JP2023068206A

JP2023068206A - 動物成長促進剤及び家畜用飼料

Info

Publication number: JP2023068206A
Application number: JP2020047491A
Authority: JP
Inventors: 俊佑李; Chun-Yu Lee; 洋一郎川村; Yoichiro Kawamura
Original assignee: KAWAMURA TSUSHO KK; University of Tokyo NUC
Current assignee: KAWAMURA TSUSHO KK; University of Tokyo NUC
Priority date: 2020-03-18
Filing date: 2020-03-18
Publication date: 2023-05-17
Also published as: WO2021187516A1

Abstract

【課題】従来の抗生物質の代替となり得る、抗生物質フリーの新規な家畜用成長促進剤及び家畜飼料の提供。【解決手段】ウルシ科樹木の抽出物を含む動物成長促進剤。前記抽出物が、ウルシ科樹木由来のタンニンを５０～１００重量％の範囲で含有するのが好ましい。前記の動物成長促進剤を添加剤として含む、家畜用飼料。【選択図】なし

Description

本発明は、動物成長促進剤、これを含む家畜用飼料、及び家畜の飼育方法に関する。

抗生物質は、本来、生物の疾病の治療を目的として開発された医薬品であるが、７０年前ほど前に、家畜の飼料にある種の抗生物質添加することによって、家畜の健康状態を維持できるのみならず、栄養成分の利用効率が大きく増大することが発見された。これ以降、世界中であらゆる家畜飼料の添加剤として大きな役割を果たしており（例えば、特許文献１）、現在では、特に飼料環境が恵まれていない発展途上国等の畜産業においては欠かせない存在となっている。また、人工的に飼育された早期離乳豚においては、抗生物質を含む飼料を与えることにより、腸内病原体から保護することができるとともに、成長促進効果も得られることが知られている。

一方で、近年、家畜の飼料に抗菌性物質を使用すると、病原菌に薬剤耐性が生じ、疾病治療の際に抗生物質等の効用が低くなるという問題が指摘されている。そのため、欧州諸国では、２００６年から飼料用抗生物質の使用が全面禁止となり、米国でも２０１５年から飼料効率改善と成長促進を目的とした抗生物質の飼料への添加が禁止されるに至っている。しかしながら、これまでの抗生物質の代替となる飼料添加物が未だ実用化に至っておらず、家畜の成長を即し得る代替物の開発が望まれている。

特開平３－１１９９７１公報

そこで、本発明は、従来の抗生物質の代替となり得る、抗生物質フリーの新規な家畜用成長促進剤及び家畜飼料を提供することを課題とするものである。

本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った結果、ケブラチョに代表されるウルシ科樹木の抽出物を家畜飼料に添加することにより、家畜の成長促進或いは体質改善の効果が得られることを新規に見出し、本発明を完成するに至った。

すなわち、本発明は、一態様において、動物成長促進剤を対象とし、
＜１＞ウルシ科樹木の抽出物を含む動物成長促進剤；
＜２＞前記抽出物が、ウルシ科樹木由来のタンニンを５０～１００重量％の範囲で含有する、上記＜１＞に記載の動物成長促進剤；
＜３＞前記抽出物が、ウルシ科樹木の芯材から抽出したエキスである、上記＜１＞又は＜２＞に記載の動物成長促進剤；及び
＜４＞前記ウルシ科樹木が、バランサエ（ｓｃｈｉｎｏｐｓｉｓｂａｌａｎｓａｅ）、ラレントジイ（ｓｃｈｉｎｏｐｓｉｓｌｏｒｅｎｔｚｉ）、又はそれらの組み合わせである、上記＜１＞～＜３＞のいずれか１に記載の動物成長促進剤を提供するものである。

また、別の態様において、本発明は、上記動物成長促進剤を含む家畜用飼料及び家畜の飼育方法を対象とし

＜５＞上記＜１＞～＜４＞のいずれか１に記載の動物成長促進剤を添加剤として含む、家畜用飼料；
＜６＞前記動物成長促進剤の含有量が、飼料全体重量に対して０．２～１．０重量％である、上記＜５＞に記載の家畜用飼料；
＜７＞前記家畜がブタである上記＜５＞又は＜６＞に記載の家畜用飼料；
＜８＞上記＜５＞～＜７＞のいずれか１に記載の家畜用飼料を家畜に投与することを含む、家畜の飼育方法；及び
＜９＞前記家畜が、生後２か月以上経過したブタ又は体重３５ｋｇ以上のブタである、上記＜８＞に記載の飼育方法を提供するものである。

本発明によれば、従前の抗生物質の代替となり得る新規な動物成長促進剤を提供することができ、これにより抗生物質フリーの家畜飼料を提供することができる。

また、本発明の動物成長促進剤及び家畜飼料は、生後２か月未満の子豚へ与えた場合に得られる下痢止め等の体質改善効果に加えて、体重３５ｋｇ以上の成長豚や飼育豚に投与することで成長促進効果が得られるという、これまでにない効果を奏するものである。

