上記のような従来のピッキング装置では、前記ピッキングハンドは、下降限高さにあるときには下端のピッキングヘッドがコンテナ内の底部に到達し、上昇限高さにあるときには下端のピッキングヘッドとこれに保持されたワークとがコンテナより十分上方に離れた高さにあることが必要なものである。換言すればピッキングハンドは、上下方向長さが長い長尺の柱状体であるから、このピッキングハンドを昇降移動自在に支持するZ軸ガイドレールも、当該ピッキングハンドと同等かそれ以上の長さを備えた、上下方向長さが長い長尺の柱状体となる。従って、特許文献1に記載されたような従来のピッキング装置では、上下方向長さの長い長尺の柱状体、即ち、Z軸ガイドレールとピッキングハンドの2つをY軸ガイドレールで支持しなければならない。この結果、Y軸ガイドレールには、十分な曲げ強度が要求され、特許文献1では片持ち状のY軸ガイドレールが示されているが、このような片持ち構造のY軸ガイドレールでZ軸ガイドレールとピッキングハンドの2つを支持させて初期の動作を円滑且つ確実に行わせるためには、Y軸ガイドレールに強大な曲げ剛性が要求され、延いてはY軸ガイドレールを支持するX軸ガイドレール側のX軸横動体にも相応の剛性が要求されることになり、装置全体が大型大重量となり、現実的にはY軸ガイドレールを片持ち構造にするよりも、Y軸ガイドレールの両端を支持できるようにX軸ガイドレールを2本並設して、Y軸ガイドレールを両端持ち構造にすることが一般的になっていた。
本発明は、上記のような従来の問題点を解消することのできるピッキング装置を提案するものであって、本発明に係るピッキング装置は、後述する実施例との関係を理解し易くするために、当該実施例の説明において使用した参照符号を括弧付きで付して示すと、水平面上で互いに直交するX軸方向とY軸方向、及び水平面に対して垂直なZ軸方向に移動可能なピッキングヘッド(45)を備えたピッキング装置において、X軸方向と平行に一定高さに架設されたX軸ガイドレール(2)、このX軸ガイドレール(2)に下端部がX軸方向横動自在に支持され且つZ軸方向に起立するZ軸ガイドレール(7)、このZ軸ガイドレール(7)に一端部がZ軸方向昇降自在に支持され且つZ軸ガイドレール(7)から離れる水平Y軸方向に延出する片持ち状のY軸ガイドレール(8)、及びこのY軸ガイドレール(8)に支持されたピッキングハンド(9)から成り、このピッキングハンド(9)は、前記Y軸ガイドレール(8)に上端部がY軸方向横動自在に支持され且つZ軸方向に垂下する柱状のピッキングハンド本体(44)と、このピッキングハンド本体(44)の下端部に取り付けられたピッキングヘッド(45)から構成されている。
上記本発明の構成によれば、Z軸方向に長尺となるZ軸ガイドレールは、Y軸ガイドレールではなくX軸ガイドレールに支持させ、同様にZ軸方向に長尺となるピッキングハンドは、Z軸ガイドレールではなくY軸ガイドレールに支持させており、Z軸ガイドレールとピッキングハンドの両方をY軸ガイドレールに支持させる構成と比較して、Y軸ガイドレールに働く荷重負荷が大幅に軽減される。従って、Y軸ガイドレールに必要な曲げ剛性を抑えると共に軽量化を図ることが容易になり、この結果、Y軸ガイドレールを、その一端のみがZ軸ガイドレールに支持される片持ち構造とすることが容易になり、装置全体をシンプル且つ軽量に構成することができ、コストダウンも図ることができる。換言すれば、Z軸ガイドレールは一定位置に固定できるX軸ガイドレールに支持させるのであるから、X軸ガイドレールと共にZ軸ガイドレールを、他の構成部材に制約されることなく、十分な剛性を有する構造に容易に構成することができ、頑丈で耐用命数の大きなピッキング装置を容易に実現できる。又、Y軸ガイドレールが、X軸ガイドレールと同一か又は少し高い一定レベルでX軸方向に水平移動する従来の構成では、当該Y軸ガイドレールに支持されたZ軸ガイドレールに沿って昇降するピッキングハンドの下端のピッキングヘッドが、前記Y軸ガイドレールの脇を昇降移動することになるので、ピッキング対象のワークが横に張り出すような形状の場合、当該ワークがY軸ガイドレールと干渉する恐れがあったが、上記本発明の構成では、Y軸ガイドレールは常にピッキングハンドの上端横位置にあって、ピッキングハンドに接近する恐れは皆無であるから、前記のようにピッキング対象のワークが如何なる形状のものであっても、ピッキング途中にY軸ガイドレールと干渉するような恐れは皆無になり、安全なピッキング作業を容易に行うことができる。
本発明を実施する場合、前記X軸ガイドレール(2)の前側面(X軸ガイドレール(2)の前後両垂直側面の内の一方の側面)の下端部と上側面とにX軸レール材(10a,10b)を敷設し、前記Z軸ガイドレール(7)の下端部は、前記X軸ガイドレール(2)の前側面に重なるように配置し、このZ軸ガイドレール(7)の下端部には、前記X軸レール材(10a,10b)に嵌合するX軸スライダー(14a~15b)を設け、前記Y軸ガイドレール(8)は、前記Z軸ガイドレール(7)に対して前記X軸ガイドレール(2)のある側とは反対側に延出する向きで前記Z軸ガイドレール(7)に一端部を片持ち状に支持することができる。この構成によれば、X軸ガイドレールの上下両側面間の高さを可能な範囲内で大きくしておけば、Z軸ガイドレールの下端をX軸ガイドレールより下方に突出させないで、Z軸ガイドレールが片持ち状に支持するY軸ガイドレールのある側に倒れようとする傾向を効果的に抑制することができ、しかもX軸ガイドレールは、その下側面が搬送用コンテナの取り扱い空間に可能な限り接近するように低く架設することができる。
