JP2023079892A - 金属錯体触媒の製造方法、アルデヒドの製造方法 - Google Patents

金属錯体触媒の製造方法、アルデヒドの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】触媒活性に優れた金属錯体触媒を低温及び/又は常圧下で製造する方法を提供すること。【解決手段】遷移金属化合物を含む原料化合物と、原料ガスとを化学反応させることを含む、金属錯体触媒の製造方法であって、前記原料ガスの少なくとも一部を、ファインバブルの形態で前記原料化合物と化学反応させる、金属錯体触媒の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、金属錯体触媒の製造方法及びアルデヒドの製造方法に関する。
ロジウム(Rh)等の長周期型周期表第8~10族遷移金属と有機リン系化合物由来の配位子の存在下に、原料オレフィンを水素及び一酸化炭素と反応させてアルデヒドを製造するヒドロホルミル化反応が広く知られている。このヒドロホルミル化反応は「オキソ反応」とも称され、反応に使用される水素(H)と一酸化炭素(CO)の混合ガスは「オキソガス」と呼称されている。
オキソ反応に使用されるロジウム錯体触媒は、反応液中でオキソガスと接触して活性化され、RhH(CO)X(Xはホスフィンやホスファイト等の有機リン系の配位子)となって触媒性能を発揮する。
このため、RhH(CO)Xを形成させるために、ヒドロホルミル化反応に先立ち、ロジウム化合物と有機リン系配位子化合物とを混合して予めオキソガスと接触させることでRhH(CO)Xを形成する、プレカルボキシレーション処理が行われている。
特許文献1には、RhH(CO)(PPhを調製するために、トリフェニルホスフィン(PPh)のアルコール懸濁液と、塩化ロジウム(III)前駆体とを混合し、この混合物を昇温下で撹拌し、COガスを用いてスパージングすることで、RhH(CO)Xを製造する技術が開示されている。
特許文献1において、触媒の前処理は、COガスによるスパージング前の撹拌工程でも高々85℃で行われ、COガスによるスパージング前に液温は50℃以下に冷却される。
しかし、ロジウム化合物として塩化ロジウム(III)を用いる特許文献1の方法では、塩化ロジウム(III)由来のCl成分がプラントを腐食する;塩化ロジウム(III)からRhH(CO)Xを調製した後、沈殿したRhH(CO)Xを分離し、場合によっては更にCl成分を取り除くために洗浄する必要があり、工程が煩雑になる;といった問題がある。
そこで、ロジウム化合物として、塩化ロジウム(III)の代わりに酢酸ロジウムを用いることで、上述した問題を解消する技術が知られている。
酢酸ロジウムを用いて、ロジウム錯体触媒をプレカルボキシレーション処理する技術として、例えば、特許文献2の実施例には、酢酸ロジウムをメタノールに溶解した溶液とホスファイト化合物とをノルマルブチルアルデヒドに溶解し、オキソガス(一酸化炭素:水素=1:1(モル比))の雰囲気下、温度85℃、0.39MPaGの条件下で2時間、酢酸ロジウムのカルボニル化反応を行い、RhH(CO)Xを製造する技術が開示されている。
また、特許文献3の実施例には、窒素置換下の100Lの撹拌機付き反応器に酢酸ロジウム、トリフェニルホスフィン1、トルエンを仕込み、撹拌機強度1kW/mで撹拌させながら、オキソガス(H/CO=1.02)の雰囲気下、反応器内の圧力1.7MPaG、熱媒などで反応液温度を70℃の条件下で、酢酸ロジウムのカルボニル化反応を行い、RhH(CO)Xを製造する技術が開示されている。
特表2017-521402号公報 特開2004-202487号公報 特開2011-88899号公報
しかしながら、特許文献2及び3に開示されている技術では、ロジウム化合物(酢酸ロジウム)のカルボニル化反応を、高圧条件及び/又は高温条件下で行うため、製造設備や熱媒等のユーテリテイーによるコストアップが課題であった。
以上のような背景から、アルデヒドの工業的な製造においては、従来技術を更に改良して、ロジウム錯体触媒等の金属錯体触媒の活性をより一層高め、ヒドロホルミル化反応の反応速度及び目的物の収率等を高めて生産効率を向上させることが望まれていた。
本発明はこれらの問題点を解決することを目的とする。
すなわち、本発明の課題は、触媒活性に優れた金属錯体触媒を低温及び/又は常圧下で製造する方法を提供することにある。
さらに、本発明の課題は、前記製造方法で得られた金属錯体触媒を用いて、アルデヒドを製造する方法を提供することにある。
すなわち、本発明は下記<1>~<14>に関するものである。
<1>遷移金属化合物を含む原料化合物と、原料ガスとを化学反応させることを含む、金属錯体触媒の製造方法であって、
前記原料ガスの少なくとも一部を、ファインバブルの形態で前記原料化合物と化学反応させる、金属錯体触媒の製造方法。
<2>前記原料化合物が、長周期型周期表第8~10族遷移金属化合物及び有機リン系配位子化合物を含む、<1>に記載の金属錯体触媒の製造方法。
<3>前記第8~10族遷移金属化合物が、1価以上3価以下のロジウム化合物を含む、<2>に記載の金属錯体触媒の製造方法。
<4>前記原料ガスが、水素及び一酸化炭素を含む、<1>~<3>のいずれか一つに記載の金属錯体触媒の製造方法。
<5>前記ファインバブルが、少なくともマイクロバブル又はウルトラファインバブルのいずれかを含む、<1>~<4>のいずれか一つに記載の金属錯体触媒の製造方法。
<6>前記化学反応が、大気圧下で行われる、<1>~<5>のいずれか一つに記載の金属錯体触媒の製造方法。
<7>前記化学反応が、温度30℃以上100℃以下の条件下で行われる、<1>~<6>のいずれか一つに記載の金属錯体触媒の製造方法。
<8>前記ロジウム化合物が、酢酸ロジウムを含む、<3>~<7>のいずれか一つに記載の金属錯体触媒の製造方法。
<9>前記製造方法によって得られたロジウム錯体触媒を含む反応液を、さらに精製し、前記精製の後に回収された精製廃液中に含まれる酢酸ロジウムを、前記ロジウム化合物として再利用することを含む、<3>~<8>のいずれか一つに記載の金属錯体触媒の製造方法。
