JP2023081472A - 水硬性組成物、水硬性組成物の製造方法、及び水硬性組成物の圧縮強さ増進方法 - Google Patents

水硬性組成物、水硬性組成物の製造方法、及び水硬性組成物の圧縮強さ増進方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高炉水砕スラグ及び炭酸塩等の混合比率を高めてアルカリ刺激材の比率を下げた水硬性組成物において、製造におけるCO2発生量をより低減することが可能であり、且つ、初期及び長期の双方において優れた圧縮強さを発揮し得る水硬性組成物を提供すること。【解決手段】本開示の一側面は、アルカリ刺激材、高炉水砕スラグ、及び炭酸塩を含むセメントと、促進剤と、を含み、上記セメントの全量を基準として、上記アルカリ刺激材の含有量が5.0~60.0質量%であり、上記高炉水砕スラグの含有量が35.0~90.0質量%であり、上記炭酸塩の含有量が5~40質量%であり、上記セメントにおける石膏の含有量が、SO3換算で、1.70質量%以下であり、上記促進剤の含有量が、上記セメントの100質量部に対して、0.2~5.0質量部である、水硬性組成物を提供する。【選択図】なし

Description

本開示は、水硬性組成物、水硬性組成物の製造方法、及び水硬性組成物の圧縮強さ増進方法に関する。
近年、地球温暖化対策の要求が高まり、セメントを含む水硬性組成物の製造におけるCO発生量の低減が求められている。CO発生量を低減する方法として、調製時におけるCO発生量の大きなセメントクリンカの一部を、混合材に置き換えて水硬性組成物を製造する方法が広く検討されている。混合材の中でも、高炉水砕スラグ(BFS)等の鉄鋼スラグは、コンクリートの長期強度増進、及び塩分遮蔽効果の向上を期待できる。そのため、混合材として鉄鋼スラグを用い、その混合比率を高めたセメントの研究が進められている。
しかし、高炉水砕スラグの混合比率を高めた高炉セメントでは、普通ポルトランドセメント(OPC)の単独使用の場合に比べて、セメントを硬化する際の初期強度が低下する傾向にある。そのため、高炉セメントの場合であっても、OPCの単独使用の場合と同程度の強度を発現させるための方法が種々検討されている。
例えば、水酸化カルシウム微粉末を更に添加する方法(例えば、非特許文献1)、及び、CS含有量の大きなポルトランドセメントクリンカを用いて高炉セメントを製造する方法(例えば、非特許文献2)等が報告されている。その他、セメント組成物の初期強度の改善策として、水酸化カルシウム微粉末以外の無機系促進剤又は有機系促進剤を使用した検討も行われている。
また、高炉水砕スラグ等の混合比率が高い高炉セメントでは、初期強度を向上させる観点から、石膏を配合する手段がとられている(例えば、非特許文献3)。OPCの単独使用の場合と同程度の強度発現を目指して、石膏の配合量を増加させることに加えて、さらにセメントクリンカの硬化反応を促進させるような促進剤を配合し、初期強度の向上の検討がなされている(例えば、特許文献1)。また、特許文献2には、促進剤を配合しない低炭素コンクリートにおいて、石膏を内添した高炉スラグ粉の方が品質の安定性に優れることが開示されている。
高炉水砕スラグを混合した高炉セメントにおいて、高炉スラグ微粉末の水和反応が亜硝酸塩の使用によって活性化されることが確認されている。特許文献3には、セメントの一部をセメントの代替物としての潜在水硬性を備えた高炉スラグ微粉末に置換したセメント系水硬性組成物において、前記高炉スラグ微粉末の水和反応を活性化するための亜硝酸塩が添加されていることを特徴とするセメント系水硬性組成物が開示されている。
また、非特許文献4には、高炉セメントB種の一部を石灰石微粉末(炭酸カルシウムの微粉末)に置換することによって、セメントクリンカの含有量を低減し、セメントクリンカの製造に起因する二酸化炭素排出量を削減する技術が開示されている。
石炭火力発電所やセメントキルンなどの排ガスから排出される二酸化炭素をCaやMgで固定化し、得られる炭酸塩を有効利用しようとする動きがある。その利用先としては、例えば、樹脂フィラーなどが検討されている。しかし、樹脂フィラーとしての利用可能量は少ない。そこで、上述のような炭酸塩を多量に使用することのできる用途が検討されている。コンクリート等の原料である水硬性組成物に配合する成分として上述のような炭酸塩を利用することができれば有効と考えられる。しかし、水硬性組成物への配合成分として上述の炭酸塩を利用する方法は十分検討されているとはいえない状況にある。
特開2014-125371号公報 特開2016-141614号公報 特開2018-076203号公報
吉賀博章他、「高炉スラグを含有したセメントに及ぼす水酸化カルシウム微粉末の影響」、セメント・コンクリート論文集、2013年、67巻、p.151-156 谷田貝敦他、「高C3Sクリンカーを用いた高炉セメントの諸特性に及ぼす高炉スラグ微粉末の比表面積の影響」、セメント・コンクリート論文集、2013、67巻、p.296-303 坂井悦郎他、「高炉スラグ高含有セメントの水和に及ぼす亜硝酸カルシウムとアルカノールアミンの影響」、セメント・コンクリート論文集、2019、73巻、p.52-57 西田豊一他、「石灰石微粉末を利用した環境負荷の低い混合セメントの開発」、セメント・コンクリート論文集、2012、66巻、p.375-381
高炉水砕スラグ等の混合比率が高い高炉セメントにおいて、上述のように、石膏及び促進剤の併用を行った場合であっても、促進剤の添加によって期待し得るような初期強度の向上が達成されない場合がある。例えば、促進剤を併用して調製された高炉セメントを硬化した場合、促進剤を添加しない場合に比べて初期強度の向上は見られるものの、材齢が延びた際に強度が思うように発揮されない、又は強度が低下していくことが生じ得る。
また、炭酸塩を混合した水硬性組成物の場合、一般的には圧縮強さが低下する問題が知られている。上述のような高炉水砕スラグを多量に含むセメントにおいて、炭酸塩を配合する例は多く知られているわけではないが、本発明者らの知見に基づけば、炭酸塩を配合することで、水硬性組成物の強度発現性が更に損なわれると想定される。
本開示は、高炉水砕スラグ及び炭酸塩等の混合比率を高めてアルカリ刺激材の比率を下げた水硬性組成物において、製造におけるCO発生量をより低減することが可能であり、且つ、初期及び長期の双方において優れた圧縮強さを発揮し得る水硬性組成物、及びその製造方法を提供することを目的とする。本開示はまた、高炉水砕スラグ等の混合比率が高く水硬性組成物の、初期及び長期の双方における圧縮強さの向上方法を提供することを目的とする。
上述の課題に対して本発明者らが検討したところ、それぞれ、初期強度向上のために有益とされている、石膏の配合量を増加させること、及び促進剤を配合することが、両者を併用する場合においては、石膏が促進剤の作用を阻害し得ること、当該阻害作用が促進剤全般に影響を及ぼし得ること、及び高炉水砕スラグの硬化促進を意図したアルカリ土類金属の亜硝酸塩に対して強く影響すること等を見出した。さらに、高炉水砕スラグに加えて炭酸塩を配合することで想定される水硬性組成物の強度発現性の低下を補うために、従前の技術常識に沿って、促進剤を配合し、石膏の配合量を増加させた場合には、炭酸塩による強度発現性の低下を補うどころか、石膏による促進剤の作用阻害も加わり、水硬性組成物の強度発現性の低下がむしろ助長され得るということをも見出した。
