JP2023074765A - 腐蛆病菌の同時検出方法及びプライマーキット - Google Patents

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Abstract

【課題】ミツバチに感染する病原菌である、遺伝子型ERIC I型のアメリカ腐蛆病菌、遺伝子型ERIC II型のアメリカ腐蛆病菌、ERIC I型及びII型以外の遺伝子型のアメリカ腐蛆病菌、表現型非典型のヨーロッパ腐蛆病菌、及び表現型典型のヨーロッパ腐蛆病菌を同時に、かつ容易に検出することができる腐蛆病菌の同時検出方法を提供すること。【解決手段】特定の5種類の配列に記載のヌクレオチド配列における第1から5の標的領域、をそれぞれ増幅可能なプライマーの組み合わせであるプライマーセットを5種用いて、マルチプレックスPCRを行なうPCR工程と、前記PCR工程で得られたPCR産物を検出する検出工程と、を含むことを特徴とする、腐蛆病菌の同時検出方法。【選択図】なし

Description

本発明は、腐蛆病菌の同時検出方法及びプライマーキットに関し、より詳しくは、遺伝子型ERIC I型のアメリカ腐蛆病菌、遺伝子型ERIC II型のアメリカ腐蛆病菌、ERIC I型及びII型以外の遺伝子型のアメリカ腐蛆病菌、表現型非典型のヨーロッパ腐蛆病菌、及び表現型典型のヨーロッパ腐蛆病菌の同時検出方法、並びに、プライマーキットに関する。
ミツバチの監視伝染病である腐蛆病の原因菌には、アメリカ腐蛆病菌(Paenibacillus larvae)とヨーロッパ腐蛆病菌(Melissococcus plutonius)との2種類が知られている。これらは、遺伝子型や表現型によって毒性や消毒薬への抵抗性が異なるため、野外で発生した腐蛆病がどのタイプの菌によって引き起こされたのかを知ることや、まだ発症していない蜂群が現在どのタイプの腐蛆病菌に汚染されているのかを知ることは、疾病対策を行なう上で極めて重要である。また、現在使用できる唯一の腐蛆病予防薬(タイロシン)を、耐性菌を蔓延させることなく長く有効に使用するためにも、蜂群の腐蛆病菌汚染状況を把握して投薬すべき群を見極め、適切に予防薬を使用することが重要である。
現在、アメリカ腐蛆病菌としては、遺伝子型がERIC I型のものからV型のものまでの5種類が知られており、ヨーロッパ腐蛆病菌としては、表現型が典型のものと非典型のものとの2種類が知られている。これらの中でも、遺伝子型ERIC I型のアメリカ腐蛆病菌、遺伝子型ERIC II型のアメリカ腐蛆病菌、表現型非典型のヨーロッパ腐蛆病菌、及び表現型典型のヨーロッパ腐蛆病菌は、現在特に世界で猛威を振るっており、日本国内でも腐蛆病を引き起こしている。特に遺伝子型ERIC II型のアメリカ腐蛆病菌による国内の症例は近年、急速に増加している。
腐蛆病菌の検出方法として、ヨーロッパ腐蛆病菌に関しては、典型株と非典型株とを区別するPCR方法が報告されている(Arai et al.,2014,J.Vet.Med.Sci.,76:491-498(非特許文献1))。また、アメリカ腐蛆病菌に関しても、ERIC I型株を検出するPCR方法が報告されている(Beims et al.,2020,Open Vet.J.,10:53-58(非特許文献2))が、特に幼虫に強い毒性を示し、国内での重要度が高まっている遺伝子型ERIC II型のアメリカ腐蛆病菌を特異的に検出できるPCR方法は未だ報告されていない。
また、2つの腐蛆病菌はそれぞれ個別に検出することが一般的であったが、特開2019-062745号公報(特許文献1)には、2つの腐蛆病菌を含む病原菌を同時に検出する方法が記載されている。しかしながら、遺伝子型や表現型を区別した上で、2つの腐蛆病菌を同時に検出できる方法は未だ報告されていない。
特開2019-062745号公報
Arai et al.,2014,J.Vet.Med.Sci.,76:491-498 Beims et al.,2020,Open Vet.J.,10:53-58
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、遺伝子型や表現型を区別した上で2つの腐蛆病菌を同時に、かつ、容易に検出できる方法、つまり、遺伝子型ERIC I型のアメリカ腐蛆病菌、遺伝子型ERIC II型のアメリカ腐蛆病菌、ERIC I型及びII型以外の遺伝子型のアメリカ腐蛆病菌、表現型非典型のヨーロッパ腐蛆病菌、及び表現型典型のヨーロッパ腐蛆病菌を同時に、かつ容易に検出することができる腐蛆病菌の同時検出方法、並びに、これに好適に用いることができるプライマーキットを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ね、遺伝子型や表現型を区別した上で2つの腐蛆病菌を同時に検出できるマルチプレックスPCRの系を設計した。すなわち、先ず、アメリカ腐蛆病菌及びヨーロッパ腐蛆病菌の2つの腐蛆病菌の各遺伝子型又は表現型ごとに、マルチプレックスPCRの検出対象となる特異的な標的配列を選出した。特に、遺伝子型ERIC II型のアメリカ腐蛆病菌に特異的な配列としては、Funfhaus et al.,2009,Environ.Microbiol.Rep.,1:240-250に9つの配列が記載されているが、本発明者らは、遺伝子型が既知の複数のアメリカ腐蛆病菌株のゲノム情報と比較することにより、遺伝子型ERIC II型のアメリカ腐蛆病菌に真に特異的な配列は1つのみであることを見出した。なお、現在特に猛威を振るっている遺伝子型ERIC I型又はII型のアメリカ腐蛆病菌については、それぞれ各遺伝子型に特異的な標的配列を選出し、加えて、これらを含めた全ての遺伝子型のアメリカ腐蛆病菌の共通標的配列として16S rRNA遺伝子の配列を選出し、さらにこれらを組み合わせることで、遺伝子型ERIC I型及びII型以外のいずれかの遺伝子型のアメリカ腐蛆病菌(本明細書中、場合により「ERIC I型及びII型以外の遺伝子型のアメリカ腐蛆病菌」という)の検出も可能とした。
次いで、本発明者らは、上記で選出した各腐蛆病菌の標的配列に対してそれぞれプライマーを設計した。全ての遺伝子型(現時点では遺伝子型ERIC I型~V型)のアメリカ腐蛆病菌(本明細書中、場合により「全遺伝子型のアメリカ腐蛆病菌」という)の標的配列及び表現型典型のヨーロッパ腐蛆病菌の標的配列に対してはそれぞれ従来より報告されているプライマーを用いたが、他の標的配列に対しては、それぞれ複数のプライマーを新たに設計した。さらに、これらのプライマーによる複数の組み合わせの中から、陽性コントロール(遺伝子型ERIC I型のアメリカ腐蛆病菌、遺伝子型ERIC II型のアメリカ腐蛆病菌、表現型典型のヨーロッパ腐蛆病菌、及び表現型非典型のヨーロッパ腐蛆病菌のゲノムDNAを全て含むサンプル)を鋳型としてマルチプレックスPCRを行なったときに、各標的配列に由来する目的の特異的PCR産物を全て確認することができ、かつ、5種のPCR産物が全て異なるサイズとなる組み合わせを見出した。
その結果、かかる特定のプライマーの組み合わせ、すなわち、前記標的配列上の特定の標的領域を増幅可能なプライマーの組み合わせを用いてマルチプレックスPCRを行ない、例えば、電気泳動によってPCR産物を分離して検出することで、遺伝子型ERIC I型のアメリカ腐蛆病菌、遺伝子型ERIC II型のアメリカ腐蛆病菌、ERIC I型及びII型以外の遺伝子型のアメリカ腐蛆病菌、表現型非典型のヨーロッパ腐蛆病菌、及び表現型典型のヨーロッパ腐蛆病菌を、全て同時に、かつ、容易に検出することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
かかる知見により得られた本発明の態様は次のとおりである。
[1]
試料中の、遺伝子型ERIC I型のアメリカ腐蛆病菌(Paenibacillus larvae ERIC I)、遺伝子型ERIC II型のアメリカ腐蛆病菌(Paenibacillus larvae ERIC II)、ERIC I型及びII型以外の遺伝子型のアメリカ腐蛆病菌、表現型非典型のヨーロッパ腐蛆病菌(atypical Melissococcus plutonius)、及び表現型典型のヨーロッパ腐蛆病菌(typical Melissococcus plutonius)を同時に検出する方法であり、
前記試料由来のDNAを鋳型として、下記の5種の標的領域:
配列番号1に記載のヌクレオチド配列における53~1024番目の第1の標的領域、
配列番号2に記載のヌクレオチド配列における794~2101番目の第2の標的領域、
配列番号3に記載のヌクレオチド配列における2~339番目の第3の標的領域、
配列番号4に記載のヌクレオチド配列における109~367番目の第4の標的領域、及び
配列番号5に記載のヌクレオチド配列における36~222番目の第5の標的領域、
をそれぞれ増幅可能なプライマーの組み合わせであるプライマーセットを5種用いて、マルチプレックスPCRを行なうPCR工程と、
前記PCR工程で得られたPCR産物を検出する検出工程と、
を含む、腐蛆病菌の同時検出方法。
[2]
前記5種のプライマーセットが、
配列番号1のヌクレオチド配列における53~75番目の部位にハイブリダイズするフォーワードプライマーIと、配列番号1のヌクレオチド配列における1002~1024番目の部位にハイブリダイズするリバースプライマーIと、の組み合わせであるプライマーセットI、
配列番号2のヌクレオチド配列における1369~1396番目の部位にハイブリダイズするフォーワードプライマーIIと、配列番号2のヌクレオチド配列における1895~1922番目の部位にハイブリダイズするリバースプライマーIIと、の組み合わせであるプライマーセットII、
配列番号3のヌクレオチド配列における3~30番目の部位にハイブリダイズするフォーワードプライマーIIIと、配列番号3のヌクレオチド配列における312~335番目の部位にハイブリダイズするリバースプライマーIIIと、の組み合わせであるプライマーセットIII、
配列番号4のヌクレオチド配列における111~138番目の部位にハイブリダイズするフォーワードプライマーIVと、配列番号4のヌクレオチド配列における340~367番目の部位にハイブリダイズするリバースプライマーIVと、の組み合わせであるプライマーセットIV、及び
配列番号5のヌクレオチド配列における36~55番目の部位にハイブリダイズするフォーワードプライマーVと、配列番号5のヌクレオチド配列における201~222番目の部位にハイブリダイズするリバースプライマーVと、の組み合わせであるプライマーセットV、
である、[1]に記載の腐蛆病菌の同時検出方法。
[3]
前記プライマーセットIIが、配列番号8のヌクレオチド配列からなるフォーワードプライマーIIと、配列番号9のヌクレオチド配列からなるリバースプライマーIIと、の組み合わせである、[2]に記載の腐蛆病菌の同時検出方法。
[4]
