JP2023075717A - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】低い転がり抵抗を維持しつつ、制動性能に優れた空気入りタイヤを提供する。【解決手段】実施形態の一例である空気入りタイヤ1は、主回転方向が指定されたタイヤである。空気入りタイヤ1のトレッド10は、センターブロック30,40と、ショルダーブロック50,60と、メディエイトブロック70,80とを有する。空気入りタイヤ1は、内圧200~260kPa、最大負荷能力の70%の荷重をかけた状態において、トレッド10の幅方向中央領域R1のタイヤ周方向に沿った接地長(L1)に対する、接地端Eから10mm内側におけるタイヤ周方向に沿った接地長(L2)の比率(L2/L1)が、0.75~0.90である。【選択図】図3
Description
本発明は、空気入りタイヤに関し、より詳しくは、タイヤ周方向に沿って複数のブロックが配置されたトレッドを備える空気入りタイヤに関する。
従来、タイヤ周方向に沿って複数のブロックが配置された空気入りタイヤであって、主回転方向が指定された所謂1WAYタイヤが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1のタイヤのトレッドには、タイヤ幅方向に対して傾斜した複数の主溝が形成され、また各ブロックには複数のサイプが形成されている。このようなトレッドパターンを有するタイヤは、例えば、乾燥路面、湿潤路面、及び雪上路面のいずれにおいても良好な制動性能を発揮し、オールシーズンタイヤとして使用される。
ところで、オールシーズンタイヤのようなタイヤは、あらゆる路面状況においても高いグリップ力を発揮し、良好な制動性能を発揮することが求められる。一方、車両の燃費性能等を向上させるためには、タイヤの転がり抵抗を低減することも重要な課題となる。
本発明の目的は、低い転がり抵抗を維持しつつ、制動性能に優れた空気入りタイヤを提供することである。
本発明に係る空気入りタイヤは、トレッドを備え、主回転方向が指定された空気入りタイヤであって、トレッドは、トレッドの幅方向中央領域において、タイヤ周方向に複数形成されたセンターブロックと、トレッドの幅方向両側領域において、タイヤ周方向に複数形成されたショルダーブロックと、センターブロックとショルダーブロックの間において、タイヤ周方向に複数形成されたメディエイトブロックとを有し、内圧200~260kPa、最大負荷能力の70%の荷重をかけた状態において、トレッドの幅方向中央領域のタイヤ周方向に沿った接地長(L1)に対する、トレッドの接地端から10mm内側におけるタイヤ周方向に沿った接地長(L2)の比率(L2/L1)が、0.75~0.90である。
本発明に係る空気入りタイヤは、転がり抵抗が低く、あらゆる路面状況においても優れた制動性能を発揮する。本発明に係る空気入りタイヤは、オールシーズンタイヤに好適である。
以下、図面を参照しながら、本発明に係る空気入りタイヤの実施形態の一例について詳細に説明する。以下で説明する実施形態はあくまでも一例であって、本発明は以下の実施形態に限定されない。また、以下で説明する複数の実施形態及び変形例の各構成要素を選択的に組み合わせることは本発明に含まれている。
図1は、実施形態の一例である空気入りタイヤ1の幅方向及び径方向に沿った断面の一部を示す図である(図面の明瞭化のため、一部のハッチングを省略)。図2は、空気入りタイヤ1の平面図であって、トレッド10の一部を示す図である。図2等では、各ブロックの上面にドットハッチングを付している。ブロックの上面とは、タイヤ径方向外側に向いたブロックの最外周面である。
図1及び図2に示すように、空気入りタイヤ1は、路面に接地する部分であるトレッド10を備える。トレッド10は、複数のブロックを含むトレッドパターンを有し、タイヤ周方向に沿って環状に形成されている。トレッド10は、その幅方向中央領域R1(後述の図3参照)から幅方向両側領域R2に向かって次第にタイヤ主回転方向後方に位置するようにトレッド10の幅方向に対して傾斜した複数の主溝20,21を有する。空気入りタイヤ1は、主回転方向が指定された方向性タイヤである。主溝20,21は、タイヤ周方向に隣り合うブロックの間に形成され、後述するブロック群100,101を区画している。
本明細書において、「タイヤ主回転方向」とは、空気入りタイヤ1が装着される車両が前進するときの回転方向を意味する。また、空気入りタイヤ1及びその構成要素について、説明の便宜上「左右」の用語を使用する。空気入りタイヤ1の「右側」とは、車両に装着された状態の空気入りタイヤ1を車両の前方から見た場合の右側を意味し、「左側」とは車両に装着された状態の空気入りタイヤ1を車両の前方から見た場合の左側を意味する。図面には、タイヤ主回転方向及び左右を示す矢印を図示している。「トレッドの幅方向」と「タイヤ幅方向」は同じ方向であり、以下、両方の用語を適宜使用する。
トレッド10は、タイヤ周方向に延びた複数の周方向溝を有する。複数の周方向溝には、トレッド10の幅方向中央領域R1に形成された第1周方向溝25、及びトレッド10の左右両側(幅方向両側領域R2)にそれぞれ形成された第2周方向溝26,27が含まれる。また、トレッド10には、第1周方向溝25と第2周方向溝26の間に第3周方向溝28が形成され、第1周方向溝25と第2周方向溝27の間に第3周方向溝29が形成されている。
トレッド10は、複数の主溝20,21及び複数の周方向溝により区画された複数のブロックを有する。ブロックは、タイヤ径方向外側に向かって隆起した島状の突出部であり、一般的に陸部とも呼ばれる。トレッド10は、幅方向中央領域R1において、タイヤ周方向に複数形成されたセンターブロック30,40と、幅方向両側領域R2において、タイヤ周方向に複数形成されたショルダーブロック50,60とを有する。また、センターブロック30とショルダーブロック50の間において、タイヤ周方向に複数形成されたメディエイトブロック70と、センターブロック40とショルダーブロック60の間において、タイヤ周方向に複数形成されたメディエイトブロック80とを有する。
