JP2023070165A - アザビシクロ環化合物の結晶 - Google Patents

アザビシクロ環化合物の結晶 Download PDF

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章人 角内
Akito Kakuuchi
篤 平松
Atsushi Hiramatsu
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Abstract

【課題】KDM5阻害活性を有する化合物およびその医薬品原薬に適した形態の提供。【解決手段】本開示の化合物は、強いKDM5阻害活性を有することに加えて、本化合物は代謝安定性に優れ、かつ高濃度で脳内に存在することができるため、KDM5が関与する疾患の予防および/または治療剤、特に、がん、ハンチントン病、アルツハイマー病等の疾患の予防および/または治療剤として有用である。また、本開示の化合物は、医薬品の原料として有用である。【選択図】なし

Description

本開示は、[(1R,5S,6r)-6-(5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロ-1,2-オキサゾール-3-イル)-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-イル][1-(1-メチルシクロプロピル)-1H-イミダゾール-4-イル]メタノン(以下、化合物Iと略記する場合がある)の結晶形等に関する。
真核生物のDNAは、ヒストン蛋白質と複合体を形成するクロマチン構造として核内に存在する。ヒストン蛋白質は、様々な酵素を介したメチル化、アセチル化及びリン酸化などの修飾を受け、このような修飾の変化はクロマチン再構成及び転写変化を誘導することが知られている。ヒストンメチル化を含むエピジェネティクス修飾は、ヌクレオチド配列を変化させることなく、遺伝子発現を可逆的に調節し、生理反応の過程で重要な役割を果たしている。
KDM5蛋白質は、ヒストンH3蛋白質の4番目のリジン残基のトリメチル化(H3K4me3)を脱メチル化する、JARIDヒストン脱メチル化酵素蛋白質ファミリーのメンバーである。ヒトを含む哺乳類にはKDM5A、KDM5B、KDM5C、KDM5Dの4つのサブファミリーがあり、それらは保存された5つのドメイン、すなわちJmjN、ARID、JmjC、PHD、及びC5HC2ジンクフィンガーを持つ。KDM5ファミリーは、in vivoで血液細胞及び様々な臓器に広く分布し、特に癌組織で高発現することが知られている。癌細胞のエピジェネティクス異常は細胞増殖と転移に関与することが知られており、KDM5阻害剤は癌細胞の増殖や転移抑制に対して有効であることが報告されている。ヒストン修飾を含むエピジェネティクス異常の関与は、神経精神疾患及び代謝性疾患のような他の病態でも報告されている。したがって、KDM5阻害活性を有する化合物はエピジェネティクス異常を改善し、これらの疾患の予防と治療に有用である可能性がある。
一方、特許文献1には、以下の一般式(A)で示される化合物が、KDM5のようなヒストンデメチラーゼの阻害剤として有用であることが記載されている。
一般式(A):
Figure 2023070165000001
(式中、AAは、
Figure 2023070165000002
からなる群から選択され、
1Aは、アルキル、環状基などを表わし;
2Aは、任意に置換された環状基、-ORaA、-C(O)N(RaA2、またはNRaAbA;を表わし;
aAおよびRbAはそれぞれ、独立して、水素原子、任意に置換されたアルキル基、任意に置換された環状基等から選択され;
3Aは、水素原子またはアルキルを表わし;
4Aは、水素原子、アルキル、または環状基などを表わし;
5Aは、水素原子、ハロゲン、またはアルキルを表わし;
6Aは、水素原子、アルキル、または環状基などを表わし;
または、R5AおよびR6Aは一緒になって環状基を表わす(基の定義は抜粋した。))で示される化合物、またはその塩。
また、特許文献2には、一般式(B)で示される化合物が、オピエート受容体リガンドとして有用であることが記載されている。
一般式(B):
Figure 2023070165000003
(式中、ArB環は、任意にベンゾが縮合したフェニル、または5,6員ヘテロアリール環を表わし;
1Bは、種々の置換基から選択され;
2Bは、水素原子またはハロゲンを表わし;
3Bは、水素原子、ハロゲン、アルキル、環状基等を表わし;
4Bは、任意に置換したアルキル、アルケニル、またはアルキニルを表わし;
5BおよびR8Bは、それぞれ独立して、水素原子またはC1-6アルキルを表わし;
6B、R7B、R9BおよびR10Bは、それぞれ独立して水素原子を表わし;
Xは、ハロゲン、アルキル、アルコキシ等を表わす(基の定義は抜粋した)。)で示される化合物、またはその薬学的または獣医学的に許容される誘導体、もしくはそれらのプロドラッグ。
さらに、特許文献3には、一般式(C)で示される化合物が、KDM5阻害剤として有用であることが記載されている。
一般式(C):
Figure 2023070165000004
(式中、ringCは、1~4個の窒素原子、1個の酸素原子および/または1個の硫黄原子を含む、1~3個の置換基で置換されていてもよい3-10員の単環または二環式複素環等を表わし;
Cは、R1-1C-L1C-等を表わし;
Cは、R2-1C-L2C-等を表わし;
1-1Cは、1~4個の置換基で置換されていてもよいC3-8シクロアルキル等を表わし;
1Cは、結合手、またはカルボニル(-C(=O)-)を表わし;
2Cは、結合手、またはカルボニル(-C(=O)-)等を表わし;
2-1Cは、1~4個の置換基で置換されていてもよい、5または6員の単環ヘテロ環等を表わし;
3Cは、水素原子等を表わし;
Cは、0または1の整数を表わす(基の定義は抜粋した)。)で示される化合物、またはその塩。
特許文献4には、化合物Iが、KDM5阻害剤として有用であることが記載されている。
しかしながら、本開示で開示する化合物Iの結晶形は、いずれの先行技術文献にも記載されていない。
国際公開第2016/057924号パンフレット 国際公開第2000/039089号パンフレット 国際公開第2021/010492号パンフレット 国際公開第2021/223699号パンフレット
本開示の課題は、例えば、がん、ハンチントン病、アルツハイマー病等の疾患の予防および/または治療のための、KDM5阻害活性を有する化合物およびその医薬品原薬に適した形態を提供することである。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、化合物Iが、強いKDM5阻害活性を有することに加えて、代謝安定性に優れ、かつ高濃度で脳内に存在することを見出した。また、一態様において医薬品原薬に適した化合物Iの結晶形が存在することを見出した(以下、本開示の化合物と略記する場合がある)。
すなわち、本開示は、例えば、
[1] 結晶形態である化合物I、
[2] 結晶形態であって、粉末X線回折スペクトルにおいて、約7.0、約14.1および/または約21.7度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、前記[1]に記載の化合物I、
[3] 結晶形態であって、粉末X線回折スペクトルにおいて、約6.4、約17.9および/または約20.8度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、前記[1]に記載の化合物I、
[4] 前記[1]~[3]のいずれか一つに記載の化合物を含有してなる医薬組成物、
[5] 前記[1]~[3]のいずれか一つに記載の化合物を含有する、KDM5介在性疾患の予防および/または治療剤、
[6] 前記[1]~[3]のいずれか一つに記載の化合物の有効量を、KDM5介在性疾患の予防および/または治療を必要とする患者に投与することを特徴とする、KDM5介在性疾患の予防および/または治療方法、
[7] KDM5介在性疾患の予防および/または治療に使用される、前記[1]~[3]のいずれか一つに記載の化合物、または
[8] KDM5介在性疾患の予防および/または治療剤を製造するための、前記[1]~[3]のいずれか一つに記載の化合物の使用等の実施態様を提供する。
化合物Iは、KDM5が関与する疾患の予防および/または治療剤、特に、がん、ハンチントン病、アルツハイマー病等の疾患の予防および/または治療剤として有用である。また、本開示の化合物は、医薬品の原料として有用である。
図1は、化合物IのA晶の粉末X線回折スペクトルチャートを表す(縦軸は強度(counts)を表し、横軸は2θ(度)を表す。)。 図2は、化合物IのA晶の示差走査熱量測定(DSC)チャートを表す(縦軸は熱流束(W/g)を表し、横軸は温度(℃)を表す。)。 図3は、化合物IのA晶の熱重量測定(TG)チャートを表す(横軸に、縦軸は重量の変化率(Weight(%))を表し、横軸は温度(Temperature(℃))を表す。)。 図4は、化合物IのA晶の温度可変型粉末X線回折スペクトルチャートを表す(縦軸は強度(cps;count per second)を表し、横軸は2θ(度)を表す。)。 図5は、化合物IのB晶の粉末X線回折スペクトルチャートを表す(縦軸は強度(counts)を表し、横軸は2θ(度)を表す。)。 図6は、化合物IのB晶の示差走査熱量測定(DSC)チャートを表す(縦軸は熱流束(W/g)を表し、横軸は温度(℃)を表す。)。 図7は、化合物IのA晶の等温吸着曲線を表す(縦軸は乾燥質量の変化(%)を表し、横軸は相対湿度(RH)(%)を表す。)。 図8は、化合物IのB晶の等温吸着曲線を表す(縦軸は乾燥質量の変化(%)を表し、横軸は相対湿度(RH)(%)を表す。)。 図9は、特許文献4の実施例33に記載の化合物Iの粉末X線回折スペクトルチャートを表す(縦軸は強度(counts)を表し、横軸は2θ(度)を表す。)。
以下、本開示を詳細に説明する。
本開示において、[(1R,5S,6r)-6-(5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロ-1,2-オキサゾール-3-イル)-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-イル][1-(1-メチルシクロプロピル)-1H-イミダゾール-4-イル]メタノン(化合物I)は、以下の構造式
Figure 2023070165000005
(式中、記号
Figure 2023070165000006
は紙面の向こう側(すなわちα配置)に結合していることを表す。)で表される化合物を意味する。
本開示において、結晶形の相違は、特に、粉末X線回折スペクトルおよび/または示差走査熱量測定(DSC)によって区別される。
化合物IのA晶は、以下の(a)の物理化学データによって特徴づけられる。
(a)(i)図1に示される粉末X線回折スペクトル、(ii)図1に示される粉末X線回折スペクトルの回折角(2θ)と実質的に同じ回折角(2θ)に回折ピークを有する粉末X線回折スペクトル、(iii)表1に示される回折角(2θ)と実質的に同じ回折角(2θ)に回折ピークを有する粉末X線回折スペクトル、(iv)表1に示される回折角(2θ)と実質的に同じ回折角(2θ)から選択される回折角(2θ)に少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、もしくは5つ超のピークを有する粉末X線回折スペクトル、または(v)約6.4、約17.9、約18.7、約20.8、約22.1および約25.5度から選択される回折角(2θ)に少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、もしくは5つ超のピークを有する粉末X線回折スペクトル。
化合物IのB晶は、以下の(c)および(d)の少なくとも一つの物理化学データによって特徴づけられる。好ましくは、(c)および(d)の両方の物理化学データによって特徴づけられる。
(c)(i)図5に示される粉末X線回折スペクトル、(ii)図5に示される粉末X線回折スペクトルの回折角(2θ)と実質的に同じ回折角(2θ)に回折ピークを有する粉末X線回折スペクトル、(iii)表2に示される回折角(2θ)と実質的に同じ回折角(2θ)に回折ピークを有する粉末X線回折スペクトル、(iv)表2に示される回折角(2θ)と実質的に同じ回折角(2θ)から選択される回折角(2θ)に少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、もしくは5つ超のピークを有する粉末X線回折スペクトル、または(v)約7.0、約9.9、約12.2、約14.1、約16.2、約21.2、約21.7および約25.8度から選択される回折角(2θ)に少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、もしくは5つ超のピークを有する粉末X線回折スペクトル、
(d)図6に示されるDSCチャート、またはDSCにおいて(i)オンセット温度が約164℃および/または吸熱ピーク温度が約165℃である吸熱ピーク。
化合物IのA晶のある態様としては、粉末X線回折スペクトルにおいて、約6.4、約17.9および/または約20.8度の回折角(2θ)に回折ピークを有する結晶形態である。
化合物IのA晶のある態様としては、粉末X線回折スペクトルにおいて、約6.4、約17.9および約20.8度の回折角(2θ)に回折ピークを有する結晶形態である。
化合物IのA晶のある態様としては、粉末X線回折スペクトルにおいて、約6.4、約17.9および/または約20.8度の回折角(2θ)(好ましくは、約6.4度の回折角(2θ)、約17.9度の回折角(2θ)、約20.8度の回折角(2θ)、約6.4および約17.9度の回折角(2θ)、約6.4および約20.8度の回折角(2θ)、約17.9および約20.8度の回折角(2θ)、または、約6.4、約17.9および約20.8度の回折角(2θ))に回折ピークを有し、さらに約18.7、約22.1および/または約25.5度の回折角(2θ)に回折ピークを有する結晶形態である。
