JP2023080500A - エンジン制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】筒内吸気量の演算精度を向上する。【解決手段】エアクリーナモデル104、スロットルモデル105、吸気管モデル106、及び吸気弁モデル107の各物理モデルを用いた筒内吸気量MCの演算に際して、スロットルモデル105によるスロットル流量MTの演算値を補正する第1シフト補正108と、吸気弁モデル107による筒内吸気量MCの演算値を補正する第2シフト補正109と、を行うようにした。【選択図】図2

Description

本発明は、エンジン制御装置に関する。
エンジンの燃焼室に流入する吸気の量である筒内吸気量の演算方式として、特許文献1に記載の方式が知られている。同文献に記載の演算方式は、吸気圧の検出値を吸気弁モデルに入力して筒内吸気量を演算する方式である。吸気弁モデルは、吸気通路から吸気弁を通じて燃焼室に流入する吸気の挙動についての物理モデルである。
また、筒内吸気量の演算方式として、上記吸気弁モデルに加えて、スロットルモデル及び吸気管モデルの2つの物理モデルを用いて、スロットル開度から筒内吸気量を演算する方式も知られている。スロットルモデルは、スロットルバルブを通過する吸気の挙動についての物理モデルである。吸気管モデルは、吸気通路におけるスロットルバルブよりも下流側の部分での吸気の挙動についての物理モデルである。
特開2015-224611号公報
上記のような物理モデルは、実際の吸気の挙動を完全には再現しない。そのため、上記のような3つの物理モデルを用いた筒内吸気量の演算方式では、物理モデルの吸気挙動と実際の吸気挙動との乖離に起因した誤差が生じる場合がある。こうした誤差には数多くの因子が関与しているため、その誤差の補正は困難となっている。
上記課題を解決するエンジン制御装置は、スロットルバルブを通過する吸気の挙動についての物理モデルであるスロットルモデルを用いて、スロットル開度、スロットル上流圧、及びスロットル下流圧に基づきスロットル流量を演算するスロットル流量演算処理と、吸気通路におけるスロットルバルブよりも下流側の部分を流れる吸気の挙動についての物理モデルである吸気管モデルを用いて、スロットル流量及び筒内吸気量に基づきスロットル下流圧を演算するスロットル下流圧演算処理と、吸気通路から燃焼室に流入する吸気の挙動についての物理モデルである吸気弁モデルを用いて、スロットル下流圧に基づき筒内吸気量を演算する筒内吸気量演算処理と、エンジンの運転状態を示す状態量に基づき、スロットルモデルによるスロットル流量の演算値を補正する第1シフト補正と、エンジンの運転状態を示す状態量に基づき、吸気弁モデルによる筒内吸気量の演算値を補正する第2シフト補正と、を実施する。なお、筒内吸気量はエンジンの吸気通路から燃焼室に流入する吸気の量を、スロットル開度は吸気通路に設置されたスロットルバルブの開度を、スロットル上流圧はスロットルバルブの通過前の吸気の圧力を、スロットル下流圧はスロットルバルブの通過後の吸気の圧力を、スロットル流量はスロットルバルブを通過する吸気の流量を、それぞれ表している。
上記エンジン制御装置では、スロットルモデル、吸気管モデル、及び吸気弁モデルの各物理モデルを用いて筒内吸気量を演算している。演算した筒内吸気量は、エンジンの制御に用いられる。こうした筒内吸気量の演算に用いる物理モデルは、エンジン制御装置の処理能力や演算完了に要する時間の制限のため、簡略化したモデルとする必要がある。そのため、物理モデルでの吸気の挙動に実際の挙動とは乖離した部分ができてしまい、筒内吸気量の演算結果に誤差が生じることがある。
こうした物理モデルの誤差による筒内吸気量の演算精度の低下は、次の方法で抑えられる。まず、エンジンの運転状態毎の筒内吸気量を実際のエンジンで測定して物理モデルの誤差を求める。そして、誤差の測定結果に応じて、物理モデルによる筒内吸気量の演算値を補正する。しかしながら、そうした補正を高精度に行うには、膨大な動作点での筒内吸気量の実測が必要となる。
一方、エンジン制御装置での使用を前提しなければ、処理能力や演算時間の制限が無い分、エンジン制御装置に実装される物理モデルよりも正確にエンジンの吸気挙動を再現するシミュレーションモデルを作成することは可能である。しかしながら、エンジンの吸気系全体の吸気挙動には数多くの因子が影響しており、その影響のメカニズムは複雑なため、そうしたシミュレーションモデルは容易には作成できないものとなっている。これに比べれば、スロットルバルブでの吸気の挙動に限定したシミュレーションモデルや、吸気弁での吸気の挙動に限定したシミュレーションモデルの作成は容易である。
上記エンジン制御装置では、物理モデルによる筒内吸気量の演算結果の誤差のうちのスロットルモデルの誤差を第1シフト補正により補正している。また、上記エンジン制御装置では、物理モデルによる筒内吸気量の演算結果の誤差のうちの吸気弁モデルの誤差を第2シフト補正により補正している。上記のようにスロットルバルブでの吸気の挙動に限定したシミュレーションモデルや、吸気弁での吸気の挙動に限定したシミュレーションモデルは、比較的容易に作成できる。よって、第1シフト補正でのスロットルモデルの誤差の補正、及び第2シフト補正での吸気弁モデルの誤差の補正を高精度に行うために必要な、エンジン制御装置の設計段階でのデータの収集を容易に実施できる。
スロットルモデル及び吸気弁モデルの誤差を正確に補正できれば、それらを含む物理モデルを用いた筒内吸気量の演算精度が向上する。よって、上記エンジン制御装置は、高精度での筒内吸気量の演算が可能である。
上記エンジン制御装置は、機関バルブの動弁特性を可変とする可変動弁機構を備えるエンジンに適用可能である。そうした場合、第1シフト補正によるスロットル流量の演算値の補正に用いる状態量には、可変動弁機構の動作量を含めることが望ましい。また、そうした場合、第2シフト補正による筒内吸気量の演算値の補正に用いる状態量には、可変動弁機構の動作量を含めることが望ましい。
