JP2023076987A - 硫酸コバルトの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】電解採取法を用いることなく、不純物とコバルトを分離し、硫酸コバルト溶液を製造する方法を提供する。【解決手段】塩化コバルト溶液に硫化剤を添加し銅の硫化物の沈殿を生成させる脱銅工程S1と、塩化コバルト溶液にアルキルリン酸系抽出剤を含む有機溶媒を接触させ有機溶媒に亜鉛、マンガンおよびカルシウムを抽出する第1溶媒抽出工程S2と塩化コバルト溶液にカルボン酸系抽出剤を含む有機溶媒を接触させ有機溶媒にコバルトを抽出させた後、硫酸でコバルトを逆抽出して硫酸コバルト溶液を得る第2溶媒抽出工程S3と、脱不純物後の塩化コバルト溶液と逆抽出後のカルボン酸抽出剤を含む有機溶媒とを接触させて脱不純物後の塩化コバルト溶液中に含まれたカルボン酸系抽出剤を分離して回収する溶媒回収工程S5と、脱不純物後の塩化コバルト溶液に炭酸化剤および/または中和剤を添加し、コバルトを沈殿回収するコバルト回収工程S6と、を実行する。【選択図】図1
Description
本発明は、硫酸コバルトの製造方法に関する。更に詳しくは、塩化コバルト溶液中に含まれる不純物元素を除去して、純度の高い硫酸コバルトを得る製造方法に関する。
コバルトは、特殊合金の添加元素としての用途以外に、磁性材料やリチウムイオン二次電池の原料として工業的用途に広く使用されている有価金属である。とくに最近では、リチウムイオン二次電池がモバイル機器や電気自動車のバッテリーとして多く用いられ、これに伴ってコバルトの需要も急速に拡大している。しかしながらコバルトはニッケル製錬や銅製錬の副産物として産出されるものが大半を占めているため、コバルトの製造においてはニッケルや銅を始めとする不純物との分離が重要な要素技術となっている。
たとえば、ニッケルの湿式製錬において副産物としてのコバルトを回収する場合、まずニッケルとコバルトを含む溶液を得るため、原料を鉱酸や酸化剤等を用いて溶液に浸出または抽出するかもしくは溶解処理に付される。さらに、得られた酸性溶液中に含まれるニッケルとコバルトは、従来から公知の方法により各種の有機抽出剤を用いた溶媒抽出法によって分離回収されることが多い。
しかし、得られたコバルト溶液には処理原料に由来する各種不純物が含有されることが多い。
しかし、得られたコバルト溶液には処理原料に由来する各種不純物が含有されることが多い。
そこで、上記溶媒抽出法によってニッケルが分離回収された後のコバルト溶液から、さらにマンガン、銅、亜鉛、カルシウムおよびマグネシウム等の不純物元素を除去することが必要になる。
しかも、不純物含有量の少ない高純度コバルト製品を製造するためには、予めコバルトを含有するニッケル溶液から分離回収されたコバルト溶液中の不純物元素を除去した後、電解工程あるいは晶析等によってコバルトを製品化する必要があった。
しかも、不純物含有量の少ない高純度コバルト製品を製造するためには、予めコバルトを含有するニッケル溶液から分離回収されたコバルト溶液中の不純物元素を除去した後、電解工程あるいは晶析等によってコバルトを製品化する必要があった。
コバルト溶液中の不純物元素の除去方法として、特許文献1、2に記載の従来技術がある。
特許文献1には、(1)コバルト溶液に硫化剤を添加し、酸化還元電位(ORP)(Ag/AgCl電極基準)を50mV以下且つpHを0.3~2.4に調整して、硫化銅沈殿と脱銅精製液とを得る脱銅工程、(2)該脱銅精製液に酸化剤と中和剤を添加し、酸化還元電位(Ag/AgCl電極基準)を950~1050mV且つpHを2.4~3.0に調整して、マンガン沈殿と脱マンガン精製液とを得る脱マンガン工程、(3)該脱マンガン精製液に抽出剤としてアルキルリン酸を用い、脱マンガン精製液中の亜鉛、カルシウム及び微量不純物を抽出分離する溶媒抽出工程、を含むコバルト溶液の精製方法が開示されている。
特許文献2には、塩酸濃度2~6mol/Lの塩化コバルト溶液を陰イオン交換樹脂に接触させ、陰イオン交換樹脂に対する分配係数がコバルト塩化物錯体のそれよりも大きい錯体を形成する鉄、亜鉛、スズ等の金属不純物を吸着させて分離する技術が記載されている。
特許文献1には、(1)コバルト溶液に硫化剤を添加し、酸化還元電位(ORP)(Ag/AgCl電極基準)を50mV以下且つpHを0.3~2.4に調整して、硫化銅沈殿と脱銅精製液とを得る脱銅工程、(2)該脱銅精製液に酸化剤と中和剤を添加し、酸化還元電位(Ag/AgCl電極基準)を950~1050mV且つpHを2.4~3.0に調整して、マンガン沈殿と脱マンガン精製液とを得る脱マンガン工程、(3)該脱マンガン精製液に抽出剤としてアルキルリン酸を用い、脱マンガン精製液中の亜鉛、カルシウム及び微量不純物を抽出分離する溶媒抽出工程、を含むコバルト溶液の精製方法が開示されている。
特許文献2には、塩酸濃度2~6mol/Lの塩化コバルト溶液を陰イオン交換樹脂に接触させ、陰イオン交換樹脂に対する分配係数がコバルト塩化物錯体のそれよりも大きい錯体を形成する鉄、亜鉛、スズ等の金属不純物を吸着させて分離する技術が記載されている。
上記特許文献1に記載された抽出剤としてアルキルリン酸を用いる溶媒抽出方法は、亜鉛やカルシウムに対して高い分離性能を有している。しかし、塩酸濃度2~6mol/Lの塩化コバルト溶液の場合には、陰イオン交換樹脂によるイオン交換法やアミン系抽出剤による溶媒抽出法の方が、上記アルキルリン酸を用いる溶媒抽出法に比べてより高い亜鉛とコバルトの分離性能を有している。
また、塩化コバルト溶液中のごく微量の亜鉛を除去する場合は、イオン交換法による方が工程及び操作が簡単であるため、効率的且つ経済的である。
また、塩化コバルト溶液中のごく微量の亜鉛を除去する場合は、イオン交換法による方が工程及び操作が簡単であるため、効率的且つ経済的である。
このような観点から、マンガン、銅、亜鉛を含有する塩化コバルト溶液から、これら不純物元素を除去する方法として、上記特許文献1の精製方法と特許文献2の分離技術を組み合わせた方法が提案されている(たとえば特許文献3)。
特許文献3の段落0022に記載する高純度塩化コバルト製造方法は、ニッケルとコバルトを分離する溶媒抽出工程、マンガンを除去する脱マンガン工程、銅を除去する脱銅工程、亜鉛を除去する脱亜鉛工程および電解工程を含んでいる。
脱亜鉛工程では、脱銅工程で得られた塩化コバルト水溶液を陰イオン交換樹脂に接触させて亜鉛を吸着除去する。電解工程では脱亜鉛工程で得た高純度塩化コバルト水溶液を電解給液として用い、金属コバルト(電気コバルトともいわれる)を製造するものである。
特許文献3の段落0022に記載する高純度塩化コバルト製造方法は、ニッケルとコバルトを分離する溶媒抽出工程、マンガンを除去する脱マンガン工程、銅を除去する脱銅工程、亜鉛を除去する脱亜鉛工程および電解工程を含んでいる。