本実施形態では、実質的に同じ形状、同じサイズを有する複数のブロックが、タイヤ周方向に並んで配置されている。センターブロック30を例に挙げると、タイヤ周方向に並ぶ各センターブロック30の形状、サイズは実質的に同じである。また、タイヤ周方向に沿ったブロックの各列は、互いに同じ数のブロックで構成されている。トレッド10には、センターブロック30,40、ショルダーブロック50,60、及びメディエイトブロック70,80の各々が同数形成されている。
トレッド10の幅方向中央領域R1には、タイヤ赤道CLを左右から挟むようにセンターブロック30,40が配置されている。タイヤ赤道CLとは、タイヤ幅方向中央を通るタイヤ周方向に沿った線を意味する。センターブロック30,40は、第1周方向溝25により分断され、タイヤ周方向(タイヤ赤道CL)に沿って千鳥状に配置されている。センターブロック30,40の一部は、タイヤ赤道CL上に位置し、タイヤ周方向に重なって配置されている。
トレッド10の幅方向左側部分には、タイヤ赤道CL側から順に、センターブロック30、メディエイトブロック70、及びショルダーブロック50が連なるように配置され、1つのブロック群100を構成している。また、トレッド10の幅方向右側部分には、タイヤ赤道CL側から順に、センターブロック40、メディエイトブロック80、及びショルダーブロック60が連なるように配置され、1つのブロック群101を構成している。ブロック群100を構成する3つのブロックは主溝20が延びる方向に並び、またブロック群101を構成する3つのブロックは主溝21が延びる方向に並んでいる。
空気入りタイヤ1は、タイヤの側面を形成するショルダー11、サイドウォール12、及びビード13を備える。本実施形態では、空気入りタイヤ1の接地端Eをトレッド10とショルダー11の境界位置とし、空気入りタイヤ1の側面上部に形成された環状のサイドリブ14をショルダー11とサイドウォール12の境界位置とする。ビード13は、ビードコア18、及びビードフィラー19を有する。
本明細書において、接地端Eとは、未使用の空気入りタイヤ1を正規リムに装着して内圧200~260kPaとなるように空気を充填した状態で、最大負荷能力の70%の荷重を加えたときに、平坦な路面に接地する部分の幅方向両端を意味する。同様に、空気入りタイヤ1の各ブロックの接地面積は、上記内圧における最大負荷能力の70%の荷重を加えたときに、平坦な路面に接地する部分の面積を意味する。ここで、「正規リム」とは、タイヤ規格により定められたリムであって、JATMAであれば「標準リム」、TRAであれば「Design Rim」、ETRTOであれば「Measuring Rim」である。
タイヤの内圧条件は、一般的に、タイヤの扁平率に応じて変更される。具体例としては、空気入りタイヤ1の扁平率が60以上である場合、スタンダードロード規格では200kPaの内圧に、エクストラロード規格では240kPaの内圧にそれぞれ設定される。扁平率が55以下の場合、スタンダードロード規格では220kPaの内圧に、エクストラロード規格では260kPaの内圧にそれぞれ設定される。
空気入りタイヤ1は、カーカス15と、トレッド10とカーカス15の間に配置されたベルト16と、ベルト16の外周面を覆うようにトレッド10とベルト16の間に配置された補強層2とを備える。カーカス15は、例えば、ゴムで被覆されたコード層であって、2枚のカーカスプライにより構成され、荷重、衝撃、空気圧等に耐えるタイヤ骨格を形成する。カーカス15の内周面には、空気圧を保持するためのゴム層であるインナーライナー17が貼付されている。
ベルト16は、タイヤ周方向に張られた補強帯であって、カーカス15を強く締めつけてトレッド10の剛性を高める。ベルト16は、例えば、ゴムで被覆されたスチールコードにより構成されている。図1に示す例では、カーカス15の外周面を覆うように2枚のベルト16が配置されている。内側のベルト16は、外側のベルト16より幅広であり、少なくとも内側のベルト16の幅方向両端は、接地端Eよりもタイヤ幅方向外側に位置している。
ベルト16は、例えば、トレッド10の接地面の全域とタイヤ径方向に重なるように配置されている。そして、2枚のベルト16のうち、少なくとも幅広の内側ベルトは、接地端Eを超える位置までタイヤ幅方向に延びている。ベルト16の幅方向両端は、左右のショルダー11の範囲に位置している。詳しくは後述するが、ショルダーブロック50には、接地面に向かって溝幅が広がるように傾斜した斜面52を含むサイプ51が形成されている(ショルダーブロック60についても同様)。斜面52は、ショルダーブロック50の接地圧を分散させ、制動性能の向上及び転がり抵抗の低減に大きく寄与する。
補強層2は、ベルト16の全体を覆うように配置され、ベルト16を締めつける補強層として機能する。補強層2は、例えば、ゴムで被覆された有機繊維層(コード層)であって、ベルト16の外周面に対して、有機繊維コードをタイヤ周方向に巻回することで形成される。有機繊維コードの一例としては、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維等が挙げられる。補強層2は、ベルト16よりも幅広であり、ベルト16の幅方向両端を超える位置までタイヤ幅方向外側に延びている。
補強層2は、第1領域2aと、第1領域2aよりも厚みが大きい第2領域2bとを有する。第2領域2bの好適な厚みの一例は、第1領域2aの厚みの1.5~3.0倍、又は1.6~2.4倍である。第2領域2bは、例えば、有機繊維コードを二重に巻回する等、第1領域2aを形成する場合よりも有機繊維コードの積層数を増やすことにより形成できる。第2領域2bは、補強層2の幅方向両端から所定の幅で形成されることが好ましい。各第2領域2bの幅の一例は、補強層2の全幅の10~20%である。
補強層2は、例えば、単層の有機繊維コード層である第1領域2aが、有機繊維コードが二重に巻回されてなる第2領域2bにより幅方向両側から挟まれた構造を有する。本実施形態では、2枚のベルト16の幅方向両端と重なる位置に、第2領域2bが配置されている。第2領域2bはタイヤ周方向に沿ってベルト16の端部を覆い、第2領域2bの幅方向両端は、左右のショルダー11の範囲において、ベルト16の幅方向両端よりもサイドリブ14側に位置している。
