JP2023067295A - 航走体及び航走体の粘性抵抗低減方法 - Google Patents

航走体及び航走体の粘性抵抗低減方法 Download PDF

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Abstract

【課題】比較的船速が遅く粘性抵抗の割合が大きい船舶や潜水艦などの航走体において、航走体が移動する際に水に接する船体没水部が水から受ける摩擦抵抗や圧力抵抗などの粘性抵抗を小さくする。【解決手段】航走体1の船体没水部2の水線面形状、特に船尾側の水線面形状にNACA0020等の対称翼の形状若しくは近似の形状を採用して、航走体1の船尾の水流を整流して渦流の発生を抑制し、これにより、船体没水部2の形状に起因する粘性抵抗を減少する。【選択図】図1

Description

本発明は、水に接する面を有する航走体及び航走体の粘性抵抗低減方法に関する。
水上を航行する船舶や水中を潜航する潜水船等の航走体においては、航走体が移動する際に水に接する面が水から粘性抵抗を受けるため、これに抗する推進力を発揮する必要がある。
一般に、水上を航行する船舶の抵抗を推定する際には、空気抵抗の他では、水による抵抗として、粘性抵抗と剰余抵抗の2つに分けて推定したり、無次元値のフルード数が関係する造波抵抗成分と、無次元値のレイノルズ数が関係する摩擦抵抗成分と、その他(形状抵抗、飛沫抵抗等)の3つに分けたりして推定している。
この粘性抵抗の内の摩擦抵抗成分は、大型タンカーなどでは、全抵抗の約8割を占めることもあるので、この摩擦抵抗を減少することは、船舶の推進機関の大きさを著しく低減でき、これにより、運航時の燃料を低減できる可能性を占めているとして、多くの摩擦抵抗低減方法が提案されてきている。
しかしながら、この摩擦抵抗の大きさの推定においては、船型模型を用いた水槽試験では、相似側のレイノルズ数(Rn=ρUL/μ=「流体の密度」×「代表速度」×「代表長さ」/「粘性係数」=「代表速度」×「代表長さ」/「動粘性係数」)を合わせるためには、実船のn分の一の寸法の船型模型の速度を、実船の速度のn倍にする必要があり、船型模型の速度が高速になり過ぎて難しいという問題がある。そのため、現状では、以下のような方法で粘性抵抗、特に摩擦抵抗の低減を図っている。
この船舶の摩擦抵抗を低減する方法としては、船底や船側に設けた空気吹出し口から空気を吹き出して船体の表面を気泡やマイクロバブルで覆うことで摩擦抵抗を減少する空気吹き出し方法(空気潤滑法、気体潤滑法とも言われる)と、船体表面を摩擦抵抗の小さい形状に変化させる方法と、船体表面の境界層を制御する方法、流体中にポリマーを添加する方法、水性の液体の摩擦抵抗を大きく低減させることのできる摩擦低減剤、摩擦低減剤を含有する塗料、および摩擦低減剤を用いた摩擦低減方法等がある。
この空気吹き出し方法では、例えば、船内の圧縮機で空気を圧縮して、500kPa(好ましくは、700kPa~1300kPa)に加圧した圧縮空気を生成する。そして、この圧縮された空気を、船内の気体室から船首側の船側外板と船底に沿って設けられた複数の空気吹き出し口を経由して、その噴出量を均一化しながら船体外部の水中に吹出して、この空気で形成される気泡で船体を覆うことにより、船体の摩擦抵抗の低減を図っている(例えば、特許文献1、2参照)。
また、この空気吹き出し方法においては、気泡を没水面の広い面に広げるために、船底において、船尾側に向けて喫水が深くなる傾斜面を、空気吹出し部より船尾側に設けたり、凹部を空気吹出し部より船尾側に設けたり、空気拡散を抑制するガイド部を、空気吹出し部より船幅方向の外側に設けたりして、船底に供給された気泡の散逸を防止する方法も提案されている(例えば、特許文献3、4参照)。
この空気吹き出し方法の気泡供給に関しては、空気送出手段を用いずに船底部にバブル(気泡)を発生させて摩擦抵抗を低減する方法として、船首部に空気ダクト部と翼部とウォータージェット推進部を設けて、ウォータージェット推進部から翼部に向けて水を噴射することにより翼部の上側の圧力を低下させ、それにより、空気ダクト部から空気を吸引して船底部にバブルを発生させて、ブロワーやコンプレッサ等の空気送出手段を用いずに船底部にバブルを含む二相流を供給することで、摩擦抵抗を低減する船舶が提案されている(例えば、特許文献5参照)。
また、空気吹き出し方法において、平板翼を備えたマイクロバブル発生貫流ポンプを船首部水面下の船体側面外板部に設置し、並びに、船首部中空立杭の船体底面部にマイクロバブル発生貫流ポンプを設置して、マイクロバブルによる船体の側面と底面の摩擦低減と船首部に発生する造波抵抗の両方の低減を図る船体流体抵抗低減装置も提案されている(例えば、特許文献6参照)。
また、この空気吹き出し方法に適した防汚塗膜として、防汚塗膜表面と接触する気体との付着力が高まることで、気体を効率的に防汚塗膜表面に付着させて、気体潤滑による摩擦抵抗低減効果を高める防汚塗膜も提案されている(例えば、特許文献7参照)
しかしながら、この空気吹出し方法の場合は、均一に気泡を分散させて水中に放出することと、均等に船体を覆うことが難しいという問題がある。つまり、複数の空気吹き出し口から水中に吹き出された圧縮空気は、気泡となり、船底の平坦部を後方に流れると共に幅方向に拡散すると考えられるものの、船首側のみで放出した気泡を細かい気泡のままで船体をきれいに覆うのは難しいと考える。特に、波浪等によって船体動揺がある場合は、噴出された気泡が境界層の外部へ拡散してしまうと考えられる。
また、空気吹き出し方法では、機構が複雑になる上に、船底板が穴開き状態となるので構造的に弱くなる上に、水の流入と流出により、海洋生物が付着したり、錆が発生したり、空気吹出し口が閉塞したりするという問題がある。また、圧縮機で使用されるエネルギーが大きいという問題もある。
また、船体表面を摩擦抵抗の小さい形状に変化させる方法として、例えば、最大の深さが1mm~25mmで、滑走面の流れ方向における長さが15mm~60mm以上のくぼみを、船体表面に複数設けて、その複数のくぼみの各々の底面を、流動媒体の流れの上流側から下流側に行くにつれて継続的に広くなるように形成して、層流を乱して船体表面に対する水の付着力をかなり削減することで、15ノットより低い速度や約40ノット前後以上の高速時に、最も適した形状で、流動媒体との間の生じる抵抗を減少する構造体が提案されている(例えば、特許文献8参照)。
また、船体表面の境界層を制御する方法として、矩形体、斜端面を有する矩形体、底面の形が台形の四角柱、三角錐、又は半円錐の形状をした長尺状に配列された乱流発生装置を、船舶の船殻表面に設置して、この乱流発生装置により乱流を発生させて、境界層の厚さを減らし、分離点を後方へずらして、船尾の圧力を高めることにより、航行する際の抵抗力を減らす構造を有する船舶が提案されている(例えば、特許文献9参照)。
また、その他にも、流体剥離現象を防止するために、境界層の流体剥離を攪拌できる微細な円錐形突起を設けて、臨界レイノルズ数を引き下げる効果を持たせることにより、流体と移動体との境界部に発生する流体剥離抵抗を解消する方法も提案されている(例えば、特許文献10参照)。
また、流体中にポリマーを添加する方法として、分子量が50万以上のアルカリ可溶性樹脂を含有し、平均粒子径が1μm以下である水中摩擦抵抗低減用樹脂粒子を含有する船底塗料が提案されている(例えば、特許文献11参照)。
また、摩擦低減剤、摩擦低減塗料等を用いる方法として、摩擦低減方法水性の液体の摩擦抵抗を大きく低減させることのできる、水溶性高分子化合物からなる摩擦低減剤、摩擦低減剤を含有する塗料、および摩擦低減剤を用いた摩擦低減方法が提案されている(例えば、特許文献12参照)。
その一方で、船舶の推進方法としては、船尾に配置したスクリュープロペラで推進する方法とは別の方法として、船底から下方に離間して配置される旋回式推進器で推進する方法が発展してきている。この旋回式推進器は、アジマス推進器やポッド推進器などと呼ばれ、ダクト付きのポッド推進器や、舵板付きのポッド推進器や、プロペラの後方に舵とガイドベーンを設けたものが提案されている(例えば、特許文献13~特許文献15参照)。
また、この旋回式推進器の駆動方法にしても、Zドライブや傘歯歯車等の機械的動力伝達機構を用いるだけでなく、ポッド内に電動モータを設けたものや、可変容量型の油圧モータを設けたもの等が提案されている(例えば、特許文献16~特許文献19参照)。
しかしながら、この旋回式推進器は、船尾の伴流内に配置されており、ポッドの旋回に伴い、プロペラも船の進行方向から旋回角度を持つようになるため、プロペラに流入する水流が大きく変化し、推進力の低下やプロペラの振動が発生する。これに対しては、例えば、プロペラ面の回転中心を旋回中心としたり(例えば、特許文献20参照)、ポッドに設けた舵板にフラップを設けて、これを制御したりしている(例えば、特許文献21参照)。
特開2018-122717号公報 特開2018-122718号公報 特開2018-154198号公報 特開2018-154199号公報 特開2018-90173号公報 特開2016-64812号公報 特開2019-199600号公報 特開2008-157465号公報 特開2018-90242号公報 特開2006-22937号公報 特開2014-162912号公報 特開2019-178329号公報 特開2010-905号公報 特開2010-221975号公報 特開2010-221976号公報 特開2012-61937号公報 特開2012-61939号公報 特表2017-518220号公報 特開2013-112091号公報 特開2011-31858号公報 特開2012-111422号公報
上記のように、船体没水部に対する粘性抵抗低減方法に関して、従来技術の気泡による船舶の摩擦抵抗の低減方法は、実用化にはまだ技術的な進展が必要であると考えられているが、その一方で、推進システムにおいてはポッド推進器等の推進システムが発達してきており、新しい視点で対応することができるのではないかと考えられる。
つまり、従来のタンカー船やばら積み船やコンテナ船等の比較的大きな商船では、推進用機器として船尾にスクリュープロペラ推進器を配置し、また、このスクリュープロペラ推進器の後方に舵を配置している。そのため、機関室を船尾側に配置して、この機関室にスクリュープロペラ推進器を駆動するための主機関を設置している。それと共に、舵を回動させる舵取機を舵の上側の船内に配置している。そのため、船尾部分にある程度の容積を必要とし、船尾側の船体没水部の形状が肥えている形状になっており、また、船尾側の舵の上の部分に船体の船尾部分が張り出している。このような構成を維持しているため、船体形状には以下のような制約があった。
つまり、この水面下の船体没水部の形状を示す船型として、船首部分は造波抵抗を減少するためバルバス・バウ(球状船首)としたり、水線面形状(水平断面形状)で先端側が尖った形状にしたりした、複雑な形状となっている。また、この船首部分より後方の中間部分は、比較的工作し易い矩形断面にビルジ部を設けた平行部を有している。そして、船尾部は、主機関を収容できる機関室の容積を確保した比較的肥えた部分と、スクリュープロペラ推進器を装備する急激に痩せた形状の部分と、その後方で舵取機を備えた肥えた上方の部分とで構成されている。このような形状のために、以下のような問題があった。
船体没水部の船尾部分が肥えているため、航行時に船尾に伴流が生じ、それと共に多くの場合にビルジ渦が発生して、粘性抵抗が増加するという問題がある。この伴流による抵抗損失を回復するためにフィンやダクト等の様々な工夫がなされているが、この伴流による抵抗損失を全部回収することは困難である。
また、軽荷状態においては、スクリュープロペラの先端が水面上に露出しないように、バラスト水の積込みによる喫水の増加や、船尾側を船首側よりも沈下させる船尾トリムが必要となり、浸水面積が大きくなり摩擦抵抗が増加する上に、船体姿勢が粘性抵抗や造波抵抗の減少に不利な姿勢となり、軽荷状態での抵抗が増加するという問題がある。
また、船尾形状が船尾における伴流(ウエーク)の分布に大きな影響を及ぼす上に、この伴流の分布が複雑であり、この伴流とスクリュープロペラ推進器と舵との3者の間に複雑な干渉が生じている。そのため、目標の推進性能や操縦性性能(方向安定性能、旋回性能)を得るためのスクリュープロペラ推進器の設計や舵の設計が難しくなっている。その結果、研究、開発、設計等の多くの関係者の人的資源が投入されてきているという問題がある。
また、スクリュープロペラの逆回転時(後進力発揮時)の停止性能(制動距離が長い)や、後進時においては、この船尾における船尾形状に起因する水流とスクリュープロペラ推進器と舵の相互干渉のため、操縦性能の推定が非常に難しく、また、舵の効きが悪く、操船が難しいという問題がある。
また、スクリュープロペラ推進器の直上に船底があるため、伴流中の不均一な流れで、プロペラが回転することになる。そのため、プロペラ軸系のベアリング起振力による船体振動が発生し、また、プロペラの回転に伴う船底に加わる圧力変動により船底振動が発生するという問題がある。
また、スクリュープロペラ推進器の位置が固定されており、プロペラの回転に伴った上方に位置することになるスクリュープロペラの先端の水没深度が浅くなる。従って、スクリュープロペラの先端からキャビテーションが発生し易い。そのため、このキャビテーションにより、衝撃圧が生じて、スクリュープロペラ表面があばた状になったり、騒音や船底のエロージョン(浸食、壊食)や船尾変動圧力による船体振動や推力低下を発生したりするという問題がある。
また、船尾側に機関室が有り、この内部に設けられた主機関や補機などを管理するために、居住区や船橋が船尾側に特に機関室の直上に設けられることが多く、船尾から船首越しに船の航路を監視するための見通し線の確保が、大きな船では難しいという問題がある。
本発明は上記のことを鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、商船のうちでも大型タンカーや大型鉱石運搬船等の比較的船速が遅く(フルード数が小さく)、粘性抵抗の割合が大きい船舶や潜水艦などの航走体において、船体没水部の形状、特に船尾側の形状に翼形状を採用することで、粘性抵抗を小さくすることができる航走体及び航走体の粘性抵抗低減方法を提供することにある。さらには、推進装置の配置を従来技術の船尾配置から別の場所に配置することにより、プロペラの配置や船橋の配置等に起因する、上記の問題点を解決でき、船体没水部及び推進用機器を標準化及び規格化することにより、研究、開発、設計、製造の人的資源の集中化を図ることができる航走体及び航走体の粘性抵抗低減方法を提供することにある。
上記のような目的を達成するための本発明の航走体は、航走時に水面下の船体没水部を有する航走体であって、航走体の前後方向における前記船体没水部の浮心よりも後方を船体没水後半部としたときに、航走体の上下方向における前記船体没水部の70%から100%の第1上下範囲で、かつ、航走体の前後方向における前記船体没水後半部の70%から100%の第1前後範囲である範囲の水平断面で、前記船体没水後半部の水線面の外形線が、前記船体没水後半部の水線面の外形線に内接する対称翼型の外形線と、前記船体没水後半部の水線面の外形線に外接する対称翼型の外形線の間に入っているとともに、前記船体没水後半部において、前記内接する対称翼型の面積が、前記外接する対称翼型の面積の80%以上100%以下であるように構成されていることを特徴とする航走体である。
この「航走体」は水上航走体又は水中航走体であり、本発明の効果は、特に、水上航走体では、船舶の浮力による分類で「最も一般的な船体下部が水面下に沈むことで浮力を得る船である。航行時と停船時のいずれでも浮力を得る方法に変りはない。」という「排水量型船舶」において効果が大きく、特に商船で効果が大きい。また、水中航走体では、調査用の潜水艇、探査用の潜水艇、軍用の潜水艦等で効果が大きい。
また、「船体没水部」は、航走体が航走するときに没水している部分、言い換えれば、浸水表面を有する部分であり、水上航走体では、通常運航時で没水部の容積が略最大になる没水部のことを言い、商船や艦艇などの船舶では、満載喫水線より下の部分であり、半没の潜水艇ではその最大没水部分であり、全没の潜水艦などでは、艦橋、ブリッジ、セイル、司令塔などと呼ばれる船体から突出した部分を除いた船体となる。なお、「水線面」は船体の水平断面のことである。