脱亜鉛工程では、脱銅工程で得られた塩化コバルト水溶液を陰イオン交換樹脂に接触させて亜鉛を吸着除去する。電解工程では脱亜鉛工程で得た高純度塩化コバルト水溶液を電解給液として用い、金属コバルト(電気コバルトともいわれる)を製造するものである。
一方、前述したように、最近ではリチウムイオン二次電池の原料用としてコバルトの需要が拡大し、硫酸コバルト溶液あるいは硫酸コバルト結晶の形態が望まれる。
特許文献3の従来技術で得られた金属コバルトから硫酸コバルト結晶を得ようとすれば、金属コバルトを硫酸で溶解して硫酸コバルト溶液を得、さらにこの溶液を晶析して、硫酸コバルト結晶を得ることができる。しかしながら、この製法を用いると、工程の増加や薬剤費の増加により製造コストが高くなる。また、板状の金属コバルトは、耐蝕合金に用いられるように硫酸への溶解速度が遅く、短時間で溶解するためには、板状の金属コバルトをアトマイズ処理等によって粉末状にする必要がある。
このため、金属コバルトを経由することなく、直接的に塩化コバルト溶液から硫酸コバルト溶液を得る方法が望まれてきた。
特許文献3の従来技術で得られた金属コバルトから硫酸コバルト結晶を得ようとすれば、金属コバルトを硫酸で溶解して硫酸コバルト溶液を得、さらにこの溶液を晶析して、硫酸コバルト結晶を得ることができる。しかしながら、この製法を用いると、工程の増加や薬剤費の増加により製造コストが高くなる。また、板状の金属コバルトは、耐蝕合金に用いられるように硫酸への溶解速度が遅く、短時間で溶解するためには、板状の金属コバルトをアトマイズ処理等によって粉末状にする必要がある。
このため、金属コバルトを経由することなく、直接的に塩化コバルト溶液から硫酸コバルト溶液を得る方法が望まれてきた。
本発明は、上記実情に鑑みて提案されたものであり、不純物を含む塩化コバルト溶液から、電解工程を用いることなく不純物とコバルトを分離し、純度の高い硫酸コバルトを製造する方法を提供することを目的とする。
第1発明の硫酸コバルト溶液の製造方法は、銅、亜鉛、マンガン、カルシウムおよびマグネシウムの1種以上の不純物を含む塩化コバルト溶液から前記不純物を除去して硫酸コバルトを得る製造方法であって、前段工程は、前記塩化コバルト溶液に硫化剤を添加し銅の硫化物の沈殿を生成させて分離除去する脱銅工程と、前記塩化コバルト溶液にアルキルリン酸系抽出剤を含む有機溶媒を接触させ、該有機溶媒に亜鉛、マンガンおよびカルシウムを抽出して分離除去する第1溶媒抽出工程を含んでおり、後段工程は、前記前段工程を経た塩化コバルト溶液にカルボン酸系抽出剤を含む有機溶媒を接触させ、該有機溶媒にコバルトを抽出させた後、硫酸でコバルトを逆抽出して硫酸コバルト溶液を得る第2溶媒抽出工程からなり、回収工程として、前記第2溶媒抽出工程により得られた脱不純物後の塩化コバルト溶液と逆抽出後のカルボン酸抽出剤を含む有機溶媒とを接触させて、pHを4.0以下に調整し、脱不純物後の塩化コバルト溶液中に含まれたカルボン酸系抽出剤を分離して回収する溶媒回収工程と、前記カルボン酸系抽出剤を回収した後の脱不純物後の塩化コバルト溶液に、炭酸化剤および/または中和剤を添加し、コバルトを沈殿回収するコバルト回収工程と、を実行することを特徴とする。
第2発明の硫酸コバルト溶液の製造方法は、第1発明において、前記前段工程が、前記脱銅工程および前記第1溶媒抽出工程の順に実行されることを特徴とする。
第3発明の硫酸コバルト溶液の製造方法は、第1発明において、前記前段工程が、前記第1溶媒抽出工程および前記脱銅工程の順に実行されることを特徴とする。
第4発明の硫酸コバルト溶液の製造方法は、第1、第2または第3発明において、前記コバルト回収工程において、pHを7.0~12.0に調整することを特徴とする。
第5発明の硫酸コバルト溶液の製造方法は、第4発明において、前記コバルトの沈殿物を、前記第1溶媒抽出工程において添加し、中和剤として使用することを特徴とする。
第6発明の硫酸コバルト溶液の製造方法は、第4発明において、前記コバルトの沈殿物を、前記第2溶媒抽出工程におけるコバルト抽出工程に添加し、中和剤として使用することを特徴とする。
第2発明の硫酸コバルト溶液の製造方法は、第1発明において、前記前段工程が、前記脱銅工程および前記第1溶媒抽出工程の順に実行されることを特徴とする。
第3発明の硫酸コバルト溶液の製造方法は、第1発明において、前記前段工程が、前記第1溶媒抽出工程および前記脱銅工程の順に実行されることを特徴とする。
第4発明の硫酸コバルト溶液の製造方法は、第1、第2または第3発明において、前記コバルト回収工程において、pHを7.0~12.0に調整することを特徴とする。
第5発明の硫酸コバルト溶液の製造方法は、第4発明において、前記コバルトの沈殿物を、前記第1溶媒抽出工程において添加し、中和剤として使用することを特徴とする。
第6発明の硫酸コバルト溶液の製造方法は、第4発明において、前記コバルトの沈殿物を、前記第2溶媒抽出工程におけるコバルト抽出工程に添加し、中和剤として使用することを特徴とする。
第1発明によれば、不純物を含む塩化コバルト溶液から、前段工程に含まれる脱銅工程と第1溶媒抽出工程により銅、亜鉛、マンガンおよびカルシウムが除去でき、後段工程に含まれる第2溶媒抽出工程によってマグネシウムを除去できる。したがって、電解工程を用いることなく高純度の硫酸コバルトを製造することができる。また、溶媒回収工程で得たカルボン酸系抽出剤を抽出工程の有機相として利用でき、コバルト回収工程では高い沈殿率でコバルトを回収できるので、系外ロスを少なくして高純度の硫酸コバルト溶液を製造することができる。
第2発明によれば、不純物を含む塩化コバルト溶液から、脱銅工程と第1溶媒抽出工程をその順で実行することで、銅、亜鉛、マンガンおよびカルシウムを分離除去できるので、第2溶媒抽出工程でマグネシウムを分離除去すれば不純物が除去された高純度の硫酸コバルト溶液を得ることができる。
第3発明によれば、不純物を含む塩化コバルト溶液から、第1溶媒抽出工程と脱銅工程をその順で実行することで、銅、亜鉛、マンガンおよびカルシウムを分離除去できるので、第2溶媒抽出工程でマグネシウムを分離除去すれば不純物が除去された高純度の硫酸コバルト溶液を得ることができる。
第4発明によれば、コバルト回収工程でのpHを7.0~12.0に調整することで、コバルトの沈殿率を高め、系内回収可能なコバルトの比率を高めることができる。
第5発明によれば、コバルトの沈殿物を第1溶媒抽出工程で中和剤として使用することで、コバルトの系外ロスを少なくすることができる。
第6発明によれば、コバルトの沈殿物を第2溶媒抽出工程のコバルト抽出工程で中和剤として使用することで、コバルトの系外ロスを少なくすることができる。