この場合、前記Z軸ガイドレール(7)を前記X軸ガイドレール(2)に沿って往復移動させるZ軸ガイドレール移動用駆動手段(16)は、前記X軸ガイドレール(2)の上側面に前記Z軸ガイドレール(7)のある側とは反対の後ろ側に歯列が位置する向きでX軸方向に沿って敷設されたX軸ラックギヤ(11)と、前記Z軸ガイドレール(7)の下端部の背面側に垂直縦向きに取り付けられたモーター(18)と、このモーター(18)の下端の出力軸に取り付けられて前記X軸ラックギヤ(11)と咬合するピニオンギヤ(19)から構成し、前記X軸ガイドレール(2)の上側面に敷設される前記X軸レール材(10b)は、前記X軸ラックギヤ(11)の垂直背面に取り付けることができる。この構成によれば、X軸ガイドレールの上側空間を利用してZ軸ガイドレール移動用駆動手段を纏まり良く容易に構成することができるだけではなく、X軸ガイドレールの上側面には、X軸ラックギヤの取付け箇所のみ確保しておけば良く、X軸ラックギヤとX軸レール材とが一体化されるので、個別の場合よりも剛性を高めることができる。
又、前記Z軸ガイドレール(7)の側面の内、X軸ガイドレール(2)のある側とは反対側の前側面と、この前側面に直角に連なる左右両側面の内の片側の側面とに、Z軸方向に沿ってZ軸レール材(21,22)を敷設し、前記Y軸ガイドレール(8)の端部の前記ピッキングハンド(9)が支持される側とは反対の背面側には、前記Z軸ガイドレール(7)が備える2つの前記Z軸レール材(21,22)に嵌合するZ軸スライダー(25a,25b,26)を取り付け、前記Y軸ガイドレール(8)を前記Z軸ガイドレール(7)に沿って往復昇降移動させるY軸ガイドレール昇降用駆動手段(27)は、前記Z軸ガイドレール(7)の上下両端部に軸支された上下一対の回転体(29,30)と、これら両回転体(29,30)間に掛張され且つ一箇所が前記Y軸ガイドレール(8)の端部の背面に固定された巻掛け伝動具(31)、及び上下一対の前記回転体(29,30)の内の上端側回転体(29)に連動連結されたモーター(28)から構成し、前記巻掛け伝動具(31)は、Z軸ガイドレール(7)の前側面に敷設されている前記Z軸レール材(21)を内包するように張設することができる。この構成によれば、Z軸ガイドレールに対しY軸ガイドレールの端部を安定良く片持ち支持させることができ、しかも巻掛け伝動具を利用した構造簡単なY軸ガイドレール昇降用駆動手段は、その巻掛け伝動具の内側空間を利用してZ軸ガイドレールの前側面にZ軸レール材を敷設することができるので、コンパクトに構成することができる。
更に、前記ピッキングハンド(9)をY軸方向に往復移動させるピッキングハンド移動用駆動手段(41)は、前記Y軸ガイドレール(8)にY軸方向に沿って敷設されたY軸ラックギヤ(36)と、このY軸ラックギヤ(36)に咬合してZ軸周りに回転するピニオンギヤ(43)と、このピニオンギヤ(43)の上側に垂直縦向きに設置されて当該ピニオンギヤ(43)を回転駆動するモーター(42)から構成し、前記ピッキングハンド(9)は、前記ピニオンギヤ(43)の下側に配置することができる。又、ピッキングヘッドが単一の円柱状吸着パッドではなく、例えば3つのピッキングヘッド単体を円周上に配列したものや、開閉指タイプのワーク把持手段を備えたもののように、使用時にワークに対する好適な方向性をもつようなピッキングヘッドである場合には、このピッキングヘッド(45)を下端に備えた前記ピッキングハンド本体(44)をZ軸周りに正逆自転させる自転用駆動手段(46)を設けて、ピッキング対象のワークの水平面上の向きなどに応じて、ピッキングハンド本体の自転によりピッキングヘッドの向きを変えることができるように構成することが望ましい。
前記自転用駆動手段(46)は、前記ピッキングハンド移動用駆動手段(41)のモーター(42)に対してY軸方向に並列する垂直縦向きのモーター(58)と、Z軸周りに自転可能に支持されたピッキングハンド本体(44)の上端部と前記モーター(58)とを連動連結するY軸方向に沿った巻掛け伝動手段(55)から構成することができる。更に、前記ピッキングヘッド(45)は、前記ピッキングハンド本体(44)に対して水平支軸(66)の周りに傾動自在に軸支し、このピッキングヘッド(45)を前記水平支軸(66)の周りに傾動させる傾動用駆動手段(48)を設けることができる。この構成によれば、ピッキング対象のワークが正立状態ではなく、傾斜しているような場合でも、そのワークの傾斜に適合させるようにピッキングヘッドを傾動させて、確実にピッキングを行わせることができる。この傾動用駆動手段は、前記自転用駆動手段と組み合わせて実施することができる。又、前記巻掛け伝動手段も、先に説明したように各種のものが利用できるが、タイミングベルト方式のものを利用するのが望ましい。
前記傾動用駆動手段(48)は、前記水平支軸(66)の両側位置でピッキングヘッド(45)に軸支連結された2本の押し引きリンク(73,74)、前記ピッキングハンド本体(44)の上端部側に前記水平支軸(66)と平行な水平支軸(70)によって軸支されて左右両側に張り出す一対の可動レバー(71,72)、及びこの一対の可動レバー(71,72)を一体に上下揺動させるモーター(75)を備えたもので、前記2本の押し引きリンク(73,74)の上端部と前記一対の可動レバー(71,72)とを軸支連結させて、前記一対の可動レバー(71,72)の一体上下揺動に伴ってピッキングヘッド(45)が傾動するように構成することができる。この構成によれば、駆動源となるモーターの位置をピッキングヘッドから上方に十分に離して、ピッキング対象のワークと干渉しないように構成することができるにも拘らず、モーターの回転力を多数のギヤを利用してピッキングヘッドに伝達する構成と比較して、構造が簡単で安価に実施することができる。尚、前記一対の可動レバーと前記2本の押し引きリンクは、前記水平支軸の軸方向から見て前記ピッキングハンド本体の両側に振り分け配置するのが望ましい。
