JP2023074654A - 電力調整システム - Google Patents
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Abstract
【課題】電力調整システムにおいて、インバランスを低減するとともに、蓄電池設備の劣化を抑制する。【解決手段】電力系統に接続された負荷設備及び蓄電池設備に出力する所定の指令を算出する演算装置を備える電力調整システムであって、演算装置は、インバランスの継続時間又は需給調整市場からの調整力指令に基づいて負荷設備又は蓄電池設備を応答設備として選択する設備選択部と、負荷設備、蓄電池設備のそれぞれの運用計画に基づいてそれぞれの設備の調整可能量及び調整力単価を算出する調整可能量演算部と、設備選択部により選択された応答設備と、調整可能量演算部により算出されたそれぞれの設備の調整可能量及び調整力単価と、に基づいて、応答設備の応答量を算出し出力する調整機器応答量決定部と、を有する。【選択図】図2
Description
本開示は、電力調整システムに関する。
近年の電力小売り自由化により、多くの小売電気事業者が電力の小売りを開始している。このような複数の小売電気事業者が存在する電力系統を安定化させるためには、需要と供給のバランスを常に一致させる同時同量を小売電気事業者各自が達成する必要がある。
このため、小売電気事業者には、30分単位での電力の計画値と実電力需要を一致させることが求められている。小売電気事業者は、この30分単位での同時同量が達成できなかった場合、その差分の電力量に基づくペナルティであるインバランス料金を送配電事業者に払う必要がある。このため、このインバランスを低減する調整力活用技術の開発が急務となっている。
計画値と実電力需要の差分であるインバランスを低減する調整力として、電気自動車(EV)等の蓄電池設備の活用が注目されており、各社が蓄電池の調整力活用方法に関する技術開発を進めている。
特許文献1には、配電系統の配電線に接続される蓄電装置の充放電を制御する充放電制御装置と通信ネットワークを介して接続される需給制御装置であって、予測された計画負荷発電量と蓄電装置の充放電を制御する際の充放電指令量と蓄電装置の蓄電量とに基づいて、将来の一定期間の買電コストと自然放電ロスコストと蓄電池寿命コストと送電ロスコストと充放電ロスコストとの和である第1の評価関数の値を計算し、第1の評価関数の値に基づいて充放電指令量を算出し、充放電指令量に基づいて買電計画を作成するとともに、現時点から一定期間の配電系統内の負荷および発電量を予測し、予測された負荷および発電量に基づいて、現時点から一定期間の買電計画に基づく買電を行った場合の買電コストと自然放電ロスコストと蓄電池寿命コストと送電ロスコストと充放電ロスコストと実際の買電量と買電計画における買電量との差に基づいて発生するコストであるペナルティコストとの和である第2の評価関数の値を計算し、第2の評価関数の値に基づいて充放電制御装置へ指令する充放電指令量を算出するものが開示されている。また、特許文献1には、第1の評価関数の値を最小とする充放電指令量を計画充放電指令量として決定すること、及び第2の評価関数の値を最小とする充放電指令を決定することが開示されている。
特許文献1では、買電コスト、自然放電ロスコスト、蓄電池寿命コスト、送電ロスコスト及び充放電ロスコストの和を最小とするように充放電指令を生成しているため、蓄電池をロスなく運用する検討が行われている。しかし、インバランスの低減に対して、空調や照明等の負荷設備で応答すべきなのか、蓄電池設備が応答すべきなのかを適切に制御しないと、蓄電池設備が過剰な充放電をすることになるため、蓄電池の劣化が進んでしまう場合がある。
本開示の目的は、電力調整システムにおいて、インバランスを低減するとともに、蓄電池設備の劣化を抑制することにある。
本開示の電力調整システムは、電力系統に接続された負荷設備及び蓄電池設備に出力する所定の指令を算出する演算装置を備えるものであって、演算装置は、インバランスの継続時間又は需給調整市場からの調整力指令に基づいて負荷設備又は蓄電池設備を応答設備として選択する設備選択部と、負荷設備、蓄電池設備のそれぞれの運用計画に基づいてそれぞれの設備の調整可能量及び調整力単価を算出する調整可能量演算部と、設備選択部により選択された応答設備と、調整可能量演算部により算出されたそれぞれの設備の調整可能量及び調整力単価と、に基づいて、応答設備の応答量を算出し出力する調整機器応答量決定部と、を有する。
本開示によれば、電力調整システムにおいて、インバランスを低減するとともに、蓄電池設備の劣化を抑制することができる。
以下、図面等を用いて、本開示の実施形態について説明する。以下の説明は、本開示の内容の具体例を示すものであり、本開示がこれらの説明に限定されるものではなく、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更および修正が可能である。また、本開示を説明するための全図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
実施例1は、需要家が電力調整システムを用いてインバランスを補正するものである。
図1は、需要家が保有する事業所における電力調整に用いる設備等を示す概略構成図である。
本図においては、需要家が保有する事業所は、工場やビル等である。事業所には、系統電力1から配電盤2を通して電力が供給される構成となっている。そして、事業所には、負荷設備16、発電設備17及び蓄電池設備18が設置されている。
負荷設備16は、空調設備3と、空調設備3を制御する空調制御コントローラ4と、照明設備5と、照明設備5を制御する照明制御コントローラ6と、を含む。負荷設備16は、電気を消費する設備であり、具体的には、空調設備3、照明設備5等の需要家の負荷である。本実施例では、負荷設備16を電力需要調整機能として活用する。
発電設備17は、太陽光発電システム7(PV)と、PVで得られた電気を負荷に供給するための電力変換器8と、を含む。発電設備17で得られた電気は、負荷に供給されるだけでなく、後述する蓄電設備に貯めておいてもよい。
蓄電池設備18は、公用車等で利用される電気自動車9(EV)と、EVの充電に用いる充電器10と、停電時等に事業所への電力供給を行う目的等で活用される定置型蓄電池設備11と、負荷に供給するための電力変換器12と、を含む。なお、本実施例では、蓄電池設備18として、EVと定置型蓄電池設備11の両方を備える設備について説明するが、蓄電池設備18は、EVと定置型蓄電池設備11の少なくともいずれかを備えていればよい。
配電盤2、空調制御コントローラ4、照明制御コントローラ6、電力変換器8、充電器10及び電力変換器12は、XEMS15に接続されている。ここで、XEMS15は、各種のエネルギーマネジメントシステムの総称であり、HEMS(家庭内のエネルギーマネジメントシステム)、BEMS(ビル内のエネルギーマネジメントシステム)、FEMS(工場内のエネルギーマネジメントシステム)等を含む。
