JP2023072220A - Li2O-Al2O3-SiO2系結晶化ガラス - Google Patents

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Abstract

【課題】透光性が高いLi2O-Al2O3-SiO2系結晶化ガラスを提供する。【解決手段】平均表面粗さRaが50nm以下の平面を有することを特徴とするLi2O-Al2O3-SiO2系結晶化ガラス。【選択図】なし

Description

本発明はLiO-Al-SiO系結晶化ガラスに関する。詳細には、例えば石油ストーブ、薪ストーブ等の前面窓、カラーフィルターやイメージセンサー用基板等のハイテク製品用基板、電子部品焼成用セッター、光拡散板、半導体製造用炉心管、半導体製造用マスク、光学レンズ、寸法測定用部材、通信用部材、建築用部材、化学反応用容器、電磁調理用トッププレート、耐熱食器、耐熱カバー、防火戸用窓ガラス、天体望遠鏡用部材、宇宙光学用部材、ディスプレイ用部材等、化学強化用部材等の材料として、好適なLiO-Al-SiO系結晶化ガラスに関する。
従来、石油ストーブ、薪ストーブ等の前面窓、カラーフィルターやイメージセンサー用基板等のハイテク製品用基板、電子部品焼成用セッター、光拡散板、半導体製造用炉心管、半導体製造用マスク、光学レンズ、寸法測定用部材、通信用部材、建築用部材、化学反応用容器、電磁調理用トッププレート、耐熱食器、耐熱カバー、防火戸用窓ガラス、天体望遠鏡用部材、宇宙光学用部材、ディスプレイ用部材等、化学強化用部材等の材料として、LiO-Al-SiO系結晶化ガラスが用いられている。例えば特許文献1~3には、主結晶としてβ-石英固溶体(LiO・Al・nSiO[ただし2≦n≦4])やβ-スポジュメン固溶体(LiO・Al・nSiO[ただしn≧4])等のLiO-Al-SiO系結晶を析出してなるLiO-Al-SiO系結晶化ガラスが開示されている。
LiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、熱膨張係数が低く、機械的強度も高いため、優れた熱的特性を有している。また結晶化工程において熱処理条件を適宜調整することにより、析出結晶の種類を制御することが可能であり、透光性のある結晶化ガラスを容易に作製することができる。
ところで、この種の結晶化ガラスを製造する場合、1400℃を超える高温で溶融する必要がある。このため、ガラスバッチに添加される清澄剤には、高温での溶融時に清澄ガスを多量に発生させるAsやSbが使用されている。しかしながら、AsやSbは毒性が強く、ガラスの製造工程や廃ガラスの処理時等に環境を汚染する可能性がある。
そこで、AsやSbの代替清澄剤として、SnOやClが提案されている(例えば、特許文献4および5参照)。
特公昭39-21049号公報 特公昭40-20182号公報 特開平1-308845号号公報 特開平11-228180号公報 特開平11-228181号公報
しかしながら、Clは、ガラス成形時に金型や金属ロールを腐食させやすく、結果として、ガラスの表面品位を劣化させるおそれがある。また、SnOは1400℃を超える高温で効率的に酸素ガスを放出し、清澄剤として機能するが、こうした高温状態のガラスが金属や耐火物などで構成される成形部材と接触すると、熱や化学反応などによって成形部材等が変質し、成形部材の形状が変化することがある。その成形部材でガラスを成形すると、ガラスの形状や表面状態も所望する形から変化してしまう。このようにして製造されたガラスは、透光性が低いという問題があった。
本発明の目的は、透光性が高いLiO-Al-SiO系結晶化ガラスを得ることである。
鋭意検討の結果、本発明者は、ガラスの表面粗さを制御することにより、透光性が高いLiO-Al-SiO系結晶化ガラスを得られることを見出した。なお、本発明の「LiO-Al-SiO系結晶化ガラス」という呼称は、LiO、Al、SiOを含む結晶化前のガラスを結晶化させて得たガラス物品の総称であり、以下でもそのように表現する。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、平均表面粗さRaが50nm以下の平面を有することを特徴とする。このようにすれば、試料外部からの試料表裏面に入射した光が散乱されづらく、かつ試料内部から試料外部に向けて光が出射されやすくなり、透光度が高まりやすい。ここで、「平均表面粗さRa」は、JIS B0601:2001に準拠した方法で測定した値を指す。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、平均表面粗さRaが100nm以下の端面を有することが好ましい。このようにすれば、試料端面から試料内部に光が入射しやすくなり、かつ試料内部から試料外部に向けて光が出射されやすくなり、透光度が高まりやすい。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、うねりが10μm以下であることが好ましい。このようにすれば、特定の位置から試料平面に対する入射光の入射角度に分布が発生しにくく、試料表面での光散乱量が平均して小さくなり、透光度が高まりやすい。ここで、「うねり」は、触針式の表面形状測定装置を用いて、JIS B0601:2001に記載のWCA(ろ波中心線うねり)を測定した値を指し、この測定は、SEMI STD D15-1296「FPDガラス基板の表面うねりの測定方法」に準拠した方法で測定し、測定時のカットオフは0.8~8mm、LiO-Al-SiO系結晶化ガラスの引き出し方向に対して垂直な方向に300mmの長さで測定した値を指す。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、肉厚が10mm以下であることが好ましい。このようにすれば、試料内部での光の減衰率を低く抑えられ、透光度が高まりやすい。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、板形状であることが好ましい。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、質量%で、SiO 40~90%、Al 5~30%、LiO 1~10%、SnO 0~20%、ZrO 0~20%、MgO 0~10%、P 0~10%を含有し、β-OH値が2/mm以下であることが好ましい。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、質量%で、TiO 4%以下を含有することが好ましい。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、質量%で、MoO 0%超を含有することが好ましい。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスの製造方法は、上記のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスを製造する方法であって、自由表面が存在する状態でガラスが成形されることを特徴とする。このようにすれば、LiO-Al-SiO系結晶化ガラスの平均表面粗さRa及びうねりを小さくすることが可能である。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスの製造方法は、ガラスの表面の一部を成形部材に接触させた状態で成形した後、成形部材に接触したガラスの表面をガラス転移点以上の温度で加熱することが好ましい。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスの製造方法は、バーナー等を用いた火炎溶融法、電気加熱による電気溶融法、レーザー照射による溶融法、プラズマによる溶融法、液相合成法、気相合成法の溶融方法のうち、いずれか一つの方法または二つ以上の方法を組み合わせて溶融することが好ましい。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスの製造方法は、オーバーフロー法、フロート法、ダウンドロー法、スロットダウン法、リドロー法、無容器法、ブロー法、プレス法、ロール法、ブッシング法、管引き法の成形法のうち、いずれか一つの方法または二つ以上の方法を組み合わせて成形することが好ましい。
本発明によれば、透光性が高いLiO-Al-SiO系結晶化ガラスを提供することができる。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、平均表面粗さRaが50nm以下であり、25nm以下、15nm以下、10nm以下、9nm以下、8nm以下、7nm以下、6nm以下、5nm以下、4nm以下、3nm以下、2nm以下、特に1nm以下の平面を有する。平面の表面粗さRaが大き過ぎると、試料外部からの試料表裏面に入射した光が散乱されやすく、かつ試料内部から試料外部に向けて光が出射されにくくなり、透光度が低くなりやすい。また、試料が破損しやすくなる。一方、平面の表面粗さRaが小さすぎると、試料平面のキャパシティが大きくなり、試料平面と試料に接触したものとの引力が大きくなり、所望する離型性や電気的応答性などが得られにくくなることがある。前記事情を鑑み、本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスの平面の表面粗さRaは、0.01nm以上、0.03nm以上、0.05nm以上、0.07nm以上、0.09nm以上、特に0.1nm以上であることが好ましい。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、平均表面粗さRaが100nm以下、50nm以下、25nm以下、15nm以下、10nm以下、9nm以下、8nm以下、7nm以下、6nm以下、5nm以下、4nm以下、3nm以下、2nm以下、特に1nm以下の端面を有することが好ましい。端面の表面粗さRaが大き過ぎると、試料端面から試料内部に光が入射しにくくなり、かつ試料内部から試料外部に向けて光が出射されにくくなり、透光度が低くなりやすい。また、試料が破損しやすくなる。一方、端面の表面粗さRaが小さすぎると、試料端面で試料を物理的に保持しようとした際に、試料と保持体の接触面積が小さくなりすぎてしまい、摩擦抵抗が小さくなり、保持しにくくなる恐れがある。前記事情を鑑み、本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスの端面の表面粗さRaは、0.01nm以上、0.03nm以上、0.05nm以上、0.07nm以上、0.09nm以上、0.1nm以上であることが好ましい。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、未研磨の表面を有することが好ましい。ガラスの理論強度は、本来、非常に高いが、理論強度よりも遥かに低い応力でも破壊に至ることが多い。これは、本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスの表面にグリフィスフローと呼ばれる小さな欠陥がガラスの成形後の工程、例えば研磨工程等で生じるからである。よって、本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスの表面を未研磨とすれば、本来の機械的強度を損ない難くなり、本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスが破壊し難くなる。また、研磨工程を省略し得るため、本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスの製造コストを低廉化することができる。なお、両表面の有効面全体を未研磨の表面とすれば、本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスが更に破壊し難くなる。また、有効面全体を未研磨の表面にするためには、成形時点で有効面に相当する部分を自由表面にすることが効果的である、更に、成形時点で有効面に相当する部分が固体部材等と接触しても、成形後に固体部材等と接した部分をガラス転移点以上の温度で再加熱することで、自由表面に似た滑らかな表面を作り出すことが出来る。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスのうねりは、10μm以下、5μm以下、4μm以下、3μm以下、2μm以下、1μm以下、0.8μm以下、0.7μm以下、0.6μm以下、0.5μm以下、0.4μm以下、0.3μm以下、0.2μm以下、0.1μm以下、0.08μm以下、0.05μm以下、0.03μm以下、0.02μm以下、特に0.01μm以下であることが好ましい。うねりが大き過ぎると、特定の位置から試料平面に対する入射光の入射角度に分布が発生しやすくなり、試料表面での光散乱量が平均して大きくなり、透光度が低くなりやすい。うねりの下限は特に限定されないが、現実的には、0.01nm以上である。