JP2023072634A - 抗ウイルス剤 - Google Patents

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彰 松田
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洋文 澤
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靖子 大場
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道仁 佐々木
Michihito Sasaki
健太朗 上村
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Abstract

【課題】本発明は、COVID-19を始めとするウイルス感染症疾患の治療薬として有効な抗ウイルス剤を提供することを課題とする。【解決手段】下記一般式(A-1)又は(A-2)で表される化合物、前記化合物の塩、又はこれらの溶媒和物からなる、抗ウイルス剤。TIFF2023072634000021.tif53170[式中、R1はO、S、Se、又は=N-OR11であり;R2はO、S、Se、又は=N-OR11であり;R3は-O-R12、-S-R13又はグアニジノ基であり;R11はH、アルキル基又はアリール基であり;R12及びR13はそれぞれ独立して、アルキル基又はアリール基であり;R4、R5及びR6はそれぞれ独立して、H等である。]【選択図】なし

Description

本発明は、コロナウイルスやフラビウイルス等のプラス鎖一本鎖RNAを遺伝子とするエンベロープウイルスによる感染症に対する治療剤として有効な抗ウイルス剤に関する。
コロナウイルスは、プラス鎖一本鎖RNAを遺伝子とするエンベロープウイルスである。ヒトに感染するコロナウイルスとしては、一般的な風邪の原因ウイルスの他に、急性呼吸器症候群の原因となるものがある。例えば、2003年に大流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)の原因であるSARS-CoV-1、2013年に大流行した中東呼吸器症候群(MERS)の原因であるMERS-CoV、2019年から大流行した新型コロナウイルス感染症COVID-19の原因であるSARS-CoV-2がある。特に、COVID-19は未だ治療薬が少なく、より有効な治療薬の開発が求められている。
COVID-19の治療薬として、レムデシビルがある。レムデシビル(GS-5734)はGS-441524のモノホスホルアミデートプロドラッグであり、エボラ出血熱及びマールブルグウイルス感染症の治療薬として開発された核酸化合物からなる抗ウイルス薬である。一本鎖RNAウイルスに対する抗ウイルス活性がある。GS-441524も、COVID-19に対する治療効果が期待されている(非特許文献1)。
Yan and Muller, ACS Medicinal Chemistry Letters, 2020, vol.11, p.1361-1366.
本発明は、COVID-19を始めとするウイルス感染症疾患の治療薬として有効な抗ウイルス剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、国立大学法人北海道大学薬学研究院創薬科学研究教育センターが保有する核酸化合物を母核とする化合物ライブラリーを用いて、プラス鎖一本鎖RNAを遺伝子とするエンベロープウイルスの1種であるデングウイルスに対する抗ウイルス活性を有する化合物をスクリーニングし、抗ウイルス活性の高い化合物を選抜することにより、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の、抗ウイルス剤等を提供するものである。
[1] 下記一般式(A-1)又は(A-2)
Figure 2023072634000001
[式中、Rは、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、又は=N-OR11であり;Rは、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、又は=N-OR11であり;Rは、-O-R12、-S-R13、又はグアニジノ基であり;R11は、水素原子、炭素数1~6のアルキル基又はアリール基であり;R12及びR13は、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキル基又はアリール基であり;Rは、水素原子、-CO-R14、又は-O-P(OH)(=O)-O-R15であり;R14及びR15は、それぞれ独立して、フェニル基で置換されていてもよい炭素数1~30のアルキル基(当該アルキル基は、炭素原子が2以上の場合に、炭素原子間にエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい)又はアリール基であり;R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は-CO-R16であり;R16は、炭素数1~6のアルキル基又はアリール基である。]
で表される化合物、前記化合物の塩、又はこれらの溶媒和物からなる、抗ウイルス剤。
[2] 前記一般式(A-1)又は(A-2)で表される化合物が、下記一般式(1)~(9)のいずれかで表される化合物である、前記[1]の抗ウイルス剤。
Figure 2023072634000002
[3] 前記一般式(A-1)又は(A-2)で表される化合物が、下記式(A1)、(A5)、(A6)、(A7)、及び(A8)のいずれかで表される化合物である、前記[1]の抗ウイルス剤。
Figure 2023072634000003
[4] 前記一般式(A-1)又は(A-2)で表される化合物が、下記式(A2)~(A4)のいずれかで表される化合物である、前記[1]の抗ウイルス剤。
Figure 2023072634000004
[5] プラス鎖一本鎖RNAを遺伝子とするエンベロープウイルスに対する抗ウイルス作用を有する、前記[1]~[4]のいずれかの抗ウイルス剤。
[6] 前記[1]~[5]のいずれかの抗ウイルス剤を有効成分とする、医薬用組成物。
[7] プラス鎖一本鎖RNAを遺伝子とするエンベロープウイルスによる感染症の治療又は予防に用いられる、前記[6]の医薬用組成物。
[8] コロナウイルス、フラビウイルス、又はトガウイルスによる感染症の治療に用いられる、前記[6]の医薬用組成物。
[9] COVID-19の治療又は予防に用いられる、前記[6]の医薬用組成物。
[10]下記式(A4)~(A7)のいずれかで表される化合物。
Figure 2023072634000005
本発明に係る抗ウイルス剤は、コロナウイルスやフラビウイルスのようなプラス鎖一本鎖RNAを遺伝子とするエンベロープウイルスに対して高い抗ウイルス活性を有する核酸化合物を有効成分とする。このため、当該抗ウイルス剤を有効成分とする医薬用組成物は、in vivo又はex vivoにおける抗ウイルス剤として好適であり、プラス鎖一本鎖RNAを遺伝子とするエンベロープウイルスによる感染症の治療又は予防のために用いられる医薬用組成物の有効成分として非常に有用である。