<10>前記化学反応が、有機溶媒の存在下で行われる、<1>~<9>のいずれか一つに記載の金属錯体触媒の製造方法。
<11>前記有機溶媒が、アルコール及び芳香族炭化水素から選ばれる少なくとも1種である、<10>に記載の金属錯体触媒の製造方法。
<12>前記酢酸ロジウムをアルコールに溶解したアルコール溶液と、前記有機リン系配位子化合物を芳香族炭化水素に溶解した芳香族炭化水素溶液とを混合した混合液に、前記原料ガスをマイクロバブル又はナノバブルの形態で供給することを含む、<11>に記載の金属錯体触媒の製造方法。
<13>前記アルコールがメタノールである、<11>又は<12>に記載の金属錯体触媒の製造方法。
<14><1>~<13>のいずれか一つに記載の製造方法で得られる金属錯体触媒の存在下で、原料オレフィンを水素及び一酸化炭素とヒドロホルミル化反応させることを含む、アルデヒドの製造方法。
本発明によれば、低温及び/又は常圧下で、触媒活性に優れた金属錯体触媒を製造する方法を提供することができる。本発明の金属錯体触媒の製造方法では、低温及び/又は常圧下で金属錯体触媒を製造できるので、製造コストを削減でき、さらに、生産効率を向上できる。
さらに、本発明によれば、前記製造方法で得られた金属錯体触媒を用いて、アルデヒドを製造する方法を提供することができる。本発明のアルデヒドの製造方法では、前記金属錯体触媒を用いているので、アルデヒドを効率的に製造することができる。
本発明の金属錯体触媒の製造方法に用いることができるファインバブル発生装置の概略図である。 実施例で用いられたファインバブル発生装置、フラスコ、及び高圧反応器を含む反応装置の概略図である。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
なお、特に断らない限り、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味し、「A~B」は、A以上B以下であることを意味する。
[金属錯体触媒の製造方法]
本発明の金属錯体触媒の製造方法は、遷移金属化合物を含む原料化合物と、原料ガスとを化学反応させることを含む、金属錯体触媒の製造方法であって、前記原料ガスの少なくとも一部を、ファインバブルの形態で前記原料化合物と化学反応させることを特徴とする。
原料化合物に含まれる遷移金属化合物としては、例えば、長周期型周期表第8~10族遷移金属化合物(以下、「第8~10族遷移金属化合物」という。)を挙げることができる。長周期型周期表第8~10族遷移金属(以下、「第8~10族遷移金属」という。)とは、長周期型周期表において、8~10族に属する遷移金属である。なかでも、ルテニウム、コバルト、ロジウム、パラジウム及び白金が触媒にした際に活性が高いため好ましく、ロジウムは活性が特に高いためより好ましい。
第8~10族遷移金属化合物としては、例えば、塩化ロジウム、塩化パラジウム、塩化ルテニウム、塩化白金、臭化ロジウム、ヨウ化ロジウム、硫酸ロジウム、硝酸ロジウム、硝酸パラジウム、塩化ロジウムアンモニウム及び塩化ロジウムナトリウム等の水溶性の無機塩又は無機錯化合物や、ギ酸ロジウム、酢酸ロジウム、酢酸パラジウム、プロピオン酸ロジウム、プロピオン酸パラジウム及びオクタン酸ロジウム等の水溶性の有機酸塩等を挙げることができる。また、それぞれの金属の錯体種を用いてもよい。
第8~10族遷移金属化合物としては、上記のなかでも、1価以上3価以下のロジウム化合物を用いることが好ましく、その中でも、Cl成分等のハロゲン元素に起因する腐食がなく、反応活性及び触媒コストに優れる観点から、酢酸ロジウムを用いることがより好ましい。
また、ロジウム化合物としては、例えば、ヒドリドテトラカルボニルロジウム、オクタカルボニルジロジウム、ジカルボニルアセチルアセトナートロジウム、ドデカカルボニルテトラロジウム、ヘキサデカカルボニルヘキサロジウム等のカルボニル錯体を用いることもできる。
原料化合物は、さらに有機リン系配位子化合物を含むことが好ましい。有機リン系配位子化合物は、単座配位子となる化合物でもよいし、多座配位子となる化合物でもよい。このような有機リン系配位子化合物は、第8~10族遷移金属に単座配位子又は多座配位子として配位して、錯体触媒を形成することができる。
単座配位子となる有機リン系化合物としては、下記一般式で表されるトリオルガノホスフィンが挙げられる。
Figure 2023079892000001
(上記一般式中、Rはそれぞれ独立して、置換基を有してもよい1価の炭化水素基を表す。)
Rで示される1価の炭化水素基としては、炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数3~12のアリール基、炭素数6~24のアルキルアリール基、炭素数6~24のアリールアルキル基等が挙げられる。即ち、トリオルガノホスフィンは、例えば、トリアルキルホスフィン、トリアリールホスフィン、トリシクロアルキルホスフィン、アルキルアリールホスフィン、シクロアルキルアリールホスフィン、アルキルシクロアルキルホスフィン等である。
1価の炭化水素基が有し得る置換基としては、限定されるものではないが、アルキル基、アルコキシ基等が挙げられる。
トリオルガノホスフィンの具体例としては、例えば、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン、トリシクロアルキルホスフィン、モノブチルジフェニルホスフィン、ジプロピルフェニルホスフィン、シクロヘキシルジフェニルホスフィンな等が挙げられる。これらの中でも、活性が低いため化学的に安定で、かつ入手し易いことから、トリフェニルホスフィンが好ましい。
有機リン系配位子化合物のその他の例としては、例えば、下記の式(1)~(10)のいずれかで示される3価のホスファイト化合物を用いることができる。
<式(1)で表される3価のホスファイト化合物>
Figure 2023079892000002
(式(1)中、R~Rはそれぞれ独立して、置換基を有してもよい1価の炭化水素基を示す。)
式(1)中、R~Rで示される置換基を有してもよい1価の炭化水素基としては、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基等が挙げられる。