化合物IのA晶のある態様としては、粉末X線回折スペクトルにおいて、約6.4、約17.9および/または約20.8度の回折角(2θ)(好ましくは、約6.4度の回折角(2θ)、約17.9度の回折角(2θ)、約20.8度の回折角(2θ)、約6.4および約17.9度の回折角(2θ)、約6.4および約20.8度の回折角(2θ)、約17.9および約20.8度の回折角(2θ)、または、約6.4、約17.9および約20.8度の回折角(2θ))に回折ピークを有し、さらに約18.7、約22.1、および約25.5度の回折角(2θ)に回折ピークを有する結晶形態である。
化合物IのA晶のある態様としては、粉末X線回折スペクトルにおいて、約6.4、約17.9、約18.7、約20.8、約22.1および約25.5度の回折角(2θ)に回折ピークを有する結晶形態である。
化合物IのB晶のある態様としては、粉末X線回折スペクトルにおいて、約7.0、約14.1および/または約21.7度の回折角(2θ)に回折ピークを有する結晶形態である。
化合物IのB晶のある態様としては、粉末X線回折スペクトルにおいて、約7.0、約14.1および約21.7度の回折角(2θ)に回折ピークを有する結晶形態である。
化合物IのB晶のある態様としては、粉末X線回折スペクトルにおいて、約7.0、約14.1および/または約21.7度の回折角(2θ)(好ましくは、約7.0度の回折角(2θ)、約14.1度の回折角(2θ)、約21.7度の回折角(2θ)、約7.0および約14.1度の回折角(2θ)、約7.0および約21.7度の回折角(2θ)、約14.1および約21.7度の回折角(2θ)、または、約7.0、約14.1および約21.7度の回折角(2θ))に回折ピークを有し、さらに約9.9、約12.2および/または約25.8度の回折角(2θ)に回折ピークを有する結晶形態である。
化合物IのB晶のある態様としては、粉末X線回折スペクトルにおいて、約7.0、約14.1および/または約21.7度の回折角(2θ)(好ましくは、約7.0度の回折角(2θ)、約14.1度の回折角(2θ)、約21.7度の回折角(2θ)、約7.0および約14.1度の回折角(2θ)、約7.0および約21.7度の回折角(2θ)、約14.1および約21.7度の回折角(2θ)、または、約7.0、約14.1および約21.7度の回折角(2θ))に回折ピークを有し、さらに約9.9、約12.2、および約25.8度の回折角(2θ)に回折ピークを有する結晶形態である。
化合物IのB晶のある態様としては、粉末X線回折スペクトルにおいて、約7.0、約9.9、約12.2、約14.1、約21.7、および約25.8度の回折角(2θ)に回折ピークを有する結晶形態である。
化合物IのB晶のある態様としては、粉末X線回折スペクトルにおいて、約7.0、約9.9、約12.2、約14.1、約16.2、約21.2、約21.7および約25.8度の回折角(2θ)に回折ピークを有する結晶形態である。
化合物IのB晶のある態様としては、粉末X線回折スペクトルにおいて、約7.0、約14.1および/または約21.7度の回折角(2θ)(好ましくは、約7.0度の回折角(2θ)、約14.1度の回折角(2θ)、約21.7度の回折角(2θ)、約7.0および約14.1度の回折角(2θ)、約7.0および約21.7度の回折角(2θ)、約14.1および約21.7度の回折角(2θ)、または、約7.0、約14.1および約21.7度の回折角(2θ))に回折ピークを有し、さらに約9.9、約12.2、約16.2、約21.2、および約25.8度の回折角(2θ)に少なくとも1つ、2つ、3つ、4つもしくは5つの回折ピークを有する結晶形態である。
本開示において、化合物Iの各結晶形は、本明細書に記載された物理化学データによって特定されるものであるが、各スペクトルデータは、その性質上多少変わり得るものであるから、厳密に解されるべきではない。
例えば、粉末X線回折スペクトルデータは、その性質上、結晶の同一性の認定においては、回折角(2θ)や全体的なパターンが重要であり、相対強度は結晶成長の方向、粒子の大きさ、測定条件によって多少変わり得る。
また、DSCデータにおいても、結晶の同一性の認定においては、全体的なパターンが重要であり、測定条件によって多少変わり得る。
したがって、本開示の化合物において、粉末X線回折スペクトルまたはDSCとパターンが、それぞれ全体的に類似するものは、本開示の化合物に含まれるものである。
本明細書中、粉末X線回折パターンにおける回折角(2θ(度))及びDSC分析における吸熱ピークのオンセット温度(℃)及びピーク温度(℃)の記載は、当該データ測定法において通常許容される誤差範囲を含むことを意味し、おおよそその回折角及び吸熱ピークのオンセット温度及びピーク温度であることを意味する。例えば、粉末X線回折における回折角(2θ(度))の「約」は、ある態様としては±0.2度であり、さらに別の態様としては、±0.1度である。DSC分析における吸熱ピークのオンセット温度(℃)またはピーク温度(℃)の「約」は、ある態様としては±2℃であり、さらに別の態様としては、±1℃である。例えば、当業者であれば明らかなように、オンセット温度とピーク温度が前後することはない。
本開示において、結晶化度とは、粉末X線回折スペクトルにおいて、非晶質相であるアモルファスピークと結晶相のピークの積分強度の合計を100としたときの、結晶相ピークの割合を意味する。化合物Iの結晶化度として好ましくは30%以上であり、より好ましくは50%以上であり、特に好ましくは70%以上であり、上限としては特に限定されないが、例えば、100%以下であり、99%以下であり、90%以下である。
本開示において、結晶形態とは、実質的に結晶性の形態を表し、結晶化度が少なくとも30%以上である結晶を表す。
本開示において、本開示の化合物は、例えば以下に示す方法、これらに準ずる方法または実施例に従って製造することが出来る。なお、再結晶を行う際、種晶は、使用しても、または使用しなくてもよい。
本開示において、本開示の化合物は、例えば、本明細書中の実施例の方法で製造した化合物Iを加熱下、または常温下にて溶媒に溶解させ、その後冷却することにより得ることができる。溶媒としては、単一溶媒(例えば、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、トルエン、メチル tert-ブチルエーテル、塩化メチレン、ジメチルスルホキシド、水等)、有機溶媒(例えば、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、トルエン、メチル tert-ブチルエーテル、塩化メチレン、ジメチルスルホキシド、n-ヘキサン、n-ヘプタン等)の混合溶媒、または有機溶媒(例えば、エタノール、イソプロパノール、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド等)と水の混合溶媒を用いることができる。
[毒性]
本開示の化合物の毒性は十分に低いものであり、医薬品として安全に使用することができる。
[医薬品への適用]
本開示の化合物はKDM5阻害活性を有するので、哺乳動物、特にヒトにおいて、KDM5関連疾患を予防および/または治療するための薬剤として使用することができる。
このような疾患としては、例えば、過剰増殖性疾患、がん、脳卒中、糖尿病、肝腫大、心血管疾患、多発性硬化症、ハンチントン病、アルツハイマー病、嚢胞性線維症、ウイルス性疾患、自己免疫疾患、アテローム性動脈硬化症、血管再狭窄、乾癬、関節リウマチ、炎症性腸疾患、喘息、アレルギー疾患、炎症、神経疾患、ホルモン関連疾患、臓器移植関連症状、免疫不全疾患、破壊性骨障害、増殖性疾患、感染性疾患、細胞死に関連する疾患、トロンビン誘発性血小板凝集、肝疾患、T細胞活性化を含む病的免疫状態、中枢神経系疾患、骨髄増殖性疾患、パーキンソン病、レビー小体病、前頭側頭葉変性症、軽度認知障害、認知障害、脳血管疾患、統合失調症、うつ病、不安障害、双極性障害、自閉症スペクトラム障害、注意欠陥多動性障害、学習障害、運動障害、強迫性障害、人格障害、パーソナリティ障害、睡眠障害、せん妄、筋萎縮性側索硬化症、発達障害、知的障害、心的外傷後ストレス障害、または肝炎等を例示することができる。
特に、本開示の化合物は、がん、ハンチントン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、レビー小体病、前頭側頭葉変性症、軽度認知障害、認知障害、脳血管疾患、統合失調症、うつ病、不安障害、双極性障害、自閉症スペクトラム障害、注意欠陥多動性障害、学習障害、運動障害、強迫性障害、人格障害、睡眠障害、せん妄、筋萎縮性側索硬化症、発達障害、知的障害、心的外傷後ストレス障害、または肝炎の予防及び/又は治療に有用である。
とりわけ、本開示の化合物は、がん、またはアルツハイマー病の予防及び/又は治療に有用である。
本開示の化合物は、強いKDM5阻害活性を有することに加えて、代謝安定性に優れており、高濃度で脳内に存在することができる。
本開示の化合物の薬理活性を評価するための試験方法の例としては、マウスにおける認知機能障害の改善の評価系を含む。例えば、以下の方法を用いて、本開示の化合物による認知障害の改善を評価することができる。
マウス(16ヵ月~23ヵ月齢の雄C 57 BL/6マウス(日本チャールス・リバー株式会社))を用いる。被験物質及びその溶媒を1日1回2週間経口投与する。その後、実験装置としてビデオカメラを設置したプラスチックケージ(エコンケージCL-0107 345mm×403mm×177 mm 日本クレア株式会社)を用いた新規物体認識(NOR)試験により認知機能を評価する。評価は、実験装置の近くが約20ルクスになるように調節した暗室で行う。動物を評価環境に馴化させるために、試験開始1時間以上前にマウスを評価室に移動させる。評価期間は3日間とする。1日目の馴化では、マウスをケージ内で10分間自由に行動させる。2日目の獲得試行では、2つの同一の物体(既知物体)をケージ内に置き、同様に10分間行動させる。2つの物体はケージの長辺との平行線上に離して配置する。物体と近接する内壁との距離は10 cmとする。3日目の評価試行では、獲得試行で使用した物体の一つを色と形状の異なる新奇物体に置き換え、同様に10分間行動させる。評価試行は、獲得試行の24時間後(許容範囲:23~25時間)に開始する。獲得試行で記録したビデオ画像から、各物体に対する探索時間を測定する。既知物体及び新奇物体の探索時間から、総探索時間と新奇物体認識率を次式で計算する。
総探索時間(秒)=既知物体探索時間+新奇物体探索時間
認識指数(%)=100×(新奇物体探索時間/総探索時間)
本開示の化合物の薬理活性を評価するための試験方法としては、例えば、癌細胞におけるコロニー形成試験及び細胞毒性試験が挙げられる。例えば、癌細胞における本開示の化合物の有効性は、以下の方法を用いて評価することができる。
MCF-7、T47D及びMBA-MB-231ヒト乳癌細胞はATCCから購入し、液体窒素中で保存する。1%ペニシリン/ストレプトマイシン、2 mM L-グルタミン、10%不活化ウシ胎児血清を添加した高グルコースDulbecco改変イーグル培地(DMEM)で細胞を増殖させる。細胞はインキュベーター内で37℃、5% CO2条件下で維持して培養する。DMEMを除去し、PBSで洗浄し、適量のトリプシン/EDTAを用いて細胞を除去することにより、定期的に継代する。
コロニー形成試験では、細胞の培地中に化合物またはDMSOを添加し、1時間後に、MLG 300/6-D装置(Gilardoni)を200 V、6 mAに設定して吸収線量1 cGy/s相当のX線を曝露する。その後、細胞を回収して計数し、化合物を含む増殖培地で希釈する。細胞株の倍加時間及び放射線量に応じた適切な細胞数で4プレートに分けて播種する。播種24時間後に、化合物を含む培地を新たなDMEMと交換し、細胞を14日間インキュベートする(少なくとも六回の細胞分裂に十分な時間として)。その後、細胞をPBSで二回洗浄し、固定後、適量の0.3%メチレンブルー及び80%エタノール溶液で室温で30分間染色する。ddH2Oで細胞を2回洗浄した後、プレートをChemiDoc XRS+イメージングシステム(Bio-Rad)を用いて比色モードで撮像する。DMSO及び化合物処置細胞の生存率を用いて、X線に対する放射線量応答曲線を算出する。プレート効率及び生存率は以下のように算出する。
コロニー形成率=コロニー数/播種した細胞数
生存率=コロニー形成率/媒体処置のコロニー形成率
細胞毒性試験では、Cell Counting Kit-8(#CK 04 DOJINDO)を添付の説明書に従って使用する。MCF-7、T47D又はMDA-MB-231細胞懸濁液(5000細胞/100μL/ウェル)を96ウェルプレートに播種する。24時間後、化合物又はDMSOを培地に添加し、細胞にX線照射する。照射48時間後、10μLのCCK-8溶液をプレートの各ウェルに添加し、再度1時間インキュベートする。450 nmにおける吸光度をVICTOR2 1420リーダー(Perkin Elmer)を用いて測定する。
本開示の化合物の薬理活性を評価するための試験方法としては、例えば、初代ヒト肝細胞を用いたB型肝炎ウイルス抗原(HbsAg)抑制試験が挙げられる。例えば、初代ヒト肝細胞における本開示の化合物の有効性は、以下の方法を用いて評価することができる。