また、XEMS15は、その他の負荷13の電力量を測定するためのスマートメータ14にも接続されている。XEMS15は、それぞれの機器から電力の消費/供給の値を通信にて受信するとともに、全体の電力監視や電力の最適化のための制御を行う。
また、XEMS15は、契約している小売電気事業者の電力調達量のデータを受信することができる。ここで、電力調達量は、小売電気事業者が電力広域的運営推進機関等に提出する電力調達計画量であり、小売電気事業者が守らなければならない事前に決定される値である。例えば、小売電気事業者は、30分同時同量を求められているので、30分間の実需要と電力調達量とを同量とする義務がある。これを逸脱すると、ペナルティとしてインバランス料金を払う必要がある。
つぎに、図1に示す設備等を活用してインバランス調整をする制御について説明する。
図2は、電力調整システムを示す構成図である。
本図に示す電力調整システムは、XEMS15に内蔵されているものとする。なお、電力調整システムは、各設備のコントローラ部にその機能の一部を配置してもよい。
本図においては、電力調整システムは、電力系統に接続された負荷設備、蓄電池設備及び発電設備に出力する所定の指令を算出する演算装置を備えるものである。なお、本実施例では、発電設備は設置されている事業所を例に説明するが、発電設備が設置されていない事業所の電力を調整する場合は、演算システムは、負荷設備及び蓄電池設備に所定の指令を算出すればよい。演算装置は、負荷設備調整可能量演算部100と、発電設備調整可能量演算部101と、蓄電池設備調整可能量演算部102と、劣化率演算部103と、蓄電池充放電単価演算部104と、設備選択部105と、インバランスリスク判定部106と、調整機器応答量決定部107と、を備えている。
まず、XEMS15で各設備の調整可能量を把握する必要があるため、 負荷設備調整可能量演算部100は、負荷設備情報及び運行情報から負荷設備調整可能量及び調整Wh単価を算出し、調整機器応答量決定部107に送信する。
発電設備調整可能量演算部101は、発電設備情報及び運行情報から発電設備調整可能量及び調整Wh単価を算出し、調整機器応答量決定部107に送信する。
蓄電池設備調整可能量演算部102は、蓄電池設備情報及び蓄電池設備運行情報から蓄電池設備調整可能量及び充電優先度を算出し、蓄電池充放電単価演算部104に送信する。
ここで、運行情報は、例えば、空調や照明を含む設備の運転の実績に基づく運転計画であり、指定した時間に該当する機器を稼働するという事前に決定されている計画である。調整Wh単価(調整電力量単価)は、例えば、¥/Whという単位を有する値であり、機器が調整力の運用をした際に劣化等で減少する性能や、燃料費を元に算出したWh(電力量)の単価である。蓄電池設備であれば、劣化により減少する充放電容量である。これが大きい場合、調整力として運用すると、経済的損失が増えることを示す指標である。調整Wh単価は、「調整力単価」ともいう。また、インバランス料金のWh当たりの単価を「インバランスの料金単価」という。
なお、負荷設備調整可能量演算部100、発電設備調整可能量演算部101及び蓄電池設備調整可能量演算部102をまとめて「調整可能量演算部」と呼ぶ。
劣化率演算部103は、蓄電池設備情報から劣化率を算出し、蓄電池充放電単価演算部104に送信する。蓄電池設備は、劣化率もパラメータとする必要があるためである。
蓄電池充放電単価演算部104は、劣化率及び充電優先度を用いて調整Wh単価を算出し、調整機器応答量決定部107に送信する。蓄電池の劣化率は、蓄電池の充電もしくは放電の前後の二点のSOC及び充放電電力から算出することができる。
設備選択部105は、実需要及び電力調達量から必要調整力及び応答すべき設備(応答設備)の情報を調整機器応答量決定部107に出力する。ここで、実需要は、例えば、配電盤2(図1)で記録される事業所のリアルタイムの電力需要値である。設備選択部105では、この実需要と電力調達量とのずれ(インバランス)の傾向から、どの設備を調整力として稼働するかを選択する。インバランスは、電力需要量と電力調達量との差であるということもできる。まとめると、設備選択部105は、所定値以上のインバランスの継続時間に基づいて負荷設備、蓄電池設備及び発電設備のうちのいずれかを応答設備として選択する。設備選択部105は、調整力単価とインバランスの料金単価とを比較することにより、それぞれの設備による応答の可否を決定してもよい。なお、事業所に発電設備が設置されていない場合は、設備選択部105は、負荷設備又は蓄電池設備を応答設備として選択する。
インバランスリスク判定部106は、例えば、日時情報からインバランスリスクを判定することで、調整力応答すべきかどうかを判定する指標を調整機器応答量決定部107に出力する。
調整機器応答量決定部107は、負荷設備調整可能量演算部100、発電設備調整可能量演算部101、蓄電池充放電単価演算部104、設備選択部105及びインバランスリスク判定部106からのデータに基づいて、負荷設備指令値、蓄電池設備指令値及び発電設備指令値を算出し、出力する。なお、事業所に発電設備が設置されていない場合は、調整機器応答量決定部107は、負荷設備指令値及び蓄電池設備指令値を算出し、出力する。
負荷設備調整可能量演算部100の出力である負荷設備調整可能量は、例えば、空調設備であれば、(現状の温度)±数℃等、許容される温度範囲内での設定温度の変化における調整量であり、照明設備であれば、現在の照明光度から許容される照明光度の変化における調整量である。負荷設備調整可能量には、負荷を下げる方向(下げDR方向)の調整可能量と、負荷を上げる方向(上げDR方向)の調整可能量との2種類がある。ここで、DRは、デマンドレスポンス(Demand Response)の略称である。
ただし、空調設備等の負荷設備に別途決定された運行予定がある場合には、調整で室温や光度等を変化させてはいけない場合がある。そのため、運行情報で運行予定が指定されている場合には、調整量を0として出力することになる。Wh単価としては、調整力として運転したとしても劣化等が起こることはないため、機器損失としては0に近い値となる。しかしながら、上げDRであれば電気料金分の損失が発生するため、電気料金の価格となる。つまり、上げDRでは電気料金価格、下げDRは0とする。なお、負荷設備調整可能量演算部100においては、空調と照明をまとめて演算しているが、分けて演算してもよい。
発電設備調整可能量演算部101の出力である発電設備調整可能量は、現在のPVの発電出力から発電を停止し0kWにするまでが調整可能量となる。本実施例では、PVのみが発電設備という扱いであるので、出力を抑制する動作である上げDRのみが対象であるが、下げDR可能な設備、例えばディーゼル発電機等であれば下げDRの調整可能量も設定可能である。
負荷設備と同様、発電設備において別途決定された運行予定がある場合には、調整で変化させてはいけない場合がある。そのため、運行情報で運行予定が指定されている場合には、調整量を0として出力することになる。Wh単価としては、上げDR調整をすることでPVの発電量を無駄にすることになるため、電気代分のWh単価が損失となる。そのため、調整Wh単価は、電気料金価格である。