補強層2の第2領域2bは、ショルダーブロック50,60の接地面とタイヤ径方向に重なる範囲に配置されている。これにより、トレッド10の幅方向両側領域R2の拡張を抑えることができ、ショルダーブロック50,60における接地圧を低下させることが可能になる。空気入りタイヤ1によれは、補強層2の第2領域2bと、サイプ51,61の斜面52,62との相乗作用により、ショルダーブロック50,60の接地圧を効果的に分散させることができる。
第2領域2bは、ショルダーブロック50,60の接地面の50%以上の範囲とタイヤ径方向に重なっていることが好ましい。この場合、上記接地圧の低減効果がより顕著になる。第2領域2bは、ショルダーブロック50,60の接地面の範囲を超えてタイヤ赤道CL側に延びていてもよいが、タイヤ赤道CL側に広く配置されても接地圧の低減効果は高くならない。このため、タイヤの軽量化等の観点から、第2領域2bの幅方向内側端は、第2周方向溝26,27よりも接地端E側に位置することが好ましい。
第2領域2bは、ショルダーブロック50,60の接地面の50~100%の範囲とタイヤ径方向に重なっており、より好ましくは50~70%の範囲とタイヤ径方向に重なっている。そして、第2領域2bは、少なくともショルダーブロック50,60の接地端Eとタイヤ径方向に重なっていることが好ましい。この場合、上記接地圧の低減効果がより顕著になる。本実施形態において、第2領域2bは、接地端Eよりもタイヤ赤道CL側から接地端Eを大きく超えて、接地端Eとサイドリブ14の中間位置付近まで配置されている。
トレッド10は、上述のように、ブロック群100,101を区画する主溝20,21を有する。主溝20は、タイヤ周方向に略等間隔で、かつ互いに平行に形成されている。主溝21についても同様に、タイヤ周方向に等間隔で、かつ互いに平行に形成されている。そして、主溝20,21は、タイヤ周方向に千鳥状に配置されている。トレッド10は、幅方向左側部分において主溝20とブロック群100がタイヤ周方向に交互に配置され、幅方向右側部分において主溝21とブロック群101がタイヤ周方向に交互に配置されたトレッドパターンを有する。
主溝20及びブロック群100は、タイヤ主回転方向後方に向かって凸となるように湾曲した平面視形状を有する。主溝21及びブロック群101についても同様に、タイヤ主回転方向後方に向かって凸となるように湾曲した平面視形状を有する。主溝20,21及びブロック群100,101は、タイヤ周方向の同じ方向に傾斜しており、その傾斜角度は接地端E側よりもタイヤ赤道CL側で大きくなっている。タイヤ幅方向に対する主溝20,21の傾斜角度は、タイヤ赤道CL側において、例えば30~60°、又は40~50°である。
主溝20は、タイヤ赤道CL側から接地端Eに向かって次第にタイヤ幅方向に沿うようになり、タイヤ幅方向に対する傾斜が緩やかになっている。主溝20の幅は、例えば、タイヤ赤道CL側よりも接地端E側で大きくなり、第2周方向溝26との交点又はその近傍において最大となる。空気入りタイヤ1には、夏用タイヤに比べて幅広の主溝20が形成され、タイヤ周方向に沿った主溝20と各ブロックの接地面の長さの比率が、例えば3:7~4:6となっている。なお、主溝21は、主溝20と同様に構成されている。
空気入りタイヤ1では、ブロック群100,101のタイヤ赤道CL側が接地端E側よりも先に接地するようにタイヤが回転したときに、トレッド10のタイヤ赤道CL側から接地端E側に向かって水や雪氷を効率良く排出できる。この場合、良好なウェット性能、スノー性能が得られる。空気入りタイヤ1は、ブロック群100,101のタイヤ赤道CL側が先に接地する方向が主回転方向となるように車両に装着される。
空気入りタイヤ1には、車両に対する装着方向を示すための表示が設けられていることが好ましい。サイドウォール12には、一般的に、セリアルと呼ばれる記号が設けられている。セリアルには、例えばサイズコード、製造時期(製造年週)、製造場所(製造工場コード)などの情報が含まれている。車両の外側を向くサイドウォール12のみにセリアルを設ける、或いは左右のサイドウォール12で異なるセリアルを設けることにより、車両に対する空気入りタイヤ1の装着方向が特定される。具体例としては、第1のサイドウォール12に製造工場コード及びサイズコードを設け、第2のサイドウォール12のみに製造年週を設けることが挙げられる。
トレッドパターンは、タイヤ赤道CLを通るタイヤの回転軸に垂直な面(以下、「タイヤ赤道面」という)に対して、例えば、ブロック群100,101をタイヤ周方向に半ピッチずらして左右対称に配置したパターンである。ブロック群100の形状は、ブロック群101をタイヤ赤道面に対して反転させた場合の形状と同じである(主溝20,21についても同様)。反転させたブロック群101をタイヤ周方向にスライドさせれば、ブロック群100と一致する。トレッド10のトレッドパターンは、左右のバランスが良く、操縦安定性の改善において有効である。
トレッド10は、上述のように、タイヤ周方向に並ぶブロックの列を区画する複数の周方向溝を有する。周方向溝は、主溝20,21よりも幅が狭い溝であって、主溝20又は主溝21と交差し、タイヤ周方向に並ぶブロックの列を区画している。センターブロック30,40の列を分断する第1周方向溝25は、主溝20,21との交点で、互いに反対方向に屈曲し、タイヤ赤道CLと交差しながらタイヤ周方向に延びてジグザグ状に形成されている。
第2周方向溝26,27は、主溝20,21との交点で曲がらず、タイヤ周方向に沿って直線状に形成されている。最も接地端Eに近い第2周方向溝26,27を直線状に形成することで、良好な排水性能が得られる。第3周方向溝28,29は、センターブロックとメディエイトブロックを分断する溝であって、主溝20,21よりも浅く形成されている。第3周方向溝28,29は、タイヤ主回転方向前方側から後方側に向かって次第にタイヤ赤道CLに近づくようにタイヤ周方向に対して傾斜している。
各ブロックには、細線状のサイプが形成されている。本実施形態では、全てのブロックに1本ずつサイプが形成され、各サイプは主溝20又は主溝21に沿った方向に延びている。サイプは、主溝20,21及び周方向溝よりも幅が狭い細線状の溝であって、雪や氷をひっかくエッジ効果を高め、雪氷路面での良好な制駆動性、操縦安定性を実現する。サイプの幅は、後述の斜面が存在しない部分において、例えば、第3周方向溝28,29の幅の30%以下、又は20%以下である。本明細書では、斜面を含まない部分における溝幅が、1.0mm以下の溝をサイプと定義する。