初代培養ヒト肝細胞(Bioreclamation IVT)を、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、 4 pg/mLヒト組換えインスリン、2 mM GlutaMAX, 15 mM HEPES、1μMデキサメタゾン、5%ウシ胎児血清、及び0.2%抗生物質ミックスを添加したWilliam培地Eを含むプレート用培地(Life Technologies)を用いて、コラーゲンコートしたフラスコに播種する。37℃で細胞を4時間培養後、培地を0.5%ペニシリン/ストレプトマイシン、 6.25 pg/mLヒト組換えインスリン、 6.25 pg/mLヒトトランスフェリン、 6.25 ng/mLセレン酸、1.25 mg/mLウシ血清アルブミン、 5.35 pg/mLリノール酸、 2 mM GlutaMAX, 15 mM HEPES, 0.1μMデキサメタゾン、 2%胎児ウシ血清、 2% DMSO, 0.2% 抗生物質ミックスを添加したWilliam培地Eを含有する維持培地(Life Technologies)に交換する。翌日、1細胞あたり500ゲノム相当量のB型肝炎ウイルスジェノタイプD(AD 38由来)を4% PEG 8000(Promega社製)を添加した維持培地を用いて細胞に感染させる。24時間インキュベーション後、細胞をWilliam培地Eで三回洗浄し、新鮮な維持培地を添加する。感染3日後に、感染した細胞を、段階希釈した化合物又はDMSO溶液(最終濃度の1%)を含む維持培地(Life Technologies)を用いて、コラーゲンでプレコートした96ウェルのプレートに、1ウェルあたり65000細胞/125μLで播種する。化合物又はDMSO溶液を含む培地は2~3日毎に交換する。12日間のインキュベーション後、上清中に分泌されたHBsAgを、HBsAgに特異的な捕捉及び検出抗体を使用するマルチプレックス化学発光アッセイ(MSD)により測定し、EC50値を算出する。
本開示の化合物の薬理活性を評価するための試験方法の例は、社会的敗北ストレスモデルにおける抑うつ症状の改善の評価系を含む。例えば、社会的敗北モデルにおける本開示の化合物の有効性は、以下の方法を用いて評価することができる。
被験マウスとして8週齢の雄DBA/2マウスを用い、社会的敗北ストレスを与える。高い攻撃性を示すCD-1マウスのケージに被験マウスを5分間入れる。この時点で、CD-1マウスは被験マウスを一方的に攻撃する(身体的ストレス)。5分後、CD-1マウスと被験マウスをケージ内で透明アクリルプレートで分離した状態で、24時間飼育する(精神的ストレス負荷)。これを連続5日間行う。化合物又は媒体は、身体的ストレスの2時間前に連日経口投与する。その後、社会的相互作用試験とショ糖嗜好性試験を実施する。
社会的相互作用試験では、新奇マウスとしてCD-1マウスを42 cm四方の評価箱(Target Area)に入れる。被験マウス(DBA/2マウス)を同じ箱に入れ、3分間の両マウスの接触時間をビデオトラッキングシステム(エニーメイズソフトウエア)で測定する。うつ様症状を呈すると、新規マウスとの接触時間は減少する。
ショ糖選好性試験では、1%ショ糖溶液を含むボトルと通常の水を含むボトルを同時に与える。4時間でマウスが摂取したショ糖溶液及び水の量を測定し、摂取されたショ糖溶液の割合(ショ糖嗜好性)を快感消失の指標として使用する。動物は通常甘いショ糖溶液を好むが、抑うつ状態である快感消失状態の動物はショ糖に対する嗜好性が低下する。
本開示の化合物を医薬適用するにあたっては、本開示の化合物は、単剤として用いられるだけではなく、例えば、(1)その予防、治療および/または症状改善効果の補完および/または増強、(2)その動態・吸収改善、投与量の低減、および/または(3)その副作用の軽減のために、他の有効成分、例えば、以下に列挙するような薬物等と組み合わせ、併用剤として用いてもよい。
本開示の化合物をアルツハイマー病の予防および/または治療に用いる場合、本発明化合物と組み合わせて用いられる薬物としては、例えば、対症療法剤、例えば、コリン作動性神経伝達を調節することが知られている薬剤、例えばM1及びM3ムスカリン受容体作動薬又はアロステリック調節薬、M2拮抗薬、M4作動薬又はポジティブアロステリック調節薬(PAMs)、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(テトラヒドロアミノアクリジン、ドネペジル塩酸塩、リバスチグミン等)、ニコチン受容体作動薬又はアロステリック調節薬(α7作動薬又はアロステリック調節薬、α4β2作動薬又はアロステリック調節薬等)、PPAR作動薬(PPARγ作動薬等)、5-HT4受容体作動薬又は部分作動薬、ヒスタミンH3拮抗薬、5-HT6受容体拮抗薬又は5-HT1A受容体リガンドおよびNMDA拮抗薬または調節薬、5-HT2A拮抗薬、5-HT7拮抗薬、D1作動薬又はPAMs、D4作動薬又はPAMs、D5作動薬又はPAMs、GABA-Aa5逆作動薬又はアロステリック調節薬(PAMs又はNAMs)、GABA-Aa2/3作動薬又はPAMs、mGluR2調節薬(PAMs又はNAMs)、mGluR3 PAMs、mGluR5 PAMs、PDE1阻害薬、PDE2阻害薬、PDE4阻害薬、PDE5阻害薬、PDE9阻害薬、PDE10阻害薬、GlyT1阻害薬、DAAO阻害薬、ASC1阻害薬、AMPA調節薬、SIRT1活性化薬又は阻害薬、AT4拮抗薬、GalR1拮抗薬、GalR3拮抗薬、GalR3リガンド、アデノシンA1拮抗薬、アデノシンA2拮抗薬、A2A拮抗薬又は作動薬、選択的及び非選択的ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRIs)、γセクレターゼ阻害薬又は調節薬などの疾患修飾薬、α-セクレターゼ活性化剤又は調節剤、アミロイド凝集阻害剤、アミロイド抗体、タウ凝集阻害剤又はタウリン酸化/キナーゼ阻害剤、タウ脱リン酸化/ホスファターゼ活性化剤、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ4(MKK4/MEK4/MAP2K4)阻害剤、c-JunN末端キナーゼ(JNK)阻害剤、カゼインキナーゼ阻害剤、MK2(マイトジェン活性化プロテインキナーゼ活性化プロテインキナーゼ2)阻害剤、MARK(微小管親和性調節キナーゼ)阻害剤、CDK5(サイクリン依存性キナーゼ5)阻害剤、GSK-3(グリコーゲンシンターゼキナーゼ-3)阻害剤、タウ-チュブリンキナーゼ-1(TTBK1)阻害剤等が挙げられる。
このような他の治療薬のさらなる例としては、カルシウムチャネル遮断薬、HMG-CoA(3-ヒドロキシ-3-メチル-グルタリルCoA)還元酵素阻害薬(スタチン)及び脂質低下薬、NGF(神経成長因子)模倣薬、抗酸化薬、GPR3リガンド、プラスミン活性化薬、ネプリライシン(NEP)活性化薬、IDE(インスリン分解酵素)活性化薬、メラトニンMT1及び/又はMT2作動薬、TLX/NR2E1リガンド、GluR1リガンド、RAGE(終末糖化最終産物受容体)拮抗薬、EGFR(上皮成長因子受容体)阻害薬、FPRL-1(ホルミルペプチド様受容体-1)リガンド、GABA拮抗薬、及びMICAL(molecule interacting with casL)阻害薬、例えばオキソレダクターゼ阻害薬、CB1拮抗薬/作動薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、抗炎症薬(例えば、神経炎症を増強又は軽減することにより神経炎症を治療するために使用できる薬剤)、アミロイド前駆体タンパク質(APP)リガンド、抗アミロイドワクチン及び/又は抗体、アミロイドの排出及び/又はクリアランスを促進又は増強する薬剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害薬、EP2拮抗薬、11βHSD1(ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ)阻害薬、liver X受容体(LXR)作動薬又はPAMs、リポタンパク質受容体関連タンパク質(LRP)の模倣体及び/又はリガンド及び/又は増強薬及び/又は阻害薬、ブチリルコリンエステラーゼ阻害薬、キヌレニン酸拮抗剤及び/又はキヌレニンアミノトランスフェラーゼ(KAT)阻害剤、オルファニンFQ/ノシペプチン(NOP)/オピオイド様受容体1(ORL1)拮抗薬、興奮性アミノ酸トランスポーター(EAAT)活性化薬又は阻害薬、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤1(PAI-1)阻害剤、ナイアシン及び/又はGPR109アゴニスト又はPAMsとコレステロール低下剤及び/又はHMGCoA還元酵素阻害剤(スタチン)の組み合わせ、ジメボリン又は類似剤、抗ヒスタミン薬、金属結合/キレート剤、抗生物質、成長ホルモン分泌促進剤、コレステロール低下剤、ビタミンE、コレステロール吸収阻害剤、コレステロール排出促進剤及び/又は活性化剤、インスリン分泌促進剤等が挙げられる。
本開示の化合物は、例えば、ドネペジル塩酸塩、ガランタミン臭化水素酸塩、フペルジンA、イデベノン、レバセカルニン塩酸塩、メマンチン塩酸塩、メマンチン塩酸塩/ドネペジル塩酸塩、ブタ脳タンパク由来タンパク質分解ペプチド画分、リバスチグミン酒石酸塩、タクリン塩酸塩、アデュカヌマブ(遺伝子組換え)等と併用してもよい。
本開示の化合物とこれら他の薬剤の併用剤は、1つの製剤中に両成分を配合した配合剤の形態で投与してもよく、別々の製剤を同一投与経路または別投与経路で投与する形態をとってもよい。別々の製剤を投与する場合は、必ずしも同時投与である必要はなく、必要に応じて投与に時間差を設けてもよい。また、投与に時間差を設ける場合、投与の順序に特に制限はなく、望む薬効が得られるように適宜調節すればよい。
本開示の化合物と組み合わせて用いられるこれら他の薬剤の投与量は、その薬剤もしくは類似薬の臨床上用いられている用量を基準に適宜増減することができる。また、本開示の化合物と他の薬剤との配合比は、投与対象の年齢や体重、投与方法、投与時間、対象疾患、症状等を考慮して適宜調節することができる。おおむね、1重量部の本開示の化合物に対して、他の薬剤を0.01から100重量部までの範囲で組み合わせればよい。他の薬剤は複数のものを用いてもよい。また、他の薬剤は、上に列挙したもののほか、それと同一メカニズムを有する薬物であってもよい。このような薬物には、現在までに見出されているものだけでなく、今後見出されるものも含まれる。
本開示の化合物の投与量は、年齢、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間等により異なるが、通常、成人1人当たり、1回につき、0.1mgから300mgの範囲で1日1回から数回経口投与するか、または成人1人当たり、1回につき、0.1mgから150mgの範囲で1日1回から数回非経口投与するか、または1日1時間から24時間の範囲で静脈内に持続投与すればよい。
もちろん前記したように、投与量は種々の条件により変動するので、上記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、また範囲を越えて投与の必要な場合もある。
本開示の化合物を単剤として、あるいは本開示の化合物と他の薬剤とを組み合わせた併用剤として、上記の疾患の予防および/または治療の目的に用いるには、有効成分である当該物質を、通常、各種の添加剤または溶媒等の薬学的に許容される担体とともに製剤化したうえで、全身的または局所的に、経口または非経口の形で投与される。ここで、薬学的に許容される担体とは、一般的に医薬品の製剤に用いられる、有効成分以外の物質を意味する。薬学的に許容される担体は、その製剤の投与量において薬理作用を示さず、無害で、有効成分の治療効果を妨げないものが好ましい。また、薬学的に許容される担体は、有効成分および製剤の有用性を高める、製剤化を容易にする、品質の安定化を図る、または使用性を向上させる等の目的で用いることもできる。具体的には、薬事日報社2000年刊「医薬品添加物事典」(日本医薬品添加剤協会編集)等に記載されているような物質を、適宜目的に応じて選択すればよい。
投与に用いられる剤型としては、例えば、経口投与用製剤(例:錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、経口液剤、シロップ剤、経口ゼリー剤等)、口腔用製剤(例:口腔用錠剤、口腔用スプレー剤、口腔用半固形剤、含嗽剤等)、注射用製剤(例:注射剤等)、透析用製剤(例:透析用剤等)、吸入用製剤(例:吸入剤等)、眼科用製剤(例:点眼剤、眼軟膏剤等)、耳科用製剤(例:点耳剤等)、鼻科用製剤(例:点鼻剤等)、直腸用製剤(例:坐剤、直腸用半固形剤、注腸剤等)、腟用製剤(例:腟錠、腟用坐剤等)、および皮膚用製剤(例:外用固形剤、外用液剤、スプレー剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤等)等が挙げられる。
[経口投与用製剤]
経口投与用製剤には、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、経口液剤、シロップ剤、経口ゼリー剤等が含まれる。また、経口投与用製剤には、製剤からの有効成分の放出性を特に調節していない速崩性製剤と、固有の製剤設計および製法により放出性を目的にあわせて調節した、例えば、腸溶性製剤や徐放性製剤等の放出調節製剤がある。腸溶性製剤は、有効成分の胃内での分解を防ぐ、または有効成分の胃に対する刺激作用を低減させる等の目的で、有効成分を胃内で放出せず、主として小腸内で放出するよう設計された製剤をいい、通常、酸不溶性の腸溶性基剤を用いて皮膜を施すことにより製造することができる。徐放性製剤は、投与回数の減少または副作用の低減を図る等の目的で、製剤からの有効成分の放出速度、放出時間、放出部位を調節した製剤をいい、通常、適切な徐放化剤を用いることにより製造することができる。経口投与用製剤のうち、カプセル剤、顆粒剤、錠剤等では、服用を容易にする、または有効成分の分解を防ぐ等の目的で、糖類または糖アルコール類、高分子化合物等適切なコーティング剤で剤皮を施すこともできる。
(1)錠剤
