JP2023069894A - インスリン受容体の発現促進剤 - Google Patents

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【課題】本発明は、インスリン受容体の発現を促進させる安全性に優れた食品、飲料、飼料を提供することを課題とする。【解決手段】ラクトバチルス属、ビフィドバクテリウム属の微生物を含む、インスリン受容体の発現を促進するための組成物、これを含むことを特徴とするインスリン受容体の発現を促進するための食品、飲料又は飼料、並びに、記憶障害および睡眠障害の治療および改善のための、前記組成物を含むことを特徴とする食品、飲料、飼料、又は医薬品を提供する。【選択図】図1

Description

本発明は、インスリン受容体の発現を促進させる安定性及び安全性に優れたインスリン受容体発現促進用組成物に関する。また、本発明は、該インスリン受容体発現促進組成物を含有する、食品、飲料、飼料、並びに、記憶障害および睡眠障害の治療および改善のための、前記組成物を含むことを特徴とする食品、飲料、飼料、又は医薬品に関する。
インスリン受容体は、インスリン結合部位を有するαサブユニット2個と、細胞膜貫通部位とチロシンキナーゼ活性を示す細胞質部位を有するβサブユニットがジスルフィド結合で結びついたヘテロ四量体である。インスリンがインスリン受容体αサブユニットに結合すると、βサブユニットの高次構造が変化し、チロシンキナーゼ活性が増加する。その結果、インスリン受容体基質(insulin substrate:IRS)のチロシン残基がリン酸化され、さらに、その下流の細胞内シグナル伝達分子がリン酸化され、カスケードが活性化される。シグナル伝達経路は、PI3K(phosphoinositide 3-kinase)系を活性化する経路とRas-MAPK系を活性化する経路と大きく2つの経路がある。PI3K活性化により、PDK1(PI3K-dependent kinase 1)、Akt(protein kinase B)、mTOR(mammalian target of rapamycin)、p70 S6 kinase、GSK-3β(glycogen synthase kinase-3β)などがリン酸化される。インスリン受容体シグナルの活性化により、DNAからの転写、翻訳、タンパク質合成は促進し、グリコーゲン合成、グルコース輸送をはじめ多くの細胞機能が調節される(非特許文献1および非特許文献2)。
インスリン受容体シグナルは、グルコース、アミノ酸の細胞内取り込み促進や脂質合成等の代謝調節因子として働くばかりでなく、細胞増殖、成長因子としても働いており、ひいては神経回路網の形成・維持・修復や学習・記憶といった脳の高次神経活動にも関与することが明らかになっている。
インスリン受容体シグナルと認知機能との関連については、インスリン受容体、IRS、PI3K、Aktをはじめとしたインスリン受容体シグナル伝達分子の発現量と機能は、加齢、痴呆、神経変性疾患(アルツハイマー病、レビー小体型痴呆など)において低下する一方、学習活動により、特に海馬において上昇すること(非特許文献3~9)、培養神経細胞では、インスリンは、アルツハイマー病の病因であるβアミロイド・ペプチド(Aβ)沈着とタウタンパク質の過剰リン酸化を阻止すること(非特許文献6~9)、Aβが神経細胞において、インスリンのインスリン受容体への結合を競合的に阻害すること(非特許文献10)などが報告されている。これらの知見は、インスリン受容体シグナルが、神経細胞の機能維持と病態に深く関わっている可能性を示唆している。
また、経鼻腔インスリンを用いたアルツハイマー病および軽度認知障害を対象とした第II層臨床試験が報告されており、この臨床研究では経鼻腔インスリン投与群において、認知機能や日常生活指標に有意な効果が示されている(非特許文献11)。アルツハイマー病の治療標的としてもインスリン受容体シグナルが注目されていることから、インスリン受容体発現促進剤はインスリン受容体シグナルを活性化し、認知機能改善・向上能を有することが期待される。
これまでに、インスリン受容体の発現を促進する物質としてはベルベリン(非特許文献12)などが報告されている。しかしベルベリンの副作用として、吐き気、嘔吐、過敏、鬱、呼吸困難、徐脈、心損傷、低血圧、発作、麻痺、痙攣、死亡を誘発する可能性が報告されており、健常人が予防的観点から日常的に服用することは困難であった。
そこで、本発明者らは、日常摂取しても安全であることが確認できている微生物の中から、インスリン受容体の発現量を増加させる菌を鋭意探索した結果、ラクトバチルス属、ビフィドバクテリウム属の微生物を見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明のインスリン受容体発現の評価には、キイロショウジョウバエDrosophila melanogaster(以下、ショウジョウバエという)を用いた。ショウジョウバエは、生物学の様々な分野でモデル生物として用いられている。2000年には全ゲノムが決定され、ヒトの疾患に関する遺伝子の約75%がショウジョウバエにも存在すると推定され、近年ではアルツハイマーやパーキンソン病、メタボリックシンドロームなど疾患モデルのショウジョウバエが開発されており、実際に疾患発症メカニズムの解明や、治療薬剤のスクリーニングに用いられている(非特許文献13,14)