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスの肉厚は、10mm以下、9mm以下、8mm以下、7mm以下、6mm以下、5mm以下、特に4mm以下であることが好ましい。試料の肉厚が厚すぎると、試料内部での光の減衰率が大きくなり、透光度が低くなりやすい。また、本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスがディスプレイ用途で使用される際は、肉厚が1000μm以下、500μm、300μm以下、200μm以下、100μm以下、90μm以下、80μm以下、70μm以下、60μm以下、50μm以下、40μm以下、30μm以下、1~20μm、特に5~10μmであることが好ましい。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスの最大厚みと最小厚みの差は、50μm以下、25μm以下、10μm以下、5μm以下、1μm以下、500nm以下、300nm以下、100nm以下、50nm以下、25nm以下、15nm以下、10nm以下、9nm以下、8nm以下、7nm以下、6nm以下、5nm以下、4nm以下、3nm以下、2nm以下、特に1nm以下であることが好ましい。最大厚みと最小厚みの差が大き過ぎると、表裏面いずれかの方向から入射された光が、もう一方の面から出射する際の角度が出射平面に対して90°から遠ざかり、所望する以上に光を散乱させ、ぎらついた見た目になりやすい。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスの長さ寸法は、10mm以上、30mm以上、50mm以上、70mm以上、90mm以上、100mm以上、200mm以上、300mm以上、400mm以上、500mm以上、600mm以上、800mm以上、1000mm以上、1200mm以上、1500mm以上、特に2000mm以上であることが好ましい。このようにすれば、本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスの大型化が容易になり、製造コストの低減につながる。一方、長さ寸法が大き過ぎると、試料にうねり等が発生しやすくなり、試料に泡や失透物が混ざりこむ可能性が高くなるため、長さ寸法は、10000mm以下、8000mm以下、6000mm以下、5000mm以下、4000mm以下、3500mm以下、3200mm以下、特に3000mm以下であることが好ましい。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスの幅寸法は、長さ寸法以下である限り、特に制限されないが、短冊状のガラス積層体に加工される場合、長さ寸法/幅寸法の比率は5以上、10以上、20以上、30以上、40以上、50以上、60以上、特に100~2000であることが好ましい。長さ寸法/幅寸法の比率が小さ過ぎると、製造効率が低下し易くなる。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、厚み3mm、波長200nmにおける透過率が、0%以上、2.5%以上、5%以上、10%以上、12%以上、14%以上、16%以上、18%以上、20%以上、22%以上、24%以上、26%以上、28%以上、30%以上、32%以上、34%以上、36%以上、38%以上、40%以上、40.5%以上、41%以上、41.5%以上、42%以上、42.5%以上、43%以上、43.5%以上、44%以上、44.5%以上、特に45%以上であることが好ましい。紫外光を透過する必要のある用途の場合、波長200nmにおける透過率が低すぎると、所望の透過能を得られなくなる恐れがある。特にオゾンランプ等を用いた光洗浄やエキシマーレーザーを用いた医療用途、露光用途などで使用する場合、波長200nmにおける透過率は高い方が好ましい。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、厚み3mm、波長250nmにおける透過率が、0%以上、1%以上、2%以上、3%以上、4%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、10.5%以上、11%以上、11.5%以上、12%以上、12.5%以上、13%以上、13.5%以上、14%以上、14.5%以上、15%以上、15.5%以上、特に16%以上であることが好ましい。紫外光を透過する必要のある用途の場合、波長250nmにおける透過率が低すぎると、所望の透過能を得られなくなる恐れがある。特に低圧水銀灯等を用いた殺菌用途やYAGレーザー等を用いた加工用途などで使用する場合、波長250nmにおける透過率は高い方が好ましい。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、厚み3mm、波長300nmにおける透過率が、0%以上、2.5%以上、5%以上、10%以上、12%以上、14%以上、16%以上、18%以上、20%以上、22%以上、24%以上、26%以上、28%以上、30%以上、32%以上、34%以上、36%以上、38%以上、40%以上、40.5%以上、41%以上、41.5%以上、42%以上、42.5%以上、43%以上、43.5%以上、44%以上、44.5%以上、特に45%以上であることが好ましい。特にUV硬化・接着・乾燥(UVキュアリング)、印刷物の蛍光検出、誘虫用途などで使用する場合、波長300nmにおける透過率は高い方が好ましい。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、厚み3mm、波長325nmにおける透過率が、0%以上、2.5%以上、5%以上、10%以上、12%以上、14%以上、16%以上、18%以上、20%以上、22%以上、24%以上、26%以上、28%以上、30%以上、32%以上、34%以上、36%以上、38%以上、40%以上、42%以上、44%以上、46%以上、48%以上、50%以上、52%以上、54%以上、56%以上、57%以上、58%以上、59%以上、60%以上、61%以上、62%以上、63%以上、64%以上、特に65%以上であることが好ましい。特にUV硬化・接着・乾燥(UVキュアリング)、印刷物の蛍光検出、誘虫用途などで使用する場合、波長325nmにおける透過率は高い方が好ましい。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、厚み3mm、波長350nmにおける透過率が、0%以上、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、特に84%以上であることが好ましい。特にYAGレーザー等を用いた加工などで使用する場合、波長350nmにおける透過率は高い方が好ましい。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、厚み3mm、波長380nmにおける透過率が、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、78%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、特に84%以上であることが好ましい。波長380nmにおける透過率が低すぎると、黄色の着色が強くなるとともに、結晶化ガラスの透明性が低下し所望の透過能を得られなくなる恐れがある。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、厚み3mm、波長800nmにおける透過率が、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、78%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%%以上、85%以上、86%以上、87%以上、特に88%以上であることが好ましい。波長800nmにおける透過率が低すぎると、緑色になりやすくなる。特に静脈認証等の医療用途などで使用する場合、波長800nmにおける透過率は高い方が好ましい。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、厚み3mm、波長1200nmにおける透過率が、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、72%以上、74%以上、76%以上、78%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、特に89%以上であることが好ましい。波長1200nmにおける透過率が低すぎると、緑色になりやすくなる。特に赤外カメラやリモコン等の赤外通信用途などで使用する場合、波長1200nmにおける透過率は高い方が好ましい。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、厚み3mm、波長300nmにおける結晶化前後の透過率変化率が50%以下、48%以下、46%以下、44%以下、42%以下、40%以下、38%以下、37.5%以下、37%以下、36.5%以下、36%以下、35.5%以下、特に35%以下であることが好ましい。結晶化前後の透過率変化率を小さくすれば、結晶化する前に結晶化後の透過率を予測し制御することが可能になり、結晶化後に所望の透過能を得られやすくなる。なお、結晶化前後の透過率変化率は波長300nmのみならず、全波長域において小さい方が好ましい。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、厚み3mmにおける明度L*が50以上、60以上、65以上、70%以上、75以上、80以上、85以上、90以上、91以上、92以上、93以上、94以上、95以上、96以上、96.1以上、96.3以上、特に96.5以上であることが好ましい。明度L*が小さすぎると、色度の大きさに関わらず灰色がかり暗く見える傾向がある。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、厚み3mmにおける色度a*が±5.0以内、±4.5以内、±4以内、±3.6以内、±3.2以内、±2.8以内、±2.4以内、±2以内、±1.8以内、±1.6以内、±1.4以内、±1.2以内、±1以内、±0.9以内、±0.8以内、±0.7以内、±0.6以内、特に±0.5以内であることが好ましい。明度a*がマイナス方向に大きすぎると緑色に、プラス方向に大きすぎると赤色に見える傾向がある。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、厚み3mmにおける色度b*が±5.0以内、±4.5以内、±4以内、±3.6以内、±3.2以内、±2.8以内、±2.4以内、±2以内、±1.8以内、±1.6以内、±1.4以内、±1.2以内、±1以内、±0.9以内、±0.8以内、±0.7以内、±0.6以内、特に±0.5以内であることが好ましい。明度b*がマイナス方向に大きすぎると青色に、プラス方向に大きすぎると黄色に見える傾向がある。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、結晶化前のガラスの状態で、歪点(ガラスの粘度が約1014.5dPa・sに相当する温度)が600℃以上、605℃以上、610℃以上、615℃以上、620℃以上、630℃以上、635℃以上、640℃以上、645℃以上、650℃以上、特に655℃以上であることが好ましい。歪点が低すぎると、結晶化前のガラスを成形した際に割れやすくなる。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、結晶化前のガラスの状態で、徐冷点(ガラスの粘度が約1013dPa・sに相当する温度)が680℃以上、685℃以上、690℃以上、695℃以上、700℃以上、705℃以上、710℃以上、715℃以上、720℃以上、特に725℃以上であることが好ましい。徐冷点が低すぎると、結晶化前のガラスを成形した際に割れやすくなる。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、熱処理によって結晶化しやすいため、ソーダライムガラスのような一般的なガラスのように軟化点(ガラスの粘度が約107.6dPa・sに相当する温度)を測定することが容易でない。そこで、本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスにおいては、結晶化前のガラスの熱膨張曲線の傾きが変化する温度をガラス転移温度とし、軟化点の代替として取り扱う。本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、結晶化前のガラスの状態で、ガラス転移温度が680℃以上、685℃以上、690℃以上、695℃以上、700℃以上、705℃以上、710℃以上、715℃以上、720℃以上、特に725℃以上であることが好ましい。