ピッキングヘッド(45)を水平支軸(66)の周りに傾動させる傾動用駆動手段(48)を設ける場合、傾動用駆動手段(48)のモーター(75)は、前記ピッキングハンド本体(44)に対して直角水平横向きに突設すれば、その回転力を前記一対の可動レバー(71,72)の一体上下揺動に変換することが極めて簡単に実現できる。しかしながら、前記ピッキングハンド本体をZ軸周りに正逆自転させる自転用駆動手段と併用している場合には、ピッキングハンド本体の自転に伴って、当該ピッキングハンドから水平横向きに突出している傾動用駆動手段のモーターがピッキングハンド本体と一体に公転することになる。このような状況では、Y軸ガイドレール上の両行程端の内、Z軸ガイドレール側の行程端にピッキングハンド本体が位置する状態で、ピッキングハンド本体を自転させると、当該ピッキングハンド本体と一体に公転する前記傾動用駆動手段のモーターが、Z軸ガイドレール又はX軸ガイドレール、又はこれらガイドレールの付属物と干渉する事態が生じる。このような事態の生じるのを避けるために、前記傾動用駆動手段のモーターと前記一対の可動レバーを駆動する回転軸との間の伝動手段が複雑になるが、例えば前記傾動用駆動手段のモーターをピッキングハンド本体に隣接する垂直縦向きに配設して、ピッキングハンド本体から横側方への前記モーターの張り出しを小さくする対策も考えられる。その他の方法としては、前記Y軸ガイドレールの全長を少し長くして、ピッキングハンド本体のZ軸ガイドレール側の行程端を前記のような状況が生じない位置に設定することも考えられる。
勿論、ピッキングハンド本体がY軸ガイドレール上の両行程端の内、Z軸ガイドレール側の行程端に位置するときだけ、上記のようにピッキングハンド本体の自転に伴って傾動用駆動手段のモーターが他物と干渉する恐れがあるので、ピッキングハンド本体がZ軸ガイドレール側の行程端から離れているときは360度の範囲で自由に自転可能とし、ピッキングハンド本体がZ軸ガイドレール側の行程端にある時のみ、前記傾動用駆動手段のモーターが他物と干渉し合うことのない、例えば斜め180度の範囲にピッキングハンド本体の自転範囲を規制することも可能である。しかしながら、ピッキングヘッドの構造によっては、ピッキングヘッドを360度の範囲で自転させなくとも、ピッキングヘッドの向きを180度の範囲内で変えるだけでも効果が得られる場合がある。このような場合には、前記自転用駆動手段(46)によるピッキングハンド本体(44)の自転許容範囲は、前記ピッキングハンド本体(44)が、前記Z軸ガイドレール(7)及びX軸ガイドレール(2)と接近する側のY軸方向の横動行程端にあるときに、平面視において前記傾動用駆動手段(48)のモーター(75)がZ軸ガイドレール(7)又はX軸ガイドレール(2)及びこれらガイドレール(2,7)に取り付けられている付属物と干渉しない斜め180度の範囲に設定しておくことができる。
尚、上記構成を実施する場合、前記傾動用駆動手段(48)のモーター(75)は、ピッキングハンド本体(44)が自転する前の自転待機状態にあるときには、前記斜め180度の自転許容範囲内の中間位置で、平面視において前記Y軸ガイドレール(8)と平行になる角度となるように構成するのが望ましい。
以上の従属請求項2~11に記載の発明について説明したが、従属請求項6~11に記載の発明は、従来周知のピッキング装置、即ち、X軸ガイドレールにY軸ガイドレールをX軸方向に往復移動自在に支持させ、このY軸ガイドレールにZ軸ガイドレールをY軸方向に往復移動自在に支持させ、このZ軸ガイドレールにピッキングヘッドを昇降自在に支持して成るピッキング装置のピッキングハンドにも適用できる。
以下、本発明の好適実施例を添付図に従って説明する。図1~図3において、1Aはワーク取出し作業対象の搬送用コンテナ、1Bは取出しワークを受け入れるワーク搬入作業対象の搬送用コンテナである。これら各搬送用コンテナ1A,1Bは、平面形状が長方形のもので、短辺どうしが隣り合う状態で直列状態に作業用定位置にセットされる。図では省略しているが、各搬送用コンテナ1A,1Bは、作業用定位置PA,PBに対する搬入搬出用コンベヤによって取り扱われる。
各搬送用コンテナ1A,1Bの作業用定位置PA,PBを内包するように本発明に係るピッキング装置が配設されるが、当該ピッキング装置は、水平面上での作業用定位置PA,PBの直列方向、即ち、各搬送用コンテナ1A,1Bの長辺方向をX軸方向とし、水平面上で前記X軸方向と直交する方向、即ち、各搬送用コンテナ1A,1Bの短辺方向をY軸方向とし、前記水平面に対する垂直上下方向をZ軸方向として、以下のように構成されている。平面視において作業用定位置PA,PBの周囲を取り囲むX軸方向が長い長方形の一方の長辺と重なるように、作業用定位置PA,PBにおける搬送用コンテナ1A,1Bの上端より適当距離上方の高さに、X軸方向と平行にX軸ガイドレール2が架台3によって支持されている。架台3は、X軸ガイドレール2の両端部と中間位置とを支持するものであって、それぞれY軸方向に平行な上側梁材4a~4cと下側梁材5a~5c、及び所要本数の柱材6によって組み立てられた枠組み構造体である。