第2発明によれば、不純物を含む塩化コバルト溶液から、脱銅工程と第1溶媒抽出工程をその順で実行することで、銅、亜鉛、マンガンおよびカルシウムを分離除去できるので、第2溶媒抽出工程でマグネシウムを分離除去すれば不純物が除去された高純度の硫酸コバルト溶液を得ることができる。
第3発明によれば、不純物を含む塩化コバルト溶液から、第1溶媒抽出工程と脱銅工程をその順で実行することで、銅、亜鉛、マンガンおよびカルシウムを分離除去できるので、第2溶媒抽出工程でマグネシウムを分離除去すれば不純物が除去された高純度の硫酸コバルト溶液を得ることができる。
第4発明によれば、コバルト回収工程でのpHを7.0~12.0に調整することで、コバルトの沈殿率を高め、系内回収可能なコバルトの比率を高めることができる。
第5発明によれば、コバルトの沈殿物を第1溶媒抽出工程で中和剤として使用することで、コバルトの系外ロスを少なくすることができる。
第6発明によれば、コバルトの沈殿物を第2溶媒抽出工程のコバルト抽出工程で中和剤として使用することで、コバルトの系外ロスを少なくすることができる。
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。なお、本明細書にて、「X~Y」(X、Yは任意の数値)との表記は、「X以上Y以下」の意味である。
(本発明の基本原理)
本発明に係る硫酸コバルトの製造方法の基本原理を、図1に基づき説明する。
本発明は、銅、亜鉛、マンガン、カルシウムおよびマグネシウムの1種以上の不純物を含む塩化コバルト溶液から前記不純物を除去して硫酸コバルトを得る製造方法であって、
(1)前段工程は、前記塩化コバルト溶液に硫化剤を添加し銅の硫化物の沈殿を生成させて分離除去する脱銅工程S1と、前記塩化コバルト溶液にアルキルリン酸系抽出剤を含む有機溶媒を接触させ、該有機溶媒に亜鉛、マンガンおよびカルシウムを抽出して分離除去する第1溶媒抽出工程S2を含んでおり、
(2)後段工程は、前記前段工程を経た塩化コバルト溶液に直鎖構造のカルボン酸系抽出剤を含む有機溶媒を接触させ、該有機溶媒にコバルトを抽出させた後、硫酸でコバルトを逆抽出して硫酸コバルト溶液を得る第2溶媒抽出工程S3からなり、
(3)回収工程として、前記第2溶媒抽出工程により得られた脱不純物後の塩化コバルト溶液と逆抽出後のカルボン酸抽出剤を含む有機溶媒とを接触させて、pHを4.0以下に調整し、脱不純物後の塩化コバルト溶液中に含まれたカルボン酸系抽出剤を分離して回収する溶媒回収工程と、前記カルボン酸系抽出剤を回収した後の脱不純物後の塩化コバルト溶液に、炭酸化剤および/または中和剤を添加し、コバルトを沈殿回収するコバルト回収工程と、を実行することを特徴とする。
本発明に係る硫酸コバルトの製造方法の基本原理を、図1に基づき説明する。
本発明は、銅、亜鉛、マンガン、カルシウムおよびマグネシウムの1種以上の不純物を含む塩化コバルト溶液から前記不純物を除去して硫酸コバルトを得る製造方法であって、
(1)前段工程は、前記塩化コバルト溶液に硫化剤を添加し銅の硫化物の沈殿を生成させて分離除去する脱銅工程S1と、前記塩化コバルト溶液にアルキルリン酸系抽出剤を含む有機溶媒を接触させ、該有機溶媒に亜鉛、マンガンおよびカルシウムを抽出して分離除去する第1溶媒抽出工程S2を含んでおり、
(2)後段工程は、前記前段工程を経た塩化コバルト溶液に直鎖構造のカルボン酸系抽出剤を含む有機溶媒を接触させ、該有機溶媒にコバルトを抽出させた後、硫酸でコバルトを逆抽出して硫酸コバルト溶液を得る第2溶媒抽出工程S3からなり、
(3)回収工程として、前記第2溶媒抽出工程により得られた脱不純物後の塩化コバルト溶液と逆抽出後のカルボン酸抽出剤を含む有機溶媒とを接触させて、pHを4.0以下に調整し、脱不純物後の塩化コバルト溶液中に含まれたカルボン酸系抽出剤を分離して回収する溶媒回収工程と、前記カルボン酸系抽出剤を回収した後の脱不純物後の塩化コバルト溶液に、炭酸化剤および/または中和剤を添加し、コバルトを沈殿回収するコバルト回収工程と、を実行することを特徴とする。
本発明において、前段工程は、脱銅工程S1および第1溶媒抽出工程S2の順に実行されるものであってもよく、第1溶媒抽出工程S2および脱銅工程S1の順に実行されるものであってもよい。後段工程に含まれる第2溶媒抽出工程S3は、前段工程の後で実行される。
回収工程のうち、溶媒回収工程S5は第2溶媒抽出工程S3における逆抽出工程S32と並行して行ってもよく、逆抽出工程S32の後工程として行ってもよい。
コバルト回収工程S6は溶媒回収工程S5の後で実行される。
回収工程のうち、溶媒回収工程S5は第2溶媒抽出工程S3における逆抽出工程S32と並行して行ってもよく、逆抽出工程S32の後工程として行ってもよい。
コバルト回収工程S6は溶媒回収工程S5の後で実行される。
本発明において、第1溶媒抽出工程S2の後、および(または)第2溶媒抽出工程S3の後で、液中に混入した有機成分を分離除するために活性炭カラム等の油水分離装置に供する工程を追加してもよい。
本発明において出発原料とする塩化コバルト溶液は、不純物元素として銅、亜鉛、マンガン、カルシウム、マグネシウムのうち1種類以上を含むものである。このような不純物を含む塩化コバルト溶液であれば本発明の適用に何ら限定されるものではないが、とくにニッケル製錬の溶媒抽出工程において、コバルトを含有したニッケル溶液からアルキルリン酸系抽出剤やアミン系抽出剤によってニッケルが分離回収された塩化コバルト溶液に好適に適用される。
本発明によれば、塩化コバルト溶液から、脱銅工程S1により銅の硫化物沈殿を生成させて銅を除去し、第1溶媒抽出工程S2により亜鉛、マンガンおよびカルシウムを分離除去し、第2溶媒抽出工程S3によりマグネシウムを分離除去して、高純度の硫酸コバルト溶液を得ることができる。したがって、電解工程を用いることなく不純物とコバルトを分離して直接に高純度の硫酸コバルト溶液を製造することができる。
また、溶媒回収工程S5で得たカルボン酸系抽出剤を抽出工程S31の有機相として利用でき、コバルト回収工程S6では高い沈殿率でコバルトを回収できるので、系外ロスを少なくして高純度の硫酸コバルト溶液を製造することができる。
また、溶媒回収工程S5で得たカルボン酸系抽出剤を抽出工程S31の有機相として利用でき、コバルト回収工程S6では高い沈殿率でコバルトを回収できるので、系外ロスを少なくして高純度の硫酸コバルト溶液を製造することができる。
(第1実施形態)
硫酸コバルトの製造方法の第1実施形態について、図2~図6に基づき説明する。図2は第1実施形態における全工程を示す図であり、図3は、図2に示す各工程S1~S3の詳細をまとめて示したものである。
第1実施形態は、図2に示すように、前段工程において、先に脱銅工程S1、ついで第1溶媒抽出工程S2の順で実行するものである。
硫酸コバルトの製造方法の第1実施形態について、図2~図6に基づき説明する。図2は第1実施形態における全工程を示す図であり、図3は、図2に示す各工程S1~S3の詳細をまとめて示したものである。