錠剤は、経口的に投与される一定の形状を有する固形の製剤であり、素錠、フィルムコーティング錠、糖衣錠、多層錠、有核錠等の一般的に錠剤と称されるもののほか、口腔内速崩錠、チュアブル錠、発泡錠、分散錠、溶解錠等が含まれる。素錠を製造する際には、通常、下記の(a)、(b)、または(c)の手法:
(a)有効成分に賦形剤、結合剤、崩壊剤等の添加剤を加えて混和して均質とし、水または結合剤を含む溶液を用いて適切な方法で粒状とした後、滑沢剤等を加えて混和し、圧縮成形する;
(b)有効成分に賦形剤、結合剤、崩壊剤等の添加剤を加えて混和して均質としたものを、直接圧縮成形するか、または予め添加剤で製した顆粒に有効成分および滑沢剤等を加えて混和して均質とした後、圧縮成形する;
(c)有効成分に賦形剤、結合剤等の添加剤を加えて混和して均質とし、溶媒で湿潤させた練合物を一定の型に流し込んで成形した後、適切な方法で乾燥する;
が用いられる。フィルムコーティング錠は、通常、素錠に高分子化合物等の適切なコーティング剤で薄く剤皮を施すことにより製造することができる。糖衣錠は、通常、素錠に糖類または糖アルコールを含むコーティング剤で剤皮を施すことにより製造することができる。多層錠は、適切な方法により、組成の異なる粉粒体を層状に積み重ね、圧縮成形することにより製造することができる。有核錠は、内核錠を組成の異なる外層で覆うことにより製造することができる。また、錠剤は、公知の適切な手法を用いて腸溶錠または徐放錠とすることもできる。口腔内速崩錠、チュアブル錠、発泡錠、分散錠、および溶解錠は、添加剤の適切な選択により錠剤に独特の機能を付与したものであり、前記錠剤の製造手法に準じて製造することができる。なお、口腔内速崩錠とは、口腔内で速やかに溶解または崩壊させて服用できる錠剤を;チュアブル錠とは、咀嚼して服用する錠剤を;発泡錠とは、水中で急速に発泡しながら溶解または分散する錠剤を;分散錠とは、水に分散して服用する錠剤を;溶解錠とは、水に溶解して服用する錠剤をいう。発泡錠は、適切な酸性物質、炭酸塩、炭酸水素塩等を添加剤に用いることにより製造することができる。
(2)カプセル剤
カプセル剤は、カプセルに充填またはカプセル基剤で被包成形した製剤であり、硬カプセル剤、軟カプセル剤等が含まれる。硬カプセル剤は、有効成分に賦形剤等の添加剤を加えて混和して均質としたもの、または適切な方法で粒状もしくは成形物としたものを、カプセルにそのまま、または軽く成形して充填することにより製造することができる。軟カプセル剤は、有効成分に添加剤を加えたものを、グリセリン、D-ソルビトール等を加えて塑性を増したゼラチン等の適切なカプセル基剤で、一定の形状に被包成形することにより製造することができる。カプセル剤は、公知の適切な手法を用いて腸溶性カプセル剤または徐放性カプセル剤とすることもでき、また、カプセル基剤に着色剤または保存剤等を加えることもできる。
(3)顆粒剤
顆粒剤は、粒状に造粒した製剤であり、一般的に顆粒剤と称されるもののほか、発泡性顆粒剤等も含まれる。顆粒剤を製造する際には、通常、下記の(a)、(b)、または(c)の手法:
(a)粉末状の有効成分に賦形剤、結合剤、崩壊剤、またはその他の添加剤を加えて混和して均質にした後、適切な方法により粒状とする;
(b)予め粒状に製した有効成分に賦形剤等の添加剤を加えて混和し、均質とする;
(c)予め粒状に製した有効成分に賦形剤等の添加剤を加えて混和し、適切な方法により粒状とする;
が用いられる。顆粒剤には、必要に応じて剤皮を施すこともでき、また、公知の適切な手法を用いて腸溶性顆粒剤または徐放性顆粒剤とすることもできる。発泡顆粒剤は、適切な酸性物質、炭酸塩、炭酸水素塩等を添加剤に用いることにより製造することができる。なお、発泡顆粒剤とは、水中で急速に発泡しながら溶解または分散する顆粒剤をいう。顆粒剤は、粒子の大きさを調節することにより、細粒剤とすることもできる。
(4)散剤
散剤は、粉末状の製剤であり、通常、有効成分に賦形剤またはその他の添加剤を加えて混和し、均質とすることにより製造することができる。
(5)経口液剤
経口液剤は、液状または流動性のある粘稠なゲル状の製剤であり、一般的に経口液剤と称されるもののほか、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、リモナーデ剤等が含まれる。経口液剤は、通常、有効成分に添加剤および精製水を加え、混和して均質に溶解、または乳化もしくは懸濁し、必要に応じて濾過することにより製造することができる。エリキシル剤とは、甘味および芳香のあるエタノールを含む澄明な液状の経口液剤をいい、通常、固形の有効成分またはその浸出液に、エタノール、精製水、着香剤、および白糖、その他の糖類、または甘味剤を加えて溶かし、濾過またはその他の方法によって澄明な液とすることにより製造することができる。懸濁剤とは、有効成分を微細均質に懸濁した経口液剤をいい、通常、固形の有効成分に懸濁化剤またはその他の添加剤と精製水または油を加え、適切な方法で懸濁し、全体を均質とすることにより製造することができる。乳剤とは、有効成分を微細均質に乳化した経口液剤をいい、通常、液状の有効成分に乳化剤と精製水を加え、適切な方法で乳化し、全体を均質とすることにより製造することができる。なお、リモナーデ剤とは、甘味および酸味のある澄明な液状の経口液剤をいう。
(6)シロップ剤
シロップ剤は、糖類または甘味剤を含む粘稠性のある液状または固形の製剤であり、シロップ用剤等が含まれる。シロップ剤は、通常、白糖、その他の糖類、もしくは甘味剤の溶液、または単シロップに有効成分を加えて溶解、混和、懸濁、または乳化し、必要に応じて混液を煮沸した後、熱時濾過することにより製造することができる。シロップ用剤とは、水を加えるとシロップ剤となる顆粒状または粉末状の製剤をいい、ドライシロップ剤とも称されることがある。シロップ用剤は、通常、糖類または甘味剤を添加剤として用いて、前記顆粒剤または散剤の製造手法に準じて製造することができる。
(7)経口ゼリー剤
経口ゼリー剤は、流動性のない成形したゲル状の製剤であり、通常、有効成分に添加剤および高分子ゲル基剤を加えて混和し、適切な方法でゲル化させ一定の形状に成形することにより製造することができる。
[口腔用製剤]
(1)口腔用錠剤
口腔用錠剤は、口腔内に適用する一定の形状の固形の製剤であり、トローチ剤、舌下錠、バッカル錠、付着錠、ガム剤等が含まれる。口腔用錠剤は、通常、前記錠剤の製造手法に準じて製造することができる。なお、トローチ剤とは、口腔内で徐々に溶解または崩壊させ、口腔、咽頭等の局所に適用する口腔用錠剤を;舌下錠とは、有効成分を舌下で速やかに溶解させ、口腔粘膜から吸収させる口腔用錠剤を;バッカル錠とは、有効成分を臼歯と頬の間で徐々に溶解させ、口腔粘膜から吸収させる口腔用錠剤を;付着錠とは、口腔粘膜に付着させて用いる口腔用錠剤を;ガム剤とは、咀嚼により有効成分を放出する口腔用錠剤をいう。
(2)口腔用スプレー剤
口腔用スプレー剤は、有効成分を霧状、粉末状、泡沫状、またはペースト状等として噴霧する製剤であり、通常、溶剤等に有効成分および添加剤を溶解または懸濁させ、必要に応じて濾過した後、液化ガスまたは圧縮ガスと共に容器に充填するか、あるいは、有効成分および添加剤を用いて溶液または懸濁液を調製し、容器に充填後、スプレー用ポンプを装着することにより製造することができる。
(3)口腔用半固形剤
口腔用半固形剤は、口腔粘膜に適用する製剤であり、クリーム剤、ゲル剤、軟膏剤等が含まれる。口腔用半固形剤は、通常、有効成分を添加剤と共に精製水およびワセリン等の油性成分で乳化するか、または高分子ゲルもしくは油脂を基剤として有効成分および添加剤と共に混和して均質とすることにより製造することができる。クリーム剤とは、水中油型または油中水型に乳化した半固形の製剤をいい、油中水型に乳化した親油性の製剤については油性クリーム剤とも呼ばれることがある。クリーム剤は、通常、ワセリン、高級アルコール等をそのまま、または乳化剤等の添加剤を加えて油相とし、別に、精製水をそのまま、または乳化剤等の添加剤を加えて水相とし、そのいずれかの相に有効成分を加えて、それぞれ加温し、油相および水相をあわせて全体が均質になるまでかき混ぜて乳化することにより製造することができる。ゲル剤とは、ゲル状の製剤をいい、水性ゲル剤、油性ゲル剤等が含まれる。水性ゲル剤は、有効成分に高分子化合物、その他の添加剤および精製水を加えて溶解または懸濁させ、加温および冷却、またはゲル化剤を加えて架橋させることにより製造することができる。油性ゲル剤は、有効成分にグリコール類、高級アルコール等の液状の油性基剤およびその他の添加剤を加えて混和することにより製造することができる。軟膏剤とは、有効成分を基剤に溶解または分散させた半固形の製剤をいい、油脂性軟膏剤、水溶性軟膏剤等が含まれる。油脂性軟膏剤は、通常、油脂類、ろう類、パラフィン等の炭化水素類等の油脂性基剤を加温して融解し、有効成分を加え、混和して溶解または分散させ、全体が均質になるまで混ぜて練り合わせることにより製造することができる。水溶性軟膏剤は、通常、マクロゴール等の水溶性基剤を加温して融解し、有効成分を加え、全体が均質になるまで混ぜて練り合わせることにより製造することができる。
(4)含嗽剤
含嗽剤は、口腔、咽頭等の局所に適用する液状の製剤であり、用時溶解して用いる固形の製剤等も含まれる。含嗽剤は、通常、有効成分に溶剤および添加剤を加えて混和して均質に溶解し、必要に応じて濾過することにより製造することができる。用時溶解して用いる固形の製剤の場合は、通常、前記錠剤または顆粒剤等の製造手法に準じて製造することができる。
[注射用製剤]
(1)注射剤
注射剤は、皮下、筋肉内、または血管等の体内組織や器官に直接投与する、溶液、懸濁液、もしくは乳濁液、または用時溶解もしくは用時懸濁して用いる固形の無菌製剤であり、一般的に注射剤と称されるもののほか、凍結乾燥注射剤、粉末注射剤、充填済みシリンジ剤、カートリッジ剤、輸液剤、埋め込み注射剤、および持続性注射剤等が含まれる。注射剤を製造する際には、通常、下記の(a)または(b)の手法:
(a)有効成分をそのまま、または有効成分に添加剤を加えたものを注射用水、他の水性溶剤、または非水性溶剤等に溶解、懸濁、もしくは乳化して均質としたものを注射剤用の容器に充填して密封し、滅菌する;
(b)有効成分をそのまま、または有効成分に添加剤を加えたものを注射用水、他の水性溶剤、または非水性溶剤等に溶解、懸濁、もしくは乳化して均質としたものを無菌濾過するか、無菌的に調製して均質としたものを注射剤用の容器に充填して密封する;
が用いられる。凍結乾燥注射剤は、通常、有効成分をそのまま、または有効成分および賦形剤等の添加剤を注射用水に溶解し、無菌濾過し、注射剤用の容器に充填した後に凍結乾燥するか、または専用容器で凍結乾燥した後に直接の容器に充填することにより製造することができる。粉末注射剤は、通常、無菌濾過により処理した後、晶析により得た粉末またはその粉末に滅菌処理した添加剤を加えて注射剤用の容器に充填することにより製造することができる。充填済みシリンジ剤は、通常、有効成分をそのまま、または有効成分および添加剤を用いて溶液、懸濁液、または乳濁液を調製して注射筒に充填することにより製造することができる。カートリッジ剤とは、薬液が充填されたカートリッジを専用の注射器に入れて用いる注射剤をいい、薬液が充填されたカートリッジは、通常、有効成分をそのまま、または有効成分および添加剤を用いて溶液、懸濁液、または乳濁液を調製してカートリッジに充填することにより製造することができる。輸液剤とは、静脈内に投与される通常100mL以上の注射剤をいう。埋め込み注射剤とは、長期にわたる有効成分の放出を目的として、皮下、筋肉内等に埋め込み用の器具を用いて、または手術により適用する固形またはゲル状の注射をいう。埋め込み注射剤は、通常、生分解性高分子化合物を用い、ペレット、マイクロスフェア、またはゲル状にすることにより製造することができる。持続性注射剤とは、長期にわたる有効成分の放出を目的として、筋肉内等に適用する注射剤をいい、通常、有効成分を植物油等に溶解もしくは懸濁するか、または生分解性高分子化合物を用いたマイクロスフェアの懸濁液とすることにより製造することができる。
[透析用製剤]
(1)透析用剤
透析用剤は、腹膜透析または血液透析に用いる液状もしくは用時溶解する固形の製剤であり、腹膜透析用剤、血液透析用剤が含まれる。腹膜透析用剤とは、腹膜透析に用いる無菌の透析用剤をいい、通常、有効成分に添加剤を加え、溶剤に溶解して一定容量としたもの、または有効成分に添加剤を加えたものを容器に充填し、密封し、必要に応じて滅菌処理を施すことにより製造することができる。用時溶解する固形の製剤の場合は、通常、前記錠剤または顆粒剤等の製造手法に準じて製造することができる。血液透析用剤とは、血液透析に用いる透析用剤をいい、通常、有効成分に添加剤を加え、溶剤に溶解して一定容量としたもの、または有効成分に添加剤を加えたものを容器に充填することにより製造することができる。用時溶解する固形の製剤の場合は、通常、前記錠剤または顆粒剤等の製造手法に準じて製造することができる。
[吸入用製剤]
(1)吸入剤
吸入剤は、有効成分をエアゾールとして吸入し、気管支または肺に適用する製剤であり、粉末吸入剤、吸入液剤、吸入エアゾール剤等が含まれる。粉末吸入剤とは、吸入量が一定となるように調製された、固体粒子のエアゾールとして吸入する製剤をいい、通常、有効成分を微細な粒子とし、必要に応じて乳糖等の添加剤と混和して均質とすることにより製造することができる。吸入液剤とは、ネブライザ等により適用する液状の吸入剤をいい、通常、有効成分に溶剤および適切な等張化剤、pH調節剤等を加え、混和して均質に溶解または懸濁し、必要に応じて濾過することにより製造することができる。吸入エアゾール剤とは、容器に充填した噴射剤と共に、一定量の有効成分を噴霧する定量噴霧式吸入剤をいう。吸入エアゾール剤は、通常、有効成分に溶剤および適切な分散剤、安定化剤等を加えて、溶液または懸濁液とし、液状の噴射剤と共に耐圧性の容器に充填し、定量バルブを装着することにより製造することができる。
[眼科用製剤]
(1)点眼剤