ガラス転移温度が低すぎると、結晶化の際にガラスが流動しすぎてしまい、所望の形状に成形することが難しくなる。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスのヤング率は、65GPa以上、67GPa以上、68GPa以上、69GPa以上、70GPa以上、71GPa以上、72GPa以上、特に75~100GPaであることが好ましい。このようにすれば、本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスの表面に反射膜等を付与したとしても、本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスが反り難くなり、結果として本発明品の高機能化につながる。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、剛性率が25~50GPa、27~48GPa、29~46GPa、特に30~45GPaであることが好ましい。剛性率が低すぎても高すぎても、結晶化ガラスが破損しやすくなる。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、ポアソン比が0.35以下、0.32以下、0.3以下、0.28以下、0.26以下、特に0.25以下であることが好ましい。ポアソン比が大きすぎると、結晶化ガラスが破損しやすくなる。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスのクラック発生率は、70%以下、50%以下、40%以下、30%以下、特に20%以下であることが好ましい。このようにすれば、結晶化ガラスが破損し難くなる。ここで、「クラック発生率」は、湿度30%、温度25℃に保持された恒温恒湿槽内において、荷重1000gに設定したビッカース圧子をガラス表面(光学研磨相当面)に15秒間打ち込み、その15秒後に圧痕の4隅から発生するクラックの数をカウント(1つの圧痕につき最大4とする)し、この操作を20回繰り返し(即ち、圧子を20回打ち込み)、総クラック数を計数した後、総クラック発生数/80にて得られた値を指す。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスの結晶化前の結晶性ガラスについては、密度が2.30~2.60g/cm、2.32~2.58g/cm、2.34~2.56g/cm、2.36~2.54g/cm、2.38~2.52g/cm、2.39~2.51g/cm、特に2.40~2.50g/cmであることが好ましい。結晶性ガラスの密度が小さすぎると、結晶化前のガス透過性が悪化し、保管期間中にガラスが汚染される恐れがある。一方、結晶性ガラスの密度が大きすぎると単位面積当たりの重量が大きくなり、取り扱いが困難になる。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス(結晶化後)については、密度が2.40~2.80g/cm、2.42~2.78g/cm、2.44~2.76g/cm、2.46~2.74g/cm、特に2.47~2.73g/cmであることが好ましい。結晶化ガラスの密度が小さすぎると、結晶化ガラスのガス透過性が悪化する恐れがある。一方、結晶化ガラスの密度が大きすぎると単位面積当たりの重量が大きくなり、取り扱いが困難になる。また、結晶化ガラス(結晶化後)の密度は、ガラスが十分に結晶化しているかどうかを判断する指標になる。具体的には、同一のガラスであれば密度が大きいほど(原ガラスと結晶化ガラスの密度差が大きいほど)結晶化が進行しているということになる。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスの密度変化率は、{(結晶化後の密度(g/cm)-結晶化前の密度(g/cm))/結晶化前の密度(g/cm)}×100(%)で定義されるものであり、結晶化前の密度は溶融後のガラスを700℃で30分保持し3℃/分で室温まで冷却した後の密度であり、結晶化後の密度とは、所定の条件で結晶化処理を行った後の密度である。密度変化率は0.01~10%、0.05~8%、0.1~8%、0.3~8%、0.5~8%、0.9~8%、1~7.8%、1~7.4%、1~7%、1.2~7%、1.6~7%、2~7%、2~6.8%、2~6.5%、2~6.3%、2~6.2%、2~6.1%、2~6%、2.5~5%、2.6~4.5%、2.8~3.8%であることが好ましい。結晶化前後の密度変化率を小さくすれば、結晶化後での破損率を低減することが可能であり、またガラスとガラスマトリクスの散乱が低減され、透過率の高い結晶化ガラスを得ることが可能になる。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、ジルコニア、ジルコニアチタネート、チタニア、アルミノチタネート、β-石英固溶体、β-スポジュメン固溶体のいずれか一種または二種類以上が析出していることが好ましい。特に、ジルコニア単体もしくはジルコニアとβ-石英固溶体が両方析出している場合、それぞれの結晶粒径が特に小さくなりやすいため、本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは可視光を透過しやすく、透明性が高まりやすい。なお、透光性に悪影響がない限り、α―石英、β―石英、スポジュメン、ジルコン、コーディエライト、エンスタタイト、マイカ、ネフェリン、アノーサイト、リチウムダイシリケート、リチウムメタシリケートのいずれか一種または二種類以上が析出していても良い。
本発明の結晶化ガラスは、平均結晶子サイズが1μm以下、0.5μm以下、0.3μm以下、0.2μm以下、0.1μm以下、50nm以下、45nm以下、40nm以下、35nm以下、30nm以下、25nm以下、20nm以下、15nm以下、特に10nm以下であることが好ましい。平均結晶子サイズが大きすぎると、表面粗さ、うねり、透過率が低下し易くなる。なお、平均結晶子サイズの下限は特に限定されないが、現実的には1nm以上である。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、30~380℃における熱膨張係数が、30×10-7/℃以下、25×10-7/℃以下、20×10-7/℃以下、18×10-7/℃以下、16×10-7/℃以下、14×10-7/℃以下、13×10-7/℃以下、12×10-7/℃以下、11×10-7/℃以下、10×10-7/℃以下、9×10-7/℃以下、8×10-7/℃以下、7×10-7/℃以下、6×10-7/℃以下、5×10-7/℃以下、4×10-7/℃以下、3×10-7/℃以下、特に2×10-7/℃以下であることが好ましい。なお、寸法安定性、及び/又は耐熱衝撃性が特に必要とされる場合は、-5×10-7/℃~5×10-7/℃、-3×10-7/℃~3×10-7/℃、-2.5×10-7/℃~2.5×10-7/℃、-2×10-7/℃~2×10-7/℃、-1.5×10-7/℃~1.5×10-7/℃、-1×10-7/℃~1×10-7/℃、特に-0.5×10-7/℃~0.5×10-7/℃であることが好ましい。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、30~750℃における熱膨張係数が、30×10-7/℃以下、25×10-7/℃以下、20×10-7/℃以下、18×10-7/℃以下、16×10-7/℃以下、14×10-7/℃以下、13×10-7/℃以下、12×10-7/℃以下、11×10-7/℃以下、10×10-7/℃以下、9×10-7/℃以下、8×10-7/℃以下、7×10-7/℃以下、6×10-7/℃以下、5×10-7/℃以下、4×10-7/℃以下、特に3×10-7/℃以下であることが好ましい。なお、寸法安定性、及び/又は耐熱衝撃性が特に必要とされる場合は、-15×10-7/℃~15×10-7/℃、-12×10-7/℃~12×10-7/℃、-10×10-7/℃~10×10-7/℃、-8×10-7/℃~8×10-7/℃、-6×10-7/℃~6×10-7/℃、-5×10-7/℃~5×10-7/℃、-4.5×10-7/℃~4.5×10-7/℃、-4×10-7/℃~4×10-7/℃、-3.5×10-7/℃~3.5×10-7/℃、-3×10-7/℃~3×10-7/℃、-2.5×10-7/℃~2.5×10-7/℃、-2×10-7/℃~2×10-7/℃、-1.5×10-7/℃~1.5×10-7/℃、-1×10-7/℃~1×10-7/℃、特に-0.5×10-7/℃~0.5×10-7/℃であることが好ましい。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスの屈折率ndは、好ましくは1.70以下、1.65以下、1.60以下、1.58以下、1.55以下、1.54以下、特に1.53以下である。また、好ましくは1.35以上、1.38以上、1.40以上、特に1.43以上である。屈折率が高すぎると表面や端面で光が散乱し、透光性が低下する恐れがある。一方、屈折率が低すぎると、本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスと空気との屈折率差が小さくなり、本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスを視認することが難しくなり、製造中の取り扱いが困難になる恐れがある。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスの液相温度は、好ましくは1540℃以下、1535℃以下、1530℃以下、1525℃以下、1520℃以下、1515℃以下、1510℃以下、1505℃以下、1500℃以下、1495℃以下、1490℃以下、1485℃以下、1480℃以下、1475℃以下、1470℃以下、1465℃以下、1460℃以下、1455℃以下、1450℃以下、1445℃以下、1440℃以下、1435℃以下、1430℃以下、1425℃以下、1420℃以下、1415℃以下、特に1410℃以下であることが好ましい。液相温度が高すぎると製造時に失透しやすくなる。一方、1480℃以下であれば、ロール法などでの製造が容易になり、1450℃以下であれば、1410℃以下であれば、オーバーフロー法などでの製造が容易になる。本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスの液相粘度は、好ましくは102.7dPa・s以上、102.8dPa・s以上、102.9dPa・s以上、103.0dPa・s以上、103.1dPa・s以上、103.2dPa・s以上、103.3dPa・s以上、103.4dPa・s以上、103.5dPa・s以上、103.6dPa・s以上、103.7dPa・s以上、103.8dPa・s以上、103.9dPa・s以上、104.0dPa・s以上、104.1dPa・s以上、104.2dPa・s以上、104.3dPa・s以上、104.4dPa・s以上、104.5dPa・s以上、104.6dPa・s以上、104.7dPa・s以上、104.8dPa・s以上、104.9dPa・s以上、105.0dPa・s以上、105.1dPa・s以上、105.2dPa・s以上、105.3dPa・s以上、105.4dPa・s以上、105.5dPa・s以上、105.6dPa・s以上、105.7dPa・s以上、105.8dPa・s以上、105.9dPa・s以上、特に106.0dPa・s以上である。このようにすれば、成形時にガラスが失透し難くなる。
次に、本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスのガラス組成について説明する。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、質量%で、SiO 40~90%、Al 5~30%、LiO 1~10%、SnO 0~20%、ZrO 0~20%、MgO 0~10%、P 0~10%を含有することが好ましい。上記のように、各成分の含有量を規制した理由を以下に説明する。なお、以下の各成分の含有量に関する説明において、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味する。
SiOはガラスの骨格を形成するとともに、β―石英固溶体やβ―スポジュメン固溶体等の構成成分である。SiOの含有量は40~90%、52~80%、55~75%、56~70%、59~70%、60~70%、60~69.5%、60.5~69.5%、61~69.5%、61.5~69.5%、62~69.5%、62.5~69.5%、63~69.5%、特に63.5~69.5%であることが好ましい。SiOの含有量が少なすぎると、熱膨張係数が高くなる傾向があり、耐熱衝撃性に優れた結晶化ガラスが得られにくくなる。また、化学的耐久性が低下する傾向がある。一方、SiOの含有量が多すぎると、ガラスの溶融性が低下したり、ガラス融液の粘度が高くなって、清澄しにくくなったりガラスの成形が難しくなって生産性が低下しやすくなる。また、結晶化に要する時間が長くなり、生産性が低下しやすくなる。