実施例2において、SARS-CoV-2の各株を感染させた細胞を2-チオウリジン処理した場合の相対ウイルスRNA量の測定結果を示した図である。 実施例2において、SARS-CoV-2オミクロン株を感染させた細胞を2-チオウリジン処理した場合の相対ウイルスRNA量の測定結果を示した図である。 実施例2において、SARS-CoV-1を感染させた細胞を2-チオウリジン処理した場合の相対ウイルスRNA量の測定結果を示した図である。 実施例2において、HCoVの各株を感染させた細胞を2-チオウリジン処理した場合の相対ウイルスRNA量の測定結果を示した図である。 実施例2において、DENV2を感染させた細胞を2-チオウリジン処理した場合の相対ウイルスRNA量の測定結果を示した図である。 実施例2において、ZIKVを感染させた細胞を2-チオウリジン処理した場合の相対ウイルスRNA量の測定結果を示した図である。 実施例2において、YFVを感染させた細胞を2-チオウリジン処理した場合の相対ウイルスRNA量の測定結果を示した図である。 実施例2において、JEVを感染させた細胞を2-チオウリジン処理した場合の相対ウイルスRNA量の測定結果を示した図である。 実施例2において、WNVを感染させた細胞を2-チオウリジン処理した場合の相対ウイルスRNA量の測定結果を示した図である。 実施例2において、CHIKVを感染させた細胞を2-チオウリジン処理した場合の相対ウイルスRNA量の測定結果を示した図である。 実施例3において、AG129マウス馴化DENV2に感染させたAG129マウスに2-チオウリジンを投与した各群の生存率(%)の経時的変化を示した図である。 実施例3において、AG129マウス馴化DENV2に感染させたAG129マウスに2-チオウリジンを投与した各群の、感染3日後における血清中ウイルスRNA量の測定結果を示した図である。 実施例5において、SARS-CoV-2 MA-P10株に感染させたマウスであって、2-チオウリジンをウイルス感染の2時間前に投与した群の肺内のウイルス力価(log10(TCID50)/mL)の測定結果を示した図である。 実施例5において、SARS-CoV-2 MA-P10株に感染させたマウスであって、ウイルス感染の2時間前に2-チオウリジンを静脈内投与した群の肺内のウイルスRNA量(log10(ウイルスコピー数)/mL)の測定結果を示した図である。 実施例5において、SARS-CoV-2 MA-P10株に感染させたマウスであって、ウイルス感染の2時間前とウイルス感染翌日から感染4日後までの期間に1日1回の合計5日間、2-チオウリジンを静脈内投与した群の生存率(%)の経時的変化を示した図である。 実施例5において、SARS-CoV-2 MA-P10株に感染させたマウスであって、ウイルス感染後に2-チオウリジンを経口投与した群の肺内のウイルスRNA量(log10(ウイルスコピー数)/mL)の測定結果を示した図である。
本発明及び本願明細書において、「Cy-z(y及びzは、y<zを充たす正の整数である。)」は、炭素数がy以上z以下であることを意味する。
本発明に係る抗ウイルス剤は、下記一般式(A-1)又は(A-2)で表される化合物、前記化合物の塩、又はこれらの溶媒和物からなる。
Figure 2023072634000006
一般式(A-1)又は(A-2)中、Rは、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、又は=N-OR11である。R11は、水素原子、炭素数1~6のアルキル基(C1-6アルキル基)又はアリール基である。
11がC1-6アルキル基の場合、当該C1-6アルキル基としては、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。C1-6アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
11がC1-6アルキル基の場合、当該C1-6アルキル基は、置換基を有していてもよい。置換基を有しているC1-6アルキル基とは、C1-6アルキル基の炭素原子に結合している水素原子の1又は複数個、好ましくは1~3個が、他の官能基に置換されている基である。2個以上の置換基を有する場合、置換基同士は互いに同種であってもよく、異種であってよい。当該置換基としては、アリール基、ヘテロアリール基等が挙げられる。
11がアリール基の場合、当該アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、9-フルオレニル基等が挙げられ、フェニル基が特に好ましい。
11がアリール基の場合、当該アリール基は、置換基を有していてもよい。置換基を有しているアリール基とは、アリール基の炭素原子に結合している水素原子の1又は複数個、好ましくは1~3個が、他の官能基に置換されている基である。2個以上の置換基を有する場合、置換基同士は互いに同種であってもよく、異種であってよい。当該置換基としては、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基等が挙げられる。C1-6アルコキシ基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。C1-6アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
一般式(A-1)又は(A-2)中、Rは、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、又は=N-OR11である。R11は、前記R11と同じである。一般式(A-1)中、RとRは、互いに同じ基であってもよく、異なる基であってもよい。
一般式(A-2)中、Rは、-O-R12、-S-R13、又はグアニジノ基である。R12及びR13は、C1-6アルキル基又はアリール基である。R12及びR13がC1-6アルキル基の場合、当該C1-6アルキル基としては、R11と同様の基を用いることができる。R12及びR13がアリール基の場合、当該アリール基としては、R11と同様の基を用いることができる。
一般式(A-1)又は(A-2)中、Rは、水素原子、-CO-R14、又は-O-P(OH)(=O)-O-R15である。R14及びR15は、それぞれ独立して、炭素数1~30のアルキル基(C1-30アルキル基)又はアリール基である。
14及びR15がアリール基の場合、当該アリール基としては、R11と同様の基を用いることができる。
14及びR15がC1-30アルキル基の場合、当該アルキル基としては、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。C1-30アルキル基の例としては、C1-30アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ネオヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘンエイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基等が挙げられる。
14及びR15がC1-30アルキル基の場合、当該アルキル基は、炭素原子に結合する1個以上の水素原子が、フェニル基で置換されていてもよい。R14及びR15としては、フェニル基で置換されていないC1-30アルキル基か、1個の水素原子がフェニル基に置換されているC1-30アルキル基が好ましい。
