JP2023067296A - 水上航走体における推進用機器の配置システム、及び水上航走体の操船方法 - Google Patents

水上航走体における推進用機器の配置システム、及び水上航走体の操船方法 Download PDF

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Abstract

【課題】排水量型の水上航走体において、推進用機器を船尾に配置しないことで、船尾における船体没水部の伴流と推進用機器と舵の相互干渉を排除して、船体形状及び推進用機器のそれぞれの性能を個別に評価の組み合わせで全体の評価を可能とすることにより、研究、開発、設計、製造における人的資源や物的資源の集中化を図る。【解決手段】水上航走体1において、船体没水部2の前端2aと船体没水部2の全長Lbの75%後方の位置P1との間の第1前後範囲Rx1に航走用の推力を得る推進用機器10を配置して、この推進用機器10により水上航走体1の旋回のための旋回モーメントの一部又は全部を発生するように構成する。【選択図】図1

Description

本発明は、水面を航走する排水量型の水上航走体における推進用機器の配置システム、及び水上航走体の操船方法に関する。
〔推進用機器の船尾配置〕商船や艦艇や無人水上航走体(USV)等の水上を航走する排水量型の水上航走体においては、航走するための推進用機器を船尾に配置している。これらの水上航走体では、スクリュープロペラやウォータージェット推進器を用いた推進用機器を用いることが多い。そして、これらの推進用機器を用いる場合に、伴流効果を得ることで推進性能を向上するために、水上航走体の船尾側の伴流の中に推進用機器を配置している。
つまり、従来の商船や艦艇では、推進用機器としてスクリュープロペラを用いる場合には、単数基又は複数基のスクリュープロペラを船尾の水面下に配置して推進力を得て航走する。さらに、このスクリュープロペラの後方に舵を配置して、この舵を操舵することにより、旋回等の操船を行っている。そして、スクリュープロペラを駆動する主機関は、船体没水部の船尾側に設けられている機関室に配置されている。また、舵を回動させるための舵取機を舵の上側の船体内に配置している。言い換えれば、船尾の船底の下に舵を配置している。
そのため、船尾側の水面下では、スクリュープロペラと舵が船体没水部の後方に配置され、その上側は船尾の船底で覆われる形状となっている。この船尾形状としては、水面上の部分が途中で切り落とされ、平板状に処理された形状の「トランサムスターン」、水面上の部分が丸みを帯び、後方に張り出している形状の「クルーザースターン」、水面上の部分がある高さからテーブル状に張り出した形状の「カウンタースターン」等がある。
また、高速の艦艇等では推進用機器としてウォータージェット推進器が採用されている場合がある。このウォータージェット推進器では、例えば、水上航走体の船尾側の底面から船尾に連通する管路に配置されたインペラを用いて、底面から取り込んだ水(流体)を船尾に配置されている噴射口から船体後方に吐出することにより、船体の推進力を発生させている(例えば、特許文献1参照)。
このウォータージェット推進器を用いた船舶における操船は、例えば、複数の噴射口を船尾に並列に配置して、これらの噴射口の推力に差を付けたり、噴射口に設けたデフレクタ(ノズル:水平方向噴射角偏向装置)を左右に回動して、噴射された水流の方向を変えたりすることで、操船している(例えば、特許文献2参照)。
〔旋回式推進器〕一方、最近では、船舶の推進方法として、船尾の船底の下方に船底から離間して配置される旋回式推進器を用いる方法が発展してきている。この旋回式推進器には、14MWクラスの大型のものもあり、7万総トン型の大型クルーズ客船で2基又は3基搭載している例がある。
この旋回式推進器は、アジマス推進器やポッド推進器などと呼ばれ、ダクト付きのポッド推進器や、舵板付きのポッド推進器や、プロペラの後方に舵とガイドベーンを設けたものが提案されている(例えば、特許文献3~特許文献5参照)。
また、この旋回式推進器の駆動方法に関しては、「Zドライブ」や傘歯歯車等の機械的動力伝達機構を用いるだけでなく、ポッド内に電動モータを設けたものや可変容量型の油圧モータを設けたもの等が提案されている(例えば、特許文献6~特許文献9参照)。
そして、この旋回式推進器を用いた操船に関しては、1軸のポッド推進器に加えて、制御フィンをこのポッド推進器の周囲の船体センターラインの左右もしくは船体センターライン上に略対称に配置して構成し、船舶の直進時には、制御フィンで針路安定性を向上させ、一方、船舶の旋回時には、制御フィンの旋回で発生する横力をポッド推進器の旋回で発生する横力に組み合わせることで操縦性能を向上させ、さらには、船舶の停止あるいは減速時に、制御フィンが抵抗となるように駆動することで、操縦性能の向上させる船舶が提案されている(例えば、特許文献10参照)。
しかしながら、この旋回式推進器も船尾の伴流内に配置されており、ポッドの旋回に伴い、プロペラも船の進行方向から旋回角度を持つようになるため、プロペラに流入する水流が大きく変化し、推進力の低下やプロペラの振動が発生する。これに対しては、例えば、プロペラ面の回転中心を旋回中心としたり(例えば、特許文献11参照)、ポッドに設けた舵板にフラップを設けて、これを制御したりしている(例えば、特許文献12参照)。
特開2018-135037号公報 特開平09-328096号公報 特開2010-905号公報 特開2010-221975号公報 特開2010-221976号公報 特開2012-61937号公報 特開2012-61939号公報 特表2017-518220号公報 特開2013-112091号公報 特開2011-11641号公報 特開2011-31858号公報 特開2012-111422号公報
〔推進用機器の船尾配置〕上記のように、従来技術の排水量型の水上航走体における推進用機器の配置システム、及び水上航走体の操船方法においては、船尾に配置した推進用機器で推進力を得て航走するとともに、船尾に設けた舵を操舵している。そして、これらにより、船尾側の水平方向の力と旋回するための旋回モーメントを発生して、旋回する構成を採用している。その一方で、推進システムにおいてはポッド推進器等の推進システムが発達してきており、新しい視点で対応することができるのではないかと考えられる。
上記のように、従来技術の排水量型の水上航走体では、航走するための推進用機器を船尾に配置し、この推進用機器を駆動するための主機関も船体没水部の船尾部分に配置している。そのため、船尾形状に起因する粘性抵抗の増加、船体没水部と推進用機器と舵の相互干渉、減速及び停船時における操縦性、船尾における船体振動とキャビテーション、機関室配置と見通し線の確保、船尾側でのソナーの死角等の問題がある。
〔第1の粘性抵抗の問題〕第1の粘性抵抗の問題に関しては、船体の船尾側に主機関を配置する関係から船尾部分の形状が肥えた形状になる。そのため、航走時に船尾に伴流(ウエーク)が生じ、それと共にビルジ渦が発生して、船体没水部の粘性抵抗が増加する。この伴流による抵抗損失を回復するために、推進用機器を伴流内に配置して伴流効果を得たり、推進用機器の前後にフィンやダクト等を配置して水流を整流したりする工夫がなされている。しかしながら、この伴流による抵抗損失を全部回収することは困難であるという問題がある。
特に、プロペラの荷重度を下げることでプロペラ効率が良くなるとされている低回転大直径プロペラを採用する場合には、軽荷状態においては、船尾のスクリュープロペラの先端が水面上に露出しないように、船尾喫水を増加するために、バラスト水の積込みや、船尾側を船首側よりも沈下させる船尾トリムが必要となる。その結果、軽荷状態での浸水面積が増加したり、船体没水部の姿勢が悪化したりするので、軽荷状態における粘性抵抗が増加するという問題がある。また、この積み込んだバラスト水も海洋汚染防止の観点からバラスト水処理装置で処理してから排水する必要があり、このバラスト水処理も問題となっている。
〔第2の相互干渉の問題〕第2の船体没水部と推進用機器と舵の相互干渉の問題に関しては、船尾形状が船尾における伴流の分布に大きな影響を及ぼし、しかも、この伴流の分布が複雑であり、実船における分布の推定が難しい上に、この伴流とスクリュープロペラと舵との3者の間に複雑な相互干渉が生じている。そのため、目的の推進性能や操縦性性能(針路安定性能、旋回性能)を得るためのスクリュープロペラの設計や舵の設計が難しく、船舶の模型を使用した水槽試験や数値計算技術(CFD、SBD)等が必要とされ、研究、開発、設計において多くの人的資源や物的資源が投入されてきているという問題がある。
〔第3の操縦性の問題〕第3の減速及び停船時における操縦性の問題に関しては、スクリュープロペラの逆回転時においては、船体没水部と推進用機器と舵の相互干渉による水流がより複雑化して、後進時の舵の効きが悪くなる。また、実際の操縦が難しいだけでなく、制動距離が長い。さらに、減速及び停船時における操船を行った時の船舶の動きの推定が難しいという問題がある。
〔第4の船尾における問題〕第4の船尾における船体振動とキャビテーションの問題に関しては、スクリュープロペラの直上に船底があり、プロペラ・クリアランスも大きく取れない。そのため、不均一な流れの伴流中におけるプロペラの回転で生じるプロペラ軸系のベアリング起振力により、船体振動が発生し、また、船底に加わる圧力変動により、船底振動が発生するという問題がある。
また、スクリュープロペラの位置が水面近くに配置されており、スクリュープロペラの回転に伴い上側に回ってくるスクリュープロペラの先端では没水深度が浅くなるので、この先端からキャビテーションが発生し易い。このキャビテーションにより、衝撃圧が生じて、スクリュープロペラ表面があばた状になったり、騒音や船底のエロージョン(浸食、壊食)や船尾変動圧力による船体振動や推力低下を発生したりするという問題がある。
〔第5の機関室配置の問題〕第5の機関室配置と見通し線の悪化の問題に関しては、船尾側に機関室が配置される。そのため、この機関室を管理するために、居住区や船橋が船尾側、特に機関室の直上に設けられることが多い。その結果、船尾側の船橋から船首越しに船の航路を見ることになるため、大きな船では見通し線の確保が難しいという問題がある。
〔第6の船尾の音響と航跡の問題〕第6の船尾側でのソナーの死角の問題に関しては、船尾側に推進用機器があり、この推進用機器が音源となるため、船尾側からの音響が乱され、船舶の後方領域がソナーの死角となるという問題がある。これを解決するために、ソナーを曳航しているが、対艦ミサイルや魚雷の来襲に対して、船舶が機動する場合にはソナーの曳航ケーブルが邪魔になるという問題がある。
また、航行時には、伴流が生じて航跡が残るため、上空からの視認やソナー等により航跡発見が容易となる上に、船体及び推進器より発生する航跡中の微細な気泡を追跡してくる航跡追跡(ウエーキホーミング)方式の魚雷に対する対抗策が難しいという問題がある。
本発明は上記のことを鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、船尾に推進用機器の配置することを考慮せずに、船尾形状を粘性抵抗と造波抵抗を減少する形状にすることができ、推進用機器の船尾配置に起因する、船体の船尾における伴流と推進用機器と舵の相互干渉を排除して、船体形状及び推進用機器を規格化することができて、研究、開発、設計、製造における人的資源や物的資源の集中化を図ることができる、水上航走体における推進用機器の配置システム、及び水上航走体の操船方法を提供することにある。
〔本発明:推進用機器の配置〕上記のような目的を達成するための本発明の水上航走体の推進用機器の配置システムは、水面を航走する排水量型の水上航走体の満載喫水線の状態において、水上航走体の前後方向に関して船体没水部の全長を基準長とし、前記船体没水部の前端から基準長の75%後方の位置である第1位置と前記船体没水部の前端との間の範囲を第1前後範囲として、航走時に航走用の推力を発生する推進用機器を、スクリュープロペラ推進、ウォータージェット推進のいずれか1種又はこれらの組み合わせを用いて構成するとともに、少なくとも航走時において、前記推進用機器の後端の位置である推進器位置を前記船体没水部の前記第1前後範囲に配置していることを特徴とする。言い換えれば、推進用機器を船尾以外にも配置する。
〔用語の定義〕「排水量型」とは、「船体下部が水面下に沈むことで浮力を得る船であり、航行時と停船時のいずれでも浮力を得る方法に変りはない船」の船型である。また、ここで、「船体没水部」は、満載喫水線より下の部分をいう。また、ここでいう「推進用機器」とはスクリュープロペラ推進のプロペラやウォータージェット推進の噴射口等の直接に推力を発生する機器のことを言い、主機関や動力伝達システムを含まない。
また、この「スクリュープロペラ推進」の「推進用機器」には、「固定ピッチプロペラ」と「可変ピッチプロペラ」、「二重反転プロペラ」、「スパイラルプロペラ」、「コルトノズル」、「旋回式推進器(ポッド推進器、アジマスプロペラ)」、「タンデム型の二重反転システム(船尾プロペラ+ポッド推進装置)」、「リム駆動式スラスター(ボスレス式の船舶推進装置)」、「リングプロペラ」「コルトノズル付リングプロペラ」等が含まれるが、外車やシュナイダープロペラは含まれない。また、「ウォータージェット推進」は、「ポンプジェット推進」、「ハイドロジェット推進」とも呼ばれる。
なお、「リム駆動式スラスター」は、回転中心軸を持たずに、円周形状のリムの回転部分に固定されたプロペラ翼を、このリムの回転部分の回転により回転させて推力を得るスラスターである。この「リム駆動式スラスター」で、さらに、リムの回転部分を電磁誘導で回転させる構成にすると、ドライブシャフトやギヤが不要になるので、従来のプロペラ回転軸によりプロペラ翼を回転させる機構に比べて、可動部分の数が少なくなる。そのため、この「リム駆動式スラスター」は、高機械効率、省スペース、かつ、静粛性に優れたスラスターとなる。
なお、「少なくとも航走時に・・・配置して」という意味は、「航走時でないときは、この位置に無くてもよい」という意味である。言い換えれば、航走しないときや、出入港のとき等で曳航されるなどで自航しないときには、推進用機器を、航走時とは別の場所に格納しておいてもよいということである。
これに関して、水上航走体の接岸時に邪魔にならないように、推進用機器を格納及び展開させる方式としては、垂直面内での回動で移動する転倒方式や、水平方向に移動する伸縮方式や、水平面内で旋回する旋回方式、上下移動する昇降方式等が考えられる。これらの方式を用いて推進用機器を水上航走体の内部や甲板上等に格納可能に構成することが好ましい。なお、従来の接岸方法に拘らずに、水上航走体の船体を岸壁や桟橋から離間した状態のまま、上陸用通路を岸壁や桟橋と水上航走体の間に架橋する方法を採用してもよい。
また、ここでの「推進用機器の後端の位置」は、「スクリュープロペラ推進」の「推進用機器」では最後方のプロペラ翼の最後端の位置、「ウォータージェット推進」の「推進用機器」では噴射口の後端の位置をいう。
また、船体没水部の内部に主機関を配置して、この主機関の動力を、各種のプロペラ等の推進用機器に機械的に伝達する場合には、アジマススラスター等の旋回式推進装置で用いられている「Zドライブ機構(推進軸をZ字型にして動力を機械的に伝達する機構)」を用いることができる。また、電気モータや流体圧モータを用いたポッド推進装置で採用されている既存の動力伝達機構を用いることで、水上航走体の前後方向に関しても主機関と推進用機器との距離を大きくとることができるようになる。
〔効果1〕従って、この構成によれば、航走時に航走用の推力を発生する推進用機器を船体没水部に配置することで、船尾に推進用機器を駆動するための主機関を配置する必要がなくなり、主機関の配置場所の自由度を増加させることができる。その結果、船尾における形状の制限が無くなり、粘性抵抗や造波抵抗がより少ない形状を選択することができるようになる。なお、本発明では、船尾のみに推進用機器を配置する構成を排除する構成であるが、権利範囲を明確にする必要のため、先端から3/4の船体没水部に推進用機器を配置する構成としている。ただし、一部の推進用機器を船尾に配置する構成を除外するものではない。
〔効果2〕また、推進用機器を複雑な船尾の流れの影響を受けない範囲に配置するので、この船尾流れと、「スクリュープロペラ推進」ではプロペラ後流と、また、「ウォータージェット推進」では噴射流との相互干渉が無くなる。そのため、船体と推進用機器のそれぞれの推進性能と操縦性能を流体力学的に比較的容易に分離して、実験、分析及び設計等ができるようになる。