前記プライマーセットIIIが、配列番号10のヌクレオチド配列からなるフォーワードプライマーIIIと、配列番号11のヌクレオチド配列からなるリバースプライマーIIIと、の組み合わせである、[2]又は[3]に記載の腐蛆病菌の同時検出方法。
[5]
前記プライマーセットIVが、配列番号12のヌクレオチド配列からなるフォーワードプライマーIVと、配列番号13のヌクレオチド配列からなるリバースプライマーIVと、の組み合わせである、[2]~[4]のうちのいずれか一項に記載の腐蛆病菌の同時検出方法。
[6]
前記5種のプライマーセットが、
配列番号6のヌクレオチド配列からなるフォーワードプライマーIと、配列番号7のヌクレオチド配列からなるリバースプライマーIと、の組み合わせであるプライマーセットI、
配列番号8のヌクレオチド配列からなるフォーワードプライマーIIと、配列番号9のヌクレオチド配列からなるリバースプライマーIIと、の組み合わせであるプライマーセットII、
配列番号10のヌクレオチド配列からなるフォーワードプライマーIIIと、配列番号11のヌクレオチド配列からなるリバースプライマーIIIと、の組み合わせであるプライマーセットIII、
配列番号12のヌクレオチド配列からなるフォーワードプライマーIVと、配列番号13のヌクレオチド配列からなるリバースプライマーIVと、の組み合わせであるプライマーセットIV、及び
配列番号14のヌクレオチド配列からなるフォーワードプライマーVと、配列番号15のヌクレオチド配列からなるリバースプライマーVと、の組み合わせであるプライマーセットV、
である、[1]~[5]のうちのいずれか一項に記載の腐蛆病菌の同時検出方法。
[7]
前記検出工程が、電気泳動により前記PCR産物を分離する工程を含む、[1]~[6]のうちのいずれか一項に記載の腐蛆病菌の同時検出方法。
[8]
配列番号8のヌクレオチド配列からなるフォーワードプライマーIIと、配列番号9のヌクレオチド配列からなるリバースプライマーIIと、の組み合わせであるプライマーセットII、
配列番号10のヌクレオチド配列からなるフォーワードプライマーIIIと、配列番号11のヌクレオチド配列からなるリバースプライマーIIIと、の組み合わせであるプライマーセットIII、及び
配列番号12のヌクレオチド配列からなるフォーワードプライマーIVと、配列番号13のヌクレオチド配列からなるリバースプライマーIVと、の組み合わせであるプライマーセットIV、
からなる群から選択される少なくとも1種のプライマーセットを含む、プライマーキット。
[9]
配列番号6のヌクレオチド配列からなるフォーワードプライマーIと、配列番号7のヌクレオチド配列からなるリバースプライマーIと、の組み合わせであるプライマーセットI、
配列番号8のヌクレオチド配列からなるフォーワードプライマーIIと、配列番号9のヌクレオチド配列からなるリバースプライマーIIと、の組み合わせであるプライマーセットII、
配列番号10のヌクレオチド配列からなるフォーワードプライマーIIIと、配列番号11のヌクレオチド配列からなるリバースプライマーIIIと、の組み合わせであるプライマーセットIII、
配列番号12のヌクレオチド配列からなるフォーワードプライマーIVと、配列番号13のヌクレオチド配列からなるリバースプライマーIVと、の組み合わせであるプライマーセットIV、及び
配列番号14のヌクレオチド配列からなるフォーワードプライマーVと、配列番号15のヌクレオチド配列からなるリバースプライマーVと、の組み合わせであるプライマーセットV、
を含む、[8]に記載のプライマーキット。
[10]
[1]~[7]のうちのいずれか一項に記載の腐蛆病菌の同時検出方法に用いるためのプライマーキットである、[8]又は[9]に記載のプライマーキット。
本発明によれば、ミツバチに感染する病原菌である、遺伝子型ERIC I型のアメリカ腐蛆病菌、遺伝子型ERIC II型のアメリカ腐蛆病菌、ERIC I型及びII型以外の遺伝子型のアメリカ腐蛆病菌、表現型非典型のヨーロッパ腐蛆病菌、及び表現型典型のヨーロッパ腐蛆病菌を同時に、かつ容易に検出することができる腐蛆病菌の同時検出方法、並びに、これに好適に用いることができるプライマーキットを提供することが可能となる。
全遺伝子型のアメリカ腐蛆病菌の標的配列(16S rRNA遺伝子)を検出するためのプライマーの、配列番号1のヌクレオチド配列における設計部位を示す概略図である。 表現型典型のヨーロッパ腐蛆病菌の標的配列(Na/H antiporter遺伝子)を検出するためのプライマーの、配列番号5のヌクレオチド配列における設計部位を示す概略図である。 遺伝子型ERIC I型のアメリカ腐蛆病菌の標的配列(Toxin 1遺伝子)を検出するためのプライマーの、配列番号2のヌクレオチド配列における設計部位を示す概略図である。 遺伝子型ERIC II型のアメリカ腐蛆病菌の標的配列(GenBankアクセッション番号FI763267で登録されている配列)を検出するためのプライマーの、配列番号3のヌクレオチド配列における設計部位を示す概略図である。 表現型非典型のヨーロッパ腐蛆病菌の標的配列(Fur family transcriptional regulator遺伝子)を検出するためのプライマーの、配列番号4のヌクレオチド配列における設計部位を示す概略図である。 試験例1の各プライマーセットの組み合わせでのマルチプレックスPCR後の2%アガロースゲル電気泳動で得られた電気泳動像である。 試験例1の各プライマーセットの組み合わせでのマルチプレックスPCR後の2%アガロースゲル電気泳動で得られた電気泳動像である。 試験例1の1-A-aのプライマーセットの組み合わせでのマルチプレックスPCR後の2%アガロースゲル電気泳動で得られた電気泳動像である。 試験例2の各菌株(菌株No.1~24)から抽出したゲノムDNAを鋳型DNAとしたマルチプレックスPCR後の2%アガロースゲル電気泳動で得られた電気泳動像である。 試験例2の各菌株(菌株No.25~48)から抽出したゲノムDNAを鋳型DNAとしたマルチプレックスPCR後の2%アガロースゲル電気泳動で得られた電気泳動像である。 試験例2の各菌株(菌株No.49~72)から抽出したゲノムDNAを鋳型DNAとしたマルチプレックスPCR後の2%アガロースゲル電気泳動で得られた電気泳動像である。 試験例2の各菌株(菌株No.73~96)から抽出したゲノムDNAを鋳型DNAとしたマルチプレックスPCR後の2%アガロースゲル電気泳動で得られた電気泳動像である。 試験例2の各菌株(菌株No.97~105)から抽出したゲノムDNAを鋳型DNAとしたマルチプレックスPCR後の2%アガロースゲル電気泳動で得られた電気泳動像である。 試験例3の段階希釈を行なった各ゲノムDNAを鋳型DNAとしたマルチプレックスPCR後の2%アガロースゲル電気泳動で得られた電気泳動像である。 試験例4のハチミツ試料を用いたマルチプレックスPCR後の2%アガロースゲル電気泳動で得られた電気泳動像である。 試験例5のマルチプレックスPCRを用いた国産ハチミツの腐蛆病菌汚染状況調査結果を示す円グラフである(a:2つの腐蛆病菌による汚染状況、b:遺伝子型ERIC I型又はII型のアメリカ腐蛆病菌による汚染状況、c:表現型典型又は非典型のヨーロッパ腐蛆病菌による汚染状況)。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
<腐蛆病菌>
本発明の腐蛆病菌の同時検出方法によれば、遺伝子型ERIC I型のアメリカ腐蛆病菌(Paenibacillus larvae ERIC I)、遺伝子型ERIC II型のアメリカ腐蛆病菌(Paenibacillus larvae ERIC II)、ERIC I型及びII型以外の遺伝子型のアメリカ腐蛆病菌、表現型非典型のヨーロッパ腐蛆病菌(atypical Melissococcus plutonius)、及び表現型典型のヨーロッパ腐蛆病菌(typical Melissococcus plutonius)を同時に検出することが可能である。検出される腐蛆病菌としては、そのDNAが存在し得る限り、菌体の一部や死菌であってもよい。
(アメリカ腐蛆病菌、Paenibacillus larvae)
アメリカ腐蛆病菌は、グラム陽性の有芽胞桿菌であり、現時点では、5つの遺伝子型(遺伝子型ERIC I型~V型)が知られている。ERIC型は、Genersch et al.,2006,Int.J.Syst.Evol.Microbiol.56:501-511及びBeims et al.,2020,Int.J.Med.Microbiol.310:151394の方法により区別される。いずれの遺伝子型株も蜂児に対する毒性が強いが、遺伝子型ERIC I型株は蜂児に対する毒性が比較的弱く、発症までに時間がかかるため、蛹になるときに巣房に蓋がされた後の有蓋蜂児期での死亡率が高くなる。他方、遺伝子型ERIC II型株は蜂児に対する毒性が強いため、巣房に蓋がされる前に早期に幼虫を死に至らしめる。また、蜂群に対しては、遺伝子型ERIC I型株では、感染蜂児が有蓋蜂児期に死亡することが多いため、働きバチによる死亡蜂児の発見と除去が遅れ、結果として蜂群全体への菌の蔓延が早まり蜂群の崩壊が早くなる傾向がある。他方、遺伝子型ERIC II型株では、感染した蜂児は早期に死亡し、働きバチによって早期に発見されて巣から除去されるため、蜂群全体に菌が広がりにくく、蜂群が崩壊するほど重症になるまでには時間がかかる傾向がある。さらに、どちらの遺伝子型株も消毒薬(例えば、微酸性次亜塩素酸水や亜塩素酸水)に対する抵抗性が強いが、遺伝子型ERIC II型株は特に強いことが知られている(Ohashi et al.,2020,J.Vet.Med.Sci.82:261-271)。
(ヨーロッパ腐蛆病菌、Melissococcus plutonius)
ヨーロッパ腐蛆病菌としては、世界各国でヨーロッパ腐蛆病症例から一般的に分離され、古くから知られる典型的な性状を示す株(典型株)と、典型株とは性状が大きく異なる株(非典型株)とが知られている。表現型典型株は、Haynes et al.,2013,Environ.Microbiol.Rep.,5:525-529の方法に従ったMLST分類により、CC3又はCC13に分類され、表現型非典型株は、同MLST分類により、CC12に分類される。いずれの表現型株も嫌気又は微好気条件で発育可能であるが、表現型非典型株は、発育が比較的早く、また、Na/K比<1の培地では好気条件でも発育可能である。さらに、表現型非典型株は、L アラビノース、D セロビオース、及びサリシンからの酸産生能、並びに、エスクリンの加水分解能を有し、βグルコシダーゼ活性を有する株が多いのに対して、表現型典型株はいずれも有さない。
<腐蛆病菌の同時検出方法>
本発明の腐蛆病菌の同時検出方法は、試料中の、遺伝子型ERIC I型のアメリカ腐蛆病菌、遺伝子型ERIC II型のアメリカ腐蛆病菌、ERIC I型及びII型以外の遺伝子型のアメリカ腐蛆病菌、表現型非典型のヨーロッパ腐蛆病菌、及び表現型典型のヨーロッパ腐蛆病菌を同時に検出する方法であり、