点眼剤は、結膜嚢等の眼組織に適用する、液状、または用時溶解もしくは用時懸濁して用いる固形の無菌製剤である。点眼剤は、通常、有効成分に添加剤を加え、溶剤等に溶解もしくは懸濁して一定容量としたもの、または有効成分に添加剤を加えたものを容器に充填することにより製造することができる。
(2)眼軟膏剤
眼軟膏剤は、結膜嚢等の眼組織に適用する半固形の無菌製剤であり、通常、ワセリン等の基剤と有効成分の溶液または微細な粉末を混和して均質とし、容器に充填することにより製造することができる。
[耳科用製剤]
(1)点耳剤
点耳剤は、外耳または中耳に投与する、液状、半固形、または用時溶解もしくは用時懸濁して用いる固形の製剤である。点耳剤は、通常、有効成分に添加剤を加え、溶剤等に溶解もしくは懸濁して一定容量としたもの、または有効成分に添加剤を加えたものを容器に充填することにより製造することができる。
[鼻科用製剤]
(1)点鼻剤
点鼻剤は、鼻腔または鼻粘膜に投与する製剤であり、点鼻粉末剤、点鼻液剤等が含まれる。点鼻粉末剤とは、鼻腔に投与する微粉状の点鼻剤をいい、通常、有効成分を適度に微細な粒子とし、必要に応じて添加剤と混和して均質とすることにより製造することができる。点鼻液剤とは、鼻腔に投与する液状、または用時溶解もしくは用時懸濁して用いる固形の点鼻剤をいい、通常、有効成分に溶剤および添加剤等を加え、溶解または懸濁し、必要に応じて濾過することにより製造することができる。点鼻液剤の添加剤としては、等張化剤、pH調節剤等を用いることができる。
[直腸用製剤]
(1)坐剤
坐剤は、直腸内に適用する、体温によって溶融するか、または水に徐々に溶解もしくは分散することにより有効成分を放出する一定の形状の半固形の製剤である。坐剤は、通常、有効成分に分散剤、乳化剤等の添加剤を加えて混和して均一としたものを、加熱する等して液状化させた基剤中に溶解または均一に分散させ、容器に一定量充填し、固化/成形することにより製造することができる。坐剤の基剤としては、通常、油脂性基剤または親水性基剤が用いられる。
(2)直腸用半固形剤
直腸用半固形剤は、肛門周囲または肛門内に適用する製剤であり、直腸用クリーム剤、直腸用ゲル剤、直腸用軟膏剤等が含まれる。直腸用半固形剤は、通常、有効成分を添加剤と共に精製水およびワセリン等の油性成分で乳化するか、または高分子ゲルもしくは油脂を基剤として有効成分および添加剤と共に混和して均質とすることにより製造することができる。直腸用クリーム剤は、通常、ワセリン、高級アルコール等をそのまま、または乳化剤等の添加剤を加えて油相とし、別に、精製水をそのまま、または乳化剤等の添加剤を加えて水相とし、そのいずれかの相に有効成分を加えて、それぞれ加温し、油相および水相をあわせて全体が均質になるまでかき混ぜて乳化することにより製造することができる。直腸用ゲル剤とは、ゲル状の製剤をいい、水性ゲル剤、油性ゲル剤等が含まれる。水性ゲル剤は、有効成分に高分子化合物、その他の添加剤および精製水を加えて溶解または懸濁させ、加温および冷却、またはゲル化剤を加えて架橋させることにより製造することができる。油性ゲル剤は、有効成分にグリコール類、高級アルコール等の液状の油性基剤およびその他の添加剤を加えて混和することにより製造することができる。直腸用軟膏剤とは、有効成分を基剤に溶解または分散させた半固形の製剤をいい、油脂性軟膏剤、水溶性軟膏剤等が含まれる。油脂性軟膏剤は、通常、油脂類、ろう類、パラフィン等の炭化水素類等の油脂性基剤を加温して融解し、有効成分を加え、混和して溶解または分散させ、全体が均質になるまで混ぜて練り合わせることにより製造することができる。水溶性軟膏剤は、通常、マクロゴール等の水溶性基剤を加温して融解し、有効成分を加え、全体が均質になるまで混ぜて練り合わせることにより製造することができる。
(3)注腸剤
注腸剤は、肛門を通して適用する液状または粘稠なゲル状の製剤であり、通常、精製水または適切な水性溶剤を用い、有効成分を溶剤等に溶解または懸濁して一定容量とし、容器に充填することにより製造することができる。注腸剤の添加剤としては、分散剤、安定化剤、pH調節剤等を用いることができる。
[腟用製剤]
(1)腟錠
腟錠は、腟に適用する、水に徐々に溶解または分散することにより有効成分を放出する一定の形状の固形の製剤であり、通常、前記錠剤の製造手法に準じて製造することができる。
(2)腟用坐剤
腟用坐剤は、腟に適用する、体温によって溶融するか、または水に徐々に溶解もしくは分散することにより有効成分を放出する一定の形状の半固形の製剤であり、通常、前記直腸用坐剤等の製造手法に準じて製造することができる。
[皮膚用製剤]
(1)外用固形剤
外用固形剤は、頭皮を含む皮膚または爪に、塗布または散布する固形の製剤であり、外用散剤等が含まれる。外用散剤とは、粉末状の外用固形剤をいい、通常、有効成分に賦形剤等の添加剤を加えて混和して均質とした後、粉末状とすることにより製造することができる。
(2)外用液剤
外用液剤は、頭皮を含む皮膚または爪に塗布する液状の製剤であり、リニメント剤、ローション剤等が含まれる。外用液剤は、通常、有効成分に溶剤、添加剤等を加え、溶解、乳化、または懸濁し、必要に応じて濾過することにより製造することができる。リニメント剤とは、皮膚にすり込んで用いる液状または泥状の外用液剤をいう。ローション剤とは、有効成分を水性の液に溶解または乳化もしくは微細に分散させた外用液剤をいい、通常、有効成分、添加剤、および精製水を用いて、溶液、懸濁液、または乳濁液として全体を均質とすることにより製造することができる。
(3)スプレー剤
スプレー剤は、有効成分を霧状、粉末状、泡沫状、またはペースト状等として皮膚に噴霧する製剤であり、外用エアゾール剤、ポンプスプレー剤等が含まれる。スプレー剤は、通常、有効成分の溶液または懸濁液を調製し、必要に応じて濾過した後、容器に充填することにより製造することができる。外用エアゾール剤とは、容器に充填した液化ガスまたは圧縮ガスと共に有効成分を噴霧するスプレー剤をいう。外用エアゾール剤は、通常、有効成分の溶液または懸濁液を調製し、液状の噴射剤と共に耐圧性の容器に充填し、連続噴射バルブを装着することにより製造することができる。外用エアゾール剤には、必要に応じて、分散剤、安定化剤等の添加剤を加えることもできる。ポンプスプレー剤とは、ポンプにより容器内の有効成分を噴霧するスプレー剤をいう。ポンプスプレー剤は、通常、有効成分および添加剤を溶解または懸濁し、充填後の容器にポンプを装着して製造することができる。
(4)軟膏剤
軟膏剤は、皮膚に塗布する、有効成分を基剤に溶解または分散させた半固形の製剤であり、油脂性軟膏剤、水溶性軟膏剤等が含まれる。油脂性軟膏剤は、通常、油脂類、ろう類、パラフィン等の炭化水素類等の油脂性基剤を加温して融解し、有効成分を加え、混和して溶解または分散させ、全体が均質になるまで混ぜて練り合わせることにより製造することができる。水溶性軟膏剤は、通常、マクロゴール等の水溶性基剤を加温して融解し、有効成分を加え、全体が均質になるまで混ぜて練り合わせることにより製造することができる。
(5)クリーム剤
クリーム剤は、皮膚に塗布する、水中油型または油中水型に乳化した半固形の製剤であり、油中水型に乳化した親油性の製剤については油性クリーム剤とも呼ばれることもある。クリーム剤は、通常、ワセリン、高級アルコール等をそのまま、または乳化剤等の添加剤を加えて油相とし、別に、精製水をそのまま、または乳化剤等の添加剤を加えて水相とし、そのいずれかの相に有効成分を加えて、それぞれ加温し、油相および水相をあわせて全体が均質になるまでかき混ぜて乳化することにより製造することができる。
(6)ゲル剤
ゲル剤は、皮膚に塗布するゲル状の製剤であり、水性ゲル剤、油性ゲル剤等が含まれる。水性ゲル剤は、有効成分に高分子化合物、その他の添加剤および精製水を加えて溶解または懸濁させ、加温および冷却、またはゲル化剤を加えて架橋させることにより製造することができる。油性ゲル剤は、有効成分にグリコール類、高級アルコール等の液状の油性基剤およびその他の添加剤を加えて混和することにより製造することができる。
(7)貼付剤
貼付剤は、皮膚に貼付する製剤であり、テープ剤、パップ剤等が含まれる。貼付剤は、通常、高分子化合物またはこれらの混合物を基剤とし、有効成分を基剤と混和し均質として、支持体またはライナー(剥離体)に展延して成形することにより製造することができる。また、放出調節膜を用いて経皮吸収型製剤とすることもできる。貼付剤には、必要に応じて、粘着剤や吸収促進剤等の添加剤を用いることもできる。テープ剤とは、ほとんど水を含まない基剤を用いる貼付剤をいい、プラスター剤、硬膏剤等が含まれる。テープ剤は、通常、樹脂、プラスチック、ゴム等の非水溶性の天然または合成高分子化合物を基剤とし、有効成分をそのまま、または有効成分に添加剤を加え、全体を均質とし、布に展延またはプラスチック製フィルム等に展延もしくは封入して成形することにより製造することができる。また、有効成分と基剤またはその他の添加剤からなる混合物を放出調節膜、支持体およびライナー(剥離体)でできた放出体に封入して成形することにより製造することもできる。パップ剤とは、水を含む基剤を用いる貼付剤をいい、通常、有効成分を精製水、グリセリン等の液状の物質と混和し、全体を均質にするか、水溶性高分子、吸水性高分子等の天然または合成高分子化合物を精製水と混ぜて練り合わせ、有効成分を加え、全体を均質にし、布等に展延して成形することにより製造することができる。
他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての技術的、科学的用語、および略語は、本発明の分野に属する当業者によって普通に理解されるものと同様の意味を有する。
また、本明細書において、明示的に引用される全ての特許文献および非特許文献もしくは参考文献の内容は、全て本明細書の一部としてここに引用し得る。
本願は、例えば、下記の実施態様を提供する。
[1] 結晶形態である[(1R,5S,6r)-6-(5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロ-1,2-オキサゾール-3-イル)-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-イル][1-(1-メチルシクロプロピル)-1H-イミダゾール-4-イル]メタノン、
[1-1] 結晶化度が30%以上である、[1]記載の化合物、
[2] 結晶形態であって、粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約7.0、約14.1および/または約21.7度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、[1]または[1-1]記載の化合物、
[3] 結晶形態であって、粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約7.0、約14.1および約21.7度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、[2]記載の化合物、
[4] さらに約9.9、約12.2および/または約25.8度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、[2]または[3]に記載の化合物、
[5] さらに約9.9、約12.2および約25.8度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、[2]または[3]に記載の化合物、
[6] 結晶形態であって、粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約7.0、約9.9、約12.2、約14.1、約21.7および約25.8度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、[2]記載の化合物、
[7] 結晶形態であって、粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約7.0、約9.9、約12.2、約14.1、約16.2、約21.2、約21.7および約25.8度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、[2]記載の化合物、
[8] 結晶形態であって、粉末X線回折スペクトルにおいて、約7.0、約9.9、約12.2、約12.9、約14.1、約15.2、約15.9、約16.2、約16.9、約17.3、約19.0、約19.3、約21.2、約21.7、約22.2、約22.4、約23.5、約24.4、約25.8、および約27.3度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、[2]記載の化合物、
[9] 図5に示される粉末X線回折スペクトルチャートを特徴とする、[2]記載の化合物、
[10] 示差走査熱量測定において、オンセット温度が約164℃またはピーク温度が約165℃である吸熱ピークを有する、[2]~[9]のいずれか一項に記載の化合物、
[11] 図6に示される示差走査熱量測定チャートを特徴とする、[10]記載の化合物、
[12] 結晶形態であって、粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約6.4、約17.9および/または約20.8度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、[1]または[1-1]記載の化合物、
[13] 結晶形態であって、粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約6.4、約17.9および約20.8度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、[12]記載の化合物、