〔効果3〕また、従来技術の推進用機器の船尾配置の場合では、軽荷排水量の状態のときには、船尾の推進用機器の一部が水面上若しくは水面近傍に位置しないようにバラスト水を積み込んで船尾トリムを採用している。そのため、船体没水部の浸水表面積が増加してその分摩擦抵抗が大きくなっている。これに対して、本発明の推進用機器の配置によれば、船尾トリムを不要にすることができるので、船体没水部の浸水表面積が減少し、その結果、摩擦抵抗がその分小さくなる。また、バラスト水の搭載を不要にしたり、バラスト水タンクの容積を小さくしたりすることができ、それに伴い、バラスト水処理装置の能力を減少できる。その結果、貨物の搭載容積を増加できる。
〔効果4〕また、推進用機器の後進操作時においても、推進用機器と船体没水部と舵との干渉も少なくなるので、推進用機器が受ける船体没水部の影響が少なくなる。そのため、大きな後進力を得られる上に、後進時の操船を容易に行えるようになる。
〔本発明:推進用機器の離間配置〕そして、上記の水上航走体の推進用機器の配置システムで、航走時において、前記推進用機器が前記船体没水部の流れの影響を受けない範囲に配置されるように、前記推進用機器を前記船体没水部の表面から予め設定した距離だけ離間した位置に配置して構成する。この「離間した位置」とは「船体没水部に起因する流れ(境界層や伴流)の影響を受けない範囲の位置」で、「外部の一様の流れの中の位置」という意味であり、この「離間した位置」は実験や流体数値計算等のより容易に推定できる。
〔効果1〕推進用機器を船体没水部の流れの影響を受けない範囲に配置すると、船尾流れだけでなく、船体が発生するビルジ渦等の船体に起因する流れと、「スクリュープロペラ推進」ではプロペラ後流と、また、「ウォータージェット推進」では噴射流との間における相互干渉が無くなる。従って、船体と推進用機器のそれぞれの推進性能と操縦性能を流体力学的に分離して単純化できて、実験、分析及び設計等ができるようになる。
〔効果2〕また、推進用機器が船体没水部の流れの影響を受けないので、推進用機器を規格化して固定の定格推力を得る標準品を用意しておいて、必要な総推力になるように推進用機器の基数を調整することで、対応可能となる。これにより、推進用機器の生産を注文生産から量産に移行できる。
さらに、船体没水部の船型に関しても予め幾つの標準形状を決めておくことで、水上航走体の要求排水量に従って、標準形状を相似的に変化させることで、船体形状を決定するようにする。これらの組み合わせ方法により、それぞれの商船や艦艇等の水上航走体に対する個別の注文生産から、量産生産への移行が可能となり、研究、開発、設計、製造等の設備や人的資源を集中化できるようになる。
〔本発明:推進用機器による旋回〕上記の水上航走体の推進用機器の配置システムにおいて、前記推進用機器を単数基又は複数基用いて、旋回をするための旋回モーメントの一部又は全部を発生するように構成する。この旋回に関しての具体的な構成に関して次に説明する。
先ず、単数基の推進用機器を用いる場合は、例えば、水平方向に旋回する旋回式推進器を装備して、この旋回式推進器の旋回によって、水上航走体を回頭及び旋回する旋回モーメントを得る。あるいは、噴射流の噴射方向を変更できるウォータージェット推進器を装備して、この噴射量の噴射方向の変更によって、水上航走体を旋回する旋回モーメントを得る。
また、複数基の推進用機器を用いる場合は、船体没水部の側方にそれぞれ推進用機器を単数基又は複数基設けたり、船体没水部の底部に水上航走体の幅方向に離間して複数基の推進用機器を設けたりする。そして、これらの複数基の推進用機器が発生する推力の大きさを個別に制御して全体として旋回モーメントを発生させる。
あるいは、これらの複数基の推進用機器の一部又は全部を旋回式推進装置で構成して、推進用機器を旋回させて水上航走体の回頭及び旋回のための旋回モーメントを発生させる。なお、推進用機器の推力差を利用する場合は、推進用機器自体を旋回させる必要がないので、旋回式推進器でなくても良い。そのため、推進用機器の構造及び動力伝達機構を著しく単純化できる。
〔効果1〕この推進用機器で水上航走体の旋回のための旋回モーメントを得る構成では、舵や後縁フラップ等の旋回モーメントを発生させる装置を不要にしたり、舵や後縁フラップ等が発生する旋回モーメントを小さくしたりすることができるようになる。また、推進用機器を、舵や後縁フラップ等の補助や故障時の予備として用いることもできるようになる。そして、船尾舵や後縁フラップ等を設けない場合には、船体没水部の船尾部の構造を著しく単純化できる。
〔効果2〕また、複数基の推進用機器で水上航走体の旋回のための旋回モーメントを得る構成や、推進用機器と他の旋回モーメント発生装置とを併用する構成においては、推進用機器の配置位置の選定、推力の大きさと推力の方向の制御、推進用機器と他の旋回モーメント発生装置の推力の大きさや旋回モーメントの大きさの分担の制御等により、従来の推進用機器の船尾配置では得られなかった操船ができるようになる。
〔本発明:推進用機器の前後位置:圧力中心の近傍〕上記の水上航走体の推進用機器の配置システムにおいて、水上航走体の前後方向に関して、前記船体没水部の前端から前記基準長の15%後方の位置と前記船体没水部の前端から前記基準長の35%後方の位置との間の範囲を第2前後範囲として、前記推進器位置が前記第2前後範囲に配置して構成する。言い換えれば、迎角を持ったときに船体没水部に作用する揚力の作用点に推進器位置を配置する代わりに、船体没水部の前端から基準長の25%(1/4)後方の位置である基準位置を中心に、基準長の10%の範囲に推進器位置を配置することで、基準位置の近傍に推進器位置を配置する。
この構成によれば、基準位置は、船体没水部に流入してくる流れに対して、迎角を持ったときに船体没水部に作用する揚力の作用点(ここでは「圧力中心」と呼ぶことにする)の近傍になると考えられる。この「圧力中心」は、言わば翼形状での「風圧中心」(迎角により前後方向を移動する)に相当する。従って、基準位置の近傍に推進用機器が配置されることは、水上航走体が旋回運動するときの揚力の作用点の近傍に推進用機器が配置されることになる。その結果、推進用機器の推力や水力の方向を制御することで水上航走体に発生する旋回モーメントの推定が比較的容易となり、操船が容易となる。
〔本発明:推進用機器の前後位置:浮心の近傍〕あるいは、上記の水上航走体の推進用機器の配置システムにおいて、水上航走体の前後方向に関して、前記船体没水部の浮心の位置に対して前記基準長の10%前方の位置と前記基準長の10%後方の位置との間の範囲を第3前後範囲として、前記推進器位置を前記第3前後範囲に配置して構成する。言い換えれば、水上航走体の旋回中心に推進器位置を配置する代わりに、浮心の近傍に推進器位置を配置する。
この構成によれば、船舶の重心の前後位置は浮心の前後位置の近傍になると考えられるので、水上航走体が旋回運動するときの旋回中心(厳密には水上航走体の質量に付加質量を加えた見掛け質量での重心)の近傍に推進用機器が配置されることになるので、推進用機器の制御による水上航走体に発生する旋回モーメントの推定が比較的容易となり、操縦し易くなる。
〔本発明:推進用機器の推進システム〕上記の水上航走体の推進用機器の配置システムにおいて、前記推進用機器を、電気を駆動源とする電気推進システム、または、流体圧を駆動源とする流体圧推進システムのいずれか一方で構成する。
そして、電気推進システムの場合は、スクリュープロペラと直結したポッド内に電動機を設置して推進用機器を構成し、この電動機に、船内のディーゼルエンジンやガスタービンエンジン等の主機関で駆動される発電機で発電した電力を供給する構成とする。
また、流体圧推進システムの場合は、油圧や空圧を使用するが、油圧を用いる油圧推進システムでは、可変容量型の油圧モータをポッド内部に設けて、油圧ポンプを用いて作動油を油圧ライン経由で送って、この作動油により油圧モータを駆動してプロペラを回転する。この場合には、可変容量型の油圧ポンプを用いることで、電動モータを使用した場合に必要とされる変速機や冷却システムを不要にすることができる。なお、空圧推進システムでは発生できる駆動力の大きさは劣るので小型向きであるが、この場合は空圧ラインが破損しても海洋汚染の危険性は小さくなる。
そして、これらの構成によれば、主機関と推進用機器の間は電力用ケーブルと制御信号用ケーブルを配線するだけ、又は、流体圧配管等を配管するだけでよいので、推進用機器を機関室から離間して配置できるようになる。そのため、水上航走体における機器の配置上(レイアウト)の制約が少なくなり、主機関の接地場所を比較的自由に選択できるようになる。従って、主機関と船橋と居住区を船尾側に配置する必要がなくなる。その結果、主機関の配置スペースの確保が容易な船首側や中央側に配置することが可能となる。そして、船首側に船橋を設けることができると、水上航走体(船舶)における航行時の前方を監視するために必要な見通し線の確保が容易となる。
〔本発明:推進用機器の選択使用〕上記の水上航走体の推進用機器の配置システムにおいて、第1の航走状態では使用するが、第2の航走状態では使用しない前記推進用機器を備えて構成する。この構成によれば、第1の航走状態と第2の航走状態で、推進用機器で推力を変更することなく、推進用機器の使用数を変化させることにより、それぞれの状態で航走に必要な推力を得る。
この第1の航走状態と第2の航走状態の組み合わせとしては、例えば、満載排水量の状態と軽荷排水量の状態、あるいは、高速航行の状態と低速航行の状態、戦闘状態と巡航状態等が考えられる。この構成によれば、推進用機器での推力の大幅の変更を伴わず、稼働する推進用機器の基数で大きな推力調整を行うので、それぞれの推進用機器を最適効率に近い状態で使用することができるようになる。
〔本発明:横力発生装置〕上記の水上航走体の推進用機器の配置システムにおいて、水上航走体の幅方向に推力を発生する横力発生装置を配置して、前記横力発生装置を用いて旋回のための旋回モーメントの一部又は全部を発生するように構成する。この横力発生装置としては、サイドスラスター、アジマススラスター、ウォータージェットの噴射口等を用いることができる。この構成によれば、従来の船舶の船尾に配置された舵の代わりになり、この横力発生装置を使用して水上航走体を操船できるようになる。
〔本発明:底部舵〕上記の水上航走体の推進用機器の配置システムにおいて、前記船体没水部の前記底部から下方に突出する底部舵を少なくとも航走時において配置して、前記底部舵を用いて旋回のための旋回モーメントの一部又は全部を発生するように構成する。なお、「少なくとも航走時において配置して」の意味は、航走していないときには、舵を昇降可能、折り畳み可能、回動可能等に構成して船体内に格納したり、横倒して船底からの突出量を少なくしたりしてもよいという意味である。これらの構成により、港湾などの浅海域において曳船などで曳航される場合には、底部舵の水底への衝突を回避する。
この構成によれば、従来の船舶の船尾に配置された舵の代わりになり、この底部舵を使用して水上航走体を操船できるようになる。また、この底部舵は、船体没水部の後方に配置されず、船体没水部の底部から突出して配置されており、船体没水部の流れの影響が少ないので、舵性能の推定が容易となる。そのため、この底部舵の設計が容易となる。さらに、この底部舵は横揺に対する抵抗となる上に、舵を切ると横揺れモーメントも発生するので、横揺れ制御にも使用できる。
〔本発明:後部舵システム〕上記の水上航走体の推進用機器の配置システムにおいて、前記船体没水部の前記第1前後範囲より後方の範囲である第4前後範囲において、前記船体没水部の右舷側の側部から斜め上方に突出する斜め上方船尾舵と斜め下方に突出する斜め下方船尾舵の少なくとも一方を設けると共に、前記船体没水部の左舷側の側部から斜め上方に突出する斜め上方船尾舵と斜め下方に突出する斜め下方船尾舵の少なくとも一方を設けて、船尾舵システムを構成し、前記船尾舵システムを用いて旋回のための旋回モーメントの一部又は全部を発生するように構成する。
この構成によれば、この船尾舵システムを使用して水上航走体を操船できるようになる。また、この船尾舵システムでは、斜め上方船尾舵と斜め下方船尾舵の組み合わせの仕方により、斜め舵、V字形状舵、逆V字形状舵、X字形状舵などの構成となるので、水平面における旋回モーメントだけでなく、垂直面における、ヒール方向、トリム方向のモーメントも発生できるようになり、横揺れ制御や、縦揺れ制御に必要なモーメントを発生できるようになる。
〔本発明:後縁フラップ〕上記の水上航走体の推進用機器の配置システムにおいて、前記船体没水部の後部に後縁フラップを設けて、前記後縁フラップを用いて旋回のための旋回モーメントの一部又は全部を発生するように構成する。この構成によれば、後縁フラップを右舷側に出すと、船首側が左舷側に回る旋回モーメントを発生することができ、後縁フラップを左舷側に出すと、船首側が右舷側に回る旋回モーメントを発生することができるので、旋回のための旋回モーメントの一部又は全部を発生できる。従って、この後縁フラップを使用して水上航走体を操船できるようになる。
なお、この後縁フラップは、操船のために能動的に動かす必要があるが、直進時においては、後縁フラップを用いて抵抗減少の効果を得られるのではないかと考える。つまり、これらの後縁フラップの動きや変形により、船尾端側における渦流の発生を抑制して、針路安定性を保持したり、粘性抵抗を低減したりすることができるのではないかと考える。この場合には、操船時には能動的に後縁フラップを動かし、直進時には能動的又は受動的に後縁フラップを動かすことができるように構成する。
例えば、後縁フラップをその外側の流れや渦などの流体力に従って能動的に動くように構成する。あるいは、後縁フラップに相当する船体の部位をプラススチックやゴムなどの弾性体で形成して可撓性や柔軟性を持たせて構成する。なお、後縁フラップを袋体で構成して、能動的に動かす時はこの袋体の内部の流体圧を高くして、後縁フラップを剛体に近い状態とし、受動的に動かす時はこの袋体の内部の流体圧を低くして、後縁フラップを柔軟な状態とし、外部からの流体力に従って変形するようにしてもよい。これらの構成により、後縁フラップに作用する流体力に従って受動的に変形し、流体力を躱す。さらには、後縁フラップを上下方向に分割して個別に変形可能な構成とすることで、後縁フラップの上下方向において、その場の流れに応じた変形が容易なように構成する。
〔本発明:横力発生用フィン〕上記の水上航走体の推進用機器の配置システムで、前記船体没水部の前記第1前後範囲より後方の範囲である第4前後範囲において、横力発生用フィンを、前記船体没水部の両舷側に前記船体没水部の側部から離間してそれぞれ単数又は複数設けるか、前記船体没水部の底部に水上航走体の幅方向に関して離間して複数設けるかのいずれか一方で構成する。この構成によれば、水上航走体が斜行し始めたときに、この横力発生用フィンにより旋回を抑制する方向の旋回力が発生するので、水上航走体の針路安定性を向上させることができる。
そして、この横力発生用フィンを旋回時における船体没水部の旋回中心より後方に配置する場合には、横力発生用フィンの水平断面が翼形状でかつ水上航走体の前後方向に翼弦を持ち、翼形状の幅が水上航走体の上下方向又は斜め上下方向に延びるように構成する。この場合には、横力発生用フィンを固定しても、水上航走体が旋回すると、横力発生用フィンの迎角の増加量は船体没水部の迎角の増加量と同じになり、同じ方向の揚力を発生し、水上航走体の旋回を抑制する方向の旋回モーメントを発生する。従って、水上航走体の針路安定性が向上する。
なお、横力発生用フィンの迎角(船体没水部の前後方向に対する翼弦の角度)を能動的に変更できるように構成したり、横力発生用フィンの後端に回動可能なフラップを設けたりすることで、容易に横力発生用フィンが発生する旋回モーメントをより大きくして、水上航走体の旋回を抑制することができる。
一方、この横力発生用フィンを旋回時の船体没水部の旋回中心より前方やその近傍に配置する場合には、横力発生用フィンの迎角を船体没水部の前後方向に対して能動的に変更できるように構成したり、能動的に回動するフラップを設けたりして、水上航走体の旋回を抑制する方向の旋回モーメントを積極的に発生するように構成する必要がある。しかしながら、横力発生用フィンにおけるこれらの機構が故障した時には、針路不安定の方向に横力発生用フィンが旋回モーメントを発生することになるので、この前方配置はあまり好ましくない。
〔本発明:揚力発生部材〕上記の水上航走体の推進用機器の配置システムにおいて、前記船体没水部と前記推進用機器の間の支持部材を揚力発生部材として構成するか、または、前記推進用機器の外側に揚力発生部材を設けて構成するかいずれかで構成し、前記揚力発生部材で発生する揚力の大きさを制御することにより横揺れ制御を行うように構成する。この揚力発生部材による揚力発生機構は、支持部材又は水平部材を水平翼として、迎角を変更可能に構成したり、フラップを設けたりすることで、容易に構成できる。
この構成によれば、これらの推進用機器の周囲に配置した揚力発生部材で発生する揚力を制御することにより水上航走体の横揺れを制御できる。また、揚力発生装置と推進用機器を一体化してユニット化しておくことで、横揺れ制御機能を持つ推進用機器として規格化及び量産化が容易に可能となる。