第1実施形態は、図2に示すように、前段工程において、先に脱銅工程S1、ついで第1溶媒抽出工程S2の順で実行するものである。
(脱銅工程S1)
脱銅工程S1を図3に基づき説明する。
脱銅工程S1は、出発原料である銅、亜鉛、マンガン、カルシウムおよびマグネシウムの1種類以上の不純物を含む塩化コバルト溶液に硫化剤を添加することにより行う。また、酸化剤および中和剤を添加して、塩化コバルト溶液の酸化還元電位を-100~200mV(Ag/AgCl電極基準)に、かつpHを1.3~3.0に調整する。
本工程により、塩化コバルト溶液から銅の硫化物の沈殿を生成させて分離し、銅が除去された塩化コバルト溶液を得ることができる。
脱銅工程S1を図3に基づき説明する。
脱銅工程S1は、出発原料である銅、亜鉛、マンガン、カルシウムおよびマグネシウムの1種類以上の不純物を含む塩化コバルト溶液に硫化剤を添加することにより行う。また、酸化剤および中和剤を添加して、塩化コバルト溶液の酸化還元電位を-100~200mV(Ag/AgCl電極基準)に、かつpHを1.3~3.0に調整する。
本工程により、塩化コバルト溶液から銅の硫化物の沈殿を生成させて分離し、銅が除去された塩化コバルト溶液を得ることができる。
塩化コバルト溶液中の銅は、下記式1、式2あるいは式3に従って硫化銅の沈殿物を生成して、溶液中から除去される。
CuCl2+H2S→CuS↓+2HCl・・・(式1)
CuCl2+Na2S→CuS↓+2NaCl・・・(式2)
CuCl2+NaHS→CuS↓+NaCl+HCl・・・(式3)
CuCl2+H2S→CuS↓+2HCl・・・(式1)
CuCl2+Na2S→CuS↓+2NaCl・・・(式2)
CuCl2+NaHS→CuS↓+NaCl+HCl・・・(式3)
上記脱銅工程S1では、塩化コバルト溶液の酸化還元電位を-100~200mV(Ag/AgCl電極基準)に、かつpHを1.3~3.0に調整しておくと、硫化物として銅を充分に除去することができ、しかもコバルトの共沈殿を抑制することができる。
仮に、酸化還元電位が200mVを超えると溶液中の銅の除去が不十分となり、酸化還元電位が-100mV未満ではコバルトの共沈殿量が増加するため好ましくない。また、pHが1.3未満では、溶液中の銅の除去が不十分となると共に、生成する硫化物沈殿のろ過性が悪化する。pHが3.0を超えると、銅の除去に伴うコバルト共沈殿量が増加するため好ましくない。
仮に、酸化還元電位が200mVを超えると溶液中の銅の除去が不十分となり、酸化還元電位が-100mV未満ではコバルトの共沈殿量が増加するため好ましくない。また、pHが1.3未満では、溶液中の銅の除去が不十分となると共に、生成する硫化物沈殿のろ過性が悪化する。pHが3.0を超えると、銅の除去に伴うコバルト共沈殿量が増加するため好ましくない。
上記酸化還元電位の調整は、硫化剤の添加量を調整することにより行うことができる。硫化剤としては、特に限定されるものではないが、硫化水素ガス、硫化ナトリウムや水硫化ナトリウムの結晶や水溶液等を用いることができる。
また、上記pHの調整は、硫化剤として硫化水素や水硫化ナトリウムを用いる場合は、硫化剤の添加量調整とpH調整剤の添加によって行われる。pH調整剤としては、とくに限定されるものではなく、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸コバルト等のアルカリ塩を用いることができる。また、硫化剤の投入により、酸化還元電位が所望した値より低くなった場合、酸化剤の添加により調整できる。たとえば、溶液中に空気を導入して撹拌する、あるいは過酸化水素溶液を添加する、ことで調整できる。
(第1溶媒抽出工程S2)
第1溶媒抽出工程S2を図3および図4に基づき説明する。
第1溶媒抽出工程S2は、前記脱銅工程S1を経た塩化コバルト溶液にアルキルリン酸系抽出剤を含む有機溶媒を接触させ、該有機溶媒に亜鉛、マンガンおよびカルシウムを抽出して分離除去する工程である。
第1溶媒抽出工程S2を図3および図4に基づき説明する。
第1溶媒抽出工程S2は、前記脱銅工程S1を経た塩化コバルト溶液にアルキルリン酸系抽出剤を含む有機溶媒を接触させ、該有機溶媒に亜鉛、マンガンおよびカルシウムを抽出して分離除去する工程である。
有機溶媒としてアルキルリン酸系抽出剤を希釈剤で希釈したものが用いられる。アルキルリン酸系抽出剤として、リン酸水素ビス(2-エチルヘキシル)(D2EHPA)、(2-エチルヘキシル)ホスホン酸2-エチルヘキシル(PC-88A)、ジ(2,4,4-トリメチルペンチル)ホスフィン酸(CYANEX272)が挙げられる。これらの中でも、銅が除去された塩化コバルト溶液から、亜鉛、マンガンおよびカルシウムを分離除去するためにはリン酸水素ビス(2-エチルヘキシル)を抽出剤として用いることが好ましい。
希釈剤は抽出剤を溶解可能なものであれば特に限定されない。希釈剤として、例えば、ナフテン系溶剤、芳香族系溶剤を用いることができる。抽出剤の濃度は、10~60体積%に調整することが好ましく、20~50%体積%に調整することがより望ましい。抽出剤の濃度が10%未満では、濃度の高い不純物元素や分配比(有機中の元素濃度/溶液中の元素濃度)が低い不純物元素を十分に抽出できず、塩化コバルト溶液に残留しやすくなる。一方、抽出剤の濃度が60%を超えると有機溶媒の粘度が高くなり、有機溶媒(有機相)と塩化コバルト溶液(水相)の抽出操作後の相分離性が悪化する。
アルキルリン酸系抽出剤のような酸性抽出剤は、式4に示すように、その抽出剤の持つ-Hが水相中の陽イオンと置換して金属塩を形成することによって金属イオンを抽出する抽出剤である。一般的に、pHが高くなると金属イオンが有機相に抽出されやすくなり、pHを低くすると式4の反応が逆方向に進み、有機相に抽出された金属イオンが水相に逆抽出されやすくなる。金属イオンの種類によって、抽出されるpHが異なため、酸性抽出剤を用いた溶媒抽出工程ではpHを制御することで目的の元素と不純物元素の分離を行う。
nRHorg + Mn+ aq → MRnorg + nH+ aq・・・(式4)
ここで、式中のRHは酸性抽出剤、Mn+はn価の金属イオン、orgは有機相、aqは水相を示す。
nRHorg + Mn+ aq → MRnorg + nH+ aq・・・(式4)
ここで、式中のRHは酸性抽出剤、Mn+はn価の金属イオン、orgは有機相、aqは水相を示す。
そこで、第1溶媒抽出工程S2では、銅が除去された塩化コバルト溶液のpHを1.5~3.0に調整することが望ましい。このpH領域では、亜鉛、マンガン、カルシウムの抽出率は、コバルトの抽出率より高い傾向を示し、コバルトを水相に残し、これらの不純物元素を有機相に抽出することでコバルトとの分離が可能である。