X軸ガイドレール2には、Z方向に起立するZ軸ガイドレール7の下端部がX軸方向に往復移動自在に支持され、このZ軸ガイドレール7には、Y軸方向と平行なY軸ガイドレール8の一端部がZ軸方向に昇降移動自在に支持され、このY軸ガイドレール8には、Z軸方向に長尺のピッキングハンド9の上端部がY軸方向に往復移動自在に支持されている。X軸ガイドレール2、Z軸ガイドレール7、及びY軸ガイドレール8は、図4、図7、及び図8に示すように断面形状を簡略化して無垢材のように示しているが、必要に応じて軽量化のための長さ方向に連続する空洞部が成形されるものである。又、各図に示すように、各ガイドレール2,7,8には、これらガイドレールの側面に断面形状が中拡がり形状の凹溝部が各ガイドレールの長さ方向に連続するように設けられ、各ガイドレール2,7,8に部材を固定する場合、その部材取付け箇所にある前記凹溝部内に雌ネジ体が活動自在に遊嵌され、この雌ネジ体のネジ孔に部材取付け用ネジを螺合締結することにより、部材を各ガイドレール2,7,8の任意の側面の任意の位置に取り付けることができるように構成されている。以下の説明では、断面形状が中拡がり形状の凹溝部と雌ネジ体とを利用して部材をネジ止めする手段を、従来周知のネジ止め手段と略称する。
前記X軸ガイドレール2には、前側面の下端近傍位置にX軸方向と平行な下側X軸レール材10aが取り付けられ、一段高くなった上側面には、後ろ側に歯列を備えたX軸ラックギヤ11がX軸方向と平行に取り付けられている。このX軸ラックギヤ11には、その後側面にX軸方向と平行に上側X軸レール材10bが取り付けられている。又、X軸ガイドレール2の長さ方向中央付近には、柱材6の上端部の前側面がネジ止めされている。これらX軸ガイドレール2に対する部材の取り付けは、従来周知のネジ止め手段によって行われている。
Z軸ガイドレール7の下端部は、図4、図6、及び図8に示すように、前記X軸ガイドレール2の前面側に重なるように配置され、このZ軸ガイドレール7の下端部には、X軸ガイドレール2に係合するX軸横動体12が、従来周知のネジ止め手段によって取り付けられている。このX軸横動体12は、Z軸ガイドレール7の下端部のX軸ガイドレール2に対面する側面に固着される基板13を備え、この基板13の下端側に、前記X軸ガイドレール2の下側X軸レール材10aにX方向滑動可能に外嵌する2つの下側X軸スライダー14a,14bが取り付けられ、基板13の中間高さには、前記X軸ガイドレール2の上側X軸レール材10bにX方向滑動可能に外嵌する2つの上側X軸スライダー15a,15bが取り付けられている。
上記の構成によってZ軸ガイドレール7は、起立姿勢を維持しながらX軸ガイドレール2に沿って往復移動自在となるが、このZ軸ガイドレール7の移動用駆動手段16が、前記X軸ガイドレール2の上側面に取り付けられたX軸ラックギヤ11と、このX軸ラックギヤ11の上側で基板13から突設された水平支持板17の上に上下縦向きに設置されたモーター18、及びこのモーター18の下端から下向きに突出する出力軸18aに取り付けられて前記X軸ラックギヤ11に咬合するピニオンギヤ19によって構成されている。又、Z軸ガイドレール7には、図8に示すように、X軸横動体12の基板13が取り付けられていない直角2側面に、Z軸方向に連続する第一Z軸レール材21と第二Z軸レール材22が、従来周知のネジ止め手段により取り付けられている。
Y軸ガイドレール8は、図7に示すように縦長断面のものであって、そのZ軸ガイドレール7側の端部には、図5、及び図7~図9に示すように、Z軸昇降体23が取り付けられている。このZ軸昇降体23は、Y軸ガイドレール8の長さ方向と平行な基板24aと、この基板24aから直角向きに連なる副板部24b、基板24aと副板部24bの上端どうしを連結一体化する天板部24c、及び副板部24bとY軸ガイドレール8との間の入隅部に配置された補強用板材24dから構成されている。前記基板24aには、Z軸ガイドレール7の第一Z軸レール材21にZ軸方向滑動可能に外嵌する上下2段の第一Z軸スライダー25a,25bが取り付けられ、前記副板部24bには、Z軸ガイドレール7の第二Z軸レール材22にZ軸方向滑動可能に外嵌する第二Z軸スライダー26が取り付けられている。このZ軸ガイドレール7側の第一Z軸レール材21と第二Z軸レール材22、及びY軸ガイドレール8のZ軸昇降体23に設けられた第一Z軸スライダー25a,25bと第二Z軸スライダー26とによって、Y軸ガイドレール8は、Z軸ガイドレール7から水平にY軸方向に延出する姿勢を保って、Z軸ガイドレール7に沿ってZ軸方向に昇降移動することができる。
Y軸ガイドレール8の昇降用駆動手段27は、図4~図9に示すように、Z軸ガイドレール7の上端部にY軸方向と平行な向きに取り付けられたモーター28と、このモーター28のY軸方向と平行な向きに突出する出力軸28aに取り付けられた駆動回転体29と、Z軸ガイドレール7の下端部に前記駆動用回転体29の真下に位置するようにY軸方向と平行な水平支軸30aによって軸支された従動回転体30、及び上下両回転体29,30間に掛張された巻掛け伝動具31から成る巻掛け伝動手段32によって構成されている。前記巻掛け伝動具31は、図8に示すように平面視において、当該巻掛け伝動具31の内側、即ち、巻掛け伝動具31の両側昇降経路部31a,31b間と上下両回転体29,30間の縦長領域内に、Z軸ガイドレール7に取り付けられている第二Z軸レール材22と、当該第二Z軸レール材22に外嵌するY軸ガイドレール8側の第二Z軸スライダー26とが位置しており、当該巻掛け伝動具31の両側昇降経路部31a,31bの内、Z軸昇降体23の基板24aに隣接する側の昇降経路部31aの一箇所が、押え板31cによって基板24aに挟持固定されている。尚、巻掛け伝動具31の前記昇降経路部31aは、Z軸昇降体23の天板部24cを上下方向に貫通することになるので、当該天板部24cには、巻掛け伝動具31の前記昇降経路部31aが貫通する貫通開口部33が設けられている。
