JP2023080894A - 金属膜、これを用いた水素透過装置及び水素製造方法 - Google Patents

金属膜、これを用いた水素透過装置及び水素製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】原料ガスの圧力を高くした場合であっても良好に水素を透過させることができる金属膜、この金属膜を用いた水素透過装置、及び水素製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】本発明の金属膜は、水素を含む原料ガスを30kPa以上の圧力で接触させて水素を透過させる金属膜であって、第5族元素を含有し、その表面を電界放出形走査電子顕微鏡及び後方散乱電子回折を組み合わせて観察して測定される平均結晶粒子径が1mm以下であって、かつ、その厚さが0.05mm以上である。【選択図】図4

Description

本発明は、原料ガスから水素を透過するための金属膜、これを用いた水素透過装置及び水素製造方法に関する。
水素透過膜として、原料ガス中の水素を選択的に透過させることができる金属であるバナジウム(V)やその合金を、圧延やめっき等により薄膜状に加工したものが使用されている。
例えば、特許文献1には、原料ガスから水素を選択的に透過させることができる薄膜状のバナジウムの金属膜に対し、ε=10以上の巨大ひずみを付与する強歪み加工として高圧ねじり(HPT)加工を行うことで、粒度番号が20であり、平均粒径d=390nmのバナジウム膜を製造する技術が紹介されている。
特開2017-177024号公報
しかしながら、特許文献1で紹介されている技術では、原料ガスの圧力を高くするとバナジウムの金属膜が破断する現象が発生し、原料ガス中の水素ガス圧力(水素を含む原料(混合)ガスの場合は水素分圧であり、純水素ガスであれば全圧に相当する。)を20kPa程度までしか上げることができず、水素の透過量が制限されざるを得ないという課題があった。そして、この課題は、バナジウムのみならず、いわゆる第5族元素を含有する金属膜(以下、本明細書においては、こうした金属膜を単に「金属膜」と呼ぶ場合がある。)においても同様に存在する。
本発明は、上記課題を解決するためのものであって、原料ガスの圧力を高くした場合であっても良好に水素を透過させることができる金属膜、この金属膜を用いた水素透過装置、及び水素製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、水素を含む原料ガスを30kPa以上の圧力で接触させて水素を透過させる金属膜であって、当該金属膜が第5族元素を含有し、当該金属膜の表面を電界放出形走査電子顕微鏡及び後方散乱電子回折を組み合わせて観察して測定される平均結晶粒子径が1mm以下であって、かつ、前記金属膜の厚さが0.05mm以上である、ことを特徴とする金属膜に関する。
また、本発明においては、前記金属膜における前記第5族元素の含有量を50原子%以上とすることが好ましい。
また、本発明においては、前記第5族元素が、バナジウム、ニオブ、又はタンタルからなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
また、本発明においては、前記金属膜のビッカース硬度が120HV/kg/mm以上とすることが好ましい。
また、本発明においては、前記原料ガス中の水素濃度を70%以下とすることが好ましい。
さらに、本発明は、上記水素透過用の金属膜を用いたことを特徴とする水素透過装置に関する。
さらに、本発明は、水素を含む圧力30kPa以上の原料ガスを上記の金属膜に接触させて、当該金属膜を透過する水素を回収することで、前記原料ガスから水素を取り出すことを特徴とする水素製造方法に関する。
本発明の金属膜は、水素を含む原料ガスの圧力を大きくした場合であっても膜が破断等することなく良好に水素を透過させることができるようになる。また本発明の水素透過装置によれば、上記金属膜を使用するため、原料ガスから水素を良好に選択的に分離又は透過することができるようになる。さらに、本発明の水素製造方法によれば、上記金属膜を使用するため、原料ガスから水素を良好に選択的に分離又は透過することができる水素の製造方法が提供される。
