JP2023074959A - 電流センサおよび測定装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】電子部品などの測定対象物を取り囲んでロゴスキー方式により測定する際の繰り返しの開閉に耐えることができ、コモンモード電圧の影響を低減することができる電流センサおよび測定装置を提供すること。【解決手段】可撓性を有し、測定対象を取り囲んだ状態で測定対象についての物理量を検出する検出本体を備える電流センサであって、前記検出本体は、中空の巻芯(12)に螺旋状に巻回され、前記巻芯(12)の先端部で折り返して該巻芯(12)の基端部まで戻して構成された導電線(11)と、内部絶縁層(13)と、前記内部絶縁層(13)の外側の円周方向において一周することなく間隙(15a)を形成するように設けられた導電性の静電シールド層(15)と、前記静電シールド層(15)の外側の円周方向において一周するように設けられた外装被覆(16)と、を有する。【選択図】図4
Description
本発明は、測定対象についての電流を検出する電流センサ及び測定装置に関する。
従来から電流センサとしては、CT方式、ホール素子方式、ロゴスキー方式、ゼロフラックス方式など様々な方式の電流センサが提案されている。なかでも、ロゴスキー方式は、磁気コアが無いため、磁気飽和せずに大電流を測定可能であり、磁気損失による発熱、飽和、ヒステリシスがないなどの特性がある。このような特性にしたがって、様々な測定対象を測定することができる。
例えば特許文献1には、GIS(Gas Insulated Switchgear)の中心導体に流れる電流、あるいは、高周波誘導加熱装置の加熱コイルに流れる電流のような比較的大電流に対して、その電流の検出のために用いられるロゴスキー方式の電流検出器が記載されている。ロゴスキー方式のセンサは、リングの一部を開放した一端を測定対象物の背後に通した後にリングを閉じて、測定対象物を取り囲むようにリングを形成した状態で測定を行う。
特許文献1の電流検出器における測定対象であるGIS、高周波誘導加熱装置は、商用周波数程度の比較的低い周波数であると考えられる。この電流検出器では、開閉可能なリング形状をした検出部は、可撓性のチューブの中心を貫通するとともに周囲に巻き回されたロゴスキーコイルを覆うように、第1の絶縁層、電界シールド、第2の絶縁層、磁界シールド、被覆層が筒状に形成されて配置構成されている。
ロゴスキー方式のセンサの用途は幅広く、基板に搭載された電子部品などに流れる数MHz以上の周波数の電流を測定するためにも用いられている。電子部品の大きさは比較的小さいため、測定するためのセンサは、特許文献1に記載されたような装置における電流を測定するセンサに比べて、狭い場所へ通すために小さく形成されなければならない。
しかしながら、特許文献1に記載されたロゴスキー方式のセンサは、狭い場所へ通して小さいものを測定することを意図されたものではない。特許文献1に記載されたセンサを電子部品の測定のために小さく形成しようとしても、曲率半径が小さすぎるため、電界シールドとして用いられている筒状の銅網や箔状の銅テープが問題となる。測定の際にセンサ端部の開閉を繰り返すと、箔状の銅テープは破壊されてしまい、電界シールド機能を有さなくなる。また、曲率半径が小さすぎると、電界シールドとして構成された銅網は十分に撓むことができない。
このような理由から、従来の電子部品を測定対象とするロゴスキー方式の電流センサは、電界シールドは設けられていなかった。すなわち、図7に示すように、電子部品測定用のロゴスキー方式の電流センサは、可撓性のチューブ101の中心を貫通するとともに周囲に巻き回されたロゴスキーコイル102が外装被覆103で覆われている、という最小構成により形成されている。
一方で、電子部品を測定対象とするロゴスキー方式の電流センサにおいては、例えばスイッチングパワー半導体を測定することがある。近年では、スイッチングパワー半導体の高周波数化が進んでおり、コモンモード電圧の影響を低減しなければ測定自体が成立しない状況が発生している。しかしながら、電界シールドが設けられていない最小構成のロゴスキーセンサでは、周囲環境の影響、特にコモンモード電圧の影響を受けてしまう。