[14] さらに約18.7、約22.1および/または約25.5度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、[12]または[13]に記載の化合物、
[15] さらに約18.7、約22.1および約25.5度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、[12]または[13]に記載の化合物、
[16] 結晶形態であって、粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約6.4、約17.9、約18.7、約20.8、約22.1および約25.5度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、[12]記載の化合物、
[17] 結晶形態であって、粉末X線回折スペクトルにおいて、約6.4、約8.4、約8.9、約12.9、約15.7、約16.0、約17.9、約18.7、約19.0、約19.4、約19.7、約20.8、約21.5、約22.1、約23.4、約24.2、約25.5、約26.1、および約27.1度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、[12]記載の化合物、
[18] 図1に示される粉末X線回折スペクトルチャートを特徴とする、[12]に記載の化合物、
[19] [1]~[18]のいずれか一項に記載の化合物を含有してなる医薬組成物、
[20] KDM5阻害剤である、[19]記載の医薬組成物、
[21] KDM5介在性疾患の予防および/または治療剤である、[19]または[20]記載の医薬組成物、
[22] KDM5介在性疾患が、がん、またはアルツハイマー病である、[21]記載の医薬組成物、
[23] [1]記載の化合物を含む、KDM5介在性疾患の予防および/または治療剤、
[24] [1]記載の化合物の有効量を、KDM5介在性疾患の予防および/または治療を必要とする患者に投与することを特徴とする、KDM5介在性疾患の予防および/または治療方法、
[25] KDM5介在性疾患の予防および/または治療に使用される、[1]記載の化合物、および、
[26] KDM5介在性疾患の予防および/または治療剤を製造するための、[1]記載の化合物の使用。
以下、実施例および生物学的実施例によって本開示を詳述するが、本開示はこれらに限定されるものではない。本開示の化合物名および実施例に示す化合物名は、IUPAC命名法に従って命名されている。IUPAC命名法に従った命名は、例えば、ACD/Name(バージョン2019.2.0はAdvanced Chemistry Development Inc.から入手可能である)、ACD/Name Batch(バージョン12.02.45356, Advanced Chemistry Development Inc.から入手可能)又はChemDraw Professional(バージョン17.1.0.105又は18.0.0.231(PERKINELMER Inc.から入手可能))を用いて行うことができる。以下の各々の実施例において、目的化合物の名称を実施例の番号の後に記載し、当該化合物を「標題化合物」と称することがある。
クロマトグラフィーによる分離の箇所およびTLCに示されているカッコ内の溶媒は、使用した溶出溶媒または展開溶媒を示し、割合は体積比を表す。
NMRの箇所に示されているカッコ内は測定に使用した溶媒を示す。
分析方法
1H-NMRスペクトルは、Bruker DRX -400装置またはVarian社(300MHz)の装置で記録され、残留軽水素溶媒(CHCl3、DMSO、メタノール)を用いて補正されている(1H-NMRではそれぞれ7.26,2.50,3.31ppm)。化学シフト(δ)は百万分率(ppm)で示し、適切なNMR溶媒ピークを基準とした。共鳴は、s(シングレット)、d(ダブレット)、t(トリプレット)、q(カルテット)、それらの組み合わせ(例えば、tdはダブレットのトリプレット)、m(マルチプレット)、またはbrs(ブロードシングレット)と記載されている。
液体クロマトグラフィー質量分析法(LCMS)では以下の条件を用いた。
カラム:Simadzu LC20-MS2010,Agilent Pursit 5 C18 20×2.0mm;カラム温度:50℃;流速:1.5mL/分;移動相(A):トリフルオロ酢酸(1.5mL)/水(4L);移動相(B):トリフルオロ酢酸(0.75mL)/アセトニトリル;グラジエント(移動相(A):移動相(B)の比率を記載):[0分]95:5;[0.70分]5:95;[1.10分]5:95;[1.11分]95:5;[1.50分]95:5;検出器:MS,UV 220, 254nm;MSイオン化法:エレクロトスプレー法(陽イオン)。
粉末X線回折スペクトルは以下の条件で測定した。
装置:リガク製 SmartLab
ターゲット:Cu
電圧:45kV
電流:200mA
走査速度:30度/min
示差走査熱量測定(DSC)は以下の条件で測定した。
装置:ティー・エイ・インスツルメント製 Discovery DSC
試料セル:アルミニウムパン
窒素ガス流量:50mL/min
熱重量測定(TG)は以下の条件で測定した。
装置:メトラー・トレド製 TGA851e 熱重量測定装置
試料セル:アルミニウムパン
窒素ガス流量:60mL/min
昇温速度:10℃/min
温度可変型粉末X線回折スペクトルは以下の条件で測定した。
装置:リガク製 SmartLab
ターゲット:Cu
電圧:45kV
電流:200mA
走査速度:30度/min
昇温速度:3℃/min
実施例1:tert-ブチル (1R,5S,6r)-6-[(E)-(ヒドロキシイミノ)メチル]-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-カルボキシラート
tert-ブチル (1R,5S,6r)-6-ホルミル-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-カルボキシラート(Pharmablock Inc., catalog No. PBG0012、レジストリー番号419572-19-3)(2 g)のエタノール溶液(20 mL)に、酢酸(0.54 mL, 1.0 当量)および酢酸カリウム (0.93 g, 1.0 当量)を加えた。次いで、その混合液にヒドロキシルアミン塩酸塩(0.47 mL)を加えた。反応液を25℃で2時間撹拌し、白色懸濁液を得た。反応混合物を水(40 mL)に注ぎ、酢酸エチルで抽出した(40 mL x 3)。有機層を合わせ、飽和食塩水(60 mL)で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した後、減圧下で濃縮し、以下の物性値を有する標題化合物を白色固体として得た。
TLC : Rf=0.4, 石油エーテル:酢酸エチル=3:1;
LC-MS:0.694 分, MS (m/z) 170.8 (M -tBu, + H+);
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ 7.16 (d, J = 7.6 Hz, 0.5H), 6.13 (d, J = 8.8 Hz, 0.5H), 3.75-3.55 (m, 2H), 3.50-3.35 (m, 2H), 2.23-2.15 (m, 0.5H), 2.10 (s, 1.5H), 1.80 (brs, 1H), 1.44 (s, 9H)。
実施例2:tert-ブチル (1R,5S,6r)-6-[(Z)-クロロ(ヒドロキシイミノ)メチル]-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-カルボキシラート
実施例1で製造した化合物(2.2g)のN,N-ジメチルホルムアミド溶液(18.4 mL)に、N-クロロスクシンイミド(1363 mg)を加え、20℃にて2時間撹拌した。反応液を水(90 mL)に注ぎ、酢酸エチル(50 mL x 3)で抽出した。有機層を飽和食塩水(50 mL x 3)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濃縮して、以下の物性値を有する標題化合物を白色固体として得た。
LC-MS:0.780 分, MS (m/z) 245.9 (M + H+);
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.42 (s, 1H), 3.75 (d, J=11.2 Hz, 1H), 3.64 (d, J = 10.8 Hz, 1H), 3.38 (d, J = 10.8 Hz, 2H), 2.06 (s, 2H), 1.76 (t, J = 3.2 Hz, 1H), 1.45 (s, 9H)。
実施例3:tert-ブチル (1R,5S,6r)-6-(5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロ-1,2-オキサゾール-3-イル)-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-カルボキシラート
実施例2で製造した化合物(100 mg)およびトリエチルアミン(0.19 mL)のN,N-ジメチルホルムアミド溶液(1.0 mL)に、2-メチルプロプ-1-エン(0.72 mL)(15 % イソプロピルエーテル溶液)を加え、20℃で16時間撹拌した。反応液を水(20 mL)に注ぎ、酢酸エチル(20 mL x 3)で抽出した。有機層を飽和食塩水(20 mL x 3)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して、以下の物性値を有する標題化合物を黄色油状物として得た(100 mg)。
LC-MS:0.852 分, MS (m/z): 281 (M + H+);
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 3.50 (d, J=11.1 Hz, 2H), 3.30 (d, J = 10.8 Hz, 2H), 2.61 (s, 2H), 1.91 (t, J = 2.7 Hz, 2H), 1.40-1.38 (m, 1H), 1.37 (s, 9H), 1.23 (s, 6H)。
実施例4:(1R,5S,6r)-6-(5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロ-1,2-オキサゾール-3-イル)-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン 塩酸塩
実施例3で製造した化合物(100 mg)の塩酸/ジオキサン溶液(2.0 mL, 4.0 M)を20℃で0.5時間撹拌した。反応液を濃縮し、以下の物性値を有する標題化合物を黄色油状物として得た(100 mg)。
LC-MS:0.232 分, MS (m/z): 181 (M -HCl+ H+);
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 9.53 (brs, 1H), 9.06 (brs, 1H), 3.40-3.26 (m, 4H), 2.60 (s, 2H), 2.12 (brs, 2H), 1.99 (m, 1H), 1.23 (s, 6H)。
実施例5:エチル 1-(1-メチルシクロプロピル)-1H-イミダゾール-4-カルボキシラート
エチル (2Z)-3-(ジメチルアミノ)-2-イソシアノアクリレート(469 mg)の1-ブタノール溶液(5.5 mL)に、1-メチルシクロプロパンアミン(300 mg)とトリエチルアミン(0.54 mL)を加えた。得られた反応液を、マイクロ波合成装置で反応させた(1時間、130℃)。TLCから反応の完了を確認した(石油エーテル:酢酸エチル=0:1、Rf=0.5)。反応液を直接濃縮し、粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(石油エーテル→40%酢酸エチル/石油エーテル)で精製して、以下の物性値を有する標題化合物を茶色油状物として得た(118 mg)。
LC-MS:0.568 分, MS (m/z) 194.9 [M+H]+ ;
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ 7.71 - 7.69 (m, 1H), 7.60 (s, 1H), 4.36 (q, J=7.0 Hz, 2H), 1.58 (s, 3H), 1.38 (t, J=7.2 Hz, 3H), 1.17 - 1.12 (m, 2H), 0.96 - 0.91 (m, 2H)。
実施例6:1-(1-メチルシクロプロピル)-1H-イミダゾール-4-カルボン酸
実施例5で製造した化合物(118 mg)のテトラヒドロフラン(1.5 mL)-水(0.50 mL)溶液に、水酸化リチウム一水和物(0.05 mL)を加えた。得られた混合物を20-25℃で2時間撹拌した。反応混合物を直接濃縮し、得られた残渣を1M塩酸でpH6まで酸性にした。その後、凍結乾燥し、以下の物性値を有する標題化合物を黄色固体として得た(100 mg)。
1H NMR (400MHz, DMSO-d6) δ 7.81 (d, J=1.0 Hz, 1H), 7.65 (s, 1H), 1.55 - 1.47 (m, 3H), 1.13 - 1.07 (m, 2H), 0.91 - 0.85 (m, 2H)。
実施例7:[(1R,5S,6r)-6-(5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロ-1,2-オキサゾール-3-イル)-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-イル][1-(1-メチルシクロプロピル)-1H-イミダゾール-4-イル]メタノン