より具体的に説明する。まず、水硬性組成物における石膏は、アルカリ刺激材の反応性を制御し、水硬性組成物の水和反応を調整するための成分であるが、高炉水砕スラグ中に含まれる成分(Ca、Al等)とも反応し、溶解性の低いエトリンガイト(3CaO・Al・3CaSO・32HO)を生成し得る。当該エトリンガイトは高炉水砕スラグの粒子表面を覆い、高炉水砕スラグの溶解を抑制し、反応速度を低下させる。特に、促進剤を含む水硬性組成物の場合、促進剤によって、反応初期において高炉水砕スラグの溶解及び反応が促進されるものの、同一系内に多量に存在する石膏との反応による上述のエトリンガイト生成も促進される。つまり、促進剤を含まない場合に比べて、上述のようなエトリンガイト生成の反応等が促進され、その生成量が過剰になることで、むしろ高炉水砕スラグの反応が抑制され得る。ここで、一般には、エトリンガイト生成によって、結合水を増加させ、空隙の減少が硬化反応初期に起こすことが可能であることから、強度増進のために、石膏の配合量を増加せることが有益であると考えられている。しかし、促進剤と併用した場合にむしろ石膏の配合量が悪影響を及ぼし得ることを見出し、石膏と促進剤とを併用する系では、石膏の含有量を従来の技術常識に反して低減することによって、得られる水硬性組成物が、初期及び長期の双方において優れた圧縮強さ発揮し得るとの新たな知見を得た。
また、炭酸塩を配合することによる強度発現性の低下は、強度発現に最も寄与するアルカリ刺激材のセメント中における配合比率が炭酸塩の配合によって低下すること、及び、高炉水砕スラグから溶出したAlが炭酸塩と反応して溶解性の低いカーボネート系の水和物(3CaO・Al・CaCO・11HO等)を生成し、高炉水砕スラグの粒子表面を被覆することで、高炉水砕スラグの溶解を抑制し、高炉スラグの長期的な反応を低下させること等によって引き起こされる。炭酸塩が多く含まれる場合、上述の石膏と高炉水砕スラグとの反応によって生じるエトリンガイトの生成量が過剰になることに加えて、上記カーボネート系の水和物が更に生成されることによって、高炉水砕スラグ等の硬化反応に対する阻害がより顕著なものとなり得る。さらに、製造におけるCO発生量をより低減する観点から、高炉水砕スラグに加えて、炭酸塩を使用するような水硬性組成物においては、水硬性組成物の強度発現性が更に低下し得ることから、その強度発現性の低下を抑制するために、水硬性組成物の強度発現性を向上させるために石膏の配合量を増加させることが有効との従来の技術常識とは逆に石膏の含有量を抑えることがより重要になるとの新たな知見を得た。本開示は、これらの新規知見に基づいてなされたものである。
本開示の一側面は、アルカリ刺激材、高炉水砕スラグ、及び炭酸塩を含むセメントと、促進剤と、を含み、上記セメントの全量を基準として、上記アルカリ刺激材の含有量が5.0~60.0質量%であり、上記高炉水砕スラグの含有量が35.0~90.0質量%であり、上記炭酸塩の含有量が5~40質量%であり、上記セメントにおける石膏の含有量が、SO換算で、1.70質量%以下であり、上記促進剤の含有量が、上記セメントの100質量部に対して、0.2~5.0質量部である、水硬性組成物を提供する。
上記水硬性組成物は、高炉水砕スラグに加えて所定量で炭酸塩を含有することから、水硬性組成物の製造の際のCO発生量をより低減することが可能となっている。上記水硬性組成物はまた、石膏の含有量を低く抑えて、所定量の促進剤と併用することによって、促進剤の硬化促進効果を阻害する石膏による影響を抑制し、高炉水砕スラグ及び炭酸塩の含有量が比較的大きく、アルカリ刺激材の含有量が少ないにも関わらず、初期及び長期の双方において優れた圧縮強さ発揮し得る。
上記炭酸塩は、アルカリ金属の炭酸塩、及びアルカリ土類金属の炭酸塩からなる群から選択される少なくとも一種を含んでもよい。
上記炭酸塩が、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、及び炭酸マグネシウムからなる群から選択される少なくとも一種を含んでよい。
上記高炉水砕スラグ及び上記炭酸塩の合計含有量と、上記石膏の含有量とが、下記式(1)の関係を満たしてよい。下記式(1)の関係を満たすように、上記高炉水砕スラグの含有量及び上記炭酸塩の含有量と、上記石膏の含有量とが調整されていることによって、初期及び長期における圧縮強さをより高水準で両立し得る。
[石膏の含有量]≦1.5-2.0([高炉水砕スラグ及び炭酸塩の合計含有量]-60)/100…式(1)
上記促進剤が、亜硝酸塩、硝酸塩、及び塩化物からなる群より選択される少なくとも一種であってよい。促進剤が上述の促進剤を含有することで、水硬性組成物を硬化した際の初期の圧縮強さにより優れる。
上記促進剤が、一価の陰イオンを有する塩を含有してよい。促進剤が一価の陰イオンの塩を含有することで、高炉水砕スラグの表面での水和物の形成が調整され、高炉水砕スラグの反応性を更に向上させることができる。
上記促進剤が、カルシウム塩を含有してよい。促進剤がカルシウム塩を含有することで、水硬性組成物と水とを接触させて形成される水溶液中のカルシウムイオン(Ca2+)濃度を向上させ、硬化体の主要成分となるカルシウムシリケート水和物(C-S-H)の生成を促進することができ、初期の圧縮強さにより優れる。
上記促進剤が、アルカリ金属塩、及びアルカリ土類金属塩からなる群より選択される少なくとも一種を含有してよい。促進剤が上述の促進剤を含有することで、高炉水砕スラグの反応性をより向上させることができる。
上記アルカリ刺激材が、ポルトランドセメントクリンカ、消石灰、及び生石灰からなる群より選択される少なくとも1種を含有してよい。アルカリ刺激材が上述の成分を含有することで、上記高炉水砕スラグの水和反応を促進し、水硬性組成物における硬化反応をより促進できる。
上記石膏が、二水石膏、及び半水石膏からなる群より選択される少なくとも一種を含有してよい。石膏が二水石膏、及び半水石膏の少なくとも一方を含有することで、アルカリ刺激材(例えば、ポルトランドセメントクリンカ)及び高炉水砕スラグの初期の反応促進を更に促すことができる。なお、石膏としては、無水石膏、二水石膏、及び半水石膏のいずれかの石膏が考えられるところ、本開示に係る水硬性組成物において、二水石膏及び半水石膏の少なくとも一方を含有する場合に、上記効果が顕著であるのは、以下の理由によると考えられる。すなわち、二水石膏及び半水石膏は、無水石膏に比べて溶解速度が速く、硬化反応のより早い時期に、アルカリ刺激材及び高炉水砕スラグの反応に寄与することができるため、二水石膏及び半水石膏の少なくとも一方を含有する場合に効果が顕著に得られ得る。特に本開示に係る水硬性組成物のように石膏の含有量が低減された系においては、上述の違いが顕著に確認される。
上記高炉水砕スラグの塩基度が1.75未満であってよい。上記水硬性組成物は石膏の含有量を低減することで促進剤による効果を十分に引き出すことが可能であることから、一般には初期強度向上の観点から使用が控えられるような高炉水砕スラグ、いわゆる低品位スラグであっても使用することができる。上記水硬性組成物においては、低品位スラグに分類され得る、塩基度が1.75未満の高炉水砕スラグを使用することができ、この場合でも、初期及び長期の双方において優れた圧縮強さ発揮し得る。
上記高炉水砕スラグの塩基度が、1.75~1.95であってよい。高炉水砕スラグの塩基度が上記範囲内であることで、高炉水砕スラグの潜在水硬性をより十分に発揮でき、強度発現性に優れるコンクリートを製造することができる。なお、一般的には、塩基度が低いと高炉水砕スラグの反応性能及び強度発現性能が低下することが知られるが、本開示に係る水硬性組成物においては、塩基度が低くい高炉水砕スラグを使用した場合であっても、塩基度を上述の範囲に調整することで、より優れた強度発現性能を発揮し得る水硬性組成物とすることができる。
上記高炉水砕スラグにおける酸化アルミニウムの含有量が14.5質量%以下であってよい。高炉水砕スラグとして、酸化アルミニウム含有量が比較的低いものを使用することで、高炉水砕スラグの反応を抑制し得るエトリンガイトの生成量をより抑制し、より長期間に亘って、高炉水砕スラグの反応を増進することができる。また、酸化アルミニウム含有量が比較的低い高炉水砕スラグを用いることによって、促進剤の使用量を低減することも可能であり、コンクリート製造に要するコストをより低減し得る。
上記高炉水砕スラグの含有量が、上記セメントの全量を基準として、35.0~70.0質量%であってよい。上記水硬性組成物は石膏の含有量を低減することで促進剤による効果を十分に引き出すことが可能であることから、一般には、実用の観点からあまり流通しないような、高炉水砕スラグを高配合した組成であっても、従来の高炉セメントよりも優れた圧縮強さを発揮し得る。