本発明は上記従来の問題に鑑みなされたものであって、本発明の課題は、電子部品などの測定対象物を取り囲んでロゴスキー方式により測定する際の繰り返しの開閉に耐えることができ、コモンモード電圧の影響を低減可能な電流センサおよび測定装置を提供することにある。
本発明の代表的な実施の形態に係る電流センサは、可撓性を有し、測定対象を取り囲んだ状態で測定対象についての物理量を検出する検出本体と、該検出本体の基端部が取り付けられると共に、前記検出本体の先端部を保持する保持部と、を備える電流センサであって、前記検出本体は、巻芯に螺旋状に巻回され、前記巻芯の先端部で折り返して該巻芯の基端部まで戻して構成された導電線と、前記螺旋状に巻回された導電線の外側の円周方向において一周するように設けられた内部絶縁層と、前記内部絶縁層の外側の円周方向において一周することなく間隙を形成するように設けられた導電性の静電シールド層と、前記静電シールド層の外側の円周方向において一周するように設けられた外装被覆と、を有する。
本発明に係る電流センサおよび測定装置によれば、電子部品などの測定対象物を取り囲んでロゴスキー方式により測定する際の繰り返しの開閉に耐えることができ、コモンモード電圧の影響を低減することができる。
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、図4における発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、図4における発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
〔1〕代表的な実施の形態に係る電流センサは、可撓性を有し、測定対象を取り囲んだ状態で測定対象についての物理量を検出する検出本体と、該検出本体の基端部が取り付けられると共に、前記検出本体の先端部を保持する保持部と、を備える電流センサであって、前記検出本体は、巻芯(12)に螺旋状に巻回され、前記巻芯(12)の先端部で折り返して該巻芯(12)の基端部まで戻して構成された導電線(11)と、前記螺旋状に巻回された導電線(11)の外側の円周方向において一周するように設けられた内部絶縁層(13)と、前記内部絶縁層(13)の外側の円周方向において一周することなく間隙(15a)を形成するように設けられた導電性の静電シールド層(15)と、前記静電シールド層(15)の外側の円周方向において一周するように設けられた外装被覆(16)と、を有する。
この態様によれば、静電シールド層を一周しないように離して巻くことで、周方向に誘起電流が流れなくなるので、誘起電流が流れない分、測定精度が上がる。静電シールド層に間隙を設けることで、検出本体が曲がりやすく構成できる。静電シールド層を重ならないように巻くことで、検出本体が曲がりやすくなり、かつ細く形成できる。電子部品などの測定対象物を取り囲んでロゴスキー方式により測定する際の繰り返しの開閉に耐えることができ、コモンモード電圧の影響を低減することができる。
〔2〕上記〔1〕記載の電流センサにおいて、前記静電シールド層の円周長は、前記内部絶縁層の円周長よりも短いこととしてもよい。
この態様によれば、静電シールド層15は検出本体1の円周方向Dにおいて間隙15aを容易に形成することができる。内部絶縁層13に密着させて形成しても、静電シールド層15の間隙15aが一定の間隔で確保できる。
〔3〕上記〔1〕または〔2〕記載の電流センサにおいて、前記静電シールド層は導電布であることとしてもよい。
この態様によれば、電流センサ10の開閉の際に生じる変形にも繰り返し耐える耐久性と弾性が確保できる。
〔4〕上記〔1〕から〔3〕までのいずれか1つの電流センサにおいて、前記静電シールド層は、低磁性材料で構成されることとしてもよい。
この態様によれば、ロゴスキーコイルとして構成される導電線11に効率的に磁束を通すことができる。
〔5〕上記〔1〕から〔4〕までのいずれか1つの電流センサにおいて、前記内部絶縁層は、低誘電率材料で構成されることとしてもよい。
この態様によれば、導電線11と静電シールド層15との間に寄生容量を形成させないようにすることができる。
〔6〕上記〔1〕から〔5〕までのいずれか1つの電流センサにおいて、前記外装被覆は、熱収縮性のチューブであることとしてもよい。
〔6〕上記〔1〕から〔5〕までのいずれか1つの電流センサにおいて、前記外装被覆は、熱収縮性のチューブであることとしてもよい。