図3は、トレッド10の接地面の形状を模式的に示す図である。図3に示すように、トレッド10の接地面は、接地長(L1)と接地長(L2)の差が小さく、平面視四角形に近い形状を有する。ここで、接地長(L1)とは、センターブロック30,40が形成された幅方向中央領域R1のタイヤ周方向に沿った接地面の長さを意味する。接地長(L2)は、トレッド10の接地端Eから10mm内側(タイヤ赤道CL側)におけるタイヤ周方向に沿った接地面の長さである。
空気入りタイヤ1は、内圧200~260kPa、最大負荷能力の70%の荷重をかけた状態において、接地長(L1)に対する接地長(L2)の比率(L2/L1)が、0.75~0.90となっている。接地長の比率(L2/L1)が当該範囲内であれば、接地面積が大きくなってグリップ力が向上し、乾燥路面、湿潤路面、雪氷路面など、様々な路面状況において優れた制動性能が得られる。接地長の比率(L2/L1)は、例えば、トレッド10の幅方向中央領域R1と幅方向両側領域R2の接地面の高さの差を小さくして、ショルダー11を角ばらせることで大きくすることができる。
タイヤの扁平率に応じて内圧を変更すると、最適な接地長の比率(L2/L1)は多少変化するが、本実施形態のトレッドパターンを有する場合、比率(L2/L1)が0.75~0.90に設定されていれば、優れた制動性能が発揮される。本実施形態において、接地長(L1)は、センターブロック30,40が形成された部分において略一定である。また、接地長(L2)は、トレッド10の左右において実質的に同じ長さである。
接地長の比率(L2/L1)は、0.77以上がより好ましく、0.78以上が特に好ましい。空気入りタイヤ1の内圧が260kPaである場合、比率(L2/L1)の好適な範囲の一例は、0.80~0.90、又は0.82~0.88である。接地長の比率(L2/L1)を大きくすると、一般的には、スノー性能が低下すると考えられているが、本実施形態のトレッドパターンを有する場合、比率(L2/L1)を大きくしても雪氷路面において良好な制動性能が発揮される。トレッドゴムの硬度は、例えば、55~70、又は60~65に調整される。従来の一般的なオールシーズンタイヤと比べて、トレッドゴムの硬度を若干下げることにより、良好なスノー性能を確保することが容易になる。
本実施形態のトレッドパターンを有し、以下の条件における接地長の比率(L2/L1)が0.85であるタイヤAの制動性能を表1に示す。
内圧:260kPa
荷重:470kgf(最大負荷能力の70%)
制動性能は、テストタイヤを装着した実車(2名乗車)で湿潤路面、乾燥路面、及び雪氷路面をそれぞれ走行し、所定速度(湿潤、乾燥路面では100km/h、雪氷路面では50km/h)でブレーキをかけてABSを作動させたときの制動距離を測定して、その逆数を算出することにより求めた。タイヤAの値は、タイヤBの値を空気入りタイヤ1としたときの相対値であり、数値が大きいほど制動性能が優れることを示す。タイヤBは、タイヤAと同様の主溝及び周方向溝を含み、タイヤAと類似したトレッドパターンを有するタイヤであって、接地長の比率(L2/L1)を0.70としたものである。
内圧:260kPa
荷重:470kgf(最大負荷能力の70%)
制動性能は、テストタイヤを装着した実車(2名乗車)で湿潤路面、乾燥路面、及び雪氷路面をそれぞれ走行し、所定速度(湿潤、乾燥路面では100km/h、雪氷路面では50km/h)でブレーキをかけてABSを作動させたときの制動距離を測定して、その逆数を算出することにより求めた。タイヤAの値は、タイヤBの値を空気入りタイヤ1としたときの相対値であり、数値が大きいほど制動性能が優れることを示す。タイヤBは、タイヤAと同様の主溝及び周方向溝を含み、タイヤAと類似したトレッドパターンを有するタイヤであって、接地長の比率(L2/L1)を0.70としたものである。
以下、図2に加えて、図4~図6を適宜参照しながら、本実施形態のトレッドパターンを構成する各ブロックについて、ブロック群100を構成する3つのブロックを例に挙げて詳説する。図4及び図6は、トレッド10の幅方向左側部分を拡大して示す図である。図5は、ショルダーブロック50のタイヤ周方向断面図である。
[センターブロック]
図2に示すように、センターブロック30,40は、トレッド10のタイヤ幅方向中央領域R1に形成された島状の隆起部である。センターブロック30,40は、主溝20,21が延びる方向に長くなった平面視略長方形状を有し、各ブロックの長手方向はタイヤ幅方向に対して傾斜している。また、センターブロック30,40には、主溝20,21が延びる方向に沿って、即ち各ブロックの長手方向に沿って、1本のサイプ31,41がそれぞれ形成されている。
図2に示すように、センターブロック30,40は、トレッド10のタイヤ幅方向中央領域R1に形成された島状の隆起部である。センターブロック30,40は、主溝20,21が延びる方向に長くなった平面視略長方形状を有し、各ブロックの長手方向はタイヤ幅方向に対して傾斜している。また、センターブロック30,40には、主溝20,21が延びる方向に沿って、即ち各ブロックの長手方向に沿って、1本のサイプ31,41がそれぞれ形成されている。
センターブロック30,40は、タイヤ赤道CLを左右から挟むように配置されているが、左側のセンターブロック30の一部はタイヤ赤道CLを超えて右側に張り出し、右側のセンターブロック40の一部はタイヤ赤道CLを超えて左側に張り出している。なお、センターブロック30,40の各側壁は、その全体がブロック接地面に対して垂直に形成されておらず、特に溝底に近い側壁下部がブロックの外側に広がるように湾曲している(他のブロックの側壁についても同様)。
センターブロック30の接地面積(A1)は、ブロック群100を構成する3つのブロックにおいて最も小さくなっている。本明細書において、ブロックの接地面積とは、上記条件下において路面と接する部分の面積を意味し、サイプが形成された部分の面積も含むものとする。
サイプ31は、センターブロック30の接地面を二等分するように短手方向中央部において、接地面の長手方向全長にわたって形成されている。サイプ31は、接地面から第3周方向溝28の溝底まで、又は溝底より深く形成され、第3周方向溝28につながっている。他方、サイプ31は第1周方向溝25につながっていない。この場合、乾燥路面における良好な制動性能を確保しつつ、サイプ31のエッジ効果、排水効果により、雪氷路面における制動性能を向上させることができる。