本発明の水素透過装置の模式図 0.2mmHPS-V、0.3mmHPS-V、0.5mmHPS-V及び0.7mmHPS-Vにおけるビッカース硬度測定結果 0.2mmHPS-Vの結晶組織の観察結果 0.3mmHPS-Vの結晶組織の観察結果 0.5mmHPS-Vの結晶組織の観察結果 0.7mmHPS-Vの結晶組織の観察結果 水素透過試験の結果を示すグラフ 水素透過試験の結果を示すグラフ
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
[金属膜]
本発明の金属膜は、水素を含む原料ガスを30kPa以上の圧力で接触させて水素を透過させる金属膜であって、この金属膜が第5族元素を含有し、金属膜の表面を電界放出形走査電子顕微鏡及び後方散乱電子回折を組み合わせて観察して測定される平均結晶粒子径が1mm以下であって、かつ、金属膜の厚さが0.05mm以上である。
第5族元素を含有する金属膜は、原料ガスから水素を選択的に分離、透過させることができるという優れた特性を有する。この特性を利用することで、第5族元素を含有する金属膜は、燃料電池の原料となる水素の高純度化、発電所、化学プラント、製鉄所等から排出される副生ガスから水素を分離、取り出すことによるエネルギーの再利用等に適用することができ、カーボンニュートラルの実現にも大きく寄与するものと期待される。
もっとも、第5族元素を含有する金属膜は、機械的強度が十分でないという性質があるため、原料ガスから水素を選択的に取り出そうとする場合に金属膜が破断しやすく、この点を改良する必要があった。また、水素の透過効率をさらに上げて、単位時間当たりの水素を分離又は取り出すことができる量を上げたいという課題もあった。
本発明者は、鋭意検討した結果、第5族元素の一例としてバナジウムを用い、バナジウムを含有する金属膜にひずみを加えて金属膜中の結晶粒子径を小さくすることで、水素の透過効率を上げることができることを見出した。これは、結晶粒界が水素原子の拡散経路として機能することを示唆しており、金属膜中の結晶粒子径を小さくして結晶粒界を増やした結果、水素原子の拡散経路が増え、水素透過率を上がったものと考察される。もっとも、この場合であってもバナジウムを含有する金属膜の機械的強度は実用化を見据えると改善の余地が残されており、水素を含有する原料ガスの圧力を上げると金属膜が破断してしまうという課題があった。結果として、原料ガスの圧力を20kPa程度までしか上げることができないというのが実情であった。
そこで、本発明者がさらに検討を進めた結果、第5族元素を含有する金属膜の原料ガスに対する機械的強度の確保、換言すれば水素透過時の破断のしにくさを向上させるためには、未処理(薄膜を製造するために汎用の工業的な圧延をしただけの)第5族元素を含有する金属膜に対してひずみをどのようにして加えるかが、重要なファクターであることが分かった。具体的には、ひずみを加える対象となる未処理の第5族元素を含有する金属膜を拘束した状態で、この金属膜の両面を加圧し、金属膜の厚さを極力変化させない状態でひずみを加えることで、結晶粒子の微細化と金属膜の機械的強度の向上という可能となることが分かった。さらに、上下方向からの加圧に加え、金属膜にせん断ひずみを導入することで、上記機械的強度を保ったまま、結晶粒子をさらに微細化することができること、ひいては水素透過という面でさらに有利になる可能性を見出した。
ここで、上記説明した、ひずみをかける対象となる未処理の第5族元素を含有する金属膜を拘束した状態で、この金属膜の膜厚を極力変化させることなく、この金属膜の両面を加圧する方法やせん断ひずみを加える方法については種々の方法を適宜採用することができる。その一例として、高圧すべり(HPS: High-Pressure Sliding)加工法がある。HPS加工法では、未処理の金属膜を上下二つの金型に挟み込んで金属膜の上下及び周囲を拘束する。その上で金属膜の上下から圧力をかけることでひずみを加える。この上下からの圧力を加えることで、金属膜中の平均結晶粒子径(測定方法は追って説明する。)を、未処理の金属膜では数mm~数十mm程度であったものを、通常1mm以下、好ましくは100μm以下、更に好ましくは50μm以下、特に好ましくは10μm以下、最も好ましくは5μm以下、通常100nm以上まで微細化することができる。