ヒトやマウスなど哺乳類にみられるインスリン受容体シグナルは、ショウジョウバエにもよく保存されており、その特徴や分子基盤の多くが哺乳類と共通していることが明らかになっている。例えば、栄養状態に応じて体液中のインスリンレベルを変化させ、インスリン受容体シグナル、さらには細胞や組織の成長を調節すること(非特許文献15)、過食させたショウジョウバエは2型糖尿病の特徴であるインスリン抵抗性を示すこと(非特許文献16)などが報告されており、ショウジョウバエはインスリン受容体シグナルの研究のモデル生物として適していると考えられる。
日薬理誌(Folia Pharmacol. Jpn.)125,141-146(2005) Zick Y. Trends Cell Biol. 2001;11:437-441. Zhao W-Q, et al. Mol Cell Endocrinol.2001;177:125-134. Zhao W-Q, et al. Eur J Pharmacol.2004;490:71-81. Gasparini L, et al. Trends Pharmacol Sci.2002;23:288-293. Gaparini L, et al. Trends Neurosci.2003;26:404-406. Gasparini L, et al. J Neurosci.2001;21:2561-2570. Carro E, et al. Eur J Pharmacol.2004;490:127-133. Trejo JL, et al. J Mol Med.2004;82:156-162. Xie L, et al. J Neurosci.2002;22:RC221 Craft S, Baker LD, Montine TJ et al:Intracranial insulintherapy for Alzheimer's disease and amnestic mild cognitiveimpairment. Arch Neurol 69:29-38, 2012 Zhang H, Wei J, Xue R, Wu JD, Zhao W, Wang ZZ,Wang SK, Zhou ZZ, Song DQ, Wang YW, Pan HN,Kong WJ, Jiang JD: Berberine lowers blood glucose in-type 2 diabetes mellitus patients through increasing insulin receptor expression. Metabolism, 59: 285-292,2010. Pandey, U. B. & Nichols, C. D. Human Disease Models in Drosophila melanogaster and the Role of the Fly in Therapeutic Drug Discovery. Drug Deliv. 63, 411-436 (2011) Ugur, B., Chen, K. & Bellen, H. J. Drosophila tools and assays for the study of human diseases. Dis. Model. Mech. 9, 235-244 (2016). S. Oldham, E. Hafen Insulin/IGF and target of rapamycin signailing: a TOR de force in growth control. Trends Cell Biol, 13(2003), pp.79-85. Development of diet-induced insulin resistance in adult Drosophila melanogaster Biochim Biophys Acta. 2012 1822(8): 1230-1237.
本発明は、インスリン受容体の発現を促進させる安全性に優れた食品、飲料、飼料、又は医薬品を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討を進めたところ、特定の微生物がインスリン受容体の発現を促進することを見出した。
すなわち本発明は、以下の様態を含むものである。
(1)ラクトバチルス属、ビフィドバクテリウム属の微生物を含むインスリン受容体の発現を促進するための組成物。
(2)前記ラクトバチルス属がラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)種であることを特徴とする(1)に記載の組成物。
(3)前記ビフィドバクテリウム属がビフィドバクテリウム・アドレスセンティス(Bifidobacterium adolescentis)種であることを特徴とする(1)に記載の組成物。
(4)前記ラクトバチルス属が、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)SBT2227株から選択される1つ以上であることを特徴とする(1)または(2)に記載の組成物。
(5)前記ビフィドバクテリウム属が、ビフィドバクテリウム・アドレスセンティス(Bifidobacterium adolescentis)SBT0430株、SBT2786株から選択される1つ以上であることを特徴とする(1)または(3)に記載の組成物。
(6)動物の臓器におけるインスリン受容体の発現を促進するための、(1)乃至(5)のいずれかに記載の組成物。
(7)臓器が脳である、(6)に記載の組成物。