この態様によれば、シールド材を巻いて熱収縮チューブをかぶせて熱するだけで作成できるので、作成が容易である。さらに、外形寸法への影響がなく、静電シールド層15と接続線14は外装被覆を形成する際に材料の熱収縮チューブの収縮時に発生する圧力によって接触圧が担保され、導通することができる。
〔7〕上記〔1〕から〔6〕までのいずれか1つの電流センサにおいて、前記測定対象は、電子部品であることとしてもよい。
この態様によれば、狭い場所を通して測定対象の周囲を取り囲むことができ、コモンモード電圧の影響を低減することができるので、測定する周波数に関わらず、電子部品の測定が確実に実行できる。
〔8〕代表的な実施の形態に係る測定装置は、上記〔1〕から〔7〕までのいずれか1つの電流センサと、前記電流センサによって検出される検出信号に基づいて、前記測定対象についての物理量を測定する測定部とを備える。
この態様によれば、静電シールド層を一周しないように離して巻くことで、周方向に誘起電流が流れなくなるので、誘起電流が流れない分、測定精度が上がる。静電シールド層に間隙を設けることで、検出本体が曲がりやすく構成できる。静電シールド層を重ならないように巻くことで、検出本体が曲がりやすくなり、かつ細く形成できる。電子部品などの測定対象物を取り囲んでロゴスキー方式により測定する際の繰り返しの開閉に耐えることができ、コモンモード電圧の影響を低減することができる。
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
(実施形態)
図1は、本実施形態に係る電流センサを用いた測定装置の概略構成を示す図である。
図1は、本実施形態に係る電流センサを用いた測定装置の概略構成を示す図である。
<測定装置>
本実施形態の電流センサを用いた測定装置100は、図1に示すように、測定対象に流れる電流を検出する電流センサ10と、電流センサ10から出力される検出信号を積分する積分回路20と、積分回路20から出力される信号に基づき測定対象についての物理量を測定する測定部30と、を備えている。
本実施形態の電流センサを用いた測定装置100は、図1に示すように、測定対象に流れる電流を検出する電流センサ10と、電流センサ10から出力される検出信号を積分する積分回路20と、積分回路20から出力される信号に基づき測定対象についての物理量を測定する測定部30と、を備えている。
測定対象としては、基板上に実装された電子部品(の端子)などが挙げられる。測定対象についての物理量としては、測定対象に流れる交流電流の値、交流電力の値、測定対象の周囲に生じる交流磁界の値などが挙げられる。
(電流センサ)
図2は、本実施形態における電流センサの構成を示す図である。
図2は、本実施形態における電流センサの構成を示す図である。
電流センサ10は、測定対象を取り囲んだ状態で、この測定対象に流れる交流電流を検出する。電流センサ10は、測定対象に流れる交流電流を検出する検出本体1と、検出本体1の基端1bが取り付けられると共に、検出本体1の先端1aを保持する保持部2と、を備えている。
検出本体1は、測定対象を取り囲みやすくするために、予め湾曲した所定の曲率を有する形状に形成されていてもよい。検出本体1は、可撓性を有し、測定対象を取り囲む際に撓ませることが可能である。検出本体1は、弾性を有し、外力を取り去ると、元の形状又はほぼ元の形状に回復する。
検出本体1は、長手方向(延在方向)に沿って形成されるロゴスキーコイルを有する。すなわち、検出本体1は、可撓性を有するロゴスキーコイル方式の電流センサを構成する。ロゴスキーコイルは、導電線が、巻芯の外周に螺旋状に巻回されており、巻芯の一端である検出本体1の先端1aの近傍で折り返され、巻芯の内部を通過して検出本体1の基端1bまで戻る構成を有する。検出本体1の構成については、後述する。
保持部2は、利用者の手又は指で操作される操作部位である。保持部2は、検出本体1の一部を固定した固定部21と、測定対象を取り囲んだ際に利用者により検出本体1の先端1aが挿入口22aに挿入される挿入部22と、を備える。
挿入部22に検出本体1の先端1aが挿入されることで電流センサ10は閉じた状態となり、反対に、挿入部22から検出本体1の先端1aが引き抜かれることで、電流センサ10は開いた状態となる。また、固定部21においては、検出本体1の基端1bと積分回路20のケーブル3とが電気的に接続されている。