前記試料由来のDNAを鋳型として、下記の5種の標的領域:
配列番号1に記載のヌクレオチド配列における53~1024番目の第1の標的領域、
配列番号2に記載のヌクレオチド配列における794~2101番目の第2の標的領域、
配列番号3に記載のヌクレオチド配列における2~339番目の第3の標的領域、
配列番号4に記載のヌクレオチド配列における109~367番目の第4の標的領域、及び
配列番号5に記載のヌクレオチド配列における36~222番目の第5の標的領域、
をそれぞれ増幅可能なプライマーの組み合わせであるプライマーセットを5種用いて、マルチプレックスPCRを行なうPCR工程と、
前記PCR工程で得られたPCR産物を検出する検出工程と、
を含む方法である。
[試料]
本発明の腐蛆病菌の同時検出方法の対象となる「試料」としては、腐蛆病菌由来のDNAが存在し得る試料である限り特に制限はなく、例えば、ミツバチ(成虫、蛹、幼虫)、ミツバチの死骸、ミツバチの腐蛆(ミツバチの幼虫や蛹が腐敗したもの);蜂群の巣、ハチミツ、ローヤルゼリー、プロポリス、花粉、土壌、ミツバチの糞、蜂群の巣の底に落ちた様々な堆積物(デブリ)等の巣内又は巣周辺から採取される環境材料が挙げられる。本発明に係る試料としてはこれらのうちのいずれであってもよいが、例えば、蜂群の腐蛆病菌汚染状況調査を目的とする場合にはハチミツが好ましい。腐蛆病菌は、ハチミツに混入することが知られており、かかるハチミツが幼虫の感染源になったり、農場全体に感染が拡がる原因となったりするためや、腐蛆病が発症する数年前からハチミツに腐蛆病菌が混入し始めるという報告もされているためである。本発明によれば、ハチミツのように腐蛆病菌のDNA含有量が比較的微量の試料を用いても、下記のマルチプレックスPCRで効率よく腐蛆病菌由来のDNAを増幅することができるため、培養を介さずに、迅速かつ簡便に、高い精度で目的の腐蛆病菌を検出することが可能である。
前記試料としては、粉砕や凍結等の処理がなされたものであっても、適宜、希釈液で希釈又は懸濁したものであってもよい。前記希釈液としては、例えば、水;生理食塩水;リン酸緩衝液、Tris緩衝液、グッド緩衝液、ホウ酸緩衝液等の緩衝液が挙げられる。
[標的領域]
本発明によれば、本発明者らが見出した下記の5種の標的領域:
配列番号1に記載のヌクレオチド配列における53~1024番目の第1の標的領域、
配列番号2に記載のヌクレオチド配列における794~2101番目の第2の標的領域、
配列番号3に記載のヌクレオチド配列における2~339番目の第3の標的領域、
配列番号4に記載のヌクレオチド配列における109~367番目の第4の標的領域、及び
配列番号5に記載のヌクレオチド配列における36~222番目の第5の標的領域、
をそれぞれ増幅可能なようにプライマーを設計することにより、マルチプレックスPCRで前記腐蛆病菌を全て同時に検出することができる。
第1の標的領域は、全遺伝子型のアメリカ腐蛆病菌(現時点では遺伝子型ERIC I型~V型の全ての遺伝子型のアメリカ腐蛆病菌)が共通に保有し、かつ、遺伝子型ERIC I~V型のアメリカ腐蛆病菌に特異的である16S rRNA遺伝子(GenBankアクセッション番号:X60619(Govan et al.,1999,Appl.Environ.Microbiol.,65:2243-2245);以下、場合によりこの遺伝子の配列を「第1の標的配列」という)上の領域である。第1の標的配列の一部の、第1の標的領域を含む典型的なヌクレオチド配列を配列番号1に示す。配列番号1で示されるヌクレオチド配列において、「n」は、a、c、g、又はtを示す。
第2の標的領域は、遺伝子型ERIC I型のアメリカ腐蛆病菌に特異的なToxin 1遺伝子(plx1)(GenBankアクセッション番号:KC456421(Beims et al.,2020,Open Vet.J.,10:53-58);以下、場合によりこの遺伝子の配列を「第2の標的配列」という)上の領域である。第2の標的配列の典型的なヌクレオチド配列を配列番号2に示す。第2の標的領域としては、配列番号2に記載のヌクレオチド配列における1369~1922番目であることがより好ましい。
第3の標的領域は、遺伝子型ERIC II型のアメリカ腐蛆病菌に特異的な配列であることを本発明者らが見出したGenBankアクセッション番号FI763267で登録されている配列(以下、場合により「第3の標的配列」という)上の領域である。第3の標的配列の典型的なヌクレオチド配列を配列番号3に示す。第3の標的領域としては、配列番号3に記載のヌクレオチド配列における3~335番目であることがより好ましい。
第4の標的領域は、表現型非典型のヨーロッパ腐蛆病菌に特異的な遺伝子であるFur family transcriptional regulator遺伝子(GenBankアクセッション番号:AP012282(ローカスタグ:MPD5_0863)(Arai et al.,2014,J.Vet.Med.Sci.,76:491-498);以下、場合によりこの遺伝子の配列を「第4の標的配列」という)上の領域である。第4の標的配列の典型的なヌクレオチド配列を配列番号4に示す。第4の標的領域としては、配列番号4に記載のヌクレオチド配列における111~367番目であることがより好ましい。
第5の標的領域は、表現型典型のヨーロッパ腐蛆病菌に特異的な遺伝子であるNa/H antiporter遺伝子(napA)(GenBankアクセッション番号:AP012200(ローカスタグ:MPTP_0420)(Arai et al.,2014,J.Vet.Med.Sci.,76:491-498);以下、場合によりこの遺伝子の配列を「第5の標的配列」という)上の領域である。第5の標的配列の典型的なヌクレオチド配列を配列番号5に示す。
なお、上記第1~第5の各標的配列のヌクレオチド配列については、多型などによって株レベルでの個体差が生じ得ることは理解されたい。
上記第1~第5の各標的領域において、下記のプライマーセットにより増幅する範囲は、互いに異なる塩基数の範囲、すなわち、5種の標的領域毎に異なる長さのヌクレオチド断片の範囲、つまり、下記のマルチプレックスPCRで得られるPCR産物サイズ(塩基数(bp))が互いに異なる範囲であればよく、それぞれ独立に、各標的領域内の一部分であっても、全範囲であってもよい。上記第1~第5の各標的領域において、増幅する範囲の塩基数としては、互いに異なる数で、100~1500塩基であることが好ましく、150~1000塩基であることがより好ましい。
これらの中でも、上記第1~第5の各標的領域において、下記のプライマーセットで増幅するように選択する範囲としては、特に非特異反応が低減され、電気泳動等による各PCR産物の区別がより明確となり、かつ、各標的領域のPCRによる増幅効率が互いに同等になる観点から、それぞれ、以下の範囲:
第1の標的領域では、配列番号1に記載のヌクレオチド配列における53~1024番目の範囲(同配列では972塩基)、
第2の標的領域では、配列番号2に記載のヌクレオチド配列における1369~1922番目の範囲(同配列では554塩基)、
第3の標的領域では、配列番号3に記載のヌクレオチド配列における3~335番目の範囲(同配列では333塩基)、
第4の標的領域では、配列番号4に記載のヌクレオチド配列における111~367番目の範囲(同配列では257塩基)、及び
第5の標的領域では、配列番号5に記載のヌクレオチド配列における36~222番目の範囲(同配列では187塩基)
であることが好ましい。
[プライマー設計部位]
本発明においては、上記第1~第5の各標的領域をそれぞれ増幅可能なように、すなわち、上記第1~第5の各標的領域上のそれぞれ互いに異なる2つの部位(以下、場合により「プライマー設計部位」という)にそれぞれハイブリダイズするように、プライマーを設計する。1つの標的領域上の2つのプライマー設計部位は、互いに一部重複していてもよい。
前記プライマー設計部位の塩基数としては、15塩基以上であることが好ましく、17~30塩基であることがより好ましく、20~28塩基であることがさらに好ましい。
このようなプライマー設計部位としては、それぞれ、第1~第5の各標的領域において上記の増幅する範囲(塩基数)の条件を満たす限り特に制限はなく、好ましくは、下記のプライマーが他の部位や他のプライマーにハイブリダイズすることがないように、また、GC含量が互いに近くかつ好ましい範囲内になるように、適宜選択することができる。
これらの中でも、前記プライマー設計部位としては、特に非特異反応が低減され、電気泳動等による各PCR産物の区別がより明確となり、かつ、各標的領域のPCRによる増幅効率が互いに同等になる観点から、それぞれ、下記の部位:
第1の標的領域では、配列番号1のヌクレオチド配列における53~75番目の部位、及び配列番号1のヌクレオチド配列における1002~1024番目の部位、好ましくはこれらの組み合わせ、
第2の標的領域では、配列番号2のヌクレオチド配列における1369~1396番目の部位、及び配列番号2のヌクレオチド配列における1895~1922番目の部位、好ましくはこれらの組み合わせ、
第3の標的領域では、配列番号3のヌクレオチド配列における3~30番目の部位、及び配列番号3のヌクレオチド配列における312~335番目の部位、好ましくはこれらの組み合わせ、
第4の標的領域では、配列番号4のヌクレオチド配列における111~138番目の部位、及び配列番号4のヌクレオチド配列における340~367番目の部位、好ましくはこれらの組み合わせ、
第5の標的領域では、配列番号5のヌクレオチド配列における36~55番目の部位、配列番号5のヌクレオチド配列における201~222番目の部位、好ましくはこれらの組み合わせ、
が挙げられる。
[プライマーセット]
本発明に係るプライマーセットは、上記第1~第5の各標的領域のうち、互いに異なる2つのプライマー設計部位にそれぞれハイブリダイズするプライマーの組み合わせである。
本発明において、プライマーが前記プライマー設計部位に対して「ハイブリダイズする」には、プライマーが前記プライマー設計部位のセンス鎖(例えば、配列番号1~5で示されるヌクレオチド配列上の部位)にハイブリダイズすることに加えて、その相補鎖にハイブリダイズすることも含む。
また、本発明において、プライマーが前記プライマー設計部位に対して「ハイブリダイズする」とは、当該プライマーの少なくとも一部と前記プライマー設計部位とが二本鎖を形成可能なヌクレオチド配列であればよく、完全に相補的でなくともよい。本発明において、かかるハイブリダイズの条件としては、当該プライマーと前記プライマー設計部位とのヌクレオチド配列の配列相補性が、80%以上、90%以上、95%以上、(例えば、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上)であることが好ましい。なお、前記配列相補性は、当業者であれば公知の手法(例えば、BLAST(NCBI))を用いて適宜計算することができる。また、本発明において、前記ハイブリダイズの条件としては、前記プライマーのヌクレオチド配列が、前記プライマー設計部位のヌクレオチド配列の全長に対して完全に相補的なヌクレオチド配列の1~複数個所において、連続して1~5塩基(好ましくは1~3塩基、例えば、3塩基、2塩基、1塩基)の塩基が挿入、欠失、又は置換されたものであってもよい。