実施例6で製造した化合物(100 mg)のN,N-ジメチルホルムアミド溶液(2 mL)に、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム 3-オキシド ヘキサフルオロホスファート(HATU、276 mg)とトリエチルアミン(0.39 mL)を加えた。反応液を20-25℃で0.5時間撹拌した。混合物に、実施例4で製造した化合物(108 mg)を加え、反応混合物を20-25℃で1時間撹拌した。LCMS において、主ピークが目的とする分子量を示すことを確認した。反応液を分取HPLCで精製した(移動相:アンモニア水溶液/アセトニトリル)。得られた分画を合わせ、濃縮し、凍結乾燥を行って、以下の物性値を有する標題化合物を黄色固体として得た(60 mg)。
LC-MS:0.606 分, MS (m/z) 329.0 [M+H+];
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ 7.68 (d, J=1.5 Hz, 1H), 7.52 (d, J=1.3 Hz, 1H), 4.70 (d, J=11.8 Hz, 1H), 4.18 (d, J=12.5 Hz, 1H), 3.92 (dd, J=4.0, 12.0 Hz, 1H), 3.60 (dd, J=4.1, 12.4 Hz, 1H), 2.63 (s, 2H), 2.07 (br dd, J=3.5, 7.0 Hz, 1H), 2.01 - 1.92 (m, 1H), 1.57 (s, 3H), 1.45 (t, J=3.4 Hz, 1H), 1.37 (s, 6H), 1.16 - 1.10 (m, 2H), 0.95 - 0.89 (m, 2H)。
本製法は、特許文献4の実施例33に記載の製法と同じである。この黄色固体について粉末X線結晶回折測定を行ったところ、ほとんどピークを有さない、なだらかなスペクトルチャートを得た(本スペクトルチャートを図9に示す。)。また、図9で示されるスペクトルチャートにおいて極わずかに検出されたピークは、図1および図5で示される粉末X線回析スペクトルチャートにおいて検出されないことから、後述する実施例8および実施例9で製造した化合物IのA晶およびB晶は新規な結晶である。
また、実施例7で製造した化合物Iの結晶化度は18%であった。
実施例7において、実施例4で製造した化合物は、フリー体として反応に付してもよい。フリー体の製造方法を以下に示す。
参考例1:(1R,5S,6r)-6-(5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロ-1,2-オキサゾール-3-イル)-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン
実施例4で製造した化合物(1.00g)にテトラヒドロフラン(10mL)と4mol/L水酸化ナトリウム水溶液(2.3mL)を加えて分液した。有機層を20%塩化ナトリウム水溶液(3mL)で分液洗浄し、テトラヒドロフラン(2mL)を加えた。硫酸ナトリウム(4g)を加えて約10分間撹拌後、ろ過してテトラヒドロフラン(5mL)で洗い込んだ。ろ液を濃縮乾固し、残渣に酢酸エチル(10mL)を加えて撹拌すると懸濁状態になった。全体の液量が約4mLになるまで減圧濃縮し、固体を室温でろ取した。酢酸エチル(1mL)でかけ洗いし、得られた固体を外温50℃で約3時間減圧乾燥することにより、以下の物性値を有する標題化合物(0.49g)を得た。
1H-NMR (CD3OD) δ 3.04 (d, J=11.6 Hz, 2H), 2.88-2.81 (m, 2H), 2.68 (d, J=0.4 Hz, 2H), 1.88-1.82 (m, 2H), 1.60 (dd, J=3.6, 3.6 Hz, 1H), 1.32 (s, 6H)。
実施例8:[(1R,5S,6r)-6-(5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロ-1,2-オキサゾール-3-イル)-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-イル][1-(1-メチルシクロプロピル)-1H-イミダゾール-4-イル]メタノンの結晶(化合物IのA晶)
実施例7で製造した化合物(420mg)を酢酸エチル(4.2mL)に60℃で溶解させた後、n-へプタン(8.4mL)を加えた。結晶の析出を確認後、室温まで自然冷却させた。溶液中の結晶をろ取し、50℃で減圧乾燥して、以下の物性値を有する標題化合物の結晶(339mg)(A晶)を得た。本結晶の結晶化度は85%であった。
1H-NMR (CDCl3) δ 7.68 (s, 1H), 7.51 (s, 1H), 4.70 (d, J=12.0 Hz, 1H), 4.18 (d, J=12.0 Hz, 1H), 3.92 (dd, J=3.0, 12.0 Hz, 1H), 3.60 (dd, J=3.0, 12.0 Hz, 1H), 2.63 (s, 2H), 2.07 - 1.96 (m, 1H), 1.99 - 1.96 (m, 1H), 1.57 (s, 3H), 1.45 (t, J=3.0 Hz, 1H), 1.37 (s, 6H), 1.15 - 1.11 (m, 2H), 0.94 - 0.90 (m, 2H)。
実施例9:[(1R,5S,6r)-6-(5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロ-1,2-オキサゾール-3-イル)-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-イル][1-(1-メチルシクロプロピル)-1H-イミダゾール-4-イル]メタノンの結晶(化合物IのB晶)
実施例7で製造した化合物(63.6g)をアセトン(450mL)に60℃で溶解させた後、n-へプタン(830mL)を加えた。結晶の析出を確認後、20℃まで自然冷却させた。溶液中の結晶をろ取し、50℃で減圧乾燥し、49.0gの結晶を得た。得られた結晶に酢酸エチル(300mL)を加え、エバポレーターで溶媒留去した。同様の作業を再度実施した。溶媒留去した固体に酢酸エチル(400mL)、続いてn-ヘキサン(100mL)を加え、70℃で2時間撹拌後、室温で12時間撹拌した。溶液中の結晶をろ取し、50℃で減圧乾燥後、以下の物性値を有する標題化合物の結晶(45.0g)(B晶)を得た。本結晶の結晶化度は85%であった。
1H-NMR (CDCl3) δ 7.68 (d, J=1.2 Hz, 1H), 7.51 (d, J=1.2 Hz, 1H), 4.71 (d, J=12.0 Hz, 1H), 4.18 (d, J=12.6 Hz, 1H), 3.92 (dd, J=3.9, 12.0 Hz, 1H), 3.60 (dd, J=3.9, 12.6 Hz, 1H), 2.63 (s, 2H), 2.10 - 2.05 (m, 1H), 2.00 - 1.95 (m, 1H), 1.57 (s, 3H), 1.45 (t, J=3.3 Hz, 1H), 1.37 (s, 6H), 1.15 - 1.10 (m, 2H), 0.94 - 0.90 (m, 2H)。
実施例9で製造した化合物は、実施例9(1)に示す方法でも製造することができる。
実施例9(1):[(1R,5S,6r)-6-(5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロ-1,2-オキサゾール-3-イル)-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-イル][1-(1-メチルシクロプロピル)-1H-イミダゾール-4-イル]メタノンの結晶(化合物IのB晶)
実施例6で製造した化合物(18.6g)に、実施例4で製造した化合物(22.0g)、2-プロパノール(66mL)、4mol/L水酸化ナトリウム水溶液(27.9mL)、および水(35.2mL)を加えて溶液とした。混合溶液に、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリドを加えた。13時間後、炭酸カリウム(6.16g)を水(30.8mL)に溶かした水溶液を加え、40~50℃で4時間撹拌した。室温まで冷却し、酢酸エチル(220mL)を加えて分液した。有機層に活性炭(2.2g)を加えて30分間撹拌し、セライト(登録商標)を通してろ過し、ろ液を濃縮乾固した。酢酸エチル(220mL)を加えて再度濃縮乾固した。ジメチルスルホキシド(143mL)を加えて減圧濃縮し、ジメチルスルホキシド(22mL)を加えた。60℃に加温して溶液とした後、40℃に冷却して実施例9で製造した化合物(化合物IのB晶)を少量加えて3時間撹拌した。水(165mL)を2時間かけて加えた後、2時間かけて0℃まで冷却した。19時間撹拌後、結晶をろ取し、水(88mL)でかけ洗いした。50℃で16時間減圧乾燥することにより、以下の物性値を有する標題化合物の結晶(28.9g)(B晶)を得た。
1H-NMR (CDCl3) δ 7.68 (d, J=1.5 Hz, 1H), 7.52 (d, J=1.3 Hz, 1H), 4.70 (d, J=11.8 Hz, 1H), 4.18 (d, J=12.5 Hz, 1H), 3.92 (dd, J=4.0, 12.0 Hz, 1H), 3.60 (dd, J=4.1, 12.4 Hz, 1H), 2.63 (s, 2H), 2.07 (br dd, J=3.5, 7.0 Hz, 1H), 2.01 - 1.92 (m, 1H), 1.57 (s, 3H), 1.45 (t, J=3.4 Hz, 1H), 1.37 (s, 6H), 1.16 - 1.10 (m, 2H), 0.95 - 0.89 (m, 2H)。
粉末X線回折スペクトルおよび示差走査熱量測定(DSC)
[化合物IのA晶]
前記条件で測定したA晶の粉末X線回析スペクトルチャートを図1に、DSCチャートを図2にそれぞれ示す。
(1)粉末X線回折スペクトル
Cu-Kα線を使用したA晶の粉末X線回折スペクトル法で得られた回折角(2θ)(度)および相対強度(%)の結果を表1に示す。
Figure 2023070165000007
(2)示差走査熱量測定(DSC)
試料量:1.2mg
昇温速度:10℃/min(25~180℃)
吸熱ピーク:第1ピーク:オンセット温度約139.5℃、ピーク温度約146.3℃;第2ピーク:オンセット温度約163.9℃、ピーク温度約165.2℃。
熱重量測定(TG、試料量:2.1mg)によれば、図3で示されるように、第1ピークにおいて、わずかな重量減少(-0.4重量パーセント)を伴った。また、温度可変型粉末X線回折スペクトル測定によれば、図4に示されるように、140℃付近でA晶からB晶への転移が認められた。すなわち、第2吸熱ピークは、化合物IのB晶のピークである。
[化合物IのB晶]
前記条件で測定したB晶の粉末X線回析スペクトルチャートを図5に、DSCチャートを図6にそれぞれ示す。
(1)粉末X線回折スペクトル
Cu-Kα線を使用したB晶の粉末X線回折スペクトル法で得られた回折角(2θ)(度)および相対強度(%)の結果を表2に示す。
Figure 2023070165000008
(2)示差走査熱量測定(DSC)
試料量:0.9mg
昇温速度:10℃/min(25~180℃)
吸熱ピーク:オンセット温度約164.3℃、ピーク温度約165.1℃。
化合物Iの効果は以下の実験によって証明することができるが、これに限定されるものではない。
[薬理実施例]
生物学的実施例1:KDM5A阻害アッセイ
384ウェルプレート(Greiner 784075)を用い、HTRF(登録商標)法(Cisbio Bioassays)にて、各化合物のKDM5Aの阻害作用を評価した。すなわち、被験化合物、対照化合物(5-(1-(シクロプロピルメチル)-1H-ピラゾール-4-イル)-6-イソプロピル-7-オキソ-4,7-ジヒドロピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-カルボニトリル:国際公開第WO2014139326号のパンフレットに記載の実施例6の化合物)及びDMSO対照(代表的な化合物濃度範囲:1 pM~10 μM、DMSOの終濃度*:0.5%)を、Echo(登録商標)音響分注システム(Labcyte)を用いて384ウェルプレートに添加した。アッセイ用緩衝液(50 mM MES、50 mM NaCl、1 mM TCEP、0.01% v/v Tween 20、0.03% BSA、pH 6.5)に溶解したKDM5Aタンパク質(Nat Chem Biol 12,531-538(2016)に従って作製)を5μLの容量でウェルに添加し(終濃度*:5~20 nM)、プレートを25℃で10~20分間インキュベートした。その後、アッセイ用緩衝液に溶解したα-ケトグルタル酸(終濃度*:100 μM)、ビオチン標識H3K4-Me3基質(Anaspec AS-64357-1; 終濃度*:200 nM)、Fe(II)SO4(終濃度*:100 μM)及びアスコルビン酸(終濃度*:2 mM)を5μLの容量でウェルに添加し、プレートを室温で20分間インキュベートした。反応は、検出用緩衝液(Cisbio Bioassays 62SDBRDF)中に溶解した抗H3K4-Me2-Eu(K)(Cisbio Bioassays 61KA2KAH;終濃度**:0.75 nM)、ストレプトアビジンXL 665(Cisbio Bioassays 610SAXLB;終濃度**:25 nM)を10μLの容量で添加して停止した。混合物を室温で30分間インキュベートした後、340 nmで励起し、620 nm及び665 nmの蛍光強度を測定した。
*終濃度: アッセイ用緩衝液10μlに基づいて算出した終濃度
**終濃度:20μLの検出用緩衝液に基づいて算出した最終濃度
個々のアッセイプレートの生データ(各ウェルにおける665 nm及び620 nmの蛍光強度)を分析した。以下の計算により蛍光強度比を算出した。