さらに、上下の金型で第5族元素を含有する金属膜に圧力を加えた状態で、上下の金型の全部又は一部を左右にずらすことで、金属膜にせん断ひずみが導入することができる。このせん断ひずみの導入で、結晶粒をさらに微細化しやすくなる。具体的には、せん断ひずみの導入で、第5族元素を含有する金属膜中の平均結晶粒子径を、通常1μm以下、好ましくは700nm以下、より好ましくは500nm以下、通常1nm以上とすることができる。
本発明においては、第5族元素を含有する金属膜中の平均結晶粒子径の測定方法は、金属膜の表面を、電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)及び後方散乱電子回折(EBSD)を組み合わせて観察して、観察像の画像処理を行い、平均結晶粒子径を測定することで行う。
電界放出形走査電子顕微鏡としては、日本電子株式会社のJSM-7100Fを使用することができる。この装置を利用し、観察の条件は以下のとおりに設定した。9.5×10-5Pa以上の真空度に到達した電子顕微鏡試料室(チャンバー)内の金属膜の試料(必要に応じて観察前にアルミナやコロイダルシリカ懸濁液によって鏡面研磨されている)に、膜上面へ10、15又は20kVで加速した電子線を照射し、500倍、15,000倍もしくは20,000倍の二次電子像や反射電子像を撮像する。観察時は電子プローブを二次元的に走査しながら、二次電子や反射電子を検出して1枚の画像にすることで、試料表面の凹凸や組成コントラストを観察した。
さらに、第5族元素を含有する金属膜中の結晶解析には、後方散乱電子回折(Electron Backscatter Diffraction Pattern:EBSD)を用いた。この方法を使用すれば、試料(金属膜)に照射された電子が反射電子として放出され、その回折パターン(菊池線)を検出器面上に投影することで結晶方位や結晶粒径の解析が可能となる。JSM-7100Fに付設のEBSD検出器は、オックスフォードインストゥルメンツ株式会社のNordlysを使用した。また、解析は、同社のHKL CHANNEL5のマッピング描画ソフトウェア(Tango)を用いた。EBSDの条件は以下のとおりに設定した。9.5×10-5Pa以上の真空度に到達した電子顕微鏡試料室(チャンバー)内の金属膜の試料(必要に応じて観察前にアルミナやコロイダルシリカ懸濁液によって鏡面研磨されている)を70°に傾斜させ、その傾斜面にフォーカスした10、15又は20kVで加速した電子線を照射する。EBSDの回折パターンは、電子ビームに対してほぼ90°の位置に配置されたカメラ(検出器)によって、500倍、15,000倍もしくは20,000倍の画像データとして取り込まれ、データ処理を経て結晶面の指数付けや方位決めが行われる。またグレイン(結晶粒子)解析では、EBSDデータからグレインサイズ(結晶粒径)や形状などを計測してリストアップできる。したがって、加工条件の違いによる結晶方位や平均結晶粒子径の変化の解析を行うことができる。
本発明の金属膜は第5族元素を含有する。第5族元素の含有量は、通常30原子%以上、好ましくは50原子%以上、より好ましくは70原子%以上、さらに好ましくは90原子%以上、特に好ましくは95原子%以上である。一方、金属膜中の第5族元素の含有量の上限は100%(純粋な第5族元素)であってもよいが、通常は99.9999原子%以下とする。金属膜の第5族元素の含有量を上記範囲とすることで、水素の透過を良好にしやすくなる。特に、第5族元素の含有量を50原子%以上として、金属膜中の主たる元素を第5族元素とすると、水素の透過特性を向上させやすくなる。さらに、第5族元素の含有量を上記範囲とすることで、原料ガス中の水素濃度が70%以下となり、原料ガス中の水素含有量が小さくなった場合であっても、この原料ガスから水素を良好に分離しやすくなる。