このようなプライマーを構成するヌクレオチド配列は、上記ハイブリダイズの条件を満たすように、前記プライマー設計部位のヌクレオチド配列に合わせて、より好ましくは他の部位や他のプライマーにハイブリダイズすることがないように、また、GC含量が互いに近くかつ好ましい範囲内になるように、適宜設計することができる。
本発明に係るプライマーの長さとしては、それぞれ独立に、15塩基以上であることが好ましく、17~30塩基であることがより好ましく、20~28塩基であることがさらに好ましい。また、本発明に係るプライマーにおけるGC含量としては、それぞれ独立に、40~60%であることが好ましく、45~55%であることがより好ましい。
本発明に係るプライマーは、例えば、市販のオリゴヌクレオチド合成機により合成することができる。また、本発明に係るプライマーは、天然のヌクレオチド(デオキシリボヌクレオチド及び/又はリボヌクレオチド)のみから構成されていなくともよく、例えば、PNA(polyamide nucleic acid)、LNA(登録商標、locked nucleic acid)、ENA(登録商標、2’-O,4’-C-Ethylene-bridged nucleic acids)等の非天然型のヌクレオチドにてその一部又は全部が構成されていてもよい。
このようなプライマーセットとして、より具体的には、
配列番号1のヌクレオチド配列における53~75番目の部位にハイブリダイズするフォーワードプライマーIと、配列番号1のヌクレオチド配列における1002~1024番目の部位にハイブリダイズするリバースプライマーIと、の組み合わせであるプライマーセットI、
配列番号2のヌクレオチド配列における1369~1396番目の部位にハイブリダイズするフォーワードプライマーIIと、配列番号2のヌクレオチド配列における1895~1922番目の部位にハイブリダイズするリバースプライマーIIと、の組み合わせであるプライマーセットII、
配列番号3のヌクレオチド配列における3~30番目の部位にハイブリダイズするフォーワードプライマーIIIと、配列番号3のヌクレオチド配列における312~335番目の部位にハイブリダイズするリバースプライマーIIIと、の組み合わせであるプライマーセットIII、
配列番号4のヌクレオチド配列における111~138番目の部位にハイブリダイズするフォーワードプライマーIVと、配列番号4のヌクレオチド配列における340~367番目の部位にハイブリダイズするリバースプライマーIVと、の組み合わせであるプライマーセットIV、及び
配列番号5のヌクレオチド配列における36~55番目の部位にハイブリダイズするフォーワードプライマーVと、配列番号5のヌクレオチド配列における201~222番目の部位にハイブリダイズするリバースプライマーVと、の組み合わせであるプライマーセットV、
が挙げられる。
上記のように菌株間で数塩基の欠失、挿入等による個体差は生じ得るため、各プライマーセットによれば、それぞれ次のPCR産物:
プライマーセットIによれば、好ましくは、配列番号1に記載のヌクレオチド配列における53~1024番目の範囲(972塩基)、若しくは、配列番号1に記載のヌクレオチド配列における53~1024番目の範囲に対応する範囲(好ましくは972~974塩基)が増幅されたPCR産物;
プライマーセットIIによれば、好ましくは、配列番号2に記載のヌクレオチド配列における1369~1922番目の範囲(554塩基)、若しくは、配列番号2に記載のヌクレオチド配列における1369~1922番目の範囲に対応する範囲(好ましくは551~557塩基)が増幅されたPCR産物;
プライマーセットIIIによれば、好ましくは、配列番号3に記載のヌクレオチド配列における3~335番目の範囲(333塩基)、若しくは、配列番号3に記載のヌクレオチド配列における3~335番目の範囲に対応する範囲(好ましくは330~336塩基)が増幅されたPCR産物;
プライマーセットIVによれば、好ましくは、配列番号4に記載のヌクレオチド配列における111~367番目の範囲(257塩基)、若しくは、配列番号4に記載のヌクレオチド配列における111~367番目の範囲に対応する範囲(好ましくは254~260塩基)が増幅されたPCR産物;
プライマーセットVによれば、好ましくは、配列番号5に記載のヌクレオチド配列における36~222番目の範囲(187塩基)若しくは、配列番号4に記載のヌクレオチド配列における36~222番目の範囲に対応する範囲(好ましくは184~190塩基)が増幅されたPCR産物
が得られる。
上記において、ヌクレオチド配列の各範囲に「対応する」範囲とは、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool at the National Center for Biological Information(米国国立生物学情報センターの基本ローカルアラインメント検索ツール))等を用いて(例えば、パラメータ:デフォルト値(すなわち初期設定値))、ヌクレオチド配列を整列させた際に、各対照の範囲(例えば、上記プライマーセットIの場合には配列番号1に記載のヌクレオチド配列における53~1024番目の範囲)と同列になるヌクレオチド配列の範囲のことである。
プライマーセットIとしては、配列番号6のヌクレオチド配列からなるフォーワードプライマーIと、配列番号7のヌクレオチド配列からなるリバースプライマーIと、の組み合わせであることが好ましく、
プライマーセットIIとしては、配列番号8のヌクレオチド配列からなるフォーワードプライマーIIと、配列番号9のヌクレオチド配列からなるリバースプライマーIIと、の組み合わせであるプライマーセットIIであることが好ましく、
プライマーセットIIIとしては、配列番号10のヌクレオチド配列からなるフォーワードプライマーIIIと、配列番号11のヌクレオチド配列からなるリバースプライマーIIIと、の組み合わせであることが好ましく、
プライマーセットIVとしては、配列番号12のヌクレオチド配列からなるフォーワードプライマーIVと、配列番号13のヌクレオチド配列からなるリバースプライマーIVと、の組み合わせであることが好ましく、
プライマーセットVとしては、配列番号14のヌクレオチド配列からなるフォーワードプライマーVと、配列番号15のヌクレオチド配列からなるリバースプライマーVと、の組み合わせであることが好ましい。
さらに、5種のプライマーセットの組み合わせとしては、特に非特異反応が低減され、電気泳動等による各PCR産物の区別がより明確となり、かつ、各標的領域のPCRによる増幅効率が互いに同等になる観点から、上記の好ましいプライマーセットII~IV(配列番号8及び9、配列番号10及び11、配列番号12及び13)のうちの少なくとも1セットを含むことが好ましく、上記の好ましいプライマーセットIII(配列番号10及び11)を少なくとも含むことがより好ましく、上記の好ましいプライマーセットII~IVを全て含むことがさらに好ましく、上記の好ましいプライマーセットI~Vを全て含むことがさらにより好ましい。
[DNA抽出工程]
本発明の腐蛆病菌の同時検出方法としては、前記PCR工程の前に、前記試料からDNAを抽出する工程をさらに含んでいてもよい。DNAの抽出方法としては特に制限されず、従来公知の方法を適宜用いることができ、例えば、アルカリ-SDS法、フェノール抽出法、市販の核酸抽出・精製キット(例えば、InstaGene Matrix(Bio-Rad)、DNeasy PowerSoil Kit(QIAGEN)、DNeasy Plant Mini Kit(QIAGEN)、ヨーネスピン(ファスマック)、ヨーネ・ピュアスピン(ファスマック))を用いる方法、及びこれらに準じた方法が挙げられる。中でも、前記試料としてハチミツを用いる場合の好ましい方法としては、ハチミツ中で外的刺激に強い硬い殻に覆われた芽胞の状態で存在しているアメリカ腐蛆病菌のDNAと、ハチミツ中で外的刺激に比較的脆弱な栄養体の形態で存在しているヨーロッパ腐蛆病菌のDNAと、をいずれもハチミツからより効率よくかつ同時に抽出できる観点から、ヨーネスピン及びヨーネピュアスピンを用いる方法が挙げられる。
[PCR工程(増幅工程)]
本発明の腐蛆病菌の同時検出方法は、上記の第1~第5の各標的領域をそれぞれ増幅可能なプライマーの組み合わせである前記プライマーセットを5種用いて、マルチプレックスPCRを行なうPCR工程を含む。
本発明に係るPCR工程では、例えば、前記試料から抽出したDNAに、前記5種のプライマーセット及び相補鎖合成酵素(例えば、DNAポリメラーゼ)を添加してマルチプレックスPCR反応を行なうことにより、前記試料中に目的の標的領域、すなわち目的の腐蛆病菌に特異的な目的の標的配列が存在する場合には、これに前記プライマーがハイブリダイズし、前記プライマーセットに挟まれる領域を鋳型として前記標的領域上のヌクレオチド断片が合成され、かかるヌクレオチド断片が増幅された増幅産物(PCR産物)を得ることができる。本発明に係る5種のプライマーセットを用いたマルチプレックスPCRによれば、前記試料中に5種の腐蛆病菌に特異的な目的の標的配列が存在する場合には、5種のPCR産物を得ることができる。
前記マルチプレックスPCRにおける相補鎖合成酵素の種類、反応液の組成、反応温度、時間、及びサイクル数等の反応条件としては、特に制限なく適宜選択することができる。例えば、本発明において、上記の好ましいプライマーセットI~V(配列番号6及び7、配列番号8及び9、配列番号10及び11、配列番号12及び13、配列番号14及び15)を用いる場合には、一般的なPCR条件を採用することができ、例えば、相補鎖合成、より好ましくはDNAポリメラーゼによるDNA伸長化の温度を、50~75℃、より好ましくは52~72℃の範囲とすることができる。
[検出工程]
前記PCR工程で得られたPCR産物は、適宜公知の方法又はそれに準じた方法で検出することができる。これにより、目的の標的配列の検出、すなわち、目的の腐蛆病菌に特異的な配列の存在を検出することが可能となり、間接的に前記試料中の目的の腐蛆病菌を検出することが可能となる。
前記検出方法としては、例えば、アガロースゲル等の電気泳動によって前記PCR産物を分離して検出する方法;前記PCR産物にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブが固定された基板を用いて測定するDNAアレイ法等が挙げられる。