14及びR15の炭素原子が2以上の場合、すなわち炭素数2~30のアルキル基(C2-30アルキル基)の場合には、当該アルキル基は、炭素原子間にエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい。なお、「エーテル結合性の酸素原子」とは、炭素原子間を連結する酸素原子であり、酸素原子同士が直列に連結された酸素原子は含まれない。
一般式(A-1)又は(A-2)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は-CO-R16である。R16は、C1-6アルキル基又はアリール基である。C1-6アルキル基及びアリール基としては、R11で挙げられた基と同様のものが挙げられる。
一般式(A-1)又は(A-2)で表される化合物としては、下記一般式(1)~(9)のいずれかで表される化合物が好ましい。一般式(1)~(9)中、R~R及びR11は、一般式(A-1)又は(A-2)中のR~R及びR11と同じである。
Figure 2023072634000007
本発明に係る抗ウイルス剤の有効成分としては、一般式(A-1)又は(A-2)で表される化合物の誘導体であることも好ましい。一般式(A-1)又は(A-2)で表される化合物の誘導体としては、生体内で酵素処理等を受けることによって一般式(A-1)又は(A-2)で表される化合物が産生される誘導体が好ましい。
一般式(A-1)で表される化合物としては、特に、2-チオウリジン(CAS番号:20235-78-3)若しくはその誘導体が好ましい。2-チオウリジンの誘導体としては、生体内で酵素処理等を受けることによって2-チオウリジンが産生される誘導体が好ましい。本発明において、抗ウイルス剤として用いることができる2-チオウリジンの誘導体としては、例えば、核酸化合物を有効成分とする医薬品に対して行われているプロドラック化によって得られる誘導体がより好ましい。具体的には、2-チオウリジン中、フラン環に直接又はメチレン基を介して連結したヒドロキシ基が、アシル基や、リン酸基(PO )に置換されたリン酸誘導体や、当該ヒドロキシ基がモノホスホルアミダイト基に置換されたモノホスホルアミダイト誘導体、当該ヒドロキシ基がモノホスホロチオエート基に置換されたモノホスホロチオエート誘導体などが挙げられる。例えば、2-チオウリジン(化合物(A1))のヒドロキシ基をアシル化した誘導体として、化合物(A5)~(A8)が挙げられる。
Figure 2023072634000008
一般式(A-1)又は(A-2)で表される化合物としては、下記式(A2)~(A4)のいずれかで表される化合物若しくはその誘導体も好ましい。これらの誘導体としては、生体内で酵素処理等を受けることによって式(A2)~(A4)のいずれかで表される化合物が産生される誘導体が好ましい。
Figure 2023072634000009
一般式(A-1)又は(A-2)で表される化合物としては、下記式(A9)~(A11)のいずれかで表される化合物若しくはその誘導体も好ましい。これらの誘導体としては、生体内で酵素処理等を受けることによって式(A9)~(A11)のいずれかで表される化合物が産生される誘導体が好ましい。
Figure 2023072634000010
本発明に係る抗ウイルス剤の有効成分としては、一般式(A-1)又は(A-2)で表される化合物は、塩を形成していてもよく、その塩を形成する酸又は塩基としては、塩酸、硫酸などの鉱酸;酢酸、コハク酸、クエン酸等の有機酸;ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属等が挙げられる。また、一般式(A-1)又は(A-2)で表される化合物又はその塩は、水和物等の溶媒和物の形態であってもよい。
一般式(A-1)又は(A-2)で表される化合物、当該化合物の塩、又はこれらの溶媒和物(以降において、これらをまとめて、「本発明に係る核酸化合物」ということがある。)は、ウイルス、特に、プラス鎖一本鎖RNAを遺伝子とするエンベロープウイルスに対する抗ウイルス作用を有している。プラス鎖一本鎖RNAを遺伝子とするエンベロープウイルスとしては、コロナウイルスやフラビウイルス、トガウイルス等が挙げられる。
本発明に係る核酸化合物が抗ウイルス活性を示すコロナウイルスとしては、SARS-CoV-1、MERS-CoV、SARS-CoV-2等が挙げられる。本発明に係る核酸化合物が抗ウイルス活性を示すフラビウイルスとしては、デング熱(デング出血熱)の原因であるデングウイルス(DENV)、ジカ熱(ジカウイルス感染症)の原因であるジカウイルス(ZIKV)、黄熱の原因である黄熱ウイルス(YFV)、ウエストナイル熱(ウエストナイル脳炎)の原因であるウエストナイルウイルス(WNV)、日本脳炎の原因である日本脳炎ウイルス(JEV)等が挙げられる。DENVには、1型から4型までの4種(DENV1、DENV2、DENV3、DENV4)が存在する。本発明に係る核酸化合物が抗ウイルス活性を示すトガウイルスとしては、チクングニア熱の原因であるチクングニアウイルス(CHIKV)等が挙げられる。
本発明に係る核酸化合物は、ウイルス感染症、特に、プラス鎖一本鎖RNAを遺伝子とするエンベロープウイルスのウイルス感染症の治療又は予防に用いられる医薬用組成物の有効成分として有用である。本発明に係る核酸化合物を有効成分とする医薬用組成物は、中でも、コロナウイルス、フラビウイルス、又はトガウイルスによる感染症の治療又は予防に用いられるものが好ましく、特に、SARS、MERS、COVID-19、デング熱、ジカ熱、黄熱、ウエストナイル熱、日本脳炎、チクングニア熱の治療又は予防に用いられるものがより好ましい。
本発明に係る核酸化合物は、低分子化合物であることから、免疫原性等の問題がない。また、経口投与も可能であり、投与経路もあまり制限されないため、特に、ヒトを含む哺乳類に対する医薬の有効成分として有用である。
1種又は2種以上の本発明に係る核酸化合物を医薬組成物に含有せしめる場合、必要に応じて薬学的に許容される担体と配合し、予防又は治療目的に応じて各種の投与形態を採用可能である。該形態としては、例えば、経口剤、注射剤、坐剤、軟膏剤、貼付剤等が挙げられるが、経口剤が好ましい。これらの投与形態は、各々当業者に公知慣用の製剤方法により製造できる。
薬学的に許容される担体としては、固形製剤における賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤;液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤等が用いられる。また、必要に応じて防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤、安定化剤等の製剤添加物を用いることもできる。
経口用固形製剤を調製する場合は、本発明に係る核酸化合物に賦形剤、必要に応じて、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味・矯臭剤等を加えた後、常法により錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等を製造することができる。
経口用液体製剤を調製する場合は、本発明に係る核酸化合物に、矯味剤、緩衝剤、安定化剤、矯臭剤等を加えて、常法により内服液剤、シロップ剤、エリキシル剤等を製造することができる。