(8)(1)乃至(7)のいずれかに記載の組成物を含むことを特徴とする、インスリン受容体の発現を促進するための食品、飲料、又は飼料。
(9)記憶障害および睡眠障害からなる群から選択される障害の治療および改善のための、(1)乃至(7)のいずれかに記載の組成物を含むことを特徴とする食品、飲料、飼料、又は医薬品。
(10)記憶障害を有すると診断されていない対象において記憶を改善するための又は睡眠障害を有すると診断されていない対象において睡眠を促進するための、(1)乃至(7)のいずれかに記載の組成物を含むことを特徴とする食品、飲料、又は飼料。
本発明は、インスリン受容体の発現を促進させる安定性及び安全性に優れたインスリン受容体発現促進組成物を提供するものである。また、該インスリン受容体発現促進組成物を含有する、食品、飲料、飼料、又は医薬品を提供するものである。
本発明によって見出されたインスリン受容体の発現促進効果の高い菌であるBifidobacterium adolescentis SBT2786株とLactobacillus plantarum SBT2227株のインスリン受容体の発現促進効果を示した図。 インスリン受容体を強制発現させたショウジョウバエの睡眠を示した図。インスリン受容体の発現が促進されることにより睡眠が促進される。 インスリンシグナルを活性化させたショウジョウバエの睡眠を示した図。インスリン受容体が活性化されることにより睡眠が促進される。 本発明のインスリン受容体発現促進剤であるBifidobacterium adolescentis SBT2786株、Lactobacillus plantarum SBT2227株のショウジョウバエの睡眠を示した図。 脳のインスリン受容体を不活性化させたショウジョウバエの睡眠を示した図。インスリン受容体が不活性化されることにより、本発明のインスリン受容体発現促進剤の睡眠増加効果が抑制される。
本発明のインスリン受容体発現促進組成物について説明する。本発明の有効成分はビフィドバクテリウム・アドレセンティス種、ラクトバチルス・プランタルム種に属する微生物であって、インスリン受容体発現促進効果を有するものであればいずれも利用することができる。
ビフィドバクテリウム・アドレセンティス種、ラクトバチルス・プランタルム種であればその菌株は特に限定されないが、好ましい例としてはビフィドバクテリウム・アドレスセンティス(Bifidobacterium adolescentis)種ではSBT0430株、SBT2786株が、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)種ではSBT2227株が挙げられる。
これら微生物は、単独で用いることもできるし、適宜2種以上の菌を組み合わせて用いても良い。
微生物の培養は、各微生物に適した条件を採用すればよい。例えば、培地には乳培地又は乳成分を含む培地、これを含まない半合成培地、化学的に規定された合成培地等種々の培地を用いることができる。このような培地としては、還元脱脂乳やMRS培地などを例示することができる。
得られた培養物から遠心分離などの集菌手段によって分離された菌体をそのまま本発明の有効成分として用いることができる。生菌体が好ましいが、菌体に何らかの処理を加ええても良く、濃縮、乾燥、凍結乾燥などした菌体を用いることもできるし、加熱乾燥などにより死菌体にしても良く、その処理方法は特に限定されるものではない。
菌体として純粋に分離されたものだけでなく、培養物、懸濁物、その他の菌体含有物や、菌体を酵素や物理的手段を用いて処理した細胞質や細胞壁画分も用いることができる。
培養物などの形態としては、合成培地であるMRS培地(DIFCO社製)、還元脱脂乳培地など一般的に乳酸菌の培養に用いられる培地を用いた培養物だけでなく、チーズ、発酵乳、乳酸菌飲料などの乳製品などを例示することができるが、特に限定されるものではない。
本発明のインスリン受容体発現促進組成物は、食品、飲料、飼料等に添加することができる。その際、本発明のインスリン受容体発現促進組成物はそのまま使用してもよいが、食品、飲料、及び飼料に通常含まれる他の原材料とともに使用できることから、常法に従い、粉末剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、ドリンク剤等に用いることも出来る。また、ヨーグルト、乳飲料、ウエハース等の飲食品、及び飼料に配合することも可能である。
本発明のインスリン受容体発現促進組成物は、一実施態様において、糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満症、記憶障害、睡眠障害などの疾患又は障害を有すると診断されていない対象が摂取するための食品、飲料、飼料等に添加することができる。
本発明のインスリン受容体発現促進組成物は、動物の臓器におけるインスリン受容体の発現を促進する。動物としては、鳥類、魚類、及び哺乳類が好ましく、特に、哺乳類の中でもヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジが好ましい。臓器としては、脳、眼球、内分泌組織、肺臓、近位消化管、胃腸管、肝臓、膵臓、腎臓、骨格筋、脂肪組織が好ましい。
(インスリン受容体発現促進組成物の評価方法)
本発明のインスリン受容体発現促進組成物のインスリン発現促進作用は、実施例に記載したショウジョウバエを対象とした動物試験により確認することができる。