また、「翼型の形状」は、一般的に認められている形状であるが、より具体的な「翼型の形状」としては、アメリカの研究による「NACA翼型」、「NASA翼型」、イギリスの研究による「RAF翼型」、ドイツのゲッチンゲン大学の研究による「Gott翼型」や、円形からの写像をジュコフスキー変換して得られる「ジュコフスキーの翼型」等がある。しかし、本発明は、これらの翼型のみに限定する必要は無く、所謂「翼型」の範疇に入る形状であればよい。
また、「第1上下範囲」は「航走体の上下方向における船体没水部の70%から100%の範囲」と定義されるが、航走体の上下方向に連続的な範囲であってもよく、間欠的又は断続的であってその総和の範囲が船体没水部の70%から100%であればよい。また、「第1前後範囲」においても、「航走体の前後方向における船体没水後半部の70%から100%の範囲」と定義されるが、航走体の前後方向に連続的な範囲であってもよく、間欠的又は断続的であってその総和の範囲が船体没水後半部の70%から100%であればよい。なお、これらの「70%」、「80%」、「100%」の数値は、その前後で、効果が著しく変化するような境界値となる数値、所謂、数値限定用の数値ではなく、権利範囲を明確に特定するための数値である。このことは、以下の記載でも同じである。また、以下で述べる「船体没水後半部の形状」に関する「内接する対称翼型」と、「船体没水部の形状」に関する「内接する対称翼型」とは、同一であっても相似であってもよく、また、別の「対称翼型」であってもよい。また、「船体没水後半部の形状」に関する「外接する対称翼型」と、「船体没水部の形状」に関する「外接する対称翼型」とは、同一であっても相似であってもよく、また、別の「対称翼型」であってもよい。
この構成によれば、本発明の航走体は、船体没水部の船体没水後半部の形状が対称翼の後半部の形状若しくはこれに近似した形状となる。これにより、航走体の直進時における船尾における流れが滑らかに合流するようになり、従来の船型の船尾で発生する伴流及びビルジ渦の発生を抑制することができ、粘性抵抗、特に圧力抵抗を減少することができる。
上記の航走体において、航走体の上下方向における前記船体没水部の70%から100%の第1上下範囲で、かつ、航走体の前後方向における航走体の全長の70%から100%の第2前後範囲である範囲の水平断面で、前記船体没水部の水線面の外形線が、前記船体没水部の水線面の前記外形線に内接する対称翼型の外形線と、前記船体没水部の水線面の外形線に外接する対称翼型の外形線の間に入っているとともに、前記内接する対称翼型の面積が、前記外接する対称翼型の面積の80%以上100%以下であるように構成されていることを特徴とする。
この「第1上下範囲」は上記と同じく「航走体の上下方向における船体没水部の70%から100%の範囲」と定義されるが、航走体の上下方向に連続的な範囲であってもよく、間欠的又は断続的であってその総和の範囲が船体没水部の70%から100%であればよい。また、「第2前後範囲」においても、「航走体の前後方向における航走体の全長の70%から100%の範囲」と定義されるが、航走体の前後方向に連続的な範囲であってもよく、間欠的又は断続的であってその総和の範囲が航走体の全長の70%から100%であればよい。
上記の構成の航走体によれば、船体没水部の全体の形状が対称翼の形状若しくはこれに近似した形状となる。これにより、船体没水部の抵抗が対称翼の抵抗又はそれに近い抵抗となるので、従来の船体形状の抵抗に比べて、粘性抵抗、特に圧力抵抗を減少することができる。なお、航走体が水上航走体の場合では、第1上下範囲の上端の位置は水面であるか、水面の近傍であるように構成されることが、船尾における造波抵抗を小さくするためにより好ましい。
なお、この航走体のレイノルズ数は、舵などのレイノルズ数に比べて2桁程大きくなり、所謂「高レイノルズ数領域」となり、大型航空機と同じレイノルズ数領域になる。そのため、航空機の空気とは圧縮性と非圧縮性との差異はあるが、航空機分野における翼に関する理論や実験データ等を参考にすることができるようになる。
上記の航走体において、前記内接する対称翼型の前記外形線と前記外接する対称翼型の前記外形線が、同一形状又は相似形状であるように構成されていることを特徴とすると、船体没水部の形状をより単純な形状にすることができる。
上記の航走体において、前記内接する対称翼型の外形線と前記外接する対称翼型の外形線が、航走体の上下方向における前記第1上下範囲で、同一形状又は相似形状であるように構成されていることを特徴とすると、この構成にすることにより、船体没水部の形状を比較的単純な形状にすることができ、船体外板の加工工程が複雑化するのを抑制できる。
なお、船体没水部の横断面形状においては、浮力及び内部容積の確保が容易なU字型船形や、浮力及び内部容積に比べての上甲板の面積の確保が容易なV字型船形などとすることができる。また、船体没水部の側面視での形状(プロファイル)においては、上下方向に変化が無くて製造し易い形状、下方が後方に後退して錨の収納と昇降が容易な形状、下方が前方に前進している形状等が考えられるが、中央が後方に後退している形状、中央が前方に前進している形状等も考えられる。この横断面形状および側面視の形状に関しては、それぞれの形状の得失のよって選択されるべきと考える。
上記の航走体において、航走時に航走用の推力を発生する推進用機器を前記船体没水部の側部又は底部に配置するとともに、前記推進用機器を用いて航走するように構成されていることを特徴とする。この推進用機器は、スクリュープロペラ推進器やウォータージェット推進器の噴射口などで構成できる。
この構成によれば、推進用機器を船体没水部の側部又は底部に配置することで、船尾に推進用機器を駆動するための主機関を配置する必要がなくなり、船尾形状を翼型形状又はその近似形状とすることができる。また、推進用機器の後進操作時に、推進用機器が船体没水部の影響を受けないので、大きな後進力を得られる上に、舵との干渉も無いので、後進時の操船も容易に行えるようになる。なお、従来の推進用機器の配置と区別する必要が生じた場合には、船体没水部の全長を基準長としたときに、船体没水部の先端から基準長の80%の位置、好ましくは75%の位置、より好ましくは70%の位置より前方に配置とするものとする。
そして、さらに、推進用機器を船体没水部の側部又は底部から離間した位置に配置すると、船体が発生するビルジ渦とプロペラが発生するプロペラ後流と舵による流れの変化との相互関係がなくなり、それぞれの推進性能と舵性能を流体力学的に分離して単純化して分析及び設計できるようになる。
なお、「航走時に・・・配置して」という意味は「航走時でないときは、この位置に無くてもよい」という意味である。言い換えれば、航走しないときや出入港のとき等で自航しない場合には、推進用機器を、航走時とは別の場所に収納しておいてもよいということである。
そして、航走体の接岸時に邪魔にならないように、推進用機器を収納及び展開させる方式としては、垂直面内での回動で移動する転倒方式や、水平方向に移動する伸縮方式や、水平面内で旋回する旋回方式、上下移動する昇降方式等がある。これらの方式を用いて推進用機器を航走体の内部や甲板上に収納可能に構成することが好ましい。なお、従来の接岸方法に拘らずに航走体の船体を岸壁や桟橋から離間した状態のまま、上陸用通路を岸壁や桟橋と航走体の間に架橋する方法を採用してもよい。
この船体没水部の内部に主機関を配置して、この主機関の動力を、離間して配置したスクリュープロペラ推進器等の推進用機器に機械的に伝達する場合には、アジマススラスター等の旋回式推進装置で用いられている「Zドライブ機構(推進軸をZ字型にして動力を機械的に伝達する機構)」を用いることができる。また、電気モータや流体圧モータを用いることで、航走体の前後方向に関しても主機関との距離を大きくとることができるようになる。
さらには、推進用機器として、水平方向に旋回できる旋回式推進装置(アジマススラスター、ポッド推進装置など)を用いることもできる。この場合に旋回式推進装置の旋回機能を操船に利用することもできる。しかし、この構成では、船体没水部の両舷にそれぞれ推進用機器を配置しているので、この旋回式推進装置の旋回機能を使用しなくても、左右の推進用機器で発生する推力を変化させることで、航走体の旋回モーメントを得ることができ、操船できる。従って、この旋回式推進装置の旋回機能を不要にして、旋回方向を固定して、ここで使用する推進用機器の構造を簡略化することもできる。
上記の航走体において、航走時の推力を発生する推進用機器を単数又は複数用いて回頭をするように構成されていることを特徴とする。なお、ここでいう「推進用機器」とはスクリュープロペラ推進器やウォータージェット推進器の噴射口等の直接に推力を発生する機器のことを言い、主機関や動力伝達システムを含まない。
この構成では、推進用機器で航走体の旋回モーメントを得るので、舵やフラップ等の旋回モーメントを発生させる装置が不要になったり、舵やフラップ等が発生する旋回モーメントを小さくしたりできる。そして、後縁フラップや舵を設けない構造とする場合には、船体没水部の船尾部の構造を著しく単純化できる。また、推進用機器を、舵やフラップ等の補助や故障時の予備として用いることができる。また、船型に関しては予め翼型を幾つか決めておいて、排水量に従って相似的に大きさを変更するだけとし、かつ、推進用機器を規格化して必要な推進力を得るためにはその基数で調整することにすると、それぞれの船舶や潜水艦等に対する個別の注文生産から量産生産への移行が可能となり、研究、開発、設計、製造等の設備や人的資源を集中化できるようになる。
この具体的な構成に関して、単数の推進用機器を用いる場合は、例えば、水平方向に旋回する旋回式推進器を装備して、この旋回式推進器の旋回によって航走体を回頭する。また、水流の噴射方向を変更できるウォータージェット推進器を用いる。
また、複数の推進用機器を用いる場合の例としては、船体没水部の側方にそれぞれ推進用機器を単数又は複数設けたり、船体没水部の底部に航走体の幅方向に複数の推進用機器を設けたりする。
この構成では、複数の推進用機器の一部又は全部を旋回させて航走体の回頭用の旋回モーメントを発生させてもよいが、これらの複数の推進用機器が発生する推力の大きさを個別に制御することで、全体として航走体の回頭用の旋回モーメントを発生させる方がより好ましい。この場合は、推進用機器自体を旋回させる必要がなく、推進用機器の構造及び動力伝達機構を著しく単純化できる。
なお、対称翼は、基本的に上下キャンバーが同じ翼型なので、揚力係数が低い代りに、風圧中心と空力中心が一致するという特徴を持っており、迎角が変わっても風圧中心が移動しない。そのため、操船用の制御が単純化する。
また、航走体の前後方向に関しての推進用機器の位置は、特に制限はないが、浮心より前、浮心の近傍、浮心より後方等が考えられるが、それぞれの得失に従って、主機関の位置や動力伝達機構等との関係と、発生できる航走体の旋回モーメントとの関係で推進用機器の位置を決めることになる。ただし、推進用機器の前後位置は、必ずしも同じ前後位置でなくてもよいが、両舷で同じ前後位置とする方が操縦性の面では扱い易くなるので、より好ましい。
上記の航走体において、航走体の前後方向Xに関して、前記船体没水部2の全長を基準長Lbとし、前記船体没水部2の前端から前記基準長Lbの1/4の距離の位置を基準位置Psとし、前記基準位置Psに対して前記基準長Lbの10%の長さの分だけ前方の位置を第1位置P1とし、前記基準位置Psに対して前記基準長Lbの10%の長さの分だけ後方の位置を第2位置P2として、前記推進用機器7の後端の位置を推進器位置Pxとしたときに、前記推進器位置Pxが前記第1位置P1と前記第2位置P2との間の第3前後範囲Rx3にあるように構成されていることを特徴とする。
この構成によれば、推進用機器の位置は「空力中心」の前後位置の近傍になり、「風圧中心」の近傍になると考えられるので、旋回運動するときの揚力の作用点の略両側に推進用機器が配置されることになるので、推進用機器の制御による航走体に発生する旋回モーメントの推定が比較的容易となり、操縦し易くなる。
あるいは、上記の航走体において、航走体の前後方向に関して、前記船体没水部の全長を基準長とし、前記船体没水部の浮心の位置を基準位置とし、前記基準位置に対して前記基準長の10%の長さの分だけ前方の位置を第1位置とし、前記基準位置に対して前記基準長の10%の長さの分だけ後方の位置を第2位置として、前記推進用機器の後端の位置を推進器位置としたときに、前記推進器位置が前記第1位置と前記第2位置との間の第3前後範囲にあるように構成されていることを特徴とする。
この構成によれば、船舶の重心の前後位置は浮心の前後位置の近傍になると考えられるので、旋回運動するときの重心(航走体の質量に見掛け質量を加えた質量での重心)の略両側に推進用機器が配置されることになるので、推進用機器の制御による航走体に発生する旋回モーメントの推定が比較的容易となり、操縦し易くなる。
あるいは、上記の航走体において、航走体の前後方向に関して、前記船体没水部の全長を基準長とし、前記船体没水部の最大幅の中心の位置を基準位置とし、前記基準位置に対して前記基準長の10%の長さの分だけ前方の位置を第1位置とし、前記基準位置に対して前記基準長の10%の長さの分だけ後方の位置を第2位置として、前記推進用機器の後端の位置を推進器位置としたときに、前記推進器位置が前記第1位置と前記第2位置との間の第3前後範囲にあるように構成されていることを特徴とする。
この構成では、推進用機器の配置の前後位置を船体没水部の最大幅の中心の近傍に配置することで、船体没水部によって生じる水流の推進用機器への影響が少なくなるとともに、推進用機器によって生じる水流の船体没水部の表面への影響が少なくなると考えられる。そのため、船体没水部と推進用機器の干渉が少なくなり、それぞれの性能評価が容易となり、設計が容易となる。また、主機関などが配置される機関室も、船体没水部の最大幅の部分に配置できるので、機関室と推進用機器を近くの配置できる。
この構成によれば、主機関と推進用機器の間は電力用ケーブルと制御信号用ケーブルを配線するだけ、または、流体圧配管等の流体圧制御システムを配管するだけでよいので、主機関の場所は比較的自由に選択できるようになる。従って、主機関と船橋と居住区を船体没水部の横幅が大きく、主機関の配置スペースの確保が容易ない船首側に配置することが可能となる。また、船首側に船橋を設けることができると、航走体特に水上航走体(船舶)における航行時の前方を監視するために必要な見通し線の確保が容易となる。
上記の航走体において、前記推進用機器が電気を駆動源とする電気推進システムを用いているか、あるいは前記推進用機器が流体圧を駆動源とする流体圧システムを用いているかのいずれか一方であるように構成されていることを特徴とする。
そして、電気推進システムの場合は、スクリュープロペラと直結したポッド内に電動機を設置して推進用機器を構成し、この電動機に、船内のディーゼルエンジンやガスタービンエンジン等の主機関で発電した電力を供給する構成とする。これにより、主機関、発電機などが配置される機関室と、推進用機器とを離間して配置できるようになるので、航走体における機器の配置上(レイアウト)の制約を少なくして、自由度を増すことができる。
また、流体圧システムでは、油圧や空圧を使用するが、油圧を用いる油圧システムでは、可変容量型の油圧モータをポッド内部に設けて、船内からの油圧ラインで油圧ポンプから送油される作動油によって油圧モータを駆動してプロペラを回転する。この場合には、可変容量型の油圧ポンプを用いることで、電動モータを使用した場合に必要とされる変速機や冷却システムを不要にして、配置上の自由度を増すことができる。空圧システムでは発生できる駆動力の大きさは劣るが、万一破損した場合であっても海洋汚染の危険性が小さくなる。
上記の航走体において、前記船体没水部の後端と、前記後端から前記船体没水部の全長の3分の1の分だけ前方の位置との間の部位に、航走体の幅方向に推力を発生する横力発生装置を配置して、前記横力発生装置を用いて回頭するように構成されている。この横力発生装置としては、サイドスラスターやアジマススラスターやウォータージェット推進器の噴射口等を用いることができる。この構成によれば、従来の船舶の船尾に配置された舵の代わりになり、この船舶を操船できるようになる。