注射剤を調製する場合は、本発明に係る核酸化合物に、pH調節剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、局所麻酔剤等を添加し、常法により皮下、筋肉内及び静脈内用注射剤を製造することができる。
坐剤を調製する場合は、本発明に係る核酸化合物に当業界において公知の製剤用担体、例えば、ポリエチレングリコール、ラノリン、カカオ脂、脂肪酸トリグリセリド等を加えた後、常法により製造することができる。
軟膏剤を調製する場合は、本発明に係る核酸化合物に通常使用される基剤、安定剤、湿潤剤、保存剤等が必要に応じて配合され、常法により混合、製剤化される。
貼付剤を調製する場合は、通常の支持体に前記軟膏、クリーム、ゲル、ペースト等を常法により塗布すればよい。
前記の各製剤中の本発明に係る核酸化合物の含有量は、患者の症状、その剤形等により一定ではないが、一般に経口剤では約0.001~1000mg、注射剤では約0.001~500mg、坐剤では約0.01~1000mg程度である。
また、これらの製剤の1日あたりの投与量は、患者の症状、体重、年齢、性別等によって異なり一概には決定できないが、通常成人(体重60kg)1日あたり約0.005~5000mg程度であり、0.01~1000mgが好ましく、これを1日1回又は2~3回程度に分けて投与するのが好ましい。
本発明に係る核酸化合物を有効成分とする抗ウイルス剤及び医薬用組成物が投与される動物は、特に限定されるものではなく、ヒトであってもよく、ヒト以外の動物であってもよい。非ヒト動物としては、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、サル、イヌ、ネコ、ウサギ、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等の哺乳動物や、ニワトリ、ウズラ、カモ等の鳥類等が挙げられる。
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<コロナウイルス>
以降の実験で使用したコロナウイルスのうち、SARS-CoV-2としては、hCoV-19/Japan/TY/WK-521/2020株(SARS-CoV-2武漢株)、hCoV-19/Japan/QK002/2020株(SARS-CoV-2アルファ株)、hCoV-19/Japan/TY8-612/2021株(SARS-CoV-2ベータ株)、hCoV-19/Japan/TY7-501/2021株(SARS-CoV-2ガンマ株)、hCoV-19/Japan/TY11-927/2021株(SARS-CoV-2デルタ株)、及びhCoV-19/Japan/TY38-873/2021株(SARS-CoV-2オミクロン(BA.1)株)を用いた。SARS-CoV-1としては、ハノイ株を用いた。SARS-CoV-2は、国立感染症研究所より、SARS-CoV-1は、国立大学法人長崎大学より分与されたものを用いた。
ヒトに日常的に感染するコロナウイルス(Human Coronavirus:HCoV)として、ATCCから入手したアルファコロナウイルスHCoV-229E株(ATCC:VR-740)、及びベータコロナウイルスHCoV-OC43株(ATCC:VR-1558)を用いた。
<フラビウイルス>
以降の実験で使用したフラビウイルスのうち、DENV1~DENV4は、それぞれ、D1/hu/PHL/10-07株、D2/hu/INDIA/09-74株、D3/hu/Thailand/00-40株、D4/hu/Solomon/08-11株を用いた。ZIKVは、MR766株を用いた。YFVは、17D-204株を用いた。WNVは、NY99株を用いた。JEVは、Beijing-1株を用いた。YFVは国立大学法人長崎大学より、その他のウイルス株は国立感染症研究所より分与されたものを用いた。
<トガウイルス>
以降の実験で使用したトガウイルスのうち、CHIKVは、SL10571株を用いた。当該ウイルス株は国立感染症研究所より分与されたものを用いた。
<培養細胞>
以降の実験で、ウイルスを感染させるために、ヒト胎児肺由来の培養細胞株MRC5細胞、シリアンハムスター腎臓由来の培養細胞株BHK-21細胞、アフリカミドリザル腎臓由来の培養細胞株VeroE6細胞、遺伝子組換えによりTMPRSS2をVeroE6細胞に発現させた培養細胞株VeroE6/TMPRSS2細胞、及び、ヒト胚性腎臓由来の培養細胞株HEK293T細胞に、ACE2遺伝子を導入して、ACE2を恒常的に発現させた293T/ACE2細胞を用いた。いずれの細胞についても、培養液として、2% FBS/MEMを用いた。2% FBS/MEMは、MEM(Minimum Essential Medium:ニッスイ社製)に、2% FBS(ウシ胎児血清:Gibco社製)とL-グルタミン(Wako社製)を添加して調製した。
[実施例1]
国立大学法人北海道大学薬学研究院創薬科学研究教育センターが保有する核酸化合物を母核とする化合物ライブラリーの化合物を被験試料として、フラビウイルスに感染させた細胞の細胞死を抑制する効果を奏する化合物をスクリーニングした。フラビウイルスとしてDENV2を用いた。
この結果、使用した化合物ライブラリーに含まれる化合物のうち、HUP0797(2-チオウリジン)に、抗ウイルス活性があることがわかった。
<フラビウイルスに対する抗ウイルス活性の測定>
2-チオウリジンについて、BHK-21細胞に8種類のフラビウイルス(DENV1、DENV2、DENV3、DENV4、ZIKV、YFV、JEV、WNV)を感染させてMTTアッセイを行い、抗ウイルス活性、すなわちウイルス感染による細胞死抑制効果を調べた。
(1)ウイルス感染とMTTアッセイ
まず、96ウェルプレートの各ウェル内で、各化合物で処理した細胞に各種ウイルスを感染させて、COインキュベーター(37℃、5% CO)内で、DENV2は4日間、DENV1、3、4は5日間、ZIKV、YFV、WNV、JEVは3日間培養した。
培養した96ウェルプレートを、肉眼及び顕微鏡下で観察し、細胞の形態、結晶の有無等を確認した。次いで、MTT溶液(3-(4,5-dimethyl-2-thiazol)-2,5-diphenyl-2H-tetrazolium bromide(ナカライテスク社製)を5μg/mLになるようにPBSで溶解させた溶液)を、各ウェルに30μLずつ添加し、COインキュベーター内で2時間培養した。その後、当該プレートから、細胞を吸わないようにして上清を150μLずつ除き、細胞溶解液(ウイルス不活化液:500mLのイソプロパノールに、50mLのTriton X-100、4mLの塩酸(12N)を入れて調製したもの)を各ウェルに150μLずつ添加し、プレートミキサーで混和した。その後、当該96ウェルプレートについて、吸光度計を用いて570nm/630nmの2波長の吸光度を測定した。
(2)EC50の算出
以下の計算式に基づき、Microsoft Excel又は同等の計算処理能力を有するプログラムを使用し、ウイルス感染細胞の50%細胞死阻害濃度(EC50)を算出した。
[EC50] = 10Z
Z = ([50% OD] - [Low OD]) / ([High OD] - [Low OD]) × {log (High conc.) - log (Low conc.)} + log (Low conc.)