pHが1.5未満では、これらの不純物の抽出率が低く、コバルトとの分離が困難となり、pHが3.0を超えると、コバルトの抽出率も大きくなり、不純物との分離性が低下する。pHが1.5~3.0に調整した場合、コバルトの一部が抽出される場合もあるが、抽出後の有機相を抽出時より低いpHの塩酸溶液と接触させ、コバルトを逆抽出して回収し、コバルトのロスを低減することもできる。さらに、この有機相とpH1以下の酸性溶液を接触させると、抽出されたほとんどの金属イオンを水相に逆抽出することができ、逆抽出後の有機相を再利用できる。
pHが1.5未満では、これらの不純物の抽出率が低く、コバルトとの分離が困難となり、pHが3.0を超えると、コバルトの抽出率も大きくなり、不純物との分離性が低下する。pHが1.5~3.0に調整した場合、コバルトの一部が抽出される場合もあるが、抽出後の有機相を抽出時より低いpHの塩酸溶液と接触させ、コバルトを逆抽出して回収し、コバルトのロスを低減することもできる。さらに、この有機相とpH1以下の酸性溶液を接触させると、抽出されたほとんどの金属イオンを水相に逆抽出することができ、逆抽出後の有機相を再利用できる。
(第2溶媒抽出工程S3)
第2溶媒抽出工程S3を図3および図5に基づき説明する。
第2溶媒抽出工程S3は、前記第1溶媒抽出工程を経た塩化コバルト溶液にカルボン酸系抽出剤を含む有機溶媒を接触させコバルトを抽出するコバルト抽出工程S31を実行し、ついで硫酸でコバルトを逆抽出するコバルト逆抽出工程S33と、を実行して硫酸コバルト溶液を得る工程である。
第2溶媒抽出工程S3を図3および図5に基づき説明する。
第2溶媒抽出工程S3は、前記第1溶媒抽出工程を経た塩化コバルト溶液にカルボン酸系抽出剤を含む有機溶媒を接触させコバルトを抽出するコバルト抽出工程S31を実行し、ついで硫酸でコバルトを逆抽出するコバルト逆抽出工程S33と、を実行して硫酸コバルト溶液を得る工程である。
有機溶媒としてカルボン酸系抽出剤を希釈剤で希釈したものが用いられる。多くのカルボン酸は、無極性溶媒中でお互いに水素結合によって2量体、3量体を形成している。また、金属イオンを抽出する際、金属イオンに配位している水和水を除去するように酸解離していないカルボン酸が配位することがある。たとえば、6配位の2価の金属イオンM2+が2量体のカルボン酸抽出剤R2H2により抽出される反応は、以下の式5のように表される。
[M(H2O)6]2+ aq+3(R2H2)org
→ (MR2・4RH)org+2H+ aq+6H2Oaq・・・(式5)
ここで、式中のorgは有機相、aqは水相を示す。
[M(H2O)6]2+ aq+3(R2H2)org
→ (MR2・4RH)org+2H+ aq+6H2Oaq・・・(式5)
ここで、式中のorgは有機相、aqは水相を示す。
カルボン酸系抽出剤としては、分岐構造のものと直鎖構造のもののいずれも使用できる。分岐構造の抽出剤にはバーサチック酸やナフテン酸等があり、直鎖構造の抽出剤にはヘプタン酸、オクタン酸、デカン酸、およびドデカン酸等がある。
カルボン酸系抽出剤の一部に直鎖構造のカルボン酸を含ませると、コバルトの酸化を抑制することができる。
また、直鎖構造をもつカルボン酸は、分岐構造をもつバーサチック酸などに比べて、より低いpHでコバルト抽出することができるので、操業中にpHが上昇しても水酸化物を生成させたり、それに伴うクラッド発生などの操業に好ましくない事態を避けることができる。そのため、操業が安定するという利点がある。
カルボン酸系抽出剤の一部に直鎖構造のカルボン酸を含ませると、コバルトの酸化を抑制することができる。
また、直鎖構造をもつカルボン酸は、分岐構造をもつバーサチック酸などに比べて、より低いpHでコバルト抽出することができるので、操業中にpHが上昇しても水酸化物を生成させたり、それに伴うクラッド発生などの操業に好ましくない事態を避けることができる。そのため、操業が安定するという利点がある。
(コバルト抽出工程S31)
コバルト抽出工程S31では、銅、亜鉛、マンガン、カルシウムが除去された塩化コバルト溶液に中和剤としてアルカリ溶液を添加して、pHを5.0~7.0に調整し、カルボン酸系抽出剤を含む有機溶媒に接触させて、コバルトを有機相に抽出する。このときマグネシウムは抽出されず水相に残留する。pHが5未満では、コバルトの抽出が困難であり、一方pHが7を超えると、コバルトの溶解度が低下し、沈殿が発生することがある。
このときカルボン酸系抽出剤は、pHを5.0~7.0にすることで一部塩化コバルト溶液へ溶解する。
コバルト抽出工程S31では、銅、亜鉛、マンガン、カルシウムが除去された塩化コバルト溶液に中和剤としてアルカリ溶液を添加して、pHを5.0~7.0に調整し、カルボン酸系抽出剤を含む有機溶媒に接触させて、コバルトを有機相に抽出する。このときマグネシウムは抽出されず水相に残留する。pHが5未満では、コバルトの抽出が困難であり、一方pHが7を超えると、コバルトの溶解度が低下し、沈殿が発生することがある。
このときカルボン酸系抽出剤は、pHを5.0~7.0にすることで一部塩化コバルト溶液へ溶解する。
(逆抽出工程S33)
前記コバルト抽出工程S31の後、有機相に抽出したコバルトと硫酸溶液を接触させて、pHを2.0~4.5に調整し、コバルトを硫酸溶液に逆抽出することで、高純度の硫酸コバルト溶液が得られる。pHが2未満でも逆抽出可能であるが、コバルトより低いpHで抽出された微量の不純物の逆抽出量が増加するため好ましくない。一方pHが4.5を超えるとコバルトを逆抽出率が低下し、コバルトの回収量が減少する。
前記コバルト抽出工程S31の後、有機相に抽出したコバルトと硫酸溶液を接触させて、pHを2.0~4.5に調整し、コバルトを硫酸溶液に逆抽出することで、高純度の硫酸コバルト溶液が得られる。pHが2未満でも逆抽出可能であるが、コバルトより低いpHで抽出された微量の不純物の逆抽出量が増加するため好ましくない。一方pHが4.5を超えるとコバルトを逆抽出率が低下し、コバルトの回収量が減少する。
なお、抽出後の有機相には、分相後も微細な水相が混入しているため、逆抽出の前にこの水相を除去するための洗浄工程を追加してもよい。洗浄工程の水相には、例えば硫酸コバルト溶液を用いることができる。また、逆抽出後の有機相は、抽出工程の有機相として再利用できる。
(回収工程)
回収工程における溶媒回収工程S5とコバルト回収工程S6を説明する。
溶媒回収工程S5は、図6に示すように、第2溶媒抽出工程S3におけるコバルト抽出工程S31で得られた脱不純物後の塩化コバルト溶液と逆抽出工程S33でコバルトを逆抽出した後のカルボン酸抽出剤を含む有機溶媒とを接触させて、pHを4.0以下に調整し、脱不純物後の塩化コバルト溶液中に含まれたカルボン酸系抽出剤を分離して回収する工程である。