上記の航走体において、前記船体没水部の底部の後方の部位に、船底から下方に突出する底部舵を、少なくとも航走時において配置して、前記底部舵を用いて回頭するように構成されていることを特徴とする。この構成によれば、底部舵の後が右舷側に出るように回動すると、船首側が左舷側に回る旋回モーメントを発生することができ、底部舵の後が左舷側に出るように回動すると、船首側が右舷側に回る旋回モーメントを発生することができるので、従来の船舶の船尾に配置された舵の代わりになり、この船舶を操船できるようになる。
また、この底部舵は、船体没水部の後方に配置されず、船体没水部の底部から突出して配置されており、船体没水部の流れの影響が少なくなるので、舵性能の推定が容易となり、そのため、この底部舵の設計が容易となる。さらに、この底部舵は横揺に対する抵抗となる上に、舵を切ると横揺れモーメントも発生するので、横揺れ制御にも使用できる。また、舵を昇降可能に構成して、港湾などの浅海域において曳船などで曳航される場合には、底部から船体没水部の内部に収容してもよい。
上記の航走体において、前記船体没水部の後方の部位において、前記船体没水部の右舷側の側部から斜め上方に突出する斜め上方船尾舵と斜め下方に突出する斜め下方船尾舵の少なくとも一方を設けると共に、前記船体没水部の左舷側の側部から斜め上方に突出する斜め上方船尾舵と斜め下方に突出する斜め下方船尾舵の少なくとも一方を設けて、船尾舵システムを構成し、前記船尾舵システムを用いて回頭するように構成されていることを特徴とする。
この構成によれば、この船尾舵システムでは、斜め舵、V字形状舵、X字形状舵などの構成となるので、水平面における旋回モーメントだけでなく、垂直面におけるトリム方向のモーメントも発生できるようになり、横揺制御や、縦揺制御に必要なモーメントを発生できるようになる。
上記の航走体において、前記船体没水部の後部に後縁フラップを設けて、前記後縁フラップを用いて回頭するように構成されていることを特徴とする。この構成によれば、後縁フラップを右舷側に出すと、船首側が左舷側に回る旋回モーメントを発生することができ、後縁フラップを左舷側に出すと、船首側が右舷側に回る旋回モーメントを発生することができるので、回頭できるようになる。
なお、操船のためには、後縁フラップを能動的に動かす必要があるが、直進時における抵抗減少に関しても有効ではないかと考える。この場合は、後縁フラップをその外側の流れや渦などの流体力によって受動的に動くようにしたり、後縁フラップに相当する船体の部位をプラススチックやゴムなどの弾性体で形成して可撓性を持たせて柔軟性に変形するようにしたりする。
これらにより、船尾端側における渦流の発生を抑制して、針路安定性を保持したり、粘性抵抗を低減したりすることができる可能性がある。この場合には、後縁フラップを上下方向に分割して個別に変形可能に構成すると、上下方向でその場の流れに応じた変形が容易なようになる。また、後縁フラップを操船時には能動的に動かすことがせき、直進時には受動的に動かせるようにすることも考えられる。
上記の航走体で、航走体の前後方向の中心位置よりも後方において、前記旋回力発生用フィンを、前記船体没水部の両舷側に前記船体没水部の側部から離間してそれぞれ設けるか、前記船体没水部の底部に航走体の幅方向に関して離間して複数設けるかのいずれか一方になるように構成されていることを特徴とする。この構成によれば、航走体が斜行し始めたときに、この旋回力発生用フィンにより回頭を抑制する方向の旋回力を発生させることで、航走体の針路安定性を向上させることができる。
そして、この旋回力発生用フィンを船体没水部の空力中心より後方に配置する場合には、水平断面が翼形状でかつ航走体の前後方向に翼弦を持ち、翼形状の幅が航走体の上下方向又は斜め上下方向に延びるように構成すると、旋回力発生用フィンを固定翼で構成しても、航走体が回頭すると、旋回力発生用フィンの迎角の増加量は船体没水部の迎角の増加量と同じになり、同じ方向の揚力を発生し、航走体の回頭を抑制する方向の旋回モーメントを発生するので、針路安定性が向上するようになる。なお、旋回力発生用フィンの迎角(船体没水部の前後方向に対する翼弦の角度)を能動的に変更できるように構成したり、旋回力発生用フィンの後端に回動可能なフラップを設けたりすることで、容易に旋回力発生用フィンが発生する旋回モーメントをより大きくして、航走体の回動を抑制するように構成することができる。
一方、この旋回力発生用フィンを船体没水部の空力中心より前方やその近傍に配置する場合には、旋回力発生用フィンの迎角を船体没水部の前後方向に対して能動的に変更できるように構成したり、能動的に回動するフラップを設けたりして、航走体の回頭を抑制する方向の旋回モーメントを積極的に発生するように構成する必要がある。しかしながら、旋回力発生用フィンにおけるこれらの機構が故障した時には、針路不安定の方向に旋回力発生用フィンが旋回モーメントを発生することになるので、この前方配置はあまり好ましくない。
上記の船舶において、前記船体没水部の側部と前記推進用機器の間の支持部材を水平フィンとして構成するか、または、前記推進用機器の外側に水平フィンを設けて構成するか、または、前記船体没水部の側部の外側に水平フィンを設けて構成するかの少なくとも一つで、揚力を発生するとともに、この揚力の大きさを制御することにより横揺れ制御を行う。この揚力発生機構は、支持部材と水平部材にフラップを設けたり、支持部材と水平部材自体を水平翼として迎角を変更可能に構成したりすることで、容易に構成できる。この構成によれば、この揚力発生機構で発生する揚力を制御することによる横揺れ制御で航走体の横揺れを抑制できる。
そして、上記のような目的を達成するための本発明の航走体の粘性抵抗低減方法は、航走時に水面下の船体没水部)を有する航走体の粘性抵抗低減方法であって、航走体の前後方向における前記船体没水部の浮心よりも後方を船体没水後半部の形状に関して、航走体の上下方向における前記船体没水部の70%から100%の第1上下範囲で、かつ、航走体の前後方向における前記船体没水後半部の70%から100%の第1前後範囲である範囲の水平断面で、前記船体没水後半部の水線面の外形線が、前記水線面の外形線に内接する対称翼型の浮心よりも後方の後半部の外形線と、前記水線面の外形線に外接する対称翼型よりも後方の後半部の外形線の間に入っているとともに、前記船体没水後半部において、前記内接する対称翼型の後半部の面積が、前記外接する対称翼型の後半部の面積の80%以上100%以下であるように構成することで、航走体の粘性摩擦抵抗を減少することを特徴とする。
この航走体の粘性抵抗低減方法では、船体没水後半部の形状が対称翼の後半部の形状若しくはこれに近似した形状とすることにより、粘性抵抗を低減している。これにより、航走体の直進時における船尾における流れが滑らかに合流するようになり、従来の船型の船尾で発生する伴流及びビルジ渦の発生を抑制することができ、粘性抵抗、特に圧力抵抗を減少することができる。
上記の航走体の粘性抵抗低減方法において、航走体の上下方向における前記船体没水部の70%から100%の第1上下範囲で、かつ、航走体の前後方向における航走体の全長の70%から100%の第2前後範囲である範囲の水平断面で、前記船体没水部の水線面の外形線が、前記水線面の前記外形線に内接する対称翼型の外形線と、前記水線面の外形線に外接する対称翼型の外形線の間に入っているとともに、前記内接する対称翼型の面積が、前記外接する対称翼型の面積の80%以上100%以下であるように構成することで、航走体の粘性摩擦抵抗を減少することを特徴とする。
上記の航走体の粘性抵抗低減方法によれば、船体没水部の全体の形状が対称翼の形状若しくはこれに近似した形状となる。これにより、船体没水部の抵抗が翼型形状の抵抗又はそれに近い抵抗となるので、従来の船体形状の抵抗に比べて、粘性抵抗、特に圧力抵抗を減少することができる。
本発明の航走体及び航走体の粘性抵抗低減方法によれば、推進性能に関しての抵抗において粘性抵抗の割合が大きい航走体において、船体没水部に対称翼の形状を採用することで、船尾の水流を整流して渦流の発生を抑制することができ、これにより、船体没水部の形状に起因する粘性抵抗を小さくすることができる。
図1は本発明の第1の実施の形態の航走体である船舶の船体没水部の例で、船体没水前半部の水線面の形状がSR221のB船型の前半部の形状で、船体没水後半部の水線面の形状がNACA0020の翼型形状の後半部の形状をしている船舶を示す正面線図(Body Plan)である。 図2は図1の船舶の船体没水部の一つの水線面(図1で上下方向の位置z)を示す水線面図(Water Line)である。 図3は図1の船舶の船体没水部の側面図である。 図4は本発明の第2の実施の形態の航走体である船舶の船体没水部の例で、水線面の全体の形状がNACA0020の翼型の形状をしている船舶を示す正面線図である。 図5は図4の船舶の船体没水部の一つの水線面(図4で上下方向の位置z)を示す水線面図である。 図6は図4の船舶の船体没水部の側面図である。 図7は本発明の第3の実施の形態の航走体である潜水艦の船体没水部の例で、船体没水前半部の水線面の形状が楕円形の前半部の形状で、船体没水後半部の水線面の形状がNACA0020の翼型形状の後半部の形状をしている潜水艦を示す正面線図である。 図8は図7の潜水艦の船体没水部の一つの水線面(図7で上下方向の位置z)を示す水線面図である。 図9は図7の潜水艦の船体没水部の側面図である。 図10は本発明の第4の実施の形態の航走体である潜水艦の船体没水部の例で、水線面の全体の形状がNACA0020の翼型の形状をしている潜水艦を示す正面線図である。 図11は図10の潜水艦の船体没水部の一つの水線面(図10で上下方向の位置z)を示す水線面図である。 図12は図10の潜水艦の船体没水部の側面図である。 図13は船体没水後半部の形状と内接する対称翼(NACA0015)の翼型の後半部の形状と外接する対称翼(NACA0020)の翼型の後半部の形状との関係を模式的に示す水線面図である。 図14は船体没水部の形状と内接する対称翼(NACA0015)の翼型の形状と外接する対称翼(NACA0020)の翼型の形状との関係を模式的に示す水線面図である。 図15は水上航走体の船体没水部の形状の横断面形状を例示する正面線図であって、(a)U字型船形、(b)V字型船形、(c)中間船形、及び、(d)楕円形船形を例示する図である。 図16は水中航走体の船体没水部の形状の横断面形状を例示する正面線図であって、(a)円形船形、(b)横長楕円形船形、及び、(c)縦長楕円形船形を例示する図である。 図17は水上航走体の船体没水部の船首側の側面形状のプロフィルを例示する側面図であって、(a)平行翼船形、(b)後退翼船形、(c)前進翼船形、(d)凹形状船形、及び、(e)凸形状船形を例示する図である。 図18は水上航走体の船体没水部の船尾側の側面形状のプロフィルを例示する側面図であって、(a)平行翼船形、(b)後退翼船形、(c)前進翼船形、(d)凸形状船形、及び、(e)凹形状船形を例示する図である。 図19は推進用機器の第1の配置例を示す正面線図である。 図20は図19の推進用機器の配置を示す平面図である。 図21は推進用機器の第2の配置例を示す正面線図である。 図22は図21の推進用機器の配置を示す底面図である。 図23は推進用機器の第3の配置例を示す正面線図である。 図24は図23の推進用機器の配置を示す底面図である。 図25は船尾舵システムを示す平面図である。 図26はX字舵を示す背面図である。 図27はV字舵(斜め上方舵)を示す背面図である。 図28は逆V字舵(斜め下方舵)を示す背面図である。 図29は斜め舵(斜め上方舵+斜め下方舵)を示す背面図である。 図30は回動方式の推進用機器の側部配置を説明するための横断面図である。 図31は転倒方式の推進用機器の側部配置を説明するための横断面図で、(a)は凹部への移動、(b)は上甲板の上への移動を示す図である。 図32は伸縮方式の推進用機器の側部配置を説明するための横断面図である。 図33は昇降方式の推進用機器の側部配置を説明するための横断面図である。 図34は昇降方式の推進用機器の底部配置を説明するための横断面図である。 図35は転倒方式の推進用機器の底部配置を説明するための横断面図である。 図36は回動方式の推進用機器の底部配置を説明するための横断面図で、(a)は側部への移動、(b)は上甲板の上への移動を示す図である。 図37は横力発生装置の配置例を示す側面図である。 図38は図37の横力発生装置を示す平面断面図(図38のZ4-Z4)である。 図39は後縁フラップを示す側面図である。 図40は図39の後縁フラップを示す平面断面図である。 図41は2種類の後縁フラップを示す平面断面図で、(a)は単純フラップの後縁フラップを示す図で、(b)スプリットフラップの後縁フラップを示す図で、(c)はスプリットフラップを両開きした状態を示す図である。 図42は推進用機器による旋回方法を説明するための平面図で、(a)は推力差による旋回方法を、(b)は単数基の推進用機器を旋回させる旋回方法を、(c)は複数基の推進用機器を旋回させる旋回方法を説明するための図である。 図43は推進用機器の前後方向の配置位置を説明するための底面図で、(a)は空力中心の近傍に、(b)は浮心の近傍に、(c)は最大幅の部位の近傍に配置する場合を説明するための図である。 図44は航走体が回頭及び旋回する様子を説明するための平面図で、(a)は横力発生装置を、(b)は底部舵を、(c)は船尾舵システムを示す図である。 図45は航走体が回頭及び旋回する様子を説明するための平面図で、(a)は単純フラップの後縁フラップを、(b)はスプリットフラップの後縁フラップを示す図である。 図46は対をなす底部舵の配置を例示する図であり、(a)は背面図で、(b)は底面図である。 図47は旋回力発生フィンの側部配置を例示する図であり、(a)は背面図で、(b)は底面図である。 図48は旋回力発生フィンの底部配置を例示する図であり、(a)は背面図で、(b)は底面図である。 図49は水平フィンの側部配置を例示する図であり、(a)は背面図で、(b)は底面図である。 図50はSR221の大型タンカーに相当する船形の正面線図であり、(a)はV型フレームラインのA船型を、(b)はU型フレームラインのB船型を、(c)は中間的なフレームラインを持つC船型を示す図である。 図51はSR221の大型タンカーに相当する船形の水線面図であり、(a)はA船型を、(b)はB船型を、(c)はC船型を示す図である。 図52は対称翼型の形状を例示する図であり、(a)はNACA0020の翼型を、(b)はNACA0015の翼型を、(c)はNACA0012の翼型を、(d)はNACA65-010の翼型を示す図である。
〔イントロ及び図の概説〕以下、図面を参照して本発明に係る航走体及び航走体の粘性抵抗低減方法の実施の形態について説明する。本発明に係る第1及び第2の実施の形態の航走体は水上航走体であり、図1~図3に示す排水量型の船舶1AAと図4~図6に示す船舶1ABである。また、本発明に係る第3及び第4の実施の形態の航走体は水中航走体であり、図7~図9に示す潜水艦1BAと図10~図12に示す潜水艦1BBである。図1~3、図7~図9の航走体1AA、1BAは船体没水部の船尾側半分が対称翼型形状であり、図4~6、図10~図12の航走体1AB、1BBは船体没水部の全体が対称翼型形状である。また、図13は、船体没水部の船尾側半分が対称翼型形状の近似形状の場合の水線面図の例示であり、図14は、船体没水部の全体が対称翼型形状の近似形状の場合の水線面図の例示である。
また、図15は水上航走体の横断面形状の例示であり、図16は水中航走体の横断面形状の例示である。図17と図18は水上航走体の側面形状のプロファイルの例示である。また、図19~図24は推進用機器の配置の例示である。図25~図29は船尾舵システムを示す図である。また、図30~図36は、推進用機器の格納方式を例示する図である。図37~図45は航走体を旋回させるための機構に関する図面である。図45~図49は、航走体を針路保持させるための機構に関する図面である。図50と図51はSR221の大型タンカーに相当する船形を例示する図であり、図52は対称翼型の形状を例示する平面図である。