蛍光強度比 =(665 nm蛍光強度/620 nm蛍光強度)× 10000
DMSO対照(最大反応又は0%阻害とする)及び1μMの対照化合物(最小反応又は100%阻害とする)を用いて、各ウェルの阻害率を、最小及び最大対照ウェルの中央値と以下の計算値を用いて算出した。
阻害率(%)=(各ウェルの蛍光強度比- DMSO対照の蛍光強度比)/(対照化合物の蛍光強度比-DMSO対照の蛍光強度比)×100
化合物のIC 50値は、化合物濃度に対して阻害率(%)をプロットしたグラフから、4パラメータ法を用いて算出した。
[結果]
本開示の化合物のIC50値は0.03μMであり、強いKDM5阻害活性を示した。比較化合物である(R)-N-(1-(3-イソプロピル-1H-ピラゾール-5-カルボニル)ピロリジン-3-イル)シクロプロパンカルボキサミド(特許文献1(国際公開第WO2016057924号のパンフレット)に記載の実施例29の化合物)のIC50値(μM)は0.02μMであった。また、比較化合物である(5-イソプロピル-1H-ピラゾール-3-イル)((1R,5S,6r)-6-(5-メチル-4-フェニルイソキサゾール-3-イル)-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-イル)メタノン(特許文献3(国際公開第WO2021010492号のパンフレット)に記載された実施例134の化合物)のIC50値(μM)は0.03μMであった。
生物学的実施例2:ヒト肝ミクロソームにおける代謝安定性
被験物質(1μM)を0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.4)、1mMニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸、3.3 mM塩化マグネシウム及び0.5mg/mLヒト肝ミクロソーム(BD Gentest(商標)、製品番号452161)と共に全量50μLとなるように混合し、37℃でインキュベーションし、反応させた。反応開始後0分及び60分後に、200μLの氷冷した内標準物質を含むアセトニトリルを添加して反応を停止した。試験はn=2で実施した。液体クロマトグラフ質量分析計を用いて、以下の表3に示した方法で反応液中の被験物質を分析した。
Figure 2023070165000009
反応開始後0分及び60分に採取した試料のピーク面積比(被験物質/内標準物質)から、60分残存率(%)を次式により算出した。
60分残存率(%)= 60分後に採取した試料のピーク面積比/0分後に採取した試料のピーク面積比×100
[結果]
ヒト肝ミクロソームにおける代謝安定性試験において、化合物Iの60分残存率は103%であり、本開示の化合物は肝代謝に対して安定であった。
生物学的実施例3:マウスにおける脳内濃度
被験物質を1mg/kgでマウス(C57BL/6)に経口投与した。投与2時間後に脳試料を採取し、3倍容量の蒸留水でホモジナイズした。液体クロマトグラフ質量分析計を用いて、以下の表4に示した方法で被験物質を分析した。検量線用標準試料は、同一のマトリックスを用いて調製し、同様に分析した。
Figure 2023070165000010
検量線用標準試料を分析し、ピーク面積比(被験物質/内標準物質)から回帰式を算出した。測定試料についてピーク面積比を求め、回帰式に当てはめて定量値を算出した。
[結果]
マウスにおける脳内濃度試験において、化合物Iの非結合型脳中濃度は62.1ng/gであり、本開示の化合物の非結合型脳中濃度は高かった。比較化合物である(R)-N-(1-(3-イソプロピル-1H-ピラゾール-5-カルボニル)ピロリジン-3-イル)シクロプロパンカルボキサミド(特許文献1(国際公開第WO2016057924号のパンフレット)に記載の実施例29の化合物)の2時間時の非結合脳濃度は2.5ng/gであった。比較化合物である(5-イソプロピル-1H-ピラゾール-3-イル)((1R,5S,6r)-6-(5-メチル-4-フェニルイソキサゾール-3-イル)-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-イル)メタノン(特許文献3(国際公開第WO2021010492号のパンフレット)に記載の実施例134の化合物)は投与2時間後に脳では検出されなかった。
物理化学的実施例1:吸湿性評価
以下の条件で等温吸着曲線測定(DVS)を実施した。
(条件)
装置:SMS社製 DVS Intrinsic
測定温度:25℃
測定範囲:相対湿度0~95%
測定間隔:相対湿度5%
本評価の結果、図7および図8に示されるように、実施例8および実施例9で示される化合物の本評価における重量変化率は、いずれも1%未満であり、低吸湿性であることがわかった。すなわち、化合物IのA晶およびB晶は、いずれも医薬品原薬に適した形態であることがわかった。
物理化学的実施例2:競合スラリーによる収束実験
実施例8(化合物IのA晶)および実施例9(化合物IのB晶)記載の化合物の結晶について、競合スラリーによる収束実験を実施した。化合物IのA晶とB晶を各5mgずつバイアル内で混合し、各種組成の溶媒を加えた。25℃及び40℃にて3日間攪拌した後、粉末X線回折測定を行った。結果を表5に示す。表5中、IPAはイソプロパノール、THFはテトラヒドロフラン、および、H2Oは水を表わす。
Figure 2023070165000011
[結果]
本実験において、いずれの溶媒組成、および、温度においても、B晶へ収束したことから、B晶が安定晶であることが示唆された。
物理化学的実施例3:スラリー撹拌による安定晶・水和物の探索実験
実施例9(化合物IのB晶)記載の化合物の結晶を用いて、スラリー攪拌による安定晶・水和物の探索実験を実施した。化合物IのB晶を各10mgずつバイアル内に秤量し、各種組成の溶媒を加えた。25℃では6週間、50℃では5日間攪拌した後、粉末X線回折測定を行った。結果を表6に示す。表6中、IPAはイソプロパノール、THFはテトラヒドロフラン、MTBEはメチル tert-ブチルエーテル、および、H2Oは水を表わす。
Figure 2023070165000012
[結果]
本実験において、いずれの溶媒組成、および温度においても、B晶を維持した。
物理化学的実施例2および物理化学的実施例3の結果より、化合物IのA晶とB晶を比較すると、B晶が安定晶であることが示された。すなわち、化合物IのB晶が、より医薬品原薬に適した形態であることがわかった。
[製剤例]
本開示に用いられる代表的な製剤例を以下に示す。
[(1R,5S,6r)-6-(5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロ-1,2-オキサゾール-3-イル)-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-イル][1-(1-メチルシクロプロピル)-1H-イミダゾール-4-イル]メタノンのB晶(100g)、カルボキシメチルセルロースカルシウム(20g)、ステアリン酸マグネシウム(10g)および微結晶セルロース(870g)を常法により混合した後打錠することにより、一錠中に10mgの活性成分を含有する錠剤約1万錠が得られる。
化合物Iは、強いKDM5阻害活性を有することに加えて、本化合物は代謝安定性に優れ、かつ高濃度で脳内に存在することができるため、KDM5が関与する疾患の予防および/または治療剤、特に、がん、ハンチントン病、アルツハイマー病等の疾患の予防および/または治療剤として有用である。また、本開示の化合物は、医薬品の原料として有用である。

Claims (25)

  1. 結晶形態である[(1R,5S,6r)-6-(5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロ-1,2-オキサゾール-3-イル)-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-イル][1-(1-メチルシクロプロピル)-1H-イミダゾール-4-イル]メタノン。
  2. 結晶形態であって、粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約7.0、約14.1および/または約21.7度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、請求項1記載の化合物。
  3. 結晶形態であって、粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約7.0、約14.1および約21.7度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、請求項2記載の化合物。
  4. さらに約9.9、約12.2および/または約25.8度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、請求項2または3に記載の化合物。
  5. さらに約9.9、約12.2および約25.8度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、請求項2または3に記載の化合物。
  6. 結晶形態であって、粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約7.0、約9.9、約12.2、約14.1、約21.7および約25.8度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、請求項2記載の化合物。
  7. 結晶形態であって、粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約7.0、約9.9、約12.2、約14.1、約16.2、約21.2、約21.7および約25.8度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、請求項2記載の化合物。
  8. 結晶形態であって、粉末X線回折スペクトルにおいて、約7.0、約9.9、約12.2、約12.9、約14.1、約15.2、約15.9、約16.2、約16.9、約17.3、約19.0、約19.3、約21.2、約21.7、約22.2、約22.4、約23.5、約24.4、約25.8、および約27.3度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、請求項2記載の化合物。
  9. 図5に示される粉末X線回折スペクトルチャートを特徴とする、請求項2に記載の化合物。
  10. 示差走査熱量測定において、オンセット温度が約164℃またはピーク温度が約165℃である吸熱ピークを有する、請求項2に記載の化合物。
  11. 図6に示される示差走査熱量測定チャートを特徴とする、請求項10記載の化合物。
  12. 結晶形態であって、粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約6.4、約17.9および/または約20.8度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、請求項1記載の化合物。
  13. 結晶形態であって、粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約6.4、約17.9および約20.8度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、請求項12記載の化合物。
  14. さらに約18.7、約22.1および/または約25.5度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、請求項12または13に記載の化合物。
  15. さらに約18.7、約22.1および約25.5度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、請求項12または13に記載の化合物。
  16. 結晶形態であって、粉末X線回折スペクトルにおいて、少なくとも約6.4、約17.9、約18.7、約20.8、約22.1および約25.5度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、請求項12記載の化合物。
  17. 結晶形態であって、粉末X線回折スペクトルにおいて、約6.4、約8.4、約8.9、約12.9、約15.7、約16.0、約17.9、約18.7、約19.0、約19.4、約19.7、約20.8、約21.5、約22.1、約23.4、約24.2、約25.5、約26.1、および約27.1度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、請求項12記載の化合物。
  18. 図1に示される粉末X線回折スペクトルチャートを特徴とする、請求項12に記載の化合物。
  19. 請求項1~18のいずれか一項に記載の化合物を含有してなる医薬組成物。
  20. KDM5阻害剤である、請求項19記載の医薬組成物。
  21. KDM5介在性疾患の予防および/または治療剤である、請求項19記載の医薬組成物。
  22. KDM5介在性疾患が、がん、またはアルツハイマー病である、請求項21記載の医薬組成物。
  23. 請求項1記載の化合物の有効量を、KDM5介在性疾患の予防および/または治療を必要とする患者に投与することを特徴とする、KDM5介在性疾患の予防および/または治療方法。
  24. KDM5介在性疾患の予防および/または治療に使用される、請求項1記載の化合物。
  25. KDM5介在性疾患の予防および/または治療剤を製造するための、請求項1記載の化合物の使用。
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