蓄電池設備調整可能量演算部102では、負荷設備等と同様、蓄電池設備の運行情報、例えば、EVの運行予約情報を計算に入れる。例えば、事業所で公用車のEVを使用するにあたり、何時から使用するというような運行情報を入力する。EVを利用するに当たり充電率(State of Charge:SOC)が目標SOC以下の場合には、運行前にそのSOCを確保しておく等、運行前にも充電の必要があるため、この計算が必要となる。
このような観点から、充電優先度の決定を行う。
充電優先度には、充電優先放電禁止、充電許可放電許可、充電指示及び充放電禁止がある。充電優先放電禁止は、目標SOC以下であるため、充電の必要があるが、使用時間までに時間的に余裕があるため、調整力応答をする際に優先的に充電し、放電は禁止する場合である。充電許可放電許可は、目標SOCを満たしているため、調整力応答を制限なくできる場合である。充電指示は、目標SOCを達成するために充電をしなければいけない場合である。充放電禁止とは、使用時間が近いために調整力応答での利用を禁止する場合である。
図3は、図2の蓄電池設備調整可能量演算部102における充電優先度の決定するプロセスを示すフロー図である。
図3においては、まず、工程S1にて、次の三つの式を用いて充電開始時間を算出する。
(差分SOC)=(目標SOC)-(現在SOC)
(充電必要時間)=(差分SOC)×(電池容量)/(充電器最大充電出力)
(充電開始時間)=(予約時間)-(充電必要時間)-(充電時間マージン)
ここで、予約時間は、「予約時刻」ともいう。
(充電必要時間)=(差分SOC)×(電池容量)/(充電器最大充電出力)
(充電開始時間)=(予約時間)-(充電必要時間)-(充電時間マージン)
ここで、予約時間は、「予約時刻」ともいう。
そして、工程S2にて、現在時間(現在時刻)が上記の充電開始時間(充電開始時刻)の前かどうかを判定する。言い換えると、次の式を満たすか否かを判定する。
(現在時間)<(充電開始時間)
上記のように時刻に該当する用語を「時間」と言い換えている理由は、上記のような演算においては、時刻を数字に置き換えて計算をするからである。
上記のように時刻に該当する用語を「時間」と言い換えている理由は、上記のような演算においては、時刻を数字に置き換えて計算をするからである。
工程S2でYesの場合、工程S3にて、次の式を満たすかを判定する。
(差分SOC)>0
工程S3でYesの場合、工程S4にて充電優先放電禁止とする。一方、工程S3でNoの場合、工程S5にて充電許可放電許可とする。
工程S3でYesの場合、工程S4にて充電優先放電禁止とする。一方、工程S3でNoの場合、工程S5にて充電許可放電許可とする。
工程S2でNoの場合は、工程S6にて次の式を満たすかを判定する。
(現在SOC)<(目標SOC)
工程S6でYesの場合、工程S7で目標SOCまで充電するための充電指示となる。工程S6でNoの場合、工程S8で充放電禁止とする。
工程S6でYesの場合、工程S7で目標SOCまで充電するための充電指示となる。工程S6でNoの場合、工程S8で充放電禁止とする。
最終的には、工程S9にて、充電器許可出力範囲で調整可能量を演算する。これは、例えば、SOCが100%の場合には、充電可能量が0kWになることや、充電器の最大出力値以上は出力できないため、充電器側が制限する制限値を守る動作である。
工程S1~S9を実施することにより、予約時間までに目標SOCに到達することができ、且つ、現在SOCが目標SOC未満の場合には、充電のみを優先することで、効率よく調整力活用をすることが可能となる。
充電優先及び充電許可の処理の差分に関しては、蓄電池充放電単価演算部104における処理として、図6の説明で詳細を後述する。
劣化率演算部103は、充電器や蓄電池設備の電力変換器の情報から容量劣化率(SOHQ)を算出する。蓄電池設備でSOHQを測定し通信でXEMSが取得できる場合は、それを使用してもよいが、蓄電池設備でSOHQをXEMSに送る機能を有している例は少ない。そのため、XEMSで取得可能な情報からSOHQを測定する必要がある場合が多い。
図4は、図2の劣化率演算部103におけるSOHQの演算プロセスの例を示すフロー図である。
図4においては、まず、工程S100にて、蓄電池設備電源をOFFとし、一定時間休止する。これは、SOHQの演算に用いるSOCの取得値を電源ON時に表示される演算誤差の少ない初期値に戻すためである。SOC演算は、電源ON時間が長い場合、もしくは電力を入出力している時間が長い場合、電流センサの誤差等が生じやすく、電池電圧に基づくSOCを取得しにくい。そのため、XEMSで電池電圧に基づくSOCを取得するためには、蓄電池設備自体を再起動すること、及び電池電圧が落ち着くまでの間一定時間を休止することが望ましい。なお、電源のON、OFFは、電源の入り、切りを表す。
次に、工程S101にて、電源ONし、電源ONした後のSOC(現在のSOC(以下「現在SOC」という。))をSOC1として記録する。そして、工程S102にて、充電もしくは放電を実施する。
その後、工程S103にて、充電もしくは放電が停止した際に、次の式を満たすかを判定する。
|(現在SOC)-SOC1|>(SOC閾値)
工程S103にてYesの場合、工程S104に進み、蓄電池設備電源をOFFとし、一定時間休止する。次に、工程S105にて、電源ONし、電源ONした後のSOC(現在SOC)をSOC2として記録する。
工程S103にてYesの場合、工程S104に進み、蓄電池設備電源をOFFとし、一定時間休止する。次に、工程S105にて、電源ONし、電源ONした後のSOC(現在SOC)をSOC2として記録する。
最後に、工程S106にて、下記式(1)及び(2)を用いて現在の満充電容量Qmax及びSOHQを計算し、SOHQを更新する。
式中、充放電kWhは、工程S102で充電もしくは放電をした電力量の絶対値である。充放電効率は、充電器の充放電に伴う損失を計算に入れた場合の充放電の効率である。初期満充電容量は、製品仕様書に記載されている新品の蓄電池設備の満充電容量である。
なお、本図に示す演算プロセスは、定期的にSOHQを演算するために行ってもよいし、工程S103までが成立した場合(工程S103にてYesの場合)に、工程S104以降を必要に応じて実施するようにしてもよい。
このようにしてSOHQを算出することにより、蓄電池設備の詳細な蓄電池情報が取得できないXEMSであっても、SOHQを取得することができる。
図5は、図4の演算プロセスにより得られたSOCの経時変化を示すグラフである。
本図に示すように、まず、任意のタイミングで電源OFFとし、一定時間休止した後に電源ONとする。この時のSOC(現在SOC)をSOC1として記録する。その後、例えば充電処理が行われた後に、電源OFFとし、一定時間休止した後、電源ONとする。この場合に、休止直前のSOCと電源ON時のSOCとは、電流センサ等の誤差に対応する差(休止前との差)が生じることが多い。