なお、図面は本発明を説明するための概略図であり、必ずしも正確な寸法の比率で示されているものでもなく、風圧中心、浮心などの位置も必ずしも正確な位置に示されているものでもない。なお、第1~第4の航走体1AA、1AB、1BA、1BBに関しては、総称として「航走体1」を用いる。また符号「Lc」は船体中央断面を示す船体中央線であり、平面図と底面図、正面線図と背面図などでも同じ符号「Lc」を用いている。
〔本発明の意図:抵抗減少〕本発明では、航走時に水面下となる船体没水部において、特に船尾側の没水後半部において、多くの部分の水線面(水平断面形状)の形状を翼型の形状またはその近似形状で形成することで、船体没水部の周囲の流れ、特に船尾の水流を整流して円滑な流れにして、抵抗成分となるビルジ渦の発生と伴流の発生を抑制する。これにより、粘性抵抗、特に圧力抵抗を減少させる。また、船体没水部の全体を略翼型の形状(翼型形状に近似した形状)に形成することで、より船尾の水の流れを整流させて、船体没水部の抵抗を減少させる。
〔本発明の意図:操縦性能の向上〕また、船体没水部の後半部の翼型の形状により、従来技術のVLCCなどの大型タンカー等の船尾形状を肥大化した船型に比べて、船尾の流れの乱れが著しく小さくなると考えられるので、船の操縦性能における針路安定性(針路保持性能)を向上させる。この針路保持性能は、針路保持に関する性能であり、舵の操作を行うことなく風や波などの外乱が作用しても針路を安定に保つことができる性能である。
〔本発明の意図:航空力学の利用〕なお、この航走体のレイノルズ数は、舵などのレイノルズ数に比べて2桁程大きくなり、所謂高レイノルズ数領域となるため、大型航空機と同じレイノルズ数領域になるため、航空機の空気の圧縮流体とは異なるが、この航空機分野における翼を参考にすることができる。
〔本発明の問題点〕一方、問題点としては、船体没水後半部が細くなるので、従来技術の柱状係数の大きい船型に比べて、柱状係数が小さくなり、同じ没水容積を確保しようとすると船長が長く、船幅が広く、喫水が深くなる。しかしながら、本発明の翼形形状の船舶も含むことができるように船長や容積等に関する諸規則を変更することで、十分に対応できるものと考える。
〔本発明の対象〕そして、本発明が対象とする水上航走体では、粘性抵抗の低減特の船尾からの伴流による抵抗の減少を目的としており、造波抵抗の減少は考えていないので、大型タンカーや大型鉱石運搬船などの比較的低速で造波抵抗が小さく、粘性抵抗の大きい船舶が主な対象となる。また、水中航走体では粘性抵抗の低減の効果が大きいと思われる潜水艦や魚雷や自律型の潜水機器等が対象となるが、本発明はこれらに限定されず、航走時に水面下に船体没水部を有する航走体であれば、この航走体に適用できる。
〔従来技術の大型タンカー〕この大型タンカー船型の従来技術の船型の代表例として、日本の造船界のSR221研究部会で採用された大型タンカー(VLCC)の船型を図50に示す。この船型には、操縦性能の推定のための実験で使用されたV型フレームラインのA船型(a)とU型フレームラインのB船型(b)と中間的なフレームラインを持つC船型(c)とがある(「SR221操縦運動時の船体周囲流場に関する研究(要約)」:Japan Ship Technology Research Association:NII-Electronic Library Service より引用)。
ちなみに、図51は、SR221のA船型(a)とB船型(b)とC船型(c)の満載喫水(d)の半分の喫水(d/2)(Z1)における水線面図(水平断面図:半幅平面図(Half-Breadth Plan))である。なお、図51は、上記の図50を基にして新たに作成した図であり、外形線は線分で結んでいてフェアリングしていない。L/B=5.52、B/d=3.0で、Cpa=0.756(A船型)、0.750(B船型)、0.753(C船型)である。実船速力は15ノット(7.72[m/s])相当とされている。実船の船長に関しては特に記載がないので、仮に、「代表長さ」を300mとすると、海水15℃でレイノルズ数「Rn=7.72×300/(1.187×10-6)=1.95×10となり、高レイノルズ数領域となる。
〔対称翼〕一方、「翼」については、概ねの定義では「流体との相互作用によって効率よく揚力を得られるような形状をした物体」と言われている。しかし、「翼型の形状」は、一般的に認められている形状であり、より具体的には、アメリカの研究による「NACA翼型」、「NASA翼型」、イギリスの研究による「RAF翼型」、ドイツのゲッチンゲン大学の研究による「Gott翼型」や、円形からの写像をジュコフスキー変換して得られる「ジュコフスキーの翼型」等がある。なお、アメリカの研究による周知のNACA翼型の4桁、5桁、6桁の翼型シリーズの翼型を用いると、容易にその形状と実験結果等のデータを利用することができるようになる。しかしながら、本発明は、これらの名称が付いた翼型のみに限定する必要は無い。
さらに、「対称翼」は、中心線に関し上面と下面の形状が対称な翼型であり、中心線と翼弦が一致しキャンバーはゼロの翼型であるので、船体没水部の形状を比較的単純な形状にすることができる。従って、船体外板の加工工程が複雑化するのを抑制できる。この対称翼の形状を用いると船体が左右対称になり、船首の右舷側への回頭と船首の左舷側への回頭で旋回性能が同じになるで、操縦し易くなる。また、対称翼では迎え角がゼロのとき揚力係数はゼロであり、その上、迎え角がプラスまたはマイナスで増加しても風圧中心が前縁側に移動する量が少なく、重心と揚力のバランスが変化し難く、針路安定性が良いという特徴があるので、針路保持性能等の操縦性能に優れた形状になっている。
〔対称翼の例:NACA翼〕この対称翼型の形状の例として、船舶用の舵の分野や、10~10程度の低レイノルズ数領域ではあるが、UAV(Unmanned Air Vehicles)やMAV(Micro Air Vehicles)などの分野で比較的多くの研究がなされているNACAの対称翼型の形状がある。図52にNACA0020、NACA0015、NACA0012、NACA65-010の対称翼型の形状を示す。L/Bは、それぞれ、「5」、「6.6」、「8.3」、「10」となっている。また、NACA0018で、L/B=5.55となる。
このNACA翼型の4桁の翼型の形状では、xを前後位置(x=0が前端位置、x=1が後端位置)としてyを翼の片幅として、「±y=(t/2)×(0.29690×(√x)-0.12600×x-0.35160×(x×x)+0.28430×(x×x×x)-0.10150×(x×x×x×x))」で計算される。
〔対称翼:アスペクト比〕なお、航走体では一般に船体没水部の深さは通常の翼に比べて大きくないので、アスペクト比について考えると、例えば、NACA0020で、t=0.20とすると、L/B=1/0.20=5.0となる。ここで、B/d=3.0とし、水面効果を考えて2倍とすると、アスペクト比(2×翼幅/翼弦長)は、2d/L=0.133となる。また、L/B=5.52となる翼型の場合は、L/B=1/2tより、t=0.091となり、B/d=3.0とすると、水面効果を考えて2倍としてアスペクト比(2×翼幅/翼弦長)は、2d/L=2/(5.52×3)=0.120となる。
従って、極端にアスペクト比が低い値の翼形状になる。なおCFD(Computational Fluid Dynamics:計算流体力学)における3次元での数値計算で、アスペクト比が0.5の計算例が有り、これに比べると、アスペクト比がより小さくなるので、計算時の要素数が少なくて済むことから、レイノルズ数の話を別にすると、数値計算はより行い易くなると考えられる。
〔本発明に係る実施の形態の航走体〕本発明に係る実施の形態の航走体1AA、1AB、1BA、1BBは、航走時に水面下の船体没水部2を有する航走体であり、船舶1AA、1BBは水上航走体である排水量型の船舶の例示であり、潜水艦1BA、1BBは、水中航走体の例示である。なお、これらは例示であり、本発明はこの例示の船種に限定されるものではない。また、以下で述べられる「70%」、「80%」、「90%」、「95%」、「100%」等の数値は、その前後で、効果が著しく変化するような境界値となる数値、所謂、数値限定用の数値ではなく、権利範囲を明確に特定するための数値である。
〔航走体の具体的説明〕次に、より具体的に、第1~第4の実施の形態の航走体について説明する。図1~図3に示す第1の実施の形態の航走体1AAは、大型タンカーを例示したものであり、船体没水前半部2aは、SR221S船型のA船型(U字船型)の形状とし、船体没水後半部2bをNACA0020の翼型形状としたものである。また、図4~図6に示す第2の実施の形態の航走体1ABは、同じく大型タンカーを例示したものであり、船体没水部2をNACA0020の翼型形状としたものである。
一方、図7~図9に示す第3の実施の形態の航走体1BAは、潜水艦を例示したものであり、船体没水部2の船体没水前半部2aは、楕円形の形状とし、船体没水後半部2bをNACA0020の翼型形状としたものである。また、図10~図12に示す第4の実施の形態の航走体1BBは、同じく潜水艦を例示したものであり、船体没水部2をNACA0020の翼型形状としたものである。
〔船体没水部の後半部が対称翼型形状又はその近似形状〕なお、実際には、完全な翼型形状とすることが困難な場合もあるので、図13に示すように、船体没水後半部2bが翼型形状の航走体1CAに場合には、航走体の前後方向Xにおける船体没水部2の浮心Pfよりも後方を船体没水後半部2bとしたときに、この船体没水後半部2bにおける翼型形状に関しては、翼型形状の範囲を少なくとも下記のような範囲としている。
この範囲は、航走体の上下方向Zにおける船体没水部2(図1、図3、図4、図5の喫水d、図7、図9、図10、図12の船体没水部の高さD)の70%から100%、より好ましくは80%から100%の第1上下範囲Rzで、かつ、航走体の前後方向Xにおける船体没水後半部2bの70%から100%、より好ましくは80%から100%の第1前後範囲Rx1となる範囲であり、この範囲を第1の特定範囲Raとする。
この第1の特定範囲Raは図1~図3におけるクロスハッチングの部分となる。この第1の特定範囲Raは、航走体の上下方向Zに連続的な範囲であってもよく、間欠的又は断続的であってその総和の範囲が船体没水部2の70%から100%、より好ましくは80%から100%であればよく、また、航走体の前後方向Xに連続的な範囲であってもよく、間欠的又は断続的であってその総和の範囲が船体没水後半部2bの70%から100%、より好ましくは80%から100%であればよい。
そして、上記の第1の特定範囲Raの範囲の水平断面で、船体没水後半部2bの水線面3(z)の外形線Ls(z)が、船体没水後半部2bの水線面3(z)の外形線Ls(z)に内接する対称翼型20(z)の外形線L1(z)と、船体没水後半部2bの水線面3(z)の外形線Ls(z)に外接する対称翼型30(z)の外形線L2(z)の間に入っていることとしている。なお、ここでは、内接する対称翼型をNACA0015の翼型形状とし、外接する対称翼型を「NACA0020」の翼型形状としている。
さらに、内接する対称翼型20(z)と外接する対称翼型30(z)の関係においては、内接する対称翼型20(z)の面積S1(z)が、外接する対称翼型30(z)の面積S2(z)の80%以上100%以下、好ましくは、90%以上100%以下、より好ましくは、95%以上100%以下であるとしている。
〔船体没水部の全体が対称翼型形状及びその近似形状〕また、図14に示すように、船体没水部2が翼型形状の航走体1CBの場合には、この船体没水部2における翼型形状に関しては、翼型形状の範囲を少なくとも下記のような範囲としている。
この範囲は、航走体の上下方向Zにおける船体没水部2(図1、図3、図4、図5の喫水d、図7、図9、図10、図12の船体没水部の高さD)の70%から100%、より好ましくは80%から100%の第1上下範囲Rzで、かつ、航走体の前後方向Xにおける航走体の全長Lbの70%から100%、より好ましくは80%から100%の第2前後範囲Rx2となる範囲であり、この範囲を第2の特定範囲Rbとする。
この第2の特定範囲Rbは図4~図6におけるクロスハッチングの部分となる。この第2の特定範囲Rbは、航走体の上下方向Zに連続的な範囲であってもよく、間欠的又は断続的であってその総和の範囲が船体没水部2の70%から100%、より好ましくは80%から100%であればよく、また、航走体の前後方向Xに連続的な範囲であってもよく、間欠的又は断続的であってその総和の範囲が航走体の全長Lbの70%から100%、より好ましくは80%から100%であればよい。
そして、上記の第1上下範囲Rzかつ第2前後範囲Rx2の範囲の水平断面で、船体没水部2の水線面3(z)の外形線Ls(z)が、船体没水部2の水線面3(z)の外形線Ls(z)に内接する対称翼型20(z)の外形線L1(z)と、船体没水部2の水線面3(z)の外形線Ls(z)に外接する対称翼型30(z)の外形線L2(z)の間に入っていることとしている。なお、ここでは、内接する対称翼型をNACA0015の翼型形状とし、外接する対称翼型をNACA0020の翼型形状としている。
そして、内接する対称翼型20(z)と外接する対称翼型30(z)の関係においては、この船体没水部2において、内接する対称翼型20(z)の面積S1(z)が、外接する対称翼型30(z)の面積S2(z)の80%以上100%以下、好ましくは、90%以上100%以下、より好ましくは、95%以上100%以下であるとしている。
〔同一又は相似の対称翼型形状〕そして、上記の航走体1において、内接する対称翼型20(z)の外形線L1(z)と外接する対称翼型30(z)の外形線L2(z)が、同一形状又は相似形状であるように構成すると、船体没水部2の形状をより単純な形状にすることができる。
〔対称翼型の形状の上下方向の変化〕さらに、上記の航走体1において、内接する対称翼型20(z)の外形線L1(z)と外接する対称翼型30(z)の外形線L2(z)が、航走体の上下方向Zにおける第1上下範囲Rzで、同一形状又は相似形状であるように構成されると、船体没水部2の形状を比較的単純な形状にすることができ、船体外板の加工工程が複雑化するのを抑制できる。
〔横断面の形状〕なお、船体没水部2の横断面形状においては、水上航走体1AA、1ABにおいては、図15に示すように、浮力及び内部容積の確保が容易な(a)U字型船形や、浮力及び内部容積に比べての上甲板の面積の確保が容易な(b)V字型船形や、U字型船形とV字型船形の間の(c)中間船形や、(d)楕円形船形などを例示することができる。また、水中航走体1BA、1BBにおいては、図16に示すように、(a)円形船形、(b)横長楕円形船形、(c)縦長楕円形船形等を例示することができる。
〔ビルジ部の形状〕この断面形状では、水上航走体のみならず水中航走体にも言えることであるが、側部2eから底部2fに移行する部分で翼端渦が発生しないように、ビルジ部2gを比較的大きな円弧状曲線で形成したり、側部2eと底部2fを連続的な曲線形状で形成したりすることが好ましい。また、浸水表面積の減少が摩擦抵抗の減少に大きく貢献するので、円弧形状とすると同じ容積に対して表面積が最小になるので、この円弧形状に近い形状にすることが好ましい。
〔側面視の形状〕また、船体没水部2の側面視での形状(プロファイル:側面線図(Shee Plan))船首の形状においては、図17に示すように、上下方向に変化が無くて製造し易い(a)平行翼船形、下方が後方に後退して錨の収納と昇降が容易な(b)後退翼船形、下方が前方に前進している(c)前進翼船形等が考えられるが、中央が後方に後退している(d)凹形状船形、中央が前方に前進している(e)凸形状船形等も考えられる。
また、船体没水部2の側面視での船尾の形状においては、図18に示すように、上下方向に変化が無くて製造し易い(a)平行翼船形、下方が後方に後退して錨の収納と昇降が容易な(b)後退翼船形、下方が前方に前進している(c)前進翼船形等が考えられるが、中央が後方に後退している(d)凸形状船形、中央が前方に前進している(e)凹形状船形等も考えられる。いずれにしても、船尾側は、従来のスクリュープロペラ推進器や舵の配置を考えなくてよい船形とすることができる。