また、上記エンジン制御装置は、吸気中への排気の再循環を行うエンジンに適用可能である。そうした場合、第1シフト補正処理によるスロットル流量の演算値の補正に用いる状態量には、排気の再循環量を示す状態量を含めることが望ましい。また、そうした場合、第2シフト補正処理による筒内吸気量の演算値の補正に用いる状態量には、排気の再循環量を示す状態量を含めることが望ましい。
上記エンジン制御装置は、排気中の微粒子物質を捕集するフィルタ装置を備えるエンジンに適用可能である。そうした場合、第2シフト補正処理による筒内吸気量の演算値の補正に用いる状態量には、フィルタ装置の詰り度合を示す状態量を含めることが望ましい。
エンジン制御装置の第1実施形態の構成を模式的に示す図。 同エンジン制御装置による筒内吸気量の演算に係る処理の制御ブロック図。 スロットル前後圧力比とファイ値との関係を示すグラフ。 スロットル下流圧と筒内吸気量との関係を示すグラフ。 スロットル流量演算処理の制御ブロック図。 筒内吸気量演算処理の制御ブロック図。 スロットル下流圧と第2シフト補正値との関係を示すグラフ。
(第1実施形態)
以下、エンジン制御装置の第1実施形態を、図1~図7を参照して詳細に説明する。まず、図1を参照して、本実施形態のエンジン制御装置の構成を説明する。
<エンジン制御装置の構成>
図1に示すように、エンジン10は、混合気の燃焼を行う燃焼室11と、燃焼室11への吸気の供給路である吸気通路12と、燃焼室11からの排気の排出路である排気通路13と、を備えている。また、エンジン10は、燃焼室11に導入される吸気中に燃料を噴射して混合気を形成するインジェクタ14を備えている。さらにエンジン10は、燃焼室11内の混合気を火花放電により点火する点火装置15を備えている。燃焼室11は、吸気側の機関バルブである吸気弁19を介して吸気通路12に接続されている。また、燃焼室11は、排気側の機関バルブである排気弁21を介して排気通路13に接続されている。なお、エンジン10には、吸気弁19の動弁特性を可変とする吸気側の可変動弁機構20と、排気弁21の動弁特性を可変とする排気側の可変動弁機構22と、を備えている。可変動弁機構20,22は、例えば吸気弁19又は排気弁21のバルブタイミングを可変とする機構である。以下の説明では、吸気側の可変動弁機構20の動作量を、吸気バルブタイミングVTIと記載する。また、以下の説明では、排気側の可変動弁機構22の動作量を、排気バルブタイミングVTEと記載する。
吸気通路12には、エアクリーナ16、及びスロットルバルブ17が設置されている。エアクリーナ16は、吸気通路12に取り込まれた吸気を濾過するフィルタである。スロットルバルブ17は、開度変更に応じて吸気の流路面積を変化させる弁である。スロットルバルブ17は、スロットルモータ18により開閉駆動される。以下の説明では、こうしたスロットルバルブ17の開度をスロットル開度TAと記載する。吸気通路12は、スロットルバルブ17よりも下流側の部分に設置された分枝管である吸気マニホールド12Aにおいて気筒別に分岐されている。一方、排気通路13には、排気中の微粒子物質を捕集するフィルタ装置23が設置されている。
さらに、エンジン10は、排気の一部を吸気中に再循環するEGR(排気再循環)システムを備えている。EGRシステムは、排気通路13と吸気通路12とを繋ぐEGR通路24を有している。また、EGRシステムは、EGRクーラ25とEGRバルブ26とを有している。EGRクーラ25は、EGR通路24を通じて吸気中に再循環される排気であるEGRガスを冷却する。EGRバルブ26は、吸気中に再循環するEGRガスの流量であるEGR量を調整するための弁である。
エンジン10は、ECM(エンジン制御モジュール)30により制御される。ECM30は、処理装置31と記憶装置32とを備える。記憶装置32には、エンジン10の制御用のプログラムやデータが記憶されている。処理装置31は、記憶装置32から読み込んだプログラムを実行することで、エンジン10を制御するための各種処理を実行する。ECM30には、各種センサが接続されている。ECM30に接続されたセンサには、吸気温センサ33、大気圧センサ34、スロットル開度センサ35、差圧センサ36、クランク角センサ38、及びアクセルペダルセンサ40が含まれる。吸気温センサ33は、外部から吸気通路12に取り込まれた吸気の温度である吸気温THAを検出するセンサである。大気圧センサ34は、大気圧PAを検出するセンサである。スロットル開度センサ35は、スロットル開度TAを検出するセンサである。差圧センサ36は、排気通路13におけるフィルタ装置23よりも上流側の部分と下流側の部分との排気の圧力差であるフィルタ前後差圧ΔPを検出するセンサである。クランク角センサ38は、エンジン10の出力軸であるクランク軸37の回転角であるクランク角CRNKを検出するセンサである。アクセルペダルセンサ40は、運転者によるアクセルペダル39の踏込量ACCを検出するセンサである。
ECM30は、クランク角CRNKの検出結果に基づき、エンジン回転数NEを演算している。また、ECM30は、エンジン回転数NEの演算結果や、大気圧PA、吸気温THA、スロットル開度TA等の検出結果に基づき、燃焼室11に導入される吸気の量である筒内吸気量MCを演算している。そして、ECM30は、エンジン回転数NE、及び筒内吸気量MCの演算結果に基づき、エンジン10の運転状態を制御している。ECM30が制御するエンジン10の運転状態には、インジェクタ14の燃料噴射量QINJ、点火装置15の点火時期SA、スロットル開度TA、吸気バルブタイミングVTI、排気バルブタイミングVTEが含まれる。
<筒内吸気量MCの演算処理>
次に、図2~図7を参照して、ECM30が行う筒内吸気量MCの演算処理の詳細を説明する。