このため、誤差の少ない電源ON時のSOCをSOC2として記録し、満充電容量及びSOHQを演算する。
このようにすることで、誤差が少なくSOHQを演算することが可能となる。蓄電池設備のSOC演算の手法に影響される部分であるが、一般的なSOC演算が電源再起動でリフレッシュすることと、一定時間休止させると蓄電池電圧を反映したSOCに収束することとが知られているため、このような演算プロセスを行えば、高精度にSOHQを算出することが可能となる。
蓄電池充放電単価演算部104では、蓄電池設備調整可能量演算部102の結果と劣化率演算部103の結果とから調整Wh単価を算出し、出力する。蓄電池設備調整可能量に関しては、蓄電池設備調整可能量演算部102の演算結果をそのまま後段の演算部に出力するのみである。
図6は、図2の蓄電池充放電単価演算部104における調整Wh単価の演算プロセスの例を示すフロー図である。
図6においては、まず、工程S200にて、充電優先度が「充電指示」になっているかを判定する。これは、図3の工程S4、S5、S7、S8で選択されるものに対応している。
工程S200でYesの場合、工程S201に進み、放電Wh単価を無効値、充電を実施するために充電Wh単価を負の値に設定する。後段の調整機器応答量決定部107(図2)では、各機器の調整Wh単価(上げDRと下げDRとで分かれている。)の大きさで調整機器を決定する処理としている。例えば、放電を実施してはいけない場合は、無効値に設定し、出力する。一方、充電を実施しなければいけない場合は、負の値に設定し、出力する。正の値であった場合には、単価が低い順番、つまり経済性が確保できる順番で調整力応答をすることとしている。これは、あくまでも後段の処理を調整Wh単価で統一するための一例である。
工程S200でNoの場合は、工程S202にて充電優先度が「充放電禁止」となっているかを判定する。Yesの場合は、工程S203に進み、放電Wh単価及び充電Wh単価を演算が実行されない無効値に設定する。工程S202でNoの場合は、工程S204に進み、充電優先度が「充電優先」となっているか判定する。工程S204でYesの場合は、工程S205に進み、(充電Wh単価)=0、放電Wh単価を演算が実行されない無効値に設定する。ここで、(充電Wh単価)=0は、充電が必要なタイミングで最優先に充電することを意味する。
工程S204でNoの場合、つまり充電優先度が「充電許可、放電許可」の場合は、工程S206に進み、後述する蓄電池設備の現在の充放電単価に設定する。
蓄電池設備の現在の充放電単価は、下記式(3)により算出する。
製品仕様のみから上記式(3)で算出すると、蓄電池設備の現在の充放電単価は、高くなりがちで調整力として利用されにくくなってしまうことが多いため、補正係数を用いることで、目標の使用頻度まで利用されるようにしている。例えば、新品の蓄電池設備であれば、インバランスペナルティが大のときには応答した方がよいと考えられるので、インバランスペナルティが過去1年の中で最大となった日の1日の料金の平均値が新品の単価となるように補正係数を調整することが考えられる。
現在の製品価値は、年数によって減少していくものであり、例えば減価償却の考え方で製品の購入費用から使用想定年数まで減少する費用である。現在の製品価値は、使用からの年数を入力として、あらかじめ設定した現在の製品価値と使用年数との関係から算出される。使用想定年数は、製品の保証年数でもよいし、あらかじめ決定している廃棄までの期間でもよい。寿命までの残kWhは、例えば寿命をSOHQ60%と定めた場合には、そのSOHQに到達するまでに充放電可能なkWh(電力量)である。この残kWhは、現在のSOHQを入力として、設定した寿命までの残kWhとSOHQとの関係から算出される。寿命までの残kWhとSOHQとの関係は、あらかじめ設定した関係式によるものであってもよいし、実際の蓄電池設備の寿命予測によって逐次更新されるものであってもよい。上記式(3)を用いることで、蓄電池設備を調整力として過剰に使用することなく運用することが可能となる。
なお、蓄電池設備の調整力単価は、蓄電池の劣化率及び使用年数、現在の電池温度及びSOCにおける劣化の感度等に基づいて決定してもよい。
蓄電池設備は、分単位での応答が可能であり、人への影響もないため、瞬時に応答することが可能である。すなわち、蓄電池設備は、充電・放電の切り替えに関する即応性が高い。
一方、照明や空調等の負荷設備は、人へ影響があり、分単位で応答を変更することは好ましくない。人への影響には、例えば数分で照明の光度が変更になった場合不快に感じてしまうことや、空調温度を1℃下げた後に数分後に2℃上げるような動作をすると快適性に影響を及ぼすことがある。そのため、人の快適さに影響を与える照明や空調等は、変化が急峻でないことが望ましい。
また、空調は、運転を変更する場合に一定の時間が必要であり、応答に数十分の時間を要する場合がある。よって、空調は、即応性が低い。
まとめると、蓄電池設備は、分単位での応答が可能である一方、照明や空調等を含む負荷設備は、快適性を維持する観点から消費電力の変更が難しい。
図7は、実需要及び調達量の経時変化の一例を示すグラフである。図中、実線は調達量(電力調達量)、破線は実需要を示している。
本図においては、実需要と調達量との大小関係が、長時間(例えば数時間)にわたって変わらない領域200、202と、比較的短時間(例えば20分~1時間程度)で変わる領域201とがある。言い換えると、領域200、202においてはインバランスの継続時間が長く、領域201においてはインバランスの継続時間が短い。
よって、領域200、202と領域201とでは、応答すべき設備を変更することが望ましい。すなわち、インバランスの継続時間に基づいて応答設備を選択することが望ましい。
本図に示すように、具体的には、領域200、202においては、負荷設備で応答することが望ましい。これは、一定時間、(実需要)>(調達量)の状態が継続する場合、冷房の設定温度を上げる等、負荷設備における消費電力(実需要)を低減することで応答することを意味する。一方、領域201においては、蓄電池設備で応答する必要がある。実需要と調達量とが短時間で逆転しているためである。
領域200、202において蓄電池設備で全て応答することにすると、蓄電池設備の容量が過剰に必要になってしまう。一方、領域201において負荷設備で応答することにすると、頻繁に空調の運転の変更をする必要が生じるため、応答できず、前述したように人の快適さにも影響を与えてしまう。
図8は、図2の設備選択部105における演算プロセスの例を示すフロー図である。
図8においては、いずれの設備で応答すべきかを決定する演算プロセスを示している。
まず、工程S300にて、瞬時必要調整力及び必要調整力を次の二つの式により計算する。
(瞬時必要調整力)=(瞬時実需要)-(瞬時調達量)
(必要調整力)={(30分同時同量範囲内の総合実需要)-(30分同時同量範囲内の調達量)}/(制御時間)