縦長断面のY軸ガイドレール8には、その上下両端面にY軸方向に沿ってY軸レール材34,35が従来周知のネジ止め手段により取り付けられている。又、このY軸ガイドレール8の両側面の内、Z軸ガイドレール7のある側とは反対側の側面の上端付近にはY軸方向に沿って連続する凹溝が設けられ、この凹溝内にY軸ラックギヤ36が嵌合した状態でネジ止めされている。このY軸ガイドレール8にY軸方向に往復移動自在に支持されたY軸横動体37にピッキングハンド9が取り付けられている。前記Y軸横動体37は、Y軸ガイドレール8の前記Y軸ラックギヤ36が敷設されている側面に隣り合う垂直基板38と、Y軸ガイドレール8の上側のY軸レール材34に上側から外嵌するように前記垂直基板38の上端内側に取り付けられた上側Y軸スライダー39と、Y軸ガイドレール8の下側のY軸レール材35に下側から外嵌するように前記垂直基板38の下端内側に取り付けられた下側Y軸スライダー40によって構成されている。
上記のY軸横動体37を介してピッキングハンド9をY軸ガイドレール8に沿って往復移動させるためのピッキングハンド移動用駆動手段41は、Y軸横動体37における垂直基板38の上端部前側に上下縦向きに取り付けられたモーター42と、このモーター42の下端から垂直下向きに突出する出力軸42aに取り付けられて前記Y軸ラックギヤ36に咬合するピニオンギヤ43から構成されている。前記垂直基板38の上端部は、ピニオンギヤ43を垂直基板38の後ろ側にあるY軸ラックギヤ36に咬合させるために二股状に形成され、この垂直基板38の上端二股部38a間で前記ピニオンギヤ43より上側にモーター架台部38bが架設されている。
ピッキングハンド9は、図11~図14Bに示すように、Z軸方向に長尺で柱状のピッキングハンド本体44と、このピッキングハンド本体44の下端に取り付けられたピッキングヘッド45、ピッキングハンド本体44をZ軸周りに正逆自転させる自転用駆動手段46、ピッキングハンド本体44の自転範囲制限手段47、及びピッキングヘッド45を水平支軸の周りに傾動させる傾動用駆動手段48から構成されている。ピッキングハンド本体44は、図12~図14Aに示すように、下端に角軸部49aを有する上端軸部49、この上端軸部49の前記角軸部49aに相対回転不能に嵌合され且つ前記角軸部49aに1本のボルト50aで同心状に結合された上側接続用フランジ50、この上側接続用フランジ50との間で、自転範囲制限手段47を構成する制御板47aを挟んだ状態で周方向複数本のボルト51aによって同心状に結合された下側接続用フランジ51、この下側接続用フランジ51から下向きに一体に連設された中継軸部52、及びこの中継軸部52の下端部に外嵌連結された本体軸部53から構成されている。中継軸部52は、下側接続用フランジ51を上端に一体形成されている肉厚丸パイプ材の直径方向両側を偏平状に切削して形成されたような、横断面が中心に丸穴を有する長方形状のものであり、本体軸部53は、前記中継軸部52の外側輪郭に合わせて丸パイプ材の直径方向両側を偏平状に加圧成形したような、横断面が中空長方形状のパイプ材から成り、この本体軸部53の上端部を前記中継軸部52の下端部に外嵌させた状態で複数本のネジ53aにより両者を結合一体化させている。
上記構成のピッキングハンド本体44は、図11に示すように前記Y軸横動体37の垂直基板38の外側にZ軸方向と平行になるように、上端軸部49の上下両端が軸受け54a,54bによって自転可能に支持されている。この上端軸部49には、上側軸受け54aの直下位置に、前記自転用駆動手段46の巻掛け伝動手段55を構成する従動回転体56bが取り付けられている。巻掛け伝動手段55は、前記従動回転体56bと、上下縦向きのモーター58の下端出力軸58aに取り付けられている駆動回転体56a、及び両回転体56a,56b間に掛張された巻掛け伝動具57によって構成されている。前記モーター58は、平面視においてピッキングハンド本体44に対しX軸ガイドレール2のある側とは反対側へY軸方向に離れた位置に配置され、当該モーター58を支持するモーター支持板59は、上端軸部49を支持する上側軸受け54aから連設されて前記モーター支持板59の側辺上側に重なる取付け板部54cに、並列する垂直向きの2本のボルト60によって取り付けられると共に、図10に示すように垂直基板38に対しても1本の水平向きのボルト61によって取り付けられている。尚、前記上側軸受け54aの取付け板部54cに設けられ且つ垂直向きの2本のボルト60が挿通される2つのボルト孔と、前記垂直基板38に設けられ且つ水平向きのボルト61が挿通する1つのボルト孔とは、Y軸方向に長い長孔になっており、これらボルト60,61を緩めてモーター支持板59をY軸方向に移動させ、モーター58側の駆動回転体56aとピッキングハンド本体44側の従動回転体56bとの間の間隔を変えて、巻掛け伝動具57の張力を調整することができるように構成されている。