サイプ31の溝壁は、当該サイプの開口から所定の深さ範囲に、開口に向かって溝幅が拡大するように傾斜した斜面32を有する。サイプの開口とは、特に断らない限り、トレッド10の接地面に沿ったトレッドプロファイル面α(図5参照)における開口を意味する。所定の深さ(斜面32の深さ)は、例えば2.0mm以下であり、好ましくは0.8~1.2mmである。斜面32の深さは、サイプ31の深さの10~30%であってもよい。斜面32は、センターブロック30の剛性を確保しつつ、雪上路面におけるトラクション性能を高め、また排水性を向上させる。
斜面32は、サイプ31の長さ方向に沿った溝壁に形成されている。プロファイル面に対する斜面32の傾斜角度は、例えば20~50°であり、好ましくは20~35°、又は25~35°である。傾斜角度が当該範囲内であれば、斜面32の機能がより効果的に発揮される。また、急制動、急加速時に、斜面32が路面に接地してブロックの倒れ込みが抑制される。斜面32の最大幅は、例えば、1.5~2.5mmである。斜面32の最大幅は、斜面32が存在しない部分のサイプ31の幅の1.3~3.5倍、又は1.5倍~3倍であってもよい。
斜面32は、サイプ31のタイヤ主回転方向後方側に位置する第2の溝壁(蹴り出し側の溝壁)のみに形成されている。タイヤ主回転方向前方側に位置する第1の溝壁(踏み込み側の溝壁)に斜面を形成してもよいが、好ましくは第2の溝壁のみに斜面が形成される。この場合、斜面32の効果と、ブロックの剛性低下の抑制をより高度に両立できる。また、斜面32を第2の溝壁に形成した場合、急制動、急加速時に、斜面32が路面に接地し、ブロックの倒れ込みを抑制し易い。斜面32が形成された第2の溝壁に対向するサイプ31の第1の溝壁は、接地面に対して略垂直に形成されている。
斜面32は、第3周方向溝28側のサイプ端から所定の長さ範囲に形成されている。所定の長さは、タイヤ赤道CL側のサイプ端に至らない長さであることが好ましい。詳しくは後述するが、斜面32は、センターブロック30の接地面の長手方向長さに対して、例えば、30~50%の長さで形成される。斜面32の長さを適切な範囲に制御し、また他のブロックの斜面の長さとの関係を的確に制御することにより、空気入りタイヤ1のウェット性能、スノー性能、及びドライ性能がより効果的に改善される。
斜面32には、面の平面視形状が互いに異なる2つの領域(第1領域32a及び第2領域32b)が含まれている(図4参照)。第1領域32aは、サイプ31の長さ方向と略平行な平面視略長方形状の面であって、斜面32の全長の40%~60%の長さで形成されている。第2領域32bは、平面視略三角形状の面であって、第1領域32aから離れるほど面積が小さくなっている。第2領域32bを設けることにより、斜面32の端部に形成される段差を緩やかにでき、斜面32の端部への応力集中を抑制できる。
センターブロック40には、センターブロック30の場合と同様に、主溝21が延びる方向に沿って1本のサイプ41が形成されている。サイプ41の溝壁のうち、タイヤ主回転方向後方側に位置する第2の溝壁には、当該サイプの開口から所定の深さ範囲に、開口に向かって溝幅が拡大するように傾斜した斜面42が形成されている。本実施形態では、センターブロック40の形状が、センターブロック30をタイヤ赤道面に対して反転させた場合の形状と同じであり、反転させたセンターブロック30をタイヤ周方向にスライドさせれば、センターブロック40と一致する。
[ショルダーブロック]
図2及び図4に示すように、ショルダーブロック50,60は、トレッド10のタイヤ幅方向両側領域R2に形成された島状の隆起部であって、一部が接地端Eを超えてサイドウォール12側に延びている。ショルダーブロック50,60は、接地端Eからサイドリブ14にかけて上面が大きく湾曲している。ショルダーブロック50,60は、センターブロック30,40と同様に、主溝20,21が延びる方向に長くなった平面視略長方形状を有し、各ブロックの長手方向はタイヤ幅方向に対して小さく傾斜している。また、ショルダーブロック50,60には、主溝20,21が延びる方向に沿って、1本のサイプ51,61がそれぞれ形成されている。
図2及び図4に示すように、ショルダーブロック50,60は、トレッド10のタイヤ幅方向両側領域R2に形成された島状の隆起部であって、一部が接地端Eを超えてサイドウォール12側に延びている。ショルダーブロック50,60は、接地端Eからサイドリブ14にかけて上面が大きく湾曲している。ショルダーブロック50,60は、センターブロック30,40と同様に、主溝20,21が延びる方向に長くなった平面視略長方形状を有し、各ブロックの長手方向はタイヤ幅方向に対して小さく傾斜している。また、ショルダーブロック50,60には、主溝20,21が延びる方向に沿って、1本のサイプ51,61がそれぞれ形成されている。
ショルダーブロック50は、センターブロック30及びメディエイトブロック70よりも大きなブロックであって、タイヤ幅方向に沿った長さは、3つのブロックで最も長くなっている。本実施形態では、ショルダーブロック60の形状が、ショルダーブロック50をタイヤ赤道面に対して反転させた場合の形状と同じであり、反転させたショルダーブロック50をタイヤ周方向にスライドさせれば、ショルダーブロック60と一致する。
サイプ51は、ショルダーブロック50の短手方向中央部において、第2周方向溝26からブロックの長手方向に沿って、接地端Eを超え、かつサイドリブ14に至らない長さで形成されている。また、サイプ51は、第2周方向溝26を挟んでメディエイトブロック70のサイプ71と対向配置されている。
サイプ51の溝壁は、当該サイプの開口から所定の深さ範囲に、開口に向かって溝幅が拡大するように傾斜した斜面52を有する。斜面52は、ショルダーブロック50の剛性を確保しつつ、接地圧が集中し易いショルダーブロック50の接地圧を分散させて路面に対する摩擦力を向上させる。このため、斜面52は制動性能の向上に大きく寄与する。なお、ショルダーブロック60のサイプ61にも、斜面52と同様の斜面62が形成されている。