本工程S5において、pHを4.0以下に調整することで、塩化コバルト溶液中に溶解していたカルボン酸系抽出剤が分離し、有機相へ回収することができる。カルボン酸系抽出剤を戻した有機相は、図5に示すように、コバルト抽出工程S31の有機相として再利用することができる。この溶媒回収工程S5は、図5に点線で示すように、前記第2溶媒抽出工程S3における逆抽出工程S32と並行して行ってよい。
回収工程における溶媒回収工程S5とコバルト回収工程S6を説明する。
溶媒回収工程S5は、図6に示すように、第2溶媒抽出工程S3におけるコバルト抽出工程S31で得られた脱不純物後の塩化コバルト溶液と逆抽出工程S33でコバルトを逆抽出した後のカルボン酸抽出剤を含む有機溶媒とを接触させて、pHを4.0以下に調整し、脱不純物後の塩化コバルト溶液中に含まれたカルボン酸系抽出剤を分離して回収する工程である。
本工程S5において、pHを4.0以下に調整することで、塩化コバルト溶液中に溶解していたカルボン酸系抽出剤が分離し、有機相へ回収することができる。カルボン酸系抽出剤を戻した有機相は、図5に示すように、コバルト抽出工程S31の有機相として再利用することができる。この溶媒回収工程S5は、図5に点線で示すように、前記第2溶媒抽出工程S3における逆抽出工程S32と並行して行ってよい。
コバルト回収工程S6は、図6に示すように、カルボン酸系抽出剤を回収した後の脱不純物後の塩化コバルト溶液に、炭酸化剤および/または中和剤を添加し、コバルトを沈殿回収する工程である。
すなわち、溶媒回収工程S5において塩化コバルト溶液から溶解したカルボン酸系抽出剤を回収し、溶媒を回収した後の残液に炭酸化剤および中和剤を加えるか、炭酸化剤または中和剤を加えることで、炭酸コバルトや水酸化コバルトを得る。
すなわち、溶媒回収工程S5において塩化コバルト溶液から溶解したカルボン酸系抽出剤を回収し、溶媒を回収した後の残液に炭酸化剤および中和剤を加えるか、炭酸化剤または中和剤を加えることで、炭酸コバルトや水酸化コバルトを得る。
本工程において、pHを7.0~12.0に調整することで、コバルトの沈殿率を高め、系内回収可能なコバルトの比率を高めることができる。pHが7.0未満では、回収率が下がり、pHが12.0を超えると、過剰な炭酸化剤や中和剤を使用することになるため、pHは7.0~12.0が適正である。とくに、pHは7.0~8.0の範囲が炭酸化剤や中和剤の使用量を少なくしつつコバルトの回収比率を高く維持できるので、より好ましい。
これにより、コバルトの系外ロスが少なくして高純度の硫酸コバルト溶液を製造することができる。
これにより、コバルトの系外ロスが少なくして高純度の硫酸コバルト溶液を製造することができる。
前記コバルト回収工程S6で得られたコバルト沈殿物は、図6に示すように、第1溶媒抽出工程S2において、中和剤として添加することができる。また、第2溶媒抽出工程S3におけるコバルト抽出工程S31に添加し、中和剤として使用することもできる。
このようにコバルトの沈殿物を中和剤として使用することで、コバルトの系外ロスを少なくすることができる。
このようにコバルトの沈殿物を中和剤として使用することで、コバルトの系外ロスを少なくすることができる。
(硫酸コバルト溶液の晶析化)
第2溶媒抽出工程で得られた硫酸コバルト溶液から硫酸コバルトの結晶を得たい場合は、晶析工程に付すとよい。晶析方法は特に限定されるものではなく、一般的な結晶化方法を用いて行うことができる。たとえば、硫酸コバルト溶液を晶析缶に収容し、その晶析缶内で晶析することにより結晶を得る方法が挙げられる。晶析缶は、所定圧力下で硫酸コバルト溶液中の水分を蒸発させることにより結晶を析出させるものであり、例えばロータリーエバポレーターやダブルプロペラ型の晶析缶が用いられる。真空ポンプ等により内部の圧力を減圧し、ロータリーエバポレーターではフラスコを回転しながら、ダブルプロペラで撹拌しながら晶析が進行する。なお、晶析缶内では、硫酸コバルト溶液に硫酸コバルトの結晶が混合したスラリーとなっている。
第2溶媒抽出工程で得られた硫酸コバルト溶液から硫酸コバルトの結晶を得たい場合は、晶析工程に付すとよい。晶析方法は特に限定されるものではなく、一般的な結晶化方法を用いて行うことができる。たとえば、硫酸コバルト溶液を晶析缶に収容し、その晶析缶内で晶析することにより結晶を得る方法が挙げられる。晶析缶は、所定圧力下で硫酸コバルト溶液中の水分を蒸発させることにより結晶を析出させるものであり、例えばロータリーエバポレーターやダブルプロペラ型の晶析缶が用いられる。真空ポンプ等により内部の圧力を減圧し、ロータリーエバポレーターではフラスコを回転しながら、ダブルプロペラで撹拌しながら晶析が進行する。なお、晶析缶内では、硫酸コバルト溶液に硫酸コバルトの結晶が混合したスラリーとなっている。
晶析缶から排出されたスラリーは、濾過器や遠心分離機等により硫酸コバルトの結晶と母液とに固液分離される。その後、硫酸コバルトの結晶を乾燥機で乾燥し、水分を除去する。
上記の方法で、不純物の少ない高純度の硫酸コバルト結晶を製造することができる。
上記の方法で、不純物の少ない高純度の硫酸コバルト結晶を製造することができる。
(第2実施形態)
硫酸コバルトの製造方法の第2実施形態について、図7~図9に基づき説明する。
図7は第2実施形態における全工程を示す図であり、図8は図7に示す各工程S2、S1、S3の詳細をまとめて示したものである。
第2実施形態は、図7に示すように、前段工程において、先に第1溶媒抽出工程S2、ついで脱銅工程S1の順で実行するものである。
硫酸コバルトの製造方法の第2実施形態について、図7~図9に基づき説明する。
図7は第2実施形態における全工程を示す図であり、図8は図7に示す各工程S2、S1、S3の詳細をまとめて示したものである。
第2実施形態は、図7に示すように、前段工程において、先に第1溶媒抽出工程S2、ついで脱銅工程S1の順で実行するものである。
(第1溶媒抽出工程S2)
第1溶媒抽出工程S2を図8および図9に基づき説明する。
第1溶媒抽出工程S2は、出発原料である銅、亜鉛、マンガン、カルシウムおよびマグネシウムの1種類以上の不純物を含む塩化コバルト溶液にアルキルリン酸系抽出剤を含む有機溶媒を接触させ、この有機溶媒に亜鉛、マンガンおよびカルシウムを抽出して分離除去する工程である。なお、銅の一部も抽出され分離除去できる。
第1溶媒抽出工程S2を図8および図9に基づき説明する。
第1溶媒抽出工程S2は、出発原料である銅、亜鉛、マンガン、カルシウムおよびマグネシウムの1種類以上の不純物を含む塩化コバルト溶液にアルキルリン酸系抽出剤を含む有機溶媒を接触させ、この有機溶媒に亜鉛、マンガンおよびカルシウムを抽出して分離除去する工程である。なお、銅の一部も抽出され分離除去できる。
有機溶媒としてのアルキルリン酸系抽出剤は第1実施形態で使用のものと同一でよく、希釈剤も第1実施形態と同じものでよい。また、pHの調整範囲を含め、本工程S2の実行は第1実施形態と同じ要領で行われる。