Alはガラスの骨格を形成するとともに、β―石英固溶体やβ―スポジュメン固溶体等の構成成分である。また、Alは結晶核の周囲に配位し、コア-シェル構造を形成する成分である。コア-シェル構造が存在することで、シェル外部から結晶核成分が供給されにくくなるため、結晶核が肥大化しにくくなり、多数の微小な結晶核が形成されやすくなる。Alの含有量は5~30%、8~30%、9~28%、10~27%、12~27%、14~27%、16~27%、17~27%、18~27%、18~26.5%、18.1~26.5%、19~26.5%、19.5~26.5%、20~26.5%、20.5~26.5%、特に20.8~25.8%であることが好ましい。Alの含有量が少なすぎると、熱膨張係数が高くなる傾向があり、耐熱衝撃性に優れた結晶化ガラスが得られにくくなる。また、化学的耐久性が低下する傾向がある。さらに、結晶核が大きくなり、結晶化ガラスが白濁しやすくなる。一方、Alの含有量が多すぎると、ガラスの溶融性が低下したり、ガラス融液の粘度が高くなって清澄しにくくなったり、ガラスの成形が難しくなって生産性が低下しやすくなる。また、ムライトの結晶が析出してガラスが失透する傾向があり、結晶化ガラスが破損しやすくなる。
LiOは―石英固溶体やβ―スポジュメン固溶体等の構成成分であり、結晶性に大きな影響を与えるとともに、ガラスの粘度を低下させて、ガラスの溶融性および成形性を向上させる成分である。LiOの含有量は1~10%、2~10%、2~8%、2.5~6%、2.8~5.5%、2.8~5%、3~5%、3~4.5%、3~4.2%、特に3.2~4%であることが好ましい。LiOの含有量が少なすぎると、ムライトの結晶が析出してガラスが失透する傾向がある。また、ガラスを結晶化させる際に、LiO-Al-SiO系結晶が析出しにくくなり、耐熱衝撃性に優れた結晶化ガラスを得ることが困難になる。さらに、ガラスの溶融性が低下したり、ガラス融液の粘度が高くなって、清澄しにくくなったりガラスの成形が難しくなって生産性が低下しやすくなる。一方、LiOの含有量が多すぎると、結晶性が強くなりすぎて、ガラスが失透しやすくなる傾向があり、結晶化ガラスが破損しやすくなる。
SiO、Al、LiOはβ―石英固溶体やβ―スポジュメン固溶体等の構成成分であり、LiOとAlは互いの電荷を補償しあうことで、SiO骨格に固溶する。これら三成分を好適な比率で含有することで効率的に結晶化が進行し、低コストでの製造が可能となる。(SiO+Al)/LiOは質量比で、20以上、20.2以上、20.4以上、20.6以上、20.8以上、特に21以上であることが好ましい。
SnOは清澄剤として作用する成分である。また、ZrO等と電気陰性度が近く、ジルコニア系結晶の析出を促進する効果を有する成分でもある。一方で、多量に含有するとガラスの着色を著しく強める成分でもある。SnOの含有量は0~20%、0超~20%、0.05~20%、0.1~10%、0.1~5%、0.1~4%、0.1~3%、0.15~3%、0.2~3%、0.2~2.7%、特に0.2~2.4%であることが好ましい。SnOの含有量が少なすぎると、ガラスの清澄が困難となり、生産性が低下しやすくなる。また、結晶核が十分に形成されず、粗大な結晶が析出してガラスが白濁したり、破損したりするおそれがある。一方、SnOの含有量が多すぎると、結晶化ガラスの着色が強くなる恐れがある。また、溶融時のSnO蒸発量が増え、環境負荷が高くなる傾向がある。
ZrOはジルコニア系結晶を構成する成分であり、かつ、その他結晶の析出を促進する成分でもある。ZrOの含有量は、0~20%、1~20%、1~15%、1~10%、1~5%、1.5~5%、1.75~4.5%、1.75~4.4%、1.75~4.3%、1.75~4.2%、1.75~4.1%、1.75~4%、1.8~4%、1.85~4%、1.9~4%、1.95~4%、特に2~4%であることが好ましい。ZrOの含有量が少なすぎると、結晶核が十分に形成されず、粗大な結晶が析出して結晶化ガラスが白濁したり、破損したりするおそれがある。一方、ZrOの含有量が多すぎると、粗大なZrO結晶が析出しガラスが失透しやすくなり、結晶化ガラスが破損しやすくなる。
MgOの含有量は0~10%、0~8%、0~6%、0~5%、0~4.5%、0~4%、0~3.5%、0.02~3.5%、0.05~3.5%、0.08~3.5%、0.1~3.5%、0.1~3.3%、0.1~3%、0.13~3%、0.15~3%、0.17~3%、0.19~3%、0.2~2.9%、0.2~2.7%、0.2~2.5%、0.2~2.3%、0.2~2.2%、0.2~2.1%、特に0.2~2%であることが好ましい。MgOの含有量が少なすぎると、熱膨張係数が低くなり過ぎる傾向がある。また、結晶析出時には体積収縮が起こるが、その体積収縮の量が大きくなりすぎる場合がある。また、結晶化後の結晶相と残存ガラス相との熱膨張係数差が大きくなるため、結晶化ガラスが破損しやすくなる場合がある。MgOの含有量が多すぎると、結晶性が強くなりすぎて失透しやすくなり、結晶化ガラスが破損しやすくなる。また、熱膨張係数が高くなり過ぎる傾向がある。
は粗大なZrO結晶の析出を抑制する成分である。Pの含有量は0~10%、0~8%、0~6%、0~5%、0~4%、0~3.5%、0.02~3.5%、0.05~3.5%、0.08~3.5%、0.1~3.5%、0.1~3.3%、0.1~3%、0.13~3%、0.15~3%、0.17~3%、0.19~3%、0.2~2.9%、0.2~2.7%、0.2~2.5%、0.2~2.3%、0.2~2.2%、0.2~2.1%、0.2~2%、特に0.3~1.8%であることが好ましい。Pの含有量が少なすぎると、粗大なZrO結晶が析出しガラスが失透しやすくなり、結晶化ガラスが破損しやすくなる場合がある。一方、Pの含有量が多すぎると、LiO-Al-SiO系結晶の析出量が少なくなり、熱膨張係数が高くなる傾向がある。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、上記成分以外にも、ガラス組成中に下記の成分を含有してもよい。
TiOはチタニア系結晶を構成する成分であり、かつその他結晶の析出を促進する成分でもある。一方で、多量に含有するとガラスの着色を著しく強める。特に、残存ガラス相にチタンが残っている場合、SiO骨格の価電子帯から残存ガラス相の4価のチタンの伝導帯へとLMCT遷移が起こりうる。また、残存ガラス相の3価のチタンではd-d遷移が起こり、結晶化ガラスの着色に関与する。更に、チタンと鉄が共存する場合はイルメナイト(FeTiO)様の着色が発現する。また、チタンと錫が共存する場合は黄色が強まることが知られている。このため、TiOの含有量は0~4%、0~3.5%、0~3%、0~2.5%、0~2.2%、0~2.1%、0~2%、0~1.95%、0~1.9%、0~1.8%、0~1.7%、0~1.6%、0~1.5%、0~1.4%、0~1.3%、0~1.2%、0~1.1%、0~1.05%、0~1%、0~0.95%、0~0.9%、0~0.85%、0~0.8%、0~0.75%、0~0.7%、0~0.65%、0~0.6%、0~0.55%、0~0.5%、0~0.48%、0~0.46%、0~0.44%、0~0.42%、0~0.4%、0~0.38%、0~0.36%、0~0.34%、0~0.32%、0~0.3%、0~0.28%、0~0.26%、0~0.24%、0~0.22%、0~0.2%、0~0.18%、0~0.16%、0~0.14%、0~0.12%、特に0~0.1%であることが好ましい。ただし、TiOは不純物として混入し易いため、TiOを完全に除去しようとすると、原料バッチが高価になり製造コストが増加する傾向にある。製造コストの増加を抑制するために、TiOの含有量の下限は、0.0003%以上、0.0005%以上、0.001%以上、0.005%以上、0.01%以上、特に0.02%以上であることが好ましい。
TiOとZrOはそれぞれ結晶核として機能しうる成分である。TiとZrは同族元素であり、電気陰性度やイオン半径等が似ている。このため、酸化物として似たような分子配座を取りやすく、TiOとZrOの共存下で、結晶化初期の分相が発生しやすくなることが判っている。このため、着色が許容される範囲において、TiO/ZrOは質量比で、0.0001~5.0、0.0001~4.0、0.0001~3.0、0.0001~2.5、0.0001~2.0、0.0001~1.5、0.0001~1.0、0.0001~0.5、0.0001~0.4、特に0.0001~0.3であることが好ましい。TiO/ZrOが小さすぎると、原料バッチが高価になり製造コストが増加する傾向がある。一方、TiO/ZrOが大きすぎると、結晶核形成速度が遅くなり、製造コストが増加しうる。
SnO+ZrOは、0超~30%、0.1~30%、1~30%、1.1~30%、1.1~27%、1.1~24%、1.1~21%、1.1~20%、1.1~17%、1.1~14%、1.1~11%、1.1~9%、1.1~7.5%、1.4~7.5%、1.8~7.5%、2.0~7.5%、2.2~7%、2.2~6.4%、2.2~6.2%、2.2~6%、2.3~6%、2.4~6%、2.5~6%、特に2.8~6%であることが好ましい。SnO+ZrOが少なすぎると結晶核が析出しにくくなり、結晶化しにくくなる。一方、SnO+ZrOが多すぎると結晶核が大きくなり、結晶化ガラスが白濁しやすくなる。
SnOはガラス中の分相を助長する効果がある。液相温度を低く抑えながら(初相析出による失透のリスクを抑えながら)、効率的に分相を発生させ、後の工程における核形成、結晶成長を迅速に行うために、SnO/(SnO+ZrO)は質量比で、0.01~0.99、0.01~0.98、0.01~0.94、0.01~0.90、0.01~0.86、0.01~0.82、0.01~0.78、0.01~0.74、0.01~0.70、0.03~0.70、特に0.05~0.70であることが好ましい。
また、SnOは高温化でSnO→SnO+1/2Oの反応を起こし、ガラス融液中にOガスを放出する。この反応はSnOの清澄機構として知られているが、反応時に放出されたOガスはガラス融液中に存在する微塵な泡を大きくし、ガラス系外に放出させる「脱泡作用」の他に、ガラス融液を混ぜ合わせる「攪拌作用」を有する。本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスにおいては、SiOとAlの含有量が過半数を占めており、これら成分は難溶性であることから、効率的に均質なガラス融液を形成するためには、これら三成分を好適な比率で含有させる必要がある。(SiO+Al)/SnOは質量比で、44以上、44.3以上、44.7以上、45以上、45.2以上。45.4以上、45.6以上、45.8以上、特に46以上であることが好ましい。
Al/(SnO+ZrO)は質量比で、7.1以下、7.05以下、7.0以下、6.95以下、66.9以下、6.85以下、6.8以下、6.75以下、6.7以下、6.65以下、6.6以下、6.55以下、6.5以下、6.45以下、6.4以下、6.35以下、6.3以下、6.25以下、6.2以下、6.15以下、6.1以下、6.05以下、6.0以下、5.98以下、5.95以下、5.92以下、5.9以下、5.8以下、5.7以下、5.6以下、特に5.5以下であることが好ましい。Al/(SnO+ZrO)が大きすぎると、核形成が効率的に進まず、効率的に結晶化し難くなる。一方、Al/(SnO+ZrO)が小さすぎると、結晶核が大きくなり、結晶化ガラスが白濁しやすくなる。このため、Al/(SnO+ZrO)の下限は0.01以上であることが好ましい。
NaOはβ―スポジュメン固溶体に固溶しうる成分であり、結晶性に大きな影響を与えるとともに、ガラスの粘度を低下させて、ガラスの溶融性および成形性を向上させる成分である。また、結晶化ガラスの熱膨張係数および屈折率を調整するための成分でもある。NaOの含有量は0~10%、0~8%、0~6%、0~5%、0~4.5%、0~4%、0~3.5%、0~3%、0~2.7%、0~2.4%、0~2.1%、0~1.8%、特に0~1.5%であることが好ましい。NaOの含有量が多すぎると、結晶性が強くなりすぎて、ガラスが失透しやすくなり、結晶化ガラスが破損しやすくなる。また、Naカチオンのイオン半径は、主結晶の構成成分であるLiカチオンやMgカチオンなどよりも大きく、結晶に取り込まれにくいため、結晶化後のNaカチオンは残存ガラス(ガラスマトリックス)に残りやすい。このため、NaOの含有量が多すぎると、結晶相と残存ガラスの屈折率差が生じやすくなり、結晶化ガラスが白濁しやすくなる傾向にある。ただし、NaOは不純物として混入し易いため、NaOを完全に除去しようとすると、原料バッチが高価になり製造コストが増加する傾向にある。製造コストの増加を抑制するために、NaOの含有量の下限は、0.0003%以上、0.0005%以上、特に0.001%以上であることが好ましい。