〔本発明:水上航走体の操船方法〕そして、上記のような目的を達成するための本発明の水上航走体の操船方法は、水面を航走する排水量型の水上航走体の満載喫水線の状態において、水上航走体の前後方向に関して船体没水部の全長を基準長とし、前記船体没水部の前端から基準長の75%後方の位置である第1位置と前記船体没水部の前端との間の範囲を第1前後範囲としたときに、スクリュープロペラ推進、ウォータージェット推進のいずれか1種又はこれらの組み合わせを用いて構成され、かつ、少なくとも航走時において、後端の位置である推進器位置を前記船体没水部の前記第1前後範囲に配置された推進用機器を用いて、水上航走体の航走用の推力を発生するとともに、前記水上航走体の旋回をするための旋回モーメントの一部又は全部を発生することを特徴とする。この水上航走体の操船方法により、上記の水上航走体の推進用機器の配置システムの効果と同様の効果を発揮できる。
また、上記の水上航走体の操船方法において、上記の水上航走体の推進用機器の配置システムのいずれかを用いて操船すると、上記のそれぞれの水上航走体の推進用機器の配置システムの効果と同様の効果を発揮できる。
〔本発明の意図-1:船尾形状の自由化〕本発明では、水面を航走する排水量型の水上航走体において、航走時に水面下となる船体没水部2において、船尾における推進用機器の配置を排除することにより、船尾における舵及び推進用機器の配置を考慮することなく、船体形状(船型)を粘性抵抗と造波抵抗が少ない形状にすることができるようにする。この新たな船体形状により、船体没水部の周囲の流れ、特に船尾の流れを円滑な流れにして、抵抗成分となるビルジ渦の発生と伴流の発生を抑制する。これにより、船体の粘性抵抗、特に圧力抵抗の低減を図る。
〔本発明の意図-2:船体姿勢の自由化〕また、従来技術の推進用機器の船尾配置の構成のために、プロペラの露出防止対策として航走時の載荷状態に合わせて必要であった、船尾トリムの船体姿勢やバラスト水の積込みを排除することにより、浸水表面積を減少して摩擦抵抗及び造波抵抗の少ない船体姿勢等を採用できるようにして、粘性抵抗(摩擦抵抗を含む)と造波抵抗の低減を図る。
〔本発明の意図-3:推進用機器と舵の相互干渉の排除〕また、推進用機器の船尾配置に起因する、船体の船尾における伴流と推進用機器と舵等の操船装置との相互干渉を排除することにより、研究、開発、設計、製造における人的資源や物的資源の集中化を図る。
〔本発明の意図-4:推進用機器の規格化と量産化〕また、船尾の狭い範囲に推進用機器を配置する場合に比べて、推進用機器の配置数の制限が略無くなるので、水上航走体の航走に必要な推力に対して、規格化した特定の容量の推力の推進用機器を用いて、所望の推力を得るのに定格の推進用機器の基数で対応することができるようにする。これにより、推進用機器の規格化と量産化を図る。
〔本発明の意図-5:推進用機器の効率的使用〕また、満載排水量の状態と軽荷排水量の状態など、その時の載荷状態で、航走に使用する推進用機器の基数を変更することで、推進用機器の最適な推進効率での作動を可能とし、省エネルギー化の促進を図る。
〔本発明の意図-6:推進用機器の配置と操船機器の多様化〕また、船尾以外に推進用機器を配置して、推進用機器により水上航走体の旋回に必要な旋回モーメントの一部又は全部を発生することにより、舵やサイドスラスターや旋回式推進装置等の操船用機器の容量の減少化や不要化を図ると共に、操船の多様化を図る。
本発明の水上航走体の推進用機器の配置システム及び水上航走体の操船方法によれば、船尾に推進用機器を配置することを考慮せずに、船尾形状を粘性抵抗と造波抵抗を減少する形状にすることができ、推進用機器の船尾配置に起因する、船体の船尾における伴流と推進用機器と舵の相互干渉を排除して、船体形状及び推進用機器を規格化することができて、研究、開発、設計、製造における人的資源や物的資源の集中化を図ることができる。
図1は水上航走体の前後方向に関して、本発明に係る第1~第4の前後範囲を模式的に示す水上航走体の側面図である。 図2は本発明に係る第1の実施の形態の水上航走体におけるスクリュープロペラ推進器の配置を模式的に例示する図で、(a)は側面図、(b)は底面図、(c)は背面図である。 図3は本発明に係る第2の実施の形態の水上航走体におけるスクリュープロペラ推進器の配置を模式的に例示する図で、(a)は側面図、(b)は底面図、(c)は背面図である。 図4は本発明に係る第3の実施の形態の水上航走体におけるスクリュープロペラ推進器の配置を模式的に例示する図で、(a)は側面図、(b)は底面図、(c)は背面図である。 図5は本発明に係る第4の実施の形態の水上航走体におけるスクリュープロペラ推進器の配置を模式的に例示する図で、(a)は側面図、(b)は底面図、(c)は背面図である。 図6は本発明に係る第5の実施の形態の水上航走体におけるウォータージェット推進器の配置を模式的に例示する図で、(a)は側面図、(b)は底面図、(c)は背面図である。 図7は本発明に係る第6の実施の形態の水上航走体におけるウォータージェット推進器の配置を模式的に例示する図で、(a)は側面図、(b)は底面図、(c)は背面図である。 図8は本発明に係る第7の実施の形態の水上航走体におけるウォータージェット推進器の配置を模式的に例示する図で、(a)は側面図、(b)は底面図、(c)は背面図である。 図9は本発明に係る第8の実施の形態の水上航走体におけるウォータージェット推進器の配置を模式的に例示する図で、(a)は側面図、(b)は底面図、(c)は背面図である。 図10は本発明に係る第9の実施の形態の水上航走体におけるスクリュープロペラ推進器とウォータージェット推進器の配置を模式的に例示する図で、(a)は側面図、(b)は底面図、(c)は背面図である。 図11は推進用機器の側部配置の第1の例で、水上航走体の前後方向の位置は略同じで、水上航走体の上下方向Zに並列に並べた構成を模式的に例示する図で、(a)は側面図、(b)は底面図、(c)は背面図である。 図12は推進用機器の側部配置の第2の例で、水上航走体の前後方向の位置は異なるが、水上航走体の上下方向の位置は略同じ位置にした構成を模式的に例示する図で、(a)は側面図、(b)は底面図、(c)は背面図である。 図13は推進用機器の底部配置の第1の例で、推進用機器を船体没水部の底部で船体中央線の上に配置した構成を模式的に例示する図で、(a)は側面図、(b)は底面図、(c)は背面図である。 図14は推進用機器の底部配置の第2の例で、推進用機器を船体没水部の底部で船体中央線に対して線対称に配置すると共に、水上航走体の前後方向の位置を略同じにして、水上航走体の幅方向に並列に並べた構成を模式的に例示する図で、(a)は側面図、(b)は底面図、(c)は背面図である。 図15は推進用機器の底部配置の第2の例で、船体没水部の底部で船体中央線に対して線対称に配置すると共に、この線対称の組の推進用機器を水上航走体の前後方向の位置を変えて配置した構成を模式的に例示する図で、(a)は側面図、(b)は底面図、(c)は背面図である。 図16は推進用機器の底部配置の第3の例で、船体没水部の底部で船体中央線の上に配置した推進用機器と、船体没水部の底部で船体中央線に対して線対称に配置した推進用機器とを組み合わせた構成を模式的に例示する図で、(a)は側面図、(b)は底面図、(c)は背面図である。 図17は側部配置の推進用機器の回動方式の格納機構を説明するための横断面図である。 図18は側部配置の推進用機器の転倒方式の格納機能を説明するための横断面図で、(a)は舷側の凹部への移動、(b)は上甲板の上への移動を示す図である。 図19は側部配置の推進用機器の伸縮方式の格納機能を説明するための横断面図である。 図20は側部配置の推進用機器の昇降方式の格納機能を説明するための横断面図である。 図21は底部配置の推進用機器の昇降方式の格納機能を説明するための横断面図である。 図22は底部配置の推進用機器の転倒方式の格納機能を説明するための横断面図である。 図23は底部配置の推進用機器の回動方式の格納機能を説明するための横断面図で、(a)は側部への移動、(b)は上甲板の上への移動を例示する図である。 図24は水上航走体の水平断面を例示する水平断面図で、(a)は円弧形状の船尾の形状を、(b)は翼型形状の船尾の形状を、(c)は外側に向かって凹形状の船尾の形状を例示する図である。 図25は水上航走体の横断面の形状を例示する背面図(後側のみを表示した正面線図(Body Plan)で、(a)はU字型船形を、(b)はV字型船形を、(c)は中間船形を、(d)は楕円形船形を例示する図である。 図26は水上航走体の船体没水部の船尾側の側面形状のプロフィルを例示する側面図で、(a)は垂直形状を、(b)は上部前進形状を、(c)は上部後退形状を、(d)は後方凸形状を、(e)は後方凹形状を例示する図である。 図27は側部配置の推進用機器の推力差による第1の旋回方法を説明するための図で、(a)は推進用機器の側部配置を例示する底面図で、(b)は旋回モーメントの発生を説明するための平面図である。 図28は底部配置の推進用機器の推力差による第1の旋回方法を説明するための図で、(a)は推進用機器の底部配置を例示する底面図で、(b)は旋回モーメントの発生を説明するための平面図である。 図29は単数基の底部配置の推進用機器の旋回による第2の旋回方法を説明するための図で、(a)は推進用機器の底部配置を例示する底面図で、(b)は旋回モーメントの発生を説明するための平面図である。 図30は複数基の側部配置の推進用機器の旋回による第2の旋回方法を説明するための図で、(a)は推進用機器の側部配置を例示する底面図で、(b)は旋回モーメントの発生を説明するための平面図である。 図31は複数基の底部配置の推進用機器の旋回による第2の旋回方法を説明するための図で、(a)は推進用機器の底部配置を例示する底面図で、(b)は旋回モーメントの発生を説明するための平面図である。 図32は前方配置の横力発生装置による第3の旋回方法を説明するための図で、(a)は横力発生装置の前方配置を例示する底面図で、(b)は横力発生装置の前方配置を例示する側面図で、(c)は旋回モーメントの発生を説明するための平面図である。 図33は後方配置の横力発生装置による第3の旋回方法を説明するための図で、(a)は横力発生装置の後方配置を例示する底面図で、(b)は横力発生装置の後方配置を例示する側面図で、(c)は旋回モーメントの発生を説明するための平面図である。 図34は単数の底部舵による第4の旋回方法を説明するための図で、(a)は単数の底部舵の配置を例示する底面図で、(b)は底部舵の配置を例示する側面図で、(c)は旋回モーメントの発生を模式的に説明するための平面図である。 図35は複数の底部舵による第4の旋回方法を説明するための図で、(a)は複数の底部舵の配置を例示する底面図で、(b)は底部舵の配置を例示する側面図で、(c)は旋回モーメントの発生を説明するための平面図である。 図36は船尾舵システムによる第5の旋回方法を説明するための図で、(a)は船尾舵システムを例示する底面図で、(b)は船尾舵システムを例示する側面図で、(c)は旋回モーメントの発生を説明するための平面図である。 図37は船尾舵システムの第1及び第2の例を模式的に示す図で、(a)はX字舵を、(b)はV字舵(斜め上方舵)を示す背面図である。 図38は船尾舵システムの第3及び第4の例を模式的に示す図で、(a)は逆V字舵(斜め下方舵)を、(b)は斜め舵(斜め上方舵+斜め下方舵)を示す背面図である。 図39は後縁フラップによる第6の旋回方法を説明するための図で、(a)は後縁フラップを例示する底面図で、(b)は後縁フラップを例示する側面図で、(c)は旋回モーメントの発生を説明するための平面図である。 図40は後縁フラップの動作を説明するための平面断面図で、(a)は単純フラップの動作を、(b)スプリットフラップの動作を、(c)はスプリットフラップを両開きする動作を示す図である。 図41は推進用機器の前後方向の配置位置を説明するための平面図で、(a)は圧力中心の近傍に配置する場合を、(b)は浮心の近傍に配置する場合を、(c)は最大幅の部位に配置する場合を例示する図である。 図42は並列配置の底部舵による針路保持方法を説明するための底部舵の並列配置を例示する図であり、(a)は底面図で、(b)は背面図で、(c)は水流との関係を示す平面図である。 図43は底部配置の横力発生用フィンによる針路保持方法を説明するための横力発生用フィンの底部配置を例示する図であり、(a)は底面図で、(b)は背面図で、(c)は水流との関係を示す平面図である。 図44は側部配置の横力発生用フィンによる針路保持方法を説明するための横力発生用フィンの側部配置を例示する図であり、(a)は底面図で、(b)は背面図で、(c)は水流との関係を示す平面図である。 図45は側部配置の推進用機器の支持部材による横揺れ制御を説明するための支持部材の構成を例示する図であり、(a)は底面図で、(b)は背面図で、(c)は水流との関係を示す平面図である。 図46は水平フィンによる横揺れ制御と縦揺れ制御を説明するための水平フィンの構成を例示する図であり、(a)は底面図で、(b)は背面図で、(c)は水流との関係を示す平面図である。 図47は従来技術の船舶におけるスクリュープロペラと舵の配置の例を示す船尾側の船体の一部を模式的に示す部分側面図である。 図48は従来技術の船舶におけるアジマススラスターの配置の例を示す船尾側の船体の一部を模式的に示す部分側面図である。 図49は従来技術の船舶におけるウォータージェット推進器の配置の例を示す船尾側の船体の一部を模式的に示す部分側面図である。
〔イントロ及び図の概説〕以下、図面を参照して本発明に係る「水上航走体における推進用機器の配置システム」の実施の形態、及び「水上航走体の操船方法」の実施の形態について説明する。なお、ここでいう「推進用機器」はスクリュープロペラ推進器やウォータージェット推進器の噴射口等の直接に推力を発生する機器のことを言い、主機関や動力伝達システムを含まない。
また、以下で述べられる「10%」、「15%」、「35%」、「75%」等の数値は、その前後で、効果が著しく変化するような境界値となる数値、所謂、数値限定用の数値ではなく、権利範囲が不明瞭にならないように、権利範囲を明確に特定するために設けた数値である。
なお、図面は本発明を説明するための概略図であり、必ずしも正確な寸法の比率で示されているものでもなく、浮心などの位置も必ずしも正確な位置に示されているものでもない。また、各図の相互間における整合性も完全ではないことに注意がいる。さらに、符号「Lc」は水上航走体の幅方向の中心である船体中央断面を示す船体中央線であり、平面図、底面図、正面線図、及び背面図などでも同じ符号「Lc」を用いている。
そして、図1は、水上航走体の前後方向Xに関して、本発明に係る第1~第4の前後範囲(Rx1~Rx4)を模式的に示す側面図である。また、図2~図5は、水上航走体1がスクリュープロペラ推進の水上航走体1である、発明に係る第1~第4の実施の形態を示す図である。図6~図9は、水上航走体1がウォータージェット推進の水上航走体1である、本発明に係る第5~第8の実施の形態を示す図である。また、図10は、水上航走体1がスクリュープロペラ推進とウォータージェット推進の両方を用いた水上航走体1である、本発明に係る第9の実施の形態を示す図である。
なお、図2、図4、図6、及び図8は、これらの推進用機器10(10A、10B)を船体没水部2の側部2cに配置した例を示す図である。図3、図5、図7、及び図9は、これらの推進用機器10を船体没水部2の底部2dに配置した例を示す図である。また、図2、図3、図6、及び図7は、これらの推進用機器10を船体没水部2に接して配置した例を示す図である。図4、図5、図8、及び図9は、これらの推進用機器10を船体没水部2から離間した位置に配置した例を示す図である。そして、図10は、2種の推進用機器10A、10Bを船体没水部2に配置した例を示す図である。
そして、図11と図12は推進用機器10Aの側部配置を例示する図であり、図13~図16は推進用機器10Aの底部配置を例示する図である。図17~図23は、推進用機器10Aの格納方式を例示する図である。図24~図26は、船体没水部2の形状を水平断面、横断面形状、及び側面形状のプロフィルで例示する図である。
また、図27~図41は水上航走体1を旋回させるための機構に関する図面で、図42~図44は、水上航走体1を針路保持させるための機構に関する図面である。図45と図46は水上航走体1の横揺れと縦揺れに関する機構に関する図面である。そして、図47~図49は従来技術の推進装置の配置を例示する船尾部の側面図である。
〔本発明に係る実施の形態:水上航走体〕次に、本発明に係る実施の形態の水上航走体1について説明する。この水上航走体1は、水面を航走する排水量型の水上航走体1であり、次のように構成される。最初に、水上航走体1の満載喫水線WLの状態において、「水上航走体の前後方向」Xに関して、航走時に水面下となる船体没水部2における範囲として「第1~第4の前後範囲」Rx1~Rx4を定義する。図1に示すように、船体没水部2の全長(前端2aと後端2bとの間の距離)を「基準長」Lbとする。