この第1溶媒抽出工程S2において、塩化コバルト溶液のpHを1.5~3.0に調整すると、亜鉛、マンガンおよびカルシウムの抽出率は、コバルトの抽出率より高い傾向を示し、コバルトを水相に残し、これらの不純物元素を有機相に抽出することでコバルトと分離することが可能である。pHが1.5~3.0に調整した場合、コバルトの一部が抽出される場合もあるが、抽出後の有機相を抽出時より低いpHの塩酸溶液と接触させ、コバルトを逆抽出して回収し、コバルトのロスを低減することもできる。
(脱銅工程S1)
脱銅工程S1を図8に基づき説明する。
脱銅工程S1は、第1溶媒抽出工程S2を経た塩化コバルト溶液に硫化剤を添加することにより行う。また、酸化剤および中和剤を添加して、塩化コバルト溶液の酸化還元電位を-100~200mV(Ag/AgCl電極基準)に、かつpHを1.3~3.0に調整する。
本工程S1により、塩化コバルト溶液から銅の硫化物の沈殿を生成させて分離し、銅が除去された塩化コバルト溶液を得ることができる。
脱銅工程S1を図8に基づき説明する。
脱銅工程S1は、第1溶媒抽出工程S2を経た塩化コバルト溶液に硫化剤を添加することにより行う。また、酸化剤および中和剤を添加して、塩化コバルト溶液の酸化還元電位を-100~200mV(Ag/AgCl電極基準)に、かつpHを1.3~3.0に調整する。
本工程S1により、塩化コバルト溶液から銅の硫化物の沈殿を生成させて分離し、銅が除去された塩化コバルト溶液を得ることができる。
酸化還元電位の調整方法やpHの調整方法は第1実施形態と同様でよく、硫化剤も第1実施形態で使用のものを用いればよい。
本工程を実施することで、第1実施形態で示した式(1)、式(2)あるいは式(3)に従って硫化銅の沈殿物を得て、銅を溶液中から除去することができる。
本工程を実施することで、第1実施形態で示した式(1)、式(2)あるいは式(3)に従って硫化銅の沈殿物を得て、銅を溶液中から除去することができる。
(第2溶媒抽出工程S3)
第2溶媒抽出工程S3を図8に基づき説明する。
第2溶媒抽出工程S3は、第1溶媒抽出工程S2および脱銅工程S1を経た塩化コバルト溶液にカルボン酸抽出剤を含む有機溶媒を接触させ、この有機溶媒にコバルトを抽出させた後、硫酸でコバルトを逆抽出して硫酸コバルト溶液を得る工程である。
第2溶媒抽出工程S3を図8に基づき説明する。
第2溶媒抽出工程S3は、第1溶媒抽出工程S2および脱銅工程S1を経た塩化コバルト溶液にカルボン酸抽出剤を含む有機溶媒を接触させ、この有機溶媒にコバルトを抽出させた後、硫酸でコバルトを逆抽出して硫酸コバルト溶液を得る工程である。
有機溶媒としてのカルボン酸系抽出剤には、第1実施形態と同じく、分岐型および/または直鎖型のカルボン酸が抽出剤として用いられる。
第2溶媒抽出工程S3におけるコバルト抽出工程S31でのアルカリ溶液の添加やpHの調整範囲などの実施要領は第1実施形態と同様でよい。
また、コバルト逆抽出工程S33での硫酸溶液との接触とpHの調整範囲などの実施要領も第1実施形態と同様でよい。
以上の工程を実行することで、マグネシウムを水相中に残留させて、不純物を少なくした高純度の硫酸コバルト溶液を得ることができる。
また、コバルト逆抽出工程S33での硫酸溶液との接触とpHの調整範囲などの実施要領も第1実施形態と同様でよい。
以上の工程を実行することで、マグネシウムを水相中に残留させて、不純物を少なくした高純度の硫酸コバルト溶液を得ることができる。
回収工程における溶媒回収工程S5とコバルト回収工程S6は、第1実施形態と同様に図6に示すように実行される。溶媒回収工程S5におけるpHの調整値も、コバルト回収工程S6におけるpHの調整値も、第1実施形態と同様である。
上記の方法で、不純物の少ない高純度な硫酸コバルト溶液を製造することができる。また、コバルトの沈殿物を使用することで、コバルトの系外ロスを少なくすることができる。
以下、本発明の実施例を示してより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例1は第1実施形態の製法に含まれるものである。
(実施例1)
(脱銅工程S1)
pH2.5に調整した表1のAに示す組成からなる塩化コバルト溶液2Lに水硫化ナトリウム溶液を添加して、酸化還元電位を-50mV(Ag/AgCl電極基準)に調整して、銅の硫化物の沈殿を生成させた。濾過器で沈殿物を分離除去し、表1のBに示す組成の濾液を得た。濾液中の銅の濃度は0.001g/L未満であり、銅を分離除去することができた。
(脱銅工程S1)
pH2.5に調整した表1のAに示す組成からなる塩化コバルト溶液2Lに水硫化ナトリウム溶液を添加して、酸化還元電位を-50mV(Ag/AgCl電極基準)に調整して、銅の硫化物の沈殿を生成させた。濾過器で沈殿物を分離除去し、表1のBに示す組成の濾液を得た。濾液中の銅の濃度は0.001g/L未満であり、銅を分離除去することができた。
(第1溶媒抽出工程S2)
アルキルリン酸系抽出剤D2EHPA(大八化学工業株式会社製)の濃度が40体積%となるようにテクリーンN20(JX日鉱日石エネルギー株式会社製)で希釈した有機相を準備した。脱銅工程で得られた塩化コバルト溶液からなる水相0.9Lと有機相1.8Lを混合し、pHが1.7になるように水酸化ナトリウム溶液を添加して調整し、不純物を抽出した。抽出後の水相0.9Lと新たな有機相1.8Lで同様の抽出操作を繰り返し、合計3回の抽出操作を行なった。その結果、表1のCに示す組成の塩化コバルト溶液を得た。亜鉛、マンガン、カルシウムの濃度は、いずれも0.001g/L未満であり、これらの不純物を分離除去することができた。
アルキルリン酸系抽出剤D2EHPA(大八化学工業株式会社製)の濃度が40体積%となるようにテクリーンN20(JX日鉱日石エネルギー株式会社製)で希釈した有機相を準備した。脱銅工程で得られた塩化コバルト溶液からなる水相0.9Lと有機相1.8Lを混合し、pHが1.7になるように水酸化ナトリウム溶液を添加して調整し、不純物を抽出した。抽出後の水相0.9Lと新たな有機相1.8Lで同様の抽出操作を繰り返し、合計3回の抽出操作を行なった。その結果、表1のCに示す組成の塩化コバルト溶液を得た。亜鉛、マンガン、カルシウムの濃度は、いずれも0.001g/L未満であり、これらの不純物を分離除去することができた。
(第2溶媒抽出工程S3)
カルボン酸系抽出剤Versatic Acid 10(オクサリスケミカルズ社製)の濃度が30体積%となるようにテクリーンN20で希釈した有機相を準備した。第1溶媒抽出工程で得られた塩化コバルト溶液からなる水相0.44Lと有機相1Lを混合し、pHが6.5になるようにアルカリ溶液を添加して調整し、コバルトを有機相に抽出した。抽出した有機相0.6Lとコバルト濃度10g/Lの塩化コバルト溶液0.6Lを混合し、抽出後の有機相に混入していた水相を洗浄した。続いて、この有機相と純水0.09Lの純水を混合し、硫酸を添加してpH4に調整し、コバルトを逆抽出した。その結果、表1のDに示す組成の硫酸コバルト溶液を得た。マグネシウム濃度は0.001g/L未満であり、マグネシウムを分離除去することができた。