以下、本発明の実施形態について説明する。本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施することができる。

１．本発明の動物成長促進剤
本発明の動物成長促進剤は、ウルシ科樹木の抽出物を含むことを特徴とするものである。これまで、ウルシ科樹木の抽出物は、植物タンニンを豊富に含むことから、主として皮革工業の鞣し加工用途に用いられていたが、本発明では、驚くべきことに、ケブラチョ等のウルシ科樹木の抽出物を家畜の飼料に添加することで、成長促進等の効果を有することを見出したものである。かかる動物成長促進剤は、後述のように、主として家畜用飼料の添加剤として利用されることが想定されているが、動物に経口摂取させる態様であれば、必ずしもそのような利用形態のみに限られるものではない。

本明細書において、ウルシ科樹木は、タンニン成分を抽出可能なものであれば広く用いることができるが、典型的には、バランサエ（ｓｃｈｉｎｏｐｓｉｓｂａｌａｎｓａｅ）、ラレントジイ（ｓｃｈｉｎｏｐｓｉｓｌｏｒｅｎｔｚｉ）、又はそれらの組み合わせであることができる。これらは、広く「ケブラチョ（Ｑｕｅｂｒａｃｈｏ）」と呼ばれる種類の樹木であり、南米アルゼンチン北部からパラグアイ西部にかけの広大な地域に分布していることが知られている。幹部分が固く、比重が１．１～１．４程度のものが好ましい。

ケブラチョに代表されるウルシ科樹木では、通常、その芯材（幹部分）にタンニンを豊富に含むことが知られているため、上記抽出物は、ウルシ科樹木の芯材から抽出したエキスであることが好ましい。場合により、樹皮や枝、葉、実、莢、根等のその他の部位から抽出したエキスを含むこともできる。これら抽出エキスには、主成分として植物タンニンが含まれる。植物タンニンは、植物中に含まれるポリフェノール類の一種であり、植物組織の液胞の中に溶液状態で存在している（カテキンと呼ばれる場合もある）。

ウルシ科樹木の抽出物に含まれる植物タンニンは、カテコール系と呼ばれる縮合型タンニンに属する。これらカテコール系タンニンは、溶液の色が赤～赤褐色であり、糖分が比較的少なく、凝集力が強いという特徴を有する。また、ホルムアルデヒドや塩酸で煮沸した際には、沈殿して樹脂状の固形物を形成することができる。

本発明におけるウルシ科樹木の抽出物は、好ましくは、当該ウルシ科樹木由来のタンニン成分を５０～１００重量％の範囲、より好ましくは、７０～１００重量％の範囲で含有することができる。また、当該抽出物は、粉末状であることが好ましい。

ウルシ科樹木から抽出物を得る手法としては、公知のものを用いることができるが、典型的には、芯材や樹皮等（好ましくは、チップ化したもの）を水で煮沸し、不溶性成分を水溶化するために亜硫酸で処理した後、得られた溶液を乾燥することで抽出物を得ることができる。得られた乾燥物は、粉末状であることが好ましい。なお、粉末化をし易くする目的で、乾燥工程前に、植物性油脂等を添加することができる。

本発明の動物成長促進剤は、上記ウルシ科樹木の抽出物の抽出物のみからなっていてもよいし、他の一種以上の担体を含む混合物であってもよい。かかる担体としては、例えば、大豆粉、小麦粉、炭酸カルシウム、米ぬか、ふすま、トウモロコシ粉、コーンスターチ、籾殻、魚粉、酵母菌体等を挙げることができる。また、油脂として、動物性油脂、或いは、大豆油、トウモロコシ油、カノーラ油、ヤシ油、オリーブ油等の植物性油脂を添加することもできる。

また、本発明の動物成長促進剤を家畜に投与する際には、直接経口投与してもよいが、飼料あるいは飲料水に本剤を配合して、採餌あるいは飲水にともなって本剤が家畜に摂取されるようにすることができる。そのため本発明の動物成長促進剤は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、丸剤、ペースト、シロップ等の適宜の経口投与剤形に、常法により製剤化して使用することができる。また、場合により、注射剤として投与してもよい。この場合には溶剤としては、注射用蒸溜水、生理食塩水、リンゲル液等の水性溶剤等を用いることができる。

２．本発明の家畜用飼料及び飼育方法
別の態様において、本発明は、上記動物成長促進剤を添加剤として含む、家畜用飼料にも関する。

本明細書において「家畜」とは、飼育場、牧畜場もしくは農業環境で飼育されるブタ（豚）、馬、牛、羊、もしくは山羊等の農業動物もしくは家畜動物、または動物園もしくは動物学的環境で飼育される動物を意味する。また、鶏、うずら、家鴨、七面鳥等のいわゆる「家禽」も含むことができる。好ましくは、家畜は、ブタである。

本発明の家畜用飼料は、家畜の種類、年齢、体重、性別、飼料の種類等により異なるが、通常は、好ましくは、飼料全体重量に対して、０.２％重量以上、より好ましくは、０．２～１．０重量％の上記動物成長促進剤を含有する。