本開示の一側面は、アルカリ刺激材、高炉水砕スラグ、及び炭酸塩を含む原料を、上記アルカリ刺激材の含有量が5.0~60.0質量%となり、上記高炉水砕スラグの配合量が35.0~90.0質量%となり、上記炭酸塩の含有量が5~40質量%となるように混合してセメントを調製する第一工程と、上記セメントの100質量部に対して、0.2~5.0質量部の促進剤を混合する第二工程と、を含み、上記第一工程において、上記セメント中の石膏の含有量を、SO換算で、1.70質量%以下となるように調整することを含む、水硬性組成物の製造方法を提供する。
上記製造方法は、高炉水砕スラグの配合量が比較的多くなるように配合する第一工程と、促進剤を更に配合する第二工程とを有し、第一工程において、石膏の含有量の調整も行うことから、上述のような水硬性組成物を製造し得る。
上記炭酸塩が、アルカリ金属の炭酸塩、及びアルカリ土類金属の炭酸塩からなる群から選択される少なくとも一種を含んでよい。
上記炭酸塩が、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、及び炭酸マグネシウムからなる群から選択される少なくとも一種を含んでよい。
上記第一工程において、上記高炉水砕スラグ及び上記炭酸塩の合計含有量と、上記石膏の含有量とが、下記式(1)の関係を満たすように、上記石膏を配合してよい。
[石膏の含有量]≦1.5-2.0([高炉水砕スラグ及び炭酸塩の合計含有量]-60)/100…式(1)
本開示の一側面は、アルカリ刺激材、高炉水砕スラグ、及び炭酸塩を含み、上記アルカリ刺激材の含有量が5.0~60.0質量%であり、上記高炉水砕スラグの含有量が35.0~90.0質量%であり、上記炭酸塩の含有量が5~40質量%あるセメントを含む組成物について、セメントにおける石膏の含有量を測定し、上記セメントにおける石膏の含有量を、SO換算で、1.70質量%以下となるように調整すること、及び、上記組成物における促進剤の含有量を測定し、促進剤の含有量を、上記セメントの100質量部に対して、0.2~5.0質量部となるように調整すること、を含む、水硬性組成物の圧縮強さ増進方法を提供する。
上記水硬性組成物の圧縮強さ増進方法は、所定のセメントを含む組成物に対して、セメントにおける石膏の含有量、及び組成物における促進剤の含有量を調製することによって、得られる水硬性組成物の硬化における圧縮強さの増進を図ることができる。
上記炭酸塩が、アルカリ金属の炭酸塩、及びアルカリ土類金属の炭酸塩からなる群から選択される少なくとも一種を含んでよい。
上記炭酸塩が、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、及び炭酸マグネシウムからなる群から選択される少なくとも一種を含んでよい。
上記圧縮強さ増進方法において、上記組成物が促進剤を含んでよい。組成物が予め促進剤を含んでいる場合、すなわち、それ自体が水硬性組成物であっても上記圧縮強さ増進方法を適用することができる。
本開示によれば、高炉水砕スラグ及び炭酸塩等の混合比率を高めてアルカリ刺激材の比率を下げた水硬性組成物において、製造におけるCO発生量をより低減することが可能であり、且つ、初期及び長期の双方において優れた圧縮強さを発揮し得る水硬性組成物及びその製造方法を提供できる。本開示によればまた、高炉水砕スラグ等の混合比率が高く水硬性組成物の、初期及び長期の双方における圧縮強さの向上方法を提供できる。
以下、本開示の実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。なお、以下の説明では、「X~Y」(X、Yは任意の数字)と記載した場合、特に断らない限り「X以上Y以下」を意味する。
本明細書において例示する材料は特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。組成物中の各成分の含有量は、組成物中の各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
[水硬性組成物]
水硬性組成物の一実施形態は、アルカリ刺激材、高炉水砕スラグ、及び炭酸塩を含むセメントと、促進剤と、を含む。上記アルカリ刺激材の含有量は、上記セメントの全量を基準として、5.0~60.0質量%である。上記高炉水砕スラグの含有量は、上記セメントの全量を基準として、35.0~90.0質量%である。上記炭酸塩の含有量は、上記セメントの全量を基準として、5~40質量%である。上記セメントにおける石膏の含有量が、SO換算で、1.70質量%以下である。上記促進剤の含有量が、上記セメントの100質量部に対して、0.2~5.0質量部である。本明細書におけるセメントとは、アルカリ刺激材がポルトランドセメントクリンカを含む場合に限らず、高炉水砕スラグを主成分とし、これにアルカリ刺激材及び炭酸塩を含有させた粉体(場合によって、石膏を更に含有させた粉体)を意味する。上記セメントは、アルカリ刺激材、高炉水砕スラグ、及び炭酸塩からなってもよい。この場合、上記セメントは石膏を含まなくてよいことを意味する。
アルカリ刺激材は、高炉水砕スラグの硬化反応を刺激し、水硬性組成物の硬化反応を促進する成分である。アルカリ刺激材は、例えば、ポルトランドセメントクリンカ、消石灰、及び生石灰からなる群より選択される少なくとも1種を含有してよく、ポルトランドセメントクリンカ、消石灰、及び生石灰のいずれか一種であってよく、ポルトランドセメントクリンカであってよい。
ポルトランドセメントクリンカは、JIS R 5210:2003「ポルトランドセメント」に規定の各種ポルトランドセメントを調製するため使用されるポルトランドセメントクリンカを使用することができる。上記各種ポルトランドセメントとしては、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、及び低熱ポルトランドセメント等が挙げられる。ポルトランドセメントクリンカとしては、普通ポルトランドセメント及び早強ポルトランドセメントを調製するために使用されるポルトランドセメントクリンカであってよい。
ポルトランドセメントクリンカの鉱物組成はBogue式によって算出することができる。ここで、Bogue式とは、化学組成の含有比率からポルトランドセメントクリンカ中の主要鉱物の含有率を算定する式として広く用いられる式である。以下に示すBogue式を用いることによって、ポルトランドセメントクリンカ中のケイ酸三カルシウム(3CaO・SiO,CSで示す。)、ケイ酸二カルシウム(2CaO・SiO,CSで示す。)、及びアルミン酸三カルシウム(3CaO・Al,CAで示す。)の含有量を算出することができる。なお、下記式中の「%」は「質量%」を意味する。化学式は、JIS R 5204:2019「セメントの蛍光X線分析方法」による化学分析値が示す各化合物の含有比率(質量%)を表す。
<Bogue式>
S[%]=(4.07×CaO[%])-(7.60×SiO[%])-(6.72×Al[%])-(1.43×Fe[%])-(2.85×SO[%])
S[%]=(2.87×SiO[%])-(0.754×CS[%])
A[%]=(2.65×Al[%])-(1.69×Fe[%])
AF[%]=3.04×Fe[%]
ポルトランドセメントクリンカにおけるCA量は、好ましくは0.5~11.0質量%、より好ましくは0.5~10.5質量%、さらに好ましくは0.5~10.0質量%以下、特に好ましくは0.5~9.5質量%であってよい。ポルトランドセメントクリンカにおけるCA量が上記範囲内であることによって、水硬性組成物における水和反応を抑制するための石膏量をより低減することが可能であり、また高炉水砕スラグの水和反応をより十分に発揮させることができる。