ここで、本実施形態における電流センサ10の開閉について図2及び図3を参照してさらに説明する。
図2は、電流センサ10が開いた状態での検出本体1の形状を示す図である。ここでは
、検出本体1側のインピーダンスと測定部30側のインピーダンスとの整合を取るための整合回路23が保持部2の内部に配置されている。
、検出本体1側のインピーダンスと測定部30側のインピーダンスとの整合を取るための整合回路23が保持部2の内部に配置されている。
電流センサ10が開いた状態において検出本体1の先端部1cには、検出本体1の基端1bを有する基端部1eの曲率よりも曲率の大きな部位が形成されている。先端部1cは、検出本体1の先端1aを含む特定の長さの部位であり、先端1aの曲率を最も大きくしてもよいし、先端1aには曲率がなく他の部位の曲率を基端部1eの曲率よりも大きくてもよい。
検出本体1は、基端部1eから先端部1cに近づくほど、検出本体1の曲率が段階的に又は連続して大きくなるように形成してもよい。これにより、利用者の力が保持部2から検出本体1に伝わりやすくなるとともに、検出本体1が測定対象又はその隣接部材に引っ掛かりにくくなる。
保持部2においては、検出本体1の基端部1eの一部が固定部21に固定されている。基端部1eについては、一部が固定部21に収容され、他の部分が固定部21から露出している。挿入部22は、検出本体1の先端1aを挿通する挿通路を形成しており、検出本体1の先端1aが検出本体1の基端1bに当接するように形成されている。
図3は、電流センサ10が閉じた状態での検出本体1の形状を示す図である。ここでは、図2に示した整合回路23及び積分回路20のケーブル3が省略されている。
図3に示すように、利用者によって検出本体1の先端1aが挿入部22の挿入口22aに挿入されることで、検出本体1の先端1aが保持部2で保持される。これにより、電流センサ10が閉じた状態となり、測定対象を検出本体1により取り囲むことができる。
保持部2の挿入部22から検出本体1の先端1aが引き抜かれると、可撓性を有する検出本体1は、図2に示したように、検出本体1の先端部1cが内側に曲げられた元の形態に戻る。
図3から明らかなように、保持部2の挿入部22に検出本体1の先端1aが保持されることにより電流センサ10が閉じた状態では、検出本体1の曲率半径は、ほぼ一定となっている。したがって、電流センサ10が開いた状態から閉じた状態となるには、検出本体1の曲率が変化する必要がある。
本実施形態の電流センサ10を有する測定装置100の測定対象である電子部品には、近年高周波化が進むスイッチングパワー半導体なども含まれる。このような高周波電子部品を測定する場合、コモンモード電圧の影響を低減しなければ測定自体が成立しない状況が発生している。コモンモード電圧の影響を低減するためには、検出本体1のロゴスキーコイルを、静電シールドすることが考えられる。しかしながら、検出本体1は曲率の変化を繰り返す使用に耐える必要があり、従来のロゴスキー方式の電流センサに搭載された静電シールドでは耐久性の面で問題がある。また、高周波測定をする場合、静電シールドにより1ターンのコイルが形成されてしまうと、静電シールドに誘起電流が発生し、測定値に誤差を生じてしまう。このように、測定対象に電子部品を含む測定装置100の電流センサにおいて用いられる検出本体1には、さまざまな制約があるため、本実施形態の測定装置100にかかる電流センサ10では、従来とは異なる構成の検出本体1を採用している。本実施形態の測定装置100にかかる電流センサ10において採用される検出本体1の構成についてさらに説明する。
図4は、検出本体1の断面構成を示す図である。
図4に示すように、検出本体1は、巻芯12の外周に螺旋状に巻回されているとともに巻芯12の一端で折り返して巻芯12内部を貫通させてロゴスキーコイルとして構成される導電線11の外側に、内部絶縁層13と、接続線14と、静電シールド層15と、外装被覆16とが配置構成されている。
巻芯は、絶縁性を有する中空の可撓性部材により形成することができる。可撓性部材は、例えば、塩化ビニル又はポリエチレンなどの合成樹脂やPEEK(Poly Ether Ether Ketone)により構成されている。可撓性部材のしなり性は、用途によって決定され、PEEKは高い靱性が求められる用途に用いられる。可撓性部材は、耐熱性を有することが好ましい。