そして、船体没水部2の前端2aから基準長Lbの75%(4分の3)後方の位置である第1位置P1と船体没水部2の前端2aとの間の範囲を「第1前後範囲」Rx1とする。また、船体没水部2の前端2aから基準長Lbの15%後方の位置P2と船体没水部2の前端2aから基準長Lbの35%後方の位置P3との間の範囲を「第2前後範囲」Rx2とする。そして、船体没水部2の浮心Pfの位置に対して、基準長Lbの10%前方の位置P4と基準長Lbの10%後方の位置P5との間の範囲を「第3前後範囲」Rx3とする。さらに、船体没水部2の第1前後範囲Rx1より後方の範囲を「第4前後範囲」Rx4とする。
〔推進用機器の種類〕そして、航走時に航走用の推力を発生する推進用機器10を、スクリュープロペラ推進、ウォータージェット推進のいずれか1種又はこれらの組み合わせで構成する。図2~図5では、推進用機器10をスクリュープロペラ推進器(図ではコルトノズル)10Aで構成し、図6~図9では、推進用機器10をウォータージェット推進器10Bで構成し、図10では、推進用機器10をスクリュープロペラ推進器10Aとウォータージェット推進器10Bの両方で構成している。
より具体的には、スクリュープロペラ推進の推進用機器10Aには、固定ピッチプロペラ、可変ピッチプロペラ、二重反転プロペラ、スパイラルプロペラ、コルトノズル、旋回式推進器(ポッド推進器、アジマスプロペラ)、タンデム型の二重反転システム(船尾プロペラ+ポッド推進装置)、リム駆動式スラスター(ボスレス式の船舶推進装置)、リングプロペラ、コルトノズル付リングプロペラ等の推進器がある。なお、外車やシュナイダープロペラは含まない。
そして、このスクリュープロペラ推進で、推進用機器10Aとして、二重反転プロペラを採用する場合には、構造が複雑になるという問題があるが、プロペラ枚数が増加するために荷重度が低くなるという利点がある。また、スクリュープロペラの回転により発生する回転流によるエネルギー損失を回収できる。その上、スクリュープロペラの回転により発生する回転軸回りのモーメントが小さくなるので、推進用機器10の支持部材10bの構造が強度的に楽になる。
また、スクリュープロペラ推進で、推進用機器10Aとして、可変ピッチプロペラ(CPP)を採用する場合には、構造が複雑になるという問題があるが、プロペラ翼の角度を水上航走体1の航走速度に合わせて、推力を調整できる。また、水流の流入速度に応じてプロペラ効率が最適になるようにプロペラ翼の角度を変更できる。その上、回転数一定としたまま推力を変化できるので、きめ細かい推力の制御が可能となり、また、後進の操船もプロペラの回転を逆回転させることなく行えるので、針路保持や旋回性能を高めることができる。
また、スクリュープロペラ推進で、推進用機器10Aとして、ノズルプロペラ、ダクトプロペラとも呼ばれるコルトノズルを採用する場合には、このコルトノズルは、プロペラを船体に対して固定されたノズルで被った構造であり、低速高荷重における大推力を得るのに適している。このコルトノズルでは、プロペラの回転によって生じるノズルのまわりの水流によって、ノズルに揚力を発生させて、この揚力の前進方向の成分により、推進用機器10Aの全体としての効率を上げることができる。その上、このコルトノズルを採用すると、回転するスクリュープロペラをノズルで保護しているので、スクリュープロペラの損傷防止のみならず、プロペラ翼が露出しない。そのため、周囲の安全性も向上する。また、プロペラが発生する水中音も小さくすることができ、静粛性も向上させることができる。
そして、このスクリュープロペラ推進では、推進用機器10Aとして、ポッド推進器、アジマスプロペラ、アジマススラスターとも呼ばれる旋回式推進器を採用することが好ましい。この旋回式推進器は、水平方向に360度旋回可能に構成された抵抗の小さいポッドの前部又は後部にスクリュープロペラを配置して構成される。このポッドの水平方向の旋回により、推力の方向を変えることで、舵無しでも操船できる。この旋回式推進器を採用すると、推力の方向を変更することが、ポッドの旋回により容易に可能となるので、操船の自由度を著しく増加することができる。また、既に、多くの旋回式推進装置が実用化されているので、新たに開発する必要が無く、他船との共通使用による量産効果が見込める。なお、既存の旋回式推進装置は、船尾配置で水流の流速が比較的遅い伴流中で使用される仕様になっているので、船速に近い水流の流速中で仕様できるように、スクリュープロペラ等の仕様を対応させる必要はある。
また、ウォータージェット推進は、ポンプジェット推進、ハイドロジェット推進とも呼ばれている。このウォータージェット推進の推進用機器10Bでは、側部2c又は底部2dの開口部10Baから吸入した水を、導路10Bcに設けた高圧ポンプ10Bdを主機関(動力源)22により駆動して、後方のノズル(噴射口)10Beで噴射することにより推力を得ている。また、後部のノズル10Beの噴射方向の変化させることで、水上航走体1の旋回モーメントを得ている。さらには、ノズル10Beの逆噴射機構を用いての急制動も可能である。なお、図面では、航走時に、ノズル(噴射口)10Beが水中にある場合のみ図示しているが、航走時に、ノズル(噴射口)10Beが水面上にあってもよい。
そして、このウォータージェット推進器10Bを用いても、噴射流の回転を整流板などにより減少することにより、推進方向の軸回りのモーメントを少なくすることができる。なお、このウォータージェット推進は、スクリュープロペラ推進よりも30ノット程度より遅い低速領域ではエネルギー効率は多少劣るが、30ノット程度より早い高速領域ではウォータージェット推進の方がエネルギー効率もよくなり、高速での航行に適していると言われている。
〔推進用機器の配置:前後方向位置〕そして、本発明では、水上航走体の前後方向Xに関して、少なくとも航走時において、航走用の推力を発生する推進用機器10(10A、10B)の位置を、船尾に配置せず、船体没水部2の前方から3/4(基準長Lbの75%)までの範囲に配置する。より具体的には、推進用機器10の後端の位置である推進器位置Pxを船体没水部2の第1前後範囲Rx1に配置して構成する。
そして、この推進用機器10を用いて航走用の推力を発生して水上航走体1を航走させると共に、この推進用機器10を用いて、あるいは補助的に利用して操船する。なお、本発明では、第1前後範囲Rx1に配置されている推進用機器10が有ることが重要であり、第1前後範囲Rx1の範囲外にも、例えば、図16で、第4前後範囲Rx4に点線表示の推進用機器10等が追加配備されているが、この構成等を排除するものではない、
〔推進用機器の配置:離間距離〕そして、図2、図3、図6、及び図7では、推進用機器10は、船体没水部2に接して配置されている。一方、図4、図5、図8、及び図9では、推進用機器10は、船体没水部2の表面から予め設定した距離Sa以上離間して配置されている。
なお、本発明においては、図10に例示するように、船体没水部2の表面から予め設定した距離Sa以上離間して配置されている推進用機器10Aと、船体没水部2に接して配置されている推進用機器10Bを混在させて配置する構成としてもよい。つまり、同じ種類若しくは異なる種類の推進用機器10を、船体没水部2に接して配置しても、船体没水部2から離間して配置してもよい。
〔推進用機器の基数〕また、推進用機器10が少ない基数の場合には、一基当たりの発生推力が大きくなるので、推進用機器10の構成や推進システムが大規模になる上に、大きな推力を受ける部分となる支持部材10bとそれを支持する船体構造も頑丈に構成する必要が生じる、これに対して、推進用機器10を多数用いると、一基当たりの発生推力が小さくなり、既に実用化されている装置や推進システムを使用できる上に、推進用機器10自体、推進システム、支持部材10bも小規模になり、推力を受ける部分の船体構造も少ない補強で済むようになる。
〔推進用機器の配置の詳細説明〕以下、推進用機器10に関して、図2~図10では、スクリュープロペラ推進器10Aとウォータージェット推進器10Bに共通な構成であるが、理解し易くするために、図2~図5のスクリュープロペラ推進器10Aと図6~図10のウォータージェット推進器10Bの両方を図示している。一方、図11~図16に関しては、図面の枚数の増加を避けるために、スクリュープロペラ推進器10Aとウォータージェット推進器10Bを代表する意味で、図面では、スクリュープロペラ推進器10Aで図示している。従って、これらの図11~図16では、スクリュープロペラ推進器10Aで図示しているが、ウォータージェット推進器10Bで構成してもよい。また、以下の説明では、両方の総称として「推進用機器10」を用いて説明している。
なお、スクリュープロペラ推進器10Aを複数基配置する場合は、前方のスクリュープロペラ推進器10Aで発生する水流の回転流のエネルギーを回収できるように、後方のスクリュープロペラ推進器10Aのプロペラの回転方向を、前方のスクリュープロペラ推進器10Aのプロペラの回転方向と逆方向とすることが好ましい。また、ウォータージェット推進器10Bを採用する場合には、その噴射口10Bbは、必ずしも水面下に設ける必要はなく、水噴出のときに水圧を受けないように、水面上に配置してもよい。
〔推進用機器の側部配置〕この推進用機器10の第一の配置例として、図2、図4、図6及び図8に、水上航走体1において、航走時に船体没水部2の側部2cに推進用機器10を配置している例を示す。
これらの図2、図4、図6及び図8では、推進用機器10を、実線表示と点線表示の2基を各舷側に配置しているが、実線表示のみ又は点線表示のみの推進用機器10を、単数基のみ各舷側に配置してもよい。この推進用機器1の複数基の配置としては、水上航走体の前後方向Xの位置を変えて配置してもよい。また、水上航走体の前後方向Xの位置とともに「水上航走体の上下方向」Zを変えて、前方の推進用機器10の水流が後方の推進用機器10に及ぼす影響を少なくするように配置してもよい。
また、図11に示す推進用機器10の側部配置の第1の例のように、水上航走体の前後方向Xの位置は略同じで、水上航走体の上下方向Zに並列に並べて配置してもよい。この配置の場合においては、満載状態(満載喫水線WL)で航走するときのみならず、軽荷状態(軽荷喫水線WLb)で航走するときも考えて、推進用機器10を配置する。
この配置とすることで、軽荷状態で航走するときには、浸水面積が減少し、必要な推進力も減少するので、軽荷喫水線WLbより上になる推進用機器10は使用せずに、軽荷喫水線WLbより下にある推進用機器10だけで航走することができるようになる。また、推進用機器10の数が少ない場合は、推進用機器10の没水位置を航走状態に応じて昇降可能に構成して、それぞれの載荷状態で、推進用機器10が最適な没水深度になるように構成してもよい。
また、図12に示す推進用機器10の側部配置の第2の例のように、水上航走体の前後方向Xの位置は異なるが、水上航走体の上下方向Zの位置は略同じ位置になるように配置してもよい。この配置の場合においては、前方の推進用機器10で発生する水上航走体1の進行方向を回転軸とする水流の回転エネルギーを回収できるように、プロペラ翼やポンプの羽根の回転方向を逆にすることが好ましい。
〔推進用機器の底部配置〕あるいは、水上航走体1の航走時において、推進用機器10を船体没水部2の底部2dに配置する。なお、特に図示しないが、ビルジ部がある場合には、このビルジ部に推進用機器10を配置してもよい。ここでは、ビルジ部が有る場合には、ビルジ部は底部2dに含まれるとする。
この推進用機器10の底部配置の第1の例としては、推進用機器10を水上航走体の前後方向Xの位置を同じにして、船体中央線Lcに対して線対称に配置して1対の組とする。そして、図3、図5、図7、及び図9に示すように、この推進用機器10の対の組を、水上航走体の前後方向Xの位置とともに「水上航走体の幅方向」Yを変えて、前方の推進用機器10の水流が後方の推進用機器10に及ぼす影響を少なくするように配置してもよい。なお、図3、図5、図7及び図9では、実線表示と点線表示の複数基の推進用機器10を各舷側に並列配置しているが、実線表示又は点線表示のいずれかの推進用機器10をそれぞれの舷側側に単数基配置している構成にしてもよい。
そして、推進用機器10の底部配置の第1の例としては、図13に示すように、水上航走体1において、推進用機器10を航走時に船体没水部2の底部2dで船体中央線Lcの上に配置する。なお、図13では、推進用機器10を船体中央線Lcの上において、水上航走体の前後方向Xにずらせて、実線表示と点線表示の2基の推進用機器10を配置しているが、実線表示又は点線表示のいずれかの推進用機器10を単数基配置してもよい。
また、推進用機器10の底部配置の第2の例としては、図14に示すように、この推進用機器10の対の組を、水上航走体の前後方向Xの位置を略同じにして、水上航走体の幅方向Yに並列に並ぶように配置してもよい。さらには、図15に示すように、推進用機器10の対の組を、水上航走体の前後方向Xの位置を変えて配置してもよい。
さらに、推進用機器10の底部配置の第3の例としては、図16に示すように、船体中央線Lcに関しての線対称に配置している推進用機器10と、船体中央線Lcの上に配置している推進用機器10とを組み合わせて配置をする。
〔推進用機器の固定〕そして、推進用機器10の配置に関しては、推進用機器10の構成は、固定方式と格納方式とがある。この固定方式で、推進用機器10の側部配置の場合は、側部2cに設けた推進用機器10を格納せずに固定したままにするので、従来のように船体を接岸させるときに、推進用機器10が邪魔になる。そのため、この固定方式は、必ずしも、船体を接岸させる必要がない船舶で採用される。
これらの船舶としては、貨物船などの乗客の乗降がない船舶、特に港に寄らず、沖合バースで荷役するタンカー、大型であるため接岸が困難で小型船で桟橋との間を通行する大型客船等がある。また、桟橋や岸壁等と水上航走体1との間に人員と物資の通路の確保ができれば良いような船舶では、両者の間に架橋することで対応することができる。
また、水上航走体1において接岸する舷側が決まっている場合には、この接岸する舷側のみ格納方式とし、接岸しない舷側にある推進用機器10は固定方式に構成してもよい。この場合は、接岸側の舷側にある推進用機器10を、水上航走体1の接岸時に邪魔にならないように船体没水部2の内部や上甲板20の上等に格納する。
また、推進用機器10を船体没水部2の底部2dに配置する場合には、水上航走体1が港湾等の浅海を航走する際には邪魔にならないように、推進用機器10を底部2dの内部に格納するか、あるいは、側部2cに移動させることが好ましい。一方、浅海域や港湾内や接岸時に船底と海底との間に余裕がある場合には、推進用機器10を底部2dに固定する固定方式を採用してもよい。
〔推進用機器の格納方式〕次に、推進用機器10を船体没水部2の側部2c及び底部2dに配置する場合の推進用機器10の格納方法について説明する。以下においては、図17~図23を参照しながら、横断面内(Y-Z面内)で推進用機器10を移動させる構成を説明する。しかしながら、縦断面内(Z-X面内)で推進用機器10を移動させる構成としてもよく、水平面内(X-Y面内)で推進用機器10を移動させる構成としてもよい。この格納方式としては、航空機の車輪の格納方式を参考にすることができる。
なお、これらの図17~図23の図面では、スクリュープロペラ推進器を図示しているが、ウォータージェット推進器であってもよいので、代表として推進用機器10として図示すると共に、説明でも「推進用機器10」を用いて説明する。
〔推進用機器の格納: 側部配置〕
この側部配置の推進用機器の格納方式としては、図17に示すような回動方式、図18に示すような転倒方式、図19に示すような伸縮方式、図20に示すような昇降方式、及びその他の方法等の様々な方式を用いることができる。
この回動方式では、図17に示すような、推進用機器10の支持部材10bを移動装置10cで回転軸10d回りに回動させることで、推進用機器10を上甲板20の格納位置と配置位置の間を移動させる。また、転倒方式では、図18に示すような、推進用機器10の支持部材10bの一部に回転軸10dを設けて、この回転軸10d回りに移動装置10cで支持部材10bを回動させることで、推進用機器10を側部2cの凹部2h(図18(a))又は上甲板20の上(図18(b))の格納位置と配置位置との間を移動させる。
そして、伸縮方式では、図19に示すような移動装置10cでピストン10eを伸縮させることで、推進用機器10を船体没水部2の側部2cの内部の格納位置と配置位置との間を移動させる。また、昇降方式では、図20に示すような、推進用機器10を移動装置10cにより柱10fを昇降させることで、推進用機器10を上甲板20の上の格納位置と配置位置との間を移動させる。