[50% OD] = {OD (cell control) - OD (virus control)} × 0.5 + OD (virus control)
OD:吸光度
conc.:薬剤濃度
OD (cell control): コントロールのウェルの吸光度の平均値
OD (virus control):ウイルスコントロールのウェルの吸光度の平均値
EC50は、吸光度と薬剤濃度曲線上の50% OD値を挟む2点A-High (High OD, High conc.) とB-Low (Low OD, Low conc.)から計算した。
結果を表1に示す。表1に示すように、2-チオウリジンは、DENV1、DENV2、DENV3、DENV4、ZIKV、YFV、WNV、及びJEVに対して、高い抗ウイルス活性があることがわかった。
Figure 2023072634000011
<コロナウイルス及びトガウイルスに対する抗ウイルス活性の測定>
MRC5細胞にHCoV-229E株又はHCoV-OC43株を、BHK-21細胞にCHIKVをそれぞれ感染させて、前記と同様にして抗ウイルス活性を調べた。結果を表2に示す。
Figure 2023072634000012
表2に示すように、2-チオウリジンは、トガウイルスであるCHIKVに対しても、コロナウイルスであるHCoV-229E株及びHCoV-OC43株に対しても抗ウイルス活性を有することが確認された。すなわち、2-チオウリジンは、広範なプラス鎖一本鎖RNAを遺伝子とするエンベロープウイルスに対して高い抗ウイルス活性を有していた。
[実施例2]
実施例1において、抗ウイルス活性が確認された2-チオウリジンについて、コロナウイルス、フラビウイルス、及びトガウイルスに対するウイルスRNA複製抑制効果を調べた。
SARS-CoV-2武漢株、SARS-CoV-2アルファ株、SARS-CoV-2ベータ株、SARS-CoV-2ガンマ株、SARS-CoV-2デルタ株、SARS-CoV-2オミクロン株、及びSARS-CoV-1ハノイ株は、VeroE6/TMPRSS2細胞に感染させた。HCoV―229E株は、MRC5細胞に感染させた。HCoV―OC43株、DENV2、ZIKV、YFV、JEV、WNV、及びCHIKVは、VeroE6細胞に感染させた。
<コロナウイルスに対するウイルスRNA複製抑制効果の確認>
(1)培養細胞へのウイルス感染
被験試料(2-チオウリジン)、各種コロナウイルス(SARS-CoV-2武漢株、SARS-CoV-2アルファ株、SARS-CoV-2ベータ株、SARS-CoV-2ガンマ株、SARS-CoV-2デルタ株、SARS-CoV-2オミクロン株、SARS-CoV-1ハノイ株、HCoV―229E株、HCoV―OC43株)、及び各種細胞(VeroE6/TMPRSS2、MRC5、VeroE6)の希釈には、2% FBS/MEMからなる培養液を用いた。
まず、96又は48ウェルプレートに、適当細胞数に調製した細胞溶液を100又は300μL/ウェルずつ分注し、COインキュベーター(37℃、5% CO)で一晩培養した。次いで、このプレート中の細胞を入れた各ウェルに、予め培養液で適度な濃度に希釈した被験試料を、2倍段階希釈系列を作製するように添加し(50又は150μL/ウェル)、プレートミキサーで混和した。この被験試料を入れたプレートに、予め培養液で適当な濃度に希釈したウイルス液を50又は150μL/ウェルずつ分注した。その後、当該プレートをプレートミキサーで混和し、COインキュベーター(37℃、5% CO)で24~48時間培養した。
(2)RNA抽出・精製
培養後の前記プレートの各ウェルから、培養上清を除去し、RNA抽出キット(製品名:PureLink Pro 96 total RNA Purification Kit、又は、PureLink RNA Mini Kit、Thermo Fisher Scientific社製)に付属のLysisバッファーを各ウェルに添加して細胞溶解液を回収した。その後、当該キットに付属のプロトコルに従って、total RNAを精製した。
(3)ウイルスRNAの測定
精製した各種ウイルスRNAのnucleocapsid領域に設計したProbe/Primerセットを用いて、qRT-PCR(real-time quantitative reverse transcription PCR)を実施した。qRT-PCRは、市販のキット(製品名:EXPRESS One-Step SuperScript qRT-PCR kit、Thermo Fisher Scientific社製)と、リアルタイムPCRシステム(製品名:QuantStudio 7 Flex Real-Time PCR System、Thermo Fisher Scientific社製)を用いて行った。
ΔΔCt法を用いて、2-チオウリジンを添加しなかった細胞のウイルスRNA量を1.0として、各濃度の2-チオウリジン処理した細胞における相対ウイルスRNA量を算出した。この際、内在性コントロールとして、ACTB遺伝子を用いた。各感染細胞における相対ウイルスRNA量の測定結果を図1A~図1Dに示す。
<その他のウイルスに対するウイルスRNA複製抑制効果の確認>
感染に使用するウイルスとしてDENV2、ZIKV、YFV、JEV、WNV、及びCHIKVを用い、感染させる細胞をVeroE6細胞とし、さらに、DENV2、ZIKV、YFV及びJEVはウイルス感染から48時間培養後、WNVとCHIKVはウイルス感染から24時間後の細胞からウイルスRNAを抽出した以外は、前記と同様にして、各ウイルスに対する2-チオウリジンのウイルスRNA複製抑制効果を調べた。各感染細胞における相対ウイルスRNA量の測定結果を図1E~図1Jに示す。