図2に、筒内吸気量MCの演算に係るECM30の処理手順を示す。ECM30は、スロットル上流圧演算処理100、スロットル流量演算処理101、スロットル下流圧演算処理102、及び筒内吸気量演算処理103を通じて、筒内吸気量MCを演算している。スロットル上流圧演算処理100は、スロットルバルブ17に流入する吸気の圧力であるスロットル上流圧PACを演算する処理である。スロットル流量演算処理101は、スロットルバルブ17を通過する吸気の流量であるスロットル流量MTを演算する処理である。スロットル下流圧演算処理102は、吸気マニホールド12A内の吸気の圧力であるスロットル下流圧PMを演算する処理である。筒内吸気量演算処理103は、吸気通路12から燃焼室11に導入される吸気の量である筒内吸気量MCを演算する処理である。
なお、スロットル上流圧演算処理100でのスロットル上流圧PACの演算は、エアクリーナモデル104を用いて行われる。エアクリーナモデル104は、エアクリーナ16を通過する吸気の挙動を表す物理モデルである。また、スロットル流量演算処理101でのスロットル流量MTの演算は、スロットルモデル105を用いてスロットル流量MTの演算が行われる。スロットルモデル105は、スロットルバルブ17を通過する吸気の挙動の物理モデルである。また、スロットル下流圧演算処理102では、吸気管モデル106を用いてスロットル下流圧PMの演算が行われる。吸気管モデル106は、吸気マニホールド12Aを流れる吸気の挙動を表す物理モデルである。また、筒内吸気量演算処理103での筒内吸気量MCの演算は、吸気弁モデル107を用いて行われる。吸気弁モデル107は、吸気弁19を介して吸気通路12から燃焼室11に流入する吸気の挙動を表す物理モデルである。
<エアクリーナモデル104について>
まず、エアクリーナモデル104の詳細を説明する。ECM30においてエアクリーナモデル104は、吸気温THA、大気圧PA、及びスロットル流量MTを入力とし、スロットル上流圧PACを出力とする関数として実装されている。エアクリーナモデル104においてスロットル流量MTは、エアクリーナ16を通過する吸気の流量として用いられる。そして、エアクリーナモデル104は、吸気温THA、大気圧PA、及びスロットル流量MTに基づき、式(1)の関係を満たす値をスロットル上流圧PACの値として演算する。式(1)に記載の「R」は、吸気の気体定数を表している。
Figure 2023080500000002
<スロットルモデル105について>
次に、スロットルモデル105の詳細を説明する。ECM30においてスロットルモデル105は、吸気温THA、スロットル上流圧PAC、スロットル下流圧PM、及びスロットル開度TAを入力とし、スロットル流量MTを出力とする関数として実装されている。スロットルモデル105は、式(2)に示す関係を満たす値としてスロットル流量MTを演算する。式(2)に記載の「μ」は流量係数を表している。また、式(2)に記載の「RP」は、スロットル上流圧PACに対するスロットル下流圧PMの比(=PM/PAC)であるスロットル前後圧力比を表している。さらに、式(2)に記載の「AT」は、スロットルバルブ17の開口面積を表しており、その値は、スロットル開度TAから算出される。
Figure 2023080500000003
式(2)に記載の「Φ」は、式(3)に示す関係を満たす値である。以下の説明では、この値をΦ値と記載する。式(3)に記載の「κ」は、吸気の比熱比を表している。Φ値は、スロットル前後圧力比RPにより一義に定まる値となる。
Figure 2023080500000004
図3に、Φ値とスロットル前後圧力比RPとの関係を示す。スロットル前後圧力比RPが「1/(κ+1)」以下となる場合には、スロットルバルブ17を通過する吸気の流速が音速以上となる。なお、以下の説明では、スロットルバルブ17を通過する吸気の流速が音速以上となる領域を音速域と記載する。Φ値は、スロットル前後圧力比RPによるスロットル流量MTの変化率を表す値となる。スロットル前後圧力比RPが「1」の場合、すなわちスロットルバルブ17の前後に圧力差が無い場合には、スロットルバルブ17に吸気が流れない。このときのΦ値の値は「0」となる。一方、スロットル前後圧力比RPが「1/(κ+1)」以下となる音速域では、Φ値は一定の値となる。そして、スロットル前後圧力比RPの値が「1/(κ+1)」以上、かつ「1」以下となる範囲では、Φ値は、スロットル前後圧力比RPの値の減少に応じて増加する値となる。
なお、上述の式(2)は、標準圧力PA0及び標準温度TH0を用いて、式(4)のように表せる。式(4)における「μs」は、スロットル上流圧PACが標準圧力PA0であり、かつ吸気温THAが標準温度TH0であるときの流量係数μの値を表している。
Figure 2023080500000005
ここで、式(5)の関係を満たす「B」の値をB値とする。B値は、スロットル開度TAにより一義に定まる値となる。また、式(6)の関係を満たす「KTHA」の値を温度補正係数とする。さらに、式(7)の関係を満たす「KPAC」の値を圧力補正係数とする。このときのスロットル流量MTは、式(8)に示すように、B値、温度補正係数KTHA、圧力補正係数KPAC、及びΦ値の積として表せる。ECM30に実装されたスロットルモデル105は、式(8)に従ってスロットル流量MTを演算するように構成されている。
Figure 2023080500000006
Figure 2023080500000007
Figure 2023080500000008
Figure 2023080500000009
<吸気管モデル106について>
次に、吸気管モデル106の詳細を説明する。ECM30において吸気管モデル106は、スロットル流量MT、吸気温THA、筒内吸気量MCを入力とし、スロットル下流圧PM及びスロットル下流温度THMを出力とする関数として実装されている。スロットル下流温度THMは、吸気マニホールド12A内の吸気の温度を表している。吸気管モデル106でのスロットル下流圧PM、及びスロットル下流温度THMの演算は、式(9)及び式(10)の関係式に基づいて行われる。式(9)及び式(10)の関係式は、質量保存則、及びエネルギ保存則から導き出されている。式(9)及び式(10)に記載の「VM」は、吸気マニホールド12Aの容積を表している。
Figure 2023080500000010
Figure 2023080500000011