〔推進用機器の格納:底部配置〕そして、底部配置の推進用機器の格納方式としては、図21に示すような昇降方式、図22に示すような転倒方式、図23に示すような回動方式等様々な方式を用いることができる。
昇降方式では、図21に示すような、移動装置10cにより支持部材(兼ピストン)10bを伸縮させることで、推進用機器10を船体没水部2の底部2dの内部の格納位置と配置位置との間を移動させる。また、転倒方式では、図22に示すような、推進用機器10の支持部材10bの一部に回転軸10dを設けて、この回転軸10d回りに移動装置10cで支持部材10bを回動させることで、推進用機器10を底部2dの凹部2hの格納位置と配置位置の間を移動させる。
そして、回動方式では、図23に示すような、底部2dから回転軸10d回りに支持部材10bを回動することで、推進用機器10を、底部2dの配置位置と側部2cの格納位置と間(図23(a))、あるいは、底部2dの配置位置と上甲板20の上の格納位置の間(図23(b))を、移動させる。
なお、水上航走体1がタグボートの力を借りて移動する場合には、推進用機器10を完全に船内に格納してもよいが、水上航走体1が推力を発生する必要がある場合は、図23(a)に示すように推進用機器10を底部2dから側部2cに移動させてもよい。あるいは、港湾内では一般に低速で航走するので、側部配置の推進用機器10の内の幾つかを稼働させて、底部配置の推進用機器10のみを格納してもよい。さらには、出力の小さい補助用の推進用機器10を予め側部2cに別途備えておき、低速航走時にこの補助用の推進用機器10を用いる等の構成にしてもよい。
〔推進性能面から見た推進用機器の配置〕次に、本発明における推進性能に関して説明する。この推進性能に関しては、水上航走体の前後方向Xと水上航走体の幅方向Yに関する推進用機器10の配置についての一つ目の考え方としては、推進用機器10同士の相互間での干渉と、推進用機器10と船体没水部2との相互間の干渉の両方の干渉が生じない位置に配置にして、船体没水部2の推進抵抗と推進用機器10の推進性能を別々に評価できるようにするという「干渉回避」の考え方がある。
この「干渉回避」の考え方に基づいて、側部配置の推進用機器10の場合は、例えば、図24(a)に例示するように(推進用機器10は図示していない)、船体没水部2の最大幅Bmaxの部位Rbよりも前方、又はこの部位Rbに推進用機器10を配置するときには、正面(水上航走体の前後方向Xの前方)から見て推進用機器10が船体没水部2の最大幅Bmaxよりも外側になるように推進用機器10を配置する。あるいは、最大幅Bmaxの部位Rbよりも後方に推進用機器10を配置することにより、推進用機器10で発生する水流の影響が船体没水部2に及ばないようにする。
この最大幅Bmaxよりも前方に推進用機器10を配置する場合には、推進用機器10の支持部材10bが長くなる。一方、最大幅Bmaxの部位Rbよりも後方に推進用機器10を配置する場合には、僅かな離間距離で、推進用機器10で発生する水流の影響が船体没水部2に及ばないようにすることができるので、推進用機器10の支持部材10bが短くて済むことになる。
また、この「干渉回避」の考え方で推進用機器10を底部2d(ビルジ部を含む)に配置する場合は、その推進用機器10の配置位置の境界層厚さや伴流域の外の領域に、推進用機器10を底部2dから離間して配置する。さらに、後述する底部舵5や船尾舵システム6の領域に、推進用機器10で発生する水流が流入しないように、正面から見て、底部舵5や船尾舵システム6の領域を避けるように推進用機器10を配置する。
また、境界層に関しては、船体没水部2に沿った流れの方向で見ると、層流境界層から、境界層遷移して、乱流境界層となり、更には、境界層剥離が生じる。従って、剥離点より前方では、層流境界層や乱流境界層の「境界層厚さ」の外側に、推進用機器10を配置することになる。一方、剥離点より後方では、伴流の外側に、推進用機器10を配置することになる。
この「境界層厚さ」の厚み方向に関しては、「99%境界層厚さ(主流に対し99%までの速度の流れの範囲)」、「運動量厚さ(せん断応力によってエネルギーが失われている部分全てを含めるもので、『99%境界層厚さ』の約1/7.5の大きさ)」、「排除厚さ(流速が遅くなった分だけ境界層がせり出したと考える厚さで『99%境界層厚さ』の約1/3の大きさ)」、「エネルギー厚さ(運動エネルギーの減少を示す厚さ)」等がある。ここでは、「99%境界層厚さ」とする。
この「境界層厚さ」は、実船で計測するのが好ましいが、測定が困難であるので、「平板に沿う境界層の運動量積分方程式」を用いて算出して、この値で代用してもよい。また、風洞での模型実験や数値シミュレーション計算(例えばCFD)などにより算出してもよい。なお、「境界層厚さ」の外に推進用機器10を配置できれば良いので、「境界層厚さ」を厳密に求める必要はない。
〔船舶における境界層の状態〕なお、船舶における境界層の状態を考えるために、試算してみる。海水15℃では、動粘性係数はν=1.187×10-6[m/s]、密度はρ=104.51[kg・s/m]である。そのため、例えば、LWL=300[m]、V=15[ノット]=7.72[m/s]の大型タンカーの場合では、船全体のレイノルズ数Rnは、Rn=1.95×10のとなる。ここで、レイノルズ数RnはRn=ρUL/μ=「流体の密度」×「代表速度」×「代表長さ」/「粘性係数」=「代表速度」×「代表長さ」/「動粘性係数」で定義されている。
一方、層流境界層から乱流境界層に遷移する臨界レイノルズ数Rcは、平板の場合には、平板前縁からの距離を代表長さLとして、およそRc=5×10とされている。従って、大型タンカー船を例にして、V=7.72m/sとすると、Rc=V×L/νからL=Rc×ν/V=5×10×1.187×10-6/7.72=0.077mとなり、船体のほぼ全体が乱流境界層となる。
〔境界層計算の例〕この境界層に関しては、「厚さ境界層近似」を用いた境界層計算が行われており、タンカー船型(Cb=0.82)のModel-Aでは、「運動量厚さ」を「θ11」として、「2×θ11/Lpp」がS.S.5~S.S.2の区間で2.0~2.5×10-3程度の値となっている。また、高速コンテナ船(Cb=0.57)のModel-Bでは、2.0~3.0×10-3程度の値となっている。(「厚い境界層計算とその有効伴流推定への応用」日夏宗彦:船舶技術研究所報告第21巻第1号研究報告:昭和59年1月)
ここで、仮にタンカー船型でLpp=300mとすると、「θ11」=0.3m~0.375mとなり、コンテナ船型でLpp=400mとすると、「θ11」=0.4m~0.5mとなる。また、この「運動量厚さ」を7.5倍して「99%境界層厚さ」に換算すると、「2.25m~2.81m」及び「3.0m~4,5m」となる。そのため、予め設定した距離Saとしては、5.0m程度とすれば乱流境界層の外側になると考えられる。
そして、二つ目の考え方としては、推進用機器10による水流を船体没水部2と積極的に干渉させて、船体没水部2の表面における境界層制御を行い、全体としての推進性能を向上させるという「積極的干渉」の考え方がある。
この「積極的干渉」の考え方で側部2cと底部(ビルジ部を含む)2dの少なくとも一方に推進用機器10を配置する場合は、船体没水部2の浸水表面における境界層制御を、推進用機器10で発生するプロペラ水流または噴射流等の水流で行うことにより、船体没水部2の粘性抵抗をより減少できる可能性がある。特に、推進用機器10の配置を、従来技術の船尾配置から、側部2cと底部2dの少なくとも一方の配置に変更するので、船体没水部2の表面の比較的多くの場所において、推進用機器10を用いて船体没水部2の周囲の流れを吸引したり、船体没水部2に水流を当てたりすることができるようになる。
この「積極的干渉」では、船体没水部2の表面における流れは、ほとんどの部分が乱流になっていると考えられるので、層流境界層から乱流境界層への遷移を制御するのではなく、乱流境界層の剥離の位置を制御するのが有効と考えられる。なお、この船体没水部2と推進用機器10の相互干渉の流れは、複雑になると考えられる上に、推進用機器10の配置場所の自由度は大きいので、この推進用機器10の配置場所の選定に関しては今後の研究が待たれる。
〔推進性能面での効果〕次に、本発明に係る実施の形態の水上航走体1における推進用機器の配置による推進性能の効果について説明する。図47~図49に示すように、従来技術の船舶等の水上航走体1X~1Zでは、スクリュープロペラ推進器10Aやアジマススラスター推進器10Aやウォータージェット推進器10B等の推進用機器10を船尾に配置している。
〔効果1:船尾形状の自由化〕一方、本発明の水上航走体1においては、図1~図16に例示するように、推進用機器10(10A、10B)を第1前後範囲Rx1の船体没水部2に配置する。この構成の第1の効果として、船尾側に推進用機器10を駆動するための主機関22を配置する容積を確保する必要が無くなる。つまり、船尾に推進用機器10を駆動するための主機関22を配置する必要がなくなるので、主機関22の配置場所を船尾以外にも配置できるようになる。
そのため、船尾の形状を従来技術の形状にこだわることなく、自由に設計できるようになる。その結果、船尾における形状の制限が無くなり、粘性抵抗や造波抵抗がより少ない形状を選択することができるようになる。
〔船尾形状の例示:水平断面〕水上航走体1の船尾の水平断面の形状に関しては、例えば、図24(a)に示すような「円弧形状の船尾の形状」、図24(b)に示すような「翼型形状の船尾の形状」、図24(c)に示すような外側に向かって「凹形状の船尾の形状」、及び、図示しないその他の形状を採用することができる。このような船尾の流れを円滑にする形状を採用することにより、伴流や渦流の発生を抑制して、粘性抵抗、特に圧力抵抗の低減を図ることができる。
〔船尾形状の例示:横断面形状〕また、水上航走体1の船尾の横断面の形状に関しては、例えば、図25(a)に示すような、浮力及び内部容積の確保が容易な「U字型形状」、図25(b)に示すような、浮力及び内部容積に比べての上甲板の面積の確保が容易な「V字型形状」、図25(c)に示すような、「U字型形状」と「V字型船形」の間の「中間型形状」、図25(d)に示すような「楕円形形状」、及び、図示しないその他の形状を採用することができる。
〔船尾形状の例示:ビルジ形状〕これらの断面形状において、水上航走体1の側部2cから底部2dに移行する部位(ビルジ部)で渦流が発生しないように、図示しないが、このビルジ部分を比較的大きな円弧状曲線で形成したり、側部2cと底部2dを連続的な曲線形状で形成したりする。特に、船体没水部2の横断面の全体を円弧形状とすると同じ容積に対して表面積が最小になるので、浸水表面積が減少し、摩擦抵抗が減少する。ただし、この場合は、横揺れし易くなるので、横揺れ防止のための構成が必要になる。
〔船尾形状の例示:側面視の形状〕また、水上航走体1の船尾の側面視(プロファイル)の形状に関しては、図26(a)に示すような、上下方向に変化が無くて製造し易い「垂直形状」、図26(b)に示すような、下方が後方に後退して錨の格納と昇降が容易な「上部前進形状」、図26(c)に示すような、上部が後方に後退している「上部後退形状」、図26(d)に示すような、中央が後方に後退している「後方凸形状」、図26(e)に示すような,中央が前方に前進している「後方凹形状」、及び、図示しないその他の形状を採用することができる。いずれにしても、この船尾側の形状では、従来技術のように、スクリュープロペラや舵の配置を考えなくてよい形状とすることができる。
〔船尾形状における各形状の組み合わせ〕これらの水平断面の形状、横断面の形状、及び側面視の形状の組み合わせに関しては、水上航走体1に要求される性能や設備等に応じて、それぞれの形状による得失を考え合せて、それぞれの水平断面の形状、横断面の形状、及び側面視の形状を選択又は組み合わせをしたり、さらには、それらの形状を変形したりすることで、水上航走体1の用途に対してより適切な形状とするべきと考える。
〔効果2:船尾流れと舵との干渉減少〕また、推進用機器10を複雑な船尾の流れの影響を受けない範囲に配置するので、この船尾の流れと、「スクリュープロペラ推進」ではプロペラ後流と、また、「ウォータージェット推進」では噴射流との相互干渉が減少又は無くなる。その結果、船体没水部2と推進用機器10のそれぞれの推進性能と操縦性能に及ぼす要因を流体力学的に分離して、実験、分析及び設計等ができるようになる。従って、「設計及び製造」の簡略化を図ることができる。また、同時に、推進用機器10と舵3を船尾部に配置する従来技術で問題となっている「推進性能や操縦性能などの諸問題」の解決を図ることができる。
言い換えれば、本発明では、プロペラ等の推進用機器10や舵3等の操舵用機器の配置を、従来技術の排水量型船舶の船尾部における配置から大きく変更することにより、スクリュープロペラ等の推進用機器10を船尾の伴流中に配置する構成を避けて、舵とスクリュープロペラと船体没水部2との干渉を排除する。これにより、推進用機器10で生じる水流が、船体没水部2の形状で得られる効果や性能に影響を及ぼさないようにすることができる。その結果、それぞれの推進用機器10の推進性能と舵性能と船体形状による抵抗性能を流体力学的に分離して単純化して、評価、分析及び設計できるようになる。例えば、ポッド推進器を模型船に取り付けた状態で実施される自航試験を不要にすることができる。
〔推進用機器の離間配置〕そして、この「干渉減少」の効果を更に進める構成として、図4、図5、図8、及び図9に示す構成のように、推進用機器10(10A、10B)を、船体没水部2から予め設定した距離Sa以上離間して配置する。つまり、水上航走体1の計画速度で前方に直進しているときに、推進用機器10の推力を発生する部分が、船体没水部2の「境界層厚さ」及び「伴流領域」の外部になるように船体没水部2から予め設定した距離Saだけ、離間して配置する。この「予め設定した距離Sa」は、船体没水部2の表面の「境界層の厚さ」や「伴流領域」に関係する大きさであり、実機計測又は水槽実験や数値シミュレーション等から容易に推定または決定することができる。
〔効果3:船尾トリムからの開放〕また、従来技術の推進用機器10の船尾配置の場合では、商船等では、軽荷排水量の状態時に、船尾の推進用機器10の一部(例えば、プロペラの先端)が、水面上若しくは水面近傍に位置しないように、バラスト水を積み込んで船尾トリムとしている。また、過大な船尾トリムにならないように、あるいは、抵抗の大きな船体姿勢(トリム)にならないように、バラスト水を積み込んで船首側もある程度まで没水させている。そのため、船体没水部2の浸水表面積が増加してその分摩擦抵抗が大きくなっている。
これに対して、本発明の推進用機器10の配置によれば、推進用機器10や舵3を船尾に配置しないので、船尾配置の推進用機器10に対しての船尾喫水の確保のための船体沈下や船尾トリムも不要になる。さらに、重量が大きい主機関22を船尾に配置する必要がなくなる。従って、主機関22の配置場所を、軽荷状態における船体姿勢(トリム)が、バラスト水を搭載することなく、粘性抵抗や造波抵抗などに関して、最適な姿勢になるような位置にすることができるようになる。
その結果、船体没水部2の浸水表面積が減少し摩擦抵抗がその分小さくなり、軽荷状態においては浸水面積を従来技術の船舶よりも小さくできる。従って、粘性抵抗を減少できる。この積荷量に合わせて喫水を設定できる利点は、比較的低速で粘性抵抗の割合が大きく、かつ、積載重量が大きく、満載状態と軽荷状態で必要な没水容積(浮力)が大きく異なるタンカーや鉱石運搬船など商船ではより大きくなる。
また、バラスト水の搭載が不要また少量になり、バラスト水タンクを不要に又はその容積を小さくすることができる。また、バラスト水処理装置の能力を低減したり、不要にしたりすることができる。これらにより、貨物の搭載容積を増加できる。
〔効果4:推進用機器の稼働基数による推進調整〕また、この水上航走体の推進用機器の配置システムにおいて、第1の航走状態では使用するが、第2の航走状態では使用しない推進用機器10を備えて構成する。この構成によれば、第1の航走状態と第2の航走状態で、推進用機器10で推力を変更することなく、推進用機器10の使用基数を変化させることにより、それぞれの推進用機器10を最適効率に近い状態で使用しながら、それぞれの状態で航走に必要な推力を得ることができる。従って、各推進用機器10をエネルギー効率の良い状態で稼働させることができる。また、推進用機器10の冗長性を確保でき、安全性を向上できる。