図12~図14Bに示すように、ピッキングヘッド45は、下側に3つの負圧吸着ヘッド単体62a~62cが取り付けられた基盤63を備えている。ピッキングハンド本体44を構成している本体軸部53の下端には、下窄まりの軸受け部材64が取り付けられており、この軸受け部材64の下端部が前記ピッキングヘッド45の基盤63の中心位置から上向きに突設された軸受け65に、前記本体軸部53の短辺方向の水平支軸66によって傾動自在に軸支されている。前記軸受け部材64は、上端に二股状差込み部64aが連設され、この二股状差込み部64aを前記本体軸部53の両短辺内側に差し込んでそれぞれネジ64bによって固着されている。又、この軸受け部材64は、ピッキングヘッド45の基盤63が水平支軸66の周りに傾動したときに、当該基盤63が接近してくる側の側面(本体軸部53の両短辺に繋がる両側面)が逆V字形に傾斜し、この傾斜両側面に、球面状頭部を備えた傾動制限ネジ67a,67bが、突出量調整可能に取り付けられている。これら傾動制限ネジ67a,67bは、図15に示すように、ピッキングヘッド45が許容角度以上に傾動するのを当該傾動制限ネジ67a/67bがピッキングヘッド45の基盤63の上面に当接して阻止するものであるが、この実施例では前記基盤63の上面の傾動制限ネジ67a,67bに当接する箇所に、図14Bに示すように、水平支軸66に対して直交する方向に沿って底面が円弧形の凹溝部68a,68bを形成し、この凹溝部68a/68bの底面に傾動制限ネジ67a/67bの球面状頭部が当接するように構成している。
ピッキングヘッド45の傾動用駆動手段48は、図12~図14Bに示すように、ピッキングハンド本体44の本体軸部53より上方に突出している中継軸部52の偏平側面部を水平向きに貫通する中空水平支軸70と、中継軸部52の両側で前記中空水平支軸70に一端部が取り付けられ且つ互いに逆向き水平方向に延出する一対の可動レバー71,72、両可動レバー71,72の遊端部に前記中空水平支軸70と平行な水平支軸(ボルトナットのボルト軸部)73a,74aによって上端部が軸支連結された2本の押し引きリンク73,74、前記中空水平支軸70の一端に出力軸75aが挿入固定された水平横向きのモーター75から構成されている。このモーター75の出力軸75a側の端部に取り付けられたモーター支持用垂直板76の上端には、自転範囲制限手段47を構成する補助制御ブロック47bが一体形成され、この補助制御ブロック47bが前記制御板47aの側辺にボルト47cによって固着されている。前記制御板47aは、先に説明したようにピッキングハンド本体44を構成している上端軸部49と中継軸部52との間に上下両接続用フランジ50,51を介して固着されてピッキングハンド本体44と一体に自転するものであるから、モーター75もピッキングハンド本体44と一体に公転することになる。
モーター75の出力軸75aによって回転駆動される前記中空水平支軸70は、外端側に一方の可動レバー71が一体形成されている内側筒状軸体77と、外端側に他方の可動レバー72が一体形成されている外側筒状軸体78とから構成されたもので、内側筒状軸体77は、モーター75の出力軸75aに外嵌すると共に当該出力軸75aにキー止めされた状態で中継軸部52の貫通孔52aに内側筒状軸体77の内端部を挿入し、外側筒状軸体78は、中継軸部52の貫通孔52aに外側から挿入すると共に、モーター75の出力軸75aの外端部に嵌合させて内側筒状軸体77の内端に当接させている。この状態で外側筒状軸体78の外端中心部に設けられた取付け孔に締結用ボルト79が挿入され、当該締結用ボルト79を、モーター75の出力軸75aに設けられたネジ孔に捩じ込むことにより、ピッキングハンド本体44に対する中空水平支軸70の組み付けが完了する。このように組み付けられた中空水平支軸70の内外両可動レバー71,72が相対的に回転するのを完全に防止するため、図12に示されるように、貫通孔52a内に入り込む内側筒状軸体77の内端部と、当該内側筒状軸体77の内端部に軸方向に当接する外側筒状軸体78の内端部とに、凹部と凸部が互いに軸方向に嵌合して周方向の相対回転を阻止する嵌合部80を設けておくことができる。
前記可動レバー71,72に上端が軸支連結されている前記押し引きリンク73,74は、その下端が、ピッキングヘッド45の基盤63の上側に突設された一対の軸受け81,82に、当該基盤63とピッキングハンド本体44の本体軸部53とを連結している水平支軸66と平行な水平支軸81a,82aによって軸支連結している。図14Aに示すように、両可動レバー71,72が水平状態にあるとき、両押し引きリンク73,74によって連結されているピッキングヘッド45の基盤63も水平状態になっている。そしてこの状態を中空水平支軸70の軸心方向から見たとき、両押し引きリンク73,74は、上端近傍位置まではピッキングハンド本体44の本体軸部53と平行な直線状になっており、この直線状部分から上端までが斜め外側へ広がるように傾斜している。一方、図11に示すように、モーター75を横から見る(ピッキングハンド本体44の本体軸部53の巾の狭い側面を見る)状態では、両押し引きリンク73,74は、巾の狭い本体軸部53の両側で全長にわたって直線状に見えることになる。