<吸気弁モデル107について>
続いて、吸気弁モデル107の詳細を説明する。ECM30において吸気弁モデル107は、次の関数として実装されている。すなわち、スロットル下流圧PM、吸気バルブタイミングVTI、吸気温THA、及びスロットル下流温度THMを入力とし、筒内吸気量MCを出力とする関数である。実際の吸気マニホールド12Aから燃焼室11への吸気の流入は、吸気弁19の開閉に応じて間欠的に行われる。吸気弁モデル107では、これを連続した一様な流れであると近似した流量を、筒内吸気量MCとして求めている。
図4に破線で示された曲線L0は、エンジン回転数NEや可変動弁機構20,22の動作量を一定とした状態でエンジン10を定常運転したときのスロットル下流圧PMと筒内吸気量MCとの関係を示す。吸気弁モデル107では、図4に示す2本の直線L1、L2により、この曲線L0を近似して筒内吸気量MCを演算している。すなわち、吸気弁モデル107では、式(11)の関係を満たす値として筒内吸気量MCの値が演算される。式(11)に記載の「GL」、「GH」、「PMC」及び「MCC」はそれぞれ、エンジン回転数NE、及び吸気バルブタイミングVTIに基づき決定される係数である。
Figure 2023080500000012
以上で説明したエアクリーナモデル104、スロットルモデル105、吸気管モデル106、及び吸気弁モデル107による筒内吸気量MCの演算値を同筒内吸気量MCのモデル値とする。上記各物理モデルでは考慮されていない因子により、モデル値が実際の筒内吸気量MCとずれることがある。本実施形態のエンジン制御装置は、第1シフト補正108及び第2シフト補正109により、そうしたモデル値のずれを補正している。第1シフト補正108は、スロットル流量演算処理101でのスロットルモデル105によるスロットル流量MTの演算値に対する補正である。第2シフト補正109は、筒内吸気量演算処理103での吸気弁モデル107による筒内吸気量MCの演算値に対する補正である。
<第1シフト補正108について>
まず、第1シフト補正108の詳細を説明する。吸気マニホールド12Aから燃焼室11への吸気の流入は、吸気弁19の開閉弁に応じて間欠的に行われる。その結果、エンジン10の運転中の吸気通路12内では、吸気の脈動が発生する。そして、そうした吸気の脈動により、吸気がスロットルバルブ17を通って吸気通路12の上流に向って遡上する吸気の逆流が間欠的に発生することがある。
一方、スロットルモデル105は、吸気通路12の上流から下流へと吸気が一様に流れていることを前提に構成されている。そのため、吸気の逆流が発生する状況では、スロットルモデル105によるスロットル流量MTの演算値が実際の値から乖離する。
図3には、逆流発生時の実際のΦ値とスロットル前後圧力比RPとの関係が破線で示されている。逆流発生時には、図3にハッチングで示された分のΦ値の乖離が発生する。なお、吸気の逆流は、吸気流量が少ない場合に、すなわちスロットル前後圧力比RPが「1」に近い値となる場合に生じ易い。第1シフト補正108では、逆流の発生によるΦ値の乖離分を補正する。逆流が発生するスロットル前後圧力比RPの範囲や、逆流によるΦ値の乖離量は、吸気弁19の開閉弁時期、吸気弁19及び排気弁21のバルブオーバーラップ量、吸気中への排気の再循環量により変化する。そこで、ECM30は、第1シフト補正108として、吸気バルブタイミングVTI、排気バルブタイミングVTE、及びEGR開度DEGRに基づくΦ値の補正を行っている。第1シフト補正108では、吸気バルブタイミングVTI及び排気バルブタイミングVTEは、吸気弁19の開閉弁時期や吸気弁19及び排気弁21のバルブオーバーラップ量を決める可変動弁機構20,22の動作量を示す状態量として用いられている。また、EGR開度DEGRは、吸気中への排気の再循環量を示す状態量として用いられている。
図5に、第1シフト補正108を適用したスロットル流量演算処理101の制御ブロック図を示す。スロットル流量演算処理101において、ECM30は、スロットルモデル105を用いたスロットル流量MTの演算を行う。すなわち、ECM30は、スロットル開度TAからB値を、吸気温THAから温度補正係数KTHAを、スロットル上流圧PACから圧力補正係数KPACを、スロットル前後圧力比RPからΦ値を、それぞれ演算する。ECM30の記憶装置32には、予め実験等で求められたスロットル開度TAの値毎のB値の値がマップ110として記憶されている。また、記憶装置32には、予め実験等で求められたスロットル前後圧力比RPの値毎のΦ値の値がマップ112として記憶されている。ECM30は、マップ110を用いてB値を、マップ112を用いてΦ値を、それぞれ演算している。また、ECM30は、上述の式(6)に従って温度補正係数KTHAを、式(7)に従って圧力補正係数KPACを、それぞれ演算している。スロットルモデル105によるスロットル流量MTは、こうして演算したB値、温度補正係数KTHA、圧力補正係数KPAC、及びΦ値の積として求められる。
一方、スロットル流量演算処理101においてECM30は、第1シフト補正108によるΦ値の補正を行っている。第1シフト補正108に際してECM30は、3つの補正値SF11,SF12,SF13を演算する。
補正値SF11は、吸気バルブタイミングVTIの変化によるΦ値の乖離量の変化分を補正する補正値である。ECM30は、記憶装置32に記憶されたマップ113を用いて、吸気バルブタイミングVTI、エンジン回転数NE、及びスロットル前後圧力比RPに基づき補正値SF11の値を演算している。マップ113は、次のように作成されている。まず、シミュレーション等により、エンジン回転数NE及びスロットル前後圧力比RPにより規定されるエンジン10の動作点のそれぞれにおいて吸気バルブタイミングVTIを変化させたときのΦ値の乖離量を求める。そして、その乖離量を補正値SF11の値として、エンジン回転数NE、スロットル前後圧力比RP、及び吸気バルブタイミングVTIの値毎に記憶したものをマップ113として作成する。