この第1の航走状態と第2の航走状態の組み合わせとしては、満載状態と軽荷状態、高速航行の状態と低速航行の状態、戦闘状態と巡航状態等が考えられる。例えば、図11に示すように、満載喫水線WLの状態では、4つの推進用機器10を稼働して航走し、軽荷喫水線WLbの状態では下側の2つの推進用機器10を稼働すると共に、上下側の2つの推進用機器10の稼働を停止して航走する。これらの満載状態と軽荷状態では、浸水面積が大きく変化し、必要な推力が大きく変化する。これらの状態に対して、全体の推力調整を推進用機器10の稼働基数で調整するので、各推進用機器10のプロペラ効率の良い回転数で推力を発生できる。
〔効果5:後進時の操船の容易化〕また、推進用機器10の後進操作時に、推進用機器10における船体没水部2の影響が少なくなるので、大きな後進力を得られ、後進時の操船を容易に行えるようになる。つまり、従来技術の船舶では、推進用機器10が船尾にあり、後進時に推進用機器10に流入する水流が舵や船体没水部2の影響を受けるため、後進時における操船の結果の予測が難しくなっていたが、本発明の推進用機器10の配置によれば、推進用機器10の後進操作時に、推進用機器10が船体没水部2の影響を受けないので、大きな後進力を得られる上に、舵3との干渉も無いので、後進時の推進用機器10による旋回モーメントの推定が容易となり、操船も容易に行えるようになる。
〔動力伝達システム〕そして、この水上航走体1においては、主機関22の動力を推進用機器10に機械的に伝達する場合は、スクリュープロペラと、アジマススラスターで用いられている「Zドライブ機構(推進軸をZ字型にして動力を機械的に伝達する機構)」23を用いることができるが、推進用機器10が電気を駆動源とする電気推進システムを用いるか、あるいは推進用機器10が流体圧を駆動源とする流体圧推進システムを用いることがより好ましい。
電気推進システムを採用する場合は、スクリュープロペラと直結したポッド内に電動機(電度モータ)を設置して推進用機器10を構成し、この電動機に、船内のディーゼルエンジンやガスタービンエンジン等の主機関22で発電した電力を供給する構成とする。これにより、主機関22と発電機(図示しない)等と、推進用機器10とを離間した位置に配置できるようになる。その結果、水上航走体1における機器の配置上(レイアウト)の制約を少なくして、自由度を増すことができる。なお、ポッド推進装置においては、現状では、10MW、12MW、20MWの出力のポッド推進器が既に実用化されており、砕氷船やクルーズ船に1基、2基、4基で搭載されている例がある。
また、流体圧推進システムを採用する場合は、油圧や空圧を使用するが、油圧を用いる油圧システムでは、可変容量型の油圧モータをポッド内部に設けて、船内からの油圧ラインで油圧ポンプから送油される作動油によって油圧モータを駆動してプロペラを回転する。この場合には、可変容量型の油圧ポンプを用いることで、電動モータを使用した場合に必要とされる変速機や冷却システムを不要にして、ポッド内部などを陥落化することができ、より配置上の自由度を増すことができる。なお、空圧システムでは発生できる駆動力の大きさは劣るが、万一破損した場合であっても海洋汚染の危険性が小さくなる。
〔主機関の配置の自由度〕これらの構成によれば、主機関22と推進用機器10の間は電力用ケーブルと制御信号用ケーブルを配線するだけ、又は、流体圧配管等の流体圧制御システムを配設するだけでよいので、主機関22の配置場所を比較的自由に選択できるようになる。
従って、主機関22と船橋21aと居住区21を、主機関22の配置スペースの確保が容易な船首側や中央部の比較的幅の広い部位に配置することが可能となる。また、船首側に船橋21aを設けると、特に水上航走体(船舶)1における航行時の前方を監視するために必要な見通し線を、容易に確保できるようになる。
〔本発明に係る実施の形態:水上航走体の操船方法:旋回方法〕次に、本発明に係る実施の形態の水上航走体の操船方法について説明する。この操船方法に関しては旋回と針路保持とがあるが、最初に水上航走体1の旋回方法について説明する。
この水上航走体の操船方法は、図1に示すように、水面を航走する水上航走体1の満載喫水線WLの状態において、水上航走体の前後方向Xに関して船体没水部2の全長を基準長Lbとし、船体没水部2の前端2aから基準長Lbの75%後方の位置である第1位置P1と船体没水部2の前端2aとの間の範囲を第1前後範囲Rx1とする。このときに、スクリュープロペラ推進、ウォータージェット推進のいずれか1種又はこれらの組み合わせを用いて構成され、かつ、少なくとも航走時において、後端の位置である推進器位置Pxを船体没水部2の第1前後範囲Rx1に配置された推進用機器10を用いて、水上航走体1の航走用の推力を発生するとともに、水上航走体1の旋回をするための旋回モーメントの一部又は全部を発生することを特徴とする水上航走体の操船方法である。
より具体的には、上記の実施の形態の「水上航走体の推進用機器の配置システム」を用いて、若しくは下記で説明する水上航走体の推進用機器の配置システムを用いて、操船することを特徴とする水上航走体の操船方法である。
〔旋回方法の種類〕そして、この本発明に係る実施の形態の水上航走体の操船方法における第1及び第2の旋回方法は、航走時の推力を発生する推進用機器10を用いて水上航走体1を回頭及び旋回させる方法である。そして、第1の旋回方法は、推進用機器10を複数基使用して推力差により旋回させる方法である。また、第2の旋回方法は、旋回式の推進用機器10を水平方向に旋回させて水上航走体1を旋回させる方法である。
また、第3~第6の旋回方法は、推進用機器10以外の操舵装置を用いる旋回方法である。そして、第3の旋回方法は、サイドスラスター等の横力発生装置4を用いて旋回させる旋回方法である。第4の旋回方法は、船体没水部2の底部2dから下側に突出する底部舵5を用いて旋回させる旋回方法である。第5の旋回方法は、船体没水部2の船尾側に設けた船尾舵システム6を用いて旋回させる旋回方法である。第6の旋回方法は、船体没水部2の後部に設けた後縁フラップ7を用いて旋回させる旋回方法である。なお、これらの旋回方法は例示であり、これら以外の旋回方法を用いてもよく、これらの旋回方法を幾つか組み合わせて用いてもよい。
〔第1の旋回方法:推進用機器の推力差〕最初に第1の旋回方法について説明する。この第1の旋回方法は、水上航走体の幅方向Yに並列して配置した推進用機器10の推力F10の差を利用して旋回モーメントM10を発生させる方法である。この第1の旋回方法では、これらの複数基の推進用機器10が発生する推力F10の大きさを個別に制御するように構成して、全体として水上航走体1の旋回用の旋回モーメントM10を発生する。
より詳細には、この第1の旋回方法では、図1~図12、図14~図16に例示するように、水上航走体の幅方向Yに推進用機器10を複数基配置している場合に、図27(b)及び図28(b)に示すように、この推進用機器10の右舷側の推力F10pと左舷側の推力F10sの大きさに差(ΔF10=F10s-F10p>0)を、発生させたり、あるいは、左舷側の推進用機器10に逆方向(後方向き)の推力を発生させたりすることにより、船首側が左舷側に旋回する旋回モーメントM10を発生させる。なお、この方法では、推進用機器10自体を旋回させる必要は無い。逆方向の旋回モーメントを発生させる場合は、上記で推進用機器10において右舷側と左舷側を入れ替えた操作をする。
そして、水上航走体1が一旦、旋回すると、図28(b)に示すように、水上航走体1の進行方向、言い換えれば水上航走体1に流入してくる水流Wの方向に対して、迎角αを持つようになるので、船体没水部2の形状に起因する揚力Fが圧力中心Ppに発生する。この揚力Fにより発生する旋回モーメント(翼のピッチングモーメント)と推進用機器10で発生する旋回モーメントM10の両方が加算された旋回モーメントMtにより水上航走体1を回頭及び旋回させる。なお、圧力中心Ppは、迎角αの大きさに従って水上航走体の前後方向Xに多少移動する。
〔第2の旋回方法:推進用機器の旋回〕第2の旋回方法は、推力F10の方向を水平方向に旋回可能な推進用機器10を旋回させることで、水上航走体1の旋回モーメントを発生させる方法である。この推進用機器10として、水平方向に旋回できる「アジマススラスター」などの旋回式推進器を用いることができる。また、水流の噴射方向を変更できるウォータージェット推進器を用いることもできる。
より詳細には、この第2の旋回方法では、図29に例示するように単数基の推進用機器10を底部2dの船体中央線Lcに配置している場合に、この航走時の推力を発生させる推進用機器10を水平方向に関して旋回可能に構成する。なお、この場合に、推進用機器10の水平方向の回転可能な角度は必ずしも360度にする必要は無く、水上航走体1の旋回に必要な角度だけ旋回する構成であっても良い。
そして、この推進用機器10を角度βに旋回させて推力F10の方向を変化させることにより、水上航走体1に対して旋回モーメントM10を発生させる。この旋回モーメントM10により、水上航走体1を回頭して旋回させる。その後は、第1の旋回方法と同じで、この揚力Fの旋回モーメントと推進用機器10で発生する旋回モーメントM10の両方を加算した旋回モーメントMtにより水上航走体1を回頭及び旋回させる。
また、図30及び図31に例示するように、水上航走体の幅方向Yに複数基の推進用機器10を配置している場合においても、これらの推進用機器10を水平方向に旋回可能に構成して、角度βに旋回させることにより、推力F10p、F10sの方向を変化させて、水上航走体1を回頭して旋回させることができる。
なお、図30に示すように、推進用機器10を船体没水部2の側部2cに配置した場合には、配置位置にもよるが、旋回した推進用機器10で発生する水流が船体没水部2に流れ込む可能性がある。その場合には、旋回モーメントM10の推定が難しくなる上に、旋回モーメントM10が不安定になる可能性もある。従って、この場合は、旋回する側(図30(b)では左舷側)の推進用機器10の稼働を停止させることで、船体没水部2と推進用機器10の水流との干渉を避けて制御を単純化するなどの対策を取ることも考えられる。
そのため、推進用機器10を側部2cに設けて旋回させるよりも、図31に示すように、推進用機器10を底部2dに設けた方が、推進用機器10と船体没水部2との干渉が少なくなるので、旋回モーメントM10を評価し易くなり、制御も単純化できる。また、推進用機器10で発生する推力を効率よく、水上航走体1の旋回モーメントに利用することができる。
〔第3の旋回方法:横力発生装置〕そして、第3の旋回方法は、従来技術の客船などで採用されているサイドスラスター等の横力発生装置4を用いて旋回する方法である。この横力発生装置4としては、サイドスラスターやアジマススラスターやウォータージェットの噴射口等を用いることができる。この横力発生装置4が発生する操船用横力F4の方向は水上航走体の幅方向Yとするのが好ましいが、真横から水上航走体の前後方向Xにずれた斜め方向であってもよい。この構成によれば、従来の船舶の船尾に配置された舵の代わりになり、水上航走体1を操船できるようになる。
つまり、この第3の旋回方法では、図32及び図33に示すように、水上航走体の幅方向Yに操船用横力F4を発生する横力発生装置4を配置して、横力発生装置4を用いて旋回のための旋回モーメントの一部又は全部を発生するように構成される。この構成により、横力発生装置4の操船用横力F4により発生する旋回モーメントM4を用いて回頭して旋回する。この第3の旋回方法では、横力発生装置4が水上航走体1の旋回中心の前方と後方のいずれかに設けるかで、旋回方向と操船用横力Fの方向とが異なってくる。
つまり、図32に示すように、浮心Pfの位置より前方に横力発生装置4を設けた場合には、操船用横力F4が水上航走体1を左舷側(右舷側)に押し出すように、横力発生装置4を作動させると、船首側が左舷側(右舷側)に回る旋回モーメントM4を発生することができるので、水上航走体1が回頭及び旋回する。
一方、図33に示すように、浮心Pfの位置より後方に横力発生装置4を設けた場合には、操船用横力F4が水上航走体1を右舷側(左舷側)に押し出すように、横力発生装置4を作動させると、船首側が左舷側(右舷側)に回る旋回モーメントM4を発生することができるので、水上航走体1が回頭及び旋回するようになる。
特に、船体没水部2の後端2bと、後端2bから船体没水部2の全長Lbの4分の1の分だけ前方の位置P1との間の部位である第4前後範囲Rx4に、この横力発生装置4を配置すると、比較的小さな操船用横力F4で比較的大きな旋回モーメントM4を発生し易くなるので、より好ましい。
〔第4の旋回方法:底部舵〕第4の旋回方法は、底部舵5を用いて旋回する方法である。この第4の旋回方法では、図34及び図35に示すように、船体没水部2の底部2dから下方に突出する底部舵5を少なくとも航走時において配置して、底部舵5を用いて旋回のための旋回モーメントの一部又は全部を発生するように構成する。
この第4の旋回方法によれば、図34及び図35に示すように、底部舵5の後方が左舷側(右舷側)に回動して角度(舵角)δを取ると、操船用横力F5が水上航走体1を右舷側(左舷側)に押し出すように作用する。これにより、船首側が左舷側(右舷側)に回る旋回モーメントM5を発生するので、水上航走体1が回頭して旋回する。
また、この底部舵5は、船首側よりも船尾側に設ける方が旋回性能に関しては良いので、船尾側、好ましくは、第4前後範囲Rx4に配置する。また、この底部舵5は、図35に示すように、船体中心線Lcに対称に複数並行に設けてもよい。また、底部舵5を昇降可能、横折れ可能、前折れ可能等に構成して、港湾などの浅海域において曳船などで曳航されるときに、底部舵5を底部2dから船体没水部2の内部に格納する構成にする。この格納方法としては、航空機の車輪の格納方法を参考にすることができる。
この第4の旋回方法によれば、底部舵5は、船体没水部2の伴流中に配置されず、また、船体没水部2の底部2dから突出して配置されるので、船体没水部2の流れの影響が少ない。そのため、この底部舵5の舵性能の推定が容易となり、設計が容易となる。
〔第5の旋回方法:船尾舵システム〕第5の旋回方法は、船体没水部2の船尾側に設けた船尾舵システム6を用いて旋回する方法である。この第5の旋回方法で用いる船尾舵システム6は、図36~図38に示すように、船体没水部2の側部2cから斜め上方に突出する斜め上方船尾舵6aと、斜め下方に突出する斜め下方船尾舵6bとの組み合わせで構成される。
つまり、図36~図38に示すように、船体没水部2の第1前後範囲Rx1より後方の範囲である第4前後範囲Rx4において、船体没水部2の右舷側の側部2cから斜め上方に突出する斜め上方船尾舵6aと斜め下方に突出する斜め下方船尾舵6bの少なくとも一方を設けると共に、船体没水部2の左舷側の側部2cから斜め上方に突出する斜め上方船尾舵6aと斜め下方に突出する斜め下方船尾舵6bの少なくとも一方を設けて、船尾舵システム6を構成し、この船尾舵システム6を用いて旋回のための旋回モーメントM6の一部又は全部を発生するように構成される。
この構成によれば、この船尾舵システム6は、X字形状舵6A、V字形状舵6B、逆V字形状舵6C、斜め舵6Dなどの構成となる。これらに対応して、図37(a)は、2つの斜め上方船尾舵6aと2つの斜め下方船尾舵6bを組み合わせたX字形状舵6Aを示し、図37(b)は、2つの斜め上方船尾舵6aを組み合わせたV字形状舵6Bを示し、図38(a)は、2つの斜め下方船尾舵6bを組み合わせた逆V字形状舵6Cを示し、図38(b)は、斜め上方船尾舵6aと斜め下方船尾舵6bを組み合わせた斜め舵6Dを示す。これらの構成により、水上航走体の幅方向Yの操船用横力F6を発生できる。
そして、図36(b)に示すように、この操船用横力F6を用いて、底部舵5と同様に、水平面内における旋回モーメントM6を発生して、水上航走体1を回頭して旋回することができる。なお、この船尾舵システム6では、上下力も発生できるので、この上下力を個別に制御することで、横揺れ制御に必要な横揺れモーメントと縦揺れ制御に必要な縦揺れモーメントも発生できる。
〔第6の旋回方法:後縁フラップ〕第6の旋回方法では、図39に示すように、船体没水部2の後部に後縁フラップ7を設けて、この後縁フラップ7を用いて旋回する方法である。この後縁フラップ7の作動で発生する船体没水部2の旋回モーメント(翼におけるピッチングモーメント:頭下げの回転モーメントに相当)Mtを用いて回頭して旋回する。
この第6の旋回方法では、後縁フラップ7により、旋回モーメントの一部又は全部を発生する。この後縁フラップ7は、従来技術の舵取機を用いて左右に回動させることができ、この舵取機を操作することで、水上航走体1を旋回させることができる。
この後縁フラップ7としては、図40(a)に示すような、翼形状の後端を単に動かす単純フラップ(プレーンフラップ)7Aを採用することができる。または、図40(b)に示すような、翼形状の後端を2つ割にして、それぞれのフラップ7bp、7bsを独立して回動するスプリットフラップ7Bを採用してもよい。