〔形状の組み合わせ〕これらの横断面形状および側面視の形状に関しては、航走体に要求される性能や設備等に応じて、それぞれの形状による得失を考え併せて、それぞれの横断面形状および側面視の形状を選択又は組み合わせをしたり、それらを変形したりすることで、その用途に対してより適切な形状とするべきと考える。
〔対称翼型形状の性能〕以下、第2の実施の形態の船舶1ABを基にして、本発明の対称翼型船形の航走体におけるより詳細な構成とそれに起因する性能に関して説明するが、第1、第3、第4の実施の形態の航走体1AA、1BA、1BBのいずれにも適用可能である。つまり、以下の構成は、第1の実施の形態の船舶1AA、第3の実施の形態の潜水艦1BA、第4の実施の形態の潜水艦1BBにも同様な構成が適用できるが、説明の簡略化のために図面及び説明を省いている。なお、各実施の形態で異なる場合はその都度、その差異を説明する。
〔粘性抵抗に関する性能〕先ず、最初に、粘性抵抗に関して説明する。ここで、従来技術での粘性抵抗の扱いについて説明すると、船舶の抵抗Rtは、造波抵抗R、粘性圧力抵抗(形状抵抗)R、粘性摩擦抵抗Rの3つに分離して考えている。
〔粘性摩擦抵抗〕そして、実船の粘性摩擦抵抗Rは「相等平板」の摩擦抵抗Rに等しいとの考え方に基づいて、「ケー・イー・シェーンヘルの式「0.242/(√C)=log10(Rn×C)」による摩擦抵抗係数(式又は数値表)を使用して、実船のレイノルズ数「Rn=V×LWL/ν」(V:速度、LWL:代表長さ、ν:動粘性係数)から摩擦抵抗係数「C=R/(ρSV/2)」(ρ:液体の密度、S:船の浸水表面積、V:船の速度)を算出している。
〔粘性圧力抵抗〕一方、粘性圧力抵抗Rは、形状影響係数kを用いて、「R=R×k」として求めている。この形状影響係数Kは、経験的に、方形係数Cb、Lpp/B、B/d等を基に形状影響係数Kを表示するように作成したチャートから、あるいは、模型船による水槽実験の結果等から経験的に推定して求めている。
〔粘性抵抗の例示〕なお、海水15℃では、ν=1.187×10-6[m/s]、ρ=104.51[kg・s/m]である。そのため、LWL=300[m]、V=15[ノット]=7.72[m/s]で、Rn=1.95×10のとなるので、C=1.41×10となる。また、形状影響係数Kは、肥大船では、0.2~0.4程度とのデータがある(笠原良和「肥大船の形状影響係数の簡易推定」日本造船学会論文集第186号、p.169~p.176)。
〔対称翼型船形の粘性抵抗〕これに対して、翼型形状の船舶とした場合には、基にした翼型の実験結果は、粘性圧力抵抗(形状抵抗)Rと粘性摩擦抵抗Rの和である抗力Fして表わされている。この対称翼の抗力に関するデータに関しては、アスペクト比が比較的大きい2次元的な翼型形状に対しては、空気中における風洞実験による抵抗測定がなされてはいるものの、低レイノルズ数領域のものが多い。そのため、現時点では、実船として使用可能なデータとしての極端にアスペクト比の小さい対称翼の抵抗係数Cに関しては、実験データは無いようであるが、今後風洞実験や水槽実験や数値シミュレーション計算等で推定可能と考える。
従って、現状では、抗力係数だけでなく、同じ浸水容積に対する浸水表面積が関係してくるので、抵抗性能の優劣に関しての数値的なデータは示せないが、二次元での対称翼型形状では、現状の低速の商船よりも後端からの流れが滑らかになり、伴流領域が減少すると考えられるので、対称翼型船舶の方が低速の商船よりも粘性抵抗は減少すると推定される。なお、艦艇においては、伴流領域が減少して、航跡が薄くなり、上空からの航跡の探知や業来のセンサによる伴流の探知が難しくなるので、有利となる。
〔バラスト状態における粘性抵抗減少効果〕なお、商船のバラスト状態においては、従来技術では、船尾に配置したプロペラを水没させるために、バラスト水を積み込んで船尾喫水をある程度大きく確保しつつ、船首側もある程度没水させている。そのため、バラスト状態においても浸水面積が比較的多くなり、粘性抵抗も満載状態に比べて大きく減少しない。
しかしながら、本発明の対称翼型形状の水上航走体では、下記するように、推進用機器や舵を船尾に配置しないので、横揺れの復原性能の調整以外ではバラスト水を積み込む必要がなく、船尾喫水の確保や船尾トリムも不要になる。そのため、バラスト状態においては浸水面積を従来技術の船舶よりも小さくできるので、粘性抵抗を減少できる。また、バラスト水の積込量を減少又は不要にできるので、バラスト水処理装置も小さく又は不要にすることができる。この積荷量に合わせて喫水を設定できる利点は、比較的低速で粘性抵抗の割合が大きく、かつ、積載重量が大きく、満載状態とバラスト状態で必要な没水容積(浮力)が大きく異なるタンカーや鉱石運搬船など商船ではより大きくなる。
〔従来技術との組み合わせ〕なお、本発明の対称翼型形状に加えて、従来技術で発展してきている空気吹き出し方法(空気潤滑法、気体潤滑法)、船体表面変形法、船体表面の境界層制御方法、ポリマー添加方法、摩擦低減剤を用いた摩擦低減方法等を併用することができるが、この本発明の対称翼型形状を用いたことにより、これらの従来の方法の欠点を克服できるというものではなく、並列的な関係にあると考える。
〔魚とクジラとその遊泳速度〕また、ここで考えている航走体1は、高レイノルズ数領域での航走となる。参考までに、魚の遊泳速度では、「うなぎ」で、体長0.15~0.30mで0.9~1.5m/sのレイノルズ数Rn=0.4×10、「サケ」の最大遊泳速度(突進速度)で、体長0.5mで5m/sのRn=2.1×10程度であり、「カツオ」は体長0.9mで、16.7m/s(Rn=1.3×10)、魚の中で最速と言われ、また、成長に伴い鱗を消失する「メカジキ」で、体長3.39mで、22.7m/sのRn=5.5×10となっている。また、クジラの中で最速といわれる「イワシクジラ」は体長15mで、18.1m/sのRn=2.3×10となっている。
これらから、大型タンカーのレイノルズ数の約2.0×10と比べて、まだオーダーが1桁小さいが、これらの生物の体の表面の状態を考えると、レイノルズ数が高くなると、鱗などの表面形状による摩擦抵抗の減少の効果を発揮する範囲の外になる可能性が大きいのではないかと思われる。むしろ、船体表面における境界層制御の方が、低減効果がある可能性が高いのではないかと思われる。
〔本発明の第2の意図:配置の自由度の増加〕以上、対称翼型船形に関して説明してきたが、本発明では、さらに、対称翼型船形の採用に際して、スクリュープロペラ推進器等の推進用機器や舵等の操舵用機器の配置を従来技術の排水量型船舶の船尾部での配置から大きく変更することにより、スクリュープロペラ推進器等の推進用機器を船尾の伴流中に配置する構成を避けて、舵とスクリュープロペラ推進器と船底との干渉を排除するとともに、推進用機器及び主機関の配置(レイアウト)の自由度を増す構成とすることができる。また、同時に、推進用機器と舵を船尾部に配置する従来技術で問題となっている「推進性能や操縦性能などの諸問題」の解決と「設計及び製造」の簡略化を意図するものである。
〔推進性能〕次に、推進性能に関して説明する。ここでは、本発明の航走体1における推進用機器の配置について推進性能の面から説明する。なお、ここでいう「推進用機器」はスクリュープロペラ推進器やウォータージェット推進器の噴射口等の直接に推力を発生する機器のことを言い、主機関や動力伝達システムを含まない。この推進用機器7を用いて航走体1を前進及び操船するように構成する。
つまり、従来の船舶等の水上航走体1や魚雷や潜水艦などの水中航走体1では、一般的にスクリュープロペラ推進器等の推進用機器7を船尾に配置している。この航走体1においては、図19~図24に例示するように、推進用機器7を船体没水部2の側部2eや底部2fに配置することで、船尾側に推進用機器7を駆動するための主機関を配置する容積を確保する必要が無くなり、船尾形状を翼型形状又はその近似形状に維持することができる。また、船体没水部2が発生するビルジ渦と、推進用機器7の水流と、舵による流れの間の船尾における干渉が無くなる。
更に、推進用機器7は、推進力を発生する部分が、航走体1の計画速度で前方に直進しているときに、船体没水部2の伴流の領域(境界層領域)の外部になるように船体没水部2から離間して配置されることが好ましい。この伴流の領域とこの離間距離は、境界層の厚さに関係する大きさであり、実機計測又は水槽実験や数値シミュレーション等から容易に推定または決定することができる。
これにより、推進用機器7で生じる水流が船体没水部2の対称翼型の形状で得られる効果や性能に悪影響を及ぼさないようにすることができる。その結果、それぞれの推進用機器7の推進性能と舵性能と対称翼型形状による抵抗性能を流体力学的に分離して単純化して、評価、分析及び設計できるようになる。例えば、ポッド推進器を模型船に取り付けた状態で実施される自航試験を不要にすることができる。
また、従来の船型では、スクリュープロペラ推進器が船尾にあり、後進時にスクリュープロペラ推進器に流入する水流が舵や船体の影響を受けるため、後進時における操船が難しくなっていたが、上記の推進用機器7の配置によれば、推進用機器7の後進操作時に、推進用機器7が船体没水部2の影響を受けないので、大きな後進力を得られる上に、舵との干渉も無いので、後進時の推進用機器7による旋回モーメントの推定が容易となり、操船も容易に行えるようになる。
〔推進用機器の種類〕この推進用機器7として、より具体的には、スクリュープロペラ(固定ピッチプロペラ、可変ピッチプロペラ)、二重反転プロペラ、スパイラルプロペラ、コルトノズル、フォイトシュナイダープロペラ、旋回式推進器(ポッド推進器、アジマスプロペラ)、タンデム型の二重反転システム(船尾プロペラ+ポッド推進装置)、リム駆動式スラスター、ウォータージェット推進器(ポンプジェット推進器、ハイドロジェット推進器)等を用いることができる。
そして、推進用機器7において、スクリュープロペラ推進器を用いる場合に二重反転プロペラを用いると、構造が複雑になるという問題があるが、推進用機器7のプロペラの回転により発生する回転流によるエネルギー損失を回収できる上に、プロペラの回転により発生する発生するモーメントが小さくなるので、推進用機器7の支持部材7bが構造的に楽になる。また、同様に、ウォータージェット推進器を用いても、推進用機器の推進方向の軸回りのモーメントを少なくすることができる。
〔推進用機器の数〕また、少ない数の推進用機器7の場合には、一基当たりの発生推力が大きくなり、装置及び支持部材7bが大きくなり、大きな推力を受ける部分の船体構造も頑丈にする必要が生じる、これに対して、推進用機器7を多数用いると、一基当たりの発生推力が小さくなり、既に実用化されている装置を使用できる上に、装置及び支持部材7bも小さくなり、推力を受ける部分の船体構造も少ない補強で済むようになる。
また、満載状態とバラスト状態では浸水面積が大きく変化し、必要な推力が大きく変化するが、全体の推力調整を推進用機器7の稼働数で調整でき、各推進用機器7のプロペラ効率の良い回転数で推力を発生できるなど、エネルギー効率を良くすることができる。また、推進用機器7の冗長性を確保でき、安全性を向上できる。
〔推進用機器の側部配置〕この推進用機器7の第一の配置例として、図19及び図20に示すように、航走体1(図では1AB)において、航走時に船体没水部2の側部2eに推進用機器7を配置する。特に、推進用機器7は、満載状態(満載喫水WL)で航走するときのみならず、バラスト状態(バラスト喫水WLb)で航走するときも考えて配置したり、没水位置を変更できるようにしたりして、それぞれの状態で没水するように配置する。なお、ウォータージェット推進器を採用する場合には必ずしも、その噴射口は、水噴出のときに水圧を受けないように、水面上に配置してもよい。
なお、図19及び図20では、推進用機器7を各舷側に1基の配置としているが複数基の配置としてもよい。この複数基の配置としては、航走体の前後方向Xの位置を変えて配置してもよい。また、航走体の前後方向Xの位置とともに航走体の上下方向Zを変えて、前方の推進用機器7の水流が後方の推進用機器7に及ぼす影響を少なくするように配置してもよい。
また、図19に点線で示す推進用機器7の配置のように、航走体の前後方向Xの位置は略同じで、航走体の上下方向Zに並列的に並べて配置してもよい。この配置の場合においては、バラスト状態で航走するときには、浸水面積が減少し、必要な推進力も減少するので、バラスト喫水WLbより上になる推進用機器7は使用せずに、バラスト喫水WLbより下にある推進用機器7だけで航走するように構成してもよい。
〔推進用機器の底部配置〕また、推進用機器7の第2の配置例として、図21及び図22に示すように、航走体1(図では1AB)において、航走時に船体没水部2の底部2fに配置する。なお、図21及び図22では、推進用機器7を各舷側に1基の並列配置としているがそれぞれの舷側側に複数基の配置としてもよい。この複数基の配置としては、航走体の前後方向Xの位置は略同じで、航走体の幅方向Yに並列的に並べて配置してもよく、航走体の前後方向Xの位置を変えて配置してもよい。また、航走体の前後方向Xの位置とともに航走体の幅方向Yを変えて、前方の推進用機器7の水流が後方の推進用機器7に及ぼす影響を少なくするように配置してもよい。なお、特に図示しないが、ビルジ部2gに推進用機器7を配置してもよい。
〔推進用機器の底部中央配置〕また、推進用機器7の第3の配置例として、図23及び図24に示すように、航走体1(図では1AB)において、航走時に船体没水部2の底部2fの中央線Lcの上に配置する。なお、図23及び図24では、推進用機器7を中央線Lcの上に1基の配置としているが航走体の前後方向Xにずらせて、複数基の配置としてもよい。プロペラを用いた推進用機器7を複数基の配置する場合は、前方の推進用機器7で発生する水流の回転流のエネルギーを回収できるように、後方の推進用機器7のプロペラの回転航行は、前方の推進用機器7のプロペラの回転方向と逆方向とすることが好ましい。
〔推進用機器の格納方式〕また、推進用機器7を船体没水部2の側部2eに配置する場合には、航走体1の接岸時に邪魔にならないように船体没水部2の内部や甲板上に格納することが好ましい。この格納方式としては、図30に示すような、推進用機器7を船体没水部2の側面の一部に上から回動させて横に位置するような回動方式、図31に示すような、推進用機器7の支持部材7bを折って側部2eの凹部2hまたは上甲板iの上に移動させる転倒方式、図32に示すような、船体没水部2の側面の一部から推進用機器7を側方に伸縮する伸縮方式、図33に示すような、上甲板2iより降りてくる昇降方式、その他の方法等様々な方式を用いることができる。
なお、航走体1が接岸する側が決まっている場合には、必ずしも、接岸しない側の推進用機器7は収納可能に構成しなくてもよい。また、接岸に際しては、必ずしも船体没水部2を接岸させる必要がなく、人員と物資の通路の確保ができれば良いので、通路を架橋することで対応するように、側部2eに設けた推進用機器7を格納せずに固定する固定方式としてもよい。この固定方式は、貨物船などの乗客の乗降がない商船、特に港に寄らず、沖合バースで荷役するタンカー等ではより好ましい方式である。
また、推進用機器7を船体没水部2の底部2fに配置する場合には、航走体1が港湾等の浅海を航走する際には邪魔にならないように、推進用機器7を船体没水部2の内部に格納するか、あるいは、側部2eに移動させることが好ましい。この格納方式としては、図34に示すような、推進用機器7を船体没水部2の底部の内部に上昇させて格納する昇降方式、図35に示すような、推進用機器7の支持部材7bを折って底部2fの凹部2hに格納する転倒方式、図36に示すような、底部2fから転倒して側部2eに、更には、上甲板2iの上に移動するような回動方式等様々な方式を用いることができる。
また、推進用機器7を船体没水部2の側部2e及び底部2fに配置する場合に、上記のように横断面内(Y-Z面内)で推進用機器7を移動させる構成を例示したが、縦断面内(Z-X面内)で推進用機器7を移動させる構成としてもよく、水平面内(X-Y面内)で推進用機器7を移動させる構成としてもよい。この格納方式としては、航空機の車輪の格納方式を参考にすることができる。