補正値SF12は、排気バルブタイミングVTEの変化によるΦ値の乖離量の変化分を補正する補正値である。ECM30は、記憶装置32に記憶されたマップ114を用いて、排気バルブタイミングVTE、エンジン回転数NE、及びスロットル前後圧力比RPに基づき補正値SF12の値を演算している。マップ114は、次のように作成されている。まず、シミュレーション等により、エンジン回転数NE及びスロットル前後圧力比RPにより規定されるエンジン10の動作点のそれぞれにおいて排気バルブタイミングVTEを変化させたときのΦ値の乖離量を求める。そして、その乖離量を補正値SF12の値として、エンジン回転数NE、スロットル前後圧力比RP、及び排気バルブタイミングVTEの値毎に記憶したものをマップ114として作成する。
補正値SF13は、EGR開度DEGRの変化によるΦ値の乖離量の変化分を補正する補正値である。ECM30は、記憶装置32に記憶されたマップ115を用いて、EGR開度DEGR、エンジン回転数NE、及びスロットル前後圧力比RPに基づき補正値SF13の値を演算している。マップ115は、次のように作成されている。まず、シミュレーション等により、エンジン回転数NE及びスロットル前後圧力比RPにより規定されるエンジン10の動作点のそれぞれにおいてEGR開度DEGRを変化させたときのΦ値の乖離量を求める。そして、その乖離量を補正値SF13の値として、エンジン回転数NE、スロットル前後圧力比RP、及びEGR開度DEGRの値毎に記憶したものをマップ115として作成する。
さらに第1シフト補正108においてECM30は、3つの補正値SF11,SF12,SF13を加算した和を第1シフト補正値SF1の値として演算する。続いて、ECM30は、スロットルモデル105でのマップ112を用いて演算したΦ値を第1シフト補正値SF1により補正する。そして、ECM30は、B値、温度補正係数KTHA、及び圧力補正係数KPAC、及び補正後のΦ値の積を、スロットル流量MTの値として演算している。
<第2シフト補正109について>
次に、第2シフト補正109の詳細を説明する。図4に示されるように、吸気弁モデル107では、スロットル下流圧PMと筒内吸気量MCとの関係を、2つの直線L1、L2で近似したものを用いて筒内吸気量MCを演算している。こうした吸気弁モデル107による筒内吸気量MCの演算値には、近似誤差が含まれる。そうした近似誤差の大きさは、吸気弁19の開閉弁時期、吸気弁19及び排気弁21のバルブオーバーラップ量、EGR量により変化する。また、フィルタ装置23の詰りによるエンジン10の背圧上昇も、近似誤差に影響する。なお、ECM30は、差圧センサ36によるフィルタ前後差圧ΔPの検出結果から、フィルタ装置23の詰り度合を示す状態量として差圧上昇率RPFを求めている。差圧上昇率RPFは、詰りが全く無い状態でのフィルタ前後差圧ΔPに対する現状のフィルタ前後差圧ΔPの比率である。そして、ECM30は、第2シフト補正109として、吸気バルブタイミングVTI、排気バルブタイミングVTE、EGR開度DEGR、及び差圧上昇率RPFに基づく、吸気弁モデル107の筒内吸気量MCの演算値の補正を行っている。こうした第2シフト補正109においても、吸気バルブタイミングVTI及び排気バルブタイミングVTEは、可変動弁機構20,22の動作量として用いられている。また、EGR開度DEGRは、吸気中への排気の再循環量を示す状態量として用いられている。さらに、第2シフト補正109では、差圧上昇率RPFをフィルタ装置23の詰り度合を示す状態量として用いている。
図6に、第2シフト補正109を適用した筒内吸気量演算処理103の制御ブロック図を示す。筒内吸気量演算処理103に際してECM30は、予め記憶装置32に記憶されたマップ120を用いて、エンジン回転数NE及び吸気バルブタイミングVTIに基づき、各係数PMC、MCC、GL、GHの値を演算する。そして、ECM30は、処理121において、それらの演算結果に基づき、上述の式(11)の関係を満たす値として、吸気弁モデル107での筒内吸気量MCの値を演算する。
一方、ECM30は、第2シフト補正109による筒内吸気量MCの補正を行っている。第2シフト補正109に際してECM30は、4つの補正値SF21,SF22,SF23,SF24を演算する。
補正値SF21は、吸気バルブタイミングVTIの変化による筒内吸気量MCの近似誤差の変化分を補正する補正値である。ECM30は、記憶装置32に記憶されたマップ122を用いて、吸気バルブタイミングVTI、エンジン回転数NE、及びスロットル下流圧PMに基づき補正値SF21の値を演算している。マップ122は、次のように作成されている。まず、シミュレーション等により、エンジン回転数NE及びスロットル下流圧PMにより規定されるエンジン10の動作点のそれぞれにおいて吸気バルブタイミングVTIを変化させたときの吸気弁モデル107による筒内吸気量MCの演算値の近似誤差量を求める。そして、その近似誤差量を補正値SF21の値として、エンジン回転数NE、スロットル下流圧PM、及び吸気バルブタイミングVTIの値毎に記憶したものをマップ122として作成する。
補正値SF22は、排気バルブタイミングVTEの変化による筒内吸気量MCの近似誤差量の変化分を補正する補正値である。ECM30は、記憶装置32に記憶されたマップ123を用いて、排気バルブタイミングVTE、エンジン回転数NE、及びスロットル下流圧PMに基づき補正値SF22の値を演算している。マップ122は、次のように作成されている。まず、シミュレーション等により、エンジン回転数NE及びスロットル下流圧PMにより規定されるエンジン10の動作点のそれぞれにおいて排気バルブタイミングVTEを変化させたときの吸気弁モデル107による筒内吸気量MCの演算値の近似誤差量を求める。そして、その近似誤差量を補正値SF22の値として、エンジン回転数NE、スロットル下流圧PM、及び排気バルブタイミングVTEの値毎に記憶したものをマップ122として作成する。