ここで、瞬時必要調整力は、実需要のサンプリング周期毎に対応する調整量と比較し、どの程度ずれているかを把握するための指標である。また、必要調整力は、30分同時同量達成のために必要な調整力である。例えば、14時から14時30分の時間窓であれば、現時刻が14時15分である場合、14時から14時15分までの実需要と調達量のずれである。瞬時必要調整力が瞬時(1秒以下でもよい。)の値であるのに対し、必要調整力は、時間窓内のずれの積算値である。言い換えると、必要調整力は、所定時間内の実需要と瞬時調達量との差の平均値である。
(必要調整力)={(30分同時同量範囲内の総合実需要)-(30分同時同量範囲内の調達量)}/(制御時間)
ここで、瞬時必要調整力は、実需要のサンプリング周期毎に対応する調整量と比較し、どの程度ずれているかを把握するための指標である。また、必要調整力は、30分同時同量達成のために必要な調整力である。例えば、14時から14時30分の時間窓であれば、現時刻が14時15分である場合、14時から14時15分までの実需要と調達量のずれである。瞬時必要調整力が瞬時(1秒以下でもよい。)の値であるのに対し、必要調整力は、時間窓内のずれの積算値である。言い換えると、必要調整力は、所定時間内の実需要と瞬時調達量との差の平均値である。
次に、工程S301にて、A時間以上の間、次の式を満たすかを判定する。
|(瞬時必要調整力)|>B(kW)
これは、図7の領域200、202に該当するか否かを判定するための処理である。Aの値は、例えば、人の快適さに影響を与えない時間窓や空調が応答までに要する時間を加味して設定される。Bの値は、例えば、負荷設備の設備容量を元に設定される。
これは、図7の領域200、202に該当するか否かを判定するための処理である。Aの値は、例えば、人の快適さに影響を与えない時間窓や空調が応答までに要する時間を加味して設定される。Bの値は、例えば、負荷設備の設備容量を元に設定される。
工程S301でYesの場合は、工程S302に進み、次の二つの式により負荷設備必要調整力及び他設備必要調整力を算出する。
(負荷設備必要調整力)=(A時間内の瞬時必要調整力の平均値)
(他設備必要調整力)=(必要調整力)-(負荷設備必要調整力)
ここで、他設備は、蓄電池設備及び発電設備を含む。
(他設備必要調整力)=(必要調整力)-(負荷設備必要調整力)
ここで、他設備は、蓄電池設備及び発電設備を含む。
工程S301でNoの場合は、工程S303に進み、負荷設備が現在も調整力応答をしており、調整力応答時間がD時間を超えたかを判定する。工程S303でYesの場合は、工程S304に進み、(負荷設備必要調整力)=0、(他設備必要調整力)=(必要調整力)とする。
工程S303でNoの場合は、工程S305に進み、(負荷設備必要調整力)=(A時間内の瞬時必要調整力の平均値)、(他設備必要調整力)=(必要調整力)-(負荷設備必要調整力)とする。
負荷設備が応答する間は、(負荷設備必要調整力)=(A時間内の瞬時必要調整力の平均値)で固定とすることで、負荷設備の運転が変化することがないため、人への影響を最小限にとどめることができる。また、少なくともD時間以上連続で負荷設備を稼働させることで、設備の急な運転変更を抑制することができる。
図9Aは、図2のインバランスリスク判定部106において日時情報からインバランスリスクを判定した結果の例を示す表(上げDRリスクテーブル)である。
図9Bは、図2のインバランスリスク判定部106において日時情報からインバランスリスクを判定した結果の例を示す表(下げDRリスクテーブル)である。
インバランス料金は、需給の逼迫による停電リスクによって値が変動するため、停電しやすいタイミングに料金が高騰する傾向にある。そのため、現在の日時から季節及び時間を割り出し、需給が逼迫しやすい時期か、時間帯かを判定することで、リスク判定を行う。
例えば、上げDRは、需要を上げる方向の調整であり、調達量よりも実需要が低い場合に行う処理である。この場合は、インバランスが発生したとしても電力が余っている方向であるため、停電リスクは低い。このため、リスクは低いと判定してよい。また、日中よりも夜の方が需要が小さく太陽光発電等の変動リスクも少ないため、リスクが低くなる。
下げDRは、需要を下げる方向の調整であり、調達量よりも実需要が高い場合に行う処理である。この場合は、電力が足りない方向であるため、停電リスクが高い。このため、リスクは高いと判定する。また、日中の方が需要の立ち上がりや天気の変動での影響を受けるため、リスクが高くなる傾向にある。また、夏や冬の方が需要が大きいため、リスクが高くなる傾向にある。
このリスク情報を例えば¥/kWhという単位を有する指標として後段の処理に出力する。これは、調整Wh単価と比較しやすくするためである。本実施例では、インバランスリスク判定部106の入力を日時情報とし、日時情報から需給の逼迫を判定するようにしているが、直接需給の逼迫情報を得ることができるのであれば、その手段で代替してもよい。また、外部の機関が行っているインバランス料金推定の結果を元に判定してもよいし、卸電力市場価格を参考にしてもよい。例えば、前年度もしくは対象となる日にちの前週の卸電力市場価格の推移にリスク係数(例:2倍)をかけたものを使用することが考えられる。
まとめると、インバランスの料金単価は、季節及び時間帯による需給逼迫度によって決定してもよい。
図10は、図2の調整機器応答量決定部107における演算プロセスの例を示すフロー図である。
図2に示すとおり、調整機器応答量決定部107においては、前段の各演算部等からの情報を集約し応答する機器を決定する。図10においては、応答量を決定するプロセスを示している。
図10に示すように、まず、工程S400にて、Wh単価が負の設備に応答指令を出すとともに、当該設備の応答量を他設備必要調整力から差し引く。もしインバランスを増やす向きであれば、他設備必要調整力は増えることになる。この処理は、図3に示す充電指示をインバランスに関わりなく実施するためである。
次に、工程S401にて、上げDRか下げDRかで使用するWh単価テーブルを選択する。そして、工程S402にて、単価順に並べ変える。次に、工程S403にて、インバランスリスクで応答する機器候補を選定する。具体的には、調整Wh単価がインバランスリスクの¥/kWhという単位を有する指標よりも安い機器だけが候補となる。次に、工程S404にて、負荷設備必要調整力を候補内の負荷設備のうち単価が安い順に割り当てて、指令値を負荷設備に送る。
次に、工程S405にて、他設備も同様に、他設備必要調整力を候補内の他設備のうち単価が安い順に割り当てて、指令値を各設備に送る。この際、工程S404にて、負荷設備必要調整力が負荷設備だけで応答できるかはわからないので、他設備必要調整力と負荷設備が応答できていない出力とを他設備に割り当てる。
図11は、図2の調整機器応答量決定部107における演算プロセスの一部を示す模式図である。