式(1)で表される化合物の具体例としては、例えば、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、n-ブチルジエチルホスファイト、トリ-n-ブチルホスファイト、トリ-n-プロピルホスファイト、トリ-n-オクチルホスファイト、トリ-n-ドデシルホスファイト等のトリアルキルホスファイト;トリフェニルホスファイト、トリナフチルホスファイト等のトリアリールホスファイト;ジメチルフェニルホスファイト、ジエチルフェニルホスファイト、エチルジフェニルホスファイト等のアルキルアリールホスファイト等が挙げられる。また、例えば、特開平6-122642号公報に記載されているビス(3,6,8-トリ-t-ブチル-2-ナフチル)フェニルホスファイト、ビス(3,6,8-トリ-t-ブチル-2-ナフチル)(4-ビフェニル)ホスファイト等を用いてもよい。これらの中で最も好ましいものはトリフェニルホスファイトである。
<式(2)で表される3価のホスファイト化合物>
Figure 2023079892000003
(式(2)中、Rは置換基を有してもよい2価の炭化水素基を示し、Rは置換基を有してもよい1価の炭化水素基を示す。)
式(2)中、Rで示される置換基を有してもよい2価の炭化水素基としては、炭素鎖の中間に酸素、窒素、硫黄原子等を含んでいてもよいアルキレン基;炭素鎖の中間に酸素、窒素、硫黄原子等を含んでいてもよいシクロアルキレン基;フェニレン、ナフチレン等の2価の芳香族基;2価の芳香環が直接又は中間にアルキレン基、酸素、窒素、硫黄等の原子を介して結合した2価の芳香族基;2価の芳香族基とアルキレン基とが直接又は中間に酸素、窒素、硫黄等の原子を介して結合したもの等が挙げられる。Rで示される置換基を有してもよい1価の炭化水素基としては、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基等が挙げられる。
式(2)で表される化合物の具体例としては、例えば、ネオペンチル(2,4,6-t-ブチル-フェニル)ホスファイト、エチレン(2,4,6-t-ブチル-フェニル)ホスファイト等の米国特許第3415906号公報に記載されている化合物等が挙げられる。
<式(3)で表される3価のホスファイト化合物>
Figure 2023079892000004
(式(3)中、R10は式(2)におけるRと同義であり、Ar及びArは、それぞれ独立して、置換基を有してもよいアリーレン基を示し、x及びyは、それぞれ独立して、0又は1を示し、Qは-CR1112-,-O-,-S-,-NR13-,-SiR1415及び-CO-よりなる群から選ばれる架橋基であり、R11及びR12はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1~12のアルキル基、フェニル基、トリル基又はアニシル基を示し、R13、R14及びR15は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を示し、nは0又は1を示す。)
式(3)で表される化合物の具体例としては、例えば、1,1’-ビフェニル-2,2’-ジイル-(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト等の米国特許第4599206号公報に記載されている化合物、3,3’-ジ-t-ブチル-5,5’-ジメトキシ-1,1’-ビフェニル-2,2’-ジイル-(2-t-ブチル-4-メトキシフェニル)ホスファイト等の米国特許第4717775号公報に記載されている化合物等が挙げられる。
<式(4)で表される3価のホスファイト化合物>
Figure 2023079892000005
(式(4)中、Rは環状又は非環状の置換基を有してもよい3価の炭化水素基を示す。)
式(4)で表される化合物の具体例としては、例えば、4-エチル-2,6,7-トリオキサ-1-ホスファビシクロ-[2,2,2]-オクタン等の米国特許第4567306号公報に記載されている化合物等が挙げられる。
<式(5)、(6)で表される3価のホスファイト化合物>
Figure 2023079892000006
(式(5)中、Rは式(2)におけるRと同義であり、R及びRは、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭化水素基を示し、a及びbはそれぞれ0~6の整数を示し、aとbの和は2~6であり、Xは(a+b)価の炭化水素基を示す。)
式(5)で表される化合物の具体例としては、例えば、6,6’-[[3,3’,5,5’-テトラキス(1,1’-ジメチルエチル)-[1,1’-ビフェニル]-2,2’-ジイル]ビス(オキシ)]ビス-ベンゾ[d、f][1,3,2]ジオキサホスフェビン等の特開平2-231497号公報に記載されている化合物等が挙げられる。
式(5)で表される化合物の具体例としては、例えば、下記式(6)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2023079892000007
(式(6)中、Xはアルキレン、アリーレン及び-Ar-(CH)x-Qn-(CH)y-Ar-よりなる群から選ばれた2価の基を示し、R16及びR17は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭化水素基を示す。Ar、Ar、Q、x、y、nは式(3)と同義である。)
式(6)で表される化合物の具体例としては、例えば、特開昭62-116535号公報及び特開昭62-116587号公報に記載されている化合物等が挙げられる。
<式(7)で表される3価のホスファイト化合物>
Figure 2023079892000008
(式(7)中、X、Ar、Ar、Q、x、y、nは式(6)と同義であり、R18は式(2)におけるRと同義である。)
<式(8)で表される3価のホスファイト化合物>
Figure 2023079892000009