補正値SF23は、EGR開度DEGRの変化による筒内吸気量MCの近似誤差量の変化分を補正する補正値である。ECM30は、記憶装置32に記憶されたマップ124を用いて、EGR開度DEGR、エンジン回転数NE、及びスロットル下流圧PMに基づき補正値SF23の値を演算している。マップ124は、次のように作成されている。まず、シミュレーション等により、エンジン回転数NE及びスロットル下流圧PMにより規定されるエンジン10の動作点のそれぞれにおいてEGR開度DEGRを変化させたときの筒内吸気量MCの近似誤差量を求める。そして、その近似誤差量を補正値SF23の値として、エンジン回転数NE、スロットル下流圧PM、及びEGR開度DEGRの値毎に記憶したものをマップ124として作成する。
補正値SF24は、差圧上昇率RPFの変化による筒内吸気量MCの近似誤差量の変化分を補正する補正値である。ECM30は、記憶装置32に記憶されたマップ125を用いて、差圧上昇率RPF、エンジン回転数NE、及びスロットル下流圧PMに基づき補正値SF24の値を演算している。マップ125は、次のように作成されている。まず、シミュレーション等により、エンジン回転数NE及びスロットル下流圧PMにより規定されるエンジン10の動作点のそれぞれにおいて差圧上昇率RPFを変化させたときの筒内吸気量MCの近似誤差量を求める。そして、その近似誤差量を補正値SF24の値として、エンジン回転数NE、スロットル下流圧PM、及び差圧上昇率RPFの値毎に記憶したものをマップ125として作成する。
さらに、第2シフト補正109においてECM30は、上記4つの補正値SF21,SF22,SF23,SF24を加算した和を第2シフト補正値SF2の値として演算する。そして、ECM30は、吸気弁モデル107による筒内吸気量MCの演算値を、第2シフト補正値SF2により補正した値を、筒内吸気量演算処理103における最終的な筒内吸気量MCの演算値として演算している。
<第1実施形態の作用、及び効果>
本実施形態のエンジン制御装置におけるECM30は、エアクリーナモデル104、スロットルモデル105、吸気管モデル106、及び吸気弁モデル107の各物理モデルを用いて筒内吸気量MCを演算している。こうした筒内吸気量MCの演算に用いる物理モデルは、ECM30の処理能力や演算完了に要する時間の制限のため、簡略化したモデルとする必要がある。そのため、物理モデルでの吸気の挙動に実際の挙動とは乖離した部分ができてしまい、筒内吸気量MCの演算結果に誤差が生じることがある。
一方、エンジン10の運転状態毎の物理モデルの誤差が予め分かっていれば、その誤差を補正するための適合マップを作成できる。しかしながら、そうした適合マップの作成には、膨大な数の動作点においてエンジン10の筒内吸気量MCを実測する必要があり、その実測に要する工数も膨大となる。一方、エンジン制御装置への実装を前提としなければ、エンジン10の吸気挙動を正確に再現するシミュレーションモデルの作成は可能である。しかしながら、エンジン10の吸気系全体の吸気挙動には数多くの因子が影響しており、その影響のメカニズムは複雑なため、そうしたシミュレーションモデルの作成は困難である。これに比べれば、スロットルバルブ17での吸気の挙動に限定したシミュレーションモデルや、吸気弁19での吸気の挙動に限定したシミュレーションモデルの作成は容易である。
本実施形態のエンジン制御装置では、物理モデルの誤差を、スロットルモデル105の誤差と、吸気弁モデル107の誤差と、に分離している。そして、第1シフト補正108によりスロットルモデル105の誤差を、第2シフト補正109により吸気弁モデル107の誤差を、それぞれ個別に補正している。第1シフト補正108では、スロットルモデル105の誤差を補正する補正値である第1シフト補正値SF1をマップ113~115を用いて演算している。これらマップ113~115の作成に必要なデータは、スロットルバルブ17での吸気の挙動に限定したシミュレーションモデルを用いて収集できる。一方、第2シフト補正109では、吸気弁モデル107の誤差を補正する補正値である第2シフト補正値SF2を、マップ122~125を用いて演算している。これらマップ122~125の作成に必要なデータは、吸気弁19での吸気の挙動に限定したシミュレーションモデルを用いて収集できる。よって、本実施形態のエンジン制御装置は、物理モデルの誤差の補正のための適合に要する工数を削減する効果を有する。
なお、エンジン10が複数の車種に搭載される場合、車種によりエンジン10の運転状態の使用範囲が変わることがある。使用範囲外の運転状態におけるスロットルモデル105及び吸気弁モデル107の誤差は実測が困難となる。よって、スロットルモデル105及び吸気弁モデル107の誤差を実測により確認する場合には、エンジン10が搭載される車種毎に、誤差の実測が必要となることがある。これに対して、シミュレーションでは、実機では実現が困難な運転状態を再現できる場合がある。そのため、スロットルモデル105及び吸気弁モデル107の誤差をシミュレーションにより確認可能となれば、同一機種のエンジン10の複数車種への展開が容易となる。
以上の本実施形態のエンジン制御装置によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本実施形態では、物理モデルを用いた筒内吸気量MCの演算値の誤差の補正を、次の2つの補正により行っている。一つは、スロットルモデル105によるスロットル流量MTの演算値を補正する第1シフト補正108である。もう一つは、吸気弁モデル107による筒内吸気量MCの演算値を補正する第2シフト補正109である。これら2つの補正により、物理モデルの誤差を補正することで、高精度の筒内吸気量MCの演算が可能となる。また、第1シフト補正108及び第2シフト補正109の2つの補正により物理モデルの誤差を補正する構成とした場合には、補正に必要な適合マップの作成に要する工数が少なくなる。よって、本実施形態のエンジン制御装置は、筒内吸気量MCの演算の高精度化が容易となるという効果を有する。
(2)スロットルモデル105及び吸気弁モデル107の誤差をシミュレーションにより測定できるため、同一機種のエンジン10の複数車種への展開が容易となる。