また、得られたPCR産物は、それぞれ、例えば、蛍光色素(例えば、臭化エチジウム、Syber Green(登録商標)、SYTO63、GelRed、GelGreen等)をインターカレートしてその蛍光を検出する方法;他の蛍光物質(FITC、FAM、DEAC、R6G、TexRed、Cy5、BODIPY FL等)、放射性同位体(H、14C、32P、35S、123I等)、発光物質(ルミノール、ルシフェリン、ルシゲニン等)等の標識物質で標識し、前記標識物質に応じたシグナル(呈色(発色)、反射光、発光、消光、蛍光、放射性同位体による放射線等)を検出する方法で確認することができる。さらに、必要に応じて前記シグナルの強度を測定して前記PCR産物を定量し、目的の標的配列又はそれに示される遺伝子の量を推定してもよい。
前記検出方法としては、上記の方法に限定されず、また、上記の方法や従来公知の方法を適宜組み合わせてもよい。中でも、本発明に係る5種のプライマーセットを用いる場合には、特に容易にPCR産物の分離が可能であることから、前記検出方法としては、前記電気泳動により前記PCR産物を分離する工程を含むことが好ましい。この場合には、例えば、アガロースゲル(例えば2%)のゲルに、得られたPCR産物を電気泳動し、前記蛍光色素(例えば、臭化エチジウム、GelRed、GelGreen等)で染色して、分離されたPCR産物のバンドの有無を蛍光によって確認することで、目的のPCR産物の有無、すなわち、目的の標的配列の有無、つまり前記試料中の目的の腐蛆病菌の有無を検出することができる。本発明に係る5種のプライマーセットを用いたマルチプレックスPCRによれば、PCR産物が5種とも得られた場合でも、それらを明確に分離し、区別して検出することができる。
<プライマーキット>
本発明は、
配列番号8のヌクレオチド配列からなるフォーワードプライマーIIと、配列番号9のヌクレオチド配列からなるリバースプライマーIIと、の組み合わせであるプライマーセットII、
配列番号10のヌクレオチド配列からなるフォーワードプライマーIIIと、配列番号11のヌクレオチド配列からなるリバースプライマーIIIと、の組み合わせであるプライマーセットIII、及び
配列番号12のヌクレオチド配列からなるフォーワードプライマーIVと、配列番号13のヌクレオチド配列からなるリバースプライマーIVと、の組み合わせであるプライマーセットIV、
からなる群から選択される少なくとも1種のプライマーセットを含む、プライマーキットも提供する。
本発明のプライマーキットに含まれるプライマーセットは、それぞれ、上述したように、
プライマーセットIIは、配列番号2に記載のヌクレオチド配列における1369~1922番目の範囲(554塩基)若しくはそれに対応する範囲(好ましくは551~557塩基)を増幅することで、第2の標的配列を検出、つまり遺伝子型ERIC I型のアメリカ腐蛆病菌を特異的に検出可能なプライマーセットであり、
プライマーセットIIIは、配列番号3に記載のヌクレオチド配列における3~335番目の範囲(333塩基)若しくはそれに対応する範囲(好ましくは330~336塩基)を増幅することで、第3の標的配列を検出、つまり遺伝子型ERIC II型のアメリカ腐蛆病菌を特異的に検出可能なプライマーセットであり、
プライマーセットIVは、配列番号4に記載のヌクレオチド配列における111~367番目の範囲(257塩基)若しくはそれに対応する範囲(好ましくは254~260塩基)を増幅することで、第4の標的配列を検出、つまり表現型非典型のヨーロッパ腐蛆病菌を特異的に検出可能なプライマーセットである。
これらのプライマーセットはいずれも、本発明者らが新規に見出したプライマーセットである。本発明のプライマーキットとしては、プライマーセットIIIを少なくとも含むことが好ましく、プライマーセットII、III、及びIVを全て含むことがより好ましい。
さらに、本発明のプライマーキットとしては、
配列番号6のヌクレオチド配列からなるフォーワードプライマーIと、配列番号7のヌクレオチド配列からなるリバースプライマーIと、の組み合わせであるプライマーセットI、及び/又は
配列番号14のヌクレオチド配列からなるフォーワードプライマーVと、配列番号15のヌクレオチド配列からなるリバースプライマーVと、の組み合わせであるプライマーセットV、
をさらに含むことも好ましい。
プライマーセットIは、配列番号1に記載のヌクレオチド配列における53~1024番目の範囲(972塩基)若しくはそれに対応する範囲(好ましくは972~974塩基)を増幅することで、第1の標的配列を検出、つまり全遺伝子型のアメリカ腐蛆病菌を検出可能なプライマーセットである。上記の遺伝子型ERIC I型又はII型の遺伝子型のアメリカ腐蛆病菌をそれぞれ特異的に検出可能なプライマー(プライマーセットII及びプライマーセットIII)と組み合わせることで、ERIC I型及びII型以外の遺伝子型のアメリカ腐蛆病菌を検出可能である。すなわち、プライマーセットII~IIIのいずれによってもPCR産物が確認されず、かつ、プライマーセットIのみによってPCR産物が確認された場合には、遺伝子型ERIC I型及びII型以外の遺伝子型のアメリカ腐蛆病菌が検出されたと判断することができる。
プライマーセットVは、配列番号5に記載のヌクレオチド配列における36~222番目の範囲(187塩基)若しくはそれに対応する範囲(好ましくは184~190塩基)を増幅することで、第5の標的配列を検出、つまり表現型典型のヨーロッパ腐蛆病菌を特異的に検出可能なプライマーセットである。
本発明のプライマーキットは、上記の各腐蛆病菌の検出方法に加えて、上記の本発明の腐蛆病菌の同時検出方法に好適に用いることができる。本発明のプライマーキットに含まれる各プライマーとしては、それぞれ、緩衝液、安定剤、保存剤、防腐剤等の他の成分が添加してあってもよい。また、本発明のプライマーキットとしては、前記試料の希釈液;DNAを抽出、精製するための試薬;マルチプレックスPCRに必要な酵素、緩衝液、pH調整剤等の試薬;検出工程に必要な試薬;標準核酸;使用説明書等をさらに備えていてもよい。
以下、試験例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の試験例に限定されるものではない。
1.マルチプレックスPCRの標的配列の選定
1.1.アメリカ腐蛆病菌の標的配列
(ERIC I型)
遺伝子型ERIC I型のアメリカ腐蛆病菌に特異的な標的配列としては、Beims et al.,2020,Open Vet.J.,10:53-58に記載のToxin 1遺伝子(plx1)の配列を用いた。遺伝子型ERIC I型のアメリカ腐蛆病菌の標的配列(Toxin 1遺伝子)の典型的なヌクレオチド配列を配列番号2に示す。
(ERIC II型)
遺伝子型ERIC II型のアメリカ腐蛆病菌に特異的な標的配列は次のように選択した。すなわち、先ず、Funfhaus et al.,2009,Environ.Microbiol.Rep.,1:240-250においてERIC II型株にのみ存在することが報告されている9つの配列をGenBankデータベースから取得した。次いで、GenBankデータベースに登録されている、他の遺伝子型(ERIC I型、III型、IV型、V型)のアメリカ腐蛆病菌株の完全長ゲノムと比較し、ERIC II型株のみが保有するといえる配列は1つ(GenBankアクセッション番号FI763267で登録されている配列)であることを見出し、標的配列とした。なお、下記の表11~12の菌株No.72~86に記載の、遺伝子型が既知のアメリカ腐蛆病菌株における、同標的配列の有無を、下記のプライマーセットIIIによるPCRで調べたところ、当該標的配列が確かに真にERIC II型株に特異的な配列であることが確認された。遺伝子型ERIC II型のアメリカ腐蛆病菌の標的配列の典型的なヌクレオチド配列を配列番号3に示す。
(全遺伝子型)
遺伝子型ERIC I型及びII型を含む全ての遺伝子型(ERIC I~V型)のアメリカ腐蛆病菌が共通に保有する16S rRNA遺伝子の配列を、全遺伝子型のアメリカ腐蛆病菌に特異的な標的配列とした。全遺伝子型のアメリカ腐蛆病菌の標的配列(16S rRNA遺伝子)の典型的なヌクレオチド配列を配列番号1に示す。この標的配列を上記の遺伝子型ERIC I型及びII型のアメリカ腐蛆病菌の両標的配列と組み合わせて検出対象とすることにより、上記の遺伝子型ERIC I型及びII型の標的配列のいずれも検出されず、かつ、全遺伝子型のアメリカ腐蛆病菌の標的配列(16S rRNA遺伝子)のみが検出されることで、ERIC I型及びII型以外の遺伝子型のアメリカ腐蛆病菌を検出することができる。
1.2.ヨーロッパ腐蛆病菌の標的配列
(非典型)
表現型非典型のヨーロッパ腐蛆病菌に特異的な標的配列としては、Arai et al.,2014,J.Vet.Med.Sci.,76:491-498に記載のFur family transcriptional regulator遺伝子の配列を用いた。表現型非典型のヨーロッパ腐蛆病菌の標的配列(Fur family transcriptional regulator遺伝子)の典型的なヌクレオチド配列を配列番号4に示す。
(典型)
表現型典型のヨーロッパ腐蛆病菌に特異的な標的配列としては、Arai et al.,2014,J.Vet.Med.Sci.,76:491-498に記載のNa/H antiporter遺伝子(napA)の配列を用いた。表現型典型のヨーロッパ腐蛆病菌の標的配列(Na/H antiporter遺伝子)の典型的なヌクレオチド配列を配列番号5に示す。
2.プライマーセットの設計
2.1 全遺伝子型のアメリカ腐蛆病菌に共通の標的配列
全遺伝子型のアメリカ腐蛆病菌の標的配列(16S rRNA遺伝子)を特異的に検出するプライマーとして、Govan et al.,Appl.Environ.Microbiol.,65:2243-2245、及び、de Graaf et al.,2013,J.Apic.Res.,52:1-28に記載のプライマーを用いた。全遺伝子型のアメリカ腐蛆病菌の標的配列(16S rRNA遺伝子)を検出するためのプライマー、そのヌクレオチド配列を示す配列番号、及び同プライマーセット(プライマーセットI)で増幅され得るヌクレオチド断片の期待されるサイズ(PCR産物サイズ)を下記の表1に示し、各プライマーの配列番号1のヌクレオチド配列における設計部位を示す概略図を図1に示す。
Figure 2023074765000001
2.2 表現型典型のヨーロッパ腐蛆病菌の標的配列
表現型典型のヨーロッパ腐蛆病菌の標的配列(Na/H antiporter遺伝子)を特異的に検出するプライマーとしては、Arai et al.,2014,J.Vet.Med.Sci.,76:491-498に記載のプライマーを用いた。表現型典型のヨーロッパ腐蛆病菌の標的配列(Na/H antiporter遺伝子)を検出するためのプライマー、そのヌクレオチド配列を示す配列番号、及び同プライマーセット(プライマーセットV)で増幅され得るヌクレオチド断片の期待されるサイズ(PCR産物サイズ)を下記の表2に示し、各プライマーの配列番号5のヌクレオチド配列における設計部位を示す概略図を図2に示す。