ポルトランドセメントクリンカの粉末度は、水硬性組成物における水和反応の性能をより向上させる観点から調整してよい。ポルトランドセメントクリンカのブレーン比表面積の下限値は、例えば、2800cm/g以上、又は3000cm/g以上であってよい。ポルトランドセメントクリンカのブレーン比表面積の下限値を上記範囲内とすることで、高炉水砕スラグとの水和反応をより増進させることができる。ポルトランドセメントクリンカのブレーン比表面積の上限値は、例えば、10000cm/g以下、5000cm/g以下、4000cm/g以下、又は3500cm/g以下であってよい。ポルトランドセメントクリンカのブレーン比表面積の上限値を上記範囲内とすることで、水硬性組成物の製造コストを低減することができ、またポルトランドセメントクリンカの製造におけるCO排出量をより低減することができる。ポルトランドセメントクリンカのブレーン比表面積は上述の範囲内で調整してよく、例えば、2800~10000cm/g、3000~5000cm/g、3000~4000cm/g、又は3000~3500cm/gであってよい。
上記アルカリ刺激材の含有量は、上記セメントの全量を基準として、5.0~60.0質量%である。アルカリ刺激材の含有量が上記範囲内であることで、水硬性組成物の製造におけるCO発生量を十分に抑制し得る。
上記アルカリ刺激材の含有量の下限値は、上記セメントの全量を基準として、例えば、7.0質量%以上、10.0質量%以上、15.0質量%以上、20.0質量%以上、又は25.0質量%以上であってよい。アルカリ刺激材の含有量の下限値が上記範囲内であることで、強度発現性の低下を十分に抑制できる。アルカリ刺激材の含有量の上限値は、上記セメントの全量を基準として、例えば、55.0質量%以下、50.0質量%以下、45.0質量%以下、40.0質量%以下、又は35.0質量%以下であってよい。アルカリ刺激材の含有量の上限値が上記範囲内であることで、水硬性組成物の製造におけるCO発生量をより大幅に削減することができる。アルカリ刺激材の含有量は上述の範囲内で調整してよく、上記セメントの全量を基準として、例えば、7.0~50.0質量%、10.0~50.0質量%、10.0~40.0質量%、15.0~30.0質量%、又は20.0~30.0質量%であってよい。
高炉水砕スラグは、例えば、市販のものを使用してもよく、高炉水砕スラグに相当するスラグを自ら調製して使用してもよい。本開示に係る水硬性組成物は、セメントにおける石膏量を調整することによって、促進剤の能力を十分に発揮させ得るものであることから、高炉水砕スラグの品質によらず、硬化によって、石膏の含有量が比較的多い従前の水硬性組成物に比べて優れた圧縮強さを発揮し得る。
高炉水砕スラグにおける酸化アルミニウムの含有量(Al量とも表記する)の上限値は、例えば、14.5質量%以下、14.0質量%以下、13.5質量%以下、13.0質量%以下、又は12.5質量%以下であってよい。高炉水砕スラグにおけるAl量が上記範囲内であることで、得られる水硬性組成物の長期の強度発現性が低下することをより抑制できる。高炉水砕スラグにおけるAl量の下限値は、例えば、8質量%以上、10質量%以上、又は12質量%以上であってよい。高炉水砕スラグにおけるAl量の下限値が上記範囲内であることで、高炉水砕スラグの有する潜在水硬性をより十分に発揮できる。なお、潜在水硬性とは、アルカリ刺激材を添加することで水和反応を開始する特性のことを意味する。高炉水砕スラグにおけるAl量は上述の範囲内で調整してよく、例えば、8~14.5質量%、又は10~12.5質量%であってよい。
高炉水砕スラグにおける二酸化ケイ素の含有量(SiO量とも表記する)の下限値は、例えば、30.0質量%以上、34.0質量%以上、34.5質量%以上、又は35.0質量%以上であってよい。高炉水砕スラグのSiO量の下限値が上記範囲内であることで、初期及び長期の強度発現性の低下を抑制できる。高炉水砕スラグのSiO量の上限値は、例えば、40.0質量%以下、38.0質量%以下、36.5質量%以下、又は35.5質量%以下であってよい。高炉水砕スラグのSiO量の上限値が上記範囲内であることで、初期の強度発現性の低下を抑制できる。高炉水砕スラグのSiO量は上述の範囲内で調整してよく、例えば、34.5~40.0質量%であってよい。
高炉水砕スラグにおける酸化カルシウムの含有量(CaO量とも表記する)の下限値は、例えば、35.0質量%以上、38.5質量%以上、又は40.0質量%以上であってよい。高炉水砕スラグのCaO量の下限値が上記範囲内であることで、初期の強度発現性をより向上させることができる。高炉水砕スラグのCaO量の上限値は、例えば、45.0質量%以下、43.5質量%以下、43.0質量%以下、42.5質量%以下、42.0質量%以下又は41.5質量%以下であってよい。高炉水砕スラグのCaO量の上限値が上記範囲内であることで、長期の強度発現性の低下を抑制できる。高炉水砕スラグのCaO量は上述の範囲内で調整してよく、例えば、38.5~45.0質量%であってよい。
高炉水砕スラグにおける酸化マグネシウムの含有量(MgO量とも表記する)の下限値は、例えば、4.0質量%以上、5.0質量%以上、5.5質量%以上、6.0質量%以上、7.0質量%以上、又は7.2質量%以上であってよい。高炉水砕スラグのMgO量の下限値が上記範囲内であることで、初期及び長期の強度発現性の低下を抑制できる。高炉水砕スラグのMgO量の上限値は、例えば、10.0質量%以下、9.0質量%以下、7.5質量%未満、又は7.4質量%未満であってよい。高炉水砕スラグのMgO量の上限値が上記範囲内であることで、初期の強度発現性の低下を抑制できる。高炉水砕スラグのMgO量は上述の範囲内で調整してよく、例えば、4.0~10.0質量%であってよい。
高炉水砕スラグは、その他の成分として、例えば、三酸化硫黄(SO)、酸化ナトリウム(NaO)、酸化カリウム(KO)、及び酸化チタン(TiO)等を含んでよい。
本明細書における高炉水砕スラグの化学組成は、JIS R 5202:2015「セメントの化学分析方法」の記載に準拠して測定した値を意味する。
高炉水砕スラグの反応性は、(CaO+MgO+Al)/SiOの値(高炉水砕スラグにおける二酸化ケイ素の含有量に対する、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、及び酸化アルミニウムの合計含有量の比)で表される塩基度という指標で評価される。高炉水砕スラグとしては、塩基度が高いものを使用してもよく、塩基度が低いものを使用することもできる。
塩基度が高い高炉水砕スラグとしては、例えば、塩基度が1.75以上のものを使用できる。高炉水砕スラグの塩基度の上限値は、例えば、1.95以下、1.95未満、1.90未満、1.85未満、又は1.80未満であってよい。高炉水砕スラグの塩基度の下限値は、例えば、1.75超、又は1.78以上であってよい。塩基度の下限値が上記範囲内であることで、水硬性組成物の初期強度の向上をより容易なものとし得る。高炉水砕スラグの塩基度は上述の範囲内で調整でき、例えば、1.75~1.95、又は1.75以上1.80未満等であってよい。
本開示に係る水硬性組成物においては、高炉水砕スラグとして塩基度が低いものも使用できる。塩基度の低い高炉水砕スラグは、通常、十分な圧縮強さを得難いことから、低品位のスラグとして使用が控えられることが多いが、本開示に係る水硬性組成物においては促進剤の効果に対する阻害作用を抑制し得ることから、上記低品位のスラグであっても使用できる。このような低品位の高炉水砕スラグとしては、塩基度の上限値が、例えば、1.75未満、1.70未満、又は1.65未満であってよい。低品位の高炉水砕スラグの塩基度の下限値は、特に限定されるものではないが、例えば、1.55以上、又は1.60以上、又は1.65以上であってよい。低品位の高炉水砕スラグの塩基度は上述の範囲内で調整してよく、例えば、1.55以上1.75未満であってよい。
本明細書における塩基度は、JIS A 6206:2013「コンクリート用高炉スラグ微粉末」の記載に準拠して測定される値であり、具体的には、(CaO+MgO+Al)/SiOの値(二酸化ケイ素の含有量に対する、酸化カルシウム、酸化マグネシウム及び酸化アルミニウムの合計含有量の比)を意味する。
高炉水砕スラグのブレーン比表面積は、例えば、2500~10000cm/g、2500~8000cm/g、2500~6000cm/g、2500~5000cm/g、3000~5000cm/g、4000~5000cm/g、又は4000~4500cm/gであってよい。