本発明においては、金属膜は第5族元素を含有するが、第5族元素として、バナジウム、ニオブ、又はタンタルからなる群から選択される少なくとも一つを用いることが好ましく、このうちバナジウムを用いることがさらに好ましい。バナジウムに代表される第5族元素、特にいわゆるバナジウム族元素は化学的性質がよく似ているところ、バナジウムは水素を透過する性質を有するので、バナジウム以外の第5族元素、特にバナジウム族元素も同様の性質を有している。また、本発明においては、金属膜に第5族元素を用いるが、第5族元素は上述のとおり科学的性質がよく似ているので、これらを併用してもよい。例えば、バナジウムと、ニオブ、タンタルを共存させてもよいし、それらの合金としてもよい。
さらに、金属膜には、第5族元素以外の元素を含有させてもよい。このような元素を含有させることで、金属膜に種々の特性を付与しやすくなる。このような元素としては、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、コバルト(Co)等を挙げることができる。これらの合金元素を用いると、水素分離膜に剛性を付与しやすくなり、負荷する水素圧力を高めても合金中の水素固溶度(水素溶解度とも呼ぶ)を抑制でき、耐水素脆性の改善に寄与しやすくなる。第5族元素以外の元素の含有量は、各元素、それぞれ通常0.1原子%以上、好ましくは1原子%以上とする。この範囲とすれば、上記説明した特性を金属膜中に付与しやすくなる。一方、第5族元素以外の元素の含有量は、各元素、それぞれ通常25原子%以下、好ましくは11原子%以下とする。この範囲とすれば、第5族元素を用いるメリットを減ずることなく、必要な特性を付与しやすくなる。
金属膜中の第5族元素やその他の元素の含有量は以下の方法で分析することができる。すなわち、EDSやWDSなどを搭載した走査電子顕微鏡(SEM/EDS/WDS)もしくは電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM/EDS/WDS)を用いて、適宜分析条件を設定することで含有元素の種類や組成を分析することができる。
本発明においては、第5族元素を含有する金属膜の厚さを0.05mm以上とする。金属膜は、一般的には、厚くなればなるほど機械的強度を大きくしやすくなるので、膜が破断等しにくくなり、長期間、長寿命で良好に水素を透過させやすくなる。一方、金属膜を厚くすると、単位時間あたりに透過できる水素量は小さくなる傾向にある。このため金属膜は適宜の厚さに制御する必要がある。以上の観点から、金属膜は、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.2mm以上、さらに好ましくは0.3mm以上、特に好ましくは0.5mm以上、一方、通常1cm以下、好ましくは5mm以下、より好ましくは1mm以下とする。本発明において特筆すべき知見は、未処理の第5族元素(例えばバナジウム)を含有する金属膜を上記説明した方法でひずみを加えると、相対的に厚さが厚いにもかかわらず良好な水素透過率を達成できる点にある。なお、第5族元素を含有する金属膜の厚さは、その厚さに応じて、指金、ノギス、マイクロメータ、3D形状測定機等公知の測定装置を用いて測定すればよい。
本発明においては、金属膜のビッカース硬度を120HV/kg/mm以上とすることが好ましい。ビッカース硬度は、好ましくは130HV/kg/mm以上、より好ましくは150HV/kg/mm以上とする。金属膜の機械的強度を確保する観点からは、ビッカース硬度が高い方が好ましいものの、第5族元素を含有する金属膜(第5族元素、特にバナジウム族元素の化学的性質がよく似ていることは上述のとおりである。)という材質上の制限から、ビッカース硬度は一般的には500HV/kg/mm以下、通常300HV/kg/mm以下となる。ビッカース硬度は、市販されているビッカース硬度計(例えば、マイクロビッカース硬さ試験機)を用いて測定すればよい。
[金属膜の表面処理]