Figure 2023074765000002
2.3 遺伝子型ERIC I型のアメリカ腐蛆病菌、遺伝子型ERIC II型のアメリカ腐蛆病菌、表現型非典型のヨーロッパ腐蛆病菌の各標的配列
上記2.1~2.2以外の標的配列については、より精度の高いマルチプレックスPCRを構築するために、複数のフォワードプライマー(F)及びリバースプライマー(R)を設計した。各プライマーの設計には、遺伝子配列解析ソフトSequencher 5.4.6(Gene Codes Corp.)を使用し、長さが20~28bp、GC含量が40~60%となるように設計した。また、プライマーの特異性を上げるために3’末端の塩基がTとなる配列は避け、マルチプレックスPCRを行なった時に標的配列毎に異なる大きさのヌクレオチド断片が増幅されるように、すなわち、得られるPCR産物が異なる大きさとなるように、プライマーを設計した。また、BLAST検索(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov)によりGenBankのデータベース上にある全ての細菌の遺伝子配列と比較することによって、設計したプライマーが標的菌に高い特異性を持つことを確認した。
遺伝子型ERIC I型のアメリカ腐蛆病菌の標的配列(Toxin 1遺伝子)を検出するためのプライマー(12種類)及びそのヌクレオチド配列を示す配列番号を下記の表3に示し、各プライマーの配列番号2のヌクレオチド配列における設計部位を示す概略図を図3に示す。また、遺伝子型ERIC II型のアメリカ腐蛆病菌の標的配列(GenBankアクセッション番号FI763267で登録されている配列)を検出するためのプライマー(6種類)及びそのヌクレオチド配列を示す配列番号を下記の表4に示し、各プライマーの配列番号3のヌクレオチド配列における設計部位を示す概略図を図4に示す。さらに、表現型非典型のヨーロッパ腐蛆病菌の標的配列(Fur family transcriptional regulator遺伝子)を検出するためのプライマー(4種類)及びそのヌクレオチド配列を示す配列番号を下記の表5に示し、各プライマーの配列番号4のヌクレオチド配列における設計部位を示す概略図を図5に示す。
Figure 2023074765000003
Figure 2023074765000004
Figure 2023074765000005
2.4 プライマーセットの組み合わせ
最適なマルチプレックスPCR用のプライマーセットの組み合わせを選出するため、上記で設計した表3~5に記載の複数のプライマーについて、遺伝子型ERIC II型のアメリカ腐蛆病菌の標的配列に9セット(1~9)、遺伝子型ERIC I型のアメリカ腐蛆病菌の標的配列に10セット(A~J)、表現型非典型のヨーロッパ腐蛆病菌の標的配列に4セット(a~d)のプライマーセットを設計した。下記の表6に、各プライマーセットにおけるフォワードプライマー(F)とリバースプライマー(R)との組み合わせ、及び、各プライマーセットで増幅され得るヌクレオチド断片の期待されるサイズ(PCR産物サイズ)を示す。
Figure 2023074765000006
3.マルチプレックスPCR
PCR反応の酵素には、QIAGEN Multiplex PCR Kit(QIAGEN)を使用し、1反応あたり、2×QIAGEN Multiplex PCR Master Mixを10μL、Q solutionを2μL、及び鋳型DNAを2μLずつ含む全20μLの系で実施した。反応液中の各プライマーの最終濃度は、全遺伝子型のアメリカ腐蛆病菌の標的配列(16S rRNA遺伝子)を検出するプライマー(表1に記載のプライマー)は0.1μM、それ以外のプライマー(表2~5に記載のプライマー)は全て0.2μMとした。
PCR反応条件は、98℃ 15分;94℃ 30秒、60℃ 1分30秒、72℃ 1分 (×35サイクル);72℃ 10分で行なった。全てのPCR反応はT100TM Thermal Cycler(Bio-Rad Laboratories)で行ない、6μLのPCR反応液を2%アガロースゲル電気泳動に供した。2%アガロースゲル電気泳動は、100V、30分の条件で行なった後、臭化エチジウムでDNAを染色し、UV照射下でPCR産物のバンドを観察することにより各標的配列由来のヌクレオチド断片の増幅を確認した。
<試験例1> 最適なプライマーセットの組み合わせの検討
下記の表7に記載の、遺伝子型ERIC I型のアメリカ腐蛆病菌の代表株(DTK386株)、遺伝子型ERIC II型のアメリカ腐蛆病菌の代表株(DTK384株)、表現型典型のヨーロッパ腐蛆病菌の代表株(DAT606株)、及び表現型非典型のヨーロッパ腐蛆病菌の代表株(DAT561株)から、それぞれ、InstaGene Matrix(Bio-Rad)を用いて、その取扱説明書に従ってゲノムDNAを抽出した。これら4株から抽出したゲノムDNA濃度をそれぞれNanoDrop ND-1000(Thermo Scientific)で測定後、各菌株のゲノムDNAが最終濃度0.25ng/μLになるように調整して混合した混合物2μLを陽性コントロール用の鋳型DNAとして用いた。
Figure 2023074765000007
表6に記載のプライマーセットから、各標的配列に対して1つのプライマーセットをそれぞれ選び、全遺伝子型のアメリカ腐蛆病菌の標的配列(16S rRNA遺伝子)を検出するプライマーセットI(表1)及び表現型典型のヨーロッパ腐蛆病菌の標的配列(Na/H antiporter遺伝子)を検出するプライマーセットV(表2)と組み合わせ、全360とおりの組み合わせについて、上記陽性コントロールを鋳型として、上記3に記載の条件でマルチプレックスPCRを行なった。
本試験例において、マルチプレックスPCRにより全てのプライマーセットが正しく前記陽性コントロールの標的配列上の目的のヌクレオチド断片を増幅した場合、電気泳動像では、上から、全遺伝子型のアメリカ腐蛆病菌(PCR産物サイズ:973bp)、遺伝子型ERIC I型のアメリカ腐蛆病菌(PCR産物サイズ:475~836bp)、遺伝子型ERIC II型のアメリカ腐蛆病菌(PCR産物サイズ:326~338bp)、表現型非典型のヨーロッパ腐蛆病菌(PCR産物サイズ:239~259bp)、表現型典型のヨーロッパ腐蛆病菌(PCR産物サイズ:187bp)に由来する5つの特異的PCR産物が増幅される。
マルチプレックスPCR後の2%アガロースゲル電気泳動で得られた電気泳動像の一部を図6~図7に示す。前記電気泳動の結果、非特異反応(標的配列以外からの非特異的なDNAの増幅)が確認された場合、5種類の目的の特異的PCR産物が確認できなかった場合、又は、5種類の目的の特異的PCR産物が確認できても一部のPCR産物の増幅効率が悪く、電気泳動像の輝度が低い場合には、マルチプレックスPCRに好適ではないプライマーセットの組み合わせと判断した。他方、5種類の目的の特異的PCR産物が予想されるサイズで確認され、かつ、電気泳動像で全てのPCR産物が同程度の輝度で確認できた場合を、マルチプレックスPCRに特に適したプライマーセットの組み合わせと判断した。
その結果、非特異反応はどの組み合わせでも確認されなかったが、1~2種類のPCR産物が増幅されない組み合わせがほとんどを占めた。しかしながら、1-A-aの組み合わせ、すなわち、遺伝子型ERIC II型のアメリカ腐蛆病菌の標的配列を検出するプライマーセットが、配列番号10のヌクレオチド配列からなるP1-II-F1(フォーワードプライマーIII)と、配列番号11のヌクレオチド配列からなるP1-II-R1(リバースプライマーIII)と、の組み合わせであるプライマーセット1(プライマーセットIII)、遺伝子型ERIC I型のアメリカ腐蛆病菌の標的配列を検出するプライマーセットが、配列番号8のヌクレオチド配列からなるP1-I-F1(フォーワードプライマーII)と、配列番号9のヌクレオチド配列からなるP1-I-R1(リバースプライマーII)と、の組み合わせであるプライマーセットA(プライマーセットII)、表現型非典型のヨーロッパ腐蛆病菌の標的配列を検出するプライマーセットが、配列番号12のヌクレオチド配列からなるMp-A-F1(フォーワードプライマーIV)と、配列番号13のヌクレオチド配列からなるMp-A-R1(リバースプライマーIV)と、の組み合わせであるプライマーセットa(プライマーセットIV)、である組み合わせは、マルチプレックスPCRに特に適したプライマーセットの組み合わせであることが確認された。図6~図7に示したように、1-A-aの組み合わせは、この組み合わせでなければマルチプレックスPCRの安定性が低く、1のプライマーセット、Aのプライマーセット、及びaのプライマーセットのいずれかを他のプライマーセットに代えると、5種類の目的の特異的PCR産物が安定して増幅されない傾向にあった。
上記1-A-aのプライマーセットの組み合わせで、上記陽性コントロール又は滅菌水(陰性コントロール)を鋳型DNAとして上記3に記載の条件でマルチプレックスPCRを行ない、2%アガロースゲル電気泳動で得られた電気泳動像を図8に示す。
<試験例2> マルチプレックスPCRの特異性確認試験
1-A-aのプライマーセットの組み合わせの特異性を確認するために、下記の表8~12に記載の腐蛆病菌を含む105株の菌株から抽出したゲノムDNAを鋳型DNAとして、マルチプレックスPCRを行なった。
表11~12に記載のどの腐蛆病菌も、Multilocus Sequence Typingという遺伝子型別法でより詳細な遺伝子型(Sequence Type、ST)に分けることができるが、本試験では国内の腐蛆病症例からこれまでに分離された全ての遺伝子型を網羅するために、15株のアメリカ腐蛆病菌(ERIC I型が9株、ERIC II型が6株)と、19株のヨーロッパ腐蛆病菌(典型が10株、非典型が9株)とを使用した。ヨーロッパ腐蛆病菌の基準株であるATCC 35311株(菌株No.89)は、American Type Culture Collectionから購入した。さらに、腐蛆病菌ではない菌種として、国産ハチミツから分離された58株(Okamoto et al.,2021,Front.Microbiol.12:667096)と、ミツバチの幼虫から分離された13株(Arai et al.,2014,J.Vet.Med.Sci.,76:491-498)とを加えた。
各菌株のゲノムDNAは、InstaGene Matrix(Bio-Rad)を用いて、その取扱説明書に従って抽出した。抽出したゲノムDNA濃度をそれぞれNanoDrop ND-1000(Thermo Scientific)で測定後、0.25ng/μLに調整して鋳型DNAとした。また、上記の表7に記載の4株から試験例1と同様にして調製した混合物を陽性コントロール(P)用の鋳型DNAとして用いた。