Oはβ―スポジュメン固溶体に固溶しうる成分であり、結晶性に大きな影響を与えるとともに、ガラスの粘度を低下させて、ガラスの溶融性および成形性を向上させる成分である。また、結晶化ガラスの熱膨張係数および屈折率を調整するための成分でもある。KOの含有量は0~10%、0~8%、0~6%、0~5%、0~4.5%、0~4%、0~3.5%、0~3%、0~2.7%、0~2.4%、0~2.1%、0~1.8%、0~1.5%、0~1.4%、0~1.3%、0~1.2%。0~1.1%、0~1%、0~0.9%、特に0.1~0.8%であることが好ましい。KOの含有量が多すぎると、結晶性が強くなりすぎて、ガラスが失透しやすくなり、結晶化ガラスが破損しやすくなる。また、Kカチオンのイオン半径は、主結晶の構成成分であるLiカチオンやMgカチオンなどよりも大きく、結晶に取り込まれにくいため、結晶化後のKカチオンは残存ガラスに残りやすい。このため、KOの含有量が多すぎると、結晶相と残存ガラスの屈折率差が生じやすくなり、結晶化ガラスが白濁しやすくなる傾向にある。ただし、KOは不純物として混入し易いため、KOを完全に除去しようとすると、原料バッチが高価になり製造コストが増加する傾向にある。製造コストの増加を抑制するために、KOの含有量の下限は、0.0003%以上、0.0005%以上、特に0.001%以上であることが好ましい。
LiO、NaO、KOはガラスの溶融性および成形性を向上させる成分であるが、これら成分の含有量が多すぎると低温粘度が下がりすぎ、結晶化時にガラスが流動しすぎてしまう恐れがある。また、LiO、NaO、KOは結晶化前のガラスの耐候性、耐水性、耐薬品性等を悪化させうる成分である。結晶化前のガラスが水分等により改悪されると、所望の結晶化挙動、ひいては所望の特性を得られなくなる恐れがある。一方、ZrOは核形成剤として機能する成分であり、結晶化初期に優先的に結晶化し、残存ガラスの流動を抑える効果がある。また、ZrOはSiO骨格を主とするガラスネットワークの空隙部分を効率的に充填し、プロトンや各種薬品成分等のガラスネットワーク内での拡散を阻害する効果を持ち、結晶化前のガラスの耐候性、耐水性、耐薬品性等を向上させる。所望の形状、特性の結晶化ガラスを得るためには、(LiO+NaO+KO)/ZrOは好適に制御されるべきである。(LiO+NaO+KO)/ZrOは質量比で、2.0以下、1.98以下、1.96以下、1.94以下、1.92以下、特に1.90以下であることが好ましい。
CaOはガラスの粘度を低下させて、ガラスの溶融性および成形性を向上させる成分である。また、結晶化ガラスの熱膨張係数および屈折率を調整するための成分でもある。CaOの含有量は0~10%、0~8%、0~6%、0~5%、0~4.5%、0~4%、0~3.5%、0~3%、0~2.7%、0~2.4%、0~2.1%、0~1.8%、特に0~1.5%であることが好ましい。CaOの含有量が多すぎると、ガラスが失透しやすくなり、結晶化ガラスが破損しやすくなる。ただし、CaOは不純物として混入し易いため、CaOを完全に除去しようとすると、原料バッチが高価になり製造コストが増加する傾向にある。製造コストの増加を抑制するために、CaOの含有量の下限は0.0001%以上、0.0003%以上、特に0.0005%以上であることが好ましい。
SrOはガラスの粘度を低下させて、ガラスの溶融性および成形性を向上させる成分である。また、結晶化ガラスの熱膨張係数および屈折率を調整するための成分でもある。SrOの含有量は0~10%、0~8%、0~6%、0~5%、0~4.5%、0~4%、0~3.5%、0~3%、0~2.7%、0~2.4%、0~2.1%、0~1.8%、0~1.5%、特に0~1%であることが好ましい。SrOの含有量が多すぎると、ガラスが失透しやすくなり、結晶化ガラスが破損しやすくなる。ただし、SrOは不純物として混入し易いため、SrOを完全に除去しようとすると、原料バッチが高価になり製造コストが増加する傾向にある。製造コストの増加を抑制するために、SrOの含有量の下限は0.0001%以上、0.0003%以上、特に0.0005%以上であることが好ましい。
BaOはガラスの粘度を低下させて、ガラスの溶融性および成形性を向上させる成分である。また、結晶化ガラスの熱膨張係数および屈折率を調整するための成分でもある。BaOの含有量は0~10%、0~8%、0~6%、0~5%、0~4.5%、0~4%、0~3.5%、0~3%、0~2.7%、0~2.4%、0~2.1%、0~1.8%、0~1.5%、特に0~1%であることが好ましい。BaOの含有量が多すぎると、Baを含む結晶が析出しガラスが失透しやすくなり、結晶化ガラスが破損しやすくなる。ただし、BaOは不純物として混入し易いため、BaOを完全に除去しようとすると、原料バッチが高価になり製造コストが増加する傾向にある。製造コストの増加を抑制するために、BaOの含有量の下限は0.0001%以上、0.0003%以上、特に0.0005%以上であることが好ましい。
MgO、CaO、SrO、BaOはガラスの溶融性および成形性を向上させる成分であるが、これら成分の含有量が多すぎると低温粘度が下がりすぎ、結晶化時にガラスが流動しすぎてしまう恐れがある。一方、ZrOは核形成剤として機能する成分であり、結晶化初期に優先的に結晶化し、残存ガラスの流動を抑える効果がある。所望の形状、特性の結晶化ガラスを得るためには、(MgO+CaO+SrO+BaO)/ZrOは好適に制御されるべきである。(MgO+CaO+SrO+BaO)/ZrOは質量比で、0~3、0~2.8、0~2.6、0~2.4、0~2.2、0~2.1、0~2、0~1.8、0~1.7、0~1.6、特に0~1.5であることが好ましい。
NaO、KO、CaO、SrO、BaOは、結晶化後の残存ガラスに残りやすい。このため、これらの合量が多すぎると、結晶相と残存ガラスの屈折率差が生じやすくなり、結晶化ガラスが白濁しやすくなる。このため、NaO+KO+CaO+SrO+BaOは8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4.5%以下、4%以下、3.5%以下、3%以下、2.7%以下、2.42%以下、2.415%以下、2.410%以下、2.405%以下、特に2.4%以下であることが好ましい。
LiO、NaO、KO、MgO、CaO、SrO、BaOはガラスの溶融性および成形性を向上させる成分である。また、MgO、CaO、SrO、BaOを多く含むガラス融液は、温度に対する粘度(粘度カーブ)の変化が緩やかになりやすく、LiO、NaO、KOを多く含むガラス融液は変化が急になりやすい。粘度カーブの変化が緩やかすぎると成形して所定の形状にした後もガラスが流動してしまい、所望の形状を得にくくなる。一方、粘度カーブの変化が急すぎると成形途中にガラス融液が固化してしまい、所望の形状を得にくくなる。このため、(MgO+CaO+SrO+BaO)/(LiO+NaO+KO)は好適に制御されるべきである。(MgO+CaO+SrO+BaO)/(LiO+NaO+KO)は質量比で、0~2、0~1.8、0~1.5、0~1.2、0~1、0~0.9、0~0.8、0~0.7、0~0.6、0~0.5、特に0~0.45であることが好ましい。
ZnOはβ―石英固溶体やβ―スポジュメン固溶体などのLiO-Al-SiO系結晶に固溶し、結晶性に大きな影響を与える成分である。また、結晶化ガラスの熱膨張係数および屈折率を調整するための成分でもある。ZnOの含有量は0~10%、0~8%、0~6%、0~5%、0~4.5%、0~4%、0~3.5%、0~3%、0~2.7%、0~2.4%、0~2.1%、0~1.8%、0~1.5%、特に0~1%であることが好ましい。ZnOの含有量が多すぎると、結晶性が強くなりすぎて失透しやすくなり、ガラスが破損しやすくなる。ただし、ZnOは不純物として混入し易いため、ZnOを完全に除去しようとすると、原料バッチが高価になり製造コストが増加する傾向にある。製造コストの増加を抑制するために、ZnOの含有量の下限は0.0001%以上、0.0003%以上、特に0.0005%以上であることが好ましい。
Liカチオン、Mgカチオン、Znカチオンはβ―石英固溶体やβ―スポジュメン固溶体などに固溶しやすい成分であり、これらのカチオンはAlカチオンを電荷補償する形で結晶に固溶する。具体的には、Si4+ ⇔ Al3+ + (Li+、1/2×Mg2+、1/2×Zn2+)のような形で固溶していると考えられ、AlカチオンとLiカチオン、Mgカチオン、Znカチオンの比率がβ―石英固溶体の安定性に影響している。本願記載の組成物においては、安定的に結晶化ガラスが得られ、かつこの結晶化ガラスを無色透明かつゼロ膨張に近づけるために、Al/(LiO+(1/2×(MgO+ZnO)は質量比で、3.0~8.0、3.2~7.8、3.4~7.6、3.5~7.5、3.7~7.5,4.0~7.5、4.3~7.5、4.5~7.5、4.8~7.5、5.0~7.5、5.5~7.3、5.5~7.1、5.5~7.0、5.5~6.8、5.5~6.7、5.5~6.6、特に5.5~6.5であることが好ましい。
はガラスの粘度を低下させて、ガラスの溶融性および成形性を向上させる成分である。また、結晶化ガラスのヤング率を向上させ、熱膨張係数および屈折率を調整するための成分でもある。Yの含有量は0~10%、0~8%、0~6%、0~5%、0~4.5%、0~4%、0~3.5%、0~3%、0~2.7%、0~2.4%、0~2.1%、0~1.8%、0~1.5%、特に0~1%であることが好ましい。Yの含有量が多すぎると、Yを含む結晶が析出しガラスが失透しやすくなり、結晶化ガラスが破損しやすくなる。ただし、Yは不純物として混入することがあるため、Yを完全に除去しようとすると、原料バッチが高価になり製造コストが増加する傾向にある。製造コストの増加を抑制するために、Yの含有量の下限は0.0001%以上、0.0003%以上、特に0.0005%以上であることが好ましい。
Liカチオン、Mgカチオン、Znカチオンはβ―石英固溶体やβ―スポジュメン固溶体などに固溶しやすい成分であり、Baカチオン等と比較して、結晶化後の残存ガラスの屈折率上昇への寄与が小さい成分と考えられる。また、LiO、MgO、ZnOは原料をガラス化する際のフラックスとして機能するため、これらは無色透明な結晶化ガラスを低温で製造するうえで、大切な成分であると言える。LiOは低膨張を達成するうえで必須の成分であり、1%以上含有させる必要がある。所望する熱膨張係数等を達成するためにLiOを必要量含有させなければならないが、これに応じて、MgOとZnOも一緒に含有量を増やすと、ガラスの粘性が下がりすぎる恐れがある。低温粘度が下がりすぎると、焼成時にガラスの軟化流動性が大きくなりすぎ、所望の形状に結晶化することが困難になる場合がある。また、高温粘度が下がりすぎると、製造設備への熱的負荷は下がるものの、加熱時の対流速度が速くなり、耐火物等を物理的に侵食しやすくなる恐れがある。そこで、LiO、MgO、ZnOの含有比を制御するのが好ましく、特に、フラックスとしての機能が高いLiOに対して、MgOとZnOの合量を制御することが好ましい。そこで、(MgO+ZnO)/LiOは質量比で、0.394以下、0.393以下、0.392以下、0.391以下、特に0.390以下と小さくする、又は0.755以上、0.756以上、0.757以上、0.758以上、特に0.759以上と大きくすることが好ましい。
はガラスの粘度を低下させて、ガラスの溶融性および成形性を向上させる成分である。また、結晶核形成時の分相の起こりやすさに関与しうる成分でもある。Bの含有量は0~10%、0~8%、0~6%、0~5%、0~4.5%、0~4%、0~3.5%、0~3%、0~2.7%、0~2.4%、0~2.1%、0~1.8%、特に0~1.5%であることが好ましい。Bの含有量が多すぎると、溶融時のBの蒸発量が多くなり、環境負荷が高くなる。ただし、Bは不純物として混入し易いため、Bを完全に除去しようとすると、原料バッチが高価になり製造コストが増加する傾向にある。製造コストの増加を抑制するために、Bは0.0001%以上、0.0003%以上、特に0.0005%以上含有しても良い。
LiO-Al-SiO系結晶化ガラスにおいては、結晶核形成前にガラス内に分相領域が形成された後、その分相領域内でTiOやZrOなどで構成される結晶核が形成されることが知られている。分相形成にはSnO、ZrO、P、TiO、Bが強く関与していることから、SnO+ZrO+P+TiO+Bは1.5~30%、1.5~26%、1.5~22%、1.5~20%、1.5~18%、1.5~16%、1.5~15%、1.8~15%、2.1~15%、2.4~15%、2.5~15%、2.8~15%、2.8~13%、2.8~12%、2.8~11%、2.8~10%、3~9.5%、3~9.2%、特に3~9%が好ましく、SnO/(SnO+ZrO+P+TiO+B)は質量比で、0.06以上、0.07以上、0.08以上、0.09以上、0.1以上、0.103以上、0.106以上、0.11以上、0.112以上、0.115以上、0.118以上、0.121以上、0.124以上、0.127以上、0.128以上、特に0.13以上であることが好ましい。P+B+SnO+TiO+ZrOが少なすぎると分相領域が形成されにくくなり、結晶化しにくくなる。一方、P+B+SnO+TiO+ZrOが多すぎる、及び/又はSnO/(SnO+ZrO+P+TiO+B)が小さすぎると、分相領域が大きくなり、結晶化ガラスが白濁しやすくなる。なお、SnO/(SnO+ZrO+P+TiO+B)の上限は特に限定されないが、現実的には0.9以下である。