本明細書における「ブレーン比表面積」は、JIS R 5201:2015「セメントの物理試験方法」に記載の方法に準拠して測定される値を意味する。
上記高炉水砕スラグの含有量は、上記セメントの全量を基準として、40.0~90.0質量%であることから、水硬性組成物の製造に係るCO発生量の抑制に寄与し得る。本開示に係る水硬性組成物は、セメント中の石膏量を抑制し、促進剤の併用による硬化促進効果を発揮し得ることから、圧縮強さの著しい低下を抑制することができ、セメントにおける高炉水砕スラグによる代替割合を高めることができる。
高炉水砕スラグの含有量の下限値は、上記セメントの全量を基準として、例えば、35.0質量%以上、40.0質量%以上、50.0質量%以上、又は55.0質量%以上であってよい。高炉水砕スラグの含有量の下限値が上記範囲内であることで、アルカリ刺激材の使用量をより低減することができる。高炉水砕スラグの含有量の上限値は、上記セメントの全量を基準として、例えば、90.0質量%以下、85.0質量%以下、80.0質量%以下、70.0質量%以下、又は60.0質量%以下であってよい。高炉水砕スラグの含有量の上限値が上記範囲内であることで、初期強度の低下をより抑制することができ、促進剤を併用することによる効果を更に向上できる。高炉水砕スラグの含有量は上述の範囲内で調整してよく、上記セメントの全量を基準として、例えば、35.0~90.0質量%、35.0~70.0質量%、40.0~70.0質量%、又は40.0~60.0質量%であってよい。
本明細書における高炉水砕スラグの含有量は、以下に示す方法によって特定される値を意味する。具体的には、まず、水硬性成物を900℃で1時間加熱して高炉水砕スラグ(ガラス)を結晶化させた測定サンプルを調製する。その後、上記測定サンプルに対するX線回折測定を行い、リートベルト解析法によって、上記測定サンプル中の各結晶相を定量することによって、ゲーレナイト、及びメルビナイト等を高炉水砕スラグが結晶化してできた結晶相として定量し、これらの合計量を高炉水砕スラグの含有量とする。なお、自身で水硬性組成物を製造する場合には、製造過程で投入する高炉水砕スラグの配合量(計量値)が、上記含有量に相当する。
炭酸塩は、例えば、アルカリ金属の炭酸塩、及びアルカリ土類金属の炭酸塩からなる群から選択される少なくとも一種を含んでもよく、好ましくは、アルカリ土類金属の炭酸塩を含む。上記アルカリ金属の炭酸塩としては、例えば、炭酸ナトリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属の炭酸塩としては、例えば、炭酸カルシウム、及び炭酸マグネシウムなどが挙げられる。上記炭酸塩がアルカリ土類金属の炭酸塩を含む場合、好ましくは炭酸カルシウムを含む。
炭酸塩の含有量は、上記セメントの全量を基準として、5~40質量%である。炭酸塩の含有量が5質量%未満であると水硬性組成物の製造におけるCO排出量の低減効果が十分得られず、また40質量%を超えると、水硬性組成物の強度発現性の低下を抑制する効果が十分には得られない傾向にある。炭酸塩の含有量の下限値は、上記セメントの全量を基準として、例えば、7質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、又は20質量%以上であってよい。炭酸塩の含有量の下限値が上記範囲内であることで、水硬性組成物の製造におけるCO発生量をより低減することができる。炭酸塩の含有量の上限値は、上記セメントの全量を基準として、例えば、35質量%以下、30質量%以下、又は25質量%以下であってよい。炭酸塩の含有量の上限値が上記範囲内であることで、強度発現性により優れた水硬性組成物を提供できる。
本明細書における炭酸塩の含有量は、以下に示す方法によって特定される値を意味する。具体的には、セメント組成物中の全炭素量を炭素・硫黄分析装置(C/S計)によって測定し、得られた値に基づいて、下記式(A)から炭酸塩の含有量に換算される値である。
[炭酸塩の含有量(質量%)]=12÷[全炭素量(質量%)]×[CaCOの分子量] … 式(A)
本開示に係る水硬性組成物において、上記セメント中の石膏の含有量が比較的低く抑えられている。上記セメントにおける石膏の含有量は、SO換算で、1.70質量%以下である。石膏の含有量が上記範囲内であることによって、石膏による水硬性組成物の硬化に伴う圧縮強さの向上効果を発揮しつつ、促進剤による水硬性組成物の硬化に伴う圧縮強さの向上効果を阻害する作用を低減できる。
セメントにおける石膏の含有量の上限値は、SO換算で、例えば、1.6質量%以下、1.5質量%以下、1.4質量%以下、1.3質量%以下、1.2質量%以下、1.0質量%以下、又は0.8質量%以下であってよい。石膏の含有量の上限値が上記範囲内であることで、促進剤を配合した水硬性組成物においてより優れた強さ発現性を発揮できる。セメントにおける石膏の含有量の下限値は、0質量%(すなわち、石膏を含まない)であってもよいが、SO換算で、例えば、0質量%以上、0.10質量%以上、0.20質量%以上、0.30質量%以上、0.40質量%以上、又は0.50質量%以上であってよい。石膏(SO)の含有量の下限値を上記範囲内とすることで、セメントの水和反応をより好適なものとし、水と練り混ぜた後の水硬性組成物の流動性をより向上し、初期強度発現性をより向上できる。セメントにおける石膏の含有量は上述の範囲内で調整してよく、例えば、0~1.5質量%、0~1.3質量%、0~0.8質量%、0.10~1.5質量%、又は0.50~1.3質量%であってよい。
本明細書における石膏の含有量は、アルカリ刺激材及び高炉水砕スラグに含まれ得る石膏成分に加えて、セメントに対して配合される石膏成分等の合計量を意味する。本明細書における石膏の含有量は、以下に示す方法によって特定される値を意味する。石膏の含有量は、具体的には、JIS R 5202:2015「セメントの化学分析方法」に規定されるSOの分析方法に準拠して測定するものとする。
石膏は、例えば、二水石膏、半水石膏、及び無水石膏等を使用することができる。石膏は、二水石膏、及び半水石膏からなる群より選択される少なくとも一種を含有してよく、二水石膏、及び半水石膏からなる群より選択される一種であってもよい。
上記セメントのブレーン比表面積は、例えば、2800~10000cm/gであってよい。また上記セメントを構成するアルカリ刺激材がポルトランドセメントクリンカを含む場合、ポルトランドセメントクリンカと、高炉水砕スラグと、石膏とを同時に粉砕し、セメントとしてもよい。同時に粉砕する場合、上記セメントのブレーン比表面積の下限値は、例えば、2800cm/g以上、又は3000cm/g以上であってよい。セメントのブレーン比表面積の下限値を上記範囲内とすることで、高炉水砕スラグとの水和反応をより増進させることができる。上記セメントのブレーン比表面積の上限値は、例えば、10000cm/g以下、5000cm/g以下、4000cm/g以下、又は3500cm/g以下であってよい。
促進剤は、高炉水砕スラグの反応を促進し、初期強度を向上させる化合物である。
促進剤は、亜硝酸塩、硝酸塩、及び塩化物からなる群より選択される少なくとも一種であってよい。促進剤が亜硝酸塩を含むことによって、水硬性組成物の硬化の際の初期強度をより向上させることができる。促進剤が亜硝酸塩を含むことによって、水硬性組成物の硬化の際の水和に伴う発熱量を低減することもできる。
促進剤は、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩からなる群より選択される少なくとも一種を含有してよい。促進剤が、アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩を含むことによって、高炉水砕スラグの反応性をより向上させることができる。アルカリ金属としては、例えば、ナトリウム、及びカリウム等であってよく、アルカリ土類金属としては、例えば、マグネシウム、及びカルシウム等であってよい。水和物の生成促進、及び圧縮強さの向上の観点から、アルカリ土類金属は、カルシウムを含むことが好ましく、カルシウムであることがより好ましい。