上記1-A-aのプライマーセットの組み合わせで、各菌株から調製した鋳型DNA、陽性コントロール(P)、又は滅菌水(陰性コントロール、N)を鋳型DNAとして、上記3に記載の条件でマルチプレックスPCRを行ない、2%アガロースゲル電気泳動で得られた電気泳動像を図9A~図9Eに示す。
また、前記電気泳動により、遺伝子型ERIC I型のアメリカ腐蛆病菌(期待されるPCR産物サイズ:972~974bp及び551~557bp)、遺伝子型ERIC II型のアメリカ腐蛆病菌(期待されるPCR産物サイズ:972~974bp及び330~336bp)、表現型非典型のヨーロッパ腐蛆病菌(期待されるPCR産物サイズ:254~260bp)、表現型典型のヨーロッパ腐蛆病菌(期待されるPCR産物サイズ:184~190bp)に由来する特異的PCR産物のバンドの有無を確認し、当該バンドが確認された菌株を当該腐蛆病菌陽性(+)であると判断し、確認されなかった菌株を当該腐蛆病菌陰性(-)であると判断した。結果を下記の表8~12に合わせて示す。
Figure 2023074765000008
Figure 2023074765000009
Figure 2023074765000010
Figure 2023074765000011
Figure 2023074765000012
図9A~図9E及び表8~12に示したように、本マルチプレックスPCRの特異性確認試験では、供試した全ての腐蛆病菌株を正確に、遺伝子型ERIC I型のアメリカ腐蛆病菌、遺伝子型ERIC II型のアメリカ腐蛆病菌、表現型非典型のヨーロッパ腐蛆病菌、又は表現型典型のヨーロッパ腐蛆病菌に判別した(図9C~図9E及び表11~12の菌株No.72~105)。また、腐蛆病菌ではない細菌のゲノムDNAからの非特異的なDNAの増幅は全く観察されなかった(図9A~図9C及び表8~11の菌株No.1~71)。
<試験例3> マルチプレックスPCRの感度確認試験
鋳型DNAとして、上記の表7に記載の4株から、それぞれ次の方法で抽出したDNAを用いた。すなわち、アメリカ腐蛆病菌はMYPGP寒天培地を用いて35℃、5% CO条件下で2日間、ヨーロッパ腐蛆病菌はKSBHI寒天培地を用いて35℃、嫌気条件下で3日間、それぞれ培養した後、ゲノムDNAを、Okamoto et al.,2021,Front.Microbiol.,12:667096、及び、Arai et al.,2012,PLoS One,7:e33708に記載の方法で抽出した。
アメリカ腐蛆病菌の培養に用いたMYPGP寒天培地は、Mueller-Hinton broth(Oxoid CM0405)10g、酵母エキス15g、KHPO 3g、ピルビン酸ナトリウム1g、粉末寒天20gを1Lの蒸留水に加え、121℃で15分間のオートクレーブで滅菌・溶解後、フィルター滅菌処理済み10%グルコース溶液を20mL添加し、プラスチックシャーレに分注して作製した。また、ヨーロッパ腐蛆病菌の培養に用いたKSBHI寒天培地は、Brain heart infusion broth 37g、可溶性でんぷん10g、KHPO 20.4g、粉末寒天15gを1Lの蒸留水に加え、115℃で15分間のオートクレーブで滅菌・溶解後、プラスチックシャーレに分注して作製した。
抽出したゲノムDNAは、NanoDrop ND-1000(Thermo Scientific)で濃度測定後、段階希釈を行ない、各2μLを鋳型DNAとした。上記1-A-aのプライマーセットの組み合わせを用い、上記3に記載の条件でマルチプレックスPCRを行ない、2%アガロースゲル電気泳動で得られた電気泳動像を図10に示す。
図10に示したように、本マルチプレックスPCRの感度確認試験では、少なくとも100fgの各腐蛆病菌のゲノムDNAから全遺伝子型のアメリカ腐蛆病菌の標的配列(16S rRNA遺伝子)を、少なくとも1pgの各腐蛆病菌のゲノムDNAから他の標的配列を、いずれも検出することができた。
<試験例4> ハチミツ試料を用いたマルチプレックスPCR
(1)試料の調製
(1-1) アメリカ腐蛆病菌の芽胞液の調製
遺伝子型ERIC I型のアメリカ腐蛆病菌の代表株、及び遺伝子型ERIC II型のアメリカ腐蛆病菌の代表株として、それぞれ、表7に記載のDTK386株(別名:I株)及びDTK384株(別名:N株)(いずれもミツバチの腐蛆由来)を用いた。これらの菌株を、MYPGP寒天培地を用いて35℃、5% CO条件下で長期間培養し、ウィルツ芽胞染色キット(武藤化学)を用いた芽胞染色で70-90%以上の菌細胞が芽胞になったことを確認した後、寒天培地上の芽胞を回収した。回収芽胞は滅菌水で洗浄後、再び滅菌水に懸濁して芽胞液とした。各芽胞液は実験に使用するまで4℃で保管した。芽胞濃度は倒立顕微鏡(CKX41、OLYMPUS)を用いて血球計算盤上の芽胞数をカウントして算出した。
(1-2) ヨーロッパ腐蛆病菌の菌液の調製
表現型典型のヨーロッパ腐蛆病菌の代表株、及び表現型非典型のヨーロッパ腐蛆病菌の代表株として、それぞれ、表7に記載のDAT606株及びDAT561株を用いた(いずれもミツバチの腐蛆由来)。これらの菌株を、KSBHI寒天培地を用いて35℃、嫌気条件下で3日間培養後、生えてきたコロニーを滅菌綿棒で集め、10%グリセリン加KSBHI液体培地に懸濁し、各菌液を-80℃で保管した。菌液のコロニー形成単位濃度(Colony Forming Unit[CFU]/mL)は、10倍段階希釈した菌液をBasal寒天培地(酵母エキス 10g、グルコース 10g、可溶性でんぷん 10g、L-システイン 0.25g、粉末寒天 20g、1M KHPO 100mL/L[pH 6.6]を、115℃で15分間オートクレーブ処理したもの;Forsgren et al.,2013,J.Apic.Res.,52:1-14)に滴下し、35℃で3日間嫌気培養を行なった後に生えてきたコロニーの数を数えて計測した。ヨーロッパ腐蛆病菌は連鎖状に配列しており、1つの連鎖から1つのコロニーが形成されるため、グラム染色した各菌液を顕微鏡下で観察して100連鎖の平均連鎖菌細胞数を計測し、正確な菌濃度(菌細胞/mL)を「CFU/mL×平均連鎖菌細胞数」の式により算出した。
(1-3) 腐蛆病菌に汚染されていないハチミツの選択
ヨーロッパ腐蛆病の発生が報告されていない、すなわちヨーロッパ腐蛆病菌の混入がないニュージーランド産のハチミツを材料とし、培養法によりさらにアメリカ腐蛆病菌の混入を確認した。すなわち、先ず、滅菌水で50%(v/v)に希釈したハチミツを12,000×gで15分間遠心し、得られた沈渣を80℃、85℃、90℃、95℃、又は100℃で10分間加熱処理した。加熱処理後の沈渣をナリジクス酸20μg/mL及びピペミド酸10μg/mL添加MYPGP寒天培地に接種し、5% CO条件下で6日間培養し、寒天培地上のアメリカ腐蛆病菌のコロニーの有無を確認した。アメリカ腐蛆病菌の発育が見られなかったニュージーランド産ハチミツを、腐蛆病菌を人工的に接種するためのハチミツ(腐蛆病菌に汚染されていないハチミツ)として選択した。
(1-4) ハチミツへの腐蛆病菌の接種
上記(1-3)で選択した腐蛆病菌に汚染されていないハチミツに、(1-1)で調製したアメリカ腐蛆病菌の芽胞液、及び(1-2)で調製したヨーロッパ腐蛆病菌の菌液を、ハチミツ中の各菌株の濃度がそれぞれ、1,000、100、10、又は1[菌細胞/mL]となるように添加し、既知の濃度の腐蛆病菌で汚染したハチミツ(腐蛆病菌接種ハチミツ)を調製した。
(2)試料からのDNA抽出
上記(1-4)で調製した腐蛆病菌接種ハチミツ5mLを滅菌水で50%(v/v)に希釈して12,000×gで15分間遠心分離を行ない、得られた沈渣を500μLの滅菌水に懸濁してDNA抽出材料とした。前記DNA抽出材料から、ヨーネスピン(ファスマック)又はヨーネピュアスピン(ファスマック)を用いて、それぞれこれらの取扱説明書に従ってDNAを抽出し、抽出されたDNAのうち2μLを鋳型DNAとして、下記のマルチプレックスPCRに供した。
(3)マルチプレックスPCR
上記1-A-aのプライマーセットの組み合わせで、上記3に記載の条件でマルチプレックスPCRを行なった。また、上記の表7に記載の4株から試験例1と同様にして調製した混合物(陽性コントロール)又は滅菌水(陰性コントロール)を鋳型DNAとして、同様にマルチプレックスPCRを行なった。マルチプレックスPCR後の2%アガロースゲル電気泳動で得られた電気泳動像を図11に示す。
図11に示したように、ヨーネスピン及びヨーネピュアスピンのどちらのキットを用いた場合も、100~1,000菌細胞/mLの濃度で腐蛆病菌を接種したハチミツからDNAが抽出でき、マルチプレックスPCRで5種類の目的の特異的PCR産物を検出することができた。
<試験例5> 国産ハチミツの腐蛆病菌汚染状況調査
上記1-A-aのプライマーセットの組み合わせを用いたマルチプレックスPCRの応用例として、ハチミツを用いた蜂群又は養蜂場の腐蛆病菌汚染状況調査法への有用性を確かめるため、国内で生産されたハチミツがどのくらいの割合で腐蛆病菌に汚染されているかを調査した。試料として、下記の表13~15に示す、可能な限り由来(産地、生産者、蜜源)が異なる116種類のハチミツを収集した。全てのハチミツは購入又は譲渡により2017年から2020年の間に入手された。J12、J24、及びJ42はニホンミツバチが生産したハチミツで、他は全てセイヨウミツバチが生産したハチミツである。ハチミツは全て常温で保管した。試験例4の(2)と同様の方法で、ヨーネピュアスピン(ファスマック)を用いてDNAを抽出し、抽出されたDNAのうち2μLを鋳型DNAとして、マルチプレックスPCRに供した。マルチプレックスPCRは、上記1-A-aのプライマーセットの組み合わせで、上記3に記載の条件で行なった。
前記マルチプレックスPCR後の2%アガロースゲル電気泳動で得られた電気泳動像より、全遺伝子型のアメリカ腐蛆病菌(期待されるPCR産物サイズ:972~974bp)、遺伝子型ERIC I型のアメリカ腐蛆病菌(期待されるPCR産物サイズ:972~974bp及び551~557bp)、遺伝子型ERIC II型のアメリカ腐蛆病菌(期待されるPCR産物サイズ:972~974bp及び330~336bp)、表現型非典型のヨーロッパ腐蛆病菌(期待されるPCR産物サイズ:254~260bp)、表現型典型のヨーロッパ腐蛆病菌(期待されるPCR産物サイズ:184~190bp)にそれぞれ由来するPCR産物のバンドの有無を確認し、当該バンドが確認されたハチミツを当該腐蛆病菌陽性(+)であると判断し、確認されなかったハチミツを当該腐蛆病菌陰性(-)であると判断した。結果を下記の表13~15に合わせて示す。また、116種類の国産ハチミツ中における各腐蛆病菌陽性ハチミツの割合(国産ハチミツにおける腐蛆病菌の陽性率)を算出した。結果を図12に示す。