(式(8)中、R19及びR20は、それぞれ独立して、芳香族炭化水素基を示し、かつ少なくとも一方の芳香族炭化水素基は、酸素原子が結合する炭素原子に隣接する炭素原子に炭化水素基を有しており、mは2~4の整数を示し、各-O-P(OR19)(OR20)基は互いに異なっていてもよく、Xは置換基を有してもよいm価の炭化水素基を示す。)
式(8)で表される化合物の中では、例えば、特開平5-178779号公報に記載されている化合物や2,2’-ビス(ジ-1-ナフチルホスファイト)-3,3’,5,5’-テトラ-t-ブチル-6,6’-ジメチル-1,1’-ビフェニル等の特開平10-45776号公報に記載されている化合物等が好ましい。
<式(9)で表される3価のホスファイト化合物>
Figure 2023079892000010
(式(9)中、R21~R24は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭化水素基を示し、R21とR22、R23とR24が互いに結合して環を形成していてもよく、Wは置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基を示し、Lは置換基を有していてもよい飽和又は不飽和の2価の脂肪族炭化水素基を示す。)
式(9)で表される化合物としては、例えば、特開平8-259578号公報に記載の化合物等が挙げられる。
<式(10)で表される3価のホスファイト化合物>
Figure 2023079892000011
(式(10)中、R25~R28は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい1価の炭化水素基を示し、R25とR26、R27とR28は互いに結合して環を形成していてもよく、A及びBは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基を示し、nは0又は1の整数を示す。)。
25~R28で示される置換を有してもよい1価の炭化水素基としては、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基などが挙げられる。A,Bで示される置換基を有していてもよい2価の炭化水素基としては、芳香族、脂肪族又は脂環族のいずれであってもよい。
これらの有機リン系配位子化合物は1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよいが、通常は1種のみが用いられる。
有機リン系配位子化合物としては、オキソ反応の観点から、上述したトリオルガノホスフィンが好ましく、特にトリフェニルホスフィンが好ましい。
また、本発明では、原料ガスの少なくとも一部を、ファインバブルの形態で原料化合物と化学反応させる。ファインバブルの形態とする原料ガスの割合の下限は、特に限定されるものではなく、原料ガス全量100モル%に対して、通常は10モル%以上であり、好ましくは30モル%以上であり、より好ましくは50モル%以上であり、さらに好ましくは70モル%以上である。或いは又、原料ガスの全量100モル%がファインバブルであってもよい。
原料ガスは、水素及び一酸化炭素を含むことが好ましい。原料ガスが水素及び一酸化炭素を含む場合、水素及び一酸化炭素の比率は、特に限定されるものではなく、通常はモル比率で、H/CO=0.1~10であり、より好ましくは0.5~6であり、さらに好ましくは0.8~1.2である。
原料ガスが水素及び一酸化炭素を含む場合、原料ガスに含まれる、水素及び一酸化炭素の合計含有割合は、特に限定されるものではなく、原料ガス全量100モル%に対して、通常は50モル%以上であり、好ましくは70モル%以上であり、より好ましくは80モル%以上であり、さらに好ましくは90モル%以上であり、特にさらに好ましくは95モル%以上である。或いは又、原料ガスは、実質的に水素及び一酸化炭素から成る混合ガスであってもよい。
本発明では、原料ガスの少なくとも一部はファインバブルの形態とする。
本発明において、「ファインバブル」とは、直径が100μm未満の気泡を意味し、「マイクロバブル」とは、前記ファインバブルの中でも直径が1μm以上100μm未満の気泡を意味し、「ウルトラファインバブル」とは、前記ファインバブルの中でも直径が1μm未満の気泡を意味する。
本発明の製造方法は、原料ガスの少なくとも一部をファインバブルの形態で用いることにより、次の特徴を備えている。
(1)液体中での遅い上昇速度
原料ガスの気泡がミリバブルの形態、即ち直径1mm以上のミリバブルの場合は、水のような比較的低粘性の液体中では、ミリバブルは急速に上昇し、液相表面で破裂して消滅する。これに対し、原料ガスの気泡がファインバブルの形態の場合は、ファインバブルの水中での上昇速度は非常に遅く、直径1μmのもので僅か約2mm/時しかない。これは、ファインバブルの浮力が微小であるために現れる特徴である。水以外の他の液体中でも同様の傾向が認められ、原料ガスをファインバブルの形態で供給することにより、液体中での原料ガスの滞在時間が著しく増加する。
(2)気液界面の増大
同体積の気体を気泡として液相中に導入する場合、気泡の直径が小さい程、液体中における気液界面の面積は増大する。また、ファインバブルの表面電荷の計測から、ファインバブルの表面は負の電荷を帯びていることが明らかになっており、この電荷により気泡同士は互いに反発して原料ガスの気泡同士の結合が妨げられ、気泡の粗大化による気液界面が減少することも防止される。このため、原料ガスの気相と液相との界面が著しく増大した状態が長時間にわたって維持される。
(3)液相を気体で過飽和状態にすることが可能
原料ガスのファインバブルと液相との界面に働く表面張力は表面積を小さくするように働くため、気泡内部の気体はそれにより加圧される。このとき個々の原料ガスの気泡内の圧力は、表面張力に起因する圧力成分pと液中の深度に起因する圧力成分pとの和と釣り合っている。液体への気体の溶解度は、圧力の上昇とともに増加するため、原料ガスの気泡が通常のミリバブルの形態、即ち直径1mm以上のミリバブルである場合に比べて、原料ガスの気泡がファインバブルの形態である場合は、ファインバブル内の気体の液相への溶解はp分だけ促進され、過飽和の状態がつくり作り出される。