内部絶縁層13は、導電線11の外側の円周方向Dにおいて一周するように設けられている。内部絶縁層13は、導電線11と静電シールド層15との間に寄生容量を形成させないようにするために低誘電率材料で構成される。低誘電率材料とは、具体的には、比誘電率は3.0未満の材料を採用すればよい。内部絶縁層13は、柔軟な絶縁材料を用いてできるだけ薄く形成する。内部絶縁層13は、さらに、耐熱性を有することが好ましい。用いる絶縁材料は、フッ素樹脂系の材料などでもよい。例えば、FEP(Fluorinated Ethylene Propylene)、PEA(Phenethylamine)などを絶縁材料として用いることができるが、入手性・加工性の観点から、FEPを好ましく用いることができる。
内部絶縁層13は静電シールド層15とロゴスキーコイルを構成する導電線11との容量結合を緩和する役割を持つ。ロゴスキーコイルで実際に測定することを想定している信号周波数でロゴスキーコイルがインダクタとして動作するようにコイルのピッチと内部絶縁層の厚さを調整すればよい。
接続線14は、静電シールド層15を接地電位とするために検出本体1の内部を通って静電シールド層15と電気的に接触して引き出される導電性を有する線である。接続線14としては金属メッキされた線を用いることができるが、導電性を有する線であれば限定されない。静電シールド層15に対してカシメ圧着する必要なく接地電位をとることができるため、検出本体1の厚みの増加を抑制することができる。
静電シールド層15は、内部絶縁層13の外側の円周方向Dにおいて一周することなく間隙15aを形成するように設けられた導電性の層である。静電シールド層15が一周することなく間隙15aを形成されることにより、周方向に誘起電流が流れなくなるので、誘起電流が流れない分、測定精度が上がる。静電シールド層15に間隙15aを設けることで、検出本体1が曲がりやすく構成でき、静電シールド層15を重ならないように巻くことで、検出本体1が曲がりやすく、かつ細く形成できる。
静電シールド層15は、可撓性を有するように構成されている。可撓性を有する構成であるため、検出本体1の部位に応じた曲率を有するように形成することができ、電流センサ10の開閉の際に生じる変形にも繰り返し耐えることができる。ロゴスキーコイルとして構成される導電線11に効率的に磁束を通すため、静電シールド層15を構成する材料は非磁性であることが好ましい。このような観点から、静電シールド層15としては、導電布を用いることができる。
静電シールド層15は、円周方向Dにおける長さである円周長が、内部絶縁層13の円周長よりも短く形成されている。このように形成することで、静電シールド層15は検出本体1の円周方向Dにおいて間隙15aを容易に形成することができる。また、内部絶縁層13に密着させて形成しても、静電シールド層15の間隙15aが一定の間隔で確保できる。静電シールド層15の間隙15aの大きさは、内部絶縁層13の円周長を基準にして決定すればよい。内部絶縁層13の円周長は、内部絶縁層13の直径をRとすると、(内部絶縁層13の円周長)=π×Rで表される。したがって、静電シールド層15の円周長をこれよりも小さく形成すればよい。すなわち、(静電シールド層15の円周長)<πRとすればよい。
また、間隙15aが大きくなると、その分、拾うノイズも大きくなる。一方で間隙15aを小さくした場合は、導電布の性質、曲げに対して強くするために高分子繊維を織って形成してある関係から、切断面でほつれた繊維によって短絡のリスクが生じるので、0.1mm以上であることが好ましい。また、一般的に精度よく導電布を加工する場合は、裁断機の設定が0.5mm刻みの場合が多いため、ロゴスキーセンサの内部絶縁層13の円周の値未満になる0.5mm刻みの寸法に設定される。このような条件にしたがって、間隙15aが0.1mm以上であることを最小条件として、静電シールド層15の円周長を、(内部絶縁層13の円周長)=πRよりも小さく、0.5mm刻みで最大の長さとなるようにすればよい。