このスプリットフラップ7Bを採用した場合は、図40(b)に示すように、フラップ7bp、7bsの一方のみを動かすことで、スプリットフラップの効果を発揮させることができる。また、このスプリットフラップ7Bで、単純フラップとしての機能を発揮させる場合は、両方のフラップ7bp、7bsを同時に同じ方向に回動することで、単純フラップの効果を発揮させてもよい。さらに、水上航走体1の直進時における停船操作の一つとして、図40(c)に示すように、両方のフラップ7bp、7bsを同時に左右の別方向に開いて、水上航走体1に作用する抗力を大きくして、停船させることができるようになる。
そして、図40(a)と図40(b)に示すように、この後縁フラップ7を右舷側(左舷側)に回動すると、船首側が左舷側(右舷側)に回る旋回モーメントMtを発生させることができる。この旋回モーメントMtにより水上航走体1が回頭して旋回する。
より詳細には、対称翼における後縁フラップ7の操作においては、後縁フラップ7の後端を右舷側(左舷側)への曲げると、船体没水部2の全体の形状は、左舷側(右舷側)に凸のキャンバーを持つ翼型形状となるので、船体没水部2の作用点(圧力中心)Ppに左舷側(右舷側)方向に向かう揚力Fが発生する。この揚力Fにより、船体没水部2の前端2aを左舷側(右舷側)に旋回する旋回モーメントMtが発生し、水上航走体1は左舷側(右舷側)に回頭して旋回する。
なお、旋回ではなく推進抵抗に関してではあるが、後縁フラップ7を能動的又は受動的に動かすことで、水上航走体1の直進時における抵抗減少に寄与できる可能性があると考える。例えば、後縁フラップ7をその外側の流れや渦などの発生状況を圧力センサ等で検出して、後縁フラップ7の駆動装置を用いて能動的に、又は、後縁フラップ7の周囲の流体力によって受動的に後縁フラップ7を動くようにする。あるいは、後縁フラップ7に相当する船体没水部2の部位を、プラススチックやゴムなどの弾性体で形成することで可撓性や柔軟性を持たせる。これにより、後縁フラップ7の周囲の流体力によって後縁フラップ7が自動的に変形させる。さらには、後縁フラップ7を水上航走体の上下方向Zに分割して、この分割部分が個別に制御若しくは変形可能に構成する。また、後縁フラップ7を操船時には能動的に動かし、直進時には受動的に動かすことも考えられる。
これらの後縁フラップ7が、その場の流れに応じて変形することにより、船尾側における渦流の発生を抑制して、針路安定性を保持したり、粘性抵抗を低減したりすることができる可能性があると考える。
〔操船における推進用機器の前後位置〕上記の第1及び第2の旋回方法を採用する場合に関連して、推進用機器10の水上航走体の前後方向Xの位置について説明する。水上航走体1の操船に関係する前後位置としては、船体没水部2が迎角αで発生する揚力の作用点である「圧力中心」Ppと旋回時の「見掛け重心」Pgmとが重要となる。この旋回については、「船体運動力学:元良誠三著:(社)日本船舶海洋学会:共立出版株式会社;(電子訂正版:電子訂正版製作発起人土岐直二)」に詳しい説明がある。
従って、旋回性能を考えた場合には、推進用機器10の配置としては、水上航走体1の旋回モーメントを発生させる揚力Fの作用点である「圧力中心」Ppの近傍か、旋回中心となる「見掛け重心」Pgmの近傍に配置することが考えられる。また、推進用機器10を主機関22の近傍に配置する場合は、主機関22の配置し易い場所として、船体没水部2の最大幅Bmaxの部位Pbがあるので、この最大幅Bmaxの部位Pbに、推進用機器10を配置することも考えられる。
先ず、第1の「圧力中心」の近傍に推進用機器10を配置する場合は、基準位置Psの近傍に推進用機器10を配置する。つまり、「圧力中心」Ppが迎角αに従って動く範囲は船体没水部2の形状によって決まるが、この範囲は、おおよそ、船体没水部2の前端2aから基準長Lbの1/4の距離の位置(以下、「基準位置」とする)Psの近傍になる。そのため、水上航走体の前後方向Xに関して、船体没水部2の前端2aから基準長Lbの15%後方の位置P2と船体没水部2の前端2aから基準長Lbの35%後方の位置P3との間の範囲である第2前後範囲Rx2に、推進用機器10の後端の位置である推進器位置Pxを配置する。
そして、推進用機器10を「圧力中心」Ppの近傍に配置すると、迎角αで船体没水部2に発生する旋回モーメントの「圧力中心」Pbとほぼ同じ位置に旋回モーメントM10を発生することができる。従って、水上航走体1を旋回させるための全体の旋回モーメントMtの算出が容易となる。なお、魚やイルカやクジラなどの前ヒレの位置を見ると、「圧力中心」Ppの近傍に近い位置であるように見受けられるので、この配置とすると操船し易くなるのではないかと考える。
また、第2の「見掛け重心」Pgmの近傍に推進用機器10を配置する場合は、船体没水部2の浮心Pfの位置の近傍に配置する。つまり、水上航走体の前後方向Xに関して、「重心」Pgの位置や「見掛けの重心」Pgmの位置は水上航走体1の運動の状態により変化するが、「浮心」Pfの位置は船体没水部2の形状によって決まり、「見掛けの重心」Pgmの位置は「浮心」Pfの近傍にあると考えられる。
従って、図41(b)に例示するように、水上航走体の前後方向Xに関して、船体没水部2の浮心Pfの位置に対して基準長Lbの10%前方の位置P4と基準長Lbの10%後方の位置P5との間の範囲である第3前後範囲Rx3に、推進用機器10の後端の位置である推進器位置Pxを配置する。
この「浮心」Pfの近傍に、即ち、旋回時の旋回中心の近傍に推進用機器10を配置すると、推進用機器10による旋回モーメントM10の算出、及び、水上航走体1の旋回運動の推定が容易となり、水上航走体1の旋回に関しての制御が比較的簡単となる。
また、第3の「最大幅の部位」Rbに推進用機器10を配置する場合は、図41(c)に例示するように、水上航走体の前後方向Xに関して、「最大幅の部位」Rbに推進用機器10を配置する。この配置により、主機関22及び推進用機器10等の推進システムの配置が容易となる上に、また、推進用機器10の格納機構等も設け易くなる。
〔操船における推進用機器の幅方向の位置〕次に操縦性能の面から推進用機器10の水上航走体の幅方向Yに関する配置を考える。複数基の推進用機器10を配置する場合には、推進用機器10は船体中心線Lcに対して線対称(船体中心線Lcに配置する場合も含む)に配置する。奇数基の推進用機器10を配置する場合には、そのうちの少なくとも一基を船体中心線Lcに配置し、他に残りがあれば、この残りの複数基の推進用機器10を船体中心線Lcに対して線対称(船体中心線Lcに配置する場合も含む)に配置する。これらの配置により、操縦性能の面での評価が単純化し、操船の制御も単純化する。
なお、推進用機器10の水上航走体の幅方向Yに関しての配置は、船体中心線Lcから離れている距離が大きい程、推進用機器10で発生する推力差による旋回モーメントM10、及び、旋回式の推進用機器10で発生する旋回モーメントM10が大きくなる。これを考慮しながら、さらに、推進用機器10を配置できる場所と、推進用機器10の推進性能と、水上航走体1に要求される全体の旋回モーメントMtの大きさ等を勘案して、推進用機器10のそれぞれの配置場所を決めることになる。
〔旋回方法に関しての追記〕そして、上記の第1及び第2の旋回方法を採用する構成では、推進用機器10により水上航走体1の旋回モーメントM10を得るので、横力発生装置4、底部舵5、船尾舵システム6、後縁フラップ7等の操船用装備を設ける必要が無くなる。そのため、船体没水部2の船尾部の構造を著しく単純化できる。また、これらの操船用装備を使用して旋回する場合においても、推進用機器10を、操船用装備に対して、補助に使用することができる。従って、第1及び第2の旋回方法では、操船用装備が発生する旋回モーメントを小さくすることができ、これらの操船用装備とその駆動システムを小型化できる。また、推進用機器10を、これらの装置の故障時の予備として使用することができる。
〔旋回の説明〕また、第1~第5の旋回方法のいずれの旋回方法を用いた場合であっても、一旦、水上航走体1が回頭し始めると、水上航走体1の進行方向に対して斜行することになり、水上航走体1に流入してくる水流Wに対して水上航走体1は迎角αを持って航走するようになる。そのため、船体没水部2にその形状に起因する揚力Fとこの揚力Fによる旋回モーメント(翼のピッチングモーメント)が発生する。この旋回モーメントと旋回用に発生させる旋回モーメントM4~M6の両方の全体の旋回モーメントMtにより、水上航走体1は回頭して旋回することになる。
船体没水部2が水流Wに対して迎角αを持つときに、船体没水部2に発生する揚力Fの作用点を「圧力中心」Ppとしている。この「圧力中心」Ppまわりの船体没水部2により発生するモーメントはゼロとなる。この「圧力中心」Ppは翼型であれば「風力中心」と呼ばれ、一般に、迎角αが小さければ翼弦の後方に、迎角αが大きくなれば翼弦の前方に移動する。なお、翼で使用される「空力中心」は迎角αが変化してもモーメントが変化しない点であり、翼弦の25%の近傍にある。この「空力中心」まわりのモーメントは一定である。ただし、この「空力中心」まわりのモーメントはゼロというわけではない。
そして、特に、船体没水部2を、図24(b)に示すような対称翼形状に形成した場合には、上下キャンバーが同じ翼型なので、揚力係数が低く、また、迎角αが変わっても「風圧中心(圧力中心Pp)」が翼弦方向に移動しない特徴を持っている。そして、対称翼では、「風圧中心(圧力中心Pp)」は、「空力中心」と一致し、この「空力中心」は、対称翼の前端から翼弦長さの25%(4分の1)の位置の近傍にある。
一方、水上航走体1の重心Pgは、水上航走体1のトリムを少なくするために、水上航走体の前後方向Xに関して、船体没水部2の浮心Pfと略同じ位置にするので、重心Pgの位置は船体没水部2の浮心Pfの位置若しくはその近傍になり、一般的な船型では、全長Lbの中心位置Pmよりやや前方となる。そのため、通常は、浮心Pfは「圧力中心」Ppより後方に位置することになる。
その結果、船体没水部2の後部翼端形状により、流れに対して水上航走体1が傾斜して迎角αが生じると、重心Pg(≒浮心Pf)より前方の「圧力中心」Ppに揚力Fが作用して、迎角αを増加する方向に旋回モーメントが発生する。つまり、水上航走体1は針路不安定となる。なお、水上航走体1の旋回(回頭)の中心は、厳密には、水上航走体1の質量や慣性モーメントに加えて船体没水部2の付加質量や付加慣性モーメントを考慮した「見掛けの重心」Pgmとなるが、この「見掛けの重心」Pgmの推定は難しいので、運動や制御においては、通常は、「見掛けの重心」Pgmの位置の代わりに水上航走体1の重心Pgの位置を旋回の中心として取り扱っている。
〔水上航走体の保針方法〕次に、この水上航走体1の保針方法(方向安定性能)について考える。上記したように、水上航走体1が、直進中に何らかの力を受けて針路が直進方向から逸れはじめると、船体没水部2に流入する水流Wに対して迎角αが生じるようになり、この迎角αを増加する方向に船体没水部2に旋回モーメントが発生する。その結果、この水上航走体1は針路不安定となる。
そのため、直進での航走中は水上航走体1の針路(船首の方向)の変化、即ち、方位角θ、方位角θの角速度、方位角θの角加速度などを検出して、水上航走体1に流入してくる水流Wに対して迎角αが生じた場合に、この迎角αを小さくする方向の旋回モーメントを発生させて元の針路に戻す必要がある。
そして、第1の保針方法は、上記の第1~第6の旋回方法のいずれか又はいくつかの組み合わせの旋回方法を用いて、水上航走体1の針路(方位角θ)の変化を監視して針路の変化が所定の閾値を超えたことを検出したときに、水上航走体1の旋回を弱める方向の旋回モーメントを発生させる方法である。
〔横流れ〕しかしながら、第1及び第6の旋回方法で、推進用機器10の推力差を利用して針路保持する場合には、推進用機器10による横力は発生しないが、迎角αに起因する揚力Fとしての横力が発生する。また、第2~第5の旋回方法においては、迎角αに起因する揚力Fに加えて操船用横力Fiが発生する。この操船用横力Fiは、旋回した推進用機器10の推力F10、横力発生装置4で発生する操船用横力F4、底部舵5が発生する舵力、船尾舵システム6が発生する舵力のそれぞれの力の水上航走体の幅方向Yの成分である。
従って、いずれの旋回方法を採用する場合においても、水上航走体1の旋回時には横力(「揚力F」又は「揚力F+操船用横力Fi」)が発生し水上航走体1に横流れが生じることになる。ただし、この横流れは、従来の船型の船舶において船尾舵を切る際にも生じていることである。
〔斜行と避航方法〕次に、この横流れに関連して、対向船に対する避航方法を考えてみると、この避航方法に関しては、比較的狭い水路や航路におけるすれ違いなどでは、旋回よりも平行移動する方法、所謂「斜行」がよい場合がある。また、衝突を避けられない場合には船腹よりも船首で衝突した方が沈没の可能性が低くなる。そのため、斜行を可能とすることにより、正面から進行してくる他船との衝突を回避するための操船や、対向船との衝突時の損傷を軽減するための操船における操船範囲が広がるので、より安全性を高めることができる。
そこで、推進用機器10推力差を用いる第1の旋回方法を採用している場合に、ある程度の迎角αを維持しつつ、船体没水部2に作用する旋回モーメントMtを推進用機器10の推力差で発生する旋回モーメントM10で相殺しつつ、前進用の推力F10と揚力Fの幅方向成分を発生させたままとすることで、水上航走体1を斜行させることが可能となる。
また、推進用機器10の旋回を利用する第2の旋回方法を用いる場合には、推進用機器10を水上航走体の横方向又は斜め横方向に向けて推力F10発生させることで旋回モーメントM10を発生できるので、第1の旋回方法を用いる場合と同様に、迎角αをゼロに維持しつつ、あるいは、ある程度の迎角αを持たせつつ、揚力Fと推進用機器10のそれぞれの推力F10の方向と大きさを適切な値に設定及び制御することで、水上航走体1を斜行させることが可能となる。
また、横力発生装置4の操船用横力F4を利用する第3の旋回方法を採用している場合には、第1の旋回方法を用いる場合と同様に、ある程度の迎角αを持たせつつ、揚力Fと横力発生装置4の操船用横力F4の大きさを適切な値に設定及び制御することで、船体没水部2が発生する旋回モーメントを横力発生装置4の操船用横力F4で発生する旋回モーメントM4で相殺しつつ、水上航走体1を斜行させることが可能となると考える。しかしながら、斜行できる条件は比較的狭いのではないかと考える。
なお、底部舵5を利用する第4及び第5の旋回方法を採用している場合は、底部舵5、船尾舵システム6を用いて、操船用横力F5、F6の大きさを調節して、第1の旋回方法を用いる場合と同様に、ある程度の迎角αを持たせつつ、操船用横力F5、F6の大きさを適切な値に設定及び制御することで、水上航走体1を斜行させることが可能となる。しかしながら、操船用横力F5、F6の大きさに限界があるので制御が難しく、また、斜行できる条件は比較的狭いのではないかと考える。
また、後縁フラップ7を利用する第6の旋回方法を採用している場合は後縁フラップ7の操作によって船体没水部2で発生する旋回モーメントMtを相殺するのは難しく、斜行には他の手段が必要となると考える。
そして、上記の斜行可能な旋回方法を採用する場合には、水上航走体1の迎角α、揚力F、それぞれの推進用機器10の推力F10の大きさは、実験や実機計測等で、容易に推定できるので、航走時に、針路の旋回角度(方位角)、旋回角速度(方位角の角速度)、旋回角加速度(方位角の角加速度)等を検出して、それぞれの推進用機器10推力F10や操船用横力Fiを制御することで、水上航走体1を斜行させることができる。
〔針路保持機構〕次に、針路保持性能について説明する。上記のように水上航走体1は船体没水部2の形状によっては針路不安定になる可能性があるが、推進用機器10と、横力発生装置4、底部舵5、船尾舵システム6、後縁フラップ7等の操船用装備の制御により、針路(進路ではなく方位角)を保持することができる。しかしながら、これらの装置が故障すると針路保持が難しくなる。そのため、この水上航走体1における針路保持性能を高めるための方法として、次のような針路保持機構を用いる方法が考えられる。
〔対をなす底部舵〕第1の針路保持機構は、図42に示すような「対をなす底部舵5」で構成する。この「対をなす底部舵」5は、船体没水部2の後半側の底部2dに、船体中心線Lcに対して線対称に底部舵5を並列に配置して構成される。そして、水上航走体1の直進時では、底部舵5の操舵を行わず、針路(方位角)がぶれて水上航走体1が旋回し始めたときに、この「対を成す底部舵」5で発生する横力F5により、水上航走体1の旋回方向と逆方向に旋回モーメントを発生して、自動的に針路保持する。一方、水上航走体1の旋回時には、これらの底部舵5を操舵して水上航走体1を旋回させる。