Feはガラスの着色を強める成分、特にTiOやSnOとの相互作用により着色を著しく強める成分でもある。Feの含有量は0.10%以下、0.08%以下、0.06%以下、0.05%以下、0.04%以下、0.035%以下、0.03%以下、0.02%以下、0.015%以下、0.013%以下、0.012%以下、0.011%以下、0.01%以下、0.009%以下、0.008%以下、0.007%以下、0.006%以下、0.005%以下、0.004%以下、0.003%以下、特に0.002%以下であることが好ましい。ただし、Feは不純物として混入し易いため、Feを完全に除去しようとすると、原料バッチが高価になり製造コストが増加する傾向にある。製造コストの増加を抑制するために、Feの含有量の下限は0.0001%以上、0.0002%以上、0.0003%以上、0.0005%以上、特に0.001%以上であることが好ましい。
チタンと鉄が共存する場合はイルメナイト(FeTiO)様の着色が発現することがある。特に、LiO-Al-SiO系結晶化ガラスにおいては、結晶化後に結晶核や主結晶として析出しなかったチタンと鉄の成分が残存ガラスに残り、上記着色の発現が促進されうる。組成設計上、これら成分を減量することがありえるが、TiOとFeは不純物として混入し易いため、完全に除去しようとすると、原料バッチが高価になり製造コストが増加する傾向にある。このため、製造コストを抑制するためには、前述した範囲においてTiOとFeを含有しても良く、製造コストをより安価にするためには着色が許容される範囲において、両方の成分を含有しても良い。そうした場合、TiO/(TiO+Fe)は質量比で、0.001~0.999、0.003~0.997、0.005~0.995、0.007~0.993、0.009~0.991、0.01~0.99、0.1~0.9、0.15~0.85、0.2~0.8、0.25~0.25、0.3~0.7、0.35~0.65、特に0.4~0.6であることが好ましい。こうすることで、安価に無色透明度の高い結晶化ガラスを得やすくなる。
Ptはイオンやコロイド、金属等の状態でガラスに混入しうる成分であり、黄色~茶褐色の着色を発現させる。また、この傾向は結晶化後に顕著になる。さらに、鋭意検討した所、Ptが混入すると、結晶化ガラスの核形成および結晶化挙動が影響を受け、白濁しやすくなる場合があることが判明した。このため、Ptの含有量は7ppm以下、6ppm以下、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1.6ppm以下、1.4ppm以下、1.2ppm以下、1ppm以下、0.9ppm以下、0.8ppm以下、0.7ppm以下、0.6ppm以下、0.5ppm以下、0.45ppm以下、0.40ppm以下、0.35ppm以下、特に0.30ppm以下であることが好ましい。極力Ptの混入は避けるべきであるが、一般的な溶融設備を用いた場合、均質なガラスを得るためにPt部材の使用が必要になることがある。このため、Ptを完全に除去しようとすると、製造コストが増加する傾向にある。着色に悪影響を及ぼさない場合においては、製造コストの増加を抑制するために、Ptの含有量の下限は0.0001ppm以上、0.001ppm以上、0.005ppm以上、0.01ppm以上、0.02ppm以上、0.03ppm以上、0.04ppm以上、0.05ppm以上、0.06ppm以上、特に0.07ppm以上であることが好ましい。また、着色が許容される場合においては、PtをZrOやTiOと同様に、主結晶の析出を促進させる核形成剤としても良い。その際、Pt単独で核形成剤としても良く、他の成分と複合で核形成剤としても良い。また、Ptを核形成剤とする場合、特に形態は問わない(コロイド、金属結晶など)。
Rhはイオンやコロイド、金属等の状態でガラスに混入しうる成分であり、Ptと同様に黄色~茶褐色の着色を発現させ、結晶化ガラスを白濁させる傾向がある。このため、Rhの含有量は7ppm以下、6ppm以下、5ppm以下、4ppm以下、3ppm以下、2ppm以下、1.6ppm以下、1.4ppm以下、1.2ppm以下、1ppm以下、0.9ppm以下、0.8ppm以下、0.7ppm以下、0.6ppm以下、0.5ppm以下、0.45ppm以下、0.40ppm以下、0.35ppm以下、特に0.30ppm以下であることが好ましい。極力Rhの混入は避けるべきであるが、一般的な溶融設備を用いた場合、均質なガラスを得るためにRh部材の使用が必要になることがある。このため、Rhを完全に除去しようとすると、製造コストが増加する傾向にある。着色に悪影響を及ぼさない場合においては、製造コストの増加を抑制するために、Rhの含有量の下限は0.0001ppm以上、0.001ppm以上、0.005ppm以上、0.01ppm以上、0.02ppm以上、0.03ppm以上、0.04ppm以上、0.05ppm以上、0.06ppm以上、特に0.07ppm以上であることが好ましい。また、着色が許容される場合においては、RhをZrOやTiOと同様に核形成剤としても良い。その際、Rh単独で核形成剤としても良く、他の成分と複合で核形成剤としても良い。また、Rhを主結晶の析出を促進させる核形成剤とする場合、特に形態は問わない(コロイド、金属結晶など)。
また、Pt+Rhは9ppm以下、8ppm以下、7ppm以下、6ppm以下、5ppm以下、4.75ppm以下、4.5ppm以下、4.25ppm以下、4ppm以下、3.75ppm以下、3.5ppm以下、3.25ppm以下、3ppm以下、2.75ppm以下、2.5ppm以下、2.25ppm以下、2ppm以下、1.75ppm以下、1.5ppm以下、1.25ppm以下、1ppm以下、0.95ppm以下、0.9ppm以下、0.85ppm以下、0.8ppm以下、0.75ppm以下、0.7ppm以下、0.65ppm以下、0.60ppm以下、0.55ppm以下、0.50ppm以下、0.45ppm以下、0.40ppm以下、0.35ppm以下、特に0.30ppm以下であることが好ましい。なお、極力PtとRhの混入は避けるべきであるが、一般的な溶融設備を用いた場合、均質なガラスを得るためにPtとRh部材の使用が必要になることがある。このため、PtとRhを完全に除去しようとすると、製造コストが増加する傾向にある。着色に悪影響を及ぼさない場合においては、製造コストの増加を抑制するために、Pt+Rhの下限は0.0001ppm以上、0.001ppm以上、0.005ppm以上、0.01ppm以上、0.02ppm以上、0.03ppm以上、0.04ppm以上、0.05ppm以上、0.06ppm以上、特に0.07ppm以上であることが好ましい。
MoOは原料や溶融用部材などから混入しうる成分であり、結晶化を促進する成分である。MoOの含有量は0~10%、0~8%、0~6%、0~5%、0~4.5%、0~4%、0~3.5%、0~3%、0~2.7%、0~2.4%、0~2.1%、0~1.8%、0~1.5%、0~1%、0~0.5%、0~0.1%、0~0.05%、0~0.01%、特に0~0.005%であることが好ましい。MoOの含有量が多すぎると、Moを含む結晶が析出しガラスが失透しやすくなり、結晶化ガラスが破損しやすくなる。また、Moカチオンのイオン半径は、主結晶の構成成分であるLiカチオンやMgカチオンなどよりも大きく、結晶に取り込まれにくいため、結晶化後のMoカチオンは残存ガラスに残りやすい。このため、MoOの含有量が多すぎると、結晶相と残存ガラスの屈折率差が生じやすくなり、結晶化ガラスが白濁しやすくなる傾向にある。更に、MoOの含有量が多すぎると、黄色く着色する恐れがある。ただし、MoOは不純物として混入することがあるため、MoOを完全に除去しようとすると、原料バッチが高価になり製造コストが増加する傾向にある。製造コストの増加を抑制するために、MoOの含有量の下限は0%超、0.0001%以上、0.0003%以上、特に0.0005%以上であることが好ましい。
AsやSbは毒性が強く、ガラスの製造工程や廃ガラスの処理時等に環境を汚染する可能性がある。このため、Sb+Asは2%以下、1%以下、0.7%以下、0.7%未満、0.65%以下、0.6%以下、0.55%以下、0.5%以下、0.45%以下、0.4%以下、0.35%以下、0.3%以下、0.25%以下、0.2%以下、0.15%以下、0.1%以下、0.05%以下、特に実質的に含有しない(具体的には、0.01質量%未満)ことが好ましい。なお、AsやSbを含有させる場合、これらの成分を清澄剤や核形成剤として機能させて良い。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは着色に悪影響が無い限り、上記成分以外にも、例えばH、CO、CO、HO、He、Ne、Ar、N等の微量成分をそれぞれ0.1%まで含有してもよい。また、ガラス中にAg、Au、Pd、Ir、V、Cr、Sc、Ce、Pr、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ac、Th、Pa、U等は意図的に添加すると原料コストが高くなり、製造コストが高くなる傾向にある。一方、AgやAuなどを含有させたガラスに光照射や熱処理を行うと、これら成分の凝集体が形成され、それを起点に結晶化を促進することが出来る。また、Pdなどには種々の触媒作用があり、これら含有させることで、ガラスないし結晶化ガラスに特異な機能を付与することが可能となる。こうした事情を鑑みて、結晶化促進やその他の機能の付与を目的とする場合、上記成分をそれぞれ1%以下、0.5%以下、0.3%以下、0.1%以下含有してもよく、そうでない場合は500ppm以下、300ppm以下、100ppm以下、特に10ppm以下であることが好ましい。
さらに着色に悪影響が無い限り、本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、SO、MnO、Cl、La、WO、HfO、Ta、Nd、Nb、RfO等を合量で10%まで含有してもよい。ただし、上記成分の原料バッチは高価であり製造コストが増加する傾向にあるため、特段の事情が無い場合は添加しなくても良い。特にHfOは原料費が高く、Taは紛争鉱物になることがあるため、これら成分の合量は質量%で5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下、0.4%以下、0.3%以下、0.2%以下、0.1%以下、0.05%以下、0.05%未満、0.049%以下、0.048%以下、0.047%以下、0.046%以下、特に0.045%以下であることが好ましい。