以上の方法により高純度の硫酸コバルト溶液を得た。
カルボン酸系抽出剤Versatic Acid 10(オクサリスケミカルズ社製)の濃度が30体積%となるようにテクリーンN20で希釈した有機相を準備した。第1溶媒抽出工程で得られた塩化コバルト溶液からなる水相0.44Lと有機相1Lを混合し、pHが6.5になるようにアルカリ溶液を添加して調整し、コバルトを有機相に抽出した。抽出した有機相0.6Lとコバルト濃度10g/Lの塩化コバルト溶液0.6Lを混合し、抽出後の有機相に混入していた水相を洗浄した。続いて、この有機相と純水0.09Lの純水を混合し、硫酸を添加してpH4に調整し、コバルトを逆抽出した。その結果、表1のDに示す組成の硫酸コバルト溶液を得た。マグネシウム濃度は0.001g/L未満であり、マグネシウムを分離除去することができた。
以上の方法により高純度の硫酸コバルト溶液を得た。
(溶媒回収工程S5)
第2溶媒抽出工程S3でコバルトを抽出した後のpH6.5を示した塩化コバルト溶液に硫酸を添加し、pHを2~4に調整した。調整後の塩化コバルト溶液中の全有機体炭素(TOC)濃度を表2に示す。表2に示したように、TOCは調整前の260mg/lからpH2~4の調整で98~106mg/lに減少しており、このことから塩化コバルト溶液に残留したカルボン酸系抽出剤を分離できたことを確認した。
その結果、抽出剤のロスを抑制できたり、抽出後の塩化コバルト溶液を排水処理し、海域等に放流する際の環境負荷を低減することができた。
第2溶媒抽出工程S3でコバルトを抽出した後のpH6.5を示した塩化コバルト溶液に硫酸を添加し、pHを2~4に調整した。調整後の塩化コバルト溶液中の全有機体炭素(TOC)濃度を表2に示す。表2に示したように、TOCは調整前の260mg/lからpH2~4の調整で98~106mg/lに減少しており、このことから塩化コバルト溶液に残留したカルボン酸系抽出剤を分離できたことを確認した。
その結果、抽出剤のロスを抑制できたり、抽出後の塩化コバルト溶液を排水処理し、海域等に放流する際の環境負荷を低減することができた。
(コバルト回収工程S6)
次いで、上記溶媒回収工程S5でカルボン酸系抽出剤を分離した後の塩化コバルト溶液を1サンプルについて100mlを分取し、40℃に保温しながら、150g/lの炭酸ナトリウム水溶液を添加し、pHを表3に示した6.9~7.6に調整した。得られたスラリーを濾過し、濾液中のコバルト濃度を分析した。
表3に、pHとコバルト沈殿率との関係を示すが、pHが7.1以上で90%以上のコバルトを炭酸コバルトとして沈殿させて回収できることが分かった。
次いで、上記溶媒回収工程S5でカルボン酸系抽出剤を分離した後の塩化コバルト溶液を1サンプルについて100mlを分取し、40℃に保温しながら、150g/lの炭酸ナトリウム水溶液を添加し、pHを表3に示した6.9~7.6に調整した。得られたスラリーを濾過し、濾液中のコバルト濃度を分析した。
表3に、pHとコバルト沈殿率との関係を示すが、pHが7.1以上で90%以上のコバルトを炭酸コバルトとして沈殿させて回収できることが分かった。
また、上記と同様の有機溶媒を回収した後の溶液を各サンプルごとに100mlを分取し、40℃に保温しながら、200g/lの水酸化ナトリウム水溶液を添加し、pHを表4に示す6.7~8.8の範囲に調整した。得たスラリーを濾過し、濾液のコバルト濃度を分析した。表4に示すように、pH6.9以上で60%、7.6異常では99%を超えるコバルトを水酸化コバルトとして回収することができた。
上記で回収した炭酸コバルトや水酸化コバルトは中和剤として第1溶媒抽出工程S2や第2溶媒抽出工程S3に付される際の塩化コバルト溶液のpH調整に用いる中和剤として利用することができ、同時にコバルトを系外へのロスを防いで回収することもできた。
本発明により得られた純度の高い硫酸コバルト結晶は、リチウムイオン二次電池の原料として利用できるほか、様々な用途に利用できる。
S1 脱銅工程
S2 第1溶媒抽出工程
S3 第2溶媒抽出工程
S5 溶媒回収工程
S6 コバルト回収工程
S2 第1溶媒抽出工程
S3 第2溶媒抽出工程
S5 溶媒回収工程
S6 コバルト回収工程
Claims (6)
- 銅、亜鉛、マンガン、カルシウムおよびマグネシウムの1種以上の不純物を含む塩化コバルト溶液から前記不純物を除去して硫酸コバルトを得る製造方法であって、
前段工程は、前記塩化コバルト溶液に硫化剤を添加し銅の硫化物の沈殿を生成させて分離除去する脱銅工程と、前記塩化コバルト溶液にアルキルリン酸系抽出剤を含む有機溶媒を接触させ、該有機溶媒に亜鉛、マンガンおよびカルシウムを抽出して分離除去する第1溶媒抽出工程を含んでおり、
後段工程は、前記前段工程を経た塩化コバルト溶液にカルボン酸系抽出剤を含む有機溶媒を接触させ、該有機溶媒にコバルトを抽出させた後、硫酸でコバルトを逆抽出して硫酸コバルト溶液を得る第2溶媒抽出工程からなり、
回収工程として、前記第2溶媒抽出工程により得られた脱不純物後の塩化コバルト溶液と逆抽出後のカルボン酸抽出剤を含む有機溶媒とを接触させて、pHを4.0以下に調整し、脱不純物後の塩化コバルト溶液中に含まれたカルボン酸系抽出剤を分離して回収する溶媒回収工程と、
前記カルボン酸系抽出剤を回収した後の脱不純物後の塩化コバルト溶液に、炭酸化剤および/または中和剤を添加し、コバルトを沈殿回収するコバルト回収工程と、を実行する
ことを特徴とする硫酸コバルト溶液の製造方法。 - 前記前段工程が、前記脱銅工程および前記第1溶媒抽出工程の順に実行される
ことを特徴とする請求項1記載の硫酸コバルトの製造方法。 - 前記前段工程が、前記第1溶媒抽出工程および前記脱銅工程の順に実行される
ことを特徴とする請求項1記載の硫酸コバルトの製造方法。 - 前記コバルト回収工程において、pHを7.0~12.0に調整する
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の硫酸コバルト溶液の製造方法。 - 前記コバルトの沈殿物を、前記第1溶媒抽出工程において添加し、中和剤として使用する
ことを特徴とする請求項4記載の硫酸コバルト溶液の製造方法。 - 前記コバルトの沈殿物を、前記第2溶媒抽出工程におけるコバルト抽出工程に添加し、中和剤として使用する
ことを特徴とする請求項4記載の硫酸コバルト溶液の製造方法。
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