例えば、R=1.0mmの場合を考えると、内部絶縁層13の円周長は、約3.14mmである。0.5mm刻みで最大の長さは3.0mmであるので、間隙は、3.14mm-3.0=0.14mmとなる。これは、0.1mmよりも大きいので、最小条件を満たす。同様に、R=2.0mmの場合を考えると、内部絶縁層13の円周長は、約6.28mmである。0.5mm刻みでの最大の長さは6.0mmであるので、間隙は、6.28mm-6.0=0.28mmとなる。これは、0.1mmよりも大きいので、最小条件を満たす。
外装被覆16は、静電シールド層15の外側の円周方向において一周するように設けられている。外装被覆16は、電気的絶縁性の観点から低誘電率材料で構成される。外装被覆16は、さらに、ひっかき傷がつきにくく、耐熱性、難燃性を有することが好ましい。このような観点から、外装被覆16としては、例えばフッ素樹脂系の熱収縮チューブを用いることができる。外装被覆16を熱収縮チューブによって形成すると、外形寸法への影響がなく、静電シールド層15と接続線14は外装被覆を形成する際に材料の熱収縮チューブの収縮時に発生する圧力によって接触圧が担保され、導通することができる。
(積分回路)
図1に示すように、積分回路20は、測定対象に流れる電流により、検出本体1の導電線11に誘起される電圧を示す検出信号を、測定対象に流れる電流の振幅に比例した信号に変換する。積分回路20は、変換した信号を測定部40に検出信号として出力する。
図1に示すように、積分回路20は、測定対象に流れる電流により、検出本体1の導電線11に誘起される電圧を示す検出信号を、測定対象に流れる電流の振幅に比例した信号に変換する。積分回路20は、変換した信号を測定部40に検出信号として出力する。
(測定部)
図1に示すように、測定部30は、積分回路20からの検出信号に基づいて、測定対象に関する物理量を測定する。例えば、測定部30は、積分回路20から検出信号を受信すると、その検出信号に基づいて測定対象に流れる交流電流を測定する。測定部30は、他の物理量として、受信した検出信号に基づいて交流電力又は磁界の強さなどを測定するものであってもよい。測定部30は、測定した物理量についての波形を画面に表示する。測定部30は、例えば、オシロスコープ、電力計、又は電流計などによって構成される。
図1に示すように、測定部30は、積分回路20からの検出信号に基づいて、測定対象に関する物理量を測定する。例えば、測定部30は、積分回路20から検出信号を受信すると、その検出信号に基づいて測定対象に流れる交流電流を測定する。測定部30は、他の物理量として、受信した検出信号に基づいて交流電力又は磁界の強さなどを測定するものであってもよい。測定部30は、測定した物理量についての波形を画面に表示する。測定部30は、例えば、オシロスコープ、電力計、又は電流計などによって構成される。
<測定装置の使用形態>
図5は電子部品90の電流を測定する際の測定装置100にかかる電流センサ10の配置を示している。
図5は電子部品90の電流を測定する際の測定装置100にかかる電流センサ10の配置を示している。
図5に示すように、本実施形態の測定装置100の電流センサ10は、電子部品90の電流を測定する場合、電子部品90の端子(足)91を検出本体1で取り囲み、検出本体1の先端1aが保持部2の挿入部22に挿入された状態で測定を行う。電子部品90の端子91を検出本体1で取り囲むためには、電子部品90の端子91、92の間に電流センサ10の検出本体1を差し込む必要がある。
(測定対象への検出本体の配置手順)
次に、測定装置100による測定対象の測定に際して、基板に実装された電子部品90の端子91を測定対象とし、その電子部品の端子を検出本体1で取り囲む手順について説明する。図6は、検出本体1の先端1aを電子部品90の端子91の背後から手前に送り出す手順を説明するための図である。
次に、測定装置100による測定対象の測定に際して、基板に実装された電子部品90の端子91を測定対象とし、その電子部品の端子を検出本体1で取り囲む手順について説明する。図6は、検出本体1の先端1aを電子部品90の端子91の背後から手前に送り出す手順を説明するための図である。
図6に示す例では、電子部品90として、集積回路(Integrated Circuit:IC)又はDC/DCコンバータなどの電子部品が用いられる。電子部品90の端子91と端子92との間隔は、数mm(ミリメートル)程度である。検出本体1の太さ(直径)は、端子91と端子92との隙間に入るように、例えば、1mm以上、かつ、2.5mm以下に形成されている。