本発明の金属錯体触媒の製造方法では、原料ガスの少なくとも一部をファインバブルの形態とすることによって、低温及び/又は常圧下で触媒活性に優れた金属錯体触媒を製造することができる。その理由として、金属錯体触媒の合成反応において、従来のように原料ガスをミリバブルの形態で供給した場合には、ガス拡散が反応律速となり金属錯体触媒の合成効率が不十分であったが、原料ガスをファインバブルの形態で供給した場合は、ファインバブルは上述した特徴(1)~(3)を有することから、気相(原料ガス)と液相とを長時間、広い界面で効率よく接触させることができると共に、液相中における原料ガスの過飽和状態を長時間持続させることができ、その結果、気相-液相反応の反応速度が著しく向上することで、金属錯体触媒の合成効率が向上するためと推察される。
本発明におけるファインバブルは、触媒活性に優れた金属錯体触媒を製造する観点から、少なくともマイクロバブル又はウルトラファインバブルのいずれかを含むことが好ましい。即ち、本発明におけるファインバブルは、マイクロバブル及びウルトラファインバブルの両方を含んでもよいし、実質的にマイクロバブルのみを含んでもよいし、或いは又、実質的にウルトラファインバブルのみを含んでもよい。「実質的に含む」とは、ファインバブルの全数100%に対して、対象となるマイクロバブル及び/又はウルトラファインバブルが95%以上含まれることをいう。
ファインバブルの製造方法としては、例えば、旋回液流式、加圧溶解・減圧式、及び微細孔式等の公知のファインバブル製造方法を挙げることができる。
旋回液流式では、円筒容器に液を高速で圧入し、内部に高速旋回流を形成して、その中心部で圧力降下部を発生させる。ここで、円筒容器の下部の小孔からガスを導入し、上部の小孔からガスを導出すると、ファインバブルが得られる。
加圧溶解・減圧式では、ガスを加圧して液中に溶解させる。そして、その液を、減圧又は常圧の液体中に、急激に吐出することによって、溶解したガスをファインバブルとして析出させることができる。
微細孔式では、ナノレベルの微細孔からガスを液中に噴出させる。
ここで、本発明の金属錯体触媒の製造方法に用いることができるファインバブル発生装置の概略図を図1に示す。図1に示すように、ファインバブル発生装置100に供給された液体1及び気体2が、ノズル筐体3を通過し、ノズル穴4からファインバブル5が排出される。
原料化合物と原料ガスとを化学反応させるには、例えば、まず原料化合物及び有機溶媒を含む触媒混合液を調製する。有機溶媒は、原料化合物を溶解するために用いる。なお、この触媒混合液中の溶質はすべて溶解している必要はなく、一部は溶解せずに分散していてもよい。
触媒混合液中の有機溶媒としては、例えば、アルコール及び芳香族炭化水素から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
好ましい触媒混合液の態様としては、酢酸ロジウム等の第8~10族遷移金属化合物をアルコールに溶解したアルコール溶液と、有機リン系配位子化合物を芳香族炭化水素に溶解した芳香族炭化水素溶液とを混合した混合液が挙げられる。当該態様を用いると、酢酸ロジウム等の第8~10族遷移金属化合物を高分散できる。また、当該混合液に、原料ガスをファインバブル、即ち、少なくともマイクロバブル又はナノバブルのいずれかを含む形態で供給することが好ましい。
アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、2―プロピルヘキサノール等の炭素数1~10の低級アルコール等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。溶解性の観点から、メタノールを用いることが好ましい。
酢酸ロジウム等の第8~10族遷移金属化合物をアルコールに溶解したアルコール溶液中の第8~10族遷移金属化合物の濃度には特に制限はないが、酢酸ロジウム等の第8~10族遷移金属の濃度が過度に高いと結晶が析出する可能性があり、過度に低いと経済性が悪化することから、0.3~15質量%が好ましく、1~5質量%であることがより好ましい。
なお、第8~10族遷移金属化合物として酢酸ロジウムを用いる場合、通常、市販の酢酸ロジウムは水溶液(酢酸ロジウム濃度5~50質量%程度)の形態で提供されているため、酢酸ロジウムをアルコールに溶解したアルコール溶液は、酢酸ロジウム水溶液由来の水を含むものとなる。従って、酢酸ロジウムをアルコールに溶解したアルコール溶液は、水分含有量1~10質量%のアルコール溶液であることが好ましく、水分濃度3~7質量%のアルコール溶液であることがより好ましい。
また、芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
有機リン系配位子化合物を芳香族炭化水素に溶解した芳香族炭化水素溶液中の有機リン系配位子化合物の濃度は、1~90質量%が好ましく、5~50質量%がより好ましい。
触媒混合液中のロジウム等の第8~10族遷移金属の濃度の下限は、特に限定されるものではなく、通常1質量ppm以上であり、好ましくは10質量ppm以上であり、より好ましくは50質量ppm以上である。一方、触媒混合液中のロジウム等の第8~10族遷移金属の濃度の上限は、特に限定されるものではなく、通常10質量%以下であり、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは1000質量ppm以下である。ロジウム等の第8~10族遷移金属の濃度が低すぎると反応速度が遅くなり、十分な反応が行えない場合があり、ロジウム等の第8~10族遷移金属の濃度が高すぎると高沸物をパージする時に同伴して抜き出されるため、高価なロジウム等の第8~10族遷移金属のロスが多くなってしまう。
上記の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。例えば、触媒混合液中の第8~10族遷移金属の濃度は、通常1質量ppm~10質量%であり、好ましくは10質量ppm~1質量%であり、より好ましくは50~1000質量ppmである。