金属膜の一方の面又は両表面には、パラジウム又はパラジウム系合金を存在させることが好ましい。パラジウム又はパラジウム系合金を表面に存在させることで、これらが水素乖離触媒として機能し、金属膜中の水素の透過を効率的に行いやすくなる。ここでパラジウム系合金としては、例えば、パラジウムと、銀、銅、金の少なくとも1つの元素との合金を挙げることができる。パラジウムとこれら元素との合金とすることで、Pd-H二元系における水素化物形成温度を低くしやすくなり、かつ金属膜の耐久性を改善しやすくなる。パラジウム合金にする場合、パラジウム以外の元素の含有量は、水素透過性能改善の観点から、通常1mol%以上、好ましくは5mol%以上、より好ましくは10mol%以上、一方通常50mol%以下、好ましくは40mol%以下、より好ましくは30mol%以下とする。なお、本明細書においては、mol%は原子%と同義のものとして用いる。金属膜表面に存在しているパラジウム又はパラジウム合金の種類や組成比等は以下の方法で分析をすることができる。すなわち、EDSやWDSなどを搭載した走査電子顕微鏡(SEM/EDS/WDS)もしくは電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM/EDS/WDS)を用いて、適宜分析条件を設定することで含有元素の種類や組成を分析することができる。
金属膜の表面処理の方法としては、特に制限はないが、スパッタリング法(より具体的にはRFスパッタリング法)を用いてパラジウム又はパラジウム系合金を金属膜の表面に付着させることが好ましい。もっとも、金属膜の表面にパラジウム又はパラジウム系合金を付着させる方法として、スパッタリング以外の方法を用いてもよい。例えば、塗布液に触媒を分散させて塗布する手段や、真空蒸着して薄膜を均一に形成する手段を採用することができる。パラジウムやパラジウム系合金は、金属膜の表面に島状に形成されていてもよいし、粒子状の集合物(碁石を並べたような形態)で存在してもよいし、膜状に一面に存在してもよい。
[原料ガス]
本発明の金属膜は、原料ガスを接触させることによって、金属膜が原料ガス中に存在する水素が選択的に透過し、その結果原料ガスから水素を取り出すことができるようになる。ここで、原料ガス中の水素濃度は高ければ高い方が、透過し分離することができる水素量が多くなる。もっとも、発電所、化学プラント、製鉄所等で排出される副生ガスだけをみても、様々な種類、組成があり、常に水素濃度が高いものだけとなるわけではない。本発明の金属膜の利点は、水素濃度が低い原料ガス(例えば副生ガス)であったとしても、この原料ガスから水素を良好に取り出すことができる点にある。具体的には、原料ガス中の水素濃度が70%以下であっても、本発明の金属膜を適用することができる。なお、原料ガス中の「水素濃度」とは、原料ガスの組成における水素の含有量のことをいい、例えば、ガスクロマトグラフ(GC)分析装置などのガス分析装置によって、原料ガス中の化合物ごとに分離、定量することで水素濃度を調べることが可能となる。
また、本発明の特徴の一つは、原料ガスの圧力を上げることができる点にある。本発明の金属膜を用いた水素の透過は、この金属膜はさんで一次側(上流側)に原料ガスを一定の圧力で封入し、原料ガス中の水素分子が金属膜表面で2個の水素原子に乖離し、この水素原子が金属膜内を透過して二次側(下流側)に移動後、再度水素原子同士が結合して水素分子として取り出される、という機序で行われているものと考えられる。したがって、原料ガスの圧力を上げれば上げるほど、水素分子が一次側(上流側)の金属膜表面に付着する確率が高くなり、結果として水素透過率、水素透過量を上げることができるようになる。
しかしながら、これまでは機械的強度との関係で原料ガスの圧力を30kPa以上に上げることができなかったところ、上記説明した方法で第5族元素を含有する金属膜に巨大なひずみを与えることで、原料ガスの圧力を30kPa以上とすることができるようになった。原料ガスの圧力は、高ければ高いほど、水素透過率を大きくできるので、好ましくは50kPa以上、より好ましくは100kPa以上、特に好ましくは150kPa以上とする。一方、金属膜の機械的特性の観点から、通常500kPa以下とする。尚、上記においては、原料ガスの圧力は純水素の分圧(純水素ガスの場合は100%であり、原料ガスの圧力はそのまま純水素ガスの圧力となる)を示しており、原料ガスの全圧は1MPa未満であればよい。