図6(a)に示すように、作業者は、保持部2を指先で挟んだ状態で端子91に向かって保持部2を移動させることで、電子部品90と端子91との間に検出本体1の先端1aが挿入される。
このとき、検出本体1の先端部1cは、電流センサ10が閉じた状態の曲率(基準曲率)以上の曲率で形成されているので、検出本体1の先端部1cを端子91の背後に挿入したときには、検出本体1の先端1aを端子91の背後を覆うように移動させることができる。このため、端子91のエッジに検出本体1が引っ掛かって検出本体1に傷が付つくのを抑制することができる。
また、検出本体1の先端部1cは、電流センサ10が閉じた状態の曲率以上の曲率で形成されているので、端子91の背後を通過した検出本体1の先端1aは、検出本体1の挿入方向Aに対して端子91の背面から前面に向きやすくなる。これにより、作業者は、検出本体1の先端1aを端子91の手前に出すために、端子92の側面に検出本体1の先端1aを突き当てやすくなる。それゆえ、端子91の背面から前面に向かって、検出本体1の先端1aを端子92と端子91との狭い隙間に通すことが可能となる。
なお、検出本体1の先端部1cの曲率半径は、電子部品90の端子91と端子92との間隔よりも小さくすることが好ましい。特に、先端部1cの曲率半径を2mm以上、かつ、4mm以下に形成することで、電子部品90に設けられた端子92のエッジが検出本体1に引っ掛かって検出本体1に傷が付くのを抑制することができる。
次に、図6(b)に示すように、作業者は、検出本体1の中途部1dを端子91の背後の電子部品90に向かって押し当てるように保持部2を更に挿入方向Aに移動させる。これにより、検出本体1の中途部1dが電子部品90に押し当てられ、その部位が支点となって検出本体1が内側Bに向けられるので、検出本体1が端子91及び92の各エッジに引っ掛かりにくくなる。これにより、検出本体1に傷が付きにくくなる。
次に、図6(c)に示すように、作業者は挿入方向Aに保持部2を押し込むことにより、残りの検出本体1が端子91の背後に向かって送り出される。このとき、検出本体1の中途部1dの曲率は、保持部2に向かって電流センサ10が閉じた状態の曲率よりも小さいので、検出本体1が折れ曲がるのを抑制しつつ、検出本体1の先端部1cを保持部2の挿入部22に接近させることができる。
その後、作業者によって検出本体1の先端部1cが挿入部22に挿入されることで、測定対象が検出本体1により取り囲まれる。このように、電流センサ10では、作業者の手によって容易に端子91を検出本体1で取り囲むことができる。
図6(a)から(c)を用いて説明したように、電子部品90を測定対象とする場合、その電子部品90の端子91を検出本体1で取り囲むために、小さい隙間に検出本体1を通すことになる。小さい隙間に通すためには、検出本体1の曲率は、検出本体1の先端1aが保持部2の挿入部22に挿入された状態とは異なる曲率とすることが必要であることが判る。したがって、検出本体1は、測定の際に曲げ伸ばしを頻繁に繰り返すこととなる。本実施形態の測定装置100の電流センサ10は、可撓性の静電シールド層15を用いているので、繰り返しの曲率の変化に耐える耐久性が確保されている。特に静電シールド層15として導電布を用いている場合は、狭い場所を通して測定対象へ装着する際にセンサ部分を頻繁に曲げる点から耐久性と曲げ弾性率を確保できる。
また、ディスクリートICで構成された次世代スイッチングパワーデバイスの電流測定のような高周波で大きな信号を処理する電子部品を測定対象としても、ロゴスキーコイルを構成する導電線11をシールドする静電シールド層15を搭載しているため、コモンモード電圧の影響を低減することができる。
静電シールド層15は内部絶縁層13の外側の円周方向において一周することなく間隙15aを形成するように設けられており、ロゴスキーコイルのコイル巻き方向と同じ向きで1ターンを形成していない。この構成により、静電シールド層15がコイルとして作用することがないので、周波数特性に悪影響が出ることを回避できる。
内部絶縁層13は、低誘電率材料で構成されるので、高周波信号を測定する場合に静電シールド層15とロゴスキーコイルを構成する導電線11の間に生じる寄生容量を低減することができる。