図5に示すように、斜面52の深さD2は、例えば2.0mm以下であり、好ましくは0.8~1.2mmである。斜面52の深さD2は、サイプ51の最大深さD1の5~30%であってもよい。斜面52の深さD1が当該範囲内にあれば、ブロック剛性を確保しつつ、接地圧を効果的に分散できる。本実施形態では、斜面52がセンターブロック30の斜面32よりも浅く形成されている。斜面52の深さD1は、例えば、斜面32の深さの60%~90%、又は65%~85%である。本実施形態では、やや浅い斜面52を長く形成した構成を採用することで、ブロック剛性の確保と接地圧の分散効果をより高度に両立している。
プロファイル面αに対する斜面52の傾斜角度θは、例えば20~50°であり、好ましくは20~35°、又は25~35°である。傾斜角度θが当該範囲内であれば、斜面52の機能がより効果的に発揮される。斜面52の傾斜角度θは、斜面32の傾斜角度と実質的に同一であってもよい。斜面52の最大幅W2は、例えば、1.5~2.5mmであり、斜面52が存在しない部分のサイプ51の幅W1の1.3~3.5倍、好ましくは1.5~3倍、又は1.5~2.5倍である。斜面52の幅W2は、例えば、斜面32の幅の60%~90%、又は65%~85%である。
斜面52は、サイプ51のタイヤ主回転方向後方側に位置する第2の溝壁のみに形成されている。タイヤ主回転方向前方側に位置する第1の溝壁に斜面を形成してもよいが、好ましくは第2の溝壁のみに斜面が形成される。この場合、斜面32の効果と、ブロックの剛性低下の抑制をより高度に両立できる。また、斜面52を第2の溝壁に形成した場合、急制動、急加速時に、斜面52が路面に接地し、ブロックの倒れ込みを抑制し易い。なお、サイプ51の第1の溝壁は、接地面に対して略垂直に形成されている。
斜面52は、第2周方向溝26から、接地端Eを少し超える位置にわたって形成されている。斜面52をショルダーブロック50の接地面の全長にわたって形成することで、接地圧の分散による制動性能の改善効果を高めることができる。また、斜面52の端を接地端Eより外側に配置することで、斜面52の端部への応力の集中を抑制することができ、ブロックの耐久性が向上する。なお、ブロック剛性の低下を抑制するため、斜面52の端は接地端Eの近傍に位置させることが好ましい。斜面52は、ブロック上面の長手方向長さに対して、例えば30~60%の長さで形成されている。
斜面52は、第2周方向溝26と隣接する部分に形成され、第2周方向溝26を挟んでメディエイトブロック70の斜面72と対向している。この場合、サイプ51,71から第2周方向溝26に効率良く排水でき、タイヤと路面の間の水膜を効果的に除去できる。また、雪を噛み込むスノーポケットを効率良く拡大でき、雪柱せん断力が向上する。
[メディエイトブロック]
図2及び図4に示すように、メディエイトブロック70は、センターブロック30とショルダーブロック50の間に設けられた島状の隆起部である。メディエイトブロック80は、センターブロック40とショルダーブロック60の間に設けられた島状の隆起部である。メディエイトブロック70,80は、センターブロック30,40及びショルダーブロック50,60と同様に、主溝20,21が延びる方向に長くなった平面視略長方形状を有する。タイヤ幅方向に対するメディエイトブロック70,80の傾斜角度は、センターブロック30,40の傾斜角度と同じか、又はやや緩やかである。また、メディエイトブロック70,80には、主溝20,21が延びる方向に沿って、1本のサイプ71,81がそれぞれ形成されている。
図2及び図4に示すように、メディエイトブロック70は、センターブロック30とショルダーブロック50の間に設けられた島状の隆起部である。メディエイトブロック80は、センターブロック40とショルダーブロック60の間に設けられた島状の隆起部である。メディエイトブロック70,80は、センターブロック30,40及びショルダーブロック50,60と同様に、主溝20,21が延びる方向に長くなった平面視略長方形状を有する。タイヤ幅方向に対するメディエイトブロック70,80の傾斜角度は、センターブロック30,40の傾斜角度と同じか、又はやや緩やかである。また、メディエイトブロック70,80には、主溝20,21が延びる方向に沿って、1本のサイプ71,81がそれぞれ形成されている。
メディエイトブロック70は、センターブロック30より大きく、ショルダーブロック50より小さなブロックである。一方、メディエイトブロック70の接地面積(A3)は、ブロック群100を構成する3つのブロックの接地面積で最大であってもよい。メディエイトブロック80についても同様に、その接地面積はブロック群101を構成する3つのブロックの接地面積で最大であってもよい。本実施形態では、メディエイトブロック80の形状が、メディエイトブロック70をタイヤ赤道面に対して反転させた場合の形状と同じであり、反転させたメディエイトブロック70をタイヤ周方向にスライドさせれば、メディエイトブロック70と一致する。
サイプ71は、メディエイトブロック70を二等分するように短手方向中央部において、ブロックの長手方向全長にわたって形成されている。サイプ71は、第3周方向溝28につながり、第3周方向溝28を挟んでセンターブロック30のサイプ31と対向配置されている。また、サイプ71は、第2周方向溝26につながり、第2周方向溝26を挟んでショルダーブロック50のサイプ51と対向配置されている。
サイプ71の溝壁は、当該サイプの開口から所定の深さ範囲に、開口に向かって溝幅が拡大するように傾斜した斜面72を有する。斜面72は、他のブロックの斜面と同様の機能を有し、ブロックの剛性を確保しつつ、接地圧の分散し、排水性を向上させ、スノーポケットを拡大する。なお、メディエイトブロック80のサイプ81にも、斜面72と同様の斜面82が形成されている。
斜面72は、他のブロックの斜面と同様に、サイプ71のタイヤ主回転方向後方側に位置する第2の溝壁のみに形成されている。サイプ71の第2の溝壁に対向する第1の溝壁は、接地面に対して略垂直に形成されている。プロファイル面αに対する斜面72の傾斜角度は、例えば20~50°であり、好ましくは20~35°、又は25~35°である。斜面72の傾斜角度、幅、及び深さは、例えば、センターブロック30の斜面32の傾斜角度、幅、及び深さと実質的に同一である。