〔船尾側の底部配置フィン〕第2の針路保持機構は、図43に示すように、水上航走体の前後方向Xの中心位置Pmよりも後方において、単数又は複数の横力発生用フィン8を、船体没水部2の底部2dに設けて構成される。なお、底部舵5との違いは、底部舵5は水上航走体1の進行方向に対して角度δを持つように回動するが、横力発生用フィン8は、使用時においては、水上航走体1の進行方向に対して固定のままである。なお、この横力発生用フィン8は、使用しないときは、底部舵5と同様に、船体没水部2の内部に格納される構造であってもよい。
そして、単数又は奇数の横力発生用フィン8を設ける場合には、そのうちの幾つか(奇数)の横力発生用フィン8を船体没水部2の底部2dで船体中央線Lcに設け、残りの横力発生用フィン8が有れば、この残りの横力発生用フィン8を船体中心線Lcに対して左右対称に設ける。図43に示す例では、対を成す横力発生用フィン8を船体没水部2の船尾側の底部2dに垂直に突出させて設けた例を示す。この構成においても、船尾側から見ると船体中心線Lcに対して左右対称で、横力発生用フィン8は水上航走体の上下方向Z(鉛直方向)に配置されているが、横力F8を発生できれば良いので船尾側から見て水平に対して斜めに傾斜して設けてもよい。
〔特殊安定鰭〕なお、この第2の針路保持機構では、横力発生用フィン8を約3度の角度δをつけて底部2dに固定で配置すると、既に従来技術となっている「特殊安定鰭(ひれ)」と略同じ構成となる。この「特殊安定鰭」は、「艀(はしけ)」のように幅が広く浅くて不安定な船に有効な手段であり、一対の鰭を船体中心線Lcに対して約3度の仰角をつけて底部2dに固定で装着した装置である。そして、船が少し斜航すると片方の鰭に対する仰角が大きくなって揚力を発生し、斜航を減ずる方向に船尾を振らせる装置である。これを参考にして、並列配置の直進時の底部舵5、及び、固定配置の横力発生用フィン8を、船体中心線Lcに対して後方が外側に開く角度δを、この「特殊安定鰭」と同様に3度程度つけて配置してもよい。
〔船尾側の側部配置フィン〕第3の針路保持機構は、図44に示すように、水上航走体の前後方向Xの中心位置Pmよりも後方において、横力発生用フィン8を、船体没水部2の両舷側に離間して、それぞれ単数又は複数設けて構成される。図44に示す例では、水平に設けた支持部材8bで支持する横力発生用フィン8を、船体没水部2の船尾側の側部2cにそれぞれ単数配置している。この構成では、横力発生用フィン8は、船尾側から見ると船体中心線Lcに対して左右対称で、水上航走体の上下方向Z(鉛直方向)に配置されているが、横力F8を発生できれば良いので船尾側から見て水平に対して斜めに傾斜して設けてもよい。
〔横力発生用フィンの構成〕そして、第2及び第3の針路保持機構では、横力発生用フィン8は船体没水部2に対して固定にしており、横力F8及び旋回モーメントM8は受動的に発生する。なお、この横力発生用フィン8を舵のように回動可能にしたり、フラップを付けたりして、横力F8及び旋回モーメントM8を能動的に発生するように構成してもよい。このように横力発生用フィン8を能動的に回動できるように構成した場合は、舵機能を備えることになるので、横力発生用フィン8を、水上航走体1を旋回させる手段としても使用できる。なお、この横力F8は船体没水部2に作用する揚力Fと同じ方向となるため、水上航走体の幅方向Yの力は相殺できず、横流れは防止できない。
〔横力発生用フィンによる針路保持効果〕そして、第2及び第3の針路保持機構では、図44に示すように、水上航走体1が直進状態で航走しているときに、何らかの原因で、水上航走体1の船首が右舷側(左舷側)に振れて、船体没水部2に迎角αが発生すると、横力発生用フィン8を固定配置した状態でも、この両方の横力発生用フィン8にも同じ迎角αが生じる。その結果、右舷側(左舷側)の外側に向かう方向の横力(揚力)F8が発生する。そして、この横力F8で発生する旋回モーメントM8により船体没水部2の揚力Fによる旋回モーメントMaを相殺する。この時、右舷側(左舷側)の横力発生用フィン8では水流Wがそのまま流入する。一方、左舷側(右舷側)の横力発生用フィン8に流入する水流Wは、横力発生用フィン8と船体没水部2との離間距離が短いと、船体没水部2の影響を受ける可能性が生じる。
なお、この横力発生用フィン8による横力F8で発生できる水上航走体1の旋回モーメントM8は、横力発生用フィン8と浮心Pf(厳密には見掛け重心Pmg)との距離が大きい程、即ち、水上航走体1の後端2bに近い程、また、水上航走体1の側部2cから離れるほど、モーメントレバーが大きくなるので、発生できる旋回モーメントが大きくなる。そして、水上航走体1の迎角αが小さいうちは旋回モーメントMaも小さい。しかしながら、これに対しては、横力発生用フィン8をキャンバー付きの翼型で形成し、発生する横力F8と旋回モーメントM8を大きくすることができる。従って、この横力発生用フィン8の大きさも、ある程度の大きさに抑制できる。
〔耐候性能:横揺れと縦揺れ〕次に、この水上航走体1における横揺れと縦揺れ等の耐候性能に関して説明する。一般的に、水上航走体1としての船舶においては、風波の影響を受けるので、航路の海象条件によっては、横揺れ(ローリング)を減少させるための横揺れ対策と縦揺れ(ピッチング)を減少させるための縦揺れ対策とが必要になる。
〔横揺れ対策〕この横揺れ対策としては、従来技術と同様に、ビルジキールやフィンスタビラーザーを船体没水部2のビルジ部に設けることが考えられるが、ここでは、第1の横揺れ対策方法として、図45に示すように、船体没水部2の側部2cに設けた推進用機器10の支持部材10bを、水面を貫通するように設けて、この支持部材10bの水面貫通部分を横揺れ時の復原用浮力V1として利用する。
そして、第2の横揺れ対策方法として、図46に示すように、船体没水部2の側部2cと推進用機器10の間の支持部材10bを水平フィン(揚力発生部材)9として構成する。また、第3の横揺れ対策方法として、図46に実線で示すように、船体没水部2の側部2cの外側に水平フィン9を設けて構成する。なお、この水平フィン9は図46では後端2bの近傍に設けているが、水上航走体の前後方向Xに関しては特に限定しない。さらに、第4の横揺れ対策方法として、図46に点線で示すように、推進用機器10の外側に水平フィン9を設けて構成する。
これらの水平フィン9により、上下力(揚力)F9を発生するとともに、この上下力F9の大きさを個別に制御することにより横揺れ制御を行うように構成する。例えば、水平フィン9の迎角を制御したり、フラップ付の水平フィン9でそのフラップ9fの角度を調整して制御したりする。これにより、船体没水部2の横揺れ方向のモーメントと反対方向のモーメントを発生させて、横揺れを減衰させるように制御する。
なお、その他の横揺れ対策方法として、図44に示すような垂直の横力発生用フィン8と、この横力発生用フィン8と、これを支持する水平の支持部材8bをT字形状に構成して、この支持部材8bに水平フィン9の機能を付与してもよい。さらには、推進用機器10の支持部材10bが水平方向以外の斜め方向や鉛直方向に設けられていても横揺れ方向のモーメントを発生できるので、推進用機器10の支持部材10bや底部舵5や船尾舵システム6に対して、横揺れ抑制の機能を付与してもよい。
〔縦揺れ対策〕一方、縦揺れ対策に関して、水上航走体1が大きくなると一般に縦揺れが小さくなるので、特別な対策を通らなくてもよい。しかしながら、必要な場合には、横揺れ対策として設けた水平フィン9等を用いて、横揺れ対策用の揚力の制御に加えて、縦揺れ対策用の揚力の制御を行うことで対応できる。
〔本発明の効果〕上記のように、本発明の実施の形態の水上航走体の推進用機器の配置システム及び水上航走体の操船方法によれば、船尾に推進用機器10を配置することを考慮せずに、船尾形状を粘性抵抗と造波抵抗を減少する形状にすることができ、推進用機器10の船尾配置に起因する、船体の船尾における伴流と推進用機器10と舵3の相互干渉を排除して、船体形状及び推進用機器10を規格化することができて、研究、開発、設計、製造における人的資源や物的資源の集中化を図ることができる。
1 水上航走体
2 船体没水部
2a 船体没水部の前端
2b 船体没水部の後端
2c 船体没水部の側部
2d 船体没水部の底部
3 舵
4 横力発生装置
5 底部舵
6 船尾舵システム
6a 斜め上方船尾舵
6b 斜め下方船尾舵
6f 舵のフラップ
7 後縁フラップ
8 横力発生用フィン
8b 横力発生用フィンの支持部材
9 水平フィン
9f 水平フィンのフラップ
10 推進用機器
10b 支持部材
10c 移動装置
10d ヒンジ
10e ピストン
10f 柱
10A スクリュープロペラ推進器
10Aa スクリュープロペラ
10B ウォータージェット推進器
10Ba 開口部(水流の入口)
10Bb 噴射口(水流の出口)
10Bc 導路(水流の水路)
10Bd ポンプ
10Be ノズル
20 上甲板
21 居住区
21a 船橋
22 主機関
23 Zドライブ
24 舵取機(操舵機)
Lb 基準長
P1 第1位置
P2 第2位置
P3 第3位置
P4 第4位置
P5 第5位置
Pf 船体没水部の浮心
Pm 船体没水部の中央位置
Ps 基準位置(圧力中心の近似位置)
Px 推進器位置
Rx1 第1前後範囲
Rx2 第2前後範囲
Rx3 第3前後範囲
Rx4 第4前後範囲
WL 満載喫水線
WLb 軽荷喫水線
X 水上航走体の前後方向
Y 水上航走体の幅方向
Z 水上航走体の上下方向

Claims (15)

  1. 水面を航走する排水量型の水上航走体(2)の満載喫水線(WL)の状態において、水上航走体の前後方向(X)に関して船体没水部(2)の全長を基準長(Lb)とし、前記船体没水部(2)の前端(2a)から基準長(Lb)の75%後方の位置である第1位置(P1)と前記船体没水部(2)の前端(2a)との間の範囲を第1前後範囲(Rx1)として、
    航走時に航走用の推力を発生する推進用機器(10)を、スクリュープロペラ推進、ウォータージェット推進のいずれか1種又はこれらの組み合わせを用いて構成するとともに、
    少なくとも航走時において、前記推進用機器(10)の後端の位置である推進器位置(Px)を前記船体没水部(2)の前記第1前後範囲(Rx1)に配置して構成されていることを特徴とする水上航走体の推進用機器の配置システム。
  2. 満載喫水線(WL)の状態での航走時において、前記推進用機器(10)が前記船体没水部(2)の流れの影響を受けない範囲に配置されるように、前記推進用機器(10)を前記船体没水部(2)の表面から予め設定した距離(Sa)だけ離間した位置に配置して構成されていることを特徴とする請求項1に記載の水上航走体の推進用機器の配置システム。
  3. 前記推進用機器(10)を単数基又は複数基用いて、旋回をするための旋回モーメントの一部又は全部を発生するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の水上航走体の推進用機器の配置システム。
  4. 水上航走体の前後方向(X)に関して、前記船体没水部(2)の前端(2a)から前記基準長(Lb)の15%後方の位置(P2)と前記船体没水部(2)の前端(2a)から前記基準長(Lb)の35%後方の位置(P3)との間の範囲を第2前後範囲(Rx2)として、
    前記推進器位置(Px)が前記第2前後範囲(Rx2)に配置して構成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の水上航走体の推進用機器の配置システム。
  5. 水上航走体の前後方向(X)に関して、前記船体没水部(2)の浮心(Pf)の位置に対して前記基準長(Lb)の10%前方の位置(P4)と前記基準長(Lb)の10%後方の位置(P5)との間の範囲を第3前後範囲(Rx3)として、
    前記推進器位置(Px)を前記第3前後範囲(Rx3)に配置して構成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の水上航走体の推進用機器の配置システム。
  6. 前記推進用機器(10)を、電気を駆動源とする電気推進システム、または、流体圧を駆動源とする流体圧推進システムのいずれか一方で構成されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の水上航走体の推進用機器の配置システム。
  7. 第1の航走状態では使用するが、第2の航走状態では使用しない前記推進用機器(10)を備えて構成されていることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の水上航走体の推進用機器の配置システム。
  8. 水上航走体の幅方向(Y)に推力を発生する横力発生装置(4)を配置して、
    前記横力発生装置(4)を用いて旋回のための旋回モーメントの一部又は全部を発生するように構成されていることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の水上航走体の推進用機器の配置システム。
  9. 前記船体没水部(2)の前記底部(2d)から下方に突出する底部舵(5)を少なくとも航走時において配置して、
    前記底部舵(5)を用いて旋回のための旋回モーメントの一部又は全部を発生するように構成されていることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の水上航走体の推進用機器の配置システム。
  10. 前記船体没水部(2)の前記第1前後範囲(Rx1)より後方の範囲である第4前後範囲(Rx4)において、
    前記船体没水部(2)の右舷側の側部(2c)から斜め上方に突出する斜め上方船尾舵(6a)と斜め下方に突出する斜め下方船尾舵(6b)の少なくとも一方を設けると共に、前記船体没水部(2)の左舷側の側部(2c)から斜め上方に突出する斜め上方船尾舵(6a)と斜め下方に突出する斜め下方船尾舵(6b)の少なくとも一方を設けて、船尾舵システム(6)を構成し、
    前記船尾舵システム(6)を用いて旋回のための旋回モーメントの一部又は全部を発生するように構成されていることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の水上航走体の推進用機器の配置システム。
  11. 前記船体没水部(2)の後部に後縁フラップ(7)を設けて、
    前記後縁フラップ(7)を用いて旋回のための旋回モーメントの一部又は全部を発生するように構成されていることを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の水上航走体の推進用機器の配置システム。
  12. 前記船体没水部(2)の前記第1前後範囲(Rx1)より後方の範囲である第4前後範囲(Rx4)において、
    横力発生用フィン(8)を、前記船体没水部(2)の両舷側に前記船体没水部(2)の側部(2c)から離間してそれぞれ単数又は複数設けるか、
    前記船体没水部(2)の底部(2d)に航走体の幅方向(Y)に関して離間して複数設けるかのいずれか一方で構成されていることを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の水上航走体の推進用機器の配置システム。
  13. 前記船体没水部(2)と前記推進用機器(10)の間の支持部材(10b)を揚力発生部材(9)として構成するか、または、前記推進用機器(10)の外側に揚力発生部材(9)を設けて構成するかのいずれかで構成し、前記揚力発生部材(9)で発生する揚力の大きさを制御することにより横揺れ制御を行うように構成されていることを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載の水上航走体の推進用機器の配置システム。
  14. 水面を航走する排水量型の水上航走体(1)の満載喫水線(WL)の状態において、水上航走体の前後方向(X)に関して船体没水部(2)の全長を基準長(Lb)とし、前記船体没水部(2)の前端(2a)から基準長(Lb)の75%後方の位置である第1位置(P1)と前記船体没水部(2)の前端(2a)との間の範囲を第1前後範囲(Rx1)としたときに、
    スクリュープロペラ推進、ウォータージェット推進のいずれか1種又はこれらの組み合わせを用いて構成され、かつ、少なくとも航走時において、後端の位置である推進器位置(Px)を前記船体没水部(2)の前記第1前後範囲(Rx1)に配置された推進用機器(10)を用いて、
    水上航走体(1)の航走用の推力を発生するとともに、前記水上航走体(1)の旋回をするための旋回モーメントの一部又は全部を発生することを特徴とする水上航走体の操船方法。
  15. 請求項1~請求項13のいずれか1項に記載の水上航走体の推進用機器の配置システムを用いて操船することを特徴とする請求項14に記載の水上航走体の操船方法。
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