(3)吸気弁19の開閉弁時期や、吸気弁19及び排気弁21のバルブオーバーラップ量が変化すると、吸気通路12内の吸気脈動の発生状況が変化する。よって、スロットルモデル105の誤差は、可変動弁機構20,22の動作量により変化する。本実施形態では、可変動弁機構20,22の動作量を示す吸気バルブタイミングVTI及び排気バルブタイミングVTEを用いて、第1シフト補正108を行っている。そのため、吸気バルブタイミングVTI及び排気バルブタイミングVTEを用いることで、吸気の逆流によるスロットルモデル105の誤差を的確に補正できる。
(4)吸気弁19の開閉弁時期や、吸気弁19及び排気弁21のバルブオーバーラップ量が変化すると、燃焼室11の吸気充填率への慣性効果や掃気効果の作用が変化する。よって、吸気弁モデル107の誤差も、可変動弁機構20,22の動作量により変化する。本実施形態では、可変動弁機構20,22の動作量を示す吸気バルブタイミングVTI及び排気バルブタイミングVTEを用いて、第2シフト補正109を行っている。そのため、吸気バルブタイミングVTI及び排気バルブタイミングVTEを用いることで、可変動弁機構20,22の動作による吸気の充填効率の変化による吸気弁モデル107の誤差を的確に補正できる。
(5)排気の再循環量が変化すると、吸気通路12内に存在するガスの質量が変化して、吸気脈動の発生状況が変化する。よって、スロットルモデル105の誤差は、排気の再循環量によっても変化する。本実施形態では、吸気中への排気の再循環量を示す状態量であるEGR開度DEGRを用いて第1シフト補正108を行っている。そのため、EGR開度DEGRを用いることで、吸気の逆流によるスロットルモデル105の誤差を的確に補正できる。
(6)吸気中に再循環された排気は、吸気と共に燃焼室11に流入する。そのため、燃焼室11に流入するガスの流量が同じでも、排気の再循環量が増加すると、燃焼室11に流入する実質的な吸気の量が減少する。よって、吸気弁モデル107の誤差も、排気の再循環量により変化する。本実施形態では、吸気中への排気の再循環量を示す状態量であるEGR開度DEGRを用いて第2シフト補正109を行っている。そのため、排気の再循環による吸気弁モデル107の誤差を的確に補正できる。
(7)フィルタ装置23が詰まってエンジン10の背圧が上昇すると、燃焼室11に吸気が入り難くなる。よって、吸気弁モデル107の誤差は、フィルタ装置23の詰り度合によっても変化する。本実施形態では、フィルタ装置23の詰り度合を示す状態量である差圧上昇率RPFを用いて第2シフト補正109を行っている。そのため、フィルタ装置23の詰りによる背圧の上昇に起因した吸気弁モデル107の誤差を的確に補正できる。
(第2実施形態)
次に、エンジン制御装置の第2実施形態を、図7を併せ参照して詳細に説明する。なお本実施形態にあって、上記実施形態と共通する構成については、同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。なお、本実施形態と第1実施形態との相違点は、第2シフト補正109による吸気弁モデル107の誤差の補正方法にある。
本実施形態のエンジン制御装置におけるECM30は、第2シフト補正109に際して第2シフト補正値SF2を式(12)の関係を満たす値として演算している。式(12)に記載の「PM0」、「AL」、「AH」、「BL」、「BH」、及び「C」はそれぞれ、エンジン回転数NE、吸気バルブタイミングVTI、排気バルブタイミングVTE、EGR開度DEGR、及び差圧上昇率RPFに基づき演算される係数である。
Figure 2023080500000013
図7に、各係数PM0,AL,AH,BL,BH,Cを固定した場合の第2シフト補正値SF2とスロットル下流圧PMとの関係を示す。この場合の第2シフト補正値SF2は、スロットル下流圧PMに対して、「PM0」を境界とする2つの曲線L3,L4で表される。2つの曲線L3,L4は、スロットル下流圧PMの二次関数で表される曲線となる。
上述のように吸気弁モデル107では、スロットル下流圧PMと筒内吸気量MCとの関係を2つの直線L1,L2で近似している(図4参照)。筒内吸気量MCとスロットル下流圧PMとの関係を二次関数で近似した場合、吸気弁モデル107の誤差は2つの二次関数で表せる。よって、本実施形態の補正方法でも、第1実施形態の場合と同様に、吸気弁モデル107の誤差を補正できる。
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、第1シフト補正値SF1によりΦ値を補正することで、第1シフト補正108によるスロットルモデル105の誤差の補正を行っていた。スロットルモデル105のスロットル流量MTの演算値を第1シフト補正値SF1により補正する等、それ以外の方法で第1シフト補正108によるスロットルモデル105の誤差の補正を行うようにしてもよい。
・上記実施形態では、エンジン回転数NE、スロットル前後圧力比RP、吸気バルブタイミングVTI、排気バルブタイミングVTE、及びEGR開度DEGRの5つの状態量に基づき第1シフト補正値SF1を演算していた。第1シフト補正値SF1の演算に用いる状態量から、上記5つの状態量のうちの一つ以上を省くようにしてもよい。また、第1シフト補正値SF1の演算に用いる状態量に、上記5つの状態量以外の状態量を加えるようにしてもよい。要は、エンジン10の運転状態を示す状態量の中で、スロットルモデル105の誤差に与える影響が大きい状態量を選択して、第1シフト補正値SF1の演算に用いるようにすればよい。
・上記実施形態では、エンジン回転数NE、スロットル前後圧力比RP、吸気バルブタイミングVTI、排気バルブタイミングVTE、EGR開度DEGR、及び差圧上昇率RPFの6つの状態量に基づき第2シフト補正値SF2を演算していた。第2シフト補正値SF2の演算に用いる状態量から、上記6つの状態量のうちの一つ以上を省くようにしてもよい。また、第2シフト補正値SF2の演算に用いる状態量に、上記6つの状態量以外の状態量を加えるようにしてもよい。要は、エンジン10の運転状態を示す状態量の中で、吸気弁モデル107の誤差に与える影響が大きい状態量を選択して、第2シフト補正値SF2の演算に用いるようにすればよい。