上記のように両可動レバー71,72とピッキングヘッド45の基盤63が水平状態にあるときを傾動待機状態とし、係る状態からモーター75を正回転方向に稼働させて、中空水平支軸70から左右両側に水平に延出していた可動レバー71,72を、図15に実線で示すように可動レバー71を上方に移動する向きに正方向に傾動させて押し引きリンク73を引き上げることにより、ピッキングヘッド45の基盤63を、傾動制限ネジ67aに当接する正方向傾動限姿勢(角度 Maxθ<90度)まで水平支軸64の周りに正方向に傾動させることができる。上記の傾動待機状態からモーター75を逆回転方向に稼働させて、図15に仮想線で示すように可動レバー72を上方に移動する向きに所定角度だけ逆方向に傾動させて押し引きリンク74を引き上げることにより、ピッキングヘッド45の基盤63を、傾動制限ネジ67bに当接する逆方向傾動限姿勢まで水平支軸64の周りに逆方向に傾動させることができる。勿論、図16に示すように、可動レバー71,72の傾動角度を縮小させて、ピッキングヘッド45を正方向又は逆方向傾動限姿勢(角度
Maxθ<90度)に至るまでの任意の傾動姿勢(角度θ<Maxθ)に切り換えて使用することもできる。尚、構造上、可動レバー71,72と押し引きリンク73,74とを軸支連結する位置(水平支軸73a,74aの位置)と、押し引きリンク73,74とピッキングヘッド45側の軸受け81,82とを軸支連結する位置(水平支軸81a,82aの位置)を全て固定することはできないので、この実施例では、可動レバー71,72に設けられる水平支軸73a,74aの軸孔を、これら可動レバー71,72の長さ方向に対して直角向きに長孔としている。
尚、この実施例では、ピッキングヘッド45に3つの負圧吸着ヘッド単体62a~62cが、ピッキングヘッド45の自転軸心の周囲に等間隔おき(120度間隔)に配置されているが、吸着対象のワークの被吸着面の形状や向きなどに応じて自転用駆動手段46のモーター58を稼働させ、ピッキングハンド本体44と共にピッキングヘッド45を自転させて3つの負圧吸着ヘッド単体62a~62cの配置状態を変えることが可能である。2つの負圧吸着ヘッド単体を並列させているピッキングヘッドや、例えば2~3本の開閉指を備えた把持具でワークを掴むタイプのものであるときも、上記のようにピッキング対象のワークの向きなどに応じてピッキングヘッドの向きを自転により変更できる方が、ピッキング作業を確実に行う上で好都合である。前記3つの負圧吸着ヘッド単体62a~62cは、図14Bに示すように、平面視において基盤63上の自転軸心を通り且つ基盤63の傾動中心軸となる水平支軸66に対して水平方向に直交する仮想中心線63a上に1つの負圧吸着ヘッド単体62aが配置され、他の2つの負圧吸着ヘッド単体62b,62cが前記仮想中心線63aに対して左右対称位置に配置された構成になっている。
上記のようにピッキングハンド本体44を自転させる場合、このピッキングハンド本体44に取り付けられている傾動用駆動手段48もピッキングハンド本体44と一体に回転することになる。即ち、ピッキングハンド本体44から水平横向きに突出している傾動用駆動手段48のモーター75がピッキングハンド本体44のZ軸方向の自転中心線の周りに公転することになる。この実施例では、ピッキングハンド本体44が自転する前の自転待機状態では、図10、図11、及び図17に示すように傾動用駆動手段48のモーター75が、自転用駆動手段46のモーター58の真下位置でY軸ガイドレール8と平行になる向きに設定されている。この自転待機状態では、図14Bに示したピッキングヘッド45の基盤63の仮想中心線63aが、図11に示す傾動用駆動手段のモーター75(中空水平支軸70)の水平軸心に対して直交する向きとなるように構成している。
ピッキングハンド本体44の自転範囲制限手段47は、ピッキングハンド本体44の上端軸部49と中継軸部52との間に取り付けられてピッキングハンド本体44と一体に回転する制御板47aと、この制御板47aの側辺に固定されている補助制御ブロック47bと、Y軸横動体37における垂直基板38の下端から下向きに連設された角軸状の自転制止用突出部47dから構成されている。前記制御板47aには、その周囲一箇所に第一突出側面部83が設けられ、前記補助制御ブロック47bには、その長さ方向の一端寄りの位置に第二突出側面部84が設けられている。
図17に示すピッキングハンド本体44は、先に説明した自転待機状態にあり、この状態では、制御板47aと補助制御ブロック47bの周囲は前記自転制止用突出部47dから離れている。この状態から自転用駆動手段46のモーター58を稼働させて、傾動用駆動手段48のモーター75が平面視においてY軸ガイドレール8に接近する時計回りにピッキングハンド本体44を自転させると、図18に示すように、前記傾動用駆動手段48のモーター75が時計回りに角度66度回転したときに補助制御ブロック47bの第二突出側面部84が前記自転制止用突出部47dの表面に当接して、それ以上の時計回りの自転が不能になる。又、図17に示す自転待機状態から自転用駆動手段46のモーター58を逆回転方向に稼働させて、傾動用駆動手段48のモーター75が平面視においてY軸ガイドレール8から離れる反時計回りにピッキングハンド本体44を自転させると、図19に示すように、前記傾動用駆動手段48のモーター75が反時計回りに角度114度回転したときに制御板47aの第一突出側面部83が前記自転制止用突出部47dの内側面に当接して、それ以上の反時計回りの自転が不能になる。即ち、自転待機状態にあるピッキングハンド本体44は、時計回りには角度66度まで、反時計回りには角度114度まで、合計斜め180度範囲内で自由に自転させることができる構造となっている。