図11に示すように、調整機器応答量決定部107においては、設備毎の調整可能量及び調整Wh単価情報が集約される。空調が調整可能量0である理由は、例えば運行情報が決定されており、調整力応答できない場合であるためである。負荷設備は、上げDR用テーブル及び下げDR用テーブルを保持している。太陽光発電システムは、出力制限をする上げDRしか対応できないので、上げDRテーブルのみとなる。蓄電池設備は、充電(上げDR)及び放電(下げDR)の両方を保有している。充電指示になっているEV_1は、下げDRであっても充電が実行される。
図中右矢印で示すように、工程S402の処理に対応しており、Wh順に並べ変えて優先度を決定する。この優先度の順でインバランスリスクよりも安いものが応答の候補となる。言い換えると、インバランスよりも調整力単価を優先して応答設備を選択する。
本図に示すような画像を電力調整システムの表示部(端末の画面等)に表示してもよい。
上記のような演算プロセスを用いることで、実需要と電力調達量とのずれを計算に入れた上で適切な設備を選択し、調整力応答を実行することができる。このため、インバランスペナルティのリスクを減らすことができる。また、蓄電池設備への分配をインバランスの傾向や劣化率から換算する調整力単価で決定することで、蓄電池設備の充放電を実行する必要がない場合が多くなり、蓄電池設備の劣化を防ぐことも可能である。
実施例2では、複数の需要家(N件)まとまって調整力応答をする場合である。
実施例1では、1件の需要家に絞って話をしたが、小売電気事業者が契約しているN件の需要家の中でインバランスを解消することも可能である。30分同時同量は、小売電気事業者の管轄するN件の需要家内で達成すればよい。つまり、需要家_1でインバランスが発生しても、需要家_2でそれを解消することができれば問題にならない。また、ある需要家が(調達量)<(実需要)である場合に、他の需要家では(調達量)>(実需要)であれば、必要な調整力が減る効果も期待できる。そのため、複数の需要家を束ねてインバランスを解消することで、調整力として稼働する機器を減らすことが可能である。
図12は、統括EMSを用いたシステムを示す概略構成図である。
本図において、XEMS400は、各需要家の事業所に設置されている。XEMS400には、図1のXEMS15と同様に、各事業所の配電盤2、空調制御コントローラ4、照明制御コントローラ6、電力変換器8、充電器10及び電力変換器12が接続されている。統括EMS401は、N件の事業所に設置されたXEMS400に接続され、これらのXEMS400を統括するものである。XEMS400が図1のXEMS15と異なる点は、XEMS15が有する機能の一部を統括EMS401側が担っている点である。よって、統括EMS401は、「統括演算装置」と呼ぶことができる。
図13は、統括EMSを有する電力調整システムを示す構成図である。
図2に示す負荷設備調整可能量演算部100、発電設備調整可能量演算部101、蓄電池設備調整可能量演算部102、劣化率演算部103及び蓄電池充放電単価演算部104は、図12の各XEMS400に属する。
図13において、統括EMSは、記録部500と、設備選択部501と、インバランスリスク判定部106と、調整機器応答量決定部502と、を含む。記録部500には、N個のXMES400からの情報が蓄積されている。設備選択部501は、N個のXEMS400のすべてに対応する構成である。
具体的には、図8の工程S300では、瞬時必要調整力及び必要調整力を事業所ごとに計算しているが、図13の統括EMSにおいては、次の2つの式により計算する。
(瞬時必要調整力)=Σ(瞬時実需要)-Σ(瞬時調達量)
(必要調整力)={Σ(30分同時同量範囲内の総合実需要)-Σ(30分同時同量範囲内調達量)}/(制御時間)
このほかは、定数A等が共通ではないが、処理としては同様である。
(必要調整力)={Σ(30分同時同量範囲内の総合実需要)-Σ(30分同時同量範囲内調達量)}/(制御時間)
このほかは、定数A等が共通ではないが、処理としては同様である。
インバランスリスク判定部106における処理については、特に変更はない。
調整機器応答量決定部502は、事業所が1件の場合である図2の調整機器応答量決定部107とは処理が異なる。
処理としては、図11では1件の事業所の設備のみが対象であるが、図13の調整機器応答量決定部502は、N個のXEMS400に接続されたすべて設備を対象として、図11に示すような処理を行い、応答の候補を選択する。そして、調整機器応答量決定部502は、選択の結果を負荷設備指令値、蓄電池設備指令値及び発電設備指令値を各XEMS400に出力する。
本実施例では、図11のように全設備情報を統括EMS側に送ることを想定しているが、需要家の数が増加していくと、統括EMS自体で処理が困難になる場合がある。この場合には、例えば、図11の蓄電池及びEVをまとめて蓄電池設備としてこの情報を統括EMS側に送信してもよい。機能の分割は、システムの大きさで決定する。
実施例3は、需要家側で調整力応答が完結できない場合、すなわちインバランスが応答設備の処理を超える場合に小売電気事業者側に電力調達を依頼するものである。
システムの構成は、図1に示す実施例1と同様である。
図14は、実施例3の電力調整システムを示す構成図である。
本図において、負荷設備調整可能量演算部100、発電設備調整可能量演算部101、蓄電池設備調整可能量演算部102、劣化率演算部103、蓄電池充放電単価演算部104及び調整機器応答量決定部107については、実施例1(図2)の構成と同様であり、同様の処理を行う。
本図の設備選択部600においては、後述のとおり、実施例1とは異なる処理をする。
調整機器応答量決定部601においては、図10の演算プロセスにより応答指令を出力するとともに、小売電気事業者に対して電力調達依頼を送信する。小売電気事業者は、この依頼を受けて電力調達を行い、電力調達量を修正する。
図15は、図14の設備選択部600における電力調達依頼のための演算プロセスの例を示すフロー図である。
図15においては、図8に示す工程S300と工程S301との間に、工程S500及び工程S501を行う。
工程S500では、E時間以上の間、次の式を満たすかを判定する。
|瞬時必要調整力|>F(kW)
工程S500でYesの場合は、工程S501に進み、次の式により電力調達依頼値を算出する。
工程S500でYesの場合は、工程S501に進み、次の式により電力調達依頼値を算出する。
(電力調達依頼値)=(E時間内の瞬時必要調整力の平均値)
その後、図8の工程S301の処理に移行する。
その後、図8の工程S301の処理に移行する。
工程S500でNoの場合にも、図8の工程S301へ移行する。これは、図7に示す領域200、202のように実需要と調達量との大小関係が長時間にわたって変わらず、その差がある程度大きい場合に、負荷設備で調整するのではなく、電力の調達量を調整する処理を行うことを意味する。
卸電力取引所を活用すれば、1時間前であれば電力を調達することが可能である。そのため、あまりにもインバランスが大きいと判定された場合には、需要家側が調整するのではなく、電力の調達量を修正することで不要な設備稼働を抑制することができる。