すなわち、本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスを実施するにあたり好ましい組成範囲は、SiO 50~75%、Al 10~30%、LiO 1~8%、SnO 0~5%、ZrO 1~5%、MgO 0~10%、P 0~5%、TiO 0~1.5%未満、(LiO+NaO+KO)/ZrO 0~1.5、TiO/(TiO+Fe) 0.01~0.99、(MgO+ZnO)/LiO 0~0.8、β-OH値が0.001~2/mmであり、好ましくは、SiO 50~75%、Al 10~30%、LiO 1~8%、SnO 0超~5%、ZrO 1~5%、MgO 0~10%、P 0~5%、TiO 0~1.5%未満、(LiO+NaO+KO)/ZrO 0~1.5、TiO/(TiO+Fe) 0.01~0.99、(MgO+ZnO)/LiO 0~0.8、(MgO+CaO+SrO+BaO)/(LiO+NaO+KO) 0~0.5、β-OH値が0.001~2/mmであり、より好ましくは、SiO 50~75%、Al 10~30%、LiO 1~8%、SnO 0超~5%、ZrO 1~5%、MgO 0~10%、P 0~5%、TiO 0~1.5%未満、(LiO+NaO+KO)/ZrO 0~1.5、TiO/(TiO+Fe) 0.01~0.99、(MgO+ZnO)/LiO 0~0.8、(MgO+CaO+SrO+BaO)/(LiO+NaO+KO) 0~0.5、(MgO+CaO+SrO+BaO)/ZrO 0~2、β-OH値が0.001~2/mmであり、さらに好ましくは、SiO 50~75%、Al 10~30%、LiO 1~8%、SnO 0超~5%、ZrO 1~5%、MgO 0~10%、P 0~5%、TiO 0~1.5%未満、(LiO+NaO+KO)/ZrO 0~1.5、TiO/(TiO+Fe) 0.01~0.99、(MgO+ZnO)/LiO 0~0.8、(MgO+CaO+SrO+BaO)/(LiO+NaO+KO) 0~0.5、(MgO+CaO+SrO+BaO)/ZrO 0~2、SnO/(SnO+ZrO+P+TiO+B) 0.06~0.9、β-OH値が0.001~2/mmであり、さらに好ましくは、SiO 50~75%、Al 10~30%、LiO 1~8%、SnO 0超~5%、ZrO 1~5%、MgO 0~10%、P 0~5%、TiO 0~1.5%未満、(LiO+NaO+KO)/ZrO 0~1.5、TiO/(TiO+Fe) 0.01~0.99、(MgO+ZnO)/LiO 0~0.8、(MgO+CaO+SrO+BaO)/(LiO+NaO+KO) 0~0.5、(MgO+CaO+SrO+BaO)/ZrO 0~2、SnO/(SnO+ZrO+P+TiO+B) 0.06~0.9、Pt+Rh 0~5ppm、β-OH値が0.001~2/mmであり、さらに好ましくは、SiO 50~75%、Al 10~30%、LiO 1~8%、SnO 0超~5%、ZrO 1~5%、MgO 0~10%、P 0~5%、TiO 0~1.5%未満、(LiO+NaO+KO)/ZrO 0~1.5、TiO/(TiO+Fe) 0.01~0.99、(MgO+ZnO)/LiO 0~0.394、(MgO+CaO+SrO+BaO)/(LiO+NaO+KO) 0~0.5、(MgO+CaO+SrO+BaO)/ZrO 0~2、SnO/(SnO+ZrO+P+TiO+B) 0.06~0.9、Pt+Rh 0~5ppm、β-OH値が0.001~2/mmであり、さらに好ましくは、SiO 50~75%、Al 10~30%、LiO 1~8%、SnO 0超~5%、ZrO 1~5%、MgO 0~10%、P 0~5%、TiO 0~1.5%未満、(LiO+NaO+KO)/ZrO 0~1.5、TiO/(TiO+Fe) 0.01~0.99、(MgO+ZnO)/LiO 0~0.394、(MgO+CaO+SrO+BaO)/(LiO+NaO+KO) 0~0.5、(MgO+CaO+SrO+BaO)/ZrO 0~2、SnO/(SnO+ZrO+P+TiO+B) 0.06~0.9、Pt+Rh 0~5ppm、HfO+Ta 0~0.05%未満、β-OH値が0.001~2/mm、Sb+ As 0.7%未満、特に好ましくは、SiO 50~75%、Al 10~30%、LiO 1~8%、SnO 0超~5%、ZrO 1~5%、MgO 0~10%、P 0~5%、TiO 0~1.5%未満、(LiO+NaO+KO)/ZrO 0~1.5、TiO/(TiO+Fe) 0.01~0.99、(MgO+ZnO)/LiO 0~0.394、(MgO+CaO+SrO+BaO)/(LiO+NaO+KO) 0~0.5、(MgO+CaO+SrO+BaO)/ZrO 0~2、SnO/(SnO+ZrO+P+TiO+B) 0.06~0.9、Pt+Rh 0~5ppm、HfO+Ta 0~0.05%未満、β-OH値が0.001~2/mm、Sb+ As 0.7%未満、Al /(LiO+(1/2×(MgO+ZnO))) 5.0~7.5である。
上記組成を有する本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、外観が無色透明になりやすい。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、β-OH値が2/mm以下であり、0.001~2/mm、0.01~1.5/mm、0.02~1.5/mm、0.03~1.2/mm、0.04~1.5/mm、0.05~1/mm、0.06~1/mm、0.07~1/mm、0.08~0.9/mm、0.08~0.85/mm、0.08~0.8/mm、0.08~0.75/mm、0.08~0.7/mm、0.08~0.65/mm、0.08~0.6/mm、0.08~0.55/mm、0.08~0.54/mm、0.08~0.53/mm、0.08~0.52/mm、0.08~0.51/mm、特に0.08~0.5/mmであることが好ましい。β-OH値が小さすぎると、結晶化工程における結晶核形成速度が遅くなり、結晶核の生成量が少なくなり易い。その結果、粗大結晶が多くなって、結晶化ガラスが白濁し、透明性を損ないやすくなる。一方、β-OH値が大きすぎると、Pt等を含有する金属製のガラス製造炉部材や耐火物からなるガラス製造炉部材等とガラスの界面で泡が発生しやすくなり、ガラス製品の品質を低下させやすくなる。β-OH値は使用する原料、溶融雰囲気、溶融温度、溶融時間などによって変化し、必要に応じてこれらの条件を変更し、β-OH値を調整できる。
次に本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスを製造する方法を説明する。
まず、上記組成のガラスとなるように調製した原料バッチを、ガラス溶融炉に投入し、1400~1750℃で溶融した後、成形する。なお、成形時に、周囲の気体及び/又は周囲の液体とのみ接触させたガラスの自由表面が存在する。
溶融方法は、バーナー等を用いた火炎溶融法、電気加熱による電気溶融法、レーザー照射による溶融法、プラズマによる溶融法、液相合成法、気相合成法の溶融方法のうち、いずれか一つの方法または二つ以上の方法を組み合わせて溶融する方法が好ましい。
成形方法は、オーバーフロー法、フロート法、ダウンドロー法、スロットダウン法、リドロー法、無容器法、ブロー法、プレス法、ロール法、ブッシング法、管引き法等の成形法のうち、いずれか一つの方法または二つ以上の方法を組み合わせることが好ましい。また、成形後にガラス転移点以上の温度で再加熱することを組み合わせても良い。このようにすれば、表面品位が良好な本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスを製造することができる。その理由をオーバーフロー法で説明すると、本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスの表面となるべき面は樋状耐火物に接触せず、自由表面の状態で成形されるからである。ここで、オーバーフロー法は、溶融ガラスを耐熱性の樋状構造物の両側から溢れさせて、溢れた溶融ガラスを樋状構造物の下端で合流させながら、下方に延伸成形して本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスを製造する方法である。樋状構造物の構造や材質は、本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスの寸法や表面精度を所望の状態とし、本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスに使用できる品位を実現できるものであれば、特に限定されない。また、下方への延伸成形を行うために、ガラスに対してどのような方法で力を印加するものであってもよい。例えば、充分に大きい幅を有する耐熱性ロールをガラスに接触させた状態で回転させて延伸する方法を採用してもよいし、複数の対になった耐熱性ロールをガラスの端面近傍のみに接触させて延伸する方法を採用してもよい。
オーバーフロー法で成形する場合、樋状耐火物から非接触となる部分(下頂端部分)におけるガラスの粘度は、103.5~105.0dPa・sが好ましい。樋状構造物の下頂端部分に何も力を加えなければ、表面張力によって縮みながら下方へ落下していく。これを防ぐためにガラス生地の両側をローラー上のもので挟み込みガラス生地が縮まないように幅方向に引き伸ばす必要がある。本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスを成形する場合、ガラス自身が有する熱量が小さいため、樋状耐火物から離れた瞬間からガラスの冷却速度は急激に速くなる。よって、下頂端部分でのガラスの粘度は、好ましくは105.0dPa・s以下、104.8dPa・s以下、104.6dPa・s以下、104.4dPa・s以下、104.2dPa・s以下、特に104.0dPa・s以下である。このようにすれば、幅方向に引っ張り応力が付与されて、破損を防止した上で、板幅を広げることが可能になると共に、安定して下方へ延伸することが可能になる。一方、下頂端部分でのガラスの粘度が低過ぎると、ガラスが変形し易くなり、反り、うねり等の品位が低下し易くなる。またその後の冷却速度が速くなり、本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスの熱収縮が大きくなり易い。よって、下頂端部分でのガラスの粘度は、好ましくは103.5dPa・s以上、103.7dPa・s以上、103.8dPa・s以上、特に103.9dPa・s以上である。
次に得られた結晶性ガラス(結晶化前の結晶化可能なガラス)を熱処理して結晶化させる。結晶化条件としては、ガラス転移点温度~1300℃の温度域において、0.001~1000時間加熱することで結晶化することが好ましく、730~1280℃の温度域において、0.1~100時間加熱することで結晶化することがより好ましく、750~11200℃で0.1~50時間加熱することで結晶化することがさらに好ましい。このようにすることで、効率的に所望の結晶を析出させやすくなる。なお、熱処理はある特定の温度のみで行って良く、二水準以上の温度に保持し段階的に熱処理しても良く、温度勾配を与えながら加熱しても良い。
また、音波や電磁波を印加、照射することで結晶化を促進しても良い。さらに、高温にした結晶化ガラスの冷却速度はある特定の温度勾配で行って良く、二水準以上の温度勾配で行っても良い。耐熱衝撃性を十分に得たい場合、冷却速度を制御して残存ガラス相の構造緩和を十分に行うことが望まれる。800℃から25℃までの平均冷却速度は、結晶化ガラスの最も表面から遠い肉厚内部の部分において3000℃/分、1000℃/分以下、500℃/分以下、400℃/分以下、300℃/分以下、200℃/分以下、100℃/分以下、50℃/分以下、25℃/分以下、10℃/分以下、特に5℃/分以下であることが好ましい。また、長期間にわたる寸法安定性を得たい場合は、さらに2.5℃/分以下、1℃/分以下、0.5℃/分以下、0.1℃以下/分以下、0.05℃/分以下、0.01℃/分以下、0.005℃/分以下、0.001℃/分以下、0.0005℃/分以下、特に0.0001℃/分以下であることが好ましい。風冷、水冷等による物理強化処理を行う場合を除き、結晶化ガラスの冷却速度はガラス表面の冷却速度とガラス表面から最も遠い肉厚内部との冷却速度が近いことが望ましい。表面から最も遠い肉厚内部の部分における冷却速度を表面の冷却速度で除した値は、0.0001~1、0.001~1、0.01~1、0.1~1、0.5~1、0.8~1、0.9~1、特に1であることが好ましい。1に近いことで、結晶化ガラス試料の全位置において、残留歪が生じにくく、長期の寸法安定性を得やすくなる。なお、表面の冷却速度は接触式測温や放射温度計で見積もることができ、内部の温度は高温状態の結晶化ガラスを冷却媒体中に置き、冷却媒体の熱量および熱量変化率を計測し、その数値データと結晶化ガラスと冷却媒体の比熱、熱伝導度等から見積もることができる。
本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、化学強化等を施しても良い。化学強化処理の処理条件はガラス組成、結晶化度、溶融塩の種類などを考慮して、処理時間や処理温度を適切に選択すればよい。例えば、結晶化後に化学強化しやすくなるように、残存ガラスに含まれうるNaOを多く含んだガラス組成を選択しても良く、結晶化度を意図的に下げても良い。また、溶融塩はLi、Na、K等のアルカリ金属を単独で含んでも良いし、複数含んでも良い。さらに、通常の一段階強化だけでなく、多段階での化学強化を選択しても良い。この他に、本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスは、結晶化前に化学強化等で処理することで、試料表面のLiO含有量を試料内部よりも減らすことができる。こうしたガラスを結晶化させると、試料表面の結晶化度が試料内部よりも低くなり、相対的に試料表面の熱膨張係数が高くなり、熱熱膨張差に起因する圧縮応力を試料表面に入れることができる。また、試料表面の結晶化度が低い場合、表面にガラス相が多くなり、ガラス組成の選択によっては耐薬品性やガスバリア性を向上させることが出来る。
次に、得られた結晶化ガラスを切断しても構わない。例えば、ワイヤーソーを用いて切断する場合、ワイヤーソーに研磨砥粒を含むスラリーを供給しながら切断することが好ましい。更に、ワイヤーソーを本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスの表面に対して45°以下、30°以下、20°以下、10°以下、5°以下、3°以下、特に1°以下の角度に規制した状態で切断しても良い。また、本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスに何らかのものを付着させた状態で切断しても良いし、平行に切断しても良いし、非平行に切断しても良い。