本発明の家畜用飼料は、好ましくは、タンパク質、糖質、脂質、食物繊維等の栄養成分を含むが、家畜用飼料として通常用いられる穀物原料又は動物由来の原料を使用することができる。穀物原料としては、例えば、小麦、大麦、オーツ麦、トウモロコシ、米、大豆などを挙げることができる。また、必要に応じて、ビタミンやミネラルなどの付加的な栄養素を添加することもできる。

更なる態様において、本発明は、上記家畜用飼料を家畜に投与することを含む家畜の飼育方法にも関する。上述のように、家畜には、牛や羊、馬等の種々の動物を含まれるが、好ましくは、ブタ（豚）である。

対象となる家畜の成長段階は特に限定されないが、例えば、授乳期にある生後２か月未満の豚であることができ、また、離乳期以降の生後２か月以上或いは体重３５ｋｇ以上の成長豚や飼育豚であることができる。典型的には、生後２か月以上経過したブタ又は体重３５ｋｇ以上のブタであることが好ましい。

本発明の家畜用飼料を生後２か月未満の子豚へ与えた場合には、下痢止め等の体質改善に好適である。この場合、実施例に示すように、血中白血球などの上昇が抑制され、また、小腸や大腸における組織的変化が観測された。

また、本発明の家畜用飼料を体重３５ｋｇ以上の成長豚や飼育豚に与えた場合には、成長促進及び飼料効率の向上において好適である。実施例に示すように、成長促進効果が確認された。

本発明の家畜用飼料の投与量としては、特に限定されず、家畜の種類、年齢、体重、性別、飼料の種類等に応じて適宜設定することができる。

なお、本発明の家畜の飼育方法では、上記家畜用飼料に加えて、他の薬剤や飼料配合剤と組み合わせて投与することができる。

以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。

１．ケブラチョ抽出物の調製
ケブラチョ抽出物は、ＵＮＩＴＡＮ社（アルゼンチン国）から購入した粉末化製品を、そのまま用いた。当該ケブラチョ抽出物は、ケブラチョ（バランサエ（ｓｃｈｉｎｏｐｓｉｓｂａｌａｎｓａｅ）及びラレントジイ（ｓｃｈｉｎｏｐｓｉｓｌｏｒｅｎｔｚｉ））の芯材をチップ化したものを水中で煮沸し；次いで、溶液を亜硫酸で処理した後、油脂を添加し；得られた溶液を乾燥して粉末化したものである。得られた乾燥粉末は、約５０％以上のタンニン成分を含有していた。

２．ブタへの投与例
生後２１日齢のブタ10頭を2群に分け（Duroc×Landrace×Yorkshire; 平均体重6.51±0.17kg; 実験開始日齢21±1d）、上記１で得たケブラチョ抽出物を飼料中5ｇ／ｋｇで添加した飼料を調製し、各群に対して110日間投与して飼育した。また、対照群としてケブラチョ抽出物を含まない飼料を与えた。用いた飼料の配合を以下の表１に示す。

１１０日間飼育後、１頭当りの増体量、飼料摂取量、飼料要求率を群毎に算出した。得られた結果を表２に示す。

表２の結果から、ケブラチョ抽出物を含む飼料の投与群では、1日当たり1頭豚の摂食量が４４６g増加し、1日当たりの豚の増体が１４０g改善された。ケブラチョ抽出物を含む飼料を投与する事により飼料要求率の改善は見られなかったものの、体重の増加が約１９.１％改善されたといえる。この結果は、食欲が改善され1日当たりの摂食量増加されることにより増体が増えたためと考えられる。

Claims

ウルシ科樹木の抽出物を含む動物成長促進剤。
前記抽出物が、ウルシ科樹木由来のタンニンを５０～１００重量％の範囲で含有する、請求項１に記載の動物成長促進剤。
前記抽出物が、ウルシ科樹木の芯材から抽出したエキスである、請求項１又は２に記載の動物成長促進剤。
前記ウルシ科樹木が、バランサエ（ｓｃｈｉｎｏｐｓｉｓｂａｌａｎｓａｅ）、ラレントジイ（ｓｃｈｉｎｏｐｓｉｓｌｏｒｅｎｔｚｉ）、又はそれらの組み合わせである、請求項１～３のいずれか１に記載の動物成長促進剤。
請求項１～４のいずれか１に記載の動物成長促進剤を添加剤として含む、家畜用飼料。
前記動物成長促進剤の含有量が、飼料全体重量に対して０．２～１．０重量％である、請求項５に記載の家畜用飼料。
前記家畜がブタである、請求項５又は６に記載の家畜用飼料。
請求項５～７のいずれか１に記載の家畜用飼料を家畜に投与することを含む、家畜の飼育方法。
前記家畜が、生後２か月以上経過したブタ又は体重３５ｋｇ以上のブタである、請求項８に記載の飼育方法。