[水素透過装置]
本発明の水素透過装置は、上記説明した金属膜を用いる。上述のとおり、本発明における第5族元素を含有する金属膜の水素の透過は、上記説明した金属膜をはさんで一次側(上流側)に原料ガスを一定の圧力で封入し、原料ガス中の水素分子が金属膜表面で2個の水素原子に乖離し、この水素原子が金属膜内を透過して二次側(下流側)に移動後、再度水素原子同士が結合して水素分子として取り出される、という機序で行われているものと考えられる。したがって、原料ガスの圧力を上げれば上げるほど、水素分子が一次側(上流側)の金属膜表面に付着する確率が高くなり、結果として水素透過率、水素透過量を上げることができるようになる。
本発明の水素透過装置は、上記機序を実現できるような構造であれば特に制限はない。こうした水素透過装置の具体例を図1に示す。図1は、本発明の第5族元素を含有する金属膜を固定する水素透過装置の拡大部分を含む模式図である。
図1の上部に示す拡大図中の「Sample」は本発明の第5族元素を含有する金属膜を示している。この金属膜を、VCR Gasket(VCR面シール継手)でCap nut(一次側、上流側)と、Male nut(二次側、下流側)とで固定する。そして一次側から原料ガスをSample(金属膜)に接触させ、その一部はシステム側へと戻っていくようにしている。もっとも、この原料ガスをSampleに接触させつつ、その一部を回収するシステムは必須ではない。また、本発明の特徴の一つは、第5族元素を含有する金属膜の改良によって、一次側の圧力を30kPa以上と高くすることができる点にある。この圧力で原料ガスを金属膜に接触させ、水素が金属膜を透過するように機能させ、二次側に水素が取り出されるようになる。その際に、図1中のElectric furnaceで金属膜を熱して水素の透過が良好に行われるようにする。なお、Leak test portは、水素透過を行う際に原料ガス又は透過させた水素が水素透過装置外へと漏れていないかを確認するためのものであり、漏れている場合はVCR GasketとSample(金属膜)との接触状態を調整し、漏れをなくすようにする。
図1の下側には、水素透過装置のシステムの全体図の一例を示す。このシステムは、バルブ・フィッティングや各種バルブ類を用いて配管して構成している。VCR Gasket(VCR面シール継手)の一次側(P1)に水素を含む原料ガスの導入口を、二次側(P2)に水素排出口を接続している。これにより配管システム中のバルブ操作を行うことで安定した圧力下で水素透過を行うことができる。さらに、配管二次側に組み込まれているマスフローメータを用いて透過流量をその場で測定できるようにしている。
[水素製造方法]
本発明の水素製造方法又は水素の取り出し方法は、水素を含む圧力30kPa以上の原料ガスを本発明の第5族元素を含有する金属膜に接触させて、この金属膜を透過する水素を回収することで、原料ガスから水素を取り出す。この製造方法は、上記説明した水素透過装置を用いて実現することができる。
以下、実施例を用いて本発明をより詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[第5族元素(バナジウム)を含有する金属膜の準備]
未処理の金属膜として、純V(純度99.9%)のバージン材(以下「バージン材」又は「Virgin-V」という場合がある。)を用いた。このバージン材を、幅10mm、長さ100mm、厚さ0.2mm、0.3mm、0.5mm、0.7mmに加工し、その周囲を拘束しながら、室温にて印加圧力1.5GPa、加工速度1.0mm/sec、スライド量x=0mm、3mm、5mm、10mm、15mmの条件でHPS加工を実施した。このようにして得た、厚さ0.2mmのバナジウムを含有する金属膜のサンプルを「0.2mmHPS-V」と、厚さ0.3mmのバナジウムを含有する金属膜のサンプルを「0.3mmHPS-V」と、厚さ0.5mmのバナジウムを含有する金属膜のサンプルを「0.5mmHPS-V」と、厚さ0.7mmのバナジウムを含有する金属膜のサンプルを「0.7mmHPS-V」という。そして、それぞれのバナジウムを含有する金属膜のサンプルから以後の測定に用いるための試料を切り出した。その際に、必要に応じて試料の表面を湿式研磨等して、平滑な鏡面を得た。