・上記実施形態では、吸気弁19及び排気弁21の開閉弁時期を可変とする可変動弁機構20,22を採用していたが、バルブリフト量などの、開閉弁時期以外の動弁特性を可変とする機構を採用してもよい。その場合にも、可変動弁機構の動作量を示す状態量を用いて第1シフト補正108及び第2シフト補正109を行うことで、筒内吸気量MCの演算精度を向上できる。
・上記実施形態では、EGR開度DEGRを用いて第1シフト補正108及び第2シフト補正109を行っていた。EGR開度DEGRの代わりに、排気の再循環量を示す他の状態量、例えば再循環量の測定値や推定値を用いるようにしてもよい。
・上記実施形態では、差圧上昇率RPFを用いて第2シフト補正109を行っていた。差圧上昇率RPFの代わりに、フィルタ装置23の詰り度合を示す他の状態量、例えばフィルタ装置23に堆積している微粒子物質の量の推定値を用いるようにしてもよい。
・エアクリーナモデル104、スロットルモデル105、吸気管モデル106、及び吸気弁モデル107のそれぞれの内容は、適宜に変更してもよい。
・エアクリーナ16での吸気の圧力損失が筒内吸気量MCに与える影響が少ない場合等には、筒内吸気量MCの演算に用いる物理モデルに、エアクリーナモデル104を含めないようにしてもよい。
・過給機を備えるエンジンの場合には、スロットルモデル105でのスロットル流量MTの演算に用いるスロットル上流圧PACとして過給後の吸気の圧力を用いるようにするとよい。また、その場合のスロットルモデル105では、吸気温THAの代わりに、過給後の吸気の温度を用いるようにするとよい。
10…エンジン
11…燃焼室
12…吸気通路
12A…吸気マニホールド
13…排気通路
14…インジェクタ
15…点火装置
16…エアクリーナ
17…スロットルバルブ
18…スロットルモータ
19…吸気弁
20,22…可変動弁機構
21…排気弁
23…フィルタ装置
24…EGR通路
25…EGRクーラ
26…EGRバルブ
30…ECM(エンジン制御モジュール)
31…処理装置
32…記憶装置
33…吸気圧センサ
34…吸気温センサ
35…スロットル開度センサ
36…差圧センサ
37…クランク軸
38…クランク角センサ
39…アクセルペダル
40…アクセルペダルセンサ
100…スロットル上流圧演算処理
101…スロットル流量演算処理
102…スロットル下流圧演算処理
103…筒内吸気量演算処理
104…エアクリーナモデル
105…スロットルモデル
106…吸気管モデル
107…吸気弁モデル
108…第1シフト補正
109…第2シフト補正

Claims (6)

  1. エンジンの吸気通路から燃焼室に流入する吸気の量を筒内吸気量とし、前記吸気通路に設置されたスロットルバルブの開度をスロットル開度とし、前記スロットルバルブの通過前の吸気の圧力をスロットル上流圧とし、前記スロットルバルブの通過後の前記吸気の圧力をスロットル下流圧とし、前記スロットルバルブを通過する吸気の流量をスロットル流量としたとき、
    前記スロットルバルブを通過する吸気の挙動についての物理モデルであるスロットルモデルを用いて、前記スロットル開度、前記スロットル上流圧、及び前記スロットル下流圧に基づき前記スロットル流量を演算するスロットル流量演算処理と、
    前記吸気通路における前記スロットルバルブよりも下流側の部分を流れる吸気の挙動についての物理モデルである吸気管モデルを用いて、前記スロットル流量及び前記筒内吸気量に基づき前記スロットル下流圧を演算するスロットル下流圧演算処理と、
    前記吸気通路から前記燃焼室に流入する吸気の挙動についての物理モデルである吸気弁モデルを用いて、前記スロットル下流圧に基づき前記筒内吸気量を演算する筒内吸気量演算処理と、
    前記エンジンの運転状態を示す状態量に基づき、前記スロットルモデルによる前記スロットル流量の演算値を補正する第1シフト補正と、
    前記エンジンの運転状態を示す状態量に基づき、前記吸気弁モデルによる前記筒内吸気量の演算値を補正する第2シフト補正と、
    を行うエンジン制御装置。
  2. 前記エンジンは、機関バルブの動弁特性を可変とする可変動弁機構を備えており、かつ前記第1シフト補正での前記スロットル流量の演算値の補正に用いる前記状態量には、前記可変動弁機構の動作量が含まれる請求項1に記載のエンジン制御装置。
  3. 前記エンジンは、機関バルブの動弁特性を可変とする可変動弁機構を備えており、かつ前記第2シフト補正での前記筒内吸気量の演算値の補正に用いる前記状態量には、前記可変動弁機構の動作量が含まれる請求項1に記載のエンジン制御装置。
  4. 前記エンジンは、吸気中への排気の再循環を行うものであり、かつ前記第1シフト補正での前記スロットル流量の演算値の補正に用いる前記状態量には、前記排気の再循環量を示す状態量が含まれる請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のエンジン制御装置。
  5. 前記エンジンは、吸気中への排気の再循環を行うものであり、かつ前記第2シフト補正での前記筒内吸気量の演算値の補正に用いる前記状態量には、前記排気の再循環量を示す状態量が含まれる請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のエンジン制御装置。
  6. 前記エンジンは、排気中の微粒子物質を捕集するフィルタ装置を備えており、かつ前記第2シフト補正での前記筒内吸気量の演算値の補正に用いる状態量には、前記フィルタ装置の詰り度合を示す状態量が含まれる請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のエンジン制御装置。
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