また、触媒混合液中の有機リン系配位子化合物のリンとロジウム(Rh)等の第8~10族遷移金属との比率は、特に限定されるものではなく、通常はモル比率でP/第8~10族遷移金属=1~10000であり、好ましくはP/第8~10族遷移金属=1~1000であり、より好ましくは1~100である。有機リン系配位子化合物が少なすぎるとロジウム等の第8~10族遷移金属への配位量が少なくなるため、第8~10族遷移金属が十分に安定化されないことがある。有機リン系配位子化合物が多すぎると反応系内での濃度が高くなり、高沸物をパージする時に同伴して抜き出されるため、ロスが多くなってしまう。
本発明の金属錯体触媒の製造方法では、触媒混合液を原料ガスと接触させて化学反応させるときの触媒混合液の液温の下限は30℃以上が好ましく、40℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましい。一方、前記液温の上限は、100℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましく、80℃以下がさらに好ましい。前記液温が30℃未満であると、本発明の効果を十分に得ることができないことがあり、前記液温が100℃を超えると触媒が失活することがある。
上記の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。例えば、触媒混合液を原料ガスと接触させて化学反応させるときの触媒混合液の液温は、温度30~100℃が好ましく、40~90℃がより好ましく、50~80℃がさらに好ましい。
触媒混合液を原料ガスと接触させるには、触媒混合液を仕込んだ容器に原料ガスを0.15~1.50MPa程度の圧力で圧入し、この容器の全圧が例えば0.10~0.90MPa、好ましくは0.10MPa(大気圧)となるようにし、液温が上記液温の範囲となるように維持しながら、0.5~5時間程度撹拌すればよい。
また、本発明の金属錯体触媒の製造方法によって得られたロジウム錯体触媒を含む反応液を、さらに精製し、前記精製の後に回収された精製廃液中に含まれる酢酸ロジウムを、前記ロジウム化合物として再利用することもできる。
反応液の精製方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、吸引濾過、加圧濾過、遠心濾過、デカンテーション、遠心分離により酢酸ロジウム等の第8~10族遷移金属化合物を単離する方法や、ソックスレー洗浄、再結晶法、再沈殿法、カラムを用いた精製が挙げられる。
なお、触媒混合液を仕込む容器は、後述のヒドロホルミル化反応を行う反応器とは別のものであってもよく、同じのものであってもよい。触媒混合液を仕込む容器とヒドロホルミル化反応を行う反応器が異なる場合は、容器から触媒混合液を抜き出して反応器に投入すればよい。触媒混合液を仕込む容器とヒドロホルミル化反応を行う反応器が同じである場合は、金属錯体触媒の製造後、そのまま続けてヒドロホルミル化反応によってアルデヒドの製造を行うことができる。
[アルデヒドの製造方法]
本発明のアルデヒドの製造方法は、本発明の金属錯体触媒の製造方法で得られる金属錯体触媒の存在下で、原料オレフィンを水素及び一酸化炭素とヒドロホルミル化反応させることを含む。
原料オレフィンとしては、通常、直鎖又は分岐鎖状のα-オレフィン又は内部オレフィンが用いられ、好ましくは炭素数2~20のオレフィンであり、具体的にはエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ドデセン、1-テトラデセン等のα-オレフィン、2-ブテン、2-ペンテン、3-ヘキセン、4-オクテン等の内部オレフィンが挙げられ、より好ましくはエチレン、プロピレン、又は、1-ブテンである。特に好ましいオレフィンはプロピレンである。
水素と一酸化炭素は、別々に反応器に供給しても反応器に供給する前に、予め混合されたオキソガスとして、反応器に一緒に供給してもよい。例えば、改質炉などによって発生するガスや、これらのガスから水素と一酸化炭素を分離して反応器に供給してもよい。
ヒドロホルミル化の反応条件としては、水素分圧は通常0.0001MPa以上、好ましくは0.01MPa以上、より好ましくは0.1MPa以上であり、通常20MPa以下、好ましくは10MPa以下、より好ましくは5MPa以下である。水素分圧が低すぎると反応速度が低下してしまい、高すぎると副生物の生成が増えてしまう。
一酸化炭素分圧は通常0.0001MPa以上、好ましくは0.01MPa以上、より好ましくは0.1MPa以上であり、通常20MPa以下、好ましくは10MPa以下、より好ましくは5MPa以下である。一酸化炭素分圧が低すぎると反応が進行しなくなってしまい、高すぎるとオレフィンの分圧が下がるため、反応が進行しなくなってしまう。
全圧は通常0.0001MPaG以上、好ましくは0.01MPaG以上、より好ましくは0.2MPaG以上であり、通常50MPaG以下、好ましくは30MPaG以下、より好ましくは20MPaG以下である。全圧が低すぎると反応速度が遅くなり、十分な反応が行えず、また高すぎると反応器の設計圧力が高くなり、装置の価格が高くなってしまう。
水素分圧/一酸化炭素分圧比、即ち、水素/一酸化炭素のモル比は、通常0.1~100、好ましくは0.1~10、より好ましくは0.5~6であり、さらに好ましくは0.8~1.2である。この分圧比が小さすぎると反応が十分に進まなくなってしまい、また大きすぎても反応が十分に進まなくなったり、副生物の生成が増えたりする。
ヒドロホルミル化反応の反応温度は通常20℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上であり、通常200℃以下、好ましくは150℃以下である。反応温度が低すぎると反応が十分に進行せず、反応温度が高すぎると副生物の生成が増えたり、触媒が失活したりする場合がある。
反応時間は通常1分以上、好ましくは10分以上、より好ましくは20分以上であり、通常24時間以下、好ましくは10時間以下、より好ましくは5時間以下である。反応時間が短すぎると反応が十分に進行せず、反応時間が長すぎると高沸化が進んでしまう。