<実施形態の変形例>
以上の実施形態の測定装置について具体的な例を挙げて説明したが、これに限定されず、様々な変形形態を採用することができる。例えば、測定装置100の構成は、図1に示した構成に限定されない。例えば、接続線14を内部絶縁層13と静電シールド層15との間に設けていたが、接続線14を静電シールド層15と外装被覆16との間に設けてもよい。
以上の実施形態の測定装置について具体的な例を挙げて説明したが、これに限定されず、様々な変形形態を採用することができる。例えば、測定装置100の構成は、図1に示した構成に限定されない。例えば、接続線14を内部絶縁層13と静電シールド層15との間に設けていたが、接続線14を静電シールド層15と外装被覆16との間に設けてもよい。
また、保持部2の形状は、L型や、丸型、その他の形状に形成してもよい。また、検出本体1には、弾性変形する材質だけでなく、塑性変形する材質を使用してもよい。
検出本体1の曲率についても、上述した曲率以外にも様々な曲率の組み合わせを採用することができ、また、予め曲率が付与されたものでなくてもよい。
また、以上の実施形態では、巻芯が中空に形成されており、導電線が巻芯に螺旋状に巻回され、巻芯の先端部で折り返して該巻芯の中空内部を貫通させて基端部まで戻るように構成した態様を例に挙げて説明したが、巻芯の構成や導電線の構成はこれに限定されない。例えば、巻芯は中空ではなく中実に構成されていてもよい。この場合、巻芯に螺旋状に巻回され、前記巻芯の先端部で折り返した後は、巻芯の外側を這わせて基端部まで戻るように構成すればよい。なお、この場合の基端部、先端部は、それぞれ検出本体1の先端1a、基端1bを含む概念である。
また、以上の実施形態では、保持部2は、固定部21と、挿入口22aを有する挿入部22と、を備える形態を例に挙げて説明したがこれに限定されない。保持部2は、検出本体1の基端部1eが取り付けられると共に、検出本体1の先端部1cを保持する構成であればよい。検出本体1の先端部1cを保持する構成としては、例えば、先端部1cを嵌める溝などを用いればよい。
100 測定装置、10 電流センサ、1 検出本体、1a 先端、1b 基端、1c 先端部、1d 中途部、1e 基端部、11 導電線、12 巻芯、13 内部絶縁層、14 接続線、15 静電シールド層、16 外装被覆、2 保持部、21 固定部、22a 挿入口、22 挿入部、23 整合回路、3 ケーブル、20 積分回路、30 測定部、90電子部品、91、92 端子
Claims (8)
- 可撓性を有し、測定対象を取り囲んだ状態で測定対象についての物理量を検出する検出本体と、該検出本体の基端部が取り付けられると共に、前記検出本体の先端部を保持する保持部と、を備える電流センサであって、
前記検出本体は、
巻芯に螺旋状に巻回され、前記巻芯の先端部で折り返して該巻芯の基端部まで戻して構成された導電線と、
前記螺旋状に巻回された導電線の外側の円周方向において一周するように設けられた内部絶縁層と、
前記内部絶縁層の外側の円周方向において一周することなく間隙を形成するように設けられた導電性の静電シールド層と、
前記静電シールド層の外側の円周方向において一周するように設けられた外装被覆と、
を有する、
電流センサ。 - 前記静電シールド層の円周長は、前記内部絶縁層の円周長よりも短い、
請求項1に記載の電流センサ。 - 前記静電シールド層は導電布である、
請求項1または2に記載の電流センサ。 - 前記静電シールド層は、低磁性材料で構成される、
請求項1から3までのいずれか1項に記載の電流センサ。 - 前記内部絶縁層は、低誘電率材料で構成される、
請求項1から4までのいずれか1項に記載の電流センサ。 - 前記外装被覆は、熱収縮性のチューブである、
請求項1から5までのいずれか1項に記載の電流センサ。 - 前記測定対象は、電子部品である、
請求項1から6までのいずれか1項に記載の電流センサ。 - 請求項1から7までのいずれか1項に記載の電流センサと、
前記電流センサによって検出される検出信号に基づいて、前記測定対象についての物理量を測定する測定部と、
を備えることを特徴とする測定装置。
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