ただし、浅海域や港湾内や接岸時に船底と海底との間に余裕がある場合には、推進用機器7を底部2fに固定する固定方式を採用してもよい。なお、航走体1がタグボートの力を借りて移動する場合には、推進用機器7を完全に格納してもよいが、航走体1が自航する必要がある場合は、港湾内では一般に低速で航走するので、図36に示すように側部2eに移動させるか、あるいは、出力の小さい自航用の推進用機器7を予め側部2eに別途備えておき、この推進用機器7を用いる等の構成にしてもよい。
〔推進性能面から見た推進用機器の配置〕推進性能の面においては、航走体の前後方向Xと航走体の幅方向Yに関する推進用機器7の配置に関しては、一つ目の考え方としては、推進用機器7同士の相互間での干渉と、推進用機器7と船体没水部2とが相互間の干渉がない配置にして、船体没水部2の推進抵抗と推進用機器7の推進性能を別々に評価できるようにするという「干渉回避」の考え方がある。また、二つ目の考え方としては、推進用機器7による水流を船体没水部2と積極的に干渉させて、船体没水部2の境界層制御を行い、全体としての推進性能を向上させるという「積極的干渉」の考え方がある。なお、操縦性能の面において、推進用機器7を用いて回頭する方法を採用する場合は、後述するように、推進用機器7の航走体の前後方向Xの位置は操船の制御面に影響を及ぼすことになる。
この一つ目の「干渉回避」の考え方で側部2eに配置する場合は、船体没水部2の最大幅Bmの部位Rbよりも前方またはこの部位Rbに配置するときには、推進用機器7で発生する水流の影響が船体没水部2に及ばないようにするためには、正面(航走体の前後方向Xの前方)から見て推進用機器7が船体没水部2の最大幅Bmよりも外側になるように配置する。この場合は推進用機器7の支持部材7bが長くなる。また、最大幅Bmの部位Rbよりも後方に配置するときには、僅かな離間距離で、推進用機器7で発生する水流の影響が船体没水部2に及ばないようにすることができるので、推進用機器7の支持部材7bが短くて済むようになる。
また、この「干渉回避」の考え方で底部2fやビルジ部2gに配置する場合は、船体没水部2の底部2fより、その推進用機器7の配置位置の境界層厚さや伴流域の外の領域に推進用機器7を底部2f又はビルジ部2gから離間して配置する。また、後述する底部舵5や船尾舵システム6の領域に推進用機器7で発生する水流が流入しないように、正面から見て、底部舵5や船尾舵システム6の領域を避けて配置する。
そして、二つ目の「積極的干渉」の考え方で側部2e又は底部2f又はビルジ部2gに配置する場合は、船体没水部2の浸水表面における境界層制御を推進用機器7で派生する水流で行うことにより、船体没水部2の粘性抵抗をより減少できる可能性がある。特に、推進用機器7を従来技術の船尾配置から、側部2e、底部2f、ビルジ部2gに配置場所を移動するので、船体没水部2の比較的多くの場所おいて、推進用機器7を用いて水流を吸引したり、水流を当てたりすることができるようになる。この船体没水部2と推進用機器7の相互干渉の流れは複雑になると考えられるので、推進用機器7の配置場所の選定に関しては今後の研究が待たれる。
〔動力伝達システム〕この航走体1においては、主機関の動力を推進用機器7に機械的に伝達する場合は、スクリュープロペラと、アジマススラスターで用いられている「Zドライブ機構(推進軸をZ字型にして動力を機械的に伝達する機構)を用いることができるが、推進用機器7が電気を駆動源とする電気推進システムを用いるか、あるいは推進用機器7が流体圧を駆動源とする流体圧システムを用いることが好ましい。
電気推進システムを採用する場合は、スクリュープロペラと直結したポッド内に電動機を設置して推進用機器を構成し、この電動機に、船内のディーゼルエンジンやガスタービンエンジン等の主機関で発電した電力を供給する構成とする。これにより、主機関と発電機などと、推進用機器とを離間した位置に配置できるようになるので、航走体1における機器の配置上(レイアウト)の制約を少なくして、自由度を増すことができる。なお、ポッド推進装置においては、現状では、10MW、12MW、20MWの出力のポッド推進器が既に実用化されており、砕氷船やクルーズ船に1基、2基、4基で搭載されている。
また、流体圧システムを採用する場合は、油圧や空圧を使用するが、油圧を用いる油圧システムでは、可変容量型の油圧モータをポッド内部に設けて、船内からの油圧ラインで油圧ポンプから送油される作動油によって油圧モータを駆動してプロペラを回転する。この場合には、可変容量型の油圧ポンプを用いることで、電動モータを使用した場合に必要とされる変速機や冷却システムを不要にして、配置上の自由度を増すことができる。空圧システムでは発生できる駆動力の大きさは劣るが、万一破損した場合であっても海洋汚染の危険性が小さくなる。
〔主機関の配置の自由度〕これらの構成によれば、主機関と推進用機器7の間は電力用ケーブルと制御信号用ケーブルを配線するだけ、または、流体圧配管等の流体圧制御システムを配管するだけでよいので、主機関の場所を比較的自由に選択できるようになる。
従って、主機関と船橋と居住区を、主機関の配置スペースの確保が容易な船首側や中央部の比較的幅の広い部位に配置することが可能となる。また、船首側に船橋を設けると、特に水上航走体(船舶)1における航行時の前方を監視するために必要な見通し線を容易に確保できるようになる。
〔操縦性能:旋回性能〕次に、航走体1の操縦性能について説明する。この操縦性能に関しては旋回性能と針路保持性能とがあるが、最初に航走体1の旋回性能について説明する。
なお、下記のいずれの旋回方法を用いた場合であっても、一旦、航走体1が回頭し始めると、航走体1の進行方向に対して斜行することになり、航走体1に流入してくる水流Wに対して航走体1は迎角αを持って航走するようになる。そのため、船体没水部2にその形状に起因する旋回モーメント(翼のピッチングモーメント)Mtが発生する。この旋回モーメントMtと回頭用に発生させる旋回モーメントの両方により航走体1が回頭し、旋回することになる。この旋回については、「船体運動力学:元良誠三著:(社)日本船舶海洋学会:共立出版株式会社;(電子訂正版:電子訂正版製作発起人土岐直二)」に詳しい説明がある。
本発明では、航走体1の船体没水部2は対称翼の形状に一致または近似した形状をしており、航走体1の旋回モーメントに関しては、対称翼のピッチングモーメントに近い挙動を示すと考えられる。そのため、回頭時における航走体1に発生する横力と旋回モーメントを考えるときに、対称翼の「風圧中心(center of pressure)」と「空力中心(aerodynamic center)」が重要になる。
この「風圧中心」は揚力の作用点であり、この点まわりのモーメントはゼロとなる。この「風圧中心」は翼型であれば一般に、迎角が小さければ翼弦の後方に、迎角が大きくなると翼弦の前方に移動する。また、「空力中心」は迎角が変化してもモーメントが変化しない点であり、翼弦の25%の近傍にある。この「空力中心」まわりのモーメントは一定である。ただし、この「空力中心」まわりのモーメントはゼロというわけではない。
そして、対称翼では、上下キャンバーが同じ翼型なので、揚力係数が低い代りに、「風圧中心」と「空力中心」が一致するという特徴を持っており、また、迎角が変わっても「風圧中心」が翼弦方向に移動しない特徴を持っている。そして、対称翼では、「風圧中心」は、「空力中心」と一致し、この「空力中心」は、対称翼の前端から翼弦長さLcの25%近傍にある。
一方、航走体1の重心Pgは、航走体1のトリムを少なくするために、船体没水部2の浮心Pfとほぼ同じ前後位置にするので、重心Pgは船体没水部2の浮心Pfの位置若しくはその近傍になり、航走体の前後方向Xに関して、全長Lbの中心位置よりやや前方となる。そのため、通常は、浮心Pfは空圧中心Paより後方に位置することになる。
その結果、船体没水部2の後部翼端形状により、流れに対して航走体1が傾斜して迎角αが生じると、重心Pg(≒浮心Pf)より前方の風圧中心Pp(空力中心Pa)に揚力Fが作用して、迎角αを増加する方向に旋回モーメントMtが発生する。つまり、航走体1は針路不安定となる。なお、航走体1の旋回(回頭)の中心は、厳密には、航走体1の質量や慣性モーメントに加えて船体没水部2の付加質量や付加慣性モーメントを考慮した見掛けの重心Pgmとなるが、この見掛けの重心Pgmの推定は難しいので、通常は航走体1の重心Pgを旋回の中心として取り扱っている。
〔旋回方法の種類〕そして、第1及び第2の旋回方法は、航走時の推力を発生する推進用機器7を用いて航走体1を回頭及び旋回させる方法であり、第1の旋回方法は、推進用機器7を複数基使用して推力差により旋回させる方法であり、第2の旋回方法は、旋回式の推進用機器7を水平方向に旋回させて航走体1を旋回させる方法である。
また、第3の回頭方法は、サイドスラスター等の横力発生装置8を用いて回頭させる方法である。第4の回頭方法は、船体没水部2の底部2fから下側に突出する底部舵5を用いて回頭させる方法である。そして、第5の回頭方法は、船体没水部2の船尾側に設けた船尾舵システム6を用いて回頭させる方法であり、第6の回頭方法は、船体没水部2の後部に設けた後縁フラップ4を用いて回頭させる方法である。なお、これらの回頭方法は例示であり、これら以外の回頭方法を用いてもよく、これらの回頭方法の幾つかを組み合わせて用いてもよい。
〔推進用機器の推力差〕第1の旋回方法では、航走体の幅方向Yに並列して配置した推進用機器7の推力F7の差を利用して旋回モーメントMtを発生させる方法である。この方法では、これらの複数の推進用機器7が発生する推力の大きさを個別に制御するように構成して、全体として航走体1の旋回用の旋回モーメントを発生する。
この方法では、図19~図22に例示するように、航走体の幅方向Yに複数基の推進用機器7を配置している場合に、図42(a)に示すように、この推進用機器7の左舷側の推力F7pと右舷側の推力F7sの大きさに差(ΔT=F7s-F7p))を発生させることにより、旋回モーメントM7を発生させる。一旦、航走体1が回頭すると、迎角αを持つようになるので、船体没水部2に翼形状に起因する旋回モーメント(翼のピッチングモーメント)Mtを発生する。この旋回モーメントMtと推進用機器7で発生する旋回モーメントM7の両方で航走体1を回頭及び旋回させる。この方法では、推進用機器7自体を旋回させる必要は無い。
この第1の旋回方法を採用する構成では、推進用機器7で航走体1の旋回モーメントM7を得るので、後述するような後縁フラップ4、底部舵5、船尾舵システム6等を設ける必要が無くなる。そのため、船体没水部2の船尾部の構造を著しく単純化できる。また、船尾舵システム6を使用して回頭する場合においても、推進用機器7を、舵やフラップ等の補助や故障時の予備として用いることができる。あるいは、推進用機器7を旋回するときに併用することにより、底部舵5、船尾舵システム6、後縁フラップ4等が発生する旋回モーメントを小さくすることができ、これらの装置とその駆動システムを小型化できる。
〔推進用機器の旋回〕第2の旋回方法は、推進力を水平方向に旋回可能な推進用機器7を旋回させることで、航走体1の旋回モーメントを発生させる方法である。この方法では、図23に例示するように単数基の推進用機器7を配置している場合に、この航走時の推力を発生させる推進用機器7を水平方向に関して旋回可能に構成して、図42(b)に示すように、この推進用機器7を角度βに旋回させて推力F7の方向を変化させることにより、航走体1に対して旋回モーメントM7を発生させることで航走体1を回頭及び旋回させる。この場合に、推進用機器7の水平方向の回転角度は必ずしも360度にする必要は無く、航走体1の旋回に必要な角度だけ旋回する構成であれば良い。
なお、図19及び図22に例示するように、航走体の幅方向Yに複数基の推進用機器7を配置している場合においても、図42(c)に示すように、これらの推進用機器7を水平方向に旋回可能に構成して、角度βに旋回させることにより、推力F7p、F7sの方向を変化させて、航走体1を回頭及び旋回させてもよい。
この推進用機器7として、水平方向に旋回できる「アジマススラスター」などの旋回式推進器を用いることができる。また、水流の噴射方向を変更できるウォータージェット推進器を用いることもできる。さらには、船底に「シュナイダープロペラ」を突設してもよい。この「シュナイダープロペラ」は、回転する円盤に垂直に取り付けられた羽根の角度を連続的に制御して、この各々の羽根が次々と揚力(=推力)を発生させることで推進力の大きさと発生方向を任意に制御できる推進用機器である。この場合は、推進力の発生中心が船体没水体2の浮心に近い方が好ましい。
なお、推進用機器7を船体没水部2の側部2eに配置した場合には、配置位置にもよるが、旋回した推進用機器7で発生する水流が船体没水部2に流れ込む可能性がある。そのため、推進用機器7を側部2eに設けて旋回させるよりも、底部2fに設けた方がより、推進用機器7と船体没水部2との干渉が無くなるので、旋回性能を評価し易くなる。また、推進用機器7で発生する推力を効率よく、航走体1の旋回モーメントに利用することができる。
〔操船における推進用機器の前後位置〕上記の第1及び第2の旋回方法を採用する場合に関連して、推進用機器7の航走体の前後方向Xの位置について説明する。航走体1の操船に関係する前後位置としては、船体没水部2が迎角αで発生する揚力の作用点である「風圧中心」Ppと旋回時の「見掛け重心」Pgmとが重要となる。従って、推進用機器7の配置としては、航走体1の旋回モーメントを発生させる揚力の作用点である「風圧中心」Ppの近傍か、旋回中心となる「見掛け重心」Pgmの近傍に配置することが考えられる。また、主機関の近傍に配置する場合は、船体没水部2の最大幅Bmの部位Pbの近傍に配置することも考えられる。
先ず、第1の基準位置として、図43(a)に示すように、航走体の前後方向Xに関して、船体没水部2の全長を基準長Lbとし、この「風圧中心」Ppの近傍に推進用機器7を配置する場合は、「空力中心」Paが船体没水部2の形状によって決まるので、この「空力中心」Paの位置に対応する船体没水部2の前端から基準長Lbの1/4の距離の位置を基準位置Psとする。
また、第2の基準位置として、図43(b)に示すように、「見掛けの重心」Pgmや「重心」Pgは航走体1の状態により変化するが、一方で「浮心」Pfは船体没水部2の形状によって決まるので、この「浮心」Pfの近傍に推進用機器7を配置する。この場合は、船体没水部2の「浮心」Pfの位置を基準位置Psとする。
更に、第3の基準位置として、図43(c)に示すように、「最大幅」Bmの部位Rbの近傍に推進用機器7を配置する場合は、船体没水部2の最大幅Bmの部位Rbの中心Pbmの位置を基準位置Psとする。
そして、この基準位置Psに対して基準長Lbの10%の長さの分だけ前方の位置を第1位置P1とし、基準位置Psに対して基準長Lbの10%の長さの分だけ後方の位置を第2位置P2として、推進用機器7の後端の位置を推進器位置Pxとしたときに、推進器位置Pxが第1位置P1と第2位置P2との間の第3前後範囲Rx3にあるように配置する。
そして、推進用機器7の航走体の前後方向Xの位置を揚力の作用点である空力中心Paの近傍、即ち、「風圧中心」Ppの近傍に配置すると、航走体1を旋回させる旋回モーメントの算出が容易となり、また、「浮心」Pfの近傍、即ち、旋回時の旋回中心の近傍に配置すると、航走体1の旋回運動の推定が容易となり、航走体1の旋回に関しての制御が比較的簡単となる。また、船体没水部2の最大幅Bmの近傍に推進用機器7を配置することにより、推進用機器7の推進システムや格納機構等を設け易くなる。なお、魚やイルカやクジラなどの前ヒレの位置を見ると、「風圧中心」Ppの近傍に近い配置のように見受けられる。
〔推進用機器の幅方向の位置〕次に操縦性能の面から推進用機器7の航走体の幅方向Yに関する配置を考える。複数基の推進用機器7を配置する場合には、推進用機器7は船体中心線Lcに対して線対称に配置する。奇数基の推進用機器7を配置する場合には、そのうちの一基を船体中心線Lcに配置し、他に残りがあれば、この残りの複数基の推進用機器7を船体中心線Lcに対して線対称に配置する。これらの配置により、操縦性能の面での評価が単純化し、操船の制御も単純化する。