Figure 2023074765000013
Figure 2023074765000014
Figure 2023074765000015
表13~15及び図12に示したように、116種類の国産ハチミツを用いた腐蛆病菌汚染調査では、94.0%のハチミツからいずれかの腐蛆病菌が検出され、全ての腐蛆病菌が検出限界以下(未検出)を示したハチミツは6.0%だった(図12の(a))。アメリカ腐蛆病菌に着目すると、80.2%のハチミツから遺伝子型ERIC I型又はII型の腐蛆病菌が検出され、46.6%のハチミツからは遺伝子型ERIC I型及びII型の腐蛆病菌が同時に検出された(図12の(b))。ヨーロッパ腐蛆病菌は、88.8%のハチミツから検出され、56.9%のハチミツでは典型と非典型の両タイプが、31.9%のハチミツでは典型のみが検出された(図12の(c))。さらに、40検体(34.5%)のハチミツからは、全てのタイプの腐蛆病菌(遺伝子型ERIC I型及びII型のアメリカ腐蛆病菌、表現型典型及び非典型のヨーロッパ腐蛆病菌)が同時に検出された(表13~15)。このように、本発明のマルチプレックスPCRは、ハチミツなどの試料から全てのタイプの腐蛆病菌を一度に検出する方法として極めて有用であることが示された。
本発明によれば、ミツバチに感染する病原菌である、遺伝子型ERIC I型のアメリカ腐蛆病菌、遺伝子型ERIC II型のアメリカ腐蛆病菌、ERIC I型及びII型以外の遺伝子型のアメリカ腐蛆病菌、表現型非典型のヨーロッパ腐蛆病菌、及び表現型典型のヨーロッパ腐蛆病菌を同時に、かつ容易に検出することができる腐蛆病菌の同時検出方法、及びこれに好適に用いることができるプライマーキットを提供することが可能となる。
配列番号:6
<223> Plarvae1/フォーワードプライマーI
配列番号:7
<223> Plarvae2/リバースプライマーI
配列番号:8
<223> Pl-I-F1/フォーワードプライマーII
配列番号:9
<223> Pl-I-R1/リバースプライマーII
配列番号:10
<223> Pl-II-F1/フォーワードプライマーIII
配列番号:11
<223> Pl-II-R1/リバースプライマーIII
配列番号:12
<223> Mp-A-F1/フォーワードプライマーIV
配列番号:13
<223> Mp-A-R1/リバースプライマーIV
配列番号:14
<223> Mp-T-F/フォーワードプライマーV
配列番号:15
<223> Mp-T-R/リバースプライマーV
配列番号:16
<223> Pl-I-F2
配列番号:17
<223> Pl-I-F3
配列番号:18
<223> Pl-I-F4
配列番号:19
<223> Pl-I-F5
配列番号:20
<223> Pl-I-F6
配列番号:21
<223> Pl-I-F7
配列番号:22
<223> Pl-I-R2
配列番号:23
<223> Pl-I-R3
配列番号:24
<223> Pl-I-R4
配列番号:25
<223> Pl-I-R5
配列番号:26
<223> Pl-II-F2
配列番号:27
<223> Pl-II-F3
配列番号:28
<223> Pl-II-R2
配列番号:29
<223> Pl-II-R3
配列番号:30
<223> Mp-A-F2
配列番号:31
<223> Mp-A-R2

Claims (10)

  1. 試料中の、遺伝子型ERIC I型のアメリカ腐蛆病菌(Paenibacillus larvae ERIC I)、遺伝子型ERIC II型のアメリカ腐蛆病菌(Paenibacillus larvae ERIC II)、ERIC I型及びII型以外の遺伝子型のアメリカ腐蛆病菌、表現型非典型のヨーロッパ腐蛆病菌(atypical Melissococcus plutonius)、及び表現型典型のヨーロッパ腐蛆病菌(typical Melissococcus plutonius)を同時に検出する方法であり、
    前記試料由来のDNAを鋳型として、下記の5種の標的領域:
    配列番号1に記載のヌクレオチド配列における53~1024番目の第1の標的領域、
    配列番号2に記載のヌクレオチド配列における794~2101番目の第2の標的領域、
    配列番号3に記載のヌクレオチド配列における2~339番目の第3の標的領域、
    配列番号4に記載のヌクレオチド配列における109~367番目の第4の標的領域、及び
    配列番号5に記載のヌクレオチド配列における36~222番目の第5の標的領域、
    をそれぞれ増幅可能なプライマーの組み合わせであるプライマーセットを5種用いて、マルチプレックスPCRを行なうPCR工程と、
    前記PCR工程で得られたPCR産物を検出する検出工程と、
    を含むことを特徴とする、腐蛆病菌の同時検出方法。
  2. 前記5種のプライマーセットが、
    配列番号1のヌクレオチド配列における53~75番目の部位にハイブリダイズするフォーワードプライマーIと、配列番号1のヌクレオチド配列における1002~1024番目の部位にハイブリダイズするリバースプライマーIと、の組み合わせであるプライマーセットI、
    配列番号2のヌクレオチド配列における1369~1396番目の部位にハイブリダイズするフォーワードプライマーIIと、配列番号2のヌクレオチド配列における1895~1922番目の部位にハイブリダイズするリバースプライマーIIと、の組み合わせであるプライマーセットII、
    配列番号3のヌクレオチド配列における3~30番目の部位にハイブリダイズするフォーワードプライマーIIIと、配列番号3のヌクレオチド配列における312~335番目の部位にハイブリダイズするリバースプライマーIIIと、の組み合わせであるプライマーセットIII、
    配列番号4のヌクレオチド配列における111~138番目の部位にハイブリダイズするフォーワードプライマーIVと、配列番号4のヌクレオチド配列における340~367番目の部位にハイブリダイズするリバースプライマーIVと、の組み合わせであるプライマーセットIV、及び
    配列番号5のヌクレオチド配列における36~55番目の部位にハイブリダイズするフォーワードプライマーVと、配列番号5のヌクレオチド配列における201~222番目の部位にハイブリダイズするリバースプライマーVと、の組み合わせであるプライマーセットV、
    であることを特徴とする、請求項1に記載の腐蛆病菌の同時検出方法。
  3. 前記プライマーセットIIが、配列番号8のヌクレオチド配列からなるフォーワードプライマーIIと、配列番号9のヌクレオチド配列からなるリバースプライマーIIと、の組み合わせであることを特徴とする、請求項2に記載の腐蛆病菌の同時検出方法。
  4. 前記プライマーセットIIIが、配列番号10のヌクレオチド配列からなるフォーワードプライマーIIIと、配列番号11のヌクレオチド配列からなるリバースプライマーIIIと、の組み合わせであることを特徴とする、請求項2又は3に記載の腐蛆病菌の同時検出方法。
  5. 前記プライマーセットIVが、配列番号12のヌクレオチド配列からなるフォーワードプライマーIVと、配列番号13のヌクレオチド配列からなるリバースプライマーIVと、の組み合わせであることを特徴とする、請求項2~4のうちのいずれか一項に記載の腐蛆病菌の同時検出方法。
  6. 前記5種のプライマーセットが、
    配列番号6のヌクレオチド配列からなるフォーワードプライマーIと、配列番号7のヌクレオチド配列からなるリバースプライマーIと、の組み合わせであるプライマーセットI、
    配列番号8のヌクレオチド配列からなるフォーワードプライマーIIと、配列番号9のヌクレオチド配列からなるリバースプライマーIIと、の組み合わせであるプライマーセットII、
    配列番号10のヌクレオチド配列からなるフォーワードプライマーIIIと、配列番号11のヌクレオチド配列からなるリバースプライマーIIIと、の組み合わせであるプライマーセットIII、
    配列番号12のヌクレオチド配列からなるフォーワードプライマーIVと、配列番号13のヌクレオチド配列からなるリバースプライマーIVと、の組み合わせであるプライマーセットIV、及び
    配列番号14のヌクレオチド配列からなるフォーワードプライマーVと、配列番号15のヌクレオチド配列からなるリバースプライマーVと、の組み合わせであるプライマーセットV、
    であることを特徴とする、請求項1~5のうちのいずれか一項に記載の腐蛆病菌の同時検出方法。
  7. 前記検出工程が、電気泳動により前記PCR産物を分離する工程を含むことを特徴とする、請求項1~6のうちのいずれか一項に記載の腐蛆病菌の同時検出方法。
  8. 配列番号8のヌクレオチド配列からなるフォーワードプライマーIIと、配列番号9のヌクレオチド配列からなるリバースプライマーIIと、の組み合わせであるプライマーセットII、
    配列番号10のヌクレオチド配列からなるフォーワードプライマーIIIと、配列番号11のヌクレオチド配列からなるリバースプライマーIIIと、の組み合わせであるプライマーセットIII、及び
    配列番号12のヌクレオチド配列からなるフォーワードプライマーIVと、配列番号13のヌクレオチド配列からなるリバースプライマーIVと、の組み合わせであるプライマーセットIV、
    からなる群から選択される少なくとも1種のプライマーセットを含むことを特徴とする、プライマーキット。
  9. 配列番号6のヌクレオチド配列からなるフォーワードプライマーIと、配列番号7のヌクレオチド配列からなるリバースプライマーIと、の組み合わせであるプライマーセットI、
    配列番号8のヌクレオチド配列からなるフォーワードプライマーIIと、配列番号9のヌクレオチド配列からなるリバースプライマーIIと、の組み合わせであるプライマーセットII、
    配列番号10のヌクレオチド配列からなるフォーワードプライマーIIIと、配列番号11のヌクレオチド配列からなるリバースプライマーIIIと、の組み合わせであるプライマーセットIII、
    配列番号12のヌクレオチド配列からなるフォーワードプライマーIVと、配列番号13のヌクレオチド配列からなるリバースプライマーIVと、の組み合わせであるプライマーセットIV、及び
    配列番号14のヌクレオチド配列からなるフォーワードプライマーVと、配列番号15のヌクレオチド配列からなるリバースプライマーVと、の組み合わせであるプライマーセットV、
    を含むことを特徴とする、請求項8に記載のプライマーキット。
  10. 請求項1~7のうちのいずれか一項に記載の腐蛆病菌の同時検出方法に用いるためのプライマーキットであることを特徴とする、請求項8又は9に記載のプライマーキット。
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