以下に実施例、試験例を示し、本発明について詳細に説明するが、これらは単に例示するのみであり、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
(試験例1)微生物のインスリン受容体発現促進作用
1.試験方法
(1)供与菌
本発明によって見出されたBifidobacterium adolescentis SBT2786株、Lactobacillus plantarum SBT2227株のインスリン受容体の発現促進効果をRNAシーケンスにて調べた。
(2)インスリン受容体発現の評価
乳酸菌等の凍結乾燥粉末を終濃度10mg/mlとなるよう餌に混ぜて調整してショウジョウバエに投与した。コントロールとしては乳酸菌等を添加しない餌を投与した。投与4日目のハエを各群32匹ずつをマイクロチューブに回収した。回収したハエはマイクロチューブごと液体窒素で凍結し、ボルテックスミキサーで撹拌して頭部から胴体、羽などの付属物を分離した後、目開き710μmと425μmの篩を使用して頭部のみを回収した。回収した頭部はマイクロチューブに入れ、100μlのRNAiso Plus(Takara, Tokyo)を加えてペッスルで十分に磨り潰した。RNA抽出は、キットのプロトコールを一部改変して行った。頭部を磨り潰した溶液にRNAiso Plusを900μl加えた後、遠心分離(12,000g, 5min, 4℃)で組織細片を沈殿させ、上清を新しいチューブに回収した。クロロホルムを200μl加えて撹拌し、5分静置した後、遠心分離(12,000g, 10 min, 4℃)をした。下層のクロロホルム層をピペットで除去し、残った上層に等量のクロロホルムを添加して撹拌した後、再度遠心分離(12,000g, 10min, 4℃)をした。中間層が入らないように上層のみを丁寧に新しいチューブに回収し、そこにイソプロパノールを1 ml添加した。十分に撹拌して10分間静置した後、遠心分離(12,000g, 5min, 4℃)した。ペレットを崩さないように溶液を除去し、75%冷エタノールで2回洗浄した。10分程度風乾し、100μlのDNase, RNase free waterに溶解した。抽出したRNA溶液はBioanalyserでRNA品質を確認した後、RNA-seqに供与した。
2.試験結果
コントロール群のインスリン受容体の発現量を1とした時、Bifidobacterium adolescentis SBT2786株、Lactobacillus plantarum SBT2227株のそれぞれのインスリン受容体の発現量の相対値を図1に示す。Bifidobacterium adolescentis SBT2786株のインスリン受容体の発現量はコントロール群に比べて2.1倍、Lactobacillus plantarum SBT2227株は2.4倍と有意な増加が認められた。これらの微生物は、顕著なインスリン受容体発現促進効果を有する菌株であることが示された。
(試験例2)インスリン受容体を強制発現させたショウジョウバエの睡眠
本発明によって見出されたBifidobacterium adolescentis SBT2786株、Lactobacillus plantarum SBT2227株を摂取することにより、インスリン受容体の発現が有意に上昇することを見出した(試験例1)。この結果を受けて、インスリン受容体の発現上昇が睡眠量の増加に作用するのかについて検討した。
1.試験方法
(1)インスリン受容体を強制発現させたショウジョウバエ
RU486に依存してGal4転写活性を有するGeneSwitch系統を発現誘導に用いた。発現誘導にはRU486を最終濃度500μMを餌に混ぜてハエに投与した。コントロールには溶媒(エタノール)を与えた。テストにはGeneSwitch-Gal4、UAS系統を交配したF1世代のメス個体を用いた。ハエ系統は、温度23℃、明暗周期(12h Light/12h Dark)に制御したインキュベーター(MIR-254 SANYO)内で飼育した。
(2)睡眠促進作用の評価
ショウジョウバエを、1% Bactagar、5% スクロースから構成される飼料とともに直径5mmのガラスチューブに入れ、ショウジョウバエの行動を測定するDrosophila activity monitoring system(Trikinetics社製)で3日間行動を測定した。ショウジョウバエでは、不動期間(動かない期間)が5分以上の場合を“睡眠”と定義されている。そこで、測定3日目の夜間の最初の3時間(概日時間でZT12~15)の睡眠量について試験群とコントロール群を比較した。
2.試験結果
インスリン受容体を強制発現したハエでは睡眠量が有意に増加した(図2)。
(試験例3)インスリンシグナルを脳内で活性化させたショウジョウバエの睡眠
人為的にインスリン受容体を脳内で発現させた場合、睡眠を促進させることができる(実験例2)。一方で、菌体を投与した場合と比べて睡眠促進効果が弱かった。その理由として、内在性のインスリンによる受容体の活性化が限定的な可能性がある。そこで、常時活性化型のインスリン受容体を脳で発現させた場合の睡眠効果を検討した。
1.試験方法
・常時活性化型インスリン受容体を脳内で発現させたショウジョウバエ
神経細胞特異的にInRactを発現させたハエの睡眠を調べた。脳内にGal4転写活性を有するGal4系統のハエを使用した。ハエは、温度23℃、明暗周期(12h Light/12hDark)に制御したインキュベーター(MIR-254 SANYO)内で飼育した。
・睡眠行動の測定とデータ解析