図1A~図1Jに示すように、2-チオウリジンで処理した細胞では、全てのウイルスに感染した細胞におけるウイルスRNA量が低下していた。これらの結果から、2-チオウリジンは、コロナウイルス、フラビウイルス、及びトガウイルスのウイルスRNA複製に対する抑制効果を有しており、抗ウイルス活性を有することが確認された。これらの結果から、2-チオウリジンは、プラス鎖一本鎖RNAを遺伝子とするエンベロープウイルスに対して広範な抗ウイルス活性を有することが示された。
[実施例3]
フラビウイルスを感染させたマウスを、2-チオウリジン処理し、治療効果が得られるかどうかを調べた。実験には、インターフェロンα受容体とインターフェロンγ受容体を欠損させたAG129マウスと、DENV2をAG129マウスで継代して馴化させたウイルス(AG129マウス馴化DENV2)を用いた。2-チオウリジンは、5%DMSO/0.5%MC水溶液(100%のジメチルスルホキシド(DMSO)で溶解させた2-チオウリジン(最終濃度5%)を0.5%のメチルセルロースで溶解させた水溶液)で希釈した溶液として、マウスに経口投与した。
実験開始日の朝に、AG129マウス(7週齢の雌)に、マウス1匹当たり0.1mLのAG129マウス馴化DENV2液(1×10PFU/マウス)を腹腔内投与して感染させた。ウイルス感染日(感染0日目)から感染後4日目までの5日間、朝と夜の2回、2-チオウリジンを体重当たり50mg/kg(50mg/kg投与群、n=3)又は150mg/kg(150mg/kg投与群、n=4)で経口投与した。感染0日目には、感染後直ちに、2-チオウリジンの経口投与を行った。対照として、5%DMSO/0.5%MC水溶液を同様に経口投与した(Vehicle投与群、n=4)。
感染後毎日マウスを観察し、初期体重の80%を切った個体は致死とみなした。各群の生存率(%)の結果を図2Aに示す。Vehicle投与群では、ウイルス感染後10日内に全てのマウスが致死となったのに対して、50mg/kg投与群ではウイルス感染後12日までは全てのマウスが生存しており、150mg/kg投与群ではウイルス感染後15日までは全てのマウスが生存していた。
さらに、50mg/kg投与群、150mg/kg投与群、及びVehicle投与群をそれぞれ5匹ずつ追加して、同様にAG129マウス馴化DENV2を接種して感染実験を行った。感染後毎日マウスを観察し、初期体重の70%を切った個体は致死とみなした。図2Aに記載されたマウス個体についても、致死とみなす基準を初期体重の70%を切った個体として、再解析を実施した。図2Aの結果に、新たに取得したデータを追加して得られた各群の生存率(%)の結果を表3に示す。Vehicle投与群(n=9)では、ウイルス感染後10日内に全てのマウスが致死となったのに対して、50mg/kg投与群(n=8)及び150mg/kg投与群(n=9)では、投与量依存的にウイルスに感染したマウスの生存率が上昇していた。
Figure 2023072634000013
また、感染3日後に各個体の血液を採取し、血清中のウイルスRNA量(log10(DENV2コピー数)/mL)を測定した(各群n=5)。測定結果を図2Bに示す。50mg/kg投与群及び150mg/kg投与群では、薬剤なしの媒体のみを投与したVehicle投与群よりも、2-チオウリジンの投与量依存的に血中のウイルス量が減少していた(図2B)。
これらの結果から、2-チオウリジンは、デングウイルスに感染した動物に対する致死抑制効果を有しており、デングウイルスによる感染症の治療又は予防のための医薬品の有効成分となり得ることが示された。
[実施例4]
2-チオウリジンの構造類似化合物を合成し、そのSARS-CoV-2武漢株に対する抗ウイルス活性を測定した。
Figure 2023072634000014
(1)化合物(A2)及び化合物(A3)
化合物(A2)の2-セレノウリジン(CAS番号:40555-29-1)と、化合物(A3)の1-((3R,4s,5R)-3,4-ジヒドキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)-2-(メチルチオ)ピリジン-4(1H)-オン(CAS番号:175875-32-8)は、常法で合成されたものを用いた。
(2)化合物(A4)
化合物(A4)の2-ヒドロキシイソシチジンは、以下の通りにして合成した。まず、2,5’-アンヒドロウリジン(CAS番号:22329-20-0)及び塩酸ヒドロキシルアミン(153mg、2.21mmol)をメタノール(10mL)に懸濁し、トリエチルアミン(308μL)を加え、70℃で1時間、マイクロウエーブをかけた。次いで、反応液を室温に戻した後、溶媒を減圧下留去し、残渣をエタノールから結晶化して、化合物(A4)(97mg、収率84.8%)を得た。
ESI-MS m/z 260 (M+H)+
1H-NMR (DMSO-d6)(400 MHz) d, 9.53(s, 1H), 9.36 (s, 1H), 7.84 (d, 1H, J = 8.2 Hz), 5.54 (d, 1H, J = 3.2 Hz), 5.28 (d, 1H, J = 4.4 Hz), 5.12 (t, 1H, J = 5.1, 5.4 Hz), 5.09-5.07 (m, 2H), 3.98-3.92 (m, 2H), 3.80 (ddd, 1H, J = 3.2, 3.7, 5.6 Hz), 3.69 (ddd, 1H, J = 3.2, 5.4, 12.4 Hz), 3.55 (ddd, 1H, J = 2.7, 5.1, 12.4 Hz).