実施例4は、実施例1で使用する運行情報がピークシフト、需要シフト等に基づいて決定されたものを使用する場合である。
実施例1の図2では、各設備の運行情報は、単に事前に決定された計画としか記載していないが、具体的には、需要シフトが考えられる。
卸電力市場の単価は、夜間が安価で昼間が高価になる傾向にある。このため、調整可能機器は、昼に発生しうる需要を夜間にシフトした方が電気料金が下がる可能性がある。このような電気料金の最適化を事前に計算し、あらかじめ運行情報として入力しておくことで、その運用を守りつつ実施例1のようなインバランスへの処理が可能となる。
図16は、需要シフトを決定する構成を追加した電力調整システムを示す部分構成図である。
本図においては、需要シフト計画部700は、負荷設備調整可能量演算部100、発電設備調整可能量演算部101及び蓄電池設備調整可能量演算部102の上流側に設けられている。需要シフト計画部700は、電気料金情報、例えば1日の電気料金の推移、計画する日にちの需要予測、負荷設備等の設備稼働予測等を入力とし、負荷設備運行情報、発電設備運行情報及び蓄電池設備運行情報を計画する。例えば、前述したように昼間の方が夜間よりも電気料金が高価である場合に、昼間に負荷を減らし夜間に負荷を増加させた方が経済性があるとする運行情報を決定する。各運行情報は、1日の時系列情報となっている。
運行情報として需要シフトやピークシフトを行うことで、電気料金が最も安くなるように最適化することが可能である。
実施例5は、実施例1の図2に示す蓄電池充放電単価演算部104の出力である調整Wh単価を、電池の現在の情報からの劣化感度に基づき補正する場合である。
蓄電池は、負荷設備や発電設備と異なり、現在の状態での劣化感度が異なる。例えば、高温の方が劣化が進行しやすく、SOCが高い方が劣化が進行しやすい。このように、劣化感度は、電池の状態である充電率や温度によって変化するため、最適な運用をすることで劣化を抑制することができる。つまり、劣化が起こらない運用をした方が長期間運用が可能になるため、調整Wh単価を下げることが可能となる。
図17は、充電Wh単価及び放電Wh単価を補正する構成を有する電力調整システムを示す部分構成図である。
本図においては、図2に示す蓄電池充放電単価演算部104と調整機器応答量決定部107との間に充電Wh単価補正部800及び放電Wh単価補正部801が設けられている。充電Wh単価補正部800では、電池温度及びSOCのデータに対応する補正係数を用いて充電Wh単価を補正する。この場合において、補正には、例えば下記式(4)を用いる。
式中、(充電補正係数_電池温度)は、曲線802(電池温度での充電補正曲線)で示す、電池温度に応じて増加する係数である。電池の劣化は、主に化学的な副反応であり、アレニウスの式に従うことから、この係数は、電池温度に対して指数関数的に増加するものとしている。また、(充電補正係数_SOC)は、曲線803(SOCでの充電補正曲線)で示す、SOCに応じて増加する係数である。SOCが増加すると劣化も指数関数的に増加するため、曲線803は、指数関数的な形状であると仮定している。これらの2種類の補正係数で補正した補正充電Wh単価を充電Wh単価補正部800から出力する。放電Wh単価についても、充電Wh単価の場合と同様にして、下記式(5)で補正する。
式中、(放電補正係数_電池温度)は、充電と同様になるため、曲線802と同様とする。(放電補正係数_SOC)に関しては、SOCが高い時には放電をした方が劣化感度の高いSOC領域を抜けることができるため、曲線803と逆の形状を有する曲線804(電池温度での放電補正曲線)となる。この補正係数で補正した補正放電Wh単価を放電Wh単価補正部801から出力する。
このように、電池温度及びSOCを用いるとともに劣化感度を計算に入れることにより、劣化を抑制して運転することが可能となる。
実施例6は、設備管理者(ユーザ)がGUI(Graphical User Interface)を介して運行情報を入力する場合である。
実施例1や実施例4では、事前に需要シフト等を計算に入れて運行情報を決定する例を示しているが、設備管理者が運行を決めたい場合がある。
例えば、蓄電池設備の1種である電気自動車であれば、急に使用したい場合にシステムに取り込むのに時間がかかると、システムに取り込まれるまでの間、調整力応答が最適にならず、経済性を低下させてしまう。そのため、GUIを用いて設定することで、急な運転計画の変更にも対応することができる。
図18は、設備管理者のGUIの例を示す画像である。
本図に示す基本運転計画画面900は、事業所において電力調整に用いる設備のうちのいずれかである設備Aに対応するものである。この例では、設備管理者がGUIを介して画面上で9時~19時までの稼働予定を入力することで、調整力として使用すべきでない時間帯をシステム側に通知することができ、経済性の低下を防ぐことができる。
実施例7は、実需要だけでなく、実需要から需要予測値を算出して用いるものである。
実施例1では、電力調達量と比較する対象を実需要に限定していたが、需要の取得間隔が長い場合には、30分同時同量を実需要だけでは達成が厳しい場合が想定される。
例えば、実施例1では、実需要と電力調達量との差分で必要調整量を工程S300(図8)にて計算している。需要の取得が5分毎であった場合には、30分同時同量の0~25分のインバランスは調整可能であるが、25~30分のインバランス量は、需要データがないため、調整することが困難となる。
そこで、本実施例においては、不足している需要データを補完するために需要予測を行う。
図19は、本実施例の電力調整システムを示す構成図である。
本図において実施例1の図2と異なる点は、電力調整システムが需要予測部1000と設備選択部1001とを有する点である。
需要予測部1000は、実需要を入力として需要予測値を算出する。この演算には、機械学習やAI(人工知能)を活用してもよい。設備選択部1001は、実需要、電力調達量及び需要予測値を入力として、必要調整力を算出するとともに、応答設備を決定する。
図20は、図19の電力調整システムによる需要予測の結果の例を示すグラフである。
図20においては、上から順に、30分同時同量の時間窓内の需要量、需要量と調達量との差分であるインバランスの30分までの積算量、及び負荷設備等の設備運転のグラフを並べて示している。
インバランス積算量は、設備が調整力運転されれば0に近づくはずであるが、本図においては、設備運転をしていない場合のインバランス積算量を示している。
実施例1でも示すように、インバランス積算量を0にするために設備運転を実行するため、インバランス積算量が増加する傾向がある。このため、設備運転は、下げDR方向の運転を実行している。
前述したように需要の取得周期が5分毎であった場合、25分~30分は実需要取得不可区間1100となっている。しかし、30分同時同量を達成するためには、25分~30分の間で発生するインバランスに関しても予測し、設備運転を実施する必要がある。このため、実需要を予測し、その結果に基づきインバランス予測量を算出し、インバランスを0にするように設備運転をする。これにより、需要取得不可時間でも調整力を活用することが可能となる。なお、実需要の予測手段は、多岐にわたるので、その手段は問わない。