試験例2と同様の方法で行った。
2.試験結果
インスリンシグナルを脳内で活性化させたショウジョウバエでは、活性化していないハエと比較して、より強い睡眠増加効果が得られた(図3)。
(試験例4)インスリン受容体の発現促進作用を持つ菌の睡眠促進作用
上記試験例1で見出したインスリン受容体の発現促進作用を持つ菌が、睡眠促進作用があるかを検討した。
1.試験方法
(1)供与菌
高いインスリン受容体の発現促進効果を持つ菌として、Bifidobacterium adolescentis SBT2786株、Lactobacillus plantarum SBT2227株を用いた。
(2)睡眠促進作用の評価
野生型のショウジョウバエCS2202u系統を、温度25℃で12時間ごとの明暗周期下で飼育した、羽化後5日の未交尾のメスの個体を評価に用いた。ショウジョウバエに、上記(1)の菌を投与した。睡眠の評価は試験例2と同様とした。
2.試験結果
図4に、Bifidobacterium adolescentis SBT2786株、Lactobacillus plantarum SBT2227株の睡眠量を示す。Bifidobacterium adolescentis SBT2786株、Lactobacillus plantarum SBT2227株を摂取した群はコントロール群と比較して、睡眠量が有意に増加した。
(試験例5)インスリン受容体を不活性化させたショウジョウバエの睡眠
1.試験方法
・インスリン受容体を不活性化させたショウジョウバエ
Gal4/UAS法を用いて、脳内の細胞群特異的に常時不活性型InR(InRDN)を発現させたハエに、本発明によって見出されたLactobacillus plantarum SBT2227株を投与し、睡眠を調べた。ハエ系統は、温度23℃、明暗周期(12h Light/12h Dark)に制御したインキュベーター(MIR-254 SANYO)内で飼育した。
・睡眠行動の測定とデータ解析
試験例2と同様の方法で行った。
2.試験結果
InRDNを脳内で発現させたハエに、本発明によって見出されたLactobacillus plantarum SBT2227株を投与し睡眠行動を調べた結果、睡眠量の増加は観察されなかった(図5)。
本発明は、インスリン受容体発現を促進する新たな組成物として、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス種、ラクトバチルス・プランタルム種に属する微生物、該微生物を含む組成物と該組成物を含む食品、飲料、及び飼料を提供するものである。また、前記組成物を含むことを特徴とする、記憶障害および睡眠障害の治療および改善のための食品、飲料、飼料、又は医薬品を提供する。本発明の組成物等を摂取することによりインスリン受容体発現を促進し、記憶の改善や睡眠の促進をすることができる。

Claims (10)

  1. ラクトバチルス属、ビフィドバクテリウム属の微生物を含むインスリン受容体の発現を促進するための組成物。
  2. 前記ラクトバチルス属がラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)種であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
  3. 前記ビフィドバクテリウム属がビフィドバクテリウム・アドレスセンティス(Bifidobacterium adolescentis)種であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
  4. 前記ラクトバチルス属が、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)SBT2227株から選択される1つ以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の組成物。
  5. 前記ビフィドバクテリウム属が、ビフィドバクテリウム・アドレスセンティス(Bifidobacterium adolescentis)SBT0430株、SBT2786株から選択される1つ以上であることを特徴とする請求項1または3に記載の組成物。
  6. 動物の臓器におけるインスリン受容体の発現を促進するための、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の組成物。
  7. 臓器が脳である、請求項6に記載の組成物。
  8. 請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の組成物を含むことを特徴とする、インスリン受容体の発現を促進するための食品、飲料、又は飼料。
  9. 記憶障害および睡眠障害からなる群から選択される障害の治療および改善のための、請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の組成物を含むことを特徴とする食品、飲料、飼料、又は医薬品。
  10. 記憶障害を有すると診断されていない対象において記憶を改善するための又は睡眠障害を有すると診断されていない対象において睡眠を促進するための、請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の組成物を含むことを特徴とする食品、飲料、又は飼料。
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