(3)化合物(A5)
化合物(A5)の2’,3’-O-イソプロピリデン-5’-O-プロピニル-2-チオウリジンは、以下の通りにして合成した。まず、2’,3’-O-イソプロピリデン-2-チオウリジン(isop-s2U)(CAS番号:6984-55-0)(200mg、0.67mmol)をアセトニトリル(CHCN)(5mL)に懸濁し、4-ジメチルアミノピリジン(5mg)及び無水プロピオン酸(130μL、1.5等量)を加え、室温で攪拌した。30分後にメタノール(1mL)を加え、さらに30分間攪拌した後、溶媒を減圧下留去し、残渣を酢酸エチル(10mL)に溶解し、水(5mL)、飽和重曹水(5mL)、水(5mL)の順に分液した。得られた酢酸エチル層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧下留去し、残渣を98% ギ酸(2mL)に溶解させて、6時間室温下で攪拌した。撹拌後の反応液を減圧下濃縮し、水を加えて共沸を3回繰り返してギ酸を除去した。得られた残渣をシリカゲルカラムで精製(ヘキサン:酢酸エチル=1:1~1:3(容量比))し、泡状の化合物(A5)(179mg、収率85%)を得た。
ESI-MS m/z 316 (M+H)+
1H-NMR (DMSO-d6)(400 MHz) δ, 7.75 (d, 1H, J = 8.4 Hz), 6.56 (d, 1H, J = 3.2 Hz), 6.03 (d, 1H, J = 8.4 Hz), 5.55 (d, 1H, J = 5.6 Hz), 5.32 (d, 1H, J = 6.0 Hz), 4.24-4.32 (m, 2H), 4.05-4.09 (m, 2H), 3.90 (ddd, 1H, J = 6.0 Hz), 2.38 (q, 2H, J = 7.6 Hz), 1.04 (t, 3H, J = 7.6 Hz).
(4)化合物(A6)
化合物(A6)の2’,3’-O-イソプロピリデン-5’-O-イソブチリル-2-チオリジンは、以下の通りにして合成した。まず、isop-s2U(200mg、0.67mmol)をアセトニトリル(5mL)に懸濁し、4-ジメチルアミノピリジン(5mg)及び無水イソ酪酸(170μL、1.5等量)を加え、室温で攪拌した。30分後にメタノール(1mL)を加え、さらに30分間攪拌した後、溶媒を減圧下留去し、残渣を酢酸エチル(10mL)に溶解し、水(5mL)、飽和重曹水(5mL)、水(5mL)の順に分液した。得られた酢酸エチル層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧下留去し、残渣を98% ギ酸(2mL)に溶解させて、6時間室温下で攪拌した。撹拌後の反応液を減圧下濃縮し、水を加えて共沸を3回繰り返してギ酸を除去した。得られた残渣をシリカゲルカラムで精製(ヘキサン:酢酸エチル=1:1~1:3(容量比))し、泡状の化合物(A6)(197mg、収率89.5%)を得た。
ESI-MS m/z 330 (M+H)+
1H-NMR (DMSO-d6)(400 MHz) δ, 7.74 (d, 1H, J = 8.2 Hz), 6.57 (d, 1H, J = 3.2 Hz), 6.01 (d, 1H, J = 8.2 Hz), 5.56 (d, 1H, J = 5.6 Hz), 5.33 (d, 1H, J = 6.0 Hz), 4.28 (d, 2H, J = 3.6 Hz), 4.06-4.10 (m, 2H), 3.90 (ddd, 1H, J = 6.0 Hz), 2.61 (sept, 1H, J = 7.0 Hz), 1.11 (d, 6H, J = 7.0 Hz).
(5)化合物(A7)
化合物(A7)の2’,3’,5’トリ-O-イソブチリル-2-チオウリジンは、以下の通りにして合成した。まず、2-チオウリジン(130mg、0.5mmol)をアセトニトリル(10mL)に懸濁し、4-ジメチルアミノピリジン(10mg)及び無水イソ酪酸(375μL、2.4mmol)を加え、室温で攪拌した。30分後にメタノール(1mL)を加え、さらに30分間攪拌した後、溶媒を減圧下留去し、残渣を酢酸エチル(20mL)に溶解し、水(5mL)、飽和重曹水(5mL×2)、水(5mL)の順に分液した。得られた酢酸エチル層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧下留去し、泡状の化合物(A7)(230mg、収率97.9%)を得た。
ESI-MS m/z 471 (M+H)+
1H-NMR (CDCl3)(400 MHz) δ, 9.40 (br s, 1H), 7.72 (d, 1H, J = 8.4 Hz), 6.86 (d, 1H, J = 4.4 Hz), 6.02 (d, 1H, J = 8.4 Hz), 5.41 (dd, 1H, J = 4.4, 5.4 Hz), 5.26 (dd, 1H, J = 5.5 Hz), 4.30-4.47 (m, 3H), 2.55-2.66 (m, 3H), 1.18-1.24 (m, 18H).