なお、推進用機器7の航走体の幅方向Yに関しての配置は、船体中心線Lcから離れている距離が大きい程、推進用機器7で発生する推力差や旋回式の推進用機器7で発生する推力の大きさが同じでも、旋回モーメントが大きくなる。これを考慮しながら、推進用機器7を配置できる場所と、推進用機器7の推進性能と、航走体1に要求される旋回モーメントの大きさ等を勘案して推進用機器7のそれぞれの配置場所を決めることになる。
〔横力発生装置〕第3の回頭方法は、従来技術の客船などと同じで、サイドスラスター等の横力発生装置8を用いて回頭する方法である。この方法では、図37及び図38に示すように、航走体の幅方向Yに操船用横力F8を発生する横力発生装置8を配置して、横力発生装置8を用いて回頭する。
この方法によれば、図44(a)に示すように、重心Pgより後方に横力発生装置8を設けた場合には、操作用横力F8が航走体1を右舷側(左舷側)に押し出すように、横力発生装置8を作動させると、船首側が左舷側(右舷側)に回る旋回モーメントMtを発生することができるので、航走体1が回頭及び旋回するようになる。
特に、船体没水部2の後端2dと、後端2dから船体没水部2の全長Lbの3分の1の分だけ前方の位置Px4との間の部位である第4前後範囲Rx4に、この横力発生装置8を配置すると、比較的小さな操船用横力F8で比較的大きな旋回モーメントMtを発生し易くなるので、より好ましい。
この横力発生装置8としては、サイドスラスターやアジマススラスターやウォータージェット推進器の噴射口等を用いることができる。この横力発生装置8が発生する操船用横力F8の方向は航走体の幅方向Yとするのが好ましいが、真横から航走体の前後方向Xにずれていてもよい。この構成によれば、従来の船舶の船尾に配置された舵の代わりになり、この航走体1を操船できるようになる。
〔底部舵〕第4の回頭方法は、底部舵5を用いて回頭する方法である。この方法では、図23及び図24に示すように、船体没水部2の底部2fの後方の部位に、底部2fから下方に突出する底部舵5を少なくとも航走時において配置して、底部舵5を用いて回頭する。この構成によれば、図44(b)に示すように、底部舵5の後が左舷側(右舷側)に回動して舵力(操船用横力)F5が航走体1を右舷側(左舷側)に押し出すように作用すると、船首側が左舷側(右舷側)に回る旋回モーメントMtを発生するので、航走体1が回頭するようになる。
また、この底部舵5は、船体没水部2の後方に配置されず、船体没水部2の底部2fから突出して配置されており、船体没水部2の流れの影響が少なくなるので、舵性能の推定が容易となる。そのため、この底部舵5の設計が容易となる。さらに、この底部舵5は横揺に対する抵抗となる上に、底部舵5を切ると横揺れモーメントも発生するので、横揺れ制御にも使用できる。また、底部舵5を昇降可能や横折れ可能や前折れ可能に構成して、港湾などの浅海域において曳船などで曳航される場合には、底部舵5を底部2fから船体没水部2の内部に収容する構成にすることが好ましい。この各の方法としては航空機の車輪の格納方法が参考となる。
〔船尾舵システム〕第5の回頭方法は、船体没水部2の船尾側に設けた船尾舵システム6を用いて回頭する方法である。この方法で用いる船尾舵システム6は、図25及び図29に示すように、船体没水部2の側部2eから斜め上方に突出する斜め上方船尾舵6aと、斜め下方に突出する斜め下方船尾舵6bとの組み合わせで構成される。図26は、2つの斜め上方船尾舵6aと2つの斜め下方船尾舵6bを組み合わせたX字形状舵6Aを示し、図27は、2つの斜め上方船尾舵6aを組み合わせたV字形状舵6Bを示し、図28は、2つの斜め下方船尾舵6bを組み合わせた逆V字形状舵6Cを示し、図29は、斜め上方船尾舵6aと斜め下方船尾舵6bを組み合わせた斜め舵6Dを示す。
つまり、船体没水部2の後方の部位において、船体没水部2の右舷側の側部2eから斜め上方に突出する斜め上方船尾舵6aと斜め下方に突出する斜め下方船尾舵6bの少なくとも一方を設けると共に、船体没水部2の左舷側の側部2eから斜め上方に突出する斜め上方船尾舵6aと斜め下方に突出する斜め下方船尾舵6bの少なくとも一方を設けて、船尾舵システム6を構成し、船尾舵システム6を用いて回頭するように構成される。
この構成によれば、この船尾舵システム6では、X字形状舵6A、V字形状舵6B、逆V字形状舵6C、斜め舵6Dなどの構成となるので、航走体の幅方向Yの操船用横力F6だけでなく、航走体の上下方向Zの上下力も発生できる。この操船用横力F6を用いて図44(c)に示すように、底部舵5と同様に、水平面内における旋回モーメントMtを発生して、航走体1を回頭することができる。なお、この船尾舵システム6では、上下力を発生できるので、この上下力を個別に制御しながら用いることで、横揺制御に必要な横揺れモーメントと縦揺制御に必要な縦揺れモーメントも発生できるようになる。
〔後縁フラップ〕第6の回頭方法は、後縁フラップ4を用いて回頭する方法である。この方法では、図39及び図40に示すように、船体没水部2の後端2dに後縁フラップ4を設けて、図45(a)及び図45(b)に示すように、後縁フラップ4の作動で発生する船体没水部2の旋回モーメント(翼でのピッチングモーメント:頭下げの回転モーメント)Mtを用いて回頭する。このとき、揚力(操船用横力)Fが発生するので、操船上では、この揚力Fを考慮に入れる必要がある。
この後縁フラップ4としては、構造を単純化でき、旋回モーメントMtを大きくするため、図41(a)に示すような、翼形状の後端を単に動かす単純フラップ(プレーンフラップ)4Aを採用することができる。または、図41(b)に示すような、旋回モーメントが比較的小さいが、後端の一方のみを動かすスプリットフラップ4Bを採用してもよい。この場合は、スプリットフラップの機能を発揮できるように、翼形状の後端を2つ割にして、それぞれのフラップ4bp、4bsを独立して回動することでスプリットフラップの効果を発揮させる。
また、この構成を採用すると、航走体1の直進時における停船操作の一つとして、図41(c)に示すように、スプリットフラップ4Bの両方のフラップ4bp、4bsを同時に左右の別方向に開いて航走体1に作用する抗力を大きくして停船させることができるようになる。また、単純フラップとしての機能を発揮させる場合は、両方のフラップ4bp、4bsを同時に同じ方向に回動することで、単純フラップの効果を発揮させてもよい。この後縁フラップ4は、従来技術の舵取機を用いて左右に回動させることができ、この舵取機を操作することで、航走体1を旋回させることができる。
図45(a)と図45(b)に示すように、この後縁フラップ4を右舷側(左舷側)に出すと、船首側が左舷側(右舷側)に回る旋回モーメントMtを発生させることができる。この旋回モーメントMtにより航走体1の回頭が可能となる。
より詳細には、対称翼における後縁フラップ4の操作においては、後縁フラップ4の後端を右舷側(左舷側)への曲げると、船体没水部2の全体の形状は左舷側(右舷側)に凸のキャンバーを持つ翼型形状となるので、船体没水部2の作用点(風圧中心)Ppに左舷側(右舷側)方向に向かう揚力Fが発生する。この揚力Fにより、船体没水部2の先端2cを左舷側(右舷側)に曲げる旋回モーメントMtが発生し、航走体1は左舷側(右舷側)に回頭する。
なお、旋回ではなく推進抵抗に関してではあるが、後縁フラップ4を能動的又は受動的に動かすことで、航走体1の直進時における抵抗減少に寄与できる可能性があるのでではないかと考える。この場合は、後縁フラップ4をその外側の流れや渦などの発生状況を圧力センサ等で検出して、後縁フラップ4の駆動装置を用いて能動的に、又は、後縁フラップ4の周囲の流体力によって受動的に動くようにしたり、後縁フラップ4に相当する船体没水部2の部位をプラススチックやゴムなどの弾性体で形成して可撓性や柔軟性を持たせて後縁フラップ4の周囲の流体力によって変形するようにしたりする。
これらにより、船尾側における渦流の発生を抑制して、針路安定性を保持したり、粘性抵抗を低減したりすることができる可能性がある。この場合には、後縁フラップ4を航走体の上下方向Zに分割して個別に変形可能に構成すると、その場の流れに応じた変形が容易なようになる。また、後縁フラップ4を操船時には能動的に動かし、直進時には受動的に動かせるようにすることも考えられる。
〔操縦性能:保針性能〕次に、この航走体1の保針性能(方向安定性能)について考える。上記したように、航走体1は船体没水部2が対称翼型の形状に一致又は近似した形状をしている。この対称翼は、直進中に何らかの力を受けて針路が直進方向から逸れはじめると、対称翼に流入する流れに対して迎角が生じるようになり、この迎角を増加する方向に対称翼にピッチングモーメント(ここでは旋回モーメント)が発生する。その結果、この航走体1は針路不安定となる可能性が高い。
そのため、直進での航走中は航走体1の針路(船首の方向)の変化、即ち、ヨーイングの角度、角速度、角加速度などを検出して、航走体1に流入してくる水流に対して迎角αが生じた場合に、この迎角αを小さくする方向の逆旋回モーメントを発生させる必要がある。これは、上記の第1~第6の旋回方法において、それぞれの旋回方法で航走体1の旋回を弱める方向の逆旋回モーメントを発生させることで容易に達成できる。
〔横流れ〕なお、第1の旋回方法においては、推進用機器7の推力差で針路保持する場合には迎角αに起因する旋回モーメントを相殺するための推力差の発生では、迎角αに起因する揚力F以外には横力の発生が生じない。しかしながら、第2~第6の旋回方法においては、迎角αに起因する揚力Fに加えて操船用横力が発生する。この操船用横力は、旋回した推進用機器7の推力F7の幅方向成分、横力発生装置8で発生する横力F8、底部舵5が発生する舵力F5、船尾舵システム6が発生する舵力F6等である。
従って、いずれの回頭方法を採用する場合においても、航走体1の旋回時には横力(揚力+操船用横力)が発生し航走体1の横流れが生じることになる。ただし、この横流れは、従来の船型の船舶において船尾舵を切る際にも生じていることである。
〔斜行〕次に、この横流れに関連して、対向船に対する避航に関して考えてみると、この避航では、比較的狭い水路におけるすれ違いなどでは、旋回よりも針路を平行移動する斜行する方がよい場合がある。また、衝突を避けられない場合には船腹よりも船首で衝突した方が沈没の可能性が低くなる。そのため、斜行を可能とすることにより、正面から進行してくる他船との衝突を回避するための操船や、衝突時の損傷を軽減するための操船における操船範囲が広がるので、より安全性を高めることができる
そこで、推進用機器7の推力差を用いる第1の旋回方法を採用している場合に、ある程度の迎角αを維持しつつ、船体没水部2が発生する旋回モーメントMtを推進用機器7の推力差で発生する逆旋回モーメントで相殺しつつ、前進用の推力と揚力Fの幅方向成分を発生させたままとすることで、航走体1を斜行させることが可能となる。
また、推進用機器7の旋回を利用する第2の旋回方法を採用している場合には、推進用機器7を真横に向けて横力だけを発生させても逆旋回モーメントが発生できるので、第1の旋回方法を用いる場合と同様に、迎角αをゼロに維持しつつ、あるいは、ある程度の迎角αを持たせつつ、揚力Fと推進用機器7のそれぞれの推力の方向と推力F7の大きさを適切な値に設定及び制御することで、容易に斜行できると考える。
また、横力発生装置8の操船用横力F8を利用する第3の旋回方法を採用している場合には、第1の回頭方法を用いる場合と同様に、ある程度の迎角αを持たせつつ、揚力Fと横力発生装置8の操船用横力F8の大きさを適切な値に設定及び制御することで、船体没水部2が発生する旋回モーメントMtを横力発生装置8の操船用横力F8で発生する逆旋回モーメントで相殺しつつ、斜行は可能と考えるが、斜行できる条件は狭いと考える。
なお、舵力を利用する第4及び第5の旋回方法を採用している場合は、底部舵5、船尾舵システム6を用いて、操作用横力F5、F6の大きさを調節して、第1の回頭方法を用いる場合と同様に、ある程度の迎角αを持たせつつ、操作用横力F5、F6の大きさを適切な値に設定及び制御することで、斜行が可能な場合もあると考える、しかし、操作用横力F5、F6の大きさに限界があるので制御が難しく、また、斜行できる条件は狭いと考える。
また、後縁フラップ4を利用する第6の旋回方法を採用している場合は後縁フラップ4の操作によって船体没水部2で発生する旋回モーメントを相殺するのは難しく、斜行には他の手段が必要となると考える。
そして、上記の斜行可能な旋回方法を採用した場合においては、航走体1の迎角α、揚力F、推進用機器7の各推力F7の大きさは、実験や実機計測等で、容易に推定でき、航走時に、針路の旋回角度、旋回角速度、旋回角加速度等を検出して、推進用機器7の各推力や操船用横力F5、F6、F8を制御することで達成できると考える。
〔針路保持性能〕次に、針路保持性能について説明する。上記のように対称翼型の形状の航走体1は針路不安定になるので、推進用機器7、底部舵5、船尾舵システム6、横力発生装置8、後縁フラップ4等の制御により針路を保持する必要がある。また、これらの装置が故障すると針路保持が難しくなる。そのため、この航走体1における針路保持性能を高めるための方法として、次のような対をなす底部舵5、旋回力発生用フィン9を設けることが考えられる。
〔対をなす底部舵〕第1の針路保持機構は、図46に示すように、対をなす底部舵5、5を船体没水部2の後半側の底部2fに船体中心線Lcに対して並列に配置して構成される。この場合、「特殊安定鰭」と同様に、推進抵抗を考えて迎角ゼロにしてもよいが、船体中心線Lcに対して後方が外側に開く約3度の仰角をつけて配置してもよい。そして、航走体1の直進での航走時では底部舵5の操舵を行わず、底部舵5で発生する横力により自動的に針路保持して、航走体1の旋回時にこれらの底部舵5、5を操舵して航走体1を回頭及び旋回させる構成とする。
〔旋回力発生用フィン:・船尾側の側部配置フィン〕第2の針路保持機構は、図47に示すように、航走体の前後方向Xの中心位置よりも後方において、旋回力発生用フィン9を、船体没水部2の両舷に船体没水部2の側部2eから離間してそれぞれ単数又は複数設けて構成される。図47に示す例では、船体没水部2の船尾側の側部2eに水平に設けた支持部材9bで支持する旋回力発生用フィン9をそれぞれ単数配置して構成される。この構成では、船尾側から見ると船体中心線Lcに対して左右対称で、旋回力発生用フィン9は航走体の上下方向Z(鉛直方向)にH字形状に配置されているが、横力を発生できれば良いので船尾側から見て斜めに傾斜して設けてもよい。
〔旋回力発生用フィン:・船尾側の底部配置フィン〕第3の針路保持機構は、図48に示すように、航走体の前後方向Xの中心位置よりも後方において、単数又は複数の旋回力発生用フィン9を、単数又は複数の旋回力発生用フィン9を、船体没水部2の底部2fに設ける構成である。
単数又は奇数の旋回力発生用フィン9を設ける場合には、そのうちの幾つか(奇数)を船体没水部2の底部2fの船体中央線Lcに設け、残りの旋回力発生用フィン9が有れば、船体中心線Lcに対して左右対称に設ける。図48では、対を成す旋回力発生用フィン9を船体没水部2の船尾側の底部2fに垂直に突出させて設けて構成される例を示す。この構成においても、船尾側から見ると船体中心線Lcに対して左右対称で、旋回力発生用フィン9は航走体の上下方向Z(鉛直方向)に配置されているが、横力を発生できれば良いので船尾側から見て斜めに傾斜して設けてもよい。
〔特殊安定鰭〕なお、この第3の針路保持機構では、旋回力発生用フィン9を約3度の仰角をつけて船底に固定で配置すると、既に従来技術となっている「特殊安定鰭(ひれ)」と略同じ構成となる。この「特殊安定鰭」は、「艀(はしけ)」のように幅が広く浅くて不安定な船に有効な手段であり、一対の鰭を船体中心線Lcに対して約3度の仰角をつけて船底に固定で装着した装置である。そして、船が少し斜航すると片方の鰭に対する仰角が大きくなって揚力を発生し、斜航を減ずる方向に船尾を振らせる装置である。
〔旋回力発生用フィンの構成〕そして、第2及び第3の針路保持機構では、旋回力発生用フィン9は船体没水部2に対して固定にして受動的に横力及び逆旋回モーメントを発生するように構成してもよく、あるいは、旋回力発生用フィン9を舵のように回動可能にしたり、フラップを付けて能動的に横力及び旋回モーメントを発生したりするように構成してもよい。旋回力発生用フィン9を能動的に回動できるように構成した場合は、航走体1を旋回させる旋回方法として使用できる。