促進剤は一価の陰イオンを有する塩を含有してよく、またカルシウム塩を含有してよい。
促進剤は、より具体的には例えば、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、塩化ナトリウム、及び塩化カリウム等が挙げられる。促進剤は、上述の化合物の中でも、好ましくはアルカリ金属の亜硝酸塩を含有し、より好ましくは亜硝酸カルシウムを含有し、更に好ましくは亜硝酸カルシウムである。
促進剤の含有量の上限値は、上記セメントの100質量部に対して、例えば、5.0質量部以下、4.0質量部以下、3.5質量部以下、又は3.3質量部以下であってよい。促進剤の含有量の上限値が上記範囲内であることで、高炉水砕スラグ等の反応が過度に促進された場合の異常凝結の発生をより確実に抑制できる。促進剤の含有量の下限値は、上記セメントの100質量部に対して、例えば、0.2質量部以上、0.5質量部以上、1.0質量部以上、2.0質量部以上、又は2.5質量部以上であってよい。促進剤の含有量の下限値が上記範囲内であることで、高炉水砕スラグの反応をより促進することができる。促進剤の含有量は上述の範囲内で調整してよく、上記セメントの100質量部に対して、例えば、0.2~5.0質量部、又は0.5~3.5質量部であってよい。
上述の水硬性組成物において、上記高炉水砕スラグ及び上記炭酸塩の合計含有量と、上記石膏の含有量とが、下記一般式(X)の関係を満たしてよい。下記一般式(X)において、石膏の含有量は、セメント中の石膏の含有量[単位:質量%]であり、SO換算値である。また下記一般式(X)において、上記高炉水砕スラグ及び上記炭酸塩の合計含有量は、セメントの全量を基準とした、高炉水砕スラグの含有量[単位:質量%]と炭酸塩の含有量[単位:質量%]の合計値である。また、下記一般式(X)において、Aは定数であり、例えば、1.5以下であってよい。定数Aはより小さい値である一般式(X)の関係を上記高炉水砕スラグ及び上記炭酸塩の合計含有量と上記石膏の含有量とが満たすことで、本開示に係る効果をより顕著なものとすることができる。例えば、定数Aは、例えば、1.5,1.0,0.8,又は0.6であってよい。参考のため、定数Aが1.5の場合の式を以下に記載する(式(1)参照)。
[石膏の含有量]≦A-2.0([高炉水砕スラグ及び炭酸塩の合計含有量]-60)/100…一般式(X)
[石膏の含有量]≦1.5-2.0([高炉水砕スラグ及び炭酸塩の合計含有量]-60)/100…式(1)
上記水硬性組成物は、セメント及び促進剤に加えて、その他の成分を更に含んでもよい。その他の成分としては、例えば、硅石粉、その他カルシウムを含む無機粉末、フライアッシュ、SiやAlを含む無機鉱物、コンクリート用減水剤、及び遅延剤等が挙げられる。
[水硬性組成物の製造方法]
上述の水硬性組成物は、例えば、以下のような方法によって製造することができる。水硬性組成物の製造方法の一実施形態は、アルカリ刺激材、高炉水砕スラグ、及び炭酸塩を含む原料を、上記アルカリ刺激材の含有量が5.0~60.0質量%となり、上記高炉水砕スラグの配合量が35.0~90.0質量%となり、上記炭酸塩の含有量が5~40質量%となるように混合してセメントを調製する第一工程と、上記セメントの100質量部に対して、0.2~5.0質量部の促進剤を混合する第二工程と、を含む。上記第一工程において、上記セメント中の石膏の含有量を、SO換算で、1.70質量%以下となるように調整することを含む。
第一工程における原料は、アルカリ刺激材、高炉水砕スラグ、及び炭酸塩の混合の他、石膏を配合してもよい。
第一工程においては、原料を構成する各成分を破砕してもよい。第一工程において破砕を行う場合、混合及び破砕の順序は特に限定されるものではない。すなわち、各種成分を混合した後に破砕を行ってもよく、各種成分を破砕した後に混合してもよく、また各種成分の混合と破砕とを同時に行ってもよい。第一工程における各種成分の混合は、例えば、パン型ミキサー、傾胴式ミキサー、及びリボンミキサー等の混合機を用いて行ってよく、ボールミル、竪型ローラーミル、及びローラープレス等の粉砕機を用いて混合粉砕してもよく、又は各種成分のそれぞれを粉砕した後に機械混合機等の混合機で混合してもよい。
第一工程では、上記セメント中の石膏の含有量を、SO換算で、1.70質量%以下に調整する。この調整によって、水硬性組成物における促進剤の硬化促進の作用に対して、石膏が阻害することを抑制することができる。
第一工程における石膏の含有量の調整は、上記高炉水砕スラグ及び上記炭酸塩の合計含有量と、上記石膏の含有量とが、下記一般式(X)の関係を満たすように調整してもよい。下記一般式(X)において、石膏の含有量は、セメント中の石膏の含有量[単位:質量%]であり、SO換算値である。また下記一般式(X)において、上記高炉水砕スラグ及び上記炭酸塩の合計含有量は、セメントの全量を基準とした、高炉水砕スラグの含有量[単位:質量%]と炭酸塩の含有量[単位:質量%]の合計値である。また、下記一般式(X)において、Aは定数であり、例えば、1.5以下であってよい。定数Aはより小さい値である一般式(X)の関係を上記高炉水砕スラグ及び上記炭酸塩の合計含有量と上記石膏の含有量とが満たすことで、本開示に係る効果をより顕著なものとすることができる。例えば、定数Aは、例えば、1.5,1.0,0.8,又は0.6であってよい。参考のため、定数Aが1.5の場合の式を以下に記載する(式(1)参照)。
[石膏の含有量]≦A-2.0([高炉水砕スラグ及び炭酸塩の合計含有量]-60)/100…一般式(X)
[石膏の含有量]≦1.5-2.0([高炉水砕スラグ及び炭酸塩の合計含有量]-60)/100…式(1)
第二工程では、セメントと、促進剤とを混合する。混合の手段は第一工程と同一であっても、異なってもよい。第二工程、又は、第一工程及び第二工程以外の工程において、その他の成分を配合してもよい。その他の成分としては、例えば、硅石粉、その他カルシウムを含む無機粉末、フライアッシュ、及びSiやAlを含む無機鉱物等が挙げられる。
上述の製造方法によって製造される水硬性組成物は、例えば、細骨材、粗骨材、水、混和剤等と混合してモルタルとして使用してもよい。
細骨材は、JIS A 5005:2020「コンクリート用砕石及び砕砂」に規定の細骨材等を用いることができる。細骨材としては、例えば、川砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂、銅スラグ細骨材、及び電気炉酸化スラグ細骨材等が挙げられる。細骨材を使用する場合、細骨材の使用量は、上述の水硬性組成物の100質量部に対して、例えば、50~500質量部、100~300質量部、又は200~250質量部であってよい。
粗骨材は、JIS A 5005:2020「コンクリート用砕石及び砕砂」に規定の粗骨材等を用いることができる。粗骨材としては、例えば、砂利、及び砕石等が挙げられる。粗骨材を使用する場合、粗骨材の使用量は、上述の水硬性組成物の100質量部に対して、例えば、50~500質量部、100~300質量部、又は200~250質量部であってよい。
細骨材及び粗骨材を併用することもできるが、この場合、細骨材及び粗骨材の合計の使用量は、上述の水硬性組成物の100質量部に対して、100~300質量部、又は200~250質量部であってよい。
水としては、例えば、水道水、蒸留水、及び脱イオン水等が挙げられる。水の使用量は、上述の水硬性組成物の100質量部に対して、20~100質量部、又は40~70質量部であってよい。
混和剤は、例えば、AE剤、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤、消泡剤、収縮低減剤、凝結促進剤、凝結遅延剤、及び増粘剤等が挙げられる。混和剤の使用量は、上述の水硬性組成物の100質量部に対して、例えば、0.01~2質量部であってよい。
[水硬性組成物の圧縮強さ増進方法]