斜面72は、第2周方向溝26から所定の長さ範囲に形成されている。所定の長さは、第3周方向溝28側のサイプ端に至らない長さであることが好ましい。また、斜面72には、面の平面視形状が互いに異なる2つの領域(第1領域72a及び第2領域72b)が含まれている。第1領域72aは、サイプ71の長さ方向と略平行な平面視略長方形状の面であって、斜面72の全長の50%を超える長さ、好ましくは70%~90%の長さで形成されている。第2領域72bは、平面視略三角形状の面であって、第1領域72aから離れるほど面積が小さくなっている。第2領域72bを設けることにより、斜面72の端部に形成される段差を緩やかにでき、斜面72の端部への応力集中を抑制できる。
[ブロック群]
ブロック群100には、ショルダーブロック50及びメディエイトブロック70の下部同士を連結する隆起部90が形成されている。隆起部90を設けることにより、連結された2つのブロックの剛性を高くすることができ、ドライ性能が向上する。隆起部90は、第2周方向溝26の溝内において、ショルダーブロック50とメディエイトブロック70に挟まれた範囲内のみに形成されている。また、ブロック群100には、センターブロック30とメディエイトブロック70を分断する第3周方向溝28が形成されているが、その深さは主溝20よりも浅くなっている。
ブロック群100には、ショルダーブロック50及びメディエイトブロック70の下部同士を連結する隆起部90が形成されている。隆起部90を設けることにより、連結された2つのブロックの剛性を高くすることができ、ドライ性能が向上する。隆起部90は、第2周方向溝26の溝内において、ショルダーブロック50とメディエイトブロック70に挟まれた範囲内のみに形成されている。また、ブロック群100には、センターブロック30とメディエイトブロック70を分断する第3周方向溝28が形成されているが、その深さは主溝20よりも浅くなっている。
ブロック群100,101を分断する第1周方向溝25の少なくとも一部は、第3周方向溝28と同様に、主溝20より浅く形成されている。即ち、ブロック群100,101は、隣り合うブロックの下部同士が隆起部を介して連結され、左右のサイドリブ14にわたって形成されている。また、センターブロック30はタイヤ周方向に隣り合う2つのセンターブロック40と連結され、センターブロック30,40の下部同士はタイヤ周方向につながっている。このため、空気入りタイヤ1では、タイヤ幅方向中央部のセンターブロック30,40、及びタイヤ幅方向両側のサイドリブ14がフレームのように機能し、全体として高い剛性が確保される。
図6に示すように、ブロック群100を構成する3つのブロックにおいて、ショルダーブロック50が最も大きいが、接地面積については、メディエイトブロック70の接地面積(A3)がショルダーブロック50の接地面積(A2)以上となっている。メディエイトブロック70の接地面積(A3)をショルダーブロック50の接地面積(A2)以上とすることにより、定常走行時のハンドリング性能が向上する。接地面積(A3)は、例えば、接地面積(A2)より大きく、かつ接地面積(A2)の1.3倍以下、又は1.2倍以下であることが好ましい。センターブロック30の接地面積(A1)は、接地面積(A2)より小さいことが好ましい。
ブロック群100を構成する3つのブロックの接地面積は、A1<A2≦A3の条件を満たし、より好ましくはA1<A2<A3である。この場合、良好な制動性能と定常走行時のハンドリング性能を両立することが容易になる。なお、本実施形態では、ブロック群101を構成する各ブロックについても、ブロック群100の場合と同じ接地面積の条件を満たす。
ブロック群100を構成する3つのブロックの接地面積の合計を100%とした場合、各ブロックの好適な接地面積の一例は、下記の通りである。
接地面積(A1):25%~32%、好ましくは27%~32%
接地面積(A2):33%~38%、好ましくは33%~36%
接地面積(A3):34%~42%、好ましくは35%~40%
A1<A2≦A3、好ましくはA1<A2<A3の条件を満たし、かつ接地面積(A1~A3)の比率が当該範囲内であれば、制動性能と定常走行時のハンドリング性能をより高度に両立できる。
接地面積(A1):25%~32%、好ましくは27%~32%
接地面積(A2):33%~38%、好ましくは33%~36%
接地面積(A3):34%~42%、好ましくは35%~40%
A1<A2≦A3、好ましくはA1<A2<A3の条件を満たし、かつ接地面積(A1~A3)の比率が当該範囲内であれば、制動性能と定常走行時のハンドリング性能をより高度に両立できる。
各斜面の長さについて、センターブロック30の上面の長手方向長さL30に対する斜面32のサイプ31に沿った長さL32の比率(L32/L30)、ショルダーブロック50の上面の長手方向長さL50に対する斜面52のサイプ51に沿った長さL52の比率(L52/L50)、及びメディエイトブロック70の上面の長手方向長さL70に対する斜面72のサイプ71に沿った長さL72の比率(L72/L70)を、それぞれX1、X2、X3としたとき、比率(X2)は、比率(X1)及び比率(X3)より大きいことが好ましい。つまり、ブロック群100を構成する3つのブロックにおいて、ショルダーブロック50の比率(X2)が最大となる。
本実施形態では、センターブロック30の比率(X1)が2番目に大きく、メディエイトブロック70の比率(X3)が最小となっている。つまり、空気入りタイヤ1は、X3<X1<X2の条件を満たす。この場合、湿潤路面、雪上路面、乾燥路面など、様々な路面状態において制動性能が向上し、ウェット性能、スノー性能、及びドライ性能が効果的に改善される。一方、斜面の幅及び深さについては、センターブロック30の斜面32及びメディエイトブロック70の斜面72よりも、ショルダーブロック50の斜面52で最小となっている。
ここで、ブロック上面の長手方向長さとは、ブロック上面に沿ったブロックの長手方向長さを意味する。本実施形態では、ブロック上面のタイヤ幅方向内側の端から、タイヤ幅方向外側の端までのブロック上面に沿った長さである。図6では、図面の明瞭化のため、タイヤ幅方向に沿った矢印によりブロック上面の長手方向長さを図示しているが、ブロックはタイヤ幅方向に対して傾斜しているし、特にショルダーブロック50の上面は大きく湾曲しているため、ショルダーブロック50における長さL50は図示する長さよりも長くなっている。斜面のサイプに沿った長さについても同様に、図7に示しているが、サイプはタイヤ幅方向に対して傾斜しているため、図示する長さよりも長くなっている。