Figure 2023072634000015
抗ウイルス活性の測定は、実施例1と同様にして行った。測定結果を表4に示す。いずれの化合物も、2-チオウリジンと同様に、SARS-CoV-2武漢株に対する抗ウイルス活性を有していた。なかでも、化合物(A2)、(A4)、及び(A6)は、EC50とCC50の濃度差が十分であり、抗ウイルス剤として特に有望であった。
[実施例5]
SARS-CoV-2のマウス馴化株(MA-P10株、WK-521株由来)を感染させたマウスモデルを用いて、2-チオウリジンのウイルス感染予防効果及び治療効果を調べた。2-チオウリジンは、生理食塩水で希釈した溶液として、マウスに静脈内投与した。また、5%DMSO/0.5%MC水溶液(100%のDMSOで溶解させた2-チオウリジン(最終濃度5%)を0.5%のメチルセルロースで溶解させた水溶液)で希釈した溶液として、マウスに経口投与した。
(1)2-チオウリジンのウイルス感染予防効果
SARS-CoV-2 MA-P10株感染マウスモデルを用いた増殖評価モデルにより、ウイルス感染前に投与した2-チオウリジンによるマウス肺内ウイルス増殖抑制効果を調べた。
まず、5週齢のBALB/cマウスに、2-チオウリジンを単回静脈内投与(2又は20mg/kg)した(2mg/kg投与群と20mg/kg投与群のいずれもn=5)。対照として、生理食塩水を同様に単回静脈内投与した(Vehicle投与群、n=5)。
2-チオウリジン投与から2時間後の各マウスに、MA-P10株(2×10 TCID50/マウス)を経鼻接種し、感染翌日に各個体の肺を回収して、肺内のウイルス力価及びウイルスRNA量を測定した。各群の肺内のウイルス力価(log10(TCID50)/mL)の測定結果(平均値±SD)を図3Aに、肺内のウイルスRNA量(log10(ウイルスコピー数)/mL)の測定結果(平均値±SD)を図3Bに、それぞれ示す。
図3に示すように、2-チオウリジンをSARS-CoV-2のウイルス感染の2時間前に単回静脈内投与したマウスでは、2-チオウリジンの投与量依存的に肺内ウイルス量が減少していた。当該結果から、2-チオウリジンには、SARS-CoV-2のウイルス感染の予防効果があること、すなわち、2-チオウリジンがCOVID-19の予防薬として期待できることが確認された。
(2)2-チオウリジンの致死抑制効果
次に、MA-P10株感染マウスモデルを用いて、2-チオウリジンの致死抑制効果を調べた。
具体的には、10匹の30~50週齢のBALB/cマウスに、SARS-CoV-2(MA-P10株)(2×10 TCID50/マウス)を経鼻接種し、ウイルス感染から10日間の生存率(%)を調べた。このうち半数の5匹のマウスには、2-チオウリジンを感染2時間前に1回、感染翌日から感染4日後までの期間に1日1回の合計5日間静脈内投与(20mg/kg)した(20mg/kg投与群)。残る5匹のマウスには、2-チオウリジンに代えて生理食塩水を同様に静脈内投与した(Vehicle投与群)。
生存率の測定結果を図4に示す。2-チオウリジン投与群では、感染10日後の生存率が80%であったのに対して、Vehicle投与群のマウスの生存率は、感染8日目には0%であった。すなわち、2-チオウリジンを連続投与することによって、SARS-CoV-2による致死効果を抑制する結果が得られることが確認された。
(3)2-チオウリジンのウイルス感染症治療効果
SARS-CoV-2 MA-P10株感染マウスモデルを用いた増殖評価モデルにより、ウイルス感染後に投与した2-チオウリジンによるマウス肺内ウイルス増殖抑制効果を調べた。
まず、8匹の5週齢のBALB/cマウスに、MA-P10株(2×10 TCID50/マウス)を経鼻接種した。このうちの5匹のマウスには、2-チオウリジンを感染直後から、経口投与(1日2回、1回あたり300mg/kg)した(300mg/kg投与群)。残る3匹のマウスには、2-チオウリジンに代えて5%DMSO/0.5%MC水溶液を同様に経口投与した(Vehicle投与群)。この際、感染直後と感染から12時間後に2-チオウリジンを経口投与し、その後感染から24時間後に各個体の肺を回収して、肺内のウイルス力価(log10(TCID50)/mL)を測定した。各群の測定結果(平均値±SD)を図5に示す。
図5に示すように、2-チオウリジンをSARS-CoV-2のウイルス感染後に経口投与したマウスでは、2-チオウリジンを投与しなかったマウスよりも、肺内ウイルス力価が明らかに減少していた。当該結果から、2-チオウリジンは、感染後の投与によっても体内のSARS-CoV-2ウイルス量を低減できること、このため、2-チオウリジンは、SARS-CoV-2のウイルス感染症に対する治療薬として期待できることが明らかとなった。

Claims (10)

  1. 下記一般式(A-1)又は(A-2)
    Figure 2023072634000016
    [式中、Rは、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、又は=N-OR11であり;Rは、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、又は=N-OR11であり;Rは、-O-R12、-S-R13、又はグアニジノ基であり;R11は、水素原子、炭素数1~6のアルキル基又はアリール基であり;R12及びR13は、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキル基又はアリール基であり;Rは、水素原子、-CO-R14、又は-O-P(OH)(=O)-O-R15であり;R14及びR15は、それぞれ独立して、フェニル基で置換されていてもよい炭素数1~30のアルキル基(当該アルキル基は、炭素原子が2以上の場合に、炭素原子間にエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい)又はアリール基であり;R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は-CO-R16であり;R16は、炭素数1~6のアルキル基又はアリール基である。]
    で表される化合物、前記化合物の塩、又はこれらの溶媒和物からなる、抗ウイルス剤。
  2. 前記一般式(A-1)又は(A-2)で表される化合物が、下記一般式(1)~(9)
    Figure 2023072634000017
    のいずれかで表される化合物である、請求項1に記載の抗ウイルス剤。
  3. 前記一般式(A-1)又は(A-2)で表される化合物が、下記式(A1)、(A5)、(A6)、(A7)、及び(A8)
    Figure 2023072634000018
    のいずれかで表される化合物である、請求項1に記載の抗ウイルス剤。
  4. 前記一般式(A-1)又は(A-2)で表される化合物が、下記式(A2)~(A4)
    Figure 2023072634000019
    のいずれかで表される化合物である、請求項1に記載の抗ウイルス剤。
  5. プラス鎖一本鎖RNAを遺伝子とするエンベロープウイルスに対する抗ウイルス作用を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗ウイルス剤。
  6. 請求項1~5のいずれか一項に記載の抗ウイルス剤を有効成分とする、医薬用組成物。
  7. プラス鎖一本鎖RNAを遺伝子とするエンベロープウイルスによる感染症の治療又は予防に用いられる、請求項6に記載の医薬用組成物。
  8. コロナウイルス、フラビウイルス、又はトガウイルスによる感染症の治療又は予防に用いられる、請求項6に記載の医薬用組成物。
  9. COVID-19の治療又は予防に用いられる、請求項6に記載の医薬用組成物。
  10. 下記式(A4)~(A7)
    Figure 2023072634000020
    のいずれかで表される化合物。
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