ワイヤーソーのワイヤー幅は、好ましくは500μm以下、300μm以下、200μm以下、特に10~100μmである。ワイヤーソーのワイヤー幅が大き過ぎると、短冊状のガラスの収率が低下し易くなる。なお、ワイヤーソーのワイヤー幅が小さ過ぎると、切断時にワイヤーが切れる虞がある。
ワイヤーソーを用いて切断する場合、切断後のスラリーに含まれる金属を沈殿回収するために、スラリーの循環装置を設置することが好ましく、更に金属沈殿槽を併設することが好ましい。なお、スラリー中に金属が混入すると、切断効率が低下し易くなる。
なお、前記切断による効果は、特段ワイヤーソーに限られるものではなく、熱割断や折割り等の他の方法においても同様に得られ、本発明のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスに適用可能である。
次に実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。表1および2には本発明の実施例(試料No.1~7)を示している。
Figure 2023072220000001
Figure 2023072220000002
まず各表記載の組成を有するガラスとなるように、各原料を酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩等の形態で調合し、ガラスバッチを得た(各表記載の組成は実際に作ったガラスの分析値)。得られたガラスバッチを1600℃で4~100時間溶融後、1650~1680℃に昇温して0.5~20時間溶融し、得られた溶融ガラスを冷却しながら、オーバーフロー法により、長さ寸法400mmになるように成形した。その後、徐冷炉を用いて700℃で30分間熱処理し、徐冷炉を室温まで100℃/hで降温することにより、結晶性ガラス(結晶化前のガラス)を得た。なお、前記溶融はガラス素材の開発に広く使用される電気溶融法で行った。
作製した試料のPt、Rh含有量はICP-MS装置(AGILEINT TECHNOLOGY製 Agilent8800)を用いて分析した。まず、作製したガラス試料を粉砕し純水で湿潤した後、過塩素酸、硝酸、硫酸、フッ酸などを添加して融解させた。その後、試料のPt、Rh含有量をICP-MSで測定した。予め準備しておいた濃度既知のPt、Rh溶液を用いて作成した検量線に基づき、各測定試料のPt、Rh含有量を求めた。測定モードはPt:Heガス/HMI(低モード)、Rh:HEHeガス/HMI(中モード)とし、質量数はPt:198、Rh:103とした。なお、作製試料のLiO含有量は原子吸光分析装置(アナリティクイエナ製 ContrAA600)を用いて分析した。ガラス試料の融解の流れ、検量線を用いた点などは基本的にPt、Rh分析と同様である。また、その他成分に関しては、Pt、Rh、LiOと同様にICP-MSないし原子吸光分析で測定するか、予めICP-MSもしくは原子吸光分析装置を用いて調べた濃度既知のガラス試料を検量線用試料とし、XRF分析装置(RIGAKU製ZSX PrimusIV)で検量線を作成した後、その検量線に基づき、測定試料のXRF分析値から実際の各成分の含有量を求めた。XRF分析の際、管電圧や管電流、露光時間等は分析成分に応じて随時調整した。
各表記載の結晶性ガラス(結晶化前のガラス)に対して、各表に記載の条件で加熱を行い結晶化させた。その後、700℃で30分間熱処理し、室温まで100℃/hで降温した。得られた結晶化ガラスについて、透過率、明度、色度、析出結晶、平均結晶子サイズ、熱膨張係数、密度、ヤング率、剛性率、ポアソン比、屈折率、クラック発生率、平面の表面粗さRa、端面の表面粗さRa、うねりを評価した。また、結晶化前の結晶性ガラスについては透過率、明度、色度等は結晶化ガラスと同様の方法で測定した。また、結晶性ガラスについてはβ-OH値、粘度、液相温度を測定した。
透過率、明度及び色度は、自由表面のみで形成された肉厚3mmの部分を用い、分光光度計により評価した。測定には日本分光製 分光光度計 V-670を用いた。なお、V-670には積分球ユニットである「ISN-723」を装着しおり、測定した透過率は全光透過率に相当する。また、測定波長域は200~1500nm、スキャンスピードは200nm/分、サンプリングピッチは1nm、バンド幅は200~800nmの波長域で5nm、それ以外の波長域で20nmとした。測定前にはベースライン補正(100%合わせ)とダーク測定(0%合わせ)を行った。ダーク測定時はISN-723に付属された硫酸バリウム板を取った状態で行った。測定した透過率を用い、JISZ8781-42013およびそれに対応する国際規格に基づいて三刺激値XYZを算出し、各刺激値から明度及び色度を算出した(光源C/10°)。また、結晶化ガラスの拡散透過率は上記と同一機種を用い、ISN-723に付属された硫酸バリウム板を取った状態で測定試料を設置し、測定を行った。
析出結晶はX線回折装置(リガク製 全自動多目的水平型X線回折装置 Smart Lab)を用いて評価した。スキャンモードは2θ/θ測定、スキャンタイプは連続スキャン、散乱および発散スリット幅は1°、受光スリット幅は0.2°、測定範囲は10~60°、測定ステップは0.1°、スキャン速度は5°/分とし、同機種パッケージに搭載された解析ソフトを用いて主結晶および結晶粒径の評価を行った。また、主結晶の平均結晶子サイズはデバイ・シェラー(Debeye-Sherrer)法に基づいて、測定したX線回折ピークを用いて算出した。なお、平均結晶子サイズ算出用の測定では、スキャン速度は1°/分とした。
熱膨張係数は、20mm×3.8mmφに加工した結晶化ガラス試料を用いて、30~380℃、及び30~750℃の温度域で測定した平均線熱膨張係数により評価した。測定にはNETZSCH製Dilatometerを用いた。また、同一測定器を用いて、30~750℃の温度域の熱膨張曲線を計測し、その変曲点を算出することで結晶化前の結晶性ガラスのガラス転移点を評価した。
ヤング率、剛性率、及びポアソン比は、1200番アルミナ粉末を分散させた研磨液で表面を研磨した板状試料(40mm×20mm×20mm)について、自由共振式弾性率測定装置(日本テクノプラス製JE-RT3)を用いて室温環境下にて測定した。
密度はアルキメデス法で評価した。
歪点、徐冷点はファイバーエロンゲーション法で評価した。なお、結晶性ガラスを手引き法にてファイバー試料を作製した。
β-OH値は、FT-IR Frontier (Perkin Elmer社製)を用いてガラスの透過率を測定し、下記の式を用いて求めた。尚、スキャンスピードは100μm/min、サンプリングピッチは1cm-1、スキャン回数は1測定あたり10回とした。
β-OH値 = (1/X)log10(T1/T2
X :ガラス肉厚(mm)
1:参照波長3846cm-1における透過率(%)
2:水酸基吸収波長3600cm-1付近における最小透過率(%)
高温粘度は白金球引き上げ法で評価した。評価の際は塊状のガラス試料を適正な寸法に破砕し、なるべく気泡が巻き込まれないようにしてアルミナ製坩堝に投入した。続いてアルミナ坩堝を加熱して、試料を融液状態とし、複数の温度におけるガラスの粘度の計測値を求め、Vogel-Fulcher式の定数を算出して粘度曲線を作成し、各粘度における温度を算出した。
液相温度は次の方法で評価した。まず、約120×20×10mmの白金ボートに300~500マイクロメートルに揃えたガラス粉末を充填し、電気炉に投入し1600℃で30分間溶融した。その後、線形の温度勾配を有する電気炉に移し替え、20時間投入し、失透を析出させた。測定試料を室温まで空冷した後、白金ボートとガラスの界面に析出した失透を観察し、失透析出箇所の温度を電気炉の温度勾配グラフから算出して液相温度とした。また、得られた液相温度をガラスの高温粘度曲線に内挿し、液相温度に相当する粘度を液相粘度とした。
屈折率ndは、精密屈折率計(島津製作所社製KPR-2000)を用いて測定した値である。
クラック発生率は、湿度30%、温度25℃に保持された恒温恒湿槽内において、荷重1000gに設定したビッカース圧子を試料表面(光学研磨面)に15秒間打ち込み、その15秒後に圧痕の4隅から発生するクラックの数をカウント(1つの圧痕につき最大4とする)する。20回圧子を打ち込み、総クラック発生数/80×100として評価した。
平面の表面粗さRaは、JIS B0601:2001に準拠した方法で測定した値である。
端面の表面粗さRaは、JIS B0601:2001に準拠した方法で測定した値である。
うねりは、触針式の表面形状測定装置を用いて、JIS B0601:2001に記載のWCA(ろ波中心線うねり)を測定した値であり、この測定は、SEMI STD D15-1296「FPDガラス基板の表面うねりの測定方法」に準拠した方法で測定し、測定時のカットオフは0.8~8mm、LiO-Al-SiO系結晶化ガラスの引き出し方向に対して垂直な方向に300mmの長さで測定した値である。
本発明の実施例No.1~7は、平面および端面の平均表面粗さRaが小さく、うねりが小さいため、透光性の高いLiO-Al-SiO系結晶化ガラスであった。
本発明の結晶化ガラスは、石油ストーブ、薪ストーブ等の前面窓、カラーフィルターやイメージセンサー用基板等のハイテク製品用基板、電子部品焼成用セッター、光拡散板、半導体製造用炉心管、半導体製造用マスク、光学レンズ、寸法測定用部材、通信用部材、建築用部材、化学反応用容器、電磁調理用トッププレート、耐熱食器、耐熱カバー、防火戸用窓ガラス、天体望遠鏡用部材、宇宙光学用部材、ディスプレイ用部材等、化学強化用部材等に応用可能である。特に、携帯電話、デジタルカメラ、PDA(携帯端末)等のタッチパネルディスプレイのカバーガラスとして好適である。

Claims (12)

  1. 平均表面粗さRaが50nm以下の平面を有することを特徴とするLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
  2. 平均表面粗さRaが100nm以下の端面を有することを特徴とする請求項1に記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
  3. うねりが10μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
  4. 肉厚が10mm以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
  5. 板形状であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
  6. 質量%で、SiO 40~90%、Al 5~30%、LiO 1~10%、SnO 0~20%、ZrO 0~20%、MgO 0~10%、P 0~10%を含有し、β-OH値が2/mm以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
  7. 質量%で、TiO 4%以下を含有することを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
  8. 質量%で、MoO 0%超を含有することを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラス。
  9. ガラス原料を溶融、成形して、請求項1~8のいずれかに記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスを製造する方法であって、
    自由表面が存在する状態でガラスが成形されることを特徴とするLiO-Al-SiO系結晶化ガラスの製造方法。
  10. ガラスの表面の一部を成形部材に接触させた状態で成形した後、
    成形部材に接触したガラスの表面をガラス転移点以上の温度で加熱することを特徴とする請求項9に記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスの製造方法。
  11. バーナー等を用いた火炎溶融法、電気加熱による電気溶融法、レーザー照射による溶融法、プラズマによる溶融法、液相合成法、気相合成法の溶融方法のうち、いずれか一つの方法または二つ以上の方法を組み合わせて溶融することを特徴とする請求項9又は10に記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスの製造方法。
  12. オーバーフロー法、フロート法、ダウンドロー法、スロットダウン法、リドロー法、無容器法、ブロー法、プレス法、ロール法、ブッシング法、管引き法の成形法のうち、いずれか一つの方法または二つ以上の方法を組み合わせて成形することを特徴とする請求項9~11のいずれかに記載のLiO-Al-SiO系結晶化ガラスの製造方法。
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