ブロック群100を構成する各ブロックの上面に沿ったブロック上面の長手方向長さに対する斜面のサイプに沿った長さの好適な比率の一例は、下記の通りである。
比率(X1):30%~50%、好ましくは35%~45%
比率(X2):30%~60%、好ましくは45%~55%
比率(X3):20%~40%、好ましくは25%~30%
X3<X1<X2の条件を満たし、かつ比率(X1~X3)が当該範囲内であれば、ウェット性能、スノー性能、及びドライ性能をより効果的に向上させることができる。
比率(X1):30%~50%、好ましくは35%~45%
比率(X2):30%~60%、好ましくは45%~55%
比率(X3):20%~40%、好ましくは25%~30%
X3<X1<X2の条件を満たし、かつ比率(X1~X3)が当該範囲内であれば、ウェット性能、スノー性能、及びドライ性能をより効果的に向上させることができる。
斜面52の長さL52は、斜面32の長さL32、及び斜面72の長さL72よりも長いことが好ましい。また、斜面32の長さL32は、斜面72の長さL72よりも長いことが好ましい。つまり、空気入りタイヤ1は、L72<L32<L52の条件を満たす。斜面52の長さL52は、例えば、斜面32の長さL32の2倍~4倍、又は2.5倍~3.5倍である(ブロック接地面における斜面52の長さについても同様)。サイプ51及び斜面52は、上述の通り、ショルダーブロック50の接地面の全長にわたって形成されている。
以上のように、上記構成を備えた空気入りタイヤ1によれば、あらゆる路面状況においても優れた制動性能を発揮できる。接地長の比率(L2/L1)を0.75~0.90に設定することにより、接地面積を大きくしてグリップ力を向上させることができ、低い転がり抵抗を維持しつつ、優れた制動性能を発揮することが可能である。
空気入りタイヤ1は、上述のように、オールシーズンタイヤに好適である。オールシーズンタイヤは、一般的に、ウェット性能とドライ性能が重視されるが、空気入りタイヤ1は、ウェット性能、ドライ性能に加え、スノー性能にも優れる。本実施形態では、接地長の比率(L2/L1)に加えて、サイプ斜面の配置、寸法、各ブロックの接地面積等をバランス良く、的確に設定することにより、トレッド10の全体でオールシーズンタイヤに適した性能が実現される。
なお、上述の実施形態は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜設計変更できる。例えば、主溝、周方向溝、センターブロック、メディエイトブロック、及びショルダーブロックを含むトレッドパターンを有し、接地長の比率(L2/L1)が0.75~0.90であること以外の構成については、本発明の目的を損なわない範囲で変更可能である。
上述の実施形態では、ブロック群100の形状が、ブロック群101をタイヤ赤道面に対して反転させた場合の形状と同じであるが、一方のブロック群の形状が、他方のブロック群の反転形状と異なっていてもよい。或いは、トレッドパターンは、タイヤ赤道面に対して左右対称のパターンであってもよい。
上述の実施形態では、全てのブロックの溝壁に斜面が形成されているが、例えば、センターブロック及びメディエイトブロックの少なくとも一方に斜面が形成されていなくてもよい。なお、本発明の目的を損なわない範囲で、一部のブロックにサイプや斜面を形成しない形態としてもよい。また、各ブロックには2本以上のサイプが形成されていてもよい。上述の実施形態では、溝壁に斜面を形成することにより、サイプを増やすことなく排水性を向上させてウェット性能を改善しているが、本発明の目的を損なわない範囲でサイプを増やすことは可能である。
1 空気入りタイヤ、2 補強層、2a 第1領域、2b 第2領域、10 トレッド、11 ショルダー、12 サイドウォール、13 ビード、14 サイドリブ、15 カーカス、16 ベルト、17 インナーライナー、18 ビードコア、19 ビードフィラー、20,21 主溝、25 第1周方向溝、26,27 第2周方向溝、28,29 第3周方向溝、30,40 センターブロック、31,41,51,61,71,81 サイプ、32,42,52,62,72,82 斜面、32a,72a 第1領域、32b,72b 第2領域、50,60 ショルダーブロック、70,80 メディエイトブロック、90 隆起部、100,101 ブロック群、CL タイヤ赤道、E 接地端、R1 幅方向中央領域、R2 幅方向両側領域
Claims (3)
- トレッドを備え、主回転方向が指定された空気入りタイヤであって、
前記トレッドは、
前記トレッドの幅方向中央領域において、タイヤ周方向に複数形成されたセンターブロックと、
前記トレッドの幅方向両側領域において、タイヤ周方向に複数形成されたショルダーブロックと、
前記センターブロックと前記ショルダーブロックの間において、タイヤ周方向に複数形成されたメディエイトブロックと、
を有し、
内圧200~260kPa、最大負荷能力の70%の荷重をかけた状態において、前記トレッドの幅方向中央領域のタイヤ周方向に沿った接地長(L1)に対する、前記トレッドの接地端から10mm内側におけるタイヤ周方向に沿った接地長(L2)の比率(L2/L1)が、0.75~0.90である、空気入りタイヤ。 - 前記ショルダーブロックには、接地面に向かって溝幅が広がるように傾斜した斜面を含むサイプが形成されている、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 前記メディエイトブロックの接地面積は、前記ショルダーブロックの接地面積以上である、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
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A621 | Written request for application examination |
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