[ビッカース硬度の測定]
0.2mmHPS-V、0.3mmHPS-V、0.5mmHPS-V及び0.7mmHPS-Vについて、スライド量に応じたビッカース硬さ及び幅方向の硬度均一性を評価するため、マイクロビッカース硬さ試験機を用いて、HPS-V材表面を幅方向に1mm間隔で微小量硬度測定を行った。なお、硬度測定時の荷重は0.5kgfとした。マイクロビッカース硬さ試験機としては、株式会社ミツトヨ製マイクロビッカース硬さ試験機(型番:HM-102)を用いた。ビッカース硬さ試験は角錐形のダイヤモンド圧子を試料に押し付け、できた圧痕を顕微鏡で観察し対角線の長さを測定することで硬さを求めた。ビッカース硬度試験は、圧痕が最大でも0.数ミリ程度と小さいため、薄い試料の硬さ測定に優れている。また、測定は測定試料の測定面を研磨して実施した。ビッカース硬度測定結果のグラフを図2に示す。0.2mmHPS-V、0.3mmHPS-V、0.5mmHPS-V及び0.7mmHPS-Vのいずれにおいても、差はあるものの、バージン材よりもビッカース硬度(120HV/kg/mm程度)に対する向上が認められる。
[平均結晶粒径の測定]
FE-SEMと付属のEBSDを用いてHPS-Vの表面観察を行い、各スライド量における結晶組織から、平均結晶粒径の測定及び結晶方位の解析を行った。平均結晶粒径の測定及び結晶方位の解析は、金属膜の表面を電界放出形走査電子顕微鏡及び後方散乱電子回折を組み合わせて観察することで実施した。その条件については既に述べたとおりである。
測定結果を図3~6に示す。0.2mmHPS-Vにおいては、スライド量0mmの平均結晶粒径は359nm、スライド量3mmでの平均結晶粒径は241nm、スライド量5mmでの平均結晶粒径は238nm、スライド量10mmでの平均結晶粒径は206nmであった。0.3mmHPS-Vにおいては、スライド量0mmの平均結晶粒径は128nm、スライド量3mmでの平均結晶粒径は180nm、スライド量5mmでの平均結晶粒径は181nm、スライド量10mmでの平均結晶粒径は182nmであった。0.5mmHPS-Vにおいては、スライド量0mmの平均結晶粒径は240nm、スライド量3mmでの平均結晶粒径は201nm、スライド量5mmでの平均結晶粒径は237nm、スライド量10mmでの平均結晶粒径は239mm、スライド量15mmでの平均結晶粒径は245nmであった。0.7mmHPS-Vにおいては、スライド量0mmの平均結晶粒径は4.77μm、スライド量3mmでの平均結晶粒径は497nm、スライド量5mmでの平均結晶粒径は496nm、スライド量10mmでの平均結晶粒径は443nm、スライド量15mmでの平均結晶粒径は483nmであった。
[水素透過試験]
0.5mmHPS-V及び0.7mmHPS-Vの各試料の両面を上記説明した方法で鏡面状態とし、板状試料から直径12mmの円板形状に切出して準備した。RFスパッタ装置を用いて基盤温度300℃で6分間のRFスパッタ処理を施し、膜両面にPd-25mol%Agを被覆して水素解離触媒性を付与した。ここで純PdではなくPd-25mol%Agを被覆した理由は、Agを添加することによりPd-H二元系における水素化物形成温度を低温化し、膜の耐久性を改善する為である。また、水素透過性能を向上させる目的で25mol%のAgを添加している。そして、図1に示す水素透過装置を用い、装置全体を真空引きし、一次側水素圧を二次側水素圧力以上の圧力をかけた。一次側の圧力は適宜変更して透過試験を行った。
水素透過試験の手順を以下に示す。膜試料をVCR面シール継手内部に取り付け、2×10-1Paまで真空引きを行う。その後VCR面シール継手の膜試料固定部を管状電気炉で300℃まで昇温した。一次側の水素固溶濃度が0.1H/M(5kPa)となる圧力まで上昇させ、水素透過が行われるまでそのままの状態を保持した。水素が透過したことを確認してから水素透過量が安定するまで保持し、二次側配管内の体積流量[sccm]を管路に設置したマスフローメータによって測定することで水素透過係数を算出した。その後一次側の圧力を0.2H/M(7kPa)、0.3H/M(9kPa)、0.4H/M(16kPa)など上昇させるが、最大で0.57H/M(150kPa)となるように変化させ、それぞれの水素の体積流量を測定し、水素透過係数を算出した。測定結果を図7、8に示す。ここで、バージン材(Virgin)はPd-25mol%Ag被覆した、未処理の(HPS加工をしていない)バナジウムの膜をいう。
