱材料、炭化ケイ素,黒鉛,ジルコニア,ランタンクロマイト等の無機発熱材料、ITO等の透明伝導材料、オクチル酸ルテニウム,チタン酸テトラ-n-ブチル等の有機金属抵抗材料等が挙げられる。ヒータ55の形状は特に制限されず、例えば、線状ヒータや面状ヒータであってよい。本実施形態のヒータ55は、ITO膜(膜体の一例)からなる面状ヒータである。
検出セル220がこのようなヒータ55を備えることによって、検出セル220内部の温度を外部環境温度に影響されずに、所定の測定に適した温度(例えば、常温(20℃))に保つことができる。また、測定後にヒータ55によって、フィルタ電極21,22、被覆層25、検出電極26、および偏向電極27等を40~50℃程度に加熱すると、これらに水クラスタが付着していた場合に当該水クラスタを脱着させることができ、測定環境をクリーンな環境にリセットすることができる。検出セル220は、ヒータ55と併せてサーミスタ等の温度センサを備えていてもよい。また、制御装置は、ヒータ55への通電量や、通電時間、通電のタイミング等を制御するためのヒータ制御部(図示せず)を備えていてもよい。この場合、ヒータ制御部は、ハードウェアによって構成されていてもよいし、CPUがプログラムを実行することで機能的に実現されてもよい。
≪実施形態4≫
実施形態4に係る検出セル320について、図17を参照して説明する。実施形態4の検出セル320は、ヒータ155の設けられている位置が実施形態3と異なっている。それ以外の構成については、実施形態1~3と同様であってよく、同様の構成、作用および効果についての説明は省略する。
第1基板23および第2基板24の対向面23A,24Aにはそれぞれ、ヒータ155が備えられている。ヒータ155は、対向面23A,24A上に設けられた発熱層155Aと、この発熱層155Aを覆う絶縁層155Bと、を備えている。本実施形態の発熱層155Aは、対向面23A,24Aの略全面に設けられており、絶縁層155Bは発熱層155Aの全面を覆っている。すなわち、絶縁層155Bによって、第1電極21と発熱層155A、および、第1電極21と検出電極26、が電気的に絶縁されている。絶縁層155Bは、被覆層25としての役割を兼ねていてもよい。このような構成によっても、実施形態3と同様の効果が奏される。
<他の実施形態>
ここに開示される技術は、上記記述および図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態において、被覆層25は第1電極21および第2電極22の表面の全面を覆っていた。しかしながら、被覆層25が、第1電極21および第2電極22の少なくとも一部を覆うことで、上記の効果が奏されることは当業者であれば理解することができる。
(2)上記実施形態では、各電極等を作製するための超微細加工技術(リソグラフィ技術)において、露光源として、ArFエキシマレーザを用いていた。露光源はこの例に限定されず、例えば、KrFエキシマレーザ、紫外線、EUV(極端紫外線)、放射光(典型的には、X線)、放射線(典型的には、電子線)、イオンビーム等の他の露光源であってよい。
(3)上記実施形態では、第1電極21が接地されて第2電極22に電圧が印加される構成となっていた。しかしながら、一対のフィルタ電極21,22間に電圧を印加する方法は特に制限されず、従来公知の様々な構成を採用することができる。例えば、フィルタ電極21,22のうち、第1電極21のみに電圧を印加してもよいし、両方の電極21,22に電圧を印加してもよい。
(4)上記実施形態においてスペーサは、乾燥硬化するシール材料によって構成されていた。しかしながら、スペーサの構成はこの例に限定されず、例えば、所定の厚さを有する両面テープや合成樹脂部材等を用いてもよい。また、検出セル20は、例えば、一つの検出セル20よりも大寸法の第1基板23と第2基板24とにそれぞれ、アレイ状に電極層を複数形成しておき、第1基板23と第2基板24とを貼り合わせたのちに、一つの検出セル20に切り分けるようにするとよい。切り分けは、ダイシングカッターを用いた接触加工により行ってもよいし、レーザを用いた非接触加工により行ってもよい。第1基板23および第2基板24の切り分けは、第1基板23と第2基板24の貼り合わせの前に行ってもよいし、貼り合わせ後に行ってもよい。
1…移動度分析装置(分析装置、FAIMS装置)、10…イオン化源、20,120,220,320…検出セル、21,22…フィルタ電極、21…第1電極、22…第2電極、23…第1基板、24…第2基板、25,125…被覆層、26…検出電極、27…偏向電極、28…スペーサ、30…ポンプ、40…制御部、41…第1電位調整部、42…第2電位調整部、43…計測部、44…イオン化源制御部、45…流量調整部、51…入口部材、52…出口部材、55,155…ヒータ、155A…発熱層、155B…絶縁層