ヒドロホルミル化反応の反応媒体としては、通常原料オレフィン及び本発明の金属錯体触媒の製造方法で得られる錯体触媒を溶解し、反応で生成するアルデヒドより高沸点で、反応阻害作用のない溶媒が好ましい。ヒドロホルミル化反応で使用できる溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、ブタノール、オクタノール、ポリエチレングリコール等のアルコール類、トリグライム等のエーテル類、酢酸ブチル、酪酸ブチルエステ、ジオクチルフタレート等のエステル類あるいはケトン類等が挙げられる。
また、生成するアルデヒドに対して不活性な溶媒としては、反応で生成するアルデヒドや、その三量体や四量体などのアルデヒド縮合物を用いることもできる。さらに、原料オレフィンと同炭素数を有するパラフィン類を用いることもできる。例えば、プロピレンのヒドロホルミル化であれば、トルエンやブチルアルデヒド又は3量体や4量体などのアルデヒド縮合物との混合物を用いることが好ましい。
反応媒体中における、金属錯体触媒の濃度は、該錯体触媒を構成する金属原子に換算して、通常1質量ppm~10質量%である。さらに、錯体触媒の安定性を増大させるため、過剰量の有機リン系配位子化合物を反応媒体中に存在させることもできる。
ヒドロホルミル化反応に用いる反応器の種類は特に限定されず、撹拌槽型、気泡塔型、棚段塔型、管型又はガスストリッピング型等を用いることができる。通常連続式の反応器に原料であるオレフィン、オキソガスおよび触媒混合液を連続的に供給し、上記ヒドロホルミル化反応条件下で実施されるが、回分式の反応器を使用することもできる。また、反応の温度を一定に保つために、反応器は、内部コイルやジャケット、外部熱交換器などを有してもよい。
ヒドロホルミル化反応で生成したアルデヒドを含む反応液は反応器から抜き出されることができる。
反応器から抜き出された反応液からの生成アルデヒドの分離は、蒸留、蒸発、ガスストリッピング、ガス吸収又は抽出等の任意の分離操作及び装置を選んで行うことができる。これらの中でも、好ましくは蒸留による分離であり、この場合、蒸留塔を用いて、塔頂より生成アルデヒドを主成分として含む成分を留出させて分離することができる。蒸留の条件としては、特に限定されるものではなく、通常は、塔底温度が50~150℃であることが好ましい。また、塔内の圧力としては、特に限定されるものではなく、通常は、0.01~0.1MPaであることが好ましい。
この生成アルデヒドの分離工程では、反応液から未反応オレフィンを回収する任意の手段と装置を付加してもよい。その際は、好ましくは向流接触塔等が用いられる。各装置間には適宜気液分離器等を設けてもよい。
上記のように反応液から生成アルデヒドを分離した残渣である触媒液は、反応器に戻され循環される。
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
実施例及び比較例で使用した化合物は以下のとおりである。
酢酸ロジウム水溶液(酢酸ロジウム濃度28質量%)(商品名:酢酸ロジウムL、エヌ・イーケムキャット株式会社製)
トリフェニルホスフィン(商品名:TPP、北興化学工業株式会社製)
o-キシレン(商品名:o-Xylene、富士フイルム和光純薬株式会社製)
[実施例1]
ジムロート冷却器を設置した0.3Lのフラスコに、酢酸ロジウム水溶液(酢酸ロジウム濃度28質量%)にメタノールを混合した溶液2.869g(酢酸ロジウム濃度2.21質量%、水分濃度5.67質量%)と、トリフェニルホスフィンをo-キシレンに溶解した溶液129.517g(トリフェニルホスフィン濃度0.619mol/L)を仕込み、これを触媒混合液とした。次いで、フラスコ内の前記触媒混合液を直径2.5cmのオーバル回転子を用いて撹拌した。
(プレカルボニレーション処理)
次いで、ウルトラファインバブル発生装置(PMT株式会社製、機器名:FBG-OS Type1)を用いて、フラスコ内の内液(触媒混合液)を40ml/minの循環速度で循環させながら、内液を循環させるための循環ライン中にオキソガス(水素/一酸化炭素=1(モル比))を10ml/minの流量で導入した。その際、フラスコ内の内液中のオキソガスの気泡径が100~200nmの範囲内となるように、即ち、前記オキソガスがウルトラファインバブルの形態を維持するように、前記循環ライン中にオキソガスを導入した。なお、前記の操作は、フラスコ内を大気圧下にして行った。次いで、フラスコ内の内液の温度を25℃に維持しながら、前記内液の循環を20分間継続した後、昇温を開始した。フラスコ内の内液の温度が70℃に達した後、さらに3時間撹拌した。
(ヒドロホルミル化反応)
次いで、フラスコ内の内液を室温(25℃)まで冷却し、フラスコ内を窒素置換した後、フラスコ内の内液を0.5Lの撹拌機付き高圧反応器に移液した。
次いで、前記高圧反応器へプロピレンを10g供給した後、高圧反応器内の内液の温度が110℃となるまで昇温し、さらに前記高圧反応器中にオキソガス(水素/一酸化炭素=1(モル比))を該ガスの圧力が2.0MPaとなるように圧入した後、この圧力及び温度を維持したまま、1.5時間ヒドロホルミル化反応を行った。
ヒドロホルミル化反応終了後に、ガスクロマトグラフィー法を用いて、前記高圧反応器中の気相部、液相部のオキソガスの減少量からプロピレンの減少量を求め、更にプロピレンの量が半分になるまでの時間(半減期)よりヒドロホルミル化反応のRh単位当りの反応速度を算出した。
算出した反応速度を用いて、下記式(1)によって算出したロジウム錯体触媒の活性率は、96.5%であった。前記ロジウム錯体触媒の活性率は触媒活性の指標値であり、この値が大きいほど、ロジウム錯体の触媒活性が高い傾向にある。
Figure 2023079892000012
なお、前記式(1)において、「市販のロジウム錯体触媒」には、OMG社のロジウム錯体触媒(商品名:カルボニルヒドリドトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I))を用いた。「市販のロジウム錯体触媒を用いて、ヒドロホルミル化反応を行った」とは、前記ロジウム錯体触媒を用いて、実施例1のヒドロホルミル化反応のみを行ったことを意味する。