上述の知見を応用することによって、高炉水砕スラグ等の混合比率が高い組成物の圧縮強さを増進する方法を提供することができる。当該方法を適用して得られる水硬性組成物は、初期及び長期の双方において優れた圧縮強さ発揮し得る。水硬性組成物の圧縮強さ増進方法の一実施形態は、アルカリ刺激材、高炉水砕スラグ、及び炭酸塩を含み、上記アルカリ刺激材の含有量が5.0~60.0質量%であり、上記高炉水砕スラグの含有量が35.0~90.0質量%であり、上記炭酸塩の含有量は5~40質量%あるセメントを含む組成物について、セメントにおける石膏の含有量を測定し、上記セメントにおける石膏の含有量を、SO換算で、0.05~1.70質量%に調整すること、及び、上記組成物における促進剤の含有量を測定し、促進剤の含有量を、上記セメントの100質量部に対して、0.2~5.0質量部となるように調整すること、を含む。
上記圧縮強さ増進方法においては促進剤の含有量を調整することから、上記組成物は促進剤を含まなくてもよく、上記組成物が促進剤を含んでいてもよい。
以上、幾つかの実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に何ら限定されるものではない。また、上述した実施形態についての説明内容は、互いに適用することができる。
以下、実施例、比較例、及び参考例を参照して本開示の内容をより詳細に説明する。ただし、本開示は、下記の実施例に限定されるものではない。
[水硬性組成物の原料]
水硬性組成物の原料として以下のものを用いた。
(セメントクリンカ)
セメントクリンカとしては、普通ポルトランドセメントを調製する際に、一般に使用されるセメントクリンカを用いた。表1中、普通ポルトランドセメントクリンカをクリンカと記す。セメントクリンカの化学組成をJIS R 5202:2015「セメントの化学分析方法」の記載に準拠して測定した。結果を表1に示す。
(石膏)
石膏は、石炭火力発電所で副生する排脱二水石膏、及び試薬の無水石膏を用いた。石膏の化学組成をJIS R 5202:2015「セメントの化学分析方法」の記載に準拠して測定した。結果を表1に示す。
(高炉水砕スラグ)
高炉水砕スラグとして、以下の手法に沿って調製したスラグA~Dを用いた。まず、高炉水砕スラグは実際の高炉から排出される溶融スラグを水冷したものを用い、その中で化学組成の異なる高炉水砕スラグをサンプリングした後で、105℃で乾燥し、スラグA~スラグDを得た。なお、スラグDについては、スラグBに対して、二水石膏を配合して粉砕混合したものである。
得られたスラグA~スラグDに対して、JIS R 5202:2015「セメントの化学分析方法」の記載に準拠した化学組成の測定、及びX線回折による結晶相の評価を行った。上記X線回折による結晶相の評価に際しては、標準物質に酸化アルミニウムを使用した。得られたスラグA~スラグDは結晶相が検出されず、ガラス化率がほぼ100%であることから、いずれのスラグも一般に流通している高炉水砕スラグと同等のスラグであることを確認した。スラグA~スラグDのそれぞれについて、測定した化学組成を表1に示す。
Figure 2023081472000001
なお、表1中の強熱減量(ig.lоssとも表記する)は、JIS R 5202:2010の「5.強熱減量の定量方法」における「5.2 高炉セメント及び高炉スラグ以外の場合」に記載の方法に準拠し、加熱温度700℃にて測定した値である。
(促進剤)
促進剤としては、無機系促進剤を使用した。無機系促進剤として、キシダ化学株式会社製の亜硝酸カルシウム・1水和物(以下、場合によりCNと表記する)を使用した。
[実施例1]
セメントクリンカ及び石膏の混合物が30質量%、高炉水砕スラグ(スラグB)が55質量%、並びに石灰石(炭酸カルシウム)が15質量%となるようにそれぞれ図り取り、混合することで、セメントを調製した。セメント中の石膏の含有量はSO換算で0.59質量%であった。
次に、上記セメント100質量部に対して、促進剤が無水物換算量で2質量部となるように、促進剤として亜硝酸カルシウム・1水和物を配合することによって、実施例1の水硬性組成物を調製した。
[実施例2]
促進剤の配合量を、表2に記載のとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、水硬性組成物を調製した。
[実施例3]
セメントクリンカ及び石膏の混合物に変えて、石膏成分を含むセメントクリンカを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、水硬性組成物を調製した。セメント中の石膏の含有量はSO換算で0.14質量%であった。
[比較例1]
促進剤を配合しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、水硬性組成物を調製した。
[比較例2]
セメントクリンカ及び石膏の混合物における配合割合を表2に記載のとおりに変更し、促進剤を配合しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、水硬性組成物を調製した。
[比較例3]
セメントクリンカ及び石膏の混合物における配合割合、並びに、促進剤の配合量を、表2に記載のとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、水硬性組成物を調製した。
[比較例4]
セメントクリンカ及び石膏の混合物における配合割合を表2に記載のとおりに変更し、促進剤を配合しなかったこと以外は、実施例4と同様にして、水硬性組成物を調製した。
[比較例5]
セメントクリンカ及び石膏の混合物における配合割合、並びに、促進剤の配合量を、表2に記載のとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、水硬性組成物を調製した。
[参考例1]
炭酸塩及び促進剤を配合しない、従来の高炉セメントの例として、セメントクリンカ及び石膏の混合物が30質量%、及び高炉水砕スラグ(スラグB)が70質量%となるように、それぞれ図り取り、混合することで、セメントを調製した。セメント中の石膏の含有量はSO換算で1.94であった。
Figure 2023081472000002
表2中、石膏の含有量は、石膏単体として配合したものに限らず、ポルトランドセメントクリンカ(アルカリ刺激材)及び高炉水砕スラグ中の成分を含む量を意味する。例えば、実施例3においては、石膏を配合しないセメントを用いて、水硬性組成物を調製しており、表2中の石膏の含有量として記載されている値は、ポルトランドセメントクリンカ及び高炉水砕スラグに由来する石膏相当成分の含有量を意味する。
[水硬性組成物の評価:圧縮強さ]
上述のようにして調製された水硬性組成物について、後述する方法に沿って圧縮強さの測定及び評価、並びに、各種高炉水砕スラグを用いた系において、促進剤を配合しなかった比較例の水硬性組成物の圧縮強さを基準とした圧縮強さ比を算出し、評価した。結果を表3に示す。
水硬性組成物、細骨材、及び水を配合して得られるモルタル組成物を用いて圧縮強さの評価を行った。具体的には、実施例、比較例及び参考例で調製した水硬性組成物のそれぞれについて、100質量部の水硬性組成物に対して、細骨材としての砂(標準砂/セメント協会製)を200質量部、及び、50質量部の水を配合することによって、評価用のモルタル組成物を調製した。上述の配合は、水硬性組成物:砂:水が100:300:50(質量比、JIS R 5201:2015「セメントの物理試験方法」の記載に沿って配合)となるように調整したものである。
得られたモルタル組成物のそれぞれを用いて、モルタル硬化体を調製した。まず、上記モルタル組成物を20℃の恒温室においてモルタルとして練り混ぜ、4cm×4cm×16cm(JIS R 5201:2015「セメントの物理試験方法」の記載に沿って調製)の型枠に型詰めした。型枠を湿気箱内に貯蔵して、24時間、養生した。24時間養生の後に脱型し、モルタル硬化体を得た。得られたモルタル硬化体を7日間(材齢7日)、20℃の恒温室で水中養生させた。水中養生後のモルタル硬化体を試験体として、材齢7日のモルタル硬化体の圧縮強さを測定した。同様にして、得られたモルタル硬化体を28日間(材齢28日)、20℃の恒温室で水中養生させ、材齢28日のモルタル硬化体の圧縮強さを測定した。圧縮強さの測定は、JIS R 5201:1992「セメントの物理試験方法」の記載に準拠して行った。測定結果に基づいて、下記の基準で評価した。結果を表3に示す。