実施例8は、インバランスよりも調整力指令値を優先して各設備選択を実施するものである。
図21は、本実施例の電力調整システムを示す構成図である。
本実施例において実施例1の図2と異なる点は、図2の設備選択部105及びインバランスリスク判定部106の代わりに、設備選択部1200を用いている点である。設備選択部1200は、調整力指令を入力として、必要調整力を算出するとともに、応答設備を決定する。インバランスリスク判定部106は設けなくてもよいが、インバランスを併用する場合は、インバランスリスク判定部106も用いてもよい。
ここで、調整力指令は、需給調整市場からの指令値である。この指令は、応答までの時間、継続時間及び出力が情報として含む。そのため、設備選択部1200では、インバランスの傾向を分析する手法と同様に、例えば、継続時間が一定時間以上であり応答までの時間が長い場合には、負荷設備必要調整力を後段に出力する。一方、継続時間が短く、応答までの時間が短い場合には、蓄電池設備必要調整力として後段に出力する。
最終的には、図11と同様に、調整力単価で優先度を決定して応答するが、インバランスリスクでの閾値は、存在せず、調整力指令を満たすように分配することになる。このような構成とすることで、調整力指令に対しても調整力単価の安い設備で応答できるため、経済性を最適化できる。
1:系統電力、2:配電盤、3:空調設備、4:空調制御コントローラ 、5:照明設備、6:照明制御コントローラ、7:太陽光発電システム、8:電力変換器、9:電気自動車 、10:充電器 、11:定置型蓄電池設備、12:電力変換器、13:その他の負荷、14:スマートメータ、15:XEMS、16:負荷設備、17:発電設備、18:蓄電池設備、100:負荷設備調整可能量演算部、101:発電設備調整可能量演算部、102:蓄電池設備調整可能量演算部、103:劣化率演算部、104:蓄電池充放電単価演算部、105、501、600、1001、1200:設備選択部、106:インバランスリスク判定部、107:調整機器応答量決定部、200、201、202:領域、400:XEMS、401:統括EMS、500:記録部、502、601:調整機器応答量決定部、700:需要シフト計画部、800:充電Wh単価補正部、801:放電Wh単価補正部、802、803、804:曲線、900:基本運転計画画面、1000:需要予測部、1100:実需要取得不可区間。
Claims (18)
- 電力系統に接続された負荷設備及び蓄電池設備に出力する所定の指令を算出する演算装置を備える電力調整システムであって、
前記演算装置は、
インバランスの継続時間又は需給調整市場からの調整力指令に基づいて前記負荷設備又は前記蓄電池設備を応答設備として選択する設備選択部と、
前記負荷設備、前記蓄電池設備のそれぞれの運用計画に基づいてそれぞれの設備の調整可能量及び調整力単価を算出する調整可能量演算部と、
前記設備選択部により選択された前記応答設備と、調整可能量演算部により算出された前記それぞれの設備の前記調整可能量及び前記調整力単価と、に基づいて、前記応答設備の応答量を算出し出力する調整機器応答量決定部と、を有する、電力調整システム。 - 電力系統に接続された負荷設備、蓄電池設備及び発電設備に出力する所定の指令を算出する演算装置を備える電力調整システムであって、
前記演算装置は、
インバランスの継続時間又は需給調整市場からの調整力指令に基づいて前記負荷設備、前記蓄電池設備及び前記発電設備のいずれかを応答設備として選択する設備選択部と、
前記負荷設備、前記蓄電池設備のそれぞれの運用計画に基づいてそれぞれの設備の調整可能量及び調整力単価を算出する調整可能量演算部と、
前記設備選択部により選択された前記応答設備と、調整可能量演算部により算出された前記それぞれの設備の前記調整可能量及び前記調整力単価と、に基づいて、前記応答設備の応答量を算出し出力する調整機器応答量決定部と、を有する、電力調整システム。 - 前記設備選択部が、電力需要量と電力調達量との差であるインバランスに基づいて応答設備を選択する、請求項1又は2に記載の電力調整システム。
- 前記設備選択部が、前記調整力指令に基づいて応答設備を選択する、請求項1又は2に記載の電力調整システム。
- 前記設備選択部は、前記調整力単価と前記インバランスの料金単価とを比較することにより、前記それぞれの設備による応答の可否を決定する、請求項3記載の電力調整システム。
- 前記蓄電池設備の前記調整力単価は、蓄電池の劣化率及び使用年数並びに現在の電池温度及びSOCにおける劣化の感度のうちの少なくとも一つを用いて決定する、請求項1~5のいずれ一項に記載の電力調整システム。
- 前記蓄電池の前記劣化率は、前記蓄電池の充電又は放電の前後の二点のSOC及び充放電電力から算出する、請求項6記載の電力調整システム。
- 前記蓄電池の前記劣化率は、前記蓄電池設備の電源を切り、一定時間休止した後測定する、請求項7記載の電力調整システム。
- 前記インバランスの前記料金単価は、季節及び時間帯による需給逼迫度によって決定する、請求項5記載の電力調整システム。
- 前記インバランスの前記料金単価は、卸電力市場の価格に基づいて決定する、請求項5記載の電力調整システム。
- 前記調整機器応答量決定部は、前記インバランスが前記応答設備の処理を超える場合には、小売電気事業者に対して電力調達の依頼をする、請求項3又は5に記載の電力調整システム。
- 前記演算装置は、前記それぞれの設備の運行情報を前記調整可能量演算部に送信する需要シフト計画部を更に有する、請求項1~11のいずれ一項に記載の電力調整システム。
- 設備管理者がGUIを介して運行情報を入力可能に構成されている、請求項1~11のいずれ一項に記載の電力調整システム。
- 前記演算装置は、実需要を入力として需要予測値を算出する需要予測部を更に有し、
前記設備選択部は、前記需要予測値を受信する、請求項3記載の電力調整システム。 - 前記設備選択部は、前記電力需要量と前記電力調達量との大小関係が所定時間の間に変動する場合は、前記蓄電池設備を前記応答設備として選択する、請求項3記載の電力調整システム。
- 前記設備選択部は、前記電力需要量と前記電力調達量との大小関係が所定時間以上変わらない場合は、前記負荷設備を前記応答設備として選択する、請求項3記載の電力調整システム。
- 前記演算装置を複数統括する統括演算装置を更に備え、
前記統括演算装置は、複数の前記演算装置からの情報を蓄積する記録部を有する、請求項1又は2に記載の電力調整システム。 - 前記調整機器応答量決定部は、前記インバランスよりも前記調整力単価を優先して前記応答設備を選択する、請求項1又は2に記載の電力調整システム。
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