Y軸横動体37に支持されているピッキングハンド本体44は、ピッキングハンド移動用駆動手段41のモーター42を稼働させて、Y軸ガイドレール8に沿ってY軸方向に往復移動させることができるが、このピッキングハンド本体44が、図17に示すようにZ軸ガイドレール7に接近する方向に横動したとき、図3及び図17~図19に示すように、Y軸横動体37の垂直基板38の側辺がY軸ガイドレール8の側面に取り付けられているストッパーボルト85に当接するZ軸ガイドレール7側の行程端で停止する。この状態においてピッキングハンド本体44を、自転用駆動手段46のモーター58を稼働させて時計回りに限界の角度66度まで自転させたとき、ピッキングハンド本体44と一体に公転する傾動用駆動手段48のモーター75は、図18に示すようにZ軸ガイドレール7の前側に配置されている、Y軸ガイドレール8の昇降用駆動手段27における巻掛け伝動具31に接触する直前の位置で停止している。又、ピッキングハンド本体44を、自転用駆動手段46のモーター58を逆回転方向に稼働させて反時計回りに限界の角度114度まで自転させたときは、前記傾動用駆動手段48のモーター75は、図19に示すように平面視でX軸ガイドレール2と接触する直前の位置で停止している。従って、Y軸ガイドレール8がZ軸ガイドレール7に沿って昇降移動して、前記傾動用駆動手段48のモーター75の高さが前記X軸ガイドレール2の高さ範囲内にあるときでも、ピッキングハンド本体44が反時計回りに限界の角度114度まで自転しても、傾動用駆動手段48のモーター75がX軸ガイドレール2に衝突する恐れはない。
以上のように構成されたピッキング装置は、例えば図1及び図2に示す作業用定位置PAに所定向きにセットされたワーク取出し作業対象の搬送用コンテナ1A内のばら積みワーク(ピッキングヘッド45の3つの負圧吸着ヘッド単体62a~62cによって吸着して吊り上げられるワーク)の内、選択された特定ワークを、ピッキングハンド9のピッキングヘッド45により吸着して吊り上げ、このピッキングした特定ワークを、隣の作業用定位置PBにセットされているワーク搬入作業対象の搬送用コンテナ1B内の所定位置に搬入するような作業に供される。この場合、ピッキングハンド9のピッキングヘッド45をXYZ3次元方向に移動させるために、Z軸ガイドレール7をX軸方向に移動させるZ軸ガイドレール移動用駆動手段16と、前記Y軸ガイドレール8をZ軸方向に昇降移動させるY軸ガイドレール昇降用駆動手段27と、ピッキングハンド9をY軸方向に移動させるピッキングハンド移動用駆動手段41が、先に詳細に説明したように運転される。
上記のピッキング装置の運転時には、図1に示すようにピッキングヘッド45は、Z軸ガイドレール7の上端位置と下端位置との間のY軸ガイドレール8の昇降移動を伴って、搬送用コンテナ1A,1B内の底面に隣接する下降限高さから、X軸ガイドレール2の上端レベル付近の上昇限高さまでのZ軸方向昇降範囲ZE内でZ軸方向に昇降移動することができ、又、図2に示すようにピッキングハンド9は、X軸ガイドレール2の始端位置と終端位置との間のZ軸ガイドレール7のX軸方向の横動を伴って、作業用定位置PAにあるコンテナ1Aの左端位置(コンテナ1Bに隣接する側とは反対側)付近から作業用定位置PBにあるコンテナ1Bの右端位置を十分に超える位置までのX軸方向水平移動範囲XE内をX軸方向に往復移動することができ、更に、図3に示すようにピッキングハンド9は、Y軸ガイドレール8の遊端位置からZ軸ガイドレール7に最接近する基端位置までの間の、各作業用定位置PA,PBにあるコンテナ1A,1Bの短辺長さを十分に超えるY軸方向水平移動範囲YE内をY軸方向に往復移動することができるので、コンテナ1A内の如何なる位置にある特定ワークもコンテナ1Aより上方にピッキングし、その特定ワークを隣のコンテナ1B内の如何なる場所にも搬入することができる。尚、Y軸方向水平移動範囲YEを規制するために、Y軸ガイドレール8の内端側と外端側とには、Y軸横動体37の垂直基板38の両側辺に当接する前記ストッパーボルト85とストッパーピン86とが突設されている。尚、ストッパーボルト85は組立て完了時点で取り付けられるものであって、Y軸ガイドレール8にY軸横動体37を組み付けた段階では、当該Y軸横動体37がY軸ガイドレール8の内端側から外れ落ちるのを防止するストッパーピン87が設けられている。
上記の搬送用コンテナ1A内からの特定ワークのピッキング作業と、ピッキングした特定ワークを搬送用コンテナ1B内の所定位置に搬入する作業は、原則としてピッキングヘッド45が傾動前の水平姿勢で且つ自転待機状態にある向きのまま行われるが、ピッキング対象のワークの姿勢や向きなどによっては、ピッキングヘッド45の傾動用駆動手段48を稼働させてピッキングヘッド45を水平支軸66の周りに傾動許容範囲内の任意の角度だけ傾動させたり、ピッキングハンド本体44の自転用駆動手段46を稼働させてピッキングハンド本体44と共にピッキングヘッド45を斜め180度の範囲内で自転させることができる。
尚、以上の実施例において、Y軸ガイドレール2の昇降用駆動手段27に使用されている巻掛け伝動手段32や、ピッキングハンド本体44の自転用駆動手段46に使用されている巻掛け伝動手段55は、平ベルト、Vベルト、タイミングベルト、ワイヤー、チエンなどを使用する、従来周知の各種のものが利用できるが、いろいろな観点からタイミングベルトを使用する巻掛け伝動手段を利用するのが望ましい。又、本発明におけるピッキングヘッド45として、3つの負圧吸引ヘッド単体62a~62cを自転軸心の周りに等間隔おきに配置した構造のものを例示しているが、これは一例であって、取り扱うワークの性状やサイズ、重量などに応じて、従来周知の磁気吸着タイプのもの、複数本の開閉指を使用してワークを把持する把持タイプのものなども利用できる。