<28日圧縮強さの評価基準>
A:圧縮強さが、50.0N/mm以上である。
B:圧縮強さが、46.0N/mm以上50.0N/mm未満である。
C:圧縮強さが、46.0N/mm未満である。
<圧縮強さ比の評価基準>
A:圧縮強さ比が、105%以上である。
B:圧縮強さ比が、103%以上105%未満である。
C:圧縮強さ比が、100%以上103%未満である。
D:圧縮強さ比が、100%未満である。
[水硬性組成物の評価:水和発熱量]
上述のようにして調製された水硬性組成物について、後述する方法に沿って水和発熱量の測定を行った。結果を表3に示す。
具体的には、実施例、比較例及び参考例で調製した水硬性組成物のそれぞれについて、100質量部の水硬性組成物に対して、40質量部の水を配合することによって、評価用サンプルを調製し、水和発熱速度測定装置(東京理工株式会社製、コンダクションカロリーメーター)を用いて、測定開始から3日間での積算発熱量を測定し、これを測定対象となる水硬性組成物の水和発熱量とした。
Figure 2023081472000003
本開示によれば、高炉水砕スラグ及び炭酸塩等の混合比率を高めてアルカリ刺激材の比率を下げた水硬性組成物において、製造におけるCO発生量をより低減することが可能であり、且つ、初期及び長期の双方において優れた圧縮強さを発揮し得る水硬性組成物及びその製造方法を提供できる。本開示によればまた、高炉水砕スラグ等の混合比率が高く水硬性組成物の、初期及び長期の双方における圧縮強さの向上方法を提供できる。

Claims (22)

  1. アルカリ刺激材、高炉水砕スラグ、及び炭酸塩を含むセメントと、
    促進剤と、を含み、
    前記セメントの全量を基準として、前記アルカリ刺激材の含有量が5.0~60.0質量%であり、前記高炉水砕スラグの含有量が35.0~90.0質量%であり、前記炭酸塩の含有量が5~40質量%であり、
    前記セメントにおける石膏の含有量が、SO換算で、1.70質量%以下であり、
    前記促進剤の含有量が、前記セメントの100質量部に対して、0.2~5.0質量部である、水硬性組成物。
  2. 前記炭酸塩が、アルカリ金属の炭酸塩、及びアルカリ土類金属の炭酸塩からなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項1に記載の水硬性組成物。
  3. 前記炭酸塩が、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、及び炭酸マグネシウムからなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項1又は2に記載の水硬性組成物。
  4. 前記高炉水砕スラグ及び前記炭酸塩の合計含有量と、前記石膏の含有量とが、下記式(1)の関係を満たす、
    [石膏の含有量]≦1.5-2.0([高炉水砕スラグ及び炭酸塩の合計含有量]-60)/100…式(1)
    請求項1~3のいずれか一項に記載の水硬性組成物。
  5. 前記促進剤が、亜硝酸塩、硝酸塩、及び塩化物からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1~4のいずれか一項に記載の水硬性組成物。
  6. 前記促進剤が、一価の陰イオンを有する塩を含有する、請求項5に記載の水硬性組成物。
  7. 前記促進剤が、アルカリ金属塩、及びアルカリ土類金属塩からなる群より選択される少なくとも一種を含有する、請求項5又は6に記載の水硬性組成物。
  8. 前記促進剤が、カルシウム塩を含有する、請求項5~7のいずれか一項に記載の水硬性組成物。
  9. 前記アルカリ刺激材が、ポルトランドセメントクリンカ、消石灰、及び生石灰からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の水硬性組成物。
  10. 前記石膏が、二水石膏、及び半水石膏からなる群より選択される少なくとも一種を含有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の水硬性組成物。
  11. 前記高炉水砕スラグの塩基度が1.75未満である、請求項1~10のいずれか一項に記載の水硬性組成物。
  12. 前記高炉水砕スラグの塩基度が、1.75~1.95である、請求項1~10のいずれか一項に記載の水硬性組成物。
  13. 前記高炉水砕スラグにおける酸化アルミニウムの含有量が14.5質量%以下である、請求項1~12のいずれか一項に記載の水硬性組成物。
  14. 前記高炉水砕スラグの含有量が、前記セメントの全量を基準として、35.0~70.0質量%である、請求項1~13のいずれか一項に記載の水硬性組成物。
  15. アルカリ刺激材、高炉水砕スラグ、及び炭酸塩を含む原料を、前記アルカリ刺激材の含有量が5.0~60.0質量%となり、前記高炉水砕スラグの配合量が35.0~90.0質量%となり、前記炭酸塩の含有量が5~40質量%となるように混合してセメントを調製する第一工程と、
    前記セメントの100質量部に対して、0.2~5.0質量部の促進剤を混合する第二工程と、を含み、
    前記第一工程において、前記セメント中の石膏の含有量を、SO換算で、1.70質量%以下となるように調整することを含む、水硬性組成物の製造方法。
  16. 前記炭酸塩が、アルカリ金属の炭酸塩、及びアルカリ土類金属の炭酸塩からなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項15に記載の製造方法。
  17. 前記炭酸塩が、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、及び炭酸マグネシウムからなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項15又は16に記載の製造方法。
  18. 前記第一工程において、前記高炉水砕スラグ及び前記炭酸塩の合計含有量と、前記石膏の含有量とが、下記式(1)の関係を満たすように、前記石膏を配合する、
    [石膏の含有量]≦1.5-2.0([高炉水砕スラグ及び炭酸塩の合計含有量]-60)/100…式(1)
    請求項15~17のいずれか一項に記載の製造方法。
  19. アルカリ刺激材、高炉水砕スラグ、及び炭酸塩を含み、前記アルカリ刺激材の含有量が5.0~60.0質量%であり、前記高炉水砕スラグの含有量が35.0~90.0質量%であり、前記炭酸塩の含有量は5~40質量%あるセメントを含む組成物について、セメントにおける石膏の含有量を測定し、前記セメントにおける石膏の含有量を、SO換算で、1.70質量%以下となるように調整すること、及び、
    前記組成物における促進剤の含有量を測定し、促進剤の含有量を、前記セメントの100質量部に対して、0.2~5.0質量部となるように調整すること、を含む、水硬性組成物の圧縮強さ増進方法。
  20. 前記炭酸塩が、アルカリ金属の炭酸塩、及びアルカリ土類金属の炭酸塩からなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項19に記載の増進方法。
  21. 前記炭酸塩が、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、及び炭酸マグネシウムからなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項19又は20に記載の増進方法。
  22. 前記組成物が促進剤を含む、請求項19~21のいずれか一項に記載の増進方法。
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