Claims (12)

  1. 対向配置される第1電極および第2電極であって、当該第1電極および第2電極の間に測定対象物が所定の流れ方向に沿って導入される、第1電極および第2電極と、
    前記第1電極に対して前記流れ方向の前方に離間して配置される検出電極と、
    少なくとも前記第1電極および前記検出電極を支持する支持体と、
    前記第1電極から前記検出電極の前記流れ方向に沿う後方の端部にわたる表面および前記第2電極の表面の少なくとも一部を覆い、水よりも低い表面張力を有する被覆層と、
    を備える、検出セル。
  2. 前記被覆層は、前記第1電極および前記第2電極の表面を全て覆っている、請求項1に記載の検出セル。
  3. 前記被覆層は、電気絶縁性を有し、前記検出電極の前記後方の端部から前記第1電極までの領域を全て覆っている、請求項1または2に記載の検出セル。
  4. 前記被覆層は、パーフルオロアルキル基を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の検出セル。
  5. 前記被覆層の厚みは、10μm以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の検出セル。
  6. 前記第1電極および前記第2電極の離間距離は、50μm以上300μm以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の検出セル。
  7. 前記支持体は、前記第1電極、前記第2電極、および前記検出電極を支持する支持面を有し、
    前記支持体の前記支持面とは反対側の背面には、ヒータが備えられている、請求項1~6のいずれか1項に記載の検出セル。
  8. 前記支持体は、前記第1電極、前記第2電極、および前記検出電極を支持する支持面を有し、
    前記支持面には、前記第1電極、前記第2電極、および前記検出電極との間に絶縁層を介してヒータが備えられている、請求項1~6のいずれか1項に記載の検出セル。
  9. 前記ヒータは、電気伝導性を有する膜体である、請求項7または8に記載の検出セル。
  10. 前記検出電極に対向する偏向電極をさらに備えている、請求項1~9のいずれか1項に記載の検出セル。
  11. 請求項10に記載の検出セルと、
    前記第1電極および前記第2電極の間に印加する電圧を制御する第1制御部と、
    前記検出電極および前記偏向電極の間に印加する電圧を制御する第2制御部と、
    を備える、FAIMS装置。
  12. 前記測定対象物をイオン化させるイオン化源と、
    イオン化された前記測定対象物を前記流れ方向に沿って流動させる送気装置と、
    を備える、請求項11に記載のFAIMS装置。
JP2021196173A 2021-12-02 2021-12-02 検出セルおよびfaims装置 Pending JP2023082415A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021196173A JP2023082415A (ja) 2021-12-02 2021-12-02 検出セルおよびfaims装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021196173A JP2023082415A (ja) 2021-12-02 2021-12-02 検出セルおよびfaims装置

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2023082415A true JP2023082415A (ja) 2023-06-14

Family

ID=86728338

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2021196173A Pending JP2023082415A (ja) 2021-12-02 2021-12-02 検出セルおよびfaims装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2023082415A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4608630B2 (ja) イオン発生器及び除電器
Taylor et al. Electrospray-printed nanostructured graphene oxide gas sensors
KR101645213B1 (ko) 용량형 센서 및 이의 제조 방법
US20190128844A1 (en) Ion mobility spectrometry (ims) device with charged material transportation chamber
US11169059B2 (en) Chemical substance concentrator and chemical substance detection device
US8614605B2 (en) Gas cell unit, atomic oscillator and electronic apparatus
US20070097162A1 (en) Liquid ejection apparatus, liquid ejection method, and method for forming wiring pattern of circuit board
EP3100024A1 (en) Integrated circuits based biosensors
KR102598354B1 (ko) 발열을 이용하여 액적을 제거하는 자가 세정 장치 및 방법
JP2023082415A (ja) 検出セルおよびfaims装置
JP7527476B2 (ja) 移動度分析器
US10502724B2 (en) Ultra-low power digital chemical analyzers
US20170336378A1 (en) Ultra-low power digital chemical analyzers
US20230204541A1 (en) Detection cell, faims device, and program
US20240036002A1 (en) Detector
WO2022224299A1 (ja) 検出器
JP2008004488A (ja) 空間に均一な濃度分布のイオンを供給するイオン発生素子及びイオン発生器並びに除電器
US20240219346A1 (en) Detector
JP7488310B2 (ja) 検出器及び検出器の製造方法
JP7315309B2 (ja) イオン風生成機の制御方法
KR101992022B1 (ko) 반도체식 가스센서
JP4078157B2 (ja) 複合機能装置、複合機能センサ及び複合機能装置の製造方法
JP2005005128A (ja) イオン移動度検出器
US20240027398A1 (en) Detector
JP3033313B2 (ja) イオン流制御静電記録ヘッド