また、図2に、実施例1で用いられたファインバブル発生装置、フラスコ、及び高圧反応器を含む反応装置の概略図である。反応装置は、反応容器10、オキソガス(H/CO)11が流入する流量制御部12、気液混合部13、ポンプ14、圧力調整弁15を有する。
[比較例1]
プレカルボニレーション処理を行わなかったこと以外は実施例1と同様の条件で、ヒドロホルミル化反応を行った。ヒドロホルミル化反応終了後に、上記の方法で測定したロジウム錯体触媒の活性率は、77.7%であった。
[比較例2]
窒素置換した0.5Lの撹拌機付き高圧反応器に、実施例1と同様の条件で、触媒混合液を仕込んだ。
次いで、プレカルボニレーション処理として、オキソガス(水素/一酸化炭素=1(モル比))を該ガスの圧力が1.5MPaとなるように高圧反応器に圧入し、昇温を開始した。前記高圧反応器の内液(触媒混合液)の温度は120℃になったところで反応器内の全圧が2.0MPaとなった。前記高圧反応器の内液の温度を120℃に維持しながら3時間撹拌した。
その後、前記高圧反応器の内液を室温(25℃)まで冷却し、オキソガスを脱圧した後、前記高圧反応器へプロピレンを10g供給し、実施例1と同様の条件で、ヒドロホルミル化反応を行った。ヒドロホルミル化反応終了後に、上記の方法で測定したロジウム錯体触媒の活性率は、95.0%であった。
[比較例3]
実施例1と同様の条件で、0.3Lのフラスコに触媒混合液を仕込み、撹拌した。実施例1と同様の条件で、前記フラスコ内にオキソガスを直接導入し、フラスコ内でオキソガスの気泡径として1mm~2mmのミリバブルを発生させ続けた。その後、実施例1と同様にしてプレカルボニレーション処理を行った後、ヒドロホルミル化反応を行った。ヒドロホルミル化反応終了後に、上記の方法で測定したロジウム錯体触媒の活性率は89.3%であった。
実施例1及び比較例1~3の結果を表1に掲載した。
Figure 2023079892000013
実施例1の製造条件では、プレカルボニレーション処理の工程において、反応系内にオキソガスをファインバブルの状態で供給しているため、触媒活性に優れたロジウム錯体触媒を、低温及び大気圧下でプレカルボニレーション処理して得ることができた。
比較例1の製造条件では、プレカルボニレーション処理を行わなかったため、ロジウム錯体触媒の活性が不十分であった。
比較例2の製造条件では、プレカルボニレーション処理の工程において、反応系内にオキソガスを、ファインバブルの状態で供給せず、単に圧入した後、高温(120℃)及び高圧下(2MPa)でプレカルボニレーション処理を行った。即ち、実施例1と比較例2との対比より、実施例1では、オキソガスをファインバブルの状態で供給することで、触媒活性に優れたロジウム錯体触媒を、低温(70℃)及び大気圧下でプレカルボニレーション処理して得ることが可能であることが分かる。
比較例3の製造条件では、プレカルボニレーション処理の工程において、反応系内にオキソガスをファインバブルの状態で供給せず、ミリバブルの状態で供給しているため、Rh単位当りの活性率の向上効果を十分に得ることができず、ロジウム錯体触媒の活性が不十分であった。
1 液体
2 気体
3 ノズル筐体
4 ノズル穴
5 ファインバブル
10 反応容器
11 オキソガス(H/CO)
12 流量制御部
13 気液混合部
14 ポンプ
15 圧力調整弁
100 ファインバブル発生装置

Claims (14)

  1. 遷移金属化合物を含む原料化合物と、原料ガスとを化学反応させることを含む、金属錯体触媒の製造方法であって、
    前記原料ガスの少なくとも一部を、ファインバブルの形態で前記原料化合物と化学反応させる、金属錯体触媒の製造方法。
  2. 前記原料化合物が、長周期型周期表第8~10族遷移金属化合物及び有機リン系配位子化合物を含む、請求項1に記載の金属錯体触媒の製造方法。
  3. 前記第8~10族遷移金属化合物が、1価以上3価以下のロジウム化合物を含む、請求項2に記載の金属錯体触媒の製造方法。
  4. 前記原料ガスが、水素及び一酸化炭素を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の金属錯体触媒の製造方法。
  5. 前記ファインバブルが、少なくともマイクロバブル又はウルトラファインバブルのいずれかを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の金属錯体触媒の製造方法。
  6. 前記化学反応が、大気圧下で行われる、請求項1~5のいずれか一項に記載の金属錯体触媒の製造方法。
  7. 前記化学反応が、温度30℃以上100℃以下の条件下で行われる、請求項1~6のいずれか一項に記載の金属錯体触媒の製造方法。
  8. 前記ロジウム化合物が、酢酸ロジウムを含む、請求項3~7のいずれか一項に記載の金属錯体触媒の製造方法。
  9. 前記製造方法によって得られたロジウム錯体触媒を含む反応液を、さらに精製し、前記精製の後に回収された精製廃液中に含まれる酢酸ロジウムを、前記ロジウム化合物として再利用することを含む、請求項3~8のいずれか一項に記載の金属錯体触媒の製造方法。
  10. 前記化学反応が、有機溶媒の存在下で行われる、請求項1~9のいずれか一項に記載の金属錯体触媒の製造方法。
  11. 前記有機溶媒が、アルコール及び芳香族炭化水素から選ばれる少なくとも1種である、請求項10に記載の金属錯体触媒の製造方法。
  12. 前記酢酸ロジウムをアルコールに溶解したアルコール溶液と、前記有機リン系配位子化合物を芳香族炭化水素に溶解した芳香族炭化水素溶液とを混合した混合液に、前記原料ガスをマイクロバブル又はナノバブルの形態で供給することを含む、請求項11に記載の金属錯体触媒の製造方法。
  13. 前記アルコールがメタノールである、請求項11又は12に記載の金属錯体触媒の製造方法。
  14. 請求項1~13のいずれか一項に記載の製造方法で得られる金属錯体触媒の存在下で、原料オレフィンを水素及び一酸化炭素とヒドロホルミル化反応させることを含む、アルデヒドの製造方法。
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