水素透過試験の結果の例を図7に示す。バージン材、0.5mmHPS-V(スライド量3mm、5mm)及び0.7mmHPS-V(スライド量3mm、5mm)の各膜試料について、一次側の原料ガス(この場合は純水素)圧力を横軸に、またその時に得られた水素透過係数を縦軸に示している。バージン材に比べてHPS加工を施したいずれの金属膜も検証したすべての圧力範囲で高い水素透過係数を示しており、HPS、加工で2~3倍の水素透過係数の改善が現れている。また、実際の水素透過量の比較を図8に示す。この図においてHPS-V材の各条件の右側に記した括弧書きの値は、例えば「t=0.7×0」は、0.7mmHPS-V、スライド量0mmを意味し、「(t=0.400mm)」は、マイクロメータで測定した膜試料研磨後の厚さが0.4mmであったことを示している。図中の他の数値の表記方法も同様である。0.5mmHPS-V加工材の研磨後の厚さは、スライド量5mmの試料で0.318mm、スライド量0mmの試料で0.333mmであった。0.7mmHPS-V加工材の研磨後の厚さは、スライド量0mmの試料で0.400mm、スライド量3mmの試料で0.448mm、スライド量5mmの試料で0.514mmであった。各試料は、研磨により膜厚が減じられるが、HPS加工を施したいずれの金属膜においても検証したすべての圧力範囲で高い水素透過量(標準状態(20℃、1atm)における一分間あたりの水素透過流量(cc))を示しており、バージン材に比べてHPS―V加工では2~3倍の水素透過流量の増加を確認し、水素透過におけるひずみ付与による金属組織制御の効果を認めた。また、図7、8より、原料ガスの圧力を30~150kPaと変化させても破断せず、高い水素透過量を確保できていることも分かる。
[変形例]
以上、本発明の好適な実施形態を例示して説明したが、本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に記載の範囲には限定されない。上記各実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。

Claims (7)

  1. 水素を含む原料ガスを30kPa以上の圧力で接触させて水素を透過させる金属膜であって、
    当該金属膜が第5族元素を含有し、
    当該金属膜の表面を電界放出形走査電子顕微鏡及び後方散乱電子回折を組み合わせて観察して測定される平均結晶粒子径が1mm以下であって、
    かつ、前記金属膜の厚さが0.05mm以上である、
    ことを特徴とする金属膜。
  2. 前記金属膜における前記第5族元素の含有量を50原子%以上とする、請求項1に記載の金属膜。
  3. 前記第5族元素が、バナジウム、ニオブ、又はタンタルからなる群から選択される少なくとも一つである、請求項1又は2に記載の金属膜。
  4. 前記金属膜のビッカース硬度が120HV/kg/mm以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の金属膜。
  5. 前記原料ガス中の水素濃度を70%以下とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の金属膜。
  6. 請求項1~5のいずれかに記載の金属膜を用いたことを特徴とする水素透過装置。
  7. 水素を含む圧力30kPa以上の原料ガスを請求項1~5のいずれかに記載の金属膜に接触させて、当該金属膜を透過する水素を回収することで、前記原料ガスから水素を取り出すことを特徴とする水素製造方法。
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