〔旋回力発生用フィンによる針路保持効果〕これらの構成で、航走体1が直進状態で航走しているときに、何らかの原因で船体没水部2の船首が右舷側(左舷側)に振れて、船体没水部2に迎角αが発生したときに、旋回力発生用フィン9を固定配置した状態でも、この両方の旋回力発生用フィン9にも同じ迎角αが生じるので、右舷側(左舷側)の外側に向かう方向の揚力F9が発生する。この時、右舷側(左舷側)の旋回力発生用フィン9では水流がそのまま流入するが、左舷側(右舷側)の旋回力発生用フィン9では船体没水部2の影響を受ける可能性がある。そして、この揚力F9で発生する逆旋回モーメントにより船体没水部2の揚力成分による旋回モーメントを相殺する。しかしながら、この揚力F9は船体没水部2に作用する揚力Fと同じ方向となるため、航走体の幅方向Yの力は相殺できず、横流れは防止できない。
なお、この旋回力発生用フィン9による揚力F9で発生できる航走体1の逆旋回モーメントは、旋回力発生用フィン9と浮心Pfとの距離が大きい程、即ち、航走体1の後端に近い程、また、航走体1の側部2eから離れるほど、大きくなる。航走体1の迎角αが小さいうちは旋回モーメントも小さいので、旋回力発生用フィン9をキャンバー付きの翼型で形成し、揚力F8と逆旋回モーメントを大きくすることで、この旋回力発生用フィン9の大きさも、ある程度の大きさに抑制できると考える。
〔耐候性能〕次に、この対称翼型の形状又はその近似形状の航走体1における横揺れと縦揺れ等の耐候性能に関して説明する。一般的に、水上航走体1AA、1ABとしての船舶においては、風波の影響を受けるので、航路の海象条件によっては、横揺れ(ローリング)を減少させるための横揺れ対策と縦揺れ(ピッチング)を減少させるための縦揺れ対策とが必要になる。
〔横揺れ対策〕この横揺れ対策としては、従来技術と同様に、ビルジ部2gにビルジキールやフィンスタビラーザーを設けることが考えられるが、ここでは、第1の方法では、図19及び図20に示すような船体没水部2の側部2eと推進用機器7の間の支持部材7bを水平フィンとして構成する。また、第2の方法では、図49に点線で示すように、推進用機器7の外側に水平フィン10を設けて構成する。さらに、第3の方法では、図49に示すように、船体没水部2の側部2eの外側に水平フィン10を設けて構成する。これらの水平フィン10により、揚力を発生するとともに、この揚力の大きさを個別に制御することにより横揺れ制御を行うように構成する。例えば、水平フィン10の迎角を制御したり、フラップ付の水平フィン10でそのフラップ10fの角度を調整して制御したりする。これにより、船体没水部2の横揺れ方向のモーメントと反対方向のモーメントを発生させて、横揺れを減衰させるように制御する。
なお、そのほかの方法として、図47に示すような垂直の旋回力発生用フィン9と、この旋回力発生用フィン9を支持する水平の支持部材9bをH字形状に備えている場合には、この支持部材9bに水平フィン10の機能を付与してもよい。さらには、推進用機器7の支持部材7bが水平方向以外の斜め方向や鉛直方向に設けられていても横揺れ方向のモーメントを発生できるので、図19~図21に示すような推進用機器7の支持部材7bや図23~図24に示すような底部舵5や図25~図29に示すような船尾舵システム6に対して、水平フィン10の機能を付与してもよい。
〔縦揺れ対策〕一方、縦揺れ対策に関して、航走体1が大きくなると一般に縦揺れが小さくなるので、特別な対策を通らなくてもよいが、横揺れ対策として設けた水平フィン10等を用いて、横揺れ対策用の揚力の制御に加えてを縦揺れ対策用の揚力の制御を行えることで対応できる。
〔本発明の効果〕上記のように、本発明の船舶によれば、大型タンカーや大型鉱石運搬船等の比較的船速が遅く、フルード数が小さく、推進性能に関しての抵抗において粘性抵抗の割合が大きい船舶において、船体没水部に翼形状を採用することで、粘性抵抗を小さくすることができる。
1 航走体
1A 水上航走体(排水量型船舶)
1B 水中航走体(潜水艦)
2 船体没水部
2a 船体没水前半部
2b 船体没水後半部
2c 船体没水部の先端
2d 船体没水部の後端
2e 船体没水部の側部
2f 船体没水部の底部
2g 船体没水部のビルジ部
3(z) 水線面(水平断面)
4 後縁フラップ
5 底部舵
6 船尾舵システム
6a 斜め上方船尾舵
6b 斜め下方船尾舵
6f 舵のフラップ
7 推進用機器
8 横力発生装置
9 旋回力発生用フィン
10 水平フィン
20(z) 内接する対称翼型
30(z) 外接する対称翼型
L1(z) 内接する対称翼型の外形線
L2(z) 外接する対称翼型の外形線
Lb 基準長
Ls(z) 水線面の外形線
LWL 計画満載喫水線
P1 第1位置
P2 第2位置
Pac 船体没水部の空力中心
Pm 船体没水部の中央位置
Pf 船体没水部の浮心
Ps 基準位置
Px 推進器位置
Rx1 第1前後範囲
Rx2 第2前後範囲
Rx3 第3前後範囲
Rx4 第4前後範囲
Rz 第1上下範囲
S1 内接する対称翼型の面積
S1b 内接する対称翼型の後半部の面積
S2 外接する対称翼型の面積
S2b 外接する対称翼型の後半部の面積
X 航走体の前後方向
Y 航走体の幅方向
Z 航走体の上下方向

Claims (18)

  1. 航走時に水面下の船体没水部(2)を有する航走体(1)であって、
    航走体の前後方向(X)における前記船体没水部(2)の浮心(Pf)よりも後方を船体没水後半部(2b)としたときに、
    航走体の上下方向(Z)における前記船体没水部(2)の70%から100%の第1上下範囲(Rz)で、かつ、航走体の前後方向(X)における前記船体没水後半部(2b)の70%から100%の第1前後範囲(Rx1)である範囲の水平断面で、
    前記船体没水後半部(2b)の水線面(3(z))の外形線(Ls(z))が、
    前記船体没水後半部(2b)の水線面(3(z))の外形線(Ls(z))に内接する対称翼型(20(z))の外形線(L1(z))と、前記船体没水後半部(2b)の水線面(3(z))の外形線(Ls(z))に外接する対称翼型(30(z))の外形線(L2(z))の間に入っているとともに、
    前記船体没水後半部(2b)において、前記内接する対称翼型(20(z))の面積(S1(z))が、前記外接する対称翼型(30(z))の面積(S2(z))の80%以上100%以下であるように構成されていることを特徴とする航走体。
  2. 航走体の上下方向(Z)における前記船体没水部(2)の70%から100%の第1上下範囲(Rz)で、かつ、航走体の前後方向(X)における航走体の全長(Lb)の70%から100%の第2前後範囲(Rx2)である範囲の水平断面で、
    前記船体没水部(2)の水線面(3(z))の外形線(Ls(z))が、
    前記船体没水部(2)の水線面(3(z))の外形線(Ls(z))に内接する対称翼型(20(z))の外形線(L1(z))と、前記船体没水部(2)の水線面(3(z))の外形線(Ls(z))に外接する対称翼型(30(z))の外形線(L2(z))の間に入っているとともに、
    前記内接する対称翼型(20(z))の面積(S1(z))が、前記外接する対称翼型(30(z))の面積(S2(z))の80%以上100%以下であるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の航走体。
  3. 前記内接する対称翼型(20(z))の外形線(L1(z))と前記外接する対称翼型(30(z))の外形線(L2(z))が、同一形状又は相似形状であるように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の航走体。
  4. 前記内接する対称翼型(20(z))の外形線(L1(z))と前記外接する対称翼型(30(z))の外形線(L2(z))が、航走体の上下方向(Z)における前記第1上下範囲(Rz)で、同一形状又は相似形状であるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の航走体。
  5. 航走時に航走用の推力を発生する推進用機器(7)を前記船体没水部(2)の側部(2e)又は底部(2f)に配置するとともに、前記推進用機器(7)を用いて航走するように構成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の航走体。
  6. 航走時の推力を発生する推進用機器(7)を単数又は複数用いて回頭をするように構成されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の航走体。
  7. 航走体の前後方向(X)に関して、前記船体没水部(2)の全長を基準長(Lb)とし、前記船体没水部(2)の前端から前記基準長(Lb)の1/4の距離の位置を基準位置(Ps)とし、前記基準位置(Ps)に対して前記基準長(Lb)の10%の長さの分だけ前方の位置を第1位置(P1)とし、前記基準位置(Ps)に対して前記基準長(Lb)の10%の長さの分だけ後方の位置を第2位置(P2)として、
    前記推進用機器(7)の後端の位置を推進器位置(Px)としたときに、前記推進器位置(Px)が前記第1位置(P1)と前記第2位置(P2)との間の第3前後範囲(Rx3)にあるように構成されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の航走体。
  8. 航走体の前後方向(X)に関して、前記船体没水部(2)の全長を基準長(Lb)とし、前記船体没水部(2)の浮心(Pf)の位置を基準位置(Ps)とし、前記基準位置(Ps)に対して前記基準長(Lb)の10%の長さの分だけ前方の位置を第1位置(P1)とし、前記基準位置(Ps)に対して前記基準長(Lb)の10%の長さの分だけ後方の位置を第2位置(P2)として、
    前記推進用機器(7)の後端の位置を推進器位置(Px)としたときに、前記推進器位置(Px)が前記第1位置(P1)と前記第2位置(P2)との間の第3前後範囲(Rx3)にあるように構成されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の航走体。
  9. 航走体の前後方向(X)に関して、前記船体没水部(2)の全長を基準長(Lb)とし、前記船体没水部(2)の最大幅の中心(Pb)の位置を基準位置(Ps)とし、前記基準位置(Ps)に対して前記基準長(Lb)の10%の長さの分だけ前方の位置を第1位置(P1)とし、前記基準位置(Ps)に対して前記基準長(Lb)の10%の長さの分だけ後方の位置を第2位置(P2)として、
    前記推進用機器(7)の後端の位置を推進器位置(Px)としたときに、前記推進器位置(Px)が前記第1位置(P1)と前記第2位置(P2)との間の第3前後範囲(Rx3)にあるように構成されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の航走体。
  10. 前記推進用機器(7)が電気を駆動源とする電気推進システムを用いているか、あるいは前記推進用機器(7)が流体圧を駆動源とする流体圧システムを用いているかのいずれか一方であるように構成されていることを特徴とする請求項5~9のいずれか1項に記載の航走体。
  11. 前記船体没水部(2)の後端と、前記後端から前記船体没水部(2)の全長(Lb)の3分の1の分だけ前方の位置との間の部位に、航走体の左右方向に推力を発生する横力発生装置(10)を配置して、前記横力発生装置(10)を用いて回頭するように構成されていることを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の航走体。
  12. 前記船体没水部(2)の底部(2f)の後方の部位に、前記底部(2f)から下方に突出する底部舵(5)を少なくとも航走時において配置して、前記底部舵(5)を用いて回頭するように構成されていることを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の航走体。
  13. 前記船体没水部(2)の後方の部位において、前記船体没水部(2)の右舷側の側部(2e)から斜め上方に突出する斜め上方船尾舵(6a)と斜め下方に突出する斜め下方船尾舵(6b)の少なくとも一方を設けると共に、前記船体没水部(2)の左舷側の側部(2e)から斜め上方に突出する斜め上方船尾舵(6a)と斜め下方に突出する斜め下方船尾舵(6b)の少なくとも一方を設けて、船尾舵システム(6)を構成し、前記船尾舵システム(6)を用いて回頭するように構成されていることを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の航走体。
  14. 前記船体没水部(2)の後端(2d)に後縁フラップ(4)を設けて、前記後縁フラップ(4)を用いて回頭するように構成されていることを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載の航走体。
  15. 航走体の前後方向(X)の中心位置よりも後方において、旋回力発生用フィン(9)を、前記船体没水部(2)の両舷側に前記船体没水部(2)の側部(2e)から離間してそれぞれ設けるか、前記船体没水部(2)の底部(2f)に航走体の幅方向(Y)に関して離間して複数設けるかのいずれか一方になるように構成されていることを特徴とする請求項1~14のいずれか1項に記載の航走体。
  16. 前記船体没水部(2)の側部(2e)と前記推進用機器(7)の間の支持部材(7b)を水平フィンとして構成するか、または、前記推進用機器(7)の外側に水平フィン(10)を設けて構成するか、または、前記船体没水部(2)の側部(2e)の外側に水平フィン(10)を設けて構成するかの少なくとも一つで、揚力を発生するとともに、この揚力の大きさを制御することにより横揺れ制御を行うように構成されていることを特徴とする請求項5~10のいずれか1項に記載の航走体。
  17. 航走時に水面下の船体没水部(2)を有する航走体(1)の粘性抵抗低減方法であって、航走体の前後方向(X)における前記船体没水部(2)の浮心(Pf)よりも後方を船体没水後半部(2b)の形状に関して、
    航走体の上下方向(Z)における前記船体没水部(2)の70%から100%の第1上下範囲(Rz)で、かつ、航走体の前後方向(X)における前記船体没水後半部(2b)の70%から100%の第1前後範囲(Rx1)である範囲の水平断面で、
    前記船体没水後半部(2b)の水線面(3(z))の外形線(Ls(z))が、
    前記水線面(3(z))の外形線(Ls(z))に内接する対称翼型(20(z))の浮心(Pf1)よりも後方の後半部の外形線(L1(z))と、前記水線面(3(z))の外形線(Ls(z))に外接する対称翼型(30(z))の浮心(Pf2)よりも後方の後半部の外形線(L2(z))の間に入っているとともに、
    前記船体没水後半部(2b)において、前記内接する対称翼型(20(z))の後半部の面積(S1b(z))が、前記外接する対称翼型(30(z))の後半部の面積(S2b(z))の80%以上100%以下であるように構成することで、航走体の粘性摩擦抵抗を減少することを特徴とする航走体の粘性抵抗低減方法。
  18. 航走体の上下方向(Z)における前記船体没水部(2)の70%から100%の第1上下範囲(Rz)で、かつ、航走体の前後方向(X)における航走体の全長(Lb)の70%から100%の第2前後範囲(Rx2)である範囲の水平断面で、
    前記船体没水部(2)の水線面(3(z))の外形線(Ls(z))が、
    前記水線面(3(z))の外形線(Ls(z))に内接する対称翼型(20(z))の外形線(L1(z))と、前記水線面(3(z))の外形線(Ls(z))に外接する対称翼型(30(z))の外形線(L2(z))の間に入っているとともに、
    前記内接する対称翼型(20(z))の面積(S1(z))が、前記外接する対称翼型(30(z))の面積(S2(z))の80%以上100%以下であるように構成することで、航走体の粘性摩擦抵抗を減少することを特徴とする請求17に記載の